説明

螺旋コア形成用帯状金属板、回転電機の螺旋コア、及び螺旋コアの製造方法

【課題】 ステータコアのティースに集中巻でコイルを形成する場合でも螺旋状に適切に加工することができる回転電機用螺旋コアを低コストで形成できるようにする。
【解決手段】 回転電機用螺旋コアを形成するための帯状鋼板21が、一方向に沿って延在するヨーク部22と、ヨーク部22の幅方向の一端部に等間隔で形成されたティース部23と、を有するようにし、ヨーク部22のティース部23が形成されている側の端部の位置であって、相互に隣接するティース部23の間のそれぞれの位置に等間隔で3つの切欠部24(例えば24a1〜24a3)を形成する。そして、切欠部24の相互に対向する斜辺26、27を相互に合わせて、帯状鋼板21が所望の螺旋状に加工されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋コア形成用帯状金属板、回転電機の螺旋コア、及び螺旋コアの製造方法に関し、特に、回転電機が備えるコア(鉄心)として用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機等の回転電機のステータのコア(以下の説明では必要に応じて「ステータコア」と称する)は、電磁鋼板等の金属板を積層することにより形成され、周方向に延在するヨークと、ヨークの内周面から回転軸の方向に延在する複数のティースとを有する。このようなステータコアを製造するために、ヨーク及びティースの面方向の形状と同一の形状を有するコア片を金属板から打ち抜き、それらコア片を厚み方向に積層することが行われている。
【0003】
このようにして製造されたステータコアは、その製造に際し、面方向における弾性変形が生じないため、その磁気特性は優れたものとなる。ところが、ヨークの外周形は円形であることに加え、ヨークよりも内周側はティースとなる部分を除いて開口する。したがって、このようにしてステータコアを製造すると、金属板に使用されない部分が多く発生する。よって、金属板の歩留まりが低下し、材料コストが増大してしまう。
【0004】
そこで、自動車用の発電機等においては、螺旋コアがステータコアとして用いられている。螺旋コアは、ヨークとティースに対応する形に形成された帯状金属板を、板面内の曲げ加工により螺旋状にしながら積層することに形成される。ただし、帯状金属板に対して板面内の曲げ加工を行うと、帯状金属板のヨークとなる部分の外周側が内周側よりも伸び、帯状金属板の外周側の厚みが内周側の厚みよりも薄くなる虞がある。
【0005】
このため、特許文献1では、帯状金属板のヨークとなる部分の外周側が内周側よりも伸びることによりコアの外周側に生じた隙間に磁性体粉を充填するようにしている。このようにすることにより、コアの磁気特性と剛性を回復させることができる。
【0006】
また、特許文献2では、ヨークとティースに対応する形に形成された帯状金属板を、複数のコア片に分けるようにしている。各コア片の外周(ヨークとなる部分の外周)は、ヨークの形に合わせて扇状になっている。また、相互に隣接するコア片は、当該コア片の側端部の外周側に形成された連結部により相互に連結されており、当該連結部により相互に連結された各コア片は長手方向に延在している。このような複数のコア片を板面内の曲げ加工により螺旋状にすると、相互に隣接するコア片のヨークとなる部分の側面のうち連結部よりも内周側の領域が合わさると共に連結部が曲げ変形する。このようにすることにより、帯状金属板のヨークとなる部分の外周側が内周側よりも薄くなることを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−185014号公報
【特許文献2】特開2009−153266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、磁性体粉を充填する工程が必要になるため、螺旋コアのコストを十分に低減することが困難であった。
また、特許文献2に記載の技術では、各コア片の外周は扇状であると共に、各コア片の間は連結部となる部分を除いて不要となる。したがって、金属板の、ステータコアとして使用されない部分を必ずしも十分に低減しているとは言えない。すなわち、特許文献2に記載の技術では、ステータコアとして螺旋コアを使用しても、金属板の歩留まりを十分に低減しているとは言えない。また、特許文献2の記載の帯状金属板は複雑な形状を有する。以上のことから、特許文献2に記載の技術でも、螺旋コアのコストを十分に低減することが困難であった。
【0009】
そこで、本発明者らは、PCT/JP2011/051732において、ステータのヨークの内周側端部に対応する位置であって、相互に隣接するティースの中間に対応する位置のそれぞれに切欠部が1つずつ形成されてなる螺旋コア形成用帯状金属板を提案した。この螺旋コア形成用帯状金属板を螺旋状に加工した際に、切欠部が塞がる(切欠部を構成する面が合わさること)により、螺旋コアの外周の長さと内周の長さとの差を補正することができる。これにより、螺旋状に加工した後に特別な処理を行ったり、螺旋状に加工される帯状鋼板の形状を複雑にしたりしなくても、螺旋コアのヨークの外周側の厚みが内周側の厚みよりも薄くなることを防止することができるので、螺旋コアのコストを低減することができる。
【0010】
ところで、ステータのコイルの巻線の方法には、集中巻と分布巻とがある。ステータコアのティースに分布巻でコイルを形成する場合、ステータコアのティースの数は、一般に24又は48になる。よって、PCT/JP2011/051732のように、相互に隣接するティースの間に形成する切欠部の数が1であっても、切欠部を適切に塞いで螺旋コア形成用帯状金属板を螺旋状(円形)に加工することができる。
【0011】
しかしながら、ステータコアのティースに集中巻でコイルを形成する場合には、極数が4ならティースの数は6、極数が6ならティースの数は9が一般的である。よって、相互に隣接するティースの間に形成する切欠部の数が1であると、図14に示すように、切欠部141a、141bの角度θが大きくなりすぎて(例えば、ティースの数が6以上なら、切欠部141a、141bの角度θは60[°]以上になるので)、切欠部を適切に塞いで螺旋コア形成用帯状金属板を所望の螺旋状(円形)に加工することが困難になる虞がある。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ステータコアのティースに集中巻でコイルを形成する場合でも螺旋状に適切に加工することができる回転電機用螺旋コアを低コストで形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の螺旋コア形成用帯状金属板は、回転電機が備えるコアとして螺旋コアを形成するための螺旋コア形成用帯状金属板であって、長手方向に延在し、幅方向における一端が直線状の部分を有するヨーク部と、前記ヨーク部の幅方向における他端に略等間隔で形成された複数のティース部と、を有し、前記ヨーク部の幅方向における他端の位置であって、相互に隣接する2つの前記ティース部の間の領域の複数の位置にそれぞれ切欠部が形成されており、前記ヨーク部の幅方向に湾曲させて螺旋状に加工された際に、前記切欠部の相互に対向する領域が合わさるようにしたことを特徴とする。
【0014】
本発明の回転電機の螺旋コアは、帯状金属板をその板面方向に湾曲させて螺旋状に加工されてなる回転電機の螺旋コアであって、周方向に延在するヨークと、当該ヨークの内周側の端部から軸心の方向に延在し、当該ヨークの内周方向において略等間隔に位置する複数のティースと、を有し、前記ヨークの内周側の端部の位置であって、相互に隣接する2つの前記ティースの間の領域の複数の位置のそれぞれに、前記ヨークの内周面から外周面に向かう切れ目が形成されており、前記切れ目の相互に対向する面は合わさっていることを特徴とする。
【0015】
本発明の螺旋コアの製造方法は、前記螺旋コア形成用帯状金属板を、その板面方向に湾曲させて螺旋状に加工することにより前記回転電機の螺旋コアを製造する螺旋コアの製造方法であって、帯状金属板を切断して前記螺旋コア形成用帯状金属板を形成する板面形状加工工程と、前記螺旋コア形成用帯状金属板を、その板面方向に湾曲させて螺旋状に加工する螺旋加工工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、螺旋コア形成用帯状金属板が、ヨーク部と、複数のティース部と、を有し、前記ヨーク部の幅方向における他端の位置であって、相互に隣接する2つの前記ティース部の間の領域の複数の位置に切欠部をそれぞれ形成するようにした。したがって、ステータコアのティースの数が少なくても、所望の螺旋状の螺旋コアを形成することができる。また、螺旋状に加工した後に特別な処理を行ったり、螺旋状に加工される帯状鋼板の形状を複雑にしたりしなくても良好な特性を有する回転電機用螺旋コアを得ることができる。よって、ステータコアのティースに集中巻でコイルを形成する場合でも螺旋状に適切に加工することができる回転電機用螺旋コアを低コストで形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、回転電機の構成の一例の概略を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、螺旋状に加工される前の帯状鋼板の一例の概略を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、回転電機用螺旋コアの製造装置の構成の一例の概略を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、矩形状の帯状鋼板から、ヨーク部とティース部とを形成する様子の一例の概略を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示し、回転電機の構成の一例の概略を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示し、螺旋状に加工される前の帯状鋼板の一例の概略を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示し、回転電機の構成の一例の概略を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態を示し、螺旋状に加工される前の帯状鋼板の一例の概略を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施形態を示し、切欠部の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第4の実施形態を示し、回転電機の構成の一例の概略を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施形態を示し、螺旋状に加工される前の帯状鋼板の一例の概略を示す図である。
【図12】本発明の第5の実施形態を示し、回転電機用螺旋コアの製造装置の構成の一例の概略を示す図である。
【図13】本発明の第6の実施形態を示し、回転電機用螺旋コアの製造装置の構成の一例の概略を示す図である。
【図14】螺旋状に加工される前の帯状鋼板であって、相互に隣接するティースの間に形成する切欠部の数が1である帯状鋼板の一例の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、回転電機用螺旋コアの適用例である回転電機の構成の一例の概略を示す図である。具体的に図1は、回転電機を、その回転軸に垂直な方向から切った断面図を示している。
図1において、回転電機10は、固定子(ステータ)11と、回転子(ロータ)12と、ケース13と、回転軸14と、を有している。尚、図1では、図示の都合上、コイル等についての図示を省略している。
【0019】
固定子11は、回転電機の周方向に延在するヨークと、当該ヨークの内周側の端部(端面)から回転軸14の方向に延在するティースとを備えたステータコアを有する。また、回転電機の周方向において相互に隣接するティースの間の領域であるスロットには、ティースに巻き回されるようにコイル(不図示)が挿入される。本実施形態では、集中巻でコイルを形成している。また、ステータコアは螺旋コアである。尚、図1では、ティースの数が6である場合を例に挙げて示しているが、ティースの数は、図1に示したものに限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、本実施形態では、各スロットの周方向の複数箇所(図1では3箇所)において、固定子11の内周面から外周面に向かう切れ目15a〜15f(例えば切れ目15a1〜15a3)が略等間隔で形成されている。各切れ目15a〜15fの相互に対向する面は合わさっており、各切れ目15a〜15fには隙間がほとんど存在しない。本実施形態では、切れ目15a〜15fよりも固定子11の外周側の領域に弾性変形、塑性変形集中させている。そのため、各切れ目15a〜15fに生じる応力は、切れ目15a〜15fよりも固定子11の外周側の領域に生じる応力よりも小さい範囲で可及的に小さいのが好ましく、0であるのが最も好ましい。
【0021】
また、切れ目15a〜15fの(径方向の)長さは、後述するようにして固定子11を形成する際に、固定子11としての形状が損なわれない範囲で可及的に長くするのが好ましい。切れ目15a〜15fよりも固定子11の外周側の領域を可及的に小さくする(すなわち切れ目15a〜15fを可及的に長くする)ことにより、後述するように帯状鋼板を所望の螺旋状に加工して、ステータコアを、その仕様に合った形状に成形することが容易になるからである。
具体的に切れ目15a〜15fの長さは、少なくとも固定子11のヨークの径方向の長さの1/2倍以上、好ましくは、固定子11のヨークの径方向の長さの3/4倍以上、より好ましくは、固定子11のヨークの径方向の長さの4/5倍以上である。ただし、切れ目15a〜15fの長さは、固定子11のヨークの径方向の長さ未満である。
【0022】
回転子12は、その外周面が、固定子11のティースの先端面(すなわち固定子11の内周面)と所定の間隔を有して相互に対向する位置に配置される。また、回転子12の軸心(回転軸14)は、固定子11の軸心と略一致している。尚、本実施形態では固定子11が特徴部分であるので、図1では、回転子12の構成を簡略化して示している。
【0023】
ケース13は、焼き嵌め等が行われることにより、固定子11の周囲(外周)から固定子11に密接し、固定子11を固定する。ケース13は、例えば、軟鉄等の磁性体、或いはステンレス鋼等の非磁性体により構成される。尚、焼き嵌めの他に、溶接やボルト締めにより、固定子11をケース13に固定することができる。
【0024】
図2は、螺旋状に加工される前の帯状鋼板の一例の概略を示す図である。具体的に図2(a)は、帯状鋼板を、その板面に垂直な方向から見た図である。また、図2(b)は、図2(a)において破線で囲っている領域を拡大して示す図である。尚、鋼板は金属板の一例であり、具体例として、電磁鋼板、冷延鋼板、熱延鋼板が挙げられる。
【0025】
図2(a)に示すように、一方向に沿って延在する帯状鋼板21には、固定子11のヨークに対応するヨーク部22と、固定子11のティースに対応するティース部23a〜23cと、切欠部24a、24bとが形成されている。尚、図2(a)ではティース部23を3つしか示していないが、固定子11のティースの数の整数倍の数のティース部23が帯状鋼板21に形成される。また、図2(a)では、切欠部24を6つしか示していないが、切れ目15a〜15fの数の整数倍の数の切欠部24が帯状鋼板21に形成される。
【0026】
図2に示すように、帯状鋼板21のヨーク部22の外側(ヨーク部22の幅方向における一端側であり、ティース部23a〜23cが形成されていない側)の端部は直線状になっている。また、ティース部23a〜23cは等間隔で形成されている。
ヨーク部22の内側(ヨーク部22の幅方向における他端側であり、ヨーク部22のティース部23a〜23cが形成されている側)の端部の位置であって、各スロットに対応する位置(相互に隣接するティース部23(例えばティース部23a、23b)の間の位置)のそれぞれには、3つの切欠部(切欠き)24a1〜24a3、24b1〜24b3が等間隔に形成されている。このように本実施形態では、切欠部24は、スロットに対応する領域の全てに3つずつ形成されている。
【0027】
帯状鋼板21のヨーク部22の外側の端部を直線状にすることにより、帯状鋼板21を螺旋状に加工する際に不均圧な変形及び予期せぬずれを防止することができる。そのため、帯状鋼板21のヨーク部22の外側の端部の少なくとも一部が直線状であることが好ましい。尚、帯状鋼板21のヨーク部22の外側の端部には、ケース13への取付け溝を施してもよい。
【0028】
切欠部24の板面方向における形状は、ヨーク部22の内側の端部(ティース部23側)を底辺とする二等辺三角形又は正三角形である。ヨーク部22の内側の端部における切欠部24の幅Wは、固定子11の外周の長さと内周の長さとの差に応じた(比例した)値になる。また、切欠部24の長さ(深さ)Dは、後述するようにして固定子11を形成する際に、固定子11としての形状が損なわれない範囲で可及的に長くするのが好ましい。前述したように、帯状鋼板21を螺旋状に加工することにより弾性変形、塑性変形が集中する領域25(図2(b)を参照)を可及的に小さくするためである。具体的に切欠部24の長さDは、切れ目15の長さに対応し、少なくともヨーク部22の幅方向の長さ(ヨーク部22の内側の端部と外側の端部との間の長さ)の1/2倍以上、好ましくは、ヨーク部22の幅方向の長さの3/4倍以上、より好ましくは、ヨーク部22の幅方向の長さの4/5倍以上にする。ただし、切欠部24の長さDは、ヨーク部22の幅方向の長さ未満である。
【0029】
以上のようにして帯状鋼板21を構成することにより、固定子11の外周の長さと内周の長さとの差を切欠部24により補正することができ、切欠部24の相互に対向する斜辺26、27(図2(b)を参照)を相互に合わせて、帯状鋼板21を所望の螺旋状に加工することができる。
【0030】
図2(a)に示す帯状鋼板21の板面の形状は、ロール刃によるスリッター切断加工、打ち抜き、又はレーザによる加工等によって得られる。
図3は、回転電機用螺旋コア(固定子11)の製造装置の構成の一例の概略を示す図である。尚、図3に示す白抜きの矢印は、帯状鋼板が移動する方向を示す。
図3において、回転電機用螺旋コアの製造装置は、形状加工装置31と、切欠加工装置32と、螺旋加工装置33とを有する。
【0031】
形状加工装置31は、矩形状の帯状鋼板34に対して、ロール刃によるスリッター切断加工等を行い、図2に示したヨーク部22とティース部23を形成する。この段階では切欠部24は形成されない。
図4は、矩形状の帯状鋼板34から、ヨーク部22とティース部23とを形成する様子の一例の概略を示す図である。
【0032】
図4(a)に示すように、一方の帯状鋼板41(42)のティース部の先端側が他方の帯状鋼板42(41)のスロットとなる領域に位置するように(すなわち、一方の帯状鋼板41(42)のティース部23と他方の帯状鋼板42(41)のティース部23とが互い違いに位置するように)矩形状の帯状鋼板34aを加工することにより、帯状鋼板34の不要な部分を可及的に少なくすることができ、帯状鋼板34aの歩留まりの低下を可及的に防止することができる。
【0033】
ただし、必ずしも図4(a)に示すようにする必要はなく、図4(b)に示すようにして帯状鋼板43を形成するようにしてもよい。前述したようにヨーク部22の外側の端部は直線状であるので、図4(b)に示すようにしても、ヨーク部22よりも外側の領域については、矩形状の帯状鋼板34bの不要な部分を特許文献2に記載の技術よりも少なくすることが可能になる。また、ヨーク部22の外側の端部にケース13への取付け溝を施す場合には、図4(a)、図4(b)に示す状態にした後、又は図4(a)、図4(b)に示す状態にするのと同時に、ヨーク部22の外側の端部にケース13への取付け溝を形成するための加工を行えばよい。
【0034】
切欠加工装置32は、ヨーク部22とティース部23とが形成された帯状鋼板35に対して打ち抜き等を行い、図2に示した切欠部24を所定個数(1又は2以上)ずつ順次形成する。この切欠加工装置32(切欠部24を形成する位置)は、螺旋加工装置33と干渉しない位置であって、帯状鋼板36が螺旋状に加工される位置から所定距離以内の位置に配置される。切欠部24が形成されてから螺旋状に加工されるまでの間の距離が長くなると、切欠部24の存在によって、螺旋状に加工される前に帯状鋼板36が撓んでしまう虞があるからである。特に、切欠部24の長さDが長ければ長いほど帯状鋼板36が撓む可能性が高まるので、このようにするのが好ましい。このように、帯状鋼板36が撓んでしまうと、帯状鋼板36が変形したり、螺旋状に加工する際に、切欠部の相互に対向する斜辺を相互に合わせることができず、螺旋コアの切れ目15に隙間が生じたりする。
【0035】
この場合には、帯状鋼板36自体の磁気特性が低下したり、螺旋コアの磁気特性が低下したりする。さらには、帯状鋼板36がその積層方向に撓んだ状態で螺旋状に加工されるため、帯状鋼板36の積層方向に隙間が生じ、螺旋コアの形状が悪化する。また、このような螺旋コアの形状を強制的に矯正した場合、大きな加工歪が螺旋コアに導入されるため、螺旋コアの磁気特性が大きく低下する。したがって、撓みに伴う磁気特性の低下を抑制するために、螺旋加工の巻付位置(曲げ加工が開始される位置)と、切欠部24を形成する切欠加工装置32の前記巻付位置に近い側の端面との距離(前記所定距離)xが、1000mm以下であることが好ましい。より螺旋コアの磁気特性を改善するために、この距離xは、500mm以下であることがより好ましく、300mm以下であることが最も好ましい。なお、この距離xは、帯状鋼板36の強度及び厚み、切欠部24の長さDに応じて適宜設定することができる。例えば、切欠部24の長さDがヨーク部22の幅方向の長さの3/4倍以上である場合に、距離xを500mm以下に設定してもよい。また、切欠加工装置32と、螺旋加工装置33(もしくは、螺旋加工された帯状鋼板36)とが干渉しないように、距離xを10mm以上に設定してもよい。
【0036】
螺旋加工装置33は、切欠加工装置32により切欠部24が形成された部分から順に、帯状鋼板36を、その板幅方向(通板方向と板厚方向とに垂直な方向)に向かって湾曲するように曲げを付与して螺旋状に加工しながら積層させる。具体的に、螺旋加工装置33は、ヨーク部22の長手方向(周方向)の長さが、ティース部23の幅方向(周方向)の長さよりも長くなるように、不均圧ロールで帯状鋼板36を螺旋状に加工したり、帯状鋼板36をガイドに沿わせて強制的に螺旋状に加工したりすることができる。このようにして、固定子11の外周側にヨーク部22が配置され、固定子11の内周側にティース部23が配置される。尚、螺旋加工装置33により加工及び積層された帯状鋼板36は、螺旋加工装置33の芯金(不図示)に巻き回されながら、鉛直方向下向きに移動する。このようにして、帯状鋼板34の通板高さを変更することなく、帯状鋼板34を通板させることができる。
螺旋状に加工された帯状鋼板36は、例えば、カシメ、接着、溶接等によって結合される。以上のようにして螺旋状に加工された帯状鋼板36の結合が終了し、必要に応じて所定の処理が行われることにより、固定子11が形成される。
【0037】
以上のように本実施形態では、回転電機用螺旋コアを形成するための帯状鋼板21が、一方向に沿って延在するヨーク部22と、ヨーク部22の幅方向の一端部に等間隔で形成されたティース部23と、を有するようにし、ヨーク部22のティース部23が形成されている側の端部の位置であって、相互に隣接するティース部23の間のそれぞれの位置に等間隔で3つの切欠部24(例えば24a1〜24a3)を形成する。そして、切欠部24の相互に対向する斜辺26、27を相互に合わせて、帯状鋼板21が所望の螺旋状に加工されるようにする。よって、コイルを集中巻で形成する場合のように、ティース部23の数が少ない場合であっても、帯状鋼板21を所望の螺旋形状に加工することができる。また、製造された固定子11(回転電機用螺旋コア)のヨークの外周側の厚みが内周側の厚みよりも薄くなることを防止することができる。更に、帯状鋼板21が螺旋状に加工された際に、切欠部24(切れ目15)よりもヨーク部22(ヨーク)の外周側の領域25に弾性変形、塑性変形を集中させることができる。
【0038】
したがって、従来のように、螺旋状に加工した後に特別な処理を行ったり、螺旋状に加工される帯状鋼板の形状を複雑にしたりしなくても、良好な特性を有する回転電機用螺旋コア(例えば、真円度や厚み等の寸法精度や磁気特性に優れた回転電機用螺旋コア)を得ることができると共に、回転電機用螺旋コアのコストを低減することができる。また、図4(a)に示したようにして帯状鋼板41を形成することができるので、矩形状の帯状鋼板34aの不要な部分をより一層少なくすることができ、回転電機用螺旋コアのコストをより一層低減することができる。
【0039】
また、本実施形態では、帯状鋼板34にヨーク部22とティース部23とを形成した後、帯状鋼板36が螺旋状に加工される直前の位置で帯状鋼板35に切欠部24を形成し、切欠部24が形成された部分から順に帯状鋼板36を螺旋状に加工するようにした。例えば、帯状鋼板にヨーク部22及びティース部23と共に切欠部24を一度に形成すると、帯状鋼板の剛性が小さくなる。このため、帯状鋼板が螺旋加工装置33に到達するまでに帯状鋼板が変形してしまい、螺旋コアの磁気特性及び形状が悪化する。さらに、ヨーク部22及びティース部23と共に切欠部24を同時に形成させるため、切欠部24の長さD等の寸法の変更により加工ユニット(例えば、金型やCADデータ)を再利用することが困難になり、コストが増加する虞がある。また、ヨーク部22、ティース部23、及び切欠部24を一度に形成する位置が、帯状鋼板が螺旋状に加工される位置の直前であるとしても、図4(a)に示すような1枚の矩形状の帯状鋼板34aから複数の帯状鋼板41、42を製造することが困難になる。このため、螺旋コアの生産弾力性が低下する。
【0040】
尚、以上のように、ヨーク部22とティース部23とを形成した後、螺旋状に加工される直前の位置で切欠部24を形成するのが好ましいが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、ヨーク部22及びティース部23と共に切欠部24を一度に形成してもよい。また、ヨーク部22、ティース部23、及び切欠部24を一度に形成する位置を帯状鋼板が螺旋状に加工される直前の位置にすることもできる。
【0041】
また、ヨーク部22のティース部23が形成されている側の端部の位置であって、相互に隣接するティース部23の間のそれぞれの位置に形成する切欠部24(例えば、切欠部24a1〜24a3)の数は、3に限定されず、2以上であれば、固定子11の大きさ(ティース部23の数)等に応じて適宜決めることができる。また、ヨーク部22のティース部23が形成されている側の端部の位置であって、相互に隣接するティース部23の間のそれぞれの位置に形成する切欠部24の数は、同数でなくてもよい。
また、ヨーク部22のティース部23が形成されている側の端部の位置であって、相互に隣接するティース部23の間のそれぞれの位置に形成する複数の切欠部24(例えば、切欠部24a1〜24a3)を配置する間隔は等間隔でなくてもよい。
【0042】
また、切欠部24の相互に対向する斜辺26、27を相互に合わせて、帯状鋼板21を所望の螺旋状に加工することができれば、それぞれの切欠部24の大きさ及び形状は同一でなくてもよい。このようにする場合、例えば、図3において、異なる切欠部24を形成するための切欠加工装置32として、異なる切欠部24の数と同数の切欠加工装置32を、形状加工装置31と螺旋加工装置33との間に直列に配置すればよい。この場合、螺旋加工装置33に最も近い位置に配置される切欠加工装置32の前記巻付位置に近い側の端面と、螺旋加工の巻付位置(曲げ加工が開始される位置)との間の距離が、前記距離xとなる。
また、本実施形態で説明した回転電機用螺旋コアは、回転電機の固定子としてではなく、回転子として用いるようにすることもできる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、前述した第1の実施形態に対し、切欠部の形状が異なるだけであり、その他の部分は同一である。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図4に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0044】
図5は、回転電機用螺旋コアの適用例である回転電機の構成の一例の概略を示す図である。図5は、図1に対応する図である。
図5において、回転電機50は、固定子51と、回転子12と、ケース13と、回転軸14と、を有している。
図5に示すように、本実施形態では、各スロットの周方向の複数箇所において、固定子51の内周面から外周面に向かう切れ目52a〜52f(例えば切れ目52a1〜52a3)が略等間隔で形成されており、且つ、切れ目52a〜52fの先端(固定子51の外周側の端部に近い側)に円柱状又は楕円柱状の孔53a〜53fがそれぞれ個別に形成されている。第1の実施形態と同様に、各切れ目52a〜52fの相互に対向する面は相互に合わさっており、当該面(各切れ目52a〜52f)に生じる応力は、切れ目52a〜52fよりも固定子51の外周側の領域に生じる弾性変形、塑性変形よりも小さい範囲で可及的に小さいのが好ましく、0であるのが最も好ましい。また、切れ目52と孔53の(径方向の)長さの合計値は、固定子51を形成する際に、固定子51としての形状が損なわれない範囲で可及的に長くするのが好ましい。
【0045】
具体的に切れ目52と孔53の(径方向の)長さの合計値は、少なくとも固定子51のヨークの径方向の長さの1/2倍以上、好ましくは、固定子51のヨークの径方向の長さの3/4倍以上、より好ましくは、固定子51のヨークの径方向の長さの4/5倍以上である。ただし、切れ目52と孔53の(径方向の)長さの合計値は、固定子71のヨークの径方向の長さ未満である。
【0046】
図6は、螺旋状に加工される前の帯状鋼板の一例の概略を示す図である。図6は、図2に対応する図である。
図6(a)に示すように、一方向に沿って延在する帯状鋼板61には、ヨーク部63と、ティース部23a〜23eと、切欠部62a、62bとが形成されている。尚、図6(a)ではティース部23を3つしか示していないが、固定子51のティースの数の整数倍の数のティース部23が帯状鋼板61に形成される。また、図2(a)では、切欠部62を6つしか示していないが、切れ目52a〜52fの数の整数倍の数の切欠部62が帯状鋼板61に形成される。
第1の実施形態と同様に、ヨーク部63の内側(ヨーク部63のティース部23が形成されている側)の端部の位置であって、各スロットに対応する位置(相互に隣接するティース部23(例えばティース部23a、23b)の間の位置)のそれぞれには、3つの切欠部(切欠き)62a1〜62a3、62b1〜62b3が等間隔に形成されている。このように本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、切欠部62は、スロットに対応する領域の全てに3つずつ形成されている。
【0047】
切欠部62の板面方向における形状は、ヨーク部63の内側の端部(ティース部23側)を底辺とする二等辺三角形又は正三角形の頂角の領域を円状又は楕円状とした形状である。第1の実施形態と同様に、ヨーク部63の内側の端部における切欠部62の幅Wは、固定子51の外周の長さと内周の長さとの差に応じた(比例した)値になる。また、切欠部62の長さ(深さ)Dは、固定子51を形成する際に、固定子51としての形状が損なわれない範囲で可及的に長くするのが好ましい。
尚、固定子51を製造する方法は、第1の実施形態で説明した固定子11を製造する方法と、切欠加工装置32が、切欠部24ではなく、切欠部62を形成する点が異なるが、その他の点は同じである。具体的には、第1の実施形態と同様に、切欠部62の長さDを規定することができる。
以上のようにして切欠部62を形成しても、第1の実施形態で説明した効果を得ることができる。
また、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。第1、第2の実施形態では、切欠部24、62の形状を三角形にしているので、螺旋状に加工する際や、螺旋状に加工された螺旋コアの外周を溶接する際に、切欠部24、62の合わさっている面が径方向にずれやすくなり、螺旋コアの内径の真円度が低くなる虞がある。そこで、本実施形態では、螺旋コアの外周側と内周側との厚みの差の増大と、螺旋コアの内径の真円度の低下とを、可及的に簡単な構成で抑制するために、切欠部の相互に合わさる一方の面に凹部を形成すると共に他方の面に当該凹部に対応する凸部を形成する。このように本実施形態と第1、第2の実施形態とは、切欠部の形状が異なるだけであり、その他の部分は同一である。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図6に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0049】
図7は、回転電機用螺旋コアの適用例である回転電機の構成の一例の概略を示す図である。図7は、図1、図5に対応する図である。
図7において、回転電機70は、固定子71と、回転子12と、ケース13と、回転軸14と、を有している。
【0050】
図7に示すように、本実施形態では、各スロットの周方向の複数箇所(図7では3箇所)において、固定子11の内周面から外周面に向かう切れ目72a〜72f(例えば切れ目72a1〜72a3)が形成されている。第1、第2の実施形態と同様に、各切れ目72a〜72fの相互に対向する面は合わさっており、各切れ目72a〜72fには隙間が(ほとんど)ない。
本実施形態では、切れ目72a〜72fの軸心(回転軸14)に垂直な面方向の形状は、切れ目72a〜72fの先端(ヨークの外周側の端部に近い側)と基端(ヨークの内周側の端部)とを相互に結ぶ直線に対し周方向に張り出した部分と(図7の楔形の部分を参照)、当該直線に沿う部分と、を有する形状である。
ここで、切れ目72a〜72fの「軸心(回転軸14)に垂直な面方向の長さ」を「張出有輪郭長」と称する。また、軸心(回転軸14)に垂直な面方向の形状が、切れ目72a〜72fの先端と基端とを相互に結ぶ直線(径方向に沿う直線)であると仮定したときの切れ目の「軸心(回転軸14)に垂直な面方向の長さ」を「張出無輪郭長」と称する。詳細は後述するが、本実施形態では、磁気特性の低下の抑制及び加工の容易化を図るために、張出有輪郭長が、張出無輪郭長の2倍以下となるようにしている(凹凸有輪郭長及び凹凸無輪郭長の説明を参照)。
また、本実施形態では、切れ目72a〜72fよりも固定子71の外周側の領域に弾性変形、塑性変形を集中させるようにするので、各切れ目72a〜72fに生じる応力は、切れ目72a〜72fよりも固定子71の外周側の領域に生じる応力よりも小さい範囲で可及的に小さいのが好ましく、0であるのが最も好ましい。
【0051】
また、切れ目72の深さ(切れ目72a〜72lの先端と基端とを相互に結ぶ直線の長さ)は、後述するようにして固定子11を形成する際に、固定子11としての形状が損なわれない範囲で可及的に長くするのが好ましい。第1、第2の実施形態と同様に、切れ目72a〜72lよりも固定子71の外周側の領域を可及的に小さくする(すなわち切れ目72a〜72lを可及的に長くする)ことにより、後述するように帯状鋼板を所望の螺旋状に加工して、ステータコアを、その仕様に合った形状に成形することが容易になるからである。
具体的に切れ目72a〜72lの深さは、少なくとも固定子71のヨークの径方向の長さの1/2倍以上、好ましくは、固定子71のヨークの径方向の長さの3/4倍以上、より好ましくは、固定子71のヨークの径方向の長さの4/5倍以上にする。ただし、切れ目72a〜72lの深さは、固定子71のヨークの径方向の長さ未満である。
【0052】
図8は、螺旋状に加工される前の帯状鋼板の一例の概略を示す図である。図8は、図2及び図6に対応する図である。
【0053】
図8(a)に示すように、一方向に沿って延在する帯状鋼板81には、ヨーク部85と、ティース部23a〜23eと、切欠部82a、82bが形成されている。尚、図8(a)ではティース部23を3つしか示していないが、固定子71のティースの数の整数倍の数のティース部23が帯状鋼板81に形成される。また、図8(a)では、切欠部82を6つしか示していないが、切れ目72a〜72fの数の整数倍の数の切欠部82が帯状鋼板81に形成される。
【0054】
第1、第2の実施形態と同様に、ヨーク部85の内側(ヨーク部85のティース部23が形成されている側)の端部の位置であって、各スロットに対応する位置(相互に隣接するティース部23(例えばティース部23a、23b)の間の位置)のそれぞれには、3つの切欠部(切欠き)82a1〜82a3、82b1〜82b3が等間隔に形成されている。このように本実施形態でも、第1、第2の実施形態と同様に、切欠部82は、スロットに対応する領域の全てに3つずつ形成されている。
【0055】
図8(b)において、切欠部82は、最深部に位置する先端部83aと、ヨーク部85の内側の端部に位置する一方の基端部83bと、を両端とする第1の輪郭部83dと、先端部83aと、ヨーク部22の内側の端部に位置する他方の基端部83cとを両端とする第2の輪郭部83eと、を有する。
【0056】
第1の輪郭部83dには、凹部83fが形成されており、第2の輪郭部83eには、凹部83fに対応する凸部83gが形成されている。また、本実施形態では、凹部83fと凸部83gとが形成されていないと仮定したときの切欠部82の板面方向の形状を、先端部83aを頂点とし、基端部83b、83cを相互に繋いだ直線を底辺とする二等辺三角形又は正三角形としている(図8では、二等辺三角形とした場合を例に挙げて示している)。また、凹部83fの形状及び大きさと、凸部83gの形状及び大きさは略同じになるようにしている。また、帯状鋼板81を螺旋状に加工した際に、凹部83fと凸部83bとが相互に合わさる位置に、凹部83fと凸部83bとが形成されている。
【0057】
ここで、凹部83fと凸部83bとを形成しないと仮定したときの切欠部82の輪郭の長さ(図8に示す例では、先端部83aと、基端部83b、83cとを相互に繋いだ直線の和)を「凹凸無輪郭長」と称することとする。また、切欠部82の輪郭の長さ(図8に示す例では、第1の輪郭部83d及び第2の輪郭部83eを構成する辺の全長)を「凹凸有輪郭長」と称することとする。
【0058】
本実施形態では、凹凸有輪郭長が凹凸無輪郭長の2倍以下となるようにしている。凹凸有輪郭長が凹凸無輪郭長の2倍を超えると、帯状鋼板81を切断して切欠部82を形成する際に帯状鋼板81に導入される歪みが多くなるからである。また、凹凸有輪郭長が凹凸無輪郭長の2倍を超えるようにするには、凹部83fと凸部83bの数を多くしたり、凹部83fと凸部83bの大きさを大きくしたりする必要がある。このため、凹部83fと凸部83gの設計値に対する位置ずれが大きくなくても、帯状鋼板81を螺旋状に加工した際に、凹部83fと凸部83gとを相互に合わせることが不可能又は困難になる虞がある。
【0059】
第1、第2の実施形態と同様に、ヨーク部85の内側の端部における切欠部82の幅(基端部83b、83cを相互に結ぶ直線の長さ)Wは、固定子71の外周の長さと内周の長さとの差に応じた(比例した)値になる。また、切欠部82の長さ(深さ)Dは、固定子71を形成する際に、固定子71としての形状が損なわれない範囲で可及的に長くするのが好ましい。具体的に切欠部82の長さDは、切れ目72の径方向の長さに対応し、ヨーク部22の幅方向の長さ(ヨーク部85の内側の端部と外側の端部との間の長さ)の1/2倍以上、好ましくは、3/4倍以上、より好ましくは、4/5倍以上である。ただし、切欠部24の長さDは、ヨーク部85の幅方向の長さ未満である。
【0060】
以上のようにして帯状鋼板81を構成することにより、固定子71の外周の長さと内周の長さとの差を切欠部82により補正することができる。
尚、固定子71を製造する方法は、第1の実施形態で説明した固定子11を製造する方法と、切欠加工装置32が、切欠部24ではなく、切欠部82を形成する点が異なるが、その他の点は同じである。
【0061】
以上のように本実施形態では、切欠部82の第1の輪郭部83d、第2の輪郭部83eに、帯状鋼板81が螺旋状に加工され、第1の輪郭部83dと第2の輪郭部83eとが相互に合わさる際に相互に合わさる凹部83f、凸部83gを形成する。したがって、帯状鋼板81を螺旋状に加工する際や、螺旋状に加工された螺旋コアを結合する際に(例えば螺旋コアの外周を溶接する際に)、切欠部82の合わさっている面(切れ目72)が、回転電機70の径方向にずれてしまうことを、凹部83f及び凸部83gを形成しない場合に比べて抑制することができる。よって、第1の実施形態で説明した効果に加え、固定子71のコア(螺旋コア)の内径の真円度の低下を抑制することを、簡単な構成で(螺旋状に加工した後に特別な処理を行ったり、螺旋状に加工される帯状鋼板の形状を複雑にしたりしなくても)実現することができる。
【0062】
[変形例]
図9は、切欠部の変形例を示す図である。
図9(a)に示す切欠部91は、図8に示した切欠部82と、凹部と凸部の形状が異なる。図9(a)に示す例のように、凹部91aと凸部91bは、曲率を有する形状であってもよい。このようにする場合であっても、帯状鋼板が螺旋状に加工された際に、凹部91aと凸部91bとが相互に合うようにする。すなわち、帯状鋼板が螺旋状に加工された際に、凹部と凸部とが相互に合うようにしていれば、凹部と凸部の形状は限定されるものではない。
【0063】
図9(b)に示す切欠部92は、図8に示した切欠部82と、凹部と凸部の数が異なる。図9(b)に示す例のように、凹部92a、92bと凸部92c、92dの数は、複数であってもよい。このようにすれば、切欠部92の相互に合わさっている面が径方向にずれることをより一層確実に抑制することができる。このようにする場合にあっても、帯状鋼板が螺旋状に加工された際に、相互に対応する凹部と凸部(図9(b)に示す例では、凹部92aと凸部92c、凹部92bと凸部92d)が相互に合うようにする。すなわち、帯状鋼板が螺旋状に加工された際に、対応する凹部と凸部とが相互に合うようにしていれば、凹部と凸部の数は限定されるものではない。図9(b)に示すようにした場合、螺旋コアに形成される切れ目のそれぞれには、当該切れ目の先端と基端とを相互に結ぶ直線に対し周方向に張り出した部分が複数形成されることになる。
【0064】
図9(c)に示す切欠部93では、図8に示した切欠部82と、凹部と凸部を形成する範囲が異なる。図9(c)に示す例のように、先端部93aと基端部93bとを両端とする第1の輪郭部93dの全体に凹部93fが形成され、先端部93aと基端部93cとを両端とする第2の輪郭部93eの全体に凸部93gが形成されるようにしてもよい。このようにする場合であっても、帯状鋼板が螺旋状に加工された際に、凹部93fと凸部93gとが相互に合うようにする。すなわち、帯状鋼板が螺旋状に加工された際に、凹部と凸部とが相互に合うようにしてれば、凹部と凸部を形成する範囲は限定されるものではない。図9(c)のようにする場合、螺旋コアに形成される切れ目の、軸心に垂直な面方向の形状は、当該切れ目の先端と基端とを相互に結ぶ直線に対し周方向に張り出した部分のみを有する形状になる。
尚、図9に示す例であっても、前述したように、凹凸有輪郭長が凹凸無輪郭長の2倍以下となるようにするのが好ましい。また、切欠部24の長さDを、ヨーク部85の幅方向の長さ1/2倍以上にし、3/4倍以上にするのが好ましく、4/5倍以上にするのがより好ましい。
その他、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0065】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。本実施形態は、前述した第1〜第3の実施形態に対し、切欠部の先端部の形状が異なるだけであり、その他の部分は同一である。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1〜第3の実施形態と同一の部分については、図1〜図9に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0066】
図10は、回転電機の構成の一例の概略を示す図である。図10は、図1、図5及び図7に対応する図である。
図10において、回転電機100は、固定子101と、回転子12と、ケース13と、回転軸14と、を有している。
図10に示すように、本実施形態では、各スロットの周方向の複数箇所において、固定子101の内周面から外周面に向かう切れ目102a〜102f(例えば切れ目102a1〜102a3)が略等間隔で形成されており、且つ、切れ目102a〜102fの先端(固定子101の外周側の端部に近い側)に円柱状又は楕円柱状の孔103a〜103fがそれぞれ個別に形成されている。第1〜第3の実施形態と同様に、各切れ目102a〜102fの相互に対向する面は相互に合わさっており、当該面(各切れ目102a〜102f)に生じる応力は、切れ目102a〜102fよりも固定子101の外周側の領域に生じる応力よりも小さい範囲で可及的に小さいのが好ましく、0であるのが最も好ましい。また、切れ目102と孔103の(径方向の)長さの合計値は、固定子101を形成する際に、固定子101としての形状が損なわれない範囲で可及的に長くするのが好ましい。
【0067】
具体的に切れ目102と孔103の(径方向の)長さの合計値は、少なくとも固定子101のヨークの径方向の長さの1/2倍以上、好ましくは、固定子101のヨークの径方向の長さの3/4倍以上、より好ましくは、固定子101のヨークの径方向の長さの4/5倍以上である。ただし、切れ目102と孔103の(径方向の)長さの合計値は、固定子101のヨークの径方向の長さ未満である。
【0068】
図11は、螺旋状に加工される前の帯状鋼板の一例の概略を示す図である。図11は、図2、図6及び図8に対応する図である。
図11(a)に示すように、一方向に沿って延在する帯状鋼板111には、ヨーク部114と、ティース部23a〜23eと、切欠部112a、112bとが形成されている。尚、図11(a)ではティース部23を3つしか示していないが、固定子101のティースの数の整数倍の数のティース部23が帯状鋼板111に形成される。また、図11(a)では、切欠部112を6つしか示していないが、切れ目102a〜102fの数の整数倍の数の切欠部112が帯状鋼板111に形成される。
【0069】
第1〜第3の実施形態と同様に、ヨーク部114の内側(ヨーク部114のティース部23が形成されている側)の端部の位置であって、各スロットに対応する位置(相互に隣接するティース部23(例えばティース部23a、23b)の間の位置)のそれぞれには、3つの切欠部(切欠き)112a1〜112a3、112b1〜112b3が等間隔に形成されている。このように本実施形態でも、第1〜第3の実施形態と同様に、切欠部112は、スロットに対応する領域の全てに3つずつ形成されている。
【0070】
図11(b)において、切欠部112は、最深部に位置する先端部113aと、ヨーク部114の内側の端部に位置する一方の基端部113bとを両端とする第1の輪郭部113dと、先端部113aと、ヨーク部114の内側の端部に位置する他方の基端部113cとを両端とする第2の輪郭部113eと、を有する。
【0071】
第1の輪郭部113dには、凹部113fが形成されており、第2の輪郭部113eには、凸部113gが形成されている。また、本実施形態では、凹部113fと凸部113gとが形成されていないと仮定したときの切欠部112の板面方向の形状は、基端部113b、113cを相互に繋いだ直線を底辺とする二等辺三角形又は正三角形の頂角の領域を円弧状又は楕円弧状とした形状である(図11では、二等辺三角形の頂角の領域を円弧状とした形状とした場合を例に挙げて示している)。また、凹部113fの形状及び大きさと、凸部113gの形状及び大きさは略同じになるようにしている。さらに、帯状鋼板111を螺旋状に加工した際に、凹部113fと凸部113bとが相互に合わさる位置に、凹部113fと凸部113bとが形成されている。
【0072】
図11に示す例では、前述した「凹凸無輪郭長」は、先端部73aの円弧状の領域の輪郭の長さと、当該円弧状の領域の一方の下端113hと基端部113bとを相互に繋いだ直線の長さと、当該円弧状の領域の他方の下端113iと基端部113bとを相互に繋いだ直線の長さとの和となる。一方、「凹凸有輪郭長」は、切欠部112の輪郭の長さ(第1の輪郭部113d及び第2の輪郭部113eを構成する辺の全長)となる。そして、本実施形態でも、第3の実施形態と同様に、凹凸有輪郭長が凹凸無輪郭長の2倍以下となるようにしている。ただし、円弧状の領域の輪郭の長さを「凹凸無輪郭長」及び「凹凸有輪郭長」に含めなくてもよい。
【0073】
また、ヨーク部114の内側の端部における切欠部112の幅(基端部113b、113cを相互に結ぶ直線の長さ)Wは、固定子101の外周の長さと内周の長さとの差に応じた(比例した)値になる。また、切欠部112の長さ(深さ)Dは、固定子101を形成する際に、固定子101としての形状が損なわれない範囲で可及的に長くするのが好ましい。具体的には、第3の実施形態と同様に、切欠部112の長さDを規定することができる。
以上のようにして切欠部112を形成しても、第3の実施形態で説明した効果を得ることができる。
尚、固定子101を製造する方法は、第1の実施形態で説明した固定子11を製造する方法と、切欠加工装置32が、切欠部24ではなく、切欠部112を形成する点が異なるが、その他の点は同じである。
【0074】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態を説明する。本実施形態では、図4(a)に示すように、1枚の矩形状の帯状鋼板34aから複数の帯状鋼板41、42を形状加工装置31で形成する場合に、より効率よく螺旋コアを製造するために、形状加工装置31で形成する帯状鋼板の数と同数の切欠加工装置32及び螺旋加工装置33を設ける。このように本実施形態と第1〜第4の実施形態では、回転電機用螺旋コアの製造装置の構成の一部が異なる。よって、本実施形態の説明において、第1〜第4の実施形態と同一の部分については、図1〜図11に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0075】
図12は、回転電機用螺旋コア(固定子11)の製造装置の構成の一例の概略を示す図である。具体的に図12(a)は、回転電機用螺旋コアの製造装置の配置の第1の例を示す図であり、回転電機用螺旋コアの製造装置を、その鉛直方向の上方から見た図である。図12(a)は、図3に対応する図である。図12(b)、図12(c)は、それぞれ、回転電機用螺旋コアの製造装置における切欠加工装置32及び螺旋加工装置33の配置の第2、第3の例を示す図であり、回転電機用螺旋コアの製造装置を、その側方向(水平方向)から見た図である。尚、図12(b)、図12(c)では、表記の都合上、回転電機用螺旋コアの製造装置の各構成をブロックで示している。
【0076】
図12に示すように、本実施形態の回転電機用螺旋コアの製造装置は、形状加工装置31と、複数の切欠加工装置32(32a、32b)と、複数の螺旋加工装置33(33a、33b)と、を有する。
図12(a)に示す例では、2つの螺旋加工装置33a、33bが、水平方向(x方向)に並べて配置され、各螺旋加工装置33a(33b)の直前にそれぞれ切欠加工装置32a(32b)が配置されている。また、形状加工装置31により形成された各帯状鋼板41、42は、分離されて、それぞれ異なる方向に搬送される。この帯状鋼板41(42)は、それぞれ、切欠加工装置32a(32b)及び螺旋加工装置33a(33b)により加工される。
【0077】
図12(b)に示す例のように、2つの螺旋加工装置33a、33bが、回転電機用螺旋コアの製造装置の鉛直方向(z方向)に並べて配置され、各螺旋加工装置33a(33b)の直前にそれぞれ切欠加工装置32a(32b)が配置されるようにしてもよい。このようにした場合には、例えば、螺旋コアの中心を合わせることができるため、螺旋加工装置33a、33bに同じ動力を使用することができる。
また、図12(c)に示すように、図12(b)に示す2つの切欠加工装置32a、32b及び螺旋加工装置33a、33bの組の何れか1つを、帯状鋼板41の搬送方向(y方向)にずらして、切欠加工装置32a、32b及び螺旋加工装置33a、33bを配置してもよい。
ただし、帯状鋼板41(42)が螺旋加工装置33a(33b)に到達するまでに帯状鋼板41(42)が変形しない条件(例えば、切欠加工装置32a(32b)から螺旋加工装置33a(33b)までの距離が、第1の実施形態で説明した距離x)を満足すれば、2つの螺旋加工装置33a(33b)の配置方法は、図12に示したものに特に限定されるものではない。
【0078】
尚、図12に示す回転電機用螺旋コアの製造装置の配置例では、各帯状鋼板41、42が分離されて、それぞれ異なる方向に搬送される。このため、形状加工装置31から螺旋加工装置33までの帯状鋼板41、42の搬送距離を短くすると、各帯状鋼板41、42が変形してしまい、螺旋コアの磁気特性及び形状が悪化することがある。よって、各帯状鋼板41、42が分離される際の各搬送方向がなす角度を十分低減できるように、形状加工装置31から螺旋加工装置33までの帯状鋼板41、42の搬送距離が所定値以上であることが好ましい。
【0079】
第1の実施形態で説明したように、帯状鋼板に対して、ヨーク部22、ティース部23、及び切欠部24を一度に形成すると、帯状鋼板の剛性が小さくなる。このため、帯状鋼板が螺旋加工装置に到達するまでに帯状鋼板が変形してしまい、螺旋コアの磁気特性及び形状が悪化する。この場合に、1枚の矩形状の帯状鋼板34aから複数の帯状鋼板41、42を形成すると、形状加工装置31から螺旋加工装置33までの帯状鋼板の搬送距離が長くなる。したがって、図12に示すように、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、形状加工装置31とは別に、複数の切欠加工装置32(32a、32b)が必要である。そして、それぞれの切欠加工装置32を、各螺旋加工装置33(33a、33b)から、第1の実施形態で説明した距離x以内の位置に配置している。また、帯状鋼板の搬送ラインを切り替えることにより、1枚の矩形状の帯状鋼板34aから1枚の帯状鋼板を形成することも可能であり、生産量を柔軟に調節することができる。
【0080】
また、螺旋加工装置33と、この螺旋加工装置33に対応する切欠加工装置32とを適宜追加することにより、1枚の矩形状の帯状鋼板34aから複数の異なる形状の帯状鋼板を形成することも可能である。このようにする場合には、例えば、異なる種類の螺旋加工装置33を追加して、それぞれ異なる径を有する螺旋コアを製造することができる。
このように、本実施形態の回転電機用螺旋コアの製造方法及び製造装置は、様々な形状の螺旋コア(帯状鋼板)に対応することができる。
本実施形態の回転電機用螺旋コアの製造装置は、第1の実施形態の固定子11だけでなく、第2〜第4の実施形態の固定子51、71、101を製造する場合にも同様に適用することができる。
【0081】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態を説明する。本実施形態では、第1の実施形態の回転電機用螺旋コアの製造装置に対し、帯状鋼板の変形をより確実に防止する構成と、帯状鋼板が電磁鋼板のような硬質の鋼板(例えば、3%Si系電磁鋼板)である場合の螺旋コアの加工をより効率よく且つ確実に行うための構成と、螺旋コアの歪みをより確実に除去する構成とを、追加したものである。このように本実施形態と第1〜第5の実施形態では、回転電機用螺旋コアの製造装置の構成の一部が異なる。よって、本実施形態の説明において、第1〜第5の実施形態と同一の部分については、図1〜図12に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0082】
図13は、回転電機用螺旋コア(固定子11)の製造装置の構成の一例の概略を示す図である。図13は、図3に対応する図である。
図13において、回転電機用螺旋コアの製造装置は、形状加工装置31と、切欠加工装置32と、螺旋加工装置33と、加熱装置37と、ガイド38a、38bと、歪取り加熱装置39と、を有する。
【0083】
加熱装置37は、切欠加工装置32と螺旋加工装置33との間に配置され、切欠加工装置32により切欠部24が形成された帯状鋼板36を加熱する。帯状鋼板36が電磁鋼板のような硬質の鋼板である場合に、帯状鋼板36を螺旋状に加工する直前の位置で帯状鋼板36を加熱することにより、帯状鋼板36の加工性が一時的に改善され、帯状鋼板36を効率良く且つ確実に所望の螺旋状に加工することができる。この加熱装置37による加熱温度は、鋼板に応じて決定できる。例えば、帯状鋼板36が3%Si系電磁鋼板である場合、この加熱温度は、約300℃である。尚、加熱装置37は、電磁鋼板のような硬質の鋼板を螺旋状に加工する場合に必要となるものであり、このような鋼板を使用しない場合には、必ずしも加熱装置37を用いる必要はない。
【0084】
ガイド38aは、形状加工装置31と、切欠加工装置32との間に配置され、形状加工装置31によりヨーク部22とティース部23とが形成された帯状鋼板35を、少なくとも、回転電機用螺旋コアの製造装置の鉛直方向の下側(帯状鋼板35の板面をその裏側)から支持するものである。これにより、帯状鋼板35の変形を抑制することができる。
ガイド38bは、切欠加工装置32と、螺旋加工装置33との間に配置され、切欠加工装置32により切欠部24が形成された帯状鋼板36を、少なくとも、回転電機用螺旋コアの製造装置の鉛直方向の下側から支持するものである。これにより、帯状鋼板36の変形を抑制することができる。
尚、帯状鋼板35、36をより安定して案内する観点から、ガイド38a、38bは、それぞれ、帯状鋼板35、36を、回転電機用螺旋コアの製造装置の鉛直方向の上側と下側の双方から支持するようにしてもよい。また、帯状鋼板35、36の変形がない場合、又は帯状鋼板35、36の変形が螺旋コアの品質に影響がない場合には、必ずしもガイド38a、38bを用いる必要はない。また、ガイド38a、38bの何れか一方のみを用いるようにしてもよい。
【0085】
歪取り加熱装置39は、螺旋加工装置33により加工した直後に、螺旋加工装置33の芯金(不図示)に巻付けられている帯状鋼板36に対して、オンラインで歪取り熱処理(SRA)を行うものである。歪取り加熱装置39は、例えば、誘導加熱炉である。前述した帯状鋼板34、35、36の加工によって、螺旋コアには歪(例えば、打抜き歪や曲げ歪)が生じる。この歪は、螺旋コアの磁気特性を低下させる虞がある。よって、歪取り加熱装置39により螺旋コアに対して加熱を行うことにより、螺旋コアに発生している歪を除去することができる。
【0086】
尚、本実施形態では、オンラインで歪取り熱処理を行うようにした。しかしながら、例えば、螺旋加工が終了した螺旋コアを、誘導加熱炉や箱型炉のような外部加熱装置を用いて、図3等に示す螺旋コアの製造ラインとは別のラインで螺旋コアに対して歪取り熱処理を行ってもよい。このようにする場合には、カシメ、接着、溶接等の結合方法によって生じた歪も除去することができる。以上のような歪取り焼鈍は、螺旋コアに要求される特性及び帯状鋼板36の鋼種に応じて、適宜行われることが好ましい。例えば、歪取り焼鈍の焼鈍温度は、約750℃である。
また、本実施形態の回転電機用螺旋コアの製造装置は、第1の実施形態の固定子11だけでなく、第2〜第4の実施形態の固定子51、71、101を製造する場合にも同様に適用することができる。更に、第5の実施形態の回転電機用螺旋コアの製造装置に対して本実施形態の構成を適用することもできる。
【0087】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0088】
10、50、70、100 回転電機
11、51、71、101 固定子
12 回転子
13 ケース
14 回転軸
15、52、72、102 切れ目
21、61、81、111 帯状鋼板
22、63、85、114 ヨーク部
23 ティース部
24、62、82、91〜93、112 切欠部
31 形状加工装置
32 切欠加工装置
33 螺旋加工装置
37 加熱装置
38 ガイド
39 歪取り加熱装置
53、103 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機が備えるコアとして螺旋コアを形成するための螺旋コア形成用帯状金属板であって、
長手方向に延在し、幅方向における一端が直線状の部分を有するヨーク部と、
前記ヨーク部の幅方向における他端に略等間隔で形成された複数のティース部と、を有し、
前記ヨーク部の幅方向における他端の位置であって、相互に隣接する2つの前記ティース部の間の領域の複数の位置にそれぞれ切欠部が形成されており、
前記ヨーク部の幅方向に湾曲させて螺旋状に加工された際に、前記切欠部の相互に対向する領域が合わさるようにしたことを特徴とする螺旋コア形成用帯状金属板。
【請求項2】
前記複数の切欠部のそれぞれは、最深部に位置する先端部と、前記ヨーク部の幅方向における他端に位置する一方の基端部とを両端とする第1の輪郭部と、前記先端部と、前記ヨーク部の幅方向における他端に位置する他方の基端部とを両端とする第2の輪郭部と、を有し、
前記第1の輪郭部の少なくとも一部に少なくとも1つの凹部が形成され、前記第2の輪郭部の少なくとも一部に当該凹部に対応する少なくとも1つの凸部が形成され、
前記一方の基端部と、前記他方の基端部との間の長さは、前記螺旋コアの外周の長さと内周の長さとの差に応じた長さを有し、
螺旋状に加工されて、前記第1の輪郭部と前記第2の輪郭部とが相互に合わさる際に、当該第1の輪郭部に形成された凹部と、当該第2の輪郭部の当該凹部に対応する位置に形成された凸部とが相互に合うように、当該凹部と当該凸部とが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の螺旋コア形成用帯状金属板。
【請求項3】
前記第1の輪郭部には、複数の凹部が形成され、前記第2の輪郭部には、前記第1の輪郭部に形成された凹部と同数の凸部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の螺旋コア形成用帯状金属板。
【請求項4】
前記切欠部の輪郭の長さである凹凸有輪郭長は、前記凹部と前記凸部とを形成しないと仮定したときの前記切欠部の輪郭の長さである凹凸無輪郭長の2倍以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の螺旋コア形成用帯状金属板。
【請求項5】
前記切欠部の深さは、前記ヨーク部の幅方向における長さの4/5倍以上であり、且つ、前記ヨーク部の幅方向における長さ未満であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の螺旋コア形成用帯状金属板。
【請求項6】
前記切欠部の最深部の領域の形状は、円状又は楕円状を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の螺旋コア形成用帯状金属板。
【請求項7】
帯状金属板をその板面方向に湾曲させて螺旋状に加工されてなる回転電機の螺旋コアであって、
周方向に延在するヨークと、当該ヨークの内周側の端部から軸心の方向に延在し、当該ヨークの内周方向において略等間隔に位置する複数のティースと、を有し、
前記ヨークの内周側の端部の位置であって、相互に隣接する2つの前記ティースの間の領域の複数の位置のそれぞれに、前記ヨークの内周面から外周面に向かう切れ目が形成されており、
前記切れ目の相互に対向する面は合わさっていることを特徴とする回転電機の螺旋コア。
【請求項8】
前記切れ目の、軸心に垂直な面方向の形状は、当該切れ目の先端と基端とを相互に結ぶ直線に対し周方向に張り出した部分を有する形状であることを特徴とする請求項7に記載の回転電機の螺旋コア。
【請求項9】
前記切れ目の、軸心に垂直な面方向の形状は、当該切れ目の先端と基端とを相互に結ぶ直線に対し周方向に張り出した部分を複数有する形状であることを特徴とする請求項8に記載の回転電機の螺旋コア。
【請求項10】
前記切れ目の、軸心に垂直な面方向の長さである張出有輪郭長は、軸心に垂直な面方向の形状が前記切れ目の先端と基端とを相互に結ぶ直線であると仮定したときの切れ目の、軸心に垂直な面方向の長さである張出無輪郭長の2倍以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の回転電機の螺旋コア。
【請求項11】
前記切れ目の深さは、前記ヨークの径方向の長さの4/5倍以上であり、且つ、前記ヨークの径方向の長さ未満であることを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の回転電機の螺旋コア。
【請求項12】
前記切れ目の最深部の領域の形状は、円状又は楕円状を有することを特徴とする請求項7〜11の何れか1項に記載の回転電機の螺旋コア。
【請求項13】
請求項1〜6の何れか1項に記載の螺旋コア形成用帯状金属板を、その板面方向に湾曲させて螺旋状に加工することにより請求項7〜12の何れか1項に記載の回転電機の螺旋コアを製造する螺旋コアの製造方法であって、
帯状金属板を切断して前記螺旋コア形成用帯状金属板を形成する板面形状加工工程と、
前記螺旋コア形成用帯状金属板を、その板面方向に湾曲させて螺旋状に加工する螺旋加工工程と、を有することを特徴とする螺旋コアの製造方法。
【請求項14】
前記板面形状加工工程は、前記ヨーク部と前記複数のティース部とを形成する工程と、
前記ヨーク部と前記複数のティース部とが形成された後に、前記切欠部を所定個数ずつ形成する工程と、を有し、
前記螺旋加工工程は、前記切欠部が形成された部分から順に前記螺旋コア形成用帯状金属板を螺旋状に加工することを特徴とする請求項13に記載の螺旋コアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−93932(P2013−93932A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233246(P2011−233246)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】