説明

蛍光測定装置及び蛍光測定方法

【課題】測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めることを目的とする。
【解決手段】所定の方向に移動する測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光を受光する蛍光測定装置である。この蛍光測定装置は、測定対象物に電界を印加する電界印加部と、電界印加部が測定対象物に電界を印加する位置よりも、所定の方向の下流の位置において、測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射するレーザ光照射部と、測定対象物がレーザ光を照射された際に発せられる蛍光を受光する受光部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向に移動する測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光を受光する蛍光測定装置及び蛍光測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物にレーザ光を照射し、測定対象物が発する蛍光を受光して、測定対象物の情報を取得する蛍光測定装置が知られている。
蛍光測定装置を用いたフローサイトメータは、蛍光試薬でラベル化された細胞、DNA、RNA、酵素、蛋白等の測定対象物をシース液に流す。この測定対象物にレーザ光を照射することにより、測定対象物に付与された蛍光色素は蛍光を発する。フローサイトメータは、この蛍光を受光することにより、測定対象物の情報を取得することができる。
【0003】
また、レーザ光を測定対象物に照射し測定対象物が発する蛍光を受光することにより蛍光緩和時定数を取得する蛍光測定装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−101397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定対象物が発する蛍光を受光する蛍光測定装置においては、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度が高いほど、測定対象物の情報をより正確に取得することができる。そのため、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めることができる蛍光測定装置が求められている。
【0006】
本発明は、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を従来よりも高めることができる蛍光測定装置及び蛍光測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蛍光測定装置は、所定の方向に移動する測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光を受光する蛍光測定装置であって、前記測定対象物に電界を印加する電界印加部と、前記電界印加部が前記測定対象物に電界を印加する位置よりも、前記所定の方向の下流の位置において、前記測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射するレーザ光照射部と、前記測定対象物が前記レーザ光を照射された際に発せられる蛍光を受光する受光部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記レーザ光照射部は、レーザ光の偏光方向を変える波長板を含むことが好ましい。
【0009】
また、前記受光部が受光した蛍光に基づいて、前記測定対象物が発する蛍光強度を求めるデータ処理部と、前記データ処理部が求めた蛍光強度に基づいて、前記レーザ光照射部が前記測定対象物に照射するレーザ光の偏光方向を制御する制御部と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記受光部が受光した蛍光に基づいて、前記測定対象物が発する蛍光強度を求めるデータ処理部と、前記データ処理部が求めた蛍光強度に基づいて、前記電界印加部が前記測定対象物に印加する電界の方向を制御する制御部と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記電界印加部は、異なる複数の方向に電界を印加するように配列された複数の電極を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明の蛍光測定方法は、所定の方向に移動する測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光を受光する蛍光測定方法であって、前記測定対象物に電界を印加する電界印加工程と、前記電界印加工程の後に、前記測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射する照射工程と、前記測定対象物が前記レーザ光を照射された際に発せられる蛍光を受光する受光工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記受光工程において受光した蛍光に基づいて、前記測定対象物が発する蛍光強度を求めるデータ処理工程と、前記データ処理工程において求めた蛍光強度に基づいて、前記測定対象物に照射する前記レーザ光の偏光方向を制御する制御工程と、を有することが好ましい。
【0014】
また、前記受光工程において受光した蛍光に基づいて、前記測定対象物が発する蛍光強度を求めるデータ処理工程と、前記データ処理工程において求めた蛍光強度に基づいて、前記測定対象物に電界を印加する方向を制御する制御工程と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蛍光測定装置、蛍光測定方法によれば、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を従来よりも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態のフローサイトメータの一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示されるレーザ光照射部の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態の蛍光測定方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】(a)は、電界を印加される前の細胞の状態を示す図であり、(b)は、電界を印加された後の細胞の状態を示す図である。
【図5】図1に示される電界印加部の一例を示す断面図である。
【図6】本実施形態の蛍光測定方法の一例を示すフローチャートである。
【図7】変形例1のレーザ光照射部の一例を示す概略構成図である。
【図8】変形例2の電界印加部の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の蛍光測定装置、蛍光測定方法を適用したフローサイトメータについて、実施形態に基づいて説明する。
<第1の実施形態>
(フローサイトメータの構成)
まず、図1を参照して、本実施形態のフローサイトメータの構成について説明する。図1は、本実施形態のフローサイトメータの一例を示す概略構成図である。フローサイトメータは、測定対象物にレーザ光を照射し、レーザ光を照射された測定対象物が発する蛍光を受光することにより、測定対象物の情報を取得することができる。
図1に示されるように、本実施形態のフローサイトメータは、液体供給装置10と、フローセル22と、電界印加部40と、レーザ光照射部50と、受光部60、62と、データ処理部70と、制御部80と、を備える。
【0018】
液体供給装置10は、サンプル液タンク12と、シース液タンク14と、を備える。サンプル液タンク12は、細胞などの測定対象物を含むサンプル液を収容する。後述するように、レーザ光照射部50において測定対象物にレーザ光を照射し、その際に発せられる蛍光から測定対象物の情報を取得するため、サンプル液タンク12に収容されるサンプル液に含まれる細胞30には、予め蛍光色素32が付与されている。蛍光色素32は、例えば、CFP(Cyan Fluorescent Protein)、YFP(Yellow Fluorescent Protein)などが用いられる。
シース液タンク14はシース液を収容する。サンプル液タンク12とサンプル液管18とは、配管16で接続されている。また、シース液タンク14とシース液管20とは、配管16で接続されている。
【0019】
液体供給装置10は、不図示のエアポンプを備える。エアポンプを用いてサンプル液タンク12に収容されているサンプル液を加圧することにより、液体供給装置10は、配管16を介してサンプル液管18にサンプル液を供給する。また、エアポンプを用いてシース液タンク14に収容されているシース液を加圧することにより、液体供給装置10は、配管16を介してシース液管20にシース液を供給する。
液体供給装置10がサンプル液やシース液を加圧する大きさは、制御部80により制御される。
【0020】
サンプル液管18の吐出口から吐出されたサンプル液は、シース液に囲まれ、フローセル22の内部を流れる。フローセル22の内部では、シース液に囲まれたサンプル液は流体力学的絞り込みを受け、サンプル液は細い液流となる。サンプル液の速度を調整することにより、細い液流のサンプル液の中に細胞を一列に流すことができる。このようにして、フローセル22の内部を測定対象物が所定の方向に移動する。
【0021】
電界印加部40は、フローセル22の内部を流れる測定対象物に電界を印加する。本実施形態の電界印加部40は、2つの電極42a,42bを備える。2つの電極42a,42bの間に電圧を印加することにより、測定対象物に電界を印加することができる。
図1に示されるように、電界印加部40は制御部80と接続されている。後述するように、電界印加部40が測定対象物に印加する電界の方向は、制御部80により制御される。
【0022】
レーザ光照射部50は、測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射する。図1に示されるように、レーザ光照射部50が測定対象物にレーザ光を照射する位置は、電界印加部40が測定対象物に電界を印加する位置よりも、フローセル22の下流に位置する。
レーザ光照射部50は制御部80と接続されている。後述するように、レーザ光照射部50が測定対象物に照射するレーザ光の偏光方向は制御部80により制御される。
【0023】
ここで、図2を参照して、レーザ光照射部50の詳細な構成について説明する。図2は、本実施形態のレーザ光照射部50の一例を示す概略構成図である。図2に示されるように、レーザ光照射部50は、レーザ光源部52と、波長板54と、を含む。レーザ光源部52は、例えば、直線偏光のレーザ光を発する半導体レーザである。
波長板54は、例えば、直線偏光の偏光方向を変える半波長板である。図2に矢印で示されるように、波長板54は、レーザ光源部52から照射されたレーザ光の光軸の周りに回転することができる。波長板54の角度は、制御部80により制御される。
【0024】
次に、図1に戻り、受光部60,62について説明する。
受光部60は、フローセル22にレーザ光が照射される位置を基準として、レーザ光照射部50と反対側に配置される。受光部60は、測定対象物にレーザ光が照射された際に生じる前方散乱光を受光する。受光部60は、例えば、フォトダイオードなどの光電変換器を備える。受光部60は、受光した前方散乱光を電気信号に変換して出力する。
受光部60が出力する電気信号は、フローセル22にレーザ光が照射される位置を測定対象物が通過するタイミングを知らせるトリガ信号として用いられる。
【0025】
受光部62は、フローセル22にレーザ光が照射される位置を基準として、レーザ光照射部50からレーザ光が照射される方向とフローセル22内を測定対象物が流れる方向の相互に垂直な方向に配置される。受光部62は、測定対象物にレーザ光が照射された際に発せられる蛍光を受光する。受光部62は、例えば、光電子倍増管などの光電変換器を備える。受光部62は、受光した蛍光を電気信号に変換して出力する。
受光部62が出力する電気信号は、フローセル22にレーザ光が照射される位置を通過する測定対象物を特定するための信号として用いられる。
【0026】
次に、データ処理部70について説明する。データ処理部70は、受光部62が受光した蛍光の情報を用いて、レーザ光を照射された測定対象物の情報を取得する。データ処理部70は、受光部60,62から出力される電気信号の入力を受け、この電気信号をデジタル信号に変換する。また、データ処理部70は、変換されたデジタル信号を用いて、測定対象物が発する蛍光の強度を求める。また、データ処理部70は、変換されたデジタル信号を用いて、レーザ光を照射された測定対象物の情報を取得する。データ処理部70により求められた各種データは、制御部80に出力される。
【0027】
次に、制御部80について説明する。制御部80は、フローサイトメータの全体の動作タイミングなどの制御を行う。
図1に示されるように、制御部80は、液体供給装置10がサンプル液やシース液を加圧する大きさを制御する。また、制御部80は、レーザ光照射部50が測定対象物に照射するレーザ光の偏光方向を制御する。
測定された測定対象物は、容器90に回収される。
以上が本実施形態のフローサイトメータの概略構成である。
【0028】
本実施形態の蛍光測定装置によれば、電界印加部40により電界を印加された測定対象物に対し、レーザ光照射部50が直線偏光のレーザ光を照射するため、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めることができる。
【0029】
(蛍光測定方法)
次に、図3を参照して、本実施形態のフローサイトメータを用いた蛍光測定方法について説明する。図3は、本実施形態の蛍光測定方法の一例を示すフローチャートである。
まず、電界印加部40が、フローセル22の内部を流れる測定対象物に電界を印加する(ステップS101)。
【0030】
ここで、図4を参照して、電界印加部40が測定対象物に電界を印加することによる測定対象物の状態の変化について説明する。図4(a)は、電界を印加される前の細胞30の状態を示す図であり、図4(b)は、電界を印加された後の細胞30の状態を示す図である。
上述したように、細胞30には予め蛍光色素32が付与されている。一般に、蛍光色素32は双極子モーメントを有している。図4に示される矢印は双極子モーメントの方向を示す。図4(a)に示されるように、電界を印加される前の細胞30の蛍光色素32の双極子モーメントは、ランダムな方向を向いていると考えられる。細胞30に印加される電界の方向と蛍光色素32の双極子モーメントの方向の関係は定かではないが、図4(b)に示されるように、電界印加部40が細胞30に電界を印加することにより、蛍光色素32の双極子モーメントの方向は一定の方向を向くと考えられる。
【0031】
図3に戻り、次に、レーザ光照射部50が、測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射する(ステップS102)。レーザ光照射部50が照射するレーザ光の直線偏光の方向は、予め定められている。
次に、受光部62が、測定対象物にレーザ光が照射された際に発せられる蛍光を受光する(ステップS103)。
次に、データ処理部70が、受光部62が受光した蛍光の情報を用いて、レーザ光を照射された測定対象物が発する蛍光の強度を取得する(ステップS104)。
次に、制御部80が、所定数の蛍光強度を取得したか否かを判別する(ステップS105)。
【0032】
ステップS105において、制御部80が、所定数の蛍光強度を取得していないと判別した場合、制御部80は、レーザ光照射部50が測定対象物に照射するレーザ光の偏光方向を変更する(ステップS106)。具体的には、制御部80が、波長板54を回転させることにより、レーザ光の偏光方向を変更する。
次に、ステップS101に戻り、以後、ステップS105において、制御部80が、所定数の蛍光強度を取得したと判別するまで、上述したステップS101〜S106を繰り返す。
【0033】
測定対象物に電界を印加した際における蛍光色素32の双極子モーメントの方向と、直線偏光のレーザ光の偏光方向とが所定の角度になると、レーザ光を照射された測定対象物が発する蛍光強度は強くなる。例えば、測定対象物に電界を印加した際における蛍光色素32の双極子モーメントの方向と、直線偏光のレーザ光の偏光方向とが一致するときに、レーザ光を照射された測定対象物が発する蛍光強度は強くなると考えられる。そのため、レーザ光の偏光方向を変更した後にステップS104において測定対象物が発する蛍光強度を取得すると、レーザ光の偏光方向に応じた蛍光強度が取得される。
【0034】
ステップS105において、制御部80が、所定数の蛍光強度を取得したと判別した場合、制御部80は、蛍光強度が大きくなる方向にレーザ光の偏光方向を制御する(ステップS107)。例えば、制御部80は、ステップS104においてデータ処理部70が取得した蛍光強度が最大となる位置に、波長板54を回転させる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の蛍光測定方法によれば、電界印加部40により電界を印加された測定対象物に対し、レーザ光照射部50が直線偏光のレーザ光を照射するため、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めることができる。
【0036】
<第2の実施形態>
(フローサイトメータの構成)
第1の実施形態のフローサイトメータは、レーザ光照射部50が照射する直線偏光のレーザ光の偏光方向を変えることにより、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めるものである。本実施形態のフローサイトメータは、レーザ光照射部50が照射する直線偏光のレーザ光の偏光方向は一定であるが、電界印加部40が測定対象物に印加する電界の方向を変えることにより、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めるものである。
【0037】
本実施形態のフローサイトメータの構成は、基本的に図1を参照して説明したフローサイトメータの構成と同様である。以下の説明では、第1の実施形態のフローサイトメータと同様の部分の説明は省略し、本実施形態のフローサイトメータが第1の実施形態と異なる部分について主に説明する。
図1に示されるように、本実施形態のフローサイトメータは、液体供給装置10と、フローセル22と、電界印加部40と、レーザ光照射部50と、受光部60、62と、データ処理部70と、制御部80と、を備える。液体供給装置10の構成は第1の実施形態と同様である。
【0038】
電界印加部40は、フローセル22の内部を流れる測定対象物に電界を印加する。ここで、図5を参照して、本実施形態の電界印加部40の具体的な構成について説明する。図5は、測定対象物がフローセル22の内部を流れる方向と直交する方向における電界印加部40の断面図の一例である。
図5に示されるように、本実施形態の電界印加部40は、4つの電極42a,42b,42c,42dを備える。例えば、2つの電極42a,42bの間に電圧を印加することにより、図5の左右方向に電界を印加することができる。また、2つの電極42c,42dの間に電圧を印加することにより、図5の上下方向に電界を印加することができる。
【0039】
図1に示されるように、電界印加部40は制御部80と接続されている。具体的には、4つの電極42a,42b,42c,42dは、それぞれ制御部80と接続されている。これにより、4つの電極42a,42b,42c,42dに印加される電位は個別に制御される。
【0040】
レーザ光照射部50の構成は、第1の実施形態と同様である。但し、本実施形態においては、レーザ光照射部50が照射する直線偏光のレーザ光の偏光方向は一定であるため、直線偏光の偏光方向を変える波長板54は必ずしも必要ではない。
受光部60,62、データ処理部70の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0041】
次に、制御部80について説明する。制御部80は、フローサイトメータの全体の動作タイミングなどの制御を行う。
図1に示されるように、制御部80は、液体供給装置10がサンプル液やシース液を加圧する大きさを制御する。また、制御部80は、電界印加部40が測定対象物に印加する電界の方向を制御する。
以上が本実施形態のフローサイトメータの概略構成である。
【0042】
本実施形態の蛍光測定装置によれば、電界印加部40により電界を印加された測定対象物に対し、レーザ光照射部50が直線偏光のレーザ光を照射するため、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めることができる。
【0043】
(蛍光測定方法)
次に、図6を参照して、本実施形態のフローサイトメータを用いた蛍光測定方法について説明する。図6は、本実施形態の蛍光測定方法の一例を示すフローチャートである。
まず、電界印加部40が、フローセル22の内部を流れる測定対象物に電界を印加する(ステップS201)。例えば、制御部80が、2つの電極42a,42bの間に電圧を印加することにより、図5の左右方向に電界を印加する。
次に、レーザ光照射部50が、測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射する(ステップS202)。レーザ光照射部50が照射するレーザ光の直線偏光の方向は、予め定められている。
次に、受光部62が、測定対象物にレーザ光が照射された際に発せられる蛍光を受光する(ステップS203)。
次に、データ処理部70が、受光部62が受光した蛍光の情報を用いて、レーザ光を照射された測定対象物が発する蛍光強度を取得する(ステップS204)。
次に、制御部80が、所定数の蛍光強度を取得したか否かを判別する(ステップS205)。
【0044】
ステップS205において、制御部80が、所定数の蛍光強度を取得していないと判別した場合、制御部80は、レーザ光照射部50が測定対象物に印加する電界の方向を変更する(ステップS206)。例えば、図5の上下方向に電界を印加するために、制御部80が、2つの電極42c,42dを選択する。
次に、ステップS201に戻り、以後、ステップS205において、制御部80が、所定数の蛍光強度を取得したと判別するまで、上述したステップS201〜S206を繰り返す。
【0045】
上述したように、測定対象物に電界を印加した際における蛍光色素32の双極子モーメントの方向と、直線偏光のレーザ光の偏光方向とが一致するほど、レーザ光を照射された測定対象物が発する蛍光強度は強くなると考えられる。そのため、測定対象物に印加する電界の方向を変更した後にステップS204において測定対象物が発する蛍光強度を取得すると、電界を印加する方向に応じた蛍光強度が取得される。
【0046】
ステップS205において、制御部80が、所定数の蛍光強度を取得したと判別した場合、制御部80は、蛍光強度が大きくなる方向に電界を印加する方向を制御する(ステップS207)。例えば、制御部80は、ステップS204においてデータ処理部70が取得した蛍光強度が最大となる方向に電界を印加するように、電圧を印加する電極を選択する。
以上説明したステップにより求めた条件で測定を行うことにより、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の蛍光測定方法によれば、電界印加部40により電界を印加された測定対象物に対し、レーザ光照射部50が直線偏光のレーザ光を照射するため、測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光強度を高めることができる。
【0048】
(変形例1)
上述した実施形態においては、レーザ光源部52が直線偏光のレーザ光を発する半導体レーザである場合の例について説明したが、レーザ光源部52は直線偏光のレーザ光を発するレーザ光源に限定されるものではない。
レーザ光源部52は、円偏光のレーザ光を発するレーザ光源であってもよい。図7は、本変形例のレーザ光照射部50の一例を示す概略構成図である。図7に示される例では、レーザ光照射部50は、円偏光のレーザ光を発するレーザ光源部52と、偏光子56と、を備える。偏光子56は、円偏光から直線偏光を生成する。
本変形例のようなレーザ光照射部50においても、測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射することができる。
【0049】
以上説明したように、本変形例のように、レーザ光照射部50が円偏光のレーザ光を発するレーザ光源部52と、偏光子56とを備える場合であっても、本発明を適用することができる。
【0050】
(変形例2)
上述した実施形態においては、測定対象物がフローセル22の内部を流れる方向と直交する方向に、電界印加部40が電界を印加する例について説明したが、電界印加部40が電界を印加する方向はこれに限定されるものではない。
電界印加部40は、測定対象物がフローセル22の内部を流れる方向の成分を持つ電界を印加する構成であってもよい。図8は、本変形例において、測定対象物がフローセル22の内部を流れる方向に沿った電界印加部40の一例を示す断面図である。図8に示される例では、電界印加部40は、4つの電極42a,42b,42c,42dを備える。
【0051】
電界印加部40は制御部80と接続されている。具体的には、4つの電極42a,42b,42c,42dは、それぞれ制御部80と接続されている。これにより、4つの電極42a,42b,42c,42dに印加される電位は個別に制御される。
例えば、2つの電極42a,42bの間に電圧を印加することにより、測定対象物がフローセル22の内部を流れる方向と直交する方向に電界を印加することができる。また、2つの電極42a,42dの間に電圧を印加することにより、測定対象物がフローセル22の内部を流れる方向の成分を持つ電界を印加することができる。
【0052】
以上説明したように、本変形例のように、測定対象物がフローセル22の内部を流れる方向の成分を持つ電界を電界印加部40が印加する構成であっても、本発明を適用することができる。
【0053】
以上、本発明の蛍光測定装置及び蛍光測定方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。以上説明した実施形態や変形例は、適宜、組み合わせることができ、また、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0054】
10 液体供給装置
12 サンプル液タンク
14 シース液タンク
16 配管
18 サンプル液管
20 シース液管
22 フローセル
30 細胞
32 蛍光色素
40 電界印加部
42a,42b,42c,42d 電極
50 レーザ光照射部
52 レーザ光源部
54 波長板
56 偏光子
60,62 受光部
70 データ処理部
80 制御部
90 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に移動する測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光を受光する蛍光測定装置であって、
前記測定対象物に電界を印加する電界印加部と、
前記電界印加部が前記測定対象物に電界を印加する位置よりも、前記所定の方向の下流の位置において、前記測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記測定対象物が前記レーザ光を照射された際に発せられる蛍光を受光する受光部と、を備えることを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項2】
前記レーザ光照射部は、レーザ光の偏光方向を変える波長板を含む、請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項3】
前記受光部が受光した蛍光に基づいて、前記測定対象物が発する蛍光強度を求めるデータ処理部と、
前記データ処理部が求めた蛍光強度に基づいて、前記レーザ光照射部が前記測定対象物に照射するレーザ光の偏光方向を制御する制御部と、
を備える、請求項1又は2に記載の蛍光測定装置。
【請求項4】
前記受光部が受光した蛍光に基づいて、前記測定対象物が発する蛍光強度を求めるデータ処理部と、
前記データ処理部が求めた蛍光強度に基づいて、前記電界印加部が前記測定対象物に印加する電界の方向を制御する制御部と、
を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の蛍光測定装置。
【請求項5】
前記電界印加部は、異なる複数の方向に電界を印加するように配列された複数の電極を含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の蛍光測定装置。
【請求項6】
所定の方向に移動する測定対象物にレーザ光を照射した際に発せられる蛍光を受光する蛍光測定方法であって、
前記測定対象物に電界を印加する電界印加工程と、
前記電界印加工程の後に、前記測定対象物に直線偏光のレーザ光を照射する照射工程と、
前記測定対象物が前記レーザ光を照射された際に発せられる蛍光を受光する受光工程と、
を有することを特徴とする蛍光測定方法。
【請求項7】
前記受光工程において受光した蛍光に基づいて、前記測定対象物が発する蛍光強度を求めるデータ処理工程と、
前記データ処理工程において求めた蛍光強度に基づいて、前記測定対象物に照射する前記レーザ光の偏光方向を制御する制御工程と、
を有する、請求項6に記載の蛍光測定方法。
【請求項8】
前記受光工程において受光した蛍光に基づいて、前記測定対象物が発する蛍光強度を求めるデータ処理工程と、
前記データ処理工程において求めた蛍光強度に基づいて、前記測定対象物に電界を印加する方向を制御する制御工程と、
を有する、請求項6又は7に記載の蛍光測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−141190(P2011−141190A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1849(P2010−1849)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】