説明

薬液噴霧投与装置及び薬液噴霧投与方法

【課題】複数の薬液をその微粒子が混合・接触した状態で目的部位に投与させる。
【解決手段】薬液噴霧投与装置5は、薬液A,Bを個別に貯留する薬液タンク10A,10Bと、複数の薬液A,Bに電位の異なる電圧をそれぞれ印加させる電圧印加部17と、薬液タンクから各薬液A,Bを個別に供給して吐出口7A,7Bから吐出して噴霧させるカテーテル6とを具備する。空圧タンク20から四方弁23を介して各薬液タンク10A,10Bに圧力を供給する。四方弁23の操作で電圧印加部17の回路部15A、15Bに異なる電位の電圧を発生させ、副電極16A、16Bを介してカテーテル6の各配管11A、11Bの基部に設けた主電極12A、12Bに接触する薬液A,Bに各電圧を印加する。各薬液A,Bをカテーテル6を介して吐出口7A,7Bから噴霧し、異なる電位に帯電する薬液A,Bの微粒子同士が混合・接触して電気力線に沿って生体の患部に付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を含む液体(以下、薬液という)を生体(人/動物)等の目的部位に噴霧投与する薬液噴霧投与装置及び薬液噴霧投与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、治療等のために生体に薬液を投与する場合、薬液投与方法として、生体表面の患部等、目的部位以外に薬液を投与することで生じ得る副作用を防止するため、薬液を投与する必要のある部位に極力近い場所で、投与を行なうことが提案されている。このような薬液投与方法は、薬液を必要な目的部位にだけ、必要な量を確実に投与することができるため、患者への副作用を低減できるとされている。
このような薬液投与方法の一例として、例えば下記特許文献1に記載されたように、生体接着剤等の2種類の薬液を生体表面に投与する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載された薬液投与方法では、薬液の種類毎に1流体ノズル構造のスプレーヘッド、薬液流通路、薬液注入口を2組備えている生体組織接着剤塗布用具が開示されている。この塗布用具では、2つ1組の注入器にそれぞれ異なる種類の薬液を充填し、その先端側にそれぞれチューブを接続して直線状に延在させ、その先端側にスプレーヘッドをそれぞれ連結している。各注入器にはそれぞれホルダーを手動で進退可能に取り付け、ホルダーを介してそれぞれの薬液を各スプレーヘッドまで進行させる。各スプレーヘッドでは、更に狭い流路である噴出口へ薬液を集中させて勢いよく噴射させることで各薬液を粒子状にせん断噴霧させ、噴霧状態で2種の薬液は初めて接触して反応が生じ塗布面において凝固するとしている。
【0004】
このような塗布用具によれば、無菌ガスを用いなくとも生体組織接着剤の安定且つ良好な噴霧による高強度の塗膜を患部で得られ、間欠使用を可能とし、更にチューブ等によるスプレーヘッド部までの薬液流通路の延長が可能になるとされている。
【特許文献1】特開2003−235977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された塗布用具は、加圧ガス等の気体圧力を利用したものであり、薬剤と共に比較的大きな容量の気体もスプレーヘッドまで送られ、薬液と共に噴射される。この気体流れの影響により、2種の薬液が必要とされる患部に選択的に到達されずに周辺部位にも薬液が浮遊・拡散されて到達されることが懸念される。しかしながら、目的部位以外に薬液が投与されることは目的部位において予定した薬効を十分得られない可能性があり、この種の薬液投与方法の目的を考慮すれば出来る限り避けるべきである。
また、加圧ガスの発生手段としては、注入器とホルダーというシリンジピストン方式のポンプが採用されており、ホルダーの動作開始時と停止時にはホルダーの移動速度が立ち上がる時または立ち下がる時に低流速の工程が発生するが、その際に充填された薬液が噴霧状態にならずに液体として噴出口から垂れやすくなる。この垂れた薬液は、目的部位以外に落下するおそれがある。更に、2種類の薬液をスプレーヘッドからそれぞれ噴霧して初めて接触・反応するとされているが、各薬液の噴霧微粒子は空間を浮遊し拡散するために、必ずしも2種の薬液が混合または接触した状態で生体の目的部位に付着しない欠点がある。そのため、薬液の混合または接触が不十分で予定した薬効を十分得られないおそれもあった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、複数の薬液を噴霧した微粒子が混合または接触した状態で生体等の目的部位に確実に投与できるようにした薬液噴霧投与装置と薬液噴霧投与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による薬液噴霧投与装置は、複数の薬液を噴霧投与して目的部位に付着させる薬液噴霧投与装置において、複数の薬液を個別に貯留する薬液貯留部と、複数の薬液に電位の異なる電圧をそれぞれ印加させる電圧印加部と、薬液貯留部からそれぞれ各薬液を個別に供給して吐出口から異なる電位に帯電した微粒子を噴霧させる供給流路とを具備したことを特徴とする。
本発明によれば、複数の薬液貯留部に個別に貯留された複数の薬液について、電圧印加部で複数の薬液に電位の異なる電圧を印加させると、各薬液は互いに異なる電位に帯電する。よって、これら複数の薬液を個別の供給流路を介して吐出口から吐出させて噴霧させると、各薬液を噴霧させてなる各微粒子も、それぞれ異なる電位に帯電している。ここで、同一の薬液の微粒子同士は、更に反発して分散する一方、異なる薬液の微粒子同士は、空間で引き合って互いに混合または接触するとともに、浮遊したり舞い上がることなく電気力線に沿って目的部位に確実に付着する。この結果、複数の薬液は、目的部位において混合または接触した状態で、特有の薬効または効果を発揮できる。或いは、複数の薬液は噴霧されて目的部位に付着した後に混合または接触することによっても、特有の薬効または効果を発揮できる。
【0008】
また、複数の供給流路の吐出口から噴射される複数の薬液の微粒子が異なる電位に帯電していて、噴霧後に互いに混合または接触するようにしたため、個々の薬液では発揮し得ない薬効や効果を混合または接触した後で発揮できる。
【0009】
また、薬液貯留部にはそれぞれ空圧タンクが接続され、該空圧タンクから供給される圧力気体によって供給流路の吐出口から薬液を吐出させるようにしてもよい。
空圧タンクから供給される圧力気体によって供給流路を送液されて吐出口から噴射し、薬液の電荷密度が臨界値に達して多数の微粒子に分裂して霧化される。
また、空圧タンクはそれぞれ圧力制御手段を介して異なる薬液を個別に貯留した薬液貯留部に接続されており、圧力制御手段によって薬液貯留部に供給する圧力を調整することで、吐出口から噴射される複数の薬液の比率を調整できるようにしてもよい。
複数の薬液の混合比率が相違する場合、圧力制御手段によって各吐出口から噴射される各薬液の噴射比率を調整でき、噴霧された各薬液の微粒子の電位差により設定された噴霧量の比率に応じて相互に混合または接触する。
【0010】
また、複数の薬液は2種または3種以上の薬液であってもよい。
単独では薬効や効果を発揮し得ない複数の薬液を供給流路の吐出口から個別に噴射・噴霧して帯電する微粒子同士を目的部位に付着する前に混合・接触させることで初めて薬効や効果を発揮できる。例えば、生体用接着剤であれば、複数の薬液は混合前の分離状態では接着機能を発揮し得ないが、混合・接触することで生体等の目的部位に付着直後に接着機能を発揮できるから、混合前の状態における各薬液の取り扱いが容易である。
また、電圧印加部は少なくとも2種の薬液に極性の異なる電圧を印加するようにしてもよく、極性の異なる薬液の微粒子同士は互いに引き合って積極的に混合または接触する。
【0011】
本発明による薬液噴霧投与方法は、複数の薬液を噴霧投与して目的部位に付着させる薬液噴霧投与方法において、複数の薬液に異なる電位の電圧を印加すると共に個別に吐出口まで送液し、吐出口から複数の薬液を吐出して噴霧させ且つ噴霧された複数の薬液の微粒子は異なる電位に帯電されていて、複数の薬液の微粒子が互いに混合または接触するようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、複数の薬液に電位の異なる電圧をそれぞれ印加すると、各薬液は互いに異なる電位に帯電する。よって、これら複数の薬液を個別の供給流路を介して吐出口から吐出させて噴霧させると、各薬液はそれぞれ異なる電位に帯電した微粒子に分散される。ここで、同一薬液の微粒子同士は、更に反発して微細に分散する一方、異なる薬液の微粒子同士は、空間で引き合って互いに混合または接触するとともに、浮遊したり舞い上がったりすることなく電気力線に沿って目的部位に確実に付着する。この結果、複数の薬液は、目的部位において混合または接触した状態で、特有の薬効や効果を発揮できる。
【0012】
また、複数の供給流路の吐出口から噴霧される複数の薬液の微粒子は混合比率を可変としてもよく、複数の薬液は必ずしも同量ずつの混合・接触によって所期の薬効や効果を発揮するとは限らない。
また、複数の供給流路に供給される複数の薬液は、それぞれ薬液に印加される気体の圧力によって吐出口から噴霧される複数の薬液の混合比率を変化させるようにしてもよい。
【0013】
また、複数の吐出口から噴霧される2種または3種以上の薬液は、異なる電位で同一または異なる極性に帯電した状態において空間で混合または接触するようにしてもよい。
複数の薬液は噴霧された微粒子の状態で異なる電位に帯電していれば極性の異同に関わらず互いの電位差で積極的に混合・接触することができる。
なお、2つの吐出口から噴霧される2種の薬液は、異なる極性に帯電した状態で微粒子同士が空間で混合または接触することが好ましい。
複数の薬液は混合または接触した状態で目的部位との電位差を有していて、この電位差によって目的部位に到達させるようにしている。
混合・接触した複数の薬液の微粒子は、吐出口側から電位差のある目的部位に向かって電気力線に沿って移動し、生体患部等の目的部位に積極的に付着する。
【発明の効果】
【0014】
上述したように本発明の薬液噴霧投与装置及び薬液噴霧投与方法によれば、噴霧された複数の薬液は、それぞれの微粒子が異なる電位に帯電しているために、噴霧後目的部位に到達する前に電位の異なる異種の薬液の微粒子同士が空間で積極的に混合・接触し、しかも浮遊したり舞い上がったりすることなく確実に目的部位に付着できる。或いは、電位の異なる異種の薬液の微粒子同士が目的部位に付着した後に混合・接触させることができる。よって、目的部位を外れて薬液投与されることなく、効率的な薬液投与を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
まず、本発明の第一実施形態による薬液噴霧投与装置について図1乃至図4により説明する。図1は本発明の第一実施形態による薬液噴霧投与装置を内視鏡の鉗子栓に装着した状態を示す概略説明図、図2は薬液噴霧投与装置の要部構成図、図3はマルチルーメンカテーテルの先端から薬液が噴射する状態を示す模式図、図4は薬液噴霧投与装置から生体に吐出される薬液の噴霧微粒子が生体に到達する状態を示す説明図である。
【0016】
図1において、内視鏡1の鉗子チャンネル2に設けた鉗子栓3には、本第一実施形態による薬液噴霧投与装置5が装着されている。薬液噴霧投与装置5の供給流路を構成するマルチルーメンカテーテル(以下、単にカテーテルという)6は鉗子チャンネル2内に挿通されている。カテーテル6は柔軟性を有しており、カテーテル6の先端6aは鉗子チャンネル2の先端口2aから所定長さ突出している。なお、カテーテル6の先端6aは、鉗子チャンネル2の先端口2aと同一位置や内側に引っ込んだ位置に設けられていてもよい。
操作者は内視鏡1を操作しながら薬液噴霧投与装置5も操作できる。操作者は、内視鏡1により、生体表面の薬液を投与すべき目的部位である患部Kを確認し、鉗子チャンネル2の先端口2aを患部Kに対向させた後、カテーテル6の吐出口から薬液の噴霧微粒子を放出させる。
【0017】
次に、薬液噴霧投与装置5について図2乃至図4により説明する。
薬液噴霧投与装置5に設けたカテーテル6は内部に例えば2つの流路7a、7bを有するマルチルーメンカテーテルである(図3参照)。
カテーテル6の材質は、例えば四フッ化樹脂製(テフロン(登録商標)製)で柔軟な可撓性を有している。また、2つの流路7a,7bは、例えば外径φ1.6mm、内径φ0.5mmの寸法を有し、カテーテル6の先端部付近まで形成されている。生体表面と対向するカテーテル6の先端面には、薬液を噴射放出する2つの吐出口7A、7Bが流路7a,7bにそれぞれ連結されて形成されている。例えば、カテーテルの先端から1mmの長さ範囲のみ、2つの吐出口7A、7Bの径として流路7a,7bより小径のφ0.075mmの穴が2つ形成されている。各吐出口7A、7Bは互いに接触せず、分離独立して形成されている。
【0018】
図2に示す薬液噴霧投与装置5は、内視鏡1の鉗子栓3に取り付けた筐体9内に複数種、例えば2種の薬液A,Bをそれぞれ充填した薬液タンク10A、10Bが配設されている。この各薬液タンク10A,10Bの出口には、それぞれマルチルーメン配管(以下、単に配管という)11A,11Bが接続されている。配管11A,11Bは、それぞれ内部に上述した流路7a,7bを有し、途中で流路7a,7bが互いに分離独立した状態で並列に連結されている。これら配管11A、11Bは、上述したカテーテル6の一部として基端側部分を形成する。そのため、カテーテル6の流路7a,7bは、配管11A、11Bを介して各薬液タンク10A、10Bに接続されている。
【0019】
また、薬液噴霧投与装置5には、薬液A,Bにそれぞれ電圧を印加して帯電させる電圧印加部17が設けられている。電圧印加部17は、配管11A、11Bと薬液タンク10A、10Bとの連結部近傍に固定された主電極12A、12Bを備えている。
また、電圧印加部17は、例えば電池等の電源14と、電源14に接続されていて電圧を発生させる一対の回路部15A、15Bと、回路部15A、15B及び主電極12A、12Bの間にそれぞれ接続されていて主電極12A、12Bに接触してそれぞれ電圧を印加する副電極16A、16Bとを備えている。
主電極12A,12Bは、導電性の金属製や導電性樹脂製や導電性膜が形成された樹脂製の円管形状をなし、内側の内径が各配管11A、11Bに設けた薬液A,Bの流路7a、7b(カテーテル)の径と同一の大きさとなっている。主電極12A、12Bは、薬液タンク10A、10Bと配管11A、11Bとの間で、内面が流路7a,7bの各薬液A、Bと液密に接触して配設されている。主電極12A、12Bの内面下部には、段差部が形成された配管11A、11Bの基端部が、液密に嵌合されている。このような構成において、電極14から回路部15A、15Bに電圧が供給されると、この電圧がそれぞれ副電極16A、16Bを通して主電極12A、12Bに供給される。そして、主電極12A、12Bは、それぞれ流路7a、7bを流れる薬液A、Bに電圧を印加して帯電させる。
また、2つの薬液タンク10A、10Bと2つの主電極12A、12B、そして各配管11A、11Bを含むカテーテル6とは接着剤等により互いに強固に接合されている。そして、これらの接合された部材はディスポーザブル部品として着脱交換可能に構成され、使用後に廃棄される。
【0020】
また、薬液噴霧投与装置5には、薬液送液機構19として、1つの空圧タンク20と各種弁21、23と各種配管22、25A、25Bとが備えられている。空圧タンク20では、逆止弁21を経由して図示しないディスポシリンジ等によって外部から空圧タンク20内に空気を繰返し注入し、空圧タンク内20の圧力を上昇させる。例えば、約0.5Mpa程度まで内部の圧力を上昇させる。そのため、空圧タンク20はその圧力に耐える金属製や高強度樹脂等により形成される。
空圧タンク20は、配管22を介して例えばマニュアル駆動方式の四方弁23に配管接続されている。四方弁23は、薬液タンク10A、10Bに空圧を供給する2組の供給管25A、25Bに接続されるとともに、また大気圧開放配管26にも接続されている。供給管25A、25Bはそれぞれ、先端が針構造を有するようにテーパー形状を有している。また、供給管25A、25Bが各薬液タンク10A、10Bの上部を閉鎖するゴム栓28A、28Bに気密に差し込まれることにより、供給管25A、25Bと薬液タンク10A、10Bの空気漏れが防止されるようになっている。
なお、2つの薬液タンク10A、10B内に異なる薬液A、Bを注入する際にも、このゴム栓28A、28Bから注射針等を用いて注入される。よって、患部Kに投与が必要とされる薬液量は予め各薬液タンク10A,10B内に保持されている。
【0021】
四方弁23は、通常位置の閉弁状態では配管22を閉弁するとともに、供給管25A、25Bを大気圧開放配管26に連通させている。2つの薬液タンク10A、10B内の空圧は、大気圧開放配管26を通して大気圧に保持されている。大気圧開放配管26は、例えばφ0.1mmの小さな配管径であり、2つの薬液タンク10A,10B内の薬液A,Bがカテーテル6先端の各吐出口7A,7Bから垂れない程度の圧力損失を発生させるような径や流路形状構造に形成されている。
そして、四方弁23には開閉用のボタン29が設けられており、ボタン29を指などで押し込むことにより、四方弁23は開弁して配管22を供給管25A、25Bに連通するとともに、大気圧開放配管26を閉弁する。四方弁23が押されると、空圧タンク20内の空気が2つの薬液タンク10A、10B内に供給されることにより各薬液タンク10A、10B内の空気圧力が上昇する。すると、カテーテル6のマルチルーメン配管11A、11Bに各薬液A,Bを送液し、カテーテル6先端面の各吐出口7A,7Bから2つの薬液A,Bを吐出する。吐出するまでの間で、2つの薬液A,Bが混合されることは無い。
【0022】
四方弁23の下部には弁認識スイッチ30が設けられている。この弁認識スイッチ30は、四方弁23の押圧を検出して電圧発生部となる2つの回路部15A、15Bから副電極16A、16Bを介して主電極12A、12Bに電圧を供給するものである。例えば、薬液タンク10Aの主電極12Aには、+5kV、薬液タンク10Bの主電極12Bには−1kVの極性の異なる電圧が印加される。この場合、主電極12A、12Bで印加される各電圧は絶対値が異なる値に設定するとよい。
また、電源14は、例えば3V程度の電池電圧を内蔵された圧電トランスにより+5kVと-1kVに昇圧する。各副電極16Aは印加電圧を集中させるために印加方向に針形状を成したステンレス製の電極が好ましく、一般的な電気接触子の金メッキされたコンタクトプローブなどでもよい。
【0023】
各回路部15A、15Bの内部には、高電圧の安全性対策として、図示しない高抵抗回路や過電流検出回路等が組み込まれている。高抵抗回路はスパークや生体への電撃を防ぐために、各副電極16A、16Bに保護用の高抵抗を直列に配置している。また、過電流検出回路は、電圧を印加したときに流れる電流を検出し、その数値が設定電流値以上になったときに電圧印加を停止する。
この他にも、高電圧の安全性対策として、内視鏡1の鉗子栓3近傍に装着認識スイッチ32が配設されている(図1、図2参照)。装着認識スイッチ32は、薬液噴霧投与装置5が鉗子栓3に装着されると、これを検出して各電圧発生回路に電圧発生を許可する。言い換えると、内視鏡1の鉗子栓3に薬液噴霧投与装置5が装着されていないと四方弁23を操作しても電圧は印加されない。
また、例えば薬液A側の回路部15Aからは生体の一部と接触すると0Vの電位になるグランドバンドGが筐体9の外部に引き出されている。本実施の形態では、グランドバンドGの他端は患者の指に接触している。なお、薬液A側の回路部15Aと薬液B側の回路部15Bのグランドは接続されており、同電位となっている。
【0024】
上述したように、薬液噴霧投与装置5において、薬液送液機構19と2つの回路部15A、15Bと電源14と弁認識スイッチ30と装着認識スイッチ32は筐体9内に内蔵されている。一方、2組の薬液タンク10A、10Bと主電極12A、12Bとカテーテル6は外部から筐体9内に挿入して設置できる構成となっている。薬液A,Bを投与後は、2組の薬液タンク10A、10Bと主電極12A、12Bとカテーテル6は筐体9から外されて廃棄される。
なお、より安全性を高めるために、開閉式の透明樹脂製カバーを設置して各主電極12A、12Bを操作者等が直接触れないような構成を採用しても良い。
【0025】
本実施形態による薬液噴霧投与装置5は上述の構成を備えており、次に薬液噴霧投与方法について説明する。
先ず、2種類の薬液A,Bが充填された薬液タンク10A,10Bを含むディスポーザブル部品を装着した薬液噴霧投与装置5を、図1に示すように、カテーテル6を鉗子チャンネル2内に挿通して内視鏡1の鉗子栓3に装着する。これを装着認識スイッチ32が検出して、電圧印加部17の回路部16A、16Bで電圧を発生させることが可能になる。
次に、内視鏡1の鉗子チャンネル2の先端部を患者の体内に挿入し、内視鏡1で患部Kの位置を特定して鉗子チャンネル2の先端開口を対向させて固定する。そして、図2において、ボタン29を押して四方弁23を開弁させることで、空圧タンク20の配管22を薬液タンク10A、10Bの供給管25A、25Bに連通するとともに、大気圧開放配管26を遮断する。これによって薬液タンク10A、10Bの内圧を空圧タンク21の内圧まで昇圧させる。
薬液タンク10A、10Bの昇圧によって、薬液タンク10A、10B内の薬液A,Bがカテーテル6の配管11A、11Bを通ってカテーテル6先端の吐出口7A、7Bに向けて搬送される。
【0026】
ここで、ボタン29の押圧による四方弁23の押し込みを弁認識スイッチ30で検知し、回路部15A、15Bで電圧が発生する。この電圧は副電極16A、16Bを介して主電極12A、12Bに供給され、薬液タンク10A、10Bから送られた薬液A,Bは、それぞれ主電極12A、12Bの内側を通過する際に帯電させられ、カテーテル6の配管11A、11Bにそれぞれ送られる。そしてカテーテル6の流路7a、7bを通って吐出口7A、7Bからそれぞれ吐出される薬液A、Bは薬液タンク10A、10Bの昇圧によって柱状となって患部Kに向けて吐出される(図4参照)。
ここで、図3及び図4により、吐出口7Aから噴射される薬液Aの挙動について詳述すると、吐出口7Aから吐出される薬液Aは患部Kに向かうに従って漸次減速する。流速が所定の大きさ以下になると、柱状の薬液Aの先端に電圧が集中し、薬液A表面に働く静電気力によって電気流体力学的に不安定になり、多数の微粒子に分散されて噴霧を発生する。しかも、薬液Aの液面の電荷密度が臨界値に達していて細い液糸が引き出され、その細い液糸の先端から薬液Aが多数の微粒子に分裂する現象が始まる。微粒子となった薬液Aは個々に帯電しているため、同じ薬液A同士ではお互いに反発を繰返し、さらに小さな粒子に分裂する。
カテーテル6の吐出口7Bから噴射される薬液Bにおいても、薬液Aと同一の挙動を示し、個々に帯電した微粒子となって更に小さな粒子に分裂して、噴霧状態になる。
なお、各薬液A,Bは薬液タンク10A,10Bからカテーテル6の吐出口7A、7Bで噴霧されるまでの間で混合することはない。また、本実施形態は、配管11A、11Bを含むマルチルーメンカテーテル6の細い内径の各流路7a,7bを噴霧微粒子状態の薬液A,Bを送気するものではなく、各薬液A,Bは液体の状態で送液される。
【0027】
続いて、噴霧された2つの薬液A,Bの微粒子の挙動について説明する。
吐出口7Aから噴霧される微粒子状の薬液Aは+側(例えば+5kV)に帯電し、吐出口7Bから噴霧される微粒子状の薬液Bは−側(例えば−1kV)に帯電している。そのため、各吐出口7A,7Bから噴霧された後、生体表面の患部Kに至る前の空間にて、各薬液A,Bの噴霧微粒子は極性が異なるために、お互いに引き付け合い、結合(混合)が始まる。
そして、薬液Aと薬液Bは混合された一つの薬液(薬液Aと薬液Bの混合薬液)として、患部Kに引き付けられ付着する。混合薬液においても、一方の極性成分(ここでは、+5kVの薬液A)が他方の極性成分(−1kVの薬液B)を上回っているため、帯電された+4kVの混合薬液(A+B)の微粒子は、電位差によって0Vの生体表面にひきつけられるため、患部Kにおいて跳ね返ることなく付着する。しかも、その付着範囲は電気力線が形成されている範囲のみとなる(図4参照)。
さらに、2つの薬液A,Bが生体表面に付着する前に結合(混合)されるため、付着時には混合された薬液A+Bの相乗効果としての薬効・効果を発揮しやすい。
【0028】
そして、図4に示すように、吐出口7A,7Bから吐出し噴霧されて微粒子化された帯電する薬液A,Bは、微粒子として混合または接触すると共に、電圧0Vの患部Kに向かう複数の電気力線に沿うように移動し、電気力線が形成された範囲の生体表面に積極的に付着する。このため、吐出口7A,7Bから薬液A,Bが垂れたり、噴霧された薬液A,Bが生体表面で跳ね返って舞い上がることや、空間中を漂うことはなくなる。
つまり、生体表面の患部K(目的部位)にのみ、選択的に微粒子の混合薬液A,Bを投与することができる。また、内視鏡1の鉗子チャンネル2内にカテーテル6を挿通した場合には、患部Kを観察して投与位置を認識しながら各薬液A,Bを混合または接触した状態で所定量投与することができる。
また、薬液A,Bの噴霧投与に際して、吐出口7A,7Bを生体に接近させることにより、投与面積を小さくでき、離すと投与面積を大きくすることができる。言い換えると、吐出口7A,7Bを生体に接近させることにより、単位面積当りの投与量を増やすことができ、離すと単位面積当りの投与量を少なくすることができる。
【0029】
ここで、従来技術に示すように、帯電しない各薬液A,Bの噴霧微粒子が生体表面に付着した場合では、各薬液A,Bは互いに離れた状態で生体表面に付着している場合もあり、その箇所では2つの薬液A,Bが混合することで得られる薬効・効果は発揮されない。このため、従来、2つの薬液A,Bを混合投与する場合には、一部の薬液A,Bが混合されないで個別に付着することを考慮して、2つの薬液A,Bが接触し易いように投与量を必要以上に多目にする必要があった。
これに対し、本実施の形態による薬液噴霧投与装置5では、薬液A、Bは各微粒子が電位または極性の異なる帯電状態になるため、生体付着前に積極的に混合・接触が行なわれ、付着後すぐに2つの薬液A及びBの効果を発揮することができる。また、その薬液A,Bの使用量は互いに投与に必要な量ですみ、従来の投与量と比較して削減することができる。
例えば、薬液A,Bとして2種の生体接着剤を用いた場合、空中で混合した薬液A及びBは電気力線に沿って生体に付着した後すぐに効果を発揮し、その接合機能を開始するとことができる。しかも、混合前の各薬液A,Bは接合機能を発揮しないから取り扱いが容易である。
【0030】
また、薬液によっては、泡立ちやすいものや分散粒子が含有されているものがある。ネブライザーなどに使用される超音波霧化原理では、泡立ちやすい薬液は超音波の伝播を阻害するため、しばしば霧化を停止させることとなる。また、超音波霧化原理の内、噴霧微粒子の微細化のために、数μmの微細穴メッシュを使用するものは、分散粒子が含有されている液体を霧化させる際に、メッシュが詰まり霧化を停止させることとなる。
これに対し、本実施の形態による薬液噴霧投与装置5では、泡立ちやすい薬液や分散粒子を含有する薬液も容易に噴霧投与することができる。
また、薬液A,Bの導電率が1×10-10〜1×10-1(S/m)の範囲では、電圧印加部17の各回路部15A、15Bから供給される印加電圧の上昇に伴い、薬液A,Bの噴霧微粒子径を小さくすることができる。さらに、吐出口7A,7Bの穴径を小さくし、薬液A,Bの噴霧微粒子径を小さくすることができる。
例えば、蒸留水(導電率1×10-6)、吐出径φ0.075mm、印加電圧+5kV、送液速度0.3mL/分の場合、噴霧微粒子径が8〜20μmの分布を有する噴霧が得られる。
【0031】
帯電していない薬液A,Bの噴霧微粒子の場合、微小な液滴は自身の表面張力により球状の形状を維持しようとする力が働く。その力は小さい粒子ほど強く作用するために、生体表面に噴霧されても付着せずに舞い上がるドライフォグ現象が発生し易い。薬液A,Bを投与する場合、その投与量は正確に管理すべき項目であるため、患部Kに積極的に付着できる本実施形態による帯電噴霧微粒子のほうが、患部Kへの投与量を正確に管理することができる。
特に、呼吸器系の肺や肺胞などに薬液投与を行なう場合、帯電していない薬液A,Bの噴霧微粒子は呼吸の吐き出しにより口から排出されやすい。このため、吸入療法等で使用されるネブライザーなどは、吸い込み時に合わせて薬液A,Bを噴霧するなどの呼気と連動した薬液噴霧動作が必要されてきた。しかし、本実施形態において、帯電した薬液A,Bの噴霧微粒子を用い、さらに、肺の患部Kに接近して投与すれば、呼吸の吐き出しに関わらず、薬液A,Bを患部Kに付着させることができる。
【0032】
さらに、本実施形態による薬液噴霧投与装置5では、主電極12A、12Bでの薬液A,Bに対する印加電圧の大きさを変えることにより噴霧微粒子径を可変できるため、患部Kを含む目的部位に合わせて、最適な噴霧微粒子径を選択できる。また、四方弁23の操作に応じて、吐出口7A,7Bから送液及び電圧印加が瞬時に開始及び停止され、患部Kに必要な時にだけ(必要とされるタイミングを選択して)薬液A,Bを噴霧投与することができる。
【0033】
上述のように、本実施形態による薬液噴霧投与装置5及び薬液噴霧投与方法によれば、2つの薬液A,Bを吐出口7A,7Bから噴霧した後、患部Kに到達するまでの間に、帯電状態にある薬液A,Bの微粒子を積極的に混合・接触させた後に患部Kに付着させることができる。そのため、薬液A、Bの微粒子が混合・接触状態で患部Kに付着した後、すぐに薬液A,Bの効果を発揮できる。しかも、従来の装置及び方法のように、2つの薬液A,Bのうち接触・混合しないで個別に付着する一部の薬液の存在を考慮して、2つの薬液A、Bを接触・混合しない薬液量の分だけ必要量以上に多めに投与する必要がないので、薬液使用量を削減できる。また、投与する薬液A,Bを帯電させた微粒子状態にすることで、薬液A、Bを電気力線に沿って患部Kに付着させることができるので、目的部位である患部Kにおいて確実に薬効・効果を発揮させることができる。
また、電極印加部17の回路部15A,15Bと生体の一部とをグランドバンドG等により接触させると生体がより0Vの電位となるため、微粒子の混合薬液A,Bとの電位差により混合薬液A,Bを確実に患部Kに付着させる機能を向上できると共に、生体自身が帯電した微粒子を受け取ることによって+極性側電位(または−極性側電位)になることを防止でき、安全性を向上できる。
また、生体への安全性を加味すると、回路部15A、15Bの過電流検出回路等は約100μA以下、望ましくは10μA以下に設定することが望ましい。薬液噴霧は電界によるため、消費電力は少なく、電池等を電源14として噴霧することができてコストの上昇を抑制できる。
【0034】
なお、本発明による薬液噴霧投与装置5及び薬液噴霧投与方法は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上述の実施の形態では、薬液タンク10A,10Bとカテーテル6の配管11A、11Bの接続部に主電極12A、12Bを液密に連結して、薬液タンク10A,10Bから送液される薬液A,Bに電圧を印加して帯電させるようにしたが、主電極12A、12Bによって薬液A,Bに電圧を印加する位置は薬液A,Bに接触できる場所であれば、上述の位置に限定されるものではない。例えば、主電極12A,12Bは薬液タンク10A,10Bの内部に設置してもよく、或いはカテーテル6内部の流路7a,7bに設置された微細線で構成しても良い。また、各主電極12A、12Bは設置位置を薬液A,Bの移動方向に互いにずらせてもよい。
また、薬液A,Bを主電極12a,12Bで帯電する際、上述の実施形態では異なる極性で相違する電圧値に設定したが、必ずしも異なる極性にする必要はない。例えば同一極性であっても電位の異なる電圧値、例えば薬液A,Bを+5kVと+1kVに帯電させるようにしてもよい。これら薬液A,Bの電位は混合または接触した際に0Vの生体と電位差が存在するように適宜の値と適宜の極性に設定することが好ましい。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態について添付図面により説明するが、上述した実施形態と同一または同様の部分、部材には同一の符号を用いてその説明を省略する。
本発明の第二の実施の形態を図5により説明する。
第一の実施の形態と異なる部分のみ説明する。
本実施形態による薬液噴霧投与装置40では、四方弁23と各薬液タンク10A、10Bへ空圧タンク19からの空気圧を供給する供給管25A、25Bの途中にそれぞれ圧力制御手段として圧力制御弁41A、41Bが設置されている。これらの圧力制御弁41A、41Bの圧力を調整することで、各薬液タンク10A、10Bに供給される空気圧力を可変制御できる。
【0036】
薬液タンク10A,10Bにそれぞれ充填される2つの薬液A,Bはその液体特性が異なる場合がある。例えば、各液体A,Bの比重、粘度、接触角、表面張力といわれる液体物理定数等の少なくともいずれかが異なり、同一の空圧タンク20から空気圧を供給しても、マルチルーメンカテーテル6先端の各吐出口7A,7Bから同じ流量の薬液A,Bを吐出できないことがある。
このような場合でも、本第二実施の形態による薬液噴霧投与装置5では、各薬液A,Bの液体物理定数に対応して、圧力制御弁41A、41Bによって薬液タンク10A,10Bに作用する空圧の圧力を個別に調整することができる。このため、カテーテル6先端の吐出口7A,7Bからは同量の薬液A,Bを噴霧することができる。
さらに、2つの薬液A,Bの混合比率が異なる使用条件においても、圧力制御弁41A,41Bを操作することにより、薬液A,Bの混合比率を調整して最適な薬液投与条件を維持することができる。この場合、薬液投与量の多い側の帯電極性に噴霧微粒子が偏ることになるが、どの極性に帯電しても、生体表面はグランドバンドにより0Vにされているため、生体表面に向かって形成された電気力線に沿って噴霧微粒子は移動し、電気力線が形成された範囲にのみ混合・接触した薬液A,Bを付着させることができる。
【0037】
次に本発明の第三の実施の形態を図6により説明する。
第一の実施の形態と異なる部分のみ説明する。
本第三実施形態による薬液噴霧投与装置45では、空圧タンク20から薬液タンク10Aに空気を供給する第一配管46Aと、薬液タンク10Bに空気を供給する第二配管46Bとを備えている。第一配管46Aは第一の三方弁47Aを介して供給管25Aに接続され、供給管25Aには圧力制御弁41Aが配設されている。第一の三方弁47Aは大気圧開放配管26Aにも接続されている。
また、第二配管46Bは第二の三方弁47Bを介して供給管25Bに接続され、供給管25Bには圧力制御弁41Bが配設されている。第二の三方弁47Bは大気圧開放配管26Bにも接続されている。
第一と第二の三方弁47A、47Bは空圧タンク20からの空気を独立して薬液タンク10A、10Bに供給するようになっている。第一の三方弁47Aの下部には、回路部15Aに主電極12Aへの電圧印加を許可する第一弁認識スイッチ48Aが配設されている。第二の三方弁47Bには、回路部15Bに主電極12Bへの電圧印加を許可する第二弁認識スイッチ48Bが配設されている。これら第一、第二弁認識スイッチ48A,48Bはそれぞれ第一、第二の三方弁47A、47Bの動作を認識して、回路部15A、15Bへ通電する。
なお、第一の三方弁47Aを押すボタン29Aと第二の三方弁47Bを押すボタン29Bとが配設されている。
【0038】
第一の三方弁47Aは、常態の閉弁時に薬液タンク10Aの供給管25Aを大気圧開放配管26Aに連通して薬液タンク10Aを大気圧に開放し、開弁時に空圧タンク20の第一配管46Aを供給管25Aに連通して空圧タンク20の圧力を圧力制御弁41Aを介して薬液タンク10Aに印加する。また、第二の三方弁47Bは、常態の閉弁時に薬液タンク10Bの供給管25Bを大気圧開放配管26Bに連通して薬液タンク10Bを大気圧に開放し、開弁時に空圧タンク20の第二配管46Bを供給管25Bに連通して空圧タンク20の圧力を圧力制御弁41Bを介して薬液タンク10Bに印加する。
【0039】
本実施形態による薬液噴射投与装置45は上述の構成を備えているから、例えば空圧タンク20から薬液タンク10A、10Bへの空気圧の供給を独立に制御でき、薬液Aと薬液Bを同一または異なるタイミングでカテーテル6の各吐出口7A,7Bから噴霧投与できる。
例えば、生体表面の患部Kに先に薬液Aとして洗浄用薬液を投与し、その後、薬液Bとして治療用薬液を投与することができる。そのため、異なる薬液A,Bをタイミングをずらして噴霧投与することができる。この場合、薬液A,Bの噴霧された帯電微粒子について空中での混合や接触は生じないが、帯電粒子のため、電気力線が形成された範囲となる患部Kに薬液A、Bを順次付着させることができる。そのため、洗浄用薬液Aで患部Kを洗浄した後に治療用薬液Bを患部Kに付着させることができて、薬液Bの薬効がより効果的になる。
また、先に薬液Aを投与し、その後に薬液Bを投与すると、上述の場合と同様に、電気力線が形成された範囲となる患部Kに薬液A、Bを帯電粒子として順次付着させて、患部Kで薬液A,Bの混合と接触を生じさせることができる。
或いは、先に比較的低速で薬液Aを噴霧した直後に、比較的高速で薬液Bを噴霧することで、両薬液A,Bを空間で混合・接触させることも可能である。
なお、第一、第二の三方弁47A、47Bを同時に動作させることにより、第一の実施の形態と同様に、空間中で薬液A,Bの混合・接触を実行することもできる。そのため、各薬液A,Bの使用条件に応じた幅広い薬液投与を実現することができる。
【0040】
なお、上述の各実施形態等による薬液噴霧投与装置及び薬液噴霧投与方法では、2つまたは2種の薬液A,Bの噴霧混合投与について説明したが、本発明では、2つまたは2種の薬液A,Bの噴霧混合投与に限定されない。例えば、3つまたは3種以上の薬液の噴霧混合投与を行うように構成してもよい。この場合、カテーテル6は3以上の流路を有していて基部で三つに分岐されて各薬液タンクに接続される。また、少なくとも2つまたは2種の薬液の噴霧微粒子は同一極性に帯電することになるが、この場合でも電位の電圧値を異ならせれば互いに空間で混合・接触させることは可能である。例えば各薬液の噴霧微粒子の印加電圧を+5kV、+1kV、−3kV等に設定することが可能である。
また、上述の各実施形態では、内視鏡1に薬液噴霧投与装置5,40,45を搭載した例について説明したが、本発明は必ずしも内視鏡1に用いる薬液噴霧投与装置や方法に限定されるものではない。例えばのど等、体内の患部Kに体外等から薬液噴霧投与装置5,40,45を用いて薬液を投与することもできる。
また、本発明においては必ずしも空圧タンク20や四方弁23,三方弁47A、47Bは必要としない。この場合、シリンダ等で供給管25A、25Bの内圧を圧縮して加圧力を各薬液タンク10A、10B等に印加すればよい。また、四方弁23,三方弁47A、47Bを省略して圧力制御弁41A、41Bに、薬液タンク10A、10Bに対する供給管25A、25Bと大気圧開放配管26,26A、26Bとの切り換え機構を付与してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第一実施形態による薬液噴霧投与装置を内視鏡に適用した場合の全体構成を示す図である。
【図2】第一実施形態による薬液噴霧投与装置の要部構成を示す説明図である。
【図3】カテーテルの先端に設けた吐出口から噴霧される薬液を示す説明図である。
【図4】薬液噴霧投与装置のカテーテルから噴霧された薬液の微粒子が患部に到達する状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第二実施形態による薬液噴霧投与装置の要部構成を示す説明図である。
【図6】本発明の第三実施形態による薬液噴霧投与装置の要部構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 内視鏡
5、40、45 薬液噴霧投与装置
6 カテーテル、マルチルーメンカテーテル
7A,7B 吐出口
10A、10B 薬液タンク
12A、12B 主電極
14 電源
15A、15B 回路部
16A、16B 副電極
17 電圧印加部
20 空圧タンク
23 四方弁
41A、41B 圧力制御弁
30、48A、48B 弁認識スイッチ
47A 第一の三方弁
47B 第二の三方弁
K 患部
G グランドバンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の薬液を噴霧投与して目的部位に付着させる薬液噴霧投与装置において、
複数の薬液を個別に貯留する薬液貯留部と、
複数の薬液に電位の異なる電圧をそれぞれ印加させる電圧印加部と、
前記薬液貯留部からそれぞれ各薬液を個別に供給して吐出口から異なる電位に帯電した微粒子を噴霧させる供給流路と、
を具備したことを特徴とする薬液噴霧投与装置。
【請求項2】
前記複数の供給流路の吐出口から噴射される複数の薬液の微粒子が異なる電位に帯電していて、噴霧後に互いに混合または接触するようにした請求項1に記載された薬液噴霧投与装置。
【請求項3】
前記薬液貯留部にはそれぞれ空圧タンクが接続され、該空圧タンクから供給される圧力気体によって前記供給流路の吐出口から薬液を吐出させるようにした請求項1または2に記載された薬液噴霧投与装置。
【請求項4】
前記空圧タンクはそれぞれ圧力制御手段を介して異なる薬液を個別に貯留した薬液貯留部に接続されており、前記圧力制御手段によって前記薬液貯留部に供給する圧力を調整することで、前記吐出口から噴射される複数の薬液の比率を調整できるようにした請求項1乃至3のいずれかに記載された薬液噴霧投与装置。
【請求項5】
前記複数の薬液は2種または3種以上の薬液である請求項1乃至4のいずれかに記載された薬液噴霧投与装置。
【請求項6】
前記電圧印加部は少なくとも2種の薬液に極性の異なる電圧を印加するようにした請求項1乃至5のいずれかに記載された薬液噴霧投与装置。
【請求項7】
複数の薬液を噴霧投与して目的部位に付着させる薬液噴霧投与方法において、
複数の薬液に異なる電位の電圧を印加すると共に個別に吐出口まで送液し、
該吐出口から複数の薬液を吐出して噴霧させ且つ噴霧された複数の薬液の微粒子は異なる電位に帯電されていて、
前記複数の薬液の微粒子が互いに混合または接触するようにしたことを特徴とする薬液噴霧投与方法。
【請求項8】
前記複数の供給流路の吐出口から噴霧される複数の薬液の微粒子は、混合比率が可変である請求項7に記載された薬液噴霧投与方法。
【請求項9】
前記複数の供給流路に供給される複数の薬液は、それぞれ薬液に印加される気体の圧力によって前記吐出口から噴霧される複数の薬液の混合比率を変化させるようにした請求項7または8に記載された薬液噴霧投与方法。
【請求項10】
前記複数の吐出口から噴霧される2種または3種以上の薬液は、異なる電位で同一または異なる極性に帯電した状態で空間で混合または接触するようにした請求項7乃至9のいずれかに記載された薬液噴霧投与方法。
【請求項11】
前記2つの吐出口から噴霧される2種の薬液は、異なる極性に帯電した状態で空間で混合または接触するようにした請求項7乃至10のいずれかに記載された薬液噴霧投与方法。
【請求項12】
前記複数の薬液は混合または接触した微粒子の状態で前記目的部位との電位差を有していて、該電位差によって目的部位に到達させるようにした請求項7乃至11のいずれかに記載された薬液噴霧投与方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−268668(P2009−268668A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121206(P2008−121206)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】