説明

融雪瓦屋根構造

【課題】熱を屋根瓦材に対し直接的に無駄なく伝達でき、屋根瓦材において熱が速やかにしかも効率よく伝達できる融雪瓦屋根構造を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒートポンプユニットにより加温された熱媒は供給口35から発熱パイプ25へ供給される。熱媒から発せられた熱は発熱パイプ25に伝達されて、その熱は発熱パイプ25から波瓦材3に伝達される。発熱パイプ25は波瓦材3の内面と接触しているので、その熱が接触部を介して発熱パイプ25から波瓦材3に効率良く伝達されて、波瓦材3上に積もった雪は速やかに融かされる。熱媒は発熱パイプ25の排出口37から流出した後、再度加温されて、発熱パイプ25に送り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は融雪瓦屋根構造に係り、特に屋根に積もった雪を速やかに融かすことができる融雪瓦屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
豪雪地帯においては、建築物に融雪瓦屋根構造を備えることが多い。この種の融雪瓦屋根構造としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
この融雪瓦屋根構造は、野地板上に敷設され、上面に複数枚の瓦を載置する複数の瓦載置部を有した発泡材からなる瓦下地材と、瓦下地材の各瓦載置部に設けられた温水管挿通溝と、この温水管挿通溝に挿通され、一端側が温水供給源と連通し、他端側が温水帰還管に連通する温水管と、瓦下地材の瓦載置部に載置される瓦本体と、この瓦本体の下面に一体に設けられ、温水管に接触もしくは近接する複数の凸部と、瓦下地材の瓦載置部と瓦本体の下面との間にできる隙間に充填される熱伝導性の充填材とを具備している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−270372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の融雪瓦屋根構造は、温水管から発せられる熱が、充填材を介して間接的に瓦本体に伝達されるため、充填材から放熱される分が無駄になるという問題がある。
また、瓦本体は陶製であるものが多く、熱を速やかにしかも効率よく伝達できないという問題もある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、熱を屋根瓦材に対し直接的に無駄なく伝達でき、さらに屋根瓦材において熱が速やかにしかも効率よく伝達できる融雪瓦屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、中空部を有する屋根瓦材と、前記屋根瓦材の中空部内に配置された発熱パイプと、前記発熱パイプに熱媒を循環させる熱媒循環手段とを備えることを特徴とする融雪瓦屋根構造である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した融雪瓦屋根構造において、屋根瓦材は外側部と、前記外側部の内部に備えられた管状部と、前記管状部と外側部とを連結する連結部から成ることを特徴とする融雪瓦屋根構造である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した融雪瓦屋根構造において、管状部に発熱パイプが挿通され、発熱パイプの外周面と管状部の内周面とが接触していることを特徴とする融雪瓦屋根構造である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1に記載した融雪瓦屋根構造において、屋根瓦材は外側部と、前記外側部の内部に備えられ、外側部に一体に設けられた仕切り部とから成ることを特徴とする融雪瓦屋根構造である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した融雪瓦屋根構造において、屋根瓦材は軽合金によって構成されていることを特徴とする融雪瓦屋根構造である。
【0010】
請求項6の発明は、請求項5に記載した融雪瓦屋根構造において、軽合金はマグネシウム系合金またはアルミニウム系合金で形成されていることを特徴とする融雪瓦屋根構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の融雪瓦屋根構造によれば、熱を屋根瓦材に対し直接的に無駄なく伝達することが可能となる。
また、屋根瓦材において熱が速やかにしかも効率よく伝達できるため、屋根に積もった雪を速やかに融かすことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1の実施の形態に係る融雪瓦屋根構造1を、図1から図5に従って説明する。
符号Nは傾斜勾配の有る野地板を示し、この野地板Nは図示しない骨組の垂木上に敷設されている。野地板N上には屋根瓦材としての波瓦材3が所定の枚数取り付けられており、屋根の軒から棟に向かう所定範囲の波瓦材3の内部には後述する発熱パイプ25が配置されている。
波瓦材3はマグネシウム系合金製であり、押出し工法によって製造された押出し材である。この波瓦材3は比較的幅寸法が小さく、長さ寸法が大きい長尺なものとなっている。
【0013】
波瓦材3の断面を図3に示す。この波瓦材3の外側部5は下材7、上材9、側材11によって構成されている。下材7は薄肉の平板状を為しており、上材9は薄肉の平板が複数回に亘って屈曲した形状を為している。これらの下材7と上材9とが薄肉の側材11を介して一体に形成されており、その間に中空部13が形成されている。
下材7の左側部分には上方に向かって突出する係合突起15が一体に形成されている。上材9の右側端には下方に向かって突出する係合突起17が一体に形成されている。
外側部5の内部には4つの円筒状の管状部19が備えられており、この管状部19の上部外周面と下部外周面には、管状部19と外側部5とを連結するためそれぞれ連結部21が設けられている。上側の連結部21は管状部19の上部外周面と上材9の下面とに一体に形成されており、また下側の連結部21は管状部19の下部外周面と下材7の上面とに一体に形成されている。
【0014】
図1、図4において符号25は発熱パイプを示し、この発熱パイプ25は直管部27と湾曲部29とから成る略U字状に形成されている。1つの波瓦材3の中空部13には2つの発熱パイプ25が配置されている。各発熱パイプ25の2つの直管部27は上記した管状部19にそれぞれ挿通されて、発熱パイプ25の両端部は波瓦材3の一方の端面から突出しており、発熱パイプ25の湾曲部29は波瓦材3の他方の端面から突出している。発熱パイプ25の外周面31と管状部19の内周面33とが略全面に亘って接触している。
発熱パイプ25は熱媒を通すためのものであり、発熱パイプ25の一端側開口は熱媒が供給される供給口35となり、他端側開口は熱媒が排出される排出口37となる。
【0015】
次に、融雪瓦屋根構造1の熱媒を循環させるシステム構成について説明する。
図5において符号41は熱媒循環手段としてのヒートポンプを示し、このヒートポンプ41は循環パイプ43とヒートポンプユニット45とによって構成されている。循環パイプ43の一端側は上記した波瓦材3に配置された発熱パイプ25の供給口35に分岐管46を介して接続されている。循環パイプ43の他端側は波瓦材3に配置された発熱パイプ25の排出口37に分岐管46を介して接続されている。循環パイプ43の途中部分には熱媒を循環させるためのポンプ47が設けられている。熱媒は循環パイプ43内をポンプ47により循環している。
ヒートポンプユニット45はコンプレッサー49、冷媒配管51、熱交換器53および空気熱交換器55から成り、冷媒配管51の循環経路に、コンプレッサー49、熱交換器53、空気熱交換器55が順に介装されて接続されている。熱交換器53内を循環パイプ43が通っており、この熱交換器53内で、冷媒配管51内の冷媒と循環パイプ43内の熱媒との間で熱交換が行われる。従って、循環パイプ43は、熱交換された後発熱パイプ25の供給口35に向かう供給ライン(図5の右上向き矢印に示す)と、発熱パイプ25の排出口37から熱交換器53に向かう排出ライン(図5の左下向き矢印に示す)とに分かれている。
【0016】
この融雪瓦屋根構造1の動作について説明する。
ヒートポンプユニット45を作動させるとコンプレッサー49により冷媒が圧縮されて高温となる。そして熱交換器53において、高温となった冷媒と循環パイプ43を通る熱媒との間で熱交換が行われて、熱媒が加温される。この熱媒はポンプ47によって循環パイプ43の供給ラインに送り込まれて、分岐管46を介して供給口35から発熱パイプ25へ供給される。熱媒から発せられた熱は発熱パイプ25に伝達され、さらに発熱パイプ25から波瓦材3に伝達される。上記したように発熱パイプ25の外周面31と管状部19の内周面33とが全面に亘って接触しているので、その熱が接触部を介して発熱パイプ25から波瓦材3に効率良く伝達されて、波瓦材3上に積もった雪は速やかに融かされる。
発熱して温度が低下した熱媒は、発熱パイプ25の排出口37から流出し、分岐管46を経て循環パイプ43の排出ラインに流入する。この熱媒は循環パイプ43を通り熱交換器53で再度加温されて、この加温された熱媒がポンプ47に送り込まれる。
【0017】
図6に第2の実施の形態に係る融雪瓦屋根構造に適用される波瓦材61を示す。
この波瓦材61が備えられる第2の実施の形態に係る融雪瓦屋根構造は、波瓦材61を除いて第1の実施の形態に係る融雪瓦屋根構造1と同様の構造を有している。
波瓦材61は、第1の実施の形態に係る融雪瓦屋根構造1に適用される波瓦材3と同じ構成を有しているので、同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図6において符号63は仕切り部を示し、この仕切り部63は波瓦材61の外側部5の内部に備えられており、外側部5に一体に設けられている。外側部5の内部は複数の仕切り部63が備えられており、中空部13は複数の空間に仕切られている。この中空部13に発熱パイプ25が挿通されている。
【0018】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
上記実施の形態では、波瓦材3をマグネシウム系合金で形成したが、アルミニウム系合金で形成してもよく、その他の軽合金で構成してもよい。
上記実施の形態では、屋根瓦材として波瓦材3を示したが、波瓦材3以外の屋根瓦材に適用してもよく、波瓦材の形状も実施の形態に示したものに限定されない。
上記実施の形態では、1つの波瓦材3の中空部13には2つの発熱パイプ25を配置したが、発熱パイプ25は2つに限定されず1つでもよく3つ以上でもよい。また外側部5の内部には4つの管状部19を備えたが、管状部19は4つに限定されず1つ以上3つ以下でもよく5つ以上でもよい。
上記実施の形態では、発熱パイプ25を配置した範囲を屋根の軒から棟に向かう所定の範囲としたが、この発熱パイプ25を配置する範囲は屋根全体であってもよく、また発熱パイプ25を配置する範囲を適宜変更してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の融雪瓦屋根構造によれば、家屋の屋根に積もった雪を速やかに融かすことができるため、豪雪地域の家屋の屋根に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る融雪瓦屋根構造の斜視図である。
【図2】図1の融雪瓦屋根構造の側面図である。
【図3】図1の融雪瓦屋根構造に適用される波瓦材の断面図である。
【図4】図3の波瓦材において発熱パイプが配置された波瓦材の平面図である。
【図5】図1の融雪瓦屋根構造の熱媒を循環させるシステム構成図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る融雪瓦屋根構造に適用される波瓦材の側断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1‥‥融雪瓦屋根構造 3‥‥波瓦材
5‥‥外側部 7‥‥下材
9‥‥上材 11‥‥側材
13‥‥中空部 15、17‥‥係合突起
19‥‥管状部 21‥‥連結部
25‥‥発熱パイプ 27‥‥直管部
29‥‥湾曲部 31‥‥外周面
33‥‥内周面 35‥‥供給口
37‥‥排出口 41‥‥ヒートポンプ
43‥‥循環パイプ 45‥‥ヒートポンプユニット
46‥‥分岐管 47‥‥ポンプ
61‥‥波瓦材 63‥‥仕切り部
N‥‥野地板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する屋根瓦材と、前記屋根瓦材の中空部内に配置された発熱パイプと、前記発熱パイプに熱媒を循環させる熱媒循環手段とを備えることを特徴とする融雪瓦屋根構造。
【請求項2】
請求項1に記載した融雪瓦屋根構造において、屋根瓦材は外側部と、前記外側部の内部に備えられた管状部と、前記管状部と外側部とを連結する連結部から成ることを特徴とする融雪瓦屋根構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載した融雪瓦屋根構造において、管状部に発熱パイプが挿通され、発熱パイプの外周面と管状部の内周面とが接触していることを特徴とする融雪瓦屋根構造。
【請求項4】
請求項1に記載した融雪瓦屋根構造において、屋根瓦材は外側部と、前記外側部の内部に備えられ、外側部に一体に設けられた仕切り部とから成ることを特徴とする融雪瓦屋根構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した融雪瓦屋根構造において、屋根瓦材は軽合金によって構成されていることを特徴とする融雪瓦屋根構造。
【請求項6】
請求項5に記載した融雪瓦屋根構造において、軽合金はマグネシウム系合金またはアルミニウム系合金で形成されていることを特徴とする融雪瓦屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−84488(P2010−84488A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257581(P2008−257581)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(308030503)
【Fターム(参考)】