説明

蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システム

【課題】簡単な構成で蛍光を効率よく受光することができる小型の蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システムを提供する。
【解決手段】蛍光物質に励起光を照射する発光部と、蛍光物質の発光する蛍光を受光して電気信号に変換する受光部と、を有する蛍光検出ユニットにおいて、蛍光を反射するとともに励起光は反射しない分光反射特性を持つ反射部材を有し、蛍光を反射部材に反射させて受光部に導光することを特徴とする蛍光検出ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これは、μ−TAS(Micro total Analysis System:マイクロ総合分析システム)、バイオリアクタ、ラブ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。現実には遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、自動化、高速化および簡便化されたマイクロ総合分析システムは、コスト、必要試料量、所要時間のみならず、時間および場所を選ばない分析を可能とすることによる恩恵は多大と言える。
【0003】
また、本出願人は、マイクロチップの微細流路内に試薬などを封入し、マイクロポンプによって微細流路に液体を注入して試薬などを移動させ、反応部、次いで検出部へ流すことにより、血液など検体との反応結果を測定することができる反応検出装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。このような反応検出装置では、マイクロチップの検出部に蛍光検出ユニットの発光部から励起光を照射し、試薬に含まれる蛍光物質の発光する非常に微弱な蛍光を蛍光検出ユニットの受光部で検出するように構成されている。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2006−149379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の蛍光検出ユニットの例を図10に示す。
【0005】
1はマイクロチップであり、検出部19で試薬と検体の反応結果を測定する。発光部160から照射される励起光は、スリット157を介してレンズ155に入射し、レンズ155で集光された励起光は検出部19を照射する。検出部19で発生する蛍光は球状の配光分布を持ち、図10に矢印で示すように一部が受光部161に入射する。蛍光を受光部161に効率よく入射させるためにはできるだけ検出部19の近くに受光部161を配置する必要がある。
【0006】
しかしながら、蛍光物質を励起する励起光と、蛍光の波長の差は数nm〜数10nmと非常に小さい。そのため、励起光と蛍光を分離するために急峻な遮断特性を持つ励起光カットフィルタを受光部161と検出部19の間に配置する必要がある。このようなフィルタは製造が困難なため大型であり、検出部19の近くに受光部161を配置することができない。また、このようなフィルタを用いても受光部161に入射する励起光を完全に除去することは難しい。そのため、蛍光を効率よく受光部161に入射させることが難しかった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で蛍光を効率よく受光することができる小型の蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0009】
1.
蛍光物質に励起光を照射する発光部と、
前記励起光を照射された前記蛍光物質の発光する蛍光を受光して電気信号に変換する受光部と、
を有する蛍光検出ユニットにおいて、
前記励起光の波長領域の反射率より前記蛍光の波長領域の反射率が高い分光反射特性を持つ反射部材を有し、
前記蛍光を前記反射部材に反射させて前記受光部に導光することを特徴とする蛍光検出ユニット。
【0010】
2.
前記発光部は、前記受光部の光軸に対し斜め方向から前記蛍光物質に励起光を照射するように配置されていることを特徴とする1に記載の蛍光検出ユニット。
【0011】
3.
前記発光部は、前記蛍光物質に対して前記受光部と同じ側に配置されていることを特徴とする1または2に記載の蛍光検出ユニット。
【0012】
4.
前記発光部は、前記蛍光物質で正反射した前記励起光が前記反射部材に入射しない角度から前記励起光を照射するように構成されていることを特徴とする3に記載の蛍光検出ユニット。
【0013】
5.
前記蛍光検出ユニットは、前記蛍光物質で正反射した前記励起光を正反射する反射板を有し、前記反射板で正反射した前記励起光を前記蛍光物質に再度照射することを特徴とする3または4に記載の蛍光検出ユニット。
【0014】
6.
前記発光部は、前記蛍光物質を挟んで前記受光部と反対側に配置されていることを特徴とする1または2に記載の蛍光検出ユニット。
【0015】
7.
前記発光部は、前記蛍光物質を透過した前記励起光が前記反射部材に入射しない角度から前記励起光を照射するように構成されていることを特徴とする6に記載の蛍光検出ユニット。
【0016】
8.
前記蛍光検出ユニットは、前記蛍光物質を透過した前記励起光を正反射する反射板を有し、前記反射板で正反射した前記励起光を前記蛍光物質に再度照射することを特徴とする6または7に記載の蛍光検出ユニット。
【0017】
9.
1乃至8の何れか1項に記載の蛍光検出ユニットを有し、
前記蛍光検出ユニットによって蛍光物質に励起光を照射し、前記蛍光物質が発光した蛍光を受光して測定することを特徴とする反応検出装置。
【0018】
10.
9に記載の反応検出装置と、
蛍光物質を含む試薬と反応させた検体を前記蛍光検出ユニットにより測定可能なマイクロチップと、
を有することを特徴とするマイクロチップ検査システム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、励起光を照射した蛍光物質から発生する蛍光を反射するとともに励起光は反射しない分光反射特性を持つ反射部材に反射させて受光部に導光するので、簡単な構成で蛍光だけを受光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態における反応検出装置80の外観図である。
【0022】
反応検出装置80はマイクロチップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。
【0023】
反応検出装置80の筐体82には挿入口83があり、マイクロチップ1を挿入口83に差し込んで筐体82の内部にセットするようになっている。なお、挿入口83はマイクロチップ1を挿入時に挿入口83に接触しないように、マイクロチップ1の厚みより十分高さがある。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子である。
【0024】
検査担当者は図1の矢印方向にマイクロチップ1を挿入し、操作パネル87を操作して検査を開始させる。反応検出装置80の内部では、マイクロチップ1内の反応の検査が自動的に行われ、検査が終了すると液晶パネルなどで構成される表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶することができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。
【0025】
検査担当者は、検査終了後、マイクロチップ1を挿入口83から取り出す。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の一例について、図2を用いて説明する。
【0027】
図2(a)、図2(b)はマイクロチップ1の外観図である。図2(a)において矢印は、反応検出装置80にマイクロチップ1を挿入する挿入方向であり、図2(a)は挿入時にマイクロチップ1の下面となる面を図示している。図2(b)はマイクロチップ1の側面図である。
【0028】
図2(a)の窓111はマイクロチップ1内部の検出部19で行われる検体と蛍光物質を含む試薬の反応を光学的に検出するために設けられており、ガラスや樹脂などの透明な部材で構成されている。110a、110b、110c、110d、110eは内部の微細流路に連通する駆動液注入部であり、各駆動液注入部110から駆動液を注入し内部の試薬等を駆動する。113はマイクロチップ1に検体を注入するための検体注入部である。
【0029】
図2(b)に示すように、マイクロチップ1は溝形成基板108と、溝形成基板108を覆う被覆基板109から構成されている。
【0030】
マイクロチップ1を構成する溝形成基板108と被覆基板109に用いる材料について説明する。
【0031】
マイクロチップ1は、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐候性、コストなどに優れていることが望まれており、マイクロチップ1の構造、用途、検出方法などを考慮して、マイクロチップ1の材料を選択する。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0032】
特に、多数の測定検体、とりわけ汚染、感染のリスクのある臨床検体を対象とするチップは、ディスポーザブルタイプであることが望ましい。そのため、量産可能であり、軽量で衝撃に強く、焼却廃棄が容易なプラステック樹脂、例えば、透明性、機械的特性および成型性に優れて微細加工がしやすいポリスチレンが好ましい。また、例えば分析においてチップを100℃近くまで加熱する必要がある場合には、耐熱性に優れる樹脂(例えばポリカーボネートなど)を用いることが好ましい。また、タンパク質の吸着が問題となる場合にはポリプロピレンを用いることが好ましい。樹脂やガラスなどは熱伝導率が小さく、マイクロチップの局所的に加熱される領域に、これらの材料を用いることにより、面方向への熱伝導が抑制され、加熱領域のみ選択的に加熱することができる。
【0033】
本実施形態では、検出部19において、蛍光物質の検出を光学的に行うので、少なくともこの部位の基板は光透過性の材料(例えばアルカリガラス、石英ガラス、透明プラスチック類)を用い、光が透過するようにする必要がある。本実施形態においては、検出部の窓111は光透過性の材料が用いられていて、窓111を光が透過するようになっている。
【0034】
本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1には、検査、試料の処理などを行うための、微小な溝状の流路(微細流路)および機能部品(流路エレメント)が、用途に応じた適当な態様で配設されている。本実施形態では、これらの微細流路および流路エレメントによってマイクロチップ1内で行われる特定の遺伝子の増幅およびその検出を行う処理の一例を図2(c)を用いて説明する。なお、本発明の適用は図2(c)で説明するマイクロチップ1の例に限定されるものでは無く、様々な用途のマイクロチップ1に適用できる。
【0035】
図2(c)はマイクロチップ1内部の微細流路および流路エレメントの機能を説明するための説明図である。
【0036】
微細流路には、例えば検体液を収容する検体収容部121、試薬類を収容する試薬収容部120などが設けられており、場所や時間を問わず迅速に検査ができるよう、試薬収容部120には必要とされる試薬類、洗浄液、変性処理液などがあらかじめ収容されている。図2(c)において、試薬収容部120、検体収容部121および流路エレメントは四角形で表し、その間の微細流路は実線と矢印で表す。
【0037】
マイクロチップ1は、微細流路を形成した溝形成基板108と溝状の流路を覆う被覆基板109から構成されている。微細流路はマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば幅は数μm〜数百μm、好ましくは10〜200μmで、深さは25〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0038】
少なくともマイクロチップ1の溝形成基板108には、上記の微細流路が形成されている。被覆基板109は、少なくとも溝形成基板の微細流路を密着して覆う必要があり、溝形成基板の全面を覆っていても良い。なお、マイクロチップ1の微細流路には、例えば、図示せぬ送液制御部、逆流防止部(逆止弁、能動弁など)などの送液を制御するための部位が設けられ、逆流を防止し、所定の手順で送液が行われるようになっている。
【0039】
検体注入部113はマイクロチップ1に検体を注入するための注入部、駆動液注入部110はマイクロチップ1に駆動液11を注入するための注入部である。マイクロチップ1による検査を行うに先立って、検査担当者は検体を検体注入部113から注射器などを用いて注入する。図2(c)に示すように、検体注入部113から注入された検体は、連通する微細流路を通って検体収容部121に収容される。
【0040】
次に、駆動液注入部110aから駆動液11を注入すると、駆動液11は連通する微細流路を通って検体収容部121に収容されている検体を押し出し、増幅部122に検体を送り込む。
【0041】
一方、駆動液注入部110bから注入された駆動液11は、連通する微細流路を通って試薬収容部120aに収容されている蛍光物質を含む試薬を押し出す。試薬収容部120aから押し出された蛍光物質を含む試薬は増幅部122に駆動液11によって送り込まれる。このときの反応条件によっては、増幅部122の部分を所定の温度にする必要があり、後で説明するように反応検出装置80の内部で加熱または吸熱して所定の温度で反応させる。
【0042】
所定の反応時間の後、さらに駆動液11により増幅部122から送り出された反応後の検体を含む溶液は、検出部19に注入される。窓111から検出部19に励起光を照射すると、検体と反応した試薬が蛍光を発光するので蛍光の光量を測定することにより反応結果を計測することができる。
【0043】
図3は、本発明の第1の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す断面図、である。以下、同じ構成要素には同番号を付し、説明を省略する。
【0044】
反応検出装置80は、温度調節ユニット152、ポンプユニット92、パッキン96、パッキン97、流体タンク91などから構成される。図3はマイクロチップ1をそれぞれ温度調節ユニット152とパッキン97に密着させている状態である。図3に示すマイクロチップ1は、試薬の反応結果を測光する検出部19がマイクロチップ1の内部に1つ設けられている。
【0045】
温度調節ユニット152とマイクロチップ1は、モータ302、送りネジ301、トレイ300等からなる駆動部材により駆動され、紙面上下方向に移動可能である。初期状態において、駆動部材により温度調節ユニット152を、図3の状態からマイクロチップ1の厚み以上上昇させる。すると、マイクロチップ1は紙面左右方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83からトレイ300の図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。所定の位置までマイクロチップ1を挿入するとフォトインタラプタなどを用いたチップ検知部95がマイクロチップ1を検知し、オンになる。
【0046】
温度調節ユニット152は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1の面を所定の温度に調整するユニットである。
【0047】
次に、駆動部材303により温度調節ユニット152とトレイ300を下降させて、マイクロチップ1を温度調節ユニット152とパッキン97に密着させる。
【0048】
マイクロチップ1の検出部19では、検体とマイクロチップ1内に貯蔵された試薬が反応して、例えば呈色、発光、蛍光、混濁などをおこす。本実施形態では試薬の反応結果を測光するマイクロチップ1の検出部19を構成する溝形成基板108と被覆基板109は、光透過性の材料になっていて、試薬と検体の反応結果は、マイクロチップ1の検出部19で発光する蛍光を測光または測色することで解析することができる。
【0049】
蛍光検出ユニット15は発光部160、受光部161、スリット157、レンズ155、反射筒191から成り、マイクロチップ1の検出部19で発生する蛍光を検出できるように配置されている。蛍光検出ユニット15については後に詳しく説明する。
【0050】
ポンプユニット92は少なくとも一つのポンプ62を有している。ポンプ62の吸込側には、パッキン96が接続され、流体タンク91に充填された流体を吸い込むようになっている。一方、ポンプ62の吐出側にはパッキン97が接続されていて、吸い込んだ流体を、パッキン97を介してマイクロチップ1の流体注入部110からマイクロチップ1内に形成された微細流路に注入する。パッキン97はポンプユニット92とマイクロチップ1の間に挟まれ、ポンプ62の流体出口とパッキン97の開口部と流体注入部110とは連通している。このように、ポンプ62から、連通しているパッキン97を介して流体注入部110より流体を注入する。
【0051】
蛍光検出ユニット15の第1の実施形態について図4、図5を用いて説明する。図4は蛍光検出ユニット15の構成の第1の実施形態を示す断面図、図5は反射筒191の分光特性について説明するグラフである。
【0052】
図4は図3で説明した蛍光検出ユニット15を拡大し、光路を図示している。発光部160は検出部19を挟んで受光部161と反対側に配置されている。発光部160から照射される励起光は、スリット157を介してレンズ155に入射し、レンズ158で集光された励起光は検出部19を照射する。検出部19の蛍光物質を含む検体50は励起光により蛍光を発光する。
【0053】
蛍光はほぼ180度に亘って射出するので、受光部161に向けて図中矢印で示すように出射する。反射筒191の内壁に入射した蛍光は、反射して図4に示すように受光部161に入射する。反射筒191は本発明の反射部材である。
【0054】
図4(b)、図4(c)は反射筒191の光軸方向の断面形状の例であり、図4(b)のように円筒状、図4(c)のように角筒状など反射面が蛍光を受光部161に向けて反射するのであればどのような形状でも良い。
【0055】
図5(a)を用いて励起光と蛍光の分光特性について説明する。発光部160として例えば主波長555nmのLEDを用いたとき、励起光の分光特性は図5(a)に示すR1のようになる。このような励起光を蛍光物質(例えばTAMRA)に照射すると図5(a)にR2で示す分光特性の蛍光を発光する。蛍光の主波長は580nmであり、励起光との主波長の差であるストークスシフトλsは25nmである。検出部19から出射した光にはこのように蛍光と主波長の近い励起光が含まれている。本発明では、反射筒191の内壁に蛍光の波長領域を反射し励起光の波長領域では反射率が低い分光反射特性を持たせて蛍光だけが反射筒191の内壁に反射して受光部161に入射するようにしている。
【0056】
図5(b)は反射筒191の内壁の分光反射特性の例を示すグラフである。図中のF1が反射筒191の内壁の分光反射特性であり、蛍光の波長領域を反射する一方、550nm以下の波長をほとんど反射しない遮断特性を有している。本例は一例であり、使用する蛍光物質や励起光の波長に合わせて反射筒191の内壁の分光反射特性を決定すれば良い。
【0057】
このように、蛍光だけが反射筒191の内壁に反射して受光部161に入射するので、効率よく蛍光を受光することができる。
【0058】
次に、蛍光検出ユニット15の第2の実施形態について図6を用いて説明する。図6は蛍光検出ユニット15の構成の第2の実施形態を示す断面図である。
【0059】
第1の実施形態との違いは発光部160から検出部19に向けて斜め方向から励起光を照射し、検出部19を透過した励起光を反射する反射板192を設けた点である。
【0060】
発光部160は、受光部161の光軸Lに対し斜め方向から蛍光物質を含む検体50に励起光を照射する。θは発光部160の光軸Mと光軸Lのなす角度である。角度θは、検出部19を透過した励起光が反射筒191に入射しない角度に設定されている。反射板192は励起光の波長領域を反射し蛍光の波長領域では反射率が低い分光反射特性を持ち、検出部19を透過した励起光を正反射して再度検出部19を照射するように配置されている。
【0061】
発光部160から照射される励起光は、検出部19を照射し、検出部19の蛍光物質を含む検体50は励起光により蛍光を発光する。蛍光はほぼ180度に亘って射出するので第1の実施形態と同様に、受光部161に向けて図中矢印で示すように出射する。反射筒191の内壁は第1の実施形態と同様に蛍光の波長領域を反射し励起光の波長領域では反射率が低い分光反射特性を有するので、蛍光だけが図6に示すように反射して受光部161に入射する。
【0062】
このようにすると、検出部19に効率よく励起光を照射して励起される蛍光の量を増すとともに、受光部161に入射する励起光を減らすことができる。
【0063】
次に、検出部19に対して受光部161と同じ側から光を照射する蛍光検出ユニット15を用いる第3の実施形態について説明する。
【0064】
図7は、本発明の第3の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す斜視図、図8は、本発明の第3の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【0065】
反応検出装置80は、温度調節ユニット152、蛍光検出ユニット15、駆動液ポンプ92、パッキン90、駆動液タンク91、送りネジ301、ジョイント302、モータ300などから構成される。図7、図8はマイクロチップ1を温度調節ユニット152とパッキン90bに密着させている状態である。以下、図7、図8を用いて実施形態を説明する。
【0066】
温度調節ユニット152とマイクロチップ1は、図示せぬ駆動部材により駆動され、紙面上下方向に移動可能である。初期状態において、駆動部材により温度調節ユニット152を、図7の状態からマイクロチップ1の厚み以上上昇させる。すると、マイクロチップ1は図7の矢印A方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83から図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。所定の位置までマイクロチップ1を挿入するとフォトインタラプタなどを用いたチップ検知部95がマイクロチップ1を検知し、オンになる。
【0067】
温度調節ユニット152は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1の面を所定の温度に調整するユニットである。
【0068】
次に、駆動部材により温度調節ユニット152とマイクロチップ1を下降させて、マイクロチップ1を温度調節ユニット152とパッキン90bに密着させる。
【0069】
マイクロチップ1の検出部19では、検体と前記マイクロチップ1内に貯蔵された蛍光物質を含む試薬が反応し、励起光を照射すると蛍光をおこす。本実施形態では検出部19でおこる試薬の反応結果を、窓111から光学的に検出する。
【0070】
図7に示すマイクロチップ1は、試薬の反応結果を測光する検出部19がマイクロチップ1の内部に4つ設けられている例である。
【0071】
4つの検出部19a、19b、19c、19dは、図7に示す直線Fに沿って配設されている。検出部19a、19b、19c、19dの図示せぬ窓111a、111b、111c、111dは被覆基板109の面にそれぞれ設けられており、窓111a、111b、111c、111dを介して反応結果を光学的に検出できる。
【0072】
蛍光検出ユニット15は送りネジ301と螺合するネジ部を有し、送りネジ301が回転することにより図7の矢印B方向または逆方向に移動する。送りネジ301は直線Fと平行に配設されており、蛍光検出ユニット15が送りネジ301によって移動すると、検出部19a、19b、19c、19dのそれぞれの中心部に、蛍光検出ユニット15の図示せぬ受光部161の光軸が一致するように配置されている。蛍光検出ユニット15は、所定の位置に移動した後、検出部19a、19b、19c、19dに順次励起光を照射し、蛍光物質が発光する蛍光を受光して電気信号を出力する。
【0073】
送りネジ301はモータ300によりジョイント302を介して駆動される。モータ300は例えばパルスモータであり、パルスにより所定量回転する。
【0074】
なお、蛍光検出ユニット15には回転防止用に図7には図示せぬガイド穴173が設けられており、ガイド穴173を貫通するガイド棒に沿って移動する。ガイド棒は送りネジ301と平行に配設されている。
【0075】
なお、本実施形態では検出部19が4つ設けられている場合について説明したが、検出部19の数は1つ以上であればいくつでも良い。検出部19の数が一つの場合は蛍光検出ユニット15を移動させる必要は無いので送りネジ301、モータ300等は不要である。
【0076】
図8に示すように、駆動液ポンプ92の吸込側には、パッキン90cが接続され、駆動液タンク91に充填された駆動液を吸い込むようになっている。一方、駆動液ポンプ92の吐出側にはパッキン90bが接続されていて、パッキン90cから吸い込んだ駆動液を、パッキン90bを介してマイクロチップ1の駆動液注入部110からマイクロチップ1内に形成された微細流路6に注入する。パッキン90bは駆動液ポンプ92とマイクロチップ1の間に挟まれ、駆動液ポンプ92の駆動液出口とパッキン90bの開口部と駆動液注入部110とは連通している。このように、駆動液ポンプ92から、連通しているパッキン90bを介して駆動液注入部110より駆動液を注入する。
【0077】
図9は、本発明の第3の実施形態における蛍光検出ユニット15の光学系を示す説明図である。
【0078】
図6で説明した第2の実施形態と違いは、検出部19の蛍光物質を含む検体50に対して受光部161と同じ側から光を照射する点である。
【0079】
図9のように発光部160は、受光部161の光軸Lに対し斜め方向から蛍光物質を含む検体50に励起光を照射する。βは発光部160の光軸Nと光軸Lのなす角度である。角度βは、検出部19で正反射した励起光が反射筒191に入射しない角度に設定されている。反射板192は励起光を反射する分光反射特性を持ち、検出部19を透過した励起光を正反射して再度検出部19を照射する位置に配置されている。
【0080】
発光部160から照射される励起光は、検出部19を照射し、検出部19の蛍光物質は励起光により蛍光を発光する。蛍光はほぼ180度に亘って射出するので第1の実施形態と同様に、受光部161に向けて図中矢印で示すように出射する。反射筒191の内壁は第1の実施形態と同様に蛍光を反射するとともに励起光はほとんど反射しない分光反射特性を有するので、蛍光だけ反射して図9に示すように受光部161に入射する。
【0081】
このようにすると、検出部19に効率よく励起光を照射して励起される蛍光の量を増すとともに、受光部161に入射する励起光を減らすことができる。また、受光部161と発光部160を検出部19のマイクロチップ1に対し同じ側に配置できるので、蛍光検出ユニット15を小型にすることができ、図7のように移動させることが容易になる。
【0082】
以上このように、本発明によれば、簡単な構成で蛍光を効率よく受光することができる小型の蛍光検出ユニット、反応検出装置、マイクロチップ検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1の実施形態における反応検出装置80の外観図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係わるマイクロチップ1の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【図4】蛍光検出ユニット15の構成の第1の実施形態を示す断面図である。
【図5】反射筒191の分光特性について説明するグラフである。
【図6】蛍光検出ユニット15の構成の第2の実施形態を示す断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態における反応検出装置80の外観図である。
【図8】本発明の第3の実施形態における反応検出装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【図9】蛍光検出ユニット15の構成の第3の実施形態を示す断面図である。
【図10】従来の蛍光検出ユニットの光学系の例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0084】
1 マイクロチップ
6 パッキン
15 蛍光検出ユニット
19 検出部
35 エアポンプ
37 電磁バルブ
62 マイクロポンプ
80 反応検出装置
82 筐体
83 挿入口
84 表示部
91 駆動液タンク
92 ポンプ
110 駆動液注入部
152 温度調節ユニット
160 発光部
161 受光部
191 反射筒
192 反射板
300 モータ
301 送りネジ
302 ジョイント
303 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光物質に励起光を照射する発光部と、
前記励起光を照射された前記蛍光物質の発光する蛍光を受光して電気信号に変換する受光部と、
を有する蛍光検出ユニットにおいて、
前記励起光の波長領域の反射率より前記蛍光の波長領域の反射率が高い分光反射特性を持つ反射部材を有し、
前記蛍光を前記反射部材に反射させて前記受光部に導光することを特徴とする蛍光検出ユニット。
【請求項2】
前記発光部は、前記受光部の光軸に対し斜め方向から前記蛍光物質に励起光を照射するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光検出ユニット。
【請求項3】
前記発光部は、前記蛍光物質に対して前記受光部と同じ側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光検出ユニット。
【請求項4】
前記発光部は、前記蛍光物質で正反射した前記励起光が前記反射部材に入射しない角度から前記励起光を照射するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の蛍光検出ユニット。
【請求項5】
前記蛍光検出ユニットは、前記蛍光物質で正反射した前記励起光を正反射する反射板を有し、前記反射板で正反射した前記励起光を前記蛍光物質に再度照射することを特徴とする請求項3または4に記載の蛍光検出ユニット。
【請求項6】
前記発光部は、前記蛍光物質を挟んで前記受光部と反対側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光検出ユニット。
【請求項7】
前記発光部は、前記蛍光物質を透過した前記励起光が前記反射部材に入射しない角度から前記励起光を照射するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の蛍光検出ユニット。
【請求項8】
前記蛍光検出ユニットは、前記蛍光物質を透過した前記励起光を正反射する反射板を有し、前記反射板で正反射した前記励起光を前記蛍光物質に再度照射することを特徴とする請求項6または7に記載の蛍光検出ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の蛍光検出ユニットを有し、
前記蛍光検出ユニットによって蛍光物質に励起光を照射し、前記蛍光物質が発光した蛍光を受光して測定することを特徴とする反応検出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の反応検出装置と、
蛍光物質を含む試薬と反応させた検体を前記蛍光検出ユニットにより測定可能なマイクロチップと、
を有することを特徴とするマイクロチップ検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−58256(P2009−58256A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223846(P2007−223846)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】