説明

蛍光ランプ、該蛍光ランプの点灯制御方法

【課題】明るさを速やかに安定させることが可能な蛍光ランプを実現する技術を提供すること。
【解決手段】発光管と、発光管の内部に設けられ、線径がそれぞれ異なる複数のフィラメントと、発光管の温度を検出する温度センサと、点灯を指示する旨の点灯信号が入力されると、温度センサの検出結果に応じて複数のフィラメントに電流を供給する点灯制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管の温度を調整する蛍光ランプ、および該蛍光ランプの点灯制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは、発光管の両端に1つずつ設けられているフィラメントに電流が供給されると点灯するものであり、発光管の形状により直管形、環形、および安定器を内蔵した電球形などに分類される。図4は、電球形蛍光ランプの外観の一例を示す図である。
【0003】
図4に示す蛍光ランプは、内部に蛍光物質が塗布されている発光管101と、発光管101を発光させる点灯回路を収納する収納器102と、電球用のソケットに取り付ける口金103と、を有する。
【0004】
発光管101の両端には、図5に示すように、電子放射物質が塗布されているフィラメント104およびフィラメント105がそれぞれ設けられている。また、発光管101には、不活性ガスおよび水銀が封入されている。
【0005】
図4に示す蛍光ランプを点灯させるためには、点灯回路より電流をフィラメント104およびフィラメント105へ供給する。すると、各フィラメントの発熱に伴い、電子放射物質から電子が放出される。放出された電子は発光管101内の水銀と衝突し、この衝突により紫外線が発生する。発生した紫外線が発光管101内に塗布されている蛍光物質により可視光に変換され、この可視光を放射しているときが蛍光ランプの点灯状態となる。
【0006】
図4に示すような蛍光ランプでは、発光管より放射される可視光の明るさは、水銀蒸気圧(発光管内の気化した水銀量)に依存しており、この水銀蒸気圧は、発光管において最も低い温度に応じて決まるとされている。
【0007】
水銀蒸気圧を決定付ける温度には、発光管より放射される可視光の明るさが最大となる最適値が存在し、フィラメントの発熱に伴い発光管の温度が最適値を超えると、明るさは低減することになる。そこで、そのような問題を解決するための蛍光ランプが提案されており、例えば、特許文献1(特開2006−302589号公報)に開示されている。
【0008】
図6は、特許文献1に記載の蛍光ランプの構成を示す断面図である。
【0009】
特許文献1に記載の蛍光ランプは、図6に示すように、発光管201と、発光管201を発光させる安定器202と、ソケットに取り付ける口金203と、安定器202を収納するハウジング204を含む。
【0010】
特許文献1に記載の蛍光ランプでは、発光管201は、先端がハウジング204内を貫通して口金203の方向に伸びた排気管205を備えた形状となっている。すなわち、排気管205の先端(水銀蒸気圧を決定付ける箇所)が発光管201から離れた場所に存在している。そのため、蛍光ランプが点灯状態のとき、排気管205の先端の温度が最適値を超えないように抑えられるようになる。従って、発光管201において、可視光の明るさが最大となる水銀蒸気圧を維持でき、これにより、明るさを安定させることが可能となる。
【特許文献1】特開2006−302589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
蛍光ランプは、発光管の温度が必要以上に高いときだけでなく、発光管が十分に温まっていないときにも水銀蒸気圧が不足して明るさが不安定な状態となる場合がある。そのため、点灯開始時に発光管が冷えていると、明るさが安定するまでに時間を要するという問題を抱える。
【0012】
上記の問題を解決する手段の一つとして、点灯開始時に通常時よりも大きな電流をフィラメントに流す方法が考えられる。しかし、フィラメントは、線径に応じて最大許容電流が定められており、一般的に、通常時に流す電流に基づいて線径が選定される。そのため、フィラメントは、通常時よりも大きな電流が供給されると損傷する可能性がある。
【0013】
特許文献1に記載の蛍光ランプは、明るさを安定させる排気管を備えているものの、発光管の温度を上昇させることはできない。従って、特許文献1に記載の蛍光ランプを用いても、上記の問題は解決されない。
【0014】
本発明は、明るさを速やかに安定させることが可能な蛍光ランプ、および該蛍光ランプの点灯制御方法を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明による蛍光ランプは、
発光管と、
前記発光管の内部に設けられ、線径がそれぞれ異なる複数のフィラメントと、
前記発光管の温度を検出する温度センサと、
点灯を指示する旨の点灯信号が入力されると、前記温度センサの検出結果に応じて前記複数のフィラメントに電流を供給する点灯制御部と、
を有する。
【0016】
また、上記目的を達成するための蛍光ランプの点灯制御方法は、
発光管の内部に線径がそれぞれ異なる複数のフィラメントを備える蛍光ランプの点灯制御方法であって、
点灯を指示する旨の点灯信号が入力されると、前記発光管の温度を検出し、
検出した前記発光管の温度に応じて前記複数のフィラメントに電流を供給する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発光管が冷えているときに点灯制御部が線径の大きなフィラメントに対して最大許容電流を供給することができる。このような制御を行うことにより、放電電流による発光管の発熱が大きなものとなるため発光管の温度は急速に上昇する。これにより、蛍光ランプの明るさを速やかに安定させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本実施形態の蛍光ランプについて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の蛍光ランプの一実施形態の構成を示す回路図である。
【0020】
本実施形態の蛍光ランプは、図1に示すように、内部に蛍光物質が塗布されている発光管1と、電子放射物質が塗布されているフィラメント2〜5と、発光管1を発光させる点灯制御部6と、発光管1の温度を検出する温度センサ7と、を有する。
【0021】
発光管1は、図3に示す発光管101と同様な形状(電球形)であり、内部に不活性ガスおよび水銀が封入され、外部に温度センサ7が取り付けられている。
【0022】
フィラメント2〜5について、図2を参照しながら説明する。
【0023】
図2に示すように、発光管1の両端の一方にフィラメント2およびフィラメント3が取り付けられ、他方にフィラメント4およびフィラメント5が取り付けられている。フィラメント2、3は、一方が導入線11を介して接続されている。また、フィラメント4、5は、一方が導入線14を介して接続されている。また、図1に示すように、導入線11は、コンデンサ10を介して導入線14と接続されている。
【0024】
なお、本実施形態では、フィラメント2、4の線径が同じでる。また、フィラメント3、5の線径が同じであり、かつフィラメント2、4の線径よりも大きい。すなわち、フィラメント3、5は、フィラメント2、4よりも最大許容電流が大きい。
【0025】
点灯制御部6は、点灯回路61と、点灯回路62と、制御回路63と、を有する。
【0026】
点灯回路61は、制御回路63の制御に基づいてフィラメント2、4へ電流供給を実行および停止する回路であり、導入線13を介してフィラメント2と接続され、導入線16を介してフィラメント4に接続されている。
【0027】
点灯回路62は、制御回路63の制御に基づいて、フィラメント3、5へ電流供給を実行および停止する回路であり、導入線12を介してフィラメント3と接続され、導入線15を介してフィラメント5に接続されている。
【0028】
点灯回路61および点灯回路62は、交流電源から入力される交流電流を整流する整流回路や、整流回路から出力された直流電流を所定の周波数の交流電流に変換するインバータ回路などで構成されており、出力電流が電流供給先のフィラメントの最大許容電流を超えないように設計されている。なお、点灯回路61および点灯回路62において、共用可能な構成(例えば、整流回路)については、個別に設けなくてもよい。
【0029】
制御回路63は、温度センサ7で検出された値に基づいて、点灯回路61および点灯回路62のそれぞれに対して、フィラメントへの電流供給を実行または停止させる。
【0030】
次に、本実施形態の蛍光ランプの点灯動作について説明する。なお、ここでは、点灯回路61および点灯回路62は、ともにフィラメントへの電流供給を停止しているものとする。
【0031】
図3は、本実施形態の蛍光ランプの点灯動作の手順を示すフローチャートである。
【0032】
点灯を指示する旨の点灯信号が制御回路63に入力されると(ステップS1)、制御回路63は、温度センサ7で検出された値(検出値)を取得する(ステップS2)。そして、制御回路63は、検出値と予め定められた基準値と比較する(ステップS3)。なお、この基準値は、温度センサ7が取り付けられた位置において、蛍光ランプの明るさ(発光管1から放射される可視光の明るさ)を安定させるのに必要な発光管1の温度に基づいて定められているものとする。
【0033】
温度センサ7で検出された値が予め定められた基準値を下回っている場合、制御回路63は、点灯回路62にフィラメントへの電流供給を実行させる(ステップS4)。反対に、温度センサ7で検出された値が予め定められた基準値を下回っている場合、制御回路63は、点灯回路61にフィラメントへの電流供給を実行させる(ステップS5)。
【0034】
制御回路63は、点灯回路61、点灯回路62のいずれかに電流供給を実行させた後消灯の指示を示す消灯信号が入力されるまで、温度センサ7で検出された値を予め定められた基準値と定期的に比較し、比較結果に応じて電流供給を実行させる点灯回路を決定する(ステップS6)。
【0035】
なお、ステップS4の動作において、制御回路63は、点灯回路61および点灯回路62の両方に電流供給を実行させることとしてもよい。この場合、点灯回路62のみが電流供給を実行するよりもフィラメントの発熱量が大きくなるため、発光管1の温度をより速く上昇させることが可能となる。
【0036】
本実施形態では、点灯する際に発光管1が冷えている(温度センサ7で検出された値が基準値を下回っている)ときに、点灯制御部6がフィラメント3、5に対して最大許容電流を供給することができる。このような制御を行うことにより、放電電流による発光管の発熱が大きなものとなるため発光管1の温度は急速に上昇する。これにより、蛍光ランプの明るさを速やかに安定させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、発光管1の温度が、明るさを安定させるのに十分な値に達したときに制御回路63が点灯回路61にフィラメント2、4への電流供給を実行させる。そのため、発光管1の温度が必要以上に高くなるのを防げるようになり、これにより安定した明るさを維持できるようになる。
【0038】
なお、本実施形態では電球形蛍光ランプの場合について説明したが、本発明は電球形蛍光ランプだけでなく、直管形や環形の蛍光ランプに適用することも可能である。また、本実施形態では、線径の異なる2組のフィラメントを備える構成としたが、本発明では、フィラメントの数は特に制限されるものではなく2組以上の構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の蛍光ランプの一実施形態の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の蛍光ランプにおいて、フィラメントを発光管に取り付けた状態の一例を示す図である。
【図3】本発明の蛍光ランプの点灯動作の手順を示すフローチャートである。
【図4】電球形蛍光ランプの外観の一例を示す図である。
【図5】図3に示す電球形蛍光ランプにおいて、フィラメントを発光管に取り付けた状態の一例を示す図である。
【図6】特許文献1に記載の蛍光ランプの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1、101、201 発光管
2〜5、104、105、 フィラメント
6 点灯制御部
7 温度センサ
10 コンデンサ
11〜16 導入線
61、62 点灯回路
63 制御回路
102 収納器
103、203 口金
202 安定器
204 ハウジング
205 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と、
前記発光管の内部に設けられ、線径がそれぞれ異なる複数のフィラメントと、
前記発光管の温度を検出する温度センサと、
点灯を指示する旨の点灯信号が入力されると、前記温度センサの検出結果に応じて前記複数のフィラメントに電流を供給する点灯制御部と、
を有する蛍光ランプ。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光ランプにおいて、
前記点灯制御部は、
前記複数のフィラメントに対して、電流供給の実行および停止を個別に行う複数の点灯回路と、
前記点灯信号が入力されると、前記温度センサの検出結果に応じて前記複数の点灯回路に前記電流供給を実行させる制御回路と、
を有する蛍光ランプ。
【請求項3】
請求項2に記載の蛍光ランプにおいて、
前記複数のフィラメントは、第1のフィラメントと、該第1のフィラメントよりも線径が大きな第2のフィラメントとからなり、
前記複数の点灯回路は、前記第1のフィラメントに対する電流供給の実行および停止を行う第1の点灯回路と、前記第2のフィラメントに対する電流供給の実行および停止を行う第2の点灯回路とからなり、
前記制御回路は、前記点灯信号が入力されたときに前記温度センサで検出された値に応じて前記第1の点灯回路、前記第2の点灯回路のいずれかまたは両方に前記電流供給の実行させる、蛍光ランプ。
【請求項4】
請求項2に記載の蛍光ランプにおいて、
前記複数のフィラメントは、第1のフィラメントと、該第1のフィラメントよりも線径が大きな第2のフィラメントとからなり、
前記複数の点灯回路は、前記第1のフィラメントに対する電流供給の実行および停止を行う第1の点灯回路と、前記第2のフィラメントに対する電流供給の実行および停止を行う第2の点灯回路とからなり、
前記制御回路は、前記点灯信号が入力されると、前記温度センサで検出された値に応じて前記第1の点灯回路、前記第2の点灯回路のいずれかまたは両方に前記電流供給の実行させることを、消灯を指示する旨の消灯信号が入力されるまで定期的に行う、蛍光ランプ。
【請求項5】
発光管の内部に線径がそれぞれ異なる複数のフィラメントを備える蛍光ランプの点灯制御方法であって、
点灯を指示する旨の点灯信号が入力されると、前記発光管の温度を検出し、
検出した前記発光管の温度に応じて前記複数のフィラメントに電流を供給する、
蛍光ランプの点灯制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の蛍光ランプの点灯制御方法において、
前記複数のフィラメントが、第1のフィラメントと、該第1のフィラメントよりも線径が大きな第2のフィラメントとからなる場合、前記点灯信号が入力されたときに検出した前記発光管の温度に応じて、前記第1のフィラメント、前記第2のフィラメントのいずれかまたは両方に電流を供給する、蛍光ランプの点灯制御方法。
【請求項7】
請求項5に記載の蛍光ランプの点灯制御方法において、
前記複数のフィラメントが、第1のフィラメントと、該第1のフィラメントよりも線径が大きな第2のフィラメントとからなる場合、前記点灯信号が入力されたときに検出した前記発光管の温度に応じて、前記第1のフィラメント、前記第2のフィラメントのいずれかまたは両方に電流を供給することを、消灯を指示する旨の消灯信号が入力されるまで定期的に行う、蛍光ランプの点灯制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−252365(P2009−252365A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95111(P2008−95111)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】