説明

蛇行防止ガイド付エンドレスベルト

【課題】プリンター装置等の処理スピードの高速化・高画質化に対応すべく、蛇行防止ガイド付エンドレスベルトの蛇行防止ガイド部がロール部に乗り上げることを防止することができる蛇行防止ガイド付エンドレスベルトを提供することにある。
【解決手段】蛇行防止ガイドが設けられた樹脂製のエンドレスベルトであって、蛇行防止ガイドとエンドレスベルトの間に補強材を介在させ、または、蛇行防止ガイドが設けられたエンドレスベルト面と反対側の面に補強材を設け、補強材の幅が、前記蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm〜2mm大きく、かつ、補強材の幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm〜2mmずれて設けるように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇行防止ガイドが配設されているエンドレスベルトに関し、プリンター、複写機、ビデオプリンター等の電子写真記録装置などに有用である。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真記録装置等の中間転写装置、転写装置、搬送装置等には、エンドレスベルトが使用されている。当該エンドレスベルトは、例えば、図4に示すように、複写機の中間転写装置の中間転写ベルト6として用いられ、下記のプロセスにて中間転写が行われる。即ち、感光ドラム1は帯電器3で均一に帯電され、露光器2により画像に対応した静電潜像が作られ、これが現像器5で現像され、トナーによるトナー像が形成される。トナー像は静電転写器10により、中間転写ベルト6に転写され、転写されたトナー像は、押圧ローラ12により記録紙11に再び転写される。その際、中間転写ベルト6は、その内面に接する複数のローラ7、8、9により支持されるが、高精度に駆動しなければ、エンドレスベルトが蛇行し易く、露光位置や転写位置がずれるため画像ムラや画像ずれが発生し易い。
【0003】
そこで、蛇行防止用のガイドをベルトの端部に接着剤で貼り付けて、エンドレスベルトの蛇行を抑制する技術が公知である(特許文献1、特許文献2参照)。また、ガイドの磨耗性を改善した技術が公知である(特許文献3参照)。また、ガイドの剥離性を改善した技術が公知である(特許文献4参照)。また、エンドレスベルトの端部破壊を防止するために、エンドレスベルトとガイドの間に介在するように補強テープを設けること、さらに、ベルトの外周面にも同様に補強テープを設けることが記載されている(特許文献5)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−310291号公報
【特許文献2】特開2001−206522号公報
【特許文献3】特開2006−106270号公報
【特許文献4】特開2006−267807号公報
【特許文献5】特開2006−276387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の装置の処理スピードの高速化・高画質化の傾向から、上記の特許文献1〜5の蛇行防止ガイドを貼り付けたエンドレスベルトにおいても、蛇行が生じ、ガイド溝からロール部に蛇行防止ガイドが乗り上げるという問題が生じていた。
【0006】
本発明者は、上記の問題に鑑みて、種々検討を行った結果、本発明に至ったものである。すなわち、本発明の目的は、プリンター装置等の処理スピードの高速化・高画質化に対応すべく、蛇行防止ガイド付エンドレスベルトの蛇行防止ガイド部がロール部に乗り上げることを防止することができる蛇行防止ガイド付エンドレスベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、蛇行防止ガイドが設けられた樹脂製のエンドレスベルトであって、
前記蛇行防止ガイドとエンドレスベルトの間に補強材を介在させ、または、蛇行防止ガイドが設けられたエンドレスベルト面と反対側の面に補強材を設け、
前記補強材の幅が、前記蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm〜2mm大きく、かつ、
補強材の幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm〜2mmずれて設けるように構成したことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、補強材によって、ベルトと蛇行防止ガイドの設置付近が補強され、その付近の変形が抑制されるため、蛇行が生じにくくなり、蛇行防止ガイド部がロール部に乗り上げることを防止できる。よって、プリンター等に用いられる場合、印字不良等が生じることがない。
【0009】
また、本発明において、補強材の厚みが0.05mm〜0.1mmであることが好ましい。厚みを0.05mm〜0.1mmの範囲にすることで、駆動ロールやガイドロールへの追随性を損なうことなく、紙送りの障害もないので好ましい。0.05mm未満では、補強力が十分でなく、0.1mmを超えると、駆動ロールやガイドロールへの追随性が悪化したり、紙送りへの障害になる可能性が高くなるので好ましくない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明のエンドレスベルトは、例えば、電子写真式複写機、レーザープリンター等における感光装置、中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等に使用される。従って、これらの用途、機能に応じて、ベルトの材質、形状、大きさ等が適宜設定される。
【0011】
例えば、電子写真記録装置等における中間転写ベルト及び転写搬送ベルトの場合、導電性フィラーを含有するポリイミド系樹脂からなる半導電性ベルト等が使用される。また、この半導電性ベルトの端部には、回転を制御するセンサーホールを設置する場合がある。
【0012】
その他の用途を含めて、本発明におけるエンドレスベルトの材質としては、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。なお、エンドレスベルトは繋ぎ目があってもなくてもよい。そして、エンドレスベルトの製造方法は、公知の製造方法が適用でき、ここでは説明を省略する。
【0013】
蛇行防止ガイド部材は、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等、ロールの駆動に追従する材料が好ましいが、特に限定するものではない。蛇行防止ガイドの幅や長さは、エンドレスベルトの形状や大きさに応じて適宜設定される。蛇行防止ガイドの断面形状が長方形である場合、その厚み(ガイドとしての高さに相当する)は、蛇行防止効果や耐久性等の観点から、0.05mmから3mm程度が好ましい。
【0014】
蛇行防止ガイド部材とベルト部材を貼り付けるための粘着剤(または接着剤)は、アクリル系、シリコン系、ゴム系等が挙げられ、蛇行防止ガイド部材とベルト部材の材質によって適宜選択される。粘着剤(または接着剤)は、基材を有して構成されていてもよい。
【0015】
蛇行防止ガイドは、蛇行防止効果、裂け防止ための補強効果の点から、エンドレスベルトの両端部、あるいは片端部に設けられる。蛇行防止ガイドは、エンドレスベルトの内面全周にわたり粘着層(または接着層)を介して貼り合わされる。エンドレスベルトと蛇行防止ガイドを接着または粘着する方法は、公知の技術が適用でき、ここでの詳細な説明は省略する。本発明においては、エンドレスベルトと蛇行防止ガイドの間に後述する補強材を介在させることがある。
【0016】
補強材は、樹脂性フィルムと粘着層(または接着層)からなるテープ部材が好ましい。テープ部材の樹脂性フィルムの材質は、具体的にポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等が例示され、補強効果のある樹脂であれば、特に制限はない。但し、エンドレスベルトに貼り付けるためには補強材にある程度の硬さが必要であり、伸び性の大きいようなテープ部材は好ましくなく、例えば、ポリエステル系テープ部材が好ましい。テープ部材の片面(あるいは両面)には粘着層(または接着層)が設けられて、この粘着層(または接着層)を構成する粘着剤(または接着剤)は、特に制限されないが、例えば、アクリル系、シリコン系、ゴム系等が挙げられる。粘着層(または接着層)の厚みは、特に制限されないが、その機能が発揮される量が確保されていればよく、例えば、5〜100μmが望ましい。
【0017】
補強材の幅サイズは、蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm〜2mmの範囲で大きく設定される。蛇行防止ガイドの幅サイズは、用途に応じて設定され、また、ロールの幅も設定されることにより、補強材のサイズもそれらに応じて設定される。0.5mm未満であると、厚みにもよるが補強力の観点から好ましくなく、2mmを超える場合、ロールの平滑性、他の部材への悪影響から好ましくない。また、補強材の厚みは、0.05mm〜0.1mmの範囲に設定される。
【0018】
補強材は、エンドレスベルトと蛇行防止ガイドの間に介在するように設けられる場合がある。あるいは、エンドレスベルトの端部の内面全周に蛇行防止ガイドを設け、そのエンドレスベルトの端部の外周に補強材を設ける場合がある。また、補強材を、それら内周側と外周側の両方に設ける場合もある。また、図1に示すように、補強材は、その幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm〜2mmずれて設けられる。この場合、補強材の一方の端部と蛇行防止ガイドの一方の端部との位置を合わせ、その他方の端部は、蛇行防止ガイドの他方の端部よりもベルト中央側に、ずれるように貼付されることが好ましい。
【0019】
以下、本発明の構成と効果を具体的実施例によりさらに説明する。また、実施例等における評価項目は下記のようにして測定をおこなった。尚、本発明は、かかる実施例、評価方法に限定されるものではない。
【0020】
(使用材料)
実施例および比較例においての使用材料は下記の通りである。
1.蛇行防止ガイド部材
ウレタンゴム(日本マタイ(株)製エスマーUR66゜)
2.エンドレスベルト
ポリイミド製エンドレスベルト
3.補強テープ(補強材)
ポリエステルテープ(日東電工(株)製No.31B、基材厚みが0.025mmおよび0.05mm)
【0021】
(評価方法)
実施例および比較例の評価は次の駆動試験でおこなった。
ベルト幅300mmの両端に蛇行防止用ガイド付で、蛇行防止用ガイドの反対面には補強テープの貼り付けられた外径300mmのエンドレスベルトをロール径(直径)30mm、ベルト張力5kgf/300mmの条件で、ロール速度は100mm/分で、1分間、回転させた。尚、ベルトは予めロール両側に設けられたプラスチック製傾斜部にガイド部を乗り上げておき、回転駆動試験終了する前に乗り上げが解消されたものを○、回転駆動試験終了後にも依然として乗り上げたままの場合は×とした。図2にその概要を示す。図3に測定開始状態、評価状態について示す。
【0022】
(実施例1)
厚み0.085mm、外径(直径)300mm、幅300mmのポリイミド製エンドレスベルトの内面両端部に両面テープにて、幅4mm、厚み1.2mmのウレタンゴムを貼付し、その裏面となるエンドレスベルト外面に幅5mm、基材厚み0.05mmの補強テープを貼付し、蛇行防止ガイドと補強テープ付エンドレスベルトを得た。この際、補強テープは、その一方の端部と蛇行防止ガイドの一方の端部との位置を合わせ、その他方の端部は、蛇行防止ガイドの他方の端部よりもベルト中央側に1mmずれるように貼付してある。蛇行防止ガイドと補強テープ付エンドレスベルトを得た。得られたエンドレスベルトを用いて、駆動試験により評価を行った結果、回転直後に乗り上げ状態は解消され、回転駆動終了後には乗り上げは見られなかった。
【0023】
(実施例2)
厚み0.085mm、外径(直径)300mm、幅300mmのポリイミド製エンドレスベルトの内面両端部に両面テープにて、幅4mm、厚み1.2mmのウレタンゴムを貼付し、その裏面となるエンドレスベルト外面に幅4.5mm、基材厚み0.05mm補強テープを貼付し、蛇行防止ガイドと補強テープ付エンドレスベルトを得た。この際、補強テープは、その一方の端部と蛇行防止ガイドの一方の端部との位置を合わせ、その他方の端部は、蛇行防止ガイドの他方の端部よりもベルト中央側に0.5mmずれるように貼付してある。得られたエンドレスベルトを用いて、駆動試験により評価を行った結果、回転駆動終了するまえに乗り上げ状態は解消された。
【0024】
(実施例3)
実施例1と同様の蛇行防止ガイドを用いて、蛇行防止ガイドとベルト本体の間に幅5mm、基材厚み0.05mm補強テープを貼付し、蛇行防止ガイドと補強テープ付エンドレスベルトを得た。この際、補強テープは、その一方の端部と蛇行防止ガイドの一方の端部との位置を合わせ、その他方の端部は、蛇行防止ガイドの他方の端部よりもベルト中央側に1mmずれるように貼付してある。得られたエンドレスベルトを用いて、駆動試験により評価を行った結果、回転駆動終了するまえに乗り上げ状態は解消された。
【0025】
(比較例1)
厚み0.085mm、外径(直径)300mm、幅300mmのポリイミド製エンドレスベルトの内面両端部に両面テープにて、幅4mm、厚み1.2mmのウレタンゴムを貼付し、その裏面となるエンドレスベルト外面に幅5mm、基材厚み0.025mm補強テープを貼付し、蛇行防止ガイドと補強テープ付エンドレスベルトを得た。この際、補強テープは、その一方の端部と蛇行防止ガイドの一方の端部との位置を合わせ、その他方の端部は、蛇行防止ガイドの他方の端部よりもベルト中央側に1mmずれるように貼付してある。得られたエンドレスベルトを用いて、駆動試験により評価を行った結果、回転駆動終了後も乗り上げ状態は解消されなかった。
【0026】
(比較例2)
厚み0.085mm、外径φ300mm、幅300mmのポリイミド製エンドレスベルトの内面両端部に両面テープにて、幅4mm、厚み1.2mmのウレタンゴムを貼付し、その裏面となるエンドレスベルト外面に幅4mm、基材厚み0.05mm補強テープを貼付し、蛇行防止ガイドと補強テープ付エンドレスベルトを得た。この際、補強テープの端部と蛇行防止ガイドの端部は、位置合わせしてある。得られたエンドレスベルトを用いて、駆動試験により評価を行った結果、回転駆動終了後も乗り上げ状態は解消されなかった。
【0027】
<試験結果>
各実施例と比較例の結果を表1にまとめる。
【表1】

【0028】
表1に示すように、補強テープの厚みが0.05mmで、補強テープの一方の端部と蛇行防止ガイドの一方の端部との位置を合わせ、その他方の端部が蛇行防止ガイドの他方の端部よりもベルト中央側に0.5mm以上ずれるように貼付してある場合には、回転駆動前においてガイド部がロールへ乗り上げ状態であっても、回転開始により直ちに乗り上げ状態が解消され、正常に回転することがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】補強材の設置の一例を示す図
【図2】実施例における評価方法を説明するための図
【図3】実施例における評価方法を説明するための図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛇行防止ガイドが設けられた樹脂製のエンドレスベルトであって、
前記蛇行防止ガイドとエンドレスベルトの間に補強材を介在させ、または、蛇行防止ガイドが設けられたエンドレスベルト面と反対側の面に補強材を設け、
前記補強材の幅が、前記蛇行防止ガイドの幅よりも0.5mm〜2mm大きく、かつ、
補強材の幅方向の端部が、蛇行防止ガイドの幅方向の端部よりエンドレスベルト中央側に0.5mm〜2mmずれて設けるように構成したことを特徴とする蛇行防止ガイド付エンドレスベルト。
【請求項2】
前記補強材の厚みが0.05mm〜0.1mmである請求項1に記載の蛇行防止ガイド付エンドレスベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−139583(P2009−139583A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−315101(P2007−315101)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】