説明

薬物キャリアとしてのクロロトキシン

本発明は、毒素部分(例えば、クロロトキシン部分)を、治療剤(例えば、それらの効果を発揮するために細胞内取込みを要する治療剤)のためのキャリアとして、使用することに関する。例えば、いくつかの実施形態において、本発明は、毒素(例えば、クロロトキシン)部分および抗癌部分を含む結合体、ならびに細胞取り込みを増大させる、および/もしくは上記抗癌薬物の癌細胞に対する特異性を増大させるために、このような結合体を使用するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、毒素部分(例えば、クロロトキシン部分)および核酸薬剤を含む結合体を提供する。このような結合体の投与を含む処置方法、ならびにこのような処置方法を行うために有用な薬学的組成物およびキットもまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2007年8月7日に出願された米国仮特許出願第60/954,409号に対する優先権および米国仮特許出願第60/954,409号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/954,409号の全ての内容は、参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
悪性腫瘍に対する化学療法剤の臨床的使用は、多くの場合において成功しているが、いくつかの制限もまた存在する(非特許文献1)。特に、抗癌剤は、しばしば、健康な細胞と比較して、腫瘍細胞を選択的に作用せず、このことは、高い毒性および副作用をもたらす(非特許文献2)。高い細胞分裂速度を有する組織(例えば、骨髄、腸粘膜、および毛包細胞)は、特に影響を及ぼされる。選択性の欠如および得られる有害な全身毒性は、患者に投与され得る薬物の用量、従って、特定の抗癌剤の治療可能性を制限する。
【0003】
選択性の欠如は、主要ではあるが、唯一の障害物であり、このことは、腫瘍薬物有効性の最適化を妨げる。化学療法剤の効力はまた、細胞の薬物耐性の存在もしくは発生によって被毒制限され得る(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。細胞増殖抑制剤/細胞傷害剤に対する耐性は、種々の機構によって機能し得、これらの機構としては、特定の抗癌剤が細胞に入らないようになる原形質膜キャリアの減少もしくは喪失、および/またはエネルギー依存性ポンプのレベルにおける増加(例えば、上記腫瘍細胞からの上記薬物の排出において生じるp−糖タンパク質)に起因する低下した細胞内蓄積、標的部位において不十分な濃度をもたらす薬物の早期不活性化、特異的酵素活性の低下もしくは喪失に起因する上記薬物の損なわれた活性化、不活性化抗体の形成、ならびにDNA修復機構の出現が挙げられる。
【0004】
特定の化学療法剤の別の制限は、それらの水中での溶解度が低いことである。このような薬物の膜透過性および抗力は、疎水性が増加するとともに増加する。さらに、これら疎水性薬剤の非経口投与は、いくつかの問題と関連する。従って、水性媒体中の溶解しなかった薬物によって形成される凝集物の静脈内投与は、上記薬物が腫瘍に浸透する前に血液の毛細管の塞栓を引き起こし得る。さらに、疎水性薬物の低い溶解度は、排出および代謝性分解と合わせて、治療上顕著な全身濃度の維持を妨げる。
【0005】
化学療法剤が直面する難題はまた、他の治療剤についても当てはまり得る。特に、細胞への有効な送達は、多くの異なる治療実体についても未だに問題がある。
【0006】
薬物送達系は、薬物効力を最適化するという目的とともに開発されてきたが、これら系の多く(例えば、ミセル、リポソーム、微粒子、抗体および薬物−ポリマー結合体)は、血漿中での不安定性、酸化もしくは他の分解機構に対する感受性、それらの生成に伴う技術的課題、細網内皮細胞による急速な排出(scavenging)、癌細胞に対して選択性がないこともしくは低い選択性,および制限された細胞のインターナリゼーションを含む制限を欠点としてもつ。従って、上記の課題を克服しかつ薬物送達を実質的に増強するための改善された薬物送達アプローチが、当該分野で未だに必要である。上記薬物を細胞に選択的に送達し得る薬物キャリアもしくはビヒクルの開発が、特に望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】B.A.Chabner and T.G.Roberts,Nature Rev.Cancer,2005,5:65−72
【非特許文献2】M.V.Blagosklonny,Trends Pharmacol.Sci.,2005,26:77−81
【非特許文献3】M.Pomeroy and M.Moriarty,Cytotechnology,1993,12:385−391
【非特許文献4】G.Giaccone and H.M.Pinedo,The Oncologist,1996,1:82−87
【非特許文献5】M.M.Gottesman,Ann.Rev.Medicine,2002,53:615−627
【非特許文献6】G.D.Kruth,Oncogene,2003,22:7262−7264
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、治療剤(例えば、抗癌剤)の改善された送達および投与のための新たなシステムおよびストラテジーに関する。特に、本発明は、毒素部分(例えば、クロロトキシン)が(1)癌細胞に対して高い特異性を示し、(2)効率的な細胞によるインターナリゼーションを受け、そして(3)一定期間にわたって細胞内で安定なままである、という認識を包含する。従って、本発明は、治療剤(例えば、化学療法剤、核酸薬剤など)のためのキャリアとしての、毒素部分の使用に関する。本発明は、薬物の作用部位(例えば、腫瘍部位)において薬物を投与および送達するための方法および組成物を提供する。本発明は、治療剤を細胞へ送達するためのシステムを提供する。特定の実施形態において、本発明は、治療剤(例えば、抗癌剤)と関連する毒素部分(例えば、クロロトキシンもしくは関連薬剤)を含む結合体を提供する。
【0009】
患者への本発明の結合体の投与は、標的細胞に対する(特に、腫瘍細胞に対する)特異性を増大し得、細胞による細胞インターナリゼーションを増大し得、細胞による細胞分解を低下させ得、標的部位における蓄積を増大させ得、薬物耐性を克服し得、上記薬物の生物学的活性を増大させ得、そして/または上記治療剤単独(すなわち、本発明の結合体の一部としてではない)の投与と比較して、望ましくない副作用および毒性を予防、制限もしくは排除し得る。
【0010】
本発明のこれらおよび他の目的、利点および特徴は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読めば、当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、腫瘍細胞内のTM−601の迅速な取り込みおよび長期の細胞内局在を示す2つの蛍光顕微鏡画像のセットを示す。(A)は、非固定生細胞中のTM−601の核周囲の局在(緑)を示す。核は、青く見える。(B)は、培地からTM−601を除去し、さらに6日間37℃で培養した後の細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(定義)
本明細書全体を通して、いくつかの用語が使用され、これらは、以下の段落において定義される。
【0013】
用語「個体」および「被験体」とは、本明細書において交換可能に使用される。それらは、疾患もしくは障害(例えば、癌)に罹患している可能性があるか、もしくは罹患しやすいか可能性があるが、上記疾患もしくは障害を有していてもよいし、有していなくてもよい、ヒトもしくは他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは霊長類)をいう。多くの実施形態において、上記被験体は、ヒトである。用語「個体」および「被験体」は、特定の年齢を表さず、よって、成人、小児および新生児を包含する。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「癌患者」とは、癌に罹患しているかもしくは癌にかかりやすい個体をいい得る。癌患者は、癌と診断されていてもよいし、診断されていなくてもよい。上記用語はまた、癌治療を以前に受けたことがある個体を包含する。
【0015】
用語「処置」は、(1)疾患もしくは状態の始まりを遅らせること;(2)上記疾患もしくは状態の進行、悪化、その症状の悪化を遅らせるもしくは停止させること;(3)上記疾患もしくは状態の1つ以上の症状の程度および/もしくは発生率の改善をもたらすこと;(4)上記疾患もしくは状態を治癒すること、を目的とした方法もしくはプロセスを特徴づけるために本明細書において使用される。処置は、上記疾患が始まる前に、予防行為として施されてもよい。代わりにもしくはさらに、処置は、上記疾患もしくは状態が始まった後に、治療行為として施されてもよい。
【0016】
「薬学的組成物」とは、有効量の本発明の少なくとも1つの薬剤(すなわち、毒素結合体)、および少なくとも1種の薬学的に受容可能なキャリアを含むとして、本明細書において定義される。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「有効量」とは、その意図された目的(例えば、組織、システムもしくは被験体における望ましい生物学的もしくは医学的応答)を満たすに十分な化合物、薬剤もしくは組成物の任意の量をいう。例えば、本発明の特定の実施形態において、上記目的は、以下のとおりであり得る:標的組織に薬物を特異的に送達すること、細胞(例えば、癌細胞)の内部に薬物を送達すること、疾患もしくは障害(例えば、癌)を処置すること、など。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「生理学的に許容可能な塩」とは、任意の酸付加塩もしくは塩基付加塩であって、それぞれ、対応する遊離塩基もしくは遊離酸の生物学的活性もしくは特性を保持し、かつ生物学的に望ましくないものでも、別の方法で望ましくないものでもないものをいう。酸付加塩は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など);および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と形成される。塩基付加塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩など)および有機塩基(例えば、一級アミン、二級アミンおよび三級アミン、置換されたアミン(天然に存在する置換されたアミン、環式アミン、および塩基性イオン交換樹脂(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチル−アミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、トリメチルアミン、ジシクロヘキシル−アミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン(hydrabanine)、塩素、ベタイン、エチレン−ジアミン、グリコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂など)の塩が挙げられる)と形成され得る。
【0019】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、上記活性成分の生物学的活性の有効性を妨害せずかつ投与される濃度で宿主に対して過度に毒性でないキャリア媒体をいう。上記用語は、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,E.W.Martin,18th Ed.,1990,Mack Publishing Co.:Easton,PA(これは、その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「癌細胞」とは、調節されない細胞増殖を受ける細胞をいう。いくつかの実施形態において、癌細胞は、望ましくないかつ調節されない細胞増殖もしくは組織の異常な侵襲の異常な持続性を受ける、インビボでの哺乳動物(例えば、ヒト)における細胞である。いくつかの実施形態において、癌細胞は、永久的に不死化されている(例えば、適切な新鮮な培地および空間を与えられれば、無限にかつ調節されない様式で増殖する細胞培養物を樹立した細胞株)インビトロでの細胞である。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「癌」とは、調節されない細胞増殖によって代表的には特徴づけられる、哺乳動物における生理学的状態をいうかまたは記載する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、このような癌の例としては、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性器および生殖器官の癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、膀胱の癌、腎臓の癌、腎細胞癌、腎盂の癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が挙げられる。
【0022】
用語「治療剤」および「薬物」とは、本明細書において交換可能に使用される。それらは、疾患もしくは臨床的状態の処置において有効な、物質、分子、化合物、薬剤、因子もしくは組成物をいう。
【0023】
用語「化学療法剤」および「抗癌剤」もしくは「薬物」とは、本明細書において交換可能に使用される。それらは、癌もしくは癌のような状態を処置するために使用される薬物療法をいう。抗癌剤は、従来から、以下の群のうちの1つに分類されている:放射性同位体(例えば、ヨウ素−131、ルテチウム−177、レニウム−188、イットリウム−90)、毒素(例えば、ジフテリア、シュードモナス、リシン、ゲロニン)、酵素、プロドラッグを活性化する酵素、放射線増感剤、干渉RNA、スーパー抗原、抗血管新生剤、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物アルカロイド、インターカレート抗生物質、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗物質、有糸分裂インヒビター、増殖因子インヒビター、細胞周期インヒビター、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答改変因子、抗ホルモンおよび抗アンドロゲン。このような抗癌剤の例としては、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾロミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン(decarbazine)、アルトレタミン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、アザシチジン、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド(aminogluthimide)、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタンおよびアミホスチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
用語「プロドラッグ」とは、インビボで投与した後に、代謝されるか、または別の方法で上記化合物の生物学的に、薬学的に、もしくは治療的に活性な形態へと変換される化合物をいう。プロドラッグは、副作用もしくは毒性をマスクするため、化合物の風味を改善するため、および/または化合物の他の特徴もしくは特性を変えるために、代謝的安定性もしくは化合物の移動特性を変化させるように設計され得る。薬力学的プロセスおよびインビボでの薬物代謝の知識によって、一旦薬学的に活性な化合物が同定されると、薬学分野の当業者は、一般に、上記化合物のプロドラッグを設計し得る(Nogrady,「Medicinal Chemistry A Biochemical Approach」,1985,Oxford University Press:N.Y.,pages 388−392)。適切なプロドラッグの選択および調製のための手順はまた、当該分野で公知である。本発明の状況において、プロドラッグは、好ましくは、インビボ投与の後に、その活性形態への変換が、酵素触媒を要する化合物である。
【0025】
用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」とは、本明細書において交換可能に使用され、その中性(非荷電)形態においてもしくは塩としての、および改変されていないかまたはグリコシル化、側鎖酸化、もしくはリン酸化によって改変されているかのいずれかの、いずれかの種々の長さのアミノ酸配列をいう。特定の実施形態において、上記アミノ酸配列は、全長のネイティブタンパク質である。他の実施形態において、上記アミノ酸配列は、上記全長タンパク質のより小さなフラグメントである。さらに他の実施形態において、上記アミノ酸配列は、アミノ酸側鎖に結合されたさらなる置換基(例えば、グリコシル単位、脂質、もしくは無機イオン(例えば、ホスフェート))、および上記鎖の化学的変換に関する改変(例えば、スルフヒドリル基の酸化)によって改変される。従って、用語「タンパク質」(もしくはその等価な用語)は、その特異的な特性を変化させない改変を仮定して、上記全長ネイティブタンパク質のアミノ酸配列を含むことが意図される。特に、上記用語「タンパク質」は、タンパク質アイソフォーム(すなわち、同じ遺伝子によってコードされるが、それらのpIもしくはMW、または両方において異なる改変体)を包含する。このようなアイソフォームは、can differ in それらのアミノ酸配列(例えば、代わりのスプライシングもしくは制限されたタンパク質分解の結果として)、または選択肢において、他と異なる翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、アシル化もしくはリン酸化)から生じ得る。
【0026】
用語「タンパク質アナログ」とは、本明細書において使用される場合、親ポリペプチドと類似もしくは同一の機能を保持するが、上記親のものとは少なくともいくつかの点において異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。本発明の特定の実施形態において、タンパク質アナログは、上記親ポリペプチドと少なくとも特定の特徴的配列を共有する。いくつかの実施形態において、このような特徴的配列は、少なくとも3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、11アミノ酸長、12アミノ酸長、13アミノ酸長、14アミノ酸長、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、21アミノ酸長、22アミノ酸長、23アミノ酸長、24アミノ酸長、25アミノ酸長、もしくはそれ以上のアミノ酸長である。いくつかの実施形態において、特徴的配列は、必要とされる配列要素を含み、変動する領域によって分離される1個以上のアミノ酸長であり得る。いくつかの実施形態において、特徴的配列は、特定のアミノ酸残基が必要とされる位置を含む;いくつかの実施形態において、特徴的配列は、1個より多くの種々のアミノ酸が許容されるが、任意のアミノ酸が許容されるわけではない位置を含む。いくつかの実施形態において、タンパク質アナログは、上記親ポリペプチドと、少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列全体の同一性を共有する。従って、活性を保持しかつ少なくとも約30〜40%、しばしば、約50%、60%、70%、もしくは80%より大きい、そしてさらに通常には、遙かに高い同一性の少なくとも1個の領域を含み、そして少なくとも3〜4個のアミノ酸およびしばしば最大20個もしくはそれ以上のアミノ酸を通常含む1個以上の高度に保存された領域において、上記親ポリペプチドと遙かに高い同一性の、しばしば、90%、96%、97%、98%もしくは99%より高い同一性の1つの領域を含む配列全体の同一性を共有する任意のポリペプチドは、用語「タンパク質アナログ」に包含される。
【0027】
用語「タンパク質フラグメント」とは、本明細書において使用される場合、アミノ酸配列が親ポリペプチドのものの一部分に同一であるポリペプチドをいう。代表的には、タンパク質フラグメントは、上記親ポリペプチドにおいて見いだされた少なくとも5アミノ酸残基の範囲を含むアミノ酸配列を有する。タンパク質フラグメントは、全長親ポリペプチドの機能的活性を有してもよいし、有さなくてもよい。
【0028】
用語「生物学的に活性な」とは、指定された生物学的活性を有する薬剤に言及する。いくつかの実施形態において、上記用語は、上記親ポリペプチドの生物学的活性(例えば、癌細胞に特異的に結合する、そして/または癌細胞へとインターナライズされる能力)を共有するものを示すために、タンパク質改変体、アナログ、もしくはフラグメントに適用される。
【0029】
用語「相同な」(もしくは「相同性」)とは、本明細書において使用される場合、2つのポリペプチドの間、または2つの核酸分子の間の同一性の程度をいう。当該分野で公知であるように、両方の比較される配列における位置が同じ塩基もしくはアミノ酸モノマーサブユニットによって占有される場合、それぞれの分子は、その位置において相同であるといわれる。2つの配列間の相同性のパーセンテージは、2つの配列によって共有されるマッチングもしくは相同な位置の数を、比較した位置の数で除算し、そして100を乗算したものに対応する。一般に、比較は、2つの配列を整列させて、最大相同性を与える場合に、行われる。相同なアミノ酸配列は、同一もしくは類似のアミノ酸残基を共有する。類似の残基は、参照配列中の対応するアミノ酸残基の保存的置換であるか、または参照配列中の対応するアミノ酸残基の「供された点変異」である。参照配列中の残基の「保存的置換」とは、その対応する参照残基に物理的にもしくは機能的に類似する(例えば、類似のサイズ、形状、電荷、化学的特性(共有結合もしくは水素結合などを形成する能力を含む)を有する)置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffら(「Atlas of Protein Sequence and Structure」,1978,Nat.Biomed.Res.Foundation,Washington,DC,Suppl.3,22:354−352)によって「許容された点変異」について定義される基準を満たすものである。
【0030】
用語「融合タンパク質」とは、2つ以上のタンパク質もしくはそのフラグメントの個々のペプチド骨格を介して共有結合によって連結されたこれらタンパク質もしくはそのフラグメントを含むポリペプチドをいう。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、それらタンパク質をコードするポリヌクレオチド分枝の遺伝的発現を介して生成される。
【0031】
用語「低分子」とは、代表的には、約5,000ダルトン(Da)未満の分子量を有する化合物(例えば、有機化合物)をいう。多くの実施形態において、低分子は、約2,500Da未満、約1,000Da未満、もしくは約500Da未満の分子量を有する。いくつかの実施形態において、低分子は、ポリマーではない。いくつかの特定の実施形態において、低分子は、ペプチドではない。いくつかの実施形態において、低分子は、生物学的に活性である。低分子は、生物学的系(例えば、細胞もしくは生物)によって生成されるか、または実験室において化学的に合成され得る。
【0032】
(特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
上記のように、本発明は、薬物の送達および/もしくは投与を改善するための組成物および方法を提供する。特に、本発明は、治療剤と会合された毒素部分(例えば、クロロトキシン)を含む結合体;および患者の処置においてこれら結合体を使用するための方法を提供する。本発明の結合体の投与の利点としては、とりわけ、標的細胞に対する選択性(特に、癌細胞に対するものを含む)、細胞インターナリゼーションおよび保持が挙げられる。
【0033】
(結合体)
結合体は、一般に、少なくとも2つの分子の会合(例えば、結合、相互作用、もしくはカップリング)から生じる化合物である。既に上記で言及したように、本発明の結合体は、一般に、治療剤と会合された少なくとも1つの毒素部分(例えば、クロロトキシン部分)を含む。
【0034】
結合体内の毒素部分と治療剤との間の会合は、共有結合的であってもよいし、非共有結合的であってもよい。上記毒素部分と治療剤との間の会合の性質に拘わらず、上記会合は、好ましくは、上記結合体が、細胞へのおよび細胞内への輸送の前もしくはその間に解離しないように、十分に選択的で、特異的でかつ強い。毒素部分と治療部分との間の会合は、当業者に公知の任意の化学的、生化学的、酵素的、もしくは遺伝的カップリングを使用して達成され得る。
【0035】
特定の実施形態において、上記毒素部分と治療剤との間の会合は、非共有結合的である。非共有結合的会合の例としては、疎水性相互作用、静電的相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス相互作用、および水素結合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
特定の実施形態において、上記毒素部分と治療剤との間の会合は、共有結合的である。当業者によって認識されるように、治療剤および毒素部分は、直接的もしくは間接的のいずれかで(例えば、以下に議論されるように、リンカーを介して)互いに結合され得る。
【0037】
特定の実施形態において、治療剤および毒素部分は、直接的に、共有結合的に、互いに連結される。このような直接的共有結合は、アミド、エステル、炭素−炭素、ジスルフィド、カルバメート、エーテル、チオエーテル、尿素、アミン、もしくはカーボネート結合を介して達成される。このような共有結合は、例えば、上記治療剤および/もしくは上記毒素部分上に存在する官能基を利用することによって、達成され得る。2つの部分を一緒に結合するために使用され得る適切な官能基としては、アミン、無水物、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオールなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、一方の部分の官能基は、他方の部分にカップリングするために活性化される。例えば、活性化薬剤(例えば、カルボジイミド)は、このようなカップリングをもたらすために使用され得る。広範に種々の活性化薬剤が当該分野で公知であり、提供される結合体を形成するために適している。
【0038】
他の実施形態において、治療剤および毒素部分は、リンカー基を介して互いに間接的に共有結合的に連結される。これは、当該分野で周知の安定な二官能性薬剤(ホモ官能性薬剤およびヘテロ官能性薬剤(このような薬剤の例については、例えば、Pierce Catalog and Handbookを参照のこと)を含む)の任意の数を使用して達成され得る。二官能性薬剤の使用は、前者が、上記得られる結合体に存在する連結部分を生じるという点で活性化剤の使用とは異なるのに対して、後者は、この反応に関与する2つの部分の間の直接的なカップリングを生じる。上記二官能性薬剤の役割は、2つの他の不活性部分の間の反応を可能にし得る。代わりにもしくはさらに、上記二官能性薬剤は、反応生成物の一部になり、上記結合体に対してある程度の配座的可撓性を付与するように選択され得る(例えば、上記二官能性薬剤は、いくつかの原子を含む直線的なアルキル鎖を含む(例えば、上記直線的なアルキル鎖は、2〜10個の間の炭素原子を含む))。代わりにもしくはさらに、上記二官能性薬剤は、上記治療剤と毒素部分との間で形成される連結が切断可能である(例えば、加水分解可能である(このようなリンカーの例については、例えば、米国特許第5,773,001号;同第5,739,116号および同第5,877,296号(これらの各々は、その全体が本明細書に参考として援用される)を参照のこと))ように、選択され得る。このようなリンカーは、例えば、上記薬物のより高い活性が、上記毒素部分の加水分解後に認められる場合に、好ましくは使用される。薬物が上記毒素部分から切断される例示的機構としては、ライソゾームの酸性pHにおける加水分解(ヒドラゾン、アセタール、およびcis−アコニテート様アミド)、ライソゾーム酵素(カテプシンおよび他のライソゾーム酵素)によるペプチド切断、およびジスルフィドの還元が挙げられる。薬物が上記毒素生体結合体から切断される別の機構としては、細胞外もしくは細胞内での生理学的pHにおいて加水分解が挙げられる。この機構は、上記治療剤を上記毒素部分にカップリングするために使用される架橋剤が、生分解性/生体腐蝕性実体(例えば、ポリデキストランなど)である場合に適用される。
【0039】
例えば、ヒドラゾン含有結合体は、望ましい薬物放出特性を提供する導入されたカルボニル基と作製され得る。結合体はまた、一方の末端にジスルフィド基および他方の末端にヒドラジン誘導体を有するアルキル鎖を含むリンカーと作製され得る。
【0040】
ヒドラゾン以外の官能基を含むリンカーはまた、ライソゾームの酸性環境において切断される可能性を有する。例えば、結合体は、細胞内で切断可能なヒドラゾン以外の基(例えば、エステル、アミド、およびアセタール/ケタール)を含むチオール反応性リンカーから作製され得る。上記抗癌剤に対して結合される酸素原子のうちの一方および毒素結合のためにリンカーに対する他方の酸素原子を有する5〜7員環のケトンから作製されるケタールがまた、使用され得る。
【0041】
pH感受性リンカーのクラスの別の例は、cis−アコニテートであり、これは、アミド基に併置されたカルボン酸基を有する。上記カルボン酸は、酸性のライソゾームにおけるアミド加水分解を促進する。構造のいくつかの他のタイプを有する、加水分解速度加速の類似のタイプを達成するリンカーがまた、使用され得る。
【0042】
薬物−毒素結合体についての別の潜在的な放出方法は、上記ライソゾーム酵素によるペプチドの酵素的加水分解である。一例において、ペプチド毒素は、アミド結合を介してパラ−アミノベンジルアルコールに結合され、次いで、カルバメートもしくはカーボネートが、上記ベンジルアルコールと上記治療剤との間に作製される。上記ペプチドの切断は、上記アミノベンジルカルバメートもしくはアミノベンジルカーボネートの崩壊、および上記治療剤の放出をもたらす。別の例において、フェノールは、上記カルバメートの代わりに上記リンカーの崩壊によって切断され得る。別のバリエーションにおいて、ジスルフィド還元は、パラ−メルカプトベンジルカルバメートもしくはパラ−メルカプトベンジルカーボネートの崩壊を開始するために使用される。
【0043】
多くの治療剤(特に、抗癌剤)は、あるとしても、水中での溶解度がほとんどなく、このことは、上記治療剤の凝集に起因して、上記結合体上に添加する(load)薬物を制限し得る。このことを克服するための1つのアプローチは、上記リンカーに可溶化基を付加することである。PEG(ポリエチレングリコール)およびジペプチドからなるリンカーで作製された結合体が使用され得、これらとしては、例えば、上記毒素部分に結合されたPEG 二酸 チオール−酸、もしくはマレイミド−酸、ジペプチドスペーサー、および治療剤に結合されたアミドを有するものが挙げられる。別の例は、治療剤にジスルフィド結合し、上記毒素部分にアミド結合したPEG含有リンカーで作製された結合体である。PEG基を組み込んだアプローチは、凝集および薬物添加(loading)における制限を克服するにあたって有益であり得る。
【0044】
クロロトキシン結合体内の治療部分がタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドである実施形態において、上記クロロトキシン結合体は、融合タンパク質であり得る。既に上記で定義されるように、融合タンパク質は、2つ以上のタンパク質もしくはペプチドの個々のペプチド骨格を介して共有結合によって連結されたこれらタンパク質もしくはペプチドを含む分子である。本発明の方法において使用される融合タンパク質は、当該分野で公知の任意の適切な方法によって生成され得る。例えば、それらは、ポリペプチド合成器を使用して直接タンパク質合成方法によって生成され得る。あるいは、遺伝子配列のPCR増幅は、アンカープライマーを使用して行われ得、このアンカープライマーは、後にアニールされかつ再増幅されて、キメラ遺伝子配列を生成し得る2つの連続する遺伝子フラグメント間に相補的突出部を生じる。融合タンパク質は、標準的な組換え方法によって得られ得る(例えば、Maniatisら「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」,第2版,1989,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring,N.Y.を参照のこと)。これらの方法は、一般に、(1)所望の融合タンパク質をコードする核酸分子の構築;(2)上記核酸分子の組換え発現ベクターへの挿入;(3)発現ベクターでの適切な宿主細胞の形質転換;および(4)上記宿主細胞における上記融合タンパク質の発現を含む。このような方法によって生成される融合タンパク質は、当該分野で公知のように、培養培地から直接的に、もしくは上記細胞の溶解によるかのいずれかで、回収および単離され得る。形質転換された宿主細胞によって生成されるタンパク質を精製するための多くの方法は、当該分野で周知である。これらとしては、沈降、遠心分離、ゲル濾過、および(イオン交換、逆相、およびアフィニティー)カラムクロマトグラフィーが挙げられるが、これらに限定されない。他の精製方法が記載されている(例えば、Deutscherら「Guide to Protein Purification」 Methods in Enzymology,1990,Vol.182,Academic Pressを参照のこと)。
【0045】
当業者によって容易に認識され得るように、本発明の結合体は、任意の数の異なる方法によって互いに会合される任意の数の毒素部分および任意の数の治療剤分子を含み得る。結合体の設計は、その意図された目的およびその使用の特定の状況において望ましいその特性によって影響される。毒素部分を治療剤に会合もしくは結合して、結合体を形成するための方法の選択は、当業者の知識の範囲内であり、一般に、上記部分の間で望ましい会合の性質(すなわち、共有結合 対 非共有結合および/もしくは切断可能 対 切断可能でない)、上記毒素部分および治療剤の性質、関与する部分の上の官能化学基の存在と性質などに依存する。
【0046】
(毒素)
本発明の結合体は、少なくとも1つの毒素部分を含む。本明細書において使用される場合、用語「毒素部分」とは、細胞(特に、腫瘍/癌細胞)に特異的に結合し、これら細胞へインターナライズされる毒素をいう。毒素部分はしばしば、特定の細胞に対して高い親和性、選択性および/もしくは特異性を示し、すなわち、毒素部分は、上記細胞へのその曝露の条件もしくは環境下で、特異的にそして/もしくは効率的に、上記細胞を認識し、上記細胞と相互作用し、上記細胞に結合し、上記細胞を標識する。結合体の一部の場合、上記毒素部分は、上記結合体にその特性のうちの少なくともいくらかを付与し、そして上記結合体は、細胞(例えば、腫瘍/癌細胞)を標的とし、上記細胞へ浸透する。好ましくは、毒素部分は、インビボ条件下でそれらの選択性/特異性およびインターナリゼーション特性を保持する安定な実体である。
【0047】
本発明の多くの実施形態において、毒素部分は、クロロトキシン、生物学的に活性なクロロトキシンサブユニット、もしくはクロロトキシン誘導体からなる群より選択される。
【0048】
特定の実施形態において、用語「クロロトキシン部分」とは、Leiurus quinquestritus サソリ毒液(DeBinら,Am.J.Physiol.,1993,264:C361−369)に天然に由来する全長の36アミノ酸ポリペプチドであって、国際出願番号WO 2003/101474(その内容は、本明細書に参考として援用される)の配列番号1に示されるネイティブクロロトキシンのアミノ酸配列を含むものをいう。用語「クロロトキシン」とは、合成されるかもしくは組換え生成される配列番号1を含むポリペプチド(例えば、米国特許第6,319,891号(これは、その全体が本明細書に参考として援用される)に開示されるもの)を含む。
【0049】
「生物学的に活性なクロロトキシンサブユニット」は、クロロトキシンの36アミノ酸未満を含み、正常細胞と比較して、クロロトキシンが腫瘍/癌細胞に特異的に結合し、これら腫瘍/癌細胞にインターナライズされる能力を保持するペプチドである。
【0050】
本明細書において使用される場合、用語「クロロトキシン誘導体」とは、正常細胞と比較して、クロロトキシンが腫瘍/癌細胞に特異的に結合し、これら腫瘍/癌細胞の中にインターナライズされる能力を保持する、広範に種々のクロロトキシンの誘導体、アナログ、改変体ポリペプチドフラグメントおよび模倣物、ならびに関連ペプチドのうちのいずれかをいう。クロロトキシン誘導体の例としては、クロロトキシンのペプチド改変体、クロロトキシンのペプチドフラグメント(例えば、国際出願番号WO2003/101474に記載される配列番号1、2、3、4、5、6、もしくは7の連続10マーペプチドを含むかもしくはこれらからなるか、または国際出願番号WO2003/101474に記載される配列番号1の残基10〜18もしくは21〜30を含むフラグメント)、コア結合配列、およびペプチド模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
クロロトキシン誘導体の例としては、国際出願番号WO2003/101474の配列番号1に示されるアミノ酸配列のフラグメントを有し、少なくとも約7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個もしくは35個連続するアミノ酸残基を有し、クロロトキシンの活性と関連するペプチドを含む。このようなフラグメントは、公知のペプチドドメイン、および述べられた親水性の領域に対応する上記アミノ酸配列の領域と同定された、上記クロロトキシンペプチドの機能的領域を含み得る。このようなフラグメントはまた、リンカーによって除去もしくは置換される、互いに任意の順番で間に挟まるアミノ酸で連結された2つのコア配列を含み得る。
【0052】
クロロトキシン誘導体は、上記誘導体配列および上記クロロトキシン配列が最大に整列される場合、少なくとも1個のアミノ酸残基の保存的もしくは非保存的置換を含むポリペプチドを含む。上記置換は、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を増強するか、クロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能を阻害するか、またはクロロトキシンの少なくとも1つの特性もしくは機能に対して中立であるものであり得る。本明細書において使用される場合、クロロトキシンの「特性もしくは機能」としては、異常な細胞増殖を停止させる能力、被験体における麻痺を引き起こす能力、正常細胞と比較した場合に腫瘍/癌細胞に特異的に結合する能力、腫瘍/癌細胞へインターナライズされる能力、および腫瘍/癌細胞を死滅させる能力が挙げられるが、これらに限定されない。上記腫瘍/癌細胞は、インビトロ、エキソビボ、インビトロで存在し得、被験体に由来する初代単離物、培養細胞、もしくは細胞株であり得る。
【0053】
本発明の実施における使用に適したクロロトキシン誘導体の例としては、国際出願番号WO2003/101474に記載されている。特定の例としては、この国際出願に示される配列番号8もしくは配列番号13を含むかもしくはこれらからなるポリペプチド、ならびにその改変体、アナログ、および誘導体を含む。
【0054】
クロロトキシンの他の例としては、例えば、相同組換え、部位指向性変異誘発もしくはPCR変異誘発によって予め決定された変異を含むポリペプチド、および上記ペプチドのファミリーの対立遺伝子もしくは他の天然に存在する改変体;ならびに誘導体であって、上記ペプチドが、置換、化学的な、酵素的なもしくは他の適切な手段によって、天然に存在するアミノ酸(例えば、酵素もしくは放射性同位体のような検出可能な部分)以外の部分で共有結合的に改変されたものが挙げられる。
【0055】
クロロトキシンおよびそのペプチド誘導体は、当該分野で公知のように、広範な種々の方法のうちのいずれか(標準的な固相(もしくは液相)ペプチド合成法が挙げられる)を使用して、調製され得る。さらに、これらペプチドをコードする核酸は、市販のオリゴヌクレオチド合成機器を使用して合成され得、上記タンパク質は、標準的な組換え生成システムを使用して組換え生成され得る。
【0056】
他の適切なクロロトキシン誘導体としては、クロロトキシンの三次元構造を模倣するペプチド模倣物が挙げられる。このようなペプチド模倣物は、天然に存在するペプチドを超える顕著な利点(例えば、より経済的な生成、より高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(半減期、吸収、強度、抗力など)、変化した特異性(例えば、広いスペクトルの生物学的活性、低下した抗原性など)が挙げられる)を有し得る。
【0057】
特定の実施形態において、模倣物は、クロロトキシンペプチド二次構造の要素を模倣する分子である。タンパク質のペプチド骨格は、分子相互作用を容易にするような方法でアミノ酸側鎖(例えば、抗体および抗原のもの)を配向するために、主に存在する。ペプチド模倣物は、天然分子に類似の分子相互作用を可能にすると予期される。ペプチドアナログは、上記テンプレートペプチドのものに類似の特性を有する非ペプチド薬物として製薬産業で一般に使用される。化合物のこれらタイプはまた、ペプチド模倣物(peptide mimetics)もしくはペプチド模倣物(peptidomimetics)といわれ(例えば、Fauchere,Adv.Drug Res.,1986,15:29−69;Veber & Freidinger,Trends Neurosci.,1985,8:392−396;Evansら,J.Med.Chem.,1987,30:1229−1239を参照のこと)、そして通常、コンピューター化された分子モデリングの助けを借りて開発されている。
【0058】
一般に、ペプチド模倣物は、模範ポリペプチド(すなわち、生化学的特性もしくは薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似であるが、非ポリペプチド連結によって必要に応じて置換された1つ以上のペプチド結合を有する。ペプチド模倣物の使用は、薬物ライブラリーを作り出すために、コンビナトリアル化学の使用を介して高められ得る。ペプチド模倣物の設計は、例えば、腫瘍細胞へのペプチドの結合を増大もしくは減少させるアミノ酸変異を同定することによって補助され得る。使用され得るアプローチとしては、酵母ツーハイブリッド法(see, 例えば、Chienら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1991,88:9578−9582)およびファージディスプレイ法の使用が挙げられる。上記ツーハイブリッド法は、酵母におけるタンパク質−タンパク質相互作用を検出する(Fieldら,Nature,1989,340:245−246)。上記ファージディスプレイ法は、固定化タンパク質と、ファージ(例えば、λおよびM13(Ambergら,Strategies,1993,6:2−4;Hogrefeら,Gene,1993,128:119−126))の表面で発現されるタンパク質との間の相互作用を検出する。これら方法は、ペプチド−タンパク質相互作用のポジティブ選択およびネガティブ選択、ならびにこれら相互作用を決定する配列の同定を可能にする。
【0059】
特定の実施形態において、用語「毒素部分」とは、上記のクロロトキシンに類似もしくは関連した活性を示す他のサソリ種のポリペプチド毒素をいう。本明細書において使用される場合、用語「クロロトキシンに類似もしくは関連した活性」とは、特に、腫瘍/癌細胞に対する選択性/特異性、ならびに腫瘍/癌細胞へインターナライズされる能力をいう。適切な関連サソリ毒素の例としては、クロロトキシンに対してアミノ酸および/もしくはヌクレオチド配列同一性を示すサソリ起源の毒素もしくは関連ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。関連サソリ毒素の例としては、Mesobuthus martenssi由来のCT神経毒(GenBankアクセッション番号AAD473730)、Buthus martensii karsch由来の神経毒BmK 41−2(GenBankアクセッション番号A59356)、Buthus martensii由来の神経毒Bm12−b(GenBankアクセッション番号AAK16444)、Leiurus quinquestriatus hebraeu由来の推定毒素LGH 8/6(Probable Toxin LGH 8/6)(GenBankアクセッション番号P55966)、Mesubutus tamulus sindicus由来の低分子毒素(GenBankアクセッション番号P15229)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明における使用に適した関連サソリ毒素は、国際出願番号WO2003/101474の配列番号1に示されるクロロトキシン全体の配列と少なくとも65%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。特定の実施形態において、関連サソリ毒素は、国際出願番号WO2003/101474に示されるクロロトキシンの配列番号8もしくは配列番号13に相同な配列を有するこれらサソリ毒素を含む。
【0061】
特定の実施形態において、本発明の結合体内の毒素部分は、標識される。標識は、通常、好ましくは、上記ペプチド配列上の妨げない位置への1個以上の標識の非共有結合的結合もしくは共有結合的結合(直接的もしくは間接的に、スペーサー(例えば、アミド基)を介して)を含む。このような妨げない位置は、腫瘍細胞への上記毒素部分の特異的結合および/もしくは腫瘍細胞への上記毒素部分のインターナリゼーションに関与しない位置である。好ましい実施形態において、標識は、上記毒素部分の望ましい生物学的活性もしくは薬理学的活性を実質的に妨げない。
【0062】
標識もしくは検出可能な薬剤の役割は、上記毒素部分を含む結合体の検出を容易にすることである。好ましくは、上記検出可能な薬剤は、これが、測定され得かつその強度が毒素部分の量に関連するシグナルを生じるように、選択される。
【0063】
広範に種々の検出可能な薬剤のうちのいずれかが、本発明の実施において使用され得る。適切な検出可能な薬剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:種々のリガンド、放射性核種;蛍光色素;化学発光薬剤;微粒子;酵素;比色標識など。特定の実施形態において、毒素部分は、放射性同位体で標識される。例えば、毒素部分は、放射性同位体で標識され得る(すなわち、天然において通常は見いだされる原子質量もしくは質量数とは異なる原子質量もしくは質量数を有する原子によって置換された1個以上の原子を含み得る)か、または放射性同位体は、上記毒素分子に結合され得る。毒素部分に組み込まれ得る放射性同位体の例としては、水素、炭素、フッ素、リン、ヨウ素、銅、レニウム、インジウム、イットリウム、テクネチウムおよびルテチウムの放射性同位体(すなわち、H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu)が挙げられる。いくつかの実施形態において、金属放射性同位体は、キレート化によって、上記毒素部分へ非共有結合される。キレート化の例としては、毒素部分に融合されたポリ−His領域への金属放射性同位体のキレート化が挙げられる。
【0064】
特定の実施形態において、上記毒素部分は、上記のように、共有結合もしくはキレート化のいずれかを介して、金属(例えば、ガドリニウム(gadolinoum)(Gd)で標識される。
【0065】
このような標識された毒素部分は、陽電子放射断層撮影(PET)画像化法のため、もしくは単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)のためのラジオトレーサーとして有用であり得る。
【0066】
(治療剤)
本発明によって提供される結合体において、毒素部分(例えば、クロロトキシン部分)は、治療剤と会合される。特定の好ましい実施形態において、治療剤は、抗癌剤である。適切な抗癌剤としては、癌細胞に対して直接的もしくは間接的に毒性もしくは有害である、多数の種々の物質、分子、化合物、薬剤もしくは因子のうちのいずれかが挙げられる。
【0067】
当業者によって認識されるように、本発明の実施における使用に適した抗癌剤は、合成化合物であってもよいし、天然化合物であってもよいし;単一分子であっても異なる分子の複合体であってもよい。適切な抗癌剤は、種々のクラスの化合物(低分子、ペプチド、サッカリド、ステロイド、抗体、融合タンパク質、アンチセンスポリヌクレオチド、リボザイム、低分子干渉RNA、ペプチド模倣物などが挙げられるが、これらに限定されない)のうちのいずれかに属し得る。同様に、適切な抗癌剤は、種々のクラスの抗癌剤(アルキル化剤、代謝拮抗物質薬物、抗有糸分裂抗生物質、アルカロイド性抗腫瘍剤、ホルモンおよび抗ホルモン、インターフェロン、非ステロイド性抗炎症薬物、および種々の他の抗腫瘍薬剤が挙げられるが、これらに限定されない)のうちのいずれかの中に見いだされ得る。
【0068】
特に適切な抗癌剤は、癌細胞に対して不十分な選択性/特異性に起因して、望ましくない副作用を引き起こす薬剤;全くないかもしくは不十分な細胞取り込みおよび/もしくは保持を受ける薬剤;細胞薬物保持と関連する薬剤;ならびに不十分な水溶解度、凝集などに起因して、癌患者への投与のために容易に処方され得ない薬剤、である。
【0069】
本発明の結合体において使用され得る適切な抗癌剤の例は、以下でより詳細に記載される。
【0070】
(不十分に水溶解性の抗癌剤)
特定の実施形態において、本発明の結合体内の抗癌剤は、不十分な水溶解性の化合物である。当業者によって認識されるように、広範に種々の不十分な水溶解性の抗癌剤は、本発明における使用に適している。
【0071】
例えば、抗癌剤は、タキサンの中から選択され得、タキサンは、他の抗新生物薬剤に対して不応性である多くの固形腫瘍の処置において有効な薬剤と認識されている。現在承認されている2つのタキサンは、パクリタキセル(TAXOL)およびドセタキセル(TAXOTERE)である。パクリタキセル、ドセタキセル、および他のタキサンは、チューブリン(紡錘体微小管の形成において必須のタンパク質)の重合化を増強することによって作用する。このことは、非常に安定な、非機能的細管の形成を生じ、これは、細胞複製を阻害し、細胞死をもたらす。
【0072】
パクリタキセルは、非常に水溶性に乏しく、従って、実際に、静脈内投与のために水で処方することはできない。注射もしくは静脈内注入のためのTAXOLのいくつかの処方物は、Cremophor EL(ポリオキシエチレン化ひまし油)を薬物キャリアとして使用して、開発された。しかし、Cremophor ELは、それ自体毒性であり、かつ少なくとも部分的に、このような調製物の投与と関連して、過敏反応(重篤な皮疹(skin rash)、蕁麻疹(hives)、潮紅、呼吸困難、頻脈など)を担うと考えられている。このような副作用を回避するために、Cremophorを含むパクリタキセル処方物とともに、準備投薬がしばしば処方される。ドセタキセルは、パクリタキセルのアナログであり、水中で溶解性の乏しいパクリタキセルに類似である。薬学的使用についてドセタキセルを溶解するために使用される現在最も好ましい溶媒は、ポリソルベート80(TWEEN 80)である。患者に過敏反応を引き起こすことに加えて、TWEEN 80は、ジエチルヘキシルフタレート(これは、非常に毒性である)を浸出させる傾向があるので、PVC送達装置で使用することができない。
【0073】
タキサンおよび毒素(例えば、クロロトキシン)部分を含む本発明に従う結合体は、患者において有害な反応を誘導する溶媒およびキャリアの使用を回避するために、改善された送達法として使用され得る。
【0074】
別の例において、本発明の結合体内の抗癌剤は、抗生物質のエンジインファミリーに属し得る。ファミリーとして、上記エンジイン抗生物質は、これまでに発見された最も強力な抗腫瘍薬剤である。いくつかのメンバーは、アドリアマイシン(最も有効な、臨床的に使用されている抗腫瘍抗生物質のうちの1つ(Y.S.Zhenら,J.Antibiot.,1989,42:1294−1298))よりも1000倍強力である。例えば、本発明の結合体内の抗癌剤は、カリチアマイシンのエンジインファミリーのメンバーであり得る。土壌微生物であるMicromonospora echinospora ssp. calichensisのブロス抽出物から最初に単離され、上記カリチアマイシンは、強力なDNA損傷薬剤についてのスクリーニングにおいて検出された(M.D.Leeら,J.Am.Chem.Soc.,1987,109:3464−3466;M.D.Leeら,J.Am.Chem.Soc.,1987,109:3466−3468;W.M.Maieseら,J.Antibiot.,1989,42:558−563;M.D.Leeら,J.Antibiot.,1989,42:1070−1087)。
【0075】
カリチアマイシンは、オリゴサッカリド鎖へのグリコシル結合を介して連結された複雑な合成の二環式エンジインアリル基のトリスルフィド(allylic trisulfide)コア構造によって特徴づけられる。上記オリゴサッカリド部分は、多くの置換された糖誘導体、および置換されたテトラヒドロピラン環を含む。カリチアマイシンの上記エンジイン含有コア(もしくはアグリコン)および炭水化物部分は、これら分子の生物学的活性において異なる役割を果たすと報告された。一般に、上記コア部分がDNAを切断するのに対して、上記カリチアマイシンの上記オリゴサッカリド部分は、認識および送達系として働き、上記薬物を、二本鎖DNAの副溝(ここで上記薬物がそれ自体をつなぐ)へと導くと考えられる(「Enediyne Antibiotics as Antitumor Agents」,Doyle and Borders,1995,Marcel−Dekker:New York;)。二本鎖DNA切断は、宿主細胞に関して通常は修復不能もしくは容易には修復できない、最も頻繁には、致死的である損傷のタイプである。
【0076】
それらの化学的特性および生物学的特性が原因で、上記カリチアマイシンのいくつかのアナログが、潜在的な抗腫瘍薬剤として、前臨床モデルにおいて試験されてきた。単一薬剤療法としてのそれらの開発は、処置のための治療的用量範囲を制限する遅延毒性が原因で、続行されてこなかった。しかし、上記カリチアマイシンのいくつかのアナログの効能によって、それらは標的化化学療法に特に有用になる。
【0077】
適切な不十分な水溶性抗癌剤の他の例としては、タモキシフェンおよびBCNUが挙げられる。タモキシフェンは、種々のエストロゲンレセプター陽性癌腫(例えば、乳癌、子宮内膜癌、前立腺癌、卵巣癌、腎細胞癌(renal carcinoma)、黒色腫、結腸直腸癌、硬性線維腫、膵臓癌、および下垂体腫瘍)を処置するために種々の程度の成功をもって、使用されてきた。不十分な水溶解度によって制限されることに加えて、タモキシフェンを使用する化学療法は、副作用(例えば、細胞の薬物耐性)を引き起こし得る。BCNU(1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア)は、その抗腫瘍特性について周知であり、1972年以来、 脳腫瘍、結腸癌、ホジキン病、肺癌および多発性骨髄腫に対する使用について、国立癌研究所(National Cancer Institute)によって計画されてきた。しかし、その低溶解度によって、この抗癌剤の効率的使用に欠陥が生じている。
【0078】
(薬物耐性と関連する抗癌剤)
本発明の特定の実施形態において、毒素結合体は、薬物耐性と関連する抗癌剤を含む。本明細書において使用される場合、用語「薬物耐性と関連する抗癌剤」とは、癌細胞が耐性になるかまたは耐性になり得る任意の化学療法剤をいう。既に上記で言及されているように、抗癌剤に対する耐性は、多くの要因に起因し得、そして異なる機構によって現れ得る。毒素(例えば、クロロトキシン部分)および薬物耐性と関連する抗癌剤を含む本発明の結合体の投与は、上記抗癌剤の細胞取り込みを増強し得、そして上記抗癌剤を腫瘍細胞(例えば、耐性腫瘍細胞)の中へ運び得る。
【0079】
薬物耐性と関連する広範に種々の抗癌剤のいずれも、本発明における使用に適している。例えば、薬物耐性と関連した抗癌剤は、メトトレキサートであり得る。メトトレキサートは、広範に使用される癌の薬物であり、葉酸のアナログであり、かつテトラヒドロ葉酸の合成において重要な工程をブロックし、テトラヒドロ葉酸自体は、チミジレート(特異的であり、従って、DNA合成に特に重要な構築ブロック)の合成において利用される化合物の重要な供給源である。メトトレキサート誘導性薬物耐性は、その薬物の細胞取り込みの欠損に関連づけられる。
【0080】
適切な抗癌剤の他の例としては、プリンアナログおよびピリミジンアナログが挙げられ、これらアナログは、酵素活性の喪失を通じて、上記薬物の不適切な細胞内活性化に起因して、薬物耐性と関連する。このようなプリンアナログの例は、6−メルカプトプリン(6−MP)である。6−MPに対する腫瘍細胞の耐性の一般的な原因は、6−MPをその対応するヌクレオチドである6−メルカプトホスホリボシルプリン(6−MPRP)(上記薬物の致死的形態)へ活性化する酵素、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)の喪失である。上記耐性は、6−MPRP自体が上記細胞へ導入され得る場合に、克服され得る。この化合物は市販されているが、未だ、癌処置において治療的に使用されてきてはいない。なぜならこの化合物は、生細胞へと不適切に輸送されるからである。6−MPRPの、本発明に従う毒素部分への会合は、細胞膜を横断するその能力を劇的に増大させる。チオグアニンは、上記酵素HGPRTの欠如に起因して、薬物耐性と関連する抗癌剤の別の例である。
【0081】
不適切な細胞内活性化に起因して、薬物耐性と関連するピリミジンアナログの例としては、シトシンアラビノシドおよびアデノシンアラビノシドが挙げられ、これらは、酵素デオキシシチジンキナーゼ(DOCK)によって、それぞれ、その致死的形態であるシトシンジホスフェートおよびアデノシンジホスフェートへと活性化される。毒素部分(例えば、クロロトキシン)は、それらの細胞取り込みを増強し、かつ細胞の薬物耐性を克服するために、このようなピリミジンアナログの活性化形態に連結され得る。
【0082】
薬物耐性と関連する抗癌剤の他の例としては、5−フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、シトシン、アラビノシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクチノマイシン、およびブレオマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
(他の抗癌剤)
他の実施形態において、抗癌剤は、いくつか挙げると、アルキル化剤(メクロレタミン、クラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン)、紡錘体毒素(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)から選択される。最新の癌治療のより包括的な議論については、http://www.cancer.gov/を、FDA承認腫瘍薬物のリストについては、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm、およびThe Merck Manual,第17版.1999(これらの内容全体が、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0084】
(核酸薬剤)
特定の実施形態において、本発明の結合体内の治療(例えば、抗癌)剤は、核酸薬剤である。
【0085】
多くの癌および腫瘍は、種々の程度の遺伝的欠陥(例えば、点変異、遺伝子欠失、もしくは重複)と関連することが示された。癌の処置についての多くの新たなストラテジー(例えば、「アンチセンス」、「アンチジーン」、および「RNA干渉」)は、遺伝子の発現を調節するための開発された(A.Kalotaら,Cancer Biol.Ther.,2004,3:4−12;Y.Nakataら,Crit.Rev.Eukaryot.Gene Expr.,2005,15:163−182;V.WacheckおよびU.Zangmeister−Wittke,Crit.Rev.Oncol.Hematol.,2006,59:65−73;A.Kolataら,Handb.Exp.Pharmacol.,2006,173:173−196)。これらのアプローチは、例えば、アンチセンス核酸、リボザイム、トリプレックス物質(triplex agent)、もしくは短い干渉RNA(siRNA)を利用して、標的遺伝子の特異的mRNAもしくはDNAの転写もしくは翻訳を、そのmRNAを、アンチセンス核酸もしくはトリプレックス物質を有するDNAでマスクするか、そのヌクレオチド配列をリボザイムで切断するか、またはRNA干渉に関与する複雑な機構を介するmRNAの破壊かのいずれかによって、ブロックする。これらストラテジーの全てにおいて、主にオリゴヌクレオチドは、活性薬剤として使用されるが、低分子および他の構造もまた、提供されてきた。遺伝子発現を調節するためのオリゴヌクレオチドベースのストラテジーは、いくつかの癌の処置について非常に大きな可能性を有するものの、オリゴヌクレオチドの薬理学的適用は、これら化合物の、癌細胞内のそれらの作用部位への非効率的送達によって、主に妨げられてきた(P.Herdewijnら,Antisense Nucleic Acids Drug Dev.,2000,10:297−310;Y.Shoji and H. Nakashima,Curr.Charm.Des.,2004,10:785−796;A.W Tongら,Curr.Opin.Mol.Ther.,2005,7:114−124)。
【0086】
毒素部分(例えば、クロロトキシン部分)および治療(例えば、抗癌)剤として有用な核酸分子を含む結合体が、本明細書において提供される。核酸の種々の化学的タイプおよび構造的形態が、このようなストラテジーに適切であり得る。これらとしては、非限定的な例示によって、DNA(一本鎖(ssDNA)および二本鎖(dsDNA)を含む);RNA(ssRNA、dsRNA、tRNA、mRNA、rRNA、酵素的RNAが挙げられるが、これらに限定されない);RNA:DNAハイブリッド、三本鎖DNA(例えば、短いオリゴヌクレオチドと会合したdsDNA)などが挙げられる。
【0087】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の結合体に存在する核酸薬剤は、約5〜2000の間のヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、上記核酸薬剤は、少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19 20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40 41、42、43、44、45、46、47、48、49、50もしくはそれ以上のヌクレオチド長である。いくつかの実施形態において、上記核酸薬剤は、約2000、1900、1800、1700、1600、1500、1400、1300、1200、1100、1000、900、800、700、600、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50、45、40、35、30、25、20もしくはそれ以下のヌクレオチド長である。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明の結合体に存在する核酸薬剤は、転写を調節するプロモーターおよび/もしくは他の配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明の結合体に存在する核酸薬剤は、複製起点および/もしくは複製を調節する他の配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明の結合体に存在する核酸薬剤は、プロモーターおよび/もしくは複製起点を含まない。
【0089】
本発明の実施における使用に適した核酸抗癌剤としては、細胞分裂を刺激するタンパク質をコードする、腫瘍形成および細胞増殖もしくは細胞形質転換と関連する遺伝子(例えば、プロトオンコジーン)、血管新生/抗血管新生遺伝子、腫瘍サプレッサ遺伝子(これは、細胞分裂を抑制するタンパク質をコードする)、腫瘍増殖および/もしくは腫瘍移動と関連するタンパク質をコードする遺伝子、ならびにアポトーシスもしくは他の形態の細胞死を誘導する自殺遺伝子(特に、急速に分裂している細胞において最も活性である自殺遺伝子)を標的する薬剤が挙げられる。
【0090】
腫瘍形成および/もしくは細胞形質転換と関連する遺伝子配列の例としては、MLL融合遺伝子、BCR−ABL、TEL−AML1、EWS−FLI1、TLS−FUS、PAX3−FKHR、Bcl−2、AML1−ETO、AML1−MTG8、Ras、Fos PDGF、RET、APC、NF−1、Rb、p53、MDM2など;多剤耐性遺伝子のような過剰発現される遺伝子;サイクリン;β−カテニン;テロメラーゼ遺伝子;c−myc、n−myc、Bcl−2、Erb−B1およびErb−B2;ならびに変異遺伝子(例えば、Ras、Mos、Raf、およびMet)が挙げられる。腫瘍サプレッサ遺伝子の例としては、p53、p21、RB1、WT1、NF1、VHL、APC、DAPキナーゼ、p16、ARF、ニューフィブロミン、およびPTENが挙げられるが、これらに限定されない。抗癌治療において有用な核酸分子によって標的とされ得る遺伝子の例としては、腫瘍移動と関連するタンパク質(例えば、インテグリン、セレクチンおよびメタロプロテイナーゼ)をコードする遺伝子;新たな脈管の形成を促進するタンパク質(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)もしくはVEGFr)をコードする抗血管新生遺伝子;血管新生を阻害するタンパク質(例えば、エンドスタチン、アンジオスタチン、およびVEGF−R2)をコードする抗血管新生遺伝子;およびインターロイキン、インターフェロン、線維芽細胞増殖因子(α−FGFおよびβ−FGF)、インスリン様増殖因子(例えば、IGF−1およびIGF−2)、血小板由来増殖因子(PDGF)、腫瘍壊死因子(TNF)、トランスホーミング増殖因子(例えば、TGF−αおよびTGF−β)、表皮増殖因子(EGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、幹細胞因子およびそのレセプターc−Kit(SCF/c−Kit)リガンド、CD40L/CD40、VLA−4 VCAM−1、ICAM−1/LFA−1、ヒアルロン(hyalurin)/CD44などのようなタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。当業者によって認識されるように、前述の例は、排他的ではない。
【0091】
本発明の結合体中の核酸は、種々の活性(例えば、抗癌剤もしくは他の治療剤、プローブ、プライマーなどを含む)のいずれかを有し得る。本発明の結合体中の核酸は、酵素的活性(例えば、リボザイム活性)、遺伝子発現阻害活性(例えば、アンチセンス薬剤もしくはsiRNA薬剤など)、および/もしくは他の活性を有し得る。本発明の結合体中の核酸は、それ自体が活性であってもよいし、活性な核酸薬剤を送達する(例えば、複製および/もしくは送達された核酸の転写を介して)ベクターであってもよい。本明細書の目的については、このようなベクター核酸は、それらが治療上活性な薬剤をコードするか、またはさもなければ送達する場合に、それら自体が治療的活性を有しない場合すら、「治療剤」と考えられる。
【0092】
特定の実施形態において、本発明の結合体は、アンチセンス化合物を含むかもしくはアンチセンス化合物をコードする核酸治療剤を含む。用語「アンチセンス化合物もしくはアンチセンス薬剤」、「アンチセンスオリゴマー」、「アンチセンスオリゴヌクレオチド」および「アンチセンスオリゴヌクレオチドアナログ」は、本明細書において交換可能に使用され、そしてヌクレオチド塩基の配列、および上記ンチセンス化合物を、ワトソン−クリック塩基対合によってRNA中の標的配列にハイブリダイズさせて、上記標的配列内でRNAオリゴマーヘテロ二重鎖を形成させるサブユニットからサブユニットへの骨格(subunit−to−subunit backbone)をいう。上記オリゴマーは、上記標的配列内での正確な配列相補性もしくはほとんど相補性を有し得る。このようなアンチセンスオリゴマーは、上記標的配列を含むmRNAの翻訳をブロックもしくは阻害し得るか、または遺伝子転写を阻害し得る。アンチセンスオリゴマーは、二本鎖もしくは一本鎖の配列に結合し得る。
【0093】
本発明の実施における使用に適したアンチセンスオリゴヌクレオチドの例としては、例えば、以下の総説において言及されるものが挙げられる:R.A Stahelら,Lung Cancer,2003,41:S81−S88;K.F.Pirolloら,Pharmacol.Ther.,2003,99:55−77;A.C.Stephens and R.P.Rivers,Curr.Opin.Mol.Ther.,2003,5:118−122;N.M.Dean and C.F.Bennett,Oncogene,2003,22:9087−9096;N.Schiavoneら,Curr.Pharm.Des.,2004,10:769−784;L.Vidalら,Eur.J.Cancer,2005,41:2812−2818;T.Aboul−Fadl,Curr.Med.Chem.,2005,12:2193−2214;M.E.Gleave and B.P.Monia,Nat.Rev.Cancer,2005,5:468−479;Y.S.Cho−Chung,Curr.Pharm.Des.,2005,11:2811−2823;E.Rayburnら,Lett.Drug Design&Discov.,2005,2:1−18;E.R.Rayburnら,Expert Opin.Emerg.Drugs,2006,11:337−352;I.Tamm and M.Wagner,Mol.Biotechnol.,2006,33:221−238(これらの各々は、その全体が本明細書において参考として援用される)。
【0094】
適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドの例としては、例えば、olimersonナトリウム(olimerson sodium)(GenasenseTMもしくはG31239としても公知であり、Genta,Inc.,Berkeley Heights,NJによって開発)、bcl−2 mRNA(これは、アポトーシスの強力なインヒビターであり、多くの癌(濾胞性リンパ腫、乳癌、結腸癌および前立腺癌、ならびに中程度/高い進行度のリンパ腫(C.A.Steinら,Semin.Oncol.,2005,32:563−573;S.R.Frankel,Semin.Oncol.,2003,30:300−304)が挙げられる)において過剰発現される)の開始コドン領域を標的とするホスホロチオエートオリゴマーが挙げられる。他の適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、GEM−231(HYB0165,Hybridon,Inc.,Cambridge,MA)(これは、cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)に対して指向される混合された骨格オリゴヌクレオチドである(S.Goelら,Clin.Cancer Res.,203,9:4069−4076));Affinitak(ISIS 3521もしくはアプリノカルセン(aprinocarsen)、ISIS pharmaceuticals,Inc.,Carlsbad,CA)、PKC−αのアンチセンスインヒビター;OGX−011(Isis 112989,Isis Pharmaceuticals,Inc.)、クラスタリン(細胞周期、組織リモデリング、脂質輸送および細胞死の調節に関与し、乳癌、前立腺癌および結腸癌において過剰発現される糖タンパク質)に対する2’−メトキシエチル改変アンチセンスオリゴヌクレオチド;ISIS 5132(Isis 112989,Isis Pharmaceuticals,Inc.)(c−raf−1 mRNAの3’−非翻訳領域の配列に相補的なホスホロチオエートオリゴヌクレオチド)(S.P.Henryら,Anticancer Drug Des.,1997,12:409−420;B.P.Moniaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93:15481−15484;C.M.Rudinら,Clin.Cancer Res.,2001,7:1214−1220);ISIS 2503(Isis Pharmaceuticals,Inc.)(ヒトH−ras mRNA発現のホスホロチオエートオリゴヌクレオチドアンチセンスインヒビター)(J.Kurreck,Eur.J.Biochem.,2003,270:1628−1644);アポトーシスタンパク質のX染色体連鎖性インヒビター(XIAP)(これは、アポトーシス経路の実質的部分をブロックする)を標的とするオリゴヌクレオチド(例えば、GEM 640(AEG 35156,Aegera Therapeutics Inc.およびHybridon,Inc.)、またはアポトーシスタンパク質のインヒビター(IAP)であるサバイビン(survivin)を標的とするオリゴヌクレオチド(例えば、ISIS 23722)(Isis Pharmaceuticals,Inc.)、2’−O−メトキシエチルキメラオリゴヌクレオチド;MG98(これは、DNAメチルトランスフェラーゼを標的とする);ならびにGTI−2040(Lorus Therapeutics,Inc.Toronto,Canada)、ヒトリボヌクレオチドレダクターゼのR2小サブユニット成分のmRNAにおけるコード領域に相補的な20マーオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0095】
他の適切なアンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、Her−2/neu、c−Myb、c−Myc、およびc−Rafに対して開発されつつあるアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる(例えば、A.Biroccioら,Oncogene,2003,22:6579−6588;Y.Leeら,Cancer Res.,2003,63:2802−2811;B.Luら,Cancer Res.,2004,64:2840−2845;K.F.Pirolloら,Pharmacol.Ther.,2003,99:55−77;およびA.Raitら,Ann.N.Y.Acad.Sci.,2003,1002:78−89を参照のこと)。
【0096】
特定の実施形態において、本発明の結合体は、干渉RNA分子を含むかもしくはコードする核酸抗癌剤を含む。用語「干渉RNA」および「干渉RNA分子」とは、本明細書において交換可能に使用され、そして配列特異的様式において、例えば、RNA干渉(RNAi)を媒介することによって、遺伝子発現を阻害もしくはダウンレギュレートし得るかまたは遺伝子をサイレントにし得るRNA分子をいう。RNA干渉(RNAi)は、進化的に保存された、相補的標的一本鎖mRNAの分解および対応する翻訳された配列の「サイレンシング」を誘導する二本鎖RNA(dsRNA)によって誘発される配列特異的機構である(McManus and Sharp,2002,Nature Rev.Genet.,2002,3:737)。RNAiは、より長いdsRNA鎖を、約21−23ヌクレオチド長の生物学的に活性な「短い干渉RNA」(siRNA)配列へと酵素的に切断することによって機能する(Elbashirら,Genes Dev.,2001,15:188)。RNA干渉は、癌の治療のための有望なアプローチとして出現してきた。
【0097】
本発明の実施における使用に適した干渉RNAは、いくつかの形態のうちのいずれかにおいて提要され得る。例えば、干渉RNAは、単離された短い干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロ−RNA(miRNA)、もしくは短いヘアピンRNA(shRNA)のうちの1種以上として提供され得る。
【0098】
本発明における使用に適した干渉RNA分子の例としては、例えば、以下の総説において引用されるiRNAが挙げられる:O.Milhavetら,Pharmacol.Rev.,2003,55:629−648;F.Biら,Curr.Gene.Ther.,2003,3:411−417;P.Y.Luら,Curr.Opin.Mol.Ther.,2003,5:225−234;I.Friedrichら,Semin.Cancer Biol.,2004,14:223−230;M.Izquierdo,Cancer Gene Ther.,2005,12:217−227;P.Y.Luら,Adv.Genet.,2005,54:117−142;G.R.Devi,Cancer Gene Ther.,2006,13:819−829;M.A.Behlke,Mol.Ther.,2006,13:644−670;およびL.N.Putralら,Drug News Perspect.,2006,19:317−324(これらの各々は、その全体が本明細書において参考として援用される)。
【0099】
適切な干渉RNA分子の他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:p53干渉RNA(例えば、T.R.Brummelkampら,Science,2002,296:550−553;M.T.Hemmanら,Nat.Genet.,2003,33:396−400);bcr−abl 融合物を標的とする干渉RNA(これは、慢性骨髄性白血病および急性リンパ芽球性白血病の発症と関連する)(例えば、M.Scherrら,Blood,2003,101:1566−1569;M.J.Liら,Oligonucleotides,2003,13:401−409)、NPM−ALK(未分化大細胞リンパ腫のうちの75%において見いだされ、腫瘍形成と関連する構成的に活性なキナーゼの発現をもたらすタンパク質)の発現を阻害する干渉RNA(U.Ritterら,Oligonucleotides,2003,13:365−373);Raf−1(T.F.Louら,Oligonucleotides,2003,13:313−324)、K−Ras(T.R.Brummelkampら,Cancer Cell,2002,2:243−247)、erbB−2(G.Yangら,J.Biol.Chem.,2004,279:4339−4345)のようなオンコジーン(例えば、)を標的とする干渉RNA;b−カテニンタンパク質(この過剰発現は、T細胞因子標的遺伝子のトランス活性化(これは、結腸直腸癌の主要な形質転換事象であると考えられている)をもたらす)を標的とする干渉RNA(M.van de Weteringら,EMBO Rep.,2003,4:609−615)。
【0100】
特定の実施形態において、本発明の結合体は、リボザイムである核酸治療剤を含む。本明細書において使用される場合、用語「リボザイム」とは、標的特異的様式において他のRNA分子を切断する触媒性RNA分子をいう。リボザイムは、目的の遺伝子の任意の望ましくない生成物の発現をダウンレギュレートするために使用され得る。本発明の実施において使用され得るリボザイムの例としては、ヒト、マウスおよびラットの血管内皮細胞増殖因子レセプター(VGEFR)−1 mRNAの保存された領域を標的とするリボザイムであるAngiozymeTM(RPI.4610,Sima Therapeutics,Boulder,CO)、およびHerzyme(Sima Therapeutics)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
(光感作物質)
特定の実施形態において、本発明の結合体内の治療(例えば、抗癌)剤は、光線力学療法(PDT)において使用される光感作物質である。PDTにおいて、患者への光感作物質の局所投与もしくは全身投与に続いて、処置されるべき組織もしくは器官中の上記光感作物質によって吸収される光での照射が行われる。上記光感作物質による光の吸収は、細胞にとって有害な活性種(例えば、ラジカル)を生成する。最大の効力のためには、光感作物質は、投与に適した形態で存在しなければならないことのみならず、上記標的部位における細胞インターナリゼーションを容易に受け得る(好ましくは、正常組織よりもある程度の選択性をもって)形態でも存在しなければならない。
【0102】
いくつかの光感作物質(例えば、Photofrin(登録商標)(QLT,Inc.,Vancouver,BC,Canada))は、単純な水溶液の一部として成功裏に送達されてきたが、このような水溶液は、疎水性光感作物質薬物(例えば、テトラ−ピロールベースもしくはポリ−ピロールベースの構造を有するもの)については適切ではない可能性がある。これらの薬物は、本質的に、分子の積み重なりによって凝集する傾向があり、このことによって、光増感プロセスの効力の顕著な低下が生じる(Siggelら,J.Phys.Chem.,1996,100:2070−2075)。凝集を最小にするためのアプローチとしては、リポソーム処方物(例えば、ベンゾポルフィリン誘導体モノ酸Aについては、BPDMA,Verteporfin(登録商標)(QLT,Inc.,Vancouver,Canada));および亜鉛フタロシアニン(CIBA−Geigy,Ltd.,Basel,Switzerland)、および生体適合性ブロックコポリマー(Petersonら,Cancer Res.,1996,56:3980−3985)および/もしくは抗体(Omelyanenkoら,Int.J.Cancer,1998,75:600−608)への光感作物質の結合体化が挙げられる。
【0103】
光感作物質と会合される毒素部分を含む結合体は、PDTにおける新たな送達系として使用され得る。光感作物質凝集を低下させることに加えて、本発明に従う光感作物質の送達は、標的組織/器官に対する増大した特異性および上記光感作物質の細胞インターナリゼーションのような他の利点を示す。
【0104】
本発明における使用に適した光感作物質は、PDTにおいて有用な光増感特性を有する種々の合成分子および天然に存在する分子のうちのいずれかを含む。特定の実施形態において、上記光感作物質の吸収スペクトルは、可視範囲(代表的には、350nm〜1200nmの間、好ましくは、400nm〜900nmの間、例えば、600nm〜900nmの間)に存在する。本発明に従う毒素に連結され得る適切な光感作物質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポルフィリンおよびポルフィリン誘導体(例えば、クロリン(chlorin)、バクテリオクロリン(bacteriochlorin)、イソバクテリオクロリン(isobacteriochlorin)、フタロシアニン、およびナフタロシアニン);メタロポルフィリン、メタロフタロシアニン、アンゲリシン(angelicin)、chalcogenapyrrillium色素、クロロフィル、クマリン、フラビンおよび関連化合物(例えば、アロキサジンおよびリボフラビン)、フラーレン、フェオフォルバイド(pheophorbide)、ピロフェオフォルバイド(pyropheophorbide)、シアニン(例えば、メロシアニン540)、フェオフィチン、サフィリン、テキサフィリン、プルプリン、ポルフィセン、フェノチアジニウム、メチレンブルー誘導体、ナフタルイミド、ナイルブルー誘導体、キノン、ペリレンキノン(perylenequinone)(例えば、ヒペリシン、ヒポクレリン(hypocrellin)、およびセルコスポリン)、ソラレン、キノン、レチノイド、ローダミン、チオフェン、ベルジン(verdin)、キサンテン色素(例えば、エオシン、エリスロシン、ローズベンガル)、ダイマー形態およびオリゴマー形態のポルフィリン、ならびにプロドラッグ(例えば、5−アミノレブリン酸(R.W.Redmond and J.N.Gamlin,Photochem.Photobiol.,1999,70:391−475))。
【0105】
本発明における使用に適した例示的な光感作物質は、米国特許第5,171,741号;同第5,171,749号;同第5,173,504号;同第5,308,608号;同第5,405,957号;同第5,512,675号;同第5,726,304号;同第5,831,088号;同第5,929,105号;および同第5,880,145号(これらの各々は、その全体が本明細書に参考として援用される)に記載されている。
【0106】
(放射線増感剤)
特定の実施形態において、本発明の結合体内の治療(例えば、抗癌)剤は、放射線増感剤である。本明細書において使用される場合、用語「放射線増感剤」とは、腫瘍細胞を、放射線療法に対してより感受性にする分子、化合物、もしくは薬剤をいう。放射線療法を受ける患者への放射線増感剤の投与は、一般に、放射線療法の効果の増強を生じる。理想的には、放射線増感剤は、標的細胞に対してのみその機能を発揮する。使用が容易であるために、放射線増感剤はまた、全身に投与された場合ですら、標的細胞を見いだすことができるはずである。しかし、現在入手可能な放射線増感剤は、代表的には、腫瘍に対して選択的ではなく、哺乳動物の身体における拡散によって分布する。本発明の毒素結合体は、放射線増感剤のための新たな送達系として使用され得る。
【0107】
放射線増感剤は、当該分野で公知である。本発明における使用に適切な放射線増感剤の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:パクリタキセル(Taxol(登録商標))、カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチン(Amorinoら,Radiat.Oncol.Investig.1999;7:343−352;Choy,Oncology,1999,13:22−38;Safranら,Cancer Invest.,2001,19:1−7;Dionetら,Anticancer Res.,2002,22:721−725;Cividalliら,Radiat.Oncol.Biol.Phys.,2002,52:1092−1098);ゲムシタビン(Gemzar(登録商標))(Choy,Oncology,2000,14:7−14;Mornex and Girard,Annals of Oncology,2006,17:1743−1747);エタニダゾール(Nitrolmidazole(登録商標))(Inanamiら,Int.J.Radiat.Biol.,2002,78:267−274);ミソニダゾール(Tamuleviciusら,Br.J.Radiology,1981,54:318−324;Palcicら,Radiat.Res.,1984,100:340−347)、チラパザミン(Masunagaら,Br.J.Radiol.,2006,79:991−998;Rischinら,J.Clin.Oncol.,2001,19:535−542;Shulmanら,Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.,1999,44:349−353);および核酸塩基誘導体(例えば、ハロゲン化プリンもしくはハロゲン化ピリミジン(例えば、5−フルオロデオキシウリジン(Buchholzら,Int.J.Radiat.Oncol.Biol.Phys.,1995,32:1053−1058))。
【0108】
(放射性同位体)
特定の実施形態において、本発明の結合体内の治療(例えば、抗癌)剤は、放射性同位体である。適切な放射性同位体の例としては、任意のαエミッター、β−エミッターもしくはγ−エミッターが挙げられ、これらは、腫瘍部位に局在された場合、細胞破壊を生じる(S.E.Order,「Analysis,Results,and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody in Cancer Therapy」,Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,R.W.Baldwinら(編),Academic Press,1985)。このような放射性同位体の例としては、ヨウ素−131(131I)、ヨウ素−125(125I)、ビスマス−212(212Bi)、ビスマス−213(213Bi)、アスタチン−211(211At)、レニウム−186(186Re)、レニウム−186(188Re)、リン−32(32P)、イットリウム−90(90Y)、サマリウム−153(153Sm)、およびルテチウム−177(117Lu)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
(スーパー抗原)
特定の実施形態において、本発明の結合体内の治療(例えば、抗癌)剤は、スーパー抗原もしくはその生物学的に活性な部分である。スーパー抗原は、T細胞集団の大部分を活性化することにおいて有効な細菌タンパク質およびウイルスタンパク質の群を構成する。スーパー抗原は、プロセシングされることなく、腫瘍組織適合遺伝子複合体(MHC)に直接結合する。実際に、スーパー抗原は、MHCクラスII分子上の抗原結合溝のプロセシングされていない外側に結合し、それによって、従来のペプチド結合部位における多型の大部分を回避する。
【0110】
スーパー抗原ベースの腫瘍治療アプローチは、固形腫瘍の処置のために開発されてきた。このアプローチにおいて、標的化部分(例えば、抗体もしくは抗体フラグメント)は、スーパー抗原に結合体化され、このことは、標的化スーパー抗原を提供する。上記抗体もしくは抗体フラグメントが腫瘍関連抗原を認識する場合、腫瘍細胞に結合した上記標的化スーパー抗原は、スーパー抗原活性化細胞傷害性T細胞を誘発して、上記腫瘍細胞を、スーパー抗原依存細胞媒介性細胞傷害によって、直接死滅させ得る(Sogaardら,Immunotechnology,1996,2:151−162)
スーパー抗原ベースの腫瘍治療は、いくらか成功してきた。例えば、野生型ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)との融合タンパク質は、結腸直腸癌および膵臓癌の治験において調査されてきた(Giantonioら,J.Clin.Oncol.,1997,15:1994−2007;Alpaughら,Clin.Cancer Res.,1998,4:1903−1914;Chengら,J.Clin.Oncol.,2004,22:602−609);エンテロトキシン遺伝子クラスタ(egc)のブドウ球菌スーパー抗原は、非小細胞肺癌の処置について研究されてきた(Termanら,Clin.Chest Med.,2006,27:321−324)。そしてブドウ球菌エンテロトキシンBは、表在性膀胱癌の膀胱内免疫療法について評価されてきた(Peraboら,Int.J.Cancer,2005,115:591−598)。
【0111】
スーパー抗原、もしくはその生物学的に活性な部分は、毒素部分に会合されて、本発明に従う結合体を形成し得、そして本明細書において記載されるように、治療(例えば、抗癌治療)において使用され得る。
【0112】
本発明における使用に適したスーパー抗原の例としては、ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)(例えば、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)もしくはブドウ球菌エンテロトキシンE(SEE))、Streptococcus発熱性外毒素(SPE)、Staphylococcus aureus毒性ショック症候群毒素(TSST−1)、レンサ球菌有糸分裂促進性外毒素(SME)、レンサ球菌性スーパー抗原(SSA)、および上記エンテロトキシン遺伝子クラスタのレンサ球菌性スーパー抗原が挙げられるが、これらに限定されない。当業者に公知であるように、上記に列挙したスーパー抗原の三次元構造は、プロテインデータバンク(Protein Data Bank)から得られ得る。同様に、上記に列挙したスーパー抗原および他のスーパー抗原の上記核酸配列およびアミノ酸配列は、当業者に認識されるように、GenBankから得られ得る。
【0113】
(プロドラッグ活性化酵素)
特定の実施形態において、本発明の結合体は、指向性(directed)酵素プロドラッグ治療において使用され得る。指向性酵素プロドラッグ治療アプローチにおいて、指向性/標的化酵素およびプロドラッグは、被験体に投与され、ここで上記標的化酵素は、上記プロドラッグを活性薬物へと変換する上記被験体の身体の一部に特異的に局在する。上記プロドラッグは、一工程において(上記標的化酵素によって)もしくは1つより多い工程において、活性薬物へ変換され得る。例えば、上記プロドラッグは、上記標的化酵素によって活性薬物の前駆体に変換され得る。次いで、上記前駆体は、例えば、被験体に投与される1種以上のさらなる標的化酵素、1種以上の非標的化酵素、上記被験体にもしくは上記被験体における標的部位に天然に存在する1種以上の酵素(例えば、プロテアーゼ、ホスファターゼ、キナーゼもしくはポリメラーゼ)の触媒的活性によって、上記被験体に投与される薬剤によって、および/または酵素に触媒されない化学的プロセス(例えば、酸化、加水分解、異性化、エピマー化など)によって、上記活性薬物へと変換され得る。
【0114】
異なるアプローチは、上記酵素を、目的の部位へと指向/目標の部位を標的とするために使用されてきた。例えば、ADEPT(抗体指向性酵素プロドラッグ治療)において、腫瘍抗原に対して設計/開発された抗体は、酵素に連結され、被験体に注射され、上記腫瘍への上記酵素の選択的結合を生じる。腫瘍と正常組織との間の酵素レベルの区別が十分である場合、プロドラッグは、上記被験体に投与される。上記プロドラッグは、上記酵素によってその活性な形態へと、上記腫瘍内でのみ変化される。選択性は、上記抗体の腫瘍特異性によって、そしてプロドラッグ投与を、腫瘍と正常組織との間の酵素レベルの大きな差異が存在するようになるまで遅らせることによって、達成される。初期の治験は有望であり、ADEPTが、腫瘍関連抗体もしくは腫瘍特異的抗体が公知である全ての固形癌の有効な処置になり得ることを示す。腫瘍はまた、プロドラッグ活性化酵素をコードする遺伝子を用いて、標的とされてきた。このアプローチは、ウイルス指向性酵素プロドラッグ治療(VDEPT)もしくはより一般には、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ治療)といわれており、実験系において良好な結果を示した。指向性酵素プロドラッグ治療の他のバージョンとしては、PDEPT(ポリマー指向性酵素プロドラッグ治療)、LEAPT(レクチン指向性酵素活性化プロドラッグ治療)、およびCDEPT(クロストリジウム指向性酵素プロドラッグ治療)が挙げられる。本発明に従う結合体は、毒素部分と会合されるプロドラッグ活性化酵素を含み、同様の方法において使用され得る。
【0115】
本発明における使用に適した酵素/プロドラッグ/活性薬物組汗の例は、例えば、Bagshaweら,Current Opinions in Immunology,1999,11:579−583;Wilman,「Prodrugs in Cancer Therapy」,Biochemical Society Transactions,14:375−382,615th Meeting,Belfast,1986;Stellaら,「Prodrugs: A Chemical Approach To Targeted Drug Delivery」,「Directed Drug Delivery」,Borchardtら,(編),pp.247−267(Humana Press,1985)において記載されている。酵素/プロドラッグ/活性抗癌剤組み合わせの例は、例えば、Rooseboomら,Pharmacol.Reviews,2004,56:53−102に記載される。
【0116】
プロドラッグ活性化酵素の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ニトロレダクターゼ、シトクロームP450、プリン−ヌクレオシドホスホリラーゼ、チミジンキナーゼ、アルカリホスファターゼ、β−グルクロニダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、ペニシリンアミダーゼ、β−ラクタマーゼ、シトシンデアミナーゼ、およびメチオニンγ−リアーゼ。
【0117】
プロドラッグ活性化酵素によるプロドラッグの活性化によってインビボで形成され得る抗癌剤の例としては、5−(アジリジン−1−イル)−4−ヒドロキシ−アミノ−2−ニトロ−ベンズアミド、イソホスホルアミドマスタード、ホスホルアミドマスタード、2−フルオロアデニン、6−メチルプリン、ガンシクロビル−トリホスフェートヌクレオチド、エトポシド、マイトマイシンC、p−[N,N−ビス(2−クロロエチル)アミノ]フェノール(POM)、ドキソルビシン、オキサゾリジノン、9−アミノカンプトテシン、マスタード、メトトレキサート、安息香酸マスタード、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノマイシン、カルミノマイシン、ブレオマイシン、エスペラミシン、メルファラン、パリトキシン、4−デスアセチルビンブラスチン−3−カルボン酸ヒドラジド、フェニレンジアミンマスタード、4’−カルボキシフタラト(1,2−シクロヘキサン−ジアミン)白金、タキソール、5−フルオロウラシル、メチルセレノール、およびcarbonothionicジフルオリド(carbonothionic difluoride)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
(抗血管新生剤)
特定の実施形態において、本発明の結合体内の治療(例えば、抗癌)剤は、抗血管新生剤を含む。本発明における使用に適した抗血管新生剤としては、血管新生のプロセス、もしくは新たな血管が、既存の血管から発生することによって形成するプロセスをブロックするか、阻害するか、遅らせるかもしくは減少させる任意の分子、化合物もしくは因子が挙げられる。このような分子、化合物もしくは因子は、血管新生に関与する工程のうちのいずれか((1)生じつつある脈管の膜の溶解、(2)内皮細胞の移動および増殖、ならびに(3)移動している細胞による新たな脈管の形成の工程を含む)をブロックするか、阻害するか、遅らせるか、または低下させることによって、血管新生をブロックし得る。
【0119】
抗血管新生剤の例としては、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、セレコキシブ(セレブレックス(登録商標))、エンドスタチン、サリドマイド、EMD121974(シレンジチド)、TNP−470、スクアラミン、コンブレタスタチンA4、インターフェロン−α、抗VEGF抗体、SU5416、SU6668、PTK787/2K 22584、Marimistal、AG3340、COL−3、Neovastat、およびBMS−275291が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
当業者に認識されるように、本明細書において引用される治療剤の具体例は、本発明の実施における使用に適した少数の治療剤を代表するに過ぎない。
【0121】
(被包剤)
いくつかの実施形態において、本発明によって提供される組成物は、1種以上の被包剤を含む。一般に、被包剤は、実体(例えば、結合体もしくは部分)を進入させるために使用され得る任意の生理学的に許容可能な薬剤であり得る。「封入される」によって、上記被包剤が、上記実体を取り囲み得るかもしくは囲い込み得るか、または「封入された」実体は、上記被包剤を含む物質内に、部分的にもしくは全体的に埋め込まれ得ることが、意味される。
【0122】
いくつかの実施形態において、上記被包剤は、上記治療部分の一部であり、上記毒素部分は、上記被包剤に結合体化される。いくつかのこのような実施形態において、上記毒素部分は、上記被包剤の外側表面に結合体化される。いくつかのこのような実施形態において、上記毒素部分は、上記被包剤の外側の環境に曝露される。上記毒素部分は、直接的相互作用(これは、非共有結合的であってもよいし、共有結合的であってもよい)によって上記被包剤に結合体化されてもよいし、リンカーを介して上記被包剤に結合体化されてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、上記毒素部分および上記治療部分を含む結合体は、上記被包剤によって囲い込まれる。上記結合体は、規定されるおよび/もしくは上記被包剤によって作り出される空間もしくは環境(例えば、水性環境)内で部分的もしくは全体的に囲い込まれ得る。いくつかの実施形態において、上記結合体は、少なくとも部分的に、上記被包剤内に埋め込まれる。例えば、上記被包剤が脂質膜を含む場合、上記結合体は、少なくとも部分的に、上記膜中の脂質分子内にもしくはその分子の間に埋め込まれ得る。いくつかの実施形態において、上記結合体は、上記被包剤内に全体的に埋め込まれる。
【0124】
種々のタイプの被包剤が、当該分野で公知であり、このような薬剤を使用して、薬物、生体分子などを封入する方法も同様である。特定の実施形態において、上記被包剤は、コアおよび表面を有する小さな粒子を含む。このような被包剤としては、リポソーム、ミセル、微粒子、ナノ粒子などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
リポソームは、代表的には、ほぼ球形の形状をした二層構造もしくは小胞であり、天然リン脂質もしくは合成リン脂質の膜から構成される。リポソームは、他の膜成分(例えば、コレステロールおよびタンパク質)さらに含み得る。リポソームの内部コアは、代表的には、水溶液を含む。治療剤および/もしくは結合体は、上記水溶液中に溶解され得る。先に言及したように、治療剤および結合体は、上記リポソームの膜内に埋め込まれ得る。リポソームは、核酸薬剤(例えば、を含む上記に記載されるもの)のような薬剤(siRNAのような阻害性RNA分子を含む)を送達するために特に有用であり得る。
【0126】
ミセルは、それらが一般に単層のリン脂質から形成され、内部水溶液を欠いていることを除いて、リポソームに類似している。内部水溶液を含めるために作製される逆ミセルはまた、本発明に従って使用され得る。
【0127】
いくつかの実施形態において、上記粒子は、微粒子(その少なくとも一方の寸法は、平均約1μmより小さい)である。例えば、上記粒子の最も小さい寸法は、平均して約100nm、約120nm、約140nm、約160nm、約180nm、約200nm、約220nm、約240nm、約260nm、約280nm、約300nm、約320nm、約340nm、約360nm、約380nm、約400nm、約420nm、約440nm、約460nm、約480nm、約500nm、約550nm、約600nm、約650nm、約700nm、約750nm、約800nm、約850nm、約900nm、もしくは約950nmであり得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、上記粒子は、その少なくとも一方の寸法が平均して約100μmより小さいナノ粒子である。例えば、上記粒子の最も小さい寸法は、平均して、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm、約10nm、約11nm、約12nm、約13nm、約14nm、約15nm、約16nm、約17nm、約18nm、約19nm、約20nm、約22nm、約24nm、約26nm、約28nm、約30nm、約32nm、約34nm、約36nm、約38nm、約40nm、 約42nm、約44nm、約46nm、約48nm、約50nm、約55nm、約60nm、約65nm、約70nm、 約75nm、約80nm、約85nm、約90nm、約95nm、もしくは約100nmであり得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、上記粒子のコアは、磁気共鳴活性を有する物質を含み、この物質は、診断適用および/もしくは治療適用において有利であり得る。磁気共鳴活性を有する物質としては、金属およびそれらの酸化物(例えば、アルミニウム含有金属、コバルト含有金属、インジウム含有金属、鉄含有金属、銅含有金属、ゲルマニウム含有金属、マンガン含有金属、ニッケル含有金属、スズ含有金属、チタン含有金属、パラジウム含有金属、白金含有金属、セレン含有金属、ケイ素含有金属、銀含有金属、亜鉛含有金属など)が挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態において、治療剤は、核酸を含む。核酸は、上記被包剤内に完全に囲い込まれ得る。いくつかの実施形態において、核酸薬剤は、上記被包剤内に埋め込まれ得る。例えば、上記被包剤は、リポソームであり得、上記核酸薬剤は、上記リポソーム内に囲い込まれ得る。上記核酸薬剤は、少なくとも部分的に、上記リポソームの上記脂質分子内に存在し得る。
【0131】
(II−薬学的組成物および処方物)
本明細書において記載される結合体は、それ自体で投与されてもよいし、薬学的組成物の形態で投与されてもよい。従って、本発明は、有効量の少なくとも1つの本発明の結合体および少なくとも1種の薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。
【0132】
結合体、もしくはその薬学的組成物は、本発明に従ってこのような量で、そして少なくとも1つの所望の結果を達成するに必要もしくは十分であるような時間にわたって投与され得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、このような量で、そして上記薬学的組成物が癌細胞を死滅させ、腫瘍サイズを縮小し、腫瘍増殖もしくは転移を阻害し、種々の白血病を処置し、そして/またはその疾患を有する哺乳動物(ヒトを含む)の生存時間を長期化するか、別の方法で臨床的利益を得るような時間にわたって、投与され得る。
【0133】
薬学的組成物は、本発明に従って、望ましい治療効果を達成するに有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。
【0134】
投与されるべき薬学的組成物の正確な量は、種、年齢、および上記被験体の全身状態、状態の重篤度などに依存して被験体間で変動する(以下を参照のこと)。
【0135】
最適な薬学的処方物は、投与経路および望ましい投与量に依存して変動し得る。このような処方物は、上記投与された化合物の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランスの速度に影響を及ぼし得る。
【0136】
本発明の薬学的組成物は、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、単位投与形態で処方され得る。表現「単位投与形態」とは、本明細書において使用される場合、処置されるべき患者に対して結合体の物理的に別個の単位(1種以上のさらなる薬剤ありまたはなしで)をいう。しかし、本発明の組成物の全体の一日し右腰量は、妥当な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されることが理解される。
【0137】
1種以上の適切な生理学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤とともに、望ましい投与量において処方した後に、本発明の薬学的組成物は、任意の適切な経路によって、ヒトもしくは他の哺乳動物に投与され得る。種々の送達系が公知であり、このような組成物を投与するために使用され得、それらとしては、錠剤、カプセル剤、注射用溶液などが挙げられる。投与方法としては、皮膚経路、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻内経路、肺経路、表皮系路、眼の経路、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物は、任意の従来からの経路もしくは別の適切な経路によって(例えば、注入もしくはボーラス注射によって、上皮もしくは粘膜と粘膜内層を介する吸収によって(例えば、口内粘膜、直腸および腸粘膜など)投与されてもよいし、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与されてもよい。投与は、全身であってもよいし、局所であってもよい。
【0138】
注射用調製物(例えば、滅菌注射用水性懸濁物もしくは油性懸濁物)は、適切な分散剤もしくは湿潤剤、および懸濁剤を使用して、公知の技術に従って処方され得る。滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤もしくは溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁物もしくはエマルジョン(例えば、2,3−ブタンジオール中の溶液として)であり得る。使用され得る上記受容可能なビヒクルおよび溶媒の中では、水、リンゲル溶液(米国局方)および等張性塩化ナトリウム溶液が使用され得る。さらに、滅菌不揮発性油は、溶液もしくは懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、任意の刺激の強くない不揮発性油が、使用され得、これとしては、合成のモノグリセリドもしくはジグリセリドが挙げられる。脂肪酸(例えば、オレイン酸)はまた、注射用処方物の調製において使用され得る。滅菌液体キャリアは、非経口投与のための組成物を形成する滅菌液体において有用である。
【0139】
注射用処方物は、例えば、細菌保持フィルタを通す濾過によって、もしくは使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体中に溶解もしくは分散され得る、滅菌剤を滅菌固体組成物の形態で組み込むことによって、滅菌され得る。滅菌溶液もしくは懸濁物である液体薬学的組成物は、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射もしくは皮下注射によって投与され得る。注射は、1回押し出しを介してもしくは徐々に注入することによる(例えば、30分間の静脈内注入)ものであり得る。必要であれば、上記組成物は、注射部位における疼痛を和らげるために、局所麻酔剤を含み得る。
【0140】
薬物の効果を長期化するために、皮下注射もしくは筋肉注射から薬物の吸収を遅らせることは、しばしば望ましい。このことは、水溶解度が不十分な結晶性もしくは非定型物質をの液体懸濁物を使用することによって、達成され得る。すると、上記薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、この溶解速度は、続いて、結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延した吸収は、油性ビヒクル中に上記薬物を溶解もしくは懸濁することによって達成される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド−ポリグリコリド)中に上記薬物の微小カプセル化マトリクスを形成することによって作製される。薬物 対 ポリマーの比および使用される特定のポリマーの性質に依存して、上記薬物の放出速度は、制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射様処方物はまた、上記薬物を、身体組織と適合性であるリポソーム(脂質小胞としても公知)もしくはマイクロエマルジョン中に閉じこめることによって調製され得る。
【0141】
経口投与のための液体投与形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁物、シロップ剤、エリキシル剤、および加圧組成物が挙げられるが、これらに限定されない。上記活性成分(すなわち、結合体)に加えて、上記液体投与形態は、当該分野で一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水もしくは他の溶媒、可溶化剤および乳化剤(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド)、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物)を含み得る。不活性希釈剤の他に、上記経口用組成物はまた、補助剤(例えば、湿潤剤、懸濁剤、保存剤、甘味剤、矯味矯臭剤、および芳香剤、濃化剤、着色剤、粘性調節剤、安定化剤もしくは浸透圧調節剤)を含み得る。経口投与のための液体キャリアの適切な例としては、水(部分的に、上記のような添加剤を含む);例えば、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール(例えば、グリコール)を含む)およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば、分画ココナツ油および落花生油)が挙げられる。
【0142】
経口投与のための固体投与形態としては、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固体投与形態において、上記活性成分は、少なくとも1種の不活性な生理学的に受容可能な賦形剤もしくはキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸ニカルシウム)および以下のうちの1種以上と混合される:(a)充填剤もしくは増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸);(b)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアガム);(c)湿潤剤(humectant)(例えば、グリセロール);(d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカのデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム);(e)溶液抑制剤(solution retarding agent)(例えばパラフィン);(f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物);(g)湿潤剤(wetting agent)(例えば、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート);(h)吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ);ならびに(i)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物)。固体処方物に適した他の賦形剤としては、表面改変剤(例えば、非イオン性表面改変剤およびアニオン性表面改変剤)が挙げられる。表面改変剤の代表例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド性二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、マグネシウムアルミニウムシリケート、およびトリエタノールアミン。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、上記投与形態はまた、緩衝化剤を含み得る。固体投与形態あたりの固体キャリアの量は、広く変動するが、好ましくは、約25mg〜約1gである。
【0143】
類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースもしくは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールなどの様な賦形剤を使用して、軟質充填ゼラチンカプセル剤および硬質充填ゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の上記固体投与形態は、コーティングおよび殻(例えば、腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび他の製薬分野で周知のコーティング)で調製され得る。上記投与形態は、必要に応じて、不透明化剤を含み得、そしてまた、組成物が、活性成分のみを、もしくは優先的に、腸管の特定の部分において、必要に応じて遅延した様式で放出するようにされ得る。使用され得る埋め込み組成物の例は、ポリマー物質およびワックスを含む。
【0144】
特定の実施形態において、処置の必要な領域に、本発明の組成物を局所的に投与することは望ましいことであり得る。このことは、例えば、限定ではなく、手術の間の局所的注入、局所的適用、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、または皮膚パッチもしくはステントもしくは他のインプラントによって、達成され得る。
【0145】
局所投与のために、組成物は、好ましくは、キャリア(例えば、水、グリセロール、アルコール、プロピレングリコール、脂肪アルコール、トリグリセリド、脂肪酸エステル、もしくはミネラルオイル)を含み得るゲル、軟膏剤、ローション剤、もしくはクリーム剤として処方され得る。他の局所的キャリアとしては、流動パラフィン(liquid petroleum)、パルミチン酸イソプロピル、ポリエチレングリコール、エタノール(95%)、水中ポリオキシエチレンモノラウレート(5%)、もしくは水中ラウリル硫酸ナトリウム(5%)が挙げられる。抗酸化剤、湿潤剤(humectant、粘性安定化剤、および類似の薬剤の他の物質は、必要な場合に添加され得る。経皮浸透増強剤(例えば、アゾン)はまた、含められ得る。
【0146】
さらに、特定の場合に、本発明の組成物が、皮膚の上にもしくは皮膚の下に配置される経皮デバイス内に配置され得ることが予期される。このようなデバイスとしては、受動的もしくは能動的いずれかの放出機構によって皮膚に化合物を放出するパッチ、インプラント、および注射物が挙げられる。経皮投与は、身体の表面および身体経路の内層(上皮組織および粘膜組織を含む)を横断する全ての投与を含む。このような投与は、本発明の組成物を、ローション剤、クリーム剤、泡沫剤、パッチ、懸濁物、液剤および坐剤(直腸および膣の)において実施され得る。
【0147】
経皮投与は、活性成分および皮膚に対して非毒性でありかつ皮膚を介した血流への全身吸収のために上記活性成分のうちの少なくともいくらかの送達を可能にするキャリアを含む経皮パッチの使用を介して達成され得る。上記キャリアは、任意の数の形態(例えば、クリーム剤および軟膏剤、パスタ剤、ゲル、および閉塞性デバイス)をとり得る。クリーム剤および軟膏剤は、水中油型もしくは油中水型いずれかの粘性の液体もしくは半固体のエマルジョンであり得る。活性成分を含むワセリン(petroleum)もしくは親水性ワセリン(hydrophilic petroleum)中に分散させた吸収性散剤から構成される吸収性パスタ剤もまた、適切であり得る。種々の閉塞性デバイスが、活性成分を血流へ放出するために使用され得る(例えば、キャリアありまたはなしの上記活性成分を含むレザバあるいは上記活性成分を含むマトリクスを覆う半透膜)。
【0148】
坐剤処方物は、古典的な物質(カカオ脂を含む)から、坐剤の融解点を変化させるワックス、およびグリセリンを添加してもしくは添加せずに作製され得る。水溶性坐剤基剤(例えば、種々の分子量のポリエチレングリコール)もまた、使用され得る。
【0149】
種々の処方物を生成するための材料および方法は、当該分野で公知であり、本発明を実施するために適合され得る。
【0150】
(III−投与量および投与)
本発明に従う処置は、単一用量もしくは一定期間にわたる複数用量からなり得る。
【0151】
投与は、may be 1日に、1週間に(もしくはある他の複数日の間隔で)、もしくは断続的スケジュールで1回もしくは複数回であり得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、数週間の期間(例えば、4〜10週間)にわたって1週間に1回のベースで、1日あたり1回以上投与され得る。あるいは、本発明の薬学的組成物は、数日(例えば、1〜10日間)の期間にわたって1日1回投与され得、続いて、数日の期間(例えば、1〜30日間)投与されず、そのサイクルが所定の回数(例えば、2〜10サイクル)、反復される。
【0152】
投与は、注射(皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射など)もしくは経口投与のような任意の従来の様式において実施され得る。
【0153】
投与経路に依存して、有効用量は、処置されるべき上記被験体の器官の機能、体重、もしくは体表面積に応じて計算され得る。適切な投与量の最適化は、ヒトの治験において観察された薬物動態データに鑑みて、当業者によって容易になされ得る。最終的な投与レジメンは、上記薬物の作用を改変する種々の要因(例えば、上記薬物の比活性、上記患者の損傷の重篤度および応答性、上記患者の年齢、状態、体重、性別および食事、任意の存在する感染の重篤度、投与時間、同時に行う治療の有用性(use)(もしくはないか)、ならびに他の臨床的要因を考慮して、主治医によって決定される。本発明の組み合わせを使用して研究を行う場合、さらなる情報は、適切な投与レベルおよび処置時間に関して分かってくる。
【0154】
代表的な投与量は、1.0pg/kg体重〜100mg/kg体重を含む。例えば、全身投与については、投与量は、100.0ng/kg体重〜10.0mg/kg体重であり得る。マイクロ注入を介した上記部位への直接投与については、投与量は、1ng/kg体重〜1mg/kg体重であり得る。
【0155】
本発明の薬学的組み合わせは、さらなる治療と組み合わせて使用され得ることが認識される(すなわち、本発明に従う処置は、1種以上の望ましい治療剤もしくは医療手順と同時、その前、もしくはその後に施され得る)。このような組み合わせレジメンにおいて使用するための治療(治療剤もしくは手順)の特定の組み合わせは、所望の治療剤の適合性および/もしくは手順、ならびに達成されるべき望まし治療効果を考慮に入れる。
【0156】
例えば、本発明の方法および組成物は、他の手順(外科手術、放射線療法(例えば、γ線照射、プロトンビーム放射線療法、電子ビーム放射線療法、プロトン療法、近接照射療法、および全身的放射活性同位体)、内分泌療法、加温療法および低温療法が挙げられる)と一緒に使用され得る。
【0157】
代わりにもしくはさらに、本発明の方法および組成物は、任意の有害な効果を減弱する他の薬剤(例えば、制吐剤)、および/もしくは他の承認された化学療法剤(いくつか挙げると、アルキル化剤(メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗物質(メトトレキサート)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(6−メルカプトプリン、5−フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン)、紡錘体毒素(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(カルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(シスプラチン、カルボプラチン)、酵素(アスパラギナーゼ)、およびホルモン(タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)が挙げられるが、これらに限定されない)と一緒に使用され得る。最新の癌治療についてのより包括的な議論については、http://www.cancer.gov/、FDA承認腫瘍薬物の列挙については、http://www.fda.gov/cder/cancer/druglistframe.htm、およびThe Merck Manual,第17版.1999(これらの内容全体が、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0158】
本発明の方法および組成物はまた、処置レジメンの一部として、細胞傷害薬剤の1種以上のさらなる組み合わせと一緒に使用され得る。ここで上記細胞傷害性薬剤のさらなる組み合わせは、以下から選択される:CHOPP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);COP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);CAP−BOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、プロカルバジン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン);m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン、およびロイコボリン);ProMACE−MOPP(プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);ProMACE−CytaBOM(プレドニゾン、メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エトポシド、ロイコボリン、シタラビン、ブレオマイシン、およびビンクリスチン);MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾン、ブレオマイシン、およびロイコボリン);MOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);ABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン);ABV(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、およびビンブラスチン)の代わりにMOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾンおよびプロカルバジン);ABVD(アドリアマイシン/ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン)の代わりにMOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびプロカルバジン);ChlVPP(クロラムブシル、ビンブラスチン、プロカルバジン、およびプレドニゾン);IMVP−16(イホスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド);MIME(メチル−gag、イホスファミド、メトトレキサート、およびエトポシド);DHAP(デキサメタゾン、高用量シタラビン、およびシスプラチン);ESHAP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量シタラビン、およびシスプラチン);CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン);CAMP(ロムスチン、ミトキサントロン、シタラビン、およびプレドニゾン);CVP−1(シクロホスファミド、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)、ESHOP(エトポシド、メチルプレドニゾロン、高用量シタラビン、ビンクリスチンおよびシスプラチン);EPOCH(シクロホスファミドおよび経口プレドニゾンのボーラス用量での96時間にわたってエトポシド、ビンクリスチン、およびドキソルビシン)、ICE(イホスファミド、シクロホスファミド、およびエトポシド)、CEPP(B)(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CHOP−B(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、およびブレオマイシン)、CEPP−B(シクロホスファミド、エトポシド、プロカルバジン、およびブレオマイシン)、ならびにP/DOCE(エピルビシンもしくはドキソルビシン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、およびプレドニゾン)。
【0159】
(IV−適応症)
本発明の組成物および方法は、原発性癌および/もしくは転移性癌、ならびに他の癌性状態を処置するために使用され得る。例えば、本発明の組成物および方法は、固形腫瘍のサイズを縮小し、腫瘍増殖もしくは転移を阻害し、種々のリンパ系癌を処置し、および/あるいはこれら疾患に罹患した哺乳動物(ヒトを含む)の生存期間を長期化するために有用であるはずである。
【0160】
本発明に従って処置され得る癌および癌性状態の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:脳および中枢神経系の腫瘍(例えば、髄膜、脳、脊髄、脳神経およびCNSの他の部分の腫瘍(例えば、神経膠芽種もしくは髄芽腫));頭部および/もしくは頸部の癌、乳房の腫瘍、循環系(例えば、心臓、縦隔および強膜、ならびに他の胸郭内器官)の腫瘍、血管腫瘍、ならびに腫瘍関連血管組織);血液およびリンパ系の腫瘍(例えば、ホジキン病、非ホジキン病リンパ腫、ハーキットリンパ腫、AIDS関連リンパ腫、悪性免疫増殖疾患、多発性骨髄腫、および悪性形質細胞新生物、リンパ球性白血病、骨髄性白血病、急性リンパ性白血病もしくは慢性リンパ性白血病、単球性白血病、特定の細胞型の他の白血病、非特定細胞型の白血病、リンパ系、造血および関連組織の非特定悪性新生物(例えば、びまん性大細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫もしくは皮膚浸潤性T細胞リンパ腫);排泄系(例えば、腎臓、腎盂、尿管、膀胱、および他の尿器官)の腫瘍;胃腸管(例えば、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸S状結腸境界部、直腸、肛門、および肛門管)の腫瘍;肝臓および肝臓内胆管、胆嚢、および胆道の他の部分、膵臓、ならびに他の消化器官に関する腫瘍;口腔(例えば、口唇、舌、歯肉、口床、口蓋、耳下腺、唾液腺、扁桃、中咽頭、鼻咽頭、梨状洞(puriform sinus)、下咽頭および口腔の他の部位)の腫瘍;生殖器系(例えば、外陰、膣、子宮頸管、子宮、卵巣、および女性生殖器と関連する他の部位、胎盤、陰茎、前立腺、精巣および男性生殖器と関連する他の部位)の腫瘍;気道の腫瘍(例えば、鼻腔、中耳、副鼻腔(accessory sinus)、喉頭、気管、気管支および肺の腫瘍(例えば、小細胞肺癌および非小細胞肺癌));骨格系(例えば、四肢の骨および関節軟骨、骨関節軟骨(bone articular cartilage)および他の部位)の腫瘍;皮膚の腫瘍(例えば、皮膚の悪性黒色腫、非黒色腫皮膚癌、皮膚の基底細胞癌、皮膚の扁平上皮細胞癌、中皮腫、カポージ肉腫);ならびに他の組織に関する腫瘍(including 末梢神経系および自律神経系、結合組織および軟組織、後腹膜および腹膜、眼および付属器、甲状腺、副腎、および他の内分泌腺と関連構造、リンパ節の二次的新生物および非特定悪性新生物、呼吸器系および消化器系の二次的悪性新生物、ならびに他の部位の二次的悪性新生物。
【0161】
より具体的には、本発明の特定の実施形態において、本発明の処置において使用される組成物および方法は、肉腫の処置において使用される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物および方法は、膀胱癌、乳癌、慢性リンパ腫白血病、頭頸部癌、子宮内膜癌、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、卵巣癌、膵臓癌、および前立腺癌の処置において使用される。
【0162】
本発明の組成物および方法を使用して処置され得る腫瘍は、他の化学療法剤での処置に不応性であり得る。用語「不応性」とは、腫瘍に関して本明細書において使用される場合、means that 本発明の組成物以外の少なくとも1種の化学療法剤での処置の際に、上記腫瘍(および/もしくはその転移)が、このような化学療法剤の処置の後に全くもしくはごく弱い抗増殖応答を示す(すなわち、腫瘍増殖の阻害が全くないか、ごく弱い)こと、すなわち、他の(好ましくは、標準的な)化学療法剤で全く処置できないか、または不満足な結果しか伴わない腫瘍を意味する。本発明は、不応性腫瘍などの処置が言及される場合、(i)1種以上の化学療法剤が患者の処置の間に既に失敗している腫瘍を包含するのみならず、(ii)他の手段(例えば、生検および化学療法剤の存在下での培養)によって不応性であることが示され得る腫瘍もまた含むことが理解されるべきである。
【0163】
(V−薬学的パックもしくはキット)
別の曲面において、本発明は、本発明の結合体の投与を可能にする本発明の薬学的組成物の1種以上の成分を含む1つ以上の容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコもしくはボトル)を含む薬学的パックもしくはキットを提供する。
【0164】
薬学的パックもしくはキットの種々の成分は、固体(例えば、凍結乾燥)もしくは液体形態において供給され得る。各成分は、一般に、そのそれぞれの容器中にアリコートに分けられるかまたは濃縮形態で提供されるのに適している。薬学的パックもしくはキットは、凍結乾燥成分の再構成のための媒体を含み得る。上記キットの個々の容器は、好ましくは、商業的スケールのためにぴったりと拘束して維持される。
【0165】
特定の実施形態において、薬学的パックもしくはキットは、1種以上のさらなる承認された治療剤(例えば、上記のように、1種以上の他の抗癌剤)を含む。必要に応じて、薬学的製品もしくは生物学的製品の製造、使用もしくは販売を規制する政府当局によって定められた形態の注意書きもしくはパッケージ挿入物は、このような容器と関連づけられ得る。この注意書きは、ヒト投与のための製造、使用もしくは販売の当局による承認を表す。上記注意書きもしくはパッケージ挿入物は、本明細書で開示される方法に従う薬学的組成物の使用のための説明書を含み得る。
【0166】
識別子(例えば、バーコード、高周波、IDタグなど)は、上記キット中もしくはキット上に存在し得る。上記識別子は、例えば、品質制御、在庫管理、ワークステーション間の移動追跡の目的で、上記キットを個別に識別するために使用され得る。
【実施例】
【0167】
(実施例)
以下の実施例は、本発明を作製し実施するための好ましい態様のいくつかを記載する。しかし、これら実施例は例示目的に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意味しないことが理解されるべきである。さらに、実施例中の記載が過去形で示されていなければ、本文は、本明細書の残りの部分と同様に、実験が実際に行われたか、またはデータが実際に得られたことを示唆することを意図しない。
【0168】
(実施例1:腫瘍細胞内のTM−601の迅速な取り込みおよび長期間の細胞内位置)
本実施例は、癌細胞へのTM−601の取り込みおよびその取り込み後の安定性を実証する。ヒト神経膠芽種細胞株U373を培養し、その培養培地に蛍光タグ化したTM−601分子を添加することによって、固定せずにTM−601取り込みについて染色した(図1において緑で示される)。24時間後、上記培地を除去し、上記細胞を繰り返し洗浄して、残りの蛍光タグ化TM−601を除去した。参考のために、その核を、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール,ジヒドロクロリド(DAPI)(青)で染色し、図1Aにおける写真を、共焦点顕微鏡で撮影した。次いで、上記細胞を、培地中に入れ、37℃でさらに6日間培養し、2枚目の写真(図1B)を撮影した。その結果は、24時間処置の間に上記細胞に入った上記蛍光タグ化TM−601が、最大6日間にわたって生細胞内に残っていることを示す。
(他の実施形態)
本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書で開示される本発明の実施の考察から、当業者に明らかである。本明細書および実施例は、単に例示と考えられ、本発明の真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの治療部分と会合した少なくとも1つの毒素部分を含む結合体であって、ここで該毒素部分は、クロロトキシン、その生物学的に活性なフラグメントもしくはその誘導体を含む、結合体。
【請求項2】
前記結合体は、正常細胞よりも選択的にもしくは特異的に癌細胞を標的にする、請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
前記結合体は、細胞のインターナリゼーションを受ける、請求項1に記載の結合体。
【請求項4】
前記毒素部分および治療部分は、共有結合的に会合されている、請求項1に記載の結合体。
【請求項5】
前記毒素部分および治療部分は、直接的に共有結合的に会合されている、請求項4に記載の結合体。
【請求項6】
前記毒素部分および治療部分は、リンカーを介して共有結合的に会合されている、請求項4に記載の結合体。
【請求項7】
前記治療部分は、抗癌剤を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項8】
前記抗癌剤は、癌細胞に対して不十分な選択性/特異性を示す抗癌剤;癌細胞による不十分な取り込みを示す抗癌剤;癌細胞において不十分な保持を示す抗癌剤;不十分な水溶解性を示す抗癌剤;癌細胞において早期不活性化を受ける抗癌剤;癌細胞において損なわれた活性化を受ける抗癌剤;徹底的な細胞による分解を受ける抗癌剤;および薬物耐性と関連する抗癌剤からなる群のメンバーである、請求項7に記載の結合体。
【請求項9】
前記治療部分は、放射性同位体、酵素、プロドラッグ活性化酵素、放射線増感剤、干渉RNA、スーパー抗原、抗血管新生剤、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物アルカロイド、インターカレート抗生物質、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗物質、有糸分裂インヒビター、増殖因子インヒビター、細胞周期インヒビター、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答改変因子、抗ホルモンおよび抗アンドロゲンからなる群のメンバーである、請求項1に記載の結合体。
【請求項10】
前記毒素部分は、標識と会合されている、請求項1に記載の結合体。
【請求項11】
前記標識は、放射性標識を含む、請求項10に記載の結合体。
【請求項12】
有効量の、請求項1〜11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの結合体、またはその生理学的に許容可能な塩、および少なくとも1種の薬学的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
化学療法剤をさらに含む、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
癌細胞に対する治療部分の特異性を増大させるための方法であって、該方法は、該治療部分を、毒素部分に会合させて、結合体を形成する工程を包含し、ここで該毒素部分は、クロロトキシン、その生物学的に活性なサブユニットもしくはその誘導体を含む、方法。
【請求項15】
癌細胞による治療部分の細胞取り込みを増大させるための方法であって、該方法は、該治療部分を、毒素部分に会合させて、結合体を形成する工程を包含し、ここで該毒素部分は、クロロトキシン、その生物学的に活性なサブユニットもしくはその誘導体を含む、方法。
【請求項16】
癌細胞による治療部分の細胞保持を増大させるための方法であって、該方法は、該治療部分を、毒素部分に会合させて、結合体を形成する工程を包含し、ここで該毒素部分は、クロロトキシン、その生物学的に活性なサブユニットもしくはその誘導体を含む、方法。
【請求項17】
前記毒素部分および治療部分は、共有結合的に会合される、請求項14、15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記毒素部分および治療部分は、直接的に共有結合的に会合される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記毒素部分および治療部分は、リンカーを介して共有結合的に会合される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記癌細胞は、前記治療剤に対して耐性である、請求項14、15または16に記載の方法。
【請求項21】
癌患者を処置するための方法であって、該方法は、有効量の、請求項1〜11のいずれか1項に記載の結合体を該患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
前記結合体の投与は、実質的に同一の条件下での前記治療部分の投与より高い癌細胞の特異的標的化、実質的に同一の条件下での前記治療部分の投与より高い癌細胞による取り込み、実質的に同一の条件下での前記治療部分の投与より高い癌細胞による保持、実質的に同一の条件下での前記治療部分の投与より少ないもしくは重篤度が低い、望ましくない副作用;ならびに実質的に同一の条件下での前記治療部分の投与より弱い細胞分解、のうちの1つ以上を生じる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記癌細胞は、前記治療部分に対して耐性の癌細胞を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記結合体の投与は、経口投与、非経口投与、もしくは経腸投与によって行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
化学療法剤を前記患者に投与する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記結合体は、前記化学療法剤の投与の前に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記結合体は、前記化学療法剤の投与の後に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記結合体は、前記化学療法剤と同時に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記化学療法剤は、iRNA、アルキル化剤、プリンアンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、植物アルカロイド、インターカレート抗生物質、アロマターゼインヒビター、代謝拮抗物質、有糸分裂インヒビター、増殖因子インヒビター、細胞周期インヒビター、酵素、トポイソメラーゼインヒビター、生物学的応答改変因子、抗ホルモンおよび抗アンドロゲンからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記化学療法剤は、BCNU、シスプラチン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、パクリタキセル、テモゾロミド、トポテカン、フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、メトトレキサート、メルカプトプリン、チオグアニン、リン酸フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、シタラビン、アザシチジン(azacitisine)、エトポシド、テニポシド、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ミトキサントロン、ミトタン、およびアミホスチンからなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記患者は、肺癌、骨癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚黒色腫もしくは眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、子宮癌、性器または生殖器官の癌腫、ホジキン病、食道癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、慢性白血病もしくは急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱の癌、腎臓の癌、腎細胞癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫からなる群のメンバーである癌である、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記患者における癌の存在を検出する工程をさらに包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
約5〜2000ヌクレオチド長の間の核酸薬剤に共有結合的に連結された毒素部分を含む、組成物。
【請求項34】
前記毒素部分は、クロロトキシン部分である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記毒素部分は、サソリクロロトキシンと少なくとも35%アミノ酸同一性を共有する、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記クロロトキシン部分は、サソリクロロトキシンのフラグメントを含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
前記核酸薬剤は、アンチセンス薬剤を含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項38】
前記核酸薬剤は、アンチセンス薬剤をコードする、請求項33に記載の組成物。
【請求項39】
前記核酸薬剤は、細胞に導入されたときに、アンチセンス薬剤を送達するベクターとして作用する、請求項33に記載の組成物。
【請求項40】
前記核酸薬剤は、阻害性RNAを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項41】
前記核酸薬剤は、阻害性RNAをコードする、請求項33に記載の組成物。
【請求項42】
前記核酸薬剤は、細胞に導入されたときに、阻害性RNAを送達するベクターを含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項43】
前記少なくとも1つの治療部分は、コアおよび表面を有する粒子を含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項44】
前記少なくとも1つの毒素部分は、前記粒子の表面に結合体化される、請求項43に記載の結合体。
【請求項45】
前記粒子の最小寸法は、約1μm未満である、請求項43に記載の結合体。
【請求項46】
前記粒子の最小寸法は、約100nm未満である、請求項43に記載の結合体。
【請求項47】
前記コアは、磁気共鳴活性を有する物質を含む、請求項46に記載の結合体。
【請求項48】
前記磁気共鳴活性を有する物質は、アルミニウム、コバルト、インジウム、鉄、銅、ゲルマニウム、マンガン、ニッケル、スズ、チタン、パラジウム、白金、セレン、ケイ素、銀、および亜鉛からなる群より選択される原子を含む、請求項47に記載の結合体。
【請求項49】
前記少なくとも1つの治療部分は、リポソームを含む、請求項1に記載の結合体。
【請求項50】
以下:
請求項1−12のいずれか1項に記載の結合体;および
被包剤、
を含む、薬学的組成物であって、ここで該結合体は、該被包剤内に閉じこめられている、薬学的組成物。
【請求項51】
前記結合体は、前記被包剤内に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項50に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記被包剤は、リポソームを含む、請求項50に記載の薬学的組成物。
【請求項53】
前記結合体は、前記リポソーム膜内に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項52に記載の薬学的組成物。
【請求項54】
前記治療部分は、5〜2000ヌクレオチド長の間の核酸薬剤を含む、請求項50に記載の薬学的組成物。
【請求項55】
前記核酸薬剤は、阻害性RNAを含む、請求項54に記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記核酸薬剤は、阻害性RNAをコードする、請求項55に記載の薬学的組成物。
【請求項57】
前記核酸薬剤は、細胞に導入されるときに、阻害性RNAを送達するベクターを含む、請求項56に記載の薬学的組成物。
【請求項58】
前記核酸薬剤は、前記被包剤によって閉じこめられる、請求項54に記載の薬学的組成物。
【請求項59】
前記核酸薬剤は、前記被包剤内に少なくとも部分的に埋め込まれる、請求項54に記載の薬学的組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535811(P2010−535811A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520313(P2010−520313)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/072524
【国際公開番号】WO2009/021136
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510034764)トランスモレキュラー, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】