説明

蛍光診断治療装置

【課題】 励起光波長を変えることなく同一光源を治療および蛍光診断に利用できる。
【解決手段】 光感受性物質を励起し活性化酸素を発生させて病巣を破壊する治療を行い、励起した光感受性物質からの蛍光をとらえて病巣を診断するようにした蛍光診断治療装置であって、光感受性物質を励起する光を発生する励起光源60と、励起光源60からの励起光のうち励起波長帯域以外の成分を除去するスペクトル整形手段62とを備え、スペクトル整形手段62を励起光源60からの光路上に設置した状態で診断し、スペクトル整形手段62を励起光源60から光路上に設置しない状態で治療を行うようにした。これにより、励起光波長を変えることなく同一光源を治療および蛍光診断に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自家蛍光の観察あるいは病巣部に親和性を持ち、かつ特定の光を照射することにより蛍光発光する光感受性物質を利用した蛍光観察により病巣部の診断を行う蛍光診断治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子医療技術の進歩にともなってレーザ光を用いた自家蛍光観察による病巣部の診断や、病巣部に親和性を有し、かつ光により励起されることにより蛍光を発光する光感受性物質を利用した蛍光診断が急速に発展しつつある。従来、この光感受性物質を利用した診断装置としては、特許文献1によって開示された、光感受性物質としてヘマトポルフィリン誘導体を用い、レーザ光源としてエキシマレーザを用いて励起されるダイレーザ(以下エキシマ・ダイレーザという)を用いる診断装置がよく知られている。
【0003】
以下、特許文献1によって開示された従来のレーザ装置を用いた診断装置の診断方法について図面を参照しながら説明する。図2は従来のレーザ装置を用いた診断(治療も兼用)装置の概略構成図を示すものである。図2において、Aは病巣部、Bはその周辺部で、あらかじめ光感受性物質としてヘマトポルフィリン誘導体を吸収させてある。21は光伝送路、23は診断に用いる第1のパルス光源と、24は治療に用いる第2のパルス光源で、いずれもエキシマ・ダイレーザで構成されている。この2つのダイレーザを励起するエキシマレーザは発振波長308nm、パルス幅30ns、エネルギーは数mJ〜100mJの範囲に可変して繰り返し発振する。第1のパルス光源23の発振波長は405nm、第2のパルス光源24の発振波長は630nmである。25は第1のパルス光源23と第2のパルス光源24とを切換える切換え部、26は白色パルス光源、27はテレビカメラ、28はテレビモニタ、31はハーフミラー、29は分光器、32は像増強管、36はスペクトラム解析部、37は表示部である。また、第1のパルス光源23と第2のパルス光源24と白色パルス光源26と像増強管32とスペクトラム解析部36の動作はゲートパルス発生器33で制御される。
【0004】
以上のように構成された病巣の診断装置で診断を行うときは、診断用の第1のパルス光源23によって発生させた波長405nmのレーザ光を切換え部25および光伝送路21を介して病巣部Aおよびその周辺部Bに照射し、波長405nmのレーザ光によって励起される波長630nmおよび690nmの蛍光像をテレビカメラ27によって撮像し、テレビモニタ28の画面上に白色パルス光源26により得られた白色光像と合成して表示し観察する。
【0005】
また、ハーフミラー31によって取り出された蛍光像を分光器29で分光し、スペクトラム解析部36でスペクトル分析し表示器37にスペクトラム波形を表示する。診断用の第1のパルス光源23の波長を405nmとしたのは、ヘマトボルフィリン誘導体特有の蛍光を最も効率良く励起することができ、その蛍光波長630nmおよび690nmとは離れているので散乱光の影響が小さいためである。
【0006】
一方、蛍光像を観測し病巣部Aの位置を特定するためには白色パルス光源26により映し出される白色光像の観察も必要である。その手段として、白色パルス光源26と診断用の第1のパルス光源23およびその撮像、解析手段を、制御パルスにより切換え、時分割による交互撮像手段を採用している。
【特許文献1】特公昭63−9464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の構成では、診断に用いる第1のパルス光源と、治療に用いる第2のパルス光源とを備え、第1のパルス光源と第2のパルス光源とを切換え部にて切換えて照射する必要があった。
【0008】
したがって、この発明の目的は、上記従来の問題点を解決するもので、励起光波長を変えることなく同一光源を治療および蛍光診断に利用できる蛍光診断治療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の蛍光診断治療装置は、光感受性物質を励起し活性化酸素を発生させて病巣を破壊する治療を行い、励起した光感受性物質からの蛍光をとらえて病巣を診断するようにした蛍光診断治療装置であって、光感受性物質を励起する光を発生する励起光源と、励起光源からの励起光のうち励起波長帯域以外の成分を除去するスペクトル整形手段とを備え、スペクトル整形手段を励起光源からの光路上に設置した状態で診断し、スペクトル整形手段を励起光源から光路上に設置しない状態で治療を行うようにした。
【発明の効果】
【0010】
この発明の請求項1記載の蛍光診断治療装置によれば、スペクトル整形手段を励起光源からの光路上に設置した状態で診断し、スペクトル整形手段を励起光源から光路上に設置しない状態で治療を行うようにしたので、励起光波長を変えることなく同一光源を治療および蛍光診断に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施の形態の蛍光診断治療装置を図1に基づいて説明する。図1において、60は励起光源、61は励起光源からの導光路上に設置された回転板、62は回転板61取付けられたスペクトル整形手段として用いられる光学フィルタである。この光学フィルタ62の特性は励起波長帯域の光を透過し、それ以外の波長帯域の光を反射する特性を持っている。63は回転板61に空けられた空孔、64は励起光源からの光路上に光学フィルタ62を回転させるモータ等の駆動装置である。
【0012】
上記のように構成された装置により診断および治療を行う。すなわち、腫瘍等病巣Aに集積しやすい性質をもち、励起されると活性化酸素ならびに蛍光を発生する光感受性物質を生体に与え、その後に光感受性物質を励起し活性化酸素を発生させて病巣を破壊する治療を行い、また励起した光感受性物質からの蛍光を捕らえて病巣を診断する。この際、蛍光観察を行う場合には、光路フィルタ62が位置するように駆動装置64を動作させ、励起光源60からの光が励起波長帯域成分の励起光になるようにスペクトル整形を行う。一方、治療を行う際にはスペクトル整形し光損失を生じるよりも光照射エネルギーが増大するほうが望ましいため、駆動装置64によって回転板61を回転させ、空孔63を光路上に位置させる。この回転板61を透過した励起光は第1の導光路65を通じて病巣Aへ照射される。病巣Aから蛍光および反射励起光は第2の導光路66を通り、波長選択手段67に導かれる。波長選択手段67では励起波長だけが分離され、蛍光波長を含むその他の光が撮影装置68によって捕らえられる。撮影装置68によって捕らえられた画像は画像表示装置69に表示される。
【0013】
以上のようにして励起光波長を変えることなく同一光源を治療および蛍光診断に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明にかかる蛍光診断治療装置は、励起光波長を変えることなく同一光源を治療および蛍光診断に利用できるという効果を有し、光感受性物質を利用した診断治療装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態の蛍光診断治療装置の説明図である。
【図2】従来の蛍光診断装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0016】
60 励起光源
61 回転板
62 光学フィルタ
63 空孔
64 モータ
65 第1の導光路
66 第2の導光路
67 波長選択手段
68 撮影装置
69 画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光感受性物質を励起し活性化酸素を発生させて病巣を破壊する治療を行い、励起した光感受性物質からの蛍光をとらえて病巣を診断するようにした蛍光診断治療装置であって、光感受性物質を励起する光を発生する励起光源と、前記励起光源からの励起光のうち励起波長帯域以外の成分を除去するスペクトル整形手段とを備え、前記スペクトル整形手段を励起光源からの光路上に設置した状態で診断し、前記スペクトル整形手段を励起光源から光路上に設置しない状態で治療を行うようにしたことを特徴とする蛍光診断治療装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−666(P2006−666A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217118(P2005−217118)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【分割の表示】特願平9−50012の分割
【原出願日】平成9年3月5日(1997.3.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】