説明

蛍光管の製造方法、光源装置の製造方法、及び表示装置の製造方法

【課題】蛍光管の製造における、排気効率の向上を図る。
【解決手段】電極構体20に設けられたガラスビーズ13及び14のうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、2本のリード線11及び12の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光管の製造方法と、この蛍光管を少なくとも1つ以上備えた光源装置の製造方法と、この光源装置を備えた表示装置の製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイをはじめとする、所謂フラットパネルディスプレイと呼称される表示装置においては、全体的な照明となる光源装置と、光変調素子(例えば液晶ディスプレイにおける液晶素子)とが設けられており、この光源装置と光変調素子との組み合わせによって、所定の光出力が可能とされている。
【0003】
光源装置は、その構成や種類について様々な検討がなされてきたが、近年では、発光効率、色域、及び長期信頼性などの点で、蛍光管の利用が有望視されている。
特に、熱陰極型の蛍光管は、発光効率が高く、輝度も高いことから、注目されている。熱陰極型の蛍光管は、ガラス管の両端部に電極を備え、ガラス管内の空間にアルゴン等のガスと水銀が封入されると共に、ガラス管の内面に蛍光体が塗布された構成を有する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、蛍光管の製造においては、最終的に得る蛍光管内の雰囲気を調整するために、ガラス管内部の排気が行われる。
しかし、目的とする蛍光管が特定の形状を有している(ガラス管の径が小さいなどの)場合、図16A及び16Bのガラス管内部の縦断面図及び横断面図に示すように、例えばガラス管102内とこの管内のガラスビーズ113との間の空間が狭くなるために、管内の気体のコンダクタンス(排気されやすさ)が著しく低下し、排気がし難くなることが問題となっていた。
【0005】
このような問題に対しては、蛍光管の電極に接続されるリード線の磁性を利用して、マグネットの磁力により、排気のための隙間を拡大する手法が考えられる(例えば特許文献2参照)。
しかしながら、この手法を用いて前述の問題に対応しようとすると、新たな問題が生じてしまう。例えば、排気装置の構成において、リード線を引き寄せるためのマグネットが別途設けられる必要があるため、装置構成が複雑となる。また、例えば、製造において、リード線を引き寄せた際に、ガラス管内の部材(リード線等)がガラス管に衝突するため、ガラス管の内面に塗布されていた蛍光体の剥離が生じやすくなる。
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、これらの問題を回避でき、かつ排気がよりよくなされる製造方法を見出し、本発明に至ったものである。
【特許文献1】特開平5-251042号公報
【特許文献2】特開平3-64853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、前述の排気がよりよくなされる蛍光管の製造方法と、この蛍光管を少なくとも1つ以上備えた光源装置の製造方法と、この光源装置を備えた表示装置の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蛍光管の製造方法は、電極に複数のリード線が接続され、前記複数のリード線のうち、少なくとも2本の両方に固着されたガラスビーズを2個備えた電極構体を使用し、前記ガラスビーズのうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形し、前記複数のリード線のうち少なくとも1本の、前記2個のガラスビーズの間の位置に、水銀アマルガムを溶接し、前記電極構体の前記リード線をガラス管に挿入した後に、前記ガラス管内を排気し、前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の端部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止し、前記水銀アマルガムを加熱して、水銀を蒸発させ、前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の内部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る光源装置の製造方法は、蛍光管を備えた光源装置の製造方法であって、前記蛍光管の製造を、電極に複数のリード線が接続され、前記複数のリード線のうち、少なくとも2本の両方に固着されたガラスビーズを2個備えた電極構体を使用し、前記ガラスビーズのうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形し、前記複数のリード線のうち少なくとも1本の、前記2個のガラスビーズの間の位置に、水銀アマルガムを溶接し、前記電極構体の前記リード線をガラス管に挿入した後に、前記ガラス管内を排気し、前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の端部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止し、前記水銀アマルガムを加熱して、水銀を蒸発させ、前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の内部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止することによって行うことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る表示装置の製造方法は、光源装置を備えた表示装置の製造方法であって、前記光源装置を構成する蛍光管の製造を、電極に複数のリード線が接続され、前記複数のリード線のうち、少なくとも2本の両方に固着されたガラスビーズを2個備えた電極構体を使用し、前記ガラスビーズのうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形し、前記複数のリード線のうち少なくとも1本の、前記2個のガラスビーズの間の位置に、水銀アマルガムを溶接し、前記電極構体の前記リード線をガラス管に挿入した後に、前記ガラス管内を排気し、前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の端部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止し、前記水銀アマルガムを加熱して、水銀を蒸発させ、前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の内部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止することによって行うことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る製造方法においては、楕円状とされたガラスビーズの断面の、長手方向において、ガラス管との溶着(融着)を図り、短手方向において、ガラス管との間により広い空間を残存形成させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る蛍光管の製造方法によれば、電極構体に設けられたガラスビーズのうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形することから、この断面の短手方向において、ガラスビーズの周囲のガラス管との間により広い空間が残存形成されることにより、排気効率の向上が図られる。
【0013】
本発明に係る光源装置の製造方法によれば、蛍光管の製造を、電極構体に設けられたガラスビーズのうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形することによって行うことから、排気効率の向上によって、生産性の向上が図られる。
【0014】
本発明に係る表示装置の製造方法によれば、蛍光管の製造を、電極構体に設けられたガラスビーズのうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形することによって行うことから、排気効率の向上によって、生産性の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
<蛍光管の製造方法の実施の形態>
最初に、蛍光管の製造方法の実施の形態について説明する。
【0017】
まず、本実施形態に係る蛍光管の製造方法によって最終的に得る蛍光管について、図1A及び図1Bを参照して説明する。
この蛍光管1は、図1Aに示すように、細長いガラス管2の両端部にそれぞれ電極3,4が設けられ、右端部の電極3に接続された2本のリード線5,6と、左端部の電極4に接続された2本のリード線11,12とが、ガラス管2の外まで延びている。ガラス管2の内面には、蛍光体層2Aが形成されている(図1B参照)。また、ガラス管2の内部には、アルゴンArやネオンNe等の希ガスと発光物質である水銀Hgが封入されている。
【0018】
図1Bは、蛍光管1の左端部の電極4付近の拡大図である。なお、蛍光管1の右端部の電極3の構成は、この電極4と同様である。
電極4は、コイル部8Aとこのコイル部8Aから繋がる第1のリード部8B及び第2のリード部8Cとから成るヒータ8を備える。ヒータ8は、タングステン(W)或いはレニウムタングステン(Re−W)等の線材から構成される。
ヒータ8は、線材を螺旋状に巻いたものを、線材同士が互いに接触しないように更に二重或いは三重の螺旋状に巻いて略円筒型のコイル部8Aを形成し、コイル部8Aの後端から2本のリード部8B,8Cが延びる形状となっている。
【0019】
ヒータ8を二重又は三重の螺旋構造としたことにより、コイル部8Aを形成する線材の実質的な長さが増大することから、コイル部8Aの表面積を増加させることができる。よって、コイル部8Aに塗布される電子放射性物質の量を増やすことができ、電極4の寿命を延ばすことが可能となる。ヒータ8を形成する線材としては、25μm〜70μm程度の直径のものが用いられるが、二重の螺旋構造とした場合の巻きやすさと、強度を両立できる太さとしては、例えば、45μm〜55μm程度の直径が好ましい。
なお、ヒータ8は、電子放射性物質、例えば、バリウムBa、ストロンチウムSr、カルシウムCaから成る3元アルカリ土類金属酸化物により被覆されている。なお、電子放射性物質としては、その他の物質、例えば二元のバリウム酸化物を用いてもよい。
【0020】
電極4は、ヒータ8を支持する第1のヒータタブ9Aと、第2のヒータタブ9Bとを備える。第1のヒータタブ9Aには、ヒータ8の第1のリード部8Bの後端側が、溶接により接続される。第2のヒータタブ9Bには、ヒータ8の第2のリード部8Cの後端側が、溶接により接続される。第1のヒータタブ9A及び第2のヒータタブ9Bは、例えば、ステンレス(SUS304)等の板材から成る。
また、電極4は、第1のヒータタブ9Aと第2のヒータタブ9Bを介して、リード線11,12にそれぞれ接続されている。リード線11,12は互いが略平行で、ガラス管2の端部を外部から内部へと貫通している。リード線11の、ガラス管2の内部へ延びている部分の先端側に、第1のヒータタブ9Aが溶接により接続されている。また、リード線12の、ガラス管2の内部へ延びている部分の先端側に、第2のヒータタブ9Bが溶接により接続されている。
【0021】
このように、リード線11,12に支持される電極4は、ヒータ8のコイル部8Aがガラス管2の管軸を長手方向とする配置とされている。このため、放電によって生じるイオンは、主にコイル部8Aの先端に衝突することになり、コイル部8Aの側面では、イオンの衝突による電子放射性物質の飛散が発生しにくい。
また、電極4は、コイル部8Aの後端側から延びる2本のリード部8B,8Cでヒータ8を導入線に支持しているので、ヒータ8にはテンションがかからないことから、断線が発生しにくい。
【0022】
さらに、電極4にスリーブ7を備えていることにより、電子放射性物質の飛散や蒸発を防いでいる。スリーブ7は飛散防止部材の一例で、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)等により構成され、両端が開口した円筒形状を有している。
スリーブ7は、内側にヒータ8のコイル部8Aが略平行となる向きで挿入され、スリーブリード10によって第1のヒータタブ9Aに取り付けられている。これにより、スリーブ7はコイル部8Aの先端側と後端側を開放した形態でコイル部8Aの周囲を覆っている。
本実施形態において、スリープリード10は、第1のヒータタブ9A及び第2のヒータタブ9Bと同様にステンレス(例えばSUS304)で構成される。また、スリープリード10は第2のヒータタブ9Bに固定してもよい。
【0023】
ここで、スリーブ7の内径は、ヒータ8のコイル部8Aの外径より大きく、スリーブ7の内側にヒータ8のコイル部8Aを略平行となる向きで挿入したときに、スリーブ7にコイル部8Aが接触しないように構成される。
また、スリーブ7の外径がガラス管2の内径より小さく、スリーブ7とガラス管2が接触しないように構成される。
さらに、スリーブ7の開口端面より、コイル部8Aの先端部が突出しない位置関係となるように、スリーブ7が取り付けられている。
【0024】
なお、スリーブ7とヒータ8の位置関係は、スリーブ7の開口端面よりコイル部8Aの先端部が内側に入り込んでいる位置関係が好ましいが、スリーブ7の開口端面とコイル部8Aの先端部が同一面に位置していても良い。
また、スリーブ7の長さをコイル部8Aの長さより長くすることにより、コイル部8Aの側面全体がスリーブ7で覆われるようにすることが好ましい。
また、ガラス管2の内面の蛍光体層2Aの塗布範囲は、電極4のスリーブ7の開口端面より若干外側となる位置までとすることが好ましい。この蛍光体層2Aの塗布範囲が、蛍光管1の発光部分となる。
【0025】
この構成による蛍光管1は、例えば、次のようにして動作させることができる。
まず、各電極3,4に例えば5V程度の電圧を印加し、ヒータ8で電子放射性物質を加熱する。そして、リード線5,6及び11,12を通じて、両電極3,4の間に高周波で例えば300Vの電圧を印加する。これにより、電子放射性物質から電子が放出され、電極3,4間にアーク放電が発生する。なお、電極3,4間にアーク放電が発生した後は、電極3,4間に例えば100V程度の電圧を印加すると共に、各電極3,4に例えば2V程度の電圧を印加するような制御を行う。
電子放射性物質から放出され加速された電子は、水銀原子に衝突し、水銀原子を励起する。励起された水銀原子は紫外線を放出する。この紫外線が蛍光体層2Aの蛍光体により可視光に変換されて、蛍光管1が発光する。
【0026】
次に、この図1A及び図1Bに示した蛍光管を製造する場合を例として、本実施形態に係る蛍光管の製造方法について説明する。
【0027】
ここでは、まず、図2〜図8を参照して、本実施形態に係る蛍光管の製造方法の、基本的な手順について説明する。なお、図2〜図8において、リード線11,12の一端側には電極4が接続されているが、この電極4は図示を省略している。
【0028】
まず、図2Aに示すように、一端側に電極4(図示せず)が接続され、一定の間隔をあけた2本のリード線11,12に、円柱形のガラス管21を通す。なお、図2Bは図2Aの鎖線位置における断面図である。
続いて、図3A及び図3Bに示すように、加熱22によってガラス管21をリード線11,12に溶着させる。
続いて、図4A及び図4Bに示すように、プレス23によって、リード線11,12が並ぶ方向が長手方向となるように、最終的に短手方向となる方向(図4Aにおいては紙面に直交する方向)から押圧成形を行うことにより、図5A及び図5Bに示すように、断面が楕円形のガラスビーズ13を得る。なお、ここでは、ガラスビーズ13の断面を、2本のリード線11,12の並ぶ幅方向を長軸とする楕円形とする成形が行えればよく、成形手法は必ずしも直接的なプレス(押圧成形)によらなくとも良い。
【0029】
続いて、ガラス管2内に導入したリード線11,12及び溶着されたガラスビーズ13に対し、図6A及び図6Bに示すように、加熱22Aを施し、引き続いて図7A及び図7Bに示すように、ガラスビーズ13の楕円状断面の長手方向からプレス(押圧成形)23Aを施す。
これら加熱22A及びプレス23Aにより、ガラスビーズ13に対し、楕円状とされた断面の長手方向に相当する位置から、ガラス管2を融着させる(図8A及び図8B)。
このように、予めガラスビーズ13が断面楕円状に押圧成形され、その楕円状断面の長手方向においてガラス管2と融着されていることから、ガラスビーズ13とガラス管2との間に形成される空間は、従来の製造方法によって得られる空間よりも大きくなる。
【0030】
次に、図9〜図12を参照して、本実施形態に係る蛍光管の製造方法を、より具体的に説明する。すなわち、ここでは、図1A及び図1Bに示した蛍光管の製造について、より具体的に説明する。
【0031】
まず、リード線11,12と、ガラスビーズ13,14と、水銀アマルガム15と、電極4とによって構成される電極構体20を用意する。この電極構体20は、一端側に電極4が接続されたリード線11,12の両方に、固着及び押圧成形されたガラスビーズ13,14の間に、例えばリード線11に直接溶接されるなどして水銀アマルガム20が取り付けられて構成されている。この電極構体20において、2個のガラスビーズ13,14は、2本のリード線11,12に沿った方向に並んで、溶着されている。また、リード線11,12同士は、接触しないように一定の間隔を有している。
なお、この電極構体20の作製にあたっては、前述した図2〜図5に対応する工程を、ガラスビーズを2個形成する分だけ繰り返して行う。
【0032】
続いて、図9(ガラス管2の一部を切開した上面図)に示すように、予め一端側に電極3及びリード線5,6を取り付けて封止したガラス管2に対して、電極構体20をガラス管2の他端側から挿入する。
そして、電極構体20の2個のガラスビーズ13,14のうち、ガラス管2の内部側のガラスビーズ14とガラス管2とを溶着させて仮止めすることにより、電極構体20が落ちないようにする。
【0033】
その後、図10に示すように、2本の通電電極26と排気口27とを備えた給電装置25を用意して、この給電装置25をガラス管2の開口端部に装着し、ガラス管2を気密シールする。また、2本のリード線11,12を、給電装置25の通電電極26に接触させて導通をとる。
続いて、給電装置25の排気口27に、排気装置28を取り付けて、ガラス管2内の排気を行う。そして、一定の真空度が得られた時点で、通電電極26に通電させる。これにより、リード線11,12に取り付けた電極の電子放射性物質を活性化させる。このとき、先にガラス管2の一端側に取り付けられた電極3に対しても、リード線5,6に通電して、電極3の電子放射性物質を活性化させる。なお、通電電極26に通電させる代わりに、電極3,4に対して高周波加熱を行ってもよい。
電子放射性物質の活性化が終了した後、給電装置25に近い側(ガラス管2の端部側)のガラスビーズ13と、ガラス管2とを、加熱31により溶着してガラス管2内を封止する。
【0034】
その後、排気装置28及び給電装置25を取り外し、高周波加熱32によって水銀アマルガム15を加熱して、水銀を蒸発させる。これにより、仮止めされたガラスビーズ14とガラス管2との隙間を通過して、ガラス管2の内部に水銀が拡散する。一方、ガラスビーズ13とガラス管2とが溶着されてガラス管2内が封止されているため、ガラス管2の外部に水銀が漏れ出すことはない。
続いて、図11に示すように、ガラス管の内部側のガラスビーズ14とガラス管2とを加熱33により溶着して、ガラス管2の内部を封止する。
【0035】
最後に、図12に示すように、このガラスビーズ14を溶着して封止した箇所34から端部側を、つまり2個のガラスビーズ13及び14の間のリード線11,12を、ガラス管2ごと切断する。
このようにして、図1の蛍光管1を製造することができる。
【0036】
このような本実施形態に係る蛍光管の製造方法によれば、ガラス管2内の空間をより広く残して排気に臨むことができることから、排気効率の向上によって、スループットつまり生産性の向上が図られる。
また、短時間に充分な排気を行えることにより、排気不足による蛍光管の品質低下を回避することができ、歩留まりの改善も図られる。
【0037】
<光源装置の製造方法の実施の形態>
前述した実施形態に係る蛍光管の製造方法によれば、この製造された蛍光管と、他の通常の部材とを組み合わせることにより、液晶ディスプレイをはじめとする表示装置が備えるバックライト等の、所謂光源装置を製造することも可能となる。
【0038】
表示装置は一般に、蛍光管を備えた光源装置の配置方式によって、直下(ダイレクト)方式と、エッジライト(サイドライト)方式との2種類に大別される。
直下方式は、ディスプレイ面(表面)に対向する背面(裏面)に、蛍光管を複数備えた光源装置が設けられた構成を有する。光源装置からの光が直接的に利用できるため、高輝度化、高効率化、大型化に有利とされるが、薄型化が困難で、消費電力も大きい。
一方、エッジライト方式は、ディスプレイ面に対向する背面に、例えばアクリル製板状の導光部(ライトガイド)と光源装置とが配置された構成を有する。導光部で光が拡散されるため、小型化、薄型化、低消費電力化に有利とされるが、大画面のディスプレイでは重量が問題となる。なお、エッジライト方式は更に、光源装置の位置が導光部よりも背面側となるバックライトタイプと、光学素子において反射光を生じさせることを前提に光源装置の位置が導光部よりも表面側とされた、フロントライトタイプとに分類される。
【0039】
前述した実施形態に係る蛍光管の製造方法によれば、これらの方式のいずれにも限定されることなく、蛍光管を備えた光源装置の製造を通して、様々な表示装置の製造を行うことが可能となる。
【0040】
前述した蛍光管の製造によって得られる光源装置、及びこの光源装置を備えた表示装置の、具体的な一例について、図13を参照して説明する。
なお、ここでは、蛍光管を備える光源装置が、直下方式のバックライトとして表示装置を構成する場合を例として、説明を行う。
【0041】
この表示装置21は、光源装置22を有する。光源装置22の、樹脂による導光部26内には、前述した製造方法によって得られた蛍光管1が設けられている。
【0042】
本実施形態において、光源装置22の、光学装置23に対向する最近接部には、拡散シート29が設けられている。この拡散シート29は、蛍光管1からの光を、光学装置23側へ面状に均一に導くものである。光源装置22の裏面側には、リフレクタ24が設けられている。また、必要に応じて、リフレクタ24と同様のリフレクタ25が、導光部26の側面にも設けられる。
なお、本実施形態に係る光源装置22において、導光部26を構成する樹脂は、エポキシ、シリコーン、ウレタンのほか、様々な透明樹脂を用いることができる。
【0043】
また、表示装置21は、光源装置22からの光に対して変調を施すことにより所定の出力光を出力する光学装置(例えば液晶装置)23を有する。この光学装置23に対し、前述の光源装置22は背面に設けられており、所謂直下方式のバックライトとなるこの光源装置22から、光学装置23に光が供給される。
【0044】
この光学装置23においては、光源装置22に近い側から、偏向板30と、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)用のガラス基板31及びその表面のドット状電極32と、液晶層33及びその表裏に被着された配向膜34と、電極35と、電極35上の複数のブラックマトリクス36と、このブラックマトリクス36間に設けられる画素に対応した第1(赤色)カラーフィルタ37a,第2(緑色)カラーフィルタ37b,第3カラーフィルタ37cと、ブラックマトリクス36及びカラーフィルタ37a〜37cとは離れて設けられるガラス基板38と、偏向板39とが、この順に配置されている。
ここで、偏向板30及び39は、特定の方向に振動する光を形成するものである。また、TFTガラス基板31とドット電極32及び電極35は、特定の方向に振動している光のみを透過する液晶層33をスイッチングするために設けられるものであり、配向膜34が併せて設けられることにより、液晶層33内の液晶分子の傾きが一定の方向に揃えられる。また、ブラックマトリクス36が設けられていることにより、各色に対応するカラーフィルタ37a〜37cから出力される光のコントラストの向上が図られている。なお、これらのブラックマトリクス36及びカラーフィルタ37a及び37cは、ガラス基板38に取着される。
【0045】
前述した蛍光管の製造方法によれば、この得られた蛍光管を用いて光源装置及び表示装置の製造を行うことにより、生産性の向上が図られる。
また、蛍光管の品質低下を回避することができることから、この蛍光管を備える光源装置や表示装置においても、製造における歩留まりの改善が図られる。
【0046】
<実施例>
本発明の実施例について説明する。
この実施例では、前述した実施形態に係る蛍光管の製造方法において、従来方法による場合に比べて排気がどのように改善されているかを、具体的に検討した結果について説明する。
【0047】
排気装置28の排気速度に比べて、ガラス管2内でガラスビーズが融着された位置で残る空間のコンダクタンスは非常に小さい。したがって、排気全体の速度は、この空間のコンダクタンスに支配(律速)されていると考えられる。
なお、ここでコンダクタンスとは気体の流れやすさであり、管やオリフィスの内部を気体が流れるときに生じる抵抗(排気抵抗)の逆数として、〔数1〕のように求められる。〔数1〕において、Sは実効排気速度、Sは排気装置の排気速度、Cはガラスビーズが融着された位置で残る空間のコンダクタンスである。
【0048】
【数1】

【0049】
排気のコンダクタンスは、粘性流領域や中間流領域では、圧力の上昇に伴ってコンダクタンスが大きくなる。一方、分子流領域(圧力範囲Pd<0.02(Pa・m))では、コンダクタンスは圧力により変動することはなく、例えば20℃で空気の排気を行う条件では〔数2〕で求められる。なお、〔数2〕において、dは管の直径、Lは管の長さを表す。
【0050】
【数2】

【0051】
〔数2〕から、例えば、d=0.423mm、L=0.15mmとした場合のコンダクタンスが6.11×10−5/sであった場合、d=0.465mm、L=0.15mmになるとコンダクタンスが8.11×10−5/sに変化する。つまり、直径が約10%大きくなると、コンダクタンスが約30%改善される。
【0052】
また、図14及び図15に、φ2における、空間の断面積と、管の両端(排気装置が取り付けられた一端と他端)での差圧との測定結果を示す。なお、図14における写真(模式図)は、リード各測定におけるサンプルの断面を撮影したものである。
管の両端での差圧すなわち圧力差は、管内での気体の移動で摩擦が生じるほど大きくなるため、コンダクタンス改善のためには、気体のスムーズな移動のために差圧を小さくすることが好ましい。
【0053】
図14及び図15の結果から、ガラスビーズの断面を楕円状にするほど、外側のガラス管との間に残存する空間を大きくとることができ、差圧を抑えられることが確認できた。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る蛍光管の製造方法によれば、電極構体に設けられたガラスビーズのうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形することから、この断面の短手方向において、ガラスビーズの周囲のガラス管との間により広い空間が残存形成されることにより、排気効率の向上が図られる。
また、本実施形態に係る光源装置の製造方法及び表示装置の製造方法によれば、蛍光管の製造を、電極構体に設けられたガラスビーズのうち少なくとも1個を、このガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形することによって行うことから、排気効率の向上によって、生産性の向上が図られる。
【0055】
なお、前述したガラスビーズの断面における楕円状の偏平率(長径/短径)は、1.05〜2.00とすることが特に好ましい。
【0056】
以上、本発明に係る蛍光管の製造方法、光源装置の製造方法、及び表示装置の製造方法の実施の形態を説明したが、この説明で挙げた使用材料及びその量、処理時間及び寸法などの数値的条件は好適例に過ぎず、説明に用いた各図における寸法形状及び配置関係も概略的なものである。すなわち、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0057】
例えば、前述の成形を、所謂プレス以外の手法によって行うこともできるなど、本発明は種々の変更及び変形をなされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】A,B それぞれ、本発明に係る製造方法の一例によって得られる蛍光管の概略構成図と、一部を拡大した図である。
【図2】A,B それぞれ、本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、上面図と、この上面図の鎖線位置における断面図である。
【図3】A,B それぞれ、本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、上面図と、この上面図の鎖線位置における断面図である。
【図4】A,B それぞれ、本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、上面図と、この上面図の鎖線位置における断面図である。
【図5】A,B それぞれ、本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、上面図と、この上面図の鎖線位置における断面図である。
【図6】A,B それぞれ、本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、一部を切開した上面図と、この上面図の鎖線位置における断面図である。
【図7】A,B それぞれ、本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、一部を切開した上面図と、この上面図の鎖線位置における断面図である。
【図8】A,B それぞれ、本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、一部を切開した上面図と、この上面図の鎖線位置における断面図である。
【図9】本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、一部を切開した上面図である。
【図10】本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、説明図である。
【図11】本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、一部を切開した上面図である。
【図12】本発明に係る蛍光管の製造方法の一例の説明に供する、一部を切開した上面図である。
【図13】本発明に係る製造方法によって得られる光源装置の一例を備えた表示装置の構成を示す概略構成図である。
【図14】本発明に係る製造方法によって得られる蛍光管の、一例の検討結果を示す表である。
【図15】本発明に係る製造方法によって得られる蛍光管の、一例の検討結果を示す説明図である。
【図16】A,B それぞれ、従来の蛍光管の製造方法の説明に供する、蛍光管の長手方向に沿った縦断面図と、それに直交する横断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・蛍光管、2・・・ガラス管、3,4・・・電極、5,6,11,12・・・リード線、7・・・スリーブ、8・・・ヒータ、13,14・・・ガラスビーズ、15・・・水銀アマルガム、20・・・電極構体、25・・・給電装置、26・・・通電電極、27・・・排気口、28・・・排気装置、21・・・表示装置、22・・・光源装置、23・・・光学装置、24・・・リフレクタ、25・・・リフレクタ、26・・・導光部、29・・・拡散シート、30・・・偏向板、31・・・TFTガラス基板、32・・・ドット電極、33・・・液晶層、34・・・配向膜、35・・・電極、36・・・ブラックマトリクス、37a・・・第1カラーフィルタ、37b・・・第2カラーフィルタ、37c・・・第3カラーフィルタ、38・・・ガラス基板、39・・・偏向板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極に複数のリード線が接続され、前記複数のリード線のうち、少なくとも2本の両方に固着されたガラスビーズを2個備えた電極構体を使用し、
前記ガラスビーズのうち少なくとも1個を、該ガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形し、
前記複数のリード線のうち少なくとも1本の、前記2個のガラスビーズの間の位置に、水銀アマルガムを溶接し、
前記電極構体の前記リード線をガラス管に挿入した後に、前記ガラス管内を排気し、
前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の端部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止し、
前記水銀アマルガムを加熱して、水銀を蒸発させ、
前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の内部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止する
ことを特徴とする蛍光管の製造方法。
【請求項2】
前記電極が電子放射性物質を含んで成り、前記ガラス管内を排気する際に、前記リード線を通じて前記電極に通電することにより、或いは、前記電極に対して高周波加熱を行うことにより、前記電極の前記電子放射性物質を活性化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光管の製造方法。
【請求項3】
前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の内部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止した後、
前記2個のガラスビーズ間のリード線を切断する
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光管の製造方法。
【請求項4】
前記楕円状の偏平率を、1.05〜2.00とする
ことを特徴とする請求項1に記載の蛍光管の製造方法。
【請求項5】
蛍光管を備えた光源装置の製造方法であって、
前記蛍光管の製造を、
電極に複数のリード線が接続され、前記複数のリード線のうち、少なくとも2本の両方に固着されたガラスビーズを2個備えた電極構体を使用し、
前記ガラスビーズのうち少なくとも1個を、該ガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形し、
前記複数のリード線のうち少なくとも1本の、前記2個のガラスビーズの間の位置に、水銀アマルガムを溶接し、
前記電極構体の前記リード線をガラス管に挿入した後に、前記ガラス管内を排気し、
前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の端部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止し、
前記水銀アマルガムを加熱して、水銀を蒸発させ、
前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の内部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止する
ことによって行う
ことを特徴とする光源装置の製造方法。
【請求項6】
光源装置を備えた表示装置の製造方法であって、
前記光源装置を構成する蛍光管の製造を、
電極に複数のリード線が接続され、前記複数のリード線のうち、少なくとも2本の両方に固着されたガラスビーズを2個備えた電極構体を使用し、
前記ガラスビーズのうち少なくとも1個を、該ガラスビーズの断面が、前記固着された2本のリード線の並ぶ幅方向を長軸とする楕円状となるように成形し、
前記複数のリード線のうち少なくとも1本の、前記2個のガラスビーズの間の位置に、水銀アマルガムを溶接し、
前記電極構体の前記リード線をガラス管に挿入した後に、前記ガラス管内を排気し、
前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の端部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止し、
前記水銀アマルガムを加熱して、水銀を蒸発させ、
前記2個のガラスビーズのうち、前記ガラス管の内部に近いガラスビーズを前記ガラス管に溶着させて、前記ガラス管内を封止する
ことによって行う
ことを特徴とする表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−66117(P2008−66117A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242918(P2006−242918)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】