説明

蛍光検出装置

【課題】微弱光から強い蛍光まで広範囲に、精度良く測定できる、構造の簡単な蛍光検出装置を提供する。
【解決手段】蛍光検出装置は、レーザ光源部と、測定対象物の蛍光を受光して受光信号を出力する受光部と、受光信号から、蛍光強度の出力値を出力する処理部と、を有する。処理部は、受光信号が予め設定された値を越したタイミングに応じて作られるパルスからなる基準パルス信号を生成し、この基準パルス信号を受光信号に乗算して一定期間内の積分値を算出するとともに、基準パルス信号のパルス数を一定期間内においてカウントし、このときのカウント値を算出する。処理部は、さらに、算出した積分値と算出したカウント値に応じて、積分値に基づいて得られる第1の出力値と、カウント値である第2の出力値とを切り替えて出力する選択回路を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物にレーザ光を照射することにより測定対象物が発する蛍光を受光して蛍光強度の出力値を出力する蛍光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、生物分野で用いられるフローサイトメータには、レーザ光を照射することにより測定対象物の蛍光色素からの蛍光を受光して、測定対象物の種類を識別する蛍光検出装置が組み込まれている。
蛍光検出装置では、蛍光強度を出力するために、光センサーとして光電子増倍管(PMT)が用いられ、この蛍光強度の算出には、アナログ計測方式あるいはフォトンカウンティング計測方式が用いられる。
【0003】
アナログ計測方式では、光電子増倍管からのパルス状の電流信号を、負荷抵抗を用いて電圧信号に変換し、この電圧信号のピーク電圧や擬似的に積分して得られる面積を算出することにより、蛍光強度を求める。このアナログ計測方式は、強い蛍光強度に対しては精度の良い計測が可能となるが、微弱な蛍光を計測する場合、計測する電圧信号は、離散的なパルス信号となる。このパルス信号には、暗電流に起因して定常的に発生するノイズパルスが含まれ、これによって測定誤差が大きくなるといった問題がある。さらに、1つ1つの電圧信号のレベルが一定しないため、測定誤差が増大するといった問題がある。
【0004】
一方、フォトンカウンティング計測方式では、光電子増倍管からのパルス状の電圧信号のパルス数をカウントし、このときのカウント値を蛍光強度の出力値とする。この方式では、微弱な蛍光に対して精度の良い計測が可能であるが、蛍光強度が強くなると、複数のパルス状の電圧信号は互いに重なり合って、正確なカウント値が得られないといった問題がある。
このため、微弱の蛍光から、強度の強い蛍光まで、1つの計測方式で幅広いレンジで精度良く計測することができない。
【0005】
下記特許文献1では、蛍光光束をレンズ等で拡げ、マルチチャンネルの光電子増倍管(PMT)に受光させ、各チャンネル毎に、フォトンカウンティングを行い、各チャンネルのカウント値を合計する細胞解析装置が記載されている。当該公報によると、この装置構成により、微弱光から強い蛍光まで広範囲に、高感度で再現性良く測定することができるとされている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−10946号公報
【0007】
しかし上記特許文献1に記載される装置では、チャンネル数と同数のカウンティング回路を必要とし装置構成が煩雑になる他、マルチチャンネル毎に光電子増倍管を用いる必要があるため、光電面の面積効率が低下するといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、微弱光から強い蛍光まで広範囲に、精度良く測定できる、構造の簡単な蛍光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、測定対象物にレーザ光を照射することにより測定対象物が発する蛍光を受光して信号処理を行う検出装置であって、
測定対象物に照射するレーザ光を出射するレーザ光源部と、レーザ光の照射された測定対象物の蛍光を受光して受光信号を出力する受光部と、前記受光部から出力した受光信号から、蛍光強度の出力値を出力する処理部と、を有し、
前記処理部は、前記受光信号が予め設定された値を越したタイミングに応じて作られる一定の値のパルスからなる基準パルス信号を生成し、この基準パルス信号を前記受光信号に乗算して一定期間内の積分値を算出するとともに、前記基準パルス信号のパルス数を一定期間内においてカウントし、このときのカウント値を算出し、さらに、前記処理部は、前記積分値と前記カウント値とに応じて、前記積分値に基づいて得られる第1の出力値と前記カウント値である第2の出力値を用いて出力値を切り替えて出力する選択回路を有することを特徴とする蛍光検出装置を提供する。
【0010】
ここで、前記処理部は、受光信号が離散的に生成されるときの1パルス当たりの前記積分値の平均値が、定数として予め設定され、前記積分値が予め設定された第1の閾値以上の場合、前記積分値を前記定数で除算した値を前記第1の出力値として出力し、前記積分値が前記第1の閾値より小さく、かつ前記カウント値が予め設定された第2の閾値より小さい場合、前記カウント値を前記第2の出力値として出力することが好ましい。
【0011】
さらに、前記積分値が前記第1の閾値より小さく、かつ前記カウント値が前記第2の閾値以上である場合、異常値の測定結果であるとして情報を出力することが好ましい。
【0012】
また、前記処理部は、受光信号が離散的に生成されるときの1パルス当たりの前記積分値の平均値が、定数として予め設定され、前記積分値及び前記カウント値がいずれも、蛍光強度の増大とともに増大する共通の領域が存在し、前記第1の閾値はこの領域内に含まれる積分値に対応する値であり、前記第2の閾値は、前記領域内に含まれるカウント値に対応する値であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の蛍光検出装置は、処理部で求められた積分値とカウント値に応じて、第1の出力値と、第2の出力値とを用いて出力値の切り替えを行って出力する選択回路を有する。このため、微弱光から強い蛍光まで広範囲に、精度良く測定できる。又、従来(特許文献1)のように、チャンネル数と同数のカウンティング回路を必要としないので、構造の簡単な蛍光検出装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の蛍光検出装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の蛍光検出装置を用いたフローサイトメータ10の概略構成図である。
フローサイトメータ10は、レーザ光を測定対象とする試料12に照射し、試料12中に付けられた蛍光色素の発する蛍光を検出して信号処理する信号処理装置(蛍光検出装置)20と、信号処理装置20で得られた処理結果から試料12中の測定対象物の分析を行なう分析装置80とを有する。
【0015】
信号処理装置20は、レーザ光源部22と、受光部24、26と、試料の出力値を出力する処理部28と、所定の強度でレーザ光を照射させ、各処理の動作の制御管理を行う制御部29と、高速流を形成するシース液に含ませて試料12を流してフローセルを形成する管路30と、を有する。管路30の出口には、回収容器32が設けられている。フローサイトメータ10には、レーザ光の照射により短時間内に試料12中の特定の細胞等を分離するためのセル・ソータを配置して別々の回収容器に分離するように構成することもできる。
【0016】
レーザ光源部22は、波長の異なる3つのレーザ光、例えばλ1=405nm、λ2=533nmおよびλ3=650nm等のレーザ光を出射する部分である。レーザ光は、管路30中の所定の位置に集束するようにレンズ系が設けられ、この集束位置で試料12の測定点を形成する。
【0017】
図2は、レーザ光源部22の構成の一例を示す図である。
レーザ光源部22は、350nm〜800nmの可視光の、レーザ光を出射する部分で、主に赤色のレーザ光Rを所定の強度で、連続光として、あるいはパルスレーザ光として出射するR光源22r、緑色のレーザ光Gを所定の強度で、連続光として、あるいはパルスレーザ光として出射するG光源22gおよび青色のレーザ光Bを所定の強度で、連続光として、あるいはパルスレーザ光として出射するB光源22bと、特定の波長帯域のレーザ光を透過し、他の波長帯域のレーザ光を反射するダイクロイックミラー23a1、23a2と、レーザ光R,GおよびBからなるレーザ光を管路30中の測定点に集束させるレンズ系23cと、R光源22r、G光源22gおよびB光源22bのぞれぞれを駆動するレーザドライバ34r,34gおよび34bと、供給された信号をレーザドライバ34r,34gおよび34bに分配する各パワースプリッタ35と、を有して構成される。
これらのレーザ光を出射する光源として例えば半導体レーザが用いられる。
パルスレーザ光のパルス幅は、蛍光色素の発する蛍光をバックグラウンドノイズと区別して効率よく検出できるように設定され、例えば0.5ナノ秒〜4ナノ秒である。
ダイクロイックミラー23a1は、レーザ光Rを透過し、レーザ光Gを反射するミラーであり、ダイクロイックミラー23a2は、レーザ光RおよびGを透過し、レーザ光Bを反射するミラーである。
この構成によりレーザ光R,GおよびBが合成されて、測定点の試料12を照射する照射光となる。
【0018】
レーザドライバ34r,34gおよび34bは、制御部29に接続されて、レーザ光R,G,Bの出射の強度が調整されるように構成される。
【0019】
R光源22r、G光源22gおよびB光源22bは、レーザ光R、GおよびBが蛍光色素を励起して特定の波長帯域の蛍光を発するように、予め定められた波長帯域で発振する。レーザ光R、GおよびBによって励起される蛍光色素は測定しようとする生体物質やマイクロビーズ等の試料12に付着されており、測定対象物として管路30を通過する際、測定点でレーザ光R、GおよびBの照射を受けて特定の波長で蛍光を発する。
【0020】
受光部24は、管路30を挟んでレーザ光源部22と対向するように配置されており、測定点を通過する試料12によってレーザ光が前方散乱することにより試料12が測定点を通過する旨の検出信号を出力する光電変換器を備える。この受光部24から出力される信号は、制御・処理部28に供給され、制御・処理部28において試料12が管路30中の測定点を通過するタイミングを知らせるトリガ信号として用いられる。
【0021】
一方、受光部26は、レーザ光源部22から出射されるレーザ光の出射方向に対して垂直方向であって、かつ管路30中の試料12の移動方向に対して垂直方向に配置されており、測定点にて照射された試料12が発する蛍光を受光する光電変換器を備える。
図3は、受光部26の一例の概略の構成を示す概略構成図である。
【0022】
図3に示す受光部26は、試料12からの蛍光を集束させるレンズ系26aと、ダイクロイックミラー26b,26bと、バンドパスフィルタ26c〜26cと、光電子増倍管等の光電変換器27a〜27cと、を有する。
レンズ系26aは、受光部26に入射した蛍光を光電変換器27a〜27cの受光面に集束させるように構成されている。
ダイクロイックミラー26b,26bは、所定の範囲の波長帯域の蛍光を反射させて、それ以外は透過させるミラーである。バンドパスフィルタ26c〜26cでフィルタリングして光電変換器27a〜27cで所定の波長帯域の蛍光を取り込むように、ダイクロイックミラー26b,26bの反射波長帯域および透過波長帯域が設定されている。
【0023】
バンドパスフィルタ26c〜26cは、各光電変換器27a〜27cの受光面の前面に設けられ、所定の波長帯域の蛍光のみが透過するフィルタである。透過する蛍光の波長帯域は、蛍光色素の発する蛍光の波長帯域に対応して設定されている。
【0024】
光電変換器27a〜27cは、例えば光電子増倍管を備えたセンサを備え、光電面で受光した光を電気信号に変換するセンサである。
【0025】
制御部29は、所定の強度でレーザ光を照射させ、処理部28における各処理の制御管理を行う部分である。
処理部28は、所定の信号処理を行って出力値を分析装置80に出力する部分である。図4は、処理部28の構成図である。処理部28は、光電変換器27a〜27c毎に、同じ構成の処理部28が設けられ、後述する分析装置80に出力値を供給する。図4では、代表して1つの処理部28を表している。
処理部28は、アンプ42と、増幅した電圧信号をデジタル信号に変換するAD変換回路44と、コンパレータ46と、乗算器48と、カウンタ50と、積分回路52と、除算回路54と、信号生成回路56と、定数除算回路58と、選択回路60と、LUT62とを有する。
【0026】
アンプ42は、光電変換器27a〜27cから供給された蛍光の電気信号を電圧に変換した電圧信号を増幅する部分である。
AD変換回路44は、アンプ42にて増幅した電圧信号をデジタル信号に変換する部分である。ここでは、例えば2GHzのサンプリング周波数が用いられる。
コンパレータ46は、AD変換回路44から供給された電圧信号を予め設定されたスレシュホールド電圧と比較し、スレッシュホールド電圧を超える電圧信号が供給されたとき、この供給のタイミングに応じて、一定のピーク電圧を持つパルスからなる基準パルス信号を生成する部分である。
乗算器48は、生成された基準パルス信号と、AD変換回路44から出力された電圧信号とを乗算する部分である。カウンタ50は、生成された基準パルス信号の一定時間範囲のパルス数をカウントする部分である。ここで、一定時間とは、例えば、試料12が測定点を通過する時間をいう。
【0027】
積分回路52は、乗算器48にて算出された信号を、一定の時間範囲で時間積分した積分値を算出する部分である。すなわち、処理部28では、従来のアナログ計測方式の積分値と、従来のフォトンカウンティング計測方式のカウント値とが並行して算出される。ここで、積分値はa、カウント値はbとする。
除算回路54は、積分回路52で求められた積分値aをカウンタ50で得られたカウント値bで除算する部分である。
【0028】
信号生成回路56は、積分値a及びカウント値bを第1の閾値と第2の閾値と比較して、積分値aから求めた値と、カウント値bとを用いて出力値を切り替えるように、選択信号を生成する。
具体的には、積分値aが第1の閾値以上の場合、積分値aを後述する定数αで除算した値を出力値とするように選択し、積分値aが第1の閾値より小さく、カウント値bが第2の閾値より小さい場合、カウント値bを出力値とするように選択する選択信号を生成する。この点については後述する。
なお、積分値aが第1の閾値より小さく、かつ、カウント値bが第2の閾値以上の場合、異常値検出として0値を出力するようにしてもよい。
【0029】
選択回路60は、定数除算回路58から出力された値、またはカウンタ50から出力されたカウント値を、信号生成回路56から供給された選択信号に基づいて選択し、選択した値を蛍光強度の出力値として出力する部分である。
定数除算回路58は、LUT62から供給される定数αの値を用いて積分値aを除算する。LUT62は、光電変換器27a〜cの受光のために設定された設定電圧、例えば光電子増倍管の場合電子の加速電圧によって一意的に定数αを定めることのできるテーブルである。ここで、定数αとは、図5(a)に示されるように受光信号が離散的に生成されるときの基準パルス信号の1パルス当たりの積分値aの平均値である。後述するように、蛍光強度が所定の範囲にあるとき、比a/bの値が略一定となる。このときの値が定数αである。上記設定電圧を変えると、定数αも変化する。このため、上記設定電圧を変えながら、比a/bが蛍光強度乃変化に対して略一定となる値である定数αを求めて、テーブル化することでLUT62は得られる。LUT62は、この予め設定電圧と定数αとの関係を表すテーブルである。したがって、LUT62は、光電変換器27a〜cの現在設定されている設定電圧の情報から定数αを定数除算回路58に提供できる。
【0030】
図5(a)は、蛍光が微弱光であり、受光信号がパルス状に離散的に生成されるときの、AD変換回路44から出力される電圧信号の一例を示している。図5(a)中の破線は、コンパレータ46にて用いるスレッシュホールド電圧のレベルを示している。このスレッ主ホールド電圧のレベルは、暗電流に起因した定常的なのパルス状のノイズのレベルよりも高いレベルに設定されている。これにより、暗電流に起因したノイズ成分を排除した出力値を算出することができる。
図5(b)は、図5(a)に示す電圧信号によって生成される基準パルス信号の例を示している。蛍光強度が微弱な場合、基準パルス信号のパルスは離散的に発生するので、この基準パルス信号のパルス数をカウントすることで試料12が測定点を通過するときのフォトン数を求めることができる。このフォトン数は、上述のカウント値に相当する。
【0031】
図6は、蛍光強度が強い場合の電圧信号の例を示している。このときの電圧信号は、複数のパルスが互いに重なり合って、正確なカウント値が得られない。このため、電圧信号に基準信号を乗算し、一定時間範囲内で積分して積分値を得、この積分値を定数α(1パルス信号当たりの積分値の平均値)で除算することで、試料12が測定点を通過するときの等価フォトン数を求めることができる。
【0032】
しかし、上記等価フォトンカウント数は、あるいは積分値は、蛍光強度が微弱な場合(図7(a)中、I1より小さい場合)、図7(a)に示すように不安定な値を示す。一方、パルス数をカウントして得られるフォトン数(カウント値)は、図7(b)に示すように、蛍光強度が高い場合(図中、I2を超える場合)、蛍光強度の上昇に伴ってカウント値は上昇せず、不安定な値を示す。
このため、本発明では、蛍光強度の上昇に伴って出力値が増加するように、積分値aに基づいて得られる等価フォトン数と、フォトン数をカウントして得られたカウント値と用いて、蛍光強度の出力値を選択して出力する。なお、図7(a)及び(b)から判るように、蛍光強度に対して積分値とカウント値が、単調増加する領域I1〜I2が共通して存在する。この領域において、積分値aに基づいて得られる等価フォトン数と、フォトン数をカウントして得られたカウント値とを切り替える。
【0033】
ここで、上述した第1の閾値は、例えば、図7(a),(b)に示す領域I1〜I2のI1,I2に対応する積分値を値a1,a2(a1>a2)としたとき、積分値に対応する値a1〜a2の範囲にある値が用いられる。例えば、値(a1+a2)/2が用いられる。又、上述した第2の閾値は、例えば、図7(a),(b)に示す領域I1〜I2のI1,I2に対応するカウント値を値b1,b2(b1>b2)としたとき、カウント値に対応する値b1〜b2の範囲にある値が用いられる。例えば、値(b1+b2)/2が用いられる。
図8は、比a/bが蛍光強度に依存して変化するグラフを示している。図8に示されるように、領域I1〜I2において、比a/bは略一定値を示す。この値が、定数除算回路58にて用いる定数αとして用いられる。
【0034】
分析装置80は、処理部28から供給される出力値を用いて、管路30を通過する試料12中に含まれる生体物質の種類等を特定し、試料12中に含まれる生体物質の分析を行う装置である。こうして、分析装置80は、例えば、試料12中に含まれる生体物質の種類のヒストグラムや各種特性を短時間に求める。
フローサイトメータ10は以上のように構成される。
【0035】
フローサイトメータ10の信号処理装置20では、試料12が管路30を流れ、測定点でレーザ光による照射が成されると、受光部24で試料12の通過を検出する検出信号が処理部28及び制御部29にトリガ信号として出力される。
処理部28では、この検出信号をトリガ信号とし、上述した蛍光強度の出力値を出力する。このとき、積分値a及びカウント値bに応じて、積分値aを定数αで除算した値あるいはカウント値bが、出力値として選択される。
蛍光強度の出力値は、分析装置80に供給され、この出力値を用いて、管路30を通過する試料12中に含まれる生体物質の種類等を特定し、試料12中に含まれる生体物質の分析を行う。
【0036】
このように、信号処理装置20では、積分値aと第1の閾値とを比較し、かつカウント値bと第2の閾値とを比較することによって、図7(a),(b)に示す蛍光強度に対して積分値a及びカウント値bが線形に変化する領域を用いて出力値を取り出し、この領域にて、積分値aを定数αで除算した値とカウント値bとの間で切り替えを行う。このため、微弱光から強い蛍光まで広範囲に精度良く測定できる。また、従来のようにチャンネル数と同数のカウンティング回路を必要としないので、装置構成も簡単になる。
【0037】
以上、本発明の蛍光検出装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の蛍光検出装置を用いたフローサイトメータの概略構成図である。
【図2】本発明の蛍光検出装置に用いられるレーザ光源部の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の蛍光検出装置に用いられる受光部の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の蛍光検出装置の処理部の一例を示す概略構成図である。
【図5】(a)は、本発明の蛍光検出装置で得られる電圧信号の一例を示す図であり、(b)は、本発明の蛍光検出装置で生成される基準パルス信号の一例を示す図である。
【図6】本発明の蛍光検出装置で得られる電圧信号の他の例を示す図である。
【図7】(a)及び(b)は、本発明の蛍光検出装置で得られる積分値とカウント値の、蛍光強度に対する変化を示す図である。
【図8】本発明の蛍光検出装置で得られるカウント値bに対する積分値aの比の、蛍光強度に対する変化を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
10 フローサイトメータ
12 試料
20 信号処理装置
22 レーザ光源部
22r R光源
22g G光源
22b B光源
23a1,23a2,23b1,23b2 ダイクロイックミラー
23c.26a レンズ系
24,26 受光部
26c1,26c2,26c バンドパスフィルタ
27a〜27c 光電センサ
28 処理部
29 制御部
30 管路
32 回収容器
34r,34g,34b レーザドライバ
42 アンプ
44 AD変換回路
46 コンパレータ
48 乗算器
50 カウンタ
52 積分回路
54 除算回路
56 信号生成回路
58 定数除算回路
60 選択回路
62 LUT
80 分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物にレーザ光を照射することにより測定対象物が発する蛍光を受光して信号処理を行う検出装置であって、
測定対象物に照射するレーザ光を出射するレーザ光源部と、
レーザ光の照射された測定対象物の蛍光を受光して受光信号を出力する受光部と、
前記受光部から出力した受光信号から、蛍光強度の出力値を出力する処理部と、を有し、
前記処理部は、前記受光信号が予め設定された値を越したタイミングに応じて作られる一定の値のパルスからなる基準パルス信号を生成し、この基準パルス信号を前記受光信号に乗算して一定期間内の積分値を算出するとともに、前記基準パルス信号のパルス数を一定期間内においてカウントし、このときのカウント値を算出し、
さらに、前記処理部は、前記積分値と前記カウント値とに応じて、前記積分値に基づいて得られる第1の出力値と前記カウント値である第2の出力値を用いて出力値を切り替えて出力する選択回路を有することを特徴とする蛍光検出装置。
【請求項2】
前記処理部は、受光信号がパルス状に離散的に生成されるときの1パルス当たりの前記積分値の平均値が、定数として予め設定され、
前記積分値が予め設定された第1の閾値以上の場合、前記積分値を前記定数で除算した値を前記第1の出力値として出力し、前記積分値が前記第1の閾値より小さく、かつ前記カウント値が予め設定された第2の閾値より小さい場合、前記カウント値を前記第2の出力値として出力する請求項1に記載の蛍光検出装置。
【請求項3】
前記積分値が前記第1の閾値より小さく、かつ前記カウント値が前記第2の閾値以上である場合、異常値の測定結果であるとして情報を出力する請求項2に記載の蛍光検出装置。
【請求項4】
前記処理部は、受光信号が離散的に生成されるときの1パルス当たりの前記積分値の平均値が、定数として予め設定され、
前記積分値及び前記カウント値がいずれも、蛍光強度の増大とともに増大する共通の領域が存在し、前記第1の閾値はこの領域内に含まれる積分値に対応する値であり、前記第2の閾値は、前記領域内に含まれるカウント値に対応する値である請求項1〜3のいずれか1項に記載の蛍光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−244010(P2009−244010A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89376(P2008−89376)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(591118041)財団法人シップ・アンド・オーシャン財団 (21)
【Fターム(参考)】