説明

蛍光検出方法及びフローセルユニット並びにフローサイトメータ

【課題】 発光した蛍光を効率良く集光することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る蛍光検出方法は、セル本体102に設けた試料流路104にレーザ光11を照射して放射された蛍光を検出する方法である。前記放射された蛍光を集光レンズ16と対向した位置にある反射部106で反射させ、反射させた前記蛍光を集光レンズ16に入射させる。この場合において、前記集光レンズ16に入射する蛍光は、集光レンズ16側へ放射する蛍光と、前記集光レンズ16と対向した位置にある反射部106で反射させた蛍光である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光検出方法及びフローセルユニット並びにフローサイトメータに関し、特に効果的に蛍光を検出する蛍光検出方法及びフローセルユニット並びにフローサイトメータに関する。
【背景技術】
【0002】
流体中の粒子や細胞などに蛍光色素でラベルした抗体を結合させて、レーザ光等を照射して、反射する散乱光や蛍光を分析・分離するフローサイトメータがある。このフローサイトメータは工業分野において溶媒の分子測定、あるいは医療分野では血液等の診断に用いられている。
【0003】
図4にフローサイトメータの概略構成を示す。図示のように、一般にフローサイトメータ200は、石英などの透光体からなるフローセル202の中央にサンプルを流下させる100μm程度と微小の試料流路204を形成し、この流路にサンプル液220の流れとシース液222の流れの層流を流通させる。このとき、シース液222及びサンプル液220は図示しないコンプレッサによりサンプルチューブから押し出される。サンプル側の圧力をシース側の圧力よりも僅かに低い状態にするとシース流に包含されたサンプル液220の流径が非常に小さくなり、サンプル中の粒子が一列に並ぶ。これにより一列に並んだ粒子が順番にフローセル202中を流れていくことになる。
【0004】
そして、サンプル液220の流れに直交してレーザ光206をサンプル液220に照射する。レーザ光206はレーザ発光源208から絞りレンズ210を介してサンプル液220の試料流路204の照射スポット212に照射させている。このときレーザビームを横切るように粒子は一個ずつ順番に流れていく。
【0005】
サンプル液220中に微粒子が存在するとレーザ光206が散乱する。また、微粒子に予め蛍光色素を付与しておくとレーザ光206の照射によって微粒子が蛍光を発する。レーザ光が照射する照射スポット212の側向位置には発生した散乱光や蛍光を集光する集光レンズ214が配置されている。さらに、集光レンズ214によって集光した光を測定する検出器216が配置されている。検出器216で測定した散乱光や蛍光をデータ処理器218で解析することによってフローセル202を通過した個々の微粒子の種類を特定する。
【0006】
前記フローサイトメータ200に用いるフローセル202の形状は一般に加工の容易であること、あるいは低コスト化等を考慮して矩形に加工した透光体を用いている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−323982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、レーザ照射によって発光する蛍光は照射スポットを中心に放射状に発光する。従来のフローサイトメータによって集光される光はレンズの半径とレンズと細胞の距離が成す一立体角分、すなわち蛍光集光レンズ側でしか集光していない。このため、僅かに発光する蛍光をできるだけ多く集光しなければならないにも拘らず、集光量が少ないという問題があった。
【0008】
また、特許文献1に示すような従来、一般的に用いられている矩形形状のフローセルは、照射スポットで発光した蛍光がセルの境界面で折れ曲がってしまう。このため、レンズ集光角度が小さくなり集光レンズに集光させる集光範囲が狭まって蛍光の集光効率が悪いという問題があった。
【0009】
そこで、上記従来技術の問題点を改善するため、本発明は、発光した蛍光を効率よく集光することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る蛍光検出方法は、フローセル本体に設けた試料流路にレーザ光を照射して放射された蛍光を検出する方法であって、前記放射された蛍光を直に集光するとともに、前記蛍光を反射させて集光し光検出器に入射させることを特徴としている。
【0011】
本発明に係るフローセルユニットは、球面を備えた透光体からなるセル本体と、前記セル本体に貫通して設けた試料流路と、前記球面に発光する蛍光の反射部と、を有することを特徴としている。
この場合において、前記反射部は前記セル本体の表面にミラー蒸着してあることを特徴としている。前記セル本体は、レーザ照射位置に平面を有していることを特徴としている。前記平面は、前記試料流路の軸心線と同軸方向に形成していることを特徴としている。
本発明のフローサイトメータは、前記フローセルユニットを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記のごとくなっている本発明は、放射された蛍光を試料流路の側面で反射させて、対向する光検出器に入射させている。このため、検出される蛍光の増大効果を図ることが可能となる。これまで、発光する一部の集光レンズ側の蛍光をいかに効率良く集光することができるかが集光の課題となっていたが、本発明は、レーザ照射部から放射状に発光する蛍光を集光レンズ側の蛍光のみならず、集光レンズと対向する位置の蛍光も集光することによって集光効率を高めることができる。
【0013】
フローセルユニットのセル本体は、球形状に形成するのが望ましい。球形状に形成することにより、レンズの集光角度が屈折することなく放射状に拡大されるので、蛍光の集光効率を大幅に向上させることが可能となる。また、フローセルユニットの反射部はミラー蒸着してあることが望ましい。セル本体に反射部を容易に形成できるとともに、球面によって効率良く放射状に発光する蛍光を反射させることができる。
【0014】
セル本体には試料流路の両側の対向位置に平面を有していることが望ましい。平面にレーザ光を照射することによって曲面に比べ容易にレーザ絞りレンズで計画された照射スポット寸法、位置にレーザ照射することができる。
【0015】
セル本体の平面は、前記試料流路の軸心線と同軸方向に形成していることが望ましい。これにより曲面に比べ容易にレーザ絞りレンズで計画された照射スポット寸法、位置にレーザ照射が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る蛍光検出方法及びフローセルユニット並びにフローサイトメータの実施形態を添付の図面に沿って以下詳細に説明する。
図1はフローサイトメータの構成概略を示す図である。図2はフローセルユニットの構成概略を示す図である。図2(1)はセル本体の平面図を示す。同図(2)はセル本体の側面図を示す。同図(3)は同図(1)のA−A断面図を示す。
【0017】
図1に示すようにフローサイトメータ10は、サンプル液を導入してレーザ光11を照射するフローセルユニット12と、このフローセルユニット12のレーザ照射側に設置した絞りレンズ14と前記フローセルユニット12の集光側に設置した集光レンズ16と、集光した蛍光を電子信号に変換する光電子倍増管18とを基本的な構成としている。
【0018】
フローセルユニット12は、図2に示すように透光体からなるセル本体102と、このセル本体102に貫通して設けた試料流路104と、この試料流路104の側面に設けた反射部106とを備えている。
【0019】
セル本体102は石英ガラスなどの透光体によってその形状を球形状に形成してある。また、セル本体102の球形軸心には、直径方向に貫通した試料流路104を形成してある。さらに、実施形態に係るセル本体102は、レーザ照射位置と、試料流路104を軸中心とした対称位置とに一対の平面110を有している。平面110は、レーザ光11が試料流路104に照射できるように試料流路104側面と平行に形成してある。なお、平面110はレーザ照射側(110a)のみ形成するようにしてもよい。
【0020】
試料流路104には、セル本体102上部に設置したフローチャンバー112からサンプル液114とシース液116が図示しないコンプレッサによって圧送され、試料流路104の上方から下方に流下している。
【0021】
反射部106は、レーザ照射方向と直交方向の球面であって、後述する集光レンズ16と対向する面に金属蒸着させたミラーコーティングである。このミラーコーティングは発生した蛍光が減衰することなく反射されるようにしている。
【0022】
絞りレンズ14は、サンプル液220の流れに直交した方向から照射するレーザ光11の光路に設置している。絞りレンズ14は、図示しないレーザ発光源からの分散したレーザ照射をレンズによって絞り照射スポット15に照射させている。そして照射スポット15を通過したレーザ光11は前方散乱光19となり第2集光レンズ30によって集光される。集光した前方散乱光19は光検出器32に導入し、この検出信号に基づいて蛍光及び散乱光を計測している。また、前方散乱光19の強度は、流れるサンプルの大きさを測定する情報として利用することができる。すなわち粒子に光をあてたときに散乱光の角度やパターンが異なることを利用したミー散乱理論により、例えば粒子径を測定することができる。
【0023】
集光レンズ16は、図2(1)に示すようにレーザ光が照射する試料流路104の側向位置であって同一平面状に配置している。集光レンズ16は、試料流路104のレーザ照射によって発光した蛍光を集光する。
【0024】
光電子倍増管18は、前記集光レンズ16と同様にレーザ光が照射する試料流路104の側向位置に配置している。光電子倍増管18は、光電面で光を電子に変換し、電子倍増管で増幅し、電流として信号を出力する。そして図示しない検出器に出力信号を送信している。
【0025】
図3はレンズ集光角度の説明図である。同図中の点線はセル本体の形状が矩形であり、そのレンズ集光角度を示している。また、実線はセル本体が球形状であり、そのレンズ集光角度を示している。
ここで開口数(NA)はセル本体102の形状に大きく依存している。この開口数とは、最大入射角度(受入角を2θとする)を頂角とする円錐で表すことができ、次式の関係が成立する。
【数1】

【0026】
なお、sinθは0<sinθ<1の範囲であり、sinθ=90°のときに円錐が大きく広がって開口数(NA)が最大となる。そうすると本実施形態の場合、集光レンズ16と直交する直線l、すなわちセル本体の半径と、試料流路104からの放射線との成す角がθに相当し、この集光角度が大きくなると、集光面積も増大する関係にある。
【0027】
よって、セル本体が矩形の場合には、境界面で折れ曲がってしまい、集光角度が狭まり、集光レンズに集光されるのは図中のEに示す範囲であり、集光面積が小さい。すなわち集光効率が悪くなる。
【0028】
一方、セル本体を球面状に形成すると、放射状に拡散する蛍光は放射方向を直交する境界面で折れ曲がることなくそのまま直線上に放射する。よって、集光角度が大きくなり、図中のFに示す範囲の蛍光を集光レンズ16で集光することができ、集光効率が良い。
【0029】
上記構成によるフローサイトメータの蛍光検出方法について以下説明する。フローチャンバー112からセル本体102の中央に形成した試料流路104にサンプル液114及びシース液116の層流を流通させる。そして、図示しないレーザ発光源から照射したレーザ光11を絞りレンズ14によって絞り照射スポット15に照射する。このときレーザ光11はサンプル液114の流れと直交方向から照射される。
【0030】
サンプル中に微粒子が存在するとレーザ光11が散乱する。また、蛍光色素を付与した微粒子にレーザ光11を照射すると蛍光を発する。この散乱光及び蛍光は照射スポット15から放射状に発光する。
【0031】
レーザ光11の光路の側向位置であってその同一平面状には集光レンズ16と反射部106が設置されている。これにより、集光レンズ16には照射スポット15からの蛍光が直接集光される。このときセル本体102は球体状に形成している。このため、照射スポット15から放射状に発する蛍光は境界面で折れ曲がることなく直線上に延び集光レンズ16に集光される。
【0032】
一方、集光レンズ16と対向する側面に形成した反射部106によって、照射スポット15から発する蛍光は反射され、一端照射スポット15に戻るとともに対面する集光レンズ16に集光される。このように、放射状に発する蛍光を集光レンズ16で集光するとともに反射部106で反射させて集光させているので、2立体角分の蛍光を集光することができる。
【0033】
そして集光レンズ16で集光した蛍光を光電子倍増管18に導入し、光電面で光を電子に変換し、電子倍増管で増幅し、電流として図示しない検出器に出力信号を送信している。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態に係るフローサイトメータの構成概略を示す図である。
【図2】フローセルユニットの構成概略を示す図である。
【図3】レンズ集光角度の説明図である。
【図4】従来のフローサイトメータの計測装置の説明図である。
【符号の説明】
【0035】
10………フローサイトメータ、11………レーザ光、12………フローセルユニット、14………絞りレンズ、15………照射スポット、16………集光レンズ、18………光電子倍増管、30………第2集光レンズ、32………光検出器、102………セル本体、104………試料流路、106………反射部、110………平面、112………フローチャンバー、114………サンプル液、116………シース液、200………フローサイトメータ、202………フローセル、204………試料流路、206………レーザ光、208………レーザ発光源、210………絞りレンズ、212………照射スポット、214………集光レンズ、216………検出器、218………データ処理器、220………サンプル液、222………シース液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローセル本体に設けた試料流路にレーザ光を照射して放射された蛍光を検出する方法であって、
前記放射された蛍光を直に集光するとともに、前記蛍光を反射させて集光し光検出器に入射させることを特徴とする蛍光検出方法。
【請求項2】
球面を備えた透光体からなるセル本体と、
前記セル本体に貫通して設けた試料流路と、
前記球面に発光する蛍光の反射部と、
を有することを特徴とするフローセルユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のフローセルユニットにおいて、
前記反射部は前記セル本体の表面にミラー蒸着してあることを特徴とするフローセルユニット。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のフローセルユニットにおいて、
前記セル本体は、レーザ照射位置に平面を有していることを特徴とするフローセルユニット。
【請求項5】
請求項4に記載のフローセルユニットにおいて、
前記平面は、前記試料流路の軸心線と同軸方向に形成していることを特徴とするフローセルユニット。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれかに記載のフローセルユニットを備えていることを特徴とするフローサイトメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−250685(P2006−250685A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67133(P2005−67133)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】