説明

血圧および超音波データの取り込みおよび表示のためのシステムおよび方法

【課題】血圧および超音波データの取り込みおよび表示のためのシステムおよび方法の提供。
【解決手段】超音波画像システムは、処理システムと、被験体の選択された部位に超音波エネルギーを送信し、そこからのエコーを受信し、それを表現するデータ信号を処理システムに送信するように構成された、超音波撮像プローブとを備える。このシステムは、被験体の血圧を測定しそれを表現するデータ信号を処理システムに送信するように構成された、血圧センサをさらに備える。処理システムは、受信超音波データ信号を処理して超音波画像を生成し、受信血圧データを処理して血圧トレースを生成し得る。処理システムはまた、超音波画像および血圧トレースを表示画像に表示し得、その表示画像においては、超音波画像の部分が血圧トレースの部分と時間的に同期して表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、米国特許仮出願第60/709,837号(2005年8月19日出願)の利益を主張し、該仮出願はその全体として、本明細書において参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
心臓病の既往または疑いのある多くの患者を検査する場合に、心筋の特性、機能および収縮性の評価は極めて重要である。左右両心室の圧力と寸法との間の瞬時的関係に依拠する心臓収縮の動的評価について、ますます関心が高まっている。
【0003】
圧力−容積または圧力−寸法の閉曲線は、右心室および左心室のポンプとしての特性に関する視覚的およびパラメトリック的情報を提供し、心機能不全の病態および心臓障害の程度を判断することを助ける。さらに、これらの閉曲線は、多くの治療介入の結果を判定し、定量化することを可能にする。それ故に、患者の心臓における、および小動物被験体を用いた臨床試験における、心臓の圧力と寸法との関係の正確かつ効率的な解析は、病気および治療に対する反応の評価を行う上で、ならびに、人間および小動物の患者を処置する新らしい治療法および方策を開発する上で極めて重要である。
【0004】
圧力−容積または圧力−寸法関係を評価するための、当該分野における現在の方法は、従来の心臓エコー検査法およびコンダクタンス法を含めて、過度に複雑で時間がかかり、かつ信頼性が低い。血圧および超音波データの取り込みと表示とを行うシステムおよび方法が、当該分野において求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
被験体から超音波データおよび血圧データを取り込み表示する方法は、被験体から超音波データおよび血圧データを取り込むことを含む。取り込まれた超音波および血圧データは、タイムスタンプを付され得る。タイムスタンプ付き超音波データおよびタイムスタンプ付き血圧データは、表示装置上の表示のために処理され得、処理されたデータは表示装置上に同期して表示され得る。
【0006】
被験体から超音波データおよび血圧データを取り込み表示するシステムは、被験体への超音波の送信と、被験者からのエコーデータの受信とを行える、超音波トランスデューサを備え得る。このシステムは、被験者からの血圧データを収集できる血圧受信機構、およびエコーデータと収集血圧データとを受信する処理システムを、さらに備え得る。この処理システムはさらに、タイムスタンプ付き受信データを識別し、タイムスタンプ付きの超音波および血圧データを表示装置上に同期して表示するために使用され得る。
【0007】
本発明の他のシステム、方法、ならびに、局面および利点は、図面と詳細な説明とを参照して説明される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
処理システムと、
被験体の選択された部位に超音波エネルギーを送信し、そこからエコーを受信し、それを表現するデータ信号を該処理システムに送信するように構成された超音波撮像プローブと、
該被験体の血圧を測定し、それを表現するデータ信号を該処理システムに送信するように構成された血圧センサと、
を備える、超音波撮像システムであって、
該処理システムは、受信された該超音波データ信号を処理して超音波画像を生成し、および、受信された該血圧データ信号を処理して血圧トレースを生成し、該処理システムは該超音波画像および血圧トレースを表示画像に表示し、該表示画像においては、該超音波画像の複数部分が該血圧トレースの複数部分と時間的に同期して表示される、
超音波撮像システム。
(項目2)
被験体の選択された部位に超音波エネルギーを送信し、そこからエコーを受信し、それを表現するデータ信号を送信するように構成された超音波撮像プローブと、
該被験体の血圧を測定し、それを表現するデータ信号を送信するように構成された血圧センサと、
プロセッサとクロッキング機構とを備える処理システムであって、該処理システムは該撮像プローブおよび該血圧センサと動作可能に接続され、該クロッキング機構は該プロセッサと通信し、それぞれの該超音波データ信号および血圧データ信号に時間的識別子を割り当て、該プロセッサは受信された該超音波データ信号を処理して超音波画像を生成し、および、受信された該血圧データ信号を処理して血圧トレースを生成し、該処理システムは該超音波画像および該血圧トレースを表示画像に表示し、該表示画像においては、特定の時間的同一性を有する該超音波画像の複数部分が同じ時間的同一性を有する該血圧トレースの複数部分と共に表示される、処理システムと、
を備える、超音波撮像システム。
(項目3)
前記超音波画像の複数部分は、前記血圧トレースの複数部分と時間的に同期して表示される、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記プロセッサは、同じ時間的同一性を有する前記超音波画像の複数部分と前記血圧トレースの複数部分とを関係付ける、項目3に記載のシステム。
(項目5)
特定の時間的同一性を有する前記超音波画像の一部は、少なくとも1本の超音波データ信号のラインである、項目2に記載のシステム。
(項目6)
前記少なくとも1本のラインは、M−モード超音波画像を備える、項目5に記載のシステム。
(項目7)
特定の時間的同一性を有する前記超音波画像の一部は、少なくとも1つの超音波データ信号のフレームである、項目2に記載のシステム。
(項目8)
前記少なくとも1つの超音波データのフレームは、少なくとも1つのB−モード超音波画像を備える、項目7に記載のシステム。
(項目9)
特定の時間的同一性を有する前記超音波画像またはその一部は、同じ時間的同一性を有する前記血圧トレースまたはその一部と関係付けられ得る、項目2に記載のシステム。
(項目10)
同じ時間的同一性を有するそれぞれのデータ信号および圧力信号を識別することによって、特定の時間的同一性を各々の信号が有している、複数の超音波データ信号と複数の血圧データ信号とを関係付けることを備える、項目9に記載のシステム。
(項目11)
複数の前記関係付けられた超音波データおよび血圧データ点から、圧力対容積関係を生成するプロセッサをさらに備える、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記圧力対容積関係は、圧力対容積ループ曲線である、項目11に記載のシステム。
(項目13)
前記圧力対容積ループ曲線は、前記超音波システムの表示装置上に表示される、項目12に記載のシステム。
(項目14)
前記受信されたデータは、そのデータが前記被験体から受信された時間によって識別される、項目2に記載のシステム。
(項目15)
前記受信されたデータは、そのデータが前記クロッキング機構によって受信された時間によって識別される、項目2に記載のシステム。
(項目16)
被験体の選択された部位に超音波エネルギーを送信し、そこからエコーを受信し、それを表現するデータ信号を送信するように構成された超音波撮像プローブと、
該被験体の血圧を測定し、それを表現するデータ信号を送信するように構成された血圧センサと、
プロセッサとクロッキング機構とを備える処理システムであって、該処理システムは該撮像プローブおよび該血圧センサと動作可能に接続され、該クロッキング機構は該プロセッサと通信し、それぞれの該超音波データ信号および血圧データ信号に時間的識別子を割り当て、該プロセッサは同一の時間的同一性を有する少なくとも1つの超音波データ信号と少なくとも1つの血圧データ信号とを識別する、処理システムと、
を備える、超音波撮像システム。
(項目17)
前記処理システムは、同じ時間的同一性を有する超音波データ信号および血圧データ信号を識別することによって、特定の時間的同一性を各々の信号が有している、複数の超音波データ信号と複数の血圧データ信号とを関係付けるように構成される、項目16に記載のシステム。
(項目18)
超音波画像データおよび血圧測定データを被験体から受信することと、
時間的識別子で該受信されたデータを識別することと、
超音波画像と血圧トレースとを備える表示画像を生成するために該受信されたデータを処理することであって、特定の時間的同一性を有する該超音波画像の複数部分が、同じ時間的同一性を有する該血圧トレースの複数部分と共に表示される、処理することと、
を包含する、撮像方法。
(項目19)
前記超音波画像の複数部分は、前記血圧トレースの複数部分と時間的に同期して表示される、項目18に記載の方法。
(項目20)
同期表示は、同じ時間的同一性を有する前記超音波画像の複数部分と前記血圧トレースの複数部分とを関係付けることを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
特定の時間的同一性を有する前記超音波画像の一部は、少なくとも1本の超音波画像データのラインである、項目18に記載の方法。
(項目22)
前記少なくとも1本のラインは、M−モード超音波画像を備える、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記少なくとも1本の超音波データのラインはM−モード画像として表示され、前記血圧データは圧力波形として表示される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記M−モード画像は、前記被験体内に位置する臓器またはその一部の2次元表現を備える、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記臓器は心臓である、項目24に記載の方法。
(項目26)
時間的同一性を有する前記M−モード画像の第一の選択部位と、同じ時間的同一性を有する該M−モード画像の第二の選択部位との間の距離を測定することによって、時間点における前記臓器またはその一部の寸法を求めることをさらに包含する、項目25に記載の方法であって、該測定距離は該臓器またはその一部の該寸法を提供する、方法。
(項目27)
前記時間点における圧力対寸法関係を求めるために、該時間点において求められた前記寸法を同じ時間点に取られた圧力読み取り値と対比することをさらに包含する、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記M−モード画像上に作成された第一のトレースと、該M−モード画像上に作成された第二のトレースとの間の距離を計算することによって、少なくとも1つの後続時間点において、臓器またはその一部の寸法を求めることをさらに包含する、項目26に記載の方法であって、該第一と第二のトレースは該少なくとも1つの後続時間点に対応する、方法。
(項目29)
前記少なくとも1つの後続時間点における圧力対寸法関係を求めるために、その時間点において求められた前記寸法を同じ時間点に取られた圧力読み取り値と対比することをさらに包含する、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記圧力対寸法関係は、圧力対直径関係である、項目29に記載の方法。
(項目31)
複数の時間点において求められた前記圧力対直径関係は、圧力対寸法閉曲線として表現される、項目30に記載の方法。
(項目32)
特定の時間的同一性を有する前記超音波画像の一部は、少なくとも1つの超音波データのフレームである、項目18に記載の方法。
(項目33)
前記1つ以上の超音波データのフレームは、少なくとも1つのB−モード超音波画像を備える、項目32に記載のシステム。
(項目34)
前記超音波データはB−モードフレームとして表示され、前記圧力データは圧力波形として表示される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記B−モードフレームは、臓器またはその一部の画像を備える、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記撮像される臓器は内腔を備え、表示画像は該臓器の断面表現である、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記臓器は心臓である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記画像の一部をトレースすることをさらに包含する、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記トレースすることは、実質的に、前記撮像された臓器の内腔表面を表す前記画像の一部をなぞって、領域を規定する、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記規定された領域の大きさを求めることをさらに包含する、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記規定された領域に対応する容積を求めることをさらに包含する、項目39に記載の方法。
(項目42)
圧力対容積関係を求めるために、前記求められた容積を、該容積が求められた前記B−モードフレームと同じ時間的識別子を有する圧力読み取り値と対比することをさらに包含する、項目41に記載の方法。
(項目43)
少なくとも1つの後続表示されるB−モードフレームから容積を求めることと、対応する圧力対容積関係を求めるために、該後続フレームから求められた該容積を該後続フレームと同じ時間的識別子を有する圧力読み取り値と対比することと、をさらに包含する、項目42に記載の方法。
(項目44)
複数の時間点からの前記圧力対容積関係を、圧力対容積閉曲線として表現することをさらに包含する、項目43に記載の方法。
(項目45)
特定の時間的同一性を有する前記超音波画像またはその一部が、同じ時間的同一性を有する前記血圧トレースまたはその一部と関係付けられ得る、項目18に記載の方法。
(項目46)
同じ時間的同一性を有する超音波データ点および血圧データ点を識別することによって、特定の時間的同一性を両方の複数のデータ点の各々が有している、複数の超音波データ点と複数の血圧データ点とを関係付けることを包含する、項目45に記載の方法。
(項目47)
複数の前記関係付けられた超音波データおよび血圧データ点から、圧力対容積関係を生成することをさらに包含する、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記圧力対容積関係は、圧力対容積ループ曲線である、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記圧力対容積ループ曲線は、前記超音波システムの表示装置上に表示される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記受信されたデータは、被験体から受信された時間によって識別される、項目18に記載の方法。
(項目51)
前記受信されたデータは、受信器によって受信された時間によって識別される、項目18に記載の方法。
(項目52)
超音波画像データおよび血圧測定データを受信することと、
時間的識別子で該受信されたデータを識別することと、
同じ時間的同一性を有する超音波データ点および血圧データ点を識別するために、該受信されたデータを処理することと、
を包含する、撮像方法。
(項目53)
前記処理することは、同じ時間的同一性を有する超音波データ点および血圧データ点を識別することによって、特定の時間的同一性を両方の複数のデータ点の各々が有している、複数の超音波データ点と複数の血圧データ点とを関係付けることをさらに包含する、項目52に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、例示的な画像システムを示すブロック図である。
【図2】図2は、図1の例示的な画像システムをさらに示すブロック図である。
【図3】図3は、図1および図2の例示的な画像システムの一部を示す概略ブロック図である。
【図4】図4は、M−モード超音波データおよび血圧データを、図1および図2の例示的なシステムを用いて取り込み表示する、例示的な方法を示すブロック図である。
【図5】図5は、M−モード超音波画像および血圧データを、図1および図2の例示的なシステムを用いて処理する、例示的な方法を示すブロック図である。
【図6】図6は、図1および図2の例示的なシステムを用いて生成されたM−モード超音波データ、血圧データ、およびECGデータの、例示的な表示の画像である。
【図7】図7は、典型的な心周期における圧力対寸法閉曲線グラフおよび関連事象を示す概略図である。
【図8】図8は、単数または複数のB−モードフレームおよび血圧データを、図1および図2の例示的なシステムを用いて取り込み表示する、例示的な方法を示すブロック図である。
【図9】図9は、単数または複数のB−モードフレームおよび血圧データを、図1および図2の例示的なシステムを用いて処理する、例示的な方法を示すブロック図である。
【図10】図10は、2つの例示的なB−モードフレームおよび1つの例示的な血圧波形を示す概略図である。
【図11】図11は、図1および図2の例示的なシステムを用いて生成されたB−モードフレームおよび血圧データを備える例示的な表示の画像である。
【図12】図12は、典型的な心周期における圧力対容積閉曲線グラフおよび関連事象を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は詳細な説明において、特に添付図面を参照して、例示を目的として説明される。
【0010】
本明細書において、血圧および超音波データを取り込み、同期表示するシステムおよび方法が提供される。これらの方法およびシステムは、人間の患者および小動物被験体の心血管系における圧力−容積または圧力−寸法の関係の正確な決定を可能にする。
【0011】
全体を通して用いられているように、文脈が明確にそうではないことを示している場合を除き、単数形の「a」、「an」および「the」は複数の指示対象を含む。それ故に、例えば、「1つのプロセッサ(a processor)」への言及は、文脈がそうではないことを示している場合を除き、2つ以上のプロセッサを含み得る。
【0012】
1つの「被験体(subject)」は、一個体を指す。この被験体という用語は、小動物または実験動物、ならびに人間を含む霊長類を包含する。実験動物は、マウスまたはラット等の齧歯動物を含むが、これらに限定されない。この実験動物という用語は、動物、小動物、実験小動物、または、マウス、ラット、猫、犬、魚、ウサギ、モルモット、齧歯動物等を含む被験体についても、区別なく用いられる。この実験動物という用語は、特定の年齢または性別を指すことはない。それ故に、成体動物および新生動物、ならびに胎児(胚を含む)は、オス、メスに関わらず包含される。
【0013】
「血圧」または「圧力」は、本明細書において互換可能に用いられ、被験体の循環する血液によって被験体の血管または心臓の壁上に作用される検出可能な圧力を指す。
【0014】
本明細書において、被験体からの超音波データおよび血圧データを取り込むことを含む、被験体からの超音波データおよび血圧データを取り込み表示する方法が提供される。血圧および超音波データは、任意ではあるが、被験体から同時に取り込まれ得る。取り込まれた超音波および血圧データにはタイムスタンプが付され得、タイムスタンプ付きデータは、表示装置の表示のために処理され得る。タイムスタンプ付き超音波データおよびタイムスタンプ付き血圧データは、任意ではあるが、表示装置上に同期して表示される。
【0015】
「同期表示(synchronous display)」または「同期して表示(displayed synchronously)」は、血圧および超音波データが表示装置上に同時に表示され得ることを意味する。超音波データはまた、タイムスタンプ付きB−モードフレームまたはM−モードデータのラインが対応するタイムスタンプ付き血圧データ点と一緒に表示され得るように、同期して表示され得る。これらのデータは、時間的同時状態にあると考えられ得る。一局面においては、処理システムは、受信超音波データ信号を処理して超音波画像を生成し、受信血圧データ信号を処理して血圧トレースを生成する。この処理システムは、表示画像の中に超音波画像と血圧トレースとを表示し、その表示画像の中に、超音波画像の複数部分が血圧トレースの複数部分と時間的に同期して表示され得る。例えば、この処理システムは、超音波画像および血圧トレースを1つの表示画像の中に表示し、その表示画像の中で特定の時間的同一性(temporal identity)を有する超音波画像の複数部分が、同じ時間的同一性を有する血圧トレースの複数部分と一緒に表示されるように、使用され得る。
【0016】
それ故に、超音波画像の複数部分が、血圧トレースの複数部分と同期して表示され得る。特定の時間的同一性を有する超音波画像の一部は、少なくとも1本の超音波データ信号のラインであり得る。この少なくとも1本のラインは、M−モード超音波画像を備え得る。特定の時間的同一性を有する超音波画像の一部は同様に、少なくとも1つの超音波データ信号のフレームであり得る。例えば、1つの超音波データのフレームは、B−モード超音波画像を備え得る。
【0017】
特定の時間的同一性を有する超音波画像またはその一部が、同じ時間的同一性を有する血圧トレースまたはその一部と関係付けられ得る。複数の超音波データ信号および複数の血圧データ信号は、両者のそれぞれの信号が特定の時間的同一性を有し、同じ時間的同一性を有するそれぞれのデータ信号および血圧信号を識別することによって、関係付けられ得る。
【0018】
エコー信号または超音波データを取り込むことは、超音波を発生することと、超音波を被験体内部に送信することと、被験体によって反射されたエコーを受信することと、を含み得る。受信エコーは、超音波画像またはその複数部分を生成するために使用され得る。超音波データを取り込むために、広範囲の超音波周波数が使用され得る。例えば、臨床用周波数超音波(20MHz未満)または高周波数超音波(20MHz以上)が使用され得る。当業者であれば、例えば、これらには限定されないが、撮像の深さまたは所望の分解能等の要因に基づいて使用すべき周波数を容易に決定し得る。
【0019】
高周波数超音波は、高分解能撮像が望まれ、かつ、被験体内の撮像すべき構造の位置があまり深くない場合に要請され得る。それ故に、超音波データを取り込むことは、少なくとも20MHzの周波数の超音波を被験体内に送信することと、被験体によって反射された送信超音波の一部を受信することと、を含み得る。例えば、約20MHz、30MHz、40MHzまたはそれ以上の中心周波数を有するトランスデューサが使用され得る。
【0020】
適切な侵入深さで高分解能が達成され得る小動物を撮像するときには、しばしば高周波超音波送信が望まれる。そのため、この方法は、臨床用周波数または高周波数で小動物被験体に対して使用され得る。小動物は、任意ではあるが、マウス、ラット、およびウサギから成る群から選択される。
【0021】
さらに、この方法とシステムは、特定の種類のトランスデューサに限定されない。臨床用周波数または高周波数で超音波を送信できる任意のトランスデューサが使用され得る。多くのこのようなトランスデューサが、当業者には公知である。例えば、高周波数伝送用では、ビジュアルソニックス・インコーポレイテッド(トロント、カナダ国)のVevo(登録商標)660またはVevo(登録商標)770高周波数超音波システムなどに用いられるトランスデューサが使用され得る。また、高周波数および臨床用周波数のアレイ型トランスデューサおよびシステムが、使用され得る。
【0022】
超音波データは、超音波データのラインまたは超音波データのフレームとして取り込まれ得る。例えば、超音波のラインはM−モードで取り込まれ得、あるいは、超音波のフレームはB−モードで取り込まれ得る。デジタルクロックを使用することによって、取り込まれた超音波および血圧データはタイムスタンプを付され得る。任意ではあるが、取り込まれた超音波データおよび血圧データにタイムスタンプを付すために、同じデジタルクロックが使用され得る。この超音波データはM−モード画像あるいはB−モードのフレームまたは画像として表示され得、この圧力データは圧力波形として表示され得る。超音波データと血圧データの両方が、1つの表示装置上に表示され得る。
【0023】
この方法およびシステムは、被験体内に位置する臓器またはその一部を撮像するために使用され得る。さらに、この臓器、またはその一部は、時間の経過とともに撮像され得る。例えば、M−モード画像は被験体内に位置する臓器、またはその一部の2次元表現(深さと時間)を備え得、これは、収集された超音波データから生成され得る。M−モード撮像は、当業者には周知の手法である。さらに、画像はB−モードフレームを備え得る。1つ以上のB−モードフレームが、B−モードフレームのループを形成するように直列状にして観察され得る。B−モード撮像およびB−モードフレームからのループ形成は、当業者には公知の技術である。
【0024】
内腔を有する動的臓器を含む、対象とする多数の異なる臓器が撮像され得る。例えば、本明細書に記載の方法およびシステムを用いて、心臓、またはその一部が撮像され得る。しかしながら、この方法およびシステムは心臓の撮像に限定されず、心血管系の他の部分を含む他の臓器が撮像され得る。それ故に、例えば、大動脈の一部が撮像され解析され得る。
【0025】
本明細書において、ある時間点における臓器、またはその一部の寸法を定めることをさらに含む方法が提供される。M−モード画像上に形成された第一のトレースと、M−モード画像上に形成された第二のトレースとの間の距離を求めることによって、寸法が定められ得、形成されたこれらのトレースは少なくとも1つの時間点に対応する。
【0026】
ある時間的同一性を有するM−モード画像の第一の選択部と、同じ時間的同一性を有するM−モード画像の第二の選択部との間の距離を測定することによって、ある時間点における臓器またはその一部の寸法が計測され得、この測定距離が臓器またはその一部の寸法を与える。その時間点において定められた寸法は、同じ時間点に取られた圧力読み取り値と対比され得、その時間点における圧力と寸法の関係を決定する。一局面においては、M−モード画像上に形成された第一のトレースと、M−モード画像画像上に形成された第二のトレースとの間の距離から、少なくとも1つの後続の時間点における臓器またはその一部のさらなる寸法が計算され得、これらのトレースは、少なくとも1つの後続時間点に対応する。
【0027】
それ故に、利用者は、自動または半自動ソフトウェアを用いて、M−モード画像上に位置する構造をトレースし得る。利用者はまた、M−モード画像表示で観察される、第一のトレースから少し離れた位置にある第二の構造をもトレースし得る。よって、第一のトレースと第二のトレースとは、距離(d)だけ離れている。内腔を含む臓器が撮像された場合には、この距離は内腔の範囲であり得る。例えば、M−モード心臓エコー検査法において一般的に行われるように、心臓の一部が撮像された場合には、心臓の内腔壁は、内腔とからおよび対応する内腔壁とから識別可能である。それ故に、M−モード超音波によって心室等の心臓の小室が撮像され得、それは断面画像を提供し、送信超音波を反射する構造がトランスデューサからその構造までの距離に基づいて表示される。
【0028】
図6に示されるように、M−モード表示は、内腔608上方に横たわる表面620を有する心室の壁602を示しており、内腔は第二の表面618を有する心臓の壁622の上方に横たわっている。M−モード画像がスクロールするにつれて、心臓の1つの撮像部分が時間の経過とともに動的に画像化され、心臓壁の収縮および弛緩が視覚化され得、および/または、心臓のその解剖学上の断面において内腔の狭窄および拡張が実時間で視覚化され得る。
【0029】
開示された方法は、その時間点の臓器またはその一部について定められた寸法を同一時間点に取られた圧力の読み取り値と対比して、その時間点の圧力と寸法の関係を求めることをさらに含み得る。M−モード画像上に形成された第一のトレースと、M−モード画像画像上に形成された第二のトレースとの間の距離を計算することによって、少なくとも1つの後続時間点のその臓器またはその一部の寸法が求められ得、これらのトレースは少なくとも1つの後続時間点に対応する。この少なくとも1つの後続時間点において求められた寸法は、同一時間点に取られた圧力の読み取り値と対比され得、その時間点における圧力と寸法の関係を定める。任意ではあるが、圧力と寸法の関係は圧力対直径の関係である。この圧力対直径の関係は、任意ではあるが複数の時間点において定められ、圧力対直径の閉曲線として表現される。さらに、このM−モード画像から撮像物体の容積が求められ得、さらに、圧力対容積の関係が求められ得る。例えば、M−モードにおいて、対象物またはその一部、例えば心室の容積は、タイショロツ式(Teicholz formula)を用いて推定され得る:
【0030】
【数1】

ここで:
vは、マイクロリッタ単位の推定容積であり、
dは、M−モード画像上で測定されたミリメートル単位の心室の寸法である。
【0031】
本明細書に記載の方法はまた、1つ以上のB−モードフレームを用いて、ある時間点における臓器またはその一部の面積または容積を定めることを含み得る。臓器またはその一部の画像を備えるB−モードフレームを用いて、この面積および/または容積が求められ得る。例えば、撮像された臓器が内腔を含み得、表示されるB−モードフレームまたは画像は臓器の断面表現である。任意ではあるが、この臓器は心臓とする。心室の画像を備える例示的なB−モードフレームが、図10および図11に示される。
【0032】
表示装置上のB−モードフレームは、その一定の部分についてトレースされ得る。領域を規定するために、トレースは、撮像臓器の内腔表面を示すB−モードフレームの一定部分を実質的になぞることであり得る。例えば、心室の断面形状がトレースされ得る。心室画像を備えた例示的なB−モードフレームを、心内膜を実質的になぞるトレースと共に図10および図11に示す。このB−モードフレームのトレース領域に基づき、またトレースにより規定される領域の大きさが定められ得る。この領域に対応する容積が求められ得る。
【0033】
例えば、B−モードにおいて、容積はシンプソン法(Simpson’s method)を用いて推定され得る。この方法において、心室の長軸像は、以下の図に示すように、数学的に薄片に切断(sliced)される)。各薄片の容積が計算され得、次いで、最終的容積を得るために足し合わされ得る。例えば、下記の等式が用いられ得る:
【0034】
【数2】

ここで:
vは、マイクロリッタ単位の推定容積であり、
dは、心室の各薄片のミリメートル単位の直径であり、
nは、薄片の数であり、
hは、薄片の間の間隔である。
【0035】
求められた容積は、容積が求められたB−モードフレームと同一のタイムスタンプを有する圧力の読み取り値と対比され得、圧力と容積の関係を定める。さらに、少なくとも1つの引き続いて表示されたタイムスタンプ付きB−モードフレームから容積が定められ得、後続フレームから定められた容積が後続フレームと同一のタイムスタンプを有する圧力の読み取り値と対比され得、対応する圧力と容積の関係を求める。複数の時間点からの圧力と容積の関係が、圧力対容積の閉曲線として表示され得る。
【0036】
被験体からの超音波データおよび血圧データを取り込み表示するシステムは、被験体への超音波の送信と、被験者からの反射エコーデータまたは信号の受信とを行える、超音波トランスデューサを備える。このシステムは、被験者からの血圧データの収集が可能な血圧受信機構またはセンサと、反射超音波データまたはエコーおよび収集血圧データを受信し、画像を生成する処理システムとをさらに備え得る。これら超音波データおよび血圧データは、表示装置上に同期して表示され得る。トランスデューサはアレイ型、単一部品、または別の種類のトランスデューサであり得る。アレイ型または非アレイ型のトランスデューサは、臨床用周波数および/または高周波数の超音波を送信し得る。それ故に、トランスデューサの中心周波数は20MHz以上であり得、あるいは20MHz未満であり得る。トランスデューサは、広帯域トランスデューサであり得る。
【0037】
この処理システムは、同期して表示される超音波および血圧データから圧力と寸法の関係を求めるために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得る。この処理システムは、1つ以上のプロセッサを備え得る。当業者なら分かることであるが、複数の機能を実行するために単一プロセッサまたは処理システムが記載されている場合にも、同じ機能を別々に実施するために多数のプロセッサが用いられ得、また多機能プロセッサと単一機能プロセッサとの組合せが用いられ得る。
【0038】
この処理システムは、M−モード画像上に形成された第一のトレースと、M−モード画像上に形成された第二のトレースとの間の距離を計算することによって、ある時間点における臓器またはその一部の寸法を定めるために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得、これらのトレースは1つ以上の時間点における受信エコーデータからの表現(representative)データを備える。さらに、この処理システムは、その時間点における圧力と寸法の関係を求めるために、その時間点において定められた寸法を同一時間点に取られた圧力の読み取り値と対比するために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得る。この処理システムはまた、M−モード画像上に形成された第一のトレースと、M−モード画像上に形成された第二のトレースとの間の距離を計算することによって、少なくとも1つの後続時間点における臓器またはその一部の寸法を定めるために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得、これらのトレースは少なくとも1つの後続時間点に対応するエコーデータを表現するデータを備える。この処理システムは、その時間点における圧力と寸法の関係を求めるために、少なくとも1つの後続時間点において定められた寸法を同一時間点に取られた圧力の読み取り値と対比するために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得る。任意ではあるが、圧力と寸法の関係は圧力対直径の関係とする。この圧力対直径の関係は、任意ではあるが複数の時間点で求められ、圧力対直径の閉曲線として表現される。
【0039】
この処理システムは、表示装置上の臓器またはその一部のB−モードフレームの一定部分をトレースするために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得る。臓器が内腔、例えば心室を備える場合には、このトレースは、領域を規定するために、図10および図11に示すように、撮像臓器の内腔表面を示すフレームの一定部分を実質的になぞることであり得る。この処理システムはさらに、この規定された領域の大きさを定め、規定された領域に対応する容積を定めるために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得る。この処理システムはさらに、圧力と容積の関係を求めるために、この定められた容積を、この容積が定められたB−モードフレームと同一のタイムスタンプを有する圧力の読み取り値と対比するために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得る。この処理システムはさらに、少なくとも1つの後続して表示されたタイムスタンプ付きB−モードフレームから容積を定め、後続の圧力と容積の関係を求めるために、後続フレームから定められた容積をこの後続フレームと同一のタイムスタンプを有する圧力の読み取り値と対比するために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得る。この処理システムは、複数の時間点からの圧力と容積の関係を圧力対容積の閉曲線として表現するために使用され得、あるいはそのようにプログラムされ得る。
【0040】
本明細書においてさらに、被験体からの超音波エコーデータおよび血圧データを取り込むシステムであって、被験体への超音波の送信と、被験者からの反射エコーデータの受信とを行える超音波トランスデューサを備えるシステムが提供される。このシステムはさらに、反射エコーデータを受信し、被験体から収集された血圧データを受信する処理システムを含み得る。
【0041】
本明細書においてさらに、被験体からのエコーデータおよび血圧データを取り込むシステムであって、エコーデータを受信し、被験体から収集された血圧データを受信するようにプログラムされたプロセッサを備えるシステムが提供される。
【0042】
図1は、超音波画像データと共に血圧データを取り込み、表示する、例示的な超音波システム100を示す。この超音波システム100は、被験体114に対して作用する。被験体114はマウス、ウサギまたはラット等の小動物であり得、あるいは被験体114は人間等の霊長類であり得る。
【0043】
血圧信号は被験体114から、血圧モニタ装置または検出装置を用いて得られ得る。これらの装置および方法は当該分野において公知である。例えば、血圧を電気信号に変換するMillar(登録商標)カテーテル(ミラーインスツルメンツ・インコーポレイテッド、ヒューストン、テキサス州)が、血圧データを取得するためにカテーテルを被験体内に挿入または位置決めすることによって、用いられ得る。被験体からの血圧データまたは信号は、圧力検出装置によってアナログ波形に変換され得る。
【0044】
圧力検出装置の別の実施例は、尾カフ(tail cuff)である。被験体114が尾を有する小動物の場合には、尾カフが尾の周囲に取り付けられ得、当業者に公知の方法で血圧データが得られ得る。さらに、体内の任意の場所から血圧データを送信するRFリンクと共に、インプラントが用いられ得る。それ故に、血圧信号を収集する公知の方法および装置、ならびに、血圧信号をアナログ波形に変換する公知の方法および装置が、超音波システム100で用いられ得る。被験体から血圧信号を収集し、それをアナログ波形に変形する任意の従来の装置または方法が、超音波システム100と共に用いられ得ると考えられる。
【0045】
被験体から収集された血圧データを表現するアナログ波形は、アナログ増幅器108に送達され得る。以下では、例示的なアナログ増幅器についてさらに詳細に説明する。アナログ血圧データは、図2に示すように、超音波システム131に提供するために、アナログデジタルコンバータ124で処理され、デジタルデータに変換され得る。この超音波システム131は、使用され得る処理システムの一実施例である。アナログデジタルコンバータ124によってアナログデータから変換されたデジタルデータは、受信サブシステム120に送達され得、そこでデジタル処理が行われる。デジタル処理は、タイムスタンプロジックまたはタイムスタンプクロックを含み、これらは受信サブシステム120のサブコンポーネント150と見なし得る。それ故に、アナログデジタルコンバータ124からのデータは、デジタル処理(サブシステム150参照)に送達され得、さらに、このデータは、データの時間的特徴(temporal characteristics)、すなわち超音波システムの受信サブシステムによってこの特定のデータが受信された時間点を示す、タイムスタンプが与えられ得る。
【0046】
画像システム100は、血圧データの受信の他に、臨床用周波数または高周波数の超音波の送信と受信とを行える超音波トランスデューサ106によって受信された超音波画像データの収集を行う。被験体またはその一部から反射された受信エコーは、受信サブシステム120への出力が可能な超音波受信信号に変換され得る。ブロック120において、受信超音波信号はデジタルデータに変換され得、さらに、デジタル血圧データにスタンプを付すのと同一のタイムスタンプロジック150(図2)またはクロックを用いて、タイムスタンプを付され得る。それ故に、ブロック120において、血圧と超音波の両デジタルデータがタイムスタンプで識別される。受信サブシステム120からのタイムスタンプ付きデータは、デジタル記憶装置151に保存され得、このデジタル記憶装置は、ランダムアクセスメモリ121(図2)の中またはコンピュータのハードドライブ138(図2)上の一時記憶装置を含み得る。
【0047】
画像および血圧データは、表示装置116上に表示され得る。例えば、画像データは、図6に示すようなM−モード画像として、または、図10および図11に示すようなB−モードフレームとして表示され得る。圧力データは、M−モード画像またはB−モードフレームと対応付けされ、同期して表示され得る。それ故に、超音波画像と血圧波形の同期表示が表示装置上に表示され得る。
【0048】
ECG、呼吸、および温度のデータを含むその他の源流(sources)のデータがまた、被験体114から受信され得る。これらの付加的源流のデータは、被験体からアナログデータとして収集され得、超音波システム131に提供するためにアナログデジタルコンバータ124によってデジタルデータに変換され得る。この付加的データはまた、受信サブシステム120においてタイムスタンプを付され得、血圧波形およびM−モードまたはB−モード超音波画像と同期して表示せれ得る。
【0049】
M−モードまたはB−モード超音波画像と同期する血圧データの表示は、正確な圧力/寸法または圧力/容積の測定、および/または推定を行うことを可能にする。さらに、ECGデータ等の被験体からのその他の受信データとの同期表示は、圧力/寸法/容積の、心電活動または呼吸サイクルとの同時進行的な解析を可能にする。
【0050】
血圧データは、M−モード画像を縦断する超音波データの対応する縦ライン、またはB−モードフレームと組み合わされ得、同期して表示され得る。
【0051】
M−モード画像は、所定の速度で右から左に流れるストリップレコーダと類似している。血圧データおよび、もし用いられるならECGデータおよび呼吸データも同様に、M−モード画像に同期して連続的に右から左に進む。M−モード画像は、同期表示の血圧および/またはECGのデータと共に、任意の時間点で静止することができ、これにより、M−モード画像に沿った任意の点、血圧曲線に沿った任意の点、またはECG表示に沿った任意の点が、表示画面上で正確に対応付けられ得る。
【0052】
本明細書に記載のシステムまたは方法は、心臓の鼓動、または心収縮時および心拡張時の大動脈の動特性等の心血管系内の他の拍動性動特性を含む、被験体114の心血管系を解析するために使用され得る。
【0053】
画像からの圧力データおよび寸法データの解析は、ソフトウェアを用いて実施され得る。心臓の場合には、M−モード画像またはB−モードフレームを生成するために、収集された超音波データが用いられ得る。M−モード画像において、対向する2つの波形(620と618)は、心周期の間に収縮し、弛緩する心臓の表面を示す。B−モードフレームは、深さと幅の寸法を備え、撮像臓器の断面図を示し得る。例えば、心臓の断面画像がB−モードフレーム上に画像化され得る。この断面画像は内腔および内腔壁を含み得て、これらはB−モードフレーム上でトレースされ得る。特定の断面において、トレースの面積および/または容積が求められ得、B−モードフレームと同一のタイムスタンプを有する圧力の読み取り値と関係付けられ得る。
【0054】
さらに詳細に後述するように、M−モード画像またはB−モードフレームの任意の部分が、対応する圧力および/またはECGのデータと同時に、すなわち同期して表示され得、その結果として、心室、心房、またはそれらの撮像部分の直径の変化を圧力曲線および/またはECG曲線と正確に対比することが可能であり、心臓の圧力/寸法/容積の関係を同時に判定できる。心臓の圧力/寸法の関係および/または圧力/容積の関係の正確な算定は、血圧/寸法曲線(閉曲線)(図7)および/または圧力/容積曲線(閉曲線)(図12)を生成するために使用され得、それは心臓の生理的パラメータを解析するために使用され得る。
【0055】
図2は、図1の画像システム100をさらに展開したブロック図である。システム100は被験体114に対して作用し、超音波プローブ106は、画像情報を得るために、被験体114に近接して配置され得る。したがって、超音波プローブ106は、超音波を被験体に送信し、被験体から超音波を受信するトランスデューサを備え得る。このようなトランスデューサは、単一部品トランスデューサまたはアレイを備え得て、臨床用周波数と高周波数の両方で超音波を送信し受信し得る。任意ではあるが、トランスポンダの中心周波数は20MHz以上で動作する。
【0056】
血圧および超音波データを取り込み表示するシステムおよび方法は、ハードウェアとソフトウェアの組合せを用いて実装され得る。システムのハードウェア面の実装は、すべて当該分野において周知である、ディスクリート電子部品、データ信号に応じて論理関数を実行する論理ゲートを有するディスクリート論理回路(単数または複数)、適切な論理ゲートを有する特定用途向け集積回路、プログラマブルゲートアレイ(単数または複数)(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの技術の、任意のものまたはその組合せを含み得る。
【0057】
例示的な画像システム100は、超音波システム131を含む。上述したように、本明細書に記載の超音波撮像システム131は、処理システムの一実施例である。超音波システム131は、制御システム127、スキャンコンバータ129、送信サブシステム118、受信サブシステム120、およびユーザ入力装置136を含み得る。プロセッサ134は制御サブシステム127に接続され、表示装置116はプロセッサ134に接続される。メモリ121はプロセッサ134に接続される。メモリ121は、任意の種類のコンピュータメモリであり得、その中で超音波撮像システムのソフトウェア123およびその他のソフトウェア(140、142)が動作するランダムアクセスメモリ(RAM)として参照され得る。その他のソフトウェアは、取り込みソフトウェア140および解析ソフトウェア142を含み得る。
【0058】
システムのソフトウェアは、論理関数を実装する実行可能命令の順番付きリストを備え得、コンピュータベースのシステム、プロセッサ内蔵システム、または命令実行システム、機器、もしくは装置から命令を読み込んで命令を実行し得る他のシステム等の、命令実行システム、機器、あるいは装置による使用のために、またはこれらと関連する使用のために、任意のコンピュータ読み取り可能媒体の中に具現化され得る。
【0059】
メモリ121はまた、画像システム100によって得られた画像データおよび圧力データ(すなわち、収集データ110)を含み得る。収集データ110はまた、超音波システムによって受信されたECGデータ、呼吸データおよび温度データを含み得る。プロセッサ134は制御サブシステム127に接続され、表示装置116はプロセッサ134に接続される。メモリ121はプロセッサ134に接続される。ソフトウェア123、140、142は、超音波データおよび血圧データの取得、処理および表示を制御し、超音波システム131による血圧データを含む画像の表示を可能とし、圧力と寸法または圧力と容積の関係を求めるために用いられ得る。メモリ121はまた、超音波システム131によって得られた収集データ110を含み得る。
【0060】
超音波システム131の動作に関連するステップまたはアルゴリズムを実行するようにプロセッサ134を指図するおよび/または設定する命令をプロセッサ134に提供するために、コンピュータ読み取り可能記録媒体138がプロセッサに接続される。このコンピュータ読み取り可能媒体は、これらは単なる例示に過ぎないが、磁気ディスク、磁気テープ、CDROMなどの光読み取り可能媒体、およびPCMCIAカードなどの半導体メモリ、などのハードウェアおよび/またはソフトウェアを含み得る。それぞれの例において、この媒体は、小型ディスク、フロッピディスク、カセット等の携帯品の形態を取り得、あるいは補助システムの形態で提供されるハードディスクドライブ、固体メモリカード、またはRAMなどの比較的大型または固定品の形態を取り得る。上記例示の媒体は、単体または組合せのいずれでも用いられ得ることに留意するべきである。
【0061】
本明細書の文脈において、「コンピュータ読み取り可能媒体」は、命令実行システム、機器、もしくは装置によって、またはこれらと関連して使用されるプログラムを収容(contain)、保存(store)、通信(communicate)、伝搬(propagate)、もしくは移送(transport)し得る任意の手段であり得る。このコンピュータ読み取り可能媒体は、例えば、電子式、磁気式、光学式、電磁気式、赤外線式、または半導体式のシステム、機器、装置、あるいは伝搬媒体であり得るが、これらに限定されない。コンピュータ読み取り可能媒体のさらに具体的な実施例(非網羅的なリスト)は、以下のものを含み得る:1つ以上の配線を有する電気的接続(電子式)、携帯コンピュータディスケット(磁気式)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読出専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)(磁気式)、光ファイバ(光学式)、および携帯コンパクトディスク読出専用メモリ(CDROM)(光学式)。なお、このコンピュータ読み取り可能媒体は、その上にプログラムが印刷される紙または別の適切な媒体ですらあり得、このプログラムは、紙または他の媒体を例えば光学的に走査することで電気的に取り込まれ得、次いで必要であれば、コンパイルされ、翻訳され、または他の適切な態様で処理され、次いで、コンピュータメモリに保存され得る。
【0062】
制御サブシステム127は、各種構成要素の動作を超音波システム131に向けるために用いられる。この制御サブシステム127および関連の構成要素は、汎用プロセッサに指示を出すソフトウェアとして、またはハードウェアの実装における専用電子部品として提供され得る。
【0063】
超音波システム131は、受信超音波エコーによって生成された電気信号を、プロセッサ134によって処理され表示装置116上の画像に描画され得るデータに変換するための、スキャンコンバータ129を含む。制御サブシステム127は、超音波送信信号を超音波プローブ106に提供するために、送信サブシステム118に接続される。この超音波プローブ106が次に超音波受信信号を受信サブシステム120に提供する。受信サブシステム120はまた、受信信号を表現する信号をスキャンコンバータ129に提供する。受信サブシステム120はまた、制御サブシステム127に接続される。スキャンコンバータ129は、制御サブシステム127によって、受信データを処理し収集データ110を用いて表示用画像を提供するように指図される。収集データ110は、画像データおよび血圧データを含み得るが、これに限定されない。受信サブシステム120はサブコンポーネント150を含み、サブコンポーネント150はタイムスタンプロジックまたはクロックを備え、それは超音波プローブ106からの受信超音波信号に、時間識別子(time identifier)でデータを識別する時間上のスタンプ(temporal
stamp)でスタンプ付けし得る。この時間識別子は、データを、それが被験体114から収集された時間、および/または、いつデータが受信サブシステム120に送達され、もしくは受信サブシステム120によって受信されたかによって識別する。同じクロックによって、血圧データおよび画像データがタイムスタンプ付けされ得る。
【0064】
画像システム100は、被験体114から血圧信号を得て、そして、可変利得増幅器108に送達するために、被験体114から受信した圧力信号をアナログ波形に変換する圧力検出装置104をさらに備え得る。図3に示すように、この可変利得増幅器は7つの制御レベルを有し得、3つの制御ビットを有する。利得は、超音波システム131のソフトウェア123によって制御され得る。可変利得増幅器108は、使用される圧力検出装置104に応じた異なる入力を許容する。
【0065】
画像システム100はレベルシフタ112をさらに備え得、レベルシフタ112は可変利得増幅器108からのアナログ波形をシフトし、選択された周波数のデータを除去するようにデータをフィルタリングするフィルタ122に、シフトされた血圧データを送達する。例えば、2.5KHz以上の周波数を有するデータをフィルタリングするために、ローパスフィルタが使用され得る。増幅と、シフトと、フィルタリングとを施されたデータは、アナログデジタルコンバータ124に送達され得、そこでそのデータはアナログフォーマットからデジタルフォーマトに変換される。このデジタルデータは、デジタルデータバスを介して、タイムスタンプ付与を含むデジタル処理のために受信サブシステム120に送信され得る。アナログ/デジタルコンバータ124はまた被験体114から、デジタルデータバスを通して受信サブシステム120に提供するECGデータ、呼吸データ、および温度データを含む付加的アナログデータをも受信し得る。
【0066】
超音波システム131は、超音波プローブ106を介して超音波データの送信および受信を行い、画像システム100の動作パラメータを制御するためのインターフェースを利用者に提供し、ならびに、インターフェース表示136または表示装置116により利用者に提供される、解剖学的および/または生理学的構造を示す静止画および動画を構成するために適切なデータの処理を行う。圧力および超音波のデータは、制御サブシステムおよび画像形成サブシステムに提供するために、ならびに、後続の処理および/または保存を行うために、ならびに、圧力波形およびM−モードまたはBモード超音波画像データを表示装置116上に同期表示するために、ならびに、後続の圧力/寸法または圧力/容積の解析を行うために、タイムスタンプを付され得る。
【0067】
図3は、超音波M−モードまたはB−モード超音波データと共に同期表示、解析するために、被験体114からの血圧データを取得し送達するために用いられる、例示的な画像システム100の一部を示す概略図である。図3に示す構成要素は、可変利得増幅器108、レベルシフタ112、ローパスフィルタ122、アナログデジタルコンバータ124、およびデジタルデータバス302を含む。
【0068】
可変利得増幅器108は、ソフトウェア123により7つのレベルに制御され得る3つの制御ビットを含む。可変利得増幅器108は、被験体からの血圧信号をアナログ波形に変換可能な血圧モニタ/検出装置からの入力を受け入れる。例えば、Millar圧力モニタが使用される場合には、VGAへの入力は、一般的には約−2.5ボルトから+2.5ボルトまでを変動するアナログ圧力波形である。しかしながら、用いられる圧力モニタまたは検出装置に応じて、出力はアナログ圧力波電圧の点で異なり得る。例えば、尾カフが用いられる場合には、可変利得増幅器への入力は約−1.0ボルトから+1.0ボルトまでの振幅を有するアナログ波形の形態であり得る。当業者であれば分かることであるが、入力または用いられる血圧検出装置に応じて他の電圧振幅が起こり得るのであり、その振幅は−1.0ボルトから+1.0ボルトまでよりも小さいこともあれば、−2.5ボルトから2.5ボルトまでよりも大きいこともあり得る。例えば、可変利得増幅器108は−5.0ボルトから+5.0ボルトまで、またはそれ以上の入力を受け入れ得る。
【0069】
可変利得増幅器108は、圧力検出装置からのアナログ波形の入力電圧振幅に基づいて、利用者が異なる電圧利得を選択することを可能にする。可変利得増幅器の利得は、レベルシフタ112に−2.5ボルトから+2.5ボルトまでの信号を提供するように、圧力検出装置からの入力に依存して設定され得る。それ故に、可変利得増幅器への入力が−2.5ボルトから+2.5ボルト電圧振幅のアナログ波形である場合には、利得は1となる。可変利得増幅器108は3つの制御ビットによって7つの制御レベルに調整される。制御ビット304は、圧力検出装置104からの入力に依存して可変利得増幅108の利得を決定するように、ソフトウェア123によって制御される。
【0070】
一局面においては、レベルシフタは、入力電圧振幅を正の電圧振幅に変換またはシフトする。それ故に、−2.5ボルトから+2.5ボルトまでの振幅は、0ボルトから+5.0ボルトまでの正の電圧振幅にシフトされる。こシフトされた信号は、信号の2.5KHz以上の周波数を有する部分をフィルタリングして除去するローパスフィルタ122に送達される。このフィルタリングは、帯域外ノイズを低減し、さらに、A/Dコンバータが一般的に8.0KHzで動作しているために、エイリアシングをも防止する。このフィルタリングされたアナログ信号は、16ビットのアナログデジタルコンバータ124に入力され、アナログデジタルコンバータ124は、デジタルデータバス302を通して超音波システム131に提供するために、アナログ入力をデジタルデータ出力に変換する。
【0071】
図4は、M−モード超音波データまたはエコー信号および血圧データを、図1および図2の例示的なシステムを用いて取り込み表示する、例示的方法を示すブロック図である。一般的に、超音波データは、被験体の解剖学的構造の同じ位置において、一連のラインとして、時間の経過とともに取り込まれ得る。取り込まれた超音波データのラインは、取り込まれた圧力データと共にタイムスタンプを付され、同期して表示され得る。この圧力データは、圧力波形として表示装置上に表示され得る。
【0072】
ブロック402において、トランスデューサを備える超音波プローブが、被験体内に超音波を送信し、被験体からの反射超音波信号を受信するように、被験体114に近接して配置され得る。圧力検出装置は1つ以上のリードを介して被験体114に接続され得、圧力データの取り込みおよび圧力データのアナログ圧力波への変換を可能にする。
【0073】
ブロック404において、画像システム100は一ライン分の超音波データを取り込み得、1つの圧力読み取り値を取り込み得る。血圧および超音波のデータは、任意ではあるが、被験体から同時に取り込まれ得る。取り込まれた超音波データのラインおよび取り込まれた圧力読み取り値は、受信サブシステム120のタイムスタンプロジック150を用いて、超音波システム131によってタイムスタンプを付され得る。同期する超音波データのラインおよび圧力読み取り値は、同じタイムスタンプを付した識別子を有することによって識別され得る。M−モードでは、解剖学的構造の同じ位置において、時間の経過とともに一連のデータラインが取り込まれ得る。このデータのラインは、バッファの中に取り込まれ得る。取り込まれた超音波データのラインは、取り込まれた圧力値の読み取り値と共に表示され得る。超音波データラインおよび血圧読み取り値上のタイムスタンプが共通なため、超音波システム上の同期した実時間表示のために、データラインと圧力読み取り値とが対応付けられ得る。
【0074】
ブロック406では、M−モード超音波では一般的に行われるように、表示領域がスクロールされ得、表示またはスクリーンは、ブロック404で取り込まれた超音波データのラインおよび圧力読み取り値で更新され得る。スクロール上でスクリーンの端に到達したときは、最古のデータが脱落する。最古のデータが脱落すると同時に、表示は、利用者がブロック410で取得プロセスを停止するまで、超音波データの新ラインおよび新圧力データで更新され得る。
【0075】
ブロック408において、タイムスタンプ付き超音波データおよび圧力データは、後続の表示または解析用に、RAM内にまたはコンピュータのハードドライブ上に保存され得る。ブロック410において、利用者は取得プロセスを停止するか否かを決定できる。答えが「いいえ」である場合には、取得プロセスは継続し得て、1ミリ秒後に、ブロック404において、第二のまたは新規の圧力読み取り値と共に、超音波データの第二のまたは新規のラインが取り込まれ得る。再度、ブロック406に示すように、最古のデータが脱落し、新規の超音波ラインおよび圧力データが表示上で更新されて、表示が更新され得る。この新データは、ブロック408で前回に保存されたデータと共に保存され得る。ブロック408で保存されたデータのブロックは、データが取得されると埋められる循環型バッファにおいて、後続の解析のために使用され得る。408においてこの循環型バッファがいっぱいのときには、データの次のラインが、データの最古のラインを循環型バッファから押し出し得る。
【0076】
410で利用者が取得の停止を決定すると、データ収集は停止し、M−モード画像上に位置する同期圧力波形と共にM−モード画像を超音波システムの表示装置上に示した状態で、画面は静止し得る。図6は、上述の方法を用いて生成された超音波データおよび血圧データの例示的な表示画面を示し、ここでは血圧データがM−モード画像と同期して表示され得る。ブロック図400の最後でブロック412において、利用者が取得を停止させ、この表示画面を静止させた。ブロック412で利用者が画像を静止させた後に、図5に示すように、保存データは処理され解析され得る。
【0077】
図5は、M−モード超音波画像を、図1および図2の例示的なシステムを用いて処理する、例示的な方法を示すブロック図である。ブロック504において、ブロック412で表示画面上に静止された画像上にトレース線が置かれる。2つのトレース(614と616)が表示画像上に生成され得る(図6)。620と618の両波形を自動トレースするために、解析ソフトウェア142が用いられ得る。
【0078】
1本のトレース614は、この例示的な画像の約10.5mmに位置する波形620をトレースするものであり、第二のトレース616は、この例示的な画像の約15.0mmに位置する波形618をトレースするものである。波形をトレースするために用いられるソフトウェア142は、当業者にとって公知の波形トレース用ソフトウェアを用いて、容易に適合され得る。波形(620と618)上の各点は、約1ミリ秒間隔で取得された超音波データのタイムスタンプ付きラインに対応する。それ故に、トレース(614と616)に沿った各点はまた、超音波データのタイムスタンプ付きラインに対応する。
【0079】
2本のトレースされた波形またはトレースの間の距離(d)は、撮像された構造の寸法、例えば、超音波が受信される位置における心室の直径、を表す。ブロック506において、トレースの各点に対する直径、容積または面積などの寸法が、トレース間の距離を用いることによって計算および/または推定され得る。各計算された寸法または断面は、対応するタイムスタンプを有する。
【0080】
ブロック508において、圧力波形上の各点に対してトレース上の時間点に対応して、圧力が求められ得る。それ故に、圧力波形に沿ったタイムスタンプを、M−モード画像を用いて2つのトレースによって定められた同一タイムスタンプの寸法と対応付けることによって、M−モード画像に沿った任意の寸法または容積点に対して、圧力波形からの血圧が求められ得る。例えば、M−モード画像が1KHzで走っていると想定すると、対応する圧力および寸法を有する一ライン分のデータが1ミリ秒毎に取得される。それ故に、1ミリ秒毎に新しい寸法または容積が求められ得る。しかしながら、読み取り値は、M−モード動作の速度に応じて、1ミリ秒毎に1回よりも速くもまたは遅くも定められ得る。例えば、この速度は8KHzであり得る。それ故に、サンプリング周波数は変化し得、例えば約1KHzから約8KHzの範囲をとり得る。サンプリング速度が8KHzの場合には、1KHzの場合よりも1秒当り8個多い読み取り値が存在する。一局面においては、M−モードにおけるパルス繰返し周波数(PRF)がサンプリング周波数に用いられ得る。
【0081】
ブロック510において、このシステムが生成した圧力対寸法または圧力対容積のデータを用いてグラフが作成され得る。例えば、圧力対容積または圧力対寸法の閉曲線が作成され得、これにより一回拍出量、心拍出量、および心筋弾力性の解析が可能になる。心収縮の終点を含む心周期の異なる点における容積および圧力を求めるために、圧力および寸法をECG読み取り値と対応付けるグラフがまた、作成され得る。M−モードでは単一の寸法が測定されるために、圧力対寸法のグラフがシステムによって生成されたデータを用いて作成され得る。この単一の寸法から、心臓の形状に関するある種の仮定に基づいて、容積の推定が実行され得る。
【0082】
図6は、図1および図2の例示的なシステムを用いて生成された超音波データ、血圧データ、およびECGデータの、例示的な表示の画像である。図6は例示的なM−モード超音波画像600であって、圧力波形604およびECGトレース606と共に、かつ同期して表示される複数のラインのM−モードデータを備える。このM−モードは、データの軸方向ラインを端から端までを実時間観察するものであり、データの個々のラインは1KHzの速度で収集され得る。1KHzでは、一ラインのデータが1ミリ秒毎に取得され、取り込まれる。
【0083】
心収縮期および心拡張期には、心臓壁602および622は収縮し弛緩するので、その結果として、心室の直径は心臓周期全体を通して動的に動く。上述したように、M−モードで観察するときには、心臓壁の収縮および弛緩は、心臓壁(602と622)のトランスデューサからの距離を表す2つの波形(620と618)を生成する。これらの波形は、トレース614および616を生成するソフトウェアによって自動的にトレースされ得、614はトランスデューサに近い方の心臓表面620をトレースし、616はトランスデューサからより離れている方の心臓表面618をトレースする。例えば、上述したように、1本の波形/トレースは約10.5mmの深さに位置し、他方の波形/トレースは約15mmの深さに位置する。撮像された心室の内腔608は2つの表面(620と618)の間の空間に位置し、その内腔608の寸法または直径は、2本のトレース間の距離を、これらトレースに沿った任意の点で測定することによって決定され得る。同様に、圧力トレース604に沿った任意の特定の点における圧力は、波形上の所定点、例えば点610にカーソルを置くことによって、心臓表面の波形上の同期点と関係付けられ得、対応する線または他の指示マークが圧力トレース604に沿って形成され得る。例えば、線状マーク612は、壁602の波形620に沿って位置するカーソル点610と、同一タイムスタンプの同じ点に対応する。さらに図6に示すように、M−モード画像および圧力波形はECGトレース606と同期化され得るので、その結果として、圧力対直径および/または容積が、心臓のこの電気的周期における所定の点と同期して関係付けられ得る。
【0084】
図7は、典型的な心周期における圧力対寸法閉曲線グラフと関連事象を示す概略図である。同期する圧力/寸法または圧力/容積データは、本明細書に記載の方法を用いて、図6に示すような表示によって達成され得、このデータは、寸法を圧力と関係付けるグラフを作成するために使用され得る。このグラフは、圧力対寸法閉曲線と呼ばれており、その例が図7に示されている。この圧力対寸法閉曲線により、充満、僧帽弁閉鎖、等容性収縮、大動脈弁開放、駆出、大動脈弁閉鎖、等容性弛緩、および僧帽弁開放を含む種々の心臓周期時相(phase)を通じて、心室内の圧力ならびにその圧力に同期するタイミングの寸法が、追跡され得る。さらに、この圧力対寸法グラフよって心臓が機能する上で重要な多くのパラメーが決定され得、このグラフは心臓病の診断または心臓機能に対する治療の効果の研究にとって有益となり得る。
【0085】
図8は、図1および図2の例示的なシステムを用いて、単数または複数のB−モードフレームおよび血圧データを取り込み表示する、例示的な方法800を示すブロック図である。ブロック802において、トランスデューサを備える超音波プローブが、被験体114の中に超音波を送信し、被験体からの反射超音波信号を受信するように、被験体114に近接して配置され得る。圧力検出装置104が1つ以上のリードを介して被験体114に接続され得、圧力データの取り込みおよび圧力データのアナログ圧力波への変換を可能にする。
【0086】
ブロック804において、上記の方法およびシステムを用いて一フレーム分のB−モード超音波が取得され得、さらに圧力トレースが取得され得る。血圧および超音波データは、任意ではあるが、被験体から同時に取り込まれ得る。B−モードフレーム全体を取得するのに要する期間中に、システによって複数の血圧読み取り値が取得され得る。M−モードにおいては、取得データの各ラインに対し、対応する取得血圧データ読み取り値が存在し得る。B−モードのフレームに対しては、フレームB−モード超音波データに対応する多数の圧力読み取り値が存在し得る。そのために、各B−モードフレーム当り、1つ以上の圧力読み取り値が取得され得る。
【0087】
B−モードフレームは一定の期間にわたって取得され得、その期間は、超音波データを取得するために用いられるフレームレートに応じて異なり得る。フレームは、例えば毎秒約30フレームから約230フレーム(fps)までの間で変動し得、当業者にとっては公知の要因に依存して利用者によって選択され得る。例えば、心拍数に基づいて特定のフレームレートが選択され得、心拍数は撮像される種または他の撮像条件の間で異なり得る。それ故に、例えば、一心臓周期当り少なくとも約5フレームから少なくとも約10フレームの取り込みを可能にするフレームレートが選択され得る。任意ではあるが、選択されたフレームレートは毎秒約100フレームである。B−モードフレーム時間を取得するのに要する時間は、フレームレートに依存して異なり得るために、1つのB−モードフレームを取得する期間に取得される圧力読み取り値の数も異なり得る。
【0088】
フレーム取得の終了時が、フレームにタイムスタンプ識別子を付すタイミングとして用いられ得る。しかしながら、これらに限定するものではないが、取得終了時、取得開始時、またはこれらの間の任意の点を含むフレームの任意の部分が、取得されたフレームにタイムスタンプを付すタイミングとして用いられ得る。
【0089】
ブロック804において一旦フレームが取得され、タイムスタンプを付されると、そのフレームは、ブロック806においてスクリーンに描かれ得る。ブロック806において、ブロック804で取得されたフレームで、および804でこのフレームが取られた期間中に取られた圧力読み取り値で、表示が更新され得る。それ故に、806における表示は、ブロック804で取得されたフレームを、ブロック804でこのフレームが取得された期間中に取得された圧力波形と共に示し得る。図11は、B−モード超音波データの一フレーム1100および圧力波形1110を備える、例示的な表示の画像である。このフレームが取得された期間に対応する部分の圧力波形が、取得されたB−モードフレームと共に画面上に表示され得る。取得されたフレーム1100のタイムスタンプに対応するインジケータ1120が、圧力波形1110上に配置され得る。
【0090】
図10は、2つの例示的なB−モードフレームと、1つの例示的な血圧波形とを示す概略図である。図10は、ブロックに806おいて表示される形態で、2つのB−モードフレーム1010および1020を示す。各フレームは、個別にも、またはループ状にも表示され得る。ループ表示が示されるときには、それぞれがそのループ表示のフレームを代表する複数のフレームが、ループ表示を形成するようにして連続的に観察され得る。それ故に、図9では、ループ表示の2つの例示的なフレームが示されている。これらフレームの間の3つの黒丸は、フレーム1010と1020との間で取られた3つの追加のフレームを簡略化して図示したものであり、それらはループ表示を形成するために使用され得る。ループ表示を構成するために、2つ以上のフレームが用いられ得る。
【0091】
この2つの例示的なフレームの下に、1つの例示的な血圧波形1030がある。現在フレーム(current frame)のタイムスタンプに対応する波形内の位置を示すために、インジケータ1040が例示的な波形1030上に重ねられている。「現在フレーム」とは、画面上に今まさに表示されているフレームを意味する。しかしながら、ループ表示の各フレームは独立したタイムスタンプを有し得て、それぞれが圧力波形上に対応するタイムスタンプ位置を有する。
【0092】
ブロック808ではB−モードフレームおよび圧力読み取り値が保存され得、ブロック810では、利用者が取得を停止しようとしているか否かを、システムが確認し得る。ブロック810において、超音波データおよび/または血圧データの取得を停止すべきか否が決定され得る。利用者が取得を停止しようとした場合には、ブロック812において、表示は静止状態にされ、データ収集は停止され得る。利用者が取得を停止しようとしなかった場合には、別のB−モードフレームが圧力読み取り値と共に取得され、両者ともブロック804で説明したようにタイムスタンプが付され得、そして、この方法が上述のブロック図のステップ全体にわたって繰り返し実施され得る。
【0093】
B−モードフレームが対応する圧力波形と共に画面上で一旦静止状態にされると、図9に示される例示的な方法900に示されるように、B−モードフレームおよび圧力トレースを含む表示画像の処理が実施され得る。
【0094】
図9は、単数または複数のB−モードフレームおよび血圧データを、図1および図2の例示的なシステムを用いて処理する、例示的な方法を示すブロック図である。ブロック904において、ブロック804で取得された最初のまたは任意のB−モードフレーム上で、心内膜、もしくは撮像された臓器、構造、またはその一部の他の表面を、利用者がトレースする。ブロック804で利用者によって生成されるB−モードフレーム上の心内膜の例示的なトレースが、図10にB−モードフレーム1010上の1050として、およびB−モードフレーム1020上のトレース1060によって示されている。
【0095】
例示的なトレース1140がまた、図11の例示的なフレーム上に示されている。図11は、図1および図2の例示的なシステムを用いて生成されたB−モードフレームおよび血圧データの例示的な表示の画像である。トレースされるべき心内膜、あるいは任意の臓器の表面、腔を備える臓器の内腔表面、または、例えば、大動脈もしくは心室の内面、などの別の構造は、ヒューマンマシンインターフェース136を操作する利用者の手作業によってトレースされ得る。利用者は、心内膜の内面または他の所望の表面を手作業でトレースすることによって、表示装置116上に例示的なトレースを描き得る。
【0096】
この表面はまた、ソフトウェア142を用いて自動的にトレースされ得、図10のフレーム1010上のトレース1050のように、トレースが一旦所定フレーム上に配置されると、次いで、ソフトウェア142は、図10のフレーム1020上のトレース1060のように、各後続の取得されたフレーム上にトレースを自動的に配置し得る。それ故に、一実施例において、利用者が特定の構造をトレースし得、そうすると、ソフトウェア142が引き続いて取得されたそれぞれのフレームにおいてその構造を自動的にトレースし得る。フレームの間で構造を自動的にトレースするために用いられるソフトウェアは、当業者にとって公知のアルゴリズムおよびソフトウェアを用いて、容易に適合され得る。構造をトレースするプロセスは自動化され得、またはユーザ支援自動化され得る。ユーザ支援自動化とは、利用者が最初のトレース、例えば利用者によりトレースされた多角形で示される図10のトレース1050を配置し、次いで、ソフトウェアが、フレーム1020またはフレーム1020に後続して取られる任意のフレーム上に、自動的にトレース1060を配置することを意味する。利用者はまた、ソフトウェアによって自動的に配置されたトレースを、より細密に所望の構造をなぞるように調整し得、または、自動化ソフトウェアが用いられない場合には、利用者がデータを取得したいと望む任意のフレーム上に、利用者は手動でトレースを配置し得る。
【0097】
後続フレーム上でのソフトウェアによる自動的トレースは、ブロック906に示されている。ブロック906で起こる処理の結果は、トレースされた構造の表面を表すトレースされた多角形または他の幾何学的構造を有する、一連のB−モード超音波フレームの中の1つである。その多角形の点に基づいてその面積が計算され得、その例が図11に示されている。図11において、トレース上に複数の点1150が示されており、ソフトウェア142を用いて多角形の面積を求めるために、これらの点が使用され得る。このソフトウェアは、当該分野において公知のアルゴリズムを使用し得る。
【0098】
その断面において、すなわち、そのB−モードフレームを得るために超音波が送受信された点において、面積は、トレースされた臓器の内腔またはその一部の容積を求めるために、他の公知の計算式を用いて容積読み取り値または容積推定値に変換され得る。それ故に、例えば心室の容積は、画面上の心室の内面をトレースすることによって、トレースされた図形内の面積を求めることによって、および公知の計算式を用いて面積を心室の容積推定に変換することによって、推定され得る。
【0099】
容積推定値は、そこからこの容積推定値が生成されたタイムスタンプ付きB−モードフレームに基づき得る。圧力波形は対応するタイムスタンプを有し得る。それ故に、910に示すように、単数または複数のフレームのタイムスタンプを血圧波形の対応する点と結びつけることによって、各容積に対する圧力が決定され得る。
【0100】
ブロック912において、M−モード法を用いて生成された圧力/寸法グラフと同様に、圧力/容積グラフなどのグラフが生成され得る。生成され得る例示的な圧力対容積グラフを図12に示す。図12は、典型的な心周期における圧力対容積閉曲線と関連事象を示す概略図である。この事例におけるM−モードとB−モードと間の違いは、M−モードでは寸法が取得されるという点である。M−モードグラフの寸法は直径である。一方では、B−モードでは面積が取得され得て、この面積が圧力対容積グラフを得るための容積に変換され得る。
【0101】
上記の詳細な説明は、本発明の例示的な実施例を理解するためだけのものであり、当業者にとっては特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲から逸脱しない改変は明らかであるので、そこからの不要な制限が考慮されるべきではない。
【0102】
別段に記述しない限り、本明細書に記載のいずれの方法も、そのステップが特定の順序で実施されることを要求するように考えられることは、全く意図されていない。したがって、方法の請求項がそのステップによって追従されるべき順序を実際に述べているのではない場合、またはステップが特定の順序に限定されることが請求項もしくは説明で具体的に述べられているのではない場合には、いかなる関連においても順序が推論されることは全く意図されていない。このことは、ステップの配列または動作フローに関するロジックの問題、文法構成または句読点から導びかれる単純な意味、および本明細書に記載の実施形態の数量またはタイプを含む、翻訳に対して起こり得るいかなる黙示原則(non−express basis)にも当てはまる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−91044(P2012−91044A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−30114(P2012−30114)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2008−527209(P2008−527209)の分割
【原出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(506352418)ビジュアルソニックス インコーポレイテッド (11)
【出願人】(508050129)
【出願人】(508049581)
【出願人】(508050130)
【Fターム(参考)】