説明

螺旋案内路付き縦管

【課題】 流下する下水の流れに乱れを生じさせることなく、所望の減衰性能を発揮させることを可能にするとともに、点検孔の十分な開口面積の確保と、点検時の作業性および安全性の向上を可能にする。
【解決手段】 縦管本体2の側面には複数箇所に点検孔22が開口されるとともに各点検孔22…22が閉塞部材3によって閉塞されており、これらの点検孔22…22が螺旋案内板23の螺旋ピッチに合わせて上下方向に均等間隔で配列され、縦管本体2内において上下に隣り合う螺旋案内板23、23の相互間の中間位置に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高低差を有する垂直下水管路に使用して、自然流下する水流を減衰させる螺旋案内路付き縦管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、マンホールの側壁からマンホール内に突出された流入管の一端に縦管の上端を接続し、縦管の下端をマンホール内の底部に設置して、流入管によりマンホール内に流入された下水を縦管に導入する技術が知られている。
【0003】
下水道において流域下水道の幹線は、地中の比較的深い位置に計画されており、関連公共下水道との接続点では高落差接合となっている。このため、一つのマンホール内で高落差処理を行う場合には、マンホール内に設けられる縦管が長くなるので、縦管下端から流出される下水の落下衝撃が大きく、マンホールの底部を損傷するおそれがあった。
【0004】
そこで、例えば特許文献2に記載されているように、縦管本体の内面に沿って上端から下端まで、螺旋状に形成された螺旋案内板を形成した縦管(ドロップシャフト)を配置する方法が採用されている。
【0005】
この種の縦管には、垂直に配設された直管状の縦管本体に対して、下水を螺旋状に旋回させて流下させる螺旋案内路が設けられている。これにより、マンホール内に流入した下水が螺旋案内路に沿って流下する間に流下エネルギーを減衰させて、縦管底部が強い衝撃や荷重を受けるのを避けるとともに、強度を確保することによって底部の摩耗も抑制しうるように形成されている。また、螺旋案内路の軸芯部には、螺旋案内路に案内される下水中に含む空気を上方に排除するために中心筒が設けられている。
【0006】
例えば、図3に示すように、高低差を有する下水路の連結に用いられる縦管101は、上流側水平管路102から下水流水平管路103まで、上下垂直方向にコンクリート地下構造物10内に設けられる。このコンクリート地下構造物10は、維持管理のため、点検を行う作業員が進入可能な空間部104を有していて、縦方向の中間部に作業用の中間スラブ105も設けられる。
【0007】
前記縦管101は、上流側水平管路102から延設される横管102aに接続可能なT字状接続部106と、このT字状接続部106に、順次、下方に向けて接続される上部螺旋案内路107、中間案内路108、下部螺旋案内路109とを有して縦管本体110が構成されている。
【0008】
図4に示すように、上部螺旋案内路107には中空の中心筒107aの周囲に螺旋案内板107bが設けられ、下部螺旋案内路109にも、螺旋案内板109aが設けられている。さらに、中間案内路108の側面部には中間スラブ105に対応する高さ位置に、点検孔112が設けられている。
【0009】
例えば特許文献3に記載されている点検孔112は、図4に示すように、螺旋案内板107b、109aのない、中間案内路108の側面に開口形成されており、点検孔112の周囲壁の外周面に点検用サドル部111が接合されている。点検用サドル部111は、バンド部材113、113もしくは溶着等によって取付鞍部115が螺旋案内路108の側面に固定され、小径の円筒口体116が突設されて構成されている。また、円筒口体116の端縁の開口部周縁には、点検用蓋体117が設けられており、ボルト等によって脱着可能で開閉自在となるように構成されている。
【0010】
これにより、通常は蓋体117により点検孔112を閉塞した状態で、縦管本体110に下水等の流体を流下させて使用し、必要なときにだけ、蓋体117を開いて点検孔112を開放し、中間案内路108から目視やカメラを入れ、状況が心配される部位を点検することができ、必要な場合にはその補修を容易に行うことができるように構成されていた。
【特許文献1】実開平4−53842号公報
【特許文献2】特開平8−41915号公報
【特許文献3】特開平11−182746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のような従来のドロップシャフト構造では、点検用サドル部111が装着される中間案内路108の点検孔112の周囲に、内側壁に沿って流れる渦流状の下水が当たり、水流を乱してしまうおそれがあった。
【0012】
また、内側壁に沿って流下する螺旋状の下水が、点検孔112の周囲に当たると、飛散したりあるいは交雑物が内側壁に付着して、円筒口体116の内部に残留してしまうおそれもあった。
【0013】
そして、縦管本体110内を点検しやすいように、点検孔112を大口径に開口形成しようとすると、点検用サドル部111が大きくなってしまうため固定も困難で好ましくなく、作業性や止水性が低下するおそれもあった。また、円筒口体116は縦管本体110に対して外側に突出しているが、コンクリート地下構造物10内に吊り下ろして縦管本体110を設置するときには、縦管本体110に突出した部分がない方が作業性がよく、そのため点検用サドル部111は縦管本体110を設置後の地下構造物10内での取付作業が必要であった。一般に、施工現場での部材の取付作業は、施工精度にばらつきを生じやすいものであり、一定の品質を確保するには工場での施工が可能な構造であることが好ましかった。
【0014】
したがって、かかる問題点を生じることのない点検孔を縦管本体に設けるようにして、縦管本体の内部の所望の箇所の点検を容易に行えるようにすることが望まれていた。
【0015】
そこで本発明は、上記のような事情にかんがみてなされたものであり、流下する下水の流れに乱れを生じさせることなく、適切な減衰性能を発揮させることを可能にするとともに、点検孔を容易に設置できて止水性にも優れ、必要な箇所の点検作業を容易に行うことのできる螺旋案内路付き縦管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成するため、本発明は、マンホール内に設けられた直管状の縦管本体に螺旋案内板を備えて流体を螺旋状に流下させる螺旋案内路付き縦管であって、縦管本体の側面には複数箇所に点検孔が開口されるとともに各点検孔が開閉可能な閉塞部材によって閉塞され、その閉塞部材は点検孔を閉塞したときに閉塞部材の内面と縦管本体の内周面とが略同一曲面をなすように形成されており、前記複数の点検孔が前記螺旋案内板の螺旋ピッチに合わせて上下方向に均等間隔で配列されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、点検孔は閉塞部材によって閉塞されているとき、点検孔と閉塞部材との境界部にほとんど段差を生じず、略同一曲面を形成することができるので、縦管本体内を流下する下水の流れに乱れを生じさせることなく、所望の減衰性能を発揮させることができる。また、点検孔は螺旋案内板の螺旋ピッチに合わせて複数設けられているので、点検作業したい部位にある点検孔を選択して、閉塞部材を取り外し、縦管本体内を点検することができる。
【0018】
また、本発明は、前記構成の螺旋案内路付き縦管において、閉塞部材によって閉塞された点検孔は、その閉塞部材の外側および縦管本体の外周面に巻回する締め輪が取り付けられて閉塞部材を点検孔に密着固定させることにより閉塞されていることを特徴とする。
【0019】
このように構成されることにより、簡単な構造で点検孔を確実に閉塞することができ、止水性を高めることを可能にして、縦管の信頼性を向上させることができる。
【0020】
さらに、前記点検孔は、縦管本体内において上下に隣り合う螺旋案内板の相互間の中間位置に配設されていることが好ましい。
【0021】
これにより、点検孔を下水流の流況が安定している箇所に設けることができ、点検のしやすさや止水性を確保することが容易になる。
【発明の効果】
【0022】
上述のように構成される本発明の螺旋案内路付き縦管によれば、流下する下水の流れに乱れを生じさせることなく、所望の減衰性能を発揮させることを可能にするとともに、容易に設置することができ、設置作業性および止水性にも優れたままで、必要な箇所の点検作業が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る螺旋案内路付き縦管を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1および図2は本発明の螺旋案内路付き縦管の一例を示し、図1は螺旋案内路付き縦管の下部断面を模式的に示す説明図、図2は図1の縦管の点検孔を示す横断面図である。
【0025】
例示の形態の螺旋案内路付き縦管1は、図3に示す従来のドロップシャフト構造と同様に、コンクリート地下構造物(10)内において、上流側水平管路(102)と下流側水平管路(103)との間に高さ方向に配設されている。
【0026】
このコンクリート地下構造物(10)は、縦管1の点検を行う作業員が、進入可能な空間部(104)を備えており、高さ方向のほぼ中間部に作業用スラブ(105)等が設けられている。
【0027】
縦管1には、上部螺旋案内路(107)、中間案内路(108)、および下部螺旋案内路(109)が備えられており、これらが接続されて連続し、縦管本体2が構築されている。上部螺旋案内路(107)の中心部には、内部が中空とされたFRP製の中心筒が一体的に形成されている。
【0028】
このうち、螺旋案内板23を内側に備えた下部螺旋案内路21を例示して説明すると、縦管本体2の外周面には、高さ方向に複数の点検孔22…22が開口されている。
【0029】
図1に示すように、各点検孔22は、側面視で正方形または長方形の矩形状に開口され、縦管本体2の口径に合わせてその大きさが設定されている。例えば、縦管本体2の口径が内径で250〜800mm程度の小口径である場合には、点検孔22の一辺が200mm程度の矩形状で開口されていることが好ましく、点検孔22から内部が目視確認でき、かつ高圧洗浄ノズル等の作業具が挿入できる大きさであればよい。また、縦管本体2の口径が内径で900〜3000mm程度の中・大口径の場合には、点検孔22の一辺が600mm程度の矩形状で開口されていることが、維持管理のしやすさの観点から好ましい。
【0030】
これらの点検孔22は、螺旋案内板23の螺旋ピッチに合わせて、上下方向に均等間隔で配列されている。例示の形態では、これらの複数の点検孔22は、螺旋案内板23の1螺旋ピッチごとに1個の点検孔22が縦管本体2に配置されている。そして、各点検孔22は、上下に隣り合った螺旋案内板23の相互間の中間位置に配設されている。
【0031】
このような螺旋案内板23の相互間の中間位置は、ちょうど、下部螺旋案内路21内において流下する下水の水圧による水頭が最も低い箇所となっている。このため、各点検孔22の近傍では流況が安定しており、点検のしやすさや止水性を確保することが容易になる。
【0032】
かかる点検孔22は、閉塞部材3によって閉塞することができるように構成されている。閉塞部材3は、点検孔22を閉塞したとき、閉塞部材3の内面が縦管本体2の内周面と略同一曲面をなすように形成されている。
【0033】
すなわち、図2に示すように、閉塞部材3は少なくともその内面側が、縦管本体2の内周面とほぼ面一となって納まるように形成されている。また、閉塞部材3は、点検孔22に嵌合される嵌合部31と、この嵌合部31の外側に延設されたフランジ部32とを有する構造となっている。
【0034】
嵌合部31は、縦管本体2と同等の曲率を有し、また点検孔22の奥行き(すなわち、この場合には縦管本体2の肉厚と同等の厚み)を有して形成され、点検孔22に嵌め込むことが可能な形状となされている。
【0035】
また、この嵌合部31から四周に延設されたフランジ部32は、点検孔22に閉塞部材3が嵌め込まれたとき、点検孔22の周縁部にオーバーラップするように所定幅で形成されている。閉塞部材3の外面側には、開閉時に作業者が使用する把手が設けられてもよい。
【0036】
さらに、閉塞部材3には、フランジ部32の内面側と点検孔22の周囲外面との間に、シール材33が配設されている。シール材33は、閉塞部材3のフランジ部32の内面四周に配設されていることが好ましい。シール材33は、シール性を有する反発弾性の小さい材料から形成されていればよく、例えばブチルゴムなどの弾性材、非加硫ブチルゴム、水膨張ゴム等が好ましい。
【0037】
そして、このように構成される閉塞部材3が点検孔22に嵌め込まれ、フランジ部32と縦管本体2の外周面(点検孔22の周囲)との間にシール材33が圧潰されて密着することにより、点検孔22の止水性が確保されるようになっている。
【0038】
また、本発明において閉塞部材3は、閉塞部材3の外面および縦管本体2の外周面に巻回して取り付けられる締め輪4によって、点検孔22に密着固定されている。
【0039】
締め輪4には、縦管本体2の外周面に取り付けられて縦管本体2をコンクリート構造物(マンホール)に対して固定するのに用いられる環状のステンレスバンド等を利用することができる。例示の締め輪4は、半円筒形状のステンレス製のバンド部41と、バンド部41の両端に突設された固定片42、42とを備えた一対の部材からなり、バンド部41により縦管本体2を内側に挟み込むことで突き合わされた固定片42、42同士をボルト・ナット結合することによって、縦管本体2に装着される構造となっている。
【0040】
したがって、点検孔22を開ける際には、締め輪4のボルト・ナット43を取り外した後、閉塞部材3を縦管本体2の外側方向に引き出すようにすればよい。螺旋案内路付き縦管1において、点検孔22は複数設けられているので、縦管本体2の側面に設けられた点検孔22…22のうち、点検したい位置にある点検孔22を選択的に開放して点検作業を行うことができる。このとき、点検作業者は、作業用スラブから点検孔22の開閉および内部の点検等を行う。
【0041】
なお、複数の点検孔22…22の配置形態は、例示した形態に限定されるものではなく、螺旋案内板23の螺旋ピッチに合わせて上下方向に均等間隔で配列されていればよく、例えば螺旋案内板23の上面側と下面側とにまたがって点検孔が設けられて1.5〜2螺旋ピッチに対して1つの点検孔が形成されたり、また1螺旋ピッチ以上の間隔をあけて点検孔が配設されたりするなど、どのような形態であってもよい。また、かかる点検孔22は、上記のように下部螺旋案内路21に設けられるだけでなく、上部螺旋案内路など、縦管本体2における必要な箇所であればどの部位に設けられてもよい。
【0042】
また、このような螺旋案内路付き縦管1においては、閉塞部材3が点検孔22を閉塞しているとき、この閉塞部材3の内面が縦管本体2の内周面と略同一曲面をなすように形成されているので、縦管本体2内を流下する下水の流れに乱れを生じさせることないので、所望の減衰性能を発揮させることが可能であり、点検孔22を工場施工にて設けることができるので、施工精度も高まり、止水性を十分に確保することも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、自然流下式の垂直下水道管路に使用して、螺旋案内路付き縦管の点検孔を好適に構成するのに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の螺旋案内路付き縦管の一例であり、縦管の下部断面を模式的に示す説明図である。
【図2】図1の縦管の点検孔を示す横断面図である。
【図3】地下構造物内に設けられた従来一般の縦管を模式的に示す説明図である。
【図4】従来例の螺旋案内路付き縦管を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 螺旋案内路付き縦管
2 縦管本体
21 下部螺旋案内路
22 点検孔
23 螺旋案内板
3 閉塞部材
31 嵌合部
32 フランジ部
33 シール材
4 締め輪
41 バンド部
42 固定片
43 ボルト・ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール内に設けられた直管状の縦管本体に螺旋案内板を備えて流体を螺旋状に流下させる螺旋案内路付き縦管であって、
縦管本体の側面には複数箇所に点検孔が開口されるとともに各点検孔が開閉可能な閉塞部材によって閉塞され、その閉塞部材は点検孔を閉塞したときに閉塞部材の内面と縦管本体の内周面とが略同一曲面をなすように形成されており、
前記複数の点検孔が前記螺旋案内板の螺旋ピッチに合わせて上下方向に均等間隔で配列されていることを特徴とする螺旋案内路付き縦管。
【請求項2】
閉塞部材によって閉塞された点検孔は、その閉塞部材の外側および縦管本体の外周面に巻回する締め輪が取り付けられて閉塞部材を点検孔に密着固定させることにより閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載の螺旋案内路付き縦管。
【請求項3】
前記点検孔は、縦管本体内において上下に隣り合う螺旋案内板の相互間の中間位置に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の螺旋案内路付き縦管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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