蛍光体及び発光装置
【課題】発光効率に優れるJEM相蛍光体を得ると共に、該JEM相蛍光体を第1の蛍光体として第1の蛍光体及び第2の蛍光体を用い、第1の蛍光体からの蛍光が第2の蛍光体によって吸収されにくい発光装置を提供する。
【解決手段】第1の蛍光体は、その発光波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であるJEM相蛍光体とする。また、第1の蛍光体と、該第1の蛍光体よりも長波長の蛍光を発する第2の蛍光体とを組み合わせた発光装置の該第1の蛍光体においては、第2の蛍光体の発光波長における光吸収率が30%以下である。
【解決手段】第1の蛍光体は、その発光波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であるJEM相蛍光体とする。また、第1の蛍光体と、該第1の蛍光体よりも長波長の蛍光を発する第2の蛍光体とを組み合わせた発光装置の該第1の蛍光体においては、第2の蛍光体の発光波長における光吸収率が30%以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、特に酸窒化物蛍光体と、その蛍光体及び半導体発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子は、小型で消費電力が少なく、高輝度の発光を安定に行うことができるという利点を有している。また、半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせて可視光を得る発光装置は、半導体発光素子の利点を有し、さらに白色など使用目的に応じた色の発光が可能であるため、液晶ディスプレイ、携帯電話若しくは携帯情報端末等のバックライト用光源、室内外広告等に利用される表示装置、各種携帯機器のインジケータ、照明スイッチ又はOA(オフィスオートメーション)機器用光源等に利用することができる。
【0003】
特許文献1には、青色又は青紫色の光を発光する半導体発光素子と、1種又は2種の蛍光体とを組み合わせた発光装置が開示されている。ここでは、該半導体発光素子の発光色と蛍光体の発光色とが互いに補色の関係になって擬似白色の光を発光するように蛍光体を選択している。
【0004】
また、特許文献2には、発光ピーク波長が380nmの紫外光を発光するIII族窒化物半導体を励起光源として用い、赤色、緑色及び青色の三原色の光をそれぞれ発光する3種類の蛍光体層を備えたドットマトリックスタイプの表示装置が開示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、波長390nm乃至420nmの光を発光する半導体発光素子と、この半導体発光素子からの発光により励起される蛍光体とを用いて、白色の光を発光する発光装置が開示されている。ここで、半導体発光素子は、人の視感度が低い光を発光するため、半導体発光素子の発光強度や発光波長が変動しても色調がほとんど変化しないという利点を有する。また、波長390nm乃至420nmの光は、蛍光体を分散する樹脂などの装置構成部品を損傷し難く、また人体に対する悪影響も少ない。
【0006】
蛍光体用材料としては、従来より酸化物や硫化物が広く用いられてきたが、近年、酸窒化物や窒化物の蛍光体の例が、特許文献4,5及び6並びに非特許文献1及び2に開示されている。これらの蛍光体は、特に波長390nm乃至420nmの光で励起されることにより高効率の発光が得られるうえ、化学的安定性及び耐熱性が高く、また使用温度の変化による発光効率の変動が少ない等の優れた特性を有するものが多い。
【0007】
特許文献7には、下記の構成を有する発光装置が開示されている。波長400nm励起の発光素子により励起された蛍光体(Ca0.93,Eu0.05,Mn0.02)10(PO4)6Cl2は青紫色から青色系領域に、蛍光体(Ca0.955Ce0.045)2(Si0.964Al0.036)5N8は青緑色から緑色系領域に、蛍光体SrCaSi5N8:Euは黄赤色から赤色系領域に、それぞれ発光ピーク波長を有する。これらの蛍光体からの光の混色により、白色系領域に発光色を示すとされている。
【0008】
酸窒化物蛍光体の中でも、特許文献6に開示されたJEM相蛍光体は、αサイアロンあるいはβサイアロンとは異なる結晶相であるJEM相を有するシリコン酸窒化物蛍光体であって、近紫外線の励起により従来にない強い青色発光を示すことが知られている。
【0009】
また特許文献8に、本発明の一実施形態に対応する従来技術として、半導体発光素子、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体の順に蛍光体を配置したことにより、半導体発光素子に近い側の蛍光体から発する光の再吸収が抑制された発光装置が開示されている。
【0010】
さらに、特許文献9に、赤色蛍光体La2O2S:Eu+Siであって、赤色又はそれより短い波長である波長450nm、545nm、624nmにおける粉末反射率が84%、94%、97%以上であるものが開示されている。
【特許文献1】特開平10−163535号公報
【特許文献2】特開平9−153644号公報
【特許文献3】特開2002−171000号公報
【特許文献4】特開2002−363554号公報
【特許文献5】特開2003−206481号公報
【特許文献6】国際公開2005/019376号パンフレット
【特許文献7】特開2004−244560号公報
【特許文献8】特開2004−71357号公報
【特許文献9】特開2004−331934号公報
【非特許文献1】Naoto Hirosaki, Rong−Jun Xie, Koji Kimoto, Takashi Sekiguchi, Yoshinobu Yamamoto, Takayuki Suehiro, and Mamoru Mitomo, Characterization and properties of green−emitting β−SiAlON:Eu2+ powder phosphors for white light−emitting diodes, Applied Physics Letters 86, 211905 (2005)
【非特許文献2】上田恭太、広崎尚登、山元明、解栄軍著、「白色LED用赤色窒化物蛍光体」、第305回蛍光体同学会講演予稿、2004年、p37−47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の目的は、JEM相蛍光体において良好な発光効率を得ることである。
本発明の第2の目的は、第1の蛍光体と、第1の蛍光体よりも長波長の光を発する第2の蛍光体とを組み合わせた発光装置において、第2の蛍光体から発する光の第1の蛍光体による吸収が少なく、その結果として良好な発光効率が得られる発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、本発明により課題を解決するための手段を記載する。また、その手段を用いる理由の説明のために、その手段に付随する作用及びその効果についても一部記載しているが、それらの効果は課題を解決するためのものではなく付随的なものであるため、発明を限定するものではない。
【0013】
本発明の蛍光体は、第1の波長の蛍光を発する蛍光体であって、第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であり、主たる結晶相がJEM相である蛍光体である。第1の波長に対して補色の関係にある波長とは、第1の波長の光と合成することにより白色が得られる波長である。
【0014】
本発明の蛍光体は、組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表され、MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、y1は、5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、y2は、10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、zは、0.8≦z≦1.2、さらに0.9≦z≦1.1を満たす実数であることが好ましい。
【0015】
本発明者らは、この蛍光体において、蛍光を発する第1の波長よりも長波長であって、第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率と発光効率との間に相関関係があり、該第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下である場合に発光効率が良好となることを見出した。
【0016】
本発明の発光装置は、励起光を発する半導体発光素子と、該励起光を吸収して蛍光を発する第1の蛍光体と、該励起光を吸収して該第1の蛍光体から発する蛍光より長波長の蛍光を発する一種類又は複数種類の第2の蛍光体とを備え、該第2の蛍光体の主たる一種類が発する蛍光の発光ピーク波長において、該第1の蛍光体の光吸収率(以下、「長波長光吸収率」とも称する)が30%以下である発光装置である。
【0017】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体が、第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であり、主たる結晶相がJEM相である蛍光体であることが好ましい。
【0018】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体が、組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表され、MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、y1は、5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、y2は、10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、zは、0.8≦z≦1.2、さらに0.9≦z≦1.1を満たす実数であることが好ましい。
【0019】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体の発光ピーク波長が450nm以上510nm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体の発光スペクトル半値全幅が80nm以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体の発光の色度座標xが0.05以上0.25以下、色度座標yが0.02以上0.38以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体の主たる一種類の発光ピーク波長が565nm以上605nm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の発光装置において、たとえば第1の蛍光体が青色ないし青緑色の蛍光を発する場合には、その補色である黄色の光を発する蛍光体を第2の蛍光体として用いることによって、白色に見える発光装置が得られる。なお、主たる一種類とは、複数種類の蛍光体を用いる場合に、その量と発光効率とによって決まる蛍光の強度が他の蛍光体よりも強い蛍光体を意味する。
【0024】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体の主たる一種類の発光スペクトル半値全幅が、80nm以上であることが好ましい。
【0025】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が酸窒化物蛍光体を含むことが好ましい。
【0026】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、Eu賦活αサイアロン蛍光体を含むことが好ましい。
【0027】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、Liを含むEu賦活αサイアロンを含むことが好ましい。
【0028】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-n(1.5≦m≦2.5、n=0.5m)で表されるEu賦活αサイアロンを含むことが好ましい。
【0029】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、Eu賦活βサイアロン蛍光体を含むことが好ましい。
【0030】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が窒化物蛍光体を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、Eu賦活CaAlSiN3を含むことが好ましい。
【0032】
本発明の発光装置においては、半導体発光素子、第2の蛍光体が分散された第2の部材、第1の蛍光体が分散された第1の部材がこの順に配置されることが好ましい。
【0033】
本発明の発光装置においては、上記の第2の部材がさらに複数の部材からなり、該複数の部材は、それぞれ分散された第2の蛍光体の種類が異なってもよい。
【0034】
本発明の発光装置においては、励起光の発光ピーク波長が、350nm以上420nm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の発光装置においては、発光装置の発光の色度座標xが0.22以上0.44以下、色度座標yが0.22以上0.44以下であるか、又は該発光装置の発光の色度座標xが0.36以上0.5以下、色度座標yが0.33以上0.46以下であることが好ましい。本発明の発光装置が上記の色度座標の発光を与える場合、白色又は電球色の発光が得られるため、特に照明用途の発光装置として好適である。
【発明の効果】
【0036】
本発明においては、第1の蛍光体がJEM相蛍光体であって、該第1の蛍光体の蛍光の波長よりも長波長領域における光吸収率が低いものとすることにより、良好な発光効率が得られる。
【0037】
また、本発明においては、第1の蛍光体よりも長波長の光を発する第2の蛍光体と、第2の蛍光体の発光ピーク波長における光吸収率が低い第1の蛍光体とを組み合わせた発光装置とすることにより、第1の蛍光体の発光効率が向上するとともに、第2の蛍光体から発する光の第1の蛍光体による吸収が少なく、その結果として装置全体としての発光効率が優れた発光装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明者らは、発光効率と光吸収率との関係について鋭意研究を行った結果、JEM相蛍光体において、光吸収率が小である場合に発光効率が大となることを見出した。この理由としては、光吸収率が小である場合の方がJEM相の割合が多く、ガラス相の割合が少ないためであると想定している。
【0039】
さらに、本発明者らは、発光装置において複数の蛍光体を用いる場合に適した蛍光体の性質として、単に発光効率が優れているだけではなく、他の波長における光吸収率が小さいことが、発光装置全体としての発光効率の向上にとって重要であることを見出した。従来においても特許文献9に示すように、蛍光体の発する蛍光よりも短い波長において反射率(光吸収率と負の相関がある)が高い方が良いという記載があるが、一般に蛍光体は蛍光の波長よりも短い波長を吸収して発光するものであるため、蛍光の波長よりも短い波長領域に光吸収があるのは自明である。一方本発明者らは、青色から青緑色の蛍光体、特にJEM相蛍光体において、その蛍光よりも長波長の光、具体的には緑色から黄色、赤色にかけての光における長波長光吸収率が小さいことが、他の蛍光体と共に用いる際、特に発光装置として用いる際に実際に重要であることを見出した。
【0040】
また、本発明者らは、発光特性が優れると共に他の蛍光体と組み合わせるのに適したJEM相蛍光体を用いて、演色性に優れ、特に照明用として適する白色系の色(白色、昼白色、電球色など)が得られる発光装置を実現した。
【0041】
例えば紫外から紫色の光を発光する半導体発光素子を励起光源として用いる発光装置において良好な演色性を実現するためには、可視光の広い波長領域にわたってバランスよく発光する蛍光体が必要である。そのために複数の蛍光体を混合することによっても高い演色性を得ることは可能であるが、混合する蛍光体の種類を増やしていくと、蛍光の再吸収によって全体として得られる発光強度が減少するという問題点があった。そこで、青色から青緑色で優れた発光特性を有するJEM相蛍光体の発光スペクトル半値全幅が広いことを用いて、互いに可視光領域での波長を補完する関係の蛍光体、特に黄色の蛍光体と組み合わせることにより、演色性が非常に高く、自然な発光を行う発光装置が得られた。また、その他の蛍光体を混合することによって、さらに演色性に優れた発光装置を実現することができた。
【0042】
以下に、紫外から紫色の光を吸収して青色から青緑色の光を発する蛍光体であるJEM相蛍光体及びその他の蛍光体の実施の形態を示すと共に、青色から青緑色の蛍光体と共に、可視光を発するその他の蛍光体を組み合わせて白色系の光を発する発光装置の実施の形態を説明する。
【0043】
(JEM相蛍光体)
本発明の蛍光体は、第1の波長の蛍光を発し、該第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が低くされた蛍光体である。第1の波長よりも長波長の光の光吸収率が低くされることによって、該蛍光体を他の蛍光体とともに発光装置に用いた場合にも優れた発光効率が付与される。
【0044】
第1の波長よりも長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における該光吸収率は30%以下とされる。この場合、該光吸収率が十分小さく、該蛍光体を発光装置に用いた場合の発光効率が良好となる。該光吸収率は、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。なお該光吸収率は、第1の波長、第1の波長と補色の関係にある波長として、各々の発光ピーク波長をとることにより算出される値である。
【0045】
本発明の蛍光体の主たる結晶相はJEM相である。主たる結晶相がJEM相であることにより本発明の蛍光体は青色から青緑色の優れた蛍光を呈する。また、JEM相蛍光体は広い発光スペクトル半値全幅を有し、他の蛍光体、特に該JEM相蛍光体が蛍光を発する波長と補色の関係にある波長の蛍光を与える蛍光体と組み合されて発光装置に用いられる場合、非常に高い演色性と自然な発光とが得られる点で有利である。すなわち、白色からのずれを補う程度の他の蛍光体をあわせて用いるだけで白色光を得ることができる。
【0046】
なお、主たる結晶相がJEM相であるとは、蛍光体中の結晶相のうちJEM相が占める割合が50%以上であることを意味する。該割合は、たとえばX線回折測定による回折ピークの強度比などから算出され得る。
【0047】
本発明において、第1の波長に対して補色の関係にある波長とは、第1の波長の光と合成することにより白色光が得られる波長を意味する。ここで、白色光とは、色度座標xが0.22以上0.44以下、色度座標yが0.22以上0.44以下である光を意味するものとする。よって、第1の波長に対して補色の関係にある波長は一定の範囲を持つ波長域として得られ、本発明においては、この波長域を通じて上記の光吸収率が30%以下となるように設定される。
【0048】
本発明において、JEM相とは、表1に記載されているような特有な原子占有位置(原子配列構造)とその座標によって特徴づけられる結晶構造(Pbcn空間群)とを持つ物質であると定義される。なおJEM相の詳細については、Jekabs Grinsほか3名”Journal of Materials Chemistry”1995年、5巻、11月号、2001〜2006ページにも記載される。
【0049】
【表1】
【0050】
表1において、サイトの記号は空間群の対称性を示す記号である。x、y、zの各座標はそれぞれの格子における元素の位置を示し、0から1の値を取る。また原子の欄において、「RE」にはM(La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素)及びCeがそれぞれの組成比の確率(1−x及びx)で入り、「Al」にはAlのみが入り、「M(1)」〜「M(3)」にはSi及びAlがそれぞれの組成比の確率(6−z及びz)で入り、「X(1)」〜「X(5)」にはN及びOがそれぞれの組成比の確率(10−z及びz)で入る。表1の値を用いて計算したX線回折データと、実際の材料を測定して得られたX線回折結果とを比較することにより、得られた材料がJEM相であるかどうかを同定することができる。
【0051】
本発明の蛍光体は、組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表されるものであることが好ましい。ここで、MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、y1は、5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、y2は、10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、zは、0.8≦z≦1.2、さらに0.9≦z≦1.1を満たす実数であることが好ましい。
【0052】
本発明の蛍光体が上記の組成式で表される場合、JEM相の含有率が高く発光効率に優れる点で有利である。
【0053】
上記組成式においては、Ceの賦活量であるxの値が増大するにつれて発光強度が大きくなる傾向があり、発光強度が大きい点で、xの値としては0.1以上1以下が適当である。
【0054】
上記組成式においては、理想的なJEM相であればy1は約6、y2は約10となることが予想されるが、実際にはガラス相や他の結晶相が混入している場合があるため、y1が5.9以上6.1以下、y2が10.0以上10.7以下とされることが好ましい。
【0055】
上記組成式において、zが0.8以上1.2以下、さらに0.9以上1.1以下である場合、比較的容易にJEM相が得られる点で好ましい。
【0056】
本発明はまた、励起光を発する半導体発光素子と、該励起光を吸収して蛍光を発する第1の蛍光体と、該励起光を吸収して該第1の蛍光体から発する蛍光より長波長の蛍光を発する一種類又は複数種類の第2の蛍光体とを備え、該第2の蛍光体の主たる一種類が発する蛍光の発光ピーク波長において、該第1の蛍光体の光吸収率が30%以下である発光装置に関する。
【0057】
本発明の発光装置は、第1の蛍光体と第2の蛍光体とを組合せて用い、かつ第2の蛍光体が発する蛍光の第1の蛍光体への光吸収率を低く抑えるものである。これにより、発光効率に優れた発光装置が得られる。該光吸収率が30%以下である場合、発光装置として十分良好な発光効率が得られる。
【0058】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体がJEM相を主たる結晶相とする蛍光体であることが好ましく、この場合発光効率に優れた発光装置が得られる。
【0059】
また、第1の蛍光体は、第1の波長の蛍光を発する蛍光体であって、第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であり、主たる結晶相がJEM相である蛍光体であることが好ましい。この場合、第2の蛍光体として、第1の蛍光体が発する蛍光の波長と補色の関係にある波長の蛍光を発する蛍光体を用いた際に、優れた発光効率の白色発光装置が得られる他、第1の蛍光体と第2の蛍光体との組合せを適宜設計することにより、優れた発光効率の電球色発光装置を得ることもできる。
【0060】
本発明の発光装置においては、第1の蛍光体が、組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表され、MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、y1は、5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、y2は、10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、zは、0.8≦z≦1.2、さらに0.9≦z≦1.1を満たす実数であることが好ましい。この場合、より発光効率に優れる発光装置が得られる。
【0061】
第1の蛍光体の発光ピーク波長は、450nm以上510nm以下であることが好ましい。この場合、第1の蛍光体が青色から青緑色の良好な発光を与え、発光効率の良い発光装置が得られる。
【0062】
また、第1の蛍光体の発光スペクトル半値全幅は80nm以上であることが好ましい。この場合、第1の蛍光体の発光スペクトル半値全幅が広いため、互いに可視光領域での波長を補完する関係、特に発光色が補色の関係にある蛍光体を第1の蛍光体と第2の蛍光体との組み合わせとして用いた場合に、より演色性が高く、より自然な発光を行う発光装置が得られる。
【0063】
第1の蛍光体においては、発光の色度座標xが0.05以上0.25以下、色度座標yが0.02以上0.38以下であることが好ましい。この場合、該第1の蛍光体は青色から青緑色の良好な発光を呈する。
【0064】
本発明の発光装置に用いられる第1の蛍光体である青色から青緑色の蛍光体としては、酸窒化物蛍光体(特にシリコン、アルミニウム、酸素、窒素及び発光中心であるランタノイド系希土類を含むもの)であって組成式La1-xCexAl(Si6-zAlz)N10-zOzで表わされる、Ce3+賦活のJEM相蛍光体が好ましく用いられる。
【0065】
本発明者らは、青色から青緑色領域で優れた発光特性を有するJEM相蛍光体について検討した結果、JEM相蛍光体における前述の各組成式のx(すなわちCeの賦活量)を変化させた場合に、発光ピーク波長が青色から青緑色の領域にあり、発光スペクトル半値全幅が広く発光効率の高い良好な蛍光体が得られることを見出した。
【0066】
図1は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の励起スペクトルの測定結果を示す図であり、図1には、組成式La1-xCexAl(Si6-zAlz)N10-zOzで表わされるJEM相蛍光体において、組成式のxを変化させた場合の励起スペクトル(すなわち励起光の波長を変化させたときの蛍光強度)を示している。例えば上記組成式のxが0.5の場合に、波長380nm近傍で励起スペクトル強度が高くなっていることがわかる。これは、発光中心であるCe3+イオンによる吸収がこの波長領域において強くなっているためであると考えられる。図2は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の発光スペクトルの測定結果を示す図であり、図2には、組成式La1-xCexAl(Si6-zAlz)N10-zOzで表わされるJEM相蛍光体において、組成式のxを変化させた場合の発光スペクトルの測定結果を示している。ただし励起光として波長405nmの光を用いている。上記組成式のxを増加させることによって、発光ピーク波長が青色から青緑色の波長域で変化することが本発明者らの研究によりわかった。特に、上記組成式でx=1の場合、発光ピーク波長は約505nm、発光スペクトル半値全幅は約120nmである。このように発光スペクトル半値全幅が非常に広いため、黄色成分(波長565nmから600nm)や赤色成分(波長600nm以上)も含んでいる。そのため、白色からのずれを補う程度の他の蛍光体をあわせて用いるだけで白色光を得ることができる。
【0067】
なお、Ceの賦活量である組成式のxが増大するにつれて発光が増大していることから、xの値としては0.1以上1以下が適当である。また、このことから、組成比1−xで含まれているLaはほとんど発光に寄与しておらず、従ってLaをLaと置換可能なランタノイド系元素、すなわちLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素に置き換えることが可能である。
【0068】
JEM相蛍光体の例としては、たとえば表2に示すような青色蛍光体を好ましく用いることができる。
【0069】
表2に示した青色蛍光体(a)〜(d)においては、LaとCeとの原子濃度が共に2.75%、すなわち両者の原子濃度の総和が5.5%であり、組成式においてx=0.5である。また、JEM相蛍光体が安定に形成される組成条件であるz=1.05である。なお、zの値としては、0.8以上1.2以下であれば通常の製造条件においてJEM相が得られ、0.9以上1.1以下であれば製造条件によらず比較的容易にJEM相が得られる。
【0070】
また、本発明においては、上記の組成式La1-xCexAl(Si6-zAlz)N10-zOzにおいて、x=1.0、つまりLa原子濃度を0%とし、Ce原子濃度は5.5%としても良い。また、JEM相が安定に形成される点で、組成式においてz=0.95としても良い。
【0071】
表2に示す青色蛍光体(a)〜(d)はたとえば以下のようにして製造されることができる。平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%及びα型含有量92%の窒化ケイ素粉末と、窒化アルミニウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化セリウム粉末を、各々48.374、16.96、16.83、17.8%の比率(質量%)となるように秤量して混合する。この混合粉末を窒化ホウ素製のるつぼに入れ、るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉に導入する。
【0072】
電気炉内を真空ポンプにより排気した後、室温から800℃まで加熱する。ここで純度99.999体積%の窒素ガスを導入し圧力を1MPaとする。さらに、約500℃/時の速さで焼成温度まで加熱し、所定の焼成時間だけ保持することにより焼成を行う。焼成後室温にして蛍光体を取り出す。
【0073】
ここで、上記の方法で得た混合粉末を用い、上記の方法により、表2に示す4種類の焼成条件で青色蛍光体(a)〜(d)を焼成した結果を表2に示す。
【0074】
なお、上記電気炉内の窒素の圧力が0.5MPa以上であれば、JEM相蛍光体が得られることを確認している。
【0075】
【表2】
【0076】
上記の方法で焼成した焼結体については、特許文献6に記載されているX線回折法及び回折ピークの同定によって、結晶相中のJEM相の比率が求められ、JEM相が50%以上と主成分であることがわかった。なお、ガラス相を含む全組成に対するJEM相の比率は同定していない。
【0077】
次に、青色蛍光体(a)〜(d)の蛍光体粉末に対して積分球を用いて全光束発光スペクトル測定及び光吸収スペクトル測定を行った(参考文献:照明学会誌 第83巻 第2号 平成11年 p87−93、NMB標準蛍光体の量子効率の測定、大久保和明 他著)。光吸収率は、厚さ2mmのセルに圧着した蛍光体粉末の反射率を、積分球を用いて求めた後、1から反射率を引いた値として求めている。
【0078】
青色蛍光体(a)〜(d)の発光ピーク波長は490nmであった。図3は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収スペクトルの測定結果を示す図であり、図3には青色蛍光体(a)〜(d)の青色JEM相蛍光体粉末における光吸収率の波長依存性を示している。光吸収率は、いずれも400nmを超えるあたりから急激に低下する。波長400nmより短波長での光吸収率は、JEM相蛍光体中に賦活された希土類元素の吸収によるものであり、青色蛍光体(a)〜(d)の場合はCe3+による吸収であると考えられる。青色蛍光体(a)〜(d)のいずれの蛍光体においても波長400nmで80%以上の高い光吸収率となっている。一方、波長500nmより長波長での光吸収率は青色蛍光体(a)〜(d)において大きく異なっていることがわかった。
【0079】
前述のように青色蛍光体(a)〜(d)の発光ピーク波長は490nmであるから、該発光ピーク波長よりも長波長であって該波長と補色の関係にある波長は、580〜600nmである。
【0080】
表2に示す結果から、青色蛍光体(a)〜(d)のうち、蛍光体(a)〜(c)については、上記補色の関係にある波長に含まれる590nmにおける光吸収率が30%よりも低い一方、青色蛍光体(d)については590nmにおける光吸収率が30%よりも高いことが分かる。
【0081】
図4は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収率と発光効率との関係を示す図であり、図4には、JEM相蛍光体である上記の青色蛍光体(a)〜(d)の波長590nmにおける光吸収率と、この蛍光体の発光効率(=量子効率×励起光吸収率)との関係を示している。このように、JEM相蛍光体の波長590nmにおける光吸収率が低いほど、発光効率が高いことがわかった。本発明者らは、競合する蛍光体より発光効率の高い蛍光体とするために、該発光効率が0.3以上、より好ましくは0.4以上が必要と考えている。このことから、波長590nm(黄色)における光吸収率が30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下がよいことがわかった。この理由としては、結晶相であるJEM相の含有率が低くなった場合、発光効率の高いJEM相が減少するだけでなく、JEM相などの蛍光体結晶を焼成した際に副生成物として形成される非結晶相であるガラス相が増加し、このガラス相の光吸収率が高いためと考えられる。
【0082】
図5は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収率と半導体発光素子の駆動電流40mAにおける発光装置の光度との関係を示す図である。可視光領域の光吸収率が高くなると、上記の発光効率が低下する現象の他に、青色蛍光体と組み合わせて用いることのできる緑色・黄色・赤色などの長波長の蛍光を発する蛍光体からの発光を吸収する現象が生じる。このような他の波長の吸収は、複数の蛍光体を用いる発光装置全体の発光強度の低下を引き起こす。そのため、発光装置中の半導体発光素子の駆動電流が40mAの時の発光装置の光度と蛍光体の光吸収率とを示した図5のように、発光装置の光度については、光吸収率に対してさらに強い依存性を示す(実施例1にて説明する)。
【0083】
また、蛍光体におけるガラス相の比率が製造ロットによりばらつくため、光吸収率も製造ロットによって変化する。その結果としてJEM相蛍光体とその他の蛍光体との発光バランスを変えてしまうため、発光装置の色調の制御が非常に困難になるが、光吸収率を一定値以下に抑えることにより、このような色調ばらつきも抑制できる。
【0084】
上記のような可視光域での吸収の少ない、すなわちガラス相の含有率の低いJEM相蛍光体は、主として蛍光体焼成時における結晶相であるJEM相からの窒素の脱離を抑制することにより得られると本発明者らは推定している。従って、JEM相蛍光体の焼成条件としては、窒素圧を0.5MPa以上とすることが望ましく、1MPa以上がより望ましい。また、単にJEM相の結晶性を向上させるためには、高温・長時間の焼成をすることが望ましい。しかし、この時、温度が高すぎる場合や高温に保持する時間が長すぎる場合は、ガラス相の割合が増大することを本発明者らは見出した。以上より、焼成温度としては1600℃以上1900℃以下が望ましく、1700℃以上1800℃以下がより望ましい。また、焼成時間としては、50時間以内が望ましく、30時間以内がより望ましい。なお、焼成によって得られた酸窒化物蛍光体がJEM相となるかガラス相となるかという点については、賦活される希土類元素の影響を受けにくい(すなわち希土類元素が微量であり、同一格子位置に入るため)ため、この製造条件はLaやCeなどの希土類元素の賦活量が異なるJEM相蛍光体全般に適用可能である。
【0085】
なお、JEM相蛍光体の組成式La1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzにおいて、理想的なJEM相であればy1=6、y2=10となることが予想されるが、実際にはガラス相や他の結晶相が混入している場合があるため、組成分析の結果は予想値に対して若干のずれが生じている。例えば、y1が5.9から6.1、y2が10.0から10.7程度の値になる。
【0086】
(第2の蛍光体)
本発明の発光装置において、第1の蛍光体と組合せて用いる第2の蛍光体としては、たとえば、黄色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体等が採用され得る。第2の蛍光体は一種でも複数種類でも良いが、主たる一種類が発する蛍光の発光ピーク波長において第1の蛍光体の光吸収率が30%以下となるように設計される。
【0087】
第2の蛍光体の主たる一種類の発光ピーク波長は、565nm以上605nm以下であることが好ましい。この場合、第2の蛍光体は黄色の蛍光を発し、第1の蛍光体として青色ないし青緑色の蛍光を発する蛍光体を組み合わせて用いることにより、白色光を得ることができる。
【0088】
第2の蛍光体の主たる一種類の発光スペクトル半値全幅は80nm以上であることが好ましい。この場合、発光スペクトル半値全幅が広いため、演色性が良好となる。
【0089】
第2の蛍光体は、酸窒化物蛍光体を含むことが好ましい。酸窒化物蛍光体を用いる場合、所望の発光ピーク波長と広い発光スペクトル半値全幅とを有する蛍光体が得られる。
【0090】
本発明の第2の蛍光体としては、たとえばEu賦活αサイアロン蛍光体を含むものが好ましく用いられる。該Eu賦活αサイアロン蛍光体は、特に、発光強度が大きく発光スペクトル半値全幅が広い黄色蛍光体として好適である。
【0091】
特に、Liを含むEu賦活αサイアロンを含むものは好ましく、たとえば黄色蛍光体として大きな発光強度と広い発光スペクトル半値全幅を有する。
【0092】
より典型的には、たとえば、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-n(1.5≦m≦2.5、n=0.5m)で表されるEu賦活αサイアロンを含むものが好ましく用いられる。
【0093】
一方、本発明の第2の蛍光体が酸窒化物蛍光体を含む場合、Eu賦活βサイアロン蛍光体を含むものも好ましく用いられる。該Eu賦活βサイアロン蛍光体は、たとえば緑色蛍光体として良好な発光強度と広い発光スペクトル半値全幅を与えることができる。
【0094】
本発明の第2の蛍光体はまた、窒化物蛍光体を含むことが好ましい。該窒化物蛍光体は、たとえば赤色蛍光体として良好な発光強度と広い発光スペクトル半値全幅とを与えることができる。たとえばEu賦活CaAlSiN3を含むものは発光強度が大きく発光スペクトル半値全幅が広い点で好ましい。
【0095】
以下、第2の蛍光体としての黄色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体の好ましい態様の例についてより具体的に説明する。
【0096】
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体としては、酸窒化物蛍光体(特にシリコン、アルミニウム、酸素、窒素及び発光中心であるランタノイド系希土類元素を含むもの)である組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体、または、組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体または、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nで(m=2.0、n=0.5m)のEu賦活αサイアロン蛍光体を用いることが好ましい。
【0097】
この組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体は、発光ピーク波長590nmを有し、発光スペクトル半値全幅が約90nm以上と広いという特徴を有する。また、組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体は、発光ピーク波長が580nm、発光スペクトル半値全幅が約90nmと広い。Eu賦活組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nで(m=2.0、n=0.5m)のαサイアロン蛍光体は、発光ピーク波長が573〜577nmと短く、発光スペクトル半値全幅は90nm以上と広い。
【0098】
図20は、実施の最良の形態において説明される組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nで表されるEu賦活αサイアロン蛍光体の発光効率と該組成式中のmの値との関係を示す図である。なお、図20に示すように、Eu賦活組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nの黄色蛍光体は1.5≦m≦2.5の時、強い発光効率を持つことがわかっているので、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-n(1.5≦m≦2.5、n=0.5m)の蛍光体を用いることができる。また、黄色の波長領域をより幅広くカバーするために組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15もしくは類似の組成との混合物または混晶の蛍光体を用いることも有用である。
【0099】
いずれの蛍光体も、励起スペクトルは、紫外から紫色の励起光領域において強いピークを有している。
【0100】
組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体または、組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体は、以下のようにして作製される。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化ユーロピウム粉末を混合し、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中1MPa、1800℃で10時間反応させて、その後粉砕することにより、黄色に発光するEu賦活αサイアロン蛍光体が作製される。
【0101】
本発明においては、第2の蛍光体として、上記の黄色蛍光体と組合せて、または単独で、赤色蛍光体を用いても良い。赤色蛍光体としては610〜670nm程度の発光ピーク波長を有するものを好ましく用いることができ、第1の蛍光体としてたとえば青色から青緑色の蛍光を発する蛍光体を組み合わせて用いることにより白色光を得ることができる。
【0102】
(赤色蛍光体)
赤色蛍光体としては、たとえば、窒化物蛍光体(特にシリコン、アルミニウム、窒素及び発光中心であるランタノイド系希土類を含むもの)であって「白色LED用赤色窒化物蛍光体」、第305回蛍光体同学会講演予稿、2004年、p37−47に記載されているCaAlSiN3:Eu3+(Eu賦活量0.8%)を用いることができる。これは以下のようにして作製される。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化カルシウム、窒化ユーロピウム粉末を、水分と空気とを遮断したグローブボックス内で混合させ、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中1MPa、1800℃で反応させて、その後粉砕することにより、赤色に発光するEu賦活CaAlSiN3蛍光体が作製される。
【0103】
上記のCaAlSiN3:Eu3+からなる赤色蛍光体は、発光ピーク波長が約650nmであり、発光スペクトル半値全幅が約90nm以上と広いという特徴を有する。
【0104】
(緑色蛍光体)
本発明の発光装置においては、第2蛍光体として緑色蛍光体も好ましく用いられる。緑色蛍光体は黄色蛍光体および/または赤色蛍光体と組み合わせて用いることが好ましい。この場合、より自然光に近い発光を得ることができる。緑色蛍光体の発光ピーク波長としては、510nm以上565nm以下であるものが望ましく、520nm以上550nm以下であればより良い。
【0105】
緑色蛍光体としては、非特許文献1に記載されるように、たとえば酸窒化物蛍光体(特にシリコン、アルミニウム、酸素、窒素及び発光中心であるランタノイド系希土類元素を含むもの)であるEu賦活βサイアロンを用いることができる。これは以下のようにして作製される。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ユーロピウム粉末を混合させ、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中1MPa、1900℃で反応させて、その後粉砕することにより、緑色に発光するEu賦活βサイアロン蛍光体が作製される。
【0106】
上記のEu賦活βサイアロンからなる緑色蛍光体は紫外から紫色の励起光により発光ピーク波長が約540nmの強い発光を示す。この蛍光体の発光スペクトル半値全幅は約55nmである。
【0107】
(発光装置)
図6は、実施例1における発光装置の断面図である。本発明の発光装置を図6に示した実施例1の発光装置60の断面図に準じて説明する。
【0108】
発光装置60は、基体65と、基体65の表面に形成された電極66,67と、電極66,67に電気的に接続された半導体発光素子64と、半導体発光素子64を封止するシリコーン樹脂69と、該シリコーン樹脂69中に分散した青色蛍光体11及び黄色蛍光体20と、シリコーン樹脂69が注入される範囲を制限するとともに、そのシリコーン樹脂69と接する表面がミラー状であって光を有効に取り出すための枠68と、からなる。電極66,67は、基体65の上面から実装面である下面まで立体的に引き回されている。発光装置60において、青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体20は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されるものである。
【0109】
また、本発明で第1の蛍光体として用いられるJEM相蛍光体及び第2の蛍光体として用いられるEu賦活αサイアロン蛍光体は、高い発光効率を保ったまま、材料の組成比を変えることにより、それぞれの発光ピーク波長を広い範囲で制御可能である。この特徴を生かして、蛍光体の混合比だけでなくそれぞれの組成比を調整することにより、色温度の高い昼光色から色温度の低い電球色までさまざまな白色系の色調を有する発光装置、特に色度座標xが0.22以上0.44以下、色度座標yが0.22以上0.44以下である白色や、又は色度座標xが0.36以上0.5以下、色度座標yが0.33以上0.46以下である電球色の発光を呈する発光装置を自由に設計可能である。
【0110】
上記の青色蛍光体11として、JEM相蛍光体である表2に示した青色蛍光体(a)を用いた場合、その発光ピーク波長が約490nm、発光スペクトル半値全幅が約120nmと広い。このため、JEM相蛍光体は、優れた演色性を有する発光装置の作製に非常に有用である。従来、紫外から紫色の励起光を用いた発光装置においては、青色、緑色、赤色の3色の蛍光体を組み合わせるのが一般的であった(特許文献3)。これは、従来の青色蛍光体では、比較的発光効率が高いものの発光ピーク波長が約450nmとやや短波長であり、発光スペクトル半値全幅も狭いものしか得られなかったためである。
【0111】
しかし、青色蛍光体11としてJEM相蛍光体である前述の青色蛍光体(a)を用いた場合、発光ピーク波長が約490nmであり、かつ発光スペクトル半値全幅が約120nmであるため、これだけでも可視光領域の広い部分をカバーすることができる。さらに、白色にするために、青色に対する補色である黄色蛍光体20のみを組み合わせることにより、演色性に優れた白色の発光装置が得られる。このとき、黄色蛍光体20としては、青色蛍光体と組み合わせて白色を得るためには発光ピーク波長が565nmから605nmにあるものが望ましく、演色性を向上させるためには発光スペクトル半値全幅が80nm以上と広いものが望ましい。また、青色蛍光体11と同じ励起光、特に紫外から紫色の励起光によって高効率に発光することが望ましい。
【0112】
なお、青色蛍光体と黄色蛍光体との組み合わせによる上述の発光装置のほかに、本発明では、青色・青紫色・黄色・赤色・緑色の蛍光体を、適宜組み合わせてシリコーン樹脂に封止することで、白色発光を得ることができる。例えば、後述する実施例2における発光装置の断面図を示す図9を用いて示すと、青色蛍光体11と黄色蛍光体21と赤色蛍光体30とを組み合わせて白色発光を得ることも可能である。なお青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体21および赤色蛍光体30は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されるものである。
【0113】
本発明の発光装置においては、半導体発光素子、第2の蛍光体が分散された第2の部材、第1の蛍光体が分散された第1の部材がこの順に配置されることができる。
【0114】
すなわち、発光装置の構造は、図16の実施例6における発光装置の断面図に示すような、蛍光体を分散させた樹脂部材の層を蛍光体ごとに分離した発光装置70のような構造でも良い。
【0115】
発光装置70は、基体65と、その表面に形成された電極66,67と、電極66,67に電気的に接続された上記半導体発光素子64と、半導体発光素子64を封止する長波長蛍光部材71(シリコーン樹脂69A及び該シリコーン樹脂69A中に分散した黄色蛍光体20(αサイアロン蛍光体)からなる)と、長波長蛍光部材71を覆うように形成された青色蛍光部材72(シリコーン樹脂69B及び該シリコーン樹脂69B中に分散した青色蛍光体11(JEM相蛍光体)からなる)と、シリコーン樹脂69A及び69Bが注入される範囲を制限するとともに、そのシリコーン樹脂と接する表面がミラー状であって光を有効に取り出すための枠68と、からなる。ここで、長波長蛍光部材71は本発明の第2の部材として、青色蛍光部材72は本発明の第1の部材として、それぞれ形成されるものである。
【0116】
ここで、図16では、長波長蛍光部材71には、黄色蛍光体20を分散させたが、青色より長波長の発光色を有する赤色蛍光体、緑色蛍光体、その他の緑色、黄色、赤色蛍光体のうちの少なくとも一つを合わせて分散してもよい。
【0117】
本発明においては、第2の部材がさらに複数の部材からなり、該複数の部材において、それぞれ分散させた第2の蛍光体の種類が異なっていても良い。すなわち、青色蛍光部材72と長波長蛍光部材71との2層とせずに、長波長蛍光部材71をさらに多層に分け、それぞれ別の蛍光体材料を分散させてもよい。例えば長波長蛍光部材を2層に分け、半導体発光素子64に近い側から赤色蛍光体を分散させた層、黄色蛍光体を分散させた層としてもよい。また、例えば長波長蛍光部材を3層に分け、半導体発光素子64に近い側から赤色蛍光体を分散させた層、黄色蛍光体を分散させた層、緑色蛍光体を分散させた層としてもよい。
【0118】
(半導体発光素子)
図6を例に示して説明すると、発光装置60に必要な半導体発光素子64としては、たとえばGaN系半導体(典型的には、少なくともGaとNとを含み、必要に応じてAl、In及びn型ドーパント、p型ドーパントなどを用いた半導体)よりなり、活性層がInGaN系材料であるLEDを用いることができる。
【0119】
半導体発光素子の励起光の発光波長は、発光ピーク波長で、JEM相蛍光体の励起スペクトルのピーク波長を含む350nm以上が望ましく、特に、半導体発光素子として好ましく用いられるInGaN系半導体発光素子において電気・光変換効率が良好な、発光ピーク波長390nm以上420nm以下のものが望ましい。以下に示す実施例においては発光ピーク波長が405nmのLEDを半導体発光素子として用いた。また、本発明においては、半導体発光素子の一方の面にp型電極及びn型電極を有しているものを用いることもできる。
【実施例】
【0120】
以下の実施例においては、下記の測定方法を用いた。
発光ピーク波長、発光スペクトル半値全幅および励起スペクトル
蛍光体粉末に対して積分球を用いて全光束発光スペクトル測定及び光吸収スペクトル測定を行った(参考文献:照明学会誌 第83巻 第2号 平成11年 p87−93、NBS標準蛍光体の量子効率の測定、大久保和明 他著)。測定には、分光光度計F4500型(HITACHI製)を用いた。光吸収率は、厚さ2mmのセルに圧着した蛍光体粉末の反射率を、積分球を用いて求めた後、1から反射率を引いた値として求めている。
【0121】
蛍光体の色度変化
スペクトル測定装置MCPD7000(大塚電子製)を用いて色度座標を測定し、0℃から100℃の色度変化を評価した。
【0122】
実施例1
次に、実施例1の発光装置60を、断面図である図6を用いて説明する。
【0123】
発光装置60は、基体65と、基体65の表面に形成された電極66,67と、電極66,67に電気的に接続された半導体発光素子64と、半導体発光素子64を封止するシリコーン樹脂69と、該シリコーン樹脂69中に分散した青色蛍光体11及び黄色蛍光体20と、シリコーン樹脂69が注入される範囲を制限するとともに、そのシリコーン樹脂69と接する表面がミラー状であって光を有効に取り出すための枠68と、からなる。電極66,67は、基体65の上面から実装面である下面まで立体的に引き回されている。ここで、青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体20は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されている。
【0124】
青色蛍光体11としては、前述の青色蛍光体(a)を用い、黄色蛍光体20としては、組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光色が白色となるように、両蛍光体の混合比率(質量比)を20:6としてシリコーン樹脂69中に分散した。
【0125】
JEM相蛍光体である青色蛍光体11は、波長590nm(黄色)における光吸収率が表2に示すように0.129と小さいため、組み合わせる黄色蛍光体20からの蛍光の吸収が少なく、青色蛍光体11自体の発光効率も大きい。そのため、図5に示すように、半導体発光素子64の駆動電流40mAにおける発光装置の光度として1820ミリカンデラが得られた。
【0126】
本発明者らは、さまざまな蛍光体に関して検討した結果、本実施例に用いるEu賦活αサイアロン蛍光体がこれらの条件を満たし好適であることを見出した。その中でも、本実施例では、組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体からなる黄色蛍光体20を用いた。この蛍光体は、発光ピーク波長が約590nmであり、発光スペクトル半値全幅が約90nm以上と広いという特徴を有する。また、励起スペクトル(すなわち励起光の波長を変化させたときの蛍光強度分布)は、近紫外領域において強いピークを有している。
【0127】
本実施例では、青色蛍光体による黄色の光吸収が少ないこと、JEM相蛍光体である青色蛍光体自体の発光効率が良好なことに加え、蛍光体の種類を2種類しか使用せず蛍光体の粒子の樹脂への分散量を少なくできるため、光度を大きくすることができた。
【0128】
図7は、実施例1の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の2種の蛍光体を混合して用いた発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光は、色度座標x=0.32、色度座標y=0.35の昼光色を示した。自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは88と高かった。
【0129】
本実施例の発光装置は、下記のような利点も有している。半導体発光素子として、視感度の低い発光ピーク波長405nmのLEDを用い、発光装置からの可視光の発光を、もっぱら蛍光体のみで行っているため、励起光源であるLEDの個体差やLEDと蛍光体との発光強度のバランスずれによる発光スペクトルのばらつきが小さく、その結果として色度が安定している。また、本実施例では、比重などの物理的特質が類似した蛍光体を混合しているため、樹脂中に蛍光体をほぼ均一に分散させることが可能であり、発光方向及び発光装置間の発光色のばらつきが小さい。
【0130】
さらに、青色蛍光体11、黄色蛍光体20が共に酸窒化物蛍光体であるシリコン酸窒化物の一種であり、駆動時の温度変化による発光効率の変動が小さいため、0℃から100℃という広い駆動温度範囲における色度の変化が後述する比較例1の酸化物蛍光体を用いた発光装置に比べて1/6〜1/4であり、目視上ほとんど色調の温度変化のない発光装置が得られた。
【0131】
比較例1
図8は、比較例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。従来から用いられている発光装置の一例として、青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードから発する励起光によって黄色の蛍光を発するYAG:Ce3+蛍光体とを組み合わせたものがある(特許文献1)。この構成を有する比較例1の発光装置の発光スペクトルを図8に示す。この場合、発光ダイオードから発する青色光とYAG:Ce3+蛍光体から発する黄色とがちょうど補色の関係となっているため、擬似的に白色に見える発光を示すが、青色光の発光スペクトル半値全幅が狭いため、500nm付近に発光強度の落ち込みがある。このため、自然光とは異なる、不自然な発光スペクトルとなり、平均演色性評価数Raは84と本実施例に比べ低い。
【0132】
比較例2
本実施例の青色蛍光体11を、やや長波長光吸収率の高い前述の青色蛍光体(d)で置き換えた発光装置を比較例2として作製した。半導体発光素子64の駆動電流40mAで光度760ミリカンデラ(実施例1の42%)であり、発光色の色度座標x=0.35、色度座標y=0.36となった。この理由としては、前述の青色蛍光体(d)の光吸収率が黄色の波長において青色蛍光体(a)より高いため、黄色の蛍光が減衰する影響と、青色蛍光体(d)の発光効率自体が青色蛍光体(a)より低い影響が、光度の減少については合成されて働き、色度の変化については打ち消しあったためであると考えられる。また、5個の発光装置のサンプルを作ったところ、サンプル間の色度のばらつきが実施例1に比べて大きかった。
【0133】
実施例2
図9は、実施例2における発光装置の断面図である。次に、さらに自然な発光が得られる、発光装置60Bの断面図を図9に示す。ただし図6と同一の構成部分については、同一の符号を用いており、蛍光体だけが異なる。
【0134】
シリコーン樹脂69には、発光色が白色となるように3種類の蛍光体を分散している。すなわち、青色蛍光体11として前述の青色蛍光体(a)、及び先に示した黄色蛍光体21として、組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体に加え、赤色蛍光体30としては、Eu賦活CaAlSiN3蛍光体を少量混合し、その混合比率(質量比)は20:6:2とした。ここで、青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体21および赤色蛍光体30は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されている。
【0135】
本実施例で用いた赤色蛍光体30は非常に発光効率が高いため、添加量は蛍光体の量の総和の10%程度としている。そのため、赤色蛍光体による励起光の吸収や蛍光の散乱が少なく、発光装置の光度の低下はほとんど見られなかった。
【0136】
赤色蛍光体30の発光スペクトル半値全幅は約95nmであり、青色蛍光体11、黄色蛍光体21のみによっては十分に得られなかった赤色可視光領域の発光を行うことによって平坦な発光スペクトルを得ることができる。図10は、実施例2の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の3種の蛍光体を混合した発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光は、色度座標x=0.37、色度座標y=0.39の白色を示し、その光度は1520ミリカンデラ(半導体発光素子64の駆動電流40mA時)であった。この発光スペクトルからわかるように、全可視光の波長領域にわたり均一な発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは96と高かった。このように良好な演色性を得るためには、赤色蛍光体30の発光スペクトル半値全幅が80nmより広いことが望ましい。上記の赤色蛍光体30の発光スペクトル半値全幅は95nmであった。
【0137】
比較例3
3種類の蛍光体を用いた従来技術の比較例として、実施例2における青色蛍光体11、黄色蛍光体21、赤色蛍光体30を、青色蛍光体であるBaMgAl10O17:Eu2+、緑色蛍光体であるSrAl2O4:Eu2+、赤色蛍光体である0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn4+に置き換えた発光装置を作製した。図11は、比較例3の発光装置の発光スペクトルを示す図である。上記の場合の発光スペクトルは図11のようなものが得られ、色度座標x=0.35,色度座標y=0.37の昼白色が得られた。発光スペクトルからも分かるように、この場合の平均演色性評価数Raは60と低かった。比較例3の発光装置の光度は1120ミリカンデラ(半導体発光素子64の駆動電流40mA時)であった。
【0138】
実施例3
次に、3種類の蛍光体を用いて、より温かみのある自然な発光が得られる実施例3の発光装置を作製した。発光装置は、図9に準じて説明すると、青色蛍光体11を青緑色蛍光体に置き換え、黄色蛍光体21として組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体、赤色蛍光体30として、Eu賦活CaAlSiN3蛍光体を用い、各蛍光体及びその混合比率(質量比)を変更しただけである。
【0139】
本実施例では、第1の蛍光体としてのJEM相蛍光体において、Laを含まずにCeの組成比x=1とした青緑色蛍光体を用いた。この発光ピーク波長は約505nmであり、発光スペクトル半値全幅は、青色から青緑色で発光する他の蛍光体ではあまり見られない約120nmという広い値を有する。このため、このJEM相蛍光体は、演色性に優れた発光装置の作製に非常に有用である。また、青緑色蛍光体の光吸収率は、本発明における第1の波長としての505nmに対して補色の関係にある波長580nmで21%、波長650nmで18%であった。
【0140】
また、黄色蛍光体21としての組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体は、発光ピーク波長が580nm、発光スペクトル半値全幅が約90nmと広い。
【0141】
さらに、発光スペクトルを自然光に近づけるため、赤色蛍光体30として、Eu賦活CaAlSiN3蛍光体を添加した。発光色を温かみのある色調とするために、実施例2に比べ青色蛍光体の代わりである青緑蛍光体の混合比率(質量比)を約50%減らし、赤色蛍光体の混合比率(質量比)を約25%増加した。すなわち、青緑色:黄色:赤色の混合比率(質量比)を10:6:2.5とした。
【0142】
図12は、実施例3の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の3種の蛍光体を混合して用いた発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光は、色度座標x=0.43、色度座標y=0.41の、いわゆる電球色を示した。この発光スペクトルからわかるように、標準光源Aの発光スペクトルに非常に近い発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは94と高かった。
【0143】
また、本実施例で用いた赤色蛍光体は非常に発光効率が高いため、わずかに添加量を増やすことによって赤色領域の発光強度を増大できた。また、比較的視感度及び発光効率が低い青色蛍光体の混合比率(質量比)を低くしたため、比較的視感度の低い赤色成分が多く、全体の光度の低い電球色型発光スペクトルであるにも関わらず、発光装置としての光度が実施例3よりも低下することはなかった。
【0144】
実施例4
次に、さらに自然な発光が得られる実施例4の発光装置を作製した。
【0145】
図13は、実施例4における発光装置の断面図であり、発光装置60Cの断面図を示している。ただし、図6と同一の構成部分については、同一の符号を用いている。本実施例の発光装置においては、発光色が白色となるように4種類の蛍光体が分散している。すなわち、青色蛍光体11として前述の青色蛍光体(a)、黄色蛍光体20として組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体、及び赤色蛍光体30としてEu賦活CaAlSiN3蛍光体を加え、わずかに緑色蛍光体40としてEu賦活βサイアロン蛍光体を混合した。その混合比率(質量比)は20:6:2:2である。ここで、青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体20、赤色蛍光体30および緑色蛍光体40は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されている。
【0146】
緑色蛍光体40は紫外から紫色の励起光により波長約540nmの強い発光を示した。この蛍光体の発光スペクトル半値全幅は、約55nmである。緑色蛍光体40は、青色蛍光体11と黄色蛍光体20との発光スペクトルの谷間を埋めるのが目的であるため、45nm以上の発光スペクトル半値全幅があればよい。本実施例の場合は、逆にあまり緑色蛍光体40の発光スペクトル半値全幅が広いと、視感度の強い波長領域であるためにかえって発光スペクトルの平坦性がなくなり、不自然な発光となる場合がある。なお、緑色蛍光体40の発光ピーク波長としては、510nm以上565nm以下であることが望ましく、520nm以上550nm以下であればより良い。
【0147】
図14は、実施例4の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の4種の蛍光体を混合した発光装置の発光スペクトルを示している。青色蛍光体の発光スペクトルが短波長側に寄ったものを使用していることによりわずかに生じた緑領域の発光の谷間を、上記緑色蛍光体でカバーすることができた。
【0148】
この発光装置の発光は、色度座標x=0.35、色度座標y=0.37の白色を示した。発光スペクトルからわかるように可視光の全波長領域にわたり均一な発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは98と高かった。
【0149】
また、本実施例で用いた緑色蛍光体は非常に発光効率が高い上、視感度の高い波長領域に発光ピーク波長を有するため、その添加量は蛍光体量の総和の10%程度とした。そのため、蛍光体量を増加させることによる発光装置としての光度の低下は実施例1及び2に比べてもほとんど見られなかった。
【0150】
実施例5
次に、より温かみのある自然な発光が得られる実施例5の発光装置を作製した。発光装置の断面図は、蛍光体を置換している点を除いて実施例4の図13と同じである。
【0151】
シリコーン樹脂69には、発光色が電球色となるように4種類の蛍光体、すなわち青色蛍光体11の代わりに青緑色蛍光体を用い、黄色蛍光体20として組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体、赤色蛍光体30としてEu賦活CaAlSiN3蛍光体に加え、Eu賦活βサイアロンからなる緑色蛍光体40が分散している。
【0152】
温かみのある色調とするために、実施例4に比べ青色(青緑色)蛍光体の混合比率(質量比)を約50%減らし、緑色蛍光体の混合比率(質量比)を約20%減らし、赤色・黄色蛍光体の混合比率(質量比)を約10%増加して、青緑色:黄色:赤色:緑色蛍光体の混合比率(質量比)を10:6.6:2.2:1.6とした。
【0153】
図15は、実施例5の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の4種の蛍光体を混合した発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光色は、色度座標x=0.45、色度座標y=0.42の電球色を示した。発光スペクトルからわかるように、視感度の低い励起光の波長を除けば、標準光源Aの発光スペクトルに非常に近い発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは97と非常に高かった。
【0154】
また、本実施例で用いた赤色・黄色蛍光体は非常に発光効率が高いため、わずかに添加量を増やすことによって赤色・黄色の発光強度を増大できた。また、電球色とするために青色の混合比率(質量比)を減らしたため、白色に比べて視感度の低い光の割合が多い電球色であるにも関わらず、発光装置としての光度の低下は実施例4に比べほとんど見られなかった。
【0155】
実施例6
図16は、実施例6における発光装置の断面図である。次に、蛍光体を分散させる樹脂部材の層を蛍光体ごとに分離した発光装置70を、断面図である図16を用いて説明する。
【0156】
発光装置70は、基体65と、その表面に形成された電極66,67と、電極66,67に電気的に接続された上記半導体発光素子64と、半導体発光素子64を封止する長波長蛍光部材71(シリコーン樹脂69A及び該シリコーン樹脂69A中に分散した黄色蛍光体20(αサイアロン蛍光体)からなる)と、長波長蛍光部材71を覆うように形成された青色蛍光部材72(シリコーン樹脂69B及び該シリコーン樹脂69B中に分散した青色蛍光体11(JEM相蛍光体)からなる)と、シリコーン樹脂69A及び69Bが注入される範囲を制限するとともに、そのシリコーン樹脂と接する表面がミラー状であって光を有効に取り出すための枠68と、からなる。
【0157】
本実施例では、青色蛍光体11として前述の青色蛍光体(a)、黄色蛍光体20として組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体を用いた。
【0158】
このように、青色蛍光部材72と長波長蛍光部材71とを分離し、半導体発光素子64に近い部分に長波長蛍光部材71を配置することにより、励起光強度の高い部分に配置された黄色蛍光体20から強い黄色の光が発する。しかし、その外側に青色蛍光部材72があるため、その部分において黄色の光吸収率が高いと黄色の光が発光装置の外部に放出されにくくなり、全体としての光度が減少する。従ってこのような発光装置の構造とする場合は、青色蛍光体及び黄色蛍光体を混合して樹脂に分散させた実施例1よりもさらに青色蛍光体11の黄色における光吸収率の低減が重要になる。長波長光吸収率を一定値以下に抑えた青色蛍光部材を本実施例のように配置することにより、配置による効果(黄色蛍光体による青色から青緑色の光吸収が抑制される効果)と長波長光吸収率低減による効果(青色蛍光体による黄色の光吸収が抑制される効果)の相乗効果が得られるため、非常に発光効率の高い発光装置が得られ、その光度は半導体発光素子64の駆動電流40mAで2020ミリカンデラであった。
【0159】
実施例7
図17は、実施例7における発光装置の断面図である。次に、さらに明るくかつ自然な発光が得られる、発光装置60Cの断面図を図17に示す。ただし図9と同一の構成部分については、同一の符号を用いており、蛍光体だけが異なる。
【0160】
シリコーン樹脂69には、発光色が白色となるように3種類の蛍光体を分散している。すなわち、青色:黄色:赤色の蛍光体混合比率(質量比)は20:6:2とした。
【0161】
黄色蛍光体22には、Eu賦活組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nのαサイアロン蛍光体(m=2.0、n=0.5m)を用いた。この蛍光体は、実施例2等で用いた組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体の発光ピークが590nmであるのに対し、発光ピーク波長が573から577nmと短い。この蛍光体も発光スペクトルの半値全幅は90nm以上と広い。図18は、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nのEu賦活αサイアロン蛍光体(m=2.0、n=0.5m)の励起発光スペクトルを示す図であり、図18には、上記の蛍光体の代表的な励起発光スペクトルを示している。黄色蛍光体22を用いた場合、発光ピーク波長が、ヒトの視感度の高い領域に近いため、光度を高くしやすいという特徴を持つ。
【0162】
図19は、実施例7の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の3種の蛍光体を混合した発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光は、色度座標x=0.36、色度座標y=0.39の白色を示し、その光度は1720ミリカンデラ(半導体発光素子64の駆動電流40mA時)であった。この発光スペクトルからわかるように、全可視光の波長領域にわたり均一な発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは94と高かった。このように良好な演色性と高い光度を両立するためには、本実施例の黄色蛍光体を用いることが望ましいことが分かった。
【0163】
(その他の実施可能形態)
各実施例において、蛍光体をシリコーン樹脂に分散させたが、エポキシ樹脂などの他の樹脂としてもよく、ガラスなどの透明材料としてもよい。緑色から赤色の蛍光体としては実施の形態に示したものだけでなく、比較例に示したものを加えてもよく、また記載した以外のもの、例えばTAG(TbAl3O12)蛍光体などを用いても良い。
【0164】
また、各実施例においては、半導体発光素子としてLEDを用いたが、半導体レーザを用いても良い。また、励起光の波長についても、半導体発光素子として良好な電気・光変換効率を有すると共に、蛍光体の励起スペクトルのピーク波長近傍となる波長であればよい。
【0165】
なお、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、JEM相蛍光体よりも長波長の光を発する第2の蛍光体と、第2の蛍光体の発光ピーク波長において光吸収率が低いJEM相蛍光体とを組み合わせた発光装置を提供し、その結果として装置全体としての発光効率が優れた白色発光装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の励起スペクトルの測定結果を示す図である。
【図2】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の発光スペクトルの測定結果を示す図である。
【図3】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
【図4】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収率と発光効率との関係を示す図である。
【図5】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収率と半導体発光素子の駆動電流40mAにおける発光装置の光度との関係を示す図である。
【図6】実施例1における発光装置の断面図である。
【図7】実施例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図8】比較例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図9】実施例2における発光装置の断面図である。
【図10】実施例2の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図11】比較例3の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例3の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例4における発光装置の断面図である。
【図14】実施例4の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図15】実施例5の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図16】実施例6における発光装置の断面図である。
【図17】実施例7における発光装置の断面図である。
【図18】組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nのEu賦活αサイアロン蛍光体(m=2.0、n=0.5m)の励起発光スペクトルを示す図である。
【図19】実施例7の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図20】実施の最良の形態において説明される組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nで表されるEu賦活αサイアロン蛍光体の発光効率と該組成式中のmの値との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0168】
11 青色蛍光体、20,21,22 黄色蛍光体、30 赤色蛍光体、40 緑色蛍光体、60,60B,60C,70 発光装置、65 基体、66,67 電極、64 半導体発光素子、68 枠、69,69A,69B シリコーン樹脂、71 長波長蛍光部材、72 青色蛍光部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、特に酸窒化物蛍光体と、その蛍光体及び半導体発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子は、小型で消費電力が少なく、高輝度の発光を安定に行うことができるという利点を有している。また、半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせて可視光を得る発光装置は、半導体発光素子の利点を有し、さらに白色など使用目的に応じた色の発光が可能であるため、液晶ディスプレイ、携帯電話若しくは携帯情報端末等のバックライト用光源、室内外広告等に利用される表示装置、各種携帯機器のインジケータ、照明スイッチ又はOA(オフィスオートメーション)機器用光源等に利用することができる。
【0003】
特許文献1には、青色又は青紫色の光を発光する半導体発光素子と、1種又は2種の蛍光体とを組み合わせた発光装置が開示されている。ここでは、該半導体発光素子の発光色と蛍光体の発光色とが互いに補色の関係になって擬似白色の光を発光するように蛍光体を選択している。
【0004】
また、特許文献2には、発光ピーク波長が380nmの紫外光を発光するIII族窒化物半導体を励起光源として用い、赤色、緑色及び青色の三原色の光をそれぞれ発光する3種類の蛍光体層を備えたドットマトリックスタイプの表示装置が開示されている。
【0005】
さらに特許文献3には、波長390nm乃至420nmの光を発光する半導体発光素子と、この半導体発光素子からの発光により励起される蛍光体とを用いて、白色の光を発光する発光装置が開示されている。ここで、半導体発光素子は、人の視感度が低い光を発光するため、半導体発光素子の発光強度や発光波長が変動しても色調がほとんど変化しないという利点を有する。また、波長390nm乃至420nmの光は、蛍光体を分散する樹脂などの装置構成部品を損傷し難く、また人体に対する悪影響も少ない。
【0006】
蛍光体用材料としては、従来より酸化物や硫化物が広く用いられてきたが、近年、酸窒化物や窒化物の蛍光体の例が、特許文献4,5及び6並びに非特許文献1及び2に開示されている。これらの蛍光体は、特に波長390nm乃至420nmの光で励起されることにより高効率の発光が得られるうえ、化学的安定性及び耐熱性が高く、また使用温度の変化による発光効率の変動が少ない等の優れた特性を有するものが多い。
【0007】
特許文献7には、下記の構成を有する発光装置が開示されている。波長400nm励起の発光素子により励起された蛍光体(Ca0.93,Eu0.05,Mn0.02)10(PO4)6Cl2は青紫色から青色系領域に、蛍光体(Ca0.955Ce0.045)2(Si0.964Al0.036)5N8は青緑色から緑色系領域に、蛍光体SrCaSi5N8:Euは黄赤色から赤色系領域に、それぞれ発光ピーク波長を有する。これらの蛍光体からの光の混色により、白色系領域に発光色を示すとされている。
【0008】
酸窒化物蛍光体の中でも、特許文献6に開示されたJEM相蛍光体は、αサイアロンあるいはβサイアロンとは異なる結晶相であるJEM相を有するシリコン酸窒化物蛍光体であって、近紫外線の励起により従来にない強い青色発光を示すことが知られている。
【0009】
また特許文献8に、本発明の一実施形態に対応する従来技術として、半導体発光素子、赤色蛍光体、緑色蛍光体、青色蛍光体の順に蛍光体を配置したことにより、半導体発光素子に近い側の蛍光体から発する光の再吸収が抑制された発光装置が開示されている。
【0010】
さらに、特許文献9に、赤色蛍光体La2O2S:Eu+Siであって、赤色又はそれより短い波長である波長450nm、545nm、624nmにおける粉末反射率が84%、94%、97%以上であるものが開示されている。
【特許文献1】特開平10−163535号公報
【特許文献2】特開平9−153644号公報
【特許文献3】特開2002−171000号公報
【特許文献4】特開2002−363554号公報
【特許文献5】特開2003−206481号公報
【特許文献6】国際公開2005/019376号パンフレット
【特許文献7】特開2004−244560号公報
【特許文献8】特開2004−71357号公報
【特許文献9】特開2004−331934号公報
【非特許文献1】Naoto Hirosaki, Rong−Jun Xie, Koji Kimoto, Takashi Sekiguchi, Yoshinobu Yamamoto, Takayuki Suehiro, and Mamoru Mitomo, Characterization and properties of green−emitting β−SiAlON:Eu2+ powder phosphors for white light−emitting diodes, Applied Physics Letters 86, 211905 (2005)
【非特許文献2】上田恭太、広崎尚登、山元明、解栄軍著、「白色LED用赤色窒化物蛍光体」、第305回蛍光体同学会講演予稿、2004年、p37−47
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の目的は、JEM相蛍光体において良好な発光効率を得ることである。
本発明の第2の目的は、第1の蛍光体と、第1の蛍光体よりも長波長の光を発する第2の蛍光体とを組み合わせた発光装置において、第2の蛍光体から発する光の第1の蛍光体による吸収が少なく、その結果として良好な発光効率が得られる発光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、本発明により課題を解決するための手段を記載する。また、その手段を用いる理由の説明のために、その手段に付随する作用及びその効果についても一部記載しているが、それらの効果は課題を解決するためのものではなく付随的なものであるため、発明を限定するものではない。
【0013】
本発明の蛍光体は、第1の波長の蛍光を発する蛍光体であって、第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であり、主たる結晶相がJEM相である蛍光体である。第1の波長に対して補色の関係にある波長とは、第1の波長の光と合成することにより白色が得られる波長である。
【0014】
本発明の蛍光体は、組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表され、MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、y1は、5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、y2は、10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、zは、0.8≦z≦1.2、さらに0.9≦z≦1.1を満たす実数であることが好ましい。
【0015】
本発明者らは、この蛍光体において、蛍光を発する第1の波長よりも長波長であって、第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率と発光効率との間に相関関係があり、該第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下である場合に発光効率が良好となることを見出した。
【0016】
本発明の発光装置は、励起光を発する半導体発光素子と、該励起光を吸収して蛍光を発する第1の蛍光体と、該励起光を吸収して該第1の蛍光体から発する蛍光より長波長の蛍光を発する一種類又は複数種類の第2の蛍光体とを備え、該第2の蛍光体の主たる一種類が発する蛍光の発光ピーク波長において、該第1の蛍光体の光吸収率(以下、「長波長光吸収率」とも称する)が30%以下である発光装置である。
【0017】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体が、第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であり、主たる結晶相がJEM相である蛍光体であることが好ましい。
【0018】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体が、組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表され、MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、y1は、5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、y2は、10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、zは、0.8≦z≦1.2、さらに0.9≦z≦1.1を満たす実数であることが好ましい。
【0019】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体の発光ピーク波長が450nm以上510nm以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体の発光スペクトル半値全幅が80nm以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体の発光の色度座標xが0.05以上0.25以下、色度座標yが0.02以上0.38以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体の主たる一種類の発光ピーク波長が565nm以上605nm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の発光装置において、たとえば第1の蛍光体が青色ないし青緑色の蛍光を発する場合には、その補色である黄色の光を発する蛍光体を第2の蛍光体として用いることによって、白色に見える発光装置が得られる。なお、主たる一種類とは、複数種類の蛍光体を用いる場合に、その量と発光効率とによって決まる蛍光の強度が他の蛍光体よりも強い蛍光体を意味する。
【0024】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体の主たる一種類の発光スペクトル半値全幅が、80nm以上であることが好ましい。
【0025】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が酸窒化物蛍光体を含むことが好ましい。
【0026】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、Eu賦活αサイアロン蛍光体を含むことが好ましい。
【0027】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、Liを含むEu賦活αサイアロンを含むことが好ましい。
【0028】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-n(1.5≦m≦2.5、n=0.5m)で表されるEu賦活αサイアロンを含むことが好ましい。
【0029】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、Eu賦活βサイアロン蛍光体を含むことが好ましい。
【0030】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が窒化物蛍光体を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の発光装置においては、上記の第2の蛍光体が、Eu賦活CaAlSiN3を含むことが好ましい。
【0032】
本発明の発光装置においては、半導体発光素子、第2の蛍光体が分散された第2の部材、第1の蛍光体が分散された第1の部材がこの順に配置されることが好ましい。
【0033】
本発明の発光装置においては、上記の第2の部材がさらに複数の部材からなり、該複数の部材は、それぞれ分散された第2の蛍光体の種類が異なってもよい。
【0034】
本発明の発光装置においては、励起光の発光ピーク波長が、350nm以上420nm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の発光装置においては、発光装置の発光の色度座標xが0.22以上0.44以下、色度座標yが0.22以上0.44以下であるか、又は該発光装置の発光の色度座標xが0.36以上0.5以下、色度座標yが0.33以上0.46以下であることが好ましい。本発明の発光装置が上記の色度座標の発光を与える場合、白色又は電球色の発光が得られるため、特に照明用途の発光装置として好適である。
【発明の効果】
【0036】
本発明においては、第1の蛍光体がJEM相蛍光体であって、該第1の蛍光体の蛍光の波長よりも長波長領域における光吸収率が低いものとすることにより、良好な発光効率が得られる。
【0037】
また、本発明においては、第1の蛍光体よりも長波長の光を発する第2の蛍光体と、第2の蛍光体の発光ピーク波長における光吸収率が低い第1の蛍光体とを組み合わせた発光装置とすることにより、第1の蛍光体の発光効率が向上するとともに、第2の蛍光体から発する光の第1の蛍光体による吸収が少なく、その結果として装置全体としての発光効率が優れた発光装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明者らは、発光効率と光吸収率との関係について鋭意研究を行った結果、JEM相蛍光体において、光吸収率が小である場合に発光効率が大となることを見出した。この理由としては、光吸収率が小である場合の方がJEM相の割合が多く、ガラス相の割合が少ないためであると想定している。
【0039】
さらに、本発明者らは、発光装置において複数の蛍光体を用いる場合に適した蛍光体の性質として、単に発光効率が優れているだけではなく、他の波長における光吸収率が小さいことが、発光装置全体としての発光効率の向上にとって重要であることを見出した。従来においても特許文献9に示すように、蛍光体の発する蛍光よりも短い波長において反射率(光吸収率と負の相関がある)が高い方が良いという記載があるが、一般に蛍光体は蛍光の波長よりも短い波長を吸収して発光するものであるため、蛍光の波長よりも短い波長領域に光吸収があるのは自明である。一方本発明者らは、青色から青緑色の蛍光体、特にJEM相蛍光体において、その蛍光よりも長波長の光、具体的には緑色から黄色、赤色にかけての光における長波長光吸収率が小さいことが、他の蛍光体と共に用いる際、特に発光装置として用いる際に実際に重要であることを見出した。
【0040】
また、本発明者らは、発光特性が優れると共に他の蛍光体と組み合わせるのに適したJEM相蛍光体を用いて、演色性に優れ、特に照明用として適する白色系の色(白色、昼白色、電球色など)が得られる発光装置を実現した。
【0041】
例えば紫外から紫色の光を発光する半導体発光素子を励起光源として用いる発光装置において良好な演色性を実現するためには、可視光の広い波長領域にわたってバランスよく発光する蛍光体が必要である。そのために複数の蛍光体を混合することによっても高い演色性を得ることは可能であるが、混合する蛍光体の種類を増やしていくと、蛍光の再吸収によって全体として得られる発光強度が減少するという問題点があった。そこで、青色から青緑色で優れた発光特性を有するJEM相蛍光体の発光スペクトル半値全幅が広いことを用いて、互いに可視光領域での波長を補完する関係の蛍光体、特に黄色の蛍光体と組み合わせることにより、演色性が非常に高く、自然な発光を行う発光装置が得られた。また、その他の蛍光体を混合することによって、さらに演色性に優れた発光装置を実現することができた。
【0042】
以下に、紫外から紫色の光を吸収して青色から青緑色の光を発する蛍光体であるJEM相蛍光体及びその他の蛍光体の実施の形態を示すと共に、青色から青緑色の蛍光体と共に、可視光を発するその他の蛍光体を組み合わせて白色系の光を発する発光装置の実施の形態を説明する。
【0043】
(JEM相蛍光体)
本発明の蛍光体は、第1の波長の蛍光を発し、該第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が低くされた蛍光体である。第1の波長よりも長波長の光の光吸収率が低くされることによって、該蛍光体を他の蛍光体とともに発光装置に用いた場合にも優れた発光効率が付与される。
【0044】
第1の波長よりも長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における該光吸収率は30%以下とされる。この場合、該光吸収率が十分小さく、該蛍光体を発光装置に用いた場合の発光効率が良好となる。該光吸収率は、20%以下がより好ましく、15%以下がさらに好ましい。なお該光吸収率は、第1の波長、第1の波長と補色の関係にある波長として、各々の発光ピーク波長をとることにより算出される値である。
【0045】
本発明の蛍光体の主たる結晶相はJEM相である。主たる結晶相がJEM相であることにより本発明の蛍光体は青色から青緑色の優れた蛍光を呈する。また、JEM相蛍光体は広い発光スペクトル半値全幅を有し、他の蛍光体、特に該JEM相蛍光体が蛍光を発する波長と補色の関係にある波長の蛍光を与える蛍光体と組み合されて発光装置に用いられる場合、非常に高い演色性と自然な発光とが得られる点で有利である。すなわち、白色からのずれを補う程度の他の蛍光体をあわせて用いるだけで白色光を得ることができる。
【0046】
なお、主たる結晶相がJEM相であるとは、蛍光体中の結晶相のうちJEM相が占める割合が50%以上であることを意味する。該割合は、たとえばX線回折測定による回折ピークの強度比などから算出され得る。
【0047】
本発明において、第1の波長に対して補色の関係にある波長とは、第1の波長の光と合成することにより白色光が得られる波長を意味する。ここで、白色光とは、色度座標xが0.22以上0.44以下、色度座標yが0.22以上0.44以下である光を意味するものとする。よって、第1の波長に対して補色の関係にある波長は一定の範囲を持つ波長域として得られ、本発明においては、この波長域を通じて上記の光吸収率が30%以下となるように設定される。
【0048】
本発明において、JEM相とは、表1に記載されているような特有な原子占有位置(原子配列構造)とその座標によって特徴づけられる結晶構造(Pbcn空間群)とを持つ物質であると定義される。なおJEM相の詳細については、Jekabs Grinsほか3名”Journal of Materials Chemistry”1995年、5巻、11月号、2001〜2006ページにも記載される。
【0049】
【表1】
【0050】
表1において、サイトの記号は空間群の対称性を示す記号である。x、y、zの各座標はそれぞれの格子における元素の位置を示し、0から1の値を取る。また原子の欄において、「RE」にはM(La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素)及びCeがそれぞれの組成比の確率(1−x及びx)で入り、「Al」にはAlのみが入り、「M(1)」〜「M(3)」にはSi及びAlがそれぞれの組成比の確率(6−z及びz)で入り、「X(1)」〜「X(5)」にはN及びOがそれぞれの組成比の確率(10−z及びz)で入る。表1の値を用いて計算したX線回折データと、実際の材料を測定して得られたX線回折結果とを比較することにより、得られた材料がJEM相であるかどうかを同定することができる。
【0051】
本発明の蛍光体は、組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表されるものであることが好ましい。ここで、MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、y1は、5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、y2は、10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、zは、0.8≦z≦1.2、さらに0.9≦z≦1.1を満たす実数であることが好ましい。
【0052】
本発明の蛍光体が上記の組成式で表される場合、JEM相の含有率が高く発光効率に優れる点で有利である。
【0053】
上記組成式においては、Ceの賦活量であるxの値が増大するにつれて発光強度が大きくなる傾向があり、発光強度が大きい点で、xの値としては0.1以上1以下が適当である。
【0054】
上記組成式においては、理想的なJEM相であればy1は約6、y2は約10となることが予想されるが、実際にはガラス相や他の結晶相が混入している場合があるため、y1が5.9以上6.1以下、y2が10.0以上10.7以下とされることが好ましい。
【0055】
上記組成式において、zが0.8以上1.2以下、さらに0.9以上1.1以下である場合、比較的容易にJEM相が得られる点で好ましい。
【0056】
本発明はまた、励起光を発する半導体発光素子と、該励起光を吸収して蛍光を発する第1の蛍光体と、該励起光を吸収して該第1の蛍光体から発する蛍光より長波長の蛍光を発する一種類又は複数種類の第2の蛍光体とを備え、該第2の蛍光体の主たる一種類が発する蛍光の発光ピーク波長において、該第1の蛍光体の光吸収率が30%以下である発光装置に関する。
【0057】
本発明の発光装置は、第1の蛍光体と第2の蛍光体とを組合せて用い、かつ第2の蛍光体が発する蛍光の第1の蛍光体への光吸収率を低く抑えるものである。これにより、発光効率に優れた発光装置が得られる。該光吸収率が30%以下である場合、発光装置として十分良好な発光効率が得られる。
【0058】
本発明の発光装置においては、上記の第1の蛍光体がJEM相を主たる結晶相とする蛍光体であることが好ましく、この場合発光効率に優れた発光装置が得られる。
【0059】
また、第1の蛍光体は、第1の波長の蛍光を発する蛍光体であって、第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であり、主たる結晶相がJEM相である蛍光体であることが好ましい。この場合、第2の蛍光体として、第1の蛍光体が発する蛍光の波長と補色の関係にある波長の蛍光を発する蛍光体を用いた際に、優れた発光効率の白色発光装置が得られる他、第1の蛍光体と第2の蛍光体との組合せを適宜設計することにより、優れた発光効率の電球色発光装置を得ることもできる。
【0060】
本発明の発光装置においては、第1の蛍光体が、組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表され、MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、y1は、5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、y2は、10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、zは、0.8≦z≦1.2、さらに0.9≦z≦1.1を満たす実数であることが好ましい。この場合、より発光効率に優れる発光装置が得られる。
【0061】
第1の蛍光体の発光ピーク波長は、450nm以上510nm以下であることが好ましい。この場合、第1の蛍光体が青色から青緑色の良好な発光を与え、発光効率の良い発光装置が得られる。
【0062】
また、第1の蛍光体の発光スペクトル半値全幅は80nm以上であることが好ましい。この場合、第1の蛍光体の発光スペクトル半値全幅が広いため、互いに可視光領域での波長を補完する関係、特に発光色が補色の関係にある蛍光体を第1の蛍光体と第2の蛍光体との組み合わせとして用いた場合に、より演色性が高く、より自然な発光を行う発光装置が得られる。
【0063】
第1の蛍光体においては、発光の色度座標xが0.05以上0.25以下、色度座標yが0.02以上0.38以下であることが好ましい。この場合、該第1の蛍光体は青色から青緑色の良好な発光を呈する。
【0064】
本発明の発光装置に用いられる第1の蛍光体である青色から青緑色の蛍光体としては、酸窒化物蛍光体(特にシリコン、アルミニウム、酸素、窒素及び発光中心であるランタノイド系希土類を含むもの)であって組成式La1-xCexAl(Si6-zAlz)N10-zOzで表わされる、Ce3+賦活のJEM相蛍光体が好ましく用いられる。
【0065】
本発明者らは、青色から青緑色領域で優れた発光特性を有するJEM相蛍光体について検討した結果、JEM相蛍光体における前述の各組成式のx(すなわちCeの賦活量)を変化させた場合に、発光ピーク波長が青色から青緑色の領域にあり、発光スペクトル半値全幅が広く発光効率の高い良好な蛍光体が得られることを見出した。
【0066】
図1は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の励起スペクトルの測定結果を示す図であり、図1には、組成式La1-xCexAl(Si6-zAlz)N10-zOzで表わされるJEM相蛍光体において、組成式のxを変化させた場合の励起スペクトル(すなわち励起光の波長を変化させたときの蛍光強度)を示している。例えば上記組成式のxが0.5の場合に、波長380nm近傍で励起スペクトル強度が高くなっていることがわかる。これは、発光中心であるCe3+イオンによる吸収がこの波長領域において強くなっているためであると考えられる。図2は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の発光スペクトルの測定結果を示す図であり、図2には、組成式La1-xCexAl(Si6-zAlz)N10-zOzで表わされるJEM相蛍光体において、組成式のxを変化させた場合の発光スペクトルの測定結果を示している。ただし励起光として波長405nmの光を用いている。上記組成式のxを増加させることによって、発光ピーク波長が青色から青緑色の波長域で変化することが本発明者らの研究によりわかった。特に、上記組成式でx=1の場合、発光ピーク波長は約505nm、発光スペクトル半値全幅は約120nmである。このように発光スペクトル半値全幅が非常に広いため、黄色成分(波長565nmから600nm)や赤色成分(波長600nm以上)も含んでいる。そのため、白色からのずれを補う程度の他の蛍光体をあわせて用いるだけで白色光を得ることができる。
【0067】
なお、Ceの賦活量である組成式のxが増大するにつれて発光が増大していることから、xの値としては0.1以上1以下が適当である。また、このことから、組成比1−xで含まれているLaはほとんど発光に寄与しておらず、従ってLaをLaと置換可能なランタノイド系元素、すなわちLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素に置き換えることが可能である。
【0068】
JEM相蛍光体の例としては、たとえば表2に示すような青色蛍光体を好ましく用いることができる。
【0069】
表2に示した青色蛍光体(a)〜(d)においては、LaとCeとの原子濃度が共に2.75%、すなわち両者の原子濃度の総和が5.5%であり、組成式においてx=0.5である。また、JEM相蛍光体が安定に形成される組成条件であるz=1.05である。なお、zの値としては、0.8以上1.2以下であれば通常の製造条件においてJEM相が得られ、0.9以上1.1以下であれば製造条件によらず比較的容易にJEM相が得られる。
【0070】
また、本発明においては、上記の組成式La1-xCexAl(Si6-zAlz)N10-zOzにおいて、x=1.0、つまりLa原子濃度を0%とし、Ce原子濃度は5.5%としても良い。また、JEM相が安定に形成される点で、組成式においてz=0.95としても良い。
【0071】
表2に示す青色蛍光体(a)〜(d)はたとえば以下のようにして製造されることができる。平均粒径0.5μm、酸素含有量0.93質量%及びα型含有量92%の窒化ケイ素粉末と、窒化アルミニウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化セリウム粉末を、各々48.374、16.96、16.83、17.8%の比率(質量%)となるように秤量して混合する。この混合粉末を窒化ホウ素製のるつぼに入れ、るつぼを黒鉛抵抗加熱方式の電気炉に導入する。
【0072】
電気炉内を真空ポンプにより排気した後、室温から800℃まで加熱する。ここで純度99.999体積%の窒素ガスを導入し圧力を1MPaとする。さらに、約500℃/時の速さで焼成温度まで加熱し、所定の焼成時間だけ保持することにより焼成を行う。焼成後室温にして蛍光体を取り出す。
【0073】
ここで、上記の方法で得た混合粉末を用い、上記の方法により、表2に示す4種類の焼成条件で青色蛍光体(a)〜(d)を焼成した結果を表2に示す。
【0074】
なお、上記電気炉内の窒素の圧力が0.5MPa以上であれば、JEM相蛍光体が得られることを確認している。
【0075】
【表2】
【0076】
上記の方法で焼成した焼結体については、特許文献6に記載されているX線回折法及び回折ピークの同定によって、結晶相中のJEM相の比率が求められ、JEM相が50%以上と主成分であることがわかった。なお、ガラス相を含む全組成に対するJEM相の比率は同定していない。
【0077】
次に、青色蛍光体(a)〜(d)の蛍光体粉末に対して積分球を用いて全光束発光スペクトル測定及び光吸収スペクトル測定を行った(参考文献:照明学会誌 第83巻 第2号 平成11年 p87−93、NMB標準蛍光体の量子効率の測定、大久保和明 他著)。光吸収率は、厚さ2mmのセルに圧着した蛍光体粉末の反射率を、積分球を用いて求めた後、1から反射率を引いた値として求めている。
【0078】
青色蛍光体(a)〜(d)の発光ピーク波長は490nmであった。図3は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収スペクトルの測定結果を示す図であり、図3には青色蛍光体(a)〜(d)の青色JEM相蛍光体粉末における光吸収率の波長依存性を示している。光吸収率は、いずれも400nmを超えるあたりから急激に低下する。波長400nmより短波長での光吸収率は、JEM相蛍光体中に賦活された希土類元素の吸収によるものであり、青色蛍光体(a)〜(d)の場合はCe3+による吸収であると考えられる。青色蛍光体(a)〜(d)のいずれの蛍光体においても波長400nmで80%以上の高い光吸収率となっている。一方、波長500nmより長波長での光吸収率は青色蛍光体(a)〜(d)において大きく異なっていることがわかった。
【0079】
前述のように青色蛍光体(a)〜(d)の発光ピーク波長は490nmであるから、該発光ピーク波長よりも長波長であって該波長と補色の関係にある波長は、580〜600nmである。
【0080】
表2に示す結果から、青色蛍光体(a)〜(d)のうち、蛍光体(a)〜(c)については、上記補色の関係にある波長に含まれる590nmにおける光吸収率が30%よりも低い一方、青色蛍光体(d)については590nmにおける光吸収率が30%よりも高いことが分かる。
【0081】
図4は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収率と発光効率との関係を示す図であり、図4には、JEM相蛍光体である上記の青色蛍光体(a)〜(d)の波長590nmにおける光吸収率と、この蛍光体の発光効率(=量子効率×励起光吸収率)との関係を示している。このように、JEM相蛍光体の波長590nmにおける光吸収率が低いほど、発光効率が高いことがわかった。本発明者らは、競合する蛍光体より発光効率の高い蛍光体とするために、該発光効率が0.3以上、より好ましくは0.4以上が必要と考えている。このことから、波長590nm(黄色)における光吸収率が30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下がよいことがわかった。この理由としては、結晶相であるJEM相の含有率が低くなった場合、発光効率の高いJEM相が減少するだけでなく、JEM相などの蛍光体結晶を焼成した際に副生成物として形成される非結晶相であるガラス相が増加し、このガラス相の光吸収率が高いためと考えられる。
【0082】
図5は、実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収率と半導体発光素子の駆動電流40mAにおける発光装置の光度との関係を示す図である。可視光領域の光吸収率が高くなると、上記の発光効率が低下する現象の他に、青色蛍光体と組み合わせて用いることのできる緑色・黄色・赤色などの長波長の蛍光を発する蛍光体からの発光を吸収する現象が生じる。このような他の波長の吸収は、複数の蛍光体を用いる発光装置全体の発光強度の低下を引き起こす。そのため、発光装置中の半導体発光素子の駆動電流が40mAの時の発光装置の光度と蛍光体の光吸収率とを示した図5のように、発光装置の光度については、光吸収率に対してさらに強い依存性を示す(実施例1にて説明する)。
【0083】
また、蛍光体におけるガラス相の比率が製造ロットによりばらつくため、光吸収率も製造ロットによって変化する。その結果としてJEM相蛍光体とその他の蛍光体との発光バランスを変えてしまうため、発光装置の色調の制御が非常に困難になるが、光吸収率を一定値以下に抑えることにより、このような色調ばらつきも抑制できる。
【0084】
上記のような可視光域での吸収の少ない、すなわちガラス相の含有率の低いJEM相蛍光体は、主として蛍光体焼成時における結晶相であるJEM相からの窒素の脱離を抑制することにより得られると本発明者らは推定している。従って、JEM相蛍光体の焼成条件としては、窒素圧を0.5MPa以上とすることが望ましく、1MPa以上がより望ましい。また、単にJEM相の結晶性を向上させるためには、高温・長時間の焼成をすることが望ましい。しかし、この時、温度が高すぎる場合や高温に保持する時間が長すぎる場合は、ガラス相の割合が増大することを本発明者らは見出した。以上より、焼成温度としては1600℃以上1900℃以下が望ましく、1700℃以上1800℃以下がより望ましい。また、焼成時間としては、50時間以内が望ましく、30時間以内がより望ましい。なお、焼成によって得られた酸窒化物蛍光体がJEM相となるかガラス相となるかという点については、賦活される希土類元素の影響を受けにくい(すなわち希土類元素が微量であり、同一格子位置に入るため)ため、この製造条件はLaやCeなどの希土類元素の賦活量が異なるJEM相蛍光体全般に適用可能である。
【0085】
なお、JEM相蛍光体の組成式La1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzにおいて、理想的なJEM相であればy1=6、y2=10となることが予想されるが、実際にはガラス相や他の結晶相が混入している場合があるため、組成分析の結果は予想値に対して若干のずれが生じている。例えば、y1が5.9から6.1、y2が10.0から10.7程度の値になる。
【0086】
(第2の蛍光体)
本発明の発光装置において、第1の蛍光体と組合せて用いる第2の蛍光体としては、たとえば、黄色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体等が採用され得る。第2の蛍光体は一種でも複数種類でも良いが、主たる一種類が発する蛍光の発光ピーク波長において第1の蛍光体の光吸収率が30%以下となるように設計される。
【0087】
第2の蛍光体の主たる一種類の発光ピーク波長は、565nm以上605nm以下であることが好ましい。この場合、第2の蛍光体は黄色の蛍光を発し、第1の蛍光体として青色ないし青緑色の蛍光を発する蛍光体を組み合わせて用いることにより、白色光を得ることができる。
【0088】
第2の蛍光体の主たる一種類の発光スペクトル半値全幅は80nm以上であることが好ましい。この場合、発光スペクトル半値全幅が広いため、演色性が良好となる。
【0089】
第2の蛍光体は、酸窒化物蛍光体を含むことが好ましい。酸窒化物蛍光体を用いる場合、所望の発光ピーク波長と広い発光スペクトル半値全幅とを有する蛍光体が得られる。
【0090】
本発明の第2の蛍光体としては、たとえばEu賦活αサイアロン蛍光体を含むものが好ましく用いられる。該Eu賦活αサイアロン蛍光体は、特に、発光強度が大きく発光スペクトル半値全幅が広い黄色蛍光体として好適である。
【0091】
特に、Liを含むEu賦活αサイアロンを含むものは好ましく、たとえば黄色蛍光体として大きな発光強度と広い発光スペクトル半値全幅を有する。
【0092】
より典型的には、たとえば、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-n(1.5≦m≦2.5、n=0.5m)で表されるEu賦活αサイアロンを含むものが好ましく用いられる。
【0093】
一方、本発明の第2の蛍光体が酸窒化物蛍光体を含む場合、Eu賦活βサイアロン蛍光体を含むものも好ましく用いられる。該Eu賦活βサイアロン蛍光体は、たとえば緑色蛍光体として良好な発光強度と広い発光スペクトル半値全幅を与えることができる。
【0094】
本発明の第2の蛍光体はまた、窒化物蛍光体を含むことが好ましい。該窒化物蛍光体は、たとえば赤色蛍光体として良好な発光強度と広い発光スペクトル半値全幅とを与えることができる。たとえばEu賦活CaAlSiN3を含むものは発光強度が大きく発光スペクトル半値全幅が広い点で好ましい。
【0095】
以下、第2の蛍光体としての黄色蛍光体、赤色蛍光体、緑色蛍光体の好ましい態様の例についてより具体的に説明する。
【0096】
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体としては、酸窒化物蛍光体(特にシリコン、アルミニウム、酸素、窒素及び発光中心であるランタノイド系希土類元素を含むもの)である組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体、または、組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体または、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nで(m=2.0、n=0.5m)のEu賦活αサイアロン蛍光体を用いることが好ましい。
【0097】
この組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体は、発光ピーク波長590nmを有し、発光スペクトル半値全幅が約90nm以上と広いという特徴を有する。また、組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体は、発光ピーク波長が580nm、発光スペクトル半値全幅が約90nmと広い。Eu賦活組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nで(m=2.0、n=0.5m)のαサイアロン蛍光体は、発光ピーク波長が573〜577nmと短く、発光スペクトル半値全幅は90nm以上と広い。
【0098】
図20は、実施の最良の形態において説明される組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nで表されるEu賦活αサイアロン蛍光体の発光効率と該組成式中のmの値との関係を示す図である。なお、図20に示すように、Eu賦活組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nの黄色蛍光体は1.5≦m≦2.5の時、強い発光効率を持つことがわかっているので、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-n(1.5≦m≦2.5、n=0.5m)の蛍光体を用いることができる。また、黄色の波長領域をより幅広くカバーするために組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15もしくは類似の組成との混合物または混晶の蛍光体を用いることも有用である。
【0099】
いずれの蛍光体も、励起スペクトルは、紫外から紫色の励起光領域において強いピークを有している。
【0100】
組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体または、組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体は、以下のようにして作製される。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化ユーロピウム粉末を混合し、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中1MPa、1800℃で10時間反応させて、その後粉砕することにより、黄色に発光するEu賦活αサイアロン蛍光体が作製される。
【0101】
本発明においては、第2の蛍光体として、上記の黄色蛍光体と組合せて、または単独で、赤色蛍光体を用いても良い。赤色蛍光体としては610〜670nm程度の発光ピーク波長を有するものを好ましく用いることができ、第1の蛍光体としてたとえば青色から青緑色の蛍光を発する蛍光体を組み合わせて用いることにより白色光を得ることができる。
【0102】
(赤色蛍光体)
赤色蛍光体としては、たとえば、窒化物蛍光体(特にシリコン、アルミニウム、窒素及び発光中心であるランタノイド系希土類を含むもの)であって「白色LED用赤色窒化物蛍光体」、第305回蛍光体同学会講演予稿、2004年、p37−47に記載されているCaAlSiN3:Eu3+(Eu賦活量0.8%)を用いることができる。これは以下のようにして作製される。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化カルシウム、窒化ユーロピウム粉末を、水分と空気とを遮断したグローブボックス内で混合させ、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中1MPa、1800℃で反応させて、その後粉砕することにより、赤色に発光するEu賦活CaAlSiN3蛍光体が作製される。
【0103】
上記のCaAlSiN3:Eu3+からなる赤色蛍光体は、発光ピーク波長が約650nmであり、発光スペクトル半値全幅が約90nm以上と広いという特徴を有する。
【0104】
(緑色蛍光体)
本発明の発光装置においては、第2蛍光体として緑色蛍光体も好ましく用いられる。緑色蛍光体は黄色蛍光体および/または赤色蛍光体と組み合わせて用いることが好ましい。この場合、より自然光に近い発光を得ることができる。緑色蛍光体の発光ピーク波長としては、510nm以上565nm以下であるものが望ましく、520nm以上550nm以下であればより良い。
【0105】
緑色蛍光体としては、非特許文献1に記載されるように、たとえば酸窒化物蛍光体(特にシリコン、アルミニウム、酸素、窒素及び発光中心であるランタノイド系希土類元素を含むもの)であるEu賦活βサイアロンを用いることができる。これは以下のようにして作製される。窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化ユーロピウム粉末を混合させ、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中1MPa、1900℃で反応させて、その後粉砕することにより、緑色に発光するEu賦活βサイアロン蛍光体が作製される。
【0106】
上記のEu賦活βサイアロンからなる緑色蛍光体は紫外から紫色の励起光により発光ピーク波長が約540nmの強い発光を示す。この蛍光体の発光スペクトル半値全幅は約55nmである。
【0107】
(発光装置)
図6は、実施例1における発光装置の断面図である。本発明の発光装置を図6に示した実施例1の発光装置60の断面図に準じて説明する。
【0108】
発光装置60は、基体65と、基体65の表面に形成された電極66,67と、電極66,67に電気的に接続された半導体発光素子64と、半導体発光素子64を封止するシリコーン樹脂69と、該シリコーン樹脂69中に分散した青色蛍光体11及び黄色蛍光体20と、シリコーン樹脂69が注入される範囲を制限するとともに、そのシリコーン樹脂69と接する表面がミラー状であって光を有効に取り出すための枠68と、からなる。電極66,67は、基体65の上面から実装面である下面まで立体的に引き回されている。発光装置60において、青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体20は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されるものである。
【0109】
また、本発明で第1の蛍光体として用いられるJEM相蛍光体及び第2の蛍光体として用いられるEu賦活αサイアロン蛍光体は、高い発光効率を保ったまま、材料の組成比を変えることにより、それぞれの発光ピーク波長を広い範囲で制御可能である。この特徴を生かして、蛍光体の混合比だけでなくそれぞれの組成比を調整することにより、色温度の高い昼光色から色温度の低い電球色までさまざまな白色系の色調を有する発光装置、特に色度座標xが0.22以上0.44以下、色度座標yが0.22以上0.44以下である白色や、又は色度座標xが0.36以上0.5以下、色度座標yが0.33以上0.46以下である電球色の発光を呈する発光装置を自由に設計可能である。
【0110】
上記の青色蛍光体11として、JEM相蛍光体である表2に示した青色蛍光体(a)を用いた場合、その発光ピーク波長が約490nm、発光スペクトル半値全幅が約120nmと広い。このため、JEM相蛍光体は、優れた演色性を有する発光装置の作製に非常に有用である。従来、紫外から紫色の励起光を用いた発光装置においては、青色、緑色、赤色の3色の蛍光体を組み合わせるのが一般的であった(特許文献3)。これは、従来の青色蛍光体では、比較的発光効率が高いものの発光ピーク波長が約450nmとやや短波長であり、発光スペクトル半値全幅も狭いものしか得られなかったためである。
【0111】
しかし、青色蛍光体11としてJEM相蛍光体である前述の青色蛍光体(a)を用いた場合、発光ピーク波長が約490nmであり、かつ発光スペクトル半値全幅が約120nmであるため、これだけでも可視光領域の広い部分をカバーすることができる。さらに、白色にするために、青色に対する補色である黄色蛍光体20のみを組み合わせることにより、演色性に優れた白色の発光装置が得られる。このとき、黄色蛍光体20としては、青色蛍光体と組み合わせて白色を得るためには発光ピーク波長が565nmから605nmにあるものが望ましく、演色性を向上させるためには発光スペクトル半値全幅が80nm以上と広いものが望ましい。また、青色蛍光体11と同じ励起光、特に紫外から紫色の励起光によって高効率に発光することが望ましい。
【0112】
なお、青色蛍光体と黄色蛍光体との組み合わせによる上述の発光装置のほかに、本発明では、青色・青紫色・黄色・赤色・緑色の蛍光体を、適宜組み合わせてシリコーン樹脂に封止することで、白色発光を得ることができる。例えば、後述する実施例2における発光装置の断面図を示す図9を用いて示すと、青色蛍光体11と黄色蛍光体21と赤色蛍光体30とを組み合わせて白色発光を得ることも可能である。なお青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体21および赤色蛍光体30は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されるものである。
【0113】
本発明の発光装置においては、半導体発光素子、第2の蛍光体が分散された第2の部材、第1の蛍光体が分散された第1の部材がこの順に配置されることができる。
【0114】
すなわち、発光装置の構造は、図16の実施例6における発光装置の断面図に示すような、蛍光体を分散させた樹脂部材の層を蛍光体ごとに分離した発光装置70のような構造でも良い。
【0115】
発光装置70は、基体65と、その表面に形成された電極66,67と、電極66,67に電気的に接続された上記半導体発光素子64と、半導体発光素子64を封止する長波長蛍光部材71(シリコーン樹脂69A及び該シリコーン樹脂69A中に分散した黄色蛍光体20(αサイアロン蛍光体)からなる)と、長波長蛍光部材71を覆うように形成された青色蛍光部材72(シリコーン樹脂69B及び該シリコーン樹脂69B中に分散した青色蛍光体11(JEM相蛍光体)からなる)と、シリコーン樹脂69A及び69Bが注入される範囲を制限するとともに、そのシリコーン樹脂と接する表面がミラー状であって光を有効に取り出すための枠68と、からなる。ここで、長波長蛍光部材71は本発明の第2の部材として、青色蛍光部材72は本発明の第1の部材として、それぞれ形成されるものである。
【0116】
ここで、図16では、長波長蛍光部材71には、黄色蛍光体20を分散させたが、青色より長波長の発光色を有する赤色蛍光体、緑色蛍光体、その他の緑色、黄色、赤色蛍光体のうちの少なくとも一つを合わせて分散してもよい。
【0117】
本発明においては、第2の部材がさらに複数の部材からなり、該複数の部材において、それぞれ分散させた第2の蛍光体の種類が異なっていても良い。すなわち、青色蛍光部材72と長波長蛍光部材71との2層とせずに、長波長蛍光部材71をさらに多層に分け、それぞれ別の蛍光体材料を分散させてもよい。例えば長波長蛍光部材を2層に分け、半導体発光素子64に近い側から赤色蛍光体を分散させた層、黄色蛍光体を分散させた層としてもよい。また、例えば長波長蛍光部材を3層に分け、半導体発光素子64に近い側から赤色蛍光体を分散させた層、黄色蛍光体を分散させた層、緑色蛍光体を分散させた層としてもよい。
【0118】
(半導体発光素子)
図6を例に示して説明すると、発光装置60に必要な半導体発光素子64としては、たとえばGaN系半導体(典型的には、少なくともGaとNとを含み、必要に応じてAl、In及びn型ドーパント、p型ドーパントなどを用いた半導体)よりなり、活性層がInGaN系材料であるLEDを用いることができる。
【0119】
半導体発光素子の励起光の発光波長は、発光ピーク波長で、JEM相蛍光体の励起スペクトルのピーク波長を含む350nm以上が望ましく、特に、半導体発光素子として好ましく用いられるInGaN系半導体発光素子において電気・光変換効率が良好な、発光ピーク波長390nm以上420nm以下のものが望ましい。以下に示す実施例においては発光ピーク波長が405nmのLEDを半導体発光素子として用いた。また、本発明においては、半導体発光素子の一方の面にp型電極及びn型電極を有しているものを用いることもできる。
【実施例】
【0120】
以下の実施例においては、下記の測定方法を用いた。
発光ピーク波長、発光スペクトル半値全幅および励起スペクトル
蛍光体粉末に対して積分球を用いて全光束発光スペクトル測定及び光吸収スペクトル測定を行った(参考文献:照明学会誌 第83巻 第2号 平成11年 p87−93、NBS標準蛍光体の量子効率の測定、大久保和明 他著)。測定には、分光光度計F4500型(HITACHI製)を用いた。光吸収率は、厚さ2mmのセルに圧着した蛍光体粉末の反射率を、積分球を用いて求めた後、1から反射率を引いた値として求めている。
【0121】
蛍光体の色度変化
スペクトル測定装置MCPD7000(大塚電子製)を用いて色度座標を測定し、0℃から100℃の色度変化を評価した。
【0122】
実施例1
次に、実施例1の発光装置60を、断面図である図6を用いて説明する。
【0123】
発光装置60は、基体65と、基体65の表面に形成された電極66,67と、電極66,67に電気的に接続された半導体発光素子64と、半導体発光素子64を封止するシリコーン樹脂69と、該シリコーン樹脂69中に分散した青色蛍光体11及び黄色蛍光体20と、シリコーン樹脂69が注入される範囲を制限するとともに、そのシリコーン樹脂69と接する表面がミラー状であって光を有効に取り出すための枠68と、からなる。電極66,67は、基体65の上面から実装面である下面まで立体的に引き回されている。ここで、青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体20は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されている。
【0124】
青色蛍光体11としては、前述の青色蛍光体(a)を用い、黄色蛍光体20としては、組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体を用いた。発光装置の発光色が白色となるように、両蛍光体の混合比率(質量比)を20:6としてシリコーン樹脂69中に分散した。
【0125】
JEM相蛍光体である青色蛍光体11は、波長590nm(黄色)における光吸収率が表2に示すように0.129と小さいため、組み合わせる黄色蛍光体20からの蛍光の吸収が少なく、青色蛍光体11自体の発光効率も大きい。そのため、図5に示すように、半導体発光素子64の駆動電流40mAにおける発光装置の光度として1820ミリカンデラが得られた。
【0126】
本発明者らは、さまざまな蛍光体に関して検討した結果、本実施例に用いるEu賦活αサイアロン蛍光体がこれらの条件を満たし好適であることを見出した。その中でも、本実施例では、組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体からなる黄色蛍光体20を用いた。この蛍光体は、発光ピーク波長が約590nmであり、発光スペクトル半値全幅が約90nm以上と広いという特徴を有する。また、励起スペクトル(すなわち励起光の波長を変化させたときの蛍光強度分布)は、近紫外領域において強いピークを有している。
【0127】
本実施例では、青色蛍光体による黄色の光吸収が少ないこと、JEM相蛍光体である青色蛍光体自体の発光効率が良好なことに加え、蛍光体の種類を2種類しか使用せず蛍光体の粒子の樹脂への分散量を少なくできるため、光度を大きくすることができた。
【0128】
図7は、実施例1の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の2種の蛍光体を混合して用いた発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光は、色度座標x=0.32、色度座標y=0.35の昼光色を示した。自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは88と高かった。
【0129】
本実施例の発光装置は、下記のような利点も有している。半導体発光素子として、視感度の低い発光ピーク波長405nmのLEDを用い、発光装置からの可視光の発光を、もっぱら蛍光体のみで行っているため、励起光源であるLEDの個体差やLEDと蛍光体との発光強度のバランスずれによる発光スペクトルのばらつきが小さく、その結果として色度が安定している。また、本実施例では、比重などの物理的特質が類似した蛍光体を混合しているため、樹脂中に蛍光体をほぼ均一に分散させることが可能であり、発光方向及び発光装置間の発光色のばらつきが小さい。
【0130】
さらに、青色蛍光体11、黄色蛍光体20が共に酸窒化物蛍光体であるシリコン酸窒化物の一種であり、駆動時の温度変化による発光効率の変動が小さいため、0℃から100℃という広い駆動温度範囲における色度の変化が後述する比較例1の酸化物蛍光体を用いた発光装置に比べて1/6〜1/4であり、目視上ほとんど色調の温度変化のない発光装置が得られた。
【0131】
比較例1
図8は、比較例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。従来から用いられている発光装置の一例として、青色発光ダイオードと、青色発光ダイオードから発する励起光によって黄色の蛍光を発するYAG:Ce3+蛍光体とを組み合わせたものがある(特許文献1)。この構成を有する比較例1の発光装置の発光スペクトルを図8に示す。この場合、発光ダイオードから発する青色光とYAG:Ce3+蛍光体から発する黄色とがちょうど補色の関係となっているため、擬似的に白色に見える発光を示すが、青色光の発光スペクトル半値全幅が狭いため、500nm付近に発光強度の落ち込みがある。このため、自然光とは異なる、不自然な発光スペクトルとなり、平均演色性評価数Raは84と本実施例に比べ低い。
【0132】
比較例2
本実施例の青色蛍光体11を、やや長波長光吸収率の高い前述の青色蛍光体(d)で置き換えた発光装置を比較例2として作製した。半導体発光素子64の駆動電流40mAで光度760ミリカンデラ(実施例1の42%)であり、発光色の色度座標x=0.35、色度座標y=0.36となった。この理由としては、前述の青色蛍光体(d)の光吸収率が黄色の波長において青色蛍光体(a)より高いため、黄色の蛍光が減衰する影響と、青色蛍光体(d)の発光効率自体が青色蛍光体(a)より低い影響が、光度の減少については合成されて働き、色度の変化については打ち消しあったためであると考えられる。また、5個の発光装置のサンプルを作ったところ、サンプル間の色度のばらつきが実施例1に比べて大きかった。
【0133】
実施例2
図9は、実施例2における発光装置の断面図である。次に、さらに自然な発光が得られる、発光装置60Bの断面図を図9に示す。ただし図6と同一の構成部分については、同一の符号を用いており、蛍光体だけが異なる。
【0134】
シリコーン樹脂69には、発光色が白色となるように3種類の蛍光体を分散している。すなわち、青色蛍光体11として前述の青色蛍光体(a)、及び先に示した黄色蛍光体21として、組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体に加え、赤色蛍光体30としては、Eu賦活CaAlSiN3蛍光体を少量混合し、その混合比率(質量比)は20:6:2とした。ここで、青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体21および赤色蛍光体30は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されている。
【0135】
本実施例で用いた赤色蛍光体30は非常に発光効率が高いため、添加量は蛍光体の量の総和の10%程度としている。そのため、赤色蛍光体による励起光の吸収や蛍光の散乱が少なく、発光装置の光度の低下はほとんど見られなかった。
【0136】
赤色蛍光体30の発光スペクトル半値全幅は約95nmであり、青色蛍光体11、黄色蛍光体21のみによっては十分に得られなかった赤色可視光領域の発光を行うことによって平坦な発光スペクトルを得ることができる。図10は、実施例2の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の3種の蛍光体を混合した発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光は、色度座標x=0.37、色度座標y=0.39の白色を示し、その光度は1520ミリカンデラ(半導体発光素子64の駆動電流40mA時)であった。この発光スペクトルからわかるように、全可視光の波長領域にわたり均一な発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは96と高かった。このように良好な演色性を得るためには、赤色蛍光体30の発光スペクトル半値全幅が80nmより広いことが望ましい。上記の赤色蛍光体30の発光スペクトル半値全幅は95nmであった。
【0137】
比較例3
3種類の蛍光体を用いた従来技術の比較例として、実施例2における青色蛍光体11、黄色蛍光体21、赤色蛍光体30を、青色蛍光体であるBaMgAl10O17:Eu2+、緑色蛍光体であるSrAl2O4:Eu2+、赤色蛍光体である0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn4+に置き換えた発光装置を作製した。図11は、比較例3の発光装置の発光スペクトルを示す図である。上記の場合の発光スペクトルは図11のようなものが得られ、色度座標x=0.35,色度座標y=0.37の昼白色が得られた。発光スペクトルからも分かるように、この場合の平均演色性評価数Raは60と低かった。比較例3の発光装置の光度は1120ミリカンデラ(半導体発光素子64の駆動電流40mA時)であった。
【0138】
実施例3
次に、3種類の蛍光体を用いて、より温かみのある自然な発光が得られる実施例3の発光装置を作製した。発光装置は、図9に準じて説明すると、青色蛍光体11を青緑色蛍光体に置き換え、黄色蛍光体21として組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体、赤色蛍光体30として、Eu賦活CaAlSiN3蛍光体を用い、各蛍光体及びその混合比率(質量比)を変更しただけである。
【0139】
本実施例では、第1の蛍光体としてのJEM相蛍光体において、Laを含まずにCeの組成比x=1とした青緑色蛍光体を用いた。この発光ピーク波長は約505nmであり、発光スペクトル半値全幅は、青色から青緑色で発光する他の蛍光体ではあまり見られない約120nmという広い値を有する。このため、このJEM相蛍光体は、演色性に優れた発光装置の作製に非常に有用である。また、青緑色蛍光体の光吸収率は、本発明における第1の波長としての505nmに対して補色の関係にある波長580nmで21%、波長650nmで18%であった。
【0140】
また、黄色蛍光体21としての組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体は、発光ピーク波長が580nm、発光スペクトル半値全幅が約90nmと広い。
【0141】
さらに、発光スペクトルを自然光に近づけるため、赤色蛍光体30として、Eu賦活CaAlSiN3蛍光体を添加した。発光色を温かみのある色調とするために、実施例2に比べ青色蛍光体の代わりである青緑蛍光体の混合比率(質量比)を約50%減らし、赤色蛍光体の混合比率(質量比)を約25%増加した。すなわち、青緑色:黄色:赤色の混合比率(質量比)を10:6:2.5とした。
【0142】
図12は、実施例3の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の3種の蛍光体を混合して用いた発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光は、色度座標x=0.43、色度座標y=0.41の、いわゆる電球色を示した。この発光スペクトルからわかるように、標準光源Aの発光スペクトルに非常に近い発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは94と高かった。
【0143】
また、本実施例で用いた赤色蛍光体は非常に発光効率が高いため、わずかに添加量を増やすことによって赤色領域の発光強度を増大できた。また、比較的視感度及び発光効率が低い青色蛍光体の混合比率(質量比)を低くしたため、比較的視感度の低い赤色成分が多く、全体の光度の低い電球色型発光スペクトルであるにも関わらず、発光装置としての光度が実施例3よりも低下することはなかった。
【0144】
実施例4
次に、さらに自然な発光が得られる実施例4の発光装置を作製した。
【0145】
図13は、実施例4における発光装置の断面図であり、発光装置60Cの断面図を示している。ただし、図6と同一の構成部分については、同一の符号を用いている。本実施例の発光装置においては、発光色が白色となるように4種類の蛍光体が分散している。すなわち、青色蛍光体11として前述の青色蛍光体(a)、黄色蛍光体20として組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体、及び赤色蛍光体30としてEu賦活CaAlSiN3蛍光体を加え、わずかに緑色蛍光体40としてEu賦活βサイアロン蛍光体を混合した。その混合比率(質量比)は20:6:2:2である。ここで、青色蛍光体11は本発明の第1の蛍光体として、黄色蛍光体20、赤色蛍光体30および緑色蛍光体40は本発明の第2の蛍光体として、それぞれ形成されている。
【0146】
緑色蛍光体40は紫外から紫色の励起光により波長約540nmの強い発光を示した。この蛍光体の発光スペクトル半値全幅は、約55nmである。緑色蛍光体40は、青色蛍光体11と黄色蛍光体20との発光スペクトルの谷間を埋めるのが目的であるため、45nm以上の発光スペクトル半値全幅があればよい。本実施例の場合は、逆にあまり緑色蛍光体40の発光スペクトル半値全幅が広いと、視感度の強い波長領域であるためにかえって発光スペクトルの平坦性がなくなり、不自然な発光となる場合がある。なお、緑色蛍光体40の発光ピーク波長としては、510nm以上565nm以下であることが望ましく、520nm以上550nm以下であればより良い。
【0147】
図14は、実施例4の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の4種の蛍光体を混合した発光装置の発光スペクトルを示している。青色蛍光体の発光スペクトルが短波長側に寄ったものを使用していることによりわずかに生じた緑領域の発光の谷間を、上記緑色蛍光体でカバーすることができた。
【0148】
この発光装置の発光は、色度座標x=0.35、色度座標y=0.37の白色を示した。発光スペクトルからわかるように可視光の全波長領域にわたり均一な発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは98と高かった。
【0149】
また、本実施例で用いた緑色蛍光体は非常に発光効率が高い上、視感度の高い波長領域に発光ピーク波長を有するため、その添加量は蛍光体量の総和の10%程度とした。そのため、蛍光体量を増加させることによる発光装置としての光度の低下は実施例1及び2に比べてもほとんど見られなかった。
【0150】
実施例5
次に、より温かみのある自然な発光が得られる実施例5の発光装置を作製した。発光装置の断面図は、蛍光体を置換している点を除いて実施例4の図13と同じである。
【0151】
シリコーン樹脂69には、発光色が電球色となるように4種類の蛍光体、すなわち青色蛍光体11の代わりに青緑色蛍光体を用い、黄色蛍光体20として組成式(Ca0.93Eu0.07)0.25Si11.25Al0.75ON15.75のαサイアロン蛍光体、赤色蛍光体30としてEu賦活CaAlSiN3蛍光体に加え、Eu賦活βサイアロンからなる緑色蛍光体40が分散している。
【0152】
温かみのある色調とするために、実施例4に比べ青色(青緑色)蛍光体の混合比率(質量比)を約50%減らし、緑色蛍光体の混合比率(質量比)を約20%減らし、赤色・黄色蛍光体の混合比率(質量比)を約10%増加して、青緑色:黄色:赤色:緑色蛍光体の混合比率(質量比)を10:6.6:2.2:1.6とした。
【0153】
図15は、実施例5の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の4種の蛍光体を混合した発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光色は、色度座標x=0.45、色度座標y=0.42の電球色を示した。発光スペクトルからわかるように、視感度の低い励起光の波長を除けば、標準光源Aの発光スペクトルに非常に近い発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは97と非常に高かった。
【0154】
また、本実施例で用いた赤色・黄色蛍光体は非常に発光効率が高いため、わずかに添加量を増やすことによって赤色・黄色の発光強度を増大できた。また、電球色とするために青色の混合比率(質量比)を減らしたため、白色に比べて視感度の低い光の割合が多い電球色であるにも関わらず、発光装置としての光度の低下は実施例4に比べほとんど見られなかった。
【0155】
実施例6
図16は、実施例6における発光装置の断面図である。次に、蛍光体を分散させる樹脂部材の層を蛍光体ごとに分離した発光装置70を、断面図である図16を用いて説明する。
【0156】
発光装置70は、基体65と、その表面に形成された電極66,67と、電極66,67に電気的に接続された上記半導体発光素子64と、半導体発光素子64を封止する長波長蛍光部材71(シリコーン樹脂69A及び該シリコーン樹脂69A中に分散した黄色蛍光体20(αサイアロン蛍光体)からなる)と、長波長蛍光部材71を覆うように形成された青色蛍光部材72(シリコーン樹脂69B及び該シリコーン樹脂69B中に分散した青色蛍光体11(JEM相蛍光体)からなる)と、シリコーン樹脂69A及び69Bが注入される範囲を制限するとともに、そのシリコーン樹脂と接する表面がミラー状であって光を有効に取り出すための枠68と、からなる。
【0157】
本実施例では、青色蛍光体11として前述の青色蛍光体(a)、黄色蛍光体20として組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体を用いた。
【0158】
このように、青色蛍光部材72と長波長蛍光部材71とを分離し、半導体発光素子64に近い部分に長波長蛍光部材71を配置することにより、励起光強度の高い部分に配置された黄色蛍光体20から強い黄色の光が発する。しかし、その外側に青色蛍光部材72があるため、その部分において黄色の光吸収率が高いと黄色の光が発光装置の外部に放出されにくくなり、全体としての光度が減少する。従ってこのような発光装置の構造とする場合は、青色蛍光体及び黄色蛍光体を混合して樹脂に分散させた実施例1よりもさらに青色蛍光体11の黄色における光吸収率の低減が重要になる。長波長光吸収率を一定値以下に抑えた青色蛍光部材を本実施例のように配置することにより、配置による効果(黄色蛍光体による青色から青緑色の光吸収が抑制される効果)と長波長光吸収率低減による効果(青色蛍光体による黄色の光吸収が抑制される効果)の相乗効果が得られるため、非常に発光効率の高い発光装置が得られ、その光度は半導体発光素子64の駆動電流40mAで2020ミリカンデラであった。
【0159】
実施例7
図17は、実施例7における発光装置の断面図である。次に、さらに明るくかつ自然な発光が得られる、発光装置60Cの断面図を図17に示す。ただし図9と同一の構成部分については、同一の符号を用いており、蛍光体だけが異なる。
【0160】
シリコーン樹脂69には、発光色が白色となるように3種類の蛍光体を分散している。すなわち、青色:黄色:赤色の蛍光体混合比率(質量比)は20:6:2とした。
【0161】
黄色蛍光体22には、Eu賦活組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nのαサイアロン蛍光体(m=2.0、n=0.5m)を用いた。この蛍光体は、実施例2等で用いた組成式Ca0.93Eu0.07Si9Al3ON15のαサイアロン蛍光体の発光ピークが590nmであるのに対し、発光ピーク波長が573から577nmと短い。この蛍光体も発光スペクトルの半値全幅は90nm以上と広い。図18は、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nのEu賦活αサイアロン蛍光体(m=2.0、n=0.5m)の励起発光スペクトルを示す図であり、図18には、上記の蛍光体の代表的な励起発光スペクトルを示している。黄色蛍光体22を用いた場合、発光ピーク波長が、ヒトの視感度の高い領域に近いため、光度を高くしやすいという特徴を持つ。
【0162】
図19は、実施例7の発光装置の発光スペクトルを示す図であり、上記の3種の蛍光体を混合した発光装置の発光スペクトルを示している。この発光装置の発光は、色度座標x=0.36、色度座標y=0.39の白色を示し、その光度は1720ミリカンデラ(半導体発光素子64の駆動電流40mA時)であった。この発光スペクトルからわかるように、全可視光の波長領域にわたり均一な発光が得られており、自然な発光の目安となる平均演色性評価数Raは94と高かった。このように良好な演色性と高い光度を両立するためには、本実施例の黄色蛍光体を用いることが望ましいことが分かった。
【0163】
(その他の実施可能形態)
各実施例において、蛍光体をシリコーン樹脂に分散させたが、エポキシ樹脂などの他の樹脂としてもよく、ガラスなどの透明材料としてもよい。緑色から赤色の蛍光体としては実施の形態に示したものだけでなく、比較例に示したものを加えてもよく、また記載した以外のもの、例えばTAG(TbAl3O12)蛍光体などを用いても良い。
【0164】
また、各実施例においては、半導体発光素子としてLEDを用いたが、半導体レーザを用いても良い。また、励起光の波長についても、半導体発光素子として良好な電気・光変換効率を有すると共に、蛍光体の励起スペクトルのピーク波長近傍となる波長であればよい。
【0165】
なお、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、JEM相蛍光体よりも長波長の光を発する第2の蛍光体と、第2の蛍光体の発光ピーク波長において光吸収率が低いJEM相蛍光体とを組み合わせた発光装置を提供し、その結果として装置全体としての発光効率が優れた白色発光装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の励起スペクトルの測定結果を示す図である。
【図2】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の発光スペクトルの測定結果を示す図である。
【図3】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収スペクトルの測定結果を示す図である。
【図4】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収率と発光効率との関係を示す図である。
【図5】実施の最良の形態において説明されるJEM相蛍光体の光吸収率と半導体発光素子の駆動電流40mAにおける発光装置の光度との関係を示す図である。
【図6】実施例1における発光装置の断面図である。
【図7】実施例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図8】比較例1の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図9】実施例2における発光装置の断面図である。
【図10】実施例2の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図11】比較例3の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例3の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例4における発光装置の断面図である。
【図14】実施例4の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図15】実施例5の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図16】実施例6における発光装置の断面図である。
【図17】実施例7における発光装置の断面図である。
【図18】組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nのEu賦活αサイアロン蛍光体(m=2.0、n=0.5m)の励起発光スペクトルを示す図である。
【図19】実施例7の発光装置の発光スペクトルを示す図である。
【図20】実施の最良の形態において説明される組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-nで表されるEu賦活αサイアロン蛍光体の発光効率と該組成式中のmの値との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0168】
11 青色蛍光体、20,21,22 黄色蛍光体、30 赤色蛍光体、40 緑色蛍光体、60,60B,60C,70 発光装置、65 基体、66,67 電極、64 半導体発光素子、68 枠、69,69A,69B シリコーン樹脂、71 長波長蛍光部材、72 青色蛍光部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の蛍光を発する蛍光体であって、
第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であり、
主たる結晶相がJEM相であることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表され、
前記MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、
前記xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、
前記y1は5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、
前記y2は10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、
前記zは0.8≦z≦1.2を満たす実数であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
励起光を発する半導体発光素子と、
前記励起光を吸収して蛍光を発する第1の蛍光体と、
前記励起光を吸収して前記第1の蛍光体から発する蛍光より長波長の蛍光を発する一種類又は複数種類の第2の蛍光体を備え、
前記第2の蛍光体の主たる一種類が発する蛍光の発光ピーク波長において、前記第1の蛍光体の光吸収率が30%以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光体が、請求項1又は2に記載の蛍光体であることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の蛍光体の発光ピーク波長が450nm以上510nm以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1の蛍光体の発光スペクトル半値全幅が80nm以上であることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1の蛍光体の発光の色度座標xが0.05以上0.25以下、色度座標yが0.02以上0.38以下であることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2の蛍光体の主たる一種類の発光ピーク波長が565nm以上605nm以下であることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2の蛍光体の主たる一種類の発光スペクトル半値全幅が、80nm以上であることを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2の蛍光体が酸窒化物蛍光体を含むことを特徴とする請求項3から9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第2の蛍光体が、Eu賦活αサイアロン蛍光体を含むことを特徴とする請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記第2の蛍光体が、Liを含むEu賦活αサイアロンを含むことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第2の蛍光体が、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-n(1.5≦m≦2.5、n=0.5m)で表されるEu賦活αサイアロンを含むことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項14】
前記第2の蛍光体が、Eu賦活βサイアロン蛍光体を含むことを特徴とする請求項10に記載の発光装置。
【請求項15】
前記第2の蛍光体が窒化物蛍光体を含むことを特徴とする請求項3から9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記第2の蛍光体が、Eu賦活CaAlSiN3を含むことを特徴とする請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記半導体発光素子、前記第2の蛍光体が分散された第2の部材、前記第1の蛍光体が分散された第1の部材がこの順に配置されたことを特徴とする請求項3から16のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項18】
前記第2の部材がさらに複数の部材からなり、前記複数の部材は、それぞれ分散された第2の蛍光体の種類が異なることを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項19】
前記励起光の発光ピーク波長が、350nm以上420nm以下であることを特徴とする請求項3から18のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項20】
前記発光装置の発光の色度座標xが0.22以上0.44以下、色度座標yが0.22以上0.44以下であるか、又は前記発光装置の発光の色度座標xが0.36以上0.5以下、色度座標yが0.33以上0.46以下であることを特徴とする請求項3から19のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項1】
第1の波長の蛍光を発する蛍光体であって、
第1の波長より長波長であって第1の波長に対して補色の関係にある波長における光吸収率が30%以下であり、
主たる結晶相がJEM相であることを特徴とする蛍光体。
【請求項2】
組成式M1-xCexAl(Siy1-zAlz)Ny2-zOzで表され、
前記MはLa、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された少なくとも1種の元素を示し、
前記xは0.1≦x≦1を満たす実数であり、
前記y1は5.9≦y1≦6.1を満たす実数であり、
前記y2は10.0≦y2≦10.7を満たす実数であり、
前記zは0.8≦z≦1.2を満たす実数であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
励起光を発する半導体発光素子と、
前記励起光を吸収して蛍光を発する第1の蛍光体と、
前記励起光を吸収して前記第1の蛍光体から発する蛍光より長波長の蛍光を発する一種類又は複数種類の第2の蛍光体を備え、
前記第2の蛍光体の主たる一種類が発する蛍光の発光ピーク波長において、前記第1の蛍光体の光吸収率が30%以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光体が、請求項1又は2に記載の蛍光体であることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の蛍光体の発光ピーク波長が450nm以上510nm以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1の蛍光体の発光スペクトル半値全幅が80nm以上であることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1の蛍光体の発光の色度座標xが0.05以上0.25以下、色度座標yが0.02以上0.38以下であることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第2の蛍光体の主たる一種類の発光ピーク波長が565nm以上605nm以下であることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第2の蛍光体の主たる一種類の発光スペクトル半値全幅が、80nm以上であることを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2の蛍光体が酸窒化物蛍光体を含むことを特徴とする請求項3から9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第2の蛍光体が、Eu賦活αサイアロン蛍光体を含むことを特徴とする請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記第2の蛍光体が、Liを含むEu賦活αサイアロンを含むことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第2の蛍光体が、組成式Li0.87mSi12-m-nAlm+nOnN16-n(1.5≦m≦2.5、n=0.5m)で表されるEu賦活αサイアロンを含むことを特徴とする請求項11に記載の発光装置。
【請求項14】
前記第2の蛍光体が、Eu賦活βサイアロン蛍光体を含むことを特徴とする請求項10に記載の発光装置。
【請求項15】
前記第2の蛍光体が窒化物蛍光体を含むことを特徴とする請求項3から9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記第2の蛍光体が、Eu賦活CaAlSiN3を含むことを特徴とする請求項15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記半導体発光素子、前記第2の蛍光体が分散された第2の部材、前記第1の蛍光体が分散された第1の部材がこの順に配置されたことを特徴とする請求項3から16のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項18】
前記第2の部材がさらに複数の部材からなり、前記複数の部材は、それぞれ分散された第2の蛍光体の種類が異なることを特徴とする請求項17に記載の発光装置。
【請求項19】
前記励起光の発光ピーク波長が、350nm以上420nm以下であることを特徴とする請求項3から18のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項20】
前記発光装置の発光の色度座標xが0.22以上0.44以下、色度座標yが0.22以上0.44以下であるか、又は前記発光装置の発光の色度座標xが0.36以上0.5以下、色度座標yが0.33以上0.46以下であることを特徴とする請求項3から19のいずれか1項に記載の発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−204730(P2007−204730A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217836(P2006−217836)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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