説明

蝶番及びドア構造

【課題】 簡単な構成により、小型に且つ低コストで構成することができると共に、ドア閉鎖時における人の手指等の挟み込みを防止することができる蝶番及びドア構造を提供する。
【解決手段】 ドア枠11に対してドア12を揺動可能に支持する蝶番20であって、ドア枠の一側の端面11aに取り付けられる枠取付部21と、ドア12の端面12aに取り付けられ、枠取付部に対して旋回軸22の周りに揺動可能に支持されるドア取付部23と、を有し、ドアの閉鎖状態で、枠取付部のドア枠への取付部分とドア取付部のドアへの取付部分とが互いに離間して、ドアの端面とドア枠との間に間隙13を画成するように、蝶番20を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部のドア枠に対して開閉可能にドアを枢支し、ドア閉鎖時における人の手指等の挟み込みを防止する蝶番及びドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば住宅の玄関等の開口部を画成するドア枠の一側に蝶番により揺動可能に支持されたドアにおいて、ドアの閉鎖時におけるドアとドア枠との間での人の手指等の挟み込みを防止するために、ドア閉鎖速度を抑制する所謂ダンパー機能付き蝶番が知られている。
このようなダンパー機能付き蝶番は、ドアがドア枠に対して閉鎖位置まで移動する際に、ドアの閉鎖速度を抑制して、一定速度以下の閉鎖速度でゆっくりと閉鎖させる。これにより、ドア閉鎖時におけるドアとドア枠との間での人の手指等の挟み込みを効果的に防止すると共に、ドアがドア枠に衝突して大きな音を発生させることを防止する。
【0003】
ダンパー機能付き蝶番としては、いわゆる油圧ダンパーを備えた蝶番が知られている。油圧ダンパー付き蝶番は、油圧ダンパーの作用に基づいて、ドア閉鎖速度を確実に抑制し、一定速度以下のドア閉鎖速度を実現することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような油圧ダンパー付き蝶番においては、油圧ダンパー自体大きく、蝶番内に油圧ダンパーを備えるためには、蝶番も大型化してしまう。
また、蝶番内における油圧ダンパーの占有スペースが大きく、蝶番取付時における三軸方向の位置調整のための機構の配置の自由度が小さくなってしまう。
さらに、このような油圧ダンパー付き蝶番においては、部品点数が多くなると共に、油圧ダンパー自体も比較的高価であることから、コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、簡単な構成により、小型に且つ低コストで構成することができると共に、ドア閉鎖時における人の手指等の挟み込みを防止することができる蝶番及びドア構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、本発明の第一の構成によれば、ドア枠に対してドアを揺動可能に支持する蝶番であって、ドア枠の一側の端面に取り付けられる枠取付部と、ドアの端面に取り付けられ、枠取付部に対して旋回軸の周りに揺動可能に支持されるドア取付部と、を有し、ドアの閉鎖状態で、枠取付部のドア枠への取付部分とドア取付部のドアへの取付部分とが互いに離間して、ドアの端面とドア枠との間に間隙を画成することを特徴とする、蝶番により、達成される。
【0007】
本発明による蝶番は、好ましくは、ドアの閉鎖状態で、枠取付部及びドア取付部の少なくとも一方における旋回軸に連接された領域が、他方から離れる方向に凸状に湾曲または屈折して形成されている。
【0008】
本発明による蝶番は、好ましくは、ドアの閉鎖状態で、枠取付部における旋回軸とドア枠への取付部分との中間部と、ドア取付部における旋回軸とドアへの取付部分との中間部が、互いに離れる方向に凸状に湾曲または屈折して形成されている。
【0009】
上記目的は、本発明の第二の構成によれば、ドア枠と、ドア枠に対して上述した蝶番により揺動可能に支持されたドアと、を有し、ドアの閉鎖状態で、ドアの端面とドア枠との間に形成される間隙内に、弾性材料から成る緩衝部材を備えた、ドア構造により達成される。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、ドアはドア枠に対して蝶番を介して、その旋回軸の周りに揺動可能に支持されている。
ここで、ドアが閉じられると、ドアの閉鎖に伴って、蝶番のドア取付部が旋回軸の周りに揺動して、閉鎖位置に移動する。
この閉鎖位置において、ドア取付部のドアへの取付部分は、枠取付部のドア枠への取付部分に対して離間しており、その間に間隙を画成する。
従って、ドアの閉鎖時において、ドアを閉鎖する人または第三者が、不注意等によりドア枠の一側とドアの端面との間に手指等を入れていたとしても、上述した間隙があるので、手指等がドア枠の一側、すなわち蝶番側のある側の内面とドアの端面との間に挟み込まれて圧迫により怪我をしてしまうようなことがない。
【0011】
この場合、手指等の挟み込み防止のために、従来のような油圧ダンパー等によるダンパー機能を必要とせず、ドアの閉鎖状態で、枠取付部及びドア取付部の少なくとも一方における旋回軸に連接された領域が他方から離れるように湾曲または屈折して形成され、あるいは、枠取付部における前記旋回軸と前記ドア枠への取付部分との中間部と、前記ドア取付部における前記旋回軸と前記ドアへの取付部分との中間部が、互いに離れる方向に凸状に湾曲または屈折して形成されるだけの構成によって、ドアの端面とドア枠との間に間隙を画成し、手指等の挟み込みを防止することができる。
【0012】
また、上記第二の構成によれば、上述した蝶番によって、ドア閉鎖状態でのドアの端面とドア枠との間に形成される間隙内に、弾性材料から成る緩衝部材を備えていることにより、間隙が閉塞されるので、ドアがドア枠に対して気密的に閉鎖される。
【0013】
このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、小型に且つ低コストで構成することができると共に、ドア閉鎖時における人の手指等の挟み込みによる怪我を防止することができる蝶番及びドア構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による蝶番の一実施形態を組み込んだドア構造の要部の構成を示す開放状態での概略斜視図である。
【図2】図1のドア構造における蝶番を示す拡大斜視図である。
【図3】図1のドア構造における要部を示す横断面図である。
【図4】図1のドア構造における閉鎖状態での概略斜視図である。
【図5】図4のドア構造における蝶番を示す拡大斜視図である。
【図6】図4のドア構造におけるドアとドア枠の間隙内への手指の進入状態を示す要部横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明による蝶番の一実施形態を組み込んだドア構造の要部の構成を示している。
図1に示すように、ドア構造10は、建物,家具等に設けられた開口部を画成するドア枠11と、ドア枠11に対して蝶番20により揺動可能に支持されたドア12と、蝶番20が取り付けられるドア枠11とドア12との間にドア閉鎖時に形成される間隙13内に備えられた緩衝部材14と、から構成されている。
【0016】
蝶番20は、図2に示すように、ドア枠11の一側、すなわち蝶番側に取り付けられる枠取付部21と、このドア枠11の一側に対向するドア12の端面に取り付けられ、枠取付部21に対して旋回軸22の周りに揺動可能に支持されるドア取付部23と、から構成されている。
【0017】
枠取付部21は、例えば板金により形成され、取付部分21aと、取付部分21aの軸側縁に隣接する基部21bと、から構成されている。
取付部分21aは、平坦な形状を有しており、図1及び図3に示すように、ドア枠11の一側、図示の場合右側の端面11aに当接した状態で、例えばネジにより端面11a に固定される。
基部21bは、同様に平坦な形状を有しており、取付部分21aに対して傾斜していると共に、その取付部分21aとは反対側の側縁が旋回軸22に連接されている。
【0018】
また、ドア取付部23は、例えば板金により形成され、取付部分23aと、取付部分23aの軸側縁に隣接する基部23bと、から構成されている。
取付部分23aは、平坦な形状を有しており、図1に示すように、ドア12の一端面12aに当接した状態で、例えばネジにより固定される。
基部23bは、同様に平坦な形状を有しており、取付部分23aに対して傾斜していると共に、その取付部分23aとは反対側の側縁が旋回軸22に連接されている。
【0019】
ここで、枠取付部21の基部21b及びドア取付部23の基部23bは、それぞれ取付部分21a,23aとの境界部分に沿って、複数箇所の連結部分24,25により取付部分21a,23aに連結されている。連結部は溶接により形成される。
各基部21b,23bは、それぞれ取付部分21a,23aに対して、ドア閉鎖時に取付部分21a,23aが互いに離れるように、角度を持って取り付けられており、すなわち、 枠取付部21及びドア取付部23は、各連結部分24,25を含む中間部が互いに離れる方向に凸状に屈折している。
【0020】
旋回軸22は、細長い円筒状の形状を有しており、一般的な蝶番における旋回軸とほぼ同様である。
即ち、旋回軸22は、例えば枠取付部21の基部23b及びドア取付部23の基部23bの一方に対して固定されると共に、他方に対して揺動可能に支持される。
【0021】
緩衝部材14は、上述した蝶番20を構成する枠取付部21とドア取付部23の形状によりドア閉鎖時に形成される間隙13内に配置されるように、ドア12の一端面12aに沿って接着等により取り付けられている。
緩衝部材14は、例えば弾性材料から構成されており、図示の場合、断面がD字状の中空構造を有している。
このため、ドア12の閉鎖時に、緩衝部材14は、間隙13内で、ドア枠11の一側の端面11aとドア12の一端面12aとの間で圧縮された状態で、これらの端面11a,12aに当接して、間隙13を密閉する。
【0022】
本発明によるドア構造10及び蝶番20は、以上のように構成されており、図1〜図3に示す開放状態からドア12が閉鎖される場合、以下のように動作する。
即ち、まず図1〜図3に示す開放状態においては、ドア12は開放しており、これに伴って、蝶番20も開放位置に在る。
【0023】
この状態から、ドア12が閉じられると、ドア12は、蝶番20により揺動して、図4に示すように、閉鎖位置まで移動する。
その際、蝶番20のドア取付部23は、ドア12の揺動に伴って、図5に示すように、揺動軸22の周りに揺動して、閉鎖位置に達する。
【0024】
このとき、緩衝部材14は、ドア12の閉鎖状態において、そのドア12と反対側の先端がドア枠11の端面11aに当接し、その弾性に抗して圧縮される。
これにより、緩衝部材14は、ドア枠11の端面11aに対して圧着して、間隙13を密閉する。従って、ドア12の端面12aとドア枠11の端面11aとの間で、間隙13を隙間風が通過するようなことはない。
【0025】
また、ドア12の閉鎖の際に、図6に示すように、ドア12を閉めようとする人あるいは第三者が手指Fを蝶番20の内側から間隙13内に挿入してしまった場合、手指Fは、同様にして間隙13内に在るので、ドア12の端面12aとドア枠11の端面11aとの間での挟み込みが防止される。さらに、緩衝部材14は、その弾性に基づいて変形することによって、手指Fにかかる力が軽減される。
【0026】
従って、ドア12の閉鎖時に、ドア枠11の端面11aとドア12の端面12aの間におけるドアを閉めようとする人あるいは第三者の手指Fの挟み込みが確実に防止されるので、手指Fの挟み込みによる怪我が確実に防止される。
【0027】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施することができる。
例えば、上述した実施形態においては、蝶番20の枠取付部21及びドア取付部23の基部21b,23bは、それぞれ取付部分21a,23aに対して連結部分24,25を介して連結されているが、これに限らず、各基部21b,23bは、それぞれ対応する取付部分21a,23aと一体に形成されていてもよく、また、基部21b,23bが平面ではなく湾曲面として形成されていてもよい。さらに、各基部21b,23b及び対応する取付部分21a,23aが、折り曲げ線に沿って前もって分割して形成され、且つ複数箇所の連結部分24,25で連結されるよう形成することもでき、この場合、連結部分24,25における折り曲げ加工を容易に行なうことが可能である。
【0028】
上述した実施形態においては、蝶番20の枠取付部21及びドア取付部23の基部21b,23bは、それぞれ平坦に形成されているが、これに限らず、ドア12の閉鎖状態において、枠取付部21及びドア取付部23の取付部分21a,23aが互いに離間していれば、基部21b,23bは他の形状であってもよく、例えば、各基部21b,23bが互いに離れる方向に凸状に湾曲または屈折して形成されていてもよい。また、一方の基部21bまたは23bが、対応する取付部分21a,23aと同一平面を形成していてもよい。
【0029】
上述した実施形態においては、緩衝部材14は、ドア12の端面12aに取り付けられているが、これに限らず、ドア枠11の端面11aに取り付けられていてもよい。
【0030】
上述した実施形態においては、緩衝部材14が中空に形成されているが、これに限らず、緩衝部材14は、中実構造であってもよい。
【0031】
以上述べたように、本発明によれば、簡単な構成により、小型に且つ低コストで構成することができると共に、ドア閉鎖時における人の手指等の挟み込みを防止することができる、極めて優れた蝶番及びドア構造が提供される。
【符号の説明】
【0032】
10 ドア構造
11 ドア枠
12 ドア
13 間隙
14 緩衝部材
20 蝶番
21 枠取付部
21a 取付部分
21b 基部
22 旋回軸
23 ドア取付部
23a 取付部分
23b 基部
24,25 連結部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア枠に対してドアを揺動可能に支持する蝶番であって、
前記ドア枠の一側の端面に取り付けられる枠取付部と、前記ドアの端面に取り付けられ、前記枠取付部に対して旋回軸の周りに揺動可能に支持されるドア取付部と、を有し、
前記ドアの閉鎖状態で、前記枠取付部の前記ドア枠への取付部分と前記ドア取付部の前記ドアへの取付部分とが互いに離間して、前記ドアの端面と前記ドア枠との間に間隙を画成する
ことを特徴とする、蝶番。
【請求項2】
前記ドアの閉鎖状態で、前記枠取付部及び前記ドア取付部の少なくとも一方における前記旋回軸に連接された領域が、他方から離れる方向に凸状に湾曲または屈折して形成されている、請求項1に記載の蝶番。
【請求項3】
前記ドアの閉鎖状態で、前記枠取付部における前記旋回軸と前記ドア枠への取付部分との中間部と、前記ドア取付部における前記旋回軸と前記ドアへの取付部分との中間部が、互いに離れる方向に凸状に湾曲または屈折して形成されている、請求項1に記載の蝶番。
【請求項4】
ドア枠と、ドア枠に対して請求項1から3のいずれかに記載の蝶番により揺動可能に支持されたドアと、を有し、前記ドアの閉鎖状態で、前記ドアの端面と前記ドア枠との間に形成される間隙内に、弾性材料から成る緩衝部材を備えた、
ドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97523(P2012−97523A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248145(P2010−248145)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000119449)磯川産業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】