説明

薬液ないし洗浄水のノズルカバー内侵入防止方法

【課題】無菌充填製品の製造ラインの充填・密封を薬液で殺菌処理する際に、液化ガス充填ノズルに薬液又は洗浄水が付着するノズルの凍結を防止する。
【解決手段】無菌領域10内を搬送される容器12の開口部に低温液化ガスを吐出する吐出用ノズル16と、下方部分とを取り囲み底壁部が、吐出用ノズルから吐出される液化ガスを通過させ得る大きさの開口部を備えているノズルカバー18と一端部が連通し他端部が気体供給源と連通している気体供給用管路22と、包装容器12の無菌充填法で使用する低温液化ガス充填装置の、ノズルカバー外面部分とその周囲部分を洗浄・殺菌する方法。ノズルカバー18外面部分とその周囲部分に殺菌用薬液ないし洗浄水をスプレーして、気体供給管路22からノズルカバー18内に無菌化された乾燥状態の加圧気体を噴出させ、前記ノズルカバー18の開口部20から吹き出す動圧を0.9kPa以上とするノズルカバー内侵入防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬液のノズルカバー内侵入防止方法、特に無菌充填方法等で使用される低温液化ガス充填装置の外面側を殺菌・洗浄処理する際に使用する薬液ないし洗浄水が、液化ガス吐出用ノズルに付着するのを防止する方法に関する。

【背景技術】
【0002】
液状食品を容器に充填し密封する際に液化ガスを注入し、該液化ガスが気化して体積が膨張し容器内の空気を追い出すと共に、容器内圧を大気圧よりも高圧にして容器壁を内側から押圧して外圧による凹み等を防止する、いわゆる液化ガス充填装置が多くの食品会社で使用されている。この液化ガス充填装置は、液状食品を充填済みの薄肉(薄壁)容器に液体窒素のような低温液化ガスを容器内に充填する装置として二十年以上前から使用されている。
一方、液状食品を薄肉容器に無菌充填する場合には、衛生面及び安全面の要請から、液状食品自体はもとより、容器の内外面、容器に液状食品を充填する装置、容器に低温液化ガスを充填する装置、容器を密封する装置、充填・密封領域、これらの領域を洗浄する水、低温液化ガス等から、芽胞菌、病原菌、細菌、黴、酵母の微生物等を除去(即ち除菌)しなければならない。
【0003】
このなかで、低温液化ガスと低温液化ガス充填装置以外のものは、数十年前から商業生産されている液状食品の無菌充填方法と同様な手段によって、芽胞菌や細菌等を滅菌又は除去すれば良いが、今まで商業利用が殆どなされていなかった低温液化ガス充填装置内の滅菌又は除菌と、低温液化ガス自体の除菌、更には無菌雰囲気を形成するために、定期的に薬液等を使用して無菌領域を殺菌する際の液化ガス充填ノズル部の保護等については、具体的にどのようにすれば良いのか未知な面が多い。
【0004】
ところで、無菌充填方法で飲料や食品の容器詰を製造する場合には、同一製品(同一銘柄で容器の容量も同一)を一週間程度製造する場合と、同一製品を二日間程度製造したなら、次は別の製品を製造する場合とがあり、最近は多品種少ロットの製品製造が行われるので、後者が増えている。
一週間程度同一製品を連続生産した場合には、充填・密封領域の無菌環境を維持するために、この領域に洗浄水を散布し、その後、薬液と洗浄水を散布して、充填装置や密封装置の外面側とこれらが配置されているクリーンルーム(またはクリーンブース)内を殺菌・洗浄することが行われている。
【0005】
また、同一製品を一日間又は二日間しか製造しなかった場合でも、製造した製品がフレーバーの強い製品であった場合(例えば、リンゴジュース、アップルティー)には、その後に製造する製品(特にフレーバーの弱い製品の場合)にその香りが移る虞があり、そうなればその製品は不良品となってしまうので、前に製造した製品のフレーバーを消す意味もあって、充填・密封領域の洗浄及び殺菌・洗浄を行うことが多い。
低温液化ガス充填方法と無菌充填方法とを併用して容器詰飲料等を製造するという考え方自体は、特許文献1、特許文献2、特許文献3等で提案されている。しかしながら、これらの特許文献には、低温液化ガスの除菌方法について概念的には説明されているが、実際の容器詰飲料製造ラインを連続的又は断続的に稼働させるのに必要な条件があまり詳しく説明されてはいない。
【0006】
例えば、特許文献1には、液体窒素を無菌化フィルターを通して無菌化し、液体窒素充填装置に送り込むことが記載されているだけである。また、特許文献2には、0.2μmメッシュのセラミックス製の除菌フィルターによって低温液化ガス(液体窒素)を濾過して除菌してから液化ガス流下装置の装置本体に送給すること、除菌フィルター、液化ガス流下装置の装置本体、液化ガス流下用ノズル、及び液体窒素供給管等に、125℃の水蒸気を所定時間(例えば30分間)通すことにより、液化ガス流下用ノズル、液化ガス流下装置本体、除菌フィルター、及び液化ガス供給管等を加熱殺菌処理し、更に、それらの部分に窒素ガスを通して冷却乾燥させることが記載されている。
【0007】
しかしながら、実際の容器詰飲料等の無菌充填ラインでは、数日又は一週間毎に、無菌充填装置及び無菌領域を薬液等で殺菌処理することが行われているが、その様な殺菌時に、低温液化ガス流下装置の装置本体をどのようにするのかについての詳しい言及はなされていない。
また、特許文献3には、低温液化ガスからの微生物の除菌処理を、濾過精度0.05〜0.5μm、望ましくは0.1〜0.2μmのフィルターを使用して行い、除菌した液化ガスを貯留タンクに送給すること、除菌フィルターとしては、極低温耐性、耐熱性の観点からフッ素樹脂製のものが好適であること、液化ガスの除菌処理工程を行う前に、液化ガス貯留タンク内に140℃〜220℃の高温ガスを10〜90分間流入して前記除菌フィルター及び装置内部を殺菌処理すること等が記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3にも、容器詰飲料の無菌充填方法の製造ラインで通常行われている数日間隔毎又は一週間毎の充填・密封装置等の殺菌装置と同様な間隔で液化ガス充填装置本体外面側を薬液等で殺菌処理した際の液化ガス充填装置の充填用ノズルに対する保護手段についての記載はない。
【0009】
一方、特許文献4の段落0002には、通常の無菌充填システムでは、無菌環境内部の無菌状態を維持するために、無菌環境内部を薬液、蒸気、無菌水等で定期的に洗浄殺菌するので、液体窒素充填装置を無菌環境内に設置すると、液体窒素充填装置自体がこの様な薬剤等に対する洗浄殺菌適性を備えていなければならないが、現状においては、液体窒素充填装置に薬剤耐性を持たせることや極低温部分での氷付き対策を施すことは極めて難しいことが記載されている。また、特許文献4の特許請求の範囲には、無菌充填システムの無菌環境内に配置される液体窒素貯留タンク、貯留タンクから充填ノズルに至る液体窒素流路及び充填ノズルを該無菌環境内部の殺菌洗浄のために散布される薬剤や洗浄水から遮断する保護カバーで被覆し、少なくとも保護カバー内での空間において貯留タンクから充填ノズルに至る液体窒素流路及び充填ノズルの何れかに配置されたノズル除菌フィルターにより液体窒素を濾過することにより除菌処理を行う、除菌処理工程を経て容器内に液体窒素を充填する方法が記載されている。また、特許文献4の段落0038には、図示(図1)の例では、充填ノズル24自体は、保護カバー23下面から下方に突出している旨記載がなされており、更に、同特許文献の段落0049には、液体窒素流路25の周囲(中空部分の周囲)には充填ノズル24を加熱するためのヒータ43が設けられており、このヒーター43は、充填ノズル24を熱水や蒸気で殺菌処理する場合に、熱水や蒸気で濡れた充填ノズル24等を窒素ガスで乾燥する際のサポートの役割を果たすことによって、乾燥を早く且つ確実に行う機能と、稼働中の充填ノズル24近傍の装置部分が液体窒素で冷却されて霜が付着することを防止するための、流路近傍部保温用ヒーターとしての機能を果たすものである旨記載されている。
【0010】
更に、特許文献5の段落0002には、特許文献4とほぼ同じ内容の記載がなされており、また、特許文献5の特許請求の範囲(請求項1)には、液体窒素貯留タンクと、該液体窒素貯留タンクから充填ノズルに至る液体窒素流路と、無菌環境内部の殺菌洗浄のために散布される薬剤や洗浄水を遮蔽する材質からなる外壁とを有する充填ノズルと、液体窒素貯留タンクに液体窒素を供給する液体窒素供給源と、液体窒素貯留タンクから充填ノズルに至る液体窒素流路及び充填ノズルのいずれかに配置されたノズル除菌フィルターとを備え、液体窒素貯留タンク、該液体窒素流路、および液体窒素供給源は、無菌環境外に配置され、該充填ノズルは無菌環境内に配置されている無菌液体窒素充填装置が開示されている。
【0011】
また、特許文献5の段落0031には、充填ノズル24は耐水性、耐薬品性の材質からなる筒形の外壁24aによって囲まれており、この外壁24aによって無菌環境内部殺菌洗浄のために散布される薬剤や洗浄水から遮蔽されている旨の記載があり、更に、段落0043には、特許文献4の段落0031と同様な記載がある。
【特許文献1】特開昭57−204833号公報
【特許文献2】特開平11−43111号公報
【特許文献3】特開2000−185710号公報
【特許文献4】特開2006−199358号公報
【特許文献5】特開2007−15724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記した様に、無菌充填方法で飲料や食品の容器詰を製造する場合には、同一製品(同一銘柄で容器の容量も同一)を一週間ぐらい連続生産する場合と、同一製品を1日間又は2日間若しくは3日間程度製造したなら、次は別の製品を製造する場合とがあり、その様な生産を実施した後に、充填・密封領域を薬液と洗浄水による殺菌・洗浄処理を実施している。その際には、当然に無菌環境下にある充填装置、密封装置、液化ガス(液体窒素)充填装置等にも殺菌液や洗浄水を噴霧することが必要になる(これらの装置に噴霧しないと無菌環境が維持できない)。
【0013】
特許文献4の図面に示されている保護カバー23は、段落0038にも記載されている様に、貯留タンク20の略全体と充填ノズル24の上半分を覆っているだけであるから、下方側から液化ガス充填装置の下面側に向けて散布された薬液や洗浄水が充填ノズル24の中空部分(液体窒素が滴下又は流下する中空部分)に侵入するか、又はその周囲に触れる可能性は極めて高く、その場合には充填ノズル24内部又は充填ノズル24の出口周縁部に薬液又は洗浄水が付着する。
【0014】
充填ノズルに薬液又は洗浄水が付着している状態で、貯留タンク内に液体窒素を供給して貯留を開始すると、その冷熱(−196℃)は直ちに充填ノズルに伝導して充填ノズルの内部又は出口部分に氷(又は霜付き)が発生し、その後の充填ノズルからの液体窒素の流下又は滴下若しくは噴霧の妨げになる(容器内に所定量の液体窒素を充填できなくなる)。
従って、特許文献4に記載の液化ガス充填装置は、無菌領域を薬液により殺菌・洗浄処理を行う際には、充填ノズル内部又出口部分に薬液又は洗浄液が付着する虞が高く、無菌環境下を維持するための殺菌処理後に、貯留タンク内に液化ガス(液体窒素)を供給して貯留を始めると、直ちに充填ノズルに付着していた薬液又は洗浄液凍結する虞が高い。
【0015】
特許文献4に記載の液体窒素充填装置が、この様な事態を免れるためには、無菌環境下を維持するために充填・密封領域を薬液等による殺菌・洗浄処理した後、液化ガス供給管路内と、貯留タンク内部と、除菌フィルターと、充填ノズル内外面を蒸気等で殺菌処理して、殺菌・洗浄処理によって充填ノズルに付着した薬液又は洗浄水を除去する必要がある(少なくとも水分を除去する)。
また、特許文献5には、充填ノズル24を、無菌環境内部の殺菌・洗浄のために散布される薬剤や洗浄水を遮蔽する材質からなる外壁24aで覆う旨記載されているが、外壁24aで覆われた領域は、無菌環境下に位置し、当然に容器内容物を充填する充填領域及び密封領域と連通しており、この部分の無菌環境を維持するために無菌環境領域を薬液や洗浄水によって殺菌処理するのであるから、仮に、充填ノズルの周囲を薬液や洗浄水を全く噴霧しなければ、充填ノズルの周囲は無菌環境を維持できないことになる。
【0016】
一方、薬液によって無菌環境を維持するために、液体窒素充填装置の充填ノズル部分を含む、充填・密封領域を薬液で殺菌処理する場合には、特許文献5に記載の充填ノズルには、充填ノズルを殺菌・洗浄するための上向きのスプレーノズルから噴霧された薬液又は洗浄水が付着する可能性が高く、殺菌・洗浄後に、貯留タンクに液体窒素が供給され、貯留されれば、貯留タンクに連結されている充填ノズルは、その冷熱(−196℃)により(熱伝導により)直ちに凍結してしまう。
【0017】
特許文献5に記載されている液体窒素充填装置においても、この様な事態を免れるためには、特許文献4について述べたと同様に、無菌環境下を維持するために充填・密封領域に対し薬液等による殺菌・洗浄処理を実施した後、液化ガス供給管路内と、貯留タンク内部と、除菌フィルターと、充填ノズル内外面を蒸気等で殺菌処理して、殺菌・洗浄処理によって充填ノズルに付着した薬液又は洗浄水を除去する必要がある(少なくとも水分を除去する)。
【0018】
また、貯留タンクに液体窒素が貯留されていない場合には、その後に液体窒素を充填した際に充填ノズルが凍結することになる。しかしながら、無菌雰囲気維持のための薬液による殺菌処理を実施するたびに充填ノズルの洗浄・殺菌処理をすることは、無菌充填製造ラインの稼働率を著しく低下させるので、無菌充填製品のコストアップに繋がってしまうという問題がある。
【0019】
ところが、最近、充填・密封領域の無菌環境を確実に維持するために、同一製品を一週間又は3日間連続生産している途中に、密封・充填領域を洗浄し、更に薬液等による殺菌・洗浄することを、無菌充填製品を製造する顧客(または無菌充填製品を販売する顧客)から要望される様になった。即ち、生産を一旦中止して、無菌環境領域内及びこの領域内に設置されている、内容物充填装置、搬送装置(ターレット等)、密封装置(シーマー又はキャッパー)、液化ガス充填装置等の外面を熱水又は薬剤で洗浄し、更に薬液と洗浄水で殺菌・洗浄処理を実施する。
【0020】
同一製品の生産途中に殺菌処理を行う場合には、液化ガス貯留タンク内に液化ガスが貯留されているため、殺菌・洗浄処理のための薬液又は洗浄水が充填ノズル又はその周囲に付着すると、これら付着した薬液又は洗浄水は直ちに付着した箇所で凍結することになり、その後の液化ガス充填工程で、充填ノズルから適正量の液化ガスを容器内に充填することが不可能となる。
また、同一製品を生産している途中に、薬液等による殺菌・洗浄と液化ガス充填装置の内部の殺菌とを実施すると、これらの殺菌時間が4〜7時間程度掛かるだけでなく、加熱殺菌に必要な蒸気又は高温ガスを製造するため、加圧気体、無菌水、及び熱エネルギー等が必要となるので、無菌充填製造ラインの稼働率低下と、生産コストの大幅な上昇を招くという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、液化ガス充填装置内部(液化ガス供給管路、液化ガス除菌フィルター、貯留タンク内部、及び充填ノズル内面側)を加熱殺菌処理しない期間等に、無菌充填製品の製造ラインの充填・密封領域を薬液で殺菌処理する際に、液化ガス充填ノズルに薬液又は洗浄水が付着することに起因する充填ノズルの凍結を防止することにある。
【0022】
前記目的を達成する為に本発明にかかる薬液ないし洗浄水のノズルカバー内侵入防止方法は、
無菌領域内を搬送される容器と、
該容器の開口部に低温液化ガスを吐出する吐出用ノズルと、
該吐出用ノズルを無菌領域に配置し、該吐出用ノズルの周囲と下方部分とを取り囲み、前記下方部分を取り囲む底壁部が、該吐出用ノズルから吐出される液化ガスを通過させ得る大きさの開口部を備えているノズルカバーと、
該ノズルカバー内に一端部が連通し、他端部が気体供給源と連通している気体供給用管路と、
を備えた包装容器の無菌充填法で使用する低温液化ガス充填装置の、少なくともノズルカバー外面部分とその周囲部分を洗浄・殺菌する方法であって、
前記ノズルカバー外面部分とその周囲部分に殺菌用薬液ないし洗浄水をスプレーしている間、前記気体供給管路から前記ノズルカバー内に無菌化された乾燥状態の加圧気体を噴出させ続けると共に、その噴出させる気体が前記ノズルカバーの開口部から吹き出す際の吹き出し動圧を0.9kPa以上とすることを特徴とする。
【0023】
また、前記方法において、気体供給用管路からノズルカバー内に供給した加圧気体が、前記ノズルカバーの底壁部の開口部から吹き出す際の動圧が1.5〜16.5kPaであることが好適である。
また、前記方法において、ノズルカバーの開口部の開口面積が1〜4cmであることが好適である。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、低温液化ガス充填装置の少なくともノズルカバー外面部分とその周囲部分を殺菌・洗浄する際に、該ノズルカバー外面部分とその周囲の無菌領域に殺菌液ないし無菌洗浄水をスプレーしている間、前記気体供給管路から前記ノズルカバー内に無菌化された乾燥状態の加圧気体を噴出させ続けると共に、噴出された該気体が前記ノズルカバーの開口部から吹き出す際の吹き出し動圧を0.9kPa以上とすることによって、ノズルカバー下壁部に向かって薬液又は無菌水を噴霧するスプレーノズルから噴霧される薬液又は洗浄水の噴霧圧力に、ノズルカバーの下壁部の開口部から流下する無菌化された加圧気体の動圧が打ち勝つので、ノズルカバーの開口部から薬液又は洗浄水が侵入することはなく、その結果、ノズルカバー内に配置されている充填ノズルに薬液又は洗浄水が付着することはない。従って、殺菌・洗浄時に、貯留タンク内に液化ガスが貯留されていても充填ノズルが凍結することはないのである。
【0025】
また、本発明では、前記加圧気体が前記ノズルカバーの底壁部の開口部から吹き出す際の吹き出し動圧を0.9〜16.5kPaとすることで、殺菌・洗浄時に薬液又は洗浄水をノズルカバー底壁部に向けてスプレーノズルから噴霧する際に、一部のスプレーノズルの目詰まりにより他のスプレーノズルからの噴霧圧力が一時的に高まって通常の噴霧圧力より高くなったとしても、その様な異常圧力にも打ち勝つだけの圧力で開口部を流下しているので、噴霧された薬液又は洗浄液がノズルカバー内に侵入するのを防止できる。
【0026】
本発明では、無菌充填ラインの充填・密封領域の無菌雰囲気を維持するための薬液や洗浄液による殺菌・洗浄時に、液化ガス充填装置(特に、貯留タンク内部と配管内面と充填ノズル内外面)を加熱殺菌しないでも(加熱殺菌を省略しても)、液化ガス充填ノズルに薬液又は洗浄水が付着することに起因する充填ノズルの凍結という問題を発生させない様にしたので、従来装置の様に、無菌領域の殺菌処理時に液化ガス充填装置の内部の加熱殺菌処理を行う場合と比較すると、無菌充填ラインの殺菌時間の短縮化(約1時間〜3時間)が実現され、無菌充填ラインの稼働率をアップさせることができ、更には、液化ガス充填装置内部(液化ガス供給管路内面側、液化ガス除菌用フィルター、貯留タンク内部、液化ガス吐出用ノズル内面側、排気管路内面側等)を高温殺菌する際の熱エネルギーの消費を削減できたので、無菌充填製品の製造コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、図面を参照して、本発明の一実施態様を説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる低温液化ガス充填装置の吐出用ノズル周域が模式的に示されている。
同図において、無菌領域10内で容器12が搬送されている。そして、同じく無菌領域10に設置されたベースプレート14には、液化ガス吐出用ノズル16が設置されている。該吐出用ノズル16の周囲には、ノズルカバー18が設けられ、該ノズルカバー18の底壁部18aには吐出用ノズル16から吐出される液化ガスを通過させ得る大きさの開口部20が、また側壁部18bには気体供給用管路22が設けられている。
【0028】
そして、通常の液化ガス充填作業時にはノズル16下部に順次搬送されてくる容器12に、ノズル16より開口部20を通して液化ガスが吐出され、容器12に充填される。
一方、低温液化ガス充填装置の洗浄殺菌時には、ノズルカバー18近傍に配置されたスプレーノズル24a,24b,24cから殺菌用薬液や洗浄水が噴霧され、低温液化ガス充填装置の下方部分が殺菌処理される。この際には、薬液等が満遍なくノズルカバー18外壁に噴霧される必要があるが、一方で薬液等が開口20より侵入し、吐出用ノズル16に付着すると、吐出用ノズルの内部ないし出口部分に氷が発生し、その後の液化ガスの吐出に支障を生じる。
【0029】
そこで、本実施形態においては、薬液等の噴霧期間中、気体供給用管路22より乾燥した無菌加圧空気をノズルカバー18内に供給し、該無菌加圧空気を開口部20より噴出させている。
この結果、薬液等が開口部20を経由してノズルカバー18内に侵入することを防止することが可能となる。
なお、この際の加圧空気の開口部20からの吹き出し動圧について、後述するように本発明者等が詳細に検討した結果、0.9kPa以上、特に好ましくは1.5〜16.5kPaであることが判明した。
【0030】
図2に、本実施形態に用いられた低温液化ガス充填装置とその配管の連結状態を示す。なお、前記図1と対応する部分には同一符号を付している。
同図において、低温液化ガス充填装置50は、低温液化ガスを一旦貯留するためのステンレススチール製の貯留タンク52と、該貯留タンク52の底部側に設けた液化ガスを流下又は滴下若しくは噴霧するための液化ガス吐出用ノズル16と、該液化ガス吐出用ノズル16の外周と底部側を、それぞれ2〜3mmの間隔を隔てた状態で取り囲んでいるステンレススチール製のノズルカバー18を備える。ノズルカバー18は、底壁部18aと側壁部18bを備えており、底壁部18aの中央部には、液化ガス吐出用ノズル16から流下又は滴下する液化ガスが通過する部分よりも広い面積(好ましくは1〜4cm)の開口部20を有している。尚、貯留タンク52は断熱のために二重壁構造になっており、内壁と外壁との間隙部を真空状態にして断熱性を高めるために、末端が真空ポンプ(図示せず)に連結している管路54およびその開閉弁56を備えている。
【0031】
また、低温液化ガスの元タンク(図示せず)からは、液体窒素などの低温液化ガスが、断熱性を高めるための二重壁構造を有している(図示せず)ステンレススチール製の液化ガス供給管路58を介して送出されているが、液化ガス供給管路58内を通過する際にも多少気化するので、元タンクから液化ガス充填装置の本体部分である貯留タンク52との間に、気化ガスと液化ガスとを分離して気化ガスを外に排出するために液化ガスの分離器60を設けている。
【0032】
この分離器60は二重壁構造を有し、その壁間は真空になっていて、断熱効果の高い真空断熱層を構成し、また、分離器60内に貯留されている液化ガスの液面を一定の高さ範囲内に維持するために、分離器60のヘッドスペースの圧力と液化ガスの下部の圧力との差圧を検出する差圧・圧力指示調節計62と、その差圧・圧力計指示調節計62の指示により元タンクからの液化ガス送給量を調整する液面制御弁64と、分離器60のヘッドスペースの圧力を一定範囲内(例えば0.15〜0.25メガパスカル(MPa))に維持するための圧力制御弁66とが分離器60に設けられている。
【0033】
尚、図示しない元タンクと液面制御弁64との間の液化ガス供給管路58には図示しない開閉弁が設けられており、また、分離器60と圧力制御弁66との間には、分離器60内の圧力が異常に高くなるのを防ぐために安全弁68が設けられている。
分離器60と貯留タンク52は、液化ガス用プレフィルター70、合成樹脂製除菌フィルター72および焼結金属製除菌フィルター74を経由して液化ガス供給管路76により連結されている。すなわち、図示しない元タンクから送り出された液化ガスが、液化ガス分離器60に一旦貯留されて気化ガスと分離され、且つ気化ガスを液化ガス分離器60から外へ排出した後、液化ガス供給管路76内を経由し、更に液化ガス用プレフィルター70を通過することで、金属粉等を濾過し除去する。そして、プレフィルター70では取り除くことができなかった微細な微生物や微粒子を合成樹脂製除菌フィルター72及び焼結金属製除菌フィルター74により該液化ガスから濾過して取り除く。
【0034】
合成樹脂製除菌フィルター72は、プレフィルター70と除菌フィルター74との間の液化ガス供給管路76に設けられている疎水性を有する合成樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)製の除菌フィルターであり、0.45μm以上の微粒子(微生物)、好ましくは0.1μm以上の微粒子(微生物)を除去できることが好ましい。
また、焼結金属製除菌フィルター74は、0.45μm以上の微粒子(微生物)、好ましくは0.1μm以上の微粒子(微生物)を除去できるフィルターであることが好ましい。
合成樹脂製除菌フィルター72と焼結金属製除菌フィルター74との間には開閉弁78が設けられている。また、液化ガス供給管路76a,76bはステンレススチール製であり、断熱性を考慮して二重壁構造として壁間は真空になっている。
【0035】
また、貯留タンク52と除菌フィルター74との間を連結しているステンレススチール製の液化ガス供給管路76cは、その外側から断熱材を巻き付けた断熱構造になっている。そして、この液化ガス供給管路76cの途中には、ステンレススチール製のガス供給第二管路80が連結されており、このガス供給第二管路80は、一方向にのみ流体の移動を許容する一方向弁(逆止弁)82と、この管路80を開閉する開閉弁84を備えている。
【0036】
更に、この液化ガス供給管路76cは貯留タンク52内まで延びているが、貯留タンク52の手前側に、この管路76cを開閉する開閉弁86を備えており、貯留タンク52内に延びている開口端には、緩衝箱88を設けている。該緩衝箱88は、液化ガス供給時にこの管路76cから高圧の気化ガスが供給されて貯留タンク52内の圧力を急激に上昇させたり、供給された液化ガスが貯留タンク52内の液化ガスの液面に激しい落下衝撃を与えることにより、吐出用ノズル16からの液化ガスの吐出量に大きな変動を生じさせることを防止するために、貯留タンク52内の圧力上昇と貯留タンク52内の液化ガス液面への落下衝撃を緩和させる構成(供給された液化ガスを一旦貯留してから自然流下させる構成及び液化ガスと一緒に供給された気化ガスを貯留タンク52内のヘッドスペースには排出せずに、直接に貯留タンク52外の排気管路に排気させる構成)を備えている。
【0037】
この様な構成は、例えば、実公昭62−33198号公報、実公昭63−563号公報、特公平1−59169号公報に記載されて周知であるので、詳細な説明は省略する。
また排気管路90は、液化ガス供給用管路76を通して貯留タンク52内に供給された気化ガスや貯留タンク52内で低温液化ガスの気化によって発生したガスを排出させるためのステンレススチール製管路であり、一端が前記緩衝箱88内と連通しており、他端が大気開放となっていて、途中に排気管路90を開閉するための開閉弁92が設けられており、また、この排気管路90と開閉弁92との間のバイパス管路94にも開閉弁96が設けられており、このバイパス管路94の先端部は排気管路90内に開放している。
尚、大気開放となっている排気管路90の開口端は、この部分から、液化ガス充填装置が配置されている領域を薬剤によって殺菌処理したり、洗浄処理したりする際に、薬剤や洗浄水等が排気管路90内に侵入するのを防ぐために、下方を向いている。
【0038】
また前述した一方向弁82は、ガス供給用第二管路80の液化ガス供給管路76cとの連結部近傍に設けてあり、後述する液化ガス供給管路76内と除菌フィルター74を高温ガスにより加熱殺菌する時に、液化ガス供給管路76cに高温ガスを供給する。
更に排気管路98は、貯留タンク52内で液化ガスから発生した気化ガスを、排気管路90を通じて外へ排出するステンレススチール製の管路であり、貯留タンク52と排気管路90とを連結している。
また突出部100は、貯留タンク52の天井部分から外方へ突出している液化ガス吐出用ノズルの開閉駆動部分(図示しない加圧空気の力により上下動する)や、液面検知器(貯留タンク52内の液面を検知し、検知した液面が予め設定した設定値以下であれば、液化ガス供給管路に設けた開閉弁を開放状態にして、元タンク側から貯留タンク52内に液化ガスを供給し、検知した液面が設定値以上であったなら、開閉弁を閉じた状態にして液化ガスの供給を停止させて貯留タンク52内の液面を略一定範囲内に維持させる働きをする)等であって、周知技術であり、本発明の特徴部ではないので詳細な説明は省略する。
【0039】
また図示されていない気化ガス供給用の元タンク(液体窒素が充填されているタンク)は、液化ガスを気化させる気化器(図示せず)に連結されており、この気化器で液体窒素は気化されて乾燥した窒素ガスになり、その乾燥した窒素ガスは、図示しないガス管路を通って、何れも図示しない安全弁、減圧弁、圧力計が取り付けられている箇所を通り、その後、5μm以上の微粒子等を濾過する合成樹脂製のスクリーンタイプの濾過フィルター(図示せず)を通り、後記する不活性ガス供給用の管路に至る。
図2において、右端に位置する管路102からは、上記した不活性ガスが供給されており、左方向に向かって順に、開閉弁104,二つに枝分かれした管路102a,102bに、それぞれ圧力計106a,106b、減圧弁(レギュレータ)108a,108b、開閉弁110a,110bが設けられている。
【0040】
この二つの枝分かれした流路102a,102bは、貯留タンク52内、除菌フィルター74、液化ガス供給管路76b,76c内等を高温ガスで加熱殺菌する時及び液化ガス吐出ノズル16から液化ガスを吐出する時には、開閉弁110aを開放すると共に、開閉弁110bを閉じて、この枝分かれした二つのうちの管路102a内だけに高圧〔0.5メガパスカル(MPa)前後〕の不活性ガスを通過させ、一方、低温液化ガス充填装置の1日の稼働を停止した後、明日以降の稼働に備えて貯留タンク52内に外部からの気体等が侵入するのを防止するために、貯留タンク52内に除菌済みの気体(不活性ガス)を放出して微陽圧に維持する時には、開閉弁110bを開放すると共に、開閉弁110aを閉じて、管路102b内だけに低圧(0.1〜0.3MPa程度)の不活性ガスを通す。
【0041】
二つの管路102a,102bはそれぞれの開閉弁110a,110bを過ぎてから一つになり(ガス供給用管路102)、0.45μm以上(好ましくは0.1μm以上)の微粒子や微生物等を濾過して除菌できるフィルターユニット(合成樹脂製のプリーツ形状のスクリーンフィルターから形成されているLRV7レベルの除菌フィルター)112、開閉弁114をそれぞれ備えており、開閉弁114の左方向において不活性ガス供給用管路102は、4本に枝分かれして4個の気体流量計(気体流量計は管路内に流す気体の流量を調整する)116a,116b,116c,116dとにそれぞれ連通し、その内の気体流量計116aと連結されたガス供給用第一管路118aには、左方向に向かって、ガス供給用第一管路118a内を開閉する開閉弁120a、フィルターユニット112で除菌された乾燥状態(水分を含んでいない)の不活性ガス(窒素ガス)を140℃以上の温度にまで加熱するヒーター122、一方向弁(逆止弁)124が、それぞれこの順序で設けられており、このガス供給用第一管路118aは、その先端部が貯留タンク52内に開口する様にこの貯留タンク52に固着されている。
【0042】
このガス供給用第一管路118aは、貯留タンク52内部(液化ガス吐出用ノズルの内面側を含む)、排気管路90,98内面を加熱殺菌するために、フィルターにより除菌処理された気体(好ましくは不活性ガス)をヒーター122により140℃以上の温度に加熱すると共に、加熱されて高温になったガスを供給するための管路である。尚、図示しないが、排気管路90,98の外面側には、高温ガスによって排気管路90,98の内面側を加熱殺菌処理する際の補助加熱のために、細管ヒーターを巻き付ける(排気管路90,98の内面側を加熱殺菌させる際にヒーターのスイッチを入れて外面側を150℃に加熱する)ことが望ましい。
【0043】
また、不活性ガス供給用管路102が気体流量計116bと連通したガス供給用第二管路80は、図の左方向に向かって、途中に開閉弁84、不活性ガスを140℃以上の温度に加熱できるヒーター126をそれぞれ備え、更に図の左方向へ向かって、一方向弁82を介して液化ガス供給管路76cと連通している。このガス供給用第二管路80は、液化ガス用の除菌フィルター74と液化ガス供給用管路76c,76b及び貯留タンク52内(液化ガス吐出用ノズル16を含む)等を高温ガスで加熱殺菌するための管路である。即ち、ガス供給用第二管路80から送られてくる除菌された気体(好ましくは液体窒素を気化させた窒素ガスの様な水分を含まない乾燥した不活性ガス)は、ヒーター126により140℃以上の高温になってから一方向弁82を通って液化ガス供給用管路76c内に入り、開閉弁86が閉じている場合には、更に、除菌フィルター74を通り、液化ガス供給用管路76b内を通ってから、開閉弁128を通り、更に排気用管路130を通って外へ排出される。尚、この高温ガスは、開閉弁86が開放状態の場合には、液化ガス供給用管路76c内を進んで貯留タンク52内(緩衝箱88内)に入ることになる。
【0044】
また、ガス供給用管路102が気体流量計116cと連通したガス供給用第三管路118cは、図の左方向に向かって、途中に開閉弁120cを備え、更に排気管路90の開閉弁92よりも下流側(開閉弁92よりも排気管路90の出口側)で、しかも排気管路90内においてこの排気管路90の下流側(出口側)に向いた状態で開口するように該排気管路90に固着されている。即ち、ガス供給用第三管路118cは、貯留タンク52内からの気化ガスを排出する排気管路90の開閉弁92よりも出口側に連結されており、その連結状態は、ガス供給用第三管路118cを通って来た不活性ガスが、排気管路90の開放端側(図の下方向)を向いて排出される様に開口端が開放端側を向いて固着されているので、このガス供給用第三管路118cから除菌された不活性ガスを流し続けると、排気管路90内に常時開閉弁92側から開放端側へ向かう無菌の不活性ガスの流れを作ることができ、開閉弁92を開放した際に、排気管路90の開放端側から外気が排気管路90内に侵入し、遂には貯留タンク52内に侵入する様な事態が発生するのを防止することができるのである。
【0045】
また、ガス供給用管路102が気体流量計116dと連通したガス供給用第四管路118dは、左方向に向かって 、このガス供給用第四管路118d内を開閉する開閉弁120dと、このガス供給用第四管路118d内を通過する不活性ガス又は後述する空気供給用管路132内を通過する除菌された乾燥状態の(水分を除去した)空気を140℃以上の温度に加熱できるヒーター134とを備え、更に、不活性ガス又は空気中の微粒子や微生物の内、0.30μm以上の微細な物を濾過除菌できる焼結金属製の除菌フィルター136を備え、吐出用ノズル16を取り囲んでいるノズルカバー18の内面側に開口する様にノズルカバー18に取り付けられている。
【0046】
このガス供給用第四管路118dは、ノズルカバー18の内面側と吐出用ノズル16の外面側を加熱殺菌する時には、濾過除菌された乾燥状態の不活性ガス又は空気を、ヒーター134により140℃以上の温度に加熱し、除菌フィルター136により再度濾過除菌した後、吐出用ノズルカバー18内面側に放出して、吐出用ノズル16の外面側とノズルカバー18内面側とを加熱殺菌処理するための殺菌用ガス通路の役目をする。
尚、このガス供給用第四管路118dは、液化ガス充填装置全体を殺菌処理した後の、液化ガス吐出用ノズル16から液化ガスを吐出(流下又は滴下若しくは噴霧)している時には、吐出用ノズル16の周囲を取り囲むノズルカバー18の内面側に、20〜40℃(または30〜50℃)の範囲の温度の乾燥した不活性ガスを弱い圧力(液化ガスが自重で下方に流下するのを乱さない程度の僅かに大気圧よりも高い圧力)で吹き込んで、吐出用ノズル16の下方を通過する容器付近から上昇する水分を含む空気が吐出用ノズルに到達するのを防止する(もし、水分を含む空気が吐出用ノズルに到達すると、その水分が吐出用ノズルの表面で凍結し、それによってノズル内に霜が形成され、それが次第に成長して吐出孔を狭くするので、単位時間当たりの液化ガスの流下量又は1回の滴下量が減少するので、容器に所定量の液化ガスを吐出できなくってしまう。)役目をする。
【0047】
更に、このこのガス供給用第四管路118dは、同一無菌充填製品の連続生産の途中に、液化ガス充填装置が配設されている領域の無菌環境を維持するために、薬剤と洗浄液とによる無菌領域及びその領域内に配設されている各装置の外面側の殺菌・洗浄時において、ヒーター134のスイッチを切って(スイッチオフ)、乾燥状態で常温の加圧無菌空気(乾燥状態で常温の無菌化された加圧不活性ガスでも良い)をノズルカバー18内に噴出させることにより、ノズルカバー18の底壁部の開口部20から、殺菌・洗浄用スプレーノズルから噴霧された薬液又は洗浄水の噴霧圧力(開口部付近に於ける薬液等の圧力)よりも高いに圧力で流下させ、ノズルカバー18の底壁部に向けたスプレーノズル24a,24b,24cから噴霧される薬液又は洗浄水(通常の殺菌・洗浄用のスプレーノズルからの噴霧圧力は0.3MPa前後である)がノズルカバー18の開口部20を通過・侵入するのを防止する供給管路としての役目を有している。この時の加圧無菌空気の噴出量は気体流量計160で調整する。
【0048】
更に、低温液化ガス充填装置の本体部はベースプレート14に取り付けてある。このベースプレート14は、上下方向に延びている架台支柱138の上端に固定されている架台プレート140に取り付けられている。
また、架台支柱ベース142は架台支柱138の下端部を固着している。この架台支柱ベース142は、低温液化ガス充填装置が設置されているベース(又は床面)144から立設された一対の支持部146a,146bに両端部を保持されている(ベース144と所定の間隔を維持している)スライドシャフト148上に取り付けられており、このスライドシャフト148上を、図2の左右方向に移動するようになっている。
【0049】
架台支柱ベース142の移動は、図示しない、スライドシャフト148,148間に設けられているエアシリンダーに無菌エアーを供給することによって動作させる。これによって架台支柱ベース142を、図2の左右方向に移動させることができ、この移動操作によって、低温液化ガスを貯留する貯留タンクが、左右に移動するので、低温液化ガス充填装置の吐出用ノズルの位置を、その吐出用ノズルから液化ガスを受け取るために、該吐出用ノズルの下方を搬送される容器の開口部の中心と一致させるための位置合わせを行うことができる。
【0050】
また、図2の右端に位置する空気供給用管路150は、図示しない圧縮空気供給源〔エアコンプレッサー、水分を除去するミストセパレーター(気液分離器)、減圧弁、圧力計、濾過フィルター等を備えている〕から送られて来た空気を供給し、図2の左方向に順に、開閉弁152、圧力計154、減圧弁(レギュレーター)156、空気中の微粒子や微生物の内、0.45μm以上(好ましくは0.1μm以上)の微細な物を濾過除菌できるフィルターユニット(合成樹脂製のプリーツ形状のスクリーンフィルターを使用して形成されている除菌フィルター)158、開閉弁159を備えている。
【0051】
この空気供給用管路150は、気体流量計160、管路132、開閉弁162を経てガス供給用第四管路118dに連結されている。
従って、空気供給用管路150から送られてきた乾燥状態の除菌された加圧空気は、ガス供給用第四管路118dを通ってヒーター134により140℃以上の温度に加熱されてから除菌フィルター136を通って再度濾過除菌された後、ノズルカバー18内に噴出されてノズルカバー18内面と液化ガス吐出用ノズル16の外面側を加熱殺菌することになる。
【0052】
また、前述した様に、このガス供給用第四管路からノズルカバー18内面側に噴出される乾燥状態の除菌された加圧空気又は不活性ガスは、液化ガス充填装置が配置されている領域に薬液や無菌水等の洗浄水をスプレーノズルにより噴霧して殺菌・洗浄処理を行う際には、ノズルカバー18内に噴出させる除菌された乾燥空気又は不活性ガス(乾燥した不活性ガス)の噴出量を多くすることにより、ノズルカバー18の開口部20から流下する際に動圧が高くなって、スプレーノズルにより噴霧される薬液や洗浄液(無菌水)がノズルカバー18内に侵入することを防止する〔即ち、下方に位置するスプレーノズルから上方へ向けて噴霧された薬液等の上方への噴霧圧力(ノズルカバー18の開口部20付近での圧力)よりもノズルカバー18の開口部から下方に吹き出す気体の動圧の方を高くする(またはスプレーノズルから噴霧された薬液又は洗浄液が、ノズルカバー18の開口部20付近における上方への流速よりも、ノズルカバー18の開口部20から流下する乾燥状態の無菌化された空気又は不活性ガスの流速の方が十分に大きくなるようにする)〕ことにより、噴霧された薬液又は洗浄水がノズルカバー18内に侵入するのを防止できることができる。
【0053】
その結果、この領域の殺菌・洗浄のために噴霧された薬液又は洗浄水がノズルカバー18内に配置されている吐出用ノズル16に付着することはない(当然に吐出用ノズル16の外面側に氷又は霜が付着することはない)。
図2の左下側に位置するスプレーノズル24a,24b,24cは、薬液や洗浄水を噴霧するためのスプレーノズルであって、低温液化ガス充填装置の下方部分を殺菌処理する ためのものであり、これらスプレーノズル24a,24b,24cから噴霧された薬液又は洗浄水は、ノズルカバー18の側壁部と底壁部とにも噴霧される。
【0054】
また、無菌領域で殺菌済みの内容物を充填される殺菌済みの容器12は、本実施形態の低温液化ガス充填装置を使用した無菌充填製品を生産する時に、液化ガスが充填される際の容器12の位置を示すために点線で描かれている。
更に、支持体164は、容器12の首部を握持して搬送するものである。
本実施態様では、液化ガス除菌用の合成樹脂製フィルター72として、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)を素材とする疎水性のメンブレンフィルター(濾過精度:0.2μm、耐圧力性能:552kPa/25℃、耐熱性能:145℃×30分(インライン蒸気滅菌150回)のもの)を使用し、また、液化ガス除菌用の燒結金属製フィルター74及び不活性ガス(又は空気)除菌用の焼結金属製フィルター136として、ステンレススチール(SUS316L)製の焼結金属フィルター(濾過性能:0.1μm、耐圧力性能:900kPa、耐熱性能:400℃、捕集率:99.9999999%(粒子)のもの)を使用した。
【0055】
また、不活性ガス又は空気を除菌するための除菌用フィルターユニット112,158で使用したフィルターは、濾過精度:LRV≧7のものを使用した。
注)LRV:Log Reduction Value(対数減少値)
除菌フィルター仕様:濾過精度:LRV≧7
:使用圧力範囲:0.1〜1MPa
:使用温度範囲:1.5〜80℃
:処理流体:圧縮空気及び窒素ガス
【0056】
実験例1
液化ガス充填装置の下部に対する薬液と洗浄水による殺菌・洗浄処理時における薬液又は洗浄水をノズルカバー18内に侵入させないために、ノズルカバー18内に供給する加圧空気又は不活性ガスの供給流量やその供給圧力等を実験によって求める。
(実験条件)
・洗浄用スプレーノズルの流量と供給圧力 :90L/min(0.3MPa)
・スプレーノズルと吐出用ノズルとの間隔 :400mm
・洗浄水侵入防止用ガス :窒素ガス
・ノズルカバーの開口部(円形)の面積 :1.5cm、2.0cm、3.0cm,4.0cm
(実験方法)
(1)液化ガス充填装置の吐出用ノズルの先端部にpH試験紙を貼り付け、吐出用ノズルの下方400mmの位置で、角度30°〜45°以内に洗浄用スプレーノズルをセットした。
(2)3種類のノズルカバーを使用し、ノズルカバー内へ吹き込む窒素ガスの流量を、気体流量計116dにより調整して、それぞれ100L/min,130L/min,140L/min,150L/min,160L/minと変化させた。
(3)スプレーノズルより水道水を、薬液や洗浄水の噴霧に通常実施されている流量及び噴霧圧の条件と同一の90L/min(噴霧圧0.3MPa)で1分間吹き付けた。
(4)水道水の噴霧と窒素ガスの吹き込みを停止した後、吐出用ノズル先端部のpH試験紙を目視確認して洗浄水の侵入の有無を確認した。
評価は、侵入無し:○ 、侵入有り:X である。
(試験結果)
【0057】
表1に示す通り、ノズルカバーの開口部の大きさに関係なく、窒素ガスの流量が140L/min未満では、ノズルカバー内に水滴の侵入が確認されたが、140L/min以上(150L/min、160L/min)では水滴の侵入は無かったので、ノズルカバー内への窒素ガスの流量を140L/min以上にすると、ノズルカバー内への薬液又は洗浄水の侵入を防止できることが判明した。尚、140L/minの流量の窒素ガスの供給圧力は、0.3MPaであり、150L/minの流量の窒素ガスの供給圧力は0.4MPaであり、160L/minの流量の窒素ガスの供給圧力は0.5MPaであった。
【0058】
表1の結果から、開口部の面積が1.5cmよりも少なくなる程、例えば、開口面積が1.0cmにすると、ノズルカバーの開口部から流下する窒素ガスの流速が高くなり、また圧力(動圧)が高くなるので、ノズルカバー18の底壁部に向けて噴霧したスプレーノズルから洗浄水等がノズルカバー18の開口部から侵入しようとするのを阻止し得ることが理解できる。
また、本実験例1の窒素ガスを加圧空気に変更した場合にも、気体としての物理的性質が似ていることから、同様な結果が得られることは明かである。
【0059】
【表1】

【0060】
実験例2
実験例1により、ノズルカバー内への窒素ガス流量が140L/min以上にする(ノズルカバー内への窒素ガスの供給圧力を0.3〜0.5MPaにする)と、通常の殺菌・洗浄用のスプレーノズルからノズルカバーの底壁部に向けて噴霧した薬液又は洗浄水がノズルカバーの開口部からノズルカバー内の吐出用ノズルまで侵入するのを防止することができることは確認できたが、この窒素ガス流量又は供給圧力が、ノズルカバーの開口部からどのくらいの圧力で流下するのかを、実験例1のノズルカバー(開口部の大きさを同じ様に変更した)と窒素ガス供給圧力(供給圧力を変化させた)とを使用して、ノズルカバーの開口部での動圧を測定した。
(測定条件)
・ノズルカバー内に所定流量吹き込まれた窒素ガスの圧力を、ピトー管(真空計測器:(株)岡野製作所製)を用いて計測した。
・計測方法は、ノズルカバーの開口部にピトー管を当てその時の動圧をマノスターゲージWO−80形で読み取った。
(測定結果)
・測定結果は、表2の通りである。
【0061】
【表2】

【0062】
表2に示すとおり、ノズルカバーの開口部の動圧を0.9kPa〜16.5kPaにすることにより、スプレーノズルから薬液又は洗浄水をノズルカバーに向けて噴霧した場合に、ノズルカバー内に薬液等が侵入するを防止することができる。
次に、この液化ガス充填装置を加熱殺菌処理する方法について簡単に説明する。
最初に、開閉弁78と開閉弁86と開閉弁92と開閉弁110bと開閉弁120dを閉じた状態にし、一方、開閉弁104と開閉弁110aと開閉弁114と開閉弁120aと開閉弁84と開閉弁120cと開閉弁162と開閉弁152と開閉弁159と開閉弁96と開閉弁128を開放状態にすると共に液化ガス吐出用ノズル16を開放状態にする。そして、ヒーター122,126,134のスイッチを入れる(スイッチオン)。尚、排気管路90,98の外面側に加熱補助用の細管ヒーターを巻き付けてある場合には、この細管ヒーターのスイッチも入れる。
【0063】
さて、ガス供給第一管路118aでは、液体窒素が充填されていた元タンクから供給され、気化により発生した乾燥窒素ガス(水分が全く含まれていない窒素ガス)が、不活性ガス管路102内を通り、圧力計106a、減圧弁108aを通り、フィルターユニット112を通って濾過除菌された後、気体流量計116aに入りガス供給第一管路118a内を通った後、ヒーター122によって140℃以上の高い温度に加熱されて、一方向弁124を通り、貯留タンク52内に入る。
貯留タンク52内に入った高温の窒素ガスは、一部は排気管路90,98を通ってこれらの内部を加熱しながら排気管路90から細いバイパス管路94に入り、バイパス管路94の開放状態にある開閉弁96を通り、バイパス管路94から再度排気管路90内に入ってその開放端から排出されるが、高温の窒素ガスの大部分は貯留タンク52内を暖めながら下方に進み、吐出用ノズル16から外方へ排出される。ガス供給第一管路118aからの高温窒素ガスの供給により、次第に貯留タンク52内側、排気管路90,98内面側、吐出用ノズル16内面側は高温に加熱される。
【0064】
また、ガス供給用第二管路80では、元タンクから送られた窒素ガスは、ガス供給用第一管路118aと同様にして不活性ガス管路102を通過する際にフィルターユニット112によって除菌され、気体流量計116bに入り、ガス供給用第二管路80を通過中に、ヒーター126で加熱されて140℃以上の温度に昇温された後、一方向弁82を経て液化ガス供給管路76c内に入るが、貯留タンク52の手前の開閉弁86が閉じており、一方、ガス排出用管路130内の開閉弁128が開放状態になっているので、除菌フィルター74を通過し、それから液化ガス供給管路76b内を通過した後、ガス排出用管路130内に進み開放端から外に出る。このガス供給用第二管路80内を通過する高温窒素ガスにより、液化ガス供給管路76b内面と除菌フィルター74と液化ガス供給管路76cの内面の一部が殺菌温度(例えば150℃)にまで昇温され、その温度を所定時間(例えば10分間)維持されることにより、それらの部分は完全に殺菌処理されることになる。
【0065】
これらの部分は、貯留タンク52内側、吐出用ノズル16内面側及び排気管路90,98の内面と比べると、比較的表面積が少なく、熱容量が小さいので、ガス供給第一管路118a内を通過する高温の窒素ガスの供給とガス供給用第二管路80内を通過する高温の窒素ガスの供給とを同時に実施すると、殺菌処理が早く終了することになる。
そこで、本実施形態では、液化ガス供給管路76bの内面と除菌フィルター74及び液化ガス供給管路76c内面の一部の殺菌が終了したならば、液化ガス供給管路76cの開閉弁86を開放状態にすると共に、ガス排出用管路130の開閉弁128を閉鎖状態にすることにより、ガス供給用第二管路80内を通過する高温窒素ガスを貯留タンク52内(緩衝箱88内)に送り込んで、残りの液化ガス供給管路76c部分の内面側と、貯留タンク52内側と排気管路90の内面及び吐出用ノズル16内面側の加熱殺菌に利用して貯留タンク52内面等の殺菌時間の短縮化を図っている。即ち、ガス供給用第二管路80内を通過した高温窒素ガスは、貯留タンク52内の緩衝箱88内に送り込まれた後、一部は排気管路90内を通ってバイパス管路94内に進み、これらの部分を加熱しながら、バイパス管路94の先端部の開口端から、再度排気管路90内に入り、開放端から外へ排出される。そして残りの高温窒素ガスは、貯留タンク52内を下降しながら貯留タンク52内面側を加熱し、吐出用ノズル16内面側を加熱しながら通過してその開口端から外へ排出される。
【0066】
ガス供給用第一管路118aとガス供給用第二管路80からの高温窒素ガスにより、貯留タンク52内、排気管路90,98内、吐出用ノズル16内面側、液化ガス供給管路76cの一部の内面側が殺菌温度(例えば150℃)にまで加熱され、その温度を所定時間(例えば10分間)維持されると殺菌処理が完了する。
これらの加熱温度と殺菌時間は、除菌フィルター74付近の液化ガス供給管路76c内面と、貯留タンク52の上部内面側と、排気管路90の開閉弁92付近内面側(バイパス管路94との合流点付近)とに設置した各温度センサー166,168,170で測定した殺菌温度及び殺菌温度を維持していた時間の確認により、予め実験により確認済みの設定温度(加熱温度)と殺菌時間の組み合わせが殺菌条件を完全に満足した場合に殺菌終了と決定される(予めコンピュータに殺菌温度の殺菌時間を設定しておき、温度センサーからの測定値により殺菌終了を表示できる様にしておく)。
【0067】
また、ガス供給用第四管路118dでは、図示しない圧縮空気供給源(水分を除去するミストセパレーターや埃等を濾過する濾過フィルター等を備えている)から送られて来た乾燥した圧縮空気(又は加圧空気)用の管路の通路である空気供給用管路150から、開閉弁152、圧力計154、減圧弁156、空気中の微粒子や微生物を濾過除菌できるフィルターユニット158を経た後、無菌圧縮空気となり、気体流量計160、管路132を通り、開閉弁162を経てから、ガス供給用第四管路118dに入り、ヒーター134で140℃以上の温度に加熱され、更に除菌フィルター136を通過して除菌された後、ノズルカバー18内に高温無菌空気を噴射して、液化ガスの吐出用ノズル16外面側とノズルカバー18内面を殺菌温度(例えば150℃)まで昇温させ、その温度を所定時間(例えば10分間)維持させることにより加熱殺菌する。この殺菌温度と殺菌時間は、除菌フィルター136とノズルカバー18との間のガス供給用第四管路118d内面と、ノズルカバー18のヒーター付近に配置した各温度センサー172,174による測定した温度が予め設定しておいた殺菌温度以上に達し、しかもその殺菌温度の場合に予め実験によって確認しておいた必要な殺菌時間以上経過したことによって殺菌が終了したと決定する。
【0068】
以上のガス供給用第一管路118aとガス供給用第二管路80とガス供給用第四管路118dは、ほぼ同時に加熱を開始して液化ガス充填装置とその配管等を加熱殺菌する。
一方、ガス供給用第三管路118cでは、窒素ガスが、ガス管路102を通過中にフィルターユニット112を通って濾過除菌された後、流量計116cに入る。そして、ガス供給第三管路118cの開口端が排気管路90の内部で、しかも排気管路90の開口端側に向いて開口しているので、流量計116cを出た無菌窒素ガスは、ガス供給用第三管路118cの開口端から噴出されて排気管路90の開口端側に無菌窒素ガスの流れを形成する。
【0069】
ガス供給用第一管路118aとガス供給用第二管路80からの高温窒素ガスにより、貯留タンク52内部、排気管路90,98内面側、吐出用ノズル16内面側、液化ガス供給管路76cの一部の内面側の殺菌処理が完了した後、ヒーター122,126を切り(スイッチオフ)、開閉弁86を閉じ、一方、開閉弁128を開放状態にすることで、ガス供給用第一管路118aからは無菌窒素ガスによる冷風を貯留タンク52内に流して、貯留タンク52内面と緩衝箱88と、吐出用ノズル16内面と、排気管路90,98内面等を冷却し、また、ガス供給用第二管路80から無菌窒素ガスを液化ガス供給管路76bと除菌フィルター74と液化ガス供給管路76cの一部に流してこれら液化ガス供給管路76b,76cの内面と除菌フィルター74を冷却し、それぞれこれら各部分の温度が50℃以下になるまで冷却する。
【0070】
一方、ガス供給用第四管路118dでは、ノズルカバー18内面側と吐出用ノズル16の外面側の殺菌が終了した後、ヒーター134の加熱温度の設定を30〜50℃の範囲に落とし、更に、無菌圧縮空気の管路132の開閉弁162を閉じ、一方、無菌窒素ガスの流量計116dを経たガス供給用第四管路118dの開閉弁120dを開放状態にして、無菌窒素ガスをヒーター134により30〜50℃の範囲の設定温度にした後、ノズルカバー18内の開口部から加熱殺菌時よりも大幅に勢いを落として噴出させる(吐出用ノズルの下方を移動する飲料等が充填されている容器から上昇する水分を含んだ空気がノズルカバー18の開口部からカバー内に侵入するのを防止できるだけの大気圧よりも僅かに高い圧力とする)。各部分の冷却処理が終了した後、圧縮空気供給用の管路の開閉弁152,159、無菌窒素ガス供給用の管路の開閉弁120a,84、ガス排出用管路130の開閉弁128、排気管路のバイパス管路94の開閉弁96を閉じると共に、液化ガス吐出用ノズル16を閉じ、一方、液化ガス供給管路の開閉弁78,86を開放状態にすることにより、元タンクから液化ガス供給管路76a,76b,76cを経由して貯留タンク52内に液化ガス液体窒素を貯留する。
【0071】
貯留タンク52内に液体窒素が貯留され始めたならば、排気管路の開閉弁92を開放状態にすると、液化ガス供給管路76a,76b,76c内で気化した窒素ガスや貯留タンク内で気化した窒素ガス等が排気管路90,98から盛んに排出される。その後、液化ガス供給管路76a,76b,76c内面及び貯留タンク52内面側の温度が液体窒素により冷却されるので、次第に液体窒素は貯留タンク52内に貯留されていく。
【実施例1】
【0072】
次に、本実施形態の液化ガス充填装置が配置されている領域が、殺菌・洗浄処理を受けている際に、ノズルカバー18内へ噴霧された薬液や洗浄水としての無菌水が侵入するのを防止する方法の実施例について説明する。
先ず、液体窒素の元タンクと、液化ガス貯留タンク52とを連結している液化ガス供給管路76a,76b,76cに配置されている開閉弁(本例では開閉弁78)を開放状態にし、一方、空気供給用管路150の開閉弁152,159と、管路132の開閉弁162とを開放状態にし、また、ガス供給用第四管路118dのヒーター134を切る(スイッチオフ)。 次に、乾燥状態の加圧空気(または圧縮空気)を空気供給用管路150内を通過させ、更に開閉弁152、圧力計154、減圧弁156、フィルターユニット158を通過させて無菌加圧空気となし、更にまた、気体流量計160で流量の調整をした後、管路132の開閉弁162を通してガス供給用第四管路118dの除菌フィルターを通して再度除菌させた後、ノズルカバー18の内面側へ噴出させるが、その流量を140L/分以上にする(好ましくは150L/分以上、160L/分以下:供給圧力としてとは、0.3〜0.5MPa)ことで、ノズルカバー18の底壁部の開口部20の面積が1.5〜4.0cmの範囲内の場合には、開口部20から下方へ流下する際の動圧を0.9MPa〜16.5MPaにすることができる。
【0073】
一方、スプレーノズル24a,24b,24cから約0.3MPaの噴霧圧で斜め上方向のノズルカバー18に向けて噴霧された薬液又は洗浄水は、ノズルカバー18の開口部20付近において、0.9MPa〜16.5MPaの動圧の加圧空気による下方への流れによりノズルカバー18の開口部20へ侵入するのを阻止されることになる。
即ち、ノズルカバー18内に供給された加圧気体のノズルカバー18の開口部20での動圧が、上記範囲内の数値ならば、通常の薬液又は洗浄水を噴霧するプレーノズルの噴霧圧である0.3MPa前後のスプレーノズル24a,24b,24cから上方向へ噴霧された薬液又は洗浄水がノズルカバー18の開口部20からノズルカバー18内に侵入するのを阻止できることが確認された。
【0074】
尚、上記実施例では、ノズルカバー18の開口部20の面積が1.0cmの場合については実施されていないが、供給された気体の供給圧が同一ならば、開口部の面積が小さい程、開口部から流下する加圧気体の動圧が高くなるので、1.0cmの面積の開口部でも、上記実施例と同等の作用効果が得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態にかかる低温液化ガス充填装置の吐出用ノズル近傍の模式図である。
【図2】本発明の一実施態様の無菌充填ラインで使用する低温液化ガス充填装置とその配管の連結状態を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
12 容器
16 吐出用ノズル
18 ノズルカバー
20 開口部
22 気体供給用管路
24 薬液ないし洗浄水のスプレーノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無菌領域内を搬送される容器と、
該容器の開口部に低温液化ガスを吐出する吐出用ノズルと、
該吐出用ノズルを無菌領域に配置し、該吐出用ノズルの周囲と下方部分とを取り囲み、前記下方部分を取り囲む底壁部が、該吐出用ノズルから吐出される液化ガスを通過させ得る大きさの開口部を備えているノズルカバーと、
該ノズルカバー内に一端部が連通し、他端部が気体供給源と連通している気体供給用管路と、
を備えた包装容器の無菌充填法で使用する低温液化ガス充填装置の、少なくともノズルカバー外面部分とその周囲部分を洗浄・殺菌する方法であって、
前記ノズルカバー外面部分とその周囲部分に殺菌用薬液ないし洗浄水をスプレーしている間、前記気体供給管路から前記ノズルカバー内に無菌化された乾燥状態の加圧気体を噴出させ続けると共に、その噴出させる気体が前記ノズルカバーの開口部から吹き出す際の吹き出し動圧を0.9kPa以上とすることを特徴とする薬液ないし洗浄水のノズルカバー内侵入防止方法。
【請求項2】
前記気体供給用管路からノズルカバー内に供給した加圧気体が、前記ノズルカバーの底壁部の開口部から吹き出す際の動圧が1.5〜16.5kPaであることを特徴とする請求項1に記載の薬液ないし洗浄水のノズルカバー内侵入防止方法。
【請求項3】
前記ノズルカバーの開口部の開口面積が1〜4cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液ないし洗浄水のノズルカバー内侵入防止方法。

【図1】
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【図2】
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