説明

蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ及びその製法、並びに蛍光顕微鏡用全反射バイオチップアセンブリ

【課題】低コストで大量生産することができ、再利用が可能であり、さらには種々の標本配設手段を適用することができる蛍光顕微鏡用全反射バイオチップを提供する。
【解決手段】全反射蛍光観察される標本12が第1の面に設けられた標本配設手段Sの第2の面が密接される当接面1aを有するチップ本体1と、光源からの照明光を前記標本配設手段Sの第1の面と標本12との境界面に照射して全反射させ当該標本側にエバネッセント光を滲み出させるとともに、全反射した照射光を外部に導出するためのレンズ系2とが、実質的に透明な材料で一体に成形されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ及びその製法、並びに蛍光顕微鏡用全反射バイオチップアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機能性蛍光試薬(イオン感受性蛍光試薬やCaged化合物など)や蛍光性蛋白質(GFPなど)の開発により、分子・細胞生物学の研究において蛍光顕微鏡が重要なツールとなっている。蛍光観察の原理は、一般的に蛍光性のない生物標本に蛍光性物質を導入し(又は蛍光性蛋白を発現させ)、観察対象となる分子や構造を「光る画像」としてとらえることである。
【0003】
かかる蛍光観察のうち、光軸方向全体に励起光を照射して、その中で発する蛍光を観察する「落射蛍光観察」が従来より用いられていたが、最近、さらなる観察法として、「全反射照明蛍光観察法」が注目されている。この「全反射照明蛍光観察法」では、カバーガラス近傍のごく限定された領域(カバーガラス表面から100〜150nm程度)にのみ励起光(エバネッセント光)を発生させ、その限定された領域における励起により生じる蛍光現象を観察する。このような特殊な励起方法を用いることにより、境界面近傍でのみ起こる現象の画像化や背景光の少ない高感度の蛍光分子検出が可能になる。
【0004】
前記「全反射照明蛍光観察法」を行うためには、標本が設けられたカバーガラスと当該標本との境界面に光源からの光を照射して全反射させ前記エバネッセント光を発生させるとともに、全反射した照射光を外部に導出するためのレンズ系を設ける必要がある。
【0005】
非特許文献1には、このレンズ系と、光源からの光を導く光ファイバと、前記標本が設けられるカバーガラスとを一体化したバイオチップが記載されている。このバイオチップは、図22に示されるように、シリコン基板20の上面(図22において上方の面)にSU−8からなる厚膜レジスト21が設けられており、また、この厚膜レジスト21上には、光源からの光をチップ内に導入するマルチモード光ファイバ26が配置されている。
【0006】
さらに、厚膜レジスト21の上面には、いずれもSU−8からなるスペーサ23、プリズム24及び柱状レンズ25が配置されている。また、これらスペーサ23、プリズム24などの上面には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなるプレート27が配設されている。観察対象物である標本28は、厚膜レジスト21の上面であって、スペーサ23とプリズム24との間のスペースに設けられている。マルチモード光ファイバ26の先端から照射されたレーザ光29は、柱状レンズ25及びプリズム24を経由して厚膜レジスト21と標本28との境界面に達し、この境界面で全反射をし、標本28側の限定された領域にエバネッセント光を発生させる。そして、標本から発せられる蛍光は、図22において、例えばプレート27の上方に配設される対物レンズ(図示せず)を介してCCDカメラなどの撮像手段(図示せず)に取り込まれる。また、前記境界面で全反射をしたレーザ光29は、シリコン基板20の上面に配置されたマルチモード光ファイバ22を経由して外部に導出される。
【0007】
【非特許文献1】Shih−Hao Huang and Fan−Gang Tseng,“Development of a monolithic total internalreflection−based biochip utilizing a microprism array for fluorescence sensing”,Jounal of Micromecanics and Microengineering,15(2005),pp2235−2242
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1のバイオチップは、微細加工法によって当該チップを構成する各要素を作製しており、これら要素をチップ毎に組み立てる必要があることから、作製するのに時間と労力を要し、大量生産するのが困難である。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、作製が容易であり、大量生産に向いている蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ及びその製法、並びに蛍光顕微鏡用全反射バイオチップアセンブリを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップは、全反射蛍光観察される標本が第1の面に設けられた標本配設手段の第2の面が密接される当接面を有するチップ本体と、光源からの照明光を前記標本配設手段の第1の面と標本との境界面に照射して全反射させ当該標本側にエバネッセント光を滲み出させるとともに、全反射した照射光を外部に導出するためのレンズ系とが、実質的に透明な材料で一体に成形されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップでは、標本配設手段(標本が塗布又は配置される面を有するガラスプレートなどの手段)が密接される当接面を有するチップ本体と、レンズ系とが一体成形されているので、構造が簡略化されるとともに、使用材料の種類が少なくなる。したがって、製造が容易であり、大量生産に向いている。その結果、低コストで製造することができる。また、バイオチップが、標本が塗布されるガラスプレートなどの標本配設手段とは別体になっているので、ガラススライド、フローセル、マイクロチャンネルなどの中から、標本の種類や観察条件などに応じて最適の標本配設手段を選択することができる。これらの標本配設手段は、特別の接着剤などを用いることなく、単にバイオチップと標本配設手段の面同士を当接させるだけで材料の付着力(ファンデルワールス力)により簡単に付着させることができる。さらに、標本配設手段が、バイオチップとは別体であるので、標本の種類に応じた表面処理(機能性蛍光試薬の塗布などの処理)を容易に行うことができる。そして、観察終了後に標本配設手段を剥がしたバイオチップは、消耗ないしは損傷部分がないので、他の標本を観察するのに再利用することができる。
【0012】
また、前記蛍光顕微鏡用全反射バイオチップにおいて、前記レンズ系を、前記チップ本体上の異なる位置に配設された複数のレンズ部を備えたものとし、かつ、前記複数のレンズ部を、前記エバネッセント光を滲み出させる一つの領域に対して相異なる波長の前記照明光を複数の方向から照射させる位置にそれぞれ配設することができる。
この蛍光顕微鏡用全反射バイオチップでは、チップ本体上の異なる位置に配設された複数のレンズ部が、エバネッセント光を滲み出させる一つの領域に対して、相異なる波長の照明光を複数の方向からそれぞれ照射させるので、当該照明光によりそれぞれ形成される複数のエバネッセント場が、前記一つの領域で重ね合わされる。その結果、一つの領域において、複数のエバネッセント光による複数の観察対象(蛍光対象)を、同時に検出することが可能となる。
【0013】
また、レンズ系が複数のレンズ部を備えている前記蛍光顕微鏡用全反射バイオチップは、前記複数のレンズ部が前記一つの領域を挟んで対称に配置されている構成とすることができる。この場合、複数のレンズ部が対称に配置されていることから、チップの構造が簡略化されたものとなる。
または、前記複数のレンズ部が前記一つの領域を中心として放射状に配置されている構成とすることができる。この場合、チップ本体上に複数のレンズ部を配設することが可能となり、多くの照明光を、前記一つの領域に照射することができる。さらに、放射状に配置されているレンズ部を通じて、照明光を前記一つの領域に照射させることで、多くの照明光によってそれぞれ生じさせるエバネッセント場を、容易に重ね合わせることができる。
【0014】
また、本発明の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップアセンブリは、前記バイオチップと、このバイオチップの前記当接面に密接される標本配設手段とを有しており、この標本配設手段が、スペーサを介して対向して配置された一対のガラススライドからなり、両ガラススライド間に全反射蛍光観察される標本が充填されていることを特徴としている。
【0015】
本発明の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップアセンブリでは、前述した効果に加えて、標本配設手段が透明な一対のガラススライドからなっているので、バイオチップの両面からの観察が可能であり、正立型顕微鏡だけでなく、倒立型顕微鏡を用いた観察を行うことができ、観察のためのシステム設計の自由度を向上させることができる。
【0016】
さらに、本発明の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップの製法は、前記バイオチップを製造する方法であって、エッチングを含む微細加工をウェハに施して前記チップ本体及びレンズ系のための金型を作製するステップと、前記金型を用いて実質的に透明な材料によりバイオチップを一体成形するステップとを含むことを特徴としている。
【0017】
本発明の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップの製法では、まず金型を作製し、この金型を用いてチップ本体及びレンズ系を含むバイオチップを製造しており、バイオチップを構成する要素の組立工程が不要であるので、当該バイオチップを低コストで大量生産することができる。
【0018】
また、前記レンズ系が複数のレンズ部を備えている前記蛍光顕微鏡用全反射バイオチップを製造する方法は、エッチングを含む微細加工をウェハに施して前記チップ本体及びレンズ系のための金型を作製する金型作製ステップと、前記金型を用いて実質的に透明な材料によりバイオチップを一体成形するチップ成形ステップとを含み、前記チップ成形ステップには、異なる方向から照射された相異なる波長の複数の前記照明光を前記一つの領域に到達させる光路を前記チップ本体が有するように、当該チップ本体の厚さを設定する、厚さ設定ステップが含まれていることを特徴としている。
【0019】
このような、レンズ系が複数のレンズ部を備えている蛍光顕微鏡用全反射バイオチップの製法によれば、チップ本体の厚さを設定してバイオチップを一体成形することにより、当該バイオチップは、複数の方向から照射される相異なる波長の照明光を、前記一つの領域に到達させることができる。このように、相異なる波長の複数の照明光によりそれぞれ形成されるエバネッセント場を、一つの領域で重ね合わせることのできるバイオチップが得られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップによれば、低コストで大量生産することができ、再利用が可能であり、さらには種々の標本配設手段を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ(以下、単に「バイオチップ」ともいう)及びその製法、並びに蛍光顕微鏡用全反射バイオチップアセンブリ(以下、単に「アセンブリ」ともいう)について詳細に説明する。
【0022】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るアセンブリAの断面説明図である。このアセンブリAは、チップ本体1とレンズ系2とを備えたバイオチップBと、このバイオチップBに付着させて用いる標本配設手段Sとからなっている。
この標本配設手段Sは、紙製のスペーサ3を介して対向して配置された一対のガラススライド4からなっており、この一対のガラススライド4間に全反射蛍光観察される標本12が充填されている。
【0023】
前記チップ本体1は、一方のガラススライド4の片面(第2の面。図1において、上側のガラススライド4の上面)が当接される当接面1aを有している。レンズ系2は、断面台形状のプリズム2aと、柱状レンズ2bとで構成されており、光源(図示せず)からの照明光を上側のガラススライド4の下面(第1の面)と標本12との境界面に照射して全反射させ当該標本側にエバネッセント光を滲み出させるとともに、前記境界面で全反射した照明光を外部に導出する役割を果たす。前記プリズム2aと柱状レンズ2bは、チップ本体1の、前記標本配設手段Sが設けられる側とは反対側に設けられている。前記レンズ系2と前記チップ本体1とは実質的に透明な材料であるポリジメチルシロキサン(PDMS)により一体に成形されている(一体に継目無く成形されている)。図22に示される従来技術では、532nmなどの光源波長において、SU−8の自家蛍光によって画像上S/N比が低くなるという問題があるが、このPDMSで作製すると、532nmなどの光源波長において自家蛍光することがなく、S/N比の低下という問題を克服することができる。なお、PDMSに代えて、例えばPMMAなど他の材料を用いることもできる。PMMAの場合、UV照明光に対して自家蛍光がない。
【0024】
また、チップ本体1は、光源からの光をチップ内に導入する光ファイバ5の先端部が当接するストッパー6及び当該光ファイバ5を保持するV型溝7aを有する保持部7(図10参照)を備えており、これらストッパー6及び保持部7も、チップ本体1と同じ材料(PDMS)で当該チップ本体1と一体に成形されている。なお、図1において、8は集光するための光トラップである。
【0025】
光ファイバ5の先端から導出されたレーザ光9は、前記柱状レンズ2b及びプリズム2aを経由して、標本配設手段Sを構成する上側のガラススライド4内に照射され、さらにこの上側のガラススライド4の下面と標本との境界面で全反射する。この全反射した照明光は、前記上側のガラススライド4及びプリズム2aを経由して、当該プリズム2aの端面から外部に照射され、この照射光を光トラップ8が受光する。
【0026】
一方、前記境界面から標本側のごく限られた領域で発生するエバネッセント光の励起により生じる蛍光現象は、標本配設手段Sの下方に配置された対物レンズ10を経由してCCDカメラなどの撮像手段(図示せず)に取り込まれる。なお、図1において、11は、前記エバネッセント光が発生する領域であるエバネッセント場を示している。
【0027】
本実施の形態に係るバイオチップBでは、チップ本体1、レンズ系2、ストッパー6及び保持部7が一体成形されているので、構造が簡略化されるとともに、使用材料の種類が少なくなる。したがって、製造が容易であり、大量生産に向いている。その結果、低コストで製造することができる。前記一体成形は、溶融材料を金型内に注入することで行うこともできるし、ホット型押し付け機を用いて行うこともできる。
【0028】
また、バイオチップBは、一対のガラススライド4からなる標本配設手段Sとは別体になっているので、ガラススライドに限らず、標本の種類や観察条件などに応じて、フローセル、マイクロチャンネルなど他の標本配設手段を選択することができる。これらの標本配設手段は、特別の接着剤などを用いることなく、単に面同士を当接させるだけで材料の付着力(ファンデルワールス力)により簡単に固着させることができる。さらに、標本配設手段Sが、バイオチップBとは別体であるので、標本の種類に応じた表面処理(機能性蛍光試薬の塗布などの処理)を容易に行うことができる。そして、観察終了後に標本配設手段Sを剥がしたバイオチップBは、消耗ないしは損傷部分がないので、他の標本を観察するのに再利用することができる。
【0029】
また、前記アセンブリAは、標本配設手段Sが透明な一対のガラススライド4からなっているので、バイオチップBの両面からの観察が可能であり、正立型顕微鏡だけでなく、倒立型顕微鏡を用いた観察を行うことができ、観察のためのシステム設計の自由度を向上させることができる。
【0030】
つぎに、図2〜10を参照しつつ、前述したバイオチップBの製法を説明する。このバイオチップBは、従来のシリコンウェハの微細加工技術とPDMSの成型技術を用いて製造することができる。なお、図2〜10では、分かり易くするために、膜や層の厚さを誇張して描いている。また、図示した例では、柱状レンズ2b及びプリズム2aからなるレンズ系2とともに、ストッパー6及び保持部7がチップ本体1と一体化されている。
【0031】
(1)シリコンウェハの熱酸化(図2参照)
まず、厚さ300〜500μmのシリコンウェハ40に熱酸化処理を施して、当該シリコンウェハ40の両面に厚さ300〜500nmのSiO2層41を形成する。酸素及び水素を、例えばそれぞれ1.1及び0.5slmの流量で流しつつ、1100℃の温度下で170分間酸化させる。
なお、SiO2層に代えて、CVD装置を用いたチッ化処理によりシリコンウェハにSiNX層を形成してもよい。
【0032】
(2)SiO2層41のパターニング(図3参照)
ついで、シリコンウェハ40の両面のSiO2層41をフォトリソグラフィ工程及びBHF(buffer hydrofluoric acid)エッチングによりパターニングする。
まずシリコンウェハ40の上面に、前記プリズム2a及び保持部7のパターンがフォトリソグラフィ工程及びBHFエッチングにより形成され、一方、シリコンウェハ40の下面に、前記柱状レンズ2bのパターンがフォトリソグラフィ工程及びBHFエッチングにより形成される。
【0033】
より詳細には、まず、シリコンウェハ40の下面をフォトレジスト膜により保護する。ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハ40の上面に、OAP(OFPR Adhesive Promotor)を加熱して発生する蒸気を当てる。ついで、シリコンウェハ40の上面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成し、さらにフォトリソグラフィ工程により所定のパターニングを行う。フォトレジスト膜を現像した後に、BHFエッチング処理を行い、ついで残っているフォトレジスト膜を除去する(図3の(c)参照)。
【0034】
つぎに、シリコンウェハ40の下面のSiO2層41をエッチング処理するに先立って、シリコンウェハ40の上面をフォトレジスト膜により保護する。ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハ40の下面に、OAPを加熱して発生する蒸気を当てる。ついで、シリコンウェハ40の下面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成し、さらにフォトリソグラフィ工程により所定のパターニングを行う。フォトレジスト膜を現像した後に、BHFエッチング処理を行い、ついで残っているフォトレジスト膜を除去する(図3の(b)参照)。
【0035】
(3)下面へのアルミ薄膜の蒸着及びアルミエッチング(図4参照)
ついで、シリコンウェハ40の下面にアルミ薄膜42を蒸着し、フォトリソグラフィとアルミエッチング処理を行う。
より詳細には、まずアルミニウムを蒸着させてシリコンウェハ40の下面にアルミ薄膜42を形成する(図4の(b)参照)。ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハ40の下面に、OAPを加熱して発生する蒸気を当てる。ついで、シリコンウェハ40の下面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成し、さらにフォトリソグラフィ工程により所定のパターニングを行う。フォトレジスト膜を現像した後に、アルミエッチング処理を行い、ついで残っているフォトレジスト膜を除去する(図4の(c)参照)。
なお、アルミニウム薄膜42に代えて、Auなど他の金属の薄膜をスパッタリング又は蒸着によりシリコンウェハ40の下面に形成することもできる。
【0036】
(4)上面のTMAHエッチング(図5参照)
ついで、下面に形成したアルミ薄膜を保護しつつ、上面側のシリコンをTMAH溶液(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)でエッチングする。
より詳細には、まず、シリコンウェハ40の下面にPDMSフィルム及び保護ジグを利用して、当該シリコンウェハ40の下面に形成したアルミ薄膜42を保護する。ついで、シリコンウェハ40の上面を、TMAH溶液で異方性エッチング処理を行う。
なお、TMAH溶液による異方性エッチング処理に代えて、KOH溶液を用いた異方性エッチング処理を採用することができる。この場合、SiNXからなるマスキング層を用いるのが好ましい。
【0037】
(5)下面の反応性イオンエッチング(図6参照)
ついで、下面のシリコンを反応性イオンエッチング(ICP−RIE)法で貫通エッチングする。
(6)SiO2層41とアルミ薄膜42の除去(図7参照)
ついで、シリコンウェハ40の上面及び下面のSiO2層41、及び下面のアルミ薄膜42を除去する。
より詳細には、まずアルミエッチング溶液を用いてシリコンウェハ40の下面のアルミ薄膜42を除去し、つぎに、BHF溶液を用いてSiO2層41を除去する。これにより、チップ本体、レンズ系及び保持部を一体化して作製するためのシリコン金型43を得ることができる。
【0038】
(7)ガラススライドへの固着(図8参照)
ついで、得られたシリコン金型43の下面をエポキシ系の接着剤44を用いてガラススライド14に固着する。ガラススライド14としては、例えば32×32mmの大きさで、厚さ0.12〜0.17mmのものを用いることができる。エポキシ系の接着剤以外は陽極接合や癒着接合などでシリコンとガラス接合できる(以上、金型作製ステップ)。
(8)PDMSの注入(図9参照)
ついで、前記シリコン金型43を含む金型内に溶融したPDMSを注入し、その後大気下で20〜40分間ガス抜きを行い、さらに70〜100℃で約30分間、オーブンで硬化させる。
(9)離型(図10参照)
ついで、硬化したPDMS製品をシリコン金型43から剥がすことで、柱状レンズ2b及びプリズム2aからなるレンズ系2並びに保持部7がチップ本体1と一体化されたバイオチップBを得ることができる(以上、チップ成形ステップ)。
【0039】
以上のようにして製造されたバイオチップB(図1)は、光ファイバ5の先端部から導出された所定の波長のレーザ光9を、エバネッセント光を滲み出させる領域に対して一方向から照射するために、バイオチップBのレンズ系2は、プリズム2aとレンズ2bとで構成された一組のレンズ部を備えている。
このバイオチップBを備えているアセンブリAによれば、全反射照明を用いた低バックグラウンドノイズでの高感度蛍光分子検出が可能となる。そして、このアセンブリAは、細胞膜や一分子計測等の生化学分野をはじめとする様々な分野における蛍光物質の検出に用いられる。なお、このバイオチップBのように単一の光ファイバ5が用いられている場合であっても、この光ファイバ5の基部側にカップリング部(図示せず)を設け、このカップリング部に接続する光源を変更することにより、光の波長を変更することができ、任意の波長による励起が可能となる。また、水銀光のように波長に幅を持たせた光を、光ファイバ5を介してチップ内に導入することも可能である。
【0040】
さらに、近年では、複数種類(例えば二種類)の蛍光分子の検出や蛍光相互相関分光法のために、複数波長同時励起(例えば二波長同時励起)による全反射照明法が提案されている。しかし、従来における、二波長同時励起のために用いられている対物レンズ型やプリズム型等の様々な光学機構は、大型であり、高価であり、また、複雑な組み立てが必要である。このため従来の光学機構は、作製が困難であり、大量生産には不向きである。
【0041】
そこで、作製が容易でかつ大量生産に向いている、複数波長同時励起による蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ(以下、単に「バイオチップ」ともいう)及びその製法、並びに蛍光顕微鏡用全反射バイオチップアセンブリ(以下、単に「アセンブリ」ともいう)について説明する。
【0042】
[実施の形態2]
図11は、本発明の実施の形態2に係るアセンブリA2の断面説明図である。このアセンブリA2は、前記実施の形態(図1参照)と同様に、チップ本体51とレンズ系52とを備えたバイオチップB2と、このバイオチップB2に付着させて用いる標本配設手段S2とからなっており、標本配設手段S2は、スペーサ53を介して対向して配置された一対のガラススライド54からなっており、この一対のガラススライド54間に全反射蛍光観察される標本62が充填されている。
【0043】
前記チップ本体51は、一方のガラススライド54の片面(第2の面。図11において、上側のガラススライド54の上面)が当接される当接面51aを有している。前記レンズ系52は、チップ本体51上の異なる位置(図11において、長手方向の両側の異なる位置)に配設された二つのレンズ部31,32を備えている。第1のレンズ部31は、断面台形状(四角錐台形状)のプリズム33の一部33a(図11では左側部分)と、柱状レンズ52bとで構成されており、第1の光源(図示せず)からの照明光を上側のガラススライド54の下面(第1の面)と標本62との境界面に照射して全反射させ当該標本側にエバネッセント光を滲み出させる役割を果たす。第2のレンズ部32は、前記プリズム33の他部33b(図11では右側部分)と、柱状レンズ152bとで構成されており、第2の光源(図示せず)からの照明光を前記境界面に照射して全反射させ当該標本側にエバネッセント光を滲み出させる役割を果たす。なお、前記第1の光源からチップ内に導入される照明光の波長λ1と、前記第2の光源からチップ内に導入される照明光の波長λ2とは異なっている。また、プリズム33は、各方向から前記境界面に照射して全反射した照明光を外部に導出する役割を果たす。そして、この実施の形態2では、第1のレンズ部31と第2のレンズ部32とが一つのプリズム33を兼用している。
【0044】
プリズム33と柱状レンズ52b,152bは、チップ本体51の、前記標本配設手段S2が設けられる側とは反対側に設けられている。プリズム33及び柱状レンズ52b,152bと、前記チップ本体51とは、実質的に透明な材料であるポリジメチルシロキサン(PDMS)により継目無く一体に成形されている。
【0045】
また、チップ本体51には、第1のレンズ部31に照明光を導出する光ファイバ55の先端部を取り付けるための第1取付部36と、第2のレンズ部32に照明光を導出する光ファイバ155の先端部を取り付けるための第2取付部37とが設けられている。第1取付部36は、光ファイバ55の先端部が当接するストッパー56、当該光ファイバ55を保持するV型溝57aを有する保持部57(図20参照)を備えている。これと同様に、第2取付部37は、光ファイバ155の先端部のためのストッパー156及び保持部157を備えている。これらストッパー56,156及び保持部57,157も、チップ本体51と同じ材料(PDMS)で当該チップ本体51と継目無く一体に成形されている。
【0046】
二つのレンズ部31,32の配置及び構成を説明する。前記二つのレンズ部31,32は、エバネッセント光を滲み出させる一つの領域(エバネッセント場61を生じさせる領域)Eに対して、相異なる波長λ1,λ2の二つの照明光(レーザ光)59,159を二方向から照射して全反射させることのできる位置にそれぞれ配設されている。そして、図11の実施の形態では、二つのレンズ部31,32は、エバネッセント光を滲み出させる前記一つの領域Eを挟んで、左右対称に配置されている。
【0047】
具体的に説明すると、チップ本体51は一方向(図11では左右方向)に長い板状に形成されている。プリズム33の左右方向の中心が、チップ本体51の左右方向の中心と一致するように、当該プリズム33は形成されている。第1のレンズ部31の柱状レンズ52bは、プリズム33の左右方向の中心よりも長手方向の一方側(図11では左側)に設けられており、第2のレンズ部32の柱状レンズ152bは、前記中心よりも長手方向の他方側(図11では右側)に設けられている。柱状レンズ52bと柱状レンズ152bとは、プリズム33の左右方向の中心に対して対称の配置にある。そして、プリズム33の前記中心が、エバネッセント光を滲み出させる前記一つの領域Eの直上位置にある。また、光ファイバ55,155の先端部を取り付けるための二つの取付部36,37も、プリズム33の前記中心に対して、対称の配置である。
【0048】
この配置及び構成により、図11の左側の光ファイバ55の先端から導出されたレーザ光59は、前記第1のレンズ部31を経由して、上側のガラススライド54内に照射され、さらにこの上側のガラススライド4の下面と標本との境界面にある所定領域で全反射する。そして、右側の光ファイバ155の先端から導出されたレーザ光159は、前記第2のレンズ部32を経由して、上側のガラススライド54内に照射され、前記境界面の前記所定領域で全反射する。そして、前記所定領域が、エバネッセント光を滲み出させる前記一つの領域Eである。すなわち、第1のレンズ部31は、エバネッセント光を滲み出させる一つの領域Eに対して、第1の波長λ1のレーザ光59を、長手方向の一方側から他方側へ向かう方向に照射させて全反射させることができる配置及び構成となっている。そして、第2のレンズ部32は、前記一つの領域Eに対して、第2の波長λ2のレーザ光159を、長手方向の他方側から一方側へ向かう方向に照射させて全反射させることができる配置及び構成となっている。
【0049】
このように、チップ本体51上の二つの異なる位置にそれぞれ配設された二つのレンズ部31,32が、エバネッセント光を滲み出させる一つの同じ領域Eに対して、相異なる二つの波長λ1,λ2の照明光を、二方向からそれぞれ照射して全反射させることで、当該照明光によりそれぞれ形成されるエバネッセント場を重ね合わせることができる。すなわち、第1の光源からの照明光(第1の波長λの光)によって励起されエバネッセント光を滲み出させる領域と、第2の光源からの照明光(第2の波長λ2の光)によって励起されエバネッセント光を滲み出させる領域と、が重ね合わされる。
【0050】
この結果、前記一つの同じ領域Eにおいて、第1の波長λ1による励起光(エバネッセント光)を発生させ、当該励起により生じる第1の蛍光現象を観察することができ、かつ、第2の波長λ2による励起光(エバネッセント光)を発生させ、当該励起により生じる第2の蛍光現象を観察することができる。このため、蛍光色が第1の蛍光現象と第2の蛍光現象とで異なることにより、前記一つの同じ領域Eにおいて、二種類(二色)の蛍光対象を区別して同時に検出することが可能となる。
そして、ガラススライド54の下面(第1の面)と標本62との境界面から標本側のごく限られた前記領域Eで発生するエバネッセント光の励起により生じた前記蛍光現象は、標本配設手段S2の下方に配置された対物レンズ60を経由してCCDカメラなどの撮像手段(図示せず)に取り込まれる。低倍率の対物レンズ60を用いることで、例えば細胞全体における複数の蛍光分子(蛍光対象)のそれぞれの挙動の観察が可能となり、高倍率の対物レンズ60を用いることで、蛍光分子レベルの観察が可能となる。なお、図11において、61は、前記エバネッセント光が発生する領域Eであるエバネッセント場を示している。
【0051】
つぎに、図12〜20を参照しつつ、図11に示したバイオチップB2の製法を説明する。このバイオチップB2は、図1の実施の形態と同様に、従来のシリコンウェハの微細加工技術とPDMSの成型技術を用いて製造することができる。なお、図12〜20では、分かり易くするために、膜や層の厚さを誇張して描いている。また、図示した例では、第1のレンズ部31及び第2のレンズ部32からなるレンズ系52とともに、ストッパー56,156及び保持部57,157がチップ本体51と一体化されている。また、第1のレンズ部31と第2のレンズ部32とが、プリズム33の中心に対して対称となるように形成されている。
【0052】
(1)シリコンウェハの熱酸化(図12参照)
まず、厚さ300〜500μmのシリコンウェハ90に熱酸化処理を施して、当該シリコンウェハ90の両面に厚さ300〜500nmのSiO2層91を形成する。酸素及び水素を、例えばそれぞれ1.1及び0.5slmの流量で流しつつ、1100℃の温度下で170分間酸化させる。
なお、SiO2層に代えて、CVD装置を用いたチッ化処理によりシリコンウェハにSiNX層を形成してもよい。
【0053】
(2)SiO2層91のパターニング(図13参照)
ついで、シリコンウェハ90の両面のSiO2層91をフォトリソグラフィ工程及びBHF(buffer hydrofluoric acid)エッチングによりパターニングする。
まずシリコンウェハ90の上面に、前記プリズム33のパターンがフォトリソグラフィ工程及びBHFエッチングにより形成され、一方、シリコンウェハ90の下面に、前記柱状レンズ52b,152b、前記第1取付部36及び前記第2取付部37のパターンがフォトリソグラフィ工程及びBHFエッチングにより形成される。
【0054】
より詳細には、まず、シリコンウェハ90の下面をフォトレジスト膜により保護する。ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハ90の上面に、OAP(OFPR Adhesive Promotor)を加熱して発生する蒸気を当てる。ついで、シリコンウェハ90の上面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成し、さらにフォトリソグラフィ工程により所定のパターニングを行う。フォトレジスト膜を現像した後に、BHFエッチング処理を行い、ついで残っているフォトレジスト膜を除去する(図13の(c)参照)。
【0055】
つぎに、シリコンウェハ90の下面のSiO2層91をエッチング処理するに先立って、シリコンウェハ90の上面をフォトレジスト膜により保護する。ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハ90の下面に、OAPを加熱して発生する蒸気を当てる。ついで、シリコンウェハ90の下面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成し、さらにフォトリソグラフィ工程により所定のパターニングを行う。フォトレジスト膜を現像した後に、BHFエッチング処理を行い、ついで残っているフォトレジスト膜を除去する(図13の(b)参照)。
【0056】
(3)下面へのアルミ薄膜の蒸着及びアルミエッチング(図14参照)
ついで、シリコンウェハ90の下面にアルミ薄膜92を蒸着し、フォトリソグラフィとアルミエッチング処理を行う。
より詳細には、まずアルミニウムを蒸着させてシリコンウェハ90の下面にアルミ薄膜92を形成する(図14の(b)参照)。ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハ90の下面に、OAPを加熱して発生する蒸気を当てる。ついで、シリコンウェハ90の下面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成し、さらにフォトリソグラフィ工程により所定のパターニングを行う。フォトレジスト膜を現像した後に、アルミエッチング処理を行い、ついで残っているフォトレジスト膜を除去する(図14の(c)参照)。
なお、アルミニウム薄膜92に代えて、Auなど他の金属の薄膜をスパッタリング又は蒸着によりシリコンウェハ40の下面に形成することもできる。
【0057】
(4)上面のTMAHエッチング(図15参照)
ついで、下面に形成したアルミ薄膜を保護しつつ、上面側のシリコンをTMAH溶液(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)でエッチングする。
より詳細には、まず、シリコンウェハ90の下面にPDMSフィルム及び保護ジグを利用して、当該シリコンウェハ90の下面に形成したアルミ薄膜42を保護する。ついで、シリコンウェハ90の上面を、TMAH溶液で異方性エッチング処理を行う。
なお、TMAH溶液による異方性エッチング処理に代えて、KOH溶液を用いた異方性エッチング処理を採用することができる。この場合、SiNXからなるマスキング層を用いるのが好ましい。
【0058】
(5)下面の反応性イオンエッチング(図16参照)
ついで、下面のシリコンを反応性イオンエッチング(ICP−RIE)法で貫通エッチングする。
(6)SiO2層41とアルミ薄膜42の除去(図17参照)
ついで、シリコンウェハ40の上面及び下面のSiO2層91、及び下面のアルミ薄膜92を除去する。
より詳細には、まずアルミエッチング溶液を用いてシリコンウェハ90の下面のアルミ薄膜92を除去し、つぎに、BHF溶液を用いてSiO2層91を除去する。これにより、チップ本体、レンズ系及び取付部を一体化して作製するためのシリコン金型93を得ることができる。
【0059】
(7)ガラススライドへの固着(図18参照)
ついで、得られたシリコン金型93の下面をエポキシ系の接着剤94を用いてガラススライド64に固着する(以上、金型作製ステップ)。
(8)PDMSの注入(図19参照)
ついで、前記シリコン金型93を含む金型内に溶融したPDMSを注入し、その後大気下で20〜40分間ガス抜きを行い、さらに70〜100℃で約30分間、オーブンで硬化させる。
(9)離型(図20参照)
ついで、硬化したPDMS製品をシリコン金型93から剥がすことで、レンズ系52、第1取付部36及び第2取付部37がチップ本体51と一体化されたバイオチップB2を得ることができる。このバイオチップB2の第1のレンズ部31と第2のレンズ部32とは、プリズム33の中心に対して対称となるようにして形成される(以上、チップ成形ステップ)。
【0060】
図19で説明したステップにおいて、溶融したPDMSをシリコン金型93に注入する際、チップ本体51の内の平板状のベース部65(図11参照)となる部分の厚さt1を設定する。例えば、ガラススライド54の厚さを0.17mmとした場合、ベース部65の厚さt1は600μmと設定される。この厚さt1は、以下の式(1)によって設定され、式(1)中の角度θi及び角度θ3等は、以下の式(2)〜式(8)の条件を満たすようにして求められる。
【0061】
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【0062】
なお、前記式(1)〜式(8)及び図11において、t2はガラススライド54の厚さ、t3はプリズム33の厚さ(ベース部65の厚さt1を除いた厚さ)である。nAは外気における(空気の)屈折率、nPはバイオチップB2の屈折率、nGはガラススライド54の屈折率、nWは標本62の屈折率である。θ1はプリズム33への入射角、θ2は屈折角、θ3はガラススライド54への入射角、θiは屈折角、θ4はプリズム33の側面(入射面)の傾斜角度(例えば54.7°)である。Lはプリズム33の寸法であって、二方向から照射する照射光の入射点(t3/2の高さ位置)における寸法である。L1は光ファイバの先端から照射光のプリズム33の入射点までの距離であり、L2は、照射光のプリズム33への入射点からエバネッセント光を滲み出させる前記一つの領域E(の中心点)までの距離である。左右方向の位置が、前記一つの領域E(の中心点)とプリズム33の中心とで一致していることから、距離L2は、プリズム33の前記寸法Lの半分の距離となる(L2=L/2)。また、前記式(8)は、ガラススライド54と標本62との境界面において入射光が全反射を起こし、エバネッセント場61を生じさせるための条件式である。この条件式により、標本62の特性が変更されても、全反射を確実に起こすことが可能となる。
【0063】
このように、前記チップ成形ステップには、チップ本体51のベース部65の厚さt1を設定する厚さ設定ステップが含まれている。この厚さ設定ステップは、二方向から照射される相異なる波長λ1,λ2の二つの照明光を一つの領域Eに到達させることのできる光路eを、チップ本体1に備えさせるためのステップである。すなわち、バイオチップB2を製造する際に、前記厚さt1を設定することにより、チップ本体51のベース部65における光路長が調整され、かつ、前記式(1)〜式(8)の条件を満たすことにより、プリズム33の中心の直下に位置する一つの領域Eに二方向からの照射光を到達させることができ、ガラススライド54と標本62との境界面における同じ領域で、二方向からの照射光を共に全反射させることが可能となる。
【0064】
したがって、この厚さ設定ステップによれば、左右二方向からの照明光によって生じる二つのエバネッセント場を、一つの領域Eで自動的に重ね合わせることができるバイオチップB2を得ることができる。このように、チップ本体51のベース部65の厚さt1を設定すれば、エバネッセント場の重ね合わせを容易に実現することができる。なお、バイオチップB2やガラススライド54の材質を変更しても、前記式(1)〜式(8)を満たすようにして、バイオチップB2の各部を設定することで、左右対称の位置から光を入射して、エバネッセント場を重ね合わせることを容易に実現することができる。
また、二つのレンズ部31,32を左右対称の配置として形成していることで、バイオチップB2の構造を簡略化し、製造を容易としている。
【0065】
[実施の形態3]
本発明の別の実施の形態3について説明する。
図11の実施の形態2では、二種類の波長の照明光によって二種類の蛍光対象(蛍光分子)を、高いSN比で超高感度に同時に検出することができる二波長同時励起のバイオチップB2を説明した。本発明では、励起波長を前記実施の形態よりも多くすることができ、例えば励起波長を四種類とすることができる(実施の形態3)。この実施の形態3のバイオチップB3及びこのバイオチップB3に付着させて用いる標本配設手段S3を備えたアセンブリA3を、図21に示す。
このバイオチップB3も、図1及び図11のチップと同様に、チップ本体151とレンズ系152とを備えており、チップ本体151とレンズ系152とが、実質的に透明な材料で一体に継目無く成形されている。標本配設手段S2は、図1及び図11のチップと同様の構成であり、説明を省略する。
【0066】
実施の形態3におけるチップ本体151は平面視において正方形であり、レンズ系152は、チップ本体51上の異なる位置(図21において、対角線で区画されたそれぞれの領域)に配設された四つのレンズ部131,132,134,135を備えている。第1のレンズ部131と第2のレンズ部132とは、プリズム133の中心を挟んで対称の配置にあり、第3のレンズ部134と第2のレンズ部135とは、プリズム133の中心を挟んで対称の配置にある。
【0067】
各レンズ部は、図11の実施の形態2と同様に、四角錐台のプリズム133の一部(四分の一の部分)と、柱状レンズとで構成されており、各光源(図示せず)からの照明光を上側のガラススライド154の下面(第1の面)と標本との境界面に照射して全反射させ当該標本側にエバネッセント光を滲み出させる役割を果たす。そして、四つのレンズ部は、エバネッセント光を滲み出させる領域Eを中心として(プリズム133の中心から)放射状に配置されている。そして、四つのレンズ部は、エバネッセント光を滲み出させる一つの領域Eに対して、相異なる四種類の波長の照明光を四方向から照射して全反射させる位置にそれぞれ配設されている。前記領域Eは、プリズム133の中心の直下位置にある。また、光ファイバ255a,255b,255c,255dの先端部を取り付けるための四つの取付部も、プリズム133の中心から放射状に配置されている。
【0068】
この実施の形態3によれば、エバネッセント光を滲み出させる一つの領域Eに、四種類の波長の照明光を四方向から照射することができる。このように、四つのレンズ部を通じて四方向から照明光を一つの領域Eに照射することで、前記四種類の波長の照明光によってそれぞれ生じさせるエバネッセント場を、領域Eにおいて容易に重ね合わせることができる。
【0069】
さらに、図21のバイオチップB3の製造方法は、図11のバイオチップB2の製造方法と同様であり、チップ成形ステップに、チップ本体151のベース部165の厚さt1を設定する厚さ設定ステップが含まれている。このステップによれば、前記実施の形態2で説明したのと同様に、バイオチップB3を製造する際に、前記厚さt1を設定することにより、チップ本体151のベース部165における光路長が調整され、かつ、前記式(1)〜式(8)の条件を満たすことにより、プリズム133の中心の直下に位置する一つの領域Eに四方向からの照射光を到達させることができ、ガラススライド154と標本との境界面における同じ領域で、四方向からの照射光を共に全反射させることが可能となる。
【0070】
したがって、四方向からの照明光によって生じる四つのエバネッセント場を、一つの領域Eで自動的に重ね合わせることができるバイオチップB3を得ることができる。このように、チップ本体151のベース部165の厚さt1を設定すれば、エバネッセント場の重ね合わせを容易に実現することができる。チップ成形ステップに厚さ設定ステップが含まれていることで、複数波長(四波長)同時励起による蛍光顕微鏡用全反射バイオチップB3を簡単に構成することができるので、このバイオチップB3は、作製が容易でかつ大量生産に向いている。
【0071】
[実施例]
つぎに本発明のバイオチップの製法を実施例に基づいて説明するが、本発明はもとよりかかる実施例にのみ限定されるものではない。
[実施例1]
(1)まず、厚さ300μmのシリコンウェハに熱酸化処理を施して、当該シリコンウェハの両面に厚さ380nmのSiO2層を形成した(図2参照)。この酸化処理は、酸素及び水素をそれぞれ1.1及び0.5slmの流量で流しつつ、1000℃の温度下で170分間行った。
【0072】
(2)ついで、シリコンウェハの下面をフォトレジスト膜により保護した。使用したフォトレジストは、OFPR−800(商品名。東京応化株式会社製フォトレジスト。粘度:50cp)であり、これを2段階スピンコーティング法(500rpm(5秒)と2000rpm(30秒))によりシリコンウェハの下面に塗布した。ホットプレートを用いて110℃で90秒間予備加熱し、ついでオーブンにて120℃で10分間本加熱した。
【0073】
ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハの上面に、20mlのOAPを石英ビーカー内で120℃に加熱して発生する蒸気を2分間当てた。
ついで、シリコンウェハの上面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成した。使用したフォトレジストは、OFPR−800(粘度:50cp)であり、これを2段階スピンコーティング法(500rpm(5秒)と3000rpm(30秒))によりシリコンウェハの上面に塗布した。
【0074】
ついで、両面マスクアラインナー露光装置で真空接触モードにてフォトリソグラフィ工程を行い、所定のパターンを形成した。アラインメントギャップは25μmであり、露光時間は1.5秒であった。
NMD−3(商品名。東京応化株式会社製現像液)を用いて2分間現像し、ついで純水で5分間すすぎ、N2ガンを用いて乾燥させ、その後オーブンで120℃で25分間加熱した。
【0075】
ついで、BHF溶液(14%HF)を用いて、10分間エッチング処理を行い、ついで純水で10分間すすぎ、N2ガンを用いて乾燥させた。
ついで、剥離液106(商品名。東京応化株式会社製フォトレジスト除去剤)を用いて、ホットプレートで95℃に加熱し、10分間除去作業を行った。その後、アセトンで5分間洗浄し、さらにエタノールで5分間洗浄した。ついで、純水で10分間すすぎ、オーブンにて15分間脱水処理を行った。
【0076】
ついで、シリコンウェハの上面をフォトレジスト膜により保護した。使用したフォトレジストは、OFPR−800(粘度:50cp)であり、これを2段階スピンコーティング法(500rpm(5秒)と2000rpm(30秒))によりシリコンウェハの上面に塗布した。ホットプレートを用いて110℃で90秒間予備加熱し、ついでオーブンにて120℃で10分間本加熱した。
ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハの下面に、20mlのOAPを石英ビーカー内で120℃に加熱して発生する蒸気を2分間当てた。
【0077】
ついで、シリコンウェハの下面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成した。使用したフォトレジストは、OFPR−800(粘度:50cp)であり、これを2段階スピンコーティング法(500rpm(5秒)と3000rpm(30秒))によりシリコンウェハの下面に塗布した。
ついで、両面マスクアラインナー露光装置で近接(プロクシミティ)プリンティングモードにてフォトリソグラフィ工程を行い、所定のパターンを形成した。アラインメントギャップは25μmであり、露光ギャップは80μmであり、露光時間は10秒間であった。
【0078】
ついで、NMD−3を用いて2分間現像し、純水で5分間すすぎ、N2ガンを用いて乾燥させ、その後オーブンで120℃で25分間加熱した。
ついで、BHF溶液(14%HF)を用いて、10分間エッチング処理を行い、ついで純水で10分間すすぎ、N2ガンを用いて乾燥させた。
ついで、剥離液106を用いて、フォトレジストを除去した。剥離液106をホットプレートで95℃に加熱し、10分間除去作業を行った。その後、アセトンで5分間洗浄し、さらにエタノールで5分間洗浄した。ついで、純水で10分間すすぎ、オーブンにて15分間脱水処理を行った。
【0079】
(3)ついでアルミニウムをシリコンウェハの下面に蒸着させた。蒸着圧は0.0025torrであり、電流は65Aであり、蒸着時間は3分間であった。
ついで、フォトレジスト膜との密着性を高めるためにシリコンウェハの下面に、20mlのOAPを石英ビーカー内で120℃に沸騰させて発生する蒸気を2分間当てた。
ついで、シリコンウェハの下面にスピンコーティング法によりフォトレジスト膜を形成した。使用したフォトレジストは、OFPR−800(粘度:50cp)であり、これを2段階スピンコーティング法(500rpm(5秒)と3000rpm(30秒))によりシリコンウェハの下面に塗布した。
【0080】
ついで、両面マスクアラインナー露光装置で真空接触モードにてフォトリソグラフィ工程を行い、所定のパターンを形成した。アラインメントギャップは25μmであり、露光時間は1.5秒間であった。
ついで、NMD−3を用いて2分間現像し、純水で5分間すすぎ、N2ガンを用いて乾燥させ、その後オーブンで120℃で25分間加熱した。
ついで、Alエッチング溶液を用いて、エッチング処理を行い、ついで純水で10分間すすぎ、N2ガンを用いて乾燥させた。
【0081】
ついで、剥離液106をホットプレートで95℃に加熱し、10分間でフォトレジスト除去作業を行った。その後、アセトンで5分間洗浄し、さらにエタノールで5分間洗浄した。ついで、純水で10分間すすぎ、オーブンにて15分間脱水処理を行った。
その後、シリコンウェハをシングルチップ(27mm×27mm)の大きさに切断した。
【0082】
(4)ついで、シリコンウェハの下面にスピンコーティング法により厚さ150μmのPDMSフィルムを形成し、さらに保護ジグを利用して、当該シリコンウェハの下面に形成したアルミ薄膜を保護した。
つぎに、TMAH溶液(20重量%)、大きな石英ビーカー、及び磁性攪拌機を備えたホットプレートを用いて異方性エッチング処理を行った。磁性攪拌機を250rpmで操作しつつTMAH溶液を90℃に維持した。エッチング時間は6時間、エッチング深さは270μm、エッチング速度はシリコン単結晶の<100>方向において0.75μm/分であった。
ついで、純水で10分間すすぎ、オーブンにて15分間脱水処理を行った。
【0083】
(5)ついで、下面のシリコンを反応性イオンエッチング(ICP−RIE)法でエッチング処理した。エッチング時間10秒に対しパッシベーション時間5秒のサイクルであり、トータルのエッチング時間は110分であった。
その後、アセトンで5分間洗浄し、さらにエタノールで5分間洗浄した。ついで純水で10分間すすぎ、オーブンにて15分間脱水処理を行った。
【0084】
(6)ついで、アルミエッチング溶液を用いてシリコンウェハの下面のアルミ薄膜を除去(除去時間:10分)した後に、純水で10分間すすぎ、N2ガンを用いて乾燥させた。つぎに、BHF溶液(14%HF)を用いてSiO2層をエッチングにより除去した(エッチング時間:10分)。その後、純水で10分間すすぎ、N2ガンを用いて乾燥させた。
【0085】
(7)ついで、得られたチップの下面にエポキシ系の接着剤を用いてガラススライド(32mm×32mm、厚さ0.2mm、松浪硝子工業株式会社製)に固着した。つぎに、90℃のオーブンにて30分間硬化させた。
(8)ついで、得られたシリコン金型を含む金型内に、Silpot184W/C(商品名。ダウコーニング社製PDMS)の混合物(重量比で硬化剤1に対しプレポリマー10を混合したもの)を溶融させたものを注入し、その後大気下で30分間ガス抜きを行い、さらに80℃の炉内で30分間硬化させた。
(9)成型されたチップを注意深くシリコン金型から剥がした。
【0086】
[実施例2]
図11に示されるように、一体に成形されたチップ本体51及びレンズ系52を有しており、かつ、レンズ系52は、チップ本体51上の異なる位置に配設された二つのレンズ部31,32を備えたバイオチップを製造した。レンズ系52及び取付部36,37の形成のためのマスクのパターンを変えるとともに、厚さ設定ステップを実行した以外は、実施例1と同様にしてバイオチップを製造した。すなわち、シリコン金型93をガラススライド64へ固着したのちのPDMSの注入(図19参照)のステップにおいて、得られたシリコン金型93を含む金型内に、Silpot184W/C(商品名。ダウコーニング社製PDMS)の混合物(重量比で硬化剤1に対しプレポリマー10を混合したもの)を溶融させたものを注入し、その後大気下で30分間ガス抜きを行い、さらに80℃の炉内で30分間硬化させた。この際、チップ本体51のベース部65の厚さt1を所定の値(600μm)に設定するために、0.3mlのプレポリマーを金型に流し込み、水平な台上に置いてガス抜きを行い、硬化させた。
【0087】
また、前記各実施の形態において、光源からの照明光をバイオチップ内に導入する光ファイバの基部側には、カップリング部(図示せず)が設けられており、このカップリング部には、LEDやレーザ発振器(レーザダイオード)等の様々な光源を接続することができる。
さらに、図11と図21の実施の形態のように、複数方向から照明光を領域Eに照射させるために、直線的な配置で対のレンズ部(例えば図21ではレンズ部131とレンズ部132)が形成されているバイオチップである場合、一方のレンズ部側に光ファイバ(光源)を設け、他方のレンズ部側に光検出器(光トラップ)を設けることができる。この場合、光ファイバから一方のレンズ部へ導出され、ガラススライドと標本との間の境界面で全反射した後の光を、他方のレンズ部によって光検出器へ導入させることができ、光検出器を吸光度センサとして機能させることができる。
【0088】
また、本発明のバイオチップ、アセンブリは、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、前記実施の形態では、レンズ系が備えているレンズを柱状(円筒状)として説明したが、これ以外に球状であってもよい。
また、図11と図21の実施の形態では、複数のレンズ部が一つのプリズムを兼用した構成としたが、各レンズ部が一つのプリズムをそれぞれ有している構成(図示せず)としてもよい。また、光ファイバの先端部が当接するストッパー及び保持部についても、図示した形状以外のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のアセンブリの一実施の形態の断面説明図である。
【図2】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図3】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は下方から見た斜視説明図、(c)は上方から見た斜視説明図である。
【図4】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)及び(c)は下方から見た斜視説明図である。
【図5】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図6】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は下方から見た斜視説明図である。
【図7】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図8】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図9】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図10】本発明のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図11】本発明のアセンブリの他の実施の形態の断面説明図である。
【図12】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図13】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は下方から見た斜視説明図、(c)は上方から見た斜視説明図である。
【図14】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)及び(c)は下方から見た斜視説明図である。
【図15】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図16】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は下方から見た斜視説明図である。
【図17】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図18】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図19】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図20】図11のバイオチップの製造工程を示しており、(a)は断面説明図、(b)は上方から見た斜視説明図である。
【図21】本発明のアセンブリの他の実施の形態の斜視説明図である。
【図22】従来のバイオチップの断面説明図である。
【符号の説明】
【0090】
1 チップ本体
2 レンズ系
2a プリズム
2b 柱状レンズ
3 スペーサ
4 ガラススライド
5 光ファイバ
6 ストッパー
7 保持部
8 光トラップ
9 レーザ光
10 対物レンズ
11 エバネッセント場
12 標本
31,32 レンズ部
131,132,134,135 レンズ部
40 シリコンウェハ
41 SiO2
42 アルミ薄膜
43 シリコン金型
A,A2,A3 アセンブリ
B,B2,B3 バイオチップ
E 領域
S,S2,S3 標本配設手段
t1 チップ本体の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全反射蛍光観察される標本が第1の面に設けられた標本配設手段の第2の面が密接される当接面を有するチップ本体と、光源からの照明光を前記標本配設手段の第1の面と標本との境界面に照射して全反射させ当該標本側にエバネッセント光を滲み出させるとともに、全反射した照射光を外部に導出するためのレンズ系とが、実質的に透明な材料で一体に成形されていることを特徴とする蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ。
【請求項2】
前記レンズ系は、前記チップ本体上の異なる位置に配設された複数のレンズ部を備え、前記複数のレンズ部は、前記エバネッセント光を滲み出させる一つの領域に対して相異なる波長の前記照明光を複数の方向から照射させる位置にそれぞれ配設されている請求項1に記載の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ。
【請求項3】
前記複数のレンズ部は、前記一つの領域を挟んで対称に配置されている請求項2に記載の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ。
【請求項4】
前記複数のレンズ部は、前記一つの領域を中心として放射状に配置されている請求項2に記載の蛍光顕微鏡用全反射バイオチップ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のバイオチップと、このバイオチップの前記当接面に密接される標本配設手段とを有しており、この標本配設手段が、スペーサを介して対向して配置された一対のガラススライドからなり、両ガラススライド間に全反射蛍光観察される標本が充填されていることを特徴とする蛍光顕微鏡用全反射バイオチップアセンブリ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のバイオチップを製造する方法であって、
エッチングを含む微細加工をウェハに施して前記チップ本体及びレンズ系のための金型を作製するステップと、
前記金型を用いて実質的に透明な材料によりバイオチップを一体成形するステップと
を含むことを特徴とする蛍光顕微鏡用全反射バイオチップの製法。
【請求項7】
請求項2〜4のいずれか一項に記載のバイオチップを製造する方法であって、
エッチングを含む微細加工をウェハに施して前記チップ本体及びレンズ系のための金型を作製する金型作製ステップと、
前記金型を用いて実質的に透明な材料によりバイオチップを一体成形するチップ成形ステップと、を含み、
前記チップ成形ステップには、
複数の方向から照射される相異なる波長の前記照明光を前記一つの領域に到達させる光路を前記チップ本体が有するように、当該チップ本体の厚さを設定する、厚さ設定ステップが含まれていることを特徴とする蛍光顕微鏡用全反射バイオチップの製法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2008−298771(P2008−298771A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119836(P2008−119836)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年12月1日 立命館大学主催の「文部科学省21世紀COE拠点形成プログラム 立命館大学 放射光生命科学研究プロジェクト 放射光生命科学研究センター第4回年次報告会」に文書をもって発表
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】