説明

血圧を低下させる方法

本発明は血圧を低下させる方法と作用剤に関する。拡張期血圧を低下させるための、収縮期血圧を低下させるための、および平均動脈圧を低下させるための方法と作用剤も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血圧を低下させるための方法及び作用剤に関する。拡張期血圧を低下させるための、収縮期血圧を低下させるための、および平均動脈圧を低下させるための方法及び作用剤も提供される。
【背景技術】
【0002】
血圧上昇(例えば、正常レベルを上回るレベルのあらゆる血圧)、および高血圧症は公衆の健康上大きな問題である。血圧上昇または高血圧症の発症には非常に多数の危険因子が関連し、そのような因子としては、年齢、人種、家族歴、肥満、運動不足、喫煙、飲酒、食事、糖尿病、およびストレスが含まれる。
【0003】
血圧が上昇している人または高血圧症の人は非常に多くの疾患や合併症を発症する危険性が著しく高い。それらの疾患や合併症の程度及び重症度は、血圧を低下させる、高血圧症を治療する、または高血圧症の進行を防止/回復に向かわせる、早期かつ効果的な治療戦略が緊急に必要であることを示唆する。血圧の低下が比較的小規模であっても高血圧症に関連する並存疾患や死亡(co-mortality)を顕著に低下させることができる。例えば、40〜69歳の成人では、収縮期血圧の20 mmHgの低下は(これはほぼ拡張期血圧の10 mmHgの低下と同等である)、卒中やその他の血管系疾患による死亡の2倍以上の低下に関連した(非特許文献1)。
【非特許文献1】Lewingyon et al (2002) Lancet 360:1903-1913
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、当業界では、血圧を下げるための方法、高血圧症を治療するための方法、および血圧上昇もしくは高血圧症に関連する疾患および合併症を治療するための方法、またはそのような疾患および合併症の発症を防ぐための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、血圧を低下させることに用いるための新規の方法および作用剤を提供することによって、このようなニーズに応えるものである。本発明者らは、被験体において、結合組織成長因子(CTGF)を、例えば抗CTGF剤を投与することによって、特異的に阻害すると、その被験体の血圧を低下させることを見出した。血圧を低下させるための、および高血圧症を治療するための方法および作用剤、ならびに血圧上昇もしくは高血圧症に関連する疾患や合併症を治療するための、またはそのような疾患や合併症の発症を予防するための方法および作用剤も提供される。
【0006】
本発明の要旨
本発明は一部には、結合組織成長因子(CTGF)が収縮期および拡張期の血圧に極めて重要な役割を果たしているとの知見に関する。
【0007】
本発明は血圧を低下させることに用いられる方法および作用剤に関する。具体的には、本発明は、抗CTGF剤の投与によって、ヒトの被験体およびその他の哺乳類の被験体において収縮期および拡張期の血圧の双方を効果的に低下させることを示す。
【0008】
血圧を低下させるための、および高血圧症を治療するための方法および作用剤、ならびに血圧上昇もしくは高血圧症に関連する疾患や合併症を治療するための、またはそのような疾患や合併症の発症を予防するための方法も提供される。
【0009】
1実施形態においては、本発明は被験体の血圧を低下させる方法を提供し、該方法は該被験体に有効量の抗CTGFを投与し、それによってその被験体の血圧を低下させることを含んでなる。本発明の好ましい実施形態においては、前記被験体は哺乳類の被験体である。最も好ましくは、前記被験体はヒトの被験体である。
【0010】
被験体がヒトの被験体である特定の実施形態においては、該被験体は、正常高値血圧である被験体、高血圧の被験体、および高血圧症の被験体からなる群から選択される。本発明の特定の実施形態においては、前記高血圧症は、軽度の高血圧症、中度の高血圧症、重度の高血圧症、および非常に重度の高血圧症からなる群からさらに選択される。
【0011】
前記被験体がヒトの被験体である他の実施形態においては、該被験体は糖尿病に罹患しているかまたはその危険性のある被験体である。種々の実施形態において、糖尿病は、1型の糖尿病および2型の糖尿病からなる群から選択することができる。
【0012】
本発明の特定の態様においては、前記被験体が血圧上昇または高血圧症を発症する危険性のあるヒト被験体であることを意図している。そのような被験体として、血圧の上昇、もしくは高血圧、または高血圧症を発症する危険性の増加に関連することが知られる、1つ以上の様々な危険因子を有している被験体を挙げることができる。そのような危険因子としては、例えば、高血圧の家族歴、糖尿病、肥満、特定の民族的もしくは人種的な遺伝形質(heritage)、ほとんど運動をしない生活習慣、年齢、飲酒、喫煙、カフェインの摂取、食事、ナトリウム感受性および塩類の摂取、腎疾患および腎機能不全、睡眠無呼吸、妊娠、肝硬変、クッシング病、特定の薬物、情緒的因子、ストレスなどが含まれる。特定の態様においては、危険性のある被験体は、1種類以上の血圧薬物による治療を以前に受けたことがあるか、または現在受けている被験体である。そのような血圧薬物としては、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、ベナゼプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル)、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(例えば、ロサルタン)、β-ブロッカー(例えば、酒石酸メトプロロール、ベタキソロール、バルサルタン)、利尿剤(例えばヒドロクロロチアジド)、血管拡張剤(例えば、硝酸イソソルビド)、α-ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、およびスタチンが含まれる。本発明では、特定の態様において、危険性のある被験体が、血圧が上昇していない被験体、正常なもしくは正常血圧よりも低い被験体、例えば、収縮期血圧が120 mmHg以下、もしくは拡張期血圧が80 mmHg以下である被験体であることができることを具体的に意図する。
【0013】
本発明はまた、被験体の高血圧症を治療または予防する方法であって、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該被験体の高血圧症を治療または予防することを含む方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、被験体の血圧上昇または高血圧症に関連する疾患の治療または予防方法であって、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該被験体の該疾患を治療または予防することを含む方法を包含する。様々な態様においては、前記疾患は、心臓血管疾患、心筋梗塞、うっ血性心不全、心肥大、冠状動脈疾患、不整脈、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、腎症、網膜症、ニューロパシー、卒中、肥満、糖尿病、骨疾患、性的機能不全、およびメタボリック症候群からなる群から選択される。
【0015】
本発明の種々の実施形態においては、対象の被験体は腎疾患または腎症、特に糖尿病性腎症を患う被験体である。
【0016】
本明細書記載の方法の様々な各実施形態において、好ましい被験体がヒトの被験体であることが具体的に意図されている。
【0017】
本明細書で用いている抗CTGF剤とは、CTGFの発現または活性を阻害する任意の作用剤をいう。好ましい抗CTGF剤は以下に記載するが、それらとしては、抗体、小分子、アンチセンス分子、その他のポリヌクレオチドなどが挙げられる。本明細書に記載のいずれの方法においても、抗CTGF剤がポリペプチド、ポリヌクレオチド、または小分子;例えば、CTGFと結合する抗体、アンチセンス分子、siRNA、小分子の化合物などであり得ることが具体的に意図される。CTGFに対するヒトモノクローナル抗体の使用が具体的に意図されている。特定の実施形態においては、前記抗体は国際公開No. WO 2004/108764に記載のCLN-1である。
【0018】
本発明は、本発明の方法を他の療法と組み合わせて用いることを意図している。下記の「考察」を参照されたい。1実施形態においては、前記方法は、血圧上昇もしくは高血圧、高血圧症、またはそれらに関連する疾患や合併症を治療するための別の治療的アプローチ、例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体ブロッカー、β-ブロッカー、α-ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、利尿剤、血管拡張剤など、と組み合わせて用いられる。
【0019】
本発明はさらに、被験体の血圧上昇に関連する遺伝子の発現をモジュレートする方法を包含し、該方法は、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該被験体の該遺伝子の発現をモジュレートすることを含んでいる。特定の実施形態においては、本発明の方法は血圧上昇に関連する遺伝子の発現を低下させる。1実施形態においては、前記遺伝子はI型アンジオテンシンII受容体をコードし、この遺伝子の発現を低下させる方法が提供される。
【0020】
本発明のこれらのおよび他の実施形態は、当業者であれば本明細書の開示に照らして容易に思いつくものであり、そのような実施形態の全てが具体的に意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の説明
本発明の組成物と方法について説明する前に、本発明が本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、細胞株、アッセイ、および試薬類に限定されるものではないことは、それらは変えうるものであるので、理解されるべきである。また、本明細書中で用いている用語は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図したものであって、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を一切限定するものではないことも、理解されるべきである。
【0022】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いている単数形は、文脈で明確に単数のみであることを示していない限りは、複数をも含むことに留意すべきである。従って、例えば、「断片」は、そのような断片の複数を含むことを指し、「抗体」は、1つ以上の抗体および当業者には既知のその同等物を指す。
【0023】
本明細書中で用いている技術用語および科学用語は全て、特段の定めがない限りは、本発明の属する当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施もしくは試験においては、本明細書に記載のものと類似または同等のどのような方法や材料も用いることができるが、好ましい方法、器具、および材料は本明細書に記載される。本明細書中に引用した刊行物の全ては、それらの刊行物中に報告されている方法論、試薬、および器具(それらは本発明との関連において用いることができるものである)を説明し開示する目的で、その全体を参照により本明細書中に組み入れる。本明細書中に記載のどのような事項も、本発明が先行発明によるそのような開示に先行する資格がないと認めたものとみなすべきではない。
【0024】
本発明の実施には、特に断らない限りは、従来の化学、生化学、分子生物学、細胞生物学、遺伝学、免疫学、および薬理学の方法を当業者の技術範囲内で用いる。そのような技法については、文献中に十分に説明されている。例えば、Gennaro, A.R.編(1990) Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing Co.; Colowick, S.ら編, Methods In Enzymology, Academic Press, Inc.; Handbook of Experimental Immunology, 第I-IV巻 (D.M. WeirとC.C. Blackwell編, 1986, Blackwell Scientific Publications); Maniatis, T. ら編(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 第I-III巻, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F. M.ら編(1999) Short Protocols in Molecular Biology, 第4版, John Wiley & Sons; Reamら編(1998) Molecular Biology Techniques: An Intensive Laboratory Course, Academic Press); PCR (Introduction to Biotechniques Series), 第2版 (NewtonとGraham編(1997), Springer Verlag)を参照されたい。
【0025】
本発明は一部には、結合組織成長因子(CTGF)が収縮期および拡張期血圧に極めて重要な役割を果たすとの知見に関する。
【0026】
本発明は血圧を低下させることに用いられる方法および作用剤に関する。具体的には、本発明は、抗CTGF剤の投与によって、ヒトの被験体において収縮期と拡張期の血圧の双方が効果的に低下することを立証する。
【0027】
血圧を低下させるための、高血圧症を治療するための方法および作用剤、ならびに血圧上昇もしくは高血圧症に関連する疾患や合併症を治療するための、またはそのような疾患や合併症の発症を予防するための方法も提供される。
【0028】
本発明は、例えば血圧を低下させるための、高血圧症を治療するための方法および作用剤を提供するので、本発明の好ましい実施形態においては、本発明の方法及び作用剤は、血圧上昇、高血圧もしくは高血圧症である被験体、または血圧上昇、高血圧もしくは高血圧症を発症する危険性のある被験体において血圧を低下させるために用いられることを意図している。被験体がそのような被験体であるか否かの決定は、当業者が許容し用いている何らかの方法で行うことができる。例えば、収縮期血圧が120 mmHg未満であり、かつ拡張期血圧が80 mmHg未満であるようなヒトの被験体は、最適な血圧を有している被験体とみなすことができる。収縮期血圧が120から130 mmHgの間であるかまたは拡張期血圧が80から85 mmHgの間であるようなヒトの被験体は、正常な血圧を有しているとみなすことができる。収縮期血圧が130から139 mmHgの間であるかまたは拡張期血圧が85から89 mmHgの間であるようなヒトの被験体は、血圧が正常高値の被験体とみなすことができる。
【0029】
収縮期血圧が約140 mmHgを超えているかまたは拡張期血圧が約90 mmHgを超えているヒトの被験体は高血圧もしくは高血圧症の被験体とみなすことができる。さらに、ヒトの被験体は、軽度の高血圧症(ステージ1、収縮期血圧が140から159 mmHgの間;拡張期血圧が90から99 mmHgの間)、中度の高血圧症(ステージ2、収縮期血圧が160から179 mmHgの間;拡張期血圧が100から109 mmHgの間)、重度の高血圧症(ステージ3、収縮期血圧が180から209 mmHgの間;拡張期血圧が110から119 mmHgの間)、または極めて重度の高血圧症(ステージ4、収縮期血圧が210 mmHg超;拡張期血圧が120 mmHg超)であるとみなすことができる。
【0030】
従って、特定の実施形態においては、本発明の方法及び作用剤を用いた治療に適した好ましいヒトの被験体は、正常高値血圧、軽度の高血圧症、中度の高血圧症、重度の高血圧症、または極めて重度の高血圧症の被験体である。
【0031】
他の実施形態においては、好ましいヒトの被験体は、正常高値血圧、軽度の高血圧症、中度の高血圧症、重度の高血圧症、または極めて重度の高血圧症を発症する危険性のある被験体である。危険性のある被験体は、例えば、血圧上昇もしくは高血圧または高血圧症の発症の危険性の増加と関連していることが知られている種々の因子のうちの1項目以上を評価することによって同定することができる。そのような危険因子としては、例えば、高血圧の家族歴、糖尿病、肥満、特定の民族的もしくは人種的な遺伝形質、ほとんど運動をしない生活習慣、年齢、飲酒、喫煙、カフェインの摂取、食事、ナトリウム感受性および塩類の摂取、腎疾患および腎機能不全、睡眠無呼吸、妊娠、肝硬変、クッシング病、特定の薬剤、情緒的因子、ストレスなどが挙げられる。特定の態様においては、危険性のある被験体は、1種類以上の血圧薬物による治療を受けたことがある、または現在受けている被験体である。そのような血圧薬物としては、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、ベナゼプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル)、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(例えば、ロサルタン)、β-ブロッカー(例えば、酒石酸メトプロロール、ベタキソロール、バルサルタン)、利尿剤(例えばヒドロクロロチアジド)、血管拡張剤(例えば、硝酸イソソルビド)、α-ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、およびスタチンが含まれる。本発明では、特定の態様において、危険性のある被験体が、血圧上昇がない被験体、例えば、正常もしくは正常血圧よりもむしろ低い被験体、例えば、収縮期血圧が120 mmHg以下、もしくは拡張期血圧が80 mmHg以下である被験体、であり得ることを具体的に意図する。
【0032】
血圧上昇および高血圧症は糖尿病に一般的な合併症である。従って、本発明の特定の実施形態においては、対象の被験体は、糖尿病に罹患しているかもしくは罹患する危険性がある、または糖尿病合併症に罹患しているかもしくは罹患する危険性がある被験体であることが、具体的に意図されている。特定の実施形態においては、糖尿病は1型糖尿病または2型糖尿病である。血圧上昇および高血圧症は、腎疾患および様々な腎症(糖尿病性腎症を含む)に関連することが非常に多い。従って本発明の種々の実施形態においては、対象の被験体は、腎疾患または腎症、特に糖尿病性腎症を患う被験体である。
【0033】
本発明は、血圧を低下させるか、または高血圧症を治療もしくは予防する必要のある被験体において、血圧を低下させる、または高血圧症を治療もしくは予防する方法であって、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって被験体の血圧を低下させるかまたは高血圧症を治療もしくは予防することを含む方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明の方法および作用剤は収縮期血圧を低下させる。他の実施形態においては、本発明の方法および作用剤は拡張期血圧を低下させる。好ましい実施形態においては、本発明の方法および作用剤によって収縮期血圧と拡張期血圧の双方が低下する。
【0034】
平均動脈圧(MAP)および脈圧を低下させる方法も本発明に包含される。平均動脈圧は次の式に従って求めることができる:MAP=[2/3 (収縮期血圧−拡張期血圧)+拡張期血圧]。脈圧は次の式に従って求めることができる:パルス圧=(収縮期血圧−拡張期血圧)。1態様においては、本発明は、平均動脈圧を低下させることを必要としている被験体の平均動脈圧を低下させる方法であって、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該被験体の平均動脈圧を低下させることを含む方法を提供する。別の態様においては、本発明はまた、脈圧を低下させることを必要としている被験体の脈圧を低下させる方法であって、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該被験体の脈圧を低下させることを含む方法を提供する。
【0035】
本態性高血圧症(原発性高血圧症または特発性高血圧症としても知られている)は高血圧症の全症例の約90%を占めている。本態性高血圧症の原因は不明であるが、おそらく心臓、腎臓、血管、神経、およびホルモンを含む主要臓器や身体系における種々の合併症や異常が関連している。二次性高血圧症は高血圧症の症例の約5%を占めるが、高血圧症は別の基礎症状、例えば、腎疾患(腎性高血圧症)、副腎疾患(内分泌性高血圧症または副腎性高血圧症)、甲状腺疾患、異常血管、子癇前症、睡眠無呼吸、末端肥大症、高カルシウム血症、経口避妊薬などから生ずる。収縮期高血圧は動脈硬化症に随伴するが、これは収縮期血圧が160 mmHgを超えるが拡張期血圧は正常な場合に生じる。妊娠によって誘発される高血圧症は、妊娠期間中に血圧が正常値よりも15 mmHgを超えて増加する場合に生じる。本発明は、本態性高血圧症、二次性高血圧症、収縮期高血圧症、および妊娠が誘発する高血圧症を治療するかまたは軽減するための方法および作用剤を包含する。
【0036】
種々の態様において、本発明は、血圧上昇もしくは高血圧症を発症しているか、または発症する危険性のある被験体において、血圧上昇もしくは高血圧症に関連する疾患を治療または予防するための方法であって、該被験体に抗CTGF剤を投与し、それによって該疾患を治療することを含む方法を提供する。抗CTGF剤はCTGFの活性および/もしくは発現を阻害する任意の作用剤である。血圧上昇もしくは高血圧症を発症しているか、または発症する危険性のある被験体において、血圧上昇もしくは高血圧症に関連する疾患の進行もしくは重症度を低減させるための方法であって、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該疾患の進行もしくは重症度を低減させることを含む方法も提供される。
【0037】
特定の実施形態においては、血圧上昇もしくは高血圧症に関連する疾患は、卒中であるかもしくは卒中となる危険性である。別の実施形態においては、前記疾患は心臓血管疾患であることができる。そのような疾患としては、心臓疾患、例えば、心筋梗塞、うっ血性心不全、心肥大、冠状動脈疾患、不整脈、アテローム性硬化症、動脈硬化症などが含まれる。他の実施形態においては、前記疾患は腎疾患である。そのような疾患としては、糖尿病性腎症、網膜症、骨ミネラル濃度の喪失、性的機能不全、メタボリック症候群などが含まれる。
【0038】
1態様においては、本発明は、血圧上昇、高血圧もしくは高血圧症を発症している、または血圧上昇、高血圧もしくは高血圧症を発症する危険性のある被験体において、血管への損傷もしくは血管の機能不全を低減させるかもしくは予防するための方法であって、被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該被験体の血管への損傷もしくは血管の機能不全を低減させるかもしくは予防することを含む方法を意図する。様々な態様においては、血管は、大血管の血管、例えば、大動脈、冠状動脈、頸動脈、脳血管の動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈などの主要な血管であることができるし、または小血管、例えば網膜細動脈、糸球体細動脈、神経脈管、心臓の細動脈、ならびに眼、腎臓、心臓および中枢神経系及び末梢神経系に付随する毛細血管床であることができる。
【0039】
他の態様においては、本発明は、血圧上昇、高血圧もしくは高血圧症を発症している、または血圧上昇、高血圧もしくは高血圧症を発症する危険性のある被験体における、組織および器官への損傷もしくは組織および器官の機能不全を低減もしくは予防する方法であって、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該被験体における組織および器官への損傷もしくは組織および器官の機能不全を低減もしくは予防することを含む方法を意図する。様々な態様においては、組織および器官として、心臓、腎臓、眼、血管、脳、中枢神経系、末梢神経系、骨などが含まれる。
【0040】
本明細書に記載の方法の好ましい実施形態においては、被験体はヒトの被験体である。
【0041】
アンジオテンシンIIは心臓血管系の多くの側面を調節し、I型アンジオテンシンII受容体は、アンジオテンシンIIの様々な心臓血管系作用の調節に関連している(Murphyら(1991) Nature 351:233-236)。I型アンジオテンシンII受容体は主として血管系の平滑筋細胞中で発現され、血管抵抗の調節と血圧に関連している。従ってI型アンジオテンシンII受容体は、現在用いられている多数の抗高血圧療法の標的とされている。I型アンジオテンシンII受容体をブロックすることによって、心筋梗塞およびうっ血性心不全後に左心室機能不全のみられる患者、特に腎機能不全のある2型糖尿病の被験体および高リスクの高血圧症の患者において、死亡率および罹患率のエンドポイントを低減させるという臨床的利点がもたらされる(例えば、de la Sierra(2006) Cardiovasc. Hematol. Agents Med. Chem. 4:67-73を参照)。したがって、I型アンジオテンシンII受容体の発現が低下すれば、糖尿病の心臓血管系合併症を患う患者の死亡率および罹患率を低下させる可能性がある。
【0042】
本発明はさらに、被験体の血圧増加と関連する遺伝子の発現をモジュレートする方法であって、該被験体に有効量の抗CTGF剤を投与し、それによって該被験体の該遺伝子の発現をモジュレートすることを含む方法を包含する。特定の実施形態においては、本発明の方法は、血圧増加と関連する遺伝子の発現を低減させる。1実施形態においては、前記遺伝子はI型アンジオテンシンII受容体をコードし、この遺伝子の発現を低減させる方法が提供される。
【0043】
抗CTGF剤
本発明書に記載の方法のいずれにおいても、抗CTGF剤が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、または小分子;例えば、CTGFと結合する抗体、アンチセンス分子、siRNA、小分子の化合物などであり得ることが特に意図される。特に、本発明は、CTGFの阻害を、CTGFの発現および活性をモジュレートする(例えば、阻害するもしくは低減する)、当該分野で周知の手段のいずれかによって行うことができることを意図している。本発明では、CTGFをコードする遺伝子の発現を阻害する、CTGFの産生を阻害する、またはCTGFの活性を阻害する方法を意図してはいるが、抗CTGF剤、例えば、CTGFに対するヒトモノクローナル抗体の使用を特に意図している。
【0044】
本発明の方法で用いる例示的な抗体については、例えば、米国特許第5,408,040号;
国際公開No. WO 99/07407;国際公開No. WO 99/33878;および国際公開No. WO 00/35936に記載されている。本発明の方法に用いる例示的な抗体については国際公開No. WO 2004/108764に記載されており、これはその全体を参照により本明細書中に組み入れる。それらの抗体、またはそのフラグメントは当業者には既知の種々の方法で投与することができる。例えば、抗体は静脈内、腹腔内、または皮下に注射されることが多い。
【0045】
CTGFの発現および/もしくは活性の小分子の阻害剤も既に報告されている。例えば、国際公開No. WO 96/38172は、コレラ毒素や8Br-cAMPなどのcAMPのモジュレーターをCTGF発現の阻害剤として同定している。従って、例えば、イロプロストなどのプロスタグランジンおよび/もしくはプロスタサイクリン類似体(例えば、国際公開No. WO 00/02450;Ricuperoら(1999) Am. J. Physiol. 277:L1165-1171;またErtlら(1992) Am. Rev. Respir. Dis. 145:A19を参照)、ならびに潜在的なホスホジエステラーゼIV阻害剤(例えば、Kohyamaら(2002) Am. J.Respir. Cell Mol. Biol. 26:694-701を参照)として同定された化合物を、CTGFの発現をモジュレートするために用いることができる。また、セリン/トレオニンマイトジェン活性化プロテインキナーゼ、特にサイクリン依存性キナーゼであるp38、例えばCDK2、およびグリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)-3も、CTGF発現の減少に関連している(例えば、Matsuokaら(2002) Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 283:L103-L112;Yosimichiら(2001) Eur. J. Biochem. 268:6058-6065;国際公開No. WO 01/38532;および国際公開No. WO 03/092584を参照)。それらの化合物は当業界で確立された方法に従って製剤化し投与することができる。
【0046】
さらに、小分子干渉リボ核酸(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、およびアンチセンス配列を含むポリヌクレオチドを、本発明の方法においてCTGFの発現および/もしくは産生を阻害するために用いることができる(例えば、Kondoら(2000) Biochem. Biophys.Res. Commun. 278:119-124を参照)。そのような技法は当業者にはよく知られている。CTGFの発現を標的としたアンチセンス構築物は記載されており、種々の細胞タイプにおいてCTGFの発現を低下させるために用いられている(例えば、国際公開No. WO 96/38172;国際公開No. WO 00/27868;国際公開No. WO 00/35936;国際公開No. WO 03/053340;Kothapalliら(1997) Cell Growth Differ. 8(1):61-68;Shimoら(1998) J. Biochem (Tokyo) 124(1):130-140;およびUchioら(2004)Wound Repair Regen. 12:60-66を参照)。そのようなアンチセンス構築物はCTGFの発現の低減のために用い、それによって、例えば、血圧上昇または高血圧症などの、CTGFに関連する病理学的プロセスを改善または予防することができる。そのような構築物は、細胞特異的または組織特異的な発現、および構成的または誘導的発現のための、適切なベクターおよび発現レギュレーターを用いて設計することができる。そのような遺伝子構築物は当業界で確立されている方法に従って製剤化し投与することができる。
【0047】
従って、本発明の特定の実施形態においては、抗CTGF剤はCTGFに対する抗体である。特定の実施形態においては、抗体はCTGFに対するモノクローナル抗体である。特定の実施形態においては、抗体はCTGFに対するヒト抗体またはヒト化抗体である。特定の実施形態においては、抗体はCLN-1であり、それについては国際公開No. WO 2004/108764に記載されている。別の実施形態においては、前記薬剤は小分子である。別の実施形態においては、前記薬剤は核酸である。別の実施形態においては、前記核酸は、環状ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドからなる群から選択されたものである。特定の実施形態においては、前記薬剤はアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAである。
【0048】
本発明は、本発明の方法を他の治療法と組み合わせて用いることを意図する。1実施形態においては、この方法は、例えば、特定の病理学的イベントに対しての治療効果をさらに増強するために、別の療法と組み合わせて用いられる。それら2種類の治療法は同時にまたは順次、例えば治療の時間経過の間もしくは疾患の進行および寛解後に、投与することができる。別の実施形態においては、この方法は、作用様式が類似のまたは異なる別の治療法、例えばアンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体ブロッカー、スタチンなどと組み合わせて用いられる。血圧上昇、高血圧または高血圧症、ならびにそれらに関連する疾患や合併症を治療するための現在の治療的アプローチは、当業者には知られており、例えば、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体ブロッカー、β-ブロッカー、α-ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、利尿剤、血管拡張剤などが挙げられる。これらの治療用剤のいずれかと本発明の方法および組成物との併用を特に意図している。
【0049】
医薬製剤および投与経路
本発明の組成物は、直接的に、または、当業界ではよく知られている賦形剤を含む医薬組成物において送達することができる。本発明の治療方法は、高血圧または高血圧症を患うかまたはその危険性がある被験体に本発明の化合物の有効量を投与することを含むことができる。好ましい実施形態においては、前記被験体は哺乳類の被験体であり、最も好ましい実施形態においては、該被験体はヒトの被験体である。
【0050】
化合物または薬剤の有効量、例えば投与量は、慣用の実験によって容易に決定することができ、同様にして有効かつ便利な投与経路および適切な製剤を決定することができる。種々の製剤とドラッグデリバリーシステムが当業界で利用可能である(例えば、Gennaro編(2000) Remington's Pharmaceutical Sciences, 上述;および、Hardman, Limbird, とGilman編(2001) The Pharmacological Basis of Therapeutics, 上述を参照)。
【0051】
適切な投与経路としては、例えば、経口、直腸、局所、経鼻、肺、眼内、腸内、および非経口投与を挙げることができる。非経口投与の主な経路としては、静脈内、筋肉内、および皮下投与が含まれる。投与の第2経路としては、腹腔内、動脈内、関節内、心臓内、嚢内、皮内、病巣内、眼内、胸膜内、髄腔内、子宮内、脳室内への投与が含まれる。薬剤の物理的、化学的、および生物学的性質と共に、治療されることとなる適応症から、用いられるべき製剤のタイプおよび投与経路、ならびに局所または全身送達が好ましいかが決定される。
【0052】
本発明の化合物の医薬剤型は、即時放出、制御放出、持続放出、または標的ドラッグデリバリーシステムで提供されうる。一般的に用いられる剤型としては、例えば、溶液および懸濁液、(マイクロ)エマルジョン、軟膏、ゲルおよびパッチ、リポソーム、錠剤、糖衣錠、軟カプセルもしくは硬カプセル、坐剤、腔坐剤、インプラント、非晶質もしくは結晶性粉末剤、エアロゾル、ならびに凍結乾燥製剤が含まれる。用いられる投与経路によっては、薬剤の適用もしくは投与に特別な器具が必要なことがある。そのような器具としては、例えば、注射器および針、吸入器、ポンプ、ペン型注射器、アプリケーター、または特別なフラスコなどが挙げられる。医薬剤型は、薬剤、賦形剤、および容器/密封系から構成されることが多い。1種または複数の賦形剤(不活性成分とも呼ばれるが)を本発明の化合物に添加して、薬剤の製造、安定性、投与、および安全性を改善もしくは容易にすることができ、また、所望の薬剤放出プロフィールを達成するための手段を提供することができる。従って、薬剤に添加されるべき賦形剤のタイプは、種々の因子、例えば、薬剤の物理的および化学的性質、投与経路、および製造方法などに左右されうる。製薬上許容される賦形剤は当業界で入手可能であり、そのような賦形剤として種々の薬局方にリストアップされているものが挙げられる(例えば、USP、JP、EP、およびBP、ならびにFDAのウェブページ(www.fda.gov.)、Inactive Ingredient Guide 1996, and Handbook of Pharmaceuitical Additives,Ash編、Synapse Information Resources, Inc. 2002を参照)。
【0053】
本発明の化合物の医薬剤型は当業界ではよく知られている方法、例えば、従来の混合、ふるい、溶解、融解、顆粒化、糖衣錠化、錠剤化、懸濁、押出加工、噴霧乾燥、微粒子化、乳化、(ナノ/マイクロ)カプセル化、エントラッピング(entrapping)、または凍結乾燥処理などによって製造することができる。上述のとおり、本発明の組成物には、活性分子の医薬用途用の調製物への加工を容易にする1種以上の生理学的に許容される不活性成分を含有させることができる。
【0054】
適切な製剤は所望の投与経路に左右される。静脈注射に関しては、例えば、組成物を、必要であれば生理学的に共存しうるバッファー(例えば製剤のpHを調製するためのリン酸塩、ヒスチジン、またはクエン酸、および例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張化剤を含む)を用いて、水溶液中に製剤化することができる。経粘膜または経鼻投与に関しては、場合により浸透促進剤を含む、半固形製剤、液状製剤、またはパッチが好ましいかもしれない。そのような浸透促進剤は当業界では広く知られている。経口投与に関しては、化合物を液状または固形の剤形に製剤化することができ、即時放出または制御放出/持続放出製剤として製剤化することができる。被験体が経口的に摂取するのに適した剤型としては、錠剤、丸剤、糖衣錠、硬および軟カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、および乳剤が挙げられる。化合物はまた、例えば従来から用いられている坐剤の基剤(例えば、カカオ脂またはその他のグリセリドなど)を含有した坐剤もしくは停留浣腸剤などの直腸用の組成物に製剤化することもできる。
【0055】
固形の経口剤型は賦形剤を用いて得ることができ、そのような賦形剤としては、充填剤、崩壊剤、結合剤(乾および湿)、溶解遅延剤、潤滑剤、流動促進剤、抗付着剤(antiadherant)、陽イオン交換樹脂、湿潤剤、抗酸化剤、保存剤、着色剤、および着香剤が含まれうる。これらの賦形剤は合成または天然のものとすることができる。そのような賦形剤の例としては、セルロース誘導体、クエン酸、リン酸ニカルシウム、ゼラチン、炭酸マグネシウム、ラウリル硫酸マグネシウム/ナトリウム、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ケイ酸塩、二酸化ケイ素、安息香酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン、ステアリン酸またはその塩、糖(すなわち、ブドウ糖、ショ糖、乳糖など)、タルク、トラガカントガム粘液、植物油(水素化したもの)、およびロウが含まれる。エタノールおよび水は顆粒化の助剤としての役割を果たすかもしれない。場合によっては、例えば風味遮断フィルム(taste-masking film)、胃酸抵抗性フィルム、または放出遅延フィルムなどで錠剤をコーティングすることが望ましい。天然および合成ポリマーを、着色剤、糖、および有機溶剤もしくは水と組み合わせて、錠剤のコーティングに用いられることが多く、その結果、糖衣錠が得られる。錠剤よりもカプセル剤が好ましい場合には、薬剤の粉末、懸濁液、またはその溶液を、共存しうる硬カプセルまたは軟カプセルで送達することができる。
【0056】
1実施形態においては、本発明の化合物は、皮膚パッチ、半固形もしくは液体製剤、例えば、ゲル、(マイクロ)乳剤、軟膏、溶液、(ナノ/マイクロ)懸濁液、または発泡体を介して局所的に投与することができる。薬剤の皮膚および深部組織への浸透は、例えば、浸透促進剤を用いること;親油性、親水性、および両親媒性の賦形剤(水、有機溶媒、ロウ、油、合成および天然ポリマー、界面活性剤、乳化剤など)を適切に選択し組み合わせること;pHの調整によって;ならびに錯化剤の使用によって調節することができる。本発明の化合物の皮膚への浸透を調節するために、その他の技法、例えば、イオン導入を用いることもできる。例えば、全身的な暴露を最小限とする局所送達が望ましい状況では、経皮または局所投与が好ましいであろう。
【0057】
吸入での投与、または鼻腔への投与には、本発明に従って使用する化合物を、通常は噴射剤(例えば、メタンおよびエタン由来のハロゲン化炭素、二酸化炭素または他の適当な任意のガス)により、加圧パックまたはネブライザーから溶液、懸濁液、乳剤、または半固形エアロゾルの形態で送達することが好都合である。局所用のエアロゾルについては、ブタン、イソブテン、およびペンタンのような炭化水素が有用である。加圧エアロゾルの場合には、適切な投与ユニットは、一定量を送達するためのバルブを備えることによって定めることができる。吸入器または通気器で用いるためのカプセルやカートリッジ(例えばゼラチン製)を製剤化することができる。これらは通例、化合物と適切な粉末基剤、例えば乳糖もしくはデンプンなどとの混合粉体を含有している。
【0058】
注射による非経口投与用に製剤化された組成物は、通常は滅菌で、単回剤形、例えば、アンプル、シリンジ、ペン型注射器、または複数回投与用の容器で提供することができ、複数回用の場合は通常は保存剤を含有する。組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳剤としてそのような形態をとってもよく、バッファー、等張化剤、増粘剤、界面活性剤、懸濁剤および分散剤、抗酸化剤、生体適合性ポリマー、キレート剤、および保存剤などの製剤化用剤を含有させることもできる。注射部位に応じて、ビヒクルは、水、合成油もしくは植物油、および/または有機共溶剤を含むものとすることもできる。凍結乾燥製品または濃縮物などの場合、非経口製剤は投与前に溶解または希釈する。デポ製剤は、本発明の化合物の制御放出または持続放出を提供するが、そのような製剤は、ナノ/ミクロ粒子、またはナノ/ミクロもしくは微粒子化していない結晶の注射可能な懸濁液が含まれてもよい。当業界でよく知られたその他のものに加えて、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、またはそれらのコポリマーなどのポリマーは、制御放出性/持続放出性のマトリックスとして資することができる。その他のデポ送達システムは、切開が必要なインプラントおよびポンプの形態で提供することもできる。
【0059】
本発明の分子の静脈注射に適切な担体は当業界ではよく知られており、そのようなものとしては、イオン化化合物を形成するための塩基(例えば水酸化ナトリウムなど)、等張化剤としてショ糖もしくは塩化ナトリウムを含有している水をベースとした溶液、例えば、リン酸塩もしくはヒスチジンを含有するバッファーが含まれる。例えばポリエチレングリコールなどの共溶剤を添加することもできる。これらの水をベースとする系は本発明の化合物を溶解するのに効果的で、全身投与の際に毒性が低い。溶液系の各成分の比率は、溶解性や毒性の特性を失わせることなく、かなりの程度変えることができる。さらに、各成分そのものを変えることもできる。例えば、ポリソルベートまたはポロキサマーなどの低毒性の界面活性剤を用いることができ、同様にポリエチレングリコールまたはその他の共溶剤、ポリビニルピロリドンなどの生体適合性ポリマーを添加することができ、また、その他の糖やポリオールをブドウ糖の代替とすることができる。
【0060】
本発明の治療方法に有用な組成物に関し、最初に、当業界ではよく知られている種々の技法を用いて、治療上有効な投与量を推定することができる。動物試験で用いる最初の投与量は、細胞培養アッセイで確立された有効濃度に基づいたものとすることができる。ヒトの被験体に適切な投与量の範囲は、例えば、動物試験および細胞培養アッセイから得られたデータを用いて定めることができる。
【0061】
本発明の化合物、作用剤、または薬剤の治療上有効な投与量または量とは、被験体における症状の改善または生存の延長をもたらす化合物、作用剤、または薬剤の量または投与量を意味する。そのような分子の毒性および治療効果は、細胞培養または実験動物における標準的な薬理学的方法、例えば、LD50(集団の50%致死用量)やED50(集団の50%において治療上の有効な用量)を求めることによって、定めることができる。治療効果に対する毒性の用量比は治療係数であり、LD50/ED50の比で表すことができる。高い治療係数を示す作用剤が好ましい。
【0062】
有効量または治療上有効な量とは、研究者、獣医、医師、もしくは臨床医が求める組織、系、動物、もしくはヒトの生物学的もしくは医学的応答、例えば血管機能の改善、心機能の改善などを引き出す作用剤もしくは医薬組成物の量である。
【0063】
投与量は毒性がほとんど又は全くないED50の値を含む循環血液中の濃度範囲内であることが好ましい。投与量は、用いる剤形および/もしくは用いる投与経路によってこの範囲内で変化し得る。的確な製剤、投与経路、投与量、および投与間隔は、被験体の症状の特性を考慮して、当業界で既知の方法に従って選択すべきである。
【0064】
投与量および投与間隔は、所望の効果(例えば血管機能の改善、心機能の改善など)を達成するために十分な活性部分の血漿レベル、すなわち最小有効濃度(MEC)を提供するために、個々に調整することができる。MECは各成分で異なるが、例えばin vitroのデータや動物実験から推定することができる。MECの達成に必要な投与量は個人の特性および投与経路に左右される。局所投与または選択的取り込みの場合には、薬剤の有効局所濃度は血漿濃度とは関連しないこともありうる。
【0065】
投与される作用剤又は組成物の量は、様々な要因(治療を受ける被験体の性別、年齢、および体重、苦痛の重症度、投与様式、および処方医師の判断)によって左右され得る。
【0066】
本発明の組成物は、所望により、活性成分を含有している1以上の単位剤形を含んでいるパックまたはディスペンサー器具中で提供することもできる。そのようなパックまたは器具は、例えば、金属またはプラスチックホイル、例えばブリスターパックなど、またはバイアル瓶などにおいてガラスとゴム栓を具備してもよい。パックまたはディスペンサー器具には、投与のための説明書を添付することができる。共存しうる製薬担体中に製剤化した本発明の化合物を含んでなる組成物も、調製し、適切な容器中に入れ、適応症の治療用のものと表示することができる。
【0067】
本発明のこれらのおよび他の実施形態は、本明細書で開示した事項を参照すれば当業者であれば容易に考えつくものであろう。
【実施例】
【0068】
本発明は下記の実施例を参照することによってさらに理解されるであろうが、それらの実施例は単に本発明を例示するものであることを意図したものである。これらの実施例は本願請求項に係る発明を説明するためにのみ提示するものである。本発明は、例示した実施形態(それらは本発明の一態様の説明を意図する)によってその範囲が限定されるものではない。機能的に等価のどのような方法も本発明の範囲内にある。本明細書に記載のものに加えて本発明への種々の改変がなし得ることは、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかのものとなろう。そのような改変が添付の特許請求の範囲内にあることを意図している。
【0069】
実施例1:抗CTGF療法はヒトの血圧を低下させる
CTGFの血漿レベルは収縮期血圧と相関するとされてきた(Jaffaら(2005) American Society of Nephrology Annual Meeting Abstract, Journal of the American Society of Nephrology, November 2005)。抗CTGF抗体療法の血圧に及ぼす効果を下記のとおり調べた。1型糖尿病でかつ初期の腎症を患うヒト患者、または2型糖尿病でかつ初期の腎症を患うヒト患者を、非盲検的フェーズI試験に登録し、糖尿病性腎症の治療法についての抗CTGF抗体療法の効果を調べた。患者は本研究の抗CTGF療法の投与前に、担当医が処方した種々の組み合わせの血圧薬物を、予め最低1ヶ月間服薬していた。それらの血圧薬物としては、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、ベナゼプリル、フォシノプリル、リシノプリル、キナプリル)、アンジオテンシンII受容体ブロッカー(例えば、ロザルタン)、β-ブロッカー(例えば、酒石酸メトプロロール、ベタキソロール、バルサルタン)、利尿剤(例えばヒドロクロロチアジド)、および血管拡張剤(例えば、硝酸イソソルビド)が含まれた。患者は、本試験の間、これらの予め投与されていた血圧薬物を継続して用いた。
【0070】
患者には抗CTGF抗体(3 mg/kg)を静脈内注射により2週間毎に合計4回(すなわち、0日目、14日目、28日目、42日目)投与した。各患者の血圧は、最初の抗CTGF抗体注射の投与前の本研究の開始時(0日目)に測定し、抗CTGF抗体の最終投与(56日目)の2週間後に再度測定した。この試験の期間中、抗CTGF抗体の投与に関連する重篤な有害事象は全患者で認められなかった。
【0071】
下記の表1、2、および3に示すとおり、抗CTGF抗体の投与を受けた被験体では56日目に血圧の低下が認められた。特に、抗CTGF抗体の投与は、1型糖尿病と共に初期の腎症を患う被験体、または2型糖尿病と共に初期の腎症を患う被験体で、収縮期血圧(表1)、拡張期血圧(表2)、および平均動脈圧(表3)を低下させた。
【0072】
0日目の収縮期血圧と拡張期血圧の平均は、それぞれ133 mmHg、および71 mmHgであった。抗CTGF抗体の最終投与の2週間後には、平均収縮期血圧は120 mmHgであり、平均拡張期血圧は67 mmHgであった。これらの結果は、抗CTGF抗体の投与を受けたヒトの被験体では収縮期血圧が平均で13 mmHg低下し(収縮期血圧の9.7 %の低下)、拡張期血圧が平均で4 mmHg低下した(拡張期血圧の5.5 %の低下)ことを示している。
【0073】
抗CTGF抗体の投与を受けたヒトの被験体では平均動脈圧(MAP)も低下した。特に、本明細書に記載の56日間の抗CTGF抗体投与プロトコール後に、113 mmHgから101 mmHg(10.6 %の低下に相当)へのMAP低下が認められた。
【0074】
抗CTGF抗体で治療を受けたヒトの被験体では、パルス圧(収縮期血圧−拡張期血圧)の低下も認められた(データは示されない)。
【表1】

【表2】

【表3】

【0075】
これらの結果は、ヒトの被験体において抗CTGF療法が血圧の低下に有効であったことを示している。特に、これらの結果は、抗CTGF抗体の投与がヒトの被験体で収縮期および拡張期の双方の血圧を低下させたことを示している。さらに、本研究の結果は、本発明の方法および化合物が血圧低下、および1型糖尿病または2型糖尿病に関連する高血圧症の治療に有用であり、また腎疾患に関連する血圧または高血圧の低下に有用であることを示している。
【0076】
実施例2:抗CTGF療法は糖尿病の動物モデルにおいて血圧を低下させる
本発明の方法および作用剤は下記のとおり、糖尿病の動物モデルにおいて血圧を低下させる。Sprague Dawleyラットに0.1 M クエン酸緩衝(pH 4.1)ストレプトゾトシン(STZ)(65 mg/kg)を0日目に単回静脈投与して糖尿病を誘発させた。STZにより処置された動物において糖尿病誘発が成功したことは、2日目に絶食時血糖値の上昇(>250 mg/dL)で確認した。
【0077】
糖尿病および糖尿病に関連する疾患をSTZ注射後6週間それらの動物で進行させた。6週間後に、糖尿病ラットを次のとおり様々な治療群に分けた:対照ヒトIgG(10 mg/kg、腹腔内(IP)注射、週3回を6週間);抗CTGF抗体(CLN-1、10 mg/kg、IP注射、週3回を6週間);カプトプリル(75 mg/kg/日、経口投与(PO)、飲用水中);ロサルタン(20 mg/kg/日、PO)。
【0078】
治療開始から6週間後に、非麻酔状態のラットでCODA System(Kent Scientific)(このシステムは、収縮期血圧、拡張期血圧、平均動脈圧、心拍数、血液量、および血流を含む6種類の血行力学的パラメーターを自動的に迅速多重測定する)を用いて血圧を測定した。ラットを保定器中に入れ、10分間順応させた。各ラットから10回の別々の測定結果を得て、最後の5回の測定の平均値をその後の分析に用いた。
【0079】
それぞれ図1、2、および3に示すとおり、糖尿病ラットでは糖尿病でない対照のラットと比較して糖尿病誘発の6週目および12週目で収縮期血圧、拡張期血圧、および平均動脈圧(MAP)が上昇した。これに対して、抗CTGF抗体で治療したラットで観察された血圧測定値は、健康な対照ラットで観察された値と同程度であった。
【0080】
これらの結果は、糖尿病ラットを抗CTGF抗体で治療すると血圧の病理学的上昇を防止し回復に向かわせることを示していた。さらに、抗CTGF抗体による治療は糖尿病に関連する高血圧症の回復に有効であった。従って、CTGFの阻害は、血圧の低下のため、および高血圧症の治療のための有効な治療アプローチを提供するものである。
【0081】
実施例3:抗CTGF療法はI型アンジオテンシンII受容体の遺伝子発現を低下させた(mRNA分析)
血圧調節に関連する遺伝子の発現に及ぼす抗CTGF療法の効果を次のとおり調べた。上記の実施例2に記載の糖尿病の動物モデルを用いた。各ラットから心臓と頸動脈の1部分を切除して、その後のmRNAの単離と分析のためにRNAlater中に置いた。RNAの単離とcDNAの合成は次のプロトコールを用いて行った。頸動脈組織をTRIzol(Invitrogen)に添加して、Mixer Mill 300(Qiagen)中で5 mmのステンレスビーズとともに8分間、25 Hzでホモジナイズした。そのホモジネートを製造者の使用説明書に従ってクロロホルムで抽出し、水性の上清を分離した。水性の上清を等量の70%エタノールと混合した後、RNeasy Miniスピンカラム(Qiagen)上にロードした。RNAは製造者の使用説明書に従って単離した。心臓の組織についても、RNA単離に心臓の左心室自由壁領域から得た切片のみを用いたことを除いては、同様のプロトコールで行った。総RNAからのcDNAの合成はOminiscript逆転写酵素(Qiagen)とランダムプライマーとを製造者の使用説明書に従って用いて行った。
【0082】
血圧調節に関連する種々の遺伝子の遺伝子発現レベルの分析は、TaqMan Universal PCR Maser Mix(Applied Biosystems)とTaqMan Assay-on-Demand アッセイ(Applied Biosystems)とを、Prism 7000システム装置(Applied Biosystems)において、製造者の使用説明書に従って用いた定量的PCRによって行った。
【0083】
次の遺伝子の遺伝子発現について調べた:I型アンジオテンシンII受容体(Rn02132799_s1)および18S リボソームRNA(Hs99999901_s1)。
【0084】
各PCRランは標準曲線と水のブランクを含んだ。I型アンジオテンシンII受容体の遺伝子発現データは、そのサンプルについての18SリボソームRNAの発現レベルに対して標準化した。
【0085】
図4に示すとおり、糖尿病誘発後6週目と12週目に、治療を受けなかった糖尿病ラットは、頸動脈においてI型アンジオテンシンII受容体のmRNAレベルが上昇した。抗CTGF抗体の投与を第6週から12週まで受けたラットでは、投与を受けなかった対照ラットと比較して、頸動脈におけるI型アンジオテンシンII受容体のmRNAレベルの低下を示した。このデータは抗CTGF療法が動脈におけるI型アンジオテンシンII受容体の遺伝子発現の低下に有効であることを示した。このデータは、抗CTGF療法が血圧の増加に関連する遺伝子発現の低下に有効であることを示した。
【0086】
本明細書で示したものに加えて、本発明の様々な改変を行いうることは、当業者であれば前述の説明から明らかであろう。そのような改変も添付の特許請求事項の範囲内のものであることを意図している。
【0087】
本明細書中に引用した参照文献は全て、その全体を参照により本明細書中に組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明の方法と作用剤とが、哺乳類の被験体において収縮期血圧を効果的に低下したことを示すデータである。
【図2】図2は、本発明の方法と作用剤とが、哺乳類の被験体において拡張期血圧を効果的に低下したことを示すデータである。
【図3】図3は、本発明の方法と作用剤とが、哺乳類の被験体において平均動脈圧を効果的に低下したことを示すデータである。
【図4】図4は、本発明の方法と作用剤とが、哺乳類の被験体においてI型アンギオテンシンII受容体遺伝子の発現を効果的に低下したことを示すデータである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の血圧を低下させる方法であって、結合組織成長因子(CTGF)を阻害する作用剤の有効量を該被験体に投与し、それによって該被験体の血圧を低下させることを含んでなる、前記方法。
【請求項2】
前記被験体がヒトの被験体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体が高血圧症を患っているかまたは患う危険性がある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体が糖尿病を患っているかまたは患う危険性がある、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記被験体が1種以上の血圧薬物による治療を以前に受けたことがあるかまたは現在受けている被験体である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記被験体における血圧上昇または高血圧症に関連する疾患を治療するかまたは予防するためのものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記被験体が腎疾患または腎症を患っている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記被験体が糖尿病性腎症を患っている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
CTGFを阻害する作用剤がポリペプチド、ポリヌクレオチド、または小分子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
CTGFを阻害する作用剤が、CTGFと結合する抗体、アンチセンス分子、siRNA、または小分子の化合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
CTGFを阻害する作用剤が、CTGFに対するヒトモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体がWO 2004/108764に記載のCLN-1である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
血圧上昇もしくは高血圧、高血圧症、またはそれらに関連する疾患および合併症を治療するための別の治療的アプローチと併用される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記治療的アプローチが、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体ブロッカー、β-ブロッカー、α-ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、利尿剤、および血管拡張剤からなる群から選択された治療剤の投与である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記被験体における血圧の上昇に関連する遺伝子の発現を低下させるためのものである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記遺伝子がI型アンジオテンシンII受容体である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−510056(P2009−510056A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533323(P2008−533323)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017507
【国際公開番号】WO2007/040636
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(501093088)ファイブローゲン、インコーポレーテッド (18)
【Fターム(参考)】