説明

虚像表示装置

【課題】複数部材の接合によって形成される導光装置であって十分な強度を有する導光装置を備える虚像表示装置を提供すること。
【解決手段】導光装置20において、導光部材21のハーフミラー層(半透過反射膜)28が第1接合面21jの部分領域PA0上に形成されており、光透過部材23の第2接合面23cが第1接合面21jに対して少なくとも他領域PAで接着されるので、第1接合面21jに対するハーフミラー層(半透過反射膜)28の付着力が十分大きくない場合であっても、第1接合面21jと第2接合面23cとの接合強度すなわち導光部材21と光透過部材23とを組み合わせた導光装置20の強度を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの画像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されている。
【0003】
このような虚像表示装置において、画像光と外界光とを重畳させるために、シースルー光学系の提案がなされている(特許文献1等参照)。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の装置では、瞳サイズよりも射出開口が小さい導光光学系を用いる瞳分割方式によってシースルーを実現しているため、虚像の表示サイズを大きくすることが困難である。また、瞳サイズよりも小さい導光光学系を用いるため、人間の個々の眼幅に対応するために有効瞳径(虚像の取り込みを可能にする採光径であり、アイリング径とも呼ぶ)を大きくすることが困難である。また、物理的に瞳付近に導光光学系の射出開口や筐体が配置されるため、死角が生じてしまい完全なシースルーとはいえなくなる。
【0005】
なお、頭部装着ディスプレイ用の光学システムとして、導光角度の異なる複数の光モードを進行させることができる導光体を備えるものが存在する(特許文献2参照)。このような光学システムをおいて、射出側の第3光学面をハーフミラーとし、当該ハーフミラーを内部に埋め込むように導光体に対してプリズム状部材を貼り付けて全体を平板化することにより、ハーフミラー越しに外界光の観察を可能にするシースルー型の導光装置にすることも考えられる。
【0006】
しかし、導光体とプリズム状部材とを接合した部分には、大きな力が加わる可能性があり、両者の接着強度が十分でない場合、接合部分で剥がれが生じ、導光装置が破損する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−224473号公報
【特許文献2】特表2008−535001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、複数部材の接合によって形成される導光装置であって十分な強度を有する導光装置を備える虚像表示装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、光入射部から取り込まれた画像光をする第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材と、(d)導光部材に接合されることによって外界光の観察を可能にする光透過部材と、を備え、(e)導光部材は、光透過部材と接合される第1接合面の部分領域上に、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる半透過反射膜を有し、(f)光透過部材は、第1接合面に部分領域を除く他領域を含めて対向するとともに、接着剤により第1接合面に対して少なくとも他領域で接着される第2接合面を有する。ここで、半透過反射膜は、金属反射膜に限らず、誘電体層等を含む多層膜、ホログラム素子等を含む。
【0010】
上記虚像表示装置では、半透過反射膜が第1接合面の部分領域上に形成されており、光透過部材の第2接合面が第1接合面に対して少なくとも他領域で接着されるので、第1接合面に対する半透過反射膜の付着力が十分大きくない場合であっても、第1接合面と第2接合面との接合強度すなわち導光部材と光透過部材とを組み合わせた導光装置の強度を高めることができる。
【0011】
本発明の具体的な側面では、第1接合面の他領域と第2接合面の他領域に対応する対向領域との少なくとも一方は、起伏を有する非平滑面を含む。この場合、非平滑面によって接着又は接合の面積を増加させることができるので、第1接合面と第2接合面との接合強度を簡易かつ確実に増加させることができる。
【0012】
本発明の別の側面では、非平滑面が、粗面化加工によって微細な凹凸を有する粗面である。この場合、非平滑面の加工が容易で、第1接合面や第2接合面を通過する光束の乱れを抑えることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、第1接合面側に設けた非平滑面と、第2接合面側に設けた非平滑面とは、互いに嵌合する。この場合、第1接合面と第2接合面とを介して導光部材と光透過部材との間でアライメントが可能になる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、第1接合面側に設けた非平滑面と、第2接合面側に設けた非平滑面とは、凹凸が逆の反転形状である。この場合、第1接合面と第2接合面との間を満たす接着剤の量を低減することができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、導光部材の第1接合面において、半透過反射膜を支持する部分領域は、所定方向に関して第1接合面の中央側に配置され、半透過反射膜の周囲の他領域は、所定方向の両端側で部分領域を挟む周辺領域である。上記所定方向が上下方向である場合、半透過反射膜は、第1接合面の上下の中央に配置され、第1接合面の上下端側に半透過反射膜を介在させないで外界光の観察を可能にする透過領域を設けることができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、第1接合面が、全体として第2接合面に接着されており、周辺領域は、全体として非平滑面となっている。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、導光部材が、光入射部と導光部と光射出部とを一体的な部材として有し、光入射部が、第1及び第2反射面のいずれかに対して鈍角をなす平面の第3反射面を有し、光射出部の第1接合面が、第1及び第2反射面のいずれかに対して鈍角をなす平面の第4反射面を形成する。この場合、光入射部の第3反射面で反射された画像光が導光部の第1及び第2反射面で全反射されつつ伝搬され、光射出部の第4反射面で反射されて虚像として観察者の眼に入射する。なお、光入射部と導光部と光射出部とを一体的な部材とすることにより、射出成形技術を利用して導光装置を高精度で形成することができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、導光部材と光透過部材と接着剤とは、略同一の屈折率を有する材料で形成されている。この場合、第1接合面や第2接合面での光束の乱れを抑えて、外界光の正確な観察を可能にする。なお、略同一の屈折率とは、接着面の粗さにも依存するが、光路が乱されない程度の僅かな屈折率差を許容することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の虚像表示装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の本体部分の平面図であり、(B)は、本体部分の正面図である。
【図3】(A)は、導光部材の光入射部における第3反射面の構造を説明する図であり、(B)は、導光部材の導光部における第1反射面の構造を説明する図であり、(C)は、導光部材の導光部における第2反射面の構造を説明する図であり、(D)は、導光部材の光射出部における第4反射面の構造を説明する図である。
【図4】(A)は、縦の第1方向に関する光路を展開した概念図であり、(B)は、横の第2方向に関する光路を展開した概念図である。
【図5】虚像表示装置の光学系における光路を具体的に説明する平面図である。
【図6】(A)は、液晶表示デバイスの表示面を示し、(B)は、観察者に見える液晶表示デバイスの虚像を概念的に説明する図であり、(C)及び(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。
【図7】導光部材と光透過部材との接合を説明する斜視図である。
【図8】導光部材と光透過部材との接合部を概念的に説明する拡大断面図である。
【図9】(A)及び(B)は、変形例の虚像表示装置の一部を説明する図である。
【図10】第2実施形態における接合部を概念的に説明する拡大断面図である。
【図11】変形例における接合部を概念的に説明する拡大断面図である。
【図12】第3実施形態における接合部を概念的に説明する拡大断面図である。
【図13】(A)は、第4実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光装置の正面図及び平面図である。
【図14】画像光の光路について説明する模式的な図である。
【図15】ハーフミラー層を含む接合部を説明する断面図である。
【図16】(A)は、第5実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光装置の正面図及び平面図である。
【図17】画像光の光路について説明する模式的な図である。
【図18】ハーフミラー層を含む接合部を説明する断面図である。
【図19】変形例の虚像表示装置を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0021】
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、フレーム121のヨロイからテンプルにかけての部分に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。
【0022】
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0023】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
【0024】
照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0025】
液晶表示デバイス32において、第1方向D1は、縦のY方向に相当し、第2方向D2は、横のX方向に相当する。第1方向D1と第2方向D2とは、投射光学系12を通る第1光軸AX1と直交し、互いに直交する。
【0026】
導光装置20は、導光部材21と光透過部材23とを接合したものであり、全体としてXY面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
【0027】
導光装置20のうち、導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、側面を構成する第1の面から第4の面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第1接合面21jとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3反射面21a,21b,21c及び第1接合面21jに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、XY面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、XY面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第1接合面21jは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。見方を変えれば、第3反射面21cは、第2反射面21bに対して鈍角ηをなし、第1接合面21jは、第2反射面21bに対して鈍角εをなしている。第3反射面21cを通る第1光軸AX1と第1接合面21jを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、以下に詳述するが、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21hが設けられている。導光部材21は、この端面21hも含めると、7面の多面体状の外形を有するものとなっている。
【0028】
導光部材21は、対向して延びる第1及び第2の面である第1及び第2反射面21a,21bによる全反射を利用して導光を行うものであり、導光に際して反射によって折り返される方向と、導光に際して反射によって折り返されない方向とがある。導光部材21で導光される画像について考えた場合、導光に際して複数回の反射によって折り返される横方向すなわち閉じ込め方向DW2は、第1及び第2反射面21a,21bに垂直(Z軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第2方向D2に相当する。一方、導光に際して反射によって折り返されないで伝搬する縦方向すなわち非閉じ込め方向DW1は、第1及び第2反射面21a,21b及び第3反射面21cに平行(Y軸に平行)で、後述するように光源側まで光路を展開した場合に、液晶表示デバイス32の第1方向D1に相当する。なお、導光部材21において、伝搬される光束が全体として向かう主導光方向は、−X方向になっている。
【0029】
導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状の一体的な部材を本体部分20aとし、本体部分(一体的な部材)20aは、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。このように導光部材21は、基材としての本体部分20aを一体形成品とするが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
【0030】
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、矩形の輪郭を有し、その矩形領域の略全体に亘って、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導くための反射ミラーであるミラー層25を有する。このミラー層25は、導光部材21の斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。
【0031】
図3(A)は、第3反射面21cを説明する図であり、光入射部B1における表面部分SP1の部分拡大断面図である。第3反射面21cは、ミラー層25を有し保護層26で被覆されている。このミラー層25は、全反射のコーティングであり、導光部材21を構成する本体部分20aの斜面RS上にAl(アルミニウム)等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。
【0032】
図2(A)等に戻って、第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光GLを、全体として−Z方向寄りの−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。なお、ミラー層25の下地として、予めハードコート層を形成することもできる。
【0033】
導光部B2は、互いに対向しXY面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aの面部分は、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通のものとなっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、その表面には、ミラー層等の非透過性の反射コートが施されていない。
【0034】
図3(B)は、第1反射面21aを説明する図であり、導光部材21の導光部B2における表面部分SP2の部分拡大断面図である。また、図3(C)は、第2反射面21bを説明する図であり、導光部材21の導光部B2における表面部分SP3の部分拡大断面図である。第1及び第2反射面21a,21bは、表面の損傷を防止し映像の解像度低下を防止するため、ハードコート層27で被覆されている。このハードコート層27は、導光部材21の本体部分20aの平坦面FS上に樹脂等からなるコート剤をディップ処理やスプレーコート処理によって成膜することによって形成される。
【0035】
図2(A)等に戻って、光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、導光部B2の第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、全体として導光装置20の奥側の主導光方向即ち光射出部B3を設けた−X側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには非透過性又は半透過性の反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
【0036】
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第1接合面21jとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための裏側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第1接合面21jは、略矩形の傾斜した平坦面(斜面RS)であり、その一部に、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるための第4反射面21dを有する。
【0037】
第4反射面21dは、ハーフミラー層28を有している。このハーフミラー層28は、光透過性を有する反射膜(すなわち半透過反射膜)である。ハーフミラー層(半透過反射膜)28は、第1接合面21jの全体ではなく、その部分領域PA0上に形成されている。第1接合面21jのうち、ハーフミラー層28を形成すべき部分領域PA0は、縦方向である非閉じ込め方向DW1に関する中央側に配置されており、上下の両端側において、一対の周辺領域PA1,PA2に挟まれている。さらに、部分領域PA0の−X側には、ハーフミラー層28が形成されていない奥側領域PA3が存在する。これらの周辺領域PA1,PA2と奥側領域PA3とを合わせた他領域PAは、第4反射面21dとしてのハーフミラー層28が存在しない領域であり、画像光GL等を略そのまま透過させる。ハーフミラー層28は、導光部材21を構成する本体部分20aの第1接合面21jのうち部分領域PA0上に金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光GL'の観察を容易にする観点で、想定される画像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、画像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
【0038】
図3(D)は、第4反射面21d及びその周辺の構造を説明する図である。ここで、導光部材21の第4反射面21dと光透過部材23の第2接合面23cとの間、より正確にはハーフミラー層28と第2接合面23cとの間には、導光部材21と光透過部材23とを接合するための接着剤によって接着層CCが形成される。接着層CCは、導光部材21の本体部分20aや光透過部材23のバルク材と略等しい屈折率を有しており、導光部材21から光透過部材23にかけてこれらと接着層CCとの界面を通過する光が、当該界面において不要な反射をすることを抑制している。
【0039】
図2(A)等に戻って、第4反射面21d又は第1接合面21jは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、上記ハーフミラー層28により、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として−Z方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。なお、第4反射面21dを透過した画像光の成分は、光透過部材23に入射し、映像の形成には利用されない。
【0040】
図2(B)に示すように、導光部材21のうち画像光GLが通過する有効領域EAは、光入射部B1側で比較的縦長になっており、光射出部B3側で比較的横長になっている。第4反射面21d又はハーフミラー層28は、第1接合面21jの一部であるが、画像光GLの有効領域EAに対応してこれをカバーするように形成されており、導光部材21に導かれた画像光GLは、光入射部B1を無駄なく通過して観察者の眼EYに入射する。このように、ハーフミラー層28は、横長の輪郭を有するが、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの横長の輪郭に対応するものとなっている。
【0041】
光透過部材23は、導光部材21の本体部分20aと同一の材料で構成され同一の屈折率を有し、第1面23aと、第2面23bと、第2接合面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、XY面に沿って延びる。また、第2接合面23cは、XY面に対して傾斜しており、導光部材21の第1接合面21j又は第4反射面21dに対向して平行に配置されている。つまり、光透過部材23は、第2面23bと第2接合面23cとに挟まれた楔状の部材WPを有するものとなっている。光透過部材23は、導光部材21と同様に、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。光透過部材23は、射出成型によって成形されたブロック状の一体的な部材であり、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。
【0042】
光透過部材23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置され、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置され、観察者の眼EYから遠い表側にある。第2接合面23cは、接着剤によって導光部材21の第1接合面21jに接合される矩形の光透過面である。以上の第1面23aと第2接合面23cとなす角度は、導光部材21の第2反射面21bと第1接合面21jとのなす角度εと等しくなっており、第2面23bと第2接合面23cとなす角度は、導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとのなす角度βと等しくなっている。
【0043】
光透過部材23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍において、透視部B4を構成している。すなわち、第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL'を高い透過率で透過させる。第2接合面23cも、外界光GL'を高い透過率で透過可能であるが、導光部材21の第4反射面21dに対応する領域では、ハーフミラー層28が存在することから、第2接合面23cを通過する外界光GL'は、例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL'とを重畳させたものを観察することになる。
【0044】
〔C.画像光の光路の概要〕
図4(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のY'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
【0045】
上側の画像光GLaは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φの上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ(|φ|=|φ|)の下方向から傾いて入射する。以上の角度φ,φは、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
【0046】
図4(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向D2の光路を説明する図である。第2方向D2に沿った横断面CS2すなわちXZ面(展開後のX'Z'面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+X側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GL1とし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−X側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GL2とする。
【0047】
右側の第1表示点P1からの画像光GL1は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θの右方向から傾いて入射する。一方、左側の第2表示点P2からの画像光GL2は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX'に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ(|θ|=|θ|)の左方向から傾いて入射する。以上の角度θ,θは、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
【0048】
なお、第2方向D2又は閉じ込め方向DW2の横方向に関しては、導光部材21中で画像光GL1,GL2が反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GL1,GL2が導光部材21中で不連続に表現されている。また、観察者の眼EYについては、図2(A)の場合と比較して見ている方向が上下反対となっている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GL1,GL2の導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GL1の射出角度θ'と左側の画像光GL2の射出角度θ'とは異なるものに設定されている。
【0049】
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GL1,GL2は、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1又は非閉じ込め方向DW1に関しては、液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2又は閉じ込め方向DW2に関しては、液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
【0050】
〔D.横方向に関する画像光の光路〕
図5は、第1表示装置100Aにおける具体的な光路を説明する断面図である。投射光学系12は、3つのレンズL1,L2,L3を有している。
【0051】
液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL11,GL12は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第1反射角γ1で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL11,GL12は、第1反射角γ1を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、次いで再度第1反射面21aに入射して全反射される(第3回目の全反射)。結果的に、画像光GL11,GL12は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計3回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL11,GL12は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θの傾きで平行光束として射出される。
【0052】
液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、投射光学系12のレンズL1,L2,L3を通過することで平行光束化され、導光部材21の光入射面ISに入射する。導光部材21内に導かれた画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて等しい角度で全反射を繰り返して、最終的に光射出面OSから平行光束として射出される。具体的には、画像光GL21,GL22は、平行光束として導光部材21の第3反射面21cで反射された後、第2反射角γ2(γ2<γ1)で導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される(第1回目の全反射)。その後、画像光GL21,GL22は、第2反射角γ2を保った状態で、第2反射面21bに入射して全反射され(第2回目の全反射)、再度第1反射面21aに入射して全反射され(第3回目の全反射)、再度第2反射面21bに入射して全反射され(第4回目の全反射)、再々度第1反射面21aに入射して全反射される(第5回目の全反射)。結果的に、画像光GL21,GL22は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて計5回全反射され、第4反射面21dに入射する。画像光GL21,GL22は、この第4反射面21dで第3反射面21cと同一の角度で反射され、光射出面OSからこの光射出面OSに垂直な第2光軸AX2方向に対して角度θの傾きで平行光束として射出される。
【0053】
図5において、導光部材21を展開した場合に第1反射面21aに対応する仮想的な第1面121aと、導光部材21を展開した場合に第2反射面21bに対応する仮想的な第2面121bとを描いている。このように展開することにより、第1表示点P1からの画像光GL11,GL12は、光入射面ISに対応する入射等価面IS’を通過した後、第1面121aを2回通過し第2面121bを1回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かり、第2表示点P2からの画像光GL21,GL22は、光入射面ISに対応する入射等価面IS”を通過した後、第1面121aを3回通過し第2面121bを2回通過して光射出面OSから射出されて観察者の眼EYに入射することが分かる。見方を変えると、観察者は、2つの位置の異なる入射等価面IS’,IS”の近傍に存在する投射光学系12のレンズL3を重ねて観察していることになる。
【0054】
図6(A)は、液晶表示デバイス32の表示面を概念的に説明する図であり、図6(B)は、観察者に見える液晶表示デバイス32の虚像を概念的に説明する図であり、図6(C)及び6(D)は、虚像を構成する部分画像を説明する図である。図6(A)に示す液晶表示デバイス32に設けた矩形の画像形成領域ADは、図6(B)に示す虚像表示領域AIとして観察される。虚像表示領域AIの左側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から右側にかけての部分に相当する第1投射像IM1が形成され、この第1投射像IM1は、図6(C)に示すように右側が欠けた部分画像となっている。また、虚像表示領域AIの右側には、液晶表示デバイス32の画像形成領域ADのうち中央から左側にかけての部分に相当する投射像IM2が虚像として形成され、この第2投射像IM2は、図6(D)に示すように左半分が欠けた部分画像となっている。
【0055】
図6(A)に示す液晶表示デバイス32のうち第1投射像(虚像)IM1のみを形成する第1部分領域A10は、例えば液晶表示デバイス32の右端の第1表示点P1を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計3回全反射される画像光GL11,GL12を射出する。液晶表示デバイス32のうち第2投射像(虚像)IM2のみを形成する第2部分領域A20は、例えば液晶表示デバイス32の左端の第2表示点P2を含んでおり、導光部材21の導光部B2において合計5回全反射される画像光GL21,GL22を射出する。液晶表示デバイス32の画像形成領域ADの中央寄りにおいて第1及び第2部分領域A10,A20に挟まれて縦長に延びる帯域SAからの画像光は、図6(B)に示す重複画像SIを形成している。つまり、液晶表示デバイス32の帯域SAからの画像光は、導光部B2において計3回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第1投射像IM1と、導光部B2において計5回全反射される画像光GL11,GL12によって形成される第2投射像IM2となって、虚像表示領域AI上で重畳していることになる。導光部材21の加工が精密で、投射光学系12によって正確にコリメートされた光束が形成されているならば、重複画像SIについて、2つの投射像IM1,IM2の重畳によるズレや滲みを防止することができる。
【0056】
〔E.導光部材と光透過部材との接合〕
図7に示すように、導光部材21と光透過部材23とを接合する際には、予め導光部材21の第1接合面21jのうち部分領域PA0上にハーフミラー層28が形成されている。その後、ハーフミラー層28やその周囲の他領域PA上に例えば紫外線硬化型の接着剤を塗布して広げる。さらに、光透過部材23の第2接合面23cを、ハーフミラー層28及び他領域PAに対向するように配置して、これらに対して適度の力で押し付けつつ、紫外線である硬化光を第1及び第2接合面21j,23c間に照射する。これにより、第1及び第2接合面21j,23c間の接着剤が硬化して、導光部材21と光透過部材23との接合が完了する。この際、ハーフミラー層28と第2接合面23cとの間だけでなく、他領域PAと第2接合面23cとの間にも接着剤が充填され、接着剤の硬化によって接着層CCが形成されるので(図3(D)参照)、導光部材21と光透過部材23との接合強度が高まる。
【0057】
図8は、導光部材21と光透過部材23との接合部を概念的に説明する拡大断面図である。第1及び第2接合面21j,23c間に形成された接着層CCによって、導光部材21の本体部分20aと、光透過部材23の本体部分20bとが連結されている。ここで、周辺の他領域PAについては、略鏡面の第1及び第2接合面21j,23cが接着層CCを介して直接接続されており、接合強度の確保が比較的容易である。一方、中央の部分領域PA0については、ハーフミラー層28が第1接合面21jと接着層CCとの間に存在しており、ハーフミラー層28は蒸着等によって形成された比較的付着力が弱いものであるから、接合強度の確保が比較的容易でない。結果的に、導光部材21と光透過部材23とは、主に周辺の他領域PAにおいて強固に接着され、導光部材21と光透過部材23とを組み合わせた導光装置20の強度も十分高いものとなる。
【0058】
なお、図示のハーフミラー層(半透過反射膜)28は、金属反射膜28aと、第1誘電体多層膜28bと、第2誘電体多層膜28cとを、金属反射膜28aが中央となるように積層したサンドイッチ構造を有するものとなっている。金属反射膜28aは、例えばAg、Al等の材料で形成されている。下側の第1誘電体多層膜28bや上側の第2誘電体多層膜28cは、例えば透明な誘電体層を数層以上積層したものであり、金属反射膜28aの角度特性等を改善する。ただし、これらの誘電体多層膜28b,28cについては省略することもできる。
【0059】
上記実施形態の虚像表示装置100によれば、導光装置20において、導光部材21のハーフミラー層(半透過反射膜)28が第1接合面21jの部分領域PA0上に形成されており、光透過部材23の第2接合面23cが第1接合面21jに対して少なくとも他領域PAで強固に接着されるので、第1接合面21jに対するハーフミラー層(半透過反射膜)28の付着力が十分大きくない場合であっても、第1接合面21jと第2接合面23cとの接合強度すなわち導光部材21と光透過部材23とを組み合わせた導光装置20の強度を高めることができる。
【0060】
以上では、液晶表示デバイス32の右側の第1表示点P1を含む第1領域A10から射出された画像光GL11,GL12の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計3回で、液晶表示デバイス32の左側の第2表示点P2を含む第2領域A20から射出された画像光GL21,GL22の第1及び第2反射面21a,21bによる全反射回数が計5回であるとしたが、全反射回数については適宜変更することができる。つまり、導光部材21の外形(すなわち厚みt、距離D、鋭角α,β)の調整によって、画像光GL11,GL12の全反射回数を計5回とし、画像光GL21,GL22の全反射回数を計7回とすることもできる。また、以上では、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が奇数となっているが、光入射面ISと光射出面OSとを反対側に配置するならば、すなわち導光部材21を平面視で平行四辺形型にすれば、画像光GL11,GL12,GL21,GL22の全反射回数が偶数となる。
【0061】
図9(A)は、図2(A)等に示す導光部材21を変形した導光部材621を説明する図である。以上の説明では、導光部材21を伝播する画像光が第1及び第2反射面21a,21bに対して2つの反射角で全反射され2つのモードで伝搬するとしたが、図9(A)に示す変形例の導光部材621のように、3つの成分の画像光GL31,GL32,GL33が反射角γ1,γ2,γ3(γ1>γ2>γ3)でそれぞれ全反射されることを許容することもできる。この場合、液晶表示デバイス32から射出される画像光GLは、3つのモードで伝搬され、観察者の眼EYの位置において合成されて虚像として認識される。この場合、図9(B)に示すように、有効表示領域A0の左側に例えば計3回全反射の投射像IM21が形成され、有効表示領域A0の中央寄りに例えば計5回全反射の投射像IM22が形成され、有効表示領域A0の右側に例えば計7回全反射の投射像IM23が形成される。
【0062】
また、図2(B)に示す導光部材21の光射出面OSに対向してレンズその他の光学素子を配置することもできる。或いは、ハーフミラー層28は、保護層で被覆されたホログラムシートに置き換えることができる。この場合、照明装置31として可干渉性の高いものを使用し、ホログラムシートとして液晶表示デバイス32で形成された例えば3色の画像を個別に処理する積層型の回折シートを用いる。
【0063】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0064】
図10に示すように、第2実施形態の場合、導光部材21の第1接合面221jのうち他領域PAにおいて、非平滑面として、微細な凹凸(起伏)41を有する粗面SRが形成されている。粗面(非平滑面)SRは、例えば本体部分20aの成形用金型の転写面に予め粗面化処理を行なうことによって形成される。また、粗面SRは、例えば本体部分20aの成形後に、サンドブラスト、化学薬品その他によるエッチング等の粗面化処理、表面改質処理を施すことによっても形成される。
【0065】
粗面SRを構成する微細な凹凸(起伏)41の深さは、例えば数μm〜数10μm程度とする。なお、図面では誇張しているが、ハーフミラー層(半透過反射膜)28の厚みは、例えば数μm程度であり、接着層CCの厚みは、例えば50μm程度である。具体的な実施例において、導光部材21の本体部分20aの屈折率と接着層CCの屈折率との差は、例えば0.02以下にした。これにより、粗面SRの存在によって外界光GL'が乱されることを防止できる。
【0066】
図11は、図10に示す導光部材21の変形例を説明する断面図である。図示の場合、光透過部材23の第2接合面223cのうち第1接合面221jの他領域PAに対応する対向領域PA4において、非平滑面として、微細な凹凸を有する粗面SRが形成されている。この場合も、光透過部材23の本体部分20bの屈折率と接着層CCの屈折率との差が小さければ、粗面(非平滑面)SRの存在によって外界光GL'が乱されることを防止できる。
【0067】
なお、図示を省略するが、第2接合面223c全体を粗面SRにすることもできる。さらに、第2接合面223c側だけを粗面SRとし、導光部材21の第1接合面221jを図8のように平滑面の第1接合面21jとすることもできる。
【0068】
第2実施形態の虚像表示装置100によれば、導光装置20において、第1接合面221jと第2接合面223cの他領域PAとの少なくとも一方は、起伏を有する非平滑面である粗面SRを含むので、粗面(非平滑面)SRによって接着又は接合の面積を増加させることができ、第1接合面221jと第2接合面223cとの接合強度を簡易かつ確実に増加させることができる。
【0069】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0070】
図12に示すように、第3実施形態の場合、導光部材21の第1接合面321jのうち他領域PAにおいて、起伏を有する非平滑面として、比較的大きな凹凸形状である第1嵌合形状SF1が形成されている。この第1嵌合形状(非平滑面)SF1は、例えば多数の直線的に延びる起伏としてのV溝をその短手側に配列したものとすることができる。一方、光透過部材23の第2接合面323cのうち第1接合面321jの他領域PAに対応する対向領域PA4において、非平滑面として、比較的大きな凹凸形状である第2嵌合形状SF2が形成されている。この第2嵌合形状SF2は、第1嵌合形状SF1の凹凸形状を反転させたものとなっている。つまり、第1嵌合形状SF1と第2嵌合形状SF2とは、凹凸が逆の反転形状となっている。具体的には、第2嵌合形状SF1は、多数の直線的に延びる三角断面の畝状部をその短手側に配列したものとすることができる。
【0071】
なお、第1嵌合形状SF1は、ピラミッド状の凸部又は凹部を2次元的に配列したものとすることができ、第2嵌合形状SF2も、第1嵌合形状SF1の反転形状として、ピラミッド状の凹部又は凸部を2次元的に配列したものとすることができる。
【0072】
第3実施形態の虚像表示装置100によれば、第1接合面321jの第1嵌合形状(非平滑面)SF1と、第2接合面323cの第2嵌合形状(非平滑面)SF2との嵌合によって、導光部材21と光透過部材23との間で精密なアライメントが可能になる。
【0073】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0074】
図13(A)〜13(C)に示す虚像表示装置100は、画像形成装置10と、導光装置420とを一組として備える。導光装置420は、導光本体部材21sと、角度変換部423と、光透過本体部材23sとを備える。なお、図13(A)は、図13(B)に示す導光装置420のA−A断面に対応する。
【0075】
導光本体部材21sの全体的な外観は、図中XY面に平行に延びる平板である。また、導光本体部材21sは、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cとを有し、さらに後述する第1接続面21jを有する(図14参照)。また、導光本体部材21sは、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。さらに、導光本体部材21sは、長手方向の一端においてプリズム部PSを有し、長手方向の他端において多数のミラーによって構成される角度変換部423につながる構造となっている。
【0076】
導光本体部材21sの下地又は基板である本体部分20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、XY面に平行で画像形成装置10に対向する裏側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射面ISを有している。本体部分20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光を、全体として−Z方向に偏った−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を本体部分20a内に確実に結合させる。
【0077】
導光本体部材21sの第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の本体部分20aの主面であり互いに対向しXY面に対して平行に延びる2平面として、プリズム部PSで折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光本体部材21sの奥側即ち角度変換部423を設けた−X側に導かれる。
【0078】
図13(C)に示すように、導光本体部材21sにおいて、第3反射面21cと後述する光入射面ISとは、光入射部B1として機能する。また、導光本体部材21sの第1及び第2反射面21a,21bに挟まれた本体部分20aと、後述する角度変換部423とは、導光部B2として機能する。なお、角度変換部423は、光射出部B3として機能する。
【0079】
角度変換部423は、導光本体部材21sの奥側(−X側)において、第1及び第2反射面21a,21bの延長平面に沿って形成されている。ここで、本体部分20aの奥側端部は、角度変換部423の一部となっている。角度変換部423は、第1及び第2反射面21a,21bに対して傾斜し互いに平行に等間隔で配列される多数のハーフミラー層28を有する。角度変換部423は、導光部材421の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OSを介して観察者の眼EY側へ折り曲げる。つまり、角度変換部423は、画像光の角度を変換している。
【0080】
光透過本体部材23sは、角度変換部423を奥側(−X側)に延長した部分であり、導光部材421の導光本体部材21sと同様に平板状の部材となっている。
【0081】
以上において、角度変換部423の全部又は入口側の一部は、導光本体部材21sと組み合わせることで導光部材として機能している。また、角度変換部423の全部又は奥側の一部は、光透過本体部材23sと組み合わせることで光透過部材として機能している。
【0082】
画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光本体部材21sに入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光本体部材21sの第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸AXに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部423において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に角度変換部423に付随する光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。
【0083】
以下、導光装置420中の画像光の光路について説明する。なお、第4実施形態における導光装置420は、縦の第1方向D1(Y方向)に関して、図1(A)の導光装置20と同様に機能する。一方、導光装置420は、横の第2方向D2(X方向)に関して、多数の伝搬モードの画像光を導光させるものとなっており、2つの伝搬モードの画像光を導光させる図2(A)の導光装置20と異なっている。
【0084】
図13(A)に示すように、画像表示装置11の液晶表示デバイス(画像光形成部)32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL41とし、射出面32aの紙面右側(+X側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL42とし、射出面32aの紙面左側(−X側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL43とする。
【0085】
投射光学系12を経た各画像光GL41,GL42,GL43の主要成分は、導光本体部材21sの光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL41,GL42,GL43のうち、液晶表示デバイス(画像光形成部)32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL41は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、標準反射角γで導光本体部材21sの第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL41は、標準反射角γを保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL41は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部423の中央部23kに達する。この中央部23kで反射された画像光GL41は、光射出面OSから当該光射出面OS又はXY面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。
【0086】
液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+X側)から射出された画像光GL42は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最大反射角γで導光本体部材21sの第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL42は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部423のうち最も入口側(+X側)の周辺部23mに達する。この周辺部23mで反射された画像光GL42は、入口の第3反射面21c側から離れるように+X軸に対して鈍角をなし、光軸AXに対して角度θ12(導光装置420内ではθ12')だけ傾斜した方向に射出される(図14参照)。
【0087】
液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−X側)から射出された画像光GL43は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γで導光本体部材21sの第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL43は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部423のうち最も奥側(−X側)の周辺部23hに入射する。この周辺部23hで反射された画像光GL43は、第3反射面21c側に戻されるように+X軸に対して鋭角をなし、光軸AXに対して角度θ13(導光装置420内ではθ13')だけ傾斜した方向に射出される(図14参照)。
【0088】
図15に示すように、角度変換部423は、複数のプリズム424を所定のピッチでX方向に多数配列した構造を有する。各プリズム424は、光射出側に第1接合面424jを有し、光入射側に第2接合面424cを有する。導光本体部材21s又は本体部分20aの第1接合面21j上又は各プリズム424の第1接合面424j上には、局所的な部分領域上に半透過反射膜であるハーフミラー層28が形成されている。ハーフミラー層28が形成されている領域は、図13(B)に示す部分領域PA0に対応するものとなっている。つまり、ハーフミラー層28は、周辺領域PA1,PA2を合わせた他領域PAには形成されていない。本体部分20aと各プリズム424と光透過本体部材23sとは、図8の場合と同様に、部分領域PA0及び他領域PAにおいて接着層CCによって互いに接合されている。つまり、導光本体部材21s又は角度変換部423の第1接合面21j,424jと、角度変換部423又は光透過本体部材23sの第2接合面424c,23cとが接着層CCを介して接合されている。なおここで、ハーフミラー層28を介在させた接合に関して、隣接する一対のプリズム424のうち光源に近い内側のプリズム424iは、導光部材と考えるものとし、光源から遠い外側のプリズム424oは、光透過部材と考えるものとする。
【0089】
第4実施形態の虚像表示装置100によれば、導光装置420において、導光本体部材21s又は角度変換部423に設けたハーフミラー層(半透過反射膜)28が第1接合面21j,424jの部分領域PA0上に形成されており、角度変換部423又は光透過本体部材23sの第2接合面424c,23cが第1接合面21j,424jに対して少なくとも他領域PAで接着されるので、第1接合面21j,424jに対するハーフミラー層(半透過反射膜)28の付着力が十分大きくない場合であっても、第1接合面21j,424jと第2接合面424c,23cとの接合強度、すなわち導光本体部材20sと角度変換部423と光透過本体部材23sとを組み合わせた導光装置420の強度を高めることができる。
【0090】
第1接合面21j,424jと第2接合面424c,23cとは、平滑面に限らず、図10に示すような粗面SRとすることができ、接着層CCによる接合強度を高めることができる。また、第1接合面21j,424jと第2接合面424c,23cとは、図12に示すような比較的大きな凹凸形状である嵌合形状SF1,SF2を設けたものとすることもでき、導光本体部材20sと角度変換部423と光透過本体部材23sとを簡易に比較的精密にアライメントして接合することができる。
【0091】
なお、導光本体部材21s、角度変換部423、光透過本体部材23s等は、ハードコート層で被覆されたものとできる。つまり、例えば本体部分20aの表面をハードコート層で被覆することによって、第1及び第2反射面21a,21b等を形成することもできる。
【0092】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0093】
図16(A)〜16(C)に示す虚像表示装置100は、画像形成装置10と、導光装置520とを一組として備える。導光装置520は、その一部として導光部材521を有している。導光部材521は、本体部分20aと、画像取出部である角度変換部523とを備える。なお、図16(A)は、図16(B)に示す導光部材521のA−A断面に対応する。
【0094】
導光部材521の全体的な外観は、図中XY面に平行に延びる平板である本体部分20aによって形成されている。また、導光部材521は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cとを有する。また、導光部材521は、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する第1の側面21eと第2の側面21fとを有する。さらに、導光部材521は、長手方向の一端において本体部分20aの一部として、プリズム部PSを有し、長手方向の他端において本体部分20aに埋め込まれた多数の微小ミラーによって構成される角度変換部523を有する構造となっている。導光部材521は、一体的な部品であるが、第1実施形態の場合と同様に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができ(図16(C)参照)、このうち光入射部B1は、第3反射面21cと後述する光入射面ISとを有する部分であり、光入射部B1は、第1及び第2反射面21a,21bを有する部分であり、導光部B2は、角度変換部523と後述する光射出面OSとを有する部分である。
【0095】
本体部分20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、XY面に平行で画像形成装置10に対向する裏側又は観察者側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射面ISと、画像光を観察者の眼EYに向けて射出させる光射出面OSとを有している。本体部分20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される入射光折曲部である第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光を、全体として−Z方向に偏った−XZ方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を本体部分20a内に確実に結合させる。また、本体部分20aにおいて、光射出面OSの裏側の平面に沿って微細構造である角度変換部523が形成されている。本体部分20aは、入口側の第3反射面21cから奥側の角度変換部523にかけて延在し、プリズム部PSを介して内部に入射させた画像光を角度変換部523に導く。
【0096】
導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の本体部分20aの主面であり互いに対向しXY面に対して平行に延びる2平面として、プリズム部PS又は光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光装置520の奥側即ち角度変換部523を設けた−X側に導かれる。
【0097】
本体部分20aの光射出面OSに対向して配置される角度変換部523は、導光部材521の奥側(−X側)において、第2反射面21bの延長平面に沿ってこの延長平面に近接して形成されている。角度変換部523は、導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。つまり、角度変換部523は、画像光の角度を変換している。
【0098】
画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光部材521に入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸AXに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部523において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。当該虚像光が観察者の網膜において結像することで、観察者は虚像による映像光等の画像光を認識することができる。
【0099】
以下、導光装置520中の画像光の光路について説明する。なお、第5実施形態における導光装置520は、縦の第1方向D1(Y方向)に関して、図1(A)の導光装置20と同様に機能する。一方、導光装置520は、横の第2方向D2(X方向)に関して、多数の伝搬モードの画像光を導光させるものとなっており、2つの伝搬モードの画像光を導光させる図2(A)の導光装置20と異なっている。
【0100】
図16(A)に示すように、画像表示装置11の液晶表示デバイス(画像光形成部)32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL51とし、射出面32aの紙面右側(+X側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL52とし、射出面32aの紙面左側(−X側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL53とする。
【0101】
投射光学系12を経た各画像光GL51,GL52,GL53の主要成分は、導光部材521の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL51,GL52,GL53のうち、液晶表示デバイス(画像光形成部)32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL51は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、標準反射角γで導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL51は、標準反射角γを保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL51は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部523の中央部23kに達する。この中央部23kで反射された画像光GL51は、光射出面OSから当該光射出面OS又はXY面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。
【0102】
液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+X側)から射出された画像光GL52は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γで導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL52は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部523のうち最も奥側(−X側)の周辺部23hに達する。この周辺部23hで反射された画像光GL52は、入口の第3反射面21c側に戻されるように+X軸に対して鋭角をなし、光軸AXに対して角度θ12(導光装置520内ではθ12')だけ傾斜した方向に射出される(図17参照)。
【0103】
液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−X側)から射出された画像光GL53は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γで導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL53は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部523のうち最も入口側(+X側)の周辺部23mに入射する。この周辺部23mで反射された画像光GL53は、第3反射面21c側から離れるように+X軸に対して鈍角をなし、光軸AXに対して角度θ13(導光装置520内ではθ13')だけ傾斜した方向に射出される(図17参照)。
【0104】
なお、図17に示すように、角度変換部523は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット2cで構成される。つまり、角度変換部523は、Y方向に延びる細長い反射ユニット2cを所定のピッチPTで角度変換部523の延びる主導光方向すなわち−X方向に沿って多数配列させることで構成されている。各反射ユニット2cは、奥側即ち光路下流側に配置される1つの反射面部分である第1の反射面2aと、入口側即ち光路上流側に配置される他の1つの反射面部分である第2の反射面2bとを1組のものとして有し、両反射面2a,2bは、一定の楔角δをなしている。これらのうち、少なくとも第2の反射面2bは、一部の光を透過可能な部分反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。当該反射ユニット2cにおいて、画像光GL52,53は、最初に奥側即ち−X側の第1の反射面2aで反射され、次に、入口側即ち+X側の第2の反射面2bで反射される。当該反射ユニット2cを経た画像光GL52,53は、他の反射ユニット2cを経ることなく、角度変換部523での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0105】
図18に示すように、角度変換部523は、導光部材521から延びる比較的厚い板状の接合部材521nと、光透過部材23から延びる比較的薄い板状の接合部材523nとを接合した構造を有する。接合部材521nは、表側又は外界側に第1接合面21jを有し、接合部材523nは、裏側又は観察者側に第2接合面23cを有する。接合部材521nの第1接合面21j上には、局所的な部分領域上に半透過反射膜であるハーフミラー層28が形成されている。ハーフミラー層28が形成されている領域は、図16(B)に示す部分領域PA0に対応するものとなっている。つまり、ハーフミラー層28は、周辺領域PA1,PA2を合わせた他領域PAには形成されていない。導光部材521の接合部材521nと、光透過部材23の接合部材523nとは、図8の場合と同様に、部分領域PA0及び他領域PAにおいて接着層CCによって互いに接合されている。つまり、接合部材521nの第1接合面21jと接合部材523nの第2接合面23cとが接着層CCを介して接合されている。
【0106】
第5実施形態の虚像表示装置100によれば、導光装置520において、導光部材521の接合部材521nに設けたハーフミラー層(半透過反射膜)28が第1接合面21jの部分領域PA0上に形成されており、角度変換部523の第2接合面23cが第1接合面21jに対して少なくとも他領域PAで接着されるので、第1接合面21jに対するハーフミラー層(半透過反射膜)28の付着力が十分大きくない場合であっても、第1接合面21jと第2接合面23cとの接合強度、すなわち導光部材521と光透過部材23とを組み合わせた導光装置520の強度を高めることができる。
【0107】
第1接合面21jと第2接合面23cとは、平滑面に限らず、図10等に示すような粗面SRとすることができ、接着層CCによる接合強度を高めることができる。また、第1接合面21jと第2接合面23cとは、図12に示すような比較的大きな凹凸形状である嵌合形状SF1,SF2を設けたものとすることもでき、導光部材521と光透過部材23とを簡易に比較的精密にアライメントして接合することができる。
【0108】
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0109】
上記の説明では、第1接合面21jと第2接合面23cとを部分領域PA0と他領域PAとで接着しているが、第1接合面21jと第2接合面23cとを他領域PAのみで接着することもできる。この場合、他領域PA全体で接着することもできるが、他領域PAに設けた複数箇所の接着領域で接着することもできる。
【0110】
上記の説明では、ハーフミラー層(半透過反射膜)28が横長の矩形領域に形成されるとしたが、ハーフミラー層28の輪郭は用途その他の使用に応じて適宜変更することができる。ただし、ハーフミラー層28は、有効領域EAを十分にカバーしていることが望ましい。
【0111】
上記の説明では、導光部材21と光透過部材23とを直列的に接続しているが、導光部材21の第1及び第2の側面21e,21fを光透過部材23から延ばしたフレーム部材によって補強的に固定することもできる。
【0112】
上記の説明では、画像光形成部として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像光形成部としては、透過型の液晶表示デバイスに限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。さらに、液晶表示デバイス32に代えて有機EL等の自発光型の表示デバイスを用いることができる。
【0113】
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
【0114】
上記の説明では、光入射面ISと光射出面OSとを同一の平面上に配置しているが、これに限らず、例えば、光入射面ISを第1反射面21aと同一の平面上に配置し、光射出面OSを第2反射面21bと同一の平面上に配置する構成とすることもできる。この場合、第1反射面21aと第4反射面21dとが鈍角をなすことになる。
【0115】
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、図1の光学パネル110すなわち導光部材21,421,521は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。
【0116】
上記の説明では、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とを備える導光装置20,420,520を用いたが、光入射部B1や光射出部B3において、ハーフミラー層28等として平面ミラー又は平面ハーフミラーを用いる必要はなく、球面又は非球面の曲面ミラーによってレンズ的な機能を持たせることもできる。さらに、ハーフミラー層28等に代えて仮想的な半透過ミラーとしてのホログラム素子を配置することもできる。この場合、ホログラム素子も、広義の半透過反射面である。なお、かかるホログラム素子には、集光等の光学的な機能を付加することもできる。
【0117】
さらに、図19に示すように、光入射部B1として、導光部B2から分離したプリズム又はブロック状のリレー部材1025を用いることができ、このリレー部材1025の入射出射面や反射内面にレンズ的な機能を持たせることもできる。なお、導光部B2を構成する導光体26には、画像光GLを反射によって伝搬させる第1及び第2反射面21a,21bが設けられているが、これらの反射面21a,21bは、互いに平行である必要はなく、曲面とすることもできる。図19に示す導光体26は、光透過部材23と接合され、両者の接合部には、ハーフミラー層28が設けられる。この場合も、第1実施形態の場合と同様に、少なくともハーフミラー層28の周囲の他領域で、導光体26と光透過部材23とを接合することにより、導光体26と光透過部材23との接合強度を高めることができ、導光装置20の強度を高めることができる。
【0118】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0119】
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ表示装置100A,100B(具体的には画像形成装置10、導光装置20等)設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ例えば画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0120】
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光入射面ISを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
【0121】
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図6(B)に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
【0122】
上記実施形態では、導光部材21の第4反射面21dに設けたハーフミラー層28の反射率を20%としてシースルーを優先しているが、ハーフミラー層28の反射率を50%以上として画像光を優先することもできる。なお、ハーフミラー層28は、光透過部材23の第2の接合面23c上に形成することもできる。
【0123】
上記の説明では、第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【0124】
また、上記第4、5実施形態の説明では、角度変換部423,523を構成する反射ユニット2cの配列のピッチPTについては、各第1の反射面2a間において全て同一となっている場合に限らず、各ピッチPTにある程度の差異がある場合も含むものとする。
【0125】
上記第4、5実施形態の説明では、プリズム部PSを構成するミラー層25や斜面RSの傾斜角度について特に触れていないが、本発明は、ミラー層25等の傾斜角度を光軸AXに対して用途その他の仕様に応じて様々な値とすることができる。
【0126】
上記第4、5実施形態の説明では、反射ユニット2cによるV字状の溝は、先端を尖った状態で図示しているが、V字状の溝の形状については、これに限らず、先端を平らにカットしているものや先端にR(丸み)を付けているものであってもよい。
【符号の説明】
【0127】
2c…反射ユニット、 10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 20,420,520…導光装置、 20a,20b…本体部分、 20s…導光本体部材、 21,421,521…導光部材、 21a,21b,21c…第1-第3反射面、 21d…第4反射面、 21j,424j…第1接合面、 21s…導光本体部材、 23…光透過部材、 23a…第1面、 23b…第2面、 23c…第2接合面、 23s…光透過本体部材、 25…ミラー層、 26…保護層、 28…ハーフミラー層(半透過反射膜)、 31…照明装置、 32…液晶表示デバイス、 34…駆動制御部、 100…虚像表示装置、 100A,100B…表示装置、 110…光学パネル、 221j…第1接合面、 223c…第2接合面、 423,523…角度変換部、 424c,23c…第2接合面、 424…プリズム、 AX,AX1,AX2…光軸、 B1…光入射部、 B2…導光部、 B3…光射出部、 B4…透視部、 CC…接着層、 EY…眼、 GL…画像光、 GL'…外界光、 GL1,GL2…画像光、 IM1,IM2…投射像(虚像)、 IS…光入射面、 OS…光射出面、 PA…他領域、 PA0…部分領域、 PA1,PA2…周辺領域、 PA4…対向領域、 SF1,SF2…嵌合形状、 SL…照明光、 SR…粗面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を対向する第1及び第2の面での全反射により導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光部材と、
前記導光部材に接合されることによって外界光の観察を可能にする光透過部材と、を備え、
前記導光部材は、前記光透過部材と接合される第1接合面の部分領域上に、前記画像光を折り曲げるとともに前記外界光を透過させる半透過反射膜を有し、
前記光透過部材は、前記第1接合面に前記部分領域を除く他領域を含めて対向するとともに、接着剤により前記第1接合面に対して少なくとも前記他領域で接着される第2接合面を有する、虚像表示装置。
【請求項2】
前記第1接合面の前記他領域と前記第2接合面の前記他領域に対応する対向領域との少なくとも一方は、起伏を有する非平滑面を含む、請求項1に虚像表示装置。
【請求項3】
前記非平滑面は、粗面化加工によって微細な凹凸を有する粗面である、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記第1接合面側に設けた前記非平滑面と、前記第2接合面側に設けた前記非平滑面とは、互いに嵌合する、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記第1接合面側に設けた前記非平滑面と、前記第2接合面側に設けた前記非平滑面とは、凹凸が逆の反転形状をある、請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記導光部材の第1接合面において、前記半透過反射膜を支持する前記部分領域は、所定方向に関して前記第1接合面の中央側に配置され、前記半透過反射膜の周囲の前記他領域は、前記所定方向の両端側で前記部分領域を挟む周辺領域である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記第1接合面は、全体として前記第2接合面に接着されており、前記周辺領域は、全体として前記非平滑面となっている、請求項6に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記導光部材は、前記光入射部と前記導光部と前記光射出部とを一体的な部材として有し、
前記光入射部は、前記第1及び第2反射面のいずれかに対して鈍角をなす平面の第3反射面を有し、
前記光射出部の前記第1接合面は、前記第1及び第2反射面のいずれかに対して鈍角をなす平面の第4反射面を形成する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記導光部材と、前記光透過部材と、前記接着剤とは、略同一の屈折率を有する材料で形成されている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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