薬物送達のための生分解性ブロック・ポリマー、およびそれに関連する方法
【課題】薬物送達のための生分解性ブロック・ポリマー、およびそれに関連する方法を提供する。
【解決手段】生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックと、ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含み、第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖部分を含む生分解性ブロック・コポリマーを開示する。疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まない。ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成し、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される。
【解決手段】生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックと、ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含み、第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖部分を含む生分解性ブロック・コポリマーを開示する。疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まない。ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成し、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性ブロック・ポリマーに関し、さらに詳しくは薬物送達に使用するための、生物活性材料を含むその内包ミセルに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床的に使用される薬剤の大部分は、低分子量ポリマー化合物(<500ダルトン)であり、血流中での短い半減期、および高いクリアランス率を示す。こうした低分子は、全身の健常組織および病変組織の両方に急速に拡散し、多くの場合、重篤な副作用を引き起こす。さらに、こうした治療薬は溶解性および安定性が限られているうえ、毒性があることが多いため、これら運搬に関する問題を解決する有効な薬物送達システムが非常に注目されている。ポリマー治療剤(薬剤を共有結合した、または物理的に組み込んだ重合薬剤、重合薬剤コンジュゲート、ポリマー−タンパク質コンジュゲート、ポリマー−DNAコンジュゲート、および重合ミセルなど)は、研究が進行している分野である。
【0003】
最も広く研究された送達剤は、ブロックの1つが水に選択的に溶媒和されるブロック・コポリマーから生成される超分子である。こうしたミセルは、疎水性荷物(cargo)を封鎖することができるコア−シェル構造または区画構造を形成し、典型的には直径が数十ナノメートルであり、粒度分布が比較的狭い。薬剤のコア−シェル構造への非共有結合的封入に基づく超分子薬物送達システムの主な障害は、高度希釈でのポリマー・ミセルの安定性の欠如、および低い薬剤内包レベルにある。安定性の向上は、前混合ミセルのコアまたはシェルを架橋結合することにより、あるいは、たとえば、逆電荷のブロック・イオノマー間での多価電解質の複合体形成、立体複合体形成、または水素結合などブロック間の非共有結合性相互作用を促進する構造設計により達成されてきた。化学的な架橋結合により安定性は改善されたものの、このアプローチは、ゲスト分子の封入または生分解性にとって最適でない場合がある。
【0004】
さらに、非共有結合性相互作用は、内包レベルを向上させ、荷物の放出速度を緩和するキャリア−荷物複合体を強化するために使用することもできる。たとえば、イオン対複合体の形成を伴うアンモニウム・イオンとカルボキシレート・アニオンとの間の相互作用は、分子認識プロセスの重要な典型例である。この酸塩基モチーフは、ジブロック・コポリマーの自己組織化を制御してドメイン・パターン、低分子混合物、界面、界面活性剤/ポリマー/デンドリマー超分子複合体、液晶/ポリマー複合体、熱応答性ゲル等を形成するためゲルの超分子集合体に利用されてきた。疎水性薬剤分子(R1−COOH)とポリマー・セグメント(NH2−R2)との間の特異的な酸塩基相互作用により、水性媒体中のブロック・コポリマー・ミセルの薬剤内包能が改善された。同様に、コア内に酸官能基を含むコア/シェル・ミセルは、DOXの高い内包レベルを封鎖する。ただし、残念ながら、DOX分子を、酸基を介してコアに化学的に連結する必要があり、癌の処置においては生物活性を示さなかった。同様に、別の非共有結合性相互作用の使用した立体複合体形成も、薬剤内包量を著しく改善するだけでなく、放出速度を制御するために使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬物送達システムにとって超希釈条件におけるミセルの安定性、および荷物−キャリア内包レベルの向上は、依然として重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、実施形態の1つでは、生分解性ブロック・コポリマーであって、
ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、および
ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合(ROP:ring opening polymerization)により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックであり、第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖部分を含む疎水性ブロック、
を含み、
疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成し、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
生分解性ブロック・コポリマーを開示する。
【0007】
別の実施形態では、生分解性ブロック・ポリマーを形成する方法であって、
ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合によりブロック・コポリマーを形成することを含み、ブロック・コポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、親水性ブロックはポリエーテルアルコールから誘導され、疎水性ブロックは尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む第1の反復単位を含み、
疎水性ブロックは共有結合した生物活性材料を含む側鎖を含まず、ブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを水中で形成し、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
方法を開示する。
【0008】
別の実施形態では、
第1の生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックと、ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含み、第1の反復単位は、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含み、疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、ブロック・コポリマーは非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される生分解性ブロック・コポリマー
を含むミセルを開示する。
【0009】
別の実施形態では、細胞を処置する方法であって、
第1の生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、およびポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックを含み、第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む生分解性ブロック・コポリマーと、
生物活性材料と
を含む内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含み
第1のブロック・コポリマーは非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、疎水性ブロックの側鎖は生物活性材料に共有結合しておらず、第1のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
方法を開示する。
【0010】
当業者であれば、以下の詳細な説明、図および添付の特許請求の範囲から本発明の上記および他の特徴と利点とを認識および理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】保護されたブロック・コポリマー実施例3の1H NMRスペクトルである。
【図2】ベンジルエステル基をカルボン酸に水素化分解した後の実施例3の1H NMRスペクトルである。
【図3】トリブロック・コポリマー実施例7から作られたDOX内包ミセルの透過型電子顕微鏡写真(TEM:transmission electron micrograph)画像である。
【図4】実施例5〜8のDOX放出プロファイルを示すグラフである。
【図5】(A)ポリマー実施例5〜8により形成されたブランク・ミセルの濃度を関数としたHepG2細胞の生存率を示すグラフである。(B)ポリマー実施例5〜8により形成されたDOX内包ミセルの濃度を関数としたHepG2細胞の生存率を示すグラフである。
【図6】実施例11、[P(MTCOEt0.8−r−MTCU0.2)](5k−5k)をモノメチルPEG、MPEG1(5k)と比較したGPC(Gel permeation chromatography)クロマトグラムである。
【図7】実施例12、13および比較例2により形成されたミセルの動的光散乱(DLS:dynamic light scattering)の結果を比較したグラフである。
【図8】実施例13、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.8−MTCU0.2)](5k−3k)の薬剤内包ミセル(図8にP+Dとプロット表示)と共に、実施例13により形成された非内包ポリマー・ミセル(図8にPとプロット表示)の粒度および粒度分布を示すグラフである。尿素基なしで調製された非内包ミセル、比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)の大きさは、直径約24nmであったのに対し(図8にP’とプロット表示)、比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)から調製された薬剤内包ミセルの大きさはかなり大きく、約430nmであった(図8にP’+Dとプロット表示)。
【図9】異なる尿素含有量を有するMPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)]ブロック・コポリマー(実施例12、13および比較例2、xはそれぞれ0.4、0.2および0.0であり、各々3000のMnの疎水性ブロックを有する)による薬剤内包ミセルの薬剤内包量と大きさとの関係を示すグラフである。
【図10】比較例4(f=0)、実施例13(f=0.2)および実施例12(f=0.4)とのインキュベーション後のMCF7ヒト乳癌細胞の生存率を示す棒グラフである。
【図11】比較例4(f=0)、実施例13(f=0.2)および実施例12(f=0.4)を含むBT474ヒト乳房癌細胞株の生存率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
水中でミセルを形成し、非共有結合性相互作用により生物活性材料(本明細書では、生物活性材料とも呼ばれる)を封鎖するのに好適である生体適合性および生分解性ブロック・コポリマーを開示する。このブロック・コポリマーは、ポリエーテル骨格を含む親水性ブロックと、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含むペンダント部分を含む第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合(ROP)により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含む。疎水性ブロックは、側鎖に共有結合した生物活性材料(たとえば、薬剤、ペプチド、ヌクレオチド、または何らかの細胞特異的相互作用が可能な材料)をまったく有さない。ブロック・コポリマーは、単分散で両親媒性であり、0%〜20%の細胞毒性を示し、より詳細には細胞毒性を示さない。
【0013】
「生分解性」という用語は、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)により、生物活性、特に酵素作用により分解され、材料の化学構造が大きく変化することと定義される。本明細書においては、材料は、ASTM D6400により180日以内に60%生分解される場合、「生分解性」である。
【0014】
さらに詳しくは、ブロック・コポリマーは、グリコールでも、またはモノアルコールでもよいポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックを含む。ポリエーテルアルコールは、1つまたは複数の環状カーボネート・モノマーの開環重合を開始させ、疎水性ブロックを形成するのに使用される。疎水性ブロックは、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む第1の環式カルボニル・モノマーから誘導することができる。主鎖を分解することなく開環重合後にカルボン酸基に変換し得るエステル基は、潜在的(latent)カルボン酸基である。たとえば、潜在的カルボン酸基は、開環重合後に脱保護することができる保護されたエステルであってもよい。
【0015】
より詳細には、疎水性ブロックは、以下の官能基、カルボン酸基、潜在的カルボン酸基または尿素基のいずれも含まない第2の環式カルボニル・モノマーから誘導される第2の繰り返し単位をさらに含む。環式カルボニル・モノマーを組み合わせると、ブロック・コポリマーの疎水性、自己会合挙動、およびブロック・コポリマーと薬剤などの生物活性のある「荷物(cargo)」材料との非共有結合相互作用が制御される。このため、ブロック・コポリマーは、特定のミセル形成特性を達成するように設計しても、あるいは特定の生物活性材料の内包もしくは放出またはその両方に関与する非共有結合相互作用を調節するように設計してもよい。
【0016】
また、第1の環式カルボニル・モノマーは、必要に応じて尿素基および潜在的カルボン酸基を共に含んでもよい。尿素基は、分岐水素結合を介して会合することができ、その水素結合強度は、アミドおよびウレタンを上回る。尿素の自己認識(すなわち、尿素官能基が他の尿素官能基と相互作用する(A−A系))により、従来のA−B対(すなわち、尿素がケトンなどの異なる官能基と相互作用する)と比較して合成手順が簡素化される。また、尿素は、カルボキシレート誘導体およびそのイソスター(isosteres)(スルホネート、ホスホネートおよびホスフェート)と非共有結合して、ミセルの安定性および薬剤の内包量を改善することもできる。
【0017】
水溶液中のブロック・コポリマーは、可逆的に自己会合し、ペンダント尿素もしくはカルボン酸基またはその両方を欠いたブロック・コポリマーから形成されたミセルと比較して低い臨界ミセル濃度(CMC:critical micelle concentration)を有するナノサイズのミセルを形成する。ブロック・コポリマーを単独で使用してホモミセルを形成しても、または組み合わせて使用して混合ミセルを形成してもよい。特に、カルボン酸含有ブロック・コポリマーを使用すれば、尿素含有ブロック・コポリマーとの混合ミセルを形成することができる。混合ミセルの尿素とカルボン酸とのモル分率は、ミセル形成組成物の薬剤内包量、鎖の凝集数、臨界ミセル濃度、および薬物放出特性の最適化を可能にするように、合成修飾ではなく配合により調整すると有利な場合がある。ブロック・コポリマーは、可逆的に荷物材料と会合し、ナノサイズの内包ミセルを形成する。低分子量荷物(Mn<300ダルトン)の高い内包量が実現されている。驚いたことに、内包ミセルの平均の大きさ(ブロック・コポリマー−荷物複合体(conjugate)とも呼ばれる)は、内包ミセルの乾燥重量に対して約10wt.%〜40wt.%の薬剤内包量で約100nmである。
【0018】
ミセルを形成するブロック・コポリマーは、下記一般式(1)を持つものであり、
A’−b−[P(モノマー1、...)](1)
式中、A’はポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックを表し、「−b−」はブロックの境界を示し、[P(モノマー1、...)]は、1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーの開環重合により形成される疎水性ブロックを表す。角括弧「[ ]」は疎水性ブロックを示し、「P( )」は、括弧内に含まれる1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーの開環重合を示す。疎水性ブロックは、単一の環式カルボニル・モノマーから形成されるホモポリマー、2つ以上の環式カルボニル・モノマーから形成されるランダム・コポリマー(式(1)のモノマー名を区切る「−r−」で示す)、2つ以上の環式カルボニル・モノマーから形成されるブロック・コポリマー(2つ以上の環式カルボニル・モノマーを区切る「−b−」で示す)、またはこれらの混合物を含むポリマー鎖を含んでもよい。すなわち、疎水性ブロックはそれ自体に、これらのポリマー鎖の種類のいずれか1つを含んでも、あるいはそれらの混合物を含んでもよい。
【0019】
たとえば、下記に詳述されるブロック・コポリマーは、式MPEG1−b−[P(MTCOEt−r−MTCU)]で表され、親水性ブロックはモノメチルポリ(エチレングリコール)(MPEG1)から誘導され、疎水性ブロックは、下記構造を持つ2つの環式カルボニル・モノマーMTCOEtおよびMTCUから誘導されるランダム・コポリマーからなる。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、nは2〜10000の整数である。MPEG1−b−[P(MTCOEt−r−MTCU)]は、下記構造を持つ。
【0022】
【化2】
【0023】
式中、疎水性ブロックのカーボネート反復単位の垂直方向のスタッキングは、反復単位のランダムな構成を示す。すなわち、どちらのカーボネート反復単位がMPEG1鎖に結合してもよい。親水性ブロックは任意に、誘導体化末端反復単位、Z’を含んでもよく、疎水性ブロックも任意に、誘導体化末端反復単位、Z’’を含んでもよい。上記の例では、MPEG1−b−[P(MTCOEt−r−MTCU)]の親水性ブロックは、MeOCH2CH2O−構造を持つ誘導体化末端反復単位を含む。Z’およびZ’’は、1〜100個の炭素を含む一価のラジカルであってもよい。Z’およびZ’’は、エンドキャップされた末端の反復単位、たとえば、上記に示したようにアセチルまたはメチルでエンドキャップされた反復単位を表してもよい。あるいは、Z’およびZ’’は、親水性ブロックもしくは疎水性ブロックまたはその両方の末端反復単位のより複雑な合成誘導体を表してもよい。Z’およびZ’’が含み得る官能基については限定されるものではないが、ただし、ブロック・コポリマーの荷物内包特性、ミセル形成特性、薬物放出特性、もしくは細胞標的化特性またはその全部に悪影響を及ぼさないものとする。Z’およびZ’’は独立に以下の基、ケトン基、カルボン酸基、エステル基、チオエステル基、エーテル基、アミド基、アミン基、アルデヒド基、アルケン基、アルキン基、3〜10個の炭素を含む環状脂肪族環、2〜10個の炭素を含む複素環式環、または前述の追加官能基の組み合わせの1つまたは複数を含んでもよい。複素環式環は、酸素、硫黄もしくは窒素またはその全部を含んでもよい。
【0024】
開環重合のためのポリエーテルアルコール開始剤は、1つまたは複数のヒドロキシ基を含んでもよい。より詳細には、ポリエーテルアルコールは、下記一般式(2)のポリ(アルキレングリコール)であってもよく、
HO−[CH2(CHR5)xCHR5O]n−H (2)
式中、xは0〜8であり、R5は各々水素、1〜30個の炭素を含むアルキル基、または6〜30個の炭素を含むアリール基から独立に選択される一価のラジカルである。下付き文字nは2〜10000の整数である。このため、エーテル反復単位は、各骨格酸素間に2〜10個の骨格炭素を含む。あるいは、ポリ(アルキレングリコール)は、下記式(3)で表されるモノエンドキャップされたポリ(アルキレングリコール)であってもよい。
R6O−[CH2(CHR5)xCHR5O]n−H (3)
式中、R6は、1〜20個の炭素を含む一価の炭化水素ラジカルである。
【0025】
非限定的な例として、ポリエーテルアルコールは、HO−[CH2CHR5O]n−H構造を有するポリ(エチレングリコール)(PEG:poly(ethylene glycol))であってもよく、式中、エーテル反復単位CH2CHR5O(角括弧で示す)は、骨格酸素に連結した2個の骨格炭素を含む。また、ポリエーテルアルコールは、HO−[CH2CHR5CHR5O]n−H構造を持つポリ(プロピレングリコール)(PPG:poly(propylene glycol))であってもよく、式中、エーテル反復単位CH2CHR5Oは、骨格酸素に連結した3個の骨格炭素を含む。モノエンドキャップされたPEGの例には、市販されているモノメチルPEGがあり、一末端反復単位は、CH3OCH2CH2O−構造を持つ。モノ誘導体化ポリ(アルキレングリコール)の末端反復単位は、一般に下記一般式(4)で表されるより複雑な化学構造を含んでもよい。
Z’−[CH2(CHR5)xCHR5O]n〜1−H (4)
式中、Z’−は、末端反復単位の骨格炭素および酸素を含む一価のラジカルであり、2〜100個の炭素を有していてもよい。以下の非限定的な例は、PEGをベースとしたポリエーテルアルコール開始剤のモノ末端誘導体化について説明する。上記のように、PEGの一末端単位は、上記に示したように、式中、Z’−がMeOCH2CH2O−であるモノメチルPEGなど、1〜20個の炭素を持つ一価の炭化水素基でキャップしてもよい。別の例では、PEGの一末端単位は、式中のZ’−がOCHCH2CH2O−であってもよいアルデヒドでもよい。アルデヒドを第一級アミンで処理すると、式中のZ’−がR7N=CHCH2CH2O−であるイミンが生成される。R7は、水素、1〜30個の炭素のアルキル基、または6〜100個の炭素を含むアリール基から選択される一価のラジカルである。続いて、イミンを式中のZ’−がR7NHCH2CH2CH2O−であるアミンに還元してもよい。別の例では、PEGの一末端反復単位を式中のZ’−がHOOCCH2O−であるカルボン酸に酸化してもよい。公知の方法を用いて、このカルボン酸を式中のZ’−がR7OOCCH2O−になるエステルに変換してもよい。あるいは、カルボン酸をZ’がR7NHOCCH2O−になるアミドに変換してもよい。他の多くの誘導体も可能である。特定の実施形態では、Z’−は、特定の細胞型と相互作用する生物活性部分を含む基である。たとえば、Z’基は、肝細胞を特異的に認識するガラクトース部分を含んでもよい。この例では、Z’−は、下記構造を有していてもよく、
【0026】
【化3】
【0027】
式中、−L’−は、親水性ブロックの末端単位を含む2〜50個の炭素を含む二価の結合基である。L’の右側のハイフンは、疎水性ブロックに対する結合である。Z’は、マンノースなど他の生物活性部分を含んでもよい。
【0028】
開環重合の開始剤として使用されるポリエーテルアルコールは、ポリ(アルキレングリコール)、モノ誘導体化ポリ(アルキレングリコール)またはこれらの混合物を含んでもよい。ポリエーテルアルコール開始剤は、モノ誘導体化末端反復単位を含んでいてもよいし、あるいは、モノ誘導体化末端反復単位を開環重合後に形成してもよい。
【0029】
ポリエーテルアルコールの数平均分子量は、100〜100,000、さらに詳しくは100〜10000、さらに一層詳しくは100〜5000であってもよい。
【0030】
ブロック・コポリマーの疎水性ブロックは、開環重合により1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーから誘導される繰り返し単位を含む。第1の環式カルボニル・モノマーは、尿素基、潜在的カルボン酸基またはこれらの混合物を含むペンダント部分を含む。ペンダント部分は、疎水性ブロックの側鎖になる。実施形態の1つでは、第2の環式カルボニル・モノマーが存在する場合、尿素基、潜在的カルボン酸基またはこれらの混合物を含むペンダント部分を含まない。環式カルボニル・モノマーがさらに存在する場合、尿素基、潜在的カルボン酸基またはこれらの混合物を含むペンダント部分を任意に含んでもよい。環式カルボニル・モノマーのいくつかの一般式を下記に示す。
【0031】
環式カルボニル・モノマーは、下記一般式(5)を有していてもよく、
【0032】
【化4】
【0033】
式中、tは0〜6の整数であり、tが0である場合、4および6と表記された炭素は一緒に単結合によりに連結している。Yは各々
【0034】
【化5】
【0035】
から独立に選択される二価のラジカルであり、式中、ダッシュ「−」は環の結合点を示す。後者の2つの基は、−N(Q1)−および−C(Q1)2−とも表される。Q1は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を持つ基であり、
【0036】
【化6】
【0037】
式中、M1は、−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1または−SR1(前と同様、式中、ダッシュは結合点を表す)から選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである。R1は、1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される一価のラジカルである。Q1基は各々独立に尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含んでもよい。Q1が水素でない場合、Q1は、開環重合後に疎水性ブロックの側鎖になる環式カルボニル環のペンダント部分を表す。尿素基は、下記式の一価の尿素ラジカル、
【0038】
【化7】
【0039】
または下記式の二価の尿素ラジカルを含んでもよく、
【0040】
【化8】
【0041】
式中、Raは独立に水素、1〜30個の炭素を含むアルキル基、または6〜30個の炭素を含むアリール基から選択される一価のラジカルを含む。尿素基は、ペンダント部分の末端の尿素基であってもよい。Q1基は各々独立に分岐でも、または非分岐でもよい。Q1基は各々独立にケトン基、アルデヒド基、アルケン基、アルキン基、3〜10個の炭素を含む環状脂肪族環、2〜10個の炭素を含む複素環式環、エーテル基、アミド基、エステル基および前述の追加官能基の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の追加官能基を含んでもよい。複素環式環は、酸素、硫黄もしくは窒素またはその全部を含んでもよい。2つ以上のQ1基は一緒に環を形成してもよい。実施形態の1つでは、1つのQ1基は、一価の尿素ラジカルを含む。別の実施形態では、1つまたは複数のQ1基は、開環重合後にカルボン酸に変換することができる潜在的カルボン酸基を含む。実施形態の1つでは、第1の環式カルボニル・モノマーは、式(5)の化合物であり、式中、1つまたは複数のQ1基は、尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。
【0042】
環式カルボニル・モノマーは、下記一般式(6)を有していてもよく、
【0043】
【化9】
【0044】
式中、Q2は、水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を持つ基であり、
【0045】
【化10】
【0046】
式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1および−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、Q3は、水素、1〜30個の炭素を持つアルキル基、および6〜30個の炭素を持つアリール基からなる群から選択される一価のラジカルであり、R2は、1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである。Q2およびQ3が水素でない場合、Q2およびQ3は、開環重合後に疎水性ブロックの側鎖になる環式カルボニル環のペンダント部分を表す。また、−CO2R2基も、開環重合後に疎水性ブロック側鎖になる。Q2、Q3もしくはR2基またはその全部は各々独立に1つまたは複数の尿素基、1つまたは複数の潜在的カルボン酸基またはこれらの組み合わせを含んでもよい。尿素基は、上記のような一価の尿素ラジカルを含んでも、または二価の尿素ラジカルを含んでもよい。実施形態の1つでは、R2基は、尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。別の実施形態では、Q2は水素であり、Q3はメチルまたはエチル基であり、R2基は、尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。別の実施形態では、第1の環式カルボニル・モノマーは式(6)の化合物を含み、式中、1つまたは複数のQ1基は、尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。
【0047】
環式カルボニル・モノマーは、下記一般式(7)を有していてもよく、
【0048】
【化11】
【0049】
式中、Q4は各々水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を持つ基であり、
【0050】
【化12】
【0051】
式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1または−SR1から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、uは1〜8の整数である。Q4が水素でない場合、Q4は開環重合後に疎水性ブロックの側鎖になる環式カルボニル環のペンダント部分を表す。Q4は各々独立に尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含んでもよい。このラクトン環は任意に炭素−炭素二重結合を含んでもよく、すなわち、任意に式(3)の
【0052】
【化13】
【0053】
は独立に
【0054】
【化14】
【0055】
を表してもよい。また、ラクトン環は、環カルボニルまたは環酸素に連結していないヘテロ原子、たとえば酸素、窒素、硫黄またはこれらの組み合わせを含んでもよく、すなわち、任意に式(3)の
【0056】
【化15】
【0057】
は独立に−O−、−S−、−NHR1−または−NR1R1−基を表してもよい。実施形態の1つでは、uは1〜6の整数であり、Q4は各々水素である。実施形態の1つでは、第1の環式カルボニル・モノマーは式(7)を持ち、式中、1つまたは複数のQ4基は尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。
【0058】
環式カルボニル・モノマーは、下記一般式(8)を有していてもよく、
【0059】
【化16】
【0060】
式中、Q5は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を持つ基であり、
【0061】
【化17】
【0062】
式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1または−SR1から選択される一価のラジカルであり、式中、ダッシュは結合点を表し、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、Q6は各々水素、1〜30個の炭素を持つアルキル基、および6〜30個の炭素を持つアリール基からなる群から独立に選択される一価の基であり、vは各々独立に1〜6の整数である。Q5およびQ6が水素でない場合、Q5およびQ6は、開環重合後に疎水性ブロックの側鎖になる環式カルボニル環のペンダント部分を表す。Q5およびQ6基は各々独立に尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含んでもよい。実施形態の1つでは、vは各々1であり、Q5は各々水素であり、Q6は各々1〜6個の炭素を含む炭化水素基である。実施形態の1つでは、第1の環式カルボニル・モノマーは式(8)を持ち、式中、1つまたは複数のQ5基もしくはQ6基またはその両方は、尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。
【0063】
潜在的カルボン酸の非限定的な例として、温和な条件下で加水分解できるエステルがある(たとえば、トリフルオロエチルエステル、ペンタフルオロフェニルエステルまたはp−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、トリメチルシリルエステル、テトラヒドロピラニルエステル)。他の潜在的カルボン酸としては、熱に不安定な第三級エステルが挙げられる(たとえば、t−ブチルエステル)。さらに他の潜在的カルボン酸としては、水素および好適な触媒を用いて還元により開裂することができるエステルがある(たとえば、H/Pd−Cにより開裂するベンジルエステル)。実施形態の1つでは、潜在的カルボン酸基は、触媒による水素化でカルボン酸に変換することができる任意のカルボン酸エステルである。触媒による水素化でカルボン酸に変換することができる潜在的カルボン酸を含む環式カルボニル・モノマーの非限定的な例としてMTCOBnがある。
【0064】
【化18】
【0065】
MTCOBnのベンジルエステルは、開環重合後にH/Pd−Cを用いてカルボン酸に開裂される。別の実施形態では、疎水性ブロックの骨格がエステル反復単位もしくはカーボネート反復単位またはその両方を含む場合、潜在的カルボン酸は、メチル、エチル、またはより長い炭化水素鎖エステルを除外する。
【0066】
潜在的カルボン酸基の別の例は、アセタールで保護されたカルボン酸基であり、本明細書ではアセタールエステル基ともいう。アセタールエステル基は下記一般式(9)を持ち、
【0067】
【化19】
【0068】
式中、*−は、環式カルボニル部分に対する結合を表し、RcおよびRdは、独立に1〜20個の炭素を含む一価のラジカルである。実施形態の1つでは、Rcはメチルであり、Rdはエチルである。別の実施形態では、第2の環式カルボニル・モノマーはMTCOEEである。
【0069】
【化20】
【0070】
ポリマーに共重合されると、MTCOEEから誘導される反復単位は、酸性エンドソーム環境で容易に脱保護される側鎖アセタールエステルを含む。カチオン性のポリマーの得られたカルボン酸基は、細胞質に遊離すると、脱プロトン化できるため、キャリアの総電荷を中和し、生物活性材料の放出を促進する可能性がある。
【0071】
尿素基を含むペンダント部分を含む環式カルボニル・モノマーの非限定的な例として、MTCUが挙げられる。実施形態の1つでは、第1の環式カルボニル・モノマーはMTCUである。
【0072】
【化21】
【0073】
炭素5に結合したメチルおよびエステル基は各々ペンダント部分である。
【0074】
式(6)、(7)および(8)の追加の環式カルボニル・モノマーを表1に示す。
【0075】
【表1−1】
【0076】
【表1−2】
【0077】
【表1−3】
【0078】
環式カルボニル・モノマーは、モノマーから可能な限り多くの水を除去するように特に注意を払いながら、酢酸エチルなどの溶媒からの再結晶によるか、または他の公知の精製方法により精製してもよい。モノマーの含水量は、モノマーの1〜10,000重量ppm、1〜1,000重量ppm、1〜500重量ppm、最も具体的には1〜100重量ppmであってもよい。
【0079】
環式カルボニル・モノマーは、環式カルボニル・モノマーの同位体標識形態をさらに含んでもよい。これらは、13C、14C、15N、ジュウテリウム、トリチウムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素を含む官能基を含む。環式カルボニル・モノマーは、癌細胞などの特定の細胞型を標的とするのに好適な放射性部分をさらに含んでもよい。放射性部分は、重金属放射性同位元素を含んでもよい。
【0080】
上記の環式カルボニル・モノマーは開環重合して、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックに連結したブロック・コポリマーの疎水性ブロックを形成する。疎水性ブロックは、単一の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる反復単位を含むホモポリマー鎖を含んでもよく、この反復単位は尿素、カルボン酸、またはこれら混合物から選択される官能基を含む側鎖を含む。疎水性ブロックは、第1の環式カルボニル・モノマーと第2の環式カルボニル・モノマーとの混合物の開環重合により得られる第1の反復単位および第2の反復単位を含むランダム・コポリマー鎖を含んでもよい。第1の環式カルボニル・モノマーから誘導される第1の反復は、尿素、カルボン酸、またはこれら混合物から選択される官能基を含む側鎖部分を含む。実施形態の1つでは、第2の環式カルボニル・モノマーから誘導される第2の反復単位は、尿素基、カルボン酸基またはこれらの混合物を含む側鎖部分を含まない。
【0081】
疎水性ブロックは、第1の環式カルボニル・モノマーと第2の環式カルボニル・モノマーとの逐次開環重合により得られる第1のコア・ブロックおよび第2のコア・ブロックを含むコア・ブロック・コポリマーをさらに含んでもよい。第1の環式カルボニル・モノマーは、尿素、潜在的カルボン酸、またはこれら混合物から選択される官能基を含む部分を含む。重合については、任意の望ましい順序で行ってもよい。疎水性ブロックのコア・ブロックの数は限定されるものではないが、ミセル形成特性とミセルの薬剤内包特性および薬物放出特性とを劣化させないことを条件とする。たとえば、疎水性ブロックは、第1のコア・ブロックおよび第2のコア・ブロックを含んでもよい。第1のコア・ブロックは親水性ブロックに連結し、第1のコア・ブロックは、たとえば第1の環式カルボニル・モノマーから誘導される第1の反復単位を含む。第2のコア・ブロックは第1のコア・ブロックに連結し、第2のサブ・ブロックは、たとえば、第2の環式カルボニル・モノマーから誘導される第2の反復単位を含む。あるいは、第1のコア・ブロックは、第2の環式カルボニル・モノマーから誘導されてもよく、第2のコア・ブロックは、第1の環式カルボニル・モノマーから誘導されてもよい。実施形態の1つでは、第2の反復単位は、尿素基、カルボン酸基またはこれらの混合物を含む側鎖部分を含まない。
【0082】
疎水性ブロックは、アタクチック型で生成しても、シンジオタクチック型で生成しても、またはアイソタクチック型で生成してもよい。個々の立体規則性は、環式モノマー(単数または複数)、異性体純度および反応条件に依存する。
【0083】
ミセルを形成するブロック・コポリマーは、1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーであり、その少なくとも1つが尿素、潜在的カルボン酸、またはこれら混合物から選択される官能基を含む1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーと、触媒と、任意の促進剤と、任意の溶媒と、ポリエーテルアルコール開始剤とを含む反応混合物から調製する。開環重合は一般に、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下にて反応器で行う。重合は、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルムおよびジクロロエタンなどの不活性な溶媒を用いた溶液重合により行っても、またはバルク重合により行ってもよい。ROPの反応温度は、ほぼ周囲温度から250℃であってもよい。一般に、重合を行うには反応混合物を大気圧で0.5〜72時間加熱して第2の混合物を形成する。
【0084】
ROP重合の例示的な触媒として、金属酸化物、たとえば、テトラメトキシジルコニウム、テトラ−イソ−プロポキシジルコニウム、テトラ−イソ−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−イソ−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−イソ−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、モノ−sec−ブトキシ−ジ−イソ−プロポキシアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、テトラエトキシチタン、テトラ−イソ−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、トリ−イソ−プロポキシガリウム、トリ−イソ−プロポキシアンチモン、トリ−イソ−ブトキシアンチモン、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリ−イソ−プロポキシボロン、トリ−n−プロポキシボロン、トリ−イソ−ブトキシボロン、トリ−n−ブトキシボロン、トリ−sec−ブトキシボロン、トリ−t−ブトキシボロン、トリ−イソ−プロポキシガリウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラ−イソ−プロポキシゲルマニウム、テトラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−イソ−ブトキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−sec−ブトキシゲルマニウムおよびテトラ−t−ブトキシゲルマニウム;ハロゲン化化合物、たとえば、アンチモンペンタクロリド、塩化亜鉛、臭化リチウム、スズ(IV)クロリド、カドミウムクロリドおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル;アルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドおよびトリ−イソ−ブチルアルミニウム;アルキル亜鉛、たとえば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛およびジイソプロピル亜鉛;第三級アミン、たとえば、トリアリルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミンおよびベンジルジメチルアミン;ヘテロポリ酸、たとえば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸およびこれらのアルカリ金属塩;ジルコニウム化合物、たとえば、塩化ジルコニウム酸、オクタン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムおよび硝酸ジルコニウムが挙げられる。より詳細には、触媒は、オクタン酸ジルコニウム、テトラアルコキシジルコニウムまたはトリアルコキシアルミニウム化合物である。
【0085】
他のROP触媒としては、予測可能で制御された分子量、および狭い多分散性を有するポリマーの基盤となり得る、金属を含まない有機触媒が挙げられる。環式エステル、カーボネートおよびシロキサンのROPの有機触媒の例として、4−ジメチルアミノピリジン、ホスフィン、N−複素環式カルベン(NHC:N−heterocyclic carbene)、二官能性アミノチオ尿素、ホスファゼン、アミジンおよびグアニジンがある。実施形態の1つでは、触媒はN−(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)である。
【0086】
【化22】
【0087】
別の実施形態では、触媒および促進剤は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)などの同じ化合物である。別の金属を含まないROP触媒は、少なくとも1つの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール−2−イル(HFP)基を含む。単水素結合を供与する触媒は、下記式(10)を持つ。
R2−C(CF3)2OH (10)。
R2は水素、または1〜20個の炭素を持つ一価のラジカル、たとえば、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、またはこれらの組み合わせを表す。例示的な単水素結合を供与する触媒を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
二重水素結合を供与する触媒は、下記一般式(11)で表されるHFP基を2つ持ち、
【0090】
【化23】
【0091】
式中、R3は、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、置換ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基またはこれらの組み合わせなど1〜20個の炭素を含む二価のラジカル架橋基である。式(11)の代表的な二重水素結合触媒としては、表3に示したものが挙げられる。特定の実施形態では、R3はアリーレンまたは置換アリーレン基であり、HFP基は芳香環上で相互にメタ位を占める。
【0092】
【表3】
【0093】
一実施形態では、触媒は、4−HFA−St、4−HFA−Tol、HFTB、NFTB、HPIP、3,5−HFA−MA、3,5−HFA−St、1,3−HFAB、1,4−HFABおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0094】
また、担体に結合したHFP含有基を含む触媒も意図している。一実施形態では、担体として、ポリマー、架橋ポリマー・ビーズ、無機粒子、または金属粒子がある。HFP含有ポリマーは、HFP含有モノマー(たとえば、メタクリレート・モノマー3,5−HFA−MAまたはスチリル・モノマー3,5−HFA−St)の直接重合など公知の方法により形成することができる。直接重合(またはコモノマーとの重合)が可能なHFP含有モノマーの官能基には、アクリレート、メタクリレート、α,α,α−トリフルオロメタクリレート、α−ハロメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ノルボルネン、ビニル、ビニルエーテル、および当該技術分野において公知の他の基がある。こうした重合可能なHFP含有モノマーの典型的な例については、Ito et al.,Polym.Adv.Technol.2006,17(2),104−115,Ito et al.,Adv.Polym.Sci.2005,172,37−245,Ito et al.,米国特許出願公開第20060292485号,Maeda et al.国際公開第2005098541号,Allen et al.米国特許出願公開第20070254235号、およびMiyazawa et al.国際公開第2005005370号で確認することができる。あるいは、結合基を介してHFP含有基をポリマーまたは担体に化学的に結合することにより、前形成ポリマーおよび他の固体担体表面を修飾してもよい。こうしたポリマーまたは担体の例については、M.R.Buchmeiser,ed.「Polymeric Materials in Organic Synthesis and Catalysis,」Wiley−VCH,2003,M.Delgado and K.D.Janda「Polymeric Supports for Solid Phase Organic Synthesis,」Curr.Org.Chem.2002,6(12),1031−1043,A.R.Vaino and K.D.Janda「Solid Phase Organic Synthesis:A Critical Understanding of the Resin」, J.Comb.Chem.2000,2(6),579−596,D.C.Sherrington「Polymer−supported Reagents,Catalysts,and Sorbents:Evolution and Exploitation −A Personalized View,」J.Polym.Sci.A.Polym.Chem.2001,39(14),2364−2377,およびT.J.Dickerson et al.「Soluble Polymers as Scaffold for Recoverable Catalysts and Reagents,」Chem.Rev.2002,102(10),3325−3343に引用されている。結合基の例として、C1〜C12アルキル、C1〜C12ヘテロアルキル、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、エステル基、アミド基またはこれらの組み合わせが挙げられる。また、ポリマーまたは担体表面上の逆電荷の部位へのイオン会合により結合した荷電HFP含有基を含む触媒も意図している。
【0095】
ROP反応混合物は、少なくとも1つの触媒、さらに適切な場合に複数の触媒を一緒に含む。ROP触媒は、環式カルボニル・モノマーに対して1/20〜1/40,000モル、好ましくは1/1,000〜1/20,000モルの比率で加える。
【0096】
開環重合は、促進剤、特に窒素塩基の存在下で行う。例示的な窒素塩基促進剤については下記に示し、表4に示すように、ピリジン(Py)、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン(Me2NCy)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DAMP)、トランス1,2−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン(TMCHD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、(−)−スパルテイン(Sp)、1,3−ビス(2−プロピル)−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン(Im−1)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−2)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−3)、1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン(Im−4)、1,3−ジ−i−プロピルイミダゾール−2−イリデン(Im−5)、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾール−2−イリデン(Im−6)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−7)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−8)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
【表4】
【0098】
実施形態の1つでは、促進剤は2または3個の窒素を有し、各々が、たとえば(−)−スパルテイン構造のようにルイス塩基として関与することができる。強塩基である方が重合速度を高めるのが一般的である。
【0099】
開環重合は、溶媒を使用してまたは使用せずに、より詳細には溶媒を用いて行ってもよい。任意の溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、石油エーテル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、または前述の溶媒の1つを含む組み合わせが挙げられる。溶媒が存在する場合、好適な環式カルボニル・モノマーの濃度は、1リットル当たり約0.1〜5モル、より詳細には1リットル当たり約0.2〜4モルである。特定の実施形態では、開環重合の反応混合物は溶媒を含まない。
【0100】
開環重合は、ほぼ周囲温度またはそれ以上の温度、さらに詳しくは15℃〜200℃、より詳細には20℃〜200℃の温度で行ってもよい。バルクで反応を行う場合、重合は、50℃またはそれ以上、より詳細には100℃〜200℃の温度で行う。反応時間は溶媒、温度、撹拌速度、圧力および機器によって異なるが、一般に重合は、1〜100時間以内に終了する。
【0101】
溶液で行うか、それともバルクで行うかに関わらず、重合は、100〜500MPa(1〜5atm)の圧力、より典型的には100〜200MPa(1〜2atm)の圧力で不活性(すなわち、乾燥)雰囲気にて行う。反応の終了時に、減圧して溶媒を除去してもよい。
【0102】
窒素塩基促進剤は、環式カルボニル・モノマーの全モル数に対して0.1〜5.0mol%、0.1〜2.5mol%、0.1〜1.0mol%、または0.2〜0.5mol%の量で存在する。
【0103】
ポリエーテルアルコール開始剤の量については、アルコール開始剤のヒドロキシル基1つ当たりの当量分子量に基づき計算する。ヒドロキシル基は、環式カルボニル・モノマーの全モル数に対して0.001〜10.0mol%、0.1〜2.5mol%、0.1〜1.0mol%、および0.2〜0.5mol%の量で存在する。たとえば、開始剤の分子量が100g/moleであり、開始剤が2つのヒドロキシル基を有する場合、ヒドロキシル基1つ当たりの当量分子量は、50g/moleである。重合にモノマー1モル当たり5mol%ヒドロキシル基を必要とする場合、開始剤の量は、モノマー1モル当たり0.05×50=2.5gである。
【0104】
特定の実施形態では、触媒は、開始剤のヒドロキシル基1つ当たりの当量分子量に対して約0.2〜20mol%の量で存在し、窒素塩基促進剤は0.1〜5.0mol%の量で存在し、開始剤のヒドロキシル基は0.1〜5.0mol%の量で存在する。
【0105】
上記のように、開環重合は、リビング・ポリマー・セグメントを含む最初の疎水性ブロックを形成する。実施形態の1つでは、疎水性ブロックの1つの骨格繰り返し単位は、カーボネート繰り返し単位である。上記のように、疎水性ブロックはそれ自体、1つまたは複数のブロック・セグメントを含んでもよく、ブロック・セグメントは各々独立に、たとえば、ポリエステル・ホモポリマー、ランダム・ポリエステル・コポリマー、ポリカーボネート・ホモポリマー、ランダム・ポリカーボネート・コポリマー、またはランダム・ポリエステルカーボネート・コポリマーを含む骨格を含んでもよい。疎水性ブロックは、末端のヒドロキシル基、末端のチオール基、または末端のアミン基を含んでもよく、その各々がROP鎖成長を開始することができる。一部の環境では、その後の鎖成長を防止する、もしくは他の方法で骨格を安定化する、またはその両方を行うように最初の疎水性ブロックをエンドキャップして、エンドキャップされた疎水性ブロックを形成することが望ましい場合がある。エンドキャップ材料および技術は、ポリマー化学において十分確立している。これらには、たとえば、ヒドロキシルを末端に持つ第1のポリマーを酸無水物、酸クロリドまたは反応性エステルで処理して前駆体ポリマーを形成することにより末端のヒドロキシル基をエステルに変換することがある。実施形態の1つでは、疎水性ブロックを酢酸無水物で処理し、鎖をアセチル基でエンドキャップする。
【0106】
親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含むブロック・コポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィにより判定して少なくとも2500g/mol、さらに詳しくは4000g/mol〜150000g/mol、さらに一層詳しくは10000g/mol〜50000g/molの数平均分子量Mnを有していてもよい。実施形態の1つでは、ブロック・コポリマーは、10000〜20000g/moleの数平均分子量Mnを有する。また、ブロック・コポリマーは、一般に1.01〜1.35、より詳細には1.1〜1.30、より一層詳細には1.1〜1.25という狭い多分散性指数(PDI:polydispersity index)を有する。
【0107】
触媒は、選択的沈殿法により、あるいは固体担持触媒の場合には、単純な濾過で除去することができる。ブロック・コポリマーは、第1のポリマーおよび残留触媒の総重量に対して0wt.%を超える量で残留触媒を含んでもよい。また、残留触媒の量は、第1のポリマーおよび残留触媒の総重量に対する20wt.%未満、15wt.%未満、10wt%未満、5wt.%未満、1wt.%未満または最も具体的には0.5wt.%未満であってもよい。
【0108】
最初のまたはエンドキャップされた疎水性ブロックは、ベンジルエステル形態の保護されたカルボン酸など潜在的カルボン酸基を含んでもよい。この例では、最初のまたはエンドキャップされた疎水性ブロックを、H/Pd−Cを使用して脱保護し、ペンダント・カルボン酸基を含む脱保護された疎水性ブロックを形成することができる。保護されたカルボン酸がt−ブチルエステルなど熱に不安定なカルボン酸エステルである場合、最初のまたはエンドキャップされた疎水性ブロックを加熱して、脱保護された疎水性ブロックを形成することができる。保護されたカルボン酸がトリフルオロエチルエステルなど加水分解に不安定である場合、最初のまたはエンドキャップされた疎水性ブロックを温和な水性酸または塩基で脱保護して、脱保護された疎水性ブロックを形成することができる。特定の実施形態では、保護されたカルボン酸は、ベンジルエステルである。
【0109】
また、生分解性両親媒性ブロック・ポリマーを形成する方法も開示する。この方法は、ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合によりブロック・コポリマーを形成することを含み、ブロック・コポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、親水性ブロックはポリエーテルアルコールから誘導され、疎水性ブロックは尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む第1の反復単位を含む。疎水性ブロックは共有結合した生物活性材料を含む側鎖を含まず、ブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを水中で形成する。実施形態の1つでは、第1の反復単位は、MTCUから誘導される。この方法は、親水性ブロックの末端単位を誘導体化することをさらに含んでもよく、誘導体化された末端単位は、特定の細胞型と相互作用することができる部分を含む。誘導体化された末端単位は、たとえば、肝細胞と相互作用するガラクトース部分を含んでもよい。この方法は、好適な触媒を使用した潜在的カルボン酸の水素化により疎水性ブロックの任意の側鎖潜在的カルボン酸基をカルボン酸に変換することをさらに含んでもよい。
【0110】
生分解性両親媒性ブロック・コポリマーを調製するより具体的な方法は、尿素基を含むペンダント部分を含む第1の環式カルボニル・モノマーと、触媒と、促進剤と、ポリエーテルアルコール開始剤と、任意の溶媒とを含む反応混合物を形成すること;1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーの開環重合により両親媒性ブロック・コポリマーの最初の疎水性ブロックを形成すること;任意に疎水性ブロックをエンドキャップすること;親水性ブロックの末端単位を誘導体化することにより、生物活性部分を含む誘導体化された末端単位を形成すること、および任意に疎水性ブロックの保護されたいずれかのカルボン酸基を脱保護して両親媒性ブロック・コポリマーを形成することを含む。実施形態の1つでは、ポリエーテルアルコール開始剤は、ポリ(エチレングリコール)もしくはポリ(プロピレングリコール)またはその両方から誘導されるモノアルコールである。疎水性ブロックは共有結合した生物活性材料を含む側鎖を含まず、ブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを水中で形成する。別の実施形態では、両親媒性ブロック・コポリマーの最初の疎水性ブロックの形成は、第1の環式カルボニル・モノマーと第2の環式カルボニル・モノマーとを逐次開環重合して、コア・ブロック・コポリマーを含む疎水性ブロックを形成することにより行い、コア・ブロック・コポリマーは、親水性ブロックに連結した、第1の反復単位を含む第1のコア・ブロックと、第2のカルボニル・モノマーから誘導される第2の反復単位を含む、第1のコア・ブロックに連結した第2のコア・ブロックとを含む。
【0111】
両親媒性ブロック・コポリマーは、ブロック・コポリマー1グラム当たり1〜250ミリモルのカルボン酸、より詳細にはブロック・コポリマー1グラム当たり3ミリモル超から50ミリモルのカルボン酸、より一層詳細にはブロック・コポリマー1グラム当たり3〜40ミリモルのカルボン酸を含んでもよい。両親媒性ブロック・コポリマーは、ブロック・コポリマー1グラム当たり1〜250ミリモルの尿素官能基、より詳細にはブロック・コポリマー1グラム当たり3〜50ミリモルの尿素官能基、より一層詳細にはブロック・コポリマー1グラム当たり3〜40ミリモルの尿素官能基を含んでもよい。
【0112】
両親媒性ブロック・コポリマーは、水溶液中で自己組織化し、He−Neレーザ・ビームを備えた動的光散乱(ブルックヘブン・インスツルメント・コーポレーション(Brookhaven Instrument Corp.)、ホルツビル(Holtsville)、ニューヨーク州,米国)により658nm(散乱角:90°)で測定すると、10nm〜500nm、10nm〜250nm、より詳細には50nm〜200nm、50nm〜150nm、50nm〜120nm、より一層詳細には50nm〜100nmの平均粒度を有するミセルを形成する。粒度の測定はサンプルごとに5回繰り返し、粒度を5つの測定値の平均として報告する。前述の粒度では、水溶液のpHを5.0〜8.0とすればよい。
【0113】
両親媒性ブロック・コポリマーは、0.01〜300mg/リットル、より詳細には0.1〜200mg/リットル、より一層詳細には0.1〜100mg/リットルの臨界ミセル濃度(CMC)を有する。ミセルは、上記の方法のいずれかにより調製された1つまたは複数の両親媒性ブロック・コポリマーを含んでもよい。実施形態の1つでは、ミセルは、0%〜15%、0%〜10%、0%〜5%、またはより詳細には0%〜1%の細胞毒性を示す。
【0114】
ミセルは、第2の生分解性生体適合性ブロック・コポリマーを含む混合ミセルであってもよく、第2のブロック・コポリマーは、第2のポリエーテルアルコールから誘導される第2の親水性ブロックと、第2のポリエーテルアルコールにより開始される第2の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第2の疎水性ブロックとを含み、第2の疎水性ブロックの側鎖は、共有結合した生物活性材料を含まない。実施形態の1つでは、第2のブロック・コポリマーは、側鎖カルボン酸基を含む第2の疎水性ブロックを含む。別の実施形態では、疎水性ブロックのカルボン酸基は、ベンジルエステルを含む環式カルボニル化合物の開環重合、続いて好適な触媒によるベンジルエステルの水素化により得られる。
【0115】
両親媒性ブロック・コポリマーは、遺伝子、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、薬剤またはこれらの組み合わせなど生物活性のある荷物材料を含む内包ミセルを形成する。pH5.0〜8.0の水溶液中、ミセルは、He−Neレーザ・ビームを備えた動的光散乱(ブルックヘブン・インスツルメント・コーポレーション,ホルツビル,ニューヨーク州、米国)により658nm(散乱角:90°)で測定すると、10nm〜500nm、10nm〜250nm、より詳細には50nm〜200nm、50nm〜150nm、50nm〜120nm、より一層詳細には50nm〜100nmの平均粒度を有する。粒度の測定はサンプルごとに5回繰り返し、粒度を5つの測定値の平均として報告する。内包ミセルは、たとえば、内包ミセルの全乾燥重量に対して0.1〜90wt.%、より詳細には5〜50wt.%、より一層詳細には15〜50wt.%の生物活性材料を含んでもよい。ミセルは、上記の方法を用いて調製される1つまたは複数の両親媒性ブロック・コポリマーを含んでもよい。実施形態の1つでは、生物活性のある荷物材料は薬剤である。
【0116】
また、細胞を処置するための内包ミセルを調製する方法であって、生分解性生体適合性ブロック・コポリマーを含む第1の水性混合物を、生物活性のある荷物材料を含む第2の水性混合物と接触させて、内包ミセルを含む第3の混合物を形成することを含み、内包ミセルは、pH5.0〜8.0で10nm〜500nmの粒度を有する方法も開示する。生分解性生体適合性ブロック・コポリマーは、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックと、ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含み、第1の反復単位は、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含み、疎水性ブロックの側鎖は、共有結合した生物活性材料を含まず、ブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適である。実施形態の1つでは、親水性ブロックは、特定の細胞型と相互作用することができる部分を含む誘導体化された末端単位を含む。別の実施形態では、誘導体化された末端単位は、ガラクトース部分またはマンノース部分を含む。別の実施形態では、生物活性のある荷物材料はドキソルビシンである。
【0117】
さらに、細胞を処置する方法であって、内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含み、内包ミセルは、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、およびポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む第1の反復単位を含む疎水性ブロックを含む生分解性生体適合性第1のブロック・コポリマーと、生物活性のある荷物材料とを含む方法も開示する。第1のブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、疎水性ブロックの側鎖は生物活性材料に共有結合していない。親水性ブロックは任意に、特定の細胞型と相互作用することができる部分を含む誘導体化された末端単位を含んでもよい。生物活性のある荷物は、単一の生物活性材料を含んでも、または生物活性材料の混合物を含んでもよい。生物活性のある荷物は、薬剤、たとえば、キソルビシンであってもよい。ポリエーテルアルコールの末端単位は、特定の細胞型と選択的に相互作用する部分を含んでもよい。実施形態の1つでは、末端単位は、ガラクトース部分またはマンノース部分を含む。細胞は、インビトロで接触させても、エキソビボで接触させても、またはインビボで接触させてもよい。接触させると、0%〜20%、0%〜15%、0%〜10%、0%〜5%、0%〜2%、またはより詳細には0%〜1%の細胞毒性が誘導される。実施形態の1つでは、接触させても細胞毒性が誘導されない。
【0118】
本両親媒性ブロック・コポリマーを用いて送達することができる薬剤の種類は多くあり、100ダルトン〜約1,000ダルトンの大きさの範囲の低分子量化合物、および約1,000ダルトン〜約100,000ダルトンを超える大きさの範囲のペプチドおよびタンパク質薬剤などより大きな高分子薬剤をどちらも含む。例示的なタンパク質薬剤には、ペプチドホルモン、たとえば、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、バゾプレッシン、レニン、プロラクチン、成長ホルモン、絨毛性ゴナドトロピンなどのゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンおよび黄体化ホルモン;生理活性酵素、たとえば、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、第VIII因子、プラスミノーゲン活性化因子;ならびにタンパク質因子を含む他の治療薬、たとえば、上皮増殖因子、インスリン様成長因子、腫瘍壊死因子、トランスフォーミング増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、エリスロポエチン、コロニー刺激因子、骨形成タンパク質、インターロイキンおよびインターフェロンがある。例示的な非タンパク質巨大分子として、多糖類、核酸ポリマー、ならびにビンブラスチン、ビンクリスチン、タキソールおよび同種のものなど植物生成物を含む治療用の二次代謝産物が挙げられる。
【0119】
他の例示的な薬剤としては、アスピリン、ジフルニサル、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イブプロフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、スプロフェン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ルミラコキシブ、オキシフェンブタゾン、ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカムおよびテノキシカムが挙げられる。ステロイド系抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾンおよびアルドステロンが挙げられる。化学療法剤としては、ドキソルビシン、ならびにDNAアルキル化剤、たとえばメルファラン、クロラムブシル、ダカルバジン、テモゾロミドおよびストレプトゾトシンが挙げられる。代謝拮抗剤としては、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、フロクスウリジンおよびゲムシタビンが挙げられ、アルカロイド剤としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンおよびトポイソメラーゼが挙げられる。阻害剤としては、エトポシド、テニポシド、イリノテカンおよびトポテカンが挙げられる。タキサンとしては、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。抗凝固薬として、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アルガトロバンおよびキシメラガトランが挙げられる。
【0120】
なお他の例示的な市販されている薬剤としては、13−シス−レチノイン酸、2−CdA、2−クロロデオキシアデノシン、5−アザシチジン、5−フルオロウラシル、5−FU、6−メルカプトプリン、6−MP、6−TG、6−チオグアニン、アブラキサン、Accutane(商標)、アクチノマイシン−D、Adriamycin(商標)、Adrucil(商標)、Afinitor(商標)、Agryliri(商標)、Ala−Cort(商標)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、ALIMTA、アリトレチノイン、Alkaban−AQ(商標)、Alkeran(商標)、オール・トランスレチノイン酸、αインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アナグレリド、Anandron(商標)、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、Ara−C、Aranesp(商標)、Aredia(商標)、Arimidex(商標)、Aromasin(商標)、Arranon(商標)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ATRA、Avastin(商標)、アザシチジン、BCG、BCNU、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、BEXXAR(商標)、ビカルタミド、BiCNU、Blenoxane(商標)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、Busulfex(商標)、C225、ロイコボリンカルシウム、Campath(商標)、Camptosar(商標)、カンプトテシン−11、カペシタビン、Carac(商標)(商標)、カルボプラチン、カルムスチン、カルムスチン・ウエハ、Casodex(商標)、CC−5013、CCI−779、CCNU、CDDP、CeeNU、Cerubidine(商標)、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、Citrovorum因子、クラドリビン、コルチゾン、Cosmegen(商標)、CPT−11、シクロホスファミド、Cytadren(商標)、シタラビン、シタラビンリポソーマル、Cytosar−U(商標)、Cytoxan(商標)、ダカルバジン、ダコゲン、ダクチノマイシン、ダルベポエチン・アルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、ダウノルビシン、塩酸ダウノルビシン、ダウノルビシンリポソーマル、DaunoXome(商標)、デカドロン、デシタビン、Delta−Cortef(商標)、Deltasone(商標)、デニロイキンジフチトクス、DepoCyt(商標)、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、デキサソン、デクスラゾキサン、DHAD、DIC、ジオデキス、ドセタキセル、Doxil(商標)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーマル、Droxia(商標)、DTIC、DTIC−Dome(商標)、Duralone(商標)、Efudex(商標)、Eligard(商標)、Ellence(商標)、Eloxatin(商標)、Elspar(商標)、Emcyt(商標)、エピルビシン、エポエチン・アルファ、アービタックス、エルロチニブ、エルウィニアL−アスパラギナーゼ、エストラムスチン、エチオール、Etopophos(商標)、エトポシド、リン酸エトポシド、Eulexin(商標)、エベロリムス、Evista(商標)、エキセメスタン、Fareston(商標)、Faslodex(商標)、Femara(商標)、フィルグラスチム、フロクスウリジン、Fludara(商標)、フルダラビン、Fluoroplex(商標)、フルオロウラシル、フルオロウラシル(クリーム)、フルオキシメステロン、フルタミド、フォリン酸、FUDR(商標)、フルベストラント、G−CSF、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ツズマブオゾガマイシン、ジェムザール、Gleevec(商標)、Gliadel(商標)ウエハ、GM−CSF、ゴセレリン、顆粒球−コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Halotestin(商標)、Herceptin(商標)、ヘキサドロール、Hexalen(商標)、ヘキサメチルメラミン、HMM、Hycamtin(商標)、Hydrea(商標)、Hydrocort Acetate(商標)、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸ハイドロコートン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタン、Idamycin(商標)、イダルビシン、Ifex(商標)、IFN−α、イホスファミド、IL−11 IL−2、メシル酸イマチニブ、イミダゾールカルボキサミド、インターフェロンα、インターフェロンα−2b(PEGコンジュゲート)、インターロイキン−2、インターロイキン−11、Intron A(商標)(インターフェロンα−2b)、Iressa(商標)、イリノテカン、イソトレチノイン、イクサベピロン、Ixempra(商標)、K Kidrolase(商標)、Lanacort(商標)、ラパチニブ、L−アスパラギナーゼ、LCR、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイケラン、Leukine(商標)、ロイプロリド、ロイロクリスチン、Leustatin(商標)、リポソームAra−C、Liquid Pred(商標)、ロムスチン、L−PAM、L−サルコリシン、Lupron(商標)、Lupron Depot(商標)、Matulane(商標)、マキシデックス、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、Medralone(商標)、Medrol(商標)、Megace(商標)、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、Mesnex(商標)、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メチルプレドニゾロン、Meticorten(商標)、マイトマイシン、マイトマイシン−C、ミトキサントロン、M−Prednisol(商標)、MTC、MTX、Mustargen(商標)、ムスチン、Mutamycin(商標)、Myleran(商標)、Mylocel(商標)、Mylotarg(商標)、Navelbine(商標)、ネララビン、Neosar(商標)、Neulasta(商標)、Neumega(商標)、Neupogen(商標)、Nexavar(商標)、Nilandron(商標)、ニルタミド、Nipent(商標)、ナイトロジェンマスタード、Novaldex(商標)、Novantrone(商標)、オクトレオチド、酢酸オクトレオチド、Oncospar(商標)、Oncovin(商標)、Ontak(商標)、Onxal(商標)、オプレベルキン、Orapred(商標)、Orasone(商標)、オキサリプラチン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、Panretin(商標)、Paraplatin(商標)、Pediapred(商標)、PEGインターフェロン、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG−INTRON(商標)、PEG−L−アスパラギナーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、フェニルアラニンマスタード、Platinol(商標),Platinol−AQ(商標)、プレドニゾロン、プレドニゾン、Prelone(商標)、プロカルバジン、PROCRIT(商標)、Proleukin(商標)、プロリフェプロスパン20カルムスチンインプラント、Purinethol(商標)、ラロキシフェン、Revlimid(商標)、Rheumatrex(商標)、Rituxan(商標)、リツキシマブ、Roferon−A(商標)(インターフェロンα−2a)Rubex(商標)、塩酸ルビドマイシン、Sandostatin(商標)、Sandostatin LAR(商標)、サルグラモスチム、Solu−Cortef(商標)、Solu−Medrol(商標)、ソラフェニブ、SPRYCEL(商標)、STI−571、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、Sutent(商標)、タモキシフェン、Tarceva(商標)、Targretin(商標)、Taxol(商標)、Taxotere(商標)、Temodar(商標)、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、TESPA、サリドマイド、Thalomid(商標)、TheraCys(商標)、チオグアニン、Thioguanine Tabloid(商標)、チオホスファミド、Thioplex(商標)、チオテパ、TICE(商標)、Toposar(商標)、トポテカン、トレミフェン、Torisel(商標)、トシツモマブ、トラスツズマブ、Treanda(商標)、トレチノイン、Trexall(商標)、Trisenox(商標)、TSPA、TYKERB(商標)、VCR、Vectibix(商標)、Velban(商標)、Velcade(商標)、VePesid(商標)、Vesanoid(商標)、Viadur(商標)、Vidaza(商標)、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、Vincasar Pfs(商標)、ビンクリスチン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、VLB、VM−26、ボリノスタット、VP−16、Vumon(商標)、Xeloda(商標)、Zanosar(商標)、Zevalin(商標)、Zinecard(商標)、Zoladex(商標)、ゾレドロン酸、ゾリンザおよびゾメタが挙げられる。
【0121】
上記の内包ミセルで処置することができる細胞の種類については、限定されるものではない。特に、細胞は、真核細胞、哺乳動物細胞、より詳細には齧歯動物でも、またはヒト細胞でもよい。細胞は、胚外もしくは胚性幹細胞、全能性もしくは多能性細胞、分裂もしくは非分裂細胞、実質もしくは上皮細胞、不死化もしくは形質転換細胞または同種のものなど様々な組織に由来してもよい。細胞は幹細胞でも、または分化細胞でもよい。分化する細胞型としては、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮、樹状細胞、ニューロン、グリア、マスト細胞、血液細胞および白血球(たとえば、赤血球、巨核球、B細胞、T細胞およびナチュラルキラー細胞などのリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、顆粒球)、上皮細胞、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝実質細胞、および内分泌腺または外分泌腺の細胞のほか、感覚細胞が挙げられる。
【0122】
上記の内包ミセルは、非ウイルス性トランスフェクション・ベクターとして使用してもよい。標的遺伝子は、任意の特定の種類の標的遺伝子またはヌクレオチド配列に限定されるものではない。たとえば、標的遺伝子は、細胞遺伝子、内在性遺伝子、オンコジーン、導入遺伝子、または翻訳RNAおよび非翻訳RNAを含むウイルス遺伝子であってもよい。考えられる例示的な標的遺伝子として、転写因子および発生遺伝子(たとえば、接着分子、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、Wntファミリー・メンバー、Paxファミリー・メンバー、ウィングド・ヘリックス・ファミリー・メンバー、Hoxファミリー・メンバー、サイトカイン/リンホカインおよびその受容体、増殖/分化因子およびその受容体、神経伝達物質およびその受容体);オンコジーン(たとえば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、ERBB2、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SKP2、SRC、TALI、TCL3およびYES);腫瘍抑制因子遺伝子(たとえば、APC、BRAI、BRCA2、CTMP、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53およびWTI);ならびに酵素(たとえば、ACPデサチュラーゼおよびヒドロキシラーゼ、ADP−グルコース・ピロホリラーゼ、ATPアーゼ、アルコール・デヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、インテグラーゼ、インスリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、プロテイナーゼおよびペプチダーゼ、リコンビナーゼ、逆転写酵素、RNA成分もしくはタンパク質成分またはその両方を含むテロメラーゼ、ならびにトポイソメラーゼ)が挙げられる。
【0123】
有機分子触媒的開環重合により生成される生分解性両親媒性ブロック・コポリマーは、効果的な薬物送達システムになる。生分解性尿素もしくはカルボン酸またはその両方の組み合わせを含む、疎水性ブロックの反復単位は、多様な大きさおよび官能性を持つ生物活性材料に対して内包ミセルの結合強度を、したがって放出特性を調整する際に汎用性を与える。両親媒性ブロック・コポリマーは、低分子薬剤およびタンパク質の送達、さらに薬剤と遺伝子、または薬剤とタンパク質との同時送達に使用してもよい。
【0124】
上記のポリマーに基づくミセルの調製および使用について、以下の例によりさらに説明する。
【実施例】
【0125】
材料。
購入した材料を表5に示す。
【0126】
【表5】
【0127】
フルカ(Fluka)から入手した5000g/mol(MPEG1)および2400g/mol(MPEG2)の数平均分子量を有するモノメチルPEGを使用前に共沸蒸留し、トルエンから再結晶化させた。トリメチレンカーボネート(ベーリンガー・インゲルハイム(Boehringer−Ingelheim))をトルエンから共沸蒸留させ、使用前に再結晶化した。スパルテインを使用前に水素化カルシウムから蒸留させた。安息香酸、エタノールアミンおよびフェニルイソチオシアネート(すべてアルドリッチ(Aldrich))については、入手したまま使用した。イノベイティブ(Innovative)製の溶媒乾燥システムを使用して乾燥THFおよびCH2Cl2を得た。
【0128】
R.C.Pratt,B.G.G.Lohmeijer,D.A.Long,P.N.P.Lundberg,A.Dove,H.Li,C.G.Wade,R.M.Waymouth,and J.L.Hedrick,Macromolecules,2006,39(23),7863−7871が報告したようにN−(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)を調製し、CaH2で乾燥させたTHF中で撹拌して乾燥させ、濾過し、真空下で溶媒を除去した。
【0129】
解析方法。
1H−NMRスペクトルは、Bruker Avance 400装置を用い400MHzで得た。ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)は、細孔サイズを大きくしながら(10Å、100Å、1000Å、105Å、106Å)直列に連結した5マイクロメートルのWatersカラム(300mm×7.7mm)を4つ備えたWatersクロマトグラフ、Waters 410示差屈折計、および996フォトダイオードアレイ検出器を使用し、THFまたはクロロホルムを用いて実施し、ポリスチレン標準で校正した(750−2×106g mol−1)。
【0130】
モノマーの調製。
官能性生分解性モノマーの特に有用なシントンとして、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(bisMPA)から誘導される環状カーボネート・モノマーのいわゆるMTCファミリーがある。BisMPAは、スキーム1に示すように5−メチル−5−カルボキシル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTCOH)およびその誘導体への容易な経路となる。
【0131】
【化24】
【0132】
このアプローチは、(メタ)アクリレート誘導体化の経路と同様の経路であり、開環重合(ROP)が可能な幅広い官能性モノマーを生成することが明らかになっている。図示した例では、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(BisMPA)をまず(i)ベンジルエステルBnMPAに変換し、続いて(ii)BnMPAをトリホスゲンと反応させて環式カルボニル・モノマー、MTCOBnを形成する。MTCOBnを脱ベンジル化して(iii)環式カルボニルカルボン酸、MTCOHを生成する。MTCOHからエステルを形成する経路を2つ示す。第1の経路では、(iv)MTCOHをジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの好適なカルボキシ活性化剤で処理し、これをROHと反応させてMTCORを一段階で形成する。あるいは、最初にMTCOHを(v)酸クロリドMTCClに変換し、続いて(vi)塩基の存在下でMTCClをROHで処理してMTCORを形成してもよい。どちらの経路も例示であり、限定することを意図するものではない。以下の条件は、スキーム1に示した反応に典型的なものである。(i)ベンジルブロミド(BnBr)、KOH、DMF、100℃、15時間、ビス−MPAのベンジルエステルの収率62%、(ii)トリホスゲン、ピリジン、CH2Cl2、−78℃〜0℃、MTCOBnの収率95%;(iii)Pd/C(10%)、H2(3atm)、EtOAc、室温、24時間、MTCOHの収率99%、(iv)ROH、DCC、THF、室温、1〜24時間、(v)(COCl)2、THF、室温、1時間、MTCClの収率99%、(vi)ROH、NEt3、RT、3時間、MTCORを得る。
【0133】
上記の条件を用いれば、MTCClを、BnMPA中間体を経由してエステルなど様々な環式カルボニル誘導体に変換することができる。あるいは、下記に例示するように、トリホスゲンを使用して閉環することができる別のアルコール(たとえば、EtMPAを形成するためのエタノール)を用いてbisMPAを直接エステル化し、対応するMTCエステルを形成してもよい。
【0134】
【化25】
【0135】
(i)2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(bisMPA)(18.0g、0.134mol)と、KOH(85%アッセイ;8.9g、0.135mol)と、DMF(100mL)との混合物を100℃まで1時間を加熱した(反応混合物は、0.5時間の反応後均一な溶液になった)。この高温の溶液にベンジルブロミド(27.6g、0.162mol)を撹拌しながら加え、反応を100℃で16時間継続した。反応混合物を冷却し、溶媒を真空下で除去した。残渣に酢酸エチル(120mL)、ヘキサン(120mL)および水(80mL)を加えた。有機層を保持し、水(80mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。得られた固体をトルエン(30mL)から再結晶化させ、純粋なベンジル2,2−ビス(メチロール)プロピオネート(BnMPA)を得た(19.5g、65%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.38(m,5H,PhH),5.19(s,2H,−OCH2Ph),3.94(d,2H,−CH2OH),3.73(d,2H,−CH2OH),1.12(s,3H,−CH3)。
【0136】
(ii)ベンジル2,2−ビス(メチロール)プロピオネート(BnMPA)(11.2g、0.05mol)をCH2Cl2(150mL)およびピリジン(25mL、0.3mol)に溶解させ、この溶液をN2雰囲気下、ドライアイス/アセトンで−75℃まで冷却した。トリホスゲン(7.5g、25mmol)をCH2Cl2(150mL)に溶かした溶液を1時間にわたり滴下して加え、次いで反応混合物を室温まで2時間昇温した。飽和水性NH4Cl(75mL)を添加して反応をクエンチし、その後有機層を1Mの水性HCl(3×100mL)、飽和水性NaHCO3(1×100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた固体を酢酸エチル(15mL)から再結晶化させてMTCOBnを白色の固体として得た(10.7g、86%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 1.31(m,5H,PhH),5.20(s,2H,−OCH2Ph),4.69(d,2H,−CH2OCOO),4.23(d,2H,−CH2OCOO),1.31(s,3H,−CH3)。
【0137】
【化26】
【0138】
撹拌子を備えた100mLの乾燥丸底フラスコに、エタノールアミン(2.96g、48.5mmol、1当量)を仕込んだ。乾燥THF(30mL)を加え、得られた溶液を氷浴で0℃まで冷却した。滴下漏斗を装着し、フェニルイソシアネート(5.19g、4.74mL、43.6mmol、0.9当量)および30mLの乾燥THFを仕込んだ。得られた溶液を30分の時間にわたり滴下して加えた。得られた溶液を周囲温度まで昇温し、次いでさらに16時間撹拌しながら放置した。翌朝、回転蒸発によりTHFを除去した。粗生成物を酢酸エチルから再結晶化させ、次いでさらに4時間激しく撹拌した。こうして形成された固体を濾過により除去し、さらに酢酸エチルで洗浄し、恒量になるまで乾燥させ、7.0g(約86%)を得た。1H−NMR(DMSO−d6)δ:8.59(s,1H,NH),7.39(d,2H,ArH),7.21(t,2H,ArH),6.95(t,1H,ArH),6.10(t,1H,NH),4.78(t,1H,OH),3.43(q,2H,CH2),3.17(q,2H,CH2)。
【0139】
【化27】
【0140】
最初にMTCOH(3.04g、19mmol)を上述の条件を用いて塩化オキサリルでMTCClに変換した。形成された中間体を50mLの乾燥塩化メチレンに溶解させ、添加漏斗に仕込んだ。撹拌子を備えた500mLの乾燥丸底フラスコに、フェニル尿素エタノール(PUE)(4.10g、22.8mmol)、ピリジン(1.81g、1.85mL、22.8mmol)および乾燥塩化メチレン(150mL)を仕込んだ。窒素下で添加漏斗を装着し、フラスコを氷浴で0℃まで冷却した。MTCCl溶液を30分の時間にわたり滴下して加え、溶液をさらに30分撹拌しながら放置した。氷浴を除去し、溶液を周囲温度まで穏やかに昇温し、さらに16時間撹拌しながら放置した。翌朝、この粗生成物を、シリカゲルを用いてカラム・クロマトグラフィにより精製した。溶離液として最初に酢酸エチル/ヘキサン(1/1)を使用してから、極性を穏やかに上げて、酢酸エチルで終了した。この生成物画分を集めて、溶媒を回転蒸発により除去した。単離した生成物を、恒量に達するまで真空下で乾燥させ、6.0g(約80%)のオフホワイト/淡黄色の油を得、放置してゆっくりと結晶化させた。1H−NMR(CDCl3)δ:7.39(d,2H,ArH),7.25(m,3H,ArH),7.02(t,1H,NH),5.40(t,1H,NH),4.68(d,2H,CH2),4.30(t,2H,CH2),4.20(d,2H,CH2),3.55(t,2H,CH2),1.30(s,3H,CH3).HR−MS−ESI:m/z calculated for C15H18N2O6+Na 345.31 found 345.10。
【0141】
【化28】
【0142】
2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(bisMPA;22.1g、0.165mol)を、Amberlyst−15(6.8g)を含むエタノール(150mL)に加え、一晩還流させた。次いでこの樹脂を濾去し、濾液を蒸発させた。得られた粘性液体に塩化メチレン(200mL)を加えて未反応試薬および副生成物を濾過した。この溶液をMgSO4で乾燥させ、蒸発させた後、エチル2,2−ビス(メチロール)プロピオネート(EtMPA)を透明で無色の液体として得た(21.1g、86%)。
【0143】
【化29】
【0144】
トリホスゲン(19.5g、0.065mol)をCH2Cl2(200mL)に溶かした溶液を、エチル2,2−ビス(メチロール)プロピオネート(MPAEt)(21.1g、0.131mol)およびピリジン(64mL、0.786mol)のCH2Cl2溶液(150mL)にドライアイス/アセトンを用いて−75℃で30分かけて段階的に加えた。反応混合物を冷却条件下でさらに2時間撹拌しながら維持し、次いで室温まで昇温した。反応混合物に飽和NH4Cl水溶液(200mL)を加えて過剰のトリホスゲンを分解した。次いで有機相を1NのHCl水溶液(200mL)、続いて飽和NaHCO3(200mL)、ブライン(200mL)、および水(200mL)で処理した。CH2Cl2溶液をMgSO4で乾燥させ、蒸発させた後、残渣を酢酸エチルから再結晶して白色の結晶を得た(13.8g、56%)。1H NMR:δ 4.68(d,2H,CH2OCOO),4.25(q,1H,OCH2CH3),4.19(d,2H,CH2OCOO),1.32(s,3H,CH3),1.29(t,3H,CH3CH2O).13C NMR:δ 171.0,147.5,72.9,62.1,39.9,17.3,13.8.HR−ESI−MS:m/z calcd for C8H12O5・Na,211.0582;found,221.0578。
【0145】
I.カルボン酸を含むブロック・コポリマー。
[実施例1〜4および比較例1(CEx.1)]
保護されたカルボン酸を含むブロック・コポリマー。
【0146】
【化30】
【0147】
2つの環式カルボニル・モノマー、MTCOBnおよびMTCOEtは、生体適合性であり、高収率で調製しやすいうえ、ペンダント・カルボン酸およびエチルエステル基をそれぞれブロック・コポリマーに導入できるため、MTCOBnおよびMTCOEtをビルディング・ブロックとして選択した。マクロ開始剤、モノメチルでエンドキャップされたポリ(エチレングリコール)(Mn2,400g/mol、PDI 1.04)(MPEG2)から開始される、MTCOBn、MTCOEtまたはこれらの混合物のリビングROPを、有機触媒を含むCH2Cl2を用いて行った。ROPのためいくつかの有機触媒を調査したが、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)が望ましい触媒性能を示した。DBUの存在下では、MTCOBnおよびMTCOEtはどちらもほぼ同じ重合速度を示し、2時間で完全に重合した。こうして、2種のペンダント官能基がポリカーボネート・セグメントに逆ブロック配列で配置されるトリブロック・コポリマー(実施例2および3)を段階的な開環重合により構築した。2時間の反応で一方のモノマーを使い尽くした後、他方のモノマーを反応液に加えた。反応が終了するまで、この溶液をさらに2時間撹拌した。GPCモニタリング実験では、2時間および4時間でのブロック・コポリマーの分子量(MW)の増加がフィードに加えたモノマーとよく一致したことから、実施例2および3のトリブロック・コポリマーの形成が成功したことが示唆された。さらに、同じ反応速度から、ポリカーボネート・セグメントにランダムに分布したペンダント官能基を有するブロック・コポリマー実施例4の形成も確認される。最後に、水素ガス雰囲気下、Pd−C(10%w/w)の存在下で、実施例1〜4のブロック・コポリマーのベンジル基を除去することができ、対応するブロック・コポリマー5〜8が得られるのに対し、比較例1(CEx.1)では、この反応においてMTCOEtの水素化分解が観察されなかった。1H NMR分光法を用いてブロック・コポリマーの組成を定量的に研究した。MPEG2のメチレン基のピークの積分強度と、MTCOBn、MTCOEtまたはその両方のメチル基のピークの積分強度とを比較すると、表6に示すようにブロック・コポリマーの組成が得られる。
【0148】
実施例4を生成するための、MTCOBnおよびMTCOEtの混合物(モル比1:1)とMPEG2とのROPの手順は、典型的な手順である。MTCOBn(0.3g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、MTCOEt(0.226g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液と混合し、次いでこの混合物を、MPEG2(0.144g、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら移した。4時間の反応後、安息香酸(5〜10mg)を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、実施例4を無色の粘性液体として得た(0.56g、84%)。
【0149】
疎水性ブロックを形成するための環式カルボニル・モノマーの逐次開環重合を、実施例2、MPEG254−b−[P(MTCOBN)20−b−P(MTCOEt)19]の調製により説明する。下付き文字は、反復単位の数を表す。まず、MTCOBn(0.3g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、MPEG(0.144g、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間の反応後、MTCOEt(0.226g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて反応をクエンチした。ブロック・コポリマー実施例3も同様の手順を用いて合成した。5つのブロック・コポリマーすべての収率および分析データを下記に示す。
【0150】
[実施例1]
MPEG254−b−[P(MTCOBn)36]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0151】
【化31】
【0152】
収率、82%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.29(m,180H,PhH),5.12(s,72H,−OCH2Ph),4.27(m,139H,−CH2OCOO),3.63(m,217H,H of MPEG),1.22(s,108H,−CH3)。
【0153】
[実施例2]
MPEG254−b−[P(MTCOBn)20−b−(MTCOEt)19]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0154】
【化32】
【0155】
収率、86%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.29(m,100H,PhH),5,12(s,40H,−OCH2Ph),4.27(m,190H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.63(m,219H,H of MPEG),1.23(m,174H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0156】
[実施例3]
MPEG254−b−[P(MTCOEt)18−b−P(MTCOBn)19]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0157】
【化33】
【0158】
収率、84%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.28(m,95H,PhH),5.1 1(s,35H,−OCH2Ph),4.21(m,182H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.64(m,214H,H of MPEG),1.21(m,165H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0159】
[実施例4]
MPEG254−b−[P(MTCOEt17−r−MTCOBn17)]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0160】
【化34】
【0161】
収率、84%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.31(m,85H,PhH),5.14(s,34H,−OCH2Ph),4.27(m,167H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.65(m,218H,H of MPEG),1.22(s,153H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0162】
[比較実施例]
MPEG254−b−[P(MTCOEt)35]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0163】
【化35】
【0164】
収率、85%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 4.20(m,206H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.65(m,214H,H of MPEG),1.25(s,21 OH,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0165】
[実施例9]
MPEG1113−b−[P(MTCOBn)5−b−P(MTCOEt)9]。
【0166】
【化36】
【0167】
このポリマーを実施例2に上記したように調製した。MTCOBn(0.075g、0.3mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、MPEG1(0.3g、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間後、MTCOEt(0.113g、0.6mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて反応をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、生成物を無色の粘性液体として得た(0.46g、84%)。
【0168】
[実施例10]
MPEG1113−b−[P(MTCOH)5−b−P(MTCOEt)9]。
【0169】
【化37】
【0170】
このブロック・ポリマーを実施例5〜8のため上記のように調製した。実施例9で得られた生成物と、THF(7.5mL)と、メタノール(7.5mL)と、Pd−C(10%w/w、0.2g)との混合物をH2(7atm)下で一晩回転(swirl)させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、最終生成物を無色の粘性液体として得た。収率は90%を超え、1H NMRスペクトルは、保護された基が水素化後除去されたことを示した。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 4.16(m,74H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.47(m,452H,H of MPEG),1.14(s,69H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0171】
DBU触媒系の有用性は、予測可能な分子量を持つ、狭分散性の最初のブロック・コポリマーが合成されたことで明らかにされた。1H NMRスペクトルおよびGPC解析から推定される、ベンジルエステルを脱保護する前の最初のブロック・コポリマー実施例1〜4、9および比較例1の分子特性を表6にまとめてある。下付き文字は、反復単位の数に相当する。
【0172】
【表6】
【0173】
表6のポリマーのGPCデータは、最初のブロック・コポリマーがGPCクロマトグラムで1つの単峰ピークを示すことを示した。このポリマーは、ほぼ単分散し、MWが8,810〜11,490の幅があり、多分散性が1.14〜1.20の狭い範囲にあることが明らかになった。1H NMRスペクトルから推定される最初のブロック・コポリマーの組成は、GPCの結果の分子量の値とよく一致し、仕込み率とも整合した。
【0174】
[実施例5〜8および10]
カルボン酸を含むブロック・コポリマー実施例1〜4および9の水素化。
ブロック・コポリマー、実施例1〜4を含む保護されたカルボン酸の水素化の一般的な手順は、以下の通りである。ペンダント・ベンジルエステル(0.5g)、THF(7.5mL)、メタノール(7.5mL)およびPd−C(10%w/w、0.2g)を組み合わせ、H2(7atm)下で一晩回転させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、実施例5〜8を無色の粘性液体として得た。その構造は、ベンジルエステルがカルボン酸であることを除いて、実施例1〜4上記に示したものと同じである。収率は90%を超えた。
【0175】
1H NMRスペクトルは、保護された基が水素化後除去されたことを示す。たとえば、図1は、CDCl3中の保護されたブロック・コポリマー実施例3の1H NMRスペクトルであり、図2は、DMSO−d6中の対応する脱保護されたブロック・コポリマー実施例8の1H NMRスペクトルである。図2では、図1と比較して、7.28および5.11ppmのピークが消失していることから、保護していたベンジル基が水素化分解により明確に除去されたことが示される。13.18ppmのピークは、遊離カルボン酸のプロトンに起因するものであり、MTCOBnから誘導される繰り返し単位の脱保護を示す直接の証拠となる。
【0176】
実施例5〜8、10および比較例1を用いたブランク・ミセルおよび内包ミセルの調製。
ミセルの調製および薬剤の内包量の判定。実施例5〜8、10および比較例1の純粋なブロック・コポリマーのミセルを、ポリマーを水に直接分散し、続いて超音波処理してミセル形成およびミセルの水分散を促進して調製した。ドキソルビシン(DOX)内包ミセルでは、DOX(5mg)を、1.5mLのDMAcに溶解させ、2モル過剰のトリエチルアミンで中和させた。DOX溶液に、10mgのブロック・コポリマーを0.5mLのDMAcに溶解させたポリマー溶液を加え、ボルテックスで5分間混合した。薬剤およびポリマー溶液を、プローブ型ソニケータ(Vibra Cell VCX 130)を用いて130Wにて超音波処理しながら、DI()水(10mL)に滴下して加え、超音波処理を2分間継続した。次いでこの溶液を、分子量カットオフ1000Daの透析バッグ(Spectra/Por 7、スペクトラム・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド(Spectrum Laboratories Inc.))を用いて1000mLのDI水に対して48時間透析した。水は、最初の6時間に2時間ごとに交換し、翌日もう1回交換した。透析後、透析バッグ中の溶液を0.45マイクロメートルのシリンジ・フィルタで濾過した。DOXの内包レベルを判定するため、上記のミセル溶液を2日間凍結乾燥させ、次いで 既知量のDOX内包ミセルを1mLのDMSOに溶解させた。DOX濃度は、480nmでUV−VIS分光光度計を用いて推定した。薬剤内包量は、DOXを含むDMSO溶液から得られた標準曲線に基づき計算した。
【0177】
蛍光測定。脱イオン(DI:deionized)水中のポリマーの臨界ミセル濃度(CMC)を、ピレンをプローブとして用いて判定した。蛍光スペクトルは、室温でLS 50B発光分光計(パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、米国)により記録した。サンプルについては、測定を行う場合にはその前に10分間平衡処理した。ピレンのアセトン溶液のアリコート(6.16×10−5M、10マイクロリットル)を容器に加え、アセトンを蒸発させた。この容器に様々な濃度のポリマー溶液(1mL)を加え、24時間平衡化させた。各サンプルの最終ピレン濃度は、6.16×10−7Mとした。発光スペクトルは励起波長339nmで360〜410nmをスキャンし、励起スペクトルは発光波長395nmで300〜360nmをスキャンした。励起および発光のバンド幅はどちらも2.5nmに設定した。励起スペクトルのI336/I334の強度(ピーク高さ)比をポリマー濃度の関数として解析した。CMCは、曲線の屈曲点の接線と低濃度点での接線との交点から取得した。
【0178】
動的光散乱。実施例5〜8、10および比較例1から新たに調製したブランク・ミセルおよびDOX内包ミセルの粒度を、0.45マイクロメートルのシリンジ・フィルタで濾過後、散乱角90°で動的光散乱(ZetaPALS、ブルックヘブン・インスツルメント・コーポレーション、米国)を用いて測定した。各測定を5回繰り返した。5回の測定から平均値を得た。各サンプルがそれぞれのミセルおよび凝集体を含む可能性があるため、マルチモデル解析を選択して寸法測定を行い、分解能を最大化した。
【0179】
実施例5〜8、10および比較例1で得られたブランク・ミセルおよびDOX内包ミセルの臨界ミセル濃度(CMC)値、および粒度の測定値を表7に示す。
【0180】
【表7】
【0181】
表7に示すように、実施例5〜8および10はCMC値が低いとはいえ、その値は5.2〜152.8mg/Lの幅があり、疎水性ポリカーボネート・ブロックのペンダント官能基の分布に強く依存する。ブロック・コポリマーのミセル構造は主に、親水性MPEG2シェルと疎水性ポリカーボネート・コアとに分かれる。実施例5は、ポリカーボネート・コアがMTCOHのホモポリマーであるため、最も高いCMCを示した。ペンダント・カルボン酸基は、周囲の水分子と水素結合を形成して、水中の疎水性ブロックの溶解性を高めると同時に疎水性を低下させることができた。実施例6および7は、疎水性ブロック内のブロック配列に配置された2種類のペンダント官能基を含むトリブロック・コポリマーである。そのミセル構造内は、疎水性コアが、ペンダント・カルボン酸基を含む疎水性が低いポリカーボネート・ブロックから作られた外側のコアと、ペンダント・エチルエステル基を含む疎水性が高いポリカーボネート・ブロックから作られた内側のコアとにさらに分かれる。これらの詳細に明らかにされたコア−シェル構造により、ブロック・コポリマーの中で最も低いCMCが得られた。同様に、実施例8のポリカーボネート・セグメントのランダムに分布したペンダント官能基もミセルのコアの疎水性を低下させるが、CMCは、実施例6〜7よりも高くなった。投与後の血液中のミセルの解離は封入薬剤を急速に放出させ、インビボで重度の副作用を引き起こす恐れがあるため、低いCMCは、ミセルの重要なパラメータである。
【0182】
こうしてCMCの結果と同様の傾向は、動的光散乱(DLS)により測定されたDOX内包ミセルの流体力学的直径でも観察された(表7)。粒度および均一性は、薬剤内包ミセルの重要な因子である。物理的性質が、そのどちらにも強く依存するためである。表7は、ブロック・コポリマー実施例5〜8から作られたドキソルビシン(DOX)内包ミセルの粒度を示す。粒度は、47〜165nmの範囲であり、粒度分布は、比較的狭く0.2〜0.28の範囲である。ミセルの粒度が小さいと、ミセルが細網内皮系(RES:reticuloendothelial system)によるクリアランスの影響を受けにくくすることができる。実施例6〜7の最も小さい流体力学的直径は、その詳細に明らかにされたミセル構造に起因する可能性がある。また、実施例5および8は、実施例6および7より大きな粒度を示す。理論に束縛されるものではないが、より大きな粒度は、外部環境に接触しやすく周囲の水分子と相互作用し、かつポリカーボネート・セグメントの疎水性を低下させて、ミセルのコアを緩やかなパッキングにするコアの親水性ペンダント・カルボン酸基に起因する。実施例8ではミセルのコアのカルボン酸基に対する疎水性エチルエステル基の希釈作用により、その粒度が実施例5の粒度より小さくなっている。DOX内包ミセルの構造の直接観察は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行った。
【0183】
図3は、トリブロック・コポリマー実施例7から作られたDOX内包ミセルの透過型電子顕微鏡写真(TEM)画像である。ミセルは、ほぼ球状の形をとり、内包ミセルの大部分は、乾燥状態で32〜45nmの範囲の直径を有し、対応する流体力学的直径より若干小さい。この結果は、コポリマーの遊離親水性セグメントの崩壊のほか、ポリマー鎖の脱水に起因する可能性がある。
【0184】
さらに、ブロック・コポリマー実施例5〜8から作られるDOX内包ミセルは、極めて高い薬剤内包レベル、および封入効率を示した。表7に示すように、実施例5〜8の薬剤内包レベルは、乾燥ブロック・コポリマーの重量に対して比較例1の2.2wt.%と比較して23.7wt.%〜43.1wt.%の範囲であった。ブロック・コポリマー・ミセルへのDOXの封入は、超音波処理/膜透析法により行った。濾過により大きな粒子を除去したため、ブロック・コポリマー実施例5および8で調製したDOX内包ミセルは、より低い薬剤内包レベルを示した。実施例6および7は、40wt.%を超える薬剤内包レベルを示した。高い薬剤内包レベルは、DOXとブロック・コポリマーのペンダント・カルボン酸基との静電的相互作用に起因する可能性があったため、開環重合にMTCOEtを用いてペンダント・エチルエステル基を導入しても、DOXに対するカルボン酸基の結合能に大きな影響を与えないと考えられる。
【0185】
実施例5〜8および比較例1により形成されたDOX内包ミセルのインビトロでの薬物放出試験
新たに調製したDOX内包ミセル溶液(3mL)を、MWCO1,000Daの透析膜チューブ(Spectra/Por 7、スペクトラム・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド)に移した。次いでチューブを、50mLのPBS緩衝液(pH7.4)を含むビーカーに浸し、これを100rev/分の速度で振盪し、37℃でインキュベートした。一定の時間間隔で、外液から1mLの溶液を取り除き、新鮮なPBS緩衝液と入れ換えた。サンプル中のDOX含有量は、480nmでUV−VIS分光光度計を用いて解析し、DOXのH2O溶液から得られた標準曲線に基づき算出した。
【0186】
DOXの放出プロファイルを図4に示す。どのミセルでも、明らかな初期バースト放出は観察されなかった。実施例6および7により形成されたミセルから放出されたDOXが約55%であったのに対し、実施例8により形成されたミセルからは、7時間以内に80%を超える薬物が放出された。これは、ミセルのコアが緩やかにパッキングされていたためと考えられる。さらに、コア内のランダムに分布したカルボン酸基はよく分離しており、エチルエステル基により希釈されて、隣接するカルボン酸基間の分子内水素結合が低下するため、ミセルのコアが外部の水性環境に接触しやすくなる。実施例5により形成されたミセルは最も遅い薬物放出プロファイルを示し、DOXとペンダント・カルボン酸基との間の強い静電引力のため、7時間後に放出されたDOXは42%にとどまった。
【0187】
実施例5〜8により形成されたDOX内包ミセルの細胞毒性。
実施例5〜8から形成されたDOX内包ミセル、およびブランク・コポリマー(実施例5〜8)の細胞毒性試験を、HepG2細胞を用いて行い、遊離DOXと比較した。培養細胞をブランク・コポリマーに接触させたところ、著しい細胞毒性は、37℃で48時間後、200mg/Lまで観察されなかった。図5Aは、ブランク・ポリマー実施例5〜8の濃度を関数としたHepG2細胞の生存率を示すグラフである。図5Bは、実施例5〜8の内包ミセル、およびDOXの濃度を関数としたHepG2細胞の生存率を示すグラフである。DOX内包ミセルは、ミセルの細胞毒性に対して強い用量依存的作用を示し、その細胞生存率プロファイルは、遊離DOXの細胞生存率プロファイルに非常に類似している。HepG2における遊離DOXのIC50値は1.14mg/Lであり、ブロック・コポリマー実施例5〜8から作られたミセルのIC50値と同じであった。
【0188】
II.尿素を含むブロック・コポリマーの調製。
スキーム2は、式MPEG1−b−[P(MTCOEt−r−MTCU)]で表されるポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(MTCOEt−ランダム−MTCU)コポリマーの合成を図示する。
【0189】
【化38】
【0190】
モノメチルエーテル−PEG(5,000g/mol)(MPEG1)をマクロ開始剤、TU/スパルテインを触媒として使用し、様々な量の環式モノマーMTCOEtおよびMTCUの開環重合によりランダム・ポリカーボネート鎖を形成して、ブロック・コポリマーを調製した。下付き文字n’は、市販のMPEG1における反復単位の数である。ブロック・コポリマーの尿素含有量は、MTCOEtモノマーとMTCUモノマーとの仕込み比を変化させて制御した。下付き文字xは、各環式カルボニル・モノマーのモル分率であり、モル分率の合計は1と等しい。環式モノマーの開環は、水素結合によりモノマーおよびアルコールをどちらも二官能性に活性化するように設計されたチオ尿素触媒および第三級アミン触媒を用いてグローブ・ボックスで行った。
【0191】
[実施例11〜14および比較例2〜5]
実施例11、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.8−r−MTCU0.2)](5k−5k)の以下の調製は、代表的なものである。グローブ・ボックス内で、チオ尿素触媒(TU)(37mg、0.1mmol)、スパルテイン(24mg、0.1mmol)およびMPEG1(0.5g、0.1mmol)を、撹拌子を備えた20mLの乾燥ガラスバイアルに仕込んだ。少量の塩化メチレンを加え、形成された溶液を撹拌しながら10分間維持した。MTCOEt(0.35g、1.86mmol)およびMTCU(0.15g、0.47mmol)を追加の塩化メチレン(モノマーに対して総濃度1M)と共に加え、得られた溶液を撹拌しながら16時間維持した。1H NMRから判定した開環重合反応の終了時に、安息香酸(15mg、0.12mmol)を加えて触媒をクエンチし、粗ポリマーを500mLの冷ジエチルエーテルに沈殿させた。この非溶媒を穏やかに周囲温度まで昇温し、その後上清をデカントした。オフホワイトの固体を集めて、真空下で恒量になるまで乾燥させた。収率0.75g(75%)。1H−NMR(CDCl3)δ:7.38(m,2H,polyMTC(MTCU)−ArH),7.22(m,3H,polyMTC(MTCU)−ArH),6.95(t,1H,polyMTC(MTCU)−NH),4.30(br,m,4H,polyMTC(MTCU and MTCOEt)−CH2,2H,polyMTC(MTCU)−CH2),4.10(m,2H,polyMTC(MTCOEt)−CH2CH3),3.68(s,4H,PEG),3.38(s,3H,a−end),1.38(br,m,3H,polyMTC(MTCU and MTCOEt)−CH3;3H,polyMTC(MTCOEt)−CH2CH3)(図S1を参照)。GPC(THF,PS 標準(standard)):PDI=1.11。図6は、実施例11、[P(MTCOEt0.8−r−MTCU0.2)](5k−5k)をモノメチルでエンドキャップされたPEG、MPEG1(5k)と比較したGPCクロマトグラムである。
【0192】
また、MPEG1が2倍の分子量のMPEG2を持つこと以外は比較例1と同様の構造を持つ比較例2(CEx.2)を、上記の手順を用いてMPEG1およびMTCOEtから調製した。各々ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(トリメチレンカーボネート)ブロック・コポリマーであるいくつかの追加比較例3〜5を、上記の手順を用いてMPEG1およびTMCから調製した。これらは、式MPEG1−b−[P(TMC)]で表される。
【0193】
【化39】
【0194】
比較例2〜5は各々水素結合尿素基を欠いている。比較例3〜5は、TMCから誘導される疎水性ブロックの分子量が異なる。
【0195】
[実施例15]
MPEG1113−b−[P(MTCOBn)4−r−P(MTCU)5]。
【0196】
【化40】
【0197】
MTCOBn(0.085g、0.3375mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、MTCU(0.1087g、0.3375mmol)をCH2Cl2(1mL)に溶かした溶液と混合し、次いでこの混合物を、MPEG1(0.225g、0.045mmol)、TU(16.65mg、0.045mmol)およびスパルテイン(10.35マイクロリットル、0.045mmol)をCH2Cl2(1mL)に溶かした溶液に撹拌しながら移した。一晩の反応後、安息香酸(20mg)を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、生成物を白色の粘性固体として得た(0.33g、80%)。収率、80%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.45(s,10H,PhH),7.18(s,10H,PhH),6.83(s,5H,PhH),4.06−4.23(br,m,46H,−CH2OCOO,−OCH2CH3,and −COOCH2CH2NH−of polyMTCU),3.48(m,462H,H of MPEG and −COOCH2CH2NH−of polyMTCU),1.12(m,27H,−CH3)。
【0198】
[実施例16]
MPEG1113−b−[P(MTCOH)4−r−P(MTCU)5]。
【0199】
【化41】
【0200】
実施例15で得られた上記の生成物と、THF(7.5mL)と、メタノール(7.5mL)と、Pd−C(10%w/w、0.2g)との混合物をH2(7atm)下で一晩回転させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、最終生成物を無色の粘性液体として得た。収率は90%を超え、1H NMRスペクトルは、保護された基が水素化後除去されたことを示した。
【0201】
蛍光測定。脱イオン(DI)水中の実施例11〜14および比較例2〜5の臨界ミセル濃度(CMC)を、ピレンをプローブとして用いて判定した。蛍光スペクトルは、室温でLS 50B発光分光計(パーキン・エルマー、米国)により記録した。サンプルについては、測定を行う場合にはその前に10分間平衡処理した。ピレンのアセトン溶液のアリコート(6.16×10−5M、10μL)を容器に加え、アセトンを蒸発させた。この容器に様々な濃度のポリマー溶液(1mL)を加え、24時間平衡化させた。各サンプルの最終ピレン濃度は、6.16×10−7Mとした。発光スペクトルは励起波長339nmで360〜410nmをスキャンし、励起スペクトルは発光波長395nmで300〜360nmをスキャンした。励起および発光のバンド幅はどちらも2.5nmに設定した。励起スペクトルのI336/I334の強度(ピーク高さ)比をポリマー濃度の関数として解析した。CMCは、曲線の屈曲点の接線と低濃度点での接線との交点から取得した。
【0202】
動的光散乱(DLS)。Brookhaven BI−200SMゴニオメータ・システム(Brookhaven,U.S.A.)で動的光散乱(DLS)実験を行い、実施例9〜12および比較例2〜5により形成されたミセルの粒度(Dh)を判定した。光源は、波長633nmの出力調整可能で垂直偏光の75mW HeNeイオン・レーザとする。
【0203】
表8に、尿素を含むブロック・コポリマー実施例11〜14、16および比較例2〜5の構造および特徴付けをまとめてある。親水性ブロックおよび疎水性ブロックの数平均分子量をサンプル式の隣の括弧内に示す。たとえば、実施例12の場合、(5k−3k)という表現は、親水性ブロックが5000のMnを有し、疎水性ブロックが3000のMnを有していたことを意味する。式中の各モノマーの後にある下付き文字は、疎水性ブロックの環式カルボニル・モノマーのモル分率であり、モル分率の合計は1.0である。実施例11〜14の疎水性ブロックは、MTCOEtおよびMTCUのランダム・コポリマーを含む。
【0204】
【表8】
【0205】
実施例12、13および比較例2のミセル形成能。
比較的低分子量の疎水性ブロック(ポリカーボネート・ブロックのMn:1.5k、3kおよび5k)を有する表8の各ブロック・コポリマーは、水中で自己分散することができた。典型的には、ブロック・コポリマーを脱イオン水で直接自己分散し、10分間超音波処理してミセルの形成、およびブロック・コポリマー・ミセルの水分散を促進した。ミセル形成能に対するH結合尿素基の作用を、MPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)](5k−3k)ブロック・コポリマー、実施例12、13および比較例2を用いて検討した。これらのポリマーはそれぞれ、尿素のモル分率xを0.4、0.2および0.0有する。図7は、実施例12、13および比較例2により形成されたミセルの動的光散乱の結果を比較したグラフである。MPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)](5k−3k)ブロック・コポリマーは、表8にまとめてあるように平均直径20〜40nmを有し、さらに0.084〜0.133という狭い粒度分布を有するナノサイズのミセルを形成した。尿素基の導入に伴う特徴的な変化は、図7の臨界ミセル濃度(CMC)で観察された。CMCは、ミセルによる薬剤送達系のインビボでの安定性を予測するのに使用できる重要なパラメータである。CMC値の測定は、ピレンをプローブとして使用して定常状態の蛍光分光法により行った。興味深いことに、MPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)](5k−3k)のCMC値は、ブロック・コポリマーのペンダント尿素の量が増加すると著しく低下するが、その分子量は、よく似ていた。これは、水性環境で強いH結合尿素により引き起こされる自己会合の安定化がミセルのCMCを低下させることを示す。
【0206】
尿素を含むブロック・コポリマー、実施例11〜14の内包ミセル。
尿素官能性ブロック・コポリマーをさらに抗癌剤ドキソルビシン(DOX)のナノキャリアとして使用した。超音波処理−膜透析技術によりブロック・コポリマー/薬剤ハイブリッド・ミセルを調製した。典型的には、過剰(3×)のトリエチルアミンを含むDMAC(1.5mL)で中和したDOX(5mg)を、DMAC(2mL)に溶解させたブロック・コポリマー(10mg)(実施例11〜14)と混合し、10mLの脱イオン(DI)水中で10分間超音波処理し、次いでDI水に対して2日間透析した。この溶液を寸法測定の前に0.45マイクロメートルのシリンジ・フィルタで濾過し、2日間凍結乾燥した。図8は、実施例13、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.8−MTCU0.2)](5k−3k)の薬剤内包ミセル(図8にP+Dとプロット表示)と共に、実施例13により形成された非内包ポリマー・ミセル(図8にPとプロット表示)の粒度および大きさの分布を示すグラフである。尿素基なしで調製された非内包ミセル、比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)の大きさは、直径約24nmであったのに対し(図8にP’とプロット表示)、比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)から調製された薬剤内包ミセルの大きさはかなり大きく、約430nmであった(図8にP’+Dとプロット表示)。大きさの増加からは、比較例4のミセル形成中に疎水性薬剤が存在すると、その過程で熱力学および速度論に影響を与え、凝集体の構造を大きくすることが示唆される。この現象は、薬物送達に使用する際に大きな欠点となる可能性がある。ナノ送達系の大きさは、体の防御機構を回避すべく、理想的には約200nm未満にとどめるべきであるためである。図8に示すように、20%の尿素含有量を有する実施例13、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.8−MTCU0.2)](5k−3k)から得られた薬剤内包ミセルは、大きさが200nm未満であり、尿素を含まない比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)または比較例2、MPEG1−b−[P(MTCOEt1.0)]のそれと比較して著しく安定化している。
【0207】
図9は、異なる尿素含有量を有するMPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)]ブロック・コポリマー(実施例12、13および比較例2、xはそれぞれ0.4、0.2および0.0であり、各々3000のMnの疎水性ブロックを有する)による薬剤内包ミセルの薬剤内包量と大きさとの関係を示すグラフである。ナノ粒子の薬剤含有量については、ミセル溶液を凍結乾燥し、その塊をDMAC再溶解させ、続いて485nmのUV可視分光法により判定した。尿素含有量が増加するのに伴い、薬剤内包量もx=0.0での6.3wt%からx=0.4での8.5wt%に増加した一方、同時に、薬剤内包ミセルの平均粒度がx=0.0での360nmからx=0.4での110nmに小さくなった。
【0208】
実施例11、13および14における疎水性ブロックの分子量の作用。
最後に、1.5k、3kおよび5kのポリカーボネート・ブロックを有するコポリマーを用いて、薬剤内包量およびミセル形成挙動に対する疎水性ブロックの分子量の作用をさらに調査した。これらの薬剤内包サンプルにおけるミセルの大きさ(安定性)および薬剤の内包量は、表8にまとめてあるように疎水性ブロックの鎖長および特徴に高度に依存する。最も大きな疎水性ブロックを有する比較例3、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−5k)では、薬剤内包ミセルの大きさが200nmを若干上回った。H結合尿素ブロック・コポリマーは、ブロック・コポリマー・ミセルのCMC、薬剤内包能、ならびに薬剤内包ミセルの大きさおよび粒度分布をさらに改善する。これらの相違は、比較的短い疎水性ブロックを有するブロック・コポリマーでより顕著になる。
【0209】
MCF7およびBT474ヒト乳房癌細胞株に対するポリマー(比較例4、実施例13および実施例12)の細胞毒性を試験した。図10および図11に示すように、これらのポリマーのいずれも、最大300mg/Lの濃度で著しい細胞毒性を示さなかった。
【0210】
III.酸塩基混合ミセル。
2つのブロック・コポリマー組成物を含む混合ミセル組成物を調製した。第1のブロック・コポリマーは、MPEG1−b−[P(MTCOH)5−b−P(MTCOEt)9]、実施例10であった。第2のブロック・コポリマーは、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.6−r−MTCU0.4)]、実施例12であった。表9に示すように、これらのブロック・コポリマーを様々な尿素/COOHモル比で混合した。
【0211】
【表9】
【0212】
膜透析法によりDOXをミセルに内包させた。簡単に説明すると、過剰の(3×)トリエチルアミンを含むDMAC(1.5mL)で中和したDOX(5mg)を、DMAc(0.5mL)に溶解させたブロック・コポリマー(10mg)と混合し、10mLのDI水中で2分間超音波処理し、次いで1000mLのDI水に対して2日間透析した。外側の水は、3時間、6時間および24時間で交換した。透析後、2日間の凍結乾燥により粒子を集めた。DOXの内包レベルを判定するため、既知量の凍結乾燥したDOX内包ナノ粒子を1mLのDMSOに溶解させた。DOX濃度は、480nmでUV−可視分光光度計を使用して推定した。薬剤内包量は、DOXを含むDMSO溶液から得られた標準検量線に基づき計算した。
【0213】
粒度の測定。表9のDOX内包混合ミセルを寸法測定前にPBS緩衝液(pH7.4)に直接溶解させた。
【0214】
ミセルの粒度は、Brookhaven BI−200SMゴニオメータ・システム(Brookhaven,U.S.A.)を用いて行った動的光散乱(DLS)により測定した。光源は、波長633nmの出力調整可能で垂直偏光の75mW HeNeイオン・レーザである。
【0215】
新たに調製したブランク・ミセルおよびDOX内包ミセルの粒度を、0.45マイクロメートルのシリンジ・フィルタで濾過後、散乱角90°で動的光散乱(ZetaPALS、ブルックヘブン・インスツルメント・コーポレーション、米国)を用いて測定した。各測定を5回繰り返した。5回の測定から平均値を得た。各サンプルがそれぞれのミセルおよび凝集体を含む可能性があるため、マルチモデル解析を選択して寸法測定を行い、分解能を最大化した。
【0216】
臨界ミセル濃度。PBS緩衝液(pH7.4)中の実施例12および実施例17〜25のブランク混合ミセルのCMCを、ピレンをプローブとして用いて判定した。蛍光スペクトルは、室温でLS 50B発光分光計(パーキン・エルマー、米国)により記録した。サンプルについては、測定を行う場合にはその前に10分間平衡処理した。ピレンのアセトン溶液のアリコート(6.16×10−5M、10μL)を容器に加え、アセトンを蒸発させた。この容器に様々な濃度のポリマー溶液(1mL)を加え、24時間平衡化させた。各サンプルの最終ピレン濃度は、6.16×10−7Mとした。発光スペクトルは励起波長339nmで360〜410nmをスキャンし、励起スペクトルは発光波長395nmで300〜360nmをスキャンした。励起および発光のバンド幅はどちらも2.5nmに設定した。励起スペクトルのI336/I334の強度(ピーク高さ)比をポリマー濃度の関数として解析した。CMCは、曲線の屈曲点の接線と低濃度点での接線との交点から取得した。
【0217】
このアプローチを用いることにより、CMCを低下させたり、薬剤内包レベルを増加させたり、生物学的リガンドの表面密度を調整したり、あるいはダブル・ターゲティングのため2つの生物学的リガンドを付着させたりするように混合ミセルを製剤化することができる。
【0218】
IV.ターゲティングのための官能基の導入。
チオール基(スキーム3)、アルデヒド基(スキーム4)、またはPEGのN−ヒドロキシスクシンイミド官能基を持つCOOH末端の基(スキーム5)を介してPEGのもう一方の遠位末端にガラクトースなどの生物学的官能基を導入してもよい。ガラクトースを使用すれば、肝細胞を標的とすることができる。また、ターゲティングのため、同様のアプローチによりペプチド、タンパク質または抗体などの他の生物学的リガンドをポリカーボネート・ベースのブロック・コポリマーにコンジュゲートしてもよい。
【0219】
【化42】
【0220】
【化43】
【0221】
【化44】
【0222】
[実施例26]
チオールを持つPEG−ブロック−ポリカーボネート、HS−PEG−b−[P(MTCOEt)23−b−P(MTC−OBn)19]の調製。
MTCOEt(0.113g、0.6mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、HS−PEG−OH(0.097g、Mn=3228、0.03mmol)およびDBU(4.6mg、0.03mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間後、MTCOBn(0.15g、0.6mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(20mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、HS−PEG−b−[P(MTCOEt)23−b−P(MTC−OBn)19]を無色の粘性液体として得た(0.59g、82%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.3(m,95H,PhH),5.15(s,38H,−OCH2Ph),4.25(m,214H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.64(m,290H,H of PEG),2.78(d,2H,−OCH2CH2SH),2.49(t,2H,−OCH2CH2SH),1.23(s,195H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0223】
[実施例27]
アルデヒドを持つPEG−ブロック−ポリカーボネート、CHO−PEG−b−[P(MTCOEt)21−b−P(MTC−OBn)20](スキーム4)調製。
MTCOEt(0.226g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、OCH−PEG−OH(0.12g、Mn2000、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間後、MTCOBn(0.3g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、OCH−PEG−b−[P(MTCOEt)21−P(MTCOBn)20]を無色の粘性液体として得た(0.52g、80%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 9.78(s,0.4H,−CHO),7.29(m,100H,PhH),5.11(s,40H,−OCH2Ph),4.25(m,206H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.64(m,179H,H of PEG),1.23(s,186H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0224】
[実施例28]
p−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシドを末端に持つPEG(APG−PEG)ポリカーボネート・ブロック・コポリマー、APG−PEG−b−[P(MTCOEt)21−P(MTCOBn)20]の合成(スキーム4)。
実施例27で得られた上記の生成物OCH−PEG−b−[P(MTCOEt)21P(MTCOBn)20](0.52g、0.047mmol)を10mLのDMSOに溶解させ、この溶液に7−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(APG)(0.127g、0.47mmol)を加えた。混合物を撹拌し、40℃まで5時間加熱した。次いで、これを周囲温度まで冷却し、NaBH3CN(8.9mg、0.141mmol)を加えてイミン結合をアミンに還元した。混合物を一晩撹拌し、水に対して透析し(分子量カットオフ1,000ダルトン)、凍結乾燥した。最後に、APG−PEG−b−[P(MTCOEt)21−b−P(MTC−OBn)20]を無色の粘着性液体として得た(0.45g、70%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.29(m,100H,PhH),5.11(s,40H,−OCH2Ph),4.25(m,206H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.64(m,179H,H of PEG),1.23(s,186H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0225】
[実施例29]
ガラクトースを末端に持つブロック・コポリマーAPG−PEG−b[P(MTCOEt)21−b−P(MTCOH)20]の調製(スキーム4)。
実施例28で得られた上記の生成物APG−PEG−b−[P(MTCOEt)21−b−P(MTC−OBn)20](0.45g)と、THF(7.5mL)と、メタノール(7.5mL)と、Pd−C(10%w/w、0.2g)との混合物をH2(7atm)下で一晩回転させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、ガラクトースを末端に持つブロック・コポリマー、APG−PEG−b−[P(MTCOEt)21−b−P(MTC−OBn)20]を得た(0.35g、92%)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6,22℃):δ 10.58(s,10H,−COOH),7.33(m,3.9H,2,6−PhH−ΝH),6.67(m,3.9H,3,5−PhH−NH),4.13(m,206H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.51(m,179H,H of PEG),1.13(s,186H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0226】
[実施例30]
N−ヒドロキシスクシンイミド誘導体化PEG(NHS−PEG)ブロック・ポリカーボネート・コポリマー、NHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]の調製(スキーム5)。
MTCOEt(0.226g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、モノN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体化PEG、NHS−PEG−OH(0.21g、Mn2000、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間後、MTCOBn(0.3g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、NHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]を得た。
【0227】
[実施例31]
NHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]とp−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(APG)との反応 APG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20](スキーム5)。
まず、NHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20](0.05mmol)に対して10mol過剰のp−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(APG)(0.50mmol)を1mlの無水Ν,Ν−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。次いで、この溶液を、1.5mlの無水DMFに溶解させた実施例30で得られた0.05mmolのNHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]に加えた。反応混合物を窒素下、室温で6時間穏やかに撹拌した。生成物のガラクトースを末端に持つAPG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]をDMSOおよび蒸留水に対する透析(MWCO1000Daの透析チューブ)により精製し、凍結乾燥した。
【0228】
[実施例32]
ガラクトースを末端に持つAPG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOH)20]の調製(スキーム5)
実施例31で得られた上記の生成物、APG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]と、THF(7.5mL)と、メタノール(7.5mL)と、Pd−C(10%w/w、0.2g)との混合物をH2(7atm)下で一晩回転させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、ガラクトースを末端に持つAPG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOH)20]を得た。
【0229】
要約すると、モノメチルでエンドキャップされたPEGおよび官能性ポリカーボネートを含む一連のブロック・コポリマーは、DOX送達の高度に効率的なキャリアであることが明らかになった。このブロック・コポリマーは低いCMC値を有し、その水中ミセルは小さな粒度を示した。CMCおよび粒度の変化は、ブロック・コポリマーのポリカーボネート・セグメントにおけるペンダント官能基の分布の相違に起因する可能性があった。疎水性ブロックに尿素もしくはカルボン酸またはその両方を含むペンダント基を含むポリマーは、高いDOX内包レベルを実現する。DOXの速やかな放出は、37℃で7時間以内に著しい初期バーストを起こさずに達成され、放出されるDOXは、ポリカーボネート・セグメントのペンダント官能基の分布に応じて42%〜80%までの幅があった。さらに、DOX内包ミセルは、無毒のブランク・ブロック・コポリマーと比較して、HepG2細胞に対して遊離DOXとほぼ同じ細胞毒性を示した。ブロック・コポリマーはさらに骨格構造、ペンダント官能基、および分布(ランダム共重合とブロック共重合)を調整して、様々な分子構造および物理化学的特性を有する他の種類の薬剤を効率的に組み込むこともできる。
【0230】
他の特定の実施形態。
1つの特定の実施形態では、生分解性ブロック・コポリマーは、疎水性ブロックに連結したポリエーテル骨格を含む親水性ブロックを含み、疎水性ブロックは、第1の反復単位を含み、第1の反復単位は、i)エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカルボネートおよびジチオカルボネートからなる群から選択される第1の骨格官能基と、ii)尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基とを含む第1の側鎖を含み、疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成する。追加の実施形態では、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される。別の追加実施形態では、親水性ブロックは、特定の細胞型と相互作用する部分を含む末端単位を含む。別の追加実施形態では、下記構造を持つ末端単位は、ガラクトース部分を含む。式中、−L’−は2〜50個の炭素を含む二価の結合基である。
【0231】
【化45】
【0232】
別の特定の実施形態では、水性ミセルが、上記の生分解性ブロック・コポリマーを含む。追加の実施形態では、ミセルは、内包ミセルの全乾燥重量に対して5wt.%〜50wt.%の非共有結合した生物活性材料を含む内包ミセルである。別の追加実施形態では、ミセルは、第2の生分解性ブロック・コポリマーをさらに含み、第2のブロック・コポリマーは、疎水性ブロックに連結したポリエーテル骨格を含む親水性ブロックを含み、疎水性ブロックは反復単位を含み、反復単位は、i)エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカルボネートおよびジチオカルボネートからなる群から選択される骨格官能基、およびii)カルボン酸基を含む側鎖を含み、第2のブロック・コポリマーの疎水性ブロックの側鎖は、共有結合した生物活性材料を含まない。別の追加実施形態では、第2のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される。
【0233】
別の特定の実施形態では、細胞を処置する方法が、上記の内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含む。
【0234】
別の特定の実施形態では、上記に詳述した開環重合方法は、有機触媒により触媒される。
【0235】
本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定的することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数形も同様に含むことを意図している。さらに、「を含む(comprises)」もしくは「を含む(comprising)」またはその両方の用語は、本明細書に使用される場合、上記の特徴、整数、ステップ、作業、構成要素、もしくは成分またはその全部の存在を明記するものであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、作業、構成要素、成分、もしくはこれらの群またはその全部の存在または追加を排除するものではないことも理解されよう。
【0236】
下記特許請求の範囲におけるミーンズ・プラス・ファンクション構成要素またはステップ・プラス・ファンクション構成要素に対応する構造、材料、動作、および等価物は、特許請求の範囲に記載されている他の構成要素と組み合わせて、その機能を明確に特許請求されているように実行するための任意の構造、材料または動作を含むことを意図している。例示および説明を目的として本発明について記載してきたが、本発明の記載は、網羅的であること、または開示した形態に本発明を限定することを意図するものではない。本発明の範囲および精神を逸脱することなく多くの修正および変形が当業者には明らかになるであろう。各実施形態については、本発明の原理およびその実用的用途を最もよく説明し、当業者が本発明を理解できるように選択し、記載した。
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性ブロック・ポリマーに関し、さらに詳しくは薬物送達に使用するための、生物活性材料を含むその内包ミセルに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床的に使用される薬剤の大部分は、低分子量ポリマー化合物(<500ダルトン)であり、血流中での短い半減期、および高いクリアランス率を示す。こうした低分子は、全身の健常組織および病変組織の両方に急速に拡散し、多くの場合、重篤な副作用を引き起こす。さらに、こうした治療薬は溶解性および安定性が限られているうえ、毒性があることが多いため、これら運搬に関する問題を解決する有効な薬物送達システムが非常に注目されている。ポリマー治療剤(薬剤を共有結合した、または物理的に組み込んだ重合薬剤、重合薬剤コンジュゲート、ポリマー−タンパク質コンジュゲート、ポリマー−DNAコンジュゲート、および重合ミセルなど)は、研究が進行している分野である。
【0003】
最も広く研究された送達剤は、ブロックの1つが水に選択的に溶媒和されるブロック・コポリマーから生成される超分子である。こうしたミセルは、疎水性荷物(cargo)を封鎖することができるコア−シェル構造または区画構造を形成し、典型的には直径が数十ナノメートルであり、粒度分布が比較的狭い。薬剤のコア−シェル構造への非共有結合的封入に基づく超分子薬物送達システムの主な障害は、高度希釈でのポリマー・ミセルの安定性の欠如、および低い薬剤内包レベルにある。安定性の向上は、前混合ミセルのコアまたはシェルを架橋結合することにより、あるいは、たとえば、逆電荷のブロック・イオノマー間での多価電解質の複合体形成、立体複合体形成、または水素結合などブロック間の非共有結合性相互作用を促進する構造設計により達成されてきた。化学的な架橋結合により安定性は改善されたものの、このアプローチは、ゲスト分子の封入または生分解性にとって最適でない場合がある。
【0004】
さらに、非共有結合性相互作用は、内包レベルを向上させ、荷物の放出速度を緩和するキャリア−荷物複合体を強化するために使用することもできる。たとえば、イオン対複合体の形成を伴うアンモニウム・イオンとカルボキシレート・アニオンとの間の相互作用は、分子認識プロセスの重要な典型例である。この酸塩基モチーフは、ジブロック・コポリマーの自己組織化を制御してドメイン・パターン、低分子混合物、界面、界面活性剤/ポリマー/デンドリマー超分子複合体、液晶/ポリマー複合体、熱応答性ゲル等を形成するためゲルの超分子集合体に利用されてきた。疎水性薬剤分子(R1−COOH)とポリマー・セグメント(NH2−R2)との間の特異的な酸塩基相互作用により、水性媒体中のブロック・コポリマー・ミセルの薬剤内包能が改善された。同様に、コア内に酸官能基を含むコア/シェル・ミセルは、DOXの高い内包レベルを封鎖する。ただし、残念ながら、DOX分子を、酸基を介してコアに化学的に連結する必要があり、癌の処置においては生物活性を示さなかった。同様に、別の非共有結合性相互作用の使用した立体複合体形成も、薬剤内包量を著しく改善するだけでなく、放出速度を制御するために使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬物送達システムにとって超希釈条件におけるミセルの安定性、および荷物−キャリア内包レベルの向上は、依然として重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、実施形態の1つでは、生分解性ブロック・コポリマーであって、
ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、および
ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合(ROP:ring opening polymerization)により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックであり、第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖部分を含む疎水性ブロック、
を含み、
疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成し、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
生分解性ブロック・コポリマーを開示する。
【0007】
別の実施形態では、生分解性ブロック・ポリマーを形成する方法であって、
ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合によりブロック・コポリマーを形成することを含み、ブロック・コポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、親水性ブロックはポリエーテルアルコールから誘導され、疎水性ブロックは尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む第1の反復単位を含み、
疎水性ブロックは共有結合した生物活性材料を含む側鎖を含まず、ブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを水中で形成し、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
方法を開示する。
【0008】
別の実施形態では、
第1の生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックと、ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含み、第1の反復単位は、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含み、疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、ブロック・コポリマーは非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される生分解性ブロック・コポリマー
を含むミセルを開示する。
【0009】
別の実施形態では、細胞を処置する方法であって、
第1の生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、およびポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックを含み、第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む生分解性ブロック・コポリマーと、
生物活性材料と
を含む内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含み
第1のブロック・コポリマーは非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、疎水性ブロックの側鎖は生物活性材料に共有結合しておらず、第1のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
方法を開示する。
【0010】
当業者であれば、以下の詳細な説明、図および添付の特許請求の範囲から本発明の上記および他の特徴と利点とを認識および理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】保護されたブロック・コポリマー実施例3の1H NMRスペクトルである。
【図2】ベンジルエステル基をカルボン酸に水素化分解した後の実施例3の1H NMRスペクトルである。
【図3】トリブロック・コポリマー実施例7から作られたDOX内包ミセルの透過型電子顕微鏡写真(TEM:transmission electron micrograph)画像である。
【図4】実施例5〜8のDOX放出プロファイルを示すグラフである。
【図5】(A)ポリマー実施例5〜8により形成されたブランク・ミセルの濃度を関数としたHepG2細胞の生存率を示すグラフである。(B)ポリマー実施例5〜8により形成されたDOX内包ミセルの濃度を関数としたHepG2細胞の生存率を示すグラフである。
【図6】実施例11、[P(MTCOEt0.8−r−MTCU0.2)](5k−5k)をモノメチルPEG、MPEG1(5k)と比較したGPC(Gel permeation chromatography)クロマトグラムである。
【図7】実施例12、13および比較例2により形成されたミセルの動的光散乱(DLS:dynamic light scattering)の結果を比較したグラフである。
【図8】実施例13、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.8−MTCU0.2)](5k−3k)の薬剤内包ミセル(図8にP+Dとプロット表示)と共に、実施例13により形成された非内包ポリマー・ミセル(図8にPとプロット表示)の粒度および粒度分布を示すグラフである。尿素基なしで調製された非内包ミセル、比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)の大きさは、直径約24nmであったのに対し(図8にP’とプロット表示)、比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)から調製された薬剤内包ミセルの大きさはかなり大きく、約430nmであった(図8にP’+Dとプロット表示)。
【図9】異なる尿素含有量を有するMPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)]ブロック・コポリマー(実施例12、13および比較例2、xはそれぞれ0.4、0.2および0.0であり、各々3000のMnの疎水性ブロックを有する)による薬剤内包ミセルの薬剤内包量と大きさとの関係を示すグラフである。
【図10】比較例4(f=0)、実施例13(f=0.2)および実施例12(f=0.4)とのインキュベーション後のMCF7ヒト乳癌細胞の生存率を示す棒グラフである。
【図11】比較例4(f=0)、実施例13(f=0.2)および実施例12(f=0.4)を含むBT474ヒト乳房癌細胞株の生存率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
水中でミセルを形成し、非共有結合性相互作用により生物活性材料(本明細書では、生物活性材料とも呼ばれる)を封鎖するのに好適である生体適合性および生分解性ブロック・コポリマーを開示する。このブロック・コポリマーは、ポリエーテル骨格を含む親水性ブロックと、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含むペンダント部分を含む第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合(ROP)により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含む。疎水性ブロックは、側鎖に共有結合した生物活性材料(たとえば、薬剤、ペプチド、ヌクレオチド、または何らかの細胞特異的相互作用が可能な材料)をまったく有さない。ブロック・コポリマーは、単分散で両親媒性であり、0%〜20%の細胞毒性を示し、より詳細には細胞毒性を示さない。
【0013】
「生分解性」という用語は、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)により、生物活性、特に酵素作用により分解され、材料の化学構造が大きく変化することと定義される。本明細書においては、材料は、ASTM D6400により180日以内に60%生分解される場合、「生分解性」である。
【0014】
さらに詳しくは、ブロック・コポリマーは、グリコールでも、またはモノアルコールでもよいポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックを含む。ポリエーテルアルコールは、1つまたは複数の環状カーボネート・モノマーの開環重合を開始させ、疎水性ブロックを形成するのに使用される。疎水性ブロックは、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む第1の環式カルボニル・モノマーから誘導することができる。主鎖を分解することなく開環重合後にカルボン酸基に変換し得るエステル基は、潜在的(latent)カルボン酸基である。たとえば、潜在的カルボン酸基は、開環重合後に脱保護することができる保護されたエステルであってもよい。
【0015】
より詳細には、疎水性ブロックは、以下の官能基、カルボン酸基、潜在的カルボン酸基または尿素基のいずれも含まない第2の環式カルボニル・モノマーから誘導される第2の繰り返し単位をさらに含む。環式カルボニル・モノマーを組み合わせると、ブロック・コポリマーの疎水性、自己会合挙動、およびブロック・コポリマーと薬剤などの生物活性のある「荷物(cargo)」材料との非共有結合相互作用が制御される。このため、ブロック・コポリマーは、特定のミセル形成特性を達成するように設計しても、あるいは特定の生物活性材料の内包もしくは放出またはその両方に関与する非共有結合相互作用を調節するように設計してもよい。
【0016】
また、第1の環式カルボニル・モノマーは、必要に応じて尿素基および潜在的カルボン酸基を共に含んでもよい。尿素基は、分岐水素結合を介して会合することができ、その水素結合強度は、アミドおよびウレタンを上回る。尿素の自己認識(すなわち、尿素官能基が他の尿素官能基と相互作用する(A−A系))により、従来のA−B対(すなわち、尿素がケトンなどの異なる官能基と相互作用する)と比較して合成手順が簡素化される。また、尿素は、カルボキシレート誘導体およびそのイソスター(isosteres)(スルホネート、ホスホネートおよびホスフェート)と非共有結合して、ミセルの安定性および薬剤の内包量を改善することもできる。
【0017】
水溶液中のブロック・コポリマーは、可逆的に自己会合し、ペンダント尿素もしくはカルボン酸基またはその両方を欠いたブロック・コポリマーから形成されたミセルと比較して低い臨界ミセル濃度(CMC:critical micelle concentration)を有するナノサイズのミセルを形成する。ブロック・コポリマーを単独で使用してホモミセルを形成しても、または組み合わせて使用して混合ミセルを形成してもよい。特に、カルボン酸含有ブロック・コポリマーを使用すれば、尿素含有ブロック・コポリマーとの混合ミセルを形成することができる。混合ミセルの尿素とカルボン酸とのモル分率は、ミセル形成組成物の薬剤内包量、鎖の凝集数、臨界ミセル濃度、および薬物放出特性の最適化を可能にするように、合成修飾ではなく配合により調整すると有利な場合がある。ブロック・コポリマーは、可逆的に荷物材料と会合し、ナノサイズの内包ミセルを形成する。低分子量荷物(Mn<300ダルトン)の高い内包量が実現されている。驚いたことに、内包ミセルの平均の大きさ(ブロック・コポリマー−荷物複合体(conjugate)とも呼ばれる)は、内包ミセルの乾燥重量に対して約10wt.%〜40wt.%の薬剤内包量で約100nmである。
【0018】
ミセルを形成するブロック・コポリマーは、下記一般式(1)を持つものであり、
A’−b−[P(モノマー1、...)](1)
式中、A’はポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックを表し、「−b−」はブロックの境界を示し、[P(モノマー1、...)]は、1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーの開環重合により形成される疎水性ブロックを表す。角括弧「[ ]」は疎水性ブロックを示し、「P( )」は、括弧内に含まれる1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーの開環重合を示す。疎水性ブロックは、単一の環式カルボニル・モノマーから形成されるホモポリマー、2つ以上の環式カルボニル・モノマーから形成されるランダム・コポリマー(式(1)のモノマー名を区切る「−r−」で示す)、2つ以上の環式カルボニル・モノマーから形成されるブロック・コポリマー(2つ以上の環式カルボニル・モノマーを区切る「−b−」で示す)、またはこれらの混合物を含むポリマー鎖を含んでもよい。すなわち、疎水性ブロックはそれ自体に、これらのポリマー鎖の種類のいずれか1つを含んでも、あるいはそれらの混合物を含んでもよい。
【0019】
たとえば、下記に詳述されるブロック・コポリマーは、式MPEG1−b−[P(MTCOEt−r−MTCU)]で表され、親水性ブロックはモノメチルポリ(エチレングリコール)(MPEG1)から誘導され、疎水性ブロックは、下記構造を持つ2つの環式カルボニル・モノマーMTCOEtおよびMTCUから誘導されるランダム・コポリマーからなる。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、nは2〜10000の整数である。MPEG1−b−[P(MTCOEt−r−MTCU)]は、下記構造を持つ。
【0022】
【化2】
【0023】
式中、疎水性ブロックのカーボネート反復単位の垂直方向のスタッキングは、反復単位のランダムな構成を示す。すなわち、どちらのカーボネート反復単位がMPEG1鎖に結合してもよい。親水性ブロックは任意に、誘導体化末端反復単位、Z’を含んでもよく、疎水性ブロックも任意に、誘導体化末端反復単位、Z’’を含んでもよい。上記の例では、MPEG1−b−[P(MTCOEt−r−MTCU)]の親水性ブロックは、MeOCH2CH2O−構造を持つ誘導体化末端反復単位を含む。Z’およびZ’’は、1〜100個の炭素を含む一価のラジカルであってもよい。Z’およびZ’’は、エンドキャップされた末端の反復単位、たとえば、上記に示したようにアセチルまたはメチルでエンドキャップされた反復単位を表してもよい。あるいは、Z’およびZ’’は、親水性ブロックもしくは疎水性ブロックまたはその両方の末端反復単位のより複雑な合成誘導体を表してもよい。Z’およびZ’’が含み得る官能基については限定されるものではないが、ただし、ブロック・コポリマーの荷物内包特性、ミセル形成特性、薬物放出特性、もしくは細胞標的化特性またはその全部に悪影響を及ぼさないものとする。Z’およびZ’’は独立に以下の基、ケトン基、カルボン酸基、エステル基、チオエステル基、エーテル基、アミド基、アミン基、アルデヒド基、アルケン基、アルキン基、3〜10個の炭素を含む環状脂肪族環、2〜10個の炭素を含む複素環式環、または前述の追加官能基の組み合わせの1つまたは複数を含んでもよい。複素環式環は、酸素、硫黄もしくは窒素またはその全部を含んでもよい。
【0024】
開環重合のためのポリエーテルアルコール開始剤は、1つまたは複数のヒドロキシ基を含んでもよい。より詳細には、ポリエーテルアルコールは、下記一般式(2)のポリ(アルキレングリコール)であってもよく、
HO−[CH2(CHR5)xCHR5O]n−H (2)
式中、xは0〜8であり、R5は各々水素、1〜30個の炭素を含むアルキル基、または6〜30個の炭素を含むアリール基から独立に選択される一価のラジカルである。下付き文字nは2〜10000の整数である。このため、エーテル反復単位は、各骨格酸素間に2〜10個の骨格炭素を含む。あるいは、ポリ(アルキレングリコール)は、下記式(3)で表されるモノエンドキャップされたポリ(アルキレングリコール)であってもよい。
R6O−[CH2(CHR5)xCHR5O]n−H (3)
式中、R6は、1〜20個の炭素を含む一価の炭化水素ラジカルである。
【0025】
非限定的な例として、ポリエーテルアルコールは、HO−[CH2CHR5O]n−H構造を有するポリ(エチレングリコール)(PEG:poly(ethylene glycol))であってもよく、式中、エーテル反復単位CH2CHR5O(角括弧で示す)は、骨格酸素に連結した2個の骨格炭素を含む。また、ポリエーテルアルコールは、HO−[CH2CHR5CHR5O]n−H構造を持つポリ(プロピレングリコール)(PPG:poly(propylene glycol))であってもよく、式中、エーテル反復単位CH2CHR5Oは、骨格酸素に連結した3個の骨格炭素を含む。モノエンドキャップされたPEGの例には、市販されているモノメチルPEGがあり、一末端反復単位は、CH3OCH2CH2O−構造を持つ。モノ誘導体化ポリ(アルキレングリコール)の末端反復単位は、一般に下記一般式(4)で表されるより複雑な化学構造を含んでもよい。
Z’−[CH2(CHR5)xCHR5O]n〜1−H (4)
式中、Z’−は、末端反復単位の骨格炭素および酸素を含む一価のラジカルであり、2〜100個の炭素を有していてもよい。以下の非限定的な例は、PEGをベースとしたポリエーテルアルコール開始剤のモノ末端誘導体化について説明する。上記のように、PEGの一末端単位は、上記に示したように、式中、Z’−がMeOCH2CH2O−であるモノメチルPEGなど、1〜20個の炭素を持つ一価の炭化水素基でキャップしてもよい。別の例では、PEGの一末端単位は、式中のZ’−がOCHCH2CH2O−であってもよいアルデヒドでもよい。アルデヒドを第一級アミンで処理すると、式中のZ’−がR7N=CHCH2CH2O−であるイミンが生成される。R7は、水素、1〜30個の炭素のアルキル基、または6〜100個の炭素を含むアリール基から選択される一価のラジカルである。続いて、イミンを式中のZ’−がR7NHCH2CH2CH2O−であるアミンに還元してもよい。別の例では、PEGの一末端反復単位を式中のZ’−がHOOCCH2O−であるカルボン酸に酸化してもよい。公知の方法を用いて、このカルボン酸を式中のZ’−がR7OOCCH2O−になるエステルに変換してもよい。あるいは、カルボン酸をZ’がR7NHOCCH2O−になるアミドに変換してもよい。他の多くの誘導体も可能である。特定の実施形態では、Z’−は、特定の細胞型と相互作用する生物活性部分を含む基である。たとえば、Z’基は、肝細胞を特異的に認識するガラクトース部分を含んでもよい。この例では、Z’−は、下記構造を有していてもよく、
【0026】
【化3】
【0027】
式中、−L’−は、親水性ブロックの末端単位を含む2〜50個の炭素を含む二価の結合基である。L’の右側のハイフンは、疎水性ブロックに対する結合である。Z’は、マンノースなど他の生物活性部分を含んでもよい。
【0028】
開環重合の開始剤として使用されるポリエーテルアルコールは、ポリ(アルキレングリコール)、モノ誘導体化ポリ(アルキレングリコール)またはこれらの混合物を含んでもよい。ポリエーテルアルコール開始剤は、モノ誘導体化末端反復単位を含んでいてもよいし、あるいは、モノ誘導体化末端反復単位を開環重合後に形成してもよい。
【0029】
ポリエーテルアルコールの数平均分子量は、100〜100,000、さらに詳しくは100〜10000、さらに一層詳しくは100〜5000であってもよい。
【0030】
ブロック・コポリマーの疎水性ブロックは、開環重合により1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーから誘導される繰り返し単位を含む。第1の環式カルボニル・モノマーは、尿素基、潜在的カルボン酸基またはこれらの混合物を含むペンダント部分を含む。ペンダント部分は、疎水性ブロックの側鎖になる。実施形態の1つでは、第2の環式カルボニル・モノマーが存在する場合、尿素基、潜在的カルボン酸基またはこれらの混合物を含むペンダント部分を含まない。環式カルボニル・モノマーがさらに存在する場合、尿素基、潜在的カルボン酸基またはこれらの混合物を含むペンダント部分を任意に含んでもよい。環式カルボニル・モノマーのいくつかの一般式を下記に示す。
【0031】
環式カルボニル・モノマーは、下記一般式(5)を有していてもよく、
【0032】
【化4】
【0033】
式中、tは0〜6の整数であり、tが0である場合、4および6と表記された炭素は一緒に単結合によりに連結している。Yは各々
【0034】
【化5】
【0035】
から独立に選択される二価のラジカルであり、式中、ダッシュ「−」は環の結合点を示す。後者の2つの基は、−N(Q1)−および−C(Q1)2−とも表される。Q1は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を持つ基であり、
【0036】
【化6】
【0037】
式中、M1は、−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1または−SR1(前と同様、式中、ダッシュは結合点を表す)から選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである。R1は、1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から選択される一価のラジカルである。Q1基は各々独立に尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含んでもよい。Q1が水素でない場合、Q1は、開環重合後に疎水性ブロックの側鎖になる環式カルボニル環のペンダント部分を表す。尿素基は、下記式の一価の尿素ラジカル、
【0038】
【化7】
【0039】
または下記式の二価の尿素ラジカルを含んでもよく、
【0040】
【化8】
【0041】
式中、Raは独立に水素、1〜30個の炭素を含むアルキル基、または6〜30個の炭素を含むアリール基から選択される一価のラジカルを含む。尿素基は、ペンダント部分の末端の尿素基であってもよい。Q1基は各々独立に分岐でも、または非分岐でもよい。Q1基は各々独立にケトン基、アルデヒド基、アルケン基、アルキン基、3〜10個の炭素を含む環状脂肪族環、2〜10個の炭素を含む複素環式環、エーテル基、アミド基、エステル基および前述の追加官能基の組み合わせからなる群から選択される1つまたは複数の追加官能基を含んでもよい。複素環式環は、酸素、硫黄もしくは窒素またはその全部を含んでもよい。2つ以上のQ1基は一緒に環を形成してもよい。実施形態の1つでは、1つのQ1基は、一価の尿素ラジカルを含む。別の実施形態では、1つまたは複数のQ1基は、開環重合後にカルボン酸に変換することができる潜在的カルボン酸基を含む。実施形態の1つでは、第1の環式カルボニル・モノマーは、式(5)の化合物であり、式中、1つまたは複数のQ1基は、尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。
【0042】
環式カルボニル・モノマーは、下記一般式(6)を有していてもよく、
【0043】
【化9】
【0044】
式中、Q2は、水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を持つ基であり、
【0045】
【化10】
【0046】
式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1および−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、Q3は、水素、1〜30個の炭素を持つアルキル基、および6〜30個の炭素を持つアリール基からなる群から選択される一価のラジカルであり、R2は、1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである。Q2およびQ3が水素でない場合、Q2およびQ3は、開環重合後に疎水性ブロックの側鎖になる環式カルボニル環のペンダント部分を表す。また、−CO2R2基も、開環重合後に疎水性ブロック側鎖になる。Q2、Q3もしくはR2基またはその全部は各々独立に1つまたは複数の尿素基、1つまたは複数の潜在的カルボン酸基またはこれらの組み合わせを含んでもよい。尿素基は、上記のような一価の尿素ラジカルを含んでも、または二価の尿素ラジカルを含んでもよい。実施形態の1つでは、R2基は、尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。別の実施形態では、Q2は水素であり、Q3はメチルまたはエチル基であり、R2基は、尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。別の実施形態では、第1の環式カルボニル・モノマーは式(6)の化合物を含み、式中、1つまたは複数のQ1基は、尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。
【0047】
環式カルボニル・モノマーは、下記一般式(7)を有していてもよく、
【0048】
【化11】
【0049】
式中、Q4は各々水素、ハロゲン化物、カルボキシ基、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を持つ基であり、
【0050】
【化12】
【0051】
式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1または−SR1から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、uは1〜8の整数である。Q4が水素でない場合、Q4は開環重合後に疎水性ブロックの側鎖になる環式カルボニル環のペンダント部分を表す。Q4は各々独立に尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含んでもよい。このラクトン環は任意に炭素−炭素二重結合を含んでもよく、すなわち、任意に式(3)の
【0052】
【化13】
【0053】
は独立に
【0054】
【化14】
【0055】
を表してもよい。また、ラクトン環は、環カルボニルまたは環酸素に連結していないヘテロ原子、たとえば酸素、窒素、硫黄またはこれらの組み合わせを含んでもよく、すなわち、任意に式(3)の
【0056】
【化15】
【0057】
は独立に−O−、−S−、−NHR1−または−NR1R1−基を表してもよい。実施形態の1つでは、uは1〜6の整数であり、Q4は各々水素である。実施形態の1つでは、第1の環式カルボニル・モノマーは式(7)を持ち、式中、1つまたは複数のQ4基は尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。
【0058】
環式カルボニル・モノマーは、下記一般式(8)を有していてもよく、
【0059】
【化16】
【0060】
式中、Q5は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および下記構造を持つ基であり、
【0061】
【化17】
【0062】
式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1または−SR1から選択される一価のラジカルであり、式中、ダッシュは結合点を表し、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、Q6は各々水素、1〜30個の炭素を持つアルキル基、および6〜30個の炭素を持つアリール基からなる群から独立に選択される一価の基であり、vは各々独立に1〜6の整数である。Q5およびQ6が水素でない場合、Q5およびQ6は、開環重合後に疎水性ブロックの側鎖になる環式カルボニル環のペンダント部分を表す。Q5およびQ6基は各々独立に尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含んでもよい。実施形態の1つでは、vは各々1であり、Q5は各々水素であり、Q6は各々1〜6個の炭素を含む炭化水素基である。実施形態の1つでは、第1の環式カルボニル・モノマーは式(8)を持ち、式中、1つまたは複数のQ5基もしくはQ6基またはその両方は、尿素基、潜在的カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む。
【0063】
潜在的カルボン酸の非限定的な例として、温和な条件下で加水分解できるエステルがある(たとえば、トリフルオロエチルエステル、ペンタフルオロフェニルエステルまたはp−ニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、トリメチルシリルエステル、テトラヒドロピラニルエステル)。他の潜在的カルボン酸としては、熱に不安定な第三級エステルが挙げられる(たとえば、t−ブチルエステル)。さらに他の潜在的カルボン酸としては、水素および好適な触媒を用いて還元により開裂することができるエステルがある(たとえば、H/Pd−Cにより開裂するベンジルエステル)。実施形態の1つでは、潜在的カルボン酸基は、触媒による水素化でカルボン酸に変換することができる任意のカルボン酸エステルである。触媒による水素化でカルボン酸に変換することができる潜在的カルボン酸を含む環式カルボニル・モノマーの非限定的な例としてMTCOBnがある。
【0064】
【化18】
【0065】
MTCOBnのベンジルエステルは、開環重合後にH/Pd−Cを用いてカルボン酸に開裂される。別の実施形態では、疎水性ブロックの骨格がエステル反復単位もしくはカーボネート反復単位またはその両方を含む場合、潜在的カルボン酸は、メチル、エチル、またはより長い炭化水素鎖エステルを除外する。
【0066】
潜在的カルボン酸基の別の例は、アセタールで保護されたカルボン酸基であり、本明細書ではアセタールエステル基ともいう。アセタールエステル基は下記一般式(9)を持ち、
【0067】
【化19】
【0068】
式中、*−は、環式カルボニル部分に対する結合を表し、RcおよびRdは、独立に1〜20個の炭素を含む一価のラジカルである。実施形態の1つでは、Rcはメチルであり、Rdはエチルである。別の実施形態では、第2の環式カルボニル・モノマーはMTCOEEである。
【0069】
【化20】
【0070】
ポリマーに共重合されると、MTCOEEから誘導される反復単位は、酸性エンドソーム環境で容易に脱保護される側鎖アセタールエステルを含む。カチオン性のポリマーの得られたカルボン酸基は、細胞質に遊離すると、脱プロトン化できるため、キャリアの総電荷を中和し、生物活性材料の放出を促進する可能性がある。
【0071】
尿素基を含むペンダント部分を含む環式カルボニル・モノマーの非限定的な例として、MTCUが挙げられる。実施形態の1つでは、第1の環式カルボニル・モノマーはMTCUである。
【0072】
【化21】
【0073】
炭素5に結合したメチルおよびエステル基は各々ペンダント部分である。
【0074】
式(6)、(7)および(8)の追加の環式カルボニル・モノマーを表1に示す。
【0075】
【表1−1】
【0076】
【表1−2】
【0077】
【表1−3】
【0078】
環式カルボニル・モノマーは、モノマーから可能な限り多くの水を除去するように特に注意を払いながら、酢酸エチルなどの溶媒からの再結晶によるか、または他の公知の精製方法により精製してもよい。モノマーの含水量は、モノマーの1〜10,000重量ppm、1〜1,000重量ppm、1〜500重量ppm、最も具体的には1〜100重量ppmであってもよい。
【0079】
環式カルボニル・モノマーは、環式カルボニル・モノマーの同位体標識形態をさらに含んでもよい。これらは、13C、14C、15N、ジュウテリウム、トリチウムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素を含む官能基を含む。環式カルボニル・モノマーは、癌細胞などの特定の細胞型を標的とするのに好適な放射性部分をさらに含んでもよい。放射性部分は、重金属放射性同位元素を含んでもよい。
【0080】
上記の環式カルボニル・モノマーは開環重合して、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックに連結したブロック・コポリマーの疎水性ブロックを形成する。疎水性ブロックは、単一の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる反復単位を含むホモポリマー鎖を含んでもよく、この反復単位は尿素、カルボン酸、またはこれら混合物から選択される官能基を含む側鎖を含む。疎水性ブロックは、第1の環式カルボニル・モノマーと第2の環式カルボニル・モノマーとの混合物の開環重合により得られる第1の反復単位および第2の反復単位を含むランダム・コポリマー鎖を含んでもよい。第1の環式カルボニル・モノマーから誘導される第1の反復は、尿素、カルボン酸、またはこれら混合物から選択される官能基を含む側鎖部分を含む。実施形態の1つでは、第2の環式カルボニル・モノマーから誘導される第2の反復単位は、尿素基、カルボン酸基またはこれらの混合物を含む側鎖部分を含まない。
【0081】
疎水性ブロックは、第1の環式カルボニル・モノマーと第2の環式カルボニル・モノマーとの逐次開環重合により得られる第1のコア・ブロックおよび第2のコア・ブロックを含むコア・ブロック・コポリマーをさらに含んでもよい。第1の環式カルボニル・モノマーは、尿素、潜在的カルボン酸、またはこれら混合物から選択される官能基を含む部分を含む。重合については、任意の望ましい順序で行ってもよい。疎水性ブロックのコア・ブロックの数は限定されるものではないが、ミセル形成特性とミセルの薬剤内包特性および薬物放出特性とを劣化させないことを条件とする。たとえば、疎水性ブロックは、第1のコア・ブロックおよび第2のコア・ブロックを含んでもよい。第1のコア・ブロックは親水性ブロックに連結し、第1のコア・ブロックは、たとえば第1の環式カルボニル・モノマーから誘導される第1の反復単位を含む。第2のコア・ブロックは第1のコア・ブロックに連結し、第2のサブ・ブロックは、たとえば、第2の環式カルボニル・モノマーから誘導される第2の反復単位を含む。あるいは、第1のコア・ブロックは、第2の環式カルボニル・モノマーから誘導されてもよく、第2のコア・ブロックは、第1の環式カルボニル・モノマーから誘導されてもよい。実施形態の1つでは、第2の反復単位は、尿素基、カルボン酸基またはこれらの混合物を含む側鎖部分を含まない。
【0082】
疎水性ブロックは、アタクチック型で生成しても、シンジオタクチック型で生成しても、またはアイソタクチック型で生成してもよい。個々の立体規則性は、環式モノマー(単数または複数)、異性体純度および反応条件に依存する。
【0083】
ミセルを形成するブロック・コポリマーは、1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーであり、その少なくとも1つが尿素、潜在的カルボン酸、またはこれら混合物から選択される官能基を含む1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーと、触媒と、任意の促進剤と、任意の溶媒と、ポリエーテルアルコール開始剤とを含む反応混合物から調製する。開環重合は一般に、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気下にて反応器で行う。重合は、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ジオキサン、クロロホルムおよびジクロロエタンなどの不活性な溶媒を用いた溶液重合により行っても、またはバルク重合により行ってもよい。ROPの反応温度は、ほぼ周囲温度から250℃であってもよい。一般に、重合を行うには反応混合物を大気圧で0.5〜72時間加熱して第2の混合物を形成する。
【0084】
ROP重合の例示的な触媒として、金属酸化物、たとえば、テトラメトキシジルコニウム、テトラ−イソ−プロポキシジルコニウム、テトラ−イソ−ブトキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−t−ブトキシジルコニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−イソ−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−イソ−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、モノ−sec−ブトキシ−ジ−イソ−プロポキシアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、テトラエトキシチタン、テトラ−イソ−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、トリ−イソ−プロポキシガリウム、トリ−イソ−プロポキシアンチモン、トリ−イソ−ブトキシアンチモン、トリメトキシボロン、トリエトキシボロン、トリ−イソ−プロポキシボロン、トリ−n−プロポキシボロン、トリ−イソ−ブトキシボロン、トリ−n−ブトキシボロン、トリ−sec−ブトキシボロン、トリ−t−ブトキシボロン、トリ−イソ−プロポキシガリウム、テトラメトキシゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラ−イソ−プロポキシゲルマニウム、テトラ−n−プロポキシゲルマニウム、テトラ−イソ−ブトキシゲルマニウム、テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、テトラ−sec−ブトキシゲルマニウムおよびテトラ−t−ブトキシゲルマニウム;ハロゲン化化合物、たとえば、アンチモンペンタクロリド、塩化亜鉛、臭化リチウム、スズ(IV)クロリド、カドミウムクロリドおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル;アルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドおよびトリ−イソ−ブチルアルミニウム;アルキル亜鉛、たとえば、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛およびジイソプロピル亜鉛;第三級アミン、たとえば、トリアリルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミンおよびベンジルジメチルアミン;ヘテロポリ酸、たとえば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイタングステン酸およびこれらのアルカリ金属塩;ジルコニウム化合物、たとえば、塩化ジルコニウム酸、オクタン酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムおよび硝酸ジルコニウムが挙げられる。より詳細には、触媒は、オクタン酸ジルコニウム、テトラアルコキシジルコニウムまたはトリアルコキシアルミニウム化合物である。
【0085】
他のROP触媒としては、予測可能で制御された分子量、および狭い多分散性を有するポリマーの基盤となり得る、金属を含まない有機触媒が挙げられる。環式エステル、カーボネートおよびシロキサンのROPの有機触媒の例として、4−ジメチルアミノピリジン、ホスフィン、N−複素環式カルベン(NHC:N−heterocyclic carbene)、二官能性アミノチオ尿素、ホスファゼン、アミジンおよびグアニジンがある。実施形態の1つでは、触媒はN−(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)である。
【0086】
【化22】
【0087】
別の実施形態では、触媒および促進剤は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)などの同じ化合物である。別の金属を含まないROP触媒は、少なくとも1つの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−オール−2−イル(HFP)基を含む。単水素結合を供与する触媒は、下記式(10)を持つ。
R2−C(CF3)2OH (10)。
R2は水素、または1〜20個の炭素を持つ一価のラジカル、たとえば、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、置換ヘテロシクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、またはこれらの組み合わせを表す。例示的な単水素結合を供与する触媒を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
二重水素結合を供与する触媒は、下記一般式(11)で表されるHFP基を2つ持ち、
【0090】
【化23】
【0091】
式中、R3は、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキレン基、置換シクロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、置換ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、置換アリーレン基またはこれらの組み合わせなど1〜20個の炭素を含む二価のラジカル架橋基である。式(11)の代表的な二重水素結合触媒としては、表3に示したものが挙げられる。特定の実施形態では、R3はアリーレンまたは置換アリーレン基であり、HFP基は芳香環上で相互にメタ位を占める。
【0092】
【表3】
【0093】
一実施形態では、触媒は、4−HFA−St、4−HFA−Tol、HFTB、NFTB、HPIP、3,5−HFA−MA、3,5−HFA−St、1,3−HFAB、1,4−HFABおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0094】
また、担体に結合したHFP含有基を含む触媒も意図している。一実施形態では、担体として、ポリマー、架橋ポリマー・ビーズ、無機粒子、または金属粒子がある。HFP含有ポリマーは、HFP含有モノマー(たとえば、メタクリレート・モノマー3,5−HFA−MAまたはスチリル・モノマー3,5−HFA−St)の直接重合など公知の方法により形成することができる。直接重合(またはコモノマーとの重合)が可能なHFP含有モノマーの官能基には、アクリレート、メタクリレート、α,α,α−トリフルオロメタクリレート、α−ハロメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ノルボルネン、ビニル、ビニルエーテル、および当該技術分野において公知の他の基がある。こうした重合可能なHFP含有モノマーの典型的な例については、Ito et al.,Polym.Adv.Technol.2006,17(2),104−115,Ito et al.,Adv.Polym.Sci.2005,172,37−245,Ito et al.,米国特許出願公開第20060292485号,Maeda et al.国際公開第2005098541号,Allen et al.米国特許出願公開第20070254235号、およびMiyazawa et al.国際公開第2005005370号で確認することができる。あるいは、結合基を介してHFP含有基をポリマーまたは担体に化学的に結合することにより、前形成ポリマーおよび他の固体担体表面を修飾してもよい。こうしたポリマーまたは担体の例については、M.R.Buchmeiser,ed.「Polymeric Materials in Organic Synthesis and Catalysis,」Wiley−VCH,2003,M.Delgado and K.D.Janda「Polymeric Supports for Solid Phase Organic Synthesis,」Curr.Org.Chem.2002,6(12),1031−1043,A.R.Vaino and K.D.Janda「Solid Phase Organic Synthesis:A Critical Understanding of the Resin」, J.Comb.Chem.2000,2(6),579−596,D.C.Sherrington「Polymer−supported Reagents,Catalysts,and Sorbents:Evolution and Exploitation −A Personalized View,」J.Polym.Sci.A.Polym.Chem.2001,39(14),2364−2377,およびT.J.Dickerson et al.「Soluble Polymers as Scaffold for Recoverable Catalysts and Reagents,」Chem.Rev.2002,102(10),3325−3343に引用されている。結合基の例として、C1〜C12アルキル、C1〜C12ヘテロアルキル、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、エステル基、アミド基またはこれらの組み合わせが挙げられる。また、ポリマーまたは担体表面上の逆電荷の部位へのイオン会合により結合した荷電HFP含有基を含む触媒も意図している。
【0095】
ROP反応混合物は、少なくとも1つの触媒、さらに適切な場合に複数の触媒を一緒に含む。ROP触媒は、環式カルボニル・モノマーに対して1/20〜1/40,000モル、好ましくは1/1,000〜1/20,000モルの比率で加える。
【0096】
開環重合は、促進剤、特に窒素塩基の存在下で行う。例示的な窒素塩基促進剤については下記に示し、表4に示すように、ピリジン(Py)、N,N−ジメチルアミノシクロヘキサン(Me2NCy)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DAMP)、トランス1,2−ビス(ジメチルアミノ)シクロヘキサン(TMCHD)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(MTBD)、(−)−スパルテイン(Sp)、1,3−ビス(2−プロピル)−4,5−ジメチルイミダゾール−2−イリデン(Im−1)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−2)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン(Im−3)、1,3−ビス(1−アダマンチル)イミダゾール−2−イリデン(Im−4)、1,3−ジ−i−プロピルイミダゾール−2−イリデン(Im−5)、1,3−ジ−t−ブチルイミダゾール−2−イリデン(Im−6)、1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−7)、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、1,3−ビス(2,6−ジ−i−プロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(Im−8)またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0097】
【表4】
【0098】
実施形態の1つでは、促進剤は2または3個の窒素を有し、各々が、たとえば(−)−スパルテイン構造のようにルイス塩基として関与することができる。強塩基である方が重合速度を高めるのが一般的である。
【0099】
開環重合は、溶媒を使用してまたは使用せずに、より詳細には溶媒を用いて行ってもよい。任意の溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、石油エーテル、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、または前述の溶媒の1つを含む組み合わせが挙げられる。溶媒が存在する場合、好適な環式カルボニル・モノマーの濃度は、1リットル当たり約0.1〜5モル、より詳細には1リットル当たり約0.2〜4モルである。特定の実施形態では、開環重合の反応混合物は溶媒を含まない。
【0100】
開環重合は、ほぼ周囲温度またはそれ以上の温度、さらに詳しくは15℃〜200℃、より詳細には20℃〜200℃の温度で行ってもよい。バルクで反応を行う場合、重合は、50℃またはそれ以上、より詳細には100℃〜200℃の温度で行う。反応時間は溶媒、温度、撹拌速度、圧力および機器によって異なるが、一般に重合は、1〜100時間以内に終了する。
【0101】
溶液で行うか、それともバルクで行うかに関わらず、重合は、100〜500MPa(1〜5atm)の圧力、より典型的には100〜200MPa(1〜2atm)の圧力で不活性(すなわち、乾燥)雰囲気にて行う。反応の終了時に、減圧して溶媒を除去してもよい。
【0102】
窒素塩基促進剤は、環式カルボニル・モノマーの全モル数に対して0.1〜5.0mol%、0.1〜2.5mol%、0.1〜1.0mol%、または0.2〜0.5mol%の量で存在する。
【0103】
ポリエーテルアルコール開始剤の量については、アルコール開始剤のヒドロキシル基1つ当たりの当量分子量に基づき計算する。ヒドロキシル基は、環式カルボニル・モノマーの全モル数に対して0.001〜10.0mol%、0.1〜2.5mol%、0.1〜1.0mol%、および0.2〜0.5mol%の量で存在する。たとえば、開始剤の分子量が100g/moleであり、開始剤が2つのヒドロキシル基を有する場合、ヒドロキシル基1つ当たりの当量分子量は、50g/moleである。重合にモノマー1モル当たり5mol%ヒドロキシル基を必要とする場合、開始剤の量は、モノマー1モル当たり0.05×50=2.5gである。
【0104】
特定の実施形態では、触媒は、開始剤のヒドロキシル基1つ当たりの当量分子量に対して約0.2〜20mol%の量で存在し、窒素塩基促進剤は0.1〜5.0mol%の量で存在し、開始剤のヒドロキシル基は0.1〜5.0mol%の量で存在する。
【0105】
上記のように、開環重合は、リビング・ポリマー・セグメントを含む最初の疎水性ブロックを形成する。実施形態の1つでは、疎水性ブロックの1つの骨格繰り返し単位は、カーボネート繰り返し単位である。上記のように、疎水性ブロックはそれ自体、1つまたは複数のブロック・セグメントを含んでもよく、ブロック・セグメントは各々独立に、たとえば、ポリエステル・ホモポリマー、ランダム・ポリエステル・コポリマー、ポリカーボネート・ホモポリマー、ランダム・ポリカーボネート・コポリマー、またはランダム・ポリエステルカーボネート・コポリマーを含む骨格を含んでもよい。疎水性ブロックは、末端のヒドロキシル基、末端のチオール基、または末端のアミン基を含んでもよく、その各々がROP鎖成長を開始することができる。一部の環境では、その後の鎖成長を防止する、もしくは他の方法で骨格を安定化する、またはその両方を行うように最初の疎水性ブロックをエンドキャップして、エンドキャップされた疎水性ブロックを形成することが望ましい場合がある。エンドキャップ材料および技術は、ポリマー化学において十分確立している。これらには、たとえば、ヒドロキシルを末端に持つ第1のポリマーを酸無水物、酸クロリドまたは反応性エステルで処理して前駆体ポリマーを形成することにより末端のヒドロキシル基をエステルに変換することがある。実施形態の1つでは、疎水性ブロックを酢酸無水物で処理し、鎖をアセチル基でエンドキャップする。
【0106】
親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含むブロック・コポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィにより判定して少なくとも2500g/mol、さらに詳しくは4000g/mol〜150000g/mol、さらに一層詳しくは10000g/mol〜50000g/molの数平均分子量Mnを有していてもよい。実施形態の1つでは、ブロック・コポリマーは、10000〜20000g/moleの数平均分子量Mnを有する。また、ブロック・コポリマーは、一般に1.01〜1.35、より詳細には1.1〜1.30、より一層詳細には1.1〜1.25という狭い多分散性指数(PDI:polydispersity index)を有する。
【0107】
触媒は、選択的沈殿法により、あるいは固体担持触媒の場合には、単純な濾過で除去することができる。ブロック・コポリマーは、第1のポリマーおよび残留触媒の総重量に対して0wt.%を超える量で残留触媒を含んでもよい。また、残留触媒の量は、第1のポリマーおよび残留触媒の総重量に対する20wt.%未満、15wt.%未満、10wt%未満、5wt.%未満、1wt.%未満または最も具体的には0.5wt.%未満であってもよい。
【0108】
最初のまたはエンドキャップされた疎水性ブロックは、ベンジルエステル形態の保護されたカルボン酸など潜在的カルボン酸基を含んでもよい。この例では、最初のまたはエンドキャップされた疎水性ブロックを、H/Pd−Cを使用して脱保護し、ペンダント・カルボン酸基を含む脱保護された疎水性ブロックを形成することができる。保護されたカルボン酸がt−ブチルエステルなど熱に不安定なカルボン酸エステルである場合、最初のまたはエンドキャップされた疎水性ブロックを加熱して、脱保護された疎水性ブロックを形成することができる。保護されたカルボン酸がトリフルオロエチルエステルなど加水分解に不安定である場合、最初のまたはエンドキャップされた疎水性ブロックを温和な水性酸または塩基で脱保護して、脱保護された疎水性ブロックを形成することができる。特定の実施形態では、保護されたカルボン酸は、ベンジルエステルである。
【0109】
また、生分解性両親媒性ブロック・ポリマーを形成する方法も開示する。この方法は、ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合によりブロック・コポリマーを形成することを含み、ブロック・コポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、親水性ブロックはポリエーテルアルコールから誘導され、疎水性ブロックは尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む第1の反復単位を含む。疎水性ブロックは共有結合した生物活性材料を含む側鎖を含まず、ブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを水中で形成する。実施形態の1つでは、第1の反復単位は、MTCUから誘導される。この方法は、親水性ブロックの末端単位を誘導体化することをさらに含んでもよく、誘導体化された末端単位は、特定の細胞型と相互作用することができる部分を含む。誘導体化された末端単位は、たとえば、肝細胞と相互作用するガラクトース部分を含んでもよい。この方法は、好適な触媒を使用した潜在的カルボン酸の水素化により疎水性ブロックの任意の側鎖潜在的カルボン酸基をカルボン酸に変換することをさらに含んでもよい。
【0110】
生分解性両親媒性ブロック・コポリマーを調製するより具体的な方法は、尿素基を含むペンダント部分を含む第1の環式カルボニル・モノマーと、触媒と、促進剤と、ポリエーテルアルコール開始剤と、任意の溶媒とを含む反応混合物を形成すること;1つまたは複数の環式カルボニル・モノマーの開環重合により両親媒性ブロック・コポリマーの最初の疎水性ブロックを形成すること;任意に疎水性ブロックをエンドキャップすること;親水性ブロックの末端単位を誘導体化することにより、生物活性部分を含む誘導体化された末端単位を形成すること、および任意に疎水性ブロックの保護されたいずれかのカルボン酸基を脱保護して両親媒性ブロック・コポリマーを形成することを含む。実施形態の1つでは、ポリエーテルアルコール開始剤は、ポリ(エチレングリコール)もしくはポリ(プロピレングリコール)またはその両方から誘導されるモノアルコールである。疎水性ブロックは共有結合した生物活性材料を含む側鎖を含まず、ブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを水中で形成する。別の実施形態では、両親媒性ブロック・コポリマーの最初の疎水性ブロックの形成は、第1の環式カルボニル・モノマーと第2の環式カルボニル・モノマーとを逐次開環重合して、コア・ブロック・コポリマーを含む疎水性ブロックを形成することにより行い、コア・ブロック・コポリマーは、親水性ブロックに連結した、第1の反復単位を含む第1のコア・ブロックと、第2のカルボニル・モノマーから誘導される第2の反復単位を含む、第1のコア・ブロックに連結した第2のコア・ブロックとを含む。
【0111】
両親媒性ブロック・コポリマーは、ブロック・コポリマー1グラム当たり1〜250ミリモルのカルボン酸、より詳細にはブロック・コポリマー1グラム当たり3ミリモル超から50ミリモルのカルボン酸、より一層詳細にはブロック・コポリマー1グラム当たり3〜40ミリモルのカルボン酸を含んでもよい。両親媒性ブロック・コポリマーは、ブロック・コポリマー1グラム当たり1〜250ミリモルの尿素官能基、より詳細にはブロック・コポリマー1グラム当たり3〜50ミリモルの尿素官能基、より一層詳細にはブロック・コポリマー1グラム当たり3〜40ミリモルの尿素官能基を含んでもよい。
【0112】
両親媒性ブロック・コポリマーは、水溶液中で自己組織化し、He−Neレーザ・ビームを備えた動的光散乱(ブルックヘブン・インスツルメント・コーポレーション(Brookhaven Instrument Corp.)、ホルツビル(Holtsville)、ニューヨーク州,米国)により658nm(散乱角:90°)で測定すると、10nm〜500nm、10nm〜250nm、より詳細には50nm〜200nm、50nm〜150nm、50nm〜120nm、より一層詳細には50nm〜100nmの平均粒度を有するミセルを形成する。粒度の測定はサンプルごとに5回繰り返し、粒度を5つの測定値の平均として報告する。前述の粒度では、水溶液のpHを5.0〜8.0とすればよい。
【0113】
両親媒性ブロック・コポリマーは、0.01〜300mg/リットル、より詳細には0.1〜200mg/リットル、より一層詳細には0.1〜100mg/リットルの臨界ミセル濃度(CMC)を有する。ミセルは、上記の方法のいずれかにより調製された1つまたは複数の両親媒性ブロック・コポリマーを含んでもよい。実施形態の1つでは、ミセルは、0%〜15%、0%〜10%、0%〜5%、またはより詳細には0%〜1%の細胞毒性を示す。
【0114】
ミセルは、第2の生分解性生体適合性ブロック・コポリマーを含む混合ミセルであってもよく、第2のブロック・コポリマーは、第2のポリエーテルアルコールから誘導される第2の親水性ブロックと、第2のポリエーテルアルコールにより開始される第2の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第2の疎水性ブロックとを含み、第2の疎水性ブロックの側鎖は、共有結合した生物活性材料を含まない。実施形態の1つでは、第2のブロック・コポリマーは、側鎖カルボン酸基を含む第2の疎水性ブロックを含む。別の実施形態では、疎水性ブロックのカルボン酸基は、ベンジルエステルを含む環式カルボニル化合物の開環重合、続いて好適な触媒によるベンジルエステルの水素化により得られる。
【0115】
両親媒性ブロック・コポリマーは、遺伝子、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、薬剤またはこれらの組み合わせなど生物活性のある荷物材料を含む内包ミセルを形成する。pH5.0〜8.0の水溶液中、ミセルは、He−Neレーザ・ビームを備えた動的光散乱(ブルックヘブン・インスツルメント・コーポレーション,ホルツビル,ニューヨーク州、米国)により658nm(散乱角:90°)で測定すると、10nm〜500nm、10nm〜250nm、より詳細には50nm〜200nm、50nm〜150nm、50nm〜120nm、より一層詳細には50nm〜100nmの平均粒度を有する。粒度の測定はサンプルごとに5回繰り返し、粒度を5つの測定値の平均として報告する。内包ミセルは、たとえば、内包ミセルの全乾燥重量に対して0.1〜90wt.%、より詳細には5〜50wt.%、より一層詳細には15〜50wt.%の生物活性材料を含んでもよい。ミセルは、上記の方法を用いて調製される1つまたは複数の両親媒性ブロック・コポリマーを含んでもよい。実施形態の1つでは、生物活性のある荷物材料は薬剤である。
【0116】
また、細胞を処置するための内包ミセルを調製する方法であって、生分解性生体適合性ブロック・コポリマーを含む第1の水性混合物を、生物活性のある荷物材料を含む第2の水性混合物と接触させて、内包ミセルを含む第3の混合物を形成することを含み、内包ミセルは、pH5.0〜8.0で10nm〜500nmの粒度を有する方法も開示する。生分解性生体適合性ブロック・コポリマーは、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックと、ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含み、第1の反復単位は、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含み、疎水性ブロックの側鎖は、共有結合した生物活性材料を含まず、ブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適である。実施形態の1つでは、親水性ブロックは、特定の細胞型と相互作用することができる部分を含む誘導体化された末端単位を含む。別の実施形態では、誘導体化された末端単位は、ガラクトース部分またはマンノース部分を含む。別の実施形態では、生物活性のある荷物材料はドキソルビシンである。
【0117】
さらに、細胞を処置する方法であって、内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含み、内包ミセルは、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、およびポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる、尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む第1の反復単位を含む疎水性ブロックを含む生分解性生体適合性第1のブロック・コポリマーと、生物活性のある荷物材料とを含む方法も開示する。第1のブロック・コポリマーは、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、疎水性ブロックの側鎖は生物活性材料に共有結合していない。親水性ブロックは任意に、特定の細胞型と相互作用することができる部分を含む誘導体化された末端単位を含んでもよい。生物活性のある荷物は、単一の生物活性材料を含んでも、または生物活性材料の混合物を含んでもよい。生物活性のある荷物は、薬剤、たとえば、キソルビシンであってもよい。ポリエーテルアルコールの末端単位は、特定の細胞型と選択的に相互作用する部分を含んでもよい。実施形態の1つでは、末端単位は、ガラクトース部分またはマンノース部分を含む。細胞は、インビトロで接触させても、エキソビボで接触させても、またはインビボで接触させてもよい。接触させると、0%〜20%、0%〜15%、0%〜10%、0%〜5%、0%〜2%、またはより詳細には0%〜1%の細胞毒性が誘導される。実施形態の1つでは、接触させても細胞毒性が誘導されない。
【0118】
本両親媒性ブロック・コポリマーを用いて送達することができる薬剤の種類は多くあり、100ダルトン〜約1,000ダルトンの大きさの範囲の低分子量化合物、および約1,000ダルトン〜約100,000ダルトンを超える大きさの範囲のペプチドおよびタンパク質薬剤などより大きな高分子薬剤をどちらも含む。例示的なタンパク質薬剤には、ペプチドホルモン、たとえば、インスリン、グルカゴン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、バゾプレッシン、レニン、プロラクチン、成長ホルモン、絨毛性ゴナドトロピンなどのゴナドトロピン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンおよび黄体化ホルモン;生理活性酵素、たとえば、トランスフェラーゼ、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、第VIII因子、プラスミノーゲン活性化因子;ならびにタンパク質因子を含む他の治療薬、たとえば、上皮増殖因子、インスリン様成長因子、腫瘍壊死因子、トランスフォーミング増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、エリスロポエチン、コロニー刺激因子、骨形成タンパク質、インターロイキンおよびインターフェロンがある。例示的な非タンパク質巨大分子として、多糖類、核酸ポリマー、ならびにビンブラスチン、ビンクリスチン、タキソールおよび同種のものなど植物生成物を含む治療用の二次代謝産物が挙げられる。
【0119】
他の例示的な薬剤としては、アスピリン、ジフルニサル、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イブプロフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、スプロフェン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、ルミラコキシブ、オキシフェンブタゾン、ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカムおよびテノキシカムが挙げられる。ステロイド系抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾンおよびアルドステロンが挙げられる。化学療法剤としては、ドキソルビシン、ならびにDNAアルキル化剤、たとえばメルファラン、クロラムブシル、ダカルバジン、テモゾロミドおよびストレプトゾトシンが挙げられる。代謝拮抗剤としては、メトトレキサート、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、フロクスウリジンおよびゲムシタビンが挙げられ、アルカロイド剤としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシンおよびトポイソメラーゼが挙げられる。阻害剤としては、エトポシド、テニポシド、イリノテカンおよびトポテカンが挙げられる。タキサンとしては、パクリタキセルおよびドセタキセルが挙げられる。抗凝固薬として、ワルファリン、アセノクマロール、フェンプロクモン、アルガトロバンおよびキシメラガトランが挙げられる。
【0120】
なお他の例示的な市販されている薬剤としては、13−シス−レチノイン酸、2−CdA、2−クロロデオキシアデノシン、5−アザシチジン、5−フルオロウラシル、5−FU、6−メルカプトプリン、6−MP、6−TG、6−チオグアニン、アブラキサン、Accutane(商標)、アクチノマイシン−D、Adriamycin(商標)、Adrucil(商標)、Afinitor(商標)、Agryliri(商標)、Ala−Cort(商標)、アルデスロイキン、アレムツズマブ、ALIMTA、アリトレチノイン、Alkaban−AQ(商標)、Alkeran(商標)、オール・トランスレチノイン酸、αインターフェロン、アルトレタミン、アメトプテリン、アミフォスチン、アミノグルテチミド、アナグレリド、Anandron(商標)、アナストロゾール、アラビノシルシトシン、Ara−C、Aranesp(商標)、Aredia(商標)、Arimidex(商標)、Aromasin(商標)、Arranon(商標)、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ATRA、Avastin(商標)、アザシチジン、BCG、BCNU、ベンダムスチン、ベバシズマブ、ベキサロテン、BEXXAR(商標)、ビカルタミド、BiCNU、Blenoxane(商標)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、Busulfex(商標)、C225、ロイコボリンカルシウム、Campath(商標)、Camptosar(商標)、カンプトテシン−11、カペシタビン、Carac(商標)(商標)、カルボプラチン、カルムスチン、カルムスチン・ウエハ、Casodex(商標)、CC−5013、CCI−779、CCNU、CDDP、CeeNU、Cerubidine(商標)、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、Citrovorum因子、クラドリビン、コルチゾン、Cosmegen(商標)、CPT−11、シクロホスファミド、Cytadren(商標)、シタラビン、シタラビンリポソーマル、Cytosar−U(商標)、Cytoxan(商標)、ダカルバジン、ダコゲン、ダクチノマイシン、ダルベポエチン・アルファ、ダサチニブ、ダウノマイシン、ダウノルビシン、塩酸ダウノルビシン、ダウノルビシンリポソーマル、DaunoXome(商標)、デカドロン、デシタビン、Delta−Cortef(商標)、Deltasone(商標)、デニロイキンジフチトクス、DepoCyt(商標)、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、デキサソン、デクスラゾキサン、DHAD、DIC、ジオデキス、ドセタキセル、Doxil(商標)、ドキソルビシン、ドキソルビシンリポソーマル、Droxia(商標)、DTIC、DTIC−Dome(商標)、Duralone(商標)、Efudex(商標)、Eligard(商標)、Ellence(商標)、Eloxatin(商標)、Elspar(商標)、Emcyt(商標)、エピルビシン、エポエチン・アルファ、アービタックス、エルロチニブ、エルウィニアL−アスパラギナーゼ、エストラムスチン、エチオール、Etopophos(商標)、エトポシド、リン酸エトポシド、Eulexin(商標)、エベロリムス、Evista(商標)、エキセメスタン、Fareston(商標)、Faslodex(商標)、Femara(商標)、フィルグラスチム、フロクスウリジン、Fludara(商標)、フルダラビン、Fluoroplex(商標)、フルオロウラシル、フルオロウラシル(クリーム)、フルオキシメステロン、フルタミド、フォリン酸、FUDR(商標)、フルベストラント、G−CSF、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ツズマブオゾガマイシン、ジェムザール、Gleevec(商標)、Gliadel(商標)ウエハ、GM−CSF、ゴセレリン、顆粒球−コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Halotestin(商標)、Herceptin(商標)、ヘキサドロール、Hexalen(商標)、ヘキサメチルメラミン、HMM、Hycamtin(商標)、Hydrea(商標)、Hydrocort Acetate(商標)、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、リン酸ハイドロコートン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブ、イブリツモマブチウキセタン、Idamycin(商標)、イダルビシン、Ifex(商標)、IFN−α、イホスファミド、IL−11 IL−2、メシル酸イマチニブ、イミダゾールカルボキサミド、インターフェロンα、インターフェロンα−2b(PEGコンジュゲート)、インターロイキン−2、インターロイキン−11、Intron A(商標)(インターフェロンα−2b)、Iressa(商標)、イリノテカン、イソトレチノイン、イクサベピロン、Ixempra(商標)、K Kidrolase(商標)、Lanacort(商標)、ラパチニブ、L−アスパラギナーゼ、LCR、レナリドマイド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイケラン、Leukine(商標)、ロイプロリド、ロイロクリスチン、Leustatin(商標)、リポソームAra−C、Liquid Pred(商標)、ロムスチン、L−PAM、L−サルコリシン、Lupron(商標)、Lupron Depot(商標)、Matulane(商標)、マキシデックス、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、Medralone(商標)、Medrol(商標)、Megace(商標)、メゲストロール、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、Mesnex(商標)、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メチルプレドニゾロン、Meticorten(商標)、マイトマイシン、マイトマイシン−C、ミトキサントロン、M−Prednisol(商標)、MTC、MTX、Mustargen(商標)、ムスチン、Mutamycin(商標)、Myleran(商標)、Mylocel(商標)、Mylotarg(商標)、Navelbine(商標)、ネララビン、Neosar(商標)、Neulasta(商標)、Neumega(商標)、Neupogen(商標)、Nexavar(商標)、Nilandron(商標)、ニルタミド、Nipent(商標)、ナイトロジェンマスタード、Novaldex(商標)、Novantrone(商標)、オクトレオチド、酢酸オクトレオチド、Oncospar(商標)、Oncovin(商標)、Ontak(商標)、Onxal(商標)、オプレベルキン、Orapred(商標)、Orasone(商標)、オキサリプラチン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、パミドロネート、パニツムマブ、Panretin(商標)、Paraplatin(商標)、Pediapred(商標)、PEGインターフェロン、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、PEG−INTRON(商標)、PEG−L−アスパラギナーゼ、ペメトレキセド、ペントスタチン、フェニルアラニンマスタード、Platinol(商標),Platinol−AQ(商標)、プレドニゾロン、プレドニゾン、Prelone(商標)、プロカルバジン、PROCRIT(商標)、Proleukin(商標)、プロリフェプロスパン20カルムスチンインプラント、Purinethol(商標)、ラロキシフェン、Revlimid(商標)、Rheumatrex(商標)、Rituxan(商標)、リツキシマブ、Roferon−A(商標)(インターフェロンα−2a)Rubex(商標)、塩酸ルビドマイシン、Sandostatin(商標)、Sandostatin LAR(商標)、サルグラモスチム、Solu−Cortef(商標)、Solu−Medrol(商標)、ソラフェニブ、SPRYCEL(商標)、STI−571、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、Sutent(商標)、タモキシフェン、Tarceva(商標)、Targretin(商標)、Taxol(商標)、Taxotere(商標)、Temodar(商標)、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、TESPA、サリドマイド、Thalomid(商標)、TheraCys(商標)、チオグアニン、Thioguanine Tabloid(商標)、チオホスファミド、Thioplex(商標)、チオテパ、TICE(商標)、Toposar(商標)、トポテカン、トレミフェン、Torisel(商標)、トシツモマブ、トラスツズマブ、Treanda(商標)、トレチノイン、Trexall(商標)、Trisenox(商標)、TSPA、TYKERB(商標)、VCR、Vectibix(商標)、Velban(商標)、Velcade(商標)、VePesid(商標)、Vesanoid(商標)、Viadur(商標)、Vidaza(商標)、ビンブラスチン、硫酸ビンブラスチン、Vincasar Pfs(商標)、ビンクリスチン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、VLB、VM−26、ボリノスタット、VP−16、Vumon(商標)、Xeloda(商標)、Zanosar(商標)、Zevalin(商標)、Zinecard(商標)、Zoladex(商標)、ゾレドロン酸、ゾリンザおよびゾメタが挙げられる。
【0121】
上記の内包ミセルで処置することができる細胞の種類については、限定されるものではない。特に、細胞は、真核細胞、哺乳動物細胞、より詳細には齧歯動物でも、またはヒト細胞でもよい。細胞は、胚外もしくは胚性幹細胞、全能性もしくは多能性細胞、分裂もしくは非分裂細胞、実質もしくは上皮細胞、不死化もしくは形質転換細胞または同種のものなど様々な組織に由来してもよい。細胞は幹細胞でも、または分化細胞でもよい。分化する細胞型としては、脂肪細胞、線維芽細胞、筋細胞、心筋細胞、内皮、樹状細胞、ニューロン、グリア、マスト細胞、血液細胞および白血球(たとえば、赤血球、巨核球、B細胞、T細胞およびナチュラルキラー細胞などのリンパ球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、血小板、顆粒球)、上皮細胞、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、肝実質細胞、および内分泌腺または外分泌腺の細胞のほか、感覚細胞が挙げられる。
【0122】
上記の内包ミセルは、非ウイルス性トランスフェクション・ベクターとして使用してもよい。標的遺伝子は、任意の特定の種類の標的遺伝子またはヌクレオチド配列に限定されるものではない。たとえば、標的遺伝子は、細胞遺伝子、内在性遺伝子、オンコジーン、導入遺伝子、または翻訳RNAおよび非翻訳RNAを含むウイルス遺伝子であってもよい。考えられる例示的な標的遺伝子として、転写因子および発生遺伝子(たとえば、接着分子、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、Wntファミリー・メンバー、Paxファミリー・メンバー、ウィングド・ヘリックス・ファミリー・メンバー、Hoxファミリー・メンバー、サイトカイン/リンホカインおよびその受容体、増殖/分化因子およびその受容体、神経伝達物質およびその受容体);オンコジーン(たとえば、ABLI、BCLI、BCL2、BCL6、CBFA2、CBL、CSFIR、ERBA、ERBB、ERBB2、ETSI、ETV6、FGR、FOS、FYN、HCR、HRAS、JUN、KRAS、LCK、LYN、MDM2、MLL、MYB、MYC、MYCLI、MYCN、NRAS、PIMI、PML、RET、SKP2、SRC、TALI、TCL3およびYES);腫瘍抑制因子遺伝子(たとえば、APC、BRAI、BRCA2、CTMP、MADH4、MCC、NFI、NF2、RBI、TP53およびWTI);ならびに酵素(たとえば、ACPデサチュラーゼおよびヒドロキシラーゼ、ADP−グルコース・ピロホリラーゼ、ATPアーゼ、アルコール・デヒドロゲナーゼ、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、カタラーゼ、シクロオキシゲナーゼ、デカルボキシラーゼ、デキストリナーゼ、DNAおよびRNAポリメラーゼ、ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、GTPアーゼ、ヘリカーゼ、インテグラーゼ、インスリナーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、キナーゼ、ラクターゼ、リパーゼ、リポキシゲナーゼ、リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ホスファターゼ、ホスホリパーゼ、ホスホリラーゼ、プロテイナーゼおよびペプチダーゼ、リコンビナーゼ、逆転写酵素、RNA成分もしくはタンパク質成分またはその両方を含むテロメラーゼ、ならびにトポイソメラーゼ)が挙げられる。
【0123】
有機分子触媒的開環重合により生成される生分解性両親媒性ブロック・コポリマーは、効果的な薬物送達システムになる。生分解性尿素もしくはカルボン酸またはその両方の組み合わせを含む、疎水性ブロックの反復単位は、多様な大きさおよび官能性を持つ生物活性材料に対して内包ミセルの結合強度を、したがって放出特性を調整する際に汎用性を与える。両親媒性ブロック・コポリマーは、低分子薬剤およびタンパク質の送達、さらに薬剤と遺伝子、または薬剤とタンパク質との同時送達に使用してもよい。
【0124】
上記のポリマーに基づくミセルの調製および使用について、以下の例によりさらに説明する。
【実施例】
【0125】
材料。
購入した材料を表5に示す。
【0126】
【表5】
【0127】
フルカ(Fluka)から入手した5000g/mol(MPEG1)および2400g/mol(MPEG2)の数平均分子量を有するモノメチルPEGを使用前に共沸蒸留し、トルエンから再結晶化させた。トリメチレンカーボネート(ベーリンガー・インゲルハイム(Boehringer−Ingelheim))をトルエンから共沸蒸留させ、使用前に再結晶化した。スパルテインを使用前に水素化カルシウムから蒸留させた。安息香酸、エタノールアミンおよびフェニルイソチオシアネート(すべてアルドリッチ(Aldrich))については、入手したまま使用した。イノベイティブ(Innovative)製の溶媒乾燥システムを使用して乾燥THFおよびCH2Cl2を得た。
【0128】
R.C.Pratt,B.G.G.Lohmeijer,D.A.Long,P.N.P.Lundberg,A.Dove,H.Li,C.G.Wade,R.M.Waymouth,and J.L.Hedrick,Macromolecules,2006,39(23),7863−7871が報告したようにN−(3,5−トリフルオロメチル)フェニル−N’−シクロヘキシル−チオ尿素(TU)を調製し、CaH2で乾燥させたTHF中で撹拌して乾燥させ、濾過し、真空下で溶媒を除去した。
【0129】
解析方法。
1H−NMRスペクトルは、Bruker Avance 400装置を用い400MHzで得た。ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)は、細孔サイズを大きくしながら(10Å、100Å、1000Å、105Å、106Å)直列に連結した5マイクロメートルのWatersカラム(300mm×7.7mm)を4つ備えたWatersクロマトグラフ、Waters 410示差屈折計、および996フォトダイオードアレイ検出器を使用し、THFまたはクロロホルムを用いて実施し、ポリスチレン標準で校正した(750−2×106g mol−1)。
【0130】
モノマーの調製。
官能性生分解性モノマーの特に有用なシントンとして、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(bisMPA)から誘導される環状カーボネート・モノマーのいわゆるMTCファミリーがある。BisMPAは、スキーム1に示すように5−メチル−5−カルボキシル−1,3−ジオキサン−2−オン(MTCOH)およびその誘導体への容易な経路となる。
【0131】
【化24】
【0132】
このアプローチは、(メタ)アクリレート誘導体化の経路と同様の経路であり、開環重合(ROP)が可能な幅広い官能性モノマーを生成することが明らかになっている。図示した例では、2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(BisMPA)をまず(i)ベンジルエステルBnMPAに変換し、続いて(ii)BnMPAをトリホスゲンと反応させて環式カルボニル・モノマー、MTCOBnを形成する。MTCOBnを脱ベンジル化して(iii)環式カルボニルカルボン酸、MTCOHを生成する。MTCOHからエステルを形成する経路を2つ示す。第1の経路では、(iv)MTCOHをジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの好適なカルボキシ活性化剤で処理し、これをROHと反応させてMTCORを一段階で形成する。あるいは、最初にMTCOHを(v)酸クロリドMTCClに変換し、続いて(vi)塩基の存在下でMTCClをROHで処理してMTCORを形成してもよい。どちらの経路も例示であり、限定することを意図するものではない。以下の条件は、スキーム1に示した反応に典型的なものである。(i)ベンジルブロミド(BnBr)、KOH、DMF、100℃、15時間、ビス−MPAのベンジルエステルの収率62%、(ii)トリホスゲン、ピリジン、CH2Cl2、−78℃〜0℃、MTCOBnの収率95%;(iii)Pd/C(10%)、H2(3atm)、EtOAc、室温、24時間、MTCOHの収率99%、(iv)ROH、DCC、THF、室温、1〜24時間、(v)(COCl)2、THF、室温、1時間、MTCClの収率99%、(vi)ROH、NEt3、RT、3時間、MTCORを得る。
【0133】
上記の条件を用いれば、MTCClを、BnMPA中間体を経由してエステルなど様々な環式カルボニル誘導体に変換することができる。あるいは、下記に例示するように、トリホスゲンを使用して閉環することができる別のアルコール(たとえば、EtMPAを形成するためのエタノール)を用いてbisMPAを直接エステル化し、対応するMTCエステルを形成してもよい。
【0134】
【化25】
【0135】
(i)2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(bisMPA)(18.0g、0.134mol)と、KOH(85%アッセイ;8.9g、0.135mol)と、DMF(100mL)との混合物を100℃まで1時間を加熱した(反応混合物は、0.5時間の反応後均一な溶液になった)。この高温の溶液にベンジルブロミド(27.6g、0.162mol)を撹拌しながら加え、反応を100℃で16時間継続した。反応混合物を冷却し、溶媒を真空下で除去した。残渣に酢酸エチル(120mL)、ヘキサン(120mL)および水(80mL)を加えた。有機層を保持し、水(80mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。得られた固体をトルエン(30mL)から再結晶化させ、純粋なベンジル2,2−ビス(メチロール)プロピオネート(BnMPA)を得た(19.5g、65%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.38(m,5H,PhH),5.19(s,2H,−OCH2Ph),3.94(d,2H,−CH2OH),3.73(d,2H,−CH2OH),1.12(s,3H,−CH3)。
【0136】
(ii)ベンジル2,2−ビス(メチロール)プロピオネート(BnMPA)(11.2g、0.05mol)をCH2Cl2(150mL)およびピリジン(25mL、0.3mol)に溶解させ、この溶液をN2雰囲気下、ドライアイス/アセトンで−75℃まで冷却した。トリホスゲン(7.5g、25mmol)をCH2Cl2(150mL)に溶かした溶液を1時間にわたり滴下して加え、次いで反応混合物を室温まで2時間昇温した。飽和水性NH4Cl(75mL)を添加して反応をクエンチし、その後有機層を1Mの水性HCl(3×100mL)、飽和水性NaHCO3(1×100mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた固体を酢酸エチル(15mL)から再結晶化させてMTCOBnを白色の固体として得た(10.7g、86%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 1.31(m,5H,PhH),5.20(s,2H,−OCH2Ph),4.69(d,2H,−CH2OCOO),4.23(d,2H,−CH2OCOO),1.31(s,3H,−CH3)。
【0137】
【化26】
【0138】
撹拌子を備えた100mLの乾燥丸底フラスコに、エタノールアミン(2.96g、48.5mmol、1当量)を仕込んだ。乾燥THF(30mL)を加え、得られた溶液を氷浴で0℃まで冷却した。滴下漏斗を装着し、フェニルイソシアネート(5.19g、4.74mL、43.6mmol、0.9当量)および30mLの乾燥THFを仕込んだ。得られた溶液を30分の時間にわたり滴下して加えた。得られた溶液を周囲温度まで昇温し、次いでさらに16時間撹拌しながら放置した。翌朝、回転蒸発によりTHFを除去した。粗生成物を酢酸エチルから再結晶化させ、次いでさらに4時間激しく撹拌した。こうして形成された固体を濾過により除去し、さらに酢酸エチルで洗浄し、恒量になるまで乾燥させ、7.0g(約86%)を得た。1H−NMR(DMSO−d6)δ:8.59(s,1H,NH),7.39(d,2H,ArH),7.21(t,2H,ArH),6.95(t,1H,ArH),6.10(t,1H,NH),4.78(t,1H,OH),3.43(q,2H,CH2),3.17(q,2H,CH2)。
【0139】
【化27】
【0140】
最初にMTCOH(3.04g、19mmol)を上述の条件を用いて塩化オキサリルでMTCClに変換した。形成された中間体を50mLの乾燥塩化メチレンに溶解させ、添加漏斗に仕込んだ。撹拌子を備えた500mLの乾燥丸底フラスコに、フェニル尿素エタノール(PUE)(4.10g、22.8mmol)、ピリジン(1.81g、1.85mL、22.8mmol)および乾燥塩化メチレン(150mL)を仕込んだ。窒素下で添加漏斗を装着し、フラスコを氷浴で0℃まで冷却した。MTCCl溶液を30分の時間にわたり滴下して加え、溶液をさらに30分撹拌しながら放置した。氷浴を除去し、溶液を周囲温度まで穏やかに昇温し、さらに16時間撹拌しながら放置した。翌朝、この粗生成物を、シリカゲルを用いてカラム・クロマトグラフィにより精製した。溶離液として最初に酢酸エチル/ヘキサン(1/1)を使用してから、極性を穏やかに上げて、酢酸エチルで終了した。この生成物画分を集めて、溶媒を回転蒸発により除去した。単離した生成物を、恒量に達するまで真空下で乾燥させ、6.0g(約80%)のオフホワイト/淡黄色の油を得、放置してゆっくりと結晶化させた。1H−NMR(CDCl3)δ:7.39(d,2H,ArH),7.25(m,3H,ArH),7.02(t,1H,NH),5.40(t,1H,NH),4.68(d,2H,CH2),4.30(t,2H,CH2),4.20(d,2H,CH2),3.55(t,2H,CH2),1.30(s,3H,CH3).HR−MS−ESI:m/z calculated for C15H18N2O6+Na 345.31 found 345.10。
【0141】
【化28】
【0142】
2,2−ビス(メチロール)プロピオン酸(bisMPA;22.1g、0.165mol)を、Amberlyst−15(6.8g)を含むエタノール(150mL)に加え、一晩還流させた。次いでこの樹脂を濾去し、濾液を蒸発させた。得られた粘性液体に塩化メチレン(200mL)を加えて未反応試薬および副生成物を濾過した。この溶液をMgSO4で乾燥させ、蒸発させた後、エチル2,2−ビス(メチロール)プロピオネート(EtMPA)を透明で無色の液体として得た(21.1g、86%)。
【0143】
【化29】
【0144】
トリホスゲン(19.5g、0.065mol)をCH2Cl2(200mL)に溶かした溶液を、エチル2,2−ビス(メチロール)プロピオネート(MPAEt)(21.1g、0.131mol)およびピリジン(64mL、0.786mol)のCH2Cl2溶液(150mL)にドライアイス/アセトンを用いて−75℃で30分かけて段階的に加えた。反応混合物を冷却条件下でさらに2時間撹拌しながら維持し、次いで室温まで昇温した。反応混合物に飽和NH4Cl水溶液(200mL)を加えて過剰のトリホスゲンを分解した。次いで有機相を1NのHCl水溶液(200mL)、続いて飽和NaHCO3(200mL)、ブライン(200mL)、および水(200mL)で処理した。CH2Cl2溶液をMgSO4で乾燥させ、蒸発させた後、残渣を酢酸エチルから再結晶して白色の結晶を得た(13.8g、56%)。1H NMR:δ 4.68(d,2H,CH2OCOO),4.25(q,1H,OCH2CH3),4.19(d,2H,CH2OCOO),1.32(s,3H,CH3),1.29(t,3H,CH3CH2O).13C NMR:δ 171.0,147.5,72.9,62.1,39.9,17.3,13.8.HR−ESI−MS:m/z calcd for C8H12O5・Na,211.0582;found,221.0578。
【0145】
I.カルボン酸を含むブロック・コポリマー。
[実施例1〜4および比較例1(CEx.1)]
保護されたカルボン酸を含むブロック・コポリマー。
【0146】
【化30】
【0147】
2つの環式カルボニル・モノマー、MTCOBnおよびMTCOEtは、生体適合性であり、高収率で調製しやすいうえ、ペンダント・カルボン酸およびエチルエステル基をそれぞれブロック・コポリマーに導入できるため、MTCOBnおよびMTCOEtをビルディング・ブロックとして選択した。マクロ開始剤、モノメチルでエンドキャップされたポリ(エチレングリコール)(Mn2,400g/mol、PDI 1.04)(MPEG2)から開始される、MTCOBn、MTCOEtまたはこれらの混合物のリビングROPを、有機触媒を含むCH2Cl2を用いて行った。ROPのためいくつかの有機触媒を調査したが、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)が望ましい触媒性能を示した。DBUの存在下では、MTCOBnおよびMTCOEtはどちらもほぼ同じ重合速度を示し、2時間で完全に重合した。こうして、2種のペンダント官能基がポリカーボネート・セグメントに逆ブロック配列で配置されるトリブロック・コポリマー(実施例2および3)を段階的な開環重合により構築した。2時間の反応で一方のモノマーを使い尽くした後、他方のモノマーを反応液に加えた。反応が終了するまで、この溶液をさらに2時間撹拌した。GPCモニタリング実験では、2時間および4時間でのブロック・コポリマーの分子量(MW)の増加がフィードに加えたモノマーとよく一致したことから、実施例2および3のトリブロック・コポリマーの形成が成功したことが示唆された。さらに、同じ反応速度から、ポリカーボネート・セグメントにランダムに分布したペンダント官能基を有するブロック・コポリマー実施例4の形成も確認される。最後に、水素ガス雰囲気下、Pd−C(10%w/w)の存在下で、実施例1〜4のブロック・コポリマーのベンジル基を除去することができ、対応するブロック・コポリマー5〜8が得られるのに対し、比較例1(CEx.1)では、この反応においてMTCOEtの水素化分解が観察されなかった。1H NMR分光法を用いてブロック・コポリマーの組成を定量的に研究した。MPEG2のメチレン基のピークの積分強度と、MTCOBn、MTCOEtまたはその両方のメチル基のピークの積分強度とを比較すると、表6に示すようにブロック・コポリマーの組成が得られる。
【0148】
実施例4を生成するための、MTCOBnおよびMTCOEtの混合物(モル比1:1)とMPEG2とのROPの手順は、典型的な手順である。MTCOBn(0.3g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、MTCOEt(0.226g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液と混合し、次いでこの混合物を、MPEG2(0.144g、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら移した。4時間の反応後、安息香酸(5〜10mg)を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、実施例4を無色の粘性液体として得た(0.56g、84%)。
【0149】
疎水性ブロックを形成するための環式カルボニル・モノマーの逐次開環重合を、実施例2、MPEG254−b−[P(MTCOBN)20−b−P(MTCOEt)19]の調製により説明する。下付き文字は、反復単位の数を表す。まず、MTCOBn(0.3g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、MPEG(0.144g、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間の反応後、MTCOEt(0.226g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて反応をクエンチした。ブロック・コポリマー実施例3も同様の手順を用いて合成した。5つのブロック・コポリマーすべての収率および分析データを下記に示す。
【0150】
[実施例1]
MPEG254−b−[P(MTCOBn)36]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0151】
【化31】
【0152】
収率、82%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.29(m,180H,PhH),5.12(s,72H,−OCH2Ph),4.27(m,139H,−CH2OCOO),3.63(m,217H,H of MPEG),1.22(s,108H,−CH3)。
【0153】
[実施例2]
MPEG254−b−[P(MTCOBn)20−b−(MTCOEt)19]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0154】
【化32】
【0155】
収率、86%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.29(m,100H,PhH),5,12(s,40H,−OCH2Ph),4.27(m,190H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.63(m,219H,H of MPEG),1.23(m,174H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0156】
[実施例3]
MPEG254−b−[P(MTCOEt)18−b−P(MTCOBn)19]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0157】
【化33】
【0158】
収率、84%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.28(m,95H,PhH),5.1 1(s,35H,−OCH2Ph),4.21(m,182H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.64(m,214H,H of MPEG),1.21(m,165H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0159】
[実施例4]
MPEG254−b−[P(MTCOEt17−r−MTCOBn17)]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0160】
【化34】
【0161】
収率、84%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.31(m,85H,PhH),5.14(s,34H,−OCH2Ph),4.27(m,167H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.65(m,218H,H of MPEG),1.22(s,153H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0162】
[比較実施例]
MPEG254−b−[P(MTCOEt)35]、式中、下付き文字は、反復単位の数を表す。
【0163】
【化35】
【0164】
収率、85%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 4.20(m,206H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.65(m,214H,H of MPEG),1.25(s,21 OH,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0165】
[実施例9]
MPEG1113−b−[P(MTCOBn)5−b−P(MTCOEt)9]。
【0166】
【化36】
【0167】
このポリマーを実施例2に上記したように調製した。MTCOBn(0.075g、0.3mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、MPEG1(0.3g、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間後、MTCOEt(0.113g、0.6mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて反応をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、生成物を無色の粘性液体として得た(0.46g、84%)。
【0168】
[実施例10]
MPEG1113−b−[P(MTCOH)5−b−P(MTCOEt)9]。
【0169】
【化37】
【0170】
このブロック・ポリマーを実施例5〜8のため上記のように調製した。実施例9で得られた生成物と、THF(7.5mL)と、メタノール(7.5mL)と、Pd−C(10%w/w、0.2g)との混合物をH2(7atm)下で一晩回転(swirl)させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、最終生成物を無色の粘性液体として得た。収率は90%を超え、1H NMRスペクトルは、保護された基が水素化後除去されたことを示した。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 4.16(m,74H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.47(m,452H,H of MPEG),1.14(s,69H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0171】
DBU触媒系の有用性は、予測可能な分子量を持つ、狭分散性の最初のブロック・コポリマーが合成されたことで明らかにされた。1H NMRスペクトルおよびGPC解析から推定される、ベンジルエステルを脱保護する前の最初のブロック・コポリマー実施例1〜4、9および比較例1の分子特性を表6にまとめてある。下付き文字は、反復単位の数に相当する。
【0172】
【表6】
【0173】
表6のポリマーのGPCデータは、最初のブロック・コポリマーがGPCクロマトグラムで1つの単峰ピークを示すことを示した。このポリマーは、ほぼ単分散し、MWが8,810〜11,490の幅があり、多分散性が1.14〜1.20の狭い範囲にあることが明らかになった。1H NMRスペクトルから推定される最初のブロック・コポリマーの組成は、GPCの結果の分子量の値とよく一致し、仕込み率とも整合した。
【0174】
[実施例5〜8および10]
カルボン酸を含むブロック・コポリマー実施例1〜4および9の水素化。
ブロック・コポリマー、実施例1〜4を含む保護されたカルボン酸の水素化の一般的な手順は、以下の通りである。ペンダント・ベンジルエステル(0.5g)、THF(7.5mL)、メタノール(7.5mL)およびPd−C(10%w/w、0.2g)を組み合わせ、H2(7atm)下で一晩回転させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、実施例5〜8を無色の粘性液体として得た。その構造は、ベンジルエステルがカルボン酸であることを除いて、実施例1〜4上記に示したものと同じである。収率は90%を超えた。
【0175】
1H NMRスペクトルは、保護された基が水素化後除去されたことを示す。たとえば、図1は、CDCl3中の保護されたブロック・コポリマー実施例3の1H NMRスペクトルであり、図2は、DMSO−d6中の対応する脱保護されたブロック・コポリマー実施例8の1H NMRスペクトルである。図2では、図1と比較して、7.28および5.11ppmのピークが消失していることから、保護していたベンジル基が水素化分解により明確に除去されたことが示される。13.18ppmのピークは、遊離カルボン酸のプロトンに起因するものであり、MTCOBnから誘導される繰り返し単位の脱保護を示す直接の証拠となる。
【0176】
実施例5〜8、10および比較例1を用いたブランク・ミセルおよび内包ミセルの調製。
ミセルの調製および薬剤の内包量の判定。実施例5〜8、10および比較例1の純粋なブロック・コポリマーのミセルを、ポリマーを水に直接分散し、続いて超音波処理してミセル形成およびミセルの水分散を促進して調製した。ドキソルビシン(DOX)内包ミセルでは、DOX(5mg)を、1.5mLのDMAcに溶解させ、2モル過剰のトリエチルアミンで中和させた。DOX溶液に、10mgのブロック・コポリマーを0.5mLのDMAcに溶解させたポリマー溶液を加え、ボルテックスで5分間混合した。薬剤およびポリマー溶液を、プローブ型ソニケータ(Vibra Cell VCX 130)を用いて130Wにて超音波処理しながら、DI()水(10mL)に滴下して加え、超音波処理を2分間継続した。次いでこの溶液を、分子量カットオフ1000Daの透析バッグ(Spectra/Por 7、スペクトラム・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド(Spectrum Laboratories Inc.))を用いて1000mLのDI水に対して48時間透析した。水は、最初の6時間に2時間ごとに交換し、翌日もう1回交換した。透析後、透析バッグ中の溶液を0.45マイクロメートルのシリンジ・フィルタで濾過した。DOXの内包レベルを判定するため、上記のミセル溶液を2日間凍結乾燥させ、次いで 既知量のDOX内包ミセルを1mLのDMSOに溶解させた。DOX濃度は、480nmでUV−VIS分光光度計を用いて推定した。薬剤内包量は、DOXを含むDMSO溶液から得られた標準曲線に基づき計算した。
【0177】
蛍光測定。脱イオン(DI:deionized)水中のポリマーの臨界ミセル濃度(CMC)を、ピレンをプローブとして用いて判定した。蛍光スペクトルは、室温でLS 50B発光分光計(パーキン・エルマー(Perkin Elmer)、米国)により記録した。サンプルについては、測定を行う場合にはその前に10分間平衡処理した。ピレンのアセトン溶液のアリコート(6.16×10−5M、10マイクロリットル)を容器に加え、アセトンを蒸発させた。この容器に様々な濃度のポリマー溶液(1mL)を加え、24時間平衡化させた。各サンプルの最終ピレン濃度は、6.16×10−7Mとした。発光スペクトルは励起波長339nmで360〜410nmをスキャンし、励起スペクトルは発光波長395nmで300〜360nmをスキャンした。励起および発光のバンド幅はどちらも2.5nmに設定した。励起スペクトルのI336/I334の強度(ピーク高さ)比をポリマー濃度の関数として解析した。CMCは、曲線の屈曲点の接線と低濃度点での接線との交点から取得した。
【0178】
動的光散乱。実施例5〜8、10および比較例1から新たに調製したブランク・ミセルおよびDOX内包ミセルの粒度を、0.45マイクロメートルのシリンジ・フィルタで濾過後、散乱角90°で動的光散乱(ZetaPALS、ブルックヘブン・インスツルメント・コーポレーション、米国)を用いて測定した。各測定を5回繰り返した。5回の測定から平均値を得た。各サンプルがそれぞれのミセルおよび凝集体を含む可能性があるため、マルチモデル解析を選択して寸法測定を行い、分解能を最大化した。
【0179】
実施例5〜8、10および比較例1で得られたブランク・ミセルおよびDOX内包ミセルの臨界ミセル濃度(CMC)値、および粒度の測定値を表7に示す。
【0180】
【表7】
【0181】
表7に示すように、実施例5〜8および10はCMC値が低いとはいえ、その値は5.2〜152.8mg/Lの幅があり、疎水性ポリカーボネート・ブロックのペンダント官能基の分布に強く依存する。ブロック・コポリマーのミセル構造は主に、親水性MPEG2シェルと疎水性ポリカーボネート・コアとに分かれる。実施例5は、ポリカーボネート・コアがMTCOHのホモポリマーであるため、最も高いCMCを示した。ペンダント・カルボン酸基は、周囲の水分子と水素結合を形成して、水中の疎水性ブロックの溶解性を高めると同時に疎水性を低下させることができた。実施例6および7は、疎水性ブロック内のブロック配列に配置された2種類のペンダント官能基を含むトリブロック・コポリマーである。そのミセル構造内は、疎水性コアが、ペンダント・カルボン酸基を含む疎水性が低いポリカーボネート・ブロックから作られた外側のコアと、ペンダント・エチルエステル基を含む疎水性が高いポリカーボネート・ブロックから作られた内側のコアとにさらに分かれる。これらの詳細に明らかにされたコア−シェル構造により、ブロック・コポリマーの中で最も低いCMCが得られた。同様に、実施例8のポリカーボネート・セグメントのランダムに分布したペンダント官能基もミセルのコアの疎水性を低下させるが、CMCは、実施例6〜7よりも高くなった。投与後の血液中のミセルの解離は封入薬剤を急速に放出させ、インビボで重度の副作用を引き起こす恐れがあるため、低いCMCは、ミセルの重要なパラメータである。
【0182】
こうしてCMCの結果と同様の傾向は、動的光散乱(DLS)により測定されたDOX内包ミセルの流体力学的直径でも観察された(表7)。粒度および均一性は、薬剤内包ミセルの重要な因子である。物理的性質が、そのどちらにも強く依存するためである。表7は、ブロック・コポリマー実施例5〜8から作られたドキソルビシン(DOX)内包ミセルの粒度を示す。粒度は、47〜165nmの範囲であり、粒度分布は、比較的狭く0.2〜0.28の範囲である。ミセルの粒度が小さいと、ミセルが細網内皮系(RES:reticuloendothelial system)によるクリアランスの影響を受けにくくすることができる。実施例6〜7の最も小さい流体力学的直径は、その詳細に明らかにされたミセル構造に起因する可能性がある。また、実施例5および8は、実施例6および7より大きな粒度を示す。理論に束縛されるものではないが、より大きな粒度は、外部環境に接触しやすく周囲の水分子と相互作用し、かつポリカーボネート・セグメントの疎水性を低下させて、ミセルのコアを緩やかなパッキングにするコアの親水性ペンダント・カルボン酸基に起因する。実施例8ではミセルのコアのカルボン酸基に対する疎水性エチルエステル基の希釈作用により、その粒度が実施例5の粒度より小さくなっている。DOX内包ミセルの構造の直接観察は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて行った。
【0183】
図3は、トリブロック・コポリマー実施例7から作られたDOX内包ミセルの透過型電子顕微鏡写真(TEM)画像である。ミセルは、ほぼ球状の形をとり、内包ミセルの大部分は、乾燥状態で32〜45nmの範囲の直径を有し、対応する流体力学的直径より若干小さい。この結果は、コポリマーの遊離親水性セグメントの崩壊のほか、ポリマー鎖の脱水に起因する可能性がある。
【0184】
さらに、ブロック・コポリマー実施例5〜8から作られるDOX内包ミセルは、極めて高い薬剤内包レベル、および封入効率を示した。表7に示すように、実施例5〜8の薬剤内包レベルは、乾燥ブロック・コポリマーの重量に対して比較例1の2.2wt.%と比較して23.7wt.%〜43.1wt.%の範囲であった。ブロック・コポリマー・ミセルへのDOXの封入は、超音波処理/膜透析法により行った。濾過により大きな粒子を除去したため、ブロック・コポリマー実施例5および8で調製したDOX内包ミセルは、より低い薬剤内包レベルを示した。実施例6および7は、40wt.%を超える薬剤内包レベルを示した。高い薬剤内包レベルは、DOXとブロック・コポリマーのペンダント・カルボン酸基との静電的相互作用に起因する可能性があったため、開環重合にMTCOEtを用いてペンダント・エチルエステル基を導入しても、DOXに対するカルボン酸基の結合能に大きな影響を与えないと考えられる。
【0185】
実施例5〜8および比較例1により形成されたDOX内包ミセルのインビトロでの薬物放出試験
新たに調製したDOX内包ミセル溶液(3mL)を、MWCO1,000Daの透析膜チューブ(Spectra/Por 7、スペクトラム・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド)に移した。次いでチューブを、50mLのPBS緩衝液(pH7.4)を含むビーカーに浸し、これを100rev/分の速度で振盪し、37℃でインキュベートした。一定の時間間隔で、外液から1mLの溶液を取り除き、新鮮なPBS緩衝液と入れ換えた。サンプル中のDOX含有量は、480nmでUV−VIS分光光度計を用いて解析し、DOXのH2O溶液から得られた標準曲線に基づき算出した。
【0186】
DOXの放出プロファイルを図4に示す。どのミセルでも、明らかな初期バースト放出は観察されなかった。実施例6および7により形成されたミセルから放出されたDOXが約55%であったのに対し、実施例8により形成されたミセルからは、7時間以内に80%を超える薬物が放出された。これは、ミセルのコアが緩やかにパッキングされていたためと考えられる。さらに、コア内のランダムに分布したカルボン酸基はよく分離しており、エチルエステル基により希釈されて、隣接するカルボン酸基間の分子内水素結合が低下するため、ミセルのコアが外部の水性環境に接触しやすくなる。実施例5により形成されたミセルは最も遅い薬物放出プロファイルを示し、DOXとペンダント・カルボン酸基との間の強い静電引力のため、7時間後に放出されたDOXは42%にとどまった。
【0187】
実施例5〜8により形成されたDOX内包ミセルの細胞毒性。
実施例5〜8から形成されたDOX内包ミセル、およびブランク・コポリマー(実施例5〜8)の細胞毒性試験を、HepG2細胞を用いて行い、遊離DOXと比較した。培養細胞をブランク・コポリマーに接触させたところ、著しい細胞毒性は、37℃で48時間後、200mg/Lまで観察されなかった。図5Aは、ブランク・ポリマー実施例5〜8の濃度を関数としたHepG2細胞の生存率を示すグラフである。図5Bは、実施例5〜8の内包ミセル、およびDOXの濃度を関数としたHepG2細胞の生存率を示すグラフである。DOX内包ミセルは、ミセルの細胞毒性に対して強い用量依存的作用を示し、その細胞生存率プロファイルは、遊離DOXの細胞生存率プロファイルに非常に類似している。HepG2における遊離DOXのIC50値は1.14mg/Lであり、ブロック・コポリマー実施例5〜8から作られたミセルのIC50値と同じであった。
【0188】
II.尿素を含むブロック・コポリマーの調製。
スキーム2は、式MPEG1−b−[P(MTCOEt−r−MTCU)]で表されるポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(MTCOEt−ランダム−MTCU)コポリマーの合成を図示する。
【0189】
【化38】
【0190】
モノメチルエーテル−PEG(5,000g/mol)(MPEG1)をマクロ開始剤、TU/スパルテインを触媒として使用し、様々な量の環式モノマーMTCOEtおよびMTCUの開環重合によりランダム・ポリカーボネート鎖を形成して、ブロック・コポリマーを調製した。下付き文字n’は、市販のMPEG1における反復単位の数である。ブロック・コポリマーの尿素含有量は、MTCOEtモノマーとMTCUモノマーとの仕込み比を変化させて制御した。下付き文字xは、各環式カルボニル・モノマーのモル分率であり、モル分率の合計は1と等しい。環式モノマーの開環は、水素結合によりモノマーおよびアルコールをどちらも二官能性に活性化するように設計されたチオ尿素触媒および第三級アミン触媒を用いてグローブ・ボックスで行った。
【0191】
[実施例11〜14および比較例2〜5]
実施例11、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.8−r−MTCU0.2)](5k−5k)の以下の調製は、代表的なものである。グローブ・ボックス内で、チオ尿素触媒(TU)(37mg、0.1mmol)、スパルテイン(24mg、0.1mmol)およびMPEG1(0.5g、0.1mmol)を、撹拌子を備えた20mLの乾燥ガラスバイアルに仕込んだ。少量の塩化メチレンを加え、形成された溶液を撹拌しながら10分間維持した。MTCOEt(0.35g、1.86mmol)およびMTCU(0.15g、0.47mmol)を追加の塩化メチレン(モノマーに対して総濃度1M)と共に加え、得られた溶液を撹拌しながら16時間維持した。1H NMRから判定した開環重合反応の終了時に、安息香酸(15mg、0.12mmol)を加えて触媒をクエンチし、粗ポリマーを500mLの冷ジエチルエーテルに沈殿させた。この非溶媒を穏やかに周囲温度まで昇温し、その後上清をデカントした。オフホワイトの固体を集めて、真空下で恒量になるまで乾燥させた。収率0.75g(75%)。1H−NMR(CDCl3)δ:7.38(m,2H,polyMTC(MTCU)−ArH),7.22(m,3H,polyMTC(MTCU)−ArH),6.95(t,1H,polyMTC(MTCU)−NH),4.30(br,m,4H,polyMTC(MTCU and MTCOEt)−CH2,2H,polyMTC(MTCU)−CH2),4.10(m,2H,polyMTC(MTCOEt)−CH2CH3),3.68(s,4H,PEG),3.38(s,3H,a−end),1.38(br,m,3H,polyMTC(MTCU and MTCOEt)−CH3;3H,polyMTC(MTCOEt)−CH2CH3)(図S1を参照)。GPC(THF,PS 標準(standard)):PDI=1.11。図6は、実施例11、[P(MTCOEt0.8−r−MTCU0.2)](5k−5k)をモノメチルでエンドキャップされたPEG、MPEG1(5k)と比較したGPCクロマトグラムである。
【0192】
また、MPEG1が2倍の分子量のMPEG2を持つこと以外は比較例1と同様の構造を持つ比較例2(CEx.2)を、上記の手順を用いてMPEG1およびMTCOEtから調製した。各々ポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(トリメチレンカーボネート)ブロック・コポリマーであるいくつかの追加比較例3〜5を、上記の手順を用いてMPEG1およびTMCから調製した。これらは、式MPEG1−b−[P(TMC)]で表される。
【0193】
【化39】
【0194】
比較例2〜5は各々水素結合尿素基を欠いている。比較例3〜5は、TMCから誘導される疎水性ブロックの分子量が異なる。
【0195】
[実施例15]
MPEG1113−b−[P(MTCOBn)4−r−P(MTCU)5]。
【0196】
【化40】
【0197】
MTCOBn(0.085g、0.3375mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、MTCU(0.1087g、0.3375mmol)をCH2Cl2(1mL)に溶かした溶液と混合し、次いでこの混合物を、MPEG1(0.225g、0.045mmol)、TU(16.65mg、0.045mmol)およびスパルテイン(10.35マイクロリットル、0.045mmol)をCH2Cl2(1mL)に溶かした溶液に撹拌しながら移した。一晩の反応後、安息香酸(20mg)を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、生成物を白色の粘性固体として得た(0.33g、80%)。収率、80%。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.45(s,10H,PhH),7.18(s,10H,PhH),6.83(s,5H,PhH),4.06−4.23(br,m,46H,−CH2OCOO,−OCH2CH3,and −COOCH2CH2NH−of polyMTCU),3.48(m,462H,H of MPEG and −COOCH2CH2NH−of polyMTCU),1.12(m,27H,−CH3)。
【0198】
[実施例16]
MPEG1113−b−[P(MTCOH)4−r−P(MTCU)5]。
【0199】
【化41】
【0200】
実施例15で得られた上記の生成物と、THF(7.5mL)と、メタノール(7.5mL)と、Pd−C(10%w/w、0.2g)との混合物をH2(7atm)下で一晩回転させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、最終生成物を無色の粘性液体として得た。収率は90%を超え、1H NMRスペクトルは、保護された基が水素化後除去されたことを示した。
【0201】
蛍光測定。脱イオン(DI)水中の実施例11〜14および比較例2〜5の臨界ミセル濃度(CMC)を、ピレンをプローブとして用いて判定した。蛍光スペクトルは、室温でLS 50B発光分光計(パーキン・エルマー、米国)により記録した。サンプルについては、測定を行う場合にはその前に10分間平衡処理した。ピレンのアセトン溶液のアリコート(6.16×10−5M、10μL)を容器に加え、アセトンを蒸発させた。この容器に様々な濃度のポリマー溶液(1mL)を加え、24時間平衡化させた。各サンプルの最終ピレン濃度は、6.16×10−7Mとした。発光スペクトルは励起波長339nmで360〜410nmをスキャンし、励起スペクトルは発光波長395nmで300〜360nmをスキャンした。励起および発光のバンド幅はどちらも2.5nmに設定した。励起スペクトルのI336/I334の強度(ピーク高さ)比をポリマー濃度の関数として解析した。CMCは、曲線の屈曲点の接線と低濃度点での接線との交点から取得した。
【0202】
動的光散乱(DLS)。Brookhaven BI−200SMゴニオメータ・システム(Brookhaven,U.S.A.)で動的光散乱(DLS)実験を行い、実施例9〜12および比較例2〜5により形成されたミセルの粒度(Dh)を判定した。光源は、波長633nmの出力調整可能で垂直偏光の75mW HeNeイオン・レーザとする。
【0203】
表8に、尿素を含むブロック・コポリマー実施例11〜14、16および比較例2〜5の構造および特徴付けをまとめてある。親水性ブロックおよび疎水性ブロックの数平均分子量をサンプル式の隣の括弧内に示す。たとえば、実施例12の場合、(5k−3k)という表現は、親水性ブロックが5000のMnを有し、疎水性ブロックが3000のMnを有していたことを意味する。式中の各モノマーの後にある下付き文字は、疎水性ブロックの環式カルボニル・モノマーのモル分率であり、モル分率の合計は1.0である。実施例11〜14の疎水性ブロックは、MTCOEtおよびMTCUのランダム・コポリマーを含む。
【0204】
【表8】
【0205】
実施例12、13および比較例2のミセル形成能。
比較的低分子量の疎水性ブロック(ポリカーボネート・ブロックのMn:1.5k、3kおよび5k)を有する表8の各ブロック・コポリマーは、水中で自己分散することができた。典型的には、ブロック・コポリマーを脱イオン水で直接自己分散し、10分間超音波処理してミセルの形成、およびブロック・コポリマー・ミセルの水分散を促進した。ミセル形成能に対するH結合尿素基の作用を、MPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)](5k−3k)ブロック・コポリマー、実施例12、13および比較例2を用いて検討した。これらのポリマーはそれぞれ、尿素のモル分率xを0.4、0.2および0.0有する。図7は、実施例12、13および比較例2により形成されたミセルの動的光散乱の結果を比較したグラフである。MPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)](5k−3k)ブロック・コポリマーは、表8にまとめてあるように平均直径20〜40nmを有し、さらに0.084〜0.133という狭い粒度分布を有するナノサイズのミセルを形成した。尿素基の導入に伴う特徴的な変化は、図7の臨界ミセル濃度(CMC)で観察された。CMCは、ミセルによる薬剤送達系のインビボでの安定性を予測するのに使用できる重要なパラメータである。CMC値の測定は、ピレンをプローブとして使用して定常状態の蛍光分光法により行った。興味深いことに、MPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)](5k−3k)のCMC値は、ブロック・コポリマーのペンダント尿素の量が増加すると著しく低下するが、その分子量は、よく似ていた。これは、水性環境で強いH結合尿素により引き起こされる自己会合の安定化がミセルのCMCを低下させることを示す。
【0206】
尿素を含むブロック・コポリマー、実施例11〜14の内包ミセル。
尿素官能性ブロック・コポリマーをさらに抗癌剤ドキソルビシン(DOX)のナノキャリアとして使用した。超音波処理−膜透析技術によりブロック・コポリマー/薬剤ハイブリッド・ミセルを調製した。典型的には、過剰(3×)のトリエチルアミンを含むDMAC(1.5mL)で中和したDOX(5mg)を、DMAC(2mL)に溶解させたブロック・コポリマー(10mg)(実施例11〜14)と混合し、10mLの脱イオン(DI)水中で10分間超音波処理し、次いでDI水に対して2日間透析した。この溶液を寸法測定の前に0.45マイクロメートルのシリンジ・フィルタで濾過し、2日間凍結乾燥した。図8は、実施例13、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.8−MTCU0.2)](5k−3k)の薬剤内包ミセル(図8にP+Dとプロット表示)と共に、実施例13により形成された非内包ポリマー・ミセル(図8にPとプロット表示)の粒度および大きさの分布を示すグラフである。尿素基なしで調製された非内包ミセル、比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)の大きさは、直径約24nmであったのに対し(図8にP’とプロット表示)、比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)から調製された薬剤内包ミセルの大きさはかなり大きく、約430nmであった(図8にP’+Dとプロット表示)。大きさの増加からは、比較例4のミセル形成中に疎水性薬剤が存在すると、その過程で熱力学および速度論に影響を与え、凝集体の構造を大きくすることが示唆される。この現象は、薬物送達に使用する際に大きな欠点となる可能性がある。ナノ送達系の大きさは、体の防御機構を回避すべく、理想的には約200nm未満にとどめるべきであるためである。図8に示すように、20%の尿素含有量を有する実施例13、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.8−MTCU0.2)](5k−3k)から得られた薬剤内包ミセルは、大きさが200nm未満であり、尿素を含まない比較例4、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−3k)または比較例2、MPEG1−b−[P(MTCOEt1.0)]のそれと比較して著しく安定化している。
【0207】
図9は、異なる尿素含有量を有するMPEG1−b−[P(MTCOEt1〜x−MTCUx)]ブロック・コポリマー(実施例12、13および比較例2、xはそれぞれ0.4、0.2および0.0であり、各々3000のMnの疎水性ブロックを有する)による薬剤内包ミセルの薬剤内包量と大きさとの関係を示すグラフである。ナノ粒子の薬剤含有量については、ミセル溶液を凍結乾燥し、その塊をDMAC再溶解させ、続いて485nmのUV可視分光法により判定した。尿素含有量が増加するのに伴い、薬剤内包量もx=0.0での6.3wt%からx=0.4での8.5wt%に増加した一方、同時に、薬剤内包ミセルの平均粒度がx=0.0での360nmからx=0.4での110nmに小さくなった。
【0208】
実施例11、13および14における疎水性ブロックの分子量の作用。
最後に、1.5k、3kおよび5kのポリカーボネート・ブロックを有するコポリマーを用いて、薬剤内包量およびミセル形成挙動に対する疎水性ブロックの分子量の作用をさらに調査した。これらの薬剤内包サンプルにおけるミセルの大きさ(安定性)および薬剤の内包量は、表8にまとめてあるように疎水性ブロックの鎖長および特徴に高度に依存する。最も大きな疎水性ブロックを有する比較例3、MPEG1−b−[P(TMC)](5k−5k)では、薬剤内包ミセルの大きさが200nmを若干上回った。H結合尿素ブロック・コポリマーは、ブロック・コポリマー・ミセルのCMC、薬剤内包能、ならびに薬剤内包ミセルの大きさおよび粒度分布をさらに改善する。これらの相違は、比較的短い疎水性ブロックを有するブロック・コポリマーでより顕著になる。
【0209】
MCF7およびBT474ヒト乳房癌細胞株に対するポリマー(比較例4、実施例13および実施例12)の細胞毒性を試験した。図10および図11に示すように、これらのポリマーのいずれも、最大300mg/Lの濃度で著しい細胞毒性を示さなかった。
【0210】
III.酸塩基混合ミセル。
2つのブロック・コポリマー組成物を含む混合ミセル組成物を調製した。第1のブロック・コポリマーは、MPEG1−b−[P(MTCOH)5−b−P(MTCOEt)9]、実施例10であった。第2のブロック・コポリマーは、MPEG1−b−[P(MTCOEt0.6−r−MTCU0.4)]、実施例12であった。表9に示すように、これらのブロック・コポリマーを様々な尿素/COOHモル比で混合した。
【0211】
【表9】
【0212】
膜透析法によりDOXをミセルに内包させた。簡単に説明すると、過剰の(3×)トリエチルアミンを含むDMAC(1.5mL)で中和したDOX(5mg)を、DMAc(0.5mL)に溶解させたブロック・コポリマー(10mg)と混合し、10mLのDI水中で2分間超音波処理し、次いで1000mLのDI水に対して2日間透析した。外側の水は、3時間、6時間および24時間で交換した。透析後、2日間の凍結乾燥により粒子を集めた。DOXの内包レベルを判定するため、既知量の凍結乾燥したDOX内包ナノ粒子を1mLのDMSOに溶解させた。DOX濃度は、480nmでUV−可視分光光度計を使用して推定した。薬剤内包量は、DOXを含むDMSO溶液から得られた標準検量線に基づき計算した。
【0213】
粒度の測定。表9のDOX内包混合ミセルを寸法測定前にPBS緩衝液(pH7.4)に直接溶解させた。
【0214】
ミセルの粒度は、Brookhaven BI−200SMゴニオメータ・システム(Brookhaven,U.S.A.)を用いて行った動的光散乱(DLS)により測定した。光源は、波長633nmの出力調整可能で垂直偏光の75mW HeNeイオン・レーザである。
【0215】
新たに調製したブランク・ミセルおよびDOX内包ミセルの粒度を、0.45マイクロメートルのシリンジ・フィルタで濾過後、散乱角90°で動的光散乱(ZetaPALS、ブルックヘブン・インスツルメント・コーポレーション、米国)を用いて測定した。各測定を5回繰り返した。5回の測定から平均値を得た。各サンプルがそれぞれのミセルおよび凝集体を含む可能性があるため、マルチモデル解析を選択して寸法測定を行い、分解能を最大化した。
【0216】
臨界ミセル濃度。PBS緩衝液(pH7.4)中の実施例12および実施例17〜25のブランク混合ミセルのCMCを、ピレンをプローブとして用いて判定した。蛍光スペクトルは、室温でLS 50B発光分光計(パーキン・エルマー、米国)により記録した。サンプルについては、測定を行う場合にはその前に10分間平衡処理した。ピレンのアセトン溶液のアリコート(6.16×10−5M、10μL)を容器に加え、アセトンを蒸発させた。この容器に様々な濃度のポリマー溶液(1mL)を加え、24時間平衡化させた。各サンプルの最終ピレン濃度は、6.16×10−7Mとした。発光スペクトルは励起波長339nmで360〜410nmをスキャンし、励起スペクトルは発光波長395nmで300〜360nmをスキャンした。励起および発光のバンド幅はどちらも2.5nmに設定した。励起スペクトルのI336/I334の強度(ピーク高さ)比をポリマー濃度の関数として解析した。CMCは、曲線の屈曲点の接線と低濃度点での接線との交点から取得した。
【0217】
このアプローチを用いることにより、CMCを低下させたり、薬剤内包レベルを増加させたり、生物学的リガンドの表面密度を調整したり、あるいはダブル・ターゲティングのため2つの生物学的リガンドを付着させたりするように混合ミセルを製剤化することができる。
【0218】
IV.ターゲティングのための官能基の導入。
チオール基(スキーム3)、アルデヒド基(スキーム4)、またはPEGのN−ヒドロキシスクシンイミド官能基を持つCOOH末端の基(スキーム5)を介してPEGのもう一方の遠位末端にガラクトースなどの生物学的官能基を導入してもよい。ガラクトースを使用すれば、肝細胞を標的とすることができる。また、ターゲティングのため、同様のアプローチによりペプチド、タンパク質または抗体などの他の生物学的リガンドをポリカーボネート・ベースのブロック・コポリマーにコンジュゲートしてもよい。
【0219】
【化42】
【0220】
【化43】
【0221】
【化44】
【0222】
[実施例26]
チオールを持つPEG−ブロック−ポリカーボネート、HS−PEG−b−[P(MTCOEt)23−b−P(MTC−OBn)19]の調製。
MTCOEt(0.113g、0.6mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、HS−PEG−OH(0.097g、Mn=3228、0.03mmol)およびDBU(4.6mg、0.03mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間後、MTCOBn(0.15g、0.6mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(20mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、HS−PEG−b−[P(MTCOEt)23−b−P(MTC−OBn)19]を無色の粘性液体として得た(0.59g、82%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.3(m,95H,PhH),5.15(s,38H,−OCH2Ph),4.25(m,214H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.64(m,290H,H of PEG),2.78(d,2H,−OCH2CH2SH),2.49(t,2H,−OCH2CH2SH),1.23(s,195H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0223】
[実施例27]
アルデヒドを持つPEG−ブロック−ポリカーボネート、CHO−PEG−b−[P(MTCOEt)21−b−P(MTC−OBn)20](スキーム4)調製。
MTCOEt(0.226g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、OCH−PEG−OH(0.12g、Mn2000、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間後、MTCOBn(0.3g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、OCH−PEG−b−[P(MTCOEt)21−P(MTCOBn)20]を無色の粘性液体として得た(0.52g、80%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 9.78(s,0.4H,−CHO),7.29(m,100H,PhH),5.11(s,40H,−OCH2Ph),4.25(m,206H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.64(m,179H,H of PEG),1.23(s,186H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0224】
[実施例28]
p−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシドを末端に持つPEG(APG−PEG)ポリカーボネート・ブロック・コポリマー、APG−PEG−b−[P(MTCOEt)21−P(MTCOBn)20]の合成(スキーム4)。
実施例27で得られた上記の生成物OCH−PEG−b−[P(MTCOEt)21P(MTCOBn)20](0.52g、0.047mmol)を10mLのDMSOに溶解させ、この溶液に7−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(APG)(0.127g、0.47mmol)を加えた。混合物を撹拌し、40℃まで5時間加熱した。次いで、これを周囲温度まで冷却し、NaBH3CN(8.9mg、0.141mmol)を加えてイミン結合をアミンに還元した。混合物を一晩撹拌し、水に対して透析し(分子量カットオフ1,000ダルトン)、凍結乾燥した。最後に、APG−PEG−b−[P(MTCOEt)21−b−P(MTC−OBn)20]を無色の粘着性液体として得た(0.45g、70%)。1H NMR(400MHz,CDCl3,22℃):δ 7.29(m,100H,PhH),5.11(s,40H,−OCH2Ph),4.25(m,206H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.64(m,179H,H of PEG),1.23(s,186H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0225】
[実施例29]
ガラクトースを末端に持つブロック・コポリマーAPG−PEG−b[P(MTCOEt)21−b−P(MTCOH)20]の調製(スキーム4)。
実施例28で得られた上記の生成物APG−PEG−b−[P(MTCOEt)21−b−P(MTC−OBn)20](0.45g)と、THF(7.5mL)と、メタノール(7.5mL)と、Pd−C(10%w/w、0.2g)との混合物をH2(7atm)下で一晩回転させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、ガラクトースを末端に持つブロック・コポリマー、APG−PEG−b−[P(MTCOEt)21−b−P(MTC−OBn)20]を得た(0.35g、92%)。1H NMR(400MHz,DMSO−d6,22℃):δ 10.58(s,10H,−COOH),7.33(m,3.9H,2,6−PhH−ΝH),6.67(m,3.9H,3,5−PhH−NH),4.13(m,206H,−CH2OCOO and −OCH2CH3),3.51(m,179H,H of PEG),1.13(s,186H,−CH3 and −OCH2CH3)。
【0226】
[実施例30]
N−ヒドロキシスクシンイミド誘導体化PEG(NHS−PEG)ブロック・ポリカーボネート・コポリマー、NHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]の調製(スキーム5)。
MTCOEt(0.226g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を、モノN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体化PEG、NHS−PEG−OH(0.21g、Mn2000、0.06mmol)およびDBU(9.2mg、0.06mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液に撹拌しながら加えた。2時間後、MTCOBn(0.3g、1.2mmol)をCH2Cl2(0.75mL)に溶かした溶液を加えた。反応をさらに2時間継続してから、安息香酸を加えて重合をクエンチした。次いで反応混合物をジエチルエーテル(40mL)に沈殿させ、沈殿物を遠心し、減圧乾燥させた。最後に、粗生成物を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、NHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]を得た。
【0227】
[実施例31]
NHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]とp−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(APG)との反応 APG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20](スキーム5)。
まず、NHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20](0.05mmol)に対して10mol過剰のp−アミノフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(APG)(0.50mmol)を1mlの無水Ν,Ν−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。次いで、この溶液を、1.5mlの無水DMFに溶解させた実施例30で得られた0.05mmolのNHS−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]に加えた。反応混合物を窒素下、室温で6時間穏やかに撹拌した。生成物のガラクトースを末端に持つAPG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]をDMSOおよび蒸留水に対する透析(MWCO1000Daの透析チューブ)により精製し、凍結乾燥した。
【0228】
[実施例32]
ガラクトースを末端に持つAPG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOH)20]の調製(スキーム5)
実施例31で得られた上記の生成物、APG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOBn)20]と、THF(7.5mL)と、メタノール(7.5mL)と、Pd−C(10%w/w、0.2g)との混合物をH2(7atm)下で一晩回転させた。H2雰囲気の除去後、混合物をTHFで湿らせたセライトで濾過した。完全に変換するように、さらにTHF(15mL)およびメタノール(15mL)を使用した。集めた洗液を蒸発させ、残渣を、THFを溶離液としてSephadex LH−20カラムを用いたカラム・クロマトグラフィにより精製して、ガラクトースを末端に持つAPG2−PEG−b−[P(MTCOEt)20−P(MTCOH)20]を得た。
【0229】
要約すると、モノメチルでエンドキャップされたPEGおよび官能性ポリカーボネートを含む一連のブロック・コポリマーは、DOX送達の高度に効率的なキャリアであることが明らかになった。このブロック・コポリマーは低いCMC値を有し、その水中ミセルは小さな粒度を示した。CMCおよび粒度の変化は、ブロック・コポリマーのポリカーボネート・セグメントにおけるペンダント官能基の分布の相違に起因する可能性があった。疎水性ブロックに尿素もしくはカルボン酸またはその両方を含むペンダント基を含むポリマーは、高いDOX内包レベルを実現する。DOXの速やかな放出は、37℃で7時間以内に著しい初期バーストを起こさずに達成され、放出されるDOXは、ポリカーボネート・セグメントのペンダント官能基の分布に応じて42%〜80%までの幅があった。さらに、DOX内包ミセルは、無毒のブランク・ブロック・コポリマーと比較して、HepG2細胞に対して遊離DOXとほぼ同じ細胞毒性を示した。ブロック・コポリマーはさらに骨格構造、ペンダント官能基、および分布(ランダム共重合とブロック共重合)を調整して、様々な分子構造および物理化学的特性を有する他の種類の薬剤を効率的に組み込むこともできる。
【0230】
他の特定の実施形態。
1つの特定の実施形態では、生分解性ブロック・コポリマーは、疎水性ブロックに連結したポリエーテル骨格を含む親水性ブロックを含み、疎水性ブロックは、第1の反復単位を含み、第1の反復単位は、i)エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカルボネートおよびジチオカルボネートからなる群から選択される第1の骨格官能基と、ii)尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基とを含む第1の側鎖を含み、疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成する。追加の実施形態では、ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される。別の追加実施形態では、親水性ブロックは、特定の細胞型と相互作用する部分を含む末端単位を含む。別の追加実施形態では、下記構造を持つ末端単位は、ガラクトース部分を含む。式中、−L’−は2〜50個の炭素を含む二価の結合基である。
【0231】
【化45】
【0232】
別の特定の実施形態では、水性ミセルが、上記の生分解性ブロック・コポリマーを含む。追加の実施形態では、ミセルは、内包ミセルの全乾燥重量に対して5wt.%〜50wt.%の非共有結合した生物活性材料を含む内包ミセルである。別の追加実施形態では、ミセルは、第2の生分解性ブロック・コポリマーをさらに含み、第2のブロック・コポリマーは、疎水性ブロックに連結したポリエーテル骨格を含む親水性ブロックを含み、疎水性ブロックは反復単位を含み、反復単位は、i)エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカルボネートおよびジチオカルボネートからなる群から選択される骨格官能基、およびii)カルボン酸基を含む側鎖を含み、第2のブロック・コポリマーの疎水性ブロックの側鎖は、共有結合した生物活性材料を含まない。別の追加実施形態では、第2のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される。
【0233】
別の特定の実施形態では、細胞を処置する方法が、上記の内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含む。
【0234】
別の特定の実施形態では、上記に詳述した開環重合方法は、有機触媒により触媒される。
【0235】
本明細書に使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定的することを意図するものではない。本明細書で使用する場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、複数形も同様に含むことを意図している。さらに、「を含む(comprises)」もしくは「を含む(comprising)」またはその両方の用語は、本明細書に使用される場合、上記の特徴、整数、ステップ、作業、構成要素、もしくは成分またはその全部の存在を明記するものであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、作業、構成要素、成分、もしくはこれらの群またはその全部の存在または追加を排除するものではないことも理解されよう。
【0236】
下記特許請求の範囲におけるミーンズ・プラス・ファンクション構成要素またはステップ・プラス・ファンクション構成要素に対応する構造、材料、動作、および等価物は、特許請求の範囲に記載されている他の構成要素と組み合わせて、その機能を明確に特許請求されているように実行するための任意の構造、材料または動作を含むことを意図している。例示および説明を目的として本発明について記載してきたが、本発明の記載は、網羅的であること、または開示した形態に本発明を限定することを意図するものではない。本発明の範囲および精神を逸脱することなく多くの修正および変形が当業者には明らかになるであろう。各実施形態については、本発明の原理およびその実用的用途を最もよく説明し、当業者が本発明を理解できるように選択し、記載した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ブロック・コポリマーであって、
ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、および
前記ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックであり、前記第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖部分を含む疎水性ブロック
を含み、
前記疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、前記ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成し、かつ前記ブロック・コポリマーはASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
生分解性ブロック・コポリマー。
【請求項2】
前記疎水性ブロックはポリエステル、ポリカーボネートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される骨格を含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項3】
前記疎水性ブロックは前記第1の反復単位のホモポリマーを含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項4】
前記疎水性ブロックは開環重合により第2の環式カルボニル・モノマーから誘導される第2の反復単位を含み、前記第1の反復単位は尿素基を含み、前記第2の反復単位はカルボン酸基を含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項5】
前記疎水性ブロックは、前記第1の環式カルボニル・モノマーおよび前記第2の環式カルボニル・モノマーを含む混合物の開環重合により得られるランダム・コポリマー鎖を含む、請求項4に記載のブロック・コポリマー。
【請求項6】
前記疎水性ブロックは前記第1の環式カルボニル・モノマー、続いて前記第2の環式カルボニル・モノマーの逐次開環重合により得られる、請求項4に記載のブロック・コポリマー。
【請求項7】
前記疎水性ブロックは前記第2の環式カルボニル・モノマー、続いて前記第1の環式カルボニル・モノマーの逐次開環重合により得られる、請求項6に記載のブロック・コポリマー。
【請求項8】
前記ポリエーテルアルコールは下記式(3)で表されるモノ末端誘導体化ポリ(アルキレングリコール)であり、
Z’−[CH2(CHR5)xCHR5O]n−H(3)
式中、xは0〜8であり、R5は各々水素、1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、下付き文字nは2〜10000の整数であり、Z’は2〜100個の炭素を含む一価のラジカルであり、かつ前記ポリ(アルキレングリコール)の末端反復単位を含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項9】
前記親水性ブロックは特定の細胞型と相互作用する部分を含む誘導体化された末端単位を含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項10】
前記誘導体化された末端単位は下記構造を持つはガラクトース部分を含み、
【化1】
式中、−L’−は前記親水性ブロックの前記末端単位を含む2〜50個の炭素を含む二価の結合基である、請求項9に記載のブロック・コポリマー。
【請求項11】
前記疎水性ブロックは2〜100個の炭素を含むエステルとしてエンドキャップされている、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項12】
前記ブロック・コポリマーは両親媒性であり、pH5.0〜8.0の水中で自己組織化して10nm〜500nmの平均粒度を有するナノ粒子を形成する、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項13】
前記第1の環式カルボニル化合物は下記式(5)で表される化合物であり、
【化2】
式中、
tは0〜6の整数であり、
Yは各々
【化3】
からなる群から独立に選択され、
Q1は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および
【化4】
構造を持つ基であり、式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1および−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
1つまたは複数のQ1基は尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む
化合物である、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項14】
前記第1の環式カルボニル化合物は下記式(6)で表される化合物であり、
【化5】
式中、
Q2は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および
【化6】
構造を持つ基であり、式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1または−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
R2は1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
Q3は水素、1〜30個の炭素を持つアルキル基、および6〜30個の炭素を持つアリール基からなる群から選択される一価のラジカルであり、
1つまたは複数のQ2基、Q3基もしくはR2基またはその全部は、尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む
請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項15】
前記第1の環式カルボニル化合物は下記式(7)で表される化合物であり、
【化7】
式中、
uは1〜8の整数であり、
Q4は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および
【化8】
構造を持つ基であり、式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1および−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
任意に、
【化9】
は独立に−O−、−S−、−NHR1または−NR1R1からなる群から選択される二価のラジカルを表し、
任意に、uが2以上である場合、
【化10】
は独立に
【化11】
を表し、
1つまたは複数のQ4基は尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む
請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項16】
前記第1の環式カルボニル化合物は式(8)で表される化合物であり、
【化12】
式中、
Q5は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素を含むアリール基、および
【化13】
構造を持つ基であり、式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1および−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
Q6は各々水素、1〜30個の炭素を持つアルキル基、および6〜30個の炭素を持つアリール基からなる群から独立に選択される一価の基であり、
vは各々独立に1〜6の整数を表し、
1つまたは複数のQ5基もしくはQ6基またはその両方は尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む
請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項17】
前記第1の環式カルボニル・モノマーは下記である、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【化14】
【請求項18】
生分解性ブロック・コポリマーを形成する方法であって、
ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合によりブロック・コポリマーを形成することを含み、前記ブロック・コポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、前記親水性ブロックは前記ポリエーテルアルコールから誘導され、前記疎水性ブロックは尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む第1の反復単位を含み、
前記疎水性ブロックは共有結合した生物活性材料を含む側鎖を含まず、前記ブロック・コポリマーは水中でミセルを形成し、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、前記ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
方法。
【請求項19】
前記親水性ブロックの末端単位を誘導体化することをさらに含む請求項18に記載の方法であって、前記誘導体化された末端単位は特定の細胞型と相互作用することができる部分を含む方法。
【請求項20】
前記誘導体化された末端単位は肝細胞と相互作用するガラクトース部分を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記疎水性ブロックの任意の側鎖潜在的カルボン酸をカルボン酸に変換することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第1の生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックと、前記ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含み、前記第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含み、前記疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、前記ブロック・コポリマーは非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、前記ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば、180日以内に60%生分解される生分解性ブロック・コポリマー
を含むミセル。
【請求項23】
前記ミセルはpH5.0〜8.0の水溶液中で10nm〜250nmの平均粒度を形成する、請求項22に記載のミセル。
【請求項24】
前記第1のブロック・コポリマーは0.01〜300mg/Lの臨界ミセル濃度を有する、請求項22に記載のミセル。
【請求項25】
前記親水性ブロックは特定の細胞型と相互作用する部分を含む誘導体化された末端単位を含む、請求項22に記載のミセル。
【請求項26】
前記ミセルは0%〜15%の細胞毒性を有する、請求項22に記載のミセル。
【請求項27】
前記疎水性ブロックは側鎖尿素基を含む、請求項22に記載のミセル。
【請求項28】
前記疎水性ブロックは下記の開環重合により得られる、請求項22に記載のミセル。
【化15】
【請求項29】
前記ミセルは内包ミセルであって、前記内包ミセルの全乾燥重量に対して5wt.%〜50wt.%の非共有結合した生物活性材料を含む内包ミセルである、請求項22に記載のミセル。
【請求項30】
前記非共有結合した生物活性材料は遺伝子、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、薬剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載のミセル。
【請求項31】
第2の生分解性ブロック・コポリマーであって、第2のポリエーテルアルコールから誘導される第2の親水性ブロックと、前記第2のポリエーテルアルコールにより開始される第2の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第2の疎水性ブロックとを含み、前記第2の疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、前記第2のブロック・コポリマーは側鎖カルボン酸基を含む第2の疎水性ブロックを含み、前記第2のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解されるブロック・コポリマーをさらに含む、請求項22に記載のミセル。
【請求項32】
細胞を処置する方法であって、
第1の生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、および前記ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックを含み、前記第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む生分解性ブロック・コポリマーと、
生物活性材料と
を含む内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含み、
前記第1のブロック・コポリマーは非共有結合性相互作用により前記生物活性材料を封鎖するのに好適であり、前記疎水性ブロックの側鎖は前記生物活性材料に共有結合しておらず、前記第1のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
方法。
【請求項33】
前記生物活性材料は薬剤である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記接触はインビトロ、エキソビボまたはインビボで行われる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記内包ミセルは0%〜20%の細胞毒性を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
生分解性ブロック・コポリマーであって、
疎水性ブロックに連結したポリエーテル骨格を含む親水性ブロックを含み、前記疎水性ブロックは第1の反復単位を含み、前記第1の反復単位はi)エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカルボネートおよびジチオカルボネートからなる群から選択される第1の骨格官能基と、ii)尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基とを含む第1の側鎖を含み、前記疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、前記ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成する
生分解性ブロック・コポリマー。
【請求項37】
前記ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される、請求項36に記載のブロック・コポリマー。
【請求項38】
前記親水性ブロックは特定の細胞型と相互作用する部分を含む末端単位を含む、請求項36に記載のブロック・コポリマー。
【請求項39】
前記末端単位は下記構造を持つガラクトース部分を含み、
【化16】
式中、−L’−は2〜50個の炭素を含む二価の結合基である、請求項38に記載のブロック・コポリマー。
【請求項40】
請求項36に記載の生分解性ブロック・コポリマーを含む水性ミセル。
【請求項41】
前記ミセルは内包ミセルであって、前記内包ミセルの全乾燥重量に対して5wt.%〜50wt.%の非共有結合した生物活性材料を含む内包ミセルである、請求項40に記載のミセル。
【請求項42】
第2の生分解性ブロック・コポリマーをさらに含む請求項40に記載のミセルであって、前記第2のブロック・コポリマーは疎水性ブロックに連結したポリエーテル骨格を含み、前記疎水性ブロックは反復単位を含み、前記反復単位はi)エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカルボネートおよびジチオカルボネートからなる群から選択される骨格官能基と、ii)カルボン酸基を含む側鎖とを含み、前記第2のブロック・コポリマーの前記疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まないミセル。
【請求項43】
前記第2のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される、請求項42に記載のミセル。
【請求項44】
請求項41に記載の内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含む細胞を処置する方法。
【請求項45】
前記開環重合は有機触媒により触媒される、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
生分解性ブロック・コポリマーであって、
ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、および
前記ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックであり、前記第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖部分を含む疎水性ブロック
を含み、
前記疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、前記ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成し、かつ前記ブロック・コポリマーはASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
生分解性ブロック・コポリマー。
【請求項2】
前記疎水性ブロックはポリエステル、ポリカーボネートおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される骨格を含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項3】
前記疎水性ブロックは前記第1の反復単位のホモポリマーを含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項4】
前記疎水性ブロックは開環重合により第2の環式カルボニル・モノマーから誘導される第2の反復単位を含み、前記第1の反復単位は尿素基を含み、前記第2の反復単位はカルボン酸基を含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項5】
前記疎水性ブロックは、前記第1の環式カルボニル・モノマーおよび前記第2の環式カルボニル・モノマーを含む混合物の開環重合により得られるランダム・コポリマー鎖を含む、請求項4に記載のブロック・コポリマー。
【請求項6】
前記疎水性ブロックは前記第1の環式カルボニル・モノマー、続いて前記第2の環式カルボニル・モノマーの逐次開環重合により得られる、請求項4に記載のブロック・コポリマー。
【請求項7】
前記疎水性ブロックは前記第2の環式カルボニル・モノマー、続いて前記第1の環式カルボニル・モノマーの逐次開環重合により得られる、請求項6に記載のブロック・コポリマー。
【請求項8】
前記ポリエーテルアルコールは下記式(3)で表されるモノ末端誘導体化ポリ(アルキレングリコール)であり、
Z’−[CH2(CHR5)xCHR5O]n−H(3)
式中、xは0〜8であり、R5は各々水素、1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、下付き文字nは2〜10000の整数であり、Z’は2〜100個の炭素を含む一価のラジカルであり、かつ前記ポリ(アルキレングリコール)の末端反復単位を含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項9】
前記親水性ブロックは特定の細胞型と相互作用する部分を含む誘導体化された末端単位を含む、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項10】
前記誘導体化された末端単位は下記構造を持つはガラクトース部分を含み、
【化1】
式中、−L’−は前記親水性ブロックの前記末端単位を含む2〜50個の炭素を含む二価の結合基である、請求項9に記載のブロック・コポリマー。
【請求項11】
前記疎水性ブロックは2〜100個の炭素を含むエステルとしてエンドキャップされている、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項12】
前記ブロック・コポリマーは両親媒性であり、pH5.0〜8.0の水中で自己組織化して10nm〜500nmの平均粒度を有するナノ粒子を形成する、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項13】
前記第1の環式カルボニル化合物は下記式(5)で表される化合物であり、
【化2】
式中、
tは0〜6の整数であり、
Yは各々
【化3】
からなる群から独立に選択され、
Q1は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および
【化4】
構造を持つ基であり、式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1および−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
1つまたは複数のQ1基は尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む
化合物である、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項14】
前記第1の環式カルボニル化合物は下記式(6)で表される化合物であり、
【化5】
式中、
Q2は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および
【化6】
構造を持つ基であり、式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1または−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
R2は1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
Q3は水素、1〜30個の炭素を持つアルキル基、および6〜30個の炭素を持つアリール基からなる群から選択される一価のラジカルであり、
1つまたは複数のQ2基、Q3基もしくはR2基またはその全部は、尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む
請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項15】
前記第1の環式カルボニル化合物は下記式(7)で表される化合物であり、
【化7】
式中、
uは1〜8の整数であり、
Q4は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素原子を含むアリール基、および
【化8】
構造を持つ基であり、式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1および−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
任意に、
【化9】
は独立に−O−、−S−、−NHR1または−NR1R1からなる群から選択される二価のラジカルを表し、
任意に、uが2以上である場合、
【化10】
は独立に
【化11】
を表し、
1つまたは複数のQ4基は尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む
請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項16】
前記第1の環式カルボニル化合物は式(8)で表される化合物であり、
【化12】
式中、
Q5は各々水素、ハロゲン化物、1〜30個の炭素を含むアルキル基、6〜30個の炭素を含むアリール基、および
【化13】
構造を持つ基であり、式中、M1は−R1、−OR1、−NHR1、−NR1R1および−SR1からなる群から選択される一価のラジカルであり、R1は各々1〜30個の炭素を含むアルキル基および6〜30個の炭素を含むアリール基からなる群から独立に選択される一価のラジカルである基からなる群から独立に選択される一価のラジカルであり、
Q6は各々水素、1〜30個の炭素を持つアルキル基、および6〜30個の炭素を持つアリール基からなる群から独立に選択される一価の基であり、
vは各々独立に1〜6の整数を表し、
1つまたは複数のQ5基もしくはQ6基またはその両方は尿素基、潜在的カルボン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む
請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【請求項17】
前記第1の環式カルボニル・モノマーは下記である、請求項1に記載のブロック・コポリマー。
【化14】
【請求項18】
生分解性ブロック・コポリマーを形成する方法であって、
ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合によりブロック・コポリマーを形成することを含み、前記ブロック・コポリマーは親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含み、前記親水性ブロックは前記ポリエーテルアルコールから誘導され、前記疎水性ブロックは尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む第1の反復単位を含み、
前記疎水性ブロックは共有結合した生物活性材料を含む側鎖を含まず、前記ブロック・コポリマーは水中でミセルを形成し、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、前記ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
方法。
【請求項19】
前記親水性ブロックの末端単位を誘導体化することをさらに含む請求項18に記載の方法であって、前記誘導体化された末端単位は特定の細胞型と相互作用することができる部分を含む方法。
【請求項20】
前記誘導体化された末端単位は肝細胞と相互作用するガラクトース部分を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記疎水性ブロックの任意の側鎖潜在的カルボン酸をカルボン酸に変換することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
第1の生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロックと、前記ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックとを含み、前記第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含み、前記疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、前記ブロック・コポリマーは非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適であり、前記ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば、180日以内に60%生分解される生分解性ブロック・コポリマー
を含むミセル。
【請求項23】
前記ミセルはpH5.0〜8.0の水溶液中で10nm〜250nmの平均粒度を形成する、請求項22に記載のミセル。
【請求項24】
前記第1のブロック・コポリマーは0.01〜300mg/Lの臨界ミセル濃度を有する、請求項22に記載のミセル。
【請求項25】
前記親水性ブロックは特定の細胞型と相互作用する部分を含む誘導体化された末端単位を含む、請求項22に記載のミセル。
【請求項26】
前記ミセルは0%〜15%の細胞毒性を有する、請求項22に記載のミセル。
【請求項27】
前記疎水性ブロックは側鎖尿素基を含む、請求項22に記載のミセル。
【請求項28】
前記疎水性ブロックは下記の開環重合により得られる、請求項22に記載のミセル。
【化15】
【請求項29】
前記ミセルは内包ミセルであって、前記内包ミセルの全乾燥重量に対して5wt.%〜50wt.%の非共有結合した生物活性材料を含む内包ミセルである、請求項22に記載のミセル。
【請求項30】
前記非共有結合した生物活性材料は遺伝子、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、薬剤およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載のミセル。
【請求項31】
第2の生分解性ブロック・コポリマーであって、第2のポリエーテルアルコールから誘導される第2の親水性ブロックと、前記第2のポリエーテルアルコールにより開始される第2の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第2の疎水性ブロックとを含み、前記第2の疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、前記第2のブロック・コポリマーは側鎖カルボン酸基を含む第2の疎水性ブロックを含み、前記第2のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解されるブロック・コポリマーをさらに含む、請求項22に記載のミセル。
【請求項32】
細胞を処置する方法であって、
第1の生分解性ブロック・コポリマーであって、ポリエーテルアルコールから誘導される親水性ブロック、および前記ポリエーテルアルコールにより開始される第1の環式カルボニル・モノマーの開環重合により得られる第1の反復単位を含む疎水性ブロックを含み、前記第1の反復単位は尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基を含む側鎖を含む生分解性ブロック・コポリマーと、
生物活性材料と
を含む内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含み、
前記第1のブロック・コポリマーは非共有結合性相互作用により前記生物活性材料を封鎖するのに好適であり、前記疎水性ブロックの側鎖は前記生物活性材料に共有結合しておらず、前記第1のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される
方法。
【請求項33】
前記生物活性材料は薬剤である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記接触はインビトロ、エキソビボまたはインビボで行われる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記内包ミセルは0%〜20%の細胞毒性を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
生分解性ブロック・コポリマーであって、
疎水性ブロックに連結したポリエーテル骨格を含む親水性ブロックを含み、前記疎水性ブロックは第1の反復単位を含み、前記第1の反復単位はi)エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカルボネートおよびジチオカルボネートからなる群から選択される第1の骨格官能基と、ii)尿素基、カルボン酸基およびこれらの混合物からなる群から選択される官能基とを含む第1の側鎖を含み、前記疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まず、前記ブロック・コポリマーは水中で自己組織化して、非共有結合性相互作用により生物活性材料を封鎖するのに好適なミセルを形成する
生分解性ブロック・コポリマー。
【請求項37】
前記ブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される、請求項36に記載のブロック・コポリマー。
【請求項38】
前記親水性ブロックは特定の細胞型と相互作用する部分を含む末端単位を含む、請求項36に記載のブロック・コポリマー。
【請求項39】
前記末端単位は下記構造を持つガラクトース部分を含み、
【化16】
式中、−L’−は2〜50個の炭素を含む二価の結合基である、請求項38に記載のブロック・コポリマー。
【請求項40】
請求項36に記載の生分解性ブロック・コポリマーを含む水性ミセル。
【請求項41】
前記ミセルは内包ミセルであって、前記内包ミセルの全乾燥重量に対して5wt.%〜50wt.%の非共有結合した生物活性材料を含む内包ミセルである、請求項40に記載のミセル。
【請求項42】
第2の生分解性ブロック・コポリマーをさらに含む請求項40に記載のミセルであって、前記第2のブロック・コポリマーは疎水性ブロックに連結したポリエーテル骨格を含み、前記疎水性ブロックは反復単位を含み、前記反復単位はi)エステル、カーボネート、カルバメート、尿素、チオカルバメート、チオカルボネートおよびジチオカルボネートからなる群から選択される骨格官能基と、ii)カルボン酸基を含む側鎖とを含み、前記第2のブロック・コポリマーの前記疎水性ブロックの側鎖は共有結合した生物活性材料を含まないミセル。
【請求項43】
前記第2のブロック・コポリマーは、ASTM D6400によれば180日以内に60%生分解される、請求項42に記載のミセル。
【請求項44】
請求項41に記載の内包ミセルのナノ粒子を含む水性混合物と細胞を接触させることを含む細胞を処置する方法。
【請求項45】
前記開環重合は有機触媒により触媒される、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−515814(P2013−515814A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545910(P2012−545910)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000485
【国際公開番号】WO2011/078803
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000485
【国際公開番号】WO2011/078803
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
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