説明

薬剤溶解供給装置

【課題】薬剤濃度の変動が少ない薬剤水溶液を供給することができる薬剤溶解供給装置を提供する。
【解決手段】槽3は、下部の一方の側面部に水の流入口3aを有し、他方の側面部に水の流出口3bを有している。流入口3a及び流出口3bは、槽3の底部と同レベルに設けられている。流入口3a及び流出口3bには、それぞれ固形薬剤Aの流出防止用のメッシュ4が設けられている。流入口3aには、ポンプ2からの水が定流量弁6を介して導入可能とされている。槽3の上部には、空気の導入口3eが設けられ、ブロワ5からの空気が槽3内に導入可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形薬剤を水に溶解させて薬剤水溶液を供給するための薬剤溶解供給装置に係り、特に塩素系薬剤の溶解供給に好適な薬剤溶解供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水系、紙パルププロセス水系、集塵水系、スクラバー水系、プールなどの水系に塩素系薬剤を添加して菌類や藻類による障害を防止することが広く行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
従来、固形薬剤を水に溶解させて薬剤水溶液として供給するための薬剤溶解供給装置として、図2に概略的に示す上向流方式のものが用いられている。固形薬剤Aを収容した槽1の底部の流入口1aにポンプ2から水を供給し、この水を固形薬剤Aと接触させる。固形薬剤が溶け込んだ水溶液は、槽1上部の流出口1bから流出し、水系に添加される。槽1の上部には、薬剤補充口1cが設けられ、蓋1dが水密的に装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−84163
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の薬剤溶解供給装置では、槽1内の固形薬剤Aの量が多いときには、濃度の高い水溶液が供給され、固形薬剤量が減少してくると、次第に水溶液の薬剤濃度が低下する。
【0006】
また、上記従来の薬剤溶解供給装置において、固形薬剤が塩素系薬剤である場合、槽1内に水を供給すると、すべての固形薬剤Aが水に濡れるので、通水停止後、すべての固形薬剤Aの表面から塩素系薬剤と残留水分との反応生成ガスが発生することになり、塩素成分濃度の高いガスが槽1内に溜る。
【0007】
また、蓋1dが補充口1cに水密的に装着されており、開閉しにくい。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、薬剤濃度の変動が少ない薬剤水溶液を供給することができる薬剤溶解供給装置を提供することを目的とする。また、本発明は、固形薬剤が塩素系薬剤である場合、発生ガス量を少なくすることができる薬剤溶解供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の薬剤溶解供給装置は、固形薬剤を収容する槽と、該槽内に水を供給するポンプとを有する薬剤溶解供給装置において、該槽の水の流入口及び薬剤水溶液の流出口をいずれも槽の下部に設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の薬剤溶解供給装置は、請求項1において、前記流入口及び流出口を槽の底部と同レベルに設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の薬剤溶解供給装置は、請求項1又は2において、槽内に空気を導入するブロワを設けたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の薬剤溶解供給装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記流入口に定流量弁を介して水が供給されることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の薬剤溶解供給装置は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記固形薬剤が塩素系薬剤であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の薬剤溶解供給装置では、水の流入口及び薬剤溶液流出口を槽の下部に設けており、固形薬剤を溶解するための水が槽の下部にのみ通水されるので、槽内の下部に存在する固形薬剤のみが水と接触する。このため、給水量を一定としておくと、ほぼ一定濃度の薬剤水溶液が供給される。
【0015】
また、本発明の薬剤溶解供給装置では、槽の下部の固形薬剤のみが水で濡れることになるので、固形薬剤が塩素系薬剤の場合、通水停止後に発生する塩素系ガスの量が少ない。通水停止後に槽内に空気を送り込むように構成すると、固形薬剤が強制乾燥されるので、塩素系ガスの発生量がさらに減少すると共に、槽内の塩素系ガスが空気でパージされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る薬剤溶解供給装置の断面図である。
【図2】従来の薬剤溶解供給装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
槽3は、下部の一方の側面部に水の流入口3aを有し、他方の側面部に水の流出口3bを有している。この実施の形態では、流入口3a及び流出口3bは、槽3の底部と同レベルに設けられている。流入口3a及び流出口3bには、それぞれ固形薬剤Aの流出防止用のメッシュ4が設けられている。流入口3aには、ポンプ2からの水が定流量弁6を介して導入可能とされている。
なお、流入水が直接、固形薬剤に当たると流速によって溶解量が変わるため、流入口に邪魔板(図示略)を設けて、流入水が固形薬剤に直接当らないようにすることが好ましい。
【0019】
槽3の上部には固形薬剤Aの補充口3cが設けられ、蓋3dが着脱自在に装着されている。また、槽3の上部には、空気の導入口3eが設けられ、ブロワ5からの空気が槽3内に導入可能とされている。
【0020】
このように構成された薬剤溶解供給装置において、薬剤水溶液を供給するときには、槽3内に粒状の固形薬剤を収容しておき、ポンプ2を作動させ、水を槽3に通水する。槽3内に導入された水は槽3内の下部の固形薬剤Aと接触し、薬剤成分が溶け込んだ水溶液となって流出口3bから流出する。
【0021】
このように、この薬剤溶解供給装置では、固形薬剤を溶解するための水を槽3の下部にのみ通水するので、槽3内の下部に存在する固形薬剤Aのみが水と接触する。このため、定流量弁6にて給水量を一定としていることと相俟って、ほぼ一定濃度の薬剤水溶液が流出口3bから供給される。
【0022】
なお、槽3の底部から槽3の高さの2〜30%特に4〜10%以下の固形薬剤が水と接触するような流入水量とするのが好ましい。この水量は、槽の大きさ、固形薬剤の粒径等に影響されるので、予め実験して定めておくのが好ましい。定流量弁6として、この流量を有するものを採用する。
【0023】
この薬剤溶解供給装置では、槽3の下部の固形薬剤Aのみが水で濡れることになるので、固形薬剤が塩素系薬剤の場合、通水停止後に発生する塩素系ガスの量が少ない。特に、この実施の形態では、流出口3bを槽1の底部と同レベルとしているので、槽3内の水切れがよく、固形薬剤Aが乾き易い。
【0024】
この実施の形態では、ポンプ2を停止して通水を停止した後にブロワ5を作動させ、槽3内に空気を送り込む。これにより濡れた固形薬剤Aが強制乾燥されるので、塩素系ガスの発生量がさらに減少すると共に槽内の塩素系ガスが空気でパージされる。なお、槽3内に導入された空気は流出口3bから流出させてもよく、流出口3bとは別個に設けた排気口(図示略)から槽3外に排出するようにしてもよい。ブロワ5はポンプ2にて停止している非通水時に常時作動されるのが好ましい。これにより、槽3内を常にエアパージすることができる。
【0025】
この実施の形態では、槽3の上部にまで水が達しないので、蓋3dは補充口3cに水密的に装着される必要はなく、蓋3dの開閉が容易である。
【0026】
固形薬剤Aとしては、トリクロロイソシアヌル酸などが好適であるが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0027】
1,3 槽
2 ポンプ
4 メッシュ
5 ブロワ
6 定流量弁
A 固形薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形薬剤を収容する槽と、該槽内に水を供給するポンプとを有する薬剤溶解供給装置において、該槽の水の流入口及び薬剤水溶液の流出口をいずれも槽の下部に設けたことを特徴とする薬剤溶解供給装置。
【請求項2】
請求項1において、前記流入口及び流出口を槽の底部と同レベルに設けたことを特徴とする薬剤溶解供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、槽内に空気を導入するブロワを設けたことを特徴とする薬剤溶解供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記流入口に定流量弁を介して水が供給されることを特徴とする薬剤溶解供給装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記固形薬剤が塩素系薬剤であることを特徴とする薬剤溶解供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−210586(P2012−210586A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77693(P2011−77693)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】