説明

蛍光インク画像形成方法

【課題】赤色蛍光インクを用いた画像、とりわけ標識画像の識別性に優れ、標識画像情報を高密度化させることができる画像形成方法を提供する。
【解決手段】記録媒体の、前記赤色蛍光インクによる画像形成予定領域の周縁部に、黄色染料インク組成物を付着させ、前記赤色蛍光インク組成物を前記記録媒体に付着させる、ことを含んでなり、前記赤色蛍光インク組成物として、着色剤としてC.I.アシッドレッド52およびC.I.アシッドレッド92と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含むインク組成物を用い、前記黄色染料インク組成物として、着色剤としてC.I.ダイレクトイエロー87と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含むインク組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、蛍光インクを用いた画像形成方法に関し、さらに詳細には、赤色蛍光インクを用いた画像、とりわけ標識画像の識別性に優れ、標識画像情報を高密度化させることができる画像形成方法に関する。
【0002】
背景技術
郵便料金または料金別納郵便物の証印の押印のための料金別納印刷機において、赤色蛍光インクが使用されている。とりわけ、北米においては、料金別納郵便物の証印に使用されるインクとして、米国郵政公社で使用される自動読取装置によって読み取りができる赤色蛍光インクが指定されている。
【0003】
自動読取装置では、バーコードの読み取りだけでなく、郵便物の表裏の検出も同時に行われる。そのため、赤色蛍光インクは、バーコード読み取り精度向上のために高い光学濃度だけでなく、検出郵便物の表裏検知ミス低減のために高い蛍光強度も必要とされる。
【0004】
料金別納郵便物用の蛍光インクとして、特開平9−291246号公報(特許文献1)は、補助溶剤浸透剤としてグリコールエーテルが添加された、耐水性に優れる赤色蛍光インクを開示している。
【0005】
また、特開2006−131667号公報(特許文献2)は、蛍光染料として、C.I.アシッドレッド52および92を用いた水溶解蛍光色材と、顔料としてC.I.ピグメントレッド122等からなる顔料分散体溶液とを併用した、蛍光発色性が良好な水性蛍光インクを開示している。
【0006】
ところで、ハーコードを印刷する記録媒体には、通常、蛍光増白剤が含まれているため、バーコード識別用の励起光を記録媒体に照射すると、バーコードからの蛍光発光だけでなく、記録媒体自体も蛍光発光する。記録媒体からの蛍光発光は、バーコード用の赤色蛍光インクとは発光波長が異なるものの、バーコードの読み取り精度を低下させる原因の一つとなっている。
【0007】
また、バーコードのエッジ部分においては画像の滲みがあるため、エッジ部分は、記録媒体からの蛍光発光による影響を受けやすい部分といえる。そのため、バーコードの読み取り精度を一定以上に保つためには、バーコードの隣接するバーどうしをある程度離して印刷しなければならず、バーコード情報を高密度化するのに限界があった。
【特許文献1】特開平9−291246号公報
【特許文献2】特開2006−131667号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、今般、C.I.アシッドレッド52および92を用いた赤色蛍光インク組成物と、黄色染料C.I.ダイレクトイエロー87を含むインク組成物とを組み合わせることにより、赤色蛍光インク組成物の蛍光強度および発色性が向上することに気づくとともに、この赤色蛍光インク組成物を用いて記録媒体上に印刷された画像領域に、予め、黄色染料インク組成物を付着させておくことにより、記録媒体由来の蛍光発光を低減させることができ、かつ画像周縁部の赤色蛍光インク組成物由来の蛍光発光が増大することがわかった。そして、このような画像形成方法によれば、蛍光画像の識別性が格段に向上し、画像情報を高密度化させることができる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、赤色蛍光インクを用いた画像、とりわけ標識画像の識別性に優れ、標識画像情報を高密度化させることができる画像形成方法を提供することである。
【0010】
そして、本発明による画像形成方法は、赤色蛍光インク組成物を、記録媒体に付着させて画像を形成する方法であって、
前記記録媒体の、前記赤色蛍光インクによる画像形成予定領域に、黄色染料インク組成物を付着させ、
前記赤色蛍光インク組成物を前記記録媒体に付着させて画像形成を行う、ことを含んでなり、
前記赤色蛍光インク組成物が、着色剤としてC.I.アシッドレッド52およびC.I.アシッドレッド92と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなり、
前記黄色染料インク組成物が、着色剤としてC.I.ダイレクトイエロー87と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなるものである。
【0011】
本発明によれば、赤色蛍光インクを用いた画像、とりわけ標識画像の識別性に優れ、標識画像情報を高密度化させることができる。
【発明の具体的説明】
【0012】
本発明による画像形成方法は、記録媒体の、赤色蛍光インクによる画像形成予定領域に、黄色染料インク組成物を付着させることを含み、赤色蛍光インク組成物が、着色剤としてC.I.アシッドレッド52およびC.I.アシッドレッド92と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなり、黄色染料インク組成物が、着色剤としてC.I.ダイレクトイエロー87と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなるものである。以下、詳細に説明する。
【0013】
<画像形成方法>
本発明による画像形成方法は、赤色蛍光インクによる画像形成予定領域に、黄色染料インク組成物を付着させることを含むものである。画像形成予定領域とは、図1に示すように、赤色蛍光インク組成物により形成される画像領域1のみならず、画像近傍2も含むものである。なお、近傍とは、画像形成予定領域から概ね50μm程度離れた領域までを意味するものとする。
【0014】
黄色染料インク組成物は、記録媒体中に予め含有している蛍光増白剤からの蛍光発光を吸収する。そのため、赤色蛍光インク組成物を直接、記録媒体に付着させて画像から、蛍光発光を検出して画像情報を読み取る場合と比較して、画像以外からの蛍光発光が抑制され、画像情報の読み取り精度が格段に向上する。
【0015】
また、記録媒体にインク組成物を付着させて画像を形成した場合、画像の周縁部は、いわゆるインク滲みが発生する。通常、この滲み部分では、画像の光学濃度が低下するため、画像からの蛍光発光強度も低減してしまう。本発明の方法によれば、この滲み部分において、黄色染料インクと赤色蛍光インクとが混ざり合い、より赤色蛍光インクの蛍光発光が強くなる。そのため、図2に示すように、画像の周縁部分3からの蛍光の発光強度が、画像全体1からの発光強度よりも強くなり、画像情報の読みとり精度がより向上する。従って、一定の読み取り精度を維持しながら、画像情報より高密密度に記録媒体に記録することができる。例えば、バーコート標識等の画像を形成する場合、一つのバーコード中により高密度な識別情報を書き込むことが可能となる。
【0016】
上記のように、インク組成物を記録媒体に付着させて画像を形成する場合、インクジェット記録方式により画像を形成することが好ましい。インクジェット記録方式によれば、画像形成予定領域の周縁部のような微細な部分にも正確にインクを付着させることができる。インクジェット記録方式は、インク組成物の液滴を吐出し、該液滴を加熱された記録媒体に付着させて印字を行うものである。インク組成物の液滴を吐出する方法の例としては、例えば電歪素子を用いて電気信号を機械信号に変換して、ノズルヘッド部分に貯えたインクを断続的に吐出して記録媒体表面に文字や記号を記録する方法、ノズルヘッド部分に貯えたインクを吐出部分に極めて近い箇所で急速に加熱し泡を発生させ、その泡による体積膨張で断続的に吐出することで記録媒体表面に文字や記号を記録する方法が挙げられる。本発明の好ましい態様によれば、本発明によるインク組成物を含むインクセットは、電歪素子を用いたインクジェット記録方法に好ましく用いられる。インク組成物の液滴を吐出は、圧電素子の力学的作用を利用してインク滴を吐出させる記録ヘッドにより行われることが好ましい。
【0017】
<赤色蛍光インク組成物>
本発明による画像形成方法に用いられる赤色蛍光インク組成物は、蛍光染料としてC.I.アシッドレッド52およびC.I.アシッドレッド92と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなるものである。
【0018】
本発明において、蛍光染料の濃度は特に限定されないが、好ましくは、C.I.ダイレクトイエロー87の濃度が3.2〜4.8重量%、C.I.アシッドレッド52の濃度が0.05〜0.20重量%、C.I.アシッドレッド92の濃度が0.5〜1.2重量%である。さらに好ましくは、C.I.ダイレクトイエロー87の濃度が3.7〜4.3重量%、C.I.アシッドレッド52の濃度が0.08〜0.17重量%、C.I.アシッドレッド92の濃度が0.7〜1.2重量%である。また、C.I.アシッドレッド52とC.I.アシッドレッド92との重量比は、特に限定されないが、C.I.アシッドレッド52とC.I.アシッドレッド92との重量比が、1:4〜1:12であることが好ましく、さらに好ましくは、1:8〜1:11である。
【0019】
赤色蛍光インク組成物に含有される水は主溶媒であり、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水を用いることが、カビやバクテリアの発生を防止してインク組成物の長期保存を可能にする点で好ましい。
【0020】
また、赤色蛍光インク組成物は、水溶性有機化合物を含んでなることが好ましい。水溶性有機溶媒は、好ましくは低沸点有機溶剤であり、その例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。特に一価アルコールが好ましい。低沸点有機溶剤は、インクの乾燥時間を短くする効果がある。低沸点有機溶剤の添加量はインクの0.1〜30重量%が好ましく、より好ましくは5〜10重量%の範囲である。
【0021】
また、本発明の好ましい態様によれば、赤色蛍光インク組成物は、さらに高沸点有機溶媒の一種または二種以上からなる湿潤剤を含んでなる。高沸点有機溶媒剤の好ましい例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル(日本乳化剤社製:ニューコール1006)、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル(日本乳化剤社製:ニューコール1004)などの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどが挙げられる。好ましくは、多価アルコールのアルキルエーテル類である。
【0022】
本発明において多価アルコールのアルキルエーテル類の好ましい態様として、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルを一種または二種以上を組み合わせることもできる。さらに好ましくは、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルとトリエチレングリコールモノブチルエーテル、またはテトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルとトリエチレングリコールモノブチルエーテルとの組み合わせが挙げられる。これらの多価アルコールのアルキルエーテル類を組み合わせて添加することにより、浸透性、および高温環境下でのインクの安定性等の面で優れたインク組成物を得ることができる。これらの二種の多価アルコールのアルキルエーテル類は、さまざまな割合で添加することもできるが、1:1〜1:3の割合で添加することが好ましい。
【0023】
これらの多価アルコールのアルキルエーテル類の添加量は、0.5〜15重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%の範囲である。さらに、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルとの合計含量が、インク組成物中に、1〜6重量%、または、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルとトリエチレングリコールモノブチルエーテルとの合計含量が、インク組成物中に、1〜10重量%含まれることが好ましい。
【0024】
本発明の好ましい態様によれば、赤色蛍光インク組成物は、糖、三級アミン、水酸化アルカリ、またはアンモニアを含有してなるのが好ましい。これらの添加によって、長期間の保管においても色材の凝集や粘度の上昇がなく保存安定性に優れ、また開放状態(室温で空気に触れている状態)で放置しても流動性と再分散性を長時間維持し、さらに、印字中もしくは印字中断後の再起動時にノズルの目詰まりが生じることもなく吐出安定性が高いインク組成物が得られる。
【0025】
赤色蛍光インク組成物に添加することができる糖は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)、および多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール、(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、アルギン酸、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)CH2OH(ここで、n=2〜5の整数を表す)で表される)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ糖などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0026】
これら糖類の含有量は、インク組成物中に0.1〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%の範囲である。
【0027】
赤色蛍光インク組成物に添加することができる三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロペノールアミン、ブチルジエタノールアミン等が挙げられる。これらは、単独で使用しても併用しても構わない。これら三級アミンの本発明のインク組成物への添加量は、0.1〜10重量%、より好ましくは、0.5〜5重量%である。
【0028】
赤色蛍光インク組成物に添加することができる水酸化アルカリは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムであり、本発明のインク組成物への添加量は、0.01〜5重量%であり、好ましくは0.05〜3重量%である。
【0029】
赤色蛍光インク組成物は、さらに界面活性剤を含有することができる。界面活性剤の例としては、アニオン性界面活性剤(例えばドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩など)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなど)および、アセチレングリコール(オレフィンY、並びにサーフィノール82、104、440、465、および485(いずれもAir Products and Chemicals Inc. 製)、並びにオルフィンPD002W(日信化学工業社製))が挙げられる。これらは単独使用または二種以上を併用することができる。好ましくは、オルフィンPD002W、が挙げられる。
【0030】
本発明においては、赤色蛍光インク組成物は、必要に応じて、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、りん系酸化防止剤等が添加されていても良い。好ましい防腐剤としては、例えば、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルIB、またはプロキセルTNなどを挙げることができる。
【0031】
<黄色染料インク組成物>
本発明による画像形成方法に用いられる黄色染料インク組成物は、黄色染料としてC.I.ダイレクトイエロー87と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなるものである。
【0032】
本発明による画像形成方法に用いる黄色染料インク組成物は、上記したC.I.アシッドレッド52およびC.I.アシッドレッド92を含む赤色蛍光インクと併用することにより、赤色蛍光インク組成物の蛍光強度及び光学濃度が向上する。その結果、画像の蛍光発光を検知して画像情報を読み取る場合に、より高度な読み取り精度を実現できる。
【0033】
黄色染料の濃度は特に限定されないが、上記した赤色蛍光インク組成物の蛍光染料濃度との関係において適宜決定することができ、赤色蛍光インク組成物の、C.I.アシッドレッド52の濃度が0.05〜0.15重量%であり、かつC.I.アシッドレッド92の濃度が0.5〜1.0重量%である場合、黄色インク組成物の染料濃度は、3.2〜4.8重量%であることが好ましい。この範囲において、赤色蛍光インクの発光強度および光学濃度が、より向上する。
【0034】
また、黄色染料インク組成物に含まれる、水、水溶性有機溶剤、その他の成分は、上記した赤色蛍光インク組成物に含まれるものを同様のものを用いることができる。
【実施例】
【0035】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0036】
インク組成物の調製
下記表1〜4の組成に従い各成分を混合し、10μmのメンブランフィルターでろ過することにより、各インクを調製した。なお、表中の数値はインク中の含有量(重量基準%)を表す。なお、表中、TEG-mBEはトリエチレングリコールモノブチルエーテルを表し、DEG-mBEはジエチレングリコールモノブチルエーテルを表し、TEG-mMEはトリエチレングリコールモノメチルエーテルを表し、DEG-miBEはジエチレングリコールモノイソブチルエーテルを表し、DEG-mHeEはジエチレングリコールモノヘキシルエーテルを表し、N1006はヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルを表し、N1004は、テトラエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルを表し、そして10%PD002W/90%TEG-mBE混合液はオルフィンPD002W(日信化学工業社製)10重量%と、ジエチレングリコールモノブチルエーテル90重量%とを含む混合液を表す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0037】
インク組成物の評価
<蛍光強度の測定>
記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することにより調製した各インク組成物を吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置(MJ−800C、セイコーエプソン株式会社製)を用いて、Script製DL封筒に100%Dutyのベタパターンを印字し、蛍光光度計(F−4500、日立株式会社製)を用いて下記の条件のもと蛍光強度を測定した。測定条件は、励起波長を365nmとし、最大蛍光波長での蛍光強度を測定した。各インク組成物の蛍光強度を下記表5に表す。
【0038】
<OD値の測定>
調製した各インク組成物について、上記と同様のインクジェットプリンターを用いて、360dpiの解像度でベタ印刷を行った。印刷した記録物を24℃の環境下で24時間放置した後、グレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)を用いてベタ部分のOD値を測定した。測定した各インク組成物のOD値を下記表5に表す。
【表5】

【0039】
蛍光画像の作製
OD値および蛍光強度のバランスの観点から、インク組成物(サンプル番号39)が最も良好であった。この結果に基づき、C.I.ダイレクトイエローを含んでいない以外はサンプル番号39と同様の組成の赤色蛍光インク組成物(サンプル番号40)と、C.Iアシッドレッド52および92を含まない以外はサンプル番号39と同様の組成の黄色染料インク組成物(サンプル番号41)とインクセットとして、上記と同様のインクジェットプリンターに装填し、図1に示すようなバーコードを、Script製DL封筒に印刷した。その際、バーコード画像形成予定領域に、まず黄色染料インク組成物を付着させた後、赤色蛍光インク組成物によりバーコード画像1を形成した。
【0040】
また、黄色染料インク組成物を用いずに、赤色蛍光インク組成物のみを用いてバーコード画像を形成した以外は、上記と同様にして画像2を形成した。
【0041】
蛍光画像の評価
印刷されたバーコード画像1および2に、ブラックライトを用いて波長365nmの紫外線を照射し、バーコード画像からの蛍光発光を目視にて観察した。
【0042】
その結果、バーコード画像形成予定領域に黄色染料インク組成物を付着させた画像1は、黄色染料インク組成物を付着させなかった画像2と比較して、バーコード画像部分から強い赤色の蛍光発光を確認することができた。
【0043】
以上の結果から、実際のバーコード読み取り装置によってバーコードの読み取りを行った場合であっても、バーコード画像1は、より感度よく識別が行われるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による画像形成方法における画像形成予定領域を示した概略図である。
【図2】本発明の態様の一つであるバーコード画像の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色蛍光インク組成物を、記録媒体に付着させて画像を形成する方法であって、
前記記録媒体の、前記赤色蛍光インクによる画像形成予定領域に、黄色染料インク組成物を付着させ、
前記赤色蛍光インク組成物を前記記録媒体に付着させる、ことを含んでなり、
前記赤色蛍光インク組成物が、着色剤としてC.I.アシッドレッド52およびC.I.アシッドレッド92と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなり、
前記黄色染料インク組成物が、着色剤としてC.I.ダイレクトイエロー87と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなる、方法。
【請求項2】
前記画像がバーコード標識である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インク組成物の記録媒体への付着が、インクジェット記録方法により行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記赤色蛍光インク組成物のC.I.アシッドレッド52濃度が0.05〜0.15重量%であり、かつC.I.アシッドレッド92の濃度が0.5〜1.0重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記C.I.アシッドレッド52と前記C.I.アシッドレッド92との比が、1:4〜1:12である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記黄色染料インク組成物のC.I.ダイレクトイエロー87濃度が3.2〜4.8重量%である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記赤色蛍光インク組成物および/または前記黄色染料インク組成物が、多価アルコールのアルキルエーテル類をさらに含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記多価アルコールのアルキルエーテル類が、ヘキサエチレングリコールモノエチルヘキシルエーテルおよびトリエチレングリコールモノブチルエーテルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記多価アルコールのアルキルエーテル類が、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルおよびトリエチレングリコールモノブチルエーテルである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記多価アルコールのアルキルエーテル類が、前記赤色蛍光インク組成物および/または前記黄色染料インク組成物に対して、0.5〜15重量%含まれてなる、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって得られた画像形成物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法に用いられる記録媒体であって、赤色蛍光インクによる画像形成予定領域の周縁部に、着色剤としてC.I.ダイレクトイエロー87と、水と、水溶性有機溶媒とを少なくとも含んでなる、黄色染料インク組成物が予め付着してなる、記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−256541(P2009−256541A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110193(P2008−110193)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】