説明

薬液配管装置

【課題】薬液に溶存するフィルタ等で除去できない程度の小さいサイズの気泡を微細化する薬液配管装置を提供する。
【解決手段】基板に薬液を塗布、または噴射する塗布装置または噴射装置の薬液配管装置であって、複数の異なる断面を有する、薬液の流路と、流路の途中の流路外壁に備えられ気泡を粉砕する超音波ヘッドと、流路の途中の流路外壁に前記超音波ヘッドと対向する位置に備えられ、超音波ヘッドの振動を反射するための超音波反響板と、前記超音波ヘッドと前記超音波反響板の近傍に設けられ薬液の温度を調整するための温度調整機構と、流路の途中に挿入され、気泡を微細化する体積調整用ブロックと、を備え、薬液内の気泡を微細化することを特徴とする薬液配管装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に薬液を塗布、または噴射する塗布装置または噴射装置の薬液配管であって、更に詳しくは薬液内の気泡を微細化して基板に薬液を供給する配管装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬液を塗布、または噴射される基板の一例として図1にカラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ基板を断面の一例を示す。カラーフィルタ1は、基板2上にブラックマトリックス(以下、BM)3、レッドRの着色画素(以下、R画素)4−1、グリーンGの着色画素(以下、G画素)4−2、ブルーBの着色画素(以下、B画素)4−3、透明電極5、及びフォトスペーサー(Photo Spacer)(以下、PS)6、バーテイカルアライメント(Vertical Alignment)(以下、VA)7が順次形成されたものである。
【0003】
上記構造のカラーフィルタの製造方法は、フォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法を用いることが知られているが、図2は一般的に用いられているフォトリソグラフィー法の工程を示すフロー図である。カラーフィルタは、先ず、基板上にBMを形成処理する工程(C1)、基板を洗浄処理する工程(C2)、着色フォトレジストを塗布および予備乾燥処理する工程(C3)、着色フォトレジストを乾燥、硬化処理するプリベーク工程(C4)、露光処理する工程(C5)、現像処理する工程(C6)、着色フォトレジストを硬化処理する工程(C7)、透明電極を成膜処理する工程(C8)、PS、VAを形成処理する工程(C9)がこの順に行われ製造される。
【0004】
例えば、R画素、G画素、B画素の順に画素が形成される場合には、カラーフィルタ用基板を洗浄処理する工程(C2)から、着色フォトレジストを硬化処理する工程間(C7)ではレッドR、グリーンG、ブルーBの順に着色フォトレジストを変更して3回繰り返されてR画素、G画素、B画素が形成される。
【0005】
上記工程では、レッドR、グリーンG、ブルーの着色フォトレジストの塗布や現像液の噴射が行われる。
【0006】
薬液の塗布、散布を伴う各種プロセス工程において、気泡は、薬液の塗布量や散布量のばらつきの原因となり、特に上記着色レジストの塗布量のばらつきは、カラーフィルタの不良の原因となる。
【0007】
例えば、着色フォトレジスト(以下、レジスト)塗布装置では、レジスト液の塗布むらを防止するために、レジストに混入した気泡を定期的に目視で監視し、気泡が発見されると、気泡が排出されるまでレジストを廃棄することにより、その気泡を除去することが行われていた。
【0008】
更には、気泡除去の手段として、従来、各種フィルタや脱泡ユニットなどによる対策がとられてきた。フィルタとしてはメッシュ状樹脂が、また脱泡ユニットとしては真空脱気/加熱脱気/遠心分離脱気などが装置化され用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−155985号公報
【特許文献2】特開2005−136186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、気泡を目視で監視しながらレジストを廃棄する方法では、気泡の見落としが発生し、レジスト液の塗布むらを完全に排除できず、更に気泡が確認されると、気泡が排出されるまでレジストが廃棄されるので、レジスト液の廃棄量が増大するとともに、レジスト液の廃棄が手動で行われるため、スループットが低下するという問題があった。
【0011】
また、気泡を除去する手段として各種フィルタや脱泡ユニットを用いる場合には、熱や攪拌を嫌う、例えば溶剤等を含有する薬液を濾過する場合、適用可能な手段は少なくフィルタや真空脱気程度に限定される。フィルタや真空脱気による気泡の除去は有効ではあるが、比較的大きいサイズの気泡除去に機能が限定され、薬液に溶存する比較的小さいサイズの気泡除去は困難である。また、除去サイズを小さくした場合は、フィルタの密度を細かくし、更に複数枚使用しなければならないため、求める薬液の流量が得られなかったり、気泡除去装置が複雑になるため、除去の効率が著しく低下する問題が発生する。
【0012】
以上の問題に鑑みて本発明は、薬液に溶存するフィルタ等で除去できない程度の小さいサイズの気泡を微細化する薬液配管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、基板に薬液を塗布、または噴射する塗布装置または噴射装置の薬液配管装置であって、
複数の異なる断面を有する、薬液の流路と、
流路の途中の流路外壁に備えられ気泡を粉砕する超音波ヘッドと、
流路の途中の流路外壁に前記超音波ヘッドと対向する位置に備えられ、超音波ヘッドの振動を反射するための超音波反響板と、
前記超音波ヘッドと前記超音波反響板の近傍に設けられ薬液の温度を調整するための温度調整機構と、
流路の途中に挿入され、気泡を微細化する体積調整用ブロックと、を備え、薬液内の気泡を微細化することを特徴とする薬液配管装置である。
【0014】
本発明の請求項2に係る発明は、前記複数の異なる断面を有する、薬液の流路の大きさが、薬液の流路手前から中、小、大、中と異なることを特徴とする請求項1に記載の薬液配管装置である。
【0015】
本発明の請求項3に係る発明は、前記超音波ヘッドと前記超音波反響板は、前記断面が大の流路の入り口の近傍の外壁に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の薬液配管装置である。
【0016】
本発明の請求項4に係る発明は、前記体積調整用ブロックは、前記断面が大の流路の出口の近傍の流路内に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の薬液配管装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の薬液配管装置によれば、薬液内に溶存する気泡を微細化することが可能となり、その結果、薬液の材料のむだを抑制し、また薬液の塗布量や噴射量のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの一例を断面で示した図。
【図2】一般的に用いられているフォトリソグラフィー法の工程のフロー図。
【図3】本発明に係る薬液配管装置の概要構成を示す図。
【図4】本発明に係る薬液配管装置の配管内の気泡の大きさを模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る薬液配管装置を実施するための形態を説明する。
【0020】
図3は本発明に係る薬液配管装置の概要構成を示す図である。薬液配管装置は、薬液の流路の断面が異なる複数の流路11、12、13、14と、流路の途中の流路外壁に備えられ気泡を粉砕する超音波ヘッド15と、流路の途中の流路外壁に前記超音波ヘッド15と対向する位置に備えられ、超音波ヘッドの振動を反射するための超音波反響板16と、前記超音波ヘッドと前記超音波反響板の近傍に設けられ薬液の温度を調整するための温度調整機構17と、流路の途中に挿入され、気泡を微細化するための体積調整用ブロック18と、を備えている。
【0021】
前記複数の流路11、12、13、14は薬液の流れる方向を示す矢印19の手前から中、小、大、中と異なる断面の大きさを有しており、その断面形状は例えば円形状を有するものである。
【0022】
図4は本発明に係る薬液配管装置の配管内の気泡の大きさを模式的に示した図である。
【0023】
流路11に存在する気泡20は、流路11よりも断面積が小さい流路12に入る手前で気泡20よりもサイズの小さな気泡21となった後に、流路12に続く流路12よりも断面積が大きい流路13の入り口でサイズの大きな気泡22と成長する。
【0024】
気泡22は、更に、超音波ヘッド15と超音波反響板16による超音波の振動によって粉砕され気泡23を経て気泡24となる。この場合、薬液の温度上昇を嫌う薬液の場合には、超音波ヘッド15と超音波反響板16による超音波の振動による薬液の温度上昇を防ぐために温度調整機構17が超音波ヘッドと前記超音波反響板の近傍に設けられている。
【0025】
気泡24は、その後流路13の末端の位置に置かれた体積調整用ブロック18を経過する際に微細化された気泡25となる。この場合、体積調整用ブロック18によって流路は中の断面積となっている。更に中の断面積である流路14によって気泡25は、気泡の再結合が抑制される。このように上記薬液配管装置によって、気泡を極微細化し、また、微細化状態を安定させることが可能となる。微細化された気泡が再結合(凝集)することを低減するため、上記薬液配管装置は、ユースポイント付近へ設置することが望ましい。
【0026】
尚、気泡を微細化することで、気泡が薬液内に均等に分散される。この結果、本配管装置の下流に脱気モジュールを搭載した場合、微細化した気泡は、大きな単泡と比較して中空糸膜との接触面積が多く取れるので、脱気効率が高まる。
【0027】
上記では配管の断面は円形状を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば方形断面構造を採用した場合、温度調整機構と薬液の接触面積を増大させることが可能となる(例えば図3において、高さ方向が薄く、奥行き方向が長い方形断面構造)。
【0028】
上記温度調整機構17は超音波ヘッド15と超音波反響板16による超音波の振動による薬液の温度上昇を防ぐために設けたことを例示したが、上記効果とは別に以下に示す効果を得ることが出来る。即ち、粘度が高く流動性が低い(薬液流速が低い)薬液の場合、気泡の微細化効果を十分に得られないことが想定されるが、 このように流動性が低い薬液の場合には、上記方形断面構造を採用することによって、薬液を瞬時昇温することで、
流速向上、気泡の微細化効果の向上を図ることができる。
【0029】
上記とは逆に、薬液の粘度が低く流動性が高い場合には、微細化後の気泡が再結合しやすくなるが、気泡粉砕後に薬液を瞬時冷却することで薬液の流動性を抑制(粘度アップ)することが出来、その結果、気泡の再結合を抑制することが可能となる。
【0030】
以上のように、本発明の薬液配管装置によれば、簡単な構成と配管の構造によって薬液内に溶存する気泡を微細化することが可能となり、その結果、薬液の材料のむだを抑制し、また薬液の塗布量や噴射量のばらつきを抑制ができる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・カラーフィルタ
2・・・基板
3・・・ブラックマトリックス(BM)
4−1・・・レッドRの着色画素(R画素)
4−2・・・グリーンGの着色画素(G画素)
4−3・・・ブルーBの着色画素(B画素)
5・・・透明電極
6・・・フォトスペーサー(PS)
7・・・バーテイカルアライメント(VA)
11、12、13,14・・・断面が異なる複数の流路
15・・・超音波ヘッド
16・・・超音波反響板
17・・・温度調整機構
18・・・体積調整用ブロック
19・・・薬液の流れる方向を示す矢印
20・・・流路11に存在する気泡
21・・・気泡20よりもサイズの小さな気泡
22・・・サイズの大きな気泡
23・・・粉砕された気泡
24・・・粉砕された気泡23の次の気泡
25・・・微細化された気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に薬液を塗布、または噴射する塗布装置または噴射装置の薬液配管装置であって、
複数の異なる断面を有する、薬液の流路と、
流路の途中の流路外壁に備えられ気泡を粉砕する超音波ヘッドと、
流路の途中の流路外壁に前記超音波ヘッドと対向する位置に備えられ、超音波ヘッドの振動を反射するための超音波反響板と、
前記超音波ヘッドと前記超音波反響板の近傍に設けられ薬液の温度を調整するための温度調整機構と、
流路の途中に挿入され、気泡を微細化する体積調整用ブロックと、を備え、薬液内の気泡を微細化することを特徴とする薬液配管装置。
【請求項2】
前記複数の異なる断面を有する、薬液の流路の大きさが、薬液の流路手前から中、小、大、中と異なることを特徴とする請求項1に記載の薬液配管装置。
【請求項3】
前記超音波ヘッドと前記超音波反響板は、前記断面が大の流路の入り口の近傍の外壁に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の薬液配管装置。
【請求項4】
前記体積調整用ブロックは、前記断面が大の流路の出口の近傍の流路内に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の薬液配管装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−53324(P2012−53324A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196495(P2010−196495)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】