説明

融合タンパク質ライブラリーの作製法およびスクリーニング法、ならびにそれらの使用

本発明は、免疫毒素ライブラリーなどの融合タンパク質ライブラリーを作製する方法を提供する。本発明は、融合タンパク質を含む核酸配列をコードする組換え細胞のライブラリーにも関する。加えて本発明は、ライブラリーそのもの、および癌細胞などの標的細胞に特異的な融合タンパク質のスクリーニングを行うためのライブラリーの使用に関する。さらに本発明は、融合タンパク質を改良する方法、および改良された融合タンパク質に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、融合タンパク質のライブラリー、特に免疫毒素(immunotoxin)のライブラリーを作製する方法に関する。本発明は、ライブラリーそのもの、および癌細胞などの標的細胞に特異的な融合タンパク質のスクリーニングを行うためのライブラリーの使用にも関する。加えて本発明は、免疫毒素の親和性成熟の方法、および結果として得られる免疫毒素に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
所望のエフェクター機能を有するタンパク質に連結する、標的細胞に結合するタンパク質を含む融合タンパク質には多くの応用がある。エフェクタータンパク質が検出用試薬の場合は、そのような融合タンパク質は、標的細胞、または標的細胞で発現されるタンパク質に関連する条件の検出または診断に使用することができる。エフェクタータンパク質が治療用薬剤の場合は、そのような融合タンパク質は、治療用薬剤を標的細胞に輸送するために使用することができる。治療用の融合タンパク質の例は、癌細胞を死滅させることが可能なトキシンに連結する癌特異的なリガンドを含む免疫毒素を含む。
【0003】
近年、数種類の免疫毒素が検討されている(Kreitman RJ (1999) Immunotoxins in cancer therapy. Curr Opin Immunol 11:570-578(非特許文献1);Kreitman RJ (2000) Immunotoxins. Expert Opin Pharmacother 1 :1117-1129(非特許文献2);Wahl RL (1994) Experimental radioimmunotherapy. A brief overview. Cancer 73:989-992(非特許文献3);Grossbard ML, Fidias P (1995) Prospects for immunotoxin therapy of non-Hodgkin's lymphoma. Clin Immunol lmmunopathol 76:107-114(非特許文献4);Jurcic JG, Caron PC, Scheinberg DA (1995) Monoclonal antibody therapy of leukemia and lymphoma. Adv Pharmacol 33:287-314(非特許文献5);Lewis JP, DeNardo GL, DeNardo SJ (1995) Radioimmunotherapy of lymphoma: a UC Davis experience. Hybridoma 14:115-120(非特許文献6);Uckun FM, Reaman GH (1995) Immunotoxins for treatment of leukemia and lymphoma. Leuk Lymphoma 18:195-201(非特許文献7);Kreitman RJ, Wilson WH, Bergeron K, Raggio M, Stetler-Stevenson M, FitzGerald DJ, Pastan I (2001) Efficacy of the anti-CD22 recombinant immunotoxin BL22 in chemotherapy-resistant hairy-cell leukemia. N Engl J Med 345:241-247(非特許文献8))。今日までに検討された抗体の大半は、マウスのモノクローナル抗体の形状で、場合によっては分子工学的手法によって「ヒト化された」、既知の癌マーカーに対する抗体である。しかし残念なことに、それらの標的は通常、正常細胞のサブセット上にも存在するので、いくつかの非特異的な作用を生じてしまう。さらに、このような抗体は基本的に、ヒト患者の免疫系によって外来のタンパク質として見なされるマウスのタンパク質である。免疫応答および抗体反応は後に、有効性の喪失または副作用を生じる場合がある。
【0004】
抗体の結合親和性を高めるには、2つの戦略が常用されている。1つのアプローチでは、Ab-Ag複合体の結晶構造の解像度を利用して、抗原結合に関与する重要な残基が同定される(Davies D. R., Cohen G. H. 1996. Interactions of protein antigens with antibodies. Proc Natl. Acad. Sci. USA. 93:7-12(非特許文献9))。続いて、これらの残基に変異を導入することで相互作用を高めることができる。しかしながら、このアプローチは、抗原が不明の場合は使用できない。もう1つのアプローチは、B細胞によって産生される免疫グロブリンの親和性成熟を誘導する、インビボにおける抗原刺激を模倣したものである。免疫応答の成熟中、免疫グロブリンの可変領域は体細胞変異を受ける(Mc Heyzer-Williams M. 2003. B-cell signaling mechanism and activation. Fundamental Immunology, Fifth edition, pp:195-225(非特許文献10))。免疫系に対する特異性の高いこの過程は、極めて高い点突然変異の導入率を特徴とする。これは、可変領域をコードするDNA断片内でのみ生じ、保存されたドメインは除外される。続いて、体細胞変異を生じた変種抗体を発現するB細胞を対象に、抗原による選択が行われて、より親和性の高い免疫グロブリンが選択される。この現象をインビトロで再現する目的で、複数のアプローチで、変異がランダムか、または標的プロセスのいずれかによって導入されている。ランダム変異は、誤りの多いPCR、鎖シャッフリング、または変異誘発性大腸菌株を使用して導入可能である(Clackson T. Hoogenboom N. R., Griffiths A.D. and Winter G. 1991 Making antibody fragments using phage display libraries. Nature 352:624-628(非特許文献11);Hawkins R. E., Russell S.J. and Winter G. 1992. Selection of phage antibodies by binding affinity. Mimicking affinity maturation. J. Mol. Biol. 226:889-896(非特許文献12);Low N., Holliger P. and Winter G. 1996. Mimicking somatic hypermutation: affinity maturation of antibodies displayed on bacteriophage using a bacterial mutator strain. J Mol. Biol. 260:359-368(非特許文献13))。この戦略で、反応性のクローンが、リボソーム、ファージ、または酵母などのディスプレイ手法によって選択される、大規模なライブラリーが作製される(Min L. 2000. Applications of display technology in protein analysis. Nat. Biotechnol. 18:1251-1256(非特許文献14))。
【0005】
軽鎖および重鎖のCDR、特にCDR3の標的変異は、抗体の親和性を高める有効な手法であることがわかっている。CDR3の3〜4残基のアミノ酸のブロック、すなわち「ホットスポット」と呼ばれる特異的な領域が変異誘発の標的となる。Yangらは、4か所のCDR残基に変異を導入することで、抗HIV gp120のFab断片が420倍に上昇したことを報告している(Yang W. P., Green K., Pinz-Sweeney S., Briones A.T., Burton D. R. and Barbas C.F. III. 1995, CDR walking mutagenesis for the affinity maturation of a potent human anti-HIV-1 antibody into picomolar range. J. Mol. Biol. 254:392-403(非特許文献15))。VL CDR3中における1つの変異と、C6.5 scFvのVH CDR3中における3か所の変異の組み合わせでは、親和性が1230倍に上昇した(Schier R., McCall A., Adams G.P., Marshall K.W., Merrit H., Yin M., Crawford R.S., Weiner L.M., Marks C. and Marks J. D. 1996. Isolation of picomolar affinity anti-c-erbB-2 single-chain Fv by molecular evolution of the complementary determining regions in the center of the antibody binding site. J. Mol. Biol. 263:551-567(非特許文献16))。3〜4個のアミノ酸の変異を標的とすることによって、2x105クローンの小規模ライブラリーが、可能なあらゆる組み合わせを十分にカバーする。ライブラリーのサイズは、抗体断片が可溶性タンパク質として発現され、および機能性に関して検討される、直接的なスクリーニング法に適している。
【0006】
標的細胞に特異的に結合する融合タンパク質を同定する方法の改良に関するニーズがある。特に、免疫毒素のスクリーニングおよび有効性を改良する優れた方法が求められている。
【0007】
【非特許文献1】Kreitman RJ (1999) Immunotoxins in cancer therapy. Curr Opin Immunol 11:570-578
【非特許文献2】Kreitman RJ (2000) Immunotoxins. Expert Opin Pharmacother 1 :1117-1129
【非特許文献3】Wahl RL (1994) Experimental radioimmunotherapy. A brief overview. Cancer 73:989-992
【非特許文献4】Grossbard ML, Fidias P (1995) Prospects for immunotoxin therapy of non-Hodgkin's lymphoma. Clin Immunol lmmunopathol 76:107-114
【非特許文献5】Jurcic JG, Caron PC, Scheinberg DA (1995) Monoclonal antibody therapy of leukemia and lymphoma. Adv Pharmacol 33:287-314
【非特許文献6】Lewis JP, DeNardo GL, DeNardo SJ (1995) Radioimmunotherapy of lymphoma: a UC Davis experience. Hybridoma 14:115-120
【非特許文献7】Uckun FM, Reaman GH (1995) Immunotoxins for treatment of leukemia and lymphoma. Leuk Lymphoma 18:195-201
【非特許文献8】Kreitman RJ, Wilson WH, Bergeron K, Raggio M, Stetler-Stevenson M, FitzGerald DJ, Pastan I (2001) Efficacy of the anti-CD22 recombinant immunotoxin BL22 in chemotherapy-resistant hairy-cell leukemia. N Engl J Med 345:241-247
【非特許文献9】Davies D. R., Cohen G. H. 1996. Interactions of protein antigens with antibodies. Proc Natl. Acad. Sci. USA. 93:7-12
【非特許文献10】Mc Heyzer-Williams M. 2003. B-cell signaling mechanism and activation. Fundamental Immunology, Fifth edition, pp:195-225
【非特許文献11】Clackson T. Hoogenboom N. R., Griffiths A.D. and Winter G. 1991 Making antibody fragments using phage display libraries. Nature 352:624-628
【非特許文献12】Hawkins R. E., Russell S.J. and Winter G. 1992. Selection of phage antibodies by binding affinity. Mimicking affinity maturation. J. Mol. Biol. 226:889-896
【非特許文献13】Low N., Holliger P. and Winter G. 1996. Mimicking somatic hypermutation: affinity maturation of antibodies displayed on bacteriophage using a bacterial mutator strain. J Mol. Biol. 260:359-368
【非特許文献14】Min L. 2000. Applications of display technology in protein analysis. Nat. Biotechnol. 18:1251-1256
【非特許文献15】Yang W. P., Green K., Pinz-Sweeney S., Briones A.T., Burton D. R. and Barbas C.F. III. 1995, CDR walking mutagenesis for the affinity maturation of a potent human anti-HIV-1 antibody into picomolar range. J. Mol. Biol. 254:392-403
【非特許文献16】Schier R., McCall A., Adams G.P., Marshall K.W., Merrit H., Yin M., Crawford R.S., Weiner L.M., Marks C. and Marks J. D. 1996. Isolation of picomolar affinity anti-c-erbB-2 single-chain Fv by molecular evolution of the complementary determining regions in the center of the antibody binding site. J. Mol. Biol. 263:551-567
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明者らは、融合タンパク質をコードする核酸配列を含む、新しい組換え細胞のライブラリー、融合タンパク質のライブラリー、ライブラリーの作製法、およびライブラリーの使用を開発した。融合タンパク質は、1)標的分子に結合可能なリガンドタンパク質、ならびに2)標的を検出可能な、標的に作用可能な、および/または標的分子を含む標的細胞を処理可能なエフェクター分子を含む。疾患の検出または治療に使用可能な融合タンパク質のライブラリーの作製は、有用な融合タンパク質のスクリーニングおよび選択を大きく促進する。特にスクリーニングは、融合タンパク質の個々の部分を個別に対象とするのではなく、融合タンパク質の全体を対象に実施可能である。
【0009】
好ましい態様では、融合タンパク質は免疫毒素である。免疫毒素のライブラリーを作製することは、全免疫毒素の、腫瘍細胞に対する結合および/または殺傷の有効性に関するスクリーニングが可能なことから有益である。過去に、腫瘍に特異的な抗体のスクリーニングが、腫瘍細胞との結合に関して行われており、続いて、有用な抗体が免疫毒素の作製に使用されている。免疫毒素は後に、腫瘍細胞の殺傷に関してスクリーニングする必要がある。したがって、免疫毒素のライブラリーは、治療上有用な免疫毒素の選択を大きく促進し、ならびに方法の自動化、および高処理能のアプローチへの応用が可能となる。
【0010】
したがって、本発明の1つの局面は、以下の工程を含む、融合タンパク質をコードする核酸配列を含む組換え細胞のライブラリーを作製する方法である:
(a)個々のベクターが、融合タンパク質をコードし、かつ2)エフェクター分子をコードする核酸配列と、これに連結された1)標的分子に結合するリガンドタンパク質をコードする核酸配列とを含む、ベクターのライブラリーを構築する工程;および
(b)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程。
【0011】
本発明は、本発明の方法で作製された組換え細胞のライブラリーも含む。
【0012】
本発明の別の局面は、以下の工程を含む、融合タンパク質のライブラリーを作製する方法である:
(a)個々のベクターが、融合タンパク質をコードし、かつ2)エフェクター分子をコードする核酸配列と、これに連結された1)標的分子に結合するリガンドタンパク質をコードする核酸配列とを含む、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(b)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(c)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;および
(d)融合タンパク質が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、融合タンパク質のライブラリーを発現させる工程。
【0013】
本発明は、本発明の方法で作製される融合タンパク質のライブラリーも含む。特に本発明は、対象からのB細胞に由来する複数の重鎖可変領域および複数の軽鎖可変領域を含む免疫毒素のライブラリーであって、ライブラリー中の個々の免疫毒素が、1つの重鎖可変領域および1つの軽鎖可変領域を有し、軽鎖可変領域または重鎖可変領域が細胞毒素(細胞毒素)に連結されている、ライブラリーを含む。
【0014】
本発明のさらなる局面は、融合タンパク質のライブラリーを、標的分子との結合に関してスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法である:
(a)本発明の融合タンパク質のライブラリーを提供する工程;
(b)融合タンパク質に標的分子を接触させる工程;および
(c)標的分子に対する1つもしくは複数の融合タンパク質の結合を判定する工程。
【0015】
本発明の別の局面は、融合タンパク質のライブラリーを、標的分子を含む標的細胞に対する細胞毒性に関してスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法である:
(a)本発明の融合タンパク質のライブラリーを提供する工程;
(b)融合タンパク質に標的細胞を接触させる工程;および
(c)標的細胞に対する1つもしくは複数の融合タンパク質の細胞毒性を判定する工程。
【0016】
本発明は、本発明の方法によって同定される、癌などの疾患の検出、治療、または予防に使用可能な融合タンパク質も含む。加えて本発明は、本発明の融合タンパク質を使用する、癌などの疾患の治療法または予防法、および癌などの疾患を治療もしくは予防するための融合タンパク質の使用を含む。
【0017】
本発明のさらに別の側面は、癌などの疾患を予防または治療するための改良型の融合タンパク質を作製する方法である。1つの態様では、改良型の融合タンパク質は、標的分子もしくは標的細胞に対して、改良された結合および/または改良された細胞毒性を有する。
【0018】
したがって、本発明の1つの態様は、以下の工程を含む、改良型の融合タンパク質を作製する方法である:
(a)標的分子に結合可能なリガンドタンパク質をコードする核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、リガンドタンパク質をコードする核酸配列中に導入して、変種のリガンドタンパク質をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、融合タンパク質をコードし、かつ2)エフェクター分子をコードする核酸配列と、これに連結された1)工程(b)で作製された変種のリガンドタンパク質の核酸配列の1つとを含む、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)融合タンパク質が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、融合タンパク質のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(g)融合タンパク質のライブラリーを、非修飾型の融合タンパク質と比較した活性の改善に関してスクリーニングする工程であって、活性の改善が改良型の融合タンパク質を示す工程。
【0019】
別の態様では、本方法は、改良型の免疫毒素を作製する方法であって、以下の工程を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または変種の重鎖の可変領域の核酸配列の1つを含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列および/または変種の重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(g)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0020】
当業者であれば、重鎖および/または軽鎖の可変領域の標的変異によって、例えば、軽鎖および/または重鎖の可変領域中のホットスポットにおけるライブラリーを作製可能なことを理解するであろう。受容体結合ドメインに対する受容体リガンドの変異の場合、または複合体を形成するタンパク質の場合は、二量体形成モチーフに変異を導入することができる。
【0021】
1つの態様において、改良型の免疫毒素を作製する方法は、以下の工程を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)軽鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(c)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(d)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(c)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または(a)に由来する1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(e)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(f)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(g)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(h)免疫毒素のライブラリーを、(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0022】
別の態様において、本方法は、以下の工程を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)重鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(c)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(d)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ(c)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(e)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(f)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(g)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(h)免疫毒素のライブラリーを、(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0023】
本発明は、上記の方法の変形例も含み、例えば本方法は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方に変異を導入する工程を組み合わせることができる。1つの態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域に変異を導入し、連続的にスクリーニングを行うことができる。別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域に変異を導入し、同時にスクリーニングを行うことができる。
【0024】
したがって、本発明の別の態様は、以下の工程を含む、改良型の免疫毒素を作製する方法である:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(b)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;
(g)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した標的細胞に対する結合および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程;
(h)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(i)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(h)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(h)で同定された改良型の免疫毒素の変種の軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは変種の軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(j)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(k)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(l)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(m)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0025】
さらに本発明は、以下の工程を含む、改良型の免疫毒素を作製する方法を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(b)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;
(g)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程;
(h)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(i)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(h)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(g)で同定された改良型の免疫毒素の変種の重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは変種の重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(j)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(k)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(l)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(m)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または標的細胞に対する細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0026】
したがって、本発明の別の態様は、以下の工程を含む、改良型の免疫毒素を作成する方法である:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)軽鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(c)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(d)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(c)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(e)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(f)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(g)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;
(h)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程;
(i)重鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(j)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(k)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(j)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(h)で同定された改良型の免疫毒素の変種の軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは変種の軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(l)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(m)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(n)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(o)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0027】
さらに本発明は、以下の工程を含む、改良型の免疫毒素を作製する方法を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)重鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(c)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(d)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(c)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(e)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(f)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(g)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;
(h)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程;
(i)軽鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(j)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(k)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(j)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(h)で同定された改良型の免疫毒素の変種の重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列または変種の重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(l)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(m)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(n)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(o)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または標的細胞に対する細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0028】
本発明は、改良型の免疫毒素も含む。加えて本発明は、癌などの疾患を治療または予防するための改良型の免疫毒素の使用、ならびに癌などの疾患を、本発明の改良型の免疫毒素を使用して治療または予防する方法を含む。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい態様を意味する一方で、説明目的でのみ提供されると理解されたい(本発明の趣旨および範囲内における、さまざまな変更および修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになる)。
【0030】
発明の詳細な説明
(A)定義
「アミノ酸」という用語は、天然のアミノ酸ならびに修飾型アミノ酸の全てを含む。
【0031】
本明細書で用いる「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびキメラ抗体を含むことを意図する。抗体は、組換え的な供給源に由来する場合があり、および/またはトランスジェニック動物で産生される場合がある。本明細書で用いる、「抗体断片」という用語は、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、ダイマー、ミニボディ、ディアボディ、およびこれらの多量体、ならびに二重特異性抗体の断片を含むことを意図する。抗体は、従来の手法で断片化が可能である。例えば、F(ab')2断片は、抗体をペプシンで処理することで作製可能である。結果として得られるF(ab')2断片を処理してジスルフィド架橋を還元することで、Fab'断片が得られる。パパインによる消化によって、Fab断片が形成される。Fab、Fab'、およびF(ab')2、scFv、dsFv、ds-scFv、ダイマー、ミニボディ、ディアボディ、二重特異性抗体の断片、および他の断片は、組換え手法でも合成可能である。
【0032】
本明細書で用いる、「B細胞またはBリンパ球」という用語は、液性免疫を提供するリンパ球を意味する。「成熟B細胞」は、抗原によって刺激され、および抗原に特異的な抗体を産生する形質細胞に成熟したB細胞を意味する。
【0033】
本明細書で用いる、「疾患」という用語は、認識され得る徴候および/または症状を生じる任意の医学的な条件もしくは障害を意味する。好ましい態様では、疾患は癌である。
【0034】
本明細書で用いる、「融合タンパク質」という用語は、2)エフェクター分子を含む組換えタンパク質と、これに連結された1)標的細胞に結合するリガンドタンパク質とを意味する。
【0035】
本明細書で用いる、「有効量」という用語は、所望の結果を達成するのに必要な投与量および期間において有効な量を意味する。融合タンパク質の有効量は、疾患状態、動物の年齢、性別、体重などの因子によって変動する場合がある。投与法は、最適な治療反応が提供されるように調節することができる。例えば、数回分に分けられた用量を毎日投与することができるほか、治療状況の要求に応じて用量を比例的に減らしてゆくことができる。
【0036】
本明細書で用いる、「エフェクター分子」という用語は、治療用タンパク質、診断用タンパク質、およびリガンドタンパク質をエフェクター分子に連結させる際の補助に有用な、タンパク質もしくはこの断片を含むが、これらに限定されない、リガンドタンパク質に関連づけることが望まれる任意の分子を意味する。
【0037】
本明細書で用いる、「免疫毒素(immunotoxin)」という用語は、軽鎖可変領域または重鎖可変領域のいずれかが細胞毒素に連結された、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む融合タンパク質を意味する。
【0038】
本明細書で用いる、「ホットスポット」という用語は、体細胞の過剰変異がインビボで生じる、軽鎖および重鎖の可変領域中の特定のヌクレオチド配列を意味する。1つの態様では、ホットスポットは、四ヌクレオチドRGYWを含む(RはAまたはGのいずれか、YはCまたはTのいずれか、およびWはAまたはTのいずれかを取り得る)。別の態様では、ホットスポットはヌクレオチドAGYを含む。
【0039】
本明細書で用いる、「ライブラリー」という用語は、異なるが関連する品目の集団を意味する。例えば、本明細書で用いる、「組換え細胞のライブラリー」という用語は、さまざまな組換え細胞の集団を意味する。好ましい態様では、個々の組換え細胞は、融合タンパク質をコードする核酸配列を含む。別の例では、「核酸配列のライブラリー」は、さまざまな核酸配列の集団を意味する。好ましい態様では、ライブラリー中の個々の核酸配列は、抗体の軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域をコードする。本明細書で用いる、「ベクターのライブラリー」という用語は、さまざまなベクターの集団を意味する。好ましい態様では、個々のベクターは、エフェクター分子をコードする核酸分子に操作可能に連結されたリガンドタンパク質をコードする核酸配列を含む。本明細書で用いる、「融合タンパク質のライブラリー」という用語は、さまざまな融合タンパク質の集団を意味する。1つの態様では、免疫毒素のライブラリーは、親和性成熟に使用されるために変異が導入された軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域を含む。
【0040】
本明細書で用いる、「修飾型ボウガニン(bouganin)」という用語は、国際出願WO/2005/090579、および米国特許出願第2005/0238642号に記載されているような、免疫応答を活性化する傾向が減じられた修飾型のボウガニンを意味する。一例では、修飾型のボウガニンは、以下のアミノ酸配列を有する。

【0041】
本明細書で用いる、「核酸配列」という用語は、天然の塩基、糖、および糖と糖の間の(バックボーン)結合からなるヌクレオシドまたはヌクレオチドのモノマーの配列を意味する。この用語は、非天然のモノマーまたはこの一部分を含む、修飾型または置換型の配列も含む。本発明の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)の場合があり、ならびにアデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む天然の塩基を含む場合がある。配列は、修飾塩基を含む場合もある。このような修飾塩基の例は、アザおよびデアザのアデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシル;ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンを含む。この用語は、2本鎖または1本鎖のDNAもしくはRNAのいずれかを含む。
【0042】
本明細書で用いる、「対象」という用語は、B細胞を有する動物界の任意の動物を意味する。好ましい態様では、対象は哺乳類である。より好ましい態様では、対象はヒトである。
【0043】
本明細書で用いる、「標的分子」という用語は、本発明のリガンドタンパク質に結合する分子を意味する。標的分子は、標的細胞上の抗原、または固定化された抗原を含む単離された抗原の場合がある。
【0044】
本明細書で用いる、「標的細胞」という用語は、本発明のリガンドタンパク質に結合する標的分子を有する任意の細胞を意味する。1つの態様では、細胞は癌細胞である。
【0045】
本明細書で用いる、「癌を治療する」という用語は、癌細胞の複製を阻害すること、癌の拡散(転移)を阻害すること、腫瘍の成長を阻害すること、癌細胞の数を減らすか、もしくは腫瘍の成長を遅らせること、癌の悪性のグレードを低下させること(例えば分化の進行)、または癌関連の症状を改良させることを意味する。
【0046】
(B)組換え細胞および融合タンパク質のライブラリー
前述したように、融合タンパク質を発現する細胞のライブラリーを作製することは、治療または診断に有用な融合タンパク質のスクリーニングを迅速化するために有益である。本発明のいくつかの利点は、以下を含むが、これらに限定されない:
1.融合タンパク質の作製前に、最初にリガンドのスクリーニングを行う工程を避けられるために、リガンドタンパク質ではなく融合タンパク質のスクリーニングが有効なこと;
2.抗体などのリガンドタンパク質の選択が改良され、結合および内部移行性が融合タンパク質フォーマットで損なわれないこと;
3.エフェクター分子が精製されていなくとも有効なために、未精製上清のスクリーニングが可能なこと;
4.標的細胞上の未知の抗原と結合する融合タンパク質の選択が可能なこと。このような場合、エフェクター分子はトキシンの場合があり、およびスクリーニングのパラメータは細胞死の場合がある。
【0047】
したがって、本発明の1つの局面は、個々の組換え細胞が融合タンパク質をコードする核酸配列を含む、組換え細胞のライブラリーを作製する方法であって、以下の工程を含む方法である:
(a)個々のベクターが、融合タンパク質をコードし、かつ2)エフェクター分子をコードする核酸配列と、これに連結された1)標的分子に結合するリガンドタンパク質をコードする核酸配列とを含む、ベクターのライブラリーを構築する工程;ならびに
(b)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程。
【0048】
リガンドタンパク質は、抗体、抗体断片、受容体結合タンパク質、転写因子、および複合体形成タンパク質を含むが、これらに限定されない、標的分子に結合可能な任意のタンパク質の場合がある。
【0049】
好ましい態様では、リガンドは抗体または抗体断片である。使用可能な抗体断片は、組換え供給源に由来するFab、Fab'、F(ab')2、scFv、およびdsFvの断片を含む。抗体または断片は、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、およびヒトを含む任意の種に由来する場合がある。キメラ抗体の誘導体、すなわち非ヒト動物の可変領域とヒトの定常領域を結合させた抗体分子も、本発明の範囲に含まれると想定される。キメラ抗体分子は例えば、マウス、ラット、または他の種の抗体に由来する抗原結合ドメインとヒトの定常領域を含むヒト化抗体を含む場合がある。
【0050】
融合タンパク質のリガンド部分は、免疫グロブリンに由来する場合があり、すなわち免疫グロブリン(すなわち抗体)中の出発分子にトレース可能である。例えばリガンドは、当技術分野で既知の標準的な手法による、免疫グロブリンの足場の修飾によって作製可能である。別の非制限的な例では、免疫グロブリンのドメイン(例えば可変重鎖および/または可変軽鎖)を、非免疫グロブリンの足場に連結することができる。
【0051】
免疫毒素のリガンド部分は、免疫グロブリンに基づく必要はない。例えばリガンドは、Affibody(登録商標)、または標的細胞に特異的に結合する、この変種を含む場合がある。このような非免疫グロブリンのポリペプチドリガンドは、標的となる腫瘍関連分子に結合するように設計することが可能である。さらに、非免疫グロブリンのポリペプチドリガンドは、所望の親和性または結合性(avidity)を有するように作製することが可能であり、ならびに極端なpH範囲や比較的高い温度を含む、さまざまな物理的条件に耐えるように作製することが可能である。生理学的条件(例えば37℃でペプチダーゼの存在下)において比較的長い半減期を有する非免疫グロブリンのポリペプチドの設計は有益な場合がある。さらに、このような分子、またはその変種は、優れた溶解性、より小さなサイズ、適切な折りたたみを示す可能性があり、ならびに入手が容易な低コストの細菌系で発現させることが可能であり、このため商業的に妥当な量で製造可能である。非免疫グロブリンのポリペプチドを設計する能力は、当業者の能力の範囲内にある。所望の結合パートナーの設計、製造、および選択に一般に適用可能な手法については例えば、米国特許第5,831,012号および第6,534,628号を参照されたい。
【0052】
リガンドは、標的細胞上のエピトープに結合するタンパク質の場合がある。エピトープ結合ポリペプチドの例は、フィブロネクチンIII型ドメインを含むリガンドを含むが、これらに限定されない(例えば、国際出願WO 01/64942、WO 00/34784、WO 02/32925を参照)。タンパク質Aベースの親和性ライブラリーも、エピトープ結合ポリペプチドの同定に使用されており(例えば米国特許第5,831,012号および第6,534,628号を参照)、ならびにこのようなライブラリーは、標的細胞に選択的に結合するポリペプチドを選択する際に本発明で有用な場合がある。
【0053】
リピートタンパク質ドメインの集合に基づく結合分子を含むが、これに限定されない他のタイプの結合分子が、当技術分野で知られている(例えば、Forrer et al., 2003, 「A novel strategy to design binding molecules harnessing the modular nature of repeat proteins.」 FEBS Lett. 539:2-6;Kohl et al., 2003, 「Designed to be stable: crystal structure of a consensus ankyrin repeat protein.」 Proc Natl Acad Sci USA. 100:1700-1705を参照)。ランダムにアセンブルされたリピートドメインのライブラリーは、標的細胞に選択的に結合するリガンドを選択する際に本発明で有用な場合がある。
【0054】
非免疫グロブリンベースのエピトープ結合ポリペプチド、ならびに、このようなポリペプチドの複数の作製法および使用法が、当技術分野で既知である(例えば、Eklund et al., 2002, 「Anti-idiotypic protein domains selected from Protein A-based affibody libraries.」 Prot. Struct. Funct. Gen. 48:454-462;Gunneriusson et al., 1999, 「Affinity maturation of a Taq DNA polymerase specific affibody by helix shuffling.」 Prot. Eng. 12:873-878;Hansson et al., 1999, 「An in vitro selected binding protein (affibody) shows conformation-dependent recognition of the respiratory syncytial virus (RSV) G protein.」 Immunotechnol. 4: 237-252;Henning et al., 2002, 「Genetic modification of adenovirus 5 tropism by a novel class of ligands based on a three-helix bundle scaffold derived from staphylococcal protein A.」 Human Gene Therapy 13:1427-1439;Hogbom et al., 2003, 「Structural basis for recognition by an in vitro evolved affibody.」 Proc Natl Acad Sci USA. 100(6):3191-3196;Nord et al., 1997, 「Binding proteins selected from combinatorial libraries of an-helical bacterial receptor domain.」 Nature Biotechnol. 15:772-777;Nord et al., 2000, 「Ligands selected from combinatorial libraries of protein A for use in affinity capture of apolipoprotein A-1M and Taq DNA polymerase.」 J. Biotechnol. 80:45-54;Nord et al., 1995, 「A combinatorial library of an alpha-helical bacterial receptor domain.」 Prot. Eng. 8:601-608;Nord et al., 2001, 「Recombinant human factor VIII-specific affinity ligands selected from phage-displayed combinatorial libraries of protein A.」 Eur. J. Biochem. 268:1-10;Nygren et al., 1997, 「Scaffolds for engineering novel binding sites in proteins.」 Curr. Opin. Struct. Biol. 7:463-469;Ronnmark et al., 2002, 「Human immunoglobin A (IgA)-specific ligands from combinatorial engineering of protein A.」 Eur. J. Biochem. 269:2647-2655;Ronnmark et al., 2002, 「Construction and characterization of affibody-Fc chimeras produced in Escherichia coli.」 J. Immunol. Meth. 261 :199-211 ;Wahlberg et al., 2003, 「An affibody in complex with a target protein: structure and coupled folding.」 Proc Natl Acad Sci USA. 100(6):3185-3190;Gotz et al., 2002, 「Ultrafast electron transfer in the complex between fluorescein and a cognate engineered lipocalin protein, a so-called anticalin.」 Biochemistry. 41 :4156-4164;Skerra, 2001, 「Anticalins: a new class of engineered ligand-binding proteins with antibody-like properties.」 J Biotechnol. 2001 74:257-275;Skerra, 2000, 「Lipocalins as a scaffold.」 Biochim Biophys Acta. 1482:337-350;Skerra et al., 2000, 「Engineered protein scaffolds for molecular recognition.」 J Mol Recognit. 13:167-187;Schlehuber et al., 2000, 「A novel type of receptor protein, based on the lipocalin scaffold, with specificity for digoxigenin.」 J Mol Biol. 297:1105-1120;Beste et al., 1999, 「Small antibody-like proteins with prescribed ligand specificities derived from the lipocalin fold.」 Proc Natl Acad Sci USA. 96:1898-1903;PCT International Publication No. WO97/45538 entitled 「Novel Synthetic Protein Structural Templates For The Generation, Screening And Evolution Of Functional Molecular Surfaces」(プレクストリン相同(PH)領域に由来する構造テンプレートのフレームワーク中のペプチド配列のライブラリーの作製に関連)を参照)。
【0055】
エフェクター分子は好ましくは、標的となる分子または細胞に対して所望の作用を有する任意のタンパク質である。エフェクター分子の例は、標的となる分子または細胞の検出または処理に有用なタンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0056】
診断用タンパク質は、適切なアッセイ法で標的分子を検出可能な任意のタンパク質の場合がある。診断用タンパク質の例は、ルシフェラーゼや緑色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質を含むが、これらに限定されない。これらの存在の確認は、顕微鏡、または適切なフィルターを装着した走査型蛍光プレートリーダーなどの既知の手法で実施することができる。
【0057】
治療用タンパク質は、標的細胞に対して所望の治療効果を有する任意のタンパク質の場合がある。治療用タンパク質の例は、トキシン、サイトカイン、成長ホルモン、酵素、腫瘍抑制因子、転写調節因子、およびヌクレオチド結合タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0058】
診断用分子および治療用分子に加えて、放射性同位元素、蛍光マーカー、または抗癌剤の付加のための化学的修飾を容易にするために、追加の残基を、反応基を有するシステインなどのリガンドタンパク質の末端、または組換えポリペプチドの末端に付加することができる(Kaufmann and Weberskirch, 2006, Flennicken et al., 2005;米国特許第6,747,135号、Nolan et al.)。付加される残基は、付加されると意図されたマーカーの化学的性質の要件を元に選択することができる。アッセイ法は上記のように、抗癌剤を対象とした、蛍光もしくは放射活性のシンチレーションの計数、または細胞成長/細胞死アッセイ法(MTT, FMAT, BrDu取り込み)を含む場合がある。
【0059】
本発明の1つの局面は、個々の組換え細胞が免疫毒素をコードする核酸配列を含む、組換え細胞のライブラリーを作製する方法であって、以下の工程を含む方法である:
(a)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ核酸配列のライブラリーに由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列および/または1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、軽鎖可変領域の核酸配列または重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;ならびに
(b)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程。
【0060】
軽鎖および/または重鎖の可変領域をコードする核酸配列は、B細胞などの適切な供給源から得られる。B細胞の供給源は、疾患を有する対象、または疾患を有していない対象に由来する場合がある。好ましい態様では、B細胞は、癌などの疾患を有する対象に由来する。
【0061】
1つの態様では、B細胞の供給源は、任意のタイプの癌を有する対象に由来する。1つの態様では、癌は、胃癌、結腸癌、前立腺癌、子宮頚癌、皮膚癌、子宮癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、扁平上皮癌、消化器の癌、乳癌(癌、乳管癌、小葉癌、および乳頭部癌など)、肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病など)、脳腫瘍、神経芽腫、肉腫、直腸癌、膀胱癌、子宮内膜癌、形質細胞腫、リンパ腫、または黒色腫を含むが、これらに限定されない。
【0062】
B細胞は、対象に由来する試料から単離することができる。試料は、B細胞を含む対象に由来する任意の体液、細胞、または組織の試料の場合がある。1つの態様では、試料は、リンパ節組織、リンパ液、または全血である。
【0063】
本発明の別の態様では、成熟B細胞が、ライブラリーを作製するための供給源として使用される。
【0064】
当業者であれば、いくつかの方法で、対象に由来する試料から成熟B細胞を単離可能なことを理解するであろう。例えば成熟B細胞は、望ましくない細胞の陰性選択、または対象細胞の陽性選択を使用して試料から単離することができる。本発明の1つの態様では、B細胞は、CD19に特異的な抗体を使用することで選択される。本発明の別の態様では、ナイーブB細胞は試料から、IgDに特異的な抗体を使用して除去される。別の態様では、成熟B細胞は、CD38に特異的な抗体を使用することで選択される。
【0065】
本発明の方法で使用される多数のB細胞を確実に入手する目的で、B細胞を定量することができる。例えば、仮に成熟B細胞が使用される場合は、成熟B細胞によって強く発現される表面マーカーであるCD38に特異的な抗体を使用することができる。好ましい態様では、106個を上回るB細胞が本発明の方法に使用される。本発明の方法に使用されるB細胞を開始時に適切な数、確保するために、複数の対象からB細胞をプールすることが可能である。
【0066】
本発明の方法では、個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ核酸配列のライブラリーに由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列および/または1つの重鎖可変領域の核酸配列を含む、ベクターのライブラリーが構築される。当業者であれば、軽鎖可変領域の核酸配列を、重鎖可変領域の核酸配列と同じベクター上に、または異なるベクター上に配置させることを理解するであろう。
【0067】
免疫毒素は、軽鎖可変領域もしくは重鎖可変領域のいずれかが、細胞毒性を有するか、細胞増殖抑制作用を有するか、または細胞の分裂および/または転移を妨げるか、もしくは減じる細胞毒素などの治療用薬剤に操作可能に連結された、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。操作可能に連結された、という表現は、軽鎖可変領域または重鎖可変領域が細胞毒素に、軽鎖可変領域または重鎖可変領域、および細胞毒素の機能が保持されるように連結されることを意味することを意図する。細胞毒素は、軽鎖可変領域または重鎖可変領域に直接的もしくは間接的に、操作可能に連結可能である。
【0068】
1つの態様では、細胞毒素は、ゲロニン、ボウガニン、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリョジン(bryodin)、ジフテリア毒素、リストリクトシン(restrictocin)、緑膿菌外毒素A、およびこれらの変種を含むが、これらに限定されない、リボソーム不活性化活性を有するポリペプチドである。細胞毒素がリボソーム不活性化タンパク質の場合は、免疫毒素は、タンパク質が細胞に対して細胞毒性を発揮するためには、癌細胞との結合後に内在化されなければならない。したがって、本発明の態様では、免疫毒素は細胞に内在化され得る。
【0069】
本発明の1つの態様では、トキシンは、ボウガニンまたは緑膿菌外毒素A、およびこれらの変種である。別の態様では、トキシンは、修飾型のボウガニン、または細胞結合ドメインを欠く切断型の緑膿菌外毒素Aである。別の態様では、トキシンは、T細胞エピトープを実質的に欠くボウガニン、またはアミノ酸252〜608および小胞体保持配列からなる切断型の緑膿菌外毒素Aである。
【0070】
好ましい態様では、治療用薬剤は、極めて毒性の強い細胞毒素であるため、本発明のスクリーニング法で細胞に対する細胞毒性を検出するためには、免疫毒素は少量しか必要ではない。例えば好ましい態様では、緑膿菌外毒素Aが使用され、より好ましくは、無能力化された細胞結合ドメインを有するか、または細胞結合ドメインを欠く緑膿菌外毒素Aの変種が使用される。別の態様では、トキシンは、アミノ酸252〜608からなる短縮型の緑膿菌外毒素Aである。
【0071】
本発明の方法には、組換え法が使用される。例えば組換え法で、軽鎖可変領域および重鎖可変領域をコードする核酸配列を単離することが可能であり、ならびに個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ1つの軽鎖可変領域の核酸配列、および1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、軽鎖可変領域の核酸配列または重鎖可変領域の核酸配列のいずれかが、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを作製することができる。加えて組換え法で、ベクターのライブラリーを使用して、組換え細胞のライブラリーを作製することができる。
【0072】
組換え法で、本発明の融合タンパク質のライブラリーを作製することもできる。例えば、本発明の組換え細胞をクローニング後に、細胞にコードされた融合タンパク質を発現させることができる。好ましい態様では、融合タンパク質は可溶性タンパク質として発現される。
【0073】
本発明の核酸分子は、融合タンパク質の良好な発現を確実なものとする適切な発現ベクター中に、既知の手法で組み込むことが可能である。可能な発現ベクターは、ベクターが、使用される宿主細胞と適合する限りにおいて、コスミド、プラスミド、または改変型ウイルス(例えば、複製欠損型のレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)を含むが、これらに限定されない。発現ベクターは、「宿主細胞の形質転換に適している」と表現されるが、これは発現ベクターが、本発明の核酸分子、および核酸分子に操作可能に連結された、発現に使用される宿主細胞を元に選択された調節配列を含むことを意味する。操作可能に連結された、という表現は、核酸が、核酸の発現を可能とする様式で調節配列に連結されていることを意味する。
【0074】
したがって本発明は、本発明の方法に使用される核酸分子、ならびに融合タンパク質の転写および翻訳に必要な調節配列を含む、本発明の組換え発現ベクターを想定している。
【0075】
適切な調節配列は、細菌、真菌、ウイルス、哺乳類、または昆虫の遺伝子を含む、さまざまな供給源に由来する場合がある(例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載された調節配列を参照)。適切な調節配列の選択は、後述する選択される宿主細胞に依存し、当業者であれば容易に行える。このような調節配列の例は、転写プロモーターおよびエンハンサー、またはRNAポリメラーゼ結合配列、翻訳開始シグナルを含むリボソーム結合配列を含む。加えて、選択される宿主細胞および使用されるベクターに依存して、複製起点、追加のDNA制限酵素切断部位、エンハンサー、および転写誘導能を付与する配列などの他の配列を発現ベクター中に組み込むことが可能である。
【0076】
本発明の組換え発現ベクターには、本発明の方法で使用される核酸配列によって形質転換または形質導入された宿主細胞の選択を容易にする選択マーカー遺伝子を含めることもできる。選択マーカー遺伝子の例は、特定の薬剤、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、ホタルのルシフェラーゼ、または免疫グロブリン、もしくは免疫グロブリンの、好ましくはIgGのFc部分などの、この一部に対する耐性を付与する、G418やハイグロマイシンなどのタンパク質をコードする遺伝子である。選択マーカー遺伝子の転写は、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、またはホタルのルシフェラーゼなどの選択マーカータンパク質の濃度の変化によってモニタリングされる。仮に選択マーカー遺伝子が、ネオマイシン耐性などの抗生物質耐性を付与するタンパク質をコードする場合は、形質転換細胞をG418で選択することができる。選択マーカー遺伝子が組み込まれた細胞は生存し、他の細胞は死滅する。これにより、本発明の組換え発現ベクターの発現を可視化して調べること、ならびに特に変異が発現および表現型に及ぼす作用を見極めることが可能となる。選択マーカーは、対象核酸とは別のベクターに導入可能なことを理解されたい。
【0077】
組換え発現ベクターには、組換えタンパク質の発現の上昇;組換えタンパク質の溶解性の上昇;ならびに親和性精製におけるリガンドとして作用することで、標的組換えタンパク質の精製を補助可能な融合部分をコードする遺伝子を含めることもできる。例えば、タンパク質分解性の切断部位を標的組換えタンパク質に付加することで、融合タンパク質の精製後における、組換えタンパク質と融合部分の分離が可能となる。典型的な融合発現ベクターは、それぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはタンパク質Aを組換えタンパク質に融合させる、pGEX(Amrad Corp., Melbourne, Australia)、pMal(New England Biolabs, Beverly, MA)、およびpRIT5(Pharmacia, Piscataway, NJ)を含む。
【0078】
組換え発現ベクターを宿主細胞に導入することで、形質転換された宿主細胞を作製することができる。「によって形質転換された」、「が形質導入された」、「形質転換」、および「形質導入」という表現は、当技術分野で既知の多くの可能な手法の1つによる、核酸(例えばベクター)の細胞内への導入を含むことを意図する。本明細書で用いる、「形質転換された宿主細胞」という用語は、本発明の組換え発現ベクターによって形質転換された、糖鎖形成が可能な細胞を含むことも意図される。原核細胞を核酸で、例えばエレクトロポレーションまたは塩化カルシウムによる形質転換によって形質転換することができる。例えば核酸を哺乳類細胞中に、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿法、DEAE-デキストランによるトランスフェクション、リポフェクチン、エレクトロポレーション、またはマイクロインジェクションなどの従来の手法で導入することができる。適切な形質転換法および形質導入法は、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)、および他の実験書に記載されている。
【0079】
適切な宿主細胞は、さまざまな真核宿主細胞および原核細胞を含む。例えば本発明のタンパク質は、酵母細胞または哺乳類細胞で発現させることができる。他の適切な宿主細胞は、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1991)に記載されている。加えて本発明のタンパク質は、大腸菌などの原核細胞で発現させることができる(Zhang et al., Science 303(5656): 371-3 (2004))。加えて、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)などのシュードモナスベースの発現系を使用することができる(米国特許出願第2005/0186666号、Schneider, Jane C et al.)。
【0080】
本発明の実施に適切な酵母および真菌の宿主細胞は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ピチア(Pichia)属、またはクリュイベロマイセス(Kluyveromyces)属、およびアスペルギルス(Aspergillus)属のさまざまな種を含むが、これらに限定されない。出芽酵母における発現用の例示的なベクターは、pYepSec1(Baldari. et al., Embo J. 6:229-234 (1987))、pMFa(Kurjan and Herskowitz, Cell 30:933-943 (1982))、pJRY88(Schultz et al., Gene 54:113-123 (1987))、およびpYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, CA)を含む。酵母および真菌の形質転換のプロトコルは、当技術分野で周知である(Hinnen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:1929 (1978);Ito et al., J. Bacteriology 153:163 (1983)、およびCullen et al. (BiolTechnology 5:369 (1987)を参照)。
【0081】
本発明の実施に適切な哺乳類細胞は例えば、以下を含む:COS(例えば、ATCC No. CRL 1650または1651)、BHK(例えば、ATCC No. CRL 6281)、CHO(ATCC No. CCL 61)、HeLa(例えば、ATCC No. CCL 2)、293(ATCC No. 1573)、およびNS-1細胞。哺乳類細胞における発現の誘導に適切な発現ベクターは一般に、プロモーター(例えば、ポリオーマ、アデノウイルス2型、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40などのウイルス材料に由来するもの)、ならびに他の転写および翻訳の制御配列を含む。哺乳類用の発現ベクターの例は、pCDM8(Seed, B., Nature 329:840 (1987))およびpMT2PC(Kaufman et al., EMBO J. 6:187-195 (1987))を含む。
【0082】
本明細書に提供された手法によって、プロモーター、ターミネーター、および適切な型の発現ベクターの、植物、鳥類、および昆虫の細胞への導入法も容易に達成可能である。例えば1つの態様では、本発明のタンパク質を植物細胞から発現させることができる(アグロバクテリウム・リゾジェネス(Agrobacterium rhizogenes)のベクターの使用に関する総説である、Sinkar et al., J. Biosci (Bangalore) 11 :47-58 (1987)を参照;例えばPAPS2022、PAPS2023、およびPAPS2034を含む植物細胞用の発現ベクターの使用について述べた、Zambryski et al., Genetic Engineering, Principles and Methods, Hollaender and Setlow (eds.), Vol. VI, pp. 253-278, Plenum Press, New York (1984)も参照)。
【0083】
本発明の実施に適した昆虫細胞は、Bombyx、Trichoplusia、またはスポドプテラ種(Spodotera)に由来する細胞および細胞株を含む。培養昆虫細胞(SF 9細胞)におけるタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターは、pAcシリーズ(Smith et al., Mol. Cell Biol. 3:2156-2165 (1983))、およびpVLシリーズ(Luckow, V.A., and Summers, M.D., Virology 170:31-39 (1989))を含む。本発明の組換えタンパク質の発現に適した一部のバキュロウイルス-昆虫細胞発現系は、PCT/US/02442に記載されている。
【0084】
1つの組換え細胞あたり複数のベクターが存在することは非効率的な場合があり、およびライブラリーの冗長性を生じる可能性があるため、好ましくは避けられる。したがって好ましい態様では、本発明の組換え細胞のライブラリー中の組換え細胞の大半は、1つの組換え細胞あたり、ベクターのライブラリーに由来する1つのベクターを含み、ならびに軽鎖および重鎖の可変領域は同じベクター中に存在する。仮に、軽鎖および重鎖の可変領域が別のベクター中にある場合は、好ましくは、本発明の組換え細胞のライブラリーにおける組換え細胞の大半は、1種類のベクターが重鎖可変領域をコードする核酸配列を含み、およびもう一方のベクターが軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、1個の組換え細胞について、ベクターのライブラリーに由来する2種類のベクターを含む。当業者であれば、形質転換プロセスのための1個の宿主細胞あたりのベクターの比を最適化するために、常用の検討が可能なこと、ならびに同比が、使用されるDNA、宿主細胞、および形質転換法に依存して変動することを理解するであろう。
【0085】
組換え細胞のライブラリーを使用して、融合タンパク質のライブラリーを作製することができる。1つの態様では、免疫毒素のライブラリーは、本発明の方法で作製される。別の態様では、本発明は、対象のB細胞に由来する複数の重鎖可変領域および複数の軽鎖可変領域を含む免疫毒素のライブラリーであって、ライブラリー中の個々の免疫毒素が、1つの重鎖可変領域および1つの軽鎖可変領域を有し、軽鎖可変領域または重鎖可変領域が、細胞毒素をコードする核酸配列に連結されている、ライブラリーを含む。
【0086】
本発明の別の局面は、融合タンパク質のライブラリーを、標的分子との結合に関してスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法である:
(a)本発明の融合タンパク質のライブラリーを提供する工程;
(b)融合タンパク質に標的分子を接触させる工程;ならびに
(c)標的分子に対する1つもしくは複数の融合タンパク質の結合を判定する工程。
【0087】
標的分子に対する融合タンパク質の結合は、フローサイトメトリー、蛍光微量(fluorometric microvolume)アッセイ法(FMAT)、または酵素結合免疫吸着アッセイ法(ELISA)を含むが、これらに限定されない、当技術分野で既知の手法で判定することが可能である。
【0088】
融合タンパク質のライブラリーのスクリーニングは、エフェクター分子の活性または機能に関して行うこともできる。例えば、エフェクター分子が毒素を有する分子の場合は、融合タンパク質のスクリーニングを、標的細胞の死滅に関して行うことができる。本発明の別の局面は、融合タンパク質のライブラリーを、標的細胞に対する細胞毒性に関してスクリーニングする方法であって、以下の工程を含む方法である:
(a)本発明の融合タンパク質のライブラリーを提供する工程;
(b)融合タンパク質に標的細胞を接触させる工程;および
(c)標的細胞に対する1つもしくは複数の融合タンパク質の細胞毒性を判定する工程。
【0089】
標的細胞に対する融合タンパク質の細胞毒性は、クロム-51放出アッセイ法、MTSアッセイ法、Annexin Vアポトーシスアッセイ法、またはBrDu取り込みELISAなどの細胞増殖アッセイ法を含むが、これらに限定されない、当技術分野で既知の手法で判定することができる。
【0090】
エフェクター分子の性質に応じて、他の適切なアッセイ法を開発することができる。細胞の成長を誘導する分子の場合は、細胞の成長または増殖を調べるアッセイ法を使用することができる。蛍光タンパク質などの診断用分子の場合は、既知のアッセイ法で検出され得る。
【0091】
標的細胞は、融合タンパク質と結合する任意の細胞の場合がある。標的は通常、融合タンパク質(例えば疾患関連抗原)のリガンド部分によって認識される標的分子または標的抗原を発現する。本発明の好ましい態様では、標的細胞は、疾患関連抗原を発現する疾患細胞であり、より好ましい態様では、標的細胞は癌細胞である。1つの態様では、癌は、胃癌、結腸癌、前立腺癌、子宮頚癌、皮膚癌、子宮癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、扁平上皮癌、消化器の癌、乳癌(癌、乳管癌、小葉癌、および乳頭部癌など)、肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病など)、脳腫瘍、神経芽腫、肉腫、直腸癌、膀胱癌、子宮内膜癌、形質細胞腫、リンパ腫、または黒色腫を含むが、これらに限定されない。
【0092】
上記の方法には、融合タンパク質が、標的細胞との結合および/または標的細胞の死滅を含む、標的細胞に対して特異的な作用を有するか否かを判定するために、適切な対照を使用することができる。対照は、対象抗原を発現しないことが既知である任意の細胞の場合がある。例えば仮に、標的細胞が癌細胞の場合は、非癌細胞を対照とすることができる。
【0093】
特異的な融合タンパク質が選択されたら、エフェクター分子を別のエフェクター分子と交換することが可能である。
【0094】
本発明は、本発明のスクリーニング法で同定された融合タンパク質、および癌などの疾患を予防もしくは治療するための融合タンパク質の使用、または本発明の融合タンパク質の投与による、癌などの疾患の治療法もしくは予防法を含む。
【0095】
本発明は、本発明のスクリーニング法で同定される免疫毒素、および癌などの疾患を予防もしくは治療するための免疫毒素の使用、または本発明の免疫毒素の投与による、癌などの疾患の治療法もしくは予防法も含む。
【0096】
(C)親和性成熟
本発明の別の局面は、融合タンパク質を改良する方法である。本発明者らは、親和性成熟を利用して、本発明のライブラリーを使用して免疫毒素の結合および/または細胞毒性を改良する新たな方法を開発した。本発明の方法は、融合タンパク質である免疫毒素の結合領域をコードするヌクレオチド配列に変異を導入する工程を含む。
【0097】
単に結合リガンドではなく、免疫毒素などの融合タンパク質に関して親和性成熟を生じさせることは有益であり、および改良型の融合タンパク質の作製の迅速化につながる。本発明以前は、免疫毒素を作製する際は、抗体の親和性を成熟させた後に、親和性成熟抗体を有する免疫毒素が作製されていた。本発明は、融合タンパク質の作製に先だつ抗体または結合リガンドのスクリーニングを行う余分な工程を避けることで、この方法を迅速化する。加えて、融合タンパク質そのものを成熟させることが、より効率的である。というのは、免疫毒素などの融合タンパク質中ではなく、それ自体で良好に作用する可能性のあるリガンドの選択を避けられるからである。さらに、前述したように、本発明の方法は、標的抗原に関する事前の知識を必要とせず、および未精製上清の使用が可能となる。
【0098】
1つの態様では、リガンドタンパク質に変異が導入される。したがって本発明は、改良型の融合タンパク質を作製する方法であって、以下の工程を含む方法を含む:
(a)標的分子に結合するリガンドをコードする核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、リガンドをコードする核酸配列中に導入して、変種のリガンドタンパク質をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、融合タンパク質をコードし、かつ工程(b)で作製された変種のリガンドの核酸配列の1つと、これに連結されたエフェクター分子をコードする核酸配列を含む、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)融合タンパク質が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、融合タンパク質のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(g)融合タンパク質のライブラリーを、非修飾型の融合タンパク質と比較した、活性の改善に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の融合タンパク質と比較時の活性の改善が、融合タンパク質の改良を示する工程。
【0099】
融合タンパク質の活性の改善は、標的分子に対する融合タンパク質の結合の改良、および/またはエフェクター分子の機能の改良を含むが、これらに限定されない。
【0100】
前述したように、検討対象のエフェクターの機能は、融合タンパク質に使用されるエフェクター分子に依存する。細胞の成長を誘導するエフェクター分子の場合は、細胞の成長または増殖を調べるアッセイ法を使用することができる。細胞の成長を阻害するエフェクター分子の場合は、細胞成長アッセイ法を、文献に記載された手順で使用することができる。
【0101】
特定の態様では、軽鎖可変領域または重鎖可変領域に、本発明の方法でランダムに変異が導入される。好ましい態様では、相補性決定領域に、本発明の方法でランダムに変異が導入される。より好ましい態様では、軽鎖および/または重鎖中のホットスポットに、本発明の方法でランダムに変異が導入される。
【0102】
本発明の1つの態様では、本発明の方法で、軽鎖可変領域に変異が導入される。
【0103】
したがって本発明は、以下の工程を含む、改良型の免疫毒素を作製する方法を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(b)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(g)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0104】
別の態様では、改良型の免疫毒素を作製する方法は、以下の工程を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)軽鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(c)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(d)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(c)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(e)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(f)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(g)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(h)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0105】
本発明の別の態様では、重鎖可変領域に、本発明の方法で変異が導入される。したがって別の態様では、本方法は、以下の工程を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(b)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(g)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0106】
本発明の別の態様は、以下の工程を含む方法である:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)重鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(c)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(d)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ(c)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(e)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(f)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(g)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(h)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0107】
本発明は、上記の方法の変形例も含み、例えば本方法は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方に変異を導入する工程を組み合わせることができる。1つの態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域に変異を導入し、連続的にスクリーニングを行うことができる。別の態様では、重鎖可変領域および軽鎖可変領域に変異を導入し、同時にスクリーニングを行うことができる。
【0108】
したがって、本発明の別の態様は、以下の工程を含む、改良型の免疫毒素を作製する方法である:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(b)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;
(g)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程;
(h)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(i)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(h)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(g)で同定された改良型の免疫毒素の変種の軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは変種の軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(j)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(k)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(l)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(m)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0109】
さらに本発明は、改良型の免疫毒素を作製する方法であって、以下の工程を含む方法を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(b)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;
(g)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程;
(h)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(i)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(h)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(g)で同定された改良型の免疫毒素の変種の重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは変種の重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(j)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(k)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(l)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(m)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または標的細胞に対する細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0110】
したがって、本発明の別の態様は、以下の工程を含む、改良型の免疫毒素を作製する方法である:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)軽鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(c)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(d)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(c)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(e)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(f)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(g)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;
(h)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程;
(i)重鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(j)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(k)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(j)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(h)で同定された改良型の免疫毒素の変種の軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは変種の軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(l)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(m)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(n)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(o)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0111】
さらに本発明は、以下の工程を含む、改良型の免疫毒素を作製する方法を含む:
(a)抗体または免疫毒素の軽鎖可変領域および重鎖可変領域の核酸配列を提供する工程;
(b)重鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(c)少なくとも1つの点突然変異を、重鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の重鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(d)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ(c)で作製された変種の重鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(a)に由来する1つの軽鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の重鎖可変領域の核酸配列もしくは軽鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(e)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(f)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(g)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;
(h)免疫毒素のライブラリーを、工程(a)の非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程;
(i)軽鎖可変領域中のホットスポットを同定する工程;
(j)少なくとも1つの点突然変異を、軽鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに導入して、変種の軽鎖可変領域をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(k)個々のベクターが、免疫毒素をコードし、かつ工程(j)で作製された変種の軽鎖可変領域の核酸配列の1つ、および/または工程(h)で同定された改良型の免疫毒素の変種の重鎖可変領域の核酸配列を含み、変種の軽鎖可変領域の核酸配列もしくは変種の重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結されている、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(l)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(m)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(n)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(o)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または標的細胞に対する細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【0112】
好ましい態様では、軽鎖可変領域に変異が導入されてスクリーニングが行われてから、重鎖可変領域に変異が導入されてスクリーニングが行われる。
【0113】
可能な全ての組み合わせが1ラウンドの変異でスクリーニング可能なことは、統計的に可能性が低いので、本発明は、複数のラウンドの変異およびスクリーニングを想定している。1つの態様では、第1ラウンドのスクリーニングに由来する全ての陽性クローンをプールし、続いて一次ライブラリーより有意に小さい可能性の高い第2のスクリーニング用ライブラリーで、可変ドメインに変異が導入される。例えば、再シャッフリング工程を行って、陽性クローンに由来する可変ドメインがランダムに組み合わされて第2のライブラリーが作製される、スクリーニング用の第2のライブラリーを作製することができる。
【0114】
本発明の方法のいくつかの工程は自動化可能であり、および高処理能が達成される。例えば、形質転換された宿主細胞をクローニングする工程、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程、および免疫毒素のライブラリーのスクリーニングを行う工程が自動化可能である。
【0115】
改良型の融合タンパク質または免疫毒素が作製されたら、これを修飾して、エフェクター分子を別のエフェクター分子と置換することができる。例えば、免疫毒素の場合は、毒素を別の毒素と、実施例4に記載された手順で置換することができる。
【0116】
(D)改良型の融合タンパク質およびその使用
本発明は、本発明の方法で作製された改良型の融合タンパク質も含む。特に、実施例4に記載されているように、本発明者らは、本発明の親和性成熟を使用して、改良型の免疫毒素を作製した。1つの親和性成熟型の抗体の配列を図10に示す(SEQ ID NO: 1および2)。したがって1つの態様では、免疫毒素は、SEQ ID NO:2に示された軽鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:1に示された重鎖可変領域を含む。
【0117】
本発明は、疾患を治療または診断するための、改良型の融合タンパク質の使用、および本発明の改良型の融合タンパク質を使用する疾患の治療法または診断法を含む。
【0118】
1つの態様では、本発明は、癌を有するか、または癌を有することが疑われる対象に、有効量の本発明の融合タンパク質を投与する工程を含む、癌を治療または予防する方法を提供する。別の態様では、本発明は、癌を治療または予防するための医薬品を製造するために、有効量の本発明の融合タンパク質の使用を提供する。さらに本発明は、癌の同時的な、個別の、または逐次的な治療もしくは予防のための医薬品を製造するために、追加の癌治療薬を使用する工程をさらに含む、有効量の本発明の融合タンパク質の使用を提供する。本発明は、癌を治療または予防するための、有効量の本発明の融合タンパク質の使用も提供する。さらに本発明は、同時的な、個別の、または逐次的な癌の治療もしくは予防のために、追加の癌治療薬を使用する工程をさらに含む、有効量の本発明の融合タンパク質の使用を提供する。
【0119】
本発明の1つの態様では、癌は、胃癌、結腸癌、前立腺癌ならびに子宮頚癌、子宮癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、扁平上皮癌、消化器の癌、乳癌(癌、乳管癌、小葉癌、および乳頭部癌など)、肺癌、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、および慢性骨髄性白血病など)、脳腫瘍、神経芽腫、肉腫、直腸癌、膀胱癌、膵臓癌、子宮内膜癌、形質細胞腫、リンパ腫、ならびに黒色腫を含むが、これらに限定されない。
【0120】
本発明の融合タンパク質は、対象へ投与される薬学的組成物に、インビボにおける投与に適した生物学的に適合する形状で製剤化することができる。このような物質は、ヒトおよび動物を含む、生きている生物に投与することができる。治療的有効量の本発明の薬学的組成物の投与は、所望の結果を達成するのに必要な投与量および期間における有効な量と定義される。例えば、治療的有効量の物質は、疾患状態、個体の年齢、性別、および体重、ならびに本発明の組換えタンパク質が個体における所望の反応を引き起こす能力などの因子にしたがって変動する場合がある。投与法は、最適な治療反応が提供されるように調節することができる。例えば、数回分に分けられた用量を毎日投与することができるほか、治療状況に応じて用量を比例的に減らしてゆくことができる。
【0121】
したがって本発明は、本発明の融合タンパク質、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む、癌を治療または予防するための薬学的組成物を提供する。好ましい態様では、薬学的組成物中の融合タンパク質のエフェクター分子は、抗癌剤、より好ましくはトキシンである。
【0122】
本発明の融合タンパク質を含む薬学的調製物は、全身投与が可能である。薬学的調製物は、癌の部位に直接投与することができる。投与経路に依存して、融合タンパク質を、化合物を不活性化する可能性のある酵素、酸、および他の天然の条件の作用から化合物を保護するための材料でコーティングすることができる。
【0123】
本発明の1つの局面では、融合タンパク質は、患者に直接投与されて輸送される。本発明は、薬学的組成物が、エンドポイントを達成するのに最低限十分な量で投与されること、および必要であれば薬学的に許容される担体を含むことを想定している。
【0124】
本発明は、有効量の本発明の融合タンパク質を、癌を治療するための手術の前、手術中、または手術後に投与する工程を含む、術後合併症のリスクを減ずる方法も提供する。
【0125】
本明細書に記載された組成物は、有効量の活性物質が、混合物中で薬学的に許容される溶媒と混合されるように、対象に投与可能な薬学的に許容される組成物を調製するための既知の方法で調製することが可能である。適切な溶媒は例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA, 2000)に記載されている。これに基づき、組成物は、物質の溶液を、1種類もしくは複数の薬学的に許容される溶媒または希釈剤ととともに(排他的でなく)含み、ならびに適切なpHを有し、および生理学的な体液に等浸透圧である、緩衝作用を有する溶液中に含まれる。
【0126】
薬学的組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの組織または血液に組成物を実質的に適合させる溶質をさらに含めることの可能な、凍結乾燥粉末、または水性もしくは非水性の無菌性注射溶液、または懸濁液を含むが、これらに限定されない。このような組成物中に存在可能な他の成分は、例えば水、界面活性剤(Tweenなど)、アルコール、ポリオール、グリセリン、および植物油を含む。即時調製の注射溶液および懸濁液は、無菌性の粉末、顆粒、錠剤、または濃縮された溶液もしくは懸濁液から調製することができる。融合タンパク質は例えば、患者への投与前に滅菌水または生理食塩水によって再生可能な凍結乾燥粉末として供給され得るが、手段はこれに限らない。
【0127】
本発明の薬学的組成物には、薬学的に許容される担体を含めることができる。適切な薬学的に許容される担体は、薬学的組成物の生物学的活性の有効性に干渉しない、本質的に化学的に不活性かつ非毒性の組成物を含む。適切な薬学的担体の例は、水、生理食塩水、グリセロール溶液、エタノール、N-(1(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド(DOTMA)、ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)、およびリポソームを含むが、これらに限定されない。これらの組成物は、患者への直接投与用の形状を提供するために、治療的有効量の化合物を適量の担体とともに含むべきである。
【0128】
組成物は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどの、遊離アミノ基によって形成された塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの、遊離カルボキシル基によって形成された塩を含むが、これらに限定されない、薬学的に許容される塩の形状を取り得る。
【0129】
本発明のさまざまな態様では、薬学的組成物は全身に直接投与されるか、または腫瘍部位に直接投与される。
【0130】
薬学的組成物を、癌を有する哺乳類(好ましくはヒト)を含む動物を治療する方法に使用することができる。投与される融合タンパク質の投与量およびタイプは、ヒト対象で容易にモニタリング可能なさまざまな因子に依存する。このような因子は、癌の病因および重症度(グレードおよび病期)を含む。
【0131】
本発明の融合タンパク質を使用する癌治療の臨床転帰は、医師などの当業者であれば容易に識別できる。例えば、癌の臨床マーカーを測定する標準的な医学的検査は、治療の有効性の強力な指標となる可能性がある。このような検査は、理学的検査、機能尺度、疾患マーカー、12-誘導ECG、腫瘍測定、組織生検、細胞検査、細胞診、腫瘍の最長直径の計算、X線撮影、腫瘍のデジタルイメージング、バイタルサイン、体重、有害事象の記録、感染エピソードの評価、併用薬の評価、疼痛評価、血液または血清の化学的検査、尿検査、CTスキャン、および薬物動態学的な解析を含むが、これらに限定されない場合がある。さらに、融合タンパク質および別の癌治療薬を含む併用療法の相乗効果を、単独療法を受けている患者との比較検討によって判定することができる。
【0132】
本発明の別の態様は、癌を治療するための有効量の本発明の融合タンパク質、およびその使用に関する指示書を含む、癌の治療用または予防用のキットである。
【0133】
以下の非制限的な実施例は、本発明を説明するためのものである:
【0134】
実施例
実施例1:免疫ライブラリーの構築およびスクリーニング
可溶性の発現系を使用してライブラリーを構築する。VH断片およびVLCL断片の増幅を、癌患者から単離されたリンパ節組織を使用してRT-PCRで行う。同定される抗体または細胞表面標的のタイプに依存して、正常対象に由来する試料か、または他の医学的条件に罹患している対象に由来する試料が望ましい場合がある。ライブラリーが形質細胞から得られるのであれば、リンパ節組織がB細胞の適切な供給源である。なぜならリンパ節組織は、B細胞が抗原曝露後に抗体を活発に分泌する形質細胞に成熟する部位だからである。形質細胞に由来するmRNAのRT-PCRによる増幅で、腫瘍に反応する抗体の可変領域をコードするcDNAが得られる。
【0135】
ライブラリーのスクリーニング用に選択された組換えレイアウトは、KDEL小胞体保持配列を含むように付加的に修飾された切断型の緑膿菌外毒素Aの細胞毒素に連結された、Fabフォーマット中の抗体断片であるVB6-変種の緑膿菌外毒素A(ETA(252-608))フォーマットである。Fabは、高度の機能性を有する安定な部分である。ETAは、このタイプのコンストラクトに一般に観察される発現のレベルに適切な感受性を提供し、内在化クローンの選択を可能とし、MTSやAnnexin Vなどの細胞毒性アッセイ法または細胞増殖アッセイ法に適合し、ならびに正常組織のマイクロアレイおよび腫瘍組織のマイクロアレイ(TMA)にも適している。
【0136】
1.患者試料からのナイーブB細胞の除去と、これに続く増幅
B細胞の分化および成熟のプロセスは、複数の工程を含む(Molecular Immunology, Second Edition. Edited by Hames B. D. and Glover D. M. IRL Press)。初期相は、骨髄表面に極めて多数の非抗原誘導性の、基本的にランダムな表面Igのレパートリーを提示する、プレB細胞がバージン(virgin)B細胞に成熟する骨髄中で生じる。これらの細胞は、脾臓およびリンパ節に移行し、そこで抗原に曝露され、ならびに関連クローンが増幅されて、最終的に形質細胞に成熟する。
【0137】
より効率的なスクリーニングが可能となる、比較的小規模なライブラリーを得るための1つのアプローチは、形質細胞に由来するmRNAを増幅することである。形質細胞は、抗原によって刺激されたB細胞のクローン増殖によって生じる、抗体の活発な産生に関与する細胞である。非抗原誘導集団の抗体を表面に提示するナイーブB細胞集団に由来するmRNAの増幅によって、スクリーニングに長時間を要し、およびより多くの無関係のクローンを生じる可能性が高くなる、極めて大規模なライブラリーが得られる。このような「非誘導型」ライブラリーのスクリーニングを行うことは、時に望ましい場合があるが、増幅時のテンプレートとして使用される、試料からのナイーブB細胞の除去は、より高率で抗原誘導型のクローンを生じることになる。
【0138】
ナイーブB細胞は、その表面に、マーカーとして使用可能なIgDを発現する(Fundamental Immunology, Fifth Edition, W.E. Paul, Lippincott Williams & Wilkins publishers, p126)。同マーカーは、細胞が活性化B細胞に成熟後に形質細胞に成熟すると失われる。したがって、ナイーブB細胞の除去は、市販のビオチン化抗IgDモノクローナル抗体を使用して行われ、これに捕捉工程が続く。この工程の有効性は、FITCを結合させた抗IgD抗体を使用するフローサイトメトリーによって評価される。
【0139】
2.患者試料中における利用可能な形質細胞のプールサイズの評価
形質細胞のライブラリーの実際の増幅工程に先だって、得られると推定されるライブラリーのサイズは、テンプレートとして使用される臨床試料中における利用可能な形質細胞のプールサイズを定量することで推定される。これは例えば、抗CD38で標識された細胞を一次抗体として使用するフローサイトメトリーで実施することができる。CD38は、形質細胞によって強く発現される表面マーカーである(Harada H. H., Kawano M. M., Huang N., Harada Y., Iwato K., Tanabe O., Tanaka H., Sakai A., Asaoku H. and Kuramato A. 1993 「Phenotypic Difference of Normal Plasma Cells from Mature Myeloma Cells」 Blood 81 :2658-2663)。大規模な形質細胞集団を生じる臨床試料が最も有用である。106コロニー形成単位以上の最終ライブラリーサイズが望ましく、したがってテンプレートとして使用される試料中における同様のサイズのプールの形質細胞が望ましい。所望の数の形質細胞を得る目的で、複数の癌患者に由来する試料を一括してプールすることも可能である。仮に試料が、複数の癌患者からプールされるのであれば、この操作は、腫瘍に対する免疫応答に由来する抗体を含まないライブラリーのスクリーニング回数を最小化することにもなる。
【0140】
3.患者試料に由来するVH断片およびVLCL断片の増幅、およびこれに続くクローニング
個々の軽鎖(κおよびλ)ならびに重鎖(γ)の増幅を、制限酵素切断部位を5'端および3'端に含む特異的なプライマーを使用して、臨床試料から抽出されたmRNAをテンプレートとして使用するRT-PCRで行う。結果として得られた断片を、適切な制限酵素を使用して、Xomaベクター中にランダムにクローニングする。ライブラリーのサイズは重要である。標準的なライブラリースクリーニングプロトコルでは、106 CFU(コロニー形成単位)以上が望ましい。この目的を達成するために、以下の複数の工程を行う:
【0141】
増幅材料のベクターへの連結:
この工程は通常、ライブラリー作製時のボトルネックとなっている(Directed Evolution, Library Creation, Methods and Protocols. Methods in Molecular Biology, vol. 231 , edited by Frances H Arnold and George Georgiu, 2003, Humana Press)。したがって、高い効率の連結が求められており、および慎重な最適化が必要である。切断挿入物/ベクターの複数の比が検討されている。連結反応物は、ライブラリー作製の最適条件でインキュベートされる(Arnold and Georgiu, 2003)。連結の効率は、アガロースゲル電気泳動によって半定量的に、ならびに大腸菌へのエレクトロポレーション、およびプレート上の形質転換コロニーを数えることで定量的に評価される。
【0142】
連結DNAによる大腸菌の形質転換:
エレクトロポレーションは、効率が良くて迅速な形質転換法である。波長、電圧、および抵抗などのパラメータは、容易に最適化することができる。このプロトコルでは、市販のエレクトロコンピテントセル(electrocompetent cell)が使用される。
【0143】
エレクトロポレーション時の連結DNA/エレクトロコンピテントセルの比:
個々の形質転換には最小量のDNAを使用する一方で、妥当な数の個々のエレクトロポレーションが実施される、適切なサイズのライブラリーが得られることが望ましい。
【0144】
連結DNA/エレクトロコンピテントセルの比は、個々の配列決定対象のコロニーについて明瞭かつ一義的な配列が得られるまでに最適化される。こうすることで、最終的なライブラリーの冗長性(存在すれば)の程度を、約20個の異なるクローンの配列を比較することで推定することが可能となる(これは、冗長性が予想される、前述の再プレーティングされたコロニーには適用されない)。
【0145】
この工程でプロセスの効率が評価され、ならびに代表的および適度に大きなライブラリーが作製されたか否かが判定される。
【0146】
4.ライブラリーのスクリーニング
ライブラリーのスクリーニングは、自動コロニーピッカーの使用と、これに続く、マイクロウェル中に含まれる液体成長培地へのコロニーの播種によって効率的に実施可能である。液相の効率的な扱いは、自動リキッドハンドラーによってなされる。この工程では、各プレートに集密化(over-crowding)を引き起こすことなくプレーティング可能な細胞の量を決定することが重要である。任意のサイズのライブラリーの効率的なプレーティングに必要なプレートの数が決定される。T字形のディスポーザブルの滅菌済みのループをプレーティングに使用する。
【0147】
推定スクリーニング速度は104クローン/日である。したがって、全サイズが106 CFUのライブラリーのスクリーニングには4〜5か月間を要すると推定される。スクリーニング処理中に、VB6-845ETA(252-608)が陽性対照として使用され、および挿入物を含まないpING3302ベクターが陰性対照として使用される。
【0148】
ライブラリーの構築およびスクリーニング法の重要な特徴は、選択されたベクター(この場合はpING3302 XOMAベクター)中へのクローニングによる、増幅された可変領域のランダムな対形成を達成する能力である。これによって、可能な数の組み合わせのために、極めて多様なライブラリーの作製が可能となる。可能なあらゆる組み合わせが、1ラウンド以内でスクリーニングされ得る可能性は極めて低い。したがって、1ラウンド後に選択される陽性クローンが、VHドメインとVLドメインの最高の達成可能な組み合わせである可能性は高くない。再シャッフリング工程が行われて、増幅ドメインの最高の組み合わせが作製および選択される。これは、第1ラウンドのスクリーニングで得られた全ての陽性クローンを一括してプールすることと、これに続く可変ドメインの増幅、および一次ライブラリーより有意に小さい可能性の高い第2のライブラリー中へのランダムなクローニングによって達成される。クローンは、最小閾値である陰性対照より高いシグナルを生じる場合に陽性と見なされる。仮に多数の陽性クローンが得られたら、クローンをランク付けして最高のクローンを選び出すことになる。
【0149】
スクリーニングは複数の工程で行われる。最初に、ライブラリー全体のスクリーニングをFMATアッセイ法で、ライブラリーの起源の癌のタイプをマッチさせた細胞株のアポトーシスの効率的な誘導に関して行う。第1ラウンドのFMATで陽性であると選択されたクローンのスクリーニングを、第2のFMATアッセイ法で再び行う。選択された陽性細胞株を対象とした2ラウンドのFMATスクリーニングを経ても陽性で変わらないクローンのスクリーニングを、次にFMATで、無関係の癌の徴候を元に選択された陽性細胞株および陰性細胞株に対して行う。次に、第3ラウンドを通過した個々のクローンのスクリーニングをフローサイトメトリーで、腫瘍細胞に対する結合に関して行い、続いて正常細胞に対するスクリーニングを行う。選択されたクローンの力価をMTSで決定し、および続いて最終的に強力なクローンのスクリーニングを腫瘍組織マイクロアレイ(TMA)で行う。MTS試験では強力ではないことが明らかとなるが、高い癌選択性を示すクローンは、癌の診断や癌抗原の発見のためのさまざまな開発のために保持される場合がある。
【0150】
実施例2:結腸免疫ライブラリーの構築
大腸菌の可溶性ディスプレイ(soluble display)を使用した高処理能スクリーニングに適した免疫ライブラリーが構築されている。この方法は、結腸癌患者のリンパ節に由来する形質B細胞の濃縮集団を使用する、抗体の可変領域のRT-PCRによる増幅に基づく。ガンマ鎖およびカッパ鎖の可変ドメインのcDNAを、Fab-ETA(252-608)コンストラクトとしてXoma pING3302ベクターにランダムにクローニングし、ならびに大腸菌細胞を形質転換した。作製された2.105クローンのライブラリーを、検討クローンの100%を対象とした各鎖のPCR増幅によって検証した。加えて、配列決定の結果、全てのクローンが固有のCDRループを有することが判明し、免疫応答の多様性があることが確認された。加えて、L-アラビノースによる誘導によって、適切な発現レベルが、96ウェルプレート中で成長させたクローンの上清中に検出された。切断型の緑膿菌外毒素Aとの融合によって、内在化クローンの選択が、アポトーシスの測定によって可能となり、およびTMAスクリーニング法に適したものとなる。
【0151】
1.結腸癌患者のリンパ節に由来する形質B細胞の濃縮
形質B細胞は、抗原に特異的な抗体を産生するため、免疫ライブラリー作製のための対象集団となる。IgD細胞表面マーカーに結合する抗IgD抗体を使用して、ナイーブB細胞を除去した。結腸癌患者から除去された3個の凍結リンパ節を、形質B細胞の供給源として使用した。DMSO中に保存されたリンパ節の凍結細胞を、37℃に設定した水浴中で速やかに溶解し、および47 mLのDMEM+10% FBSで希釈した。2000 RPMで3分間の遠心分離後に、細胞を20 mLのDMEM+10% FBSで洗浄し、および1 mLの同培地中に再び懸濁した。抗IgD mAb(250 ng)(1)、および抗THY-1 mAb(50 ng)(2)(いずれの抗体ともビオチンに結合)を使用して、ナイーブB細胞とT細胞をそれぞれ除去した。氷上で1.5時間、静置後に細胞を遠心分離し、および1 mLの新鮮なDMEM+10% FBS中に再懸濁した。ストレプトアビジンでコーティングされた等容積の磁気ビーズ(1 mLのPBS緩衝液で事前に3回洗浄済み)を細胞に添加して氷上で1時間、ときおり混合しながらインキュベートした(3)。インキュベーション時間の終了時に、ビーズに結合したナイーブB細胞およびT細胞を磁力を利用して分離し、ならびに形質B細胞の濃縮集団を含む上清を回収して氷上に維持した。
【0152】
別の実験では、除去の効率を、除去の前後における、抗IgDビオチン化抗体を使用したフローサイトメトリーで評価した。図1Aからわかるように、IgD陰性(M1、66.34%)およびIgD陽性(M2、33.75%)の2つの集団が除去前に同定された。除去後は、IgD陰性集団のパーセンテージが66.34%から99.35%に上昇し、除去後は細胞が標識されなかったことがわかる。
【0153】
2.mRNAの抽出とcDNAの合成
形質B細胞のmRNAを、Oligotex(商標)キット(5)を使用して、生存率が50%の2.6・106細胞のプールから抽出した。簡単に説明すると、細胞を4℃で2000 rpmで3分間、遠心分離し、および600μLの溶解緩衝液に再懸濁した。次に細胞溶解物を、事前に保温済みの17.5μLのOligotex(商標)粒子と室温で10分間インキュベートした。次に、Oligotex(商標)粒子を洗浄緩衝液で洗浄し、結合状態のmRNAを50μL 溶出用緩衝液で溶出した。
【0154】
ファーストストランドcDNAを、SuperScriptIII(商標)逆転写酵素キットを、提供された指示書通りに使用して合成した。簡単に説明すると、8μLの抽出mRNA、1μLのランダムヘキサマーミックス、および1μLのdNTPを65℃で5分間インキュベートした。2μLのX10 RT緩衝液、4μLのMgCl2、2μLのDTT、1μLのRNAse Out、および1μLのSuperScriptIII酵素を含むcDNA合成ミックスをRNA/プライマー混合物に添加し、25℃で10分間インキュベートした。ファーストストランドcDNAは、50℃で50分間かけて合成した。次に反応を85℃で5分間かけて停止させ、氷上で凍結させ、および遠心分離した。37℃で20分間のRNAse H処理後に、cDNAを-20℃で保存した。
【0155】
3.ライブラリーの構築
Fab-ETA(252-608)結腸免疫ライブラリーを作製する目的で、PelB-VH断片およびVL-CL(κ)断片をPCRで作製し、続いてPelBリーダー配列との融合をサブクローニング工程(VH)によって行い、ならびにEcoRI-ApaI-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302プラスミド中に、それぞれEcoRI/ApaI制限酵素切断部位およびSfiI/XhoI制限酵素切断部位を使用してランダムに挿入した。リンパ節で生じる免疫応答の大半を捕捉する目的で、異なるサブクラスのカッパ鎖およびガンマ鎖に対応する5'プライマーの混合物をPCR反応に使用した。ガンマ鎖およびカッパ鎖用の3'プライマーは、鎖の定常ドメインおよび3'端にそれぞれアニーリングするように設計された。VH断片およびVL-CL(κ)断片を、形質B細胞から抽出されたcDNAを使用してPCRで増幅した。VL-CL(κ)断片のクローニングに必要な制限酵素切断部位をプライマー中に含めた。増幅されたNcoI-VH-ApaI断片を、サブクローンベクター中に含まれるEcoRI-ETA(252-608)IB-NcoIドメインの下流に融合させた。こうすることで、クローニングに適したEcoRI/ApaI端を有するPelB-VH断片が得られた。PCRで増幅されたNcoI-VH-ApaI断片は、ユニバーサルクローニングベクターEcoRI-ApaI-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302中に直接クローニングされなかった(NcoI部位が同ベクター中に複数存在するため)。しかしながら、同部位はサブクローンベクターからは除去されていた。PelB-VHとVL-CL(κ)のいずれの断片とも、EcoRI-ApaI-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302 DNAプラスミド中のEcoRI/ApaI制限酵素切断部位およびSfiI/XhoI制限酵素切断部位を介して連結され、ならびに連結反応物で10B細胞が形質転換された。軽鎖および重鎖の連結に関する形質転換体の数はいずれも2・105個であった。これとは対照的に、挿入物なしで実施された同じ連結反応では、上記の場合と比較して、10%に満たない形質転換体しか得られなかった。Fab-ETA(252-608)としてランダムにクローニングされた重鎖およびカッパ鎖を含む最終プラスミド集団でJM109の形質転換を行ったところ、収率は、10B細胞から精製された2μLのスーパーコイルDNAを使用時の個々のエレクトロポレーションあたり約0.5・105クローンであった(29)。
【0156】
VHドメインおよびVL-CL κドメインのPCRによる増幅:
a.PelB-VH断片
PelB-VH断片をVHドメインのPCR増幅と、これに続くサブクローニング工程によるPelBリーダー配列との融合を含む2工程のアプローチによってアセンブルした:
【0157】
ガンマプライマー混合物

【0158】
注:1つのプライマーを用いて、可能な限り多様に単離する目的で、特定のコンセンサスプライマーに、以下の混合塩基を使用する:R=A+G、D=A+T+G、Y=C+T、H=A+C+T、V=A+C+G、K=T+G、S=C+G、W=A+T。
【0159】
NcoI制限酵素切断部位およびApaI制限酵素切断部位を太字で示す。全てのPCR反応物は、以下を含む50μLの反応容量を含む:
10X PCR用緩衝液 5μL
2 mM dNTP 5μL
プライマー5' 20 pmol
プライマー3' 20 pmol
Taq DNAポリメラーゼ、EasyA 2.5 U
DNA 10μL
【0160】
PCRのサイクリング条件を以下に示す:95℃で1分間、62℃で1分間、および72℃で1分間を計25サイクルと、これに続く72℃で10分間の最終伸長。プライマーミックスの濃度は、個々のプライマーの濃度の合計を示す。断片の構築は、以下の工程を含むようにした:
【0161】
工程1
PCR反応物は、合成cDNA(10μL)をテンプレートとして使用し、プライマー1〜9およびプライマー10の混合物を含むようにした。この結果、5'端がNcoI切断部位に、また3'端がApaI切断部位に挟まれた450 bpのVH断片の混合物が得られた。
【0162】
工程2
PelBリーダー配列を、入手済みのVH断片と融合させる目的で、サブクローニング工程が必要であった。サブクローンベクターを以下の手順で作製した:EcoRI-XhoI断片をユニバーサルクローニングベクターEcoRI-ApaI-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302から切り出して、同様に切断されたpSV-73補助プラスミド中に挿入した。望ましくないNcoI制限酵素切断部位を含むSalI-XhoI断片を切り出し後に、SalIおよびXhoIによる切断が共通の末端を生じることを利用してベクターを自己連結させた。ゲルから精製した約100 ngのVH断片、および200 ngのサブクローンベクターを、総容量20μL中でApaI(1.5μL)で25℃で2時間かけて切断した。次に温度を37℃に上昇させ、およびNcoIを添加し(1.5μL)、さらに2時間インキュベートした。全ての切断産物はゲル精製した。切断済みのガンマ重鎖(50 ng)を、100 ngの切断済みプラスミドと、2000単位のT4 DNAリガーゼの存在下で16℃で一晩かけて連結させた。次に連結反応混合物を、Zymo Research(商標) Concentratorキットを使用して精製し、および最終容量が16μLとなるように溶出した。EasyShock(商標) 10Bエレクトロコンピテントセルに、2μLの精製済みの連結反応物をエレクトロポレーションで導入し、および1 mLのSOC培地中に再懸濁した。連結の効率は、1/10および1/100の希釈倍率の形質転換混合物を、アンピシリン(100 μg/mL)が添加されたLB寒天プレートにプレーティングして評価した。1 mLの一晩培養物からプラスミドを抽出した。抽出されたプラスミド(900 ng)を、20μLの総容量で、37℃で2時間かけて、1.5μLのEcoRIで切断し、Zymo Research(商標) Concentratorキットで精製し、および20μLの総容量で、25℃で2時間かけて、1.5μLのApaIでさらに切断した。
【0163】
b.カッパ軽鎖
PCR反応を、プライマー1〜6(フォワード反応)およびプライマー7(リバース反応)を使用して行い、cDNA(10μL)をテンプレートとして使用して、VL-CL(κ)断片を構築して増幅した。SfiIおよびXhoIの制限酵素切断部位(太字)を加えることで、EcoRI-ApaI-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302プラスミド中へのVL-CL(κ)のクローニングを迅速化した。カッパ軽鎖には、クローニングを容易にするためにVI領域を含めた。

【0164】
リバース(XhoI制限酵素切断部位を太字で示す):

【0165】
PCRのサイクリング条件は以下の通りとした:95℃で1分間、62℃で1分間、および72℃で1分間を25サイクルと、これに続く、72℃で10分間の最終伸長。
【0166】
1%アガロースゲルによる電気泳動で、増幅されたPelB-VHおよびカッパ軽鎖のPCR産物を分離した。対象バンドを切り出し、Zymo Research(商標)キットを使用して精製し、および16μL中に溶出した。2μLをTOPO PCR 2.1クローニングベクターにクローニングし、および10F大腸菌細胞を形質転換した。形質転換された大腸菌のプラスミドを単離し、および配列を、配列決定の検証工程の一部を以下に示すように、CEQシーケンサーで決定した。
【0167】
検証:
ライブラリーの質を確認するために、以下の3つの試験を実施した;個々の連結反応後のPCRによるスクリーニング、無作為に選択された重鎖およびカッパ鎖の独立クローンの配列決定と、これに続く発現ベクターへの挿入、ならびに続く96ウェルプレート上におけるライブラリーの集合および発現。
【0168】
ライブラリーの構築:
カッパ軽鎖のクローニング
配列の多様性が配列決定によって確認されたら、カッパ鎖のPCR反応物(約100 ng)を、ユニバーサルクローニングベクターEcoRI-ApaI-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302中に、1か所のみを切断する制限酵素であるSfiIおよびXhoIを使用してクローニングした。カッパ鎖のPCR反応物およびEcoRI-ApaI-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302プラスミドをXhoI(1.5μL)とともに37℃で2時間、BSAの存在下で、最終容量が50μLとなるようにインキュベートした後に、1.5μLのSfiIを添加した。50℃で2時間のインキュベーション後に、切断後のカッパ軽鎖およびプラスミドをアガロースゲルにロードし、Zymo Research(商標)ゲル精製キット(7)を使用して精製し、および16μLに溶出した。
【0169】
切断されたカッパ軽鎖50 ngの連結を、一晩かけて、100 ngの切断済みプラスミドと16℃で、2000単位のT4 DNAリガーゼの存在下で行った。次に連結反応混合物を、Zymo Research(商標) Concentratorキット(8)を使用して精製し、および最終容量が16μLとなるように溶出した。EasyShock(商標) 10Bエレクトロコンピテントセル(9)に、2μLの精製済みの連結反応物をエレクトロポレーションで導入し、および1 mLのSOC培地に再懸濁した。連結の効率を、テトラサイクリン(15 μg/mL)が添加されたLB寒天プレートに、1/10および1/100の希釈倍率の形質転換混合物をプレーティングして評価した。加えて、単離された10個のコロニーを、セクション4Bに記載されたプライマーミックスを使用して、カッパ軽鎖挿入物の有無に関してPCRでスクリーニングを行った。残りの形質転換細胞を、50 mLの2xYT中で37℃で、15 μg/mLのテトラサイクリンの存在下で成長させた。一晩のインキュベーション後に、1 mLの一晩培養物からCH-ETA(252-608)-PelB-VL-CL(κ)/3302プラスミドを抽出した。
【0170】
a.PelB-VHのクローニング
EcoRIおよびApaIで二重切断済みのPelB-VH断片100 ngと、同じ酵素で切断済みのCH-ETA(252-608)-PelB-VL-CL(κ)/3302ベクターの連結を、文献に記載された手順で行った。連結物の精製、形質転換、およびPCRによるスクリーニングは、文献に記載された手順で行った(ガンマプライマーの使用は除く)。
【0171】
b.JM109の形質転換
クローニングされたプラスミドを、Zippyミニプレップで精製し、および予備実験で最高の発現細胞であることが判明したエレクトロコンピテントJM109株にエレクトロポレーションによって導入した。得られたライブラリーのサイズを、15 μg/mLのテトラサイクリンを含むLB寒天プレートに、形質転換混合物を1/10および1/100の希釈倍率でプレーティング後のコロニー数を数えることで評価した。
【0172】
c.独立クローンの重鎖およびカッパ鎖の配列決定
PelB-VH鎖およびカッパ鎖の挿入物を含む独立クローンの配列決定を行い、わずかな重複が生成ライブラリー中に存在することが確認された。表1および表2に示すように、各鎖のCDRループのアミノ酸配列は固有であった。予想通り、重鎖のCDR3領域の長さの多様性が、最小11残基〜最大19残基の範囲で得られた。加えて、カッパ断片および重鎖断片のサブクラスを示す。
【0173】
d.免疫ライブラリーのクローンのウェスタンブロット解析
15個の独立クローンの発現レベルを、ライブラリーのスクリーニング中に使用される条件で誘導後にウェスタンブロットで評価した(図2)。15 μg/mLのテトラサイクリンが添加された150μLの2xYTを含む96ウェルプレートのウェルに、1個の形質転換JM109コロニー/ウェルを添加し、および37℃で一晩、一定の速度で振盪しながらインキュベートした。一晩成長させた種培養物20μLを、130μLのTBを含むウェルに添加し、および37℃で7〜8時間インキュベートした。次に培養物を、17.5μLの2% L-アラビノースで誘導し、および25℃で一晩インキュベートした。5000 RPMで30分間、遠心分離した後に、15個の異なるウェルに由来する16μLの上清をSDS-PAGEアクリルアミドゲルに非還元条件でロードし、ならびにHRPを結合させた抗ヒトカッパ軽鎖抗体を使用したウェスタンブロットで解析して、組換えタンパク質の有無およびサイズを確認した。Fab-ETA(252-608)の完全長の発現が、3クローンについて検出され、および発現のレベルは、陽性対照であるVB6-845-Fab-ETA(252-608)と同等であった。他の2つのクローンについては、低レベルの発現が観察された(右側のブロットのレーン3および6)。加えて、切断型の産物も検出され、パターンは陽性対照と同等であった。
【0174】
4.結腸癌ベースの免疫毒素ライブラリーのスクリーニング
個々のクローンを増幅させ、および96ウェルプレートの1つのウェル中の培地にアラビノースを添加して発現させた。各ウェルの上清を、選択された標的細胞株のアポトーシスを誘導する能力に関して検討した。
【0175】
FMATアッセイ法:
各ウェルの上清10μLを、SW-480腫瘍細胞(96ウェルプレートに添加済み)に添加する。量的データを得るために、Annexin VおよびCentri-Redによる染色を使用する生/死アッセイ法(live/death assay)を実施する。野生型VB6-845-ETA(252-608)を陽性対照として使用する。FMATプレートを37℃で24時間インキュベートする。20μLのAnnexin-Alexa-Fluor 647/Centri-Red(商標)溶液を各ウェルに添加し、およびプレートを室温で1時間、暗条件でインキュベートする。次にプレートをFMATリーダーで読みとる。アポトーシス陽性の細胞は、Annexin色素と結合する。全ての細胞が、Centri-Red色素によって染色される。アポトーシス率(%)を、Annexin陽性イベント数をCentri-Red陽性イベント数で割った比として計算する。アポトーシスが、空の発現ベクター(pING-3302)を含む細胞に由来する陰性対照上清のアポトーシスの20%を上回るクローンを陽性と見なす。
【0176】
次に、第1のスクリーニング実験で陽性の全クローンを、同じ条件で再びスクリーニングを行う。次に、最初の2ラウンドで陽性を示した細胞を、陽性(癌のタイプをマッチさせたもの)と陰性(無関係の癌タイプ)の両細胞株を含む第3ラウンドで検討する。3工程のFMATスクリーニングの結果を表3に示す。FMATアッセイ法の3工程の全てを通過するクローンをさらに精製して検証する。
【0177】
FMATスクリーニング陽性クローンの精製:
選択された陽性クローンを発現する細胞を成長させる。2つの振盪フラスコに等分割した2xYT+テトラサイクリン(25 mg/L)の100 mLのスターター培養物(starter culture)に、グリセロール10%中の1 mLの凍結細胞ストックを添加し、および37℃で一晩攪拌しながら成長させた。翌日、12本の振盪フラスコ(各0.5 L)に分けた6 LのTB培地に、60 mLのスターター培養物(各5 mL)を添加し、および37℃で振盪しながらOD600が約2.0となるまで成長させた。この工程で、タンパク質の発現を、アラビノースを最終濃度が0.2%となるように添加して誘導した後に、25℃で振盪しながら一晩インキュベートした。翌日、細胞を8000 RPM(Sorvall(商標))で4℃で50分間かけて遠心分離して除去した後に、カートリッジフィルター(Sartorius(商標))を通して粗濾過を行った。上清を、NaPO4 20 mM pH-7.5の緩衝液で、30 KDaのMWCO膜を使用したダイアフィルトレーションで濃縮し、容量を6 Lから0.5Lにした。
【0178】
次の工程は、Ni2+カラム(12 mL)による精製を含む。第1の工程は、カラムにNiCl2 0.1 M(5xCV)をチャージした後に、H2O(10xCV)による洗浄工程、およびNaPO4 20 mM、NaCl 150 mM pH-7.5の緩衝液の5xCVによる平衡化を含む。ダイアフィルトレーション後の材料を5 mL/分でロード後に、最初にNaPO4 20 mM、NaCl 150 mM pH-7.5の緩衝液の10xCVで洗浄し、および続いてNaPO4 20 mM、NaCl 150 mM、イミダゾール100 mM pH-7.5の8xCVで洗浄した。カラムを、NaPO4 20 mM、NaCl 150 mM、イミダゾール250 mM pH-7.5で溶出し、および10x2 mLのフラクションを回収し、ならびにOD280 nmを測定して、Q-Sepharose(商標)(3 mL)カラムを含む次の工程へ選択されるべきフラクションを判定した。このカラムを、NaPO4 20 mM、NaCl 90 mM pH-7.5で平衡化した後に、前工程に由来する希釈済みのタンパク質を含むフラクションにロードした。希釈は、NaPO4 20 mM pH-7.5で行い、平衡緩衝液と同等の伝導率を達成した。試料のロード後に、カラムを15xCVの平衡緩衝液で洗浄し、およびNaPO4 20 mM、NaCl 500 mM pH-7.5の緩衝液で溶出した。フラクションを回収し(10x2 mL)、および-20℃で一晩保存した。翌日、前工程の溶出液を、NaPO4 20 mM、NaCl 150 mM pH-7で洗浄済みのS-200サイズ排除カラムにロードした。100 mLの空隙容量を通過させた後にフラクションを回収した(各10 mL)。処理された材料の純度および内容を、クーマシーおよびウェスタンブロットで、SOPの2.1.55および2.1.63に記載の手順に従って、検出用のα-カッパHRP結合抗体を使用して推定した。最後に、精製後の材料を約1 mLの容積にスピンカラムを使用して濃縮し、およびタンパク質の濃度をBCAアッセイ法で決定した。
【0179】
結合親和性の測定:
フローサイトメトリーで、陽性スクリーニング用の細胞株(SW-480)に対する結合を測定し、および選択された陽性クローンの親和性を判定する。結合を評価するために、精製済みのクローンの上清を一定数のSW-480細胞とともにインキュベートして、飽和曲線を描く。結合は、ウサギ抗ETA(252-608)を使用して検出され、ならびに陽性対照であるVB6-845PE(高親和性)およびVB6-011 ETA(252-608)(中親和性)と比較される。親和性を判定するために、高濃度の精製クローンの上清をインキュベートする。解離定数KDで表される結合親和性は、メジアン蛍光の逆数を抗体濃度の逆数の関数としてプロットするラインウィーバー・バーク(Lineweaver-Burk)法によって計算される。解離定数は、以下の方程式で決定される:1/F=1/FMax+(KD/FMax)(1/[scFv]);同式でFは、バックグラウンドを差し引いたメジアン蛍光に対応し、およびFMaxはプロットから計算される。8個の許容クローンの4個に関する結合評価の結果を表4に示す。
【0180】
MTSアッセイ法:
MTSアッセイ法で、陽性細胞株SW-480、および無関係の癌タイプに由来する陰性細胞株CA-46を使用して、選択された陽性クローンのIC50値が決定される。MTSアッセイ法の結果を表4に要約する。
【0181】
実施例3:親和性成熟用のライブラリーの構築
「ホットスポット修飾」かランダム変異導入のいずれかによって作製された親和性成熟抗体のスクリーニングを効率的に行う目的で、各候補のFabフォーマットを、細胞毒性タンパク質である緑膿菌外毒素Aの変種に連結した。Fab-ETA(252-608)フォーマット(本明細書ではVB6-ETA(252-608)フォーマットとも表記)は、腫瘍細胞に対する結合活性および力価の評価に適しており、高親和性抗体を発現するクローンの迅速な同定を可能とする。加えて同フォーマットは、TMAのプロファイリングによる正常組織および腫瘍組織に対する迅速なスクリーニングも可能とする。
【0182】
1.ライブラリーの構築
「ホットスポット法」:
a.ホットスポットの同定
インビボで生じる体細胞の過剰変異は、「ホットスポット」と呼ばれる特定の配列を標的とする(Neuberger M. S and Milstein C. 1995. Somatic hypermutation. Curr. Opin. Immunol. 7:248-254)。ホットスポット配列は、特定のコドンで表されるコンセンサスのヌクレオチド配列であると定義可能である。コンセンサス配列は、四ヌクレオチドRGYWである(RはAまたはGのいずれかであり、YはCまたはTであり、およびWはAまたはTのいずれかを取り得る)(Neuberger M.S. et al., 1995)。加えて、ヌクレオチドAGYにコードされるセリン残基は主に可変ドメインのCDR領域中に、潜在的なホットスポット配列に対応するTCNにコードされる残基を上回って存在する(Wagner S. D., Milstein C. and Neuberger M.S. 1995. Codon bias targets mutation. Nature, 376, p732)。構造解析から、CDRループ(特にCDR3ループ)が、抗原結合の多くに寄与することが報告されている(Giudicelli V., Chaume D. and Lefranc M.P. 2004. IMGT/V-QUEST, an integrated software program for immunoglobulin and T cell receptor V-J and V-D-J rearrangement analysis. Nucleic Acids Res. 32:435-440)。したがって、各候補の重鎖および軽鎖のCDRのヌクレオチド配列が、ホットスポット配列およびAGYコドンの有無に関してスキャンされる。重鎖および軽鎖のCDR領域の同定されたホットスポットと、胚の重鎖および軽鎖の配列の比較は、International ImMunoGen Ticsデータベース(IMGT, http://imgt.cines.fr/textes/vquest/)(Davies D.R., Padlan E.A. and Sheriff S. 1990. Antibody-antigen complexes. Annu. Rev. Biochem. 59:439-473)を使用して行うことができる。生殖系列であると同定された配列は、体細胞変異が起こらなかったことを示唆し;したがって、ランダムな変異が、インビボで生じる体細胞イベントに似たように導入される。これとは対照的に、異なる配列は、一部の体細胞変異が既に生じていることを示している。インビボで体細胞変異が最適か否かは明らかにされていない。CDRの内部に存在するアミノ酸、すなわち保存されたアミノ酸をコードするホットスポットには、変異は導入されないと考えられる。このような残基は通常、全体的な構造に重要であり、および内部に存在するために、抗原と相互作用する可能性は低い。加えて、この解析を、体細胞変異が多く生じる生殖系列中の配列の推定位置と比較する(TomLinson I. M., Cox J. P. L., Gherardi E., Lesk A.M. and Chotia C. 1995. The structural repertoire of the human Vλdomain. EMBO J. 14:4628-4638;TomLinson I. M., Walter G., Jones P.T., Dear P.H., Sonnhammer E.L.L. and Winter G. 1996. The imprint of Somatic hypermutation on the repertoire of human germLine V genes. J. Mol. Biol. 256:813-817)。類似の戦略を、BL22 scFvの親和性成熟に応用した。重鎖のCDR3中に導入された点突然変異は、さまざまなCD22陽性細胞株に対する結合活性の5〜10倍の上昇をもたらした(Salvatore G., Beers R., Margulies I., Kreitman R.J. and Pastan I. 2002. Improved cytotoxic activity toward cell lines and fresh leukemia cells of a mutant anti-CD22 immunotoxin obtained by antibody phage display. Clinical Cancer Research, 8:995-1002.)。さらに、CDR1ループおよびCDR2ループ中のさまざまなアミノ酸の変異も、親和性が3倍〜7倍高まる変異体を生じた(Ho M., Kreitman J., Onda M. and Pastan I. 2005. In vitro antibody evolution targeting germLine hot spots to increase activity of an anti-CD22 immunotoxin. J. Biol. Chem., 280:607-617)。
【0183】
b.PCRによる、VL領域の選択されたホットスポットへのランダム変異の導入
ホットスポットが同定されたら、縮重コドン(NNS、同式でNはA、G、C、またはTであり、およびSはGまたはCである)を含むオリゴヌクレオチドを使用して、可能な全てのアミノ酸を標的位置に導入する(TAAおよびTGAの終止コドンは除く)。過去の研究では、軽鎖のCDRの変異誘発と続く重鎖のCDRの変異誘発が、両鎖について独立に単離された変異と比較して、親和性の上昇につながることが示唆されている。したがって、各候補の親和性成熟は、軽鎖の最適化から開始される。VLドメインのCDR中に同定されたホットスポットに、PCRによってランダムに変異が導入される。得られたPCR断片は、発現ベクターVB6-ETA(252-608)/3302中への直接クローニングに適した、固有の制限酵素切断部位を含む。大腸菌をエレクトロポレーションで形質転換し、および適切な抗生物質を使用したプレーティングによる選択後に、20個のコロニーを成長させ、ならびに単離されたプラスミドの配列を決定する。配列の解析を行って、標的位置に導入された多様性を評価する。
【0184】
2.スクリーニング過程
発現:
15 μg/mLのテトラサイクリンが添加された150μLの2xYTを含む96ウェルプレートのウェルに、1個の形質転換JM109コロニー/ウェルを添加し、および37℃で一晩、一定の速度で振盪しながらインキュベートした。一晩成長させた種培養物(20μL)を、130μLのTBを含む96ウェルプレートに添加し、および37℃で7〜8時間インキュベートした。続いて培養物を、17.5μLの2% L-アラビノースで誘導し、および25℃で一晩インキュベートして、上清中へのFab-ETA(252-608)の分泌を可能とした。PCRによる配列決定で同定された変異体を、可溶性の組換えVB6-ETA(252-608)フォーマットで発現させ、および腫瘍細胞に対する結合/死滅の上昇に関するスクリーニングを行う。簡単に説明すると、培地を含む96ウェルプレート中に1個のコロニーをコロニーピッカーで添加してスクリーニングを開始する。次にプレートを振盪インキュベーターで37℃でインキュベートする。OD600が2となった時点で、各ウェルの培養物のアリコートを回収し、およびグリセロールの存在下で凍結する。次に細菌を、誘導物質の添加によって誘導し、25℃で一晩インキュベートして、上清中へのFab-ETA(252-608)の分泌を可能とする。
【0185】
腫瘍細胞に対する結合に基づく機能スクリーニング:
5000 RPMで30分間の遠心後に、各ウェルの上清を生腫瘍細胞(96ウェルプレートに添加済み)に添加し、およびVB6-ETA(252-608)の結合活性を、VB6-ETA(252-608)フォーマット(抗Fabまたは抗ETA(252-608)のいずれか)に対するウサギ抗体と、これに続く抗ウサギ-FITCで検出する。96ウェルプレートをFMAT(商標)プレートリーダーで読みとる。2種類のポリクローナル抗体で増幅される蛍光の検出は、アッセイ法の感度を高め、ならびに野生型、ひいては強化型の結合性分子を検出するのに十分であることが予想される。野生型より高い結合反応性を有するVB6-ETA(252-608)の変種を発現する任意のクローンを選択し、および反応性を確認する。プレートリーダーによるデータ解析は定量的であり、反応性を元にクローンをランク付け可能なことが予想される。表現型に基づくスクリーニングの主な利点は、アッセイ法が迅速に行われる点である。
【0186】
生/死アッセイ法に基づく機能スクリーニング:
加えて、Annexin Vまたはカルセインによる染色を使用する生/死アッセイ法を実施することができる。VB6-ETA(252-608)の上清を、96ウェルのFMATプレートに添加された腫瘍細胞とインキュベートし、および細胞毒性のレベルを24時間にわたって評価する。評価後、変異導入クローンの力価を測定し、および野生型VB6-ETA(252-608)と比較する。各クローンについて標的が同じであることをふまえて、死滅活性の上昇が親和性の上昇と相関することが一般に想定される。細胞毒性作用の測定に必要なインキュベーション時間のために、生/死アッセイ法は、腫瘍細胞の表現型決定より時間を要する。
【0187】
ELISAアッセイ法およびフローサイトメトリー
仮に、いくつかの親和性成熟型の免疫毒素のような、変異型融合タンパク質によって認識されるエピトープまたはリガンド(すなわち標的分子)が既知の場合は、対応するタンパク質もしくはペプチドまたは化合物で96ウェルプレートをコーティングし、および誘導された上清と室温で2時間インキュベートする。誘導クローンの野生型(当初の抗体)および空のベクター3302に由来する上清を、エピトープ認識の陽性対照および陰性対照として使用する。次に、エピトープに対する親和性成熟抗体の結合をELISAで評価する。陽性クローンの反応性を確認するために、次に上清を、選択された標的腫瘍細胞とインキュベートし、および結合状態の膜関連の免疫毒素をフローサイトメトリーで検出する。
【0188】
配列決定:
最高10個のクローンの反応性が確認されたら、プラスミドDNAを抽出して配列を決定する。仮に配列決定で、ホットスポットの位置に固有のアミノ酸が同定されたら、最終的なコンストラクトは、その残基を含むように作製される。しかしながら、仮に複数の残基が得られたら、異なる位置における最適化された残基を有するコンビナトリアルライブラリーを構築し、文献に記載された手順でスクリーニングが行われる。最適なクローンが選択されたら、野生型VB6-ETA(252-608)および親抗体に対する競合アッセイ法で特異性を評価する。軽鎖Fab-ETA(252-608)タンパク質の最適化CDRは、両タンパク質と競合することが予想される。
【0189】
1つの点突然変異から得られた高い親和性は、表現型の決定または生/死アッセイ法では測定され得ない可能性がある。したがって、2か所または3か所の変異導入位置を有するライブラリーが作製される。例えば、CDR1およびCDR2のホットスポット領域を組み合わせることが可能である。
【0190】
3.PCRによる、VH領域中の選択されたホットスポットにおけるランダム変異の導入
前述した同じ戦略を用いて、VH領域のCDRの同定されたホットスポット中にランダム変異を作製する。次にPCR断片を挿入して、固有の制限酵素切断部位を使用して、Fd-ETA(252-608)ライブラリーを作製する。最適な軽鎖が作製されたら、異なるFd-ETA(252-608)ライブラリーにクローニングする。連結反応物を大腸菌細胞にエレクトロポレーションによって導入し、および適切な選択を行った後に、1個のコロニーのスクリーニングを前述の手順で行う。最適化された軽鎖クローンと比較して、より高いVB6-ETA(252-608)反応性を有するクローンを選択してランク付けを行う。最高5個の候補の反応性が確認されたら、プラスミドDNAを抽出して配列を決定する。重鎖および軽鎖のCDR中の組み合わされた変異を有する最終コンストラクトを次に作製し、生物学的活性に関して検討を行う。親和性成熟型のFabと親抗体間の競合アッセイ法を実施して、当初の結合特異性が保存されていることを確認する。
【0191】
4.他の生物学的検討
可溶性の親和性成熟型Fab-ETA(252-608)、野生型Fab-ETA(252-608)、およびVB6-845-ETA(252-608)を含む上清を、抗原陽性腫瘍細胞(選択パニングに使用)および抗原陰性腫瘍細胞に添加する。37℃における3日間のインキュベーション後に、可溶性の親和性成熟型Fab-ETA(252-608)のIC50を、野生型Fab-ETA(252-608)およびVB6-845-ETA(252-608)と比較する。以下のさまざまなシナリオが可能である:A)仮にIC50が許容範囲内(<10 pM)、および陰性腫瘍細胞より少なくとも2対数長い場合は、クローンを成長させる。精製産物を、Proxinium(商標)を使用して、確立された手順でTMAで検討し、正常の重要組織と比較して選択的な結合が腫瘍組織で観察されることを確認する。仮にクローンがTMAを通過すれば、反応性のFab-ETA(252-608)はさらに、15の異なる指標を含む本発明者らの腫瘍細胞バンクのパネルに対する特異性および交差反応性に関して、フローサイトメトリーで解析される。B)仮にIC50が10 pMより高く、したがって前臨床開発に適していなければ、軽鎖および重鎖のCDR3中の3〜4個のアミノ酸のブロックにランダムに変異を導入する(ただし、構造的役割を果たすアミノ酸、およびN付加セグメント中のアミノ酸は除く)。別のアプローチでは、VH領域およびVL領域に、誤りの多いPCRでランダムに変異が導入される。複数の論文で、フレームワーク中に導入された変異が、CDRループの調節によって親和性の上昇につながる可能性があり、ひいては抗原との相互作用の改良につながることが報告されている(Daugherty P. S., Chen G., Iverson B. L. and Georgiou G. 2000. Quantitative analysis of the effect of the mutation frequency on the affinity maturation of single chain Fv antibodies. Proc Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:2029-2034)。例えば、APExディスプレイを使用することができる。生物学的な検討は、ホットスポット変異誘発に関して記載された手順で進められ、適切なIC50値を有するクローンが、臨床上の候補として、さらなる開発が考慮される。
【0192】
図3は、親和性成熟の過程を示す。
【0193】
実施例4:VB6-011免疫毒素の親和性成熟
1.目的
Fab-de-ボウガニン融合タンパク質として作製された、精製済みのVB6-011は、親抗体であるVB1-011と競合し、組換えフォーマットと親抗体の間で特異性が保存されたことがわかる。しかしながら、VB6-011の親和性(10-6〜10-7 M)は、VB1-011より5〜10倍低く、IC50は350 nMとなる。したがってVB6-011は、有効な治療薬としてのさらなる臨床開発に適切なものとするために、親和性成熟工程を必要とする。この試験プロトコルを、VB6-011-PEの作製、CDR領域への点突然変異の導入、ならびにライブラリーの構築およびスクリーニングの手順について説明する。
【0194】
2.実験の設計
VB6-011の親和性成熟に使用される組換えフォーマットは、KDEL配列が追加された緑膿菌外毒素Aの変種に連結された011-Fab断片である。過去の研究では、形質転換された大腸菌の誘導に伴って、同フォーマットは、上清中にの可溶性材料の発現につながることが報告されている。次に、可溶状態で発現されるFab-ETA(252-608)タンパク質は、「mix and read」アッセイ法に使用されて、腫瘍細胞との結合が、Fab部分とその同種抗原の相互作用を介して評価され、またMTSアッセイ法に使用されて、細胞毒性活性が測定され、およびTMA染色に適している。
【0195】
2つのユニットを含むジシストロニック(dicistronic)発現系が作製されている。1つのユニットは、リンカーを介してVH-CHドメインに連結されたPE-252-608を含む。第2のユニットは、N末端に配置されたヒスチジンアフィニティタグを有するVL-CLドメインを含む。ジシストロニックユニットを、pING3302 Xomaベクター中に、アラビノース誘導型のaraBADプロモーターの制御下にクローニングする。両ユニットにおけるPelBリーダー配列の存在は、非還元環境がFabの2つの定常ドメイン間におけるジスルフィド架橋の形成を可能とする細胞膜周辺腔へのタンパク質の分泌につながる。究極的には、VB6-011-ETA(252-608)融合タンパク質は培養上清中に分泌される。
【0196】
VB6-011-ETA(252-608)の作製:
VB6-011-ETA(252-608)の作製は、ApaI-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI挿入物を含む3302プラスミドDNA中におけるPelB-VH11断片およびVL11-C断片の連結によって実施される。
【0197】
VB6-011/3302プラスミドDNAをPvuII制限酵素およびNheI制限酵素で切断し、ならびにVH11断片を、同じ酵素で切断済みのPelB-NcoI-VH08-CH/pSV73プラスミドに連結する。PelB-NcoI-VH08-CH/pSV73のPelB配列およびCHドメインは、それぞれVHカセットを作製するためのNcoI制限酵素切断部位およびApaI制限酵素切断部位を含む。10Fコンピテント細胞を連結反応物で形質転換し、およびアンピシリンが添加されたLB寒天プレートにプレーティングする。PelB-VH11-CH断片を有するクローンをEcoRIおよびApaIで切断し、ならびに対応する酵素で切断済みのCH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302プラスミドDNAに連結する。
【0198】
同様に、VB6-011/3302プラスミドDNAをEcoRV制限酵素およびXhoI制限酵素で切断し、ならびにVL11-C断片を、同じ酵素で切断済みのPelB-SfiI-VL845-C/pSV73プラスミドに連結する。PelB配列を、軽鎖カセットが作製されるように、固有のSfiI制限酵素切断部位を含むように修飾する。連結反応物による10Fコンピテント細胞の形質転換後に、アンピシリンが添加されたLB寒天で細胞を選択する。PelB-SfiI-VL11-C断片を有するクローンをSfiIおよびXhoIで切断し、ならびに対応する酵素で切断済みのプラスミドPelB-VH11-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302に連結する。次に、VB6-011-ETA(252-608)挿入物を含むプラスミドを使用して、E104細胞およびJM109細胞を形質転換する。
【0199】
小規模発現試験:
VB6-011-ETA(252-608)を含む、形質転換されたE104細胞およびJM109細胞を、250 mLの振盪フラスコ中の30 mLのTB培地(1%を接種)中で37℃で、225 rpmで約5時間、浸透しながら、光学密度(O.D. 600 nm)が2に達するまで増殖させる。この時点で、最終濃度が0.1%となるL-(+)アラビノースによって培養物を16時間かけて誘導し、および25℃でインキュベートする。続いて上清を、14000 rpmで5分間、遠心分離して回収し、ならびに抗ヒトカッパ軽鎖(Sigma A-7164)を使用するウェスタンブロットで、還元条件および非還元条件で解析して、免疫毒素の存在およびサイズを確認する。
【0200】
仮に、VB6-011-ETA(252-608)を対象としたウェスタンブロット解析で、完全なFab-ETA(252-608)が適切なレベルで発現されることが判明すれば、1個の形質転換のE104およびJM109のコロニーが添加された96ウェルプレート中の200μLのTBを対象に類似の実験を行う。振盪フラスコの場合と比較して、96ウェルプレート中におけるVB6-011-ETA(252-608)の発現レベルが同等であることは、96ウェルの上清を使用してライブラリーをスクリーニング可能なことを意味する。
【0201】
VB6-011-ETA(252-608)の生物学的活性:
フローサイトメトリーで、上清に含まれるVB6-011-ETA(252-608)の結合特異性の評価を、抗原陽性細胞株であるA-375およびSaos-2、ならびに抗原陰性細胞株であるPanc-1を使用して行う。結合は、ウサギ抗ETA(252-608)(1/100)を使用して検出される。加えてMTSアッセイ法で、上清に含まれるVB6-011-ETA(252-608)の細胞毒性が、抗原陽性細胞株であるA-375およびSaos-2、ならびに抗原陰性細胞株であるPanc-1を使用して測定され得るか否かを判定する。
【0202】
VB6-011-ETA(252-608)の親和性成熟:
生殖系列およびVB1-011のVH配列およびVL配列の解析から、軽鎖のCDRループ中の13個のコドン、および重鎖のCDRループ中の7個のコドンがホットスポットすなわちAGY配列を含むことが判明した。したがって、軽鎖および重鎖をそれぞれカバーするために、5および3のライブラリーを構築する。
【0203】
a.飽和変異誘発(saturation mutagenesis)による、軽鎖への標的点突然変異の導入
PCRによって、標的位置にランダム化ヌクレオチドを含むPCR断片を作製する。プライマー1およびプライマー4は全ライブラリーに共通であり、ならびにプライマー2およびプライマー3は各ライブラリーに特異的である。PCR断片中に存在するSfiIおよびXhoIの制限酵素切断部位を利用して、VB6-011-ETA(252-608)ライブラリーを作製する。
【0204】
CDRループ中の点突然変異を、PelB-SfiI-VL11-Cをテンプレートとして、および以下のプライマーを使用するスプライスオーバーラッピング伸長ポリメラーゼ連鎖反応(Splice Overlapping Extension Polymerase Chain Reaction)法(Weissensteiner et al. (2004): PCR technology, Current Innovations. CRC Press, Boca Raton, Florida 33431, USA;Horton, R.M. and Tait, R.C. (1998): Genetic Engineering with PCR. Horizon Scientific Press, Wymondham, Norfolk, England)で導入する:
1) 5'プライマー1

2) 3'プライマー2

3) 5'プライマー3

4) 3'カッパ-XhoI

【0205】
2工程のスプライスオーバーラッピング伸長PCR法を、上記の全てのプライマーを使用し、対応するライブラリー、すなわちCDR1ループのライブラリー1およびライブラリー2、CDR2ループのライブラリー1、ならびにCDR3ループのライブラリー1およびライブラリー2を増幅することで実施する(Weissensteiner et al., 2004;Horton and Tait, 1998)。制限酵素切断部位に下線を付す。NはランダムなヌクレオチドA、G、C、Tに対応し;BはT、C、Gに対応し;VはA、C、Gに対応し;およびSはG、Cに対応する。
【0206】
PCR反応物は、以下を含む50μLの反応容量を含む:
10X PCR緩衝液 5μL
2 mM dNTP 5μL
50 mM MgCl2 2μL
プライマー5' 20 pmol
プライマー3' 20 pmol
Taq DNAポリメラーゼ 2.5 U
DNAテンプレート 50 ng
【0207】
PCRのサイクリング条件を以下に示す:94℃で1分間、62℃で1分間、および72℃で0.5分間を計20サイクルと、これに続く72℃で10分間の最終伸長。
【0208】
工程1
プライマー1およびプライマー2を使用して、5'端にPelB領域を、また3'端に、標的ランダム化ヌクレオチドを有するCDRループを含む、5'ライブラリーのPCR断片を増幅する。第2のPCR反応では、プライマー3およびプライマー4を使用して、5'端に、標的ランダム化ヌクレオチドを有するCDRループを、また3'端に2つの終止コドンおよびXhoI制限酵素切断部位を含む、3'ライブラリーのPCR断片を増幅する。
【0209】
工程2
第2のPCR反応では、プライマー1およびプライマー4を、各PCR産物に由来する1μLとともに使用して、対応するCDRループ(818 bp)中の特定の位置にランダム化ヌクレオチドを含むPCR断片を作製する。
【0210】
DNA洗浄および濃縮キット(DNA clean and concentrator kit)を使用してバンドを精製し、SfiI制限酵素およびXhoI制限酵素で切断する。切断されたバンドを精製し、同じ酵素で切断済みのPelB-VH11-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-XhoI/3302ベクターに挿入する。1:3や1:2などの異なる比のベクター/挿入物について検討し、および20μLの最終容量で、高濃度のT4 DNAリガーゼの存在下で連結反応を実施し、ならびに16℃で12時間インキュベートする。次に、JM109のエレクトロコンピテントセルを連結反応物で形質転換し、およびテトラサイクリンが添加されたLB寒天プレートにプレーティングする。形質転換後に得られたコロニーの数によって、連結反応の最適条件が決定される。
【0211】
ライブラリーのスクリーニング:
a.成長および誘導
15 μg/mLのテトラサイクリンが添加された150μLの2xYTを含む96ウェルプレートのウェルに、1個の形質転換されたJM 109コロニー/ウェルを添加し、および37℃で一晩、一定の速度で振盪しながらインキュベートした。20μLの種培養物を、130μLのTBを含む96ウェルプレートに添加し、および37℃で7〜8時間インキュベートした。次に培養物を、17.5μLのL-アラビノースで一晩かけて誘導することで、VB6-011-ETA(252-608)を上清中に分泌させた。図4は、VB6-011-ETA(252-608)軽鎖クローンのウェスタンブロットの結果を示す。
【0212】
b.腫瘍細胞の表現型に基づく機能スクリーニング
野生型VB6-011-ETA(252-608)の滴定結合曲線を使用して、FMAT(商標)による最適なシグナルを得るための、室温におけるインキュベーション時間を決定する。各ウェルの上清(10μL)をSaos-2腫瘍細胞(96ウェルプレートに添加済み)に添加し、およびVB6-011-ETA(252-608)変異型クローンの結合活性を、AlexaFluor 647 (1/250)に結合させたヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体で検出する。加えて各実験では、野生型VB6-011-ETA(252-608)を陽性対照として使用する。結合反応性が野生型より高いVB6-011--ETA(252-608)変種を発現する任意のクローンを選択して反応性を確認する。
【0213】
図5に、FMATスクリーニングの結果を示す。
【0214】
c.生/死アッセイ法に基づく機能スクリーニング
しかしながら、仮にデータが定量的でない場合は、生/死アッセイ法をAnnexin VおよびCentri-Redによる染色で実施する。野生型VB6-011-ETA(252-608)の上清を腫瘍細胞とインキュベートし、および細胞毒性のレベルを24時間にわたって評価し、ならびに野生型(当初の配列)のVB6-011-ETA(252-608)と比較する。比較後、変異導入クローンの力価を測定し、および野生型VB6-011-ETA(252-608)と比較する。各クローンについて標的が同じことから、死滅活性の上昇が親和性の上昇と相関することが一般に想定される。
【0215】
図6に、MTSアッセイ法の結果を示す。
【0216】
d.配列決定および反応性
最高10個のクローンの反応性が確認されたら、それらのプラスミドDNAを抽出して配列を決定する。仮に配列決定で、ホットスポット位置に固有のアミノ酸が同定されたら、この残基を含むように最終コンストラクトを作製する。しかしながら仮に多数の残基が得られたら、異なる位置に最適化された残基を有するコンビナトリアルライブラリーを構築し、および文献に記載された手順でスクリーニングを行う。VB6-011 ETA(252-608)の軽鎖の親和性精製から得られた修飾型の軽鎖モチーフを表5に列挙する。VB6-011の結合を、文献に記載された手順にしたがってフローサイトメトリーで測定する。最適なクローンは、図7に示すように、野生型クローンまたは競合クローンのいずれかより高い平均蛍光によって決定され、および抗原に対するELISA結合によって検証される。VB6-011の場合は、これは図8に示すように、固定化された硫酸コンドロイチンに対するELISAである。
【0217】
最適クローンが選択されたら、特異性を、VB1-011抗体を使用する競合アッセイ法によって評価する。簡単に説明すると、高濃度のVB1-011を、野生型または変異導入型のVB6-011-ETA(252-608)の上清とインキュベート済みの一定数のSaos-2細胞とインキュベートする。
【0218】
次に、最適化された軽鎖を、重鎖中の標的変異のライブラリーと結合させる。
【0219】
飽和変異誘発による重鎖への標的点突然変異の導入:
標的位置にランダム化ヌクレオチドを含むPCR断片をPCRで作製する。プライマー1およびプライマー4は全ライブラリーに共通であり、ならびにプライマー2およびプライマー3は各ライブラリーに特異的である。PCR断片中のEcoRIおよびApaIの制限酵素切断部位を利用して、VB6-011-ETA(252-608)ライブラリーを作製する。
【0220】
CDRループ中の点突然変異を、スプライスオーバーラッピング伸長ポリメラーゼ連鎖反応(Weissensteiner, 2004;Horton and Tait, 1998)法で、PelB-VH11をテンプレートとして、および以下のプライマーを使用して導入する:
1) 5'プライマー1

2) 3'プライマー2

3) 5'プライマー3

4) 3' VH-CH-ApaI

【0221】
2工程のスプライスオーバーラッピング伸長PCR法を、上記の全プライマーを使用して実施して、対応するライブラリー、すなわち各CDRループにつき1つのライブラリーを増幅する(Griffin and Griffin, 1994;Horton and Tait, 1998)。制限酵素切断部位に下線を付す。Nはランダム化されたヌクレオチドA、G、C、Tに対応し、およびSはG、Cに対応する。
【0222】
工程1
プライマー1およびプライマー2を使用して、5'端にPelB領域を、また3'端に標的ランダム化ヌクレオチドを有するCDRループを含む5'ライブラリーのPCR断片を増幅する。第2のPCR反応では、プライマー3およびプライマー4を使用して、5'端に標的ランダム化ヌクレオチドを有するCDRループを、ならびに3'端に2つの終止コドンおよびApaI制限酵素切断部位を含む3'ライブラリーのPCR断片を増幅する。
【0223】
工程2
第2のPCR反応では、プライマー1およびプライマー4を、各PCR産物に由来する1μLとともに使用して、対応するCDRループ(527 bp)中の特定の位置にランダム化ヌクレオチドを含むPCR断片を作製する。
【0224】
対象となるバンドを文献に記載された手順で精製し、ならびにEcoRI制限酵素およびApaI制限酵素で切断する。切断されたバンドを精製し、および同じ酵素で事前に切断され、最適な軽鎖を含むPelB-CH-ETA(252-608)-PelB-SfiI-VL11-C/3302ベクターに挿入する。JM109エレクトロコンピテント細胞を連結反応物で形質転換し、およびテトラサイクリンが添加されたLB寒天プレートにプレーティングする。
【0225】
次にライブラリーのスクリーニングを、陽性細胞株MDA-MB-345Sに対するFMATで行う。クローンは、得られたアポトーシス率(%)が、最適化されたVL-2軽鎖を含む野生型(当初の配列)のVB6-011-ETA(252-608)より大きい場合に陽性として選択して配列を決定する。仮に、複数の最適化されたモチーフが見つかれば、コンビナトリアルライブラリーを構築し、およびFMATスクリーニングを繰り返す。VB6-011 ETA(252-608)の重鎖用のCDRモチーフの一部を表6に列挙する。VB6-011ETA(252-608) VL-2重鎖のコンビナトリアルライブラリーから、FMATスクリーニングによって43個のクローンが陽性であると選択された。このうち25個はCSA ELISAによって、抗原特異性を維持することが検証された。12個は、フローサイトメトリーによって陽性であると検証された。最適なクローンは、フローサイトメトリーによって、最高のMF結合を示すクローンとして選択された(図9)。表7に、VB6-011 ETA(252-608)に関する最高4個の親和性成熟コンストラクトの結果を要約する。最終コンストラクトを、最適な重鎖と軽鎖の両方を用いて作製し、この場合は、クローン2D3が選択された。最終コンストラクトは、ETA(252-608)フォーマット中に維持可能なほか、または他のトキシンもしくはエフェクターを修飾型ボウガニンのように作製することができる。選択されたクローンの最終的な配列を図10に示す。
【0226】
親和性成熟型のVB6-011-ボウガニンの精製:
最終クローン2D3を、de-ボウガニントキシンを用いて、ApaI制限酵素およびSfiI制限酵素を使用して作製した。簡単に説明すると、VB6-011 ETA(252-608)をApaIおよびSfiIで切断して2つの断片を得た。第1の断片は、VHおよびVL-CLを含むpING3302プラスミドに対応し、ならびに第2の断片はCH-ETA(252-608)に対応する。第1の断片を精製し、および同じ酵素で切断済みのCH-de-ボウガニン断片と連結して、VB6-011-Boug-2D3/3302ベクターを得た。VB6-011-2D3クローンの回分発酵を、GMM培地を使用して20 LのCHEMAP発酵槽で実施した(14)。25 μg/mLのテトラサイクリンを含み、ならびに微量元素D、塩化カルシウム、ニコチン酸、およびチアミンが添加された500 mLのGMMを含む2 Lの振盪フラスコに、MCBのバイアルを1本添加した。細胞を、28℃に設定された振盪インキュベーター中に、200 rpmで一定の速度で振盪しながら維持した。培養物を、OD600が2.0〜2.5になるまで成長させた。次に150 mLの種培養物を使用して、追加成分が文献に記載されたように添加された15 LのGMM培地を含む20 L chemapバイオリアクターに添加した。温度を28℃に設定し、およびpH制御ループを介して50%水酸化アンモニウム溶液を添加して、発酵の全期間にわたってpHを7.0に維持した。攪拌速度を300 rpmに、また空気流量を3 slpmに設定し、および600 rpmおよび6 slpmに、ならびに後に1000 rpmおよび10 slpmとなるように、バッチ相中に41%を上回る溶存酸素が維持されるように連続的に増加させた。バッチ培地の炭素源が枯渇したら、溶存酸素は90%以上に上昇し、これによってフィード1溶液(50%グリセロール溶液)の添加が誘導される。次にD0セットポイントを41%に設定し、および供給を、DOの読み値のカスケード制御に基づいて行った。光学密度が100となった時点で、フィード2溶液(50%グリセロール+30 g/Lアラビノース溶液)に切り替えることで培養物を誘導し、およびフィード1の場合と同じ制御下で誘導を48時間かけて実施した。
【0227】
誘導から48時間後に培養物を回収し、および8000 rpmで30分間、遠心分離し、CM-セファロースカラム、キレーティング-セファロースカラム、およびSP-セファロースカラムと、これに続くサイズ排除カラムを使用して精製した。簡単に説明すると、上清を濃縮し、および20 mMリン酸ナトリウムpH 7±0.1でダイアフィルトレーションを行った。次に、ダイアフィルトレーションが行われた濃縮上清を、20 mMリン酸ナトリウム、25 mM NaCl pH 7±0.1で平衡化したCMセファロースカラムにアプライした。同カラムを、20 mMリン酸ナトリウム、25 mM NaCl pH 6.9±0.1で洗浄した。次に、結合状態のVB6-008を、20 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaCl pH 7.5±0.1で溶出した。CM-セファロース溶出液を、最終濃度が0.25% triton-X100となるように調整し、およびチャージ済みのキレーティングセファロースカラムにアプライした。次にキレーティング-セファロースカラムを、20 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaCl、10 mmイミダゾール pH 7.5±0.1で洗浄した。結合状態のVB6-008を、20 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaCl、250 mMイミダゾール pH 7.5±0.1で溶出し、および5 mLのフラクションに回収した。各フラクションについてA280 nmにおける吸光度を決定し、および材料を含むフラクションをプールし、ならびにpHと伝導率を、それぞれ6と5.8 mSに調節した。次に、材料をSP-セファロースカラムにアプライし、20 mMリン酸ナトリウム、25 mM NaCl pH 6.0±0.1で洗浄し、および20 mMリン酸ナトリウム、300 mM NaCl pH 7.5±0.1で溶出した。SP-セファロースカラムのプールされたフラクションを、20 mMリン酸ナトリウム、150 mM NaCl、pH 7.5±0.1で平衡化したSEC-200カラムにアプライした。完全長のVB6-011-Boug-2D3を含むフラクションを、centriconカラムを使用して濃縮した。
【0228】
親和性成熟型VB6-011の生物学的活性:
a.フローサイトメトリーによる、Bougの修飾の検証
野生型VB6-011 bougに関して、VB6-011 2D3 bougの親和性が改良されたことを検証するために、フローサイトメトリーを、高011結合細胞株(Cal-27)、および中〜低結合細胞株PANC-1を使用して実施した。結果を図11および表8に示す。
【0229】
b.親和性の測定
フローサイトメトリーで、VB6-011-Bougの親和性を測定する。高濃度の精製済みのVB6-011-Bougを、一定数のCal-27細胞とともにインキュベートして飽和曲線を得る。結合を、ウサギ抗bougを使用して検出し、および野生型VB6-011と比較する。解離定数KDで表される結合親和性を、メジアン蛍光の逆数を、抗体濃度の逆数の関数としてプロットするラインウィーバー・バーク法で計算する。解離定数は、以下の方程式で決定される:1/F=1/FMax+(KD/FMax)(1/[scFv])、同式でFは、バックグラウンドを差し引いたメジアン蛍光に対応し、およびFMaxはプロットから計算される。
【0230】
TMA:
VB6-011-Bougを最初に、最適な染色条件を明らかにするために、一定数のsaos-2細胞株ペレットについて検討する。続いてIHCを実施する。
【0231】
MTSアッセイ法:
MTSアッセイ法で、抗原陽性細胞株であるA-375およびSaos-2、ならびに抗原陰性細胞株であるPanc-1を使用して、変種のIC50値を決定する。変種のIC50を決定し、およびVB6-011-Boug野生型と比較する。
【0232】
本発明を、好ましい実施例であると現時点で見なされる対象に関連して説明したが、本発明は、開示された実施例に制限されないと理解されたい。むしろ本発明は、添付の特許請求の範囲および趣旨に含まれるさまざまな変更および同等の配列を含むことが意図される。
【0233】
全ての出版物、特許、および特許出願は、それらの全体が、個々の出版物、特許、または特許出願が特異的および個別に、参照により全体が組み入れられると示されているのと同じ規模で、参照により本明細書に組み入れられる。
【0234】
(表1)カッパ軽鎖のCDR領域のアミノ酸配列

* 配列は不明
【0235】
(表2)VH断片のCDR領域のアミノ酸配列

【0236】
(表3)結腸免疫毒素ライブラリーに由来するFMATスクリーニングの結果

* 当初のライブラリーは520,000個のクローンを含んでおり、この時点では約45000個がスクリーニングされた。
【0237】
(表4)結腸ベースの免疫毒素ライブラリーのFMAT通過クローンのスクリーニング

【0238】
(表5)VB6-011 ETA(252-608)の親和性成熟軽鎖モチーフ

【0239】
(表6)VB6-011 ETA(252-608) VL2親和性成熟重鎖モチーフ

【0240】
(表7)VB6-011 ETA(252-608)の親和性成熟型クローンのスクリーニング結果

【0241】
(表8)VB6-011-2D3ボウガニンを対象とした%M2フローサイトメトリー

【0242】
参考文献





【図面の簡単な説明】
【0243】
本発明を、以下の図面に関連して説明する:
【図1】患者のB細胞集団に由来する未成熟B細胞の除去のフローダイアグラム。リンパ節から抽出された細胞の混合物を、抗IgD-FITCコンジュゲートによって、除去前(上のグラフ)および除去後(下のグラフ)に標識した。生細胞のゲーティングによって、それぞれ非標識細胞と標識細胞を代表するM1とM2の2つの集団が確認された。標識細胞の除去は、未熟B細胞の除去を意味する。
【図2】免疫ライブラリーの誘導クローンのウェスタンブロット解析。96ウェルプレートで成長させて誘導した15の独立クローンの上清16μLを非還元条件でSDS-PAGEゲルにロードし、および抗ヒトカッパ軽鎖-HRP抗体(1/1000)で免疫ブロットを行った。LおよびCはそれぞれ、VB6-845-FAB-ETA(252-608)のラダーおよび誘導上清に対応する。矢印は、約75 kDaに移動した完全長抗体が、クローンによって発現されることを意味する。
【図3】親和性成熟のアルゴリズム。
【図4】VB6-011--ETA(252-608)のCDR-3軽鎖クローンのウェスタンブロット。それぞれ150μLおよび1 mLを含む、96ウェルプレート(W)または5 mLチューブ(T)で得られた13個のクローンの上清(16μL)を、非還元条件でSDS-PAGEゲルにロードし、ならびにウサギ抗緑膿菌外毒素A抗体によって、続いてヤギ抗ウサギHRP抗体によって免疫ブロットを行った。クローン13は、5 mLチューブまたは96ウェルプレートで成長させ、および誘導されたVB6-011-ETA(252-608)の野生型である。矢印は、推定サイズの完全長タンパク質を示す。ウェスタンブロット解析から、13個中10個のクローンが、完全長タンパク質を発現していることが判明した。チューブまたはウェルにおける発現レベルは同等であり、および野生型と同等である。
【図5】FMATによるスクリーニング。A)VB6-011--ETA(252-608)。誘導クローンおよび野生型に由来する上清5μLを、前日に1ウェルあたり15000個となるように添加されたA-375細胞を含むFMATプレートに添加した。室温における6時間のインキュベーション後に、VB6-011--ETA(252-608)の結合が、Alexa Fluor 647(登録商標)を結合させたヤギ抗ヒト重鎖+軽鎖抗体によって検出された。FMATシステム手法によって陽性と同定されたウェル(プレート3 A1)ならびに野生型(WT)の画像から、明瞭な膜染色を示すことがわかった。イメージの散布図(Y軸は平均蛍光(FL-1)、X軸はイベント数)から、プレート3のクローンA1については、平均蛍光およびイベント数が、野生型と比較して上昇することが判明した。全蛍光を、平均蛍光にイベント数を乗じて計算した。B)VB6-008--ETA(252-608)。別のFab-PE断片をFMATシステムで検討した。誘導クローンおよび野生型の上清10μLを、前日に1ウェルあたり15000個となるように添加されたMB435S細胞を含むFMATプレートに添加した。室温で6時間のインキュベーション後に、VB6-008の結合が、ウサギ抗緑膿菌外毒素A抗体、およびAlexa Fluor 647(登録商標)を結合させたヤギ抗ウサギ抗体を含む混合物について検出された。プレートの解析から、ウェルF4(プレート1)に由来するクローンが、平均蛍光およびイベント数の上昇を示したことが判明した。
【図6】FMATアッセイ法で選択されたクローンのMTSアッセイ法。96ウェルのMTSプレートに、1ウェルあたり50μLの容量の培地中に5000個の細胞が添加された。A-375細胞およびMB-435S細胞を使用して、それぞれVB6-011--ETA(252-608)およびVB6-008--ETA(252-608)を検討した。37℃および5% CO2で2時間かけて吸着させた後に、10μLの大腸菌上清が、最終容量を100μL/ウェルにするために40μLの培地とともにウェルに添加された。細胞を上清とともに37℃で、5% CO2で72時間にわたってインキュベートした。インキュベーション後に、20μLのMTS試薬(1:20 MTS溶液:PMS溶液)を各ウェルに添加し、ならびに37℃および5% CO2でさらに2時間、展開した。次に490 nmにおけるOD値を読みとり、生細胞のパーセンテージを決定した。
【図7】A-375細胞に対するVB6-011-ETA(252-608)の親和性成熟型VLクローンの結合のフローサイトメトリー解析。N1=非誘導大腸菌由来の上清、3302=pING3302で形質転換された大腸菌、845=VB6-845-ETA(252-608)陰性対照、WT=当初のVB6-011-ETA(252-608)、VL-1〜VL-4=親和性成熟軽鎖を有するVB6-011-ETA(252-608)
【図8】野生型および対照と比較時の、親和性成熟型軽鎖VB6-011-ETA(252-608)-VL2による硫酸コンドロイチンAの認識に関するELISA。
【図9】VB6-011に対する親和性成熟型の軽鎖および重鎖の混合クローンのフローサイトメトリー。PBS陰性対照、VB3-011野生型親抗体、親和性成熟鎖を有するVL-2 VB6-01 1-ETA(252-608)野生型重鎖、非誘導VL-2クローンに由来するN-1上清、誘導上清の20A10、2D3、11F11、および8E8は、親和性成熟型軽鎖(VL-2)および個々の重鎖を有するさまざまなクローン。
【図10】親和性成熟型のVB6-011クローン2D3(SEQ ID NO: 1および2)のアミノ酸配列。
【図11】抗原高陽性(Cal-27)および抗原低陽性(PANC-1)の両細胞株に対する、親VB6-011および陽性対照VB6-845と比較時の、精製済みの最適化された親和性成熟型のボウガニン結合VB6-011クローン2D3のフローサイトメトリーによる解析。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の組換え細胞が融合タンパク質をコードする核酸配列を含む、組換え細胞のライブラリーを作製する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)個々のベクターが、融合タンパク質をコードし、かつ2)エフェクター分子をコードする核酸配列と、これに連結した1)標的分子に結合するリガンドタンパク質をコードする核酸配列とを含む、ベクターのライブラリーを構築する工程;および
(b)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程。
【請求項2】
個々の組換え細胞が免疫毒素(immunotoxin)を発現する、請求項1記載の組換え細胞のライブラリーを作製する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)個々のベクターが、1つの軽鎖可変領域の核酸配列および/または1つの重鎖可変領域の核酸配列を含み、軽鎖可変領域の核酸配列または重鎖可変領域の核酸配列が、細胞毒素をコードする核酸配列に操作可能に連結された、ベクターのライブラリーを構築する工程;ならびに
(b)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程。
【請求項3】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域がB細胞から単離される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
B細胞が成熟B細胞である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
B細胞が、癌を有する対象に由来する、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
細胞毒素がリボソーム不活性化ポリペプチドである、請求項2〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
細胞毒素が、ゲロニン(gelonin)、ボウガニン(bouganin)、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリョジン(bryodin)、ジフテリア、リストリクトシン(restrictocin)、および緑膿菌(Pseudomonas)外毒素A、またはそれらの変種からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
細胞毒素が、修飾型のボウガニンまたはその変種である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
細胞毒素が、機能性の細胞結合ドメインを有さない緑膿菌外毒素Aの変種である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
細胞毒素が、アミノ酸252〜608またはその変種および小胞体保持配列からなる切断型の緑膿菌外毒素Aである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
宿主細胞が大腸菌である、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
個々の組換え細胞が、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法に従い調製された融合タンパク質を発現する、組換え細胞のライブラリー。
【請求項13】
以下の工程を含む、融合タンパク質のライブラリーを作製する方法:
(a)請求項1〜10のいずれか一項記載の組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(b)組換え細胞をクローニングする工程;および
(c)融合タンパク質が組換え細胞によって発現される可溶性タンパク質である、融合タンパク質のライブラリーを発現させる工程。
【請求項14】
請求項13記載の方法に従い調製される融合タンパク質のライブラリー。
【請求項15】
複数の重鎖可変領域および複数の軽鎖可変領域を含む免疫毒素のライブラリーであって、ライブラリー中の個々の免疫毒素が、1つの重鎖可変領域および1つの軽鎖可変領域を有し、軽鎖可変領域または重鎖可変領域が細胞毒素に連結されている、ライブラリー。
【請求項16】
細胞毒素がリボソーム不活性化ポリペプチドである、請求項15記載のライブラリー。
【請求項17】
細胞毒素が、ゲロニン、ボウガニン、サポリン、リシン、リシンA鎖、ブリョジン、ジフテリア、リストリクトシン、および緑膿菌外毒素A、またはそれらの変種からなる群より選択される、請求項16記載のライブラリー。
【請求項18】
細胞毒素が修飾型のボウガニンまたはその変種である、請求項17記載のライブラリー。
【請求項19】
細胞毒素が、機能的な細胞結合ドメインを有さない緑膿菌外毒素Aの変種である、請求項17記載のライブラリー。
【請求項20】
細胞毒素が、アミノ酸252〜608またはその変種および小胞体保持配列からなる切断型の緑膿菌外毒素Aである、請求項19記載のライブラリー。
【請求項21】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域がB細胞から単離される、請求項15〜20のいずれか一項記載のライブラリー。
【請求項22】
B細胞が成熟B細胞である、請求項21記載のライブラリー。
【請求項23】
B細胞が、癌を有する対象に由来する、請求項21または22記載のライブラリー。
【請求項24】
以下の工程を含む、融合タンパク質のライブラリーを、標的細胞に対する結合に関してスクリーニングする方法:
(a)請求項14記載の融合タンパク質のライブラリーを提供する工程;
(b)融合タンパク質に標的分子を接触させる工程;および
(c)標的分子に対する融合タンパク質の結合を判定する工程。
【請求項25】
以下の工程を含む、融合タンパク質のライブラリーを、標的細胞に対する細胞毒性に関してスクリーニングする方法:
(a)請求項14記載の融合タンパク質のライブラリーを提供する工程;
(b)融合タンパク質に標的細胞を接触させる工程;および
(c)標的細胞に対する融合タンパク質の細胞毒性を判定する工程。
【請求項26】
融合タンパク質が免疫毒素である、請求項24または25記載の方法。
【請求項27】
標的細胞が癌細胞である、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
以下の工程を含む、改良型の融合タンパク質を作製する方法:
(a)標的分子に結合可能なリガンドタンパク質をコードする核酸配列を提供する工程;
(b)少なくとも1つの点突然変異を、リガンドタンパク質をコードする核酸配列中に導入して、変種のリガンドタンパク質をコードする核酸配列のライブラリーを作製する工程;
(c)個々のベクターが、融合タンパク質をコードし、かつ2)エフェクター分子をコードする核酸配列と、これに連結された1)工程(b)で作製された変種のリガンドタンパク質の核酸配列の1つとを含む、ベクターのライブラリーを構築する工程;
(d)ベクターのライブラリーで宿主細胞を形質転換して、組換え細胞のライブラリーを作製する工程;
(e)形質転換された宿主細胞をクローニングする工程;
(f)融合タンパク質が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、融合タンパク質のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(g)融合タンパク質のライブラリーを、非修飾型の融合タンパク質と比較した活性の改善に関してスクリーニングする工程であって、活性の改善が改良型の融合タンパク質を示す工程。
【請求項29】
融合タンパク質が改良型の免疫毒素である、請求項28記載の方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)ベクターのライブラリーを構築する前に、少なくとも1つの点突然変異が、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域をコードする核酸配列中に導入されている、請求項2〜12のいずれか一項記載の組換え細胞のライブラリーを調製する工程;
(b)免疫毒素を発現する形質転換宿主細胞をクローニングする工程;
(c)免疫毒素が宿主細胞によって発現される可溶性タンパク質である、免疫毒素のライブラリーを発現させる工程;ならびに
(d)免疫毒素のライブラリーを、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較して、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良に関してスクリーニングする工程であって、非修飾型の抗体もしくは免疫毒素と比較した、標的細胞に対する結合の改良および/または細胞毒性の改良が、免疫毒素の改良を示す工程。
【請求項30】
変異が軽鎖可変領域に導入される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
変異が重鎖可変領域に導入される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
変異が、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方に導入される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
変異が、軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域をコードする核酸配列中のホットスポットに少なくとも1つの点突然変異を含む、請求項29〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
点突然変異が軽鎖可変領域中のホットスポットに導入される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
点突然変異が重鎖可変領域中のホットスポットに導入される、請求項33記載の方法。
【請求項36】
点突然変異が軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方のホットスポットに導入される、請求項33記載の方法。
【請求項37】
標的細胞が癌細胞である、請求項29〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
請求項28〜37のいずれか一項記載の方法に従い作製される融合タンパク質。
【請求項39】
SEQ ID NO:2で示される軽鎖可変領域を含む免疫毒素。
【請求項40】
SEQ ID NO:1で示される重鎖可変領域を含む免疫毒素。
【請求項41】
SEQ ID NO:2で示される軽鎖可変領域を含む、請求項40記載の免疫毒素。
【請求項42】
疾患を予防または治療するための、請求項38〜41のいずれか一項記載の免疫毒素の使用。
【請求項43】
癌を予防または治療するための、請求項42記載の免疫毒素の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−520468(P2009−520468A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546061(P2008−546061)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【国際出願番号】PCT/CA2006/002113
【国際公開番号】WO2007/071061
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(506410877)ヴィヴェンティア バイオテック インコーポレーティッド (5)
【Fターム(参考)】