説明

蛋白質性濃縮物を生産する際にフッ化物含有量を削減するプロセス

甲殻類の外骨格、特に、オキアミ内に存在するフッ化物は、食品、餌、食品添加物及び/又は餌添加物としてオキアミを利用するのに問題である。外骨格片を取り除く前に又はそれと同時に、オキアミを砕解し、酵素により加水分解することにより、オキアミからそのようなフッ化物を取り除き、フッ化物が削減された製品を作り出すためのプロセスが開発されている。本開示のプロセスに固有であるのは、食品及び餌に、並びに、製薬産業、栄養補助食品産業及び化粧品産業に適したオキアミ材料を処理することができることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲殻類に含まれるフッ化物と望まれない微量元素とを取り除く工業的方法に関する。本プロセスは、特に、かなりの量の殻及び甲皮を取り除き、甲殻類から幾つかの分割成分を、特に、フッ化物が削減された脂肪性乳剤及び蛋白質性乳剤を形成することにより、オキアミからフッ化物を実質的に削減するのに好ましく、効果的である。本発明は、高い脂肪含有量により生じるそのような乳剤に、特に、燐脂質のような脂肪を有する高い極性脂肪含有量に関連するプロセス上の問題を解決する。本発明によるプロセスにより生産される最終製品は、それ自体で、食品又は餌として、食品/餌添加物として、栄養補助食品、美容医薬品/化粧品又は医薬品として利用され得る、若しくは、更に先の下流の処理のための出発材料として利用され得る。本発明によるプロセスは、オキアミ以外の甲殻類に利用されるのにも適している。
【背景技術】
【0002】
従来技術により十分に対処されていない問題は、甲殻類の殻、甲皮及び甲殻の中に含まれるフッ化物と望まれない微量元素含有物である。本開示では、以下に、用語「オキアミ」は、オキアミが、この問題が特に強調される甲殻類のうちの1種類であることを意味するように利用されるが、他の種類の甲殻類も、本発明に関連する。オキアミに、特に、南極オキアミに関連する別の問題は、漁期の第2半期中の高い含有量の極性脂質である。
【0003】
上述のように、南極オキアミ(ナンキョクオキアミ)を処理する際の周知の問題は、脂質含有量、特に、燐脂質類のような極性脂質の含有量が、4月/5月から6月/7月までの漁期の第2半期の間に、極めて高い場合があることである。
【0004】
多くの周知の動物類について、燐脂質類のような極性脂質類の含有量は、ほぼ一定であり、全脂質含有量の変化は、トリグリセリド類等の中性脂質類の含有量が変わることにより生じる。脂質含有量のこれらの極めて大きな変化にもかかわらず、トリグリセリド類と燐脂質類との間の比は、南極オキアミについてはほぼ一定である。その上周知であるのは、脂質類、特に、燐脂質類により濃い乳剤が生じることである。そのような乳剤により、加水分解のような、脂質成分と蛋白質成分が分離することを含む、プロセス中に成分が分解する問題が生じる。本発明により開発されたプロセスは、プロセスの最終分離工程の前に及びその工程の間に、不可溶性の蛋白質類及び燐脂質類の凝集体を作り出すことにより、乳剤の問題も解決する。
【0005】
オキアミは、生物材料の巨大な資源である。南極海に棲息している南極オキアミ(ナンキョクオキアミ)の量は、計算方法と調査に応じて変わるけれども、おおよそ1〜2×10トンであり、可能な捕獲重量は、5〜7×10トンと推定される。南極海付近の冷水中に棲息するこれらの小さな甲殻類は、蛋白質類、燐脂質類、ポリ非飽和脂肪酸類等のような脂質類、キチン/キトサン、アスタキサンチン及び他のカロテノイド類、酵素類並びに他の材料の資源として関心があり、そのような材料を単離するいくつかの方法が、開発されている。
【0006】
本発明の背景は、オキアミがそれらの殻の中にフッ化物を蓄積し、そのような殻部分を含むことにより、抽出工程を通して最終材料にフッ化物が移動するのを考慮していない抽出プロセスにより、又は、遊離性フッ化物又は緩く結合したフッ化物が殻材料から別の加工材料へ拡散し得るような時間を浪費する工程により、あらゆる生産材料のフッ化物量が増し、最終製品のフッ化物イオン又はフッ化化合物の含有率が高くなることにある。
【0007】
フッ化物は、高濃度では、ペット同様に全種類の魚及び甲殻類、特に、淡水魚の健康に有害な化合物であり、なぜなら、フッ化物原子は、そのような生物の骨構造内に入り、フッ化物症(骨構造が弱くなることである。それは、骨粗鬆症の影響と類似しているが、骨構造自体であり、影響を受ける骨の多孔度でないので異なる)を起こしやすいからである。骨格フッ化物症は、骨格異常及び関節の痛みを特徴とする状態である。その病症は、骨芽細胞へのフッ化物の有糸分裂誘発作用のために、病的骨が形成されることにより生じる。その更に激しい形態では、骨格フッ化物症により、脊柱後弯、肢体不自由及び病身が生じる。神経根麻痺のある又はない脊椎症の形態の第2の神経性合併症が起こり得る。ラット実験では、フッ化物の高濃度の取り込みは、雄の生殖系に対して毒性があるとも示されており、ヒトでは、高濃度のフッ化物の取り込み及び骨格フッ化物症の症状は、血清テストステロンの減少と関連している。
【0008】
結果として、オキアミ材料が食品又は餌製品の開始材料として利用される場合、処理工程を通してフッ化物を取り除くことに注意を払わなければならない。しかしながら、フッ化物の拡散及び小さなオキアミ殻材料の存在は、工業規模でオキアミ材料を処理する際に克服するのが最も難しい問題である。
【0009】
その上、捕獲物から産出される蛋白質性材料から微量要素を含む灰分量を削減することは、有利であり得る。
【0010】
このように、フッ化物が費用面で効果的に取り除かれ、フッ化物含有量が十分に削減された製品を生産する、オキアミから蛋白質性材料及び脂質類を生産する工業的方法に対する必要性がある。
【0011】
燐脂質類のような極性脂質類は、細胞膜に不可欠なものであり、膜脂質類とも呼ばれる。通常、魚並びに他の水性動物及び陸生動物内の全脂質含有量は、年を通しての餌への接近度が変わることにより変化する。その変化は、通常、餌への接近度が低いか又は全くない期間中に、エネルギー貯蔵として蓄えられ、利用される生物内非極性脂質の含有量が変わることにより生じ、一方では、燐脂質類の含有量は比較的一定である。しかしながら、南極オキアミについて、これは、この種の中の脂質含有量が漁期/収穫期の間に2%〜10%まで変わる場合にトリグリセリド類及び燐脂質類の相対的含有量がほぼ一定であるので、異なる。これは、生の南極オキアミ中の燐脂質含有量が5%まであり得ることを意味する。脂質類、特に、燐脂質類のような極性脂質類は、加熱工程、攪拌工程、及び加水分解プロセスのような分離工程を含む従来技術による工業処理の間に濃い乳剤を作り出すことで知られている。この乳剤により、通常、脂質成分と蛋白質成分を分離する際に問題が生じる。
【0012】
このように、オキアミから蛋白質濃縮物を生産する際に、乳剤により生じる分離問題を取り除く工業的方法に対する必要性も存在する。
【0013】
処理されたオキアミ材料からフッ化物を取り除くことと、オキアミ材料中の極性脂質の含有量を変えることとの両方に対処する多目的に利用可能な工業的方法に対する必要性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
フランス国特許第2835703号(出願人:テクニアルゴ、発明者:ファニ.J.ら、2002年3月15日)で開示されるのは、切り身廃棄物及び他の海洋廃棄物材料(とりわけ、甲殻類)のような海洋資源から蛋白質性加水分解物を得るための単離方法である。その特許は、圧砕工程、加水分解工程、濾過工程及び遠心分離工程を含むが、オキアミを処理するのに特に適しておらず、材料からフッ化物を取り除く問題に必ずしも対処していない。
【0015】
その上、任意の処理方法内の一連の工程は、最終製品の品質と組成に影響を与える。このように、ファニによる上述のプロセスは、生産せず、処理される材料からフッ化物を取り除くのに適していない。
【0016】
その上、ファニによるプロセスは、処理される材料中の高い極性脂質含有量の問題に対処しておらず、この問題への解決策を与えていない。
【0017】
ヨーロッパ特許第1417211B1号(海洋技術&生物資源株式会社)で開示されているのは、特定の燐脂質と特定のフラボノイドとを含む組成物と、複数の病気を治療又は予防するのに適した薬物を生産するために、前記組成物を利用することである。その組成物は、自然海産物又は水性資源、特に、オキアミ(ナンキョクオキアミ、南極オキアミ及び、太平洋オキアミ、大西洋オキアミ)、同様に、インド洋、モーリシャス諸島及び/又はマダガスカルから離れたレユニオン島、カナダ西海岸、日本海、セントローレンス湾及びファンディ湾並びに他の生息地からのオキアミから生産される。関連する燐脂質及びフラボノイドを抽出する方法は、初期粉砕/圧砕工程の後に連続したアセトン及びアルコール処理により実行される方法であるように記載される。再び、フッ化物を取り除くことに注意は払われておらず、実際に生産される製品は、示された燐脂質とフラボノイドとを含んでいるにもかかわらず、少なくとも、本発明のプロセスが、アセトン又はアルコール抽出物を含んでおらず、初期のオキアミの塊から固いオキアミ材料を取り除くための複数の機械的工程も含んでいるという理由で、本発明による製品と同じ組成を有していない。
【0018】
英国特許第2240786号(韓国食品研究所)では、オキアミの高いフッ化物含有量についての問題が認識されている。しかし、フッ化物を取り除くために提案されているのは、アルミニウム電極を利用して微粉砕されたオキアミに電流を通すことであり、圧砕されたオキアミ物質から細片を実際に取り除く際の問題を考慮しておらず、従って、遊離したフッ化物を潜在的に取り除くが、その代わり、細片の除去に関する他の問題が生じる。その上、殻片の中にまだ存在する更に量の多い結合したフッ化物が、電極分解された材料の中に残っていることを考慮していない。
【0019】
米国特許第5053234号(アンダーソンら)で開示されているのは、粉砕工程、蛋白質分解酵素を利用した加水分解工程、材料を加熱することと加熱により油を同時に産出することとを含む不活性化工程、製品から水を除去する選別工程、及び、油を除去し、最終製品を形成する後続の油分離工程を含むプロセスにより生産される蛋白質製品である。再び、材料からフッ化物を取り除くことに関することは何も示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、甲殻、甲皮及び殻を極めて初期に且つ実質的に完全に取り除くことにより、オキアミ材料からフッ化物を実質的に取り除く複数の工程を含む、オキアミの捕獲物を処理する工業的方法を提供する。その方法は、燐脂質含有量の高い原料を処理する際に乳剤により生じる分離の問題も回避する。
【0021】
本発明による方法は、捕獲されたオキアミを甲板に上げるのに続いて即座に開始される。重要なことは、フッ化物は、甲殻及び甲皮から死んだオキアミの肉と分泌液に即座に漏出/拡散し始めるので、捕獲されたオキアミが甲板に上げられた後に可能な限り早く、本発明による方法が開始されることである。
【0022】
本発明によるプロセスを開始することに関連して、用語「即座に」を利用する場合、これは、捕獲されたオキアミの甲板上げからオキアミの初期砕解までの期間に関連する(以下を参照すること)。この時間期間は、最小限に保たれなければならず、好ましくは60分を超えるべきではなく、更に好ましくは15分を超えるべきではなく、トロール袋/網から適切な砕解機まで、捕獲されたオキアミを直接運搬することを含むべきである。オキアミ材料の砕解機は、通常の離解機、粉砕機、摩砕機又は破砕機であり得る。
【0023】
捕獲されたオキアミは、初期に、例えば、離解/粉砕/摩砕/破砕により原料を砕解する装置の中に積み込まれる。砕解プロセスは、温度が、水の室温付近、即ち、−2〜+10℃、好ましくは約+0℃〜+6℃であり、従来の砕解方法により実行され得る。この砕解プロセスは、通常、先行する周知の処理方法によっても行われ、粉砕される材料中のオキアミ混合物から大量の殻及び甲殻屑を作り出し、フッ化物含有量の高い砕解ペーストを作り出すので、従来技術による障害のうちの1つがある。しかしながら、この高いフッ化物含有量は、従来技術で処理されるオキアミ材料の用途が限定され、前記材料が、他の海洋原料、例えば、漂泳性の魚と比較して、食品、餌又は対応する食品又は餌添加物にあまり適していない理由のうちの1つである。
【0024】
本発明によれば、オキアミ材料は、後続の処理工程を妨げないように、別の分離工程に適切な粒径に分離される。
【0025】
砕解工程は、連続的に実行され、25mmまでの粒径が生じ、好ましい粒径は、0.5〜10mm、更に好ましくは1.0〜8mmである。粒径の分布は、本発明の態様のうちの1つを表し、なぜなら、フッ化物は、粉砕された材料から漏れ、原料の残りと混合しやすいからである。しかしながら、時間に固有のパラメータで、及び、pHや温度等の最適な又はほぼ最適な状態に固有のパラメータで、並びに、任意選択的に、利用される酵素に依存する特定のイオン等の補助因子を加えて、続く酵素による加水分解工程が実行されると仮定すると、この漏れ工程は、時間がかかり、前記加水分解工程を妨げるほど速くはない。
【0026】
砕解材料の殻の温度は、本発明によれば、続く酵素による加水分解に適切な温度に上昇されるであろう。温度は、処理時間を削減することにより、フッ化物の拡散を防ぐために、且つ、酵素による加水分解のための材料を準備するために、砕解工程に続いて可能な限り早く(数秒[例えば、1〜300秒、更に好ましくは1〜100秒、更に好ましくは1〜60秒、最も好ましくは1〜10秒]内に)、増加されるであろう。
【0027】
本発明によれば、酵素は、砕解工程の前に、その間に又はその後に、砕解された材料に直接的に又は追加の水を通して、若しくは、それらの両方で添加され得る。
【0028】
本発明によれば、外来性蛋白質分解酵素(例えば、微生物[枯草菌、クロコウジカビ等]又は植物種から誘導されるアルカラーゼ、ノイターゼ、及び酵素)が、砕解の前に、その間に、又はその後に、並びに、砕解した材料を加熱した前に、その間に、又はその後に添加されるであろう。添加される酵素は、単一の酵素又は酵素混合物の形態であり得る。加水分解の条件は、添加される酵素の最適な加水分解条件に整合すべきであり、選択される外来性加水分解酵素に対する最適な条件の選択は、当業者に知られている。実例として、外来性酵素アルカラーゼは、最適なpHが約8、最適な温度が60℃、加水分解時間が40〜120分である。選択される酵素又は酵素の組み合わせは、原料中の高含有量の燐脂質により生じる乳剤を削減するように選択されるべきである。
【0029】
蛋白質分解酵素の有効量は、プロセス及び製品最適化の後に設定され、特定の選択された市販の酵素又は酵素混合物の効率にも依存する。市販の酵素の重量での典型的な量は、砕解された原料の重量の比として、好ましくは、0.5%〜0.05%、更に好ましくは0.3%〜0.07%、最も好ましくは0.2%〜0.09%である。捕獲された新鮮なオキアミは、迅速で且つ内在性(自然性)酵素により制御されない自己分解について知られている。
【0030】
外来性酵素を添加する理由は、砕解された物質内の蛋白質性材料の分解を制御し、誘導すること、並びに、上述のように殻、甲皮及び甲殻からのフッ化物の漏出を避ける/前記漏出に先行するために、材料の加水分解を昇速/加速させる(以下を参照すること)のを補助することである。酵素又は酵素の組み合わせは、製造プロセス中の乳剤を削減するためにも、注意深く選択されるべきである。酵素は、外来及び/又は内在蛋白質分解酵素から選択され得る。酵素の混合物が利用される場合、そのような混合物は、続いてキチン含有成分が更に先の下流処理を更に行うことができるように、1つ以上のキチン分解酵素を含み得る。キチン分解酵素が利用される場合、オキアミの殻/甲殻/甲皮からのフッ化物の漏出を増加させないように注意を払わなければならない。しかしながら、そのようなフッ化物の漏出は時間がかかるので、上記の時間に固有のパラメータで、そのような酵素処理を行うことができる。更に都合の良い、初期の加水分解工程の酵素混合物内にキチン分解酵素を含むことに代わるものは、分離工程に続いて、分離されたキチン含有成分を処理することである。
【0031】
粉砕された材料からのフッ化物の漏出を回避することは重要であるので、且つ、ある程度の漏出は、砕解工程により作り出された増加した表面領域に関連するので、酵素による加水分解工程は、100分の時間間隔内に、好ましくは60分内に、更に好ましくは、内在性酵素の添加から計算された45分内に止められるべきである。添加される酵素の量は、利用される酵素製品の種類に関連する。実例として述べることができるのは、酵素アルカラーゼが、原料の0.1〜0.5%(重量/重量)の量で添加され得ることである。これは、添加された内在性酵素と関連されるべきであり、なぜなら、更なる酵素の添加により、加水分解工程の時間間隔が削減されることになるからである。上述のように、加水分解工程の時間は、短い加水分解時間により、殻、甲皮及び甲殻片からのフッ化物の拡散時間が削減されるので、本プロセスの重大な特徴のうちの1つである。加水分解酵素処置工程は、オキアミの軟組織と、甲殻類の外部殻、甲殻及び甲皮との間の結合を取り除くために意図されたものである。
【0032】
加水分解処理工程に続いて、又はそれと共に、オキアミ材料は、傾瀉器等の重力により動作する小片除去装置を通過する。この分離工程により、加水分解された又は加水分解されるオキアミ材料から、かなりの量のフッ化物を含む細片が除去される。傾瀉器は、1.000〜1.800g、更に好ましくは1.200〜1.600g、最も好ましくは1,300〜1.500gの重力で動作する。この小片除去工程を通じて、かなりの量のフッ化物は、蛋白質性オキアミ成分から取り除かれる。1.500p.p.m.の通常のフッ化物含有量を有する従来のオキアミ粉と比較して、乾燥重量に基づいてのフッ化物の低減は、80%まで、更に好ましくは85%まで、最も好ましくは95%までであり得る。
【0033】
酵素による加水分解は、分離工程の前に、その間に又はその後に、90℃を上回る、好ましくは92〜98℃、最も好ましくは92〜95℃の温度に、加水分解している材料を加熱する(恒温放置)ことにより、加水分解期間が上に与えられた境界内にある限り止められ得る。加水分解は、細片除去工程の前に、その間に又はその後に、最も好ましくは細片除去工程の後に止められる。傾瀉器による細片除去工程の温度は、一実施形態では、酵素の最適な動作温度に依存する(その場合、酵素による加水分解工程は、細片分離工程後に加熱することにより止められる)。
【0034】
従来技術のフッ化物を含む処理されたオキアミ蛋白質材料は、用途に限界があり、上記のように、食品又は餌又は対応する食品又は餌添加物にあまり適していないが、殻が取り除かれた材料のフッ化物含有量は、更に先でこの成分を分離/純化することを妨げることはない。このように、キチン、キトサン及びアスタキサンチン等の材料は、分離された殻材料から単離され得る。そのような単離手続は、従来技術内で知られている。例えば、透析法、ナノ濾過により、電気泳動法又は他の適切な技術により、単離された殻材料からフッ化物を取り除く工程も取られ得る。
【0035】
加水分解酵素は、不活性にされる。そのような不活性は、抑制剤を添加すること、補助因子(例えば、透析法による決定的なイオン)を取り除くことのように異なる方法で、熱的不活性又は他のいずれかの活性解除手段により実行され得る。上述のようなこの熱非活性の中で好ましいのは、加水分解酵素が変性及び活性解除される温度に、蛋白質性材料を加熱することである。しかしながら、関連する天然性蛋白質が変性されていない製品が望まれる場合、加水分解酵素を活性解除するための加熱を除く他の手段が、選択されるべきである。
【0036】
傾瀉器内に存在する蛋白質性材料は、脱フッ化のため恒温放置され、分離され、燐脂質錯体(PPC)、食品又は餌添加物としての脂質のない加水分解物成分、及び、中性脂質から主に構成される脂質成分が形成され得る。
【0037】
PPCは、小片を含まない滑らかなクリームのように、脂質が豊富であり、蛋白質性材料の中でよく懸濁される。これにより、材料中の密度差が小さくなり、共通の遠心分離器と傾瀉器を用いての分離が難しくなる。これは、特に、漁期の第2半期中のオキアミの捕獲で著しい。
【0038】
通常の円盤型遠心分離器は、空の状態の、水を用いての必要な洗浄サイクルが分離領域を攪乱し、製品中に燐脂質含有量の高い乳剤が生じ、PPCの乾燥物質の濃度が低くなるので、適切に機能しない。標準的な傾瀉器は、重力が低いために分離を行うことができず、分離域が短く、機械から重相を流出させる際に、軽相と重相が混合する。従って、蛋白質性材料を副成分に分離することは、好ましくは、以下の図1に示されるような、延長分離経路を有する専用に設計された水平傾瀉式遠心分離器により実行される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】延長分離経路を有する専用に設計された傾瀉器であり、この実施例として、フロットヴェグ・セディカンター(登録商標)水平傾瀉式遠心分離器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
専用に設計された傾瀉器は、実質的に傾瀉式遠心分離器であるが、幾つかの新規の違いを有する。通常の傾瀉器では、餌は、分離領域の中央に配置される中央供給パイプを通じて容器に入る。この特定の傾瀉器では、餌は、末端で、及び、吐出口(1)の反対側で入る。これは、分類/分離領域が通常の傾瀉器よりもかなり長いという特徴を与え、機械の利用可能な全分離長(2)を利用する。駆動装置は、小さな機械に対して10000g、高容量の機械に対して5000〜6000gの大きな重力を与え、極めて細かく沈殿しづらいPPCを乳化することなく分離するのを容易にする。濃縮されたPPCは、整流壁(3)の下に入る前に最大の重力を受ける。PPCからの異なる液相は、徐々に濃縮され、PPCは、整流壁の下にのみ逃げ、重力により圧され、機械(4)により押し出される。約27〜30%の乾燥物質にPPCを濃縮することにより、下流の処理が、操作性/堅牢性の点で効率的になり、同様に、PPCを粉に乾燥するための収量と費用の両方を経済的に考慮している。その上、重要なことは、この工程内で優れた分離を行い、蒸発により加水分解物を濃縮させ得る巨大分子を攪乱させることなく、脂質のない加水分解物を、60%を超える最終濃度で得ることである。
【0041】
乾燥物質に基づいたPPC中の脂質含有量は、原料中の脂質含有量の季節的変化により反映され、通常約50%である。市販のオキアミ粉と比較しての、乾燥重量に基づいたPPC中のフッ化物の削減は、好ましくは70%を上回り、更に好ましくは75%を上回り、最も好ましくは80%を上回る。
【0042】
分離後及び蒸発後のCHF(濃縮加水分解成分)中の乾燥物質の含有量は、好ましくは45%を上回り、更に好ましくは50%を上回り、最も好ましくは55%を上回る。乾燥物質に基づいたCHF中の脂質含有量は、好ましくは5%を下回り、更に好ましくは4%を下回り、最も好ましくは3%を下回る。市販のオキアミ粉と比較しての、乾燥重量に基づいたCHF内のフッ化物の削減は、好ましくは85%を上回り、更に好ましくは90%を上回り、最も好ましくは96%を上回る。
【0043】
CHFは、脂質含有量が低く、水分活性が低い(a<0.79)ので、この成分は、4℃を下回る温度で12ヶ月以上にわたり、微生物が著しく成長することなく、又は、製品が他の様式で分解することなく、蓄えられ得る。
【0044】
海産物脂質内の脂質の酸化は、比較的速く、冷凍保存の間にも進み、本発明によりプロセスが、漁業船の船上に捕獲された新鮮な材料について行われなければならない理由である。PPCは、冷凍され得るが、しかしながら、貯蔵面で安定な製品を提供するための費用効果のある最良の工業的方法は、好ましくは、低温(0〜15℃、例えば、1〜10℃又は2〜8℃)で、不活性条件下での緩やかな乾燥工程において、PPCを乾燥することである。これにより、長鎖ポリ不飽和ω3脂肪酸(n−3LCPUFA)上の酸化ストレスが削減される。凍結乾燥工程も、製品の過熱を回避するので十分に適している。更に、向上した製品は、真空(圧力...?mmHg)により(上述の間隔内の)低温でPPCを剥ぎ取り表面乾燥して得られ得る。
【0045】
固有の低フッ化物含有量の乾燥されたPPC製品は、製薬品、栄養補助食品、食品、成分製品などの人的消費物、一般的な人的消費物、及び餌内の特定の成分に十分に適している。
【0046】
乾燥されたPPCは、水が除去されているので、関心のある物質を分離する更に先の下流の処理に十分に適している。これにより、連続した抽出工程は、原料/解凍材料の抽出と比較して、著しく容易になり、費用面で更に効果的である。
【0047】
PPC粉の貯蔵安定性は、新鮮な捕獲物内に存在する酸化製品の初期値が低いために、極めて良好である。PPC粉は、好ましくは、不活性雰囲気中で生産され、不活性雰囲気下で、酸化障壁が優れたパッケージ内に梱包され、貯蔵寿命期間が、著しく延長される。
【0048】
実施例:
【0049】
南極オキアミの10トンの捕獲量から500kgの量が、即座に(捕獲後、最大20分で)1〜2℃で、ナイフカッターにより粒径が3〜6mmの断片に破砕され、その後即座に、500リットルの真水と、オキアミ濡れ重量の0.2%(重量/重量)の量のアルカラーゼが添加され、次に、55〜60℃の温度に加熱された。
【0050】
酵素は、45分間にわたり、前記温度で機能し得た。材料は、その後、以下の条件で動作する傾瀉器に送られた:温度は、90℃、重力は、1400g、送り速度は、傾瀉器内に存在するフッ化物含有細片と液体蛋白質成分が分離を起こす、オキアミ/水/酵素懸濁液の1.2トン/時である。次に、材料は、酵素による加水分解及び、極性脂質と共に不溶性蛋白質の変性/凝集を止めるために、93℃の温度に加熱された。液体蛋白質成分が、その後、即座に、上述の専用に設計された傾瀉器(セディカンター)により分離工程に移され、加水分解物から、不溶性蛋白質を含む固形層と極性脂質濃縮物(PPC)を分離した。
【0051】
PPCは、その後、食品等級の固化防止剤と混合され、希薄なフィルムの真空乾燥機内で乾燥され、窒素雰囲気下で気密バッグ内に梱包される。水溶蛋白質(加水分解物)と中性脂質相は、分離器に送られ、中性脂質相は、加水分解物から分離される。油は、窒素雰囲気下で気密容器内に貯蔵される。
【0052】
加水分解物は、脱水/濃縮のために瞬間蒸発器内に連続的に送られ、55〜70%の乾燥質量を有する濃縮された加水分解物成分(CHF)が与えられ、窒素雰囲気下で気密容器内に貯蔵される。
【0053】
肉の乏しい原料の南極オキアミを処理するための典型的な質量均衡が、以下の表Iに示されている。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲殻類の捕獲物からフッ化物を除去するプロセスであって、甲殻類が、積み上げられた後に即座に、水のほぼ室温の温度で小片に砕解され、前記砕解された材料が、真水に加えられ、蛋白質分解酵素又は酵素組成物を添加するのに最適であり、且つ、前記加えられた酵素が100分未満の時間にわたり機能することができる温度に加熱され、前記加水分解された材料が、前記処理された材料から固形物を分離する分離装置に送られ、前記固形物成分をこのように除去することにより、残りの蛋白質性材料のフッ化物含有量が少なくとも85%だけ削減され、前記加水分解される砕解された蛋白質性材料中の前記添加された(外来性)及び天然の(内在性)酵素が、前記酵素により処理された材料から前記固形物成分を除去する前に、その間に又はその後に、活性解除されることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
甲殻類の捕獲が、燐脂質等の高い含有量の極性脂質を有することを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
甲殻類が、25mm未満の粒径の小片に砕解されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記砕解された甲殻類材料が、前記甲殻類材料の未加工重量の0.5〜1.5の比で、真水に加えられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記甲殻類の前記砕解工程中で利用される前記水の温度が、−2〜+10℃、好ましくは約+0℃〜+3℃の間隔にあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記甲殻類材料が、0.5〜10mm、更に好ましくは1.0〜8mmの粒径に砕解されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記砕解工程の後に前記水を加えることが、前記砕解工程から20秒以内に行われることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記分離装置が、大きな重力分離力により操作される、例えば、傾瀉器であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記蛋白質分解酵素又は酵素組成物が、乳剤を回避するように最適化されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記固形物が、セディカンターのような、大きな重力と長い分類/分離領域を有する傾瀉器を用いて分離され、緩やかに沈降する、燐脂質が濃厚な蛋白質性材料を、乳化させることなく分離することができることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記加熱工程の温度が、前記砕解工程に続いて数秒内、例えば、1〜300秒、更に好ましくは1〜100秒、更に好ましくは1〜60秒、最も好ましくは1〜10秒で増すことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記添加された酵素又は酵素組成物が、アルカラーゼ及び/又はニュートラーゼ及び/又は微生物[枯草菌、クロコウジカビ等]若しくは植物種から誘導される酵素を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記酵素が、60分の時間内に、最も好ましくは前記酵素の添加から計算された45分内に活性解除されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記酵素が、前記温度を増加させることにより、好ましくは、90℃、好ましくは92〜98℃、最も好ましくは92〜95℃を上回る温度に前記温度を増加させることにより、活性解除されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記甲殻類が、オキアミ、最も好ましくは南極オキアミである特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の前記プロセスにより生産される濃縮加水分解物成分(CHF)であって、分離後及び蒸発後の前記CHF中の乾燥物質含有量が、好ましくは52%を上回り、更に好ましくは55%を上回り、最も好ましくは59%を上回り、乾燥物質に基づいた前記CHF中の前記脂質含有量が、好ましくは5%を下回り、更に好ましくは4%を下回り、好ましくは3%を下回り、市販のオキアミ粉と比較しての、乾燥重量に基づいた前記CHF中の前記フッ化物の削減が、好ましくは85%を上回り、更に好ましくは90%を上回り、最も好ましくは96%を上回ることを特徴とする、濃縮加水分解物成分(CHF)。
【請求項17】
前記CHFが、低い脂質含有量と低い水分活性(a<0.79)とを有することを特徴とする、請求項16に記載のCHF。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の前記プロセスにより生産される燐脂質/ペプチド錯体(PPC)粉であって、乾燥物質に基づいた前記PPC中の前記脂質/燐脂質含有量が、前記原料中の前記脂質含有量の季節的変化により反映され、約50%であり、市販のオキアミ粉と比較しての、乾燥重量に基づいた前記PPC内の前記フッ化物の削減が、好ましくは70%を上回り、更に好ましくは75%を上回り、最も好ましくは80%を上回ることを特徴とする、燐脂質/ペプチド錯体(PPC)粉。

【公表番号】特表2012−501675(P2012−501675A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526827(P2011−526827)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/NO2009/000322
【国際公開番号】WO2010/030193
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(511064236)
【Fターム(参考)】