説明

薬品管理システム

【課題】センサが少なくて製造も保守もし易い撮像方式でも区画単位での確実な検出を行える画像が得られるうえ区画分けの自由度まで高い薬品管理システムを実現する。
【解決手段】トレー10と、仕切部材挿着用孔12をマトリクス状に多数形成した中敷部材11と、その孔12に挿着されてトレー10の内部空間を仕切って複数の区画に分割する縦断面L字状部材であってそのL字状のうち縦長部分21が仕切機能を果たし横長部分23の上面に薬品類8の機械読取用識別コード24と目視読取用薬品名25とが付されている複数の仕切片20と、トレー8を上から撮る撮像装置30と、その画像から機械読取用識別コード24を読み取って薬品類8の使用を検知する検知装置40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トレーにセットして医療現場で使用される薬品類の使用状況を管理するための薬品管理システムに関し、詳しくは、トレーを仕切って各区画に薬品類を収容するとともに薬品類の使用の有無を区画毎に把握する薬品管理システムに関する。
なお、薬品類には、アンプル・バイアル・造影剤等の注射薬の他、箱・ボトル等に収容された錠剤・散剤等の医薬品や、薬品と一緒に使用される補助薬品も該当する。
【背景技術】
【0002】
トレーではないが棚の上に医療材料を並べて収納する装置であって収納箇所を仕切部材で区分するようになった医材収納管理装置が実用化されている(例えば特許文献1〜3参照)。それらの医材収納管理装置では、大小種々のサイズの医療材料を収納して自動管理するのを可能とするために、棚には仕切部材挿着用凹みが列なって形成されるとともにそれらの凹みと交互になる配置状態で医材検出部材と取出案内部材が列設されており、それらの凹みに仕切部材が挿抜にて着脱されるようになっており、さらに、それらの凹みのうち仕切部材の抜き取られている凹みの両側に位置している医材検出部材や取出案内部材が制御装置によって一区分のものとして纏めて処理されるようになっている。
【0003】
仕切部材は、仕切り本来の機能を果たす薄い本体部と、その下端部に二本ずつ突設されていて棚の仕切部材挿着用凹みに適合した例えば細い丸棒からなる挿抜部とを具備している。上述した医材収納管理装置として、前述のような仕切部材を単体で使用するものと(例えば特許文献1参照)、前述のような仕切部材に可動銘板を装着したものと(例えば特許文献2参照)、前述のような仕切部材と別体の可動銘板とを併用するものが(例えば特許文献3参照)、開発されている。これらの装置において仕切の本体部は単板状部材からなり、その縦断面形状は単純な長方形である。また、銘板は、可動式なので、別体併用式ばかりか装着式のものでも、本体部に固定されてはいない。また、視認用の銘板には、目視読取可能な文字で医療材料の品名が書き込まれているが、機械読取用の識別コードは付いていない。そのような識別コードが付いているのは、医療材料や指示書である。
【0004】
また、薬品類の収容先にトレーを採用したうえで収容時には薬品類がトレー内底で重ならないで平面上(二次元的)に並ぶとともに各収容薬品類を個別に管理するようになったものもある(例えば特許文献4〜5参照)。特徴の異なる2タイプを詳述すると、一つ目は薬品セット装置であり(例えば特許文献4参照)、これは、電子タグを予め装着した薬品座具を適宜な個数だけ適宜な配置でトレーに入れておき、それぞれの薬品座具の座体部に薬品類を一つずつ載せ置くと、トレー上の薬品類セット状況をタグ読取にて座具単位で把握できるようになっている。薬品座具の電子タグは無線式であり、それには電子タグ識別情報が記憶保持されているが、薬品座具には機械読取用の識別コード(薬品識別情報)が付いていない。機械読取用の識別コードが付いているのは、薬品類である。
【0005】
二つ目は薬品管理システムであり(例えば特許文献5参照)、このシステムは、トレーにセットすべき薬品類の配置を調剤指示に応じて決定する配置決定手段と、前記トレーの内底に敷ける印刷用紙に前記薬品類の識別コードを前記配置に対応させて印刷する印刷手段と、前記トレーと共に前記印刷用紙を上から撮る撮像手段と、その画像から識別コードを読み取って前記薬品類の使用の有無を判別する判定手段とを備えたものであり、更に、前記判定手段が、識別コードを読み取れたときには該当箇所の薬品類は使用されたと判定し、識別コードを読み取れなかったときには該当箇所の薬品類は使用されていないと判定することにより、読取結果に基づく薬品類使用の有無判別を行うようになっている。
【0006】
この薬品管理システムは、センサが少なく製造も保守も遣りやすい撮像方式を踏襲したうえで、区画単位での確実な検出を行える画像が得られるようにシステムを改良したものである。詳述すると、このような薬品管理システムにあっては、調剤指示が与えられると、それに応じてトレーにおける薬品類の配置が配置決定手段によって決定され、さらに、その配置に対応した配置で薬品類の識別コードが印刷手段によって印刷用紙に印刷されるので、後は手作業になるが、その印刷済み用紙をトレーの内底に敷き、その上に重ねるようにして着脱式の仕切もトレーに収めることにより、簡単に、トレーに多数の区画室を形成するとともに区画室それぞれに薬品類の識別コードを付すことができる。
【0007】
そして、そのトレーの各区画室に薬品類をセットし、そのトレーを手術や治療などの医療行為に供し、戻ってきたトレーを撮像装置の下に置いてシステムに委ねる。そうすると、再び自動で、トレーと共に印刷用紙が上から撮られ、さらに、その画像から各区画の識別コードが読み取られ、その読取結果に基づいて薬品類の有無が判別される。このように、画像処理を行うに際して、多岐に亘る薬品類の画像を認識する直接的な手法を用いるのでなく、区画室内で薬品類の有無に応じて見え隠れする既知の識別コードを読み取る間接的な手法を採用したことにより、区画単位で薬品類の使用の有無が的確に判別される。
【0008】
このような薬品管理システムにおいて、トレーに挿抜される仕切は、等ピッチや不等ピッチの格子状部材やその一部を切り欠いたものからなり、空トレーに挿着されるとトレーの内部空間を仕切って多数の区画室に分けるようになっている。この仕切でも、各部の縦断面形状は、単純な縦長の長方形である。また、この薬品管理システムで、撮像にて読み取られる薬品類の識別コードが付されるのは、上述したような仕切でなく、それを挿着するトレーでもなく、トレーの内底に敷かれて仕切の下になる印刷用紙である。なお、その印刷用紙には、薬品類の識別コードの他、セット名や薬品名などの関連データが印刷されることもある(例えば特許文献5の実施例1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−68358号公報
【特許文献2】特開2006−68359号公報
【特許文献3】特開2006−68364号公報
【特許文献4】特開2009−125320号公報
【特許文献5】特願2009−171015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の装置やシステムでは、医療現場で使用される薬品類の使用状況を迅速かつ的確に管理するために薬品類の有無を検出するようになっているが、個別検出方式の場合、直接検出であれ、間接検出であれ(例えば特許文献1〜4参照)、広範な薬品類を取り扱うことができるが、感応部・検出部(センサ)の個数が多いので、製造や保守の負担が大きい。これに対し、撮像方式の場合、感応部・検出部(センサ)が単一か少数個で済むので、製造も保守も遣りやすい。特に、センサの少ない撮像方式を踏襲したうえで区画単位での確実な検出を行える画像が得られるように改良した薬品管理システムは(例えば特許文献5参照)、両者の長所を兼備した検出方式のものとなっている。
【0011】
もっとも、トレーを仕切って区画分けするときの自由度に関しては、そもそも仕切を必要としない薬品セット装置や(例えば特許文献4参照),仕切の挿着をそれぞれの凹みについて自由に選択できる医材収納管理装置(例えば特許文献1〜3参照)といった個別検出方式のものに比べて、区画室内で薬品類の有無に応じて見え隠れする既知の識別コードを一括撮像して読み取る薬品管理システム(例えば特許文献5参照)は、仕切の選択が全区画確立済み現物の準備に加えて全区画のデータ登録まで済んだ完成版の仕切に限定されるため、仕切の作成に要する材料や工数がトレー等に比べて嵩みがちなうえ、仕切が準備できた場合であっても、システム管理やデータ更新の権限を持った者のいない現場等では、トレーの内部空間を仕切る区画の変更や追加登録が、規制されるので、手軽ではない。
【0012】
とは言え、そのような撮像方式の薬品管理システムについてもトレー内部空間の区画分けの自由度を向上させるのは有益かつ重要である。そして、その自由度を個別検出方式並に引き上げるには、例えば、上述した薬品セット装置のように仕切部材挿着用凹みをトレーの内底に多数形成しておき、そこに細切れの仕切を付け替えられるようにすれば良いと思われる。そして、各凹みへの仕切挿着の有無を検出して区画を自動認識すれば良い。
しかしながら、撮像方式の薬品管理システムでは、仕切部材挿着用孔が平面視で縦横の二次元配置(マトリクス状)で多数設けられるので、凹み一次元配置の薬品セット装置のように仕切検出部材を凹み毎に設けて仕切を個別に検出するのは実用性に欠ける。
【0013】
また、撮像方式の薬品管理システムでは、画像認識ならハードウェアの改造を回避できる利点があるので、画像認識にて仕切の有無を検出することも考えられるが、トレー内部一括撮像方式の場合、中央と縁部とで仕切の画像が異なる等のことから、仕切検出結果の信頼性を高めるのが難しいので、併用ならまだしも、画像認識だけでは解決できない。
さらに、上述した撮像方式の薬品管理システムでは、薬品類の識別コードを印刷した印刷用紙がトレーと仕切との間に置かれるが、そのままでは仕切をトレーに挿着させるときに印刷用紙が邪魔になるので、識別コードの各区画への付け方も変えることとなる。
そこで、センサが少なくて製造も保守も遣りやすい撮像方式でも区画単位での確実な検出を行える画像が得られるうえ区画分けの自由度まで高い薬品管理システムを実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の薬品管理システムは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、薬品類を収容するためのトレーと、前記トレーの内底に装着されて前記トレーの内部空間を仕切って複数の区画に分割する仕切と、前記区画に収容すべき薬品類の機械読取用識別コードを前記区画の内底に保持するコード保持手段と、前記トレーを上から撮る撮像手段と、その画像から前記機械読取用識別コードを読み取って前記薬品類の使用を検知する検知手段とを備えた薬品管理システムにおいて、前記トレーの内底に直に又は前記トレーの内底に敷かれる平板状の中敷部材に多数の仕切部材挿着用孔がマトリクス状配置で穿孔形成されており、前記仕切が各々は前記仕切部材挿着用孔に対し抜取り可能に挿着されて前記区画の一辺または二辺を画する複数の仕切片に分かれており、前記区画を画する前記仕切片のうち一つは縦断面形状がL字状をしていてそのL字状のうち縦長部分が仕切機能を果たし横長部分の上面が前記コード保持手段になっていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の薬品管理システムは(解決手段2)、上記解決手段1の薬品管理システムであって、縦断面形状L字状の前記仕切片において上面が前記コード保持手段になっている前記横長部分の上面のうち前記機械読取用識別コードの保持部分と前記縦長部分との中間部分に目視読取可能な文字で薬品類の名称が付されていることを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の薬品管理システムは(解決手段3)、上記解決手段1,2の薬品管理システムであって、縦断面形状L字状の前記仕切片には、上面が前記コード保持手段になっている前記横長部分の横幅が前記仕切部材挿着用孔の穿孔ピッチの単位長より長いものが含まれており、前記仕切片の前記横長部分の上面のうち前記縦長部分から前記単位長以上離隔している部分に前記機械読取用識別コードの全部または一部であって該当部分が隠されると機械読取ができなくなる部分が付されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このような本発明の薬品管理システムにあっては(解決手段1)、トレーの内部空間を新規に区画分けするときや区画分けを変更するようなときには、マトリクス状配置(即ち平面視で縦横の二次元配置)でトレーの内底に多数存在している仕切部材挿着用孔から適宜なものを選出してそこに仕切片を挿着する作業を繰り返すことで、印刷用紙に邪魔されることなく容易に、さらには例え現場で手作業で行ったとしても容易に、トレーの内部空間を収容予定の各薬品類に対応した所望の複数区画に分割することができる。しかも、仕切片の挿着時に、各区画について、該当する区画室に収容すべき薬品類の機械読取用識別コードを付された仕切片を一つずつ採択することで、容易かつ的確に、機械読取用識別コードを各区画室の内底に付けておくことができる。また、このようにして各区画室に付された機械読取用識別コードは、トレーと仕切との間に印刷用紙を置く既述の従来システムのそれと同様に一括撮像可能なものとなっている。
【0018】
そして、使用時には、既述した従来の薬品管理システムと同様に、区分け済みトレーの各区画室に薬品類をセットし、そのトレーを手術や治療などの医療行為に供し、戻ってきたトレーを撮像装置の下に置いてシステムに委ねる。そうすると、後は自動で、トレーが上から撮られ、さらに、その画像から各区画の機械読取用識別コードが読み取られ、その読取結果に基づいて薬品類の使用が検知される。この場合も、既述の従来システムと同様、区画室内で薬品類の有無に応じて見え隠れする既知の識別コードを読み取る間接的な手法を採用したことにより、区画単位で薬品類の使用が的確に判別される。
したがって、この発明によれば、センサが少なくて製造も保守も遣りやすい撮像方式でも区画単位での確実な検出を行える画像が得られるうえ区画分けの自由度まで高い薬品管理システムを実現することができる。
【0019】
また、本発明の薬品管理システムにあっては(解決手段2)、機械読取用識別コードだけでなく薬品類の名称も目視読取可能な文字で付したことにより、区画分けが手作業でも容易かつ的確に行えることとなる。しかも、識別コードと名称とを付するに際して仕切機能担当の縦長部分に対して名称を近づける一方で識別コードを遠ざけたことにより、区画室内で薬品類が偏った場合でも、判定手段の判別に影響しない名称は露出しやすいが、露出すると判定手段の判別に不所望な影響を及ぼしかねない識別コードは露出し難いので、一括撮像に基づく検出の信頼性が高まる。
【0020】
さらに、本発明の薬品管理システムにあっては(解決手段3)、区画室内で薬品類が偏ってできる間隙が通常は穿孔ピッチの単位長より小さいところ、区画室の内底に付された機械読取用識別コードが仕切機能発揮部分から穿孔ピッチの単位長より遠く離れたところに位置するようにしたことにより、穿孔ピッチ単位長の3倍以上の幅を持つ区画室については確実に、穿孔ピッチ単位長の2倍の幅を持つ区画室についても高い確率で、機械読取用識別コードが収容薬品類によって隠されるので、一括撮像に基づく検出の信頼性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1について、薬品管理システムの構造等を示し、(a)がトレーと仕切片との展開斜視図、(b)が仕切済みトレーの斜視図、(c)が収容済みトレーの斜視図、(d)がカートの斜視図、(e)が使用済みトレーの検査ユニットの斜視図、(f)が検知装置のブロック図である。
【図2】(a)〜(d)、何れも、一辺を画する仕切片の斜視図である。
【図3】(a)〜(d)、何れも、二辺を画する仕切片の斜視図である。
【図4】中敷部材の平面図である。
【図5】中敷部材に仕切片を装着したところの平面図である。
【図6】更に薬品類を収容したところの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
このような本発明の薬品管理システムについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜6に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)を総て具現化したものである。
【実施例1】
【0023】
本発明の薬品管理システムの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)がトレー10と中敷部材11と仕切片20,28との展開斜視図、(b)が仕切済みトレー10と収容予定の薬品類8との斜視図、(c)が薬品類8を収容した収容済みトレー10の斜視図である。
【0024】
また、図1(e)は、使用済みトレー10とそこから取り出された薬品類8を検知する検査ユニット30+40との斜視図であり、図1(f)は検知装置40のブロック図であり、図2(a)〜(d)は何れも一辺を画する仕切片20の斜視図であり、図3(a)〜(d)は何れも二辺を画する仕切片20の斜視図であり、図4は中敷部材11の平面図であり、図5はそれに仕切片20,28を装着して区画分けしたところの平面図であり、図6は、それらの区画に薬品類8を収容したところの平面図である。
【0025】
この薬品管理システムは(図1参照)、薬品類8を区分収容して手動や自動で運搬するためのトレー10と、トレー10の内底に敷かれてピッタリ収まる平板状の中敷部材11と、縦断面形状L字状の仕切片20と、縦断面形状I字状の仕切片28と、トレー10を上から撮る撮像手段としての撮像装置30と、その画像から機械読取用識別コード24を読み取って薬品類8の使用を検知する検知手段としての検知装置40とを備えている。
そのうち、トレー10と中敷部材11と仕切片20,28(図1(a)参照)は適宜に組み合わせて一体的な仕切済みトレー10(図1(b),図5参照)にして使用されるものであり、撮像装置30と検知装置40は作業用机の上に取り付けられて一体的に纏まった検査ユニット30+40になっている(図1(e)参照)。
【0026】
空のトレー10は(図1(a)参照)、浅い角皿状の箱体を図示したが、薬品類8を並べて収容し手に持って運んだり机上に置いたり収納区画に出し入れできれば他の盆状容器であっても良い。
中敷部材11は(図1(a),図4参照)、多数の仕切部材挿着用孔12がマトリクス状配置で穿孔形成されている。仕切部材挿着用孔12のマトリクス状配置は平面視で縦横の二次元配置であり、その穿孔ピッチは縦と横とで異なっていても良いが、両ピッチが等しい場合には同じ仕様の仕切片20,28を縦向きにも横向きにも使用できるので、この実施例では縦と横の穿孔ピッチ単位長Pが等しくなっている。
【0027】
仕切片20と仕切片28は(図1(a)〜(c),図5参照)、何れもトレー10の内底に装着されてトレー10の内部空間を仕切って複数の区画に分割する仕切であるが、単独でトレー10の内底の全域をカバーするほど大きなものではなく、複数・多数の仕切片20,28の分担部分を合わせることによりトレー10の内底で必要な範囲をカバーするものであり、個々の仕切片20,28は、トレー10の内底の中敷部材11の仕切部材挿着用孔12に対して挿抜部22を抜取り可能に挿着されることによりトレー10の内底に装着されるようになっており、装着されて該当する区画の一辺を画するか(図2参照)、あるいは二辺を画するものである(図3参照)。
【0028】
仕切片20は(図1,図2,図3,図5,図6参照、特に図2(a),(b)を参照)、仕切機能を担う仕切本来の要部である板状の縦長部分21と、その下端部に下向きで突設された複数本の挿抜部22と、縦長部分21の下端部から横方向に拡張された板状の横長部分23とを具えたものである。
そのうち、縦長部分21と横長部分23は、一体化していて、いわゆるアングル材のような縦断面形状L字状のものとなっている。ここで、縦断面形状L字状は、水平に置いたトレー10の内底に仕切片20が装着されている状態で、縦長部分21と横長部分23を鉛直面で切ったとして、その断面を正面から見たときの形状を意味する。
【0029】
また、挿抜部22が、細い丸棒状であって、下向きに突き出ているので、挿抜部22を仕切部材挿着用孔12に差し込むことで、仕切片20が中敷部材11に対して抜取り可能に挿着されるものとなっている。
さらに、横長部分23の上面には、その縦長部分21の画するトレー10の区画のうち横長部分23を内底に収めた又は収めることになる区画に収容すべき薬品類8に係る機械読取用識別コード24と目視読取用薬品名25とが直接印刷あるいは印刷シール貼付などで付されており、このような横長部分23は機械読取用識別コード24を区画の内底に保持するコード保持手段になっている。
【0030】
機械読取用識別コード24は、薬品類8を特定するための符号であり、通常は他の調剤機等でも用いられている共通の薬品コードが使用される。具体的な印刷表示は、1Dや1.5Dのカラービットコードで行われ、カラープリンタを用いて例えば直線状や渦巻状の表示が使用できるようになっている。
目視読取用薬品名25は、薬品類8を特定するための名称であり、明朝体やゴシック体といった目視読取可能な文字で印刷表示されている。
【0031】
後者の目視読取用薬品名25は、横長部分23の上面のうち縦長部分21に近い部分に付されているのに対し、前者の機械読取用識別コード24は、横長部分23の上面のうち縦長部分21から遠い部分に付されている。特に、横長部分23の横幅Wが仕切部材挿着用孔12の穿孔ピッチ単位長Pより長い仕切片20については(図2(c),(d),図3(a),(c)参照)、横長部分23の上面のうち縦長部分21から穿孔ピッチ単位長P以上離隔している部分に機械読取用識別コード24の全部または一部であって該当部分が隠されると機械読取ができなくなる部分が付されている。
【0032】
機械読取用識別コード24が直線状の場合は(図2(c),図3(a)参照)、一部であっても全長に亘る部分が露出すると機械読取が可能なので、機械読取用識別コード24の全部を縦長部分21から穿孔ピッチ単位長P以上離隔させるのが無難であるが、機械読取用識別コード24が直線状でなく例えば渦巻状の場合は(図2(d),図3(c)参照)、渦巻状の連なりの何処かが切れる程度に隠されれば機械読取ができなくなるので、その程度かそれ以上の部分を縦長部分21から穿孔ピッチ単位長P以上離隔させておけば足りる。そうすれば、穿孔ピッチ単位長Pの3倍以上の幅を持つ区画室については、薬品類8を収容したとき遊びがあっても穿孔ピッチ単位長P以下であれば確実に機械読取用識別コード24が薬品類8によって隠されて読取不能になるので、正確なものとなる。
【0033】
ただし、穿孔ピッチ単位長Pの2倍の幅を持つ区画室については、機械読取用識別コード24を縦長部分21から穿孔ピッチ単位長P以上離隔させる配置を行っていても、薬品類8が縦長部分21に寄った状態では機械読取用識別コード24が不所望に読み取られてしまう可能性がある。また、横長部分23の横幅Wが仕切部材挿着用孔12の穿孔ピッチ単位長P以下の場合は(図3(b),(d)参照)、そのような機械読取用識別コード24の配置がそもそも無理である。これらの場合でも、機械読取用識別コード24の不所望な読取の発生を抑制するには、図示は割愛したが、例えば、横長部分23の厚みを一定でなく、縦長部分21の近くは厚く、縦長部分21から離れるにつれて薄くして、横長部分23の上面を傾斜させておけば、薬品類8が機械読取用識別コード24の上へ自然に来るようになる。
【0034】
仕切片28は(図1(a),図5,図6参照)、仕切機能を担う仕切本来の要部であって縦断面形状I字状の板状体と、その下端部に突設された複数本の挿抜部とを具えたものであり、上述した仕切片20と同様、挿抜部を仕切部材挿着用孔12に差し込むことで、中敷部材11に対して抜取り可能に挿着されるようになっている。ここでも、縦断面形状I字状は、水平なトレー10の内底に仕切片28が装着されている状態で、要部の板状体を鉛直面で切ったとして、その断面を正面から見たときの形状を意味する。
【0035】
撮像装置30は(図1(e),(f)参照)、例えばCCDカメラが採用され、撮像方向を下にして机上面の上方に設置されており、机上の撮影範囲にトレー10が置かれると作動してそのトレー10を上から撮るものであるが、トレー10の内底に装着された仕切片20の横長部分23の上面に付された機械読取用識別コード24がカラーで印刷されているので、その画像も的確に得られるよう、カラー撮影の可能なものが採用されている。
【0036】
検知装置40は(図1(e),(f)参照)、いわゆるノートパソコン等のプログラマブルな情報処理装置からなり、撮像装置30から画像データを入力して出力装置46に薬品類8の使用状況の集計結果等を出力するものであり、そのために、画像データ41とコードデータ42のデータ領域がメモリに割り付けられるとともに、読取プログラム43と判定プログラム44と集計プログラム45がインストールされている。
【0037】
画像データ41は、機械読取用識別コード24の付された仕切片20を内底に装着されたトレー10の薬品類セット面を撮像装置30で撮ったカラー画像であるが、この装置では特に使用済みトレー10を対象として撮った画像が使用されるようになっている。
コードデータ42は、機械読取用識別コード24を読み取るのに必要なパターン情報であり、1Dや1.5Dのカラービットコードを規定するデータが予め登録されている。
【0038】
読取プログラム43は、画像データ41が得られる度に、その画像データに対しコード切出やコード認識を試行して、その画像からコードデータ42を利用して機械読取用識別コード24を読み取るようになっている(例えば特許文献5参照)。
判定プログラム44は、読取プログラム43の識別コード読取結果に基づいて薬品類8の使用を検知するが、機械読取用識別コード24を読み取れたときには使用済みトレー10から該当の薬品類8が取り出されて使用されたと判定するようになっている。
【0039】
集計プログラム45は、判定プログラム44の判定結果から薬品類使用数量を剤種毎に計数するとともに、トレー単位や日時単位など適宜な基準で集計し、その計数結果や集計結果を出力装置46に出力するようになっている。
出力装置46は、薬品類の使用結果を視認可能な状態やデータ管理等の可能な状態で出力できるものであれば足り、検知装置40に付属のディスプレイでも良く、プリンタなどの印刷装置でも良く、電子データを在庫管理システムやピッキングシステム等へ送信する通信ユニットでも良い。
【0040】
この実施例1の薬品管理システムについて、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1(a)〜(c)はトレー10の内部空間を仕切片20,28で仕切ってそこに薬品類8を収容し終えるまでのトレー10の斜視図であり、図4は空のトレー10の内底の平面図、図5は仕切済みトレー10の内底の平面図、図6は収容済みトレー10の内底の平面図である。また、図1(d)は、収容済みトレー10や使用済みトレー10をカート9で搬送しているところの斜視図であり、図1(e)は、使用済みトレー10から取り出された薬品類8を検査ユニット30+40で調べているところの斜視図である。
【0041】
この薬品管理システムは、基本的に院内薬局やナースセンター等の調剤場所に置かれ、トレー10に薬品類8を収容する作業や,トレー10から取り出された薬品類8を検査ユニット30+40で検知する処理も,調剤場所で行われるが、トレー10から薬品類8を取り出して使用するのは、通常、手術室など別の場所である。
その詳細を作業手順に従い、空のトレー10の内部空間の区画分け、仕切済みトレー10への薬品類8の収容、収容済みトレー10の搬出および使用済みトレー10の搬入、使用済み薬品類8の検知の順で、以下に述べる。
【0042】
先ず(図1(a)参照)、空のトレー10の内部空間を区画分けするために、空のトレー10の内底に中敷部材11を敷き(図4参照)、それに仕切片20や仕切片28を装着する作業を適宜繰り返して仕切済みトレー10を作り上げる(図1(b),図5参照)。そうすると、仕切済みトレー10の内部空間は、仕切片20の縦長部分21や仕切片28の板状体で仕切られて、多数の区画室に分割される。各区画室は、平面視の形が矩形に近く、サイズの同じものを幾つか作るのも、サイズの異なるものを作るのも、配置の決定も、配置の変更も、仕切片20や仕切片28の着脱で簡単かつ迅速に行えるが、区画室の内底に含まれる機械読取用識別コード24と目視読取用薬品名25の組が各区画室に一組ずつになるよう、仕切片20の選択と向きに注意しながら、手術セット薬品といった収容予定の薬品類8に一対一で対応する区画室を作っておく。
【0043】
次に(図1(b)参照)、薬剤師や看護士などの調剤作業者が仕切済みトレー10の各区画室に一つずつ薬品類8を収容するが、調剤作業者は区画室内の機械読取用識別コード24及び目視読取用薬品名25の何れか一方または双方と薬品類8の識別コード及び薬品名の何れか一方または双方とが一致しているのを目視等で確認しながら収納すれば良いため、収納作業も容易かつ迅速に行うことができるので、手術セット薬品などの必要な薬品類8を区分収容した収容済みトレー10が素早く完成する(図1(c),図6参照)。
【0044】
そして(図1(d)参照)、完成した収容済みトレー10は一旦はカート9に積み込んでおき、次の仕切済みトレー10の作成とそれに対する薬品類8の収容とを繰り返して、次々に収容済みトレー10を完成させ、それらも次々にカート9に積み込む。それから、使用場所が同じか近い等のため纏めて一緒に搬送すると良い収容済みトレー10が総て揃うかタイムアウトしたようなときには、カート9を手術室などの使用場所へ移動させて薬品類8を使用させる。そして、収容していた多数の薬品類8のうち総てが又は一部が使用場所で取り出されて不使用の薬品類8だけが残っている使用済みトレー10は、搬出時のカート9か他のカート9に積み込んで搬送し、調剤場所に搬入する。
【0045】
それから(図1(e)参照)、調剤場所に戻って来た使用済みトレー10は、手術等で使用された薬品類8が取り出されて無くなっているので、直ちにでも後ほどでも良いが、薬品類使用状況確認のため人手で検査ユニット30+40の机上の撮影範囲に置く。
すると(図1(f)参照)、撮像装置30によって使用済みトレー10が上から撮られ、その画像データ41が検知装置40に取り込まれる。画像データ41には、仕切片20,28による区画割り状態と、各区画での薬品類収容状態とが、写っており、薬品類8の取り出された区画では機械読取用識別コード24が現われるが、薬品類8の残っている区画では機械読取用識別コード24が隠されている。
【0046】
画像データ41が入力されると、読取プログラム43によってコードデータ42に基づく機械読取用識別コード24の読取が行われ、判定プログラム44によって読取プログラム43の識別コード読取結果に基づいて薬品類8の使用が検知される。具体的には、画像データ41から識別候補領域が切り出されて、各切出領域で識別コード読取が試行され、機械読取用識別コード24が読み取れたときには、該当する薬品類8が使用されたと判定される。それから、集計プログラム45によって、判定プログラム44の判定結果に基づいて薬品類使用数量が剤種やトレー単位などで集計され、その集計結果が出力装置46から出力される。こうして、使用済みトレー10を人手で撮影範囲に置けば、後は自動で、使用済みトレー10が撮られ、そのトレー10から取り出して使用された薬品類8がトレー毎に把握されて、在庫や発注の管理にも利用される。使用状況の確認が済んだトレー10は、机上から他の保管棚などに移されて、再使用や変更に備えることとなる。
【0047】
[その他]
なお、上記実施例では、仕切部材挿着用孔12が中敷部材11に形成されていたが、仕切部材挿着用孔12はトレー10の内底に直に穿孔形成しても良く、そうすることにより中敷部材11を省くことができる。
また、上記実施例では、使用済みトレー10を一つずつ撮影していたが、トレー10が小さくて撮像装置30の撮影範囲に複数並べて置ける場合は、複数のトレー10を纏めて一度に撮影するようにしても良い。
さらに、上記実施例では、検査ユニット30+40が机上に纏めて装備されていたが、検査ユニット30+40は、分散システムで具体化しても良く、既述したトレー内部一括撮像方式の薬品管理システム(特許文献5参照)のようにトレー搬送用カートなどに搭載しても良く、その既述システムと合体させても良い。
【0048】
また、上記実施例で、検知装置40は、画像データ41から機械読取用識別コード24を読み取れたときには直ちに該当する薬品類8の使用があったものと判定するようになっていたが、既述したトレー内部一括撮像方式の薬品管理システムの判定プログラムのように(特許文献5参照)、セットデータを参照した一致確認まで行うようにしても良い。例えば、登録モードでは判定プログラム44の結果をセットデータに登録する登録プログラムを検知装置40に追加インストールしておいて、仕切済みトレー10に薬品類8を収容する前に仕切済みトレー10を検査ユニット30+40で処理して機械読取用識別コード24の配置状態をセットデータに登録させることや、収容済みトレー10から薬品類8を取り出して使用する前に収容済みトレー10を検査ユニット30+40で処理して機械読取用識別コード24の配置状態をセットデータに登録させることで、使用済みトレー10の検査結果をセットデータに照らし合わせてチェックすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の薬品管理システムは、上述したような院内薬局向けシステムに限らず、手術室向けや,ICU向け,病棟向けなど種々の医療現場で使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
8…薬品類、9…カート、
10…トレー、11…中敷部材、12…仕切部材挿着用孔、
20…仕切片(縦断面形状L字状)、
21…縦長部分、22…挿抜部、
23…横長部分、24…機械読取用識別コード、
25…薬品名、28…仕切片(縦断面形状I字状)、
30…撮像装置(検査ユニット)、40…検知装置(検査ユニット)、
41…画像データ、42…コードデータ、43…読取プログラム、
44…判定プログラム、45…集計プログラム、46…出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品類を収容するためのトレーと、前記トレーの内底に装着されて前記トレーの内部空間を仕切って複数の区画に分割する仕切と、前記区画に収容すべき薬品類の機械読取用識別コードを前記区画の内底に保持するコード保持手段と、前記トレーを上から撮る撮像手段と、その画像から前記機械読取用識別コードを読み取って前記薬品類の使用を検知する検知手段とを備えた薬品管理システムにおいて、前記トレーの内底に直に又は前記トレーの内底に敷かれる平板状の中敷部材に多数の仕切部材挿着用孔がマトリクス状配置で穿孔形成されており、前記仕切が各々は前記仕切部材挿着用孔に対し抜取り可能に挿着されて前記区画の一辺または二辺を画する複数の仕切片に分かれており、前記区画を画する前記仕切片のうち一つは縦断面形状がL字状をしていてそのL字状のうち縦長部分が仕切機能を果たし横長部分の上面が前記コード保持手段になっていることを特徴とする薬品管理システム。
【請求項2】
縦断面形状L字状の前記仕切片において上面が前記コード保持手段になっている前記横長部分の上面のうち前記機械読取用識別コードの保持部分と前記縦長部分との中間部分に目視読取可能な文字で薬品類の名称が付されていることを特徴とする請求項1記載の薬品管理システム。
【請求項3】
縦断面形状L字状の前記仕切片には、上面が前記コード保持手段になっている前記横長部分の横幅が前記仕切部材挿着用孔の穿孔ピッチの単位長より長いものが含まれており、前記仕切片の前記横長部分の上面のうち前記縦長部分から前記単位長以上離隔している部分に前記機械読取用識別コードの全部または一部であって該当部分が隠されると機械読取ができなくなる部分が付されていることを特徴とする請求項1又は2に記載された薬品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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