虚像表示装置及びその製造方法
【課題】プリズム状部材との接合部に気泡が形成されにくく、良好な密着性を有するハードコート層によって保護された導光装置を備える虚像表示装置及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば導光部材21と光透過部材23とを接合する際に、下地面SFを被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、本実施形態の虚像表示装置100によれば、導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2反射面21a,21b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分21sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。
【解決手段】導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば導光部材21と光透過部材23とを接合する際に、下地面SFを被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、本実施形態の虚像表示装置100によれば、導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2反射面21a,21b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分21sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの画像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。
【0003】
このような虚像表示装置において、画像光と外界光とを重畳させるために、シースルー光学系の提案がなされている(特許文献1等参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の装置では、瞳サイズよりも射出開口が小さい導光光学系を用いる瞳分割方式によってシースルーを実現しているため、虚像の表示サイズを大きくすることが困難である。また、瞳サイズよりも小さい導光光学系を用いるため、人間の個々の眼幅に対応するために有効瞳径(虚像の取り込みを可能にする採光径であり、アイリング径とも呼ぶ)を大きくすることが困難である。また、物理的に瞳付近に導光光学系の射出開口や筐体が配置されるため、死角が生じてしまい完全なシースルーとはいえなくなる。
【0005】
なお、頭部装着ディスプレイ用の光学システムとして、導光角度の異なる複数の光モードを進行させることができる導光体を備えるものが存在する(特許文献2参照)。このような光学システムをおいて、射出側の第3光学面をハーフミラーとし、当該ハーフミラーを内部に埋め込むように導光体に対してプリズム状部材を貼り付けて全体を平板化することにより、ハーフミラー越しに外界光の観察を可能にするシースルー型の導光装置にすることが考えられる。さらに、導光体やプリズム状部材の本体部分を軽量な樹脂で形成して、虚像表示装置の軽量化を図るとともに、その表面をハードコート層で被覆することにより、導光体の全反射面やプリズム状部材の表面の耐擦傷性を高めることも考えられる。
【0006】
しかし、導光体とプリズム状部材とを接合する際に、接着剤の塗布ムラによって気泡が発生する。例えば接着剤の粘度が高いと気泡の逃げ道がなくなって気泡が接合部に残り、接着剤の粘度が低いと接着剤の液ダレによって塗布量不足が発生し、気泡形成の原因となる。
【0007】
また、導光体やプリズム状部材の表面にハードコート層を設ける場合、かかるハードコート層と本体部分の下地面との密着性を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−224473号公報
【特許文献2】特表2008−535001号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、虚像の画像光を導く導光装置であって、プリズム状部材との接合部に気泡が形成されにくい虚像表示装置及びその製造方法、又は、良好な密着性を有するハードコート層によって保護された導光装置を備える虚像表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、光入射部から取り込まれた画像光を対向して延びる第1及び第2反射面での全反射により導く導光部と、導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材と、を備え、(d)導光部材において被覆されている下地面のうち少なくとも一部が、粗面化されている。
【0011】
上記虚像表示装置では、導光部材において被覆されている下地面のうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば導光部材と他の光学部材とを接合する際に、下地面を被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、上記虚像表示装置では、導光部材において被覆されている下地面のうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2反射面等の外観露出面を形成し下地面を被覆するハードコート層を形成する際に、下地の本体部分の材料に関わらずハードコート層の密着性を確保することができる。
【0012】
本発明の具体的な側面では、導光部材に接合されることによって外界光の観察を可能にする光透過部材をさらに備え、導光部材及び光透過部材において被覆されている下地面としての接合面のうち少なくとも一部が、粗面化されている。この場合、導光部材と光透過部材との接合によって簡易に外界光の観察を可能にする透視部を設けることができる。
【0013】
本発明の別の側面では、導光部材及び光透過部材において露出するハードコート層と、導光部材及び光透過部材間の接着層とに接する下地面が、粗面化されている。これにより、導光部材及び光透過部材におけるハードコート層の密着性を高め、導光部材及び光透過部材の接合部に気泡が残ることを防止できる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、導光部材が、光透過部材と接合される第1接合面の部分領域上に、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる半透過反射膜を有し、光透過部材は、接着層を介して第1接合面に対して接着される第2接合面を有し、第1接合面及び第2接合面の少なくとも一方のうち、間に配置された接着層に接する部分が、下地面として粗面化されている。この場合、半透過反射膜の周囲で導光部材と光透過部材とが接着層を介して接合されるが、接合用の接着層に気泡が残りにくくなる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、光入射部が、第1反射面に対して所定の角度をなす第3反射面を有し、光射出部が、第1反射面に対して所定の角度をなす第4反射面が設けられるとともに接着層に接する第1接合面を有し、光透過部材が、第1反射面を延長した位置に配置される第1透過面と、第2射面を延長した位置に配置される第2透過面と、接着層を介して第1接合面に対向する第2接合面とを有し、半透過反射膜が第4反射面に形成され、第2接合面が粗面化されている。この場合、光入射部の第3反射面で反射された画像光が導光部の第1及び第2反射面で全反射されつつ伝搬され、光射出部の第4反射面で反射されて虚像として観察者の眼に入射する。ここで、光入射部と導光部と光射出部とを一体的なブロック状部材とすることにより、射出成形技術を利用して導光装置を高精度で形成することができる。また、第1及び第2接合面のうち第2接合面を粗面化して、導光部材と光透過部材とを接合することにより、導光部材と光透過部材との接合部に気泡が形成されることを抑制できる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2反射面と第1及び第2透過面とに形成されたハードコート層に接する本体側が、下地面として粗面化されている。第1及び第2反射面や第1及び第2透過面は、これらに設けたーバーコート層によって耐擦傷性を高めたものとなる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、導光部材を構成する本体部分が、紫外線硬化型の樹脂で形成されて、少なくとも一部に粗面化された下地面を有する。この場合、導光部材を構成する本体部分を熱可塑性の樹脂で形成する場合のように高温で処理する必要がなく、導光部材の形状精度を高めることができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、導光部材と、光透過部材と、ハードコート層と、接着層とが、同一の屈折率を有する材料で形成されている。この場合、導光部材の第1及び第2反射面等での光束の乱れを抑えて、外界光の正確な観察を可能にすることができる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、導光部材の本体部分と光透過部材の本体部分とが、メタクリルスチレンで形成されている。この場合、導光部材の高精度の射出成形が容易になり、導光部材の吸水性を低く維持することができ、光透過部材との十分な強度での接着性を確保でき、導光部材の透明性を高くすることができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、下地面のうち上記少なくとも一部の面粗さが、第1及び第2反射面の面粗さよりも大きい。
【0021】
本発明に係る虚像表示装置の製造方法は、画像光を形成する画像表示装置と、画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、光入射部から取り込まれた画像光を対向して延びる第1及び第2反射面での全反射により導く導光部と、導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材とを備える虚像表示装置の製造方法であって、導光部材の下地面のうち少なくとも一部を粗面化する第1の工程と、粗面化された下地面を被覆する第2の工程とを備える。
【0022】
上記製造方法では、導光部材の下地面のうち少なくとも一部を粗面化する第1の工程と、粗面化された下地面を被覆する第2の工程とを備えるので、例えば導光部材と他の光学部材とを接合する際に、下地面を被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなり、例えば第1及び第2反射面等の外観露出面を形成する下地面を被覆するハードコート層を形成する際に、下地の本体部分の材料に関わらずハードコート層の密着性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の虚像表示装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の本体部分の平面図であり、(B)は、本体部分の正面図である。
【図3】(A)は、導光部材の光入射部における第3反射面の構造を説明する図であり、(B)は、導光部材の導光部における第1及び第2反射面の構造を説明する図であり、(C)は、導光部材及び光透過部材の接合部の構造を説明する図であり、(D)は、光透過部材の第1及び第2面の構造を説明する図である。
【図4】(A)は導光部材の正面図であり、(B)は導光部材の下面図であり、(C)は導光部材の左側面図であり、(D)は導光部材の左側面図である。
【図5】(A)は光透過部材の裏面図であり、(B)は光透過部材のBB断面図であり、(C)は光透過部材の左側面図であり、(D)は光透過部材の右側面図である。
【図6】導光部材と光透過部材との接合部を概念的に説明する拡大断面図である。
【図7】導光部材のハードコート層を説明する拡大断面図である。
【図8】光透過部材のハードコート層を説明する拡大断面図である。
【図9】(A)は、縦の第1方向に関する光路を展開した概念図であり、(B)は、横の第2方向に関する光路を展開した概念図である。
【図10】虚像表示装置の光学系における光路を具体的に説明する平面図である。
【図11】(A)は、液晶表示デバイスの表示面を示し、(B)は、観察者に見える液晶表示デバイスの虚像を概念的に説明する図であり、(C)及び(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。
【図12】(A)及び(B)は、変形例の虚像表示装置の一部を説明する図である。
【図13】第2実施形態の導光装置を概念的に説明する拡大断面図である。
【図14】(A)は、第3実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光装置の正面図及び平面図である。
【図15】画像光の光路について説明する模式的な図である。
【図16】ハーフミラー層を含む接合部を説明する断面図である。
【図17】(A)は、第4実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光装置の正面図及び平面図である。
【図18】画像光の光路について説明する模式的な図である。
【図19】ハーフミラー層を含む接合部を説明する断面図である。
【図20】第3実施形態の虚像表示装置の変形例を説明する図である。
【図21】第1実施形態の虚像表示装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0025】
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、フレーム121のうち前方のカバー部分から後方のつる部分(テンプル)にかけての部分に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
【0026】
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0027】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
【0028】
画像表示装置11の照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。
【0029】
以上の画像表示装置11又は液晶表示デバイス32において、第1方向D1は、縦のY方向に相当し、第2方向D2は、横のX方向に相当する。第1方向D1と第2方向D2とは、投射光学系12を通る第1光軸AX1と直交し、互いに直交する。
【0030】
投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0031】
導光装置20は、導光部材21と、光透過部材23とを備える。導光部材21は、枠状の光透過部材23に嵌め込むように接合されて固定されており、全体としてXY面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
【0032】
導光装置20のうち、導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第1接合面21jとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3反射面21a,21b,21c及び第1接合面21jに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、XY面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、XY面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第1接合面21jは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。見方を変えれば、第3反射面21cは、第2反射面21bに対して鈍角ηをなし、第1接合面21jは、第2反射面21bに対して鈍角εをなしている。第3反射面21cを通る第1光軸AX1と第1接合面21jを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21hが設けられている。導光部材21は、この端面21hも含めると、7面の多面体状の外形を有するものとなっている。
【0033】
導光部材21は、第1及び第2反射面21a,21bによる全反射を利用して導光を行うものであり、導光に際して反射によって折り返される方向と、導光に際して反射によって折り返されない方向とがある。導光部材21で導光される画像について考えた場合、導光に際して複数回の反射によって折り返される横方向すなわち閉じ込め方向DW2は、第1及び第2反射面21a,21bに垂直(Z軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第2方向D2に相当する。一方、導光に際して反射によって折り返されないで伝搬する縦方向すなわち非閉じ込め方向DW1は、第1及び第2反射面21a,21b及び第3反射面21cに平行(Y軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第1方向D1に相当する。なお、導光部材21において、伝搬される光束が全体として向かう主導光方向は、−X方向になっている。
【0034】
導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分21sとして有し、本体部分(ブロック状部材)21sは、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。具体的な例では、導光部材21は、紫外線硬化型の樹脂で形成されている。このように導光部材21は、基材としての本体部分21sを一体形成品とするが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
【0035】
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、矩形の輪郭を有し、その矩形領域の略全体に亘って、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導くための反射ミラーであるミラー層25を有する。このミラー層25は、導光部材21の斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。
【0036】
図3(A)は、第3反射面21cの構造を説明するため、光入射部B1における表面部分SP1の断面を部分的に拡大した概念図である。第3反射面21cは、ミラー層25を有し保護層26で被覆されている。このミラー層25は、全反射のコーティングであり、導光部材21を構成する本体部分21sの斜面RS上にAl(アルミニウム)等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。
【0037】
図2(A)等に戻って、第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光GLを、全体として−Z方向寄りの−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。
【0038】
導光部B2は、互いに対向しXY面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aの面部分は、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通のものとなっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、その表面には、ミラー層等の非透過性の反射コートが施されていない。
【0039】
図3(B)は、第1反射面21aの構造と第2反射面21bの構造とを説明するため、導光部材21の導光部B2における表面部分SP2,SP3の断面を部分的に拡大した概念図である。第1及び第2反射面21a,21bは、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、ハードコート層27の被覆によって形成されている。このハードコート層27は、導光部材21の本体部分21sの下地面SF上に樹脂等からなるコート剤をディップ処理やスプレーコート処理によって成膜することによって形成される。
【0040】
図2(A)等に戻って、光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、導光部B2の第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、全体として導光装置20の奥側の主導光方向即ち光射出部B3を設けた−X側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには非透過性又は半透過性の反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
【0041】
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第1接合面21jとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための裏側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第1接合面21jは、略矩形の傾斜した面(斜面RS)であり、その一部に、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるための第4反射面21dを有する。
【0042】
第4反射面21dは、ハーフミラー層28を有している。このハーフミラー層28は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)である。ハーフミラー層(半透過反射膜)28は、第1接合面21jの全体ではなく、その部分領域PA0上に形成されている。つまり、第4反射面21dは、第1接合面21jの一部に相当する部分領域PA0上に形成されている。第1接合面21jのうち、ハーフミラー層28を形成すべき部分領域PA0は、縦方向である非閉じ込め方向DW1に関する中央側に配置されており、上下の両端側において、一対の周辺領域PA1,PA2に挟まれている。これらの周辺領域PA1,PA2を合わせた残領域(他領域)PAは、第4反射面21dとしてのハーフミラー層28が存在しない領域であり、画像光GL等を略そのまま透過させる。ハーフミラー層28は、導光部材21を構成する本体部分21sの一側面である第1接合面21jのうち部分領域PA0上に、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光GL’の観察を容易にする観点で、想定される画像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、画像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
【0043】
図3(C)は、第4反射面21d等の構造を説明するため、接合部分SP4の断面を部分的に拡大した概念図である。ここで、導光部材21の第4反射面21dと光透過部材23の第2接合面23cとの間、より正確にはハーフミラー層28と第2接合面23cとの間には、導光部材21と光透過部材23とを接合するための接着剤によって接着層CCが形成される。つまり、光透過部材23の第2接合面23cは、接着層CCによって被覆されているおり、接合部分SP4において、被覆されている下地面となっている。接着層CCは、導光部材21の本体部分21sや光透過部材23の本体部分23sと略等しい屈折率を有しており、導光部材21から光透過部材23にかけてこれらと接着層CCとの界面を通過する光が、当該界面において不要な反射をすることを抑制している。
【0044】
図2(A)等に戻って、第4反射面21d又は第1接合面21jは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、上記ハーフミラー層28により、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として−Z方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。なお、第4反射面21dを透過した画像光の成分は、光透過部材23に入射し、映像の形成には利用されない。
【0045】
図2(B)に示すように、導光部材21のうち画像光GLが通過する有効領域EAは、光入射部B1側で比較的縦長になっており、光射出部B3側で比較的横長になっている。第4反射面21d又はハーフミラー層28は、第1接合面21jの一部であるが、画像光GLの有効領域EAに対応してこれをカバーするように形成されており、導光部材21に導かれた画像光GLは、光入射部B1を無駄なく通過して観察者の眼EYに入射する。このように、ハーフミラー層28は、横長の輪郭を有するが、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの横長の輪郭に対応するものとなっている。
【0046】
光透過部材23は、可視域で高い光透過性を示し、導光部材21の本体部分21sと略同一の屈折率を有する樹脂材料で形成されている。光透過部材23は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分23sとして有する。本体部分(ブロック状部材)23sは、導光部材21と同様に、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。
【0047】
光透過部材23は、導光部材21の光射出部B3に隣接する透視用の光学部において、第1面23aと、第2面23bと、第2接合面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、XY面に沿って延びる。また、第2接合面23cは、XY面に対して傾斜しており、導光部材21の第1接合面21j又は第4反射面21dに対向して平行に配置されている。つまり、光透過部材23は、第2面23bと第2接合面23cとに挟まれた楔状部材WPを有するものとなっている。なお、光透過部材23は、楔状部材WPから延びて導光部材21を上下から挟むように支持する支持部として、後述する上側支持部材24bと下側支持部材24cとを有する。
【0048】
光透過部材23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置される第1透過面であり、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置される第2透過面であり、観察者の眼EYから遠い表側にある。第2接合面23cは、接着剤によって導光部材21の第1接合面21jに接合される矩形の光透過面である。以上の第1面(第1透過面)23aと第2接合面23cとなす角度は、導光部材21の第2反射面21bと第1接合面21jとのなす角度εと等しくなっており、第2面(第2透過面)23bと第2接合面23cとなす角度は、導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとのなす角度βと等しくなっている。
【0049】
光透過部材23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍において、透視部B4を構成している。すなわち、第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL’を高い透過率で透過させる。第2接合面23cも、外界光GL’を高い透過率で透過可能であるが、導光部材21の第4反射面21dに対応する領域では、ハーフミラー層28が存在することから、第2接合面23cを通過する外界光GL’は、例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL’とを重畳させたものを観察することになる。
【0050】
図3(D)は、光透過部材23の第1面(第1透過面)23aの構造と第2面(第2透過面)23bの構造とを説明するため、表面部分SP5,SP6の断面を部分的に拡大した概念図である。第1及び第2面23a,23bは、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、ハードコート層27の被覆によって形成されている。このハードコート層27は、光透過部材23の本体部分23sの下地面SF上に樹脂等からなるコート剤をディップ処理やスプレーコート処理によって成膜することによって形成される。
【0051】
〔C.導光部材及び光透過部材の個々の形状等〕
図4(A)〜4(D)に示すように、図2(A)の導光装置20を構成する導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、図5(A)〜5(D)に示すように、導光装置20を構成する左右一対の光透過部材23,23は、これらが一体となって正面視においてH字状の支持フレーム123を構成している。左右一対の光透過部材23,23は、左眼用の導光部材21と右眼用の導光部材21とにそれぞれ対応し、各光透過部材23は、U字型の外観を有し、導光部材21を嵌め込むように固定することで支持している。
【0052】
図4(A)等に示す導光部材21は、図5(A)等に示す支持フレーム123に対してそのくり抜き部SPを埋めるように嵌合して、支持フレーム123に設けた中央部材24aと上側支持部材24bと下側支持部材24cとに挟まれるように接合されることによって固定される。これにより、例えば図2(B)に示すような状態となり、全体として図1の光学パネル110が作製される。なお、支持フレーム123の中央部材24aには、鼻パッドを嵌め込むためのくり抜き24xが形成されている。また、支持フレーム123に設けた支持部材24b,24cの先端には、画像形成装置10の投射光学系12等を接続するための固定孔等を設けた連結部24e,24fが形成されている。
【0053】
図5(A)等に示す支持フレーム123又は光透過部材23の本体部分23sのうち、第2接合面23c、及び嵌合面24j,24kは、後に詳述するが、接合部から気泡を除去する観点で、粗面化された下地面となっている。なお、図4(A)等に示す導光部材21の本体部分21sのうち、第1接合面21j、第1の側面21e、第2の側面21f、及び支持面21q,21rも併せて、粗面化された面とすることができる。
【0054】
導光部材21の本体部分21sのうち、第1反射面21a及び第2反射面21bに対応する下地面は、後に詳述するが、ハードコート層27の密着性を確保する観点で、粗面化された面となっている。光透過部材23の本体部分23sのうち、第1面23a及び第2面23bに対応する下地面等も、ハードコート層27の密着性を確保する観点で、粗面化された面となっている。
【0055】
以上において、粗面化された面であるか否かは、その面粗さに基づいて判断するものとし、完成した第1反射面21a及び第2反射面21b等の面粗さよりも面粗さが大きくなっている。
【0056】
〔D.導光装置の製造〕
導光装置20を製造するため、導光装置20を構成する2つの導光部材21と支持フレーム123とを予め準備する。なお、導光部材21の本体部分21sを形成する際に、後のハードコート工程のため第1反射面21a及び第2反射面21bの下地面(本体部分21sの表面)が粗面化される。また、支持フレーム123を形成する際に、後の接合工程のため第2接合面23cが粗面化され、後のハードコート工程のため第1面23a及び第2面23bの下地面(本体部分23sの表面)が粗面化される。
【0057】
次に、2つの導光部材21を支持フレーム123に順次接合する。なお、2つの導光部材21を支持フレーム123に接合する前に、各導光部材21の第1接合面21jのうち部分領域PA0上に、予めハーフミラー層28が形成される(図4(A)参照)。
【0058】
まず、第1の導光部材21を支持フレーム123の一方の光透過部材23に接合する。具体的には、一方(例えば右半分)の光透過部材23の第2接合面23cや嵌合面24j,24k上に紫外線硬化型の樹脂からなる接着剤を塗布して広げる。つまり、ディスペンサーにより、一定量の接着剤を第2接合面23c等に広がるように塗布する。そして、第1の導光部材21をこの光透過部材23のくり抜き部SPに嵌め込む。これにより、第1の導光部材21が、その第1接合面21jが光透過部材23のハーフミラー層28及び残領域(他領域)PAに対向するように配置される。この際、一方の光透過部材23に設けた上側支持部材24bの嵌合面24jと、導光部材21の第1の側面21e及び支持面21qとが対向配置され、下側支持部材24cの嵌合面24kと、導光部材21の第2の側面21f及び支持面21rとが対向配置される。その後、第1の導光部材21の第1接合面21jを一方の光透過部材23の第2接合面23c等に押し付けつつ摺り合わせることにより、主に第1接合面21j及び第2接合面23c間の接着剤に付随する気泡を追い出す。最後に、第1及び第2接合面21j,23c間の薄く広げられた接着剤に対し、紫外線である硬化光を照射する。これにより、第1及び第2接合面21j,23c間の接着剤が硬化して、第1の導光部材21と一方の光透過部材23との接合が完了する。紫外線である硬化光は支持部材24b,24cにも照射されるので、光透過部材23に設けた上側支持部材24bの嵌合面24jと、導光部材21の第1の側面21e及び支持面21qとが接合されるとともに、下側支持部材24cの嵌合面24kと、導光部材21の第2の側面21f及び支持面21rとが接合される。この際、ハーフミラー層28と第2接合面23cとの間だけでなく、残領域PAと第2接合面23cとの間にも接着剤が充填され、接着剤の硬化によって接着層CCが形成されるので(図3(D)参照)、第1の導光部材21の第1接合面21jと一方の光透過部材23の第2接合面23cとの接合強度が高まる。さらに、上述のように、第1の導光部材21は、支持部材24b,24cによって上下から挟まれるように固定されており、一方の光透過部材23による支持強度が高められている。
【0059】
第2の導光部材21を支持フレーム123の他方の光透過部材23に接合する工程も同様であり、他方(例えば左半分)の光透過部材23の第2接合面23cや嵌合面24j,24k上に紫外線硬化型の接着剤を塗布し、第1接合面21jと、ハーフミラー層28及び残領域PAとが対向するとともに、支持部材24b,24cの嵌合面24j,24kと導光部材21の両側面21e,21f及び両支持面21q,21rとが対向するように配置する。その後、第2の導光部材21を他方の光透過部材23側に適度な力で押し付けつつ摺り合わせことにより、接着剤中の気泡を追い出す。最後に、薄く広げられた接着剤に対し、紫外線である硬化光を照射する。これにより、第1接合面21jと第2接合面23cとの間の接着剤と、嵌合面24j,24kと導光部材21の両側面21e,21f及び両支持面21q,21rとの間の接着剤とが硬化して、第2の導光部材21と他方の光透過部材23との接合が完了する。
【0060】
図6は、光透過部材23と導光部材21との接合部を説明する拡大断面図であり、図3(C)をより詳細にしたものとなっている。図示のように、第1及び第2接合面21j,23c間に形成された接着層CCによって、導光部材21の本体部分21sと、光透過部材23の本体部分23sとが連結されている。ここで、周辺の残領域PAについては、略鏡面の第1及び第2接合面21j,23cが接着層CCを介して直接接続されており、接合強度の確保が比較的容易である。一方、中央の部分領域PA0については、ハーフミラー層28が第1接合面21jと接着層CCとの間に存在しており、ハーフミラー層28は蒸着等によって形成された比較的付着力が弱いものであるから、接合強度の確保が比較的容易でない。結果的に、導光部材21と光透過部材23とは、主に周辺の残領域PAにおいて強固に接着され、導光部材21と光透過部材23とを組み合わせた導光装置20の強度も十分高いものとなる。
【0061】
本実施形態の場合、光透過部材23側の下地面である第2接合面23cにおいて、非平滑面として、微細な凹凸(起伏)41を有する粗面SRが形成されている。粗面(非平滑面)SRは、例えば本体部分23sの成形用金型の転写面に予め粗面化処理を行なうことによって形成される。また、粗面SRは、例えば本体部分23sの成形後に、サンドブラスト、化学薬品その他によるエッチング等の粗面化処理、表面改質処理を施すことによっても形成される。
【0062】
粗面SRを構成する微細な凹凸(起伏)41の深さは、例えば数μm〜数10μm程度(具体的には20μm以上)とする。なお、図面では誇張しているが、ハーフミラー層(半透過反射膜)28の厚みは、例えば数10μm程度であり、接着層CCの厚みは、例えば50〜100μm程度である。具体的な実施例において、光透過部材23の本体部分23sの屈折率と接着層CCの屈折率とは、略等しく、これらの差は、例えば0.02以下にした。これにより、粗面SRの存在によって外界光GL’が乱されることを防止できる。
【0063】
以上のように、第2接合面(下地面)23cを粗面SRとすることにより、接着剤の付着性や濡れ性が良くなり、第2接合面23c上に接着剤を塗布して広げる際に、接着剤の粘度を低くしても、比較的均一に接着剤を広げることができる。つまり、第2接合面23cは第1面23a等に対して傾斜しており、第2接合面23c上に接着剤を塗布した場合、粘度を低くすると液ダレが生じやすく、粘度を高くすると厚みが不均一になって接合面に気泡が残りやすくなる。一方、第2接合面23cを粗面SRとした場合、比較的粘度の低くい接着剤を塗布しても液ダレが生じにくく、広げた接着剤が比較的均一に保たれるので、第1接合面21jと第2接合面23cとの間に気泡が溜まりにくくなり、両接合面21j,23cの接合後に接着層CCに気泡が残ることを簡易に抑制できる。なお、接着層CCとして用いる樹脂としては、紫外線硬化型樹脂等を用いることができる。
【0064】
具体的な説明を省略するが、光透過部材23の嵌合面24j,24kも、下地面として微細な凹凸41を有する粗面SRとされている。嵌合面(下地面)24j,24kを粗面SRとすることにより、接着剤の付着性や濡れ性が良くなり、嵌合面24j,24k上に接着剤を塗布して広げる際に、接着剤の粘度を低くしても、比較的均一に接着剤を広げることができ、接合部に気泡が残ることを簡易に抑制できる。
【0065】
〔E.ハードコート層の被覆〕
図7は、導光部材21の表面を説明する拡大断面図であり、図3(B)をより詳細にしたものとなっている。図示のように、第1反射面21aや第2反射面21bは、本体部分21sの下地面SFをハードコート層27で被覆することによって形成されている。ここで、導光部材21の本体部分21sの下地面SFには、非平滑面として、微細な凹凸(起伏)141を有する粗面SRが形成されている。粗面(非平滑面)SRは、例えば本体部分21sの成形用金型の転写面に予め粗面化処理を行なうことによって形成される。また、粗面SRは、例えば本体部分21sの成形後に、サンドブラスト、化学薬品その他によるエッチング等の粗面化処理、表面改質処理を施すことによっても形成される。
【0066】
本体部分21sの粗面SRを構成する微細な凹凸(起伏)141の深さは、例えば数μm程度(具体的には2〜3μm)とする。なお、図面では誇張しているが、ハードコート層27の厚みは、例えば5〜10μm程度であり、凹凸を十分に埋めることができる。具体的な実施例において、導光部材21の本体部分21sの屈折率とハードコート層27の屈折率とは、略等しく、これらの差は、例えば0.02以下にした。これにより、粗面SRの存在によって導光部材21内で伝搬される画像光GL等が乱されることを防止できる。
【0067】
以上のように、導光部材21の本体部分21sの下地面SFを粗面SRとすることにより、ハードコート層27の密着性が高まり、ハードコート層27の耐擦傷性を高めることができる。特に、導光部材21の本体部分21sを紫外線硬化型の樹脂で整形した場合、ハードコート層27の付着性が低下する場合があるが、下地面SFを粗面SRとすることにより、本体部分21sの材質に関わらず、ハードコート層27の密着性を高めることができる。
【0068】
なお、導光部材21の本体部分21sをハードコート層27に対する密着性の極めて高い材料で形成すれば、下地面SFを粗面SRとしなくてもある程度の密着性を確保することができる。しかしながら、本実施形態のような虚像表示装置100では、導光部材21の本体部分21sを射出成形で形成し、吸水性が少なく、高精度の平坦度を達成する必要があり、ハードコート層27に対する密着性を確保することが容易でなくなる。このため、本体部分21s下地面SFを粗面化することで本体部分21sの材質に関わらずハードコート層27の密着性を高めることができる。
【0069】
なお、ハードコート層27の材料としては、例えば熱硬化型のシリコーン系の樹脂が用いられる。ハードコート層27の材料としては、シリカ等の耐擦傷性を有する無機材料の微粒子とバインダー樹脂とを複合化したものとすることもできる。また、導光部材21の本体部分21sの材料としては、射出成形の便宜や吸水性が低いこと、光透過部材23と十分な強度で接着又は接合できること、透明性が高いことを考慮して、例えば(メタ)アクリレートモノマーを他の重合性モノマーと共重合させることにより得た(メタ)アクリレート系化合物が用いられる。(メタ)アクリレートモノマー系モノマーの具体例としては、2,2−ビス(3,5−ジブロム−4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(β−ヒドロキシ−γ−(メタ)アクリロイルオキシ)プロポキシフェニル]プロパン等があげられる。また、(メタ)アクリレート系化合物と共重合させる他の重合性モノマーの具体例としては、スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族単官能性ビニルモノマー等があげられる。具体的な実施例では、ポリメタクリルスチレンを基材とするプラスチックが用いられた。本体部分21sの素材として他の一般的な材料も考えられるが、例えばポリカーボネートは、透明性の観点で劣り、アクリルは吸湿性の観点で劣り、シクロオレフィンは、接着性の観点で劣る。
【0070】
図8は、光透過部材23の表面を説明する拡大断面図であり、図3(D)をより詳細にしたものとなっている。図示のように、第1面23aや第2面23bは、本体部分23sの下地面SFをハードコート層27で被覆することによって形成されている。ここで、光透過部材23の本体部分23sの下地面SFには、非平滑面として、微細な凹凸(起伏)141を有する粗面SRが形成されている。粗面(非平滑面)SRは、例えば本体部分23sの成形用金型の転写面に予め粗面化処理を行なうことによって形成される。また、粗面SRは、例えば本体部分23sの成形後に、サンドブラスト、化学薬品その他によるエッチング等の粗面化処理、表面改質処理を施すことによっても形成される。
【0071】
本体部分23sの粗面SRを構成する微細な凹凸(起伏)141の深さは、例えば数μm程度(具体的には2〜3μm)とする。なお、ハードコート層27の厚みは、例えば5〜10μm程度であり、凹凸を十分に埋めることができる。具体的な実施例において、導光部材21の本体部分21sの屈折率と接着層CCの屈折率との差は、例えば0.02以下にした。これにより、粗面SRの存在によって光透過部材23を通過する外界光GL’が乱されることを防止できる。
【0072】
以上のように、光透過部材23の本体部分21sの下地面SFを粗面SRとすることにより、ハードコート層27の密着性が高まり、ハードコート層27の耐擦傷性を高めることができる。なお、光透過部材23の本体部分21sの材料としては、導光部材21の場合と同様に、射出成形の便宜や吸水性が低いこと、光透過部材23との十分な強度で接着又は接合できること、透明性が高いことを考慮して、例えば(メタ)アクリレートモノマーを他の重合性モノマーと共重合させることにより得た(メタ)アクリレート系化合物が用いられる。具体的な実施例では、ポリメタクリルスチレンを基材とするプラスチックが用いられた。
【0073】
〔F.画像光の光路の概要〕
以下、虚像表示装置100における画像光の光路の概要について説明する。
【0074】
図9(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のY’Z’面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
【0075】
上側の画像光GLaは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ1で上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ2(|φ2|=|φ1|)で下方向から傾いて入射する。以上の角度φ1,φ2は、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
【0076】
図9(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向D2の光路を説明する図である。第2方向D2に沿った横断面CS2すなわちXZ面(展開後のX’Z’面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+X側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GL1とし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−X側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GL2とする。
【0077】
右側の第1表示点P1からの画像光GL1は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ1で右方向から傾いて入射する。一方、左側の第2表示点P2からの画像光GL2は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ2(|θ2|=|θ1|)で左方向から傾いて入射する。以上の角度θ1,θ2は、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
【0078】
なお、第2方向D2又は閉じ込め方向DW2の横方向に関しては、導光部材21中で画像光GL1,GL2が反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GL1,GL2が導光部材21中で不連続に表現されている。また、観察者の眼EYについては、図2(A)の場合と比較して見ている方向が上下反対となっている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GL1,GL2の導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GL1の射出角度θ1’と左側の画像光GL2の射出角度θ2’とは異なるものに設定されている。
【0079】
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GL1,GL2は、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1又は非閉じ込め方向DW1に関しては、液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2又は閉じ込め方向DW2に関しては、液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
【0080】
〔G.横方向に関する画像光の光路〕
図10は、第1表示装置100Aにおける具体的な光路を説明する断面図である。投射光学系12は、3つのレンズL1,L2,L3を有している。
【0081】
液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL11,GL12は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第1反射角γ1で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL11,GL12は、第1反射角γ1を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、次いで再度第1反射面21aに入射して全反射される(第3回目の全反射)。結果的に、画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計3回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL11,GL12は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ1の傾きで平行光束として射出される。
【0082】
液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL21,GL22は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第2反射角γ2(γ2<γ1)で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL21,GL22は、第2反射角γ2を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、再度第1反射面21aに入射して全反射され(第3回目の全反射)、再度第2反射面21bに入射して全反射され(第4回目の全反射)、再々度第1反射面21aに入射して全反射される(第5回目の全反射)。結果的に、画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計5回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL21,GL22は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ2の傾きで平行光束として射出される。
【0083】
図10において、導光部材21を展開した場合に第1反射面21aに対応する仮想的な第1面121aと、導光部材21を展開した場合に第2反射面21bに対応する仮想的な第2面121bとを描いている。このように展開することにより、第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、光入射面ISに対応する入射等価面IS’を通過した後、第1面121aを2回通過し第2面121bを1回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かり、第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、光入射面ISに対応する入射等価面IS”を通過した後、第1面121aを3回通過し第2面121bを2回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かる。見方を変えると、観察者は、2つの位置の異なる入射等価面IS’,IS”の近傍に存在する投射光学系12のレンズL3を重ねて観察していることになる。
【0084】
図11(A)は、液晶表示デバイス32の表示面を概念的に説明する図であり、図11(B)は、観察者に見える液晶表示デバイス32の虚像を概念的に説明する図であり、図11(C)及び11(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。図11(A)に示す液晶表示デバイス32に設けた矩形の画像形成領域ADは、図11(B)に示す虚像表示領域AIとして観察される。虚像表示領域AIの左側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から右側にかけての部分に相当する第1投射像IM1が形成され、この第1投射像IM1は、図11(C)に示すように右側が欠けた部分画像となっている。また、虚像表示領域AIの右側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から左側にかけての部分に相当する投射像IM2が虚像として形成され、この第2投射像IM2は、図11(D)に示すように左半分が欠けた部分画像となっている。
【0085】
図11(A)に示す液晶表示デバイス32のうち第1投射像(虚像)IM1のみを形成する第1部分領域A10は、例えば液晶表示デバイス32の右端の第1表示点P1を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計3回全反射される画像光GL11,GL12を射出する。液晶表示デバイス32のうち第2投射像(虚像)IM2のみを形成する第2部分領域A20は、例えば液晶表示デバイス32の左端の第2表示点P2を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計5回全反射される画像光GL21,GL22を射出する。液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの中央寄りにおいて第1及び第2部分領域A10,A20に挟まれて縦長に延びる帯域SAからの画像光は、図11(B)に示す重複画像SIを形成している。つまり、液晶表示デバイス32の帯域SAからの画像光は、導光部B2において計3回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第1投射像IM1と、導光部B2において計5回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第2投射像IM2となって、虚像表示領域AI上で重畳していることになる。導光部材21の加工が精密で、投射光学系12によって正確にコリメートされた光束が形成されているならば、重複画像SIについて、2つの投射像IM1,IM2の重畳によるズレや滲みを防止することができる。
【0086】
上記実施形態の虚像表示装置100によれば、導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば導光部材21と他の光学部材である光透過部材23とを接合する際に、下地面SFを被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、本実施形態の虚像表示装置100によれば、導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2反射面21a,21b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分21sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。また、光透過部材23において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2面23a,23b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分23sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。
【0087】
以上の説明では、液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1を含む第1領域A10から射出された画像光GL11,GL12の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計3回で、液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2を含む第2領域A20から射出された画像光GL21,GL22の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計5回であるとしたが、全反射回数については適宜変更することができる。つまり、導光部材21の外形(すなわち厚みt、距離D、鋭角α,β)の調整によって、画像光GL11,GL12の全反射回数を計5回とし、画像光GL21,GL22の全反射回数を計7回とすることもできる。また、以上では、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が奇数となっているが、光入射面ISと光射出面OSとを反対側に配置するならば、すなわち導光部材21を平面視で平行四辺形型にすれば、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が偶数となる。
【0088】
図12(A)は、図2(A)等に示す導光部材21を変形した導光部材221を説明する図である。以上の説明では、導光部材21を伝播する画像光が第1及び第2反射面21a,21bに対して2つの反射角で全反射され2つのモードで伝搬するとしたが、図12(A)に示す変形例の導光部材221のように、3つの成分の画像光GL31,GL32,GL33が反射角γ1,γ2,γ3(γ1>γ2>γ3)でそれぞれ全反射されることを許容することもできる。この場合、液晶表示デバイス32から射出される画像光GLは、3つのモードで伝搬され、観察者の眼EYの位置において合成されて虚像として認識される。この場合、図12(B)に示すように、有効表示領域A0の左側に例えば計3回全反射の投射像IM21が形成され、有効表示領域A0の中央寄りに例えば計5回全反射の投射像IM22が形成され、有効表示領域A0の右側に例えば計7回全反射の投射像IM23が形成される。
【0089】
また、図2(B)に示す導光部材21の光射出面OSに対向してレンズその他の光学素子を配置することもできる。或いは、ハーフミラー層28は、曲面とすることができ、保護層で被覆されたホログラムシートに置き換えることもできる。ハーフミラー層28をホログラムシートに置き換える場合、照明装置31として可干渉性の高いものを使用し、ホログラムシートとして液晶表示デバイス32で形成された例えば3色の画像を個別に処理する積層型の回折シートを用いる。
【0090】
上記実施形態の虚像表示装置100によれば、光透過部材23において接着層CCによって被覆されている第2接合面23cが粗面化されているので、例えば導光部材21と光透過部材23とを接合する際に、第2接合面23cを被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、本実施形態の虚像表示装置100によれば、導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2反射面21a,21b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分21sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。また、光透過部材23において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2面23a,23b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分23sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。
【0091】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0092】
図13に示すように、第2実施形態の場合、導光部材21ではなく光透過部材23側にハーフミラー層28が形成されている。このため、光透過部材23の第2接合面23cの代わりに導光部材21の第1接合面21jが微細な凹凸41を有する粗面SRとなっている。この場合、比較的粘度の低くい接着剤を第1接合面21jに塗布しても液ダレが生じにくく、広げた接着剤が比較的均一に保たれるので、第1接合面21jと第2接合面23cとの間から気泡を追い出しやすくなり、両接合面21j,23cの接合後に接着層CCに気泡が残ることを簡易に抑制できる。
【0093】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0094】
図14(A)〜14(C)に示す虚像表示装置100は、画像形成装置10と、導光装置520とを一組として備える。導光装置520は、導光部材521と、支持部材529とを有している。導光部材521は、導光本体部材20aと、画像取出部である角度変換部523とを備える。なお、図14(A)は、図14(B)に示す導光部材521のA−A断面に対応する。
【0095】
導光部材521の全体的な外観は、図中XY面に平行に延びる平板である導光本体部材20aによって形成されている。また、導光部材521は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cとを有する。また、導光部材521は、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。さらに、導光部材521は、長手方向の一端において導光本体部材20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する第3反射面21cを有し、長手方向の他端において導光本体部材20aに埋め込まれた多数の微小ミラーによって構成される角度変換部523を有する構造となっている。導光部材521は、一体的な部品であるが、第1実施形態の場合と同様に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができ(図14(C)参照)、このうち光入射部B1は、第3反射面21cと後述する光入射面ISとを有する部分であり、光入射部B1は、第1及び第2反射面21a,21bを有する部分であり、導光部B2は、角度変換部523と後述する光射出面OSとを有する部分である。
【0096】
導光本体部材20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、XY面に平行で画像形成装置10に対向する裏側又は観察者側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射面ISと、画像光を観察者の眼EYに向けて射出させる光射出面OSとを有している。導光本体部材20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される入射光折曲部である第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光を、全体として−Z方向に偏った−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光本体部材20a内に確実に結合させる。導光本体部材20aは、入口側の第3反射面21cから奥側の角度変換部523にかけて延在し、プリズム部PSを介して内部に入射させた画像光を角度変換部523に導く。
【0097】
導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の導光本体部材20aの主面であり互いに対向しXY面に対して平行に延びる2平面として、プリズム部PS又は光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光装置520の奥側即ち角度変換部523を設けた−X側に導かれる。
【0098】
導光本体部材20aの光射出面OSに対向して配置される角度変換部523は、導光部材521の奥側(−X側)において、第2反射面21bの延長平面に沿ってこの延長平面に近接して形成されている。角度変換部523は、導光本体部材20aの第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。つまり、角度変換部523は、画像光の角度を変換している。
【0099】
支持部材529は、図14(B)に示すように、導光部材521を支持するための支持フレーム(不図示)の一部であり、X方向に延びる上側支持部材24bと下側支持部材24cとをそれぞれ有し、導光部材521を挟むようにして固定している。
【0100】
画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光部材521に入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸AXに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部523において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。当該虚像光が観察者の網膜において結像することで、観察者は虚像による映像光等の画像光を認識することができる。
【0101】
以下、導光装置520中の画像光の光路について説明する。なお、第3実施形態における導光装置520は、縦の第1方向D1(Y方向)に関して、図1(A)の導光装置20と同様に機能する。一方、導光装置520は、横の第2方向D2(X方向)に関して、多数の伝搬モードの画像光を導光させるものとなっており、2つの伝搬モードの画像光を導光させる図2(A)の導光装置20と異なっている。
【0102】
図14(A)に示すように、画像表示装置11の液晶表示デバイス(画像光形成部)32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL51とし、射出面32aの紙面右側(+X側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL52とし、射出面32aの紙面左側(−X側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL53とする。
【0103】
投射光学系12を経た各画像光GL51,GL52,GL53の主要成分は、導光部材521の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL51,GL52,GL53のうち、液晶表示デバイス(画像光形成部)32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL51は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、標準反射角γ0で導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL51は、標準反射角γ0を保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL51は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部523の中央部23kに達する。この中央部23kで反射された画像光GL51は、光射出面OSから当該光射出面OS又はXY面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。
【0104】
液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+X側)から射出された画像光GL52は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最大反射角γ+で導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL52は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部523のうち最も奥側(−X側)の周辺部23hに達する。この周辺部23hで反射された画像光GL52は、入口の第3反射面21c側に戻されるように+X軸に対して鋭角をなし、光軸AXに対して角度θ12(導光装置520内ではθ12’)だけ傾斜した方向に射出される(図15参照)。
【0105】
液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−X側)から射出された画像光GL53は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γ−で導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL53は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部523のうち最も入口側(+X側)の周辺部23mに入射する。この周辺部23mで反射された画像光GL53は、第3反射面21c側から離れるように+X軸に対して鈍角をなし、光軸AXに対して角度θ13(導光装置520内ではθ13’)だけ傾斜した方向に射出される(図15参照)。
【0106】
なお、図15に示すように、角度変換部523は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット2cで構成される。つまり、角度変換部523は、Y方向に延びる細長い反射ユニット2cを所定のピッチPTで角度変換部523の延びる主導光方向すなわち−X方向に沿って多数配列させることで構成されている。各反射ユニット2cは、奥側即ち光路下流側に配置される1つの反射面部分である第1の反射面2aと、入口側即ち光路上流側に配置される他の1つの反射面部分である第2の反射面2bとを1組のものとして有し、両反射面2a,2bは、一定の楔角δをなしている。これらのうち、少なくとも第2の反射面2bは、一部の光を透過可能な部分反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。当該反射ユニット2cにおいて、画像光GL52,53は、最初に奥側即ち−X側の第1の反射面2aで反射され、次に、入口側即ち+X側の第2の反射面2bで反射される。当該反射ユニット2cを経た画像光GL52,53は、他の反射ユニット2cを経ることなく、角度変換部523での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0107】
図16に示すように、角度変換部523は、導光本体部材20aにおいて入り口側から延びる比較的厚い板状の接合部材521nと、奥側から延びる比較的薄い板状の接合部材523nとを接合した構造を有する。接合部材521nは、表側又は外界側に第1接合面21jを有し、接合部材523nは、裏側又は観察者側に第2接合面523cを有する。接合部材521nの第1接合面21j上には、局所的な部分領域上に半透過反射膜であるハーフミラー層28が形成されている。ここで、ハーフミラー層28が形成されている領域は、図2(B)に示す部分領域PA0と同様のものとなっている。導光部材521において、接合部材521nと接合部材523nとは、図6の導光部材21及び光透過部材23と同様に、部分領域PA0及びその周辺において接着層CCによって互いに接合されている。この場合、接合部材523nの第2接合面(下地面)523cは、微細な凹凸41を有する粗面SRとされている。第2接合面523cを粗面SRとすることにより、第2接合面523c上に接着剤を塗布して広げる際に、粘度低い接着剤を比較的均一に広げることができ、接合部に気泡が残ることを簡易に抑制できる。
【0108】
なお、接合部材521nや接合部材523nの表面(具体的には反射面21a,21b等)は、図7及び8と同様に、本体部分21s,23sの下地面SFをハードコート層27で被覆することによって形成されている。ここで、導光部材521の本体部分21sの下地面SFには、非平滑面として、微細な凹凸141を有する粗面SRが形成されている。このように、接合部材521nや接合部材523nの本体部分21s,23sの下地面SFを粗面SRとすることにより、ハードコート層27の密着性が高まり、ハードコート層27の耐擦傷性を高めることができる。本体部分21s,23sの素材としては、第1実施形態の場合と同様に、例えばメタクリルスチレン等を用いることができる。
【0109】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0110】
図17(A)〜17(C)に示す虚像表示装置100は、画像形成装置10と、導光装置620とを一組として備える。導光装置620は、導光部材621と、支持部材629とを備える。導光部材621は、導光本体部材20aと、画像取出部である角度変換部623とを備える。なお、図17(A)は、図17(B)に示す導光装置620のA−A断面に対応する。
【0111】
導光部材621の全体的な外観は、図中XY面に平行に延びる平板である導光本体部材20aによって形成されている。また、導光部材621は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第1接合面21jとを有する。また、導光部材621は、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。さらに、導光部材621は、長手方向の一端において導光本体部材20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する第3反射面21cを有し、長手方向の他端において多数のミラーによって構成される角度変換部623につながる構造となっている。
【0112】
導光本体部材20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、XY面に平行で画像形成装置10に対向する裏側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射面ISを有している。導光本体部材20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光を、全体として−Z方向に偏った−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光本体部材20a内に確実に結合させる。
【0113】
導光部材621の第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の導光本体部材20aの主面であり互いに対向しXY面に対して平行に延びる2平面として、プリズム部PSで折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光部材621の奥側即ち角度変換部623を設けた−X側に導かれる。
【0114】
図17(C)に示すように、導光部材621において、第3反射面21cと後述する光入射面ISとは、光入射部B1として機能する。また、導光部材621の第1及び第2反射面21a,21bに挟まれた導光本体部材20aと、後述する角度変換部623とは、導光部B2として機能する。なお、角度変換部623は、光射出部B3として機能する。
【0115】
角度変換部623は、導光部材621の奥側(−X側)において、第1及び第2反射面21a,21bの延長平面に沿って形成されている。ここで、導光本体部材20aの奥側端部は、角度変換部623の一部となっている。角度変換部623は、第1及び第2反射面21a,21bに対して傾斜し互いに平行に等間隔で配列される多数のハーフミラー層28を有する。角度変換部623は、導光本体部材20aの第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OSを介して観察者の眼EY側へ折り曲げる。つまり、角度変換部623は、画像光の角度を変換している。
【0116】
光透過部材323は、角度変換部623を奥側(−X側)に延長した部分であり、導光部材621の導光本体部材20aと同様に平板状の部材である。
【0117】
以上において、角度変換部623の全部又は入口側の一部は、導光本体部材20aと組み合わせることで導光部B2の一部としても機能している。また、角度変換部623の全部又は奥側の一部は、光透過部材323と組み合わせることで透視部として機能している。
【0118】
支持部材629は、図17(B)に示すように、導光部材621を支持するための支持フレーム(不図示)の一部であり、X方向に延びる上側支持部材24bと下側支持部材24cとをそれぞれ有し、導光部材621を挟むようにして固定している。
【0119】
画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光部材621に入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光部材621の第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸AXに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部623において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に角度変換部623に付随する光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。
【0120】
以下、導光装置620中の画像光の光路について説明する。なお、第2実施形態における導光装置620は、縦の第1方向D1(Y方向)に関して、図1(A)の導光装置20と同様に機能する。一方、導光装置620は、横の第2方向D2(X方向)に関して、多数の伝搬モードの画像光を導光させるものとなっており、2つの伝搬モードの画像光を導光させる図2(A)の導光装置20と異なっている。
【0121】
図17(A)に示すように、画像表示装置11の液晶表示デバイス(画像光形成部)32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL61とし、射出面32aの紙面右側(+X側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL62とし、射出面32aの紙面左側(−X側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL63とする。
【0122】
投射光学系12を経た各画像光GL61,GL62,GL63の主要成分は、導光部材21の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL61,GL62,GL63のうち、液晶表示デバイス(画像光形成部)32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL61は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、標準反射角γ0で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL61は、標準反射角γ0を保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL61は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部623の中央部23kに達する。この中央部23kで反射された画像光GL61は、光射出面OSから当該光射出面OS又はXY面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。
【0123】
液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+X側)から射出された画像光GL62は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最大反射角γ+で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL62は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部623のうち最も入口側(+X側)の周辺部23mに達する。この周辺部23mで反射された画像光GL62は、入口の第3反射面21c側から離れるように+X軸に対して鈍角をなし、光軸AXに対して角度θ12(導光装置620内ではθ12’)だけ傾斜した方向に射出される(図18参照)。
【0124】
液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−X側)から射出された画像光GL63は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γ−で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL63は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部623のうち最も奥側(−X側)の周辺部23hに入射する。この周辺部23hで反射された画像光GL63は、第3反射面21c側に戻されるように+X軸に対して鋭角をなし、光軸AXに対して角度θ13(導光装置620内ではθ13’)だけ傾斜した方向に射出される(図18参照)。
【0125】
図19に示すように、角度変換部623は、複数のプリズム624を所定のピッチでX方向に多数配列した構造を有する。各プリズム624は、光射出側に第1接合面624jを有し、光入射側に第2接合面624cを有する。導光本体部材20aの第1接合面21j上又は各プリズム624の第1接合面624j上には、局所的な部分領域上に半透過反射膜であるハーフミラー層28が形成されている。ここで、ハーフミラー層28が形成されている領域は、図2(B)に示す部分領域PA0と同様のものとなっている。導光部材621において、導光本体部材20aと角度変換部623とは、接着層CCによって互いに接合されている。また、角度変換部623中の隣接する一対のプリズム624は、接着層CCによって互いに接合されている。さらに、光透過部材323と角度変換部623とは、接着層CCによって互いに接合されている。各プリズム624の第2接合面(下地面)624cと光透過部材323の第2接合面(下地面)623cとは、微細な凹凸41を有する粗面SRとされている。このように、第2接合面(下地面)624c,623cを粗面SRとすることにより、これら第2接合面624c,623c上に接着剤を塗布して広げる際に、粘度低い接着剤を比較的均一に広げることができ、接合部に気泡が残ることを簡易に抑制できる。
【0126】
なお、導光本体部材20aと角度変換部623と光透過部材323との表面(具体的には反射面21a,21b等)は、図7及び8と同様に、本体部分21s,24s,23sの下地面SFをハードコート層27で被覆することによって形成されている。ここで、導光部材21の本体部分21sの下地面SFには、非平滑面として、微細な凹凸141を有する粗面SRが形成されている。このように、接合部材521nや接合部材523nの本体部分21s,23sの下地面SFを粗面SRとすることにより、ハードコート層27の密着性が高まり、ハードコート層27の耐擦傷性を高めることができる。
【0127】
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0128】
上記の説明では、第1接合面21jと第2接合面23cとを部分領域PA0と残領域PAとで接着しているが、第1接合面21jと第2接合面23cとを残領域PAのみで接着することもできる。この場合、残領域PA全体で接着することもできるが、残領域PAに設けた複数箇所の接着領域で接着することもできる。なお、第2接合面23cは、接着しない部分では、透過性の観点から粗面化しないことが望ましい。
【0129】
上記の説明では、ハーフミラー層(半透過反射膜)28が横長の矩形領域に形成されるとしたが、ハーフミラー層28の輪郭は用途その他の使用に応じて適宜変更することができる。ただし、ハーフミラー層28は、有効領域EAを十分にカバーしていることが望ましい。
【0130】
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
【0131】
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図11(B)等に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
【0132】
上記実施形態では、画像表示装置11として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像表示装置11としては、透過型の液晶表示デバイス32に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置11として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
【0133】
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光装置20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0134】
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光入射面ISを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
【0135】
上記の説明では、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とを備える導光装置20,520,620を用いたが、光入射部B1や光射出部B3において、ハーフミラー層28等として平面ハーフミラー又は平面ミラーを用いる必要はなく、球面又は非球面の曲面ミラーによってレンズ的な機能を持たせることもできる。さらに、ハーフミラー層28等に代えて仮想的な半透過ミラーとしてのホログラム素子を配置することもできる。この場合、ホログラム素子も、広義の半透過反射面である。なお、かかるホログラム素子には、集光等の光学的な機能を付加することもできる。
【0136】
図20は、図16に示す第3実施形態の変形例を説明するものである。この変形例は、ホログラム素子を用いており、角度変換部523として、多数の反射ユニット2cを配列したものではなく、複数のホログラム素子を積層したホログラム層902cを備えるものを用いている。
【0137】
さらに、図21に示すように、光入射部B1として、導光部B2から分離したプリズム又はブロック状のリレー部材1025を用いることができ、このリレー部材1025の入射出射面や反射内面にレンズ的な機能を持たせることもできる。なお、導光部B2を構成する導光体26には、画像光GLを反射によって伝搬させる第1及び第2反射面21a,21bが設けられているが、これらの反射面21a,21bは、互いに平行である必要はなく、曲面とすることもできる。図21に示す導光体26は、光透過部材23と接合され、両者の接合部には、ハーフミラー層28が設けられる。この場合も、第1実施形態の場合と同様に、例えば光透過部材23側の下地面である第2接合面23cにおいて、微細な凹凸(起伏)を有する粗面SR(図6参照)が形成されており、導光体26と光透過部材23とを接合する際に、接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、導光体26においてハードコート層27で被覆されている下地面が粗面化されているので、導光体26の下地である本体部分21s等の材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。なお、リレー部材1025もハードコート層27で被覆することができ、この場合、リレー部材1025の下地面を粗面化することで、ハードコート層27の密着性を高めることができる。
【0138】
上記の説明では、反透過反射膜としてのハーフミラー層28が金属反射膜や誘電体多層膜により形成され、ホログラム素子に置き換えることもできるとしたが、ハーフミラー層28は、減光を伴う各種半透過シートに置き換えることもできる。
【0139】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0140】
上記の説明では、第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【0141】
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、光学パネル110は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。
【符号の説明】
【0142】
AX1,AX2…光軸、 B1…光入射部B2…導光部、 B3…光射出部、 B4…透視部、 CC…接着層、 EY…眼、 GL…画像光、 GL’…外界光、 GL1,GL2…画像光、 IM1,IM2…投射像、 IS…光入射面、 OS…光射出面、 PA…残領域、 PA0…部分領域、 PA1,PA2…周辺領域、 PS…プリズム部、 RS…斜面、 SF…下地面、 SR…粗面、 10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 20…導光装置、 20a…導光本体部材、 21…導光部材、 21a…第1反射面、 21b…第2反射面、 21c…第3反射面、 21d…第4反射面、 21j…第1接合面、 21s,24s,23s…本体部分、 23…光透過部材、 23a…第1面(第1透過面)、 23b…第2面(第2透過面)、 23c…第2接合面(下地面)、 25…ミラー層、 27…ハードコート層、 28…ハーフミラー層、 31…照明装置、 31a…光源、 34…駆動制御部、 41,141…凹凸、 100…虚像表示装置、 100A,100B…表示装置、 110…光学パネル、 123…支持フレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの画像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。
【0003】
このような虚像表示装置において、画像光と外界光とを重畳させるために、シースルー光学系の提案がなされている(特許文献1等参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の装置では、瞳サイズよりも射出開口が小さい導光光学系を用いる瞳分割方式によってシースルーを実現しているため、虚像の表示サイズを大きくすることが困難である。また、瞳サイズよりも小さい導光光学系を用いるため、人間の個々の眼幅に対応するために有効瞳径(虚像の取り込みを可能にする採光径であり、アイリング径とも呼ぶ)を大きくすることが困難である。また、物理的に瞳付近に導光光学系の射出開口や筐体が配置されるため、死角が生じてしまい完全なシースルーとはいえなくなる。
【0005】
なお、頭部装着ディスプレイ用の光学システムとして、導光角度の異なる複数の光モードを進行させることができる導光体を備えるものが存在する(特許文献2参照)。このような光学システムをおいて、射出側の第3光学面をハーフミラーとし、当該ハーフミラーを内部に埋め込むように導光体に対してプリズム状部材を貼り付けて全体を平板化することにより、ハーフミラー越しに外界光の観察を可能にするシースルー型の導光装置にすることが考えられる。さらに、導光体やプリズム状部材の本体部分を軽量な樹脂で形成して、虚像表示装置の軽量化を図るとともに、その表面をハードコート層で被覆することにより、導光体の全反射面やプリズム状部材の表面の耐擦傷性を高めることも考えられる。
【0006】
しかし、導光体とプリズム状部材とを接合する際に、接着剤の塗布ムラによって気泡が発生する。例えば接着剤の粘度が高いと気泡の逃げ道がなくなって気泡が接合部に残り、接着剤の粘度が低いと接着剤の液ダレによって塗布量不足が発生し、気泡形成の原因となる。
【0007】
また、導光体やプリズム状部材の表面にハードコート層を設ける場合、かかるハードコート層と本体部分の下地面との密着性を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−224473号公報
【特許文献2】特表2008−535001号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、虚像の画像光を導く導光装置であって、プリズム状部材との接合部に気泡が形成されにくい虚像表示装置及びその製造方法、又は、良好な密着性を有するハードコート層によって保護された導光装置を備える虚像表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、光入射部から取り込まれた画像光を対向して延びる第1及び第2反射面での全反射により導く導光部と、導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材と、を備え、(d)導光部材において被覆されている下地面のうち少なくとも一部が、粗面化されている。
【0011】
上記虚像表示装置では、導光部材において被覆されている下地面のうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば導光部材と他の光学部材とを接合する際に、下地面を被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、上記虚像表示装置では、導光部材において被覆されている下地面のうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2反射面等の外観露出面を形成し下地面を被覆するハードコート層を形成する際に、下地の本体部分の材料に関わらずハードコート層の密着性を確保することができる。
【0012】
本発明の具体的な側面では、導光部材に接合されることによって外界光の観察を可能にする光透過部材をさらに備え、導光部材及び光透過部材において被覆されている下地面としての接合面のうち少なくとも一部が、粗面化されている。この場合、導光部材と光透過部材との接合によって簡易に外界光の観察を可能にする透視部を設けることができる。
【0013】
本発明の別の側面では、導光部材及び光透過部材において露出するハードコート層と、導光部材及び光透過部材間の接着層とに接する下地面が、粗面化されている。これにより、導光部材及び光透過部材におけるハードコート層の密着性を高め、導光部材及び光透過部材の接合部に気泡が残ることを防止できる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、導光部材が、光透過部材と接合される第1接合面の部分領域上に、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる半透過反射膜を有し、光透過部材は、接着層を介して第1接合面に対して接着される第2接合面を有し、第1接合面及び第2接合面の少なくとも一方のうち、間に配置された接着層に接する部分が、下地面として粗面化されている。この場合、半透過反射膜の周囲で導光部材と光透過部材とが接着層を介して接合されるが、接合用の接着層に気泡が残りにくくなる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、光入射部が、第1反射面に対して所定の角度をなす第3反射面を有し、光射出部が、第1反射面に対して所定の角度をなす第4反射面が設けられるとともに接着層に接する第1接合面を有し、光透過部材が、第1反射面を延長した位置に配置される第1透過面と、第2射面を延長した位置に配置される第2透過面と、接着層を介して第1接合面に対向する第2接合面とを有し、半透過反射膜が第4反射面に形成され、第2接合面が粗面化されている。この場合、光入射部の第3反射面で反射された画像光が導光部の第1及び第2反射面で全反射されつつ伝搬され、光射出部の第4反射面で反射されて虚像として観察者の眼に入射する。ここで、光入射部と導光部と光射出部とを一体的なブロック状部材とすることにより、射出成形技術を利用して導光装置を高精度で形成することができる。また、第1及び第2接合面のうち第2接合面を粗面化して、導光部材と光透過部材とを接合することにより、導光部材と光透過部材との接合部に気泡が形成されることを抑制できる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、第1及び第2反射面と第1及び第2透過面とに形成されたハードコート層に接する本体側が、下地面として粗面化されている。第1及び第2反射面や第1及び第2透過面は、これらに設けたーバーコート層によって耐擦傷性を高めたものとなる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、導光部材を構成する本体部分が、紫外線硬化型の樹脂で形成されて、少なくとも一部に粗面化された下地面を有する。この場合、導光部材を構成する本体部分を熱可塑性の樹脂で形成する場合のように高温で処理する必要がなく、導光部材の形状精度を高めることができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、導光部材と、光透過部材と、ハードコート層と、接着層とが、同一の屈折率を有する材料で形成されている。この場合、導光部材の第1及び第2反射面等での光束の乱れを抑えて、外界光の正確な観察を可能にすることができる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、導光部材の本体部分と光透過部材の本体部分とが、メタクリルスチレンで形成されている。この場合、導光部材の高精度の射出成形が容易になり、導光部材の吸水性を低く維持することができ、光透過部材との十分な強度での接着性を確保でき、導光部材の透明性を高くすることができる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、下地面のうち上記少なくとも一部の面粗さが、第1及び第2反射面の面粗さよりも大きい。
【0021】
本発明に係る虚像表示装置の製造方法は、画像光を形成する画像表示装置と、画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、光入射部から取り込まれた画像光を対向して延びる第1及び第2反射面での全反射により導く導光部と、導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材とを備える虚像表示装置の製造方法であって、導光部材の下地面のうち少なくとも一部を粗面化する第1の工程と、粗面化された下地面を被覆する第2の工程とを備える。
【0022】
上記製造方法では、導光部材の下地面のうち少なくとも一部を粗面化する第1の工程と、粗面化された下地面を被覆する第2の工程とを備えるので、例えば導光部材と他の光学部材とを接合する際に、下地面を被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなり、例えば第1及び第2反射面等の外観露出面を形成する下地面を被覆するハードコート層を形成する際に、下地の本体部分の材料に関わらずハードコート層の密着性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の虚像表示装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の本体部分の平面図であり、(B)は、本体部分の正面図である。
【図3】(A)は、導光部材の光入射部における第3反射面の構造を説明する図であり、(B)は、導光部材の導光部における第1及び第2反射面の構造を説明する図であり、(C)は、導光部材及び光透過部材の接合部の構造を説明する図であり、(D)は、光透過部材の第1及び第2面の構造を説明する図である。
【図4】(A)は導光部材の正面図であり、(B)は導光部材の下面図であり、(C)は導光部材の左側面図であり、(D)は導光部材の左側面図である。
【図5】(A)は光透過部材の裏面図であり、(B)は光透過部材のBB断面図であり、(C)は光透過部材の左側面図であり、(D)は光透過部材の右側面図である。
【図6】導光部材と光透過部材との接合部を概念的に説明する拡大断面図である。
【図7】導光部材のハードコート層を説明する拡大断面図である。
【図8】光透過部材のハードコート層を説明する拡大断面図である。
【図9】(A)は、縦の第1方向に関する光路を展開した概念図であり、(B)は、横の第2方向に関する光路を展開した概念図である。
【図10】虚像表示装置の光学系における光路を具体的に説明する平面図である。
【図11】(A)は、液晶表示デバイスの表示面を示し、(B)は、観察者に見える液晶表示デバイスの虚像を概念的に説明する図であり、(C)及び(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。
【図12】(A)及び(B)は、変形例の虚像表示装置の一部を説明する図である。
【図13】第2実施形態の導光装置を概念的に説明する拡大断面図である。
【図14】(A)は、第3実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光装置の正面図及び平面図である。
【図15】画像光の光路について説明する模式的な図である。
【図16】ハーフミラー層を含む接合部を説明する断面図である。
【図17】(A)は、第4実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光装置の正面図及び平面図である。
【図18】画像光の光路について説明する模式的な図である。
【図19】ハーフミラー層を含む接合部を説明する断面図である。
【図20】第3実施形態の虚像表示装置の変形例を説明する図である。
【図21】第1実施形態の虚像表示装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0025】
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、フレーム121のうち前方のカバー部分から後方のつる部分(テンプル)にかけての部分に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
【0026】
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0027】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
【0028】
画像表示装置11の照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。
【0029】
以上の画像表示装置11又は液晶表示デバイス32において、第1方向D1は、縦のY方向に相当し、第2方向D2は、横のX方向に相当する。第1方向D1と第2方向D2とは、投射光学系12を通る第1光軸AX1と直交し、互いに直交する。
【0030】
投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0031】
導光装置20は、導光部材21と、光透過部材23とを備える。導光部材21は、枠状の光透過部材23に嵌め込むように接合されて固定されており、全体としてXY面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
【0032】
導光装置20のうち、導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第1接合面21jとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3反射面21a,21b,21c及び第1接合面21jに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、XY面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、XY面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第1接合面21jは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。見方を変えれば、第3反射面21cは、第2反射面21bに対して鈍角ηをなし、第1接合面21jは、第2反射面21bに対して鈍角εをなしている。第3反射面21cを通る第1光軸AX1と第1接合面21jを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21hが設けられている。導光部材21は、この端面21hも含めると、7面の多面体状の外形を有するものとなっている。
【0033】
導光部材21は、第1及び第2反射面21a,21bによる全反射を利用して導光を行うものであり、導光に際して反射によって折り返される方向と、導光に際して反射によって折り返されない方向とがある。導光部材21で導光される画像について考えた場合、導光に際して複数回の反射によって折り返される横方向すなわち閉じ込め方向DW2は、第1及び第2反射面21a,21bに垂直(Z軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第2方向D2に相当する。一方、導光に際して反射によって折り返されないで伝搬する縦方向すなわち非閉じ込め方向DW1は、第1及び第2反射面21a,21b及び第3反射面21cに平行(Y軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第1方向D1に相当する。なお、導光部材21において、伝搬される光束が全体として向かう主導光方向は、−X方向になっている。
【0034】
導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分21sとして有し、本体部分(ブロック状部材)21sは、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。具体的な例では、導光部材21は、紫外線硬化型の樹脂で形成されている。このように導光部材21は、基材としての本体部分21sを一体形成品とするが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
【0035】
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、矩形の輪郭を有し、その矩形領域の略全体に亘って、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導くための反射ミラーであるミラー層25を有する。このミラー層25は、導光部材21の斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。
【0036】
図3(A)は、第3反射面21cの構造を説明するため、光入射部B1における表面部分SP1の断面を部分的に拡大した概念図である。第3反射面21cは、ミラー層25を有し保護層26で被覆されている。このミラー層25は、全反射のコーティングであり、導光部材21を構成する本体部分21sの斜面RS上にAl(アルミニウム)等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。
【0037】
図2(A)等に戻って、第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光GLを、全体として−Z方向寄りの−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。
【0038】
導光部B2は、互いに対向しXY面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aの面部分は、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通のものとなっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、その表面には、ミラー層等の非透過性の反射コートが施されていない。
【0039】
図3(B)は、第1反射面21aの構造と第2反射面21bの構造とを説明するため、導光部材21の導光部B2における表面部分SP2,SP3の断面を部分的に拡大した概念図である。第1及び第2反射面21a,21bは、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、ハードコート層27の被覆によって形成されている。このハードコート層27は、導光部材21の本体部分21sの下地面SF上に樹脂等からなるコート剤をディップ処理やスプレーコート処理によって成膜することによって形成される。
【0040】
図2(A)等に戻って、光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、導光部B2の第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、全体として導光装置20の奥側の主導光方向即ち光射出部B3を設けた−X側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには非透過性又は半透過性の反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
【0041】
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第1接合面21jとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための裏側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第1接合面21jは、略矩形の傾斜した面(斜面RS)であり、その一部に、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるための第4反射面21dを有する。
【0042】
第4反射面21dは、ハーフミラー層28を有している。このハーフミラー層28は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)である。ハーフミラー層(半透過反射膜)28は、第1接合面21jの全体ではなく、その部分領域PA0上に形成されている。つまり、第4反射面21dは、第1接合面21jの一部に相当する部分領域PA0上に形成されている。第1接合面21jのうち、ハーフミラー層28を形成すべき部分領域PA0は、縦方向である非閉じ込め方向DW1に関する中央側に配置されており、上下の両端側において、一対の周辺領域PA1,PA2に挟まれている。これらの周辺領域PA1,PA2を合わせた残領域(他領域)PAは、第4反射面21dとしてのハーフミラー層28が存在しない領域であり、画像光GL等を略そのまま透過させる。ハーフミラー層28は、導光部材21を構成する本体部分21sの一側面である第1接合面21jのうち部分領域PA0上に、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光GL’の観察を容易にする観点で、想定される画像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、画像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
【0043】
図3(C)は、第4反射面21d等の構造を説明するため、接合部分SP4の断面を部分的に拡大した概念図である。ここで、導光部材21の第4反射面21dと光透過部材23の第2接合面23cとの間、より正確にはハーフミラー層28と第2接合面23cとの間には、導光部材21と光透過部材23とを接合するための接着剤によって接着層CCが形成される。つまり、光透過部材23の第2接合面23cは、接着層CCによって被覆されているおり、接合部分SP4において、被覆されている下地面となっている。接着層CCは、導光部材21の本体部分21sや光透過部材23の本体部分23sと略等しい屈折率を有しており、導光部材21から光透過部材23にかけてこれらと接着層CCとの界面を通過する光が、当該界面において不要な反射をすることを抑制している。
【0044】
図2(A)等に戻って、第4反射面21d又は第1接合面21jは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、上記ハーフミラー層28により、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として−Z方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。なお、第4反射面21dを透過した画像光の成分は、光透過部材23に入射し、映像の形成には利用されない。
【0045】
図2(B)に示すように、導光部材21のうち画像光GLが通過する有効領域EAは、光入射部B1側で比較的縦長になっており、光射出部B3側で比較的横長になっている。第4反射面21d又はハーフミラー層28は、第1接合面21jの一部であるが、画像光GLの有効領域EAに対応してこれをカバーするように形成されており、導光部材21に導かれた画像光GLは、光入射部B1を無駄なく通過して観察者の眼EYに入射する。このように、ハーフミラー層28は、横長の輪郭を有するが、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの横長の輪郭に対応するものとなっている。
【0046】
光透過部材23は、可視域で高い光透過性を示し、導光部材21の本体部分21sと略同一の屈折率を有する樹脂材料で形成されている。光透過部材23は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分23sとして有する。本体部分(ブロック状部材)23sは、導光部材21と同様に、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。
【0047】
光透過部材23は、導光部材21の光射出部B3に隣接する透視用の光学部において、第1面23aと、第2面23bと、第2接合面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、XY面に沿って延びる。また、第2接合面23cは、XY面に対して傾斜しており、導光部材21の第1接合面21j又は第4反射面21dに対向して平行に配置されている。つまり、光透過部材23は、第2面23bと第2接合面23cとに挟まれた楔状部材WPを有するものとなっている。なお、光透過部材23は、楔状部材WPから延びて導光部材21を上下から挟むように支持する支持部として、後述する上側支持部材24bと下側支持部材24cとを有する。
【0048】
光透過部材23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置される第1透過面であり、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置される第2透過面であり、観察者の眼EYから遠い表側にある。第2接合面23cは、接着剤によって導光部材21の第1接合面21jに接合される矩形の光透過面である。以上の第1面(第1透過面)23aと第2接合面23cとなす角度は、導光部材21の第2反射面21bと第1接合面21jとのなす角度εと等しくなっており、第2面(第2透過面)23bと第2接合面23cとなす角度は、導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとのなす角度βと等しくなっている。
【0049】
光透過部材23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍において、透視部B4を構成している。すなわち、第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL’を高い透過率で透過させる。第2接合面23cも、外界光GL’を高い透過率で透過可能であるが、導光部材21の第4反射面21dに対応する領域では、ハーフミラー層28が存在することから、第2接合面23cを通過する外界光GL’は、例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL’とを重畳させたものを観察することになる。
【0050】
図3(D)は、光透過部材23の第1面(第1透過面)23aの構造と第2面(第2透過面)23bの構造とを説明するため、表面部分SP5,SP6の断面を部分的に拡大した概念図である。第1及び第2面23a,23bは、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、ハードコート層27の被覆によって形成されている。このハードコート層27は、光透過部材23の本体部分23sの下地面SF上に樹脂等からなるコート剤をディップ処理やスプレーコート処理によって成膜することによって形成される。
【0051】
〔C.導光部材及び光透過部材の個々の形状等〕
図4(A)〜4(D)に示すように、図2(A)の導光装置20を構成する導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、図5(A)〜5(D)に示すように、導光装置20を構成する左右一対の光透過部材23,23は、これらが一体となって正面視においてH字状の支持フレーム123を構成している。左右一対の光透過部材23,23は、左眼用の導光部材21と右眼用の導光部材21とにそれぞれ対応し、各光透過部材23は、U字型の外観を有し、導光部材21を嵌め込むように固定することで支持している。
【0052】
図4(A)等に示す導光部材21は、図5(A)等に示す支持フレーム123に対してそのくり抜き部SPを埋めるように嵌合して、支持フレーム123に設けた中央部材24aと上側支持部材24bと下側支持部材24cとに挟まれるように接合されることによって固定される。これにより、例えば図2(B)に示すような状態となり、全体として図1の光学パネル110が作製される。なお、支持フレーム123の中央部材24aには、鼻パッドを嵌め込むためのくり抜き24xが形成されている。また、支持フレーム123に設けた支持部材24b,24cの先端には、画像形成装置10の投射光学系12等を接続するための固定孔等を設けた連結部24e,24fが形成されている。
【0053】
図5(A)等に示す支持フレーム123又は光透過部材23の本体部分23sのうち、第2接合面23c、及び嵌合面24j,24kは、後に詳述するが、接合部から気泡を除去する観点で、粗面化された下地面となっている。なお、図4(A)等に示す導光部材21の本体部分21sのうち、第1接合面21j、第1の側面21e、第2の側面21f、及び支持面21q,21rも併せて、粗面化された面とすることができる。
【0054】
導光部材21の本体部分21sのうち、第1反射面21a及び第2反射面21bに対応する下地面は、後に詳述するが、ハードコート層27の密着性を確保する観点で、粗面化された面となっている。光透過部材23の本体部分23sのうち、第1面23a及び第2面23bに対応する下地面等も、ハードコート層27の密着性を確保する観点で、粗面化された面となっている。
【0055】
以上において、粗面化された面であるか否かは、その面粗さに基づいて判断するものとし、完成した第1反射面21a及び第2反射面21b等の面粗さよりも面粗さが大きくなっている。
【0056】
〔D.導光装置の製造〕
導光装置20を製造するため、導光装置20を構成する2つの導光部材21と支持フレーム123とを予め準備する。なお、導光部材21の本体部分21sを形成する際に、後のハードコート工程のため第1反射面21a及び第2反射面21bの下地面(本体部分21sの表面)が粗面化される。また、支持フレーム123を形成する際に、後の接合工程のため第2接合面23cが粗面化され、後のハードコート工程のため第1面23a及び第2面23bの下地面(本体部分23sの表面)が粗面化される。
【0057】
次に、2つの導光部材21を支持フレーム123に順次接合する。なお、2つの導光部材21を支持フレーム123に接合する前に、各導光部材21の第1接合面21jのうち部分領域PA0上に、予めハーフミラー層28が形成される(図4(A)参照)。
【0058】
まず、第1の導光部材21を支持フレーム123の一方の光透過部材23に接合する。具体的には、一方(例えば右半分)の光透過部材23の第2接合面23cや嵌合面24j,24k上に紫外線硬化型の樹脂からなる接着剤を塗布して広げる。つまり、ディスペンサーにより、一定量の接着剤を第2接合面23c等に広がるように塗布する。そして、第1の導光部材21をこの光透過部材23のくり抜き部SPに嵌め込む。これにより、第1の導光部材21が、その第1接合面21jが光透過部材23のハーフミラー層28及び残領域(他領域)PAに対向するように配置される。この際、一方の光透過部材23に設けた上側支持部材24bの嵌合面24jと、導光部材21の第1の側面21e及び支持面21qとが対向配置され、下側支持部材24cの嵌合面24kと、導光部材21の第2の側面21f及び支持面21rとが対向配置される。その後、第1の導光部材21の第1接合面21jを一方の光透過部材23の第2接合面23c等に押し付けつつ摺り合わせることにより、主に第1接合面21j及び第2接合面23c間の接着剤に付随する気泡を追い出す。最後に、第1及び第2接合面21j,23c間の薄く広げられた接着剤に対し、紫外線である硬化光を照射する。これにより、第1及び第2接合面21j,23c間の接着剤が硬化して、第1の導光部材21と一方の光透過部材23との接合が完了する。紫外線である硬化光は支持部材24b,24cにも照射されるので、光透過部材23に設けた上側支持部材24bの嵌合面24jと、導光部材21の第1の側面21e及び支持面21qとが接合されるとともに、下側支持部材24cの嵌合面24kと、導光部材21の第2の側面21f及び支持面21rとが接合される。この際、ハーフミラー層28と第2接合面23cとの間だけでなく、残領域PAと第2接合面23cとの間にも接着剤が充填され、接着剤の硬化によって接着層CCが形成されるので(図3(D)参照)、第1の導光部材21の第1接合面21jと一方の光透過部材23の第2接合面23cとの接合強度が高まる。さらに、上述のように、第1の導光部材21は、支持部材24b,24cによって上下から挟まれるように固定されており、一方の光透過部材23による支持強度が高められている。
【0059】
第2の導光部材21を支持フレーム123の他方の光透過部材23に接合する工程も同様であり、他方(例えば左半分)の光透過部材23の第2接合面23cや嵌合面24j,24k上に紫外線硬化型の接着剤を塗布し、第1接合面21jと、ハーフミラー層28及び残領域PAとが対向するとともに、支持部材24b,24cの嵌合面24j,24kと導光部材21の両側面21e,21f及び両支持面21q,21rとが対向するように配置する。その後、第2の導光部材21を他方の光透過部材23側に適度な力で押し付けつつ摺り合わせことにより、接着剤中の気泡を追い出す。最後に、薄く広げられた接着剤に対し、紫外線である硬化光を照射する。これにより、第1接合面21jと第2接合面23cとの間の接着剤と、嵌合面24j,24kと導光部材21の両側面21e,21f及び両支持面21q,21rとの間の接着剤とが硬化して、第2の導光部材21と他方の光透過部材23との接合が完了する。
【0060】
図6は、光透過部材23と導光部材21との接合部を説明する拡大断面図であり、図3(C)をより詳細にしたものとなっている。図示のように、第1及び第2接合面21j,23c間に形成された接着層CCによって、導光部材21の本体部分21sと、光透過部材23の本体部分23sとが連結されている。ここで、周辺の残領域PAについては、略鏡面の第1及び第2接合面21j,23cが接着層CCを介して直接接続されており、接合強度の確保が比較的容易である。一方、中央の部分領域PA0については、ハーフミラー層28が第1接合面21jと接着層CCとの間に存在しており、ハーフミラー層28は蒸着等によって形成された比較的付着力が弱いものであるから、接合強度の確保が比較的容易でない。結果的に、導光部材21と光透過部材23とは、主に周辺の残領域PAにおいて強固に接着され、導光部材21と光透過部材23とを組み合わせた導光装置20の強度も十分高いものとなる。
【0061】
本実施形態の場合、光透過部材23側の下地面である第2接合面23cにおいて、非平滑面として、微細な凹凸(起伏)41を有する粗面SRが形成されている。粗面(非平滑面)SRは、例えば本体部分23sの成形用金型の転写面に予め粗面化処理を行なうことによって形成される。また、粗面SRは、例えば本体部分23sの成形後に、サンドブラスト、化学薬品その他によるエッチング等の粗面化処理、表面改質処理を施すことによっても形成される。
【0062】
粗面SRを構成する微細な凹凸(起伏)41の深さは、例えば数μm〜数10μm程度(具体的には20μm以上)とする。なお、図面では誇張しているが、ハーフミラー層(半透過反射膜)28の厚みは、例えば数10μm程度であり、接着層CCの厚みは、例えば50〜100μm程度である。具体的な実施例において、光透過部材23の本体部分23sの屈折率と接着層CCの屈折率とは、略等しく、これらの差は、例えば0.02以下にした。これにより、粗面SRの存在によって外界光GL’が乱されることを防止できる。
【0063】
以上のように、第2接合面(下地面)23cを粗面SRとすることにより、接着剤の付着性や濡れ性が良くなり、第2接合面23c上に接着剤を塗布して広げる際に、接着剤の粘度を低くしても、比較的均一に接着剤を広げることができる。つまり、第2接合面23cは第1面23a等に対して傾斜しており、第2接合面23c上に接着剤を塗布した場合、粘度を低くすると液ダレが生じやすく、粘度を高くすると厚みが不均一になって接合面に気泡が残りやすくなる。一方、第2接合面23cを粗面SRとした場合、比較的粘度の低くい接着剤を塗布しても液ダレが生じにくく、広げた接着剤が比較的均一に保たれるので、第1接合面21jと第2接合面23cとの間に気泡が溜まりにくくなり、両接合面21j,23cの接合後に接着層CCに気泡が残ることを簡易に抑制できる。なお、接着層CCとして用いる樹脂としては、紫外線硬化型樹脂等を用いることができる。
【0064】
具体的な説明を省略するが、光透過部材23の嵌合面24j,24kも、下地面として微細な凹凸41を有する粗面SRとされている。嵌合面(下地面)24j,24kを粗面SRとすることにより、接着剤の付着性や濡れ性が良くなり、嵌合面24j,24k上に接着剤を塗布して広げる際に、接着剤の粘度を低くしても、比較的均一に接着剤を広げることができ、接合部に気泡が残ることを簡易に抑制できる。
【0065】
〔E.ハードコート層の被覆〕
図7は、導光部材21の表面を説明する拡大断面図であり、図3(B)をより詳細にしたものとなっている。図示のように、第1反射面21aや第2反射面21bは、本体部分21sの下地面SFをハードコート層27で被覆することによって形成されている。ここで、導光部材21の本体部分21sの下地面SFには、非平滑面として、微細な凹凸(起伏)141を有する粗面SRが形成されている。粗面(非平滑面)SRは、例えば本体部分21sの成形用金型の転写面に予め粗面化処理を行なうことによって形成される。また、粗面SRは、例えば本体部分21sの成形後に、サンドブラスト、化学薬品その他によるエッチング等の粗面化処理、表面改質処理を施すことによっても形成される。
【0066】
本体部分21sの粗面SRを構成する微細な凹凸(起伏)141の深さは、例えば数μm程度(具体的には2〜3μm)とする。なお、図面では誇張しているが、ハードコート層27の厚みは、例えば5〜10μm程度であり、凹凸を十分に埋めることができる。具体的な実施例において、導光部材21の本体部分21sの屈折率とハードコート層27の屈折率とは、略等しく、これらの差は、例えば0.02以下にした。これにより、粗面SRの存在によって導光部材21内で伝搬される画像光GL等が乱されることを防止できる。
【0067】
以上のように、導光部材21の本体部分21sの下地面SFを粗面SRとすることにより、ハードコート層27の密着性が高まり、ハードコート層27の耐擦傷性を高めることができる。特に、導光部材21の本体部分21sを紫外線硬化型の樹脂で整形した場合、ハードコート層27の付着性が低下する場合があるが、下地面SFを粗面SRとすることにより、本体部分21sの材質に関わらず、ハードコート層27の密着性を高めることができる。
【0068】
なお、導光部材21の本体部分21sをハードコート層27に対する密着性の極めて高い材料で形成すれば、下地面SFを粗面SRとしなくてもある程度の密着性を確保することができる。しかしながら、本実施形態のような虚像表示装置100では、導光部材21の本体部分21sを射出成形で形成し、吸水性が少なく、高精度の平坦度を達成する必要があり、ハードコート層27に対する密着性を確保することが容易でなくなる。このため、本体部分21s下地面SFを粗面化することで本体部分21sの材質に関わらずハードコート層27の密着性を高めることができる。
【0069】
なお、ハードコート層27の材料としては、例えば熱硬化型のシリコーン系の樹脂が用いられる。ハードコート層27の材料としては、シリカ等の耐擦傷性を有する無機材料の微粒子とバインダー樹脂とを複合化したものとすることもできる。また、導光部材21の本体部分21sの材料としては、射出成形の便宜や吸水性が低いこと、光透過部材23と十分な強度で接着又は接合できること、透明性が高いことを考慮して、例えば(メタ)アクリレートモノマーを他の重合性モノマーと共重合させることにより得た(メタ)アクリレート系化合物が用いられる。(メタ)アクリレートモノマー系モノマーの具体例としては、2,2−ビス(3,5−ジブロム−4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(β−ヒドロキシ−γ−(メタ)アクリロイルオキシ)プロポキシフェニル]プロパン等があげられる。また、(メタ)アクリレート系化合物と共重合させる他の重合性モノマーの具体例としては、スチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族単官能性ビニルモノマー等があげられる。具体的な実施例では、ポリメタクリルスチレンを基材とするプラスチックが用いられた。本体部分21sの素材として他の一般的な材料も考えられるが、例えばポリカーボネートは、透明性の観点で劣り、アクリルは吸湿性の観点で劣り、シクロオレフィンは、接着性の観点で劣る。
【0070】
図8は、光透過部材23の表面を説明する拡大断面図であり、図3(D)をより詳細にしたものとなっている。図示のように、第1面23aや第2面23bは、本体部分23sの下地面SFをハードコート層27で被覆することによって形成されている。ここで、光透過部材23の本体部分23sの下地面SFには、非平滑面として、微細な凹凸(起伏)141を有する粗面SRが形成されている。粗面(非平滑面)SRは、例えば本体部分23sの成形用金型の転写面に予め粗面化処理を行なうことによって形成される。また、粗面SRは、例えば本体部分23sの成形後に、サンドブラスト、化学薬品その他によるエッチング等の粗面化処理、表面改質処理を施すことによっても形成される。
【0071】
本体部分23sの粗面SRを構成する微細な凹凸(起伏)141の深さは、例えば数μm程度(具体的には2〜3μm)とする。なお、ハードコート層27の厚みは、例えば5〜10μm程度であり、凹凸を十分に埋めることができる。具体的な実施例において、導光部材21の本体部分21sの屈折率と接着層CCの屈折率との差は、例えば0.02以下にした。これにより、粗面SRの存在によって光透過部材23を通過する外界光GL’が乱されることを防止できる。
【0072】
以上のように、光透過部材23の本体部分21sの下地面SFを粗面SRとすることにより、ハードコート層27の密着性が高まり、ハードコート層27の耐擦傷性を高めることができる。なお、光透過部材23の本体部分21sの材料としては、導光部材21の場合と同様に、射出成形の便宜や吸水性が低いこと、光透過部材23との十分な強度で接着又は接合できること、透明性が高いことを考慮して、例えば(メタ)アクリレートモノマーを他の重合性モノマーと共重合させることにより得た(メタ)アクリレート系化合物が用いられる。具体的な実施例では、ポリメタクリルスチレンを基材とするプラスチックが用いられた。
【0073】
〔F.画像光の光路の概要〕
以下、虚像表示装置100における画像光の光路の概要について説明する。
【0074】
図9(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のY’Z’面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
【0075】
上側の画像光GLaは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ1で上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ2(|φ2|=|φ1|)で下方向から傾いて入射する。以上の角度φ1,φ2は、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
【0076】
図9(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向D2の光路を説明する図である。第2方向D2に沿った横断面CS2すなわちXZ面(展開後のX’Z’面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+X側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GL1とし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−X側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GL2とする。
【0077】
右側の第1表示点P1からの画像光GL1は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ1で右方向から傾いて入射する。一方、左側の第2表示点P2からの画像光GL2は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ2(|θ2|=|θ1|)で左方向から傾いて入射する。以上の角度θ1,θ2は、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
【0078】
なお、第2方向D2又は閉じ込め方向DW2の横方向に関しては、導光部材21中で画像光GL1,GL2が反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GL1,GL2が導光部材21中で不連続に表現されている。また、観察者の眼EYについては、図2(A)の場合と比較して見ている方向が上下反対となっている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GL1,GL2の導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GL1の射出角度θ1’と左側の画像光GL2の射出角度θ2’とは異なるものに設定されている。
【0079】
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GL1,GL2は、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1又は非閉じ込め方向DW1に関しては、液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2又は閉じ込め方向DW2に関しては、液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
【0080】
〔G.横方向に関する画像光の光路〕
図10は、第1表示装置100Aにおける具体的な光路を説明する断面図である。投射光学系12は、3つのレンズL1,L2,L3を有している。
【0081】
液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL11,GL12は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第1反射角γ1で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL11,GL12は、第1反射角γ1を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、次いで再度第1反射面21aに入射して全反射される(第3回目の全反射)。結果的に、画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計3回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL11,GL12は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ1の傾きで平行光束として射出される。
【0082】
液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL21,GL22は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第2反射角γ2(γ2<γ1)で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL21,GL22は、第2反射角γ2を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、再度第1反射面21aに入射して全反射され(第3回目の全反射)、再度第2反射面21bに入射して全反射され(第4回目の全反射)、再々度第1反射面21aに入射して全反射される(第5回目の全反射)。結果的に、画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計5回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL21,GL22は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θ2の傾きで平行光束として射出される。
【0083】
図10において、導光部材21を展開した場合に第1反射面21aに対応する仮想的な第1面121aと、導光部材21を展開した場合に第2反射面21bに対応する仮想的な第2面121bとを描いている。このように展開することにより、第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、光入射面ISに対応する入射等価面IS’を通過した後、第1面121aを2回通過し第2面121bを1回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かり、第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、光入射面ISに対応する入射等価面IS”を通過した後、第1面121aを3回通過し第2面121bを2回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かる。見方を変えると、観察者は、2つの位置の異なる入射等価面IS’,IS”の近傍に存在する投射光学系12のレンズL3を重ねて観察していることになる。
【0084】
図11(A)は、液晶表示デバイス32の表示面を概念的に説明する図であり、図11(B)は、観察者に見える液晶表示デバイス32の虚像を概念的に説明する図であり、図11(C)及び11(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。図11(A)に示す液晶表示デバイス32に設けた矩形の画像形成領域ADは、図11(B)に示す虚像表示領域AIとして観察される。虚像表示領域AIの左側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から右側にかけての部分に相当する第1投射像IM1が形成され、この第1投射像IM1は、図11(C)に示すように右側が欠けた部分画像となっている。また、虚像表示領域AIの右側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から左側にかけての部分に相当する投射像IM2が虚像として形成され、この第2投射像IM2は、図11(D)に示すように左半分が欠けた部分画像となっている。
【0085】
図11(A)に示す液晶表示デバイス32のうち第1投射像(虚像)IM1のみを形成する第1部分領域A10は、例えば液晶表示デバイス32の右端の第1表示点P1を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計3回全反射される画像光GL11,GL12を射出する。液晶表示デバイス32のうち第2投射像(虚像)IM2のみを形成する第2部分領域A20は、例えば液晶表示デバイス32の左端の第2表示点P2を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計5回全反射される画像光GL21,GL22を射出する。液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの中央寄りにおいて第1及び第2部分領域A10,A20に挟まれて縦長に延びる帯域SAからの画像光は、図11(B)に示す重複画像SIを形成している。つまり、液晶表示デバイス32の帯域SAからの画像光は、導光部B2において計3回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第1投射像IM1と、導光部B2において計5回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第2投射像IM2となって、虚像表示領域AI上で重畳していることになる。導光部材21の加工が精密で、投射光学系12によって正確にコリメートされた光束が形成されているならば、重複画像SIについて、2つの投射像IM1,IM2の重畳によるズレや滲みを防止することができる。
【0086】
上記実施形態の虚像表示装置100によれば、導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば導光部材21と他の光学部材である光透過部材23とを接合する際に、下地面SFを被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、本実施形態の虚像表示装置100によれば、導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2反射面21a,21b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分21sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。また、光透過部材23において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2面23a,23b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分23sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。
【0087】
以上の説明では、液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1を含む第1領域A10から射出された画像光GL11,GL12の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計3回で、液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2を含む第2領域A20から射出された画像光GL21,GL22の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計5回であるとしたが、全反射回数については適宜変更することができる。つまり、導光部材21の外形(すなわち厚みt、距離D、鋭角α,β)の調整によって、画像光GL11,GL12の全反射回数を計5回とし、画像光GL21,GL22の全反射回数を計7回とすることもできる。また、以上では、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が奇数となっているが、光入射面ISと光射出面OSとを反対側に配置するならば、すなわち導光部材21を平面視で平行四辺形型にすれば、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が偶数となる。
【0088】
図12(A)は、図2(A)等に示す導光部材21を変形した導光部材221を説明する図である。以上の説明では、導光部材21を伝播する画像光が第1及び第2反射面21a,21bに対して2つの反射角で全反射され2つのモードで伝搬するとしたが、図12(A)に示す変形例の導光部材221のように、3つの成分の画像光GL31,GL32,GL33が反射角γ1,γ2,γ3(γ1>γ2>γ3)でそれぞれ全反射されることを許容することもできる。この場合、液晶表示デバイス32から射出される画像光GLは、3つのモードで伝搬され、観察者の眼EYの位置において合成されて虚像として認識される。この場合、図12(B)に示すように、有効表示領域A0の左側に例えば計3回全反射の投射像IM21が形成され、有効表示領域A0の中央寄りに例えば計5回全反射の投射像IM22が形成され、有効表示領域A0の右側に例えば計7回全反射の投射像IM23が形成される。
【0089】
また、図2(B)に示す導光部材21の光射出面OSに対向してレンズその他の光学素子を配置することもできる。或いは、ハーフミラー層28は、曲面とすることができ、保護層で被覆されたホログラムシートに置き換えることもできる。ハーフミラー層28をホログラムシートに置き換える場合、照明装置31として可干渉性の高いものを使用し、ホログラムシートとして液晶表示デバイス32で形成された例えば3色の画像を個別に処理する積層型の回折シートを用いる。
【0090】
上記実施形態の虚像表示装置100によれば、光透過部材23において接着層CCによって被覆されている第2接合面23cが粗面化されているので、例えば導光部材21と光透過部材23とを接合する際に、第2接合面23cを被覆する接着剤の粘度を下げて気泡を発生しにくくしても接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、本実施形態の虚像表示装置100によれば、導光部材21において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2反射面21a,21b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分21sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。また、光透過部材23において被覆されている下地面SFのうち少なくとも一部が粗面化されているので、例えば第1及び第2面23a,23b等の外観露出面を形成し下地面SFを被覆するハードコート層27を形成する際に、下地の本体部分23sの材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。
【0091】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0092】
図13に示すように、第2実施形態の場合、導光部材21ではなく光透過部材23側にハーフミラー層28が形成されている。このため、光透過部材23の第2接合面23cの代わりに導光部材21の第1接合面21jが微細な凹凸41を有する粗面SRとなっている。この場合、比較的粘度の低くい接着剤を第1接合面21jに塗布しても液ダレが生じにくく、広げた接着剤が比較的均一に保たれるので、第1接合面21jと第2接合面23cとの間から気泡を追い出しやすくなり、両接合面21j,23cの接合後に接着層CCに気泡が残ることを簡易に抑制できる。
【0093】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0094】
図14(A)〜14(C)に示す虚像表示装置100は、画像形成装置10と、導光装置520とを一組として備える。導光装置520は、導光部材521と、支持部材529とを有している。導光部材521は、導光本体部材20aと、画像取出部である角度変換部523とを備える。なお、図14(A)は、図14(B)に示す導光部材521のA−A断面に対応する。
【0095】
導光部材521の全体的な外観は、図中XY面に平行に延びる平板である導光本体部材20aによって形成されている。また、導光部材521は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cとを有する。また、導光部材521は、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。さらに、導光部材521は、長手方向の一端において導光本体部材20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する第3反射面21cを有し、長手方向の他端において導光本体部材20aに埋め込まれた多数の微小ミラーによって構成される角度変換部523を有する構造となっている。導光部材521は、一体的な部品であるが、第1実施形態の場合と同様に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができ(図14(C)参照)、このうち光入射部B1は、第3反射面21cと後述する光入射面ISとを有する部分であり、光入射部B1は、第1及び第2反射面21a,21bを有する部分であり、導光部B2は、角度変換部523と後述する光射出面OSとを有する部分である。
【0096】
導光本体部材20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、XY面に平行で画像形成装置10に対向する裏側又は観察者側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射面ISと、画像光を観察者の眼EYに向けて射出させる光射出面OSとを有している。導光本体部材20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される入射光折曲部である第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光を、全体として−Z方向に偏った−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光本体部材20a内に確実に結合させる。導光本体部材20aは、入口側の第3反射面21cから奥側の角度変換部523にかけて延在し、プリズム部PSを介して内部に入射させた画像光を角度変換部523に導く。
【0097】
導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の導光本体部材20aの主面であり互いに対向しXY面に対して平行に延びる2平面として、プリズム部PS又は光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光装置520の奥側即ち角度変換部523を設けた−X側に導かれる。
【0098】
導光本体部材20aの光射出面OSに対向して配置される角度変換部523は、導光部材521の奥側(−X側)において、第2反射面21bの延長平面に沿ってこの延長平面に近接して形成されている。角度変換部523は、導光本体部材20aの第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。つまり、角度変換部523は、画像光の角度を変換している。
【0099】
支持部材529は、図14(B)に示すように、導光部材521を支持するための支持フレーム(不図示)の一部であり、X方向に延びる上側支持部材24bと下側支持部材24cとをそれぞれ有し、導光部材521を挟むようにして固定している。
【0100】
画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光部材521に入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸AXに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部523において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。当該虚像光が観察者の網膜において結像することで、観察者は虚像による映像光等の画像光を認識することができる。
【0101】
以下、導光装置520中の画像光の光路について説明する。なお、第3実施形態における導光装置520は、縦の第1方向D1(Y方向)に関して、図1(A)の導光装置20と同様に機能する。一方、導光装置520は、横の第2方向D2(X方向)に関して、多数の伝搬モードの画像光を導光させるものとなっており、2つの伝搬モードの画像光を導光させる図2(A)の導光装置20と異なっている。
【0102】
図14(A)に示すように、画像表示装置11の液晶表示デバイス(画像光形成部)32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL51とし、射出面32aの紙面右側(+X側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL52とし、射出面32aの紙面左側(−X側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL53とする。
【0103】
投射光学系12を経た各画像光GL51,GL52,GL53の主要成分は、導光部材521の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL51,GL52,GL53のうち、液晶表示デバイス(画像光形成部)32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL51は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、標準反射角γ0で導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL51は、標準反射角γ0を保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL51は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部523の中央部23kに達する。この中央部23kで反射された画像光GL51は、光射出面OSから当該光射出面OS又はXY面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。
【0104】
液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+X側)から射出された画像光GL52は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最大反射角γ+で導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL52は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部523のうち最も奥側(−X側)の周辺部23hに達する。この周辺部23hで反射された画像光GL52は、入口の第3反射面21c側に戻されるように+X軸に対して鋭角をなし、光軸AXに対して角度θ12(導光装置520内ではθ12’)だけ傾斜した方向に射出される(図15参照)。
【0105】
液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−X側)から射出された画像光GL53は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γ−で導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL53は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部523のうち最も入口側(+X側)の周辺部23mに入射する。この周辺部23mで反射された画像光GL53は、第3反射面21c側から離れるように+X軸に対して鈍角をなし、光軸AXに対して角度θ13(導光装置520内ではθ13’)だけ傾斜した方向に射出される(図15参照)。
【0106】
なお、図15に示すように、角度変換部523は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット2cで構成される。つまり、角度変換部523は、Y方向に延びる細長い反射ユニット2cを所定のピッチPTで角度変換部523の延びる主導光方向すなわち−X方向に沿って多数配列させることで構成されている。各反射ユニット2cは、奥側即ち光路下流側に配置される1つの反射面部分である第1の反射面2aと、入口側即ち光路上流側に配置される他の1つの反射面部分である第2の反射面2bとを1組のものとして有し、両反射面2a,2bは、一定の楔角δをなしている。これらのうち、少なくとも第2の反射面2bは、一部の光を透過可能な部分反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。当該反射ユニット2cにおいて、画像光GL52,53は、最初に奥側即ち−X側の第1の反射面2aで反射され、次に、入口側即ち+X側の第2の反射面2bで反射される。当該反射ユニット2cを経た画像光GL52,53は、他の反射ユニット2cを経ることなく、角度変換部523での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0107】
図16に示すように、角度変換部523は、導光本体部材20aにおいて入り口側から延びる比較的厚い板状の接合部材521nと、奥側から延びる比較的薄い板状の接合部材523nとを接合した構造を有する。接合部材521nは、表側又は外界側に第1接合面21jを有し、接合部材523nは、裏側又は観察者側に第2接合面523cを有する。接合部材521nの第1接合面21j上には、局所的な部分領域上に半透過反射膜であるハーフミラー層28が形成されている。ここで、ハーフミラー層28が形成されている領域は、図2(B)に示す部分領域PA0と同様のものとなっている。導光部材521において、接合部材521nと接合部材523nとは、図6の導光部材21及び光透過部材23と同様に、部分領域PA0及びその周辺において接着層CCによって互いに接合されている。この場合、接合部材523nの第2接合面(下地面)523cは、微細な凹凸41を有する粗面SRとされている。第2接合面523cを粗面SRとすることにより、第2接合面523c上に接着剤を塗布して広げる際に、粘度低い接着剤を比較的均一に広げることができ、接合部に気泡が残ることを簡易に抑制できる。
【0108】
なお、接合部材521nや接合部材523nの表面(具体的には反射面21a,21b等)は、図7及び8と同様に、本体部分21s,23sの下地面SFをハードコート層27で被覆することによって形成されている。ここで、導光部材521の本体部分21sの下地面SFには、非平滑面として、微細な凹凸141を有する粗面SRが形成されている。このように、接合部材521nや接合部材523nの本体部分21s,23sの下地面SFを粗面SRとすることにより、ハードコート層27の密着性が高まり、ハードコート層27の耐擦傷性を高めることができる。本体部分21s,23sの素材としては、第1実施形態の場合と同様に、例えばメタクリルスチレン等を用いることができる。
【0109】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0110】
図17(A)〜17(C)に示す虚像表示装置100は、画像形成装置10と、導光装置620とを一組として備える。導光装置620は、導光部材621と、支持部材629とを備える。導光部材621は、導光本体部材20aと、画像取出部である角度変換部623とを備える。なお、図17(A)は、図17(B)に示す導光装置620のA−A断面に対応する。
【0111】
導光部材621の全体的な外観は、図中XY面に平行に延びる平板である導光本体部材20aによって形成されている。また、導光部材621は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第1接合面21jとを有する。また、導光部材621は、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。さらに、導光部材621は、長手方向の一端において導光本体部材20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する第3反射面21cを有し、長手方向の他端において多数のミラーによって構成される角度変換部623につながる構造となっている。
【0112】
導光本体部材20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、XY面に平行で画像形成装置10に対向する裏側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射面ISを有している。導光本体部材20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光を、全体として−Z方向に偏った−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光本体部材20a内に確実に結合させる。
【0113】
導光部材621の第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の導光本体部材20aの主面であり互いに対向しXY面に対して平行に延びる2平面として、プリズム部PSで折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光部材621の奥側即ち角度変換部623を設けた−X側に導かれる。
【0114】
図17(C)に示すように、導光部材621において、第3反射面21cと後述する光入射面ISとは、光入射部B1として機能する。また、導光部材621の第1及び第2反射面21a,21bに挟まれた導光本体部材20aと、後述する角度変換部623とは、導光部B2として機能する。なお、角度変換部623は、光射出部B3として機能する。
【0115】
角度変換部623は、導光部材621の奥側(−X側)において、第1及び第2反射面21a,21bの延長平面に沿って形成されている。ここで、導光本体部材20aの奥側端部は、角度変換部623の一部となっている。角度変換部623は、第1及び第2反射面21a,21bに対して傾斜し互いに平行に等間隔で配列される多数のハーフミラー層28を有する。角度変換部623は、導光本体部材20aの第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OSを介して観察者の眼EY側へ折り曲げる。つまり、角度変換部623は、画像光の角度を変換している。
【0116】
光透過部材323は、角度変換部623を奥側(−X側)に延長した部分であり、導光部材621の導光本体部材20aと同様に平板状の部材である。
【0117】
以上において、角度変換部623の全部又は入口側の一部は、導光本体部材20aと組み合わせることで導光部B2の一部としても機能している。また、角度変換部623の全部又は奥側の一部は、光透過部材323と組み合わせることで透視部として機能している。
【0118】
支持部材629は、図17(B)に示すように、導光部材621を支持するための支持フレーム(不図示)の一部であり、X方向に延びる上側支持部材24bと下側支持部材24cとをそれぞれ有し、導光部材621を挟むようにして固定している。
【0119】
画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光部材621に入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光部材621の第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸AXに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部623において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に角度変換部623に付随する光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。
【0120】
以下、導光装置620中の画像光の光路について説明する。なお、第2実施形態における導光装置620は、縦の第1方向D1(Y方向)に関して、図1(A)の導光装置20と同様に機能する。一方、導光装置620は、横の第2方向D2(X方向)に関して、多数の伝搬モードの画像光を導光させるものとなっており、2つの伝搬モードの画像光を導光させる図2(A)の導光装置20と異なっている。
【0121】
図17(A)に示すように、画像表示装置11の液晶表示デバイス(画像光形成部)32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL61とし、射出面32aの紙面右側(+X側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL62とし、射出面32aの紙面左側(−X側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL63とする。
【0122】
投射光学系12を経た各画像光GL61,GL62,GL63の主要成分は、導光部材21の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL61,GL62,GL63のうち、液晶表示デバイス(画像光形成部)32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL61は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、標準反射角γ0で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL61は、標準反射角γ0を保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL61は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部623の中央部23kに達する。この中央部23kで反射された画像光GL61は、光射出面OSから当該光射出面OS又はXY面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。
【0123】
液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+X側)から射出された画像光GL62は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最大反射角γ+で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL62は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部623のうち最も入口側(+X側)の周辺部23mに達する。この周辺部23mで反射された画像光GL62は、入口の第3反射面21c側から離れるように+X軸に対して鈍角をなし、光軸AXに対して角度θ12(導光装置620内ではθ12’)だけ傾斜した方向に射出される(図18参照)。
【0124】
液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−X側)から射出された画像光GL63は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γ−で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL63は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部623のうち最も奥側(−X側)の周辺部23hに入射する。この周辺部23hで反射された画像光GL63は、第3反射面21c側に戻されるように+X軸に対して鋭角をなし、光軸AXに対して角度θ13(導光装置620内ではθ13’)だけ傾斜した方向に射出される(図18参照)。
【0125】
図19に示すように、角度変換部623は、複数のプリズム624を所定のピッチでX方向に多数配列した構造を有する。各プリズム624は、光射出側に第1接合面624jを有し、光入射側に第2接合面624cを有する。導光本体部材20aの第1接合面21j上又は各プリズム624の第1接合面624j上には、局所的な部分領域上に半透過反射膜であるハーフミラー層28が形成されている。ここで、ハーフミラー層28が形成されている領域は、図2(B)に示す部分領域PA0と同様のものとなっている。導光部材621において、導光本体部材20aと角度変換部623とは、接着層CCによって互いに接合されている。また、角度変換部623中の隣接する一対のプリズム624は、接着層CCによって互いに接合されている。さらに、光透過部材323と角度変換部623とは、接着層CCによって互いに接合されている。各プリズム624の第2接合面(下地面)624cと光透過部材323の第2接合面(下地面)623cとは、微細な凹凸41を有する粗面SRとされている。このように、第2接合面(下地面)624c,623cを粗面SRとすることにより、これら第2接合面624c,623c上に接着剤を塗布して広げる際に、粘度低い接着剤を比較的均一に広げることができ、接合部に気泡が残ることを簡易に抑制できる。
【0126】
なお、導光本体部材20aと角度変換部623と光透過部材323との表面(具体的には反射面21a,21b等)は、図7及び8と同様に、本体部分21s,24s,23sの下地面SFをハードコート層27で被覆することによって形成されている。ここで、導光部材21の本体部分21sの下地面SFには、非平滑面として、微細な凹凸141を有する粗面SRが形成されている。このように、接合部材521nや接合部材523nの本体部分21s,23sの下地面SFを粗面SRとすることにより、ハードコート層27の密着性が高まり、ハードコート層27の耐擦傷性を高めることができる。
【0127】
〔その他〕
以上各実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0128】
上記の説明では、第1接合面21jと第2接合面23cとを部分領域PA0と残領域PAとで接着しているが、第1接合面21jと第2接合面23cとを残領域PAのみで接着することもできる。この場合、残領域PA全体で接着することもできるが、残領域PAに設けた複数箇所の接着領域で接着することもできる。なお、第2接合面23cは、接着しない部分では、透過性の観点から粗面化しないことが望ましい。
【0129】
上記の説明では、ハーフミラー層(半透過反射膜)28が横長の矩形領域に形成されるとしたが、ハーフミラー層28の輪郭は用途その他の使用に応じて適宜変更することができる。ただし、ハーフミラー層28は、有効領域EAを十分にカバーしていることが望ましい。
【0130】
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
【0131】
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図11(B)等に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
【0132】
上記実施形態では、画像表示装置11として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像表示装置11としては、透過型の液晶表示デバイス32に限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、画像表示装置11として、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子を用いることもできる。
【0133】
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光装置20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0134】
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光入射面ISを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
【0135】
上記の説明では、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とを備える導光装置20,520,620を用いたが、光入射部B1や光射出部B3において、ハーフミラー層28等として平面ハーフミラー又は平面ミラーを用いる必要はなく、球面又は非球面の曲面ミラーによってレンズ的な機能を持たせることもできる。さらに、ハーフミラー層28等に代えて仮想的な半透過ミラーとしてのホログラム素子を配置することもできる。この場合、ホログラム素子も、広義の半透過反射面である。なお、かかるホログラム素子には、集光等の光学的な機能を付加することもできる。
【0136】
図20は、図16に示す第3実施形態の変形例を説明するものである。この変形例は、ホログラム素子を用いており、角度変換部523として、多数の反射ユニット2cを配列したものではなく、複数のホログラム素子を積層したホログラム層902cを備えるものを用いている。
【0137】
さらに、図21に示すように、光入射部B1として、導光部B2から分離したプリズム又はブロック状のリレー部材1025を用いることができ、このリレー部材1025の入射出射面や反射内面にレンズ的な機能を持たせることもできる。なお、導光部B2を構成する導光体26には、画像光GLを反射によって伝搬させる第1及び第2反射面21a,21bが設けられているが、これらの反射面21a,21bは、互いに平行である必要はなく、曲面とすることもできる。図21に示す導光体26は、光透過部材23と接合され、両者の接合部には、ハーフミラー層28が設けられる。この場合も、第1実施形態の場合と同様に、例えば光透過部材23側の下地面である第2接合面23cにおいて、微細な凹凸(起伏)を有する粗面SR(図6参照)が形成されており、導光体26と光透過部材23とを接合する際に、接着剤の液ダレが生じにくくなる。また、導光体26においてハードコート層27で被覆されている下地面が粗面化されているので、導光体26の下地である本体部分21s等の材料に関わらずハードコート層27の密着性を確保することができる。なお、リレー部材1025もハードコート層27で被覆することができ、この場合、リレー部材1025の下地面を粗面化することで、ハードコート層27の密着性を高めることができる。
【0138】
上記の説明では、反透過反射膜としてのハーフミラー層28が金属反射膜や誘電体多層膜により形成され、ホログラム素子に置き換えることもできるとしたが、ハーフミラー層28は、減光を伴う各種半透過シートに置き換えることもできる。
【0139】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0140】
上記の説明では、第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【0141】
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、光学パネル110は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。
【符号の説明】
【0142】
AX1,AX2…光軸、 B1…光入射部B2…導光部、 B3…光射出部、 B4…透視部、 CC…接着層、 EY…眼、 GL…画像光、 GL’…外界光、 GL1,GL2…画像光、 IM1,IM2…投射像、 IS…光入射面、 OS…光射出面、 PA…残領域、 PA0…部分領域、 PA1,PA2…周辺領域、 PS…プリズム部、 RS…斜面、 SF…下地面、 SR…粗面、 10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 20…導光装置、 20a…導光本体部材、 21…導光部材、 21a…第1反射面、 21b…第2反射面、 21c…第3反射面、 21d…第4反射面、 21j…第1接合面、 21s,24s,23s…本体部分、 23…光透過部材、 23a…第1面(第1透過面)、 23b…第2面(第2透過面)、 23c…第2接合面(下地面)、 25…ミラー層、 27…ハードコート層、 28…ハーフミラー層、 31…照明装置、 31a…光源、 34…駆動制御部、 41,141…凹凸、 100…虚像表示装置、 100A,100B…表示装置、 110…光学パネル、 123…支持フレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向して延びる第1及び第2反射面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材と、を備え、
前記導光部材において被覆されている下地面のうち少なくとも一部が、粗面化されている、虚像表示装置。
【請求項2】
前記導光部材に接合されることによって外界光の観察を可能にする光透過部材をさらに備え、
前記導光部材及び前記光透過部材において被覆されている前記下地面としての接合面のうち少なくとも一部が、粗面化されている、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記導光部材及び前記光透過部材において露出するハードコート層と、前記導光部材及び前記光透過部材間の接着層とに接する下地面が、粗面化されている、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記導光部材は、前記光透過部材と接合される第1接合面の部分領域上に、前記画像光を折り曲げるとともに前記外界光を透過させる半透過反射膜を有し、
前記光透過部材は、接着層を介して前記第1接合面に対して接着される第2接合面を有し、
前記第1接合面及び前記第2接合面の少なくとも一方のうち、間に配置された前記接着層に接する部分が、前記下地面として粗面化されている、請求項3に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記光入射部は、前記第1反射面に対して所定の角度をなす第3反射面を有し、
前記光射出部は、前記第1反射面に対して所定の角度をなす第4反射面が設けられるとともに前記接着層に接する第1接合面を有し、
前記光透過部材は、前記第1反射面を延長した位置に配置される第1透過面と、前記第2射面を延長した位置に配置される第2透過面と、前記接着層を介して前記第1接合面に対向する第2接合面とを有し、
前記半透過反射膜は、前記第4反射面に形成され、
前記第2接合面は、粗面化されている、請求項4に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記第1及び第2反射面と前記第1及び第2透過面とに形成された前記ハードコート層に接する本体側が、前記下地面として粗面化されている、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記導光部材を構成する本体部分は、紫外線硬化型の樹脂で形成されて、少なくとも一部に粗面化された前記下地面を有する、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記導光部材と、前記光透過部材と、前記ハードコート層と、前記接着層とは、同一の屈折率を有する材料で形成されている、請求項3から7までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記導光部材の本体部分と、前記光透過部材の本体部分とは、メタクリルスチレンで形成されている、請求項3から8までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
前記下地面のうち前記少なくとも一部の面粗さは、前記第1及び第2反射面の面粗さよりも大きい、請求項1から9までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
画像光を形成する画像表示装置と、前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向して延びる第1及び第2反射面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材とを備える虚像表示装置の製造方法であって、
前記導光部材の下地面のうち少なくとも一部を粗面化する第1の工程と、
粗面化された前記下地面を被覆する第2の工程とを備える、虚像表示装置の製造方法。
【請求項1】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向して延びる第1及び第2反射面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材と、を備え、
前記導光部材において被覆されている下地面のうち少なくとも一部が、粗面化されている、虚像表示装置。
【請求項2】
前記導光部材に接合されることによって外界光の観察を可能にする光透過部材をさらに備え、
前記導光部材及び前記光透過部材において被覆されている前記下地面としての接合面のうち少なくとも一部が、粗面化されている、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記導光部材及び前記光透過部材において露出するハードコート層と、前記導光部材及び前記光透過部材間の接着層とに接する下地面が、粗面化されている、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記導光部材は、前記光透過部材と接合される第1接合面の部分領域上に、前記画像光を折り曲げるとともに前記外界光を透過させる半透過反射膜を有し、
前記光透過部材は、接着層を介して前記第1接合面に対して接着される第2接合面を有し、
前記第1接合面及び前記第2接合面の少なくとも一方のうち、間に配置された前記接着層に接する部分が、前記下地面として粗面化されている、請求項3に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記光入射部は、前記第1反射面に対して所定の角度をなす第3反射面を有し、
前記光射出部は、前記第1反射面に対して所定の角度をなす第4反射面が設けられるとともに前記接着層に接する第1接合面を有し、
前記光透過部材は、前記第1反射面を延長した位置に配置される第1透過面と、前記第2射面を延長した位置に配置される第2透過面と、前記接着層を介して前記第1接合面に対向する第2接合面とを有し、
前記半透過反射膜は、前記第4反射面に形成され、
前記第2接合面は、粗面化されている、請求項4に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記第1及び第2反射面と前記第1及び第2透過面とに形成された前記ハードコート層に接する本体側が、前記下地面として粗面化されている、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記導光部材を構成する本体部分は、紫外線硬化型の樹脂で形成されて、少なくとも一部に粗面化された前記下地面を有する、請求項5に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記導光部材と、前記光透過部材と、前記ハードコート層と、前記接着層とは、同一の屈折率を有する材料で形成されている、請求項3から7までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記導光部材の本体部分と、前記光透過部材の本体部分とは、メタクリルスチレンで形成されている、請求項3から8までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
前記下地面のうち前記少なくとも一部の面粗さは、前記第1及び第2反射面の面粗さよりも大きい、請求項1から9までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項11】
画像光を形成する画像表示装置と、前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向して延びる第1及び第2反射面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材とを備える虚像表示装置の製造方法であって、
前記導光部材の下地面のうち少なくとも一部を粗面化する第1の工程と、
粗面化された前記下地面を被覆する第2の工程とを備える、虚像表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−80039(P2013−80039A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218977(P2011−218977)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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