説明

血圧情報測定装置

【課題】被験者の負担を抑えつつ精度よく血圧情報を測定することのできる血圧情報測定装置を提供する。
【解決手段】血圧情報測定装置は、腕帯に曲率を検出するためのセンサが配備され、上腕に巻き回された状態における曲率が検出される。そして、予め記憶されている曲率と腕周との対応関係に基づいて、検出された曲率から腕周が算出される(S103)。血圧情報測定装置では、算出された腕周に基づいて血圧測定のためのパラメータが設定され(S105)、該パラメータを用いて血圧測定動作が実行される(S107)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血圧情報測定装置に関し、特に、空気袋を内包した測定帯(カフ)を測定部位に巻き付けて血圧、脈波等の血圧情報を測定するための測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧、脈波等の血圧情報を測定するため空気袋を内包した測定帯(カフ)を上腕等の測定部位に巻き付け、その内圧変化に重畳する脈波波形を抽出する。
【0003】
しかしながら、上腕等の測定部位の周長は生体間で異なるため、空気袋の容量が被験者ごとに異なることになる。そのため、被験者ごとにカフコンプライアンスが変化し、測定される脈波形状の精度が被験者ごとに異なってしまう。
【0004】
また、測定ごとに巻きつけ状態がばらつきことによって、脈波を安定して測定できない場合もある。
【0005】
このような問題に鑑み、特開2009−279197号公報(以下、特許文献1)や特開2009−279196号公報(以下、特許文献2)は、測定部位の周長を取得して、その情報に基づいて加圧・減圧をコントロールする技術を開示している。詳しくは、測定開始時に所定量の空気を空気袋に注入し、所定圧力までの到達時間で周長を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−279197号公報
【特許文献2】特開2009−279196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら特許文献に開示された技術においては測定が開始され、空気袋に空気が注入された後に周長が検出されるものであるため、検出のために空気袋による圧迫がすでになされて被験者に負担を強いる場合がある、という問題があった。
【0008】
また、測定開始後にいったん上記検出を行なうため、総測定時間が長くなり、被験者の負担が多くなる場合がある、という問題もあった。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、被験者の負担を抑えつつ精度よく血圧情報を測定することのできる血圧情報測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、血圧情報測定装置は、空気袋を内包し、被験者の測定部位に巻き付けるための測定帯と、測定開始の指示を受け付けるための操作手段と、空気袋に空気を注入/排出するための調整手段と、測定帯に設けられ、測定帯の曲率を検出するための第1のセンサと、空気袋の内圧を検出するための第2のセンサと、制御手段とを備え、制御手段は、曲率に基づいて測定帯が巻き付けられた測定部位の周長を算出する処理と、周長に基づいて、指示に応じて空気袋の内圧の制御を開始するよりも以前に条件設定を行なう処理と、空気袋の内圧の制御下での空気袋の内圧変化に基づいて被験者の血圧情報を算出する処理とを実行する。
【0011】
好ましくは、制御手段は、条件設定として、測定部位の周長に対応したパラメータを設定し、設定したパラメータを用いて血圧情報を算出する。
【0012】
好ましくは、血圧情報測定装置は被験者の情報を記憶するための記憶手段をさらに備え、操作手段は、測定対象の被験者を指定するための指示も受け付け、制御手段は、条件設定として、被験者の情報として記憶されている被験者の測定部位の周長と算出された周長とに基づいて、指定された被験者が測定帯が巻き付けられた被験者であるか否かの条件を設定する。
【0013】
好ましくは、血圧情報測定装置は、第1のセンサとして、測定帯のうちの測定部位に巻き付けられた際に中枢側となる測定帯の位置の曲率を検出するためのセンサと、末梢側となる測定帯の位置の曲率を検出するためのセンサとを備え、制御手段は、条件設定として、中枢側の曲率と末梢側の曲率とに基づいて測定帯の測定部位への装着状態の適否の判定結果を示す条件を設定する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、被験者の負担を抑えつつ、精度よく血圧情報を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態にかかる測定装置の構成の具体例を示す図および測定姿勢を示す概略図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる測定装置を用いた測定姿勢および腕帯の構成を説明するための図である。
【図3】腕帯の構成を説明するための図であって、図3(A)は、腕帯を測定部位に巻き回した際に測定部位側となる面から腕帯を見た図であり、図3(B)は、腕帯を測定部位に巻き回した際に測定部位の周方向に見た腕帯の断面図である。
【図4】センサの曲率と出力電圧との関係の具体例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態にかかる測定装置の機能ブロックを示す図である。
【図6】カーラの曲率と腕周との関係の具体例を示す図である。
【図7】センサの出力電圧と腕周との関係の具体例を示す図である。
【図8】測定された空気袋の内圧変化に応じた脈波信号の振幅値の変化を示す波形の具体例を示す図である。
【図9】第1の実施の形態にかかる測定装置での測定動作を示すフローチャートである。
【図10】変形例にかかる測定装置の構成の具体例を示すブロック図である。
【図11】測定部位周囲長による加圧速度調整の手順を説明する図である。
【図12】測定部位周囲長による減圧速度調整の手順を説明する図である。
【図13】第2の実施の形態にかかる測定装置の機能ブロックを示す図である。
【図14】第2の実施の形態にかかる測定装置での測定動作を示すフローチャートである。
【図15】第3の実施の形態にかかる腕帯の構成を説明するための図である。
【図16】第3の実施の形態にかかる腕帯の構成を説明するための図であって、図16(A)は、腕帯を測定部位に巻き回した際に測定部位側となる面から腕帯を見た図であり、図16(B)は、腕帯を測定部位に巻き回した際に測定部位の周方向に見た腕帯の断面図である。
【図17】第3の実施の形態にかかる測定装置の機能ブロックを示す図である。
【図18】第3の実施の形態にかかる測定装置での測定動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0017】
(装置の外観および測定姿勢)
図1は、実施の形態にかかる血圧情報測定装置(以下、測定装置と略する)1の構成の具体例を示す図および測定姿勢を示す概略図である。
【0018】
血圧情報には、血圧値、脈波波形、心拍数などと、それらより算出される、最高血圧値、最低血圧値、脈拍数、脈波振幅、AI(Augmentation Index:脈波増大係数)値、TR(Time of Reflection:出現時間差)値、動脈硬化度の指標などとが含まれる。
【0019】
図1を参照して、測定装置1は、基体2と、基体2にエアチューブ8で接続された、測定部位である上腕に装着するための腕帯9とを含む。基体2の正面には、測定結果を含む各種の情報を表示するための表示部4および測定装置1に対して各種の指示を与えるために操作される操作部3が配される。操作部3は、電源をON/OFFするために操作されるスイッチ31および測定の開始を指示するために操作されるスイッチ32を含む。
【0020】
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態にかかる測定装置1Aを用いた測定姿勢および腕帯9の構成を説明するための図である。
【0021】
図2に示されたように、測定装置1Aを用いて血圧情報である血圧を測定する際には、腕帯9を測定部位である上腕100に巻き回す。その状態でスイッチ32が押下されることで測定が開始される。
【0022】
(腕帯の構成)
さらに図2を参照して、腕帯9は外周を覆う布(外布と称する)の内に空気袋13を内包し、腕帯9が上腕100に巻き回されることで、外布を介して空気袋13が上腕100に巻き回される。
【0023】
腕帯9の内部であって、上腕100に巻き回したときに空気袋13の上腕100から遠い側にカーラ10が配される。カーラ10は、腕帯9が上腕100に巻き回されたときに空気袋13を上腕100に向けて付勢するための湾曲弾性板である。カーラ10を展開した状態においては帯形状を有する。カーラ10は、上腕にフィットするように、上腕の軸方向に延びる円筒形状に形成されており、環状に巻き回されることによって径方向に弾性変形可能に構成された可撓性の部材からなる。カーラ10は、十分な弾性力を発現するように、たとえばポリプロピレン(PP)等の樹脂部材にて形成されている。
【0024】
カーラ10と空気袋13との間には、後述する曲率を検出するためのセンサ5が備えられる。センサ5は、腕帯9の、測定部位の軸方向である上腕の腕の方向に対して中央または略中央に備えられる。
【0025】
図3は、腕帯9の構成を説明するための図であって、図3(A)は、腕帯9を測定部位に巻き回した際に測定部位側となる面から腕帯9を見た図であり、図3(B)は、腕帯9を測定部位に巻き回した際に測定部位の周方向に見た腕帯9の断面図である。
【0026】
図3(A)および図3(B)を参照して、腕帯9の内部であって、空気袋13とカーラ10との間に、曲率を検出するためのセンサ(曲率センサ、曲げセンサとも称される)5が配される。第1の実施の形態において、センサ5は、腕帯9を測定部位に巻き回した際の測定部位の周方向および軸方向に略中央の位置に配され、周方向の曲率を検出する。
【0027】
図4は、センサ5の曲率と出力電圧との関係の具体例を示す図である。図4を参照して、センサ5は、自身の曲率に応じた電圧の信号を出力する。図4に示されるように、一例として、センサ5は、自身の曲率に比例した電圧の信号を出力する。
【0028】
(測定装置の構成)
図5は、第1の実施の形態にかかる測定装置1Aの機能ブロックを示す図である。図5を参照して、腕帯9に内包される空気袋13は、エアチューブ8で、エアポンプ21、排気弁22、および圧力センサ23に接続される。
【0029】
エアポンプ21は駆動回路26に接続され、駆動回路26によって駆動されて空気袋13に圧縮気体を送り込む。
【0030】
排気弁22は駆動回路27に接続され、駆動回路27によって駆動されて開閉する。排気弁22が閉塞されることで、空気袋13およびエアチューブ8で閉空間が構成され、空気袋13内の圧力が維持される。排気弁22が開放されることで該閉空間が開放されて、空気袋13内の空気が排出される。
【0031】
圧力センサ23は、上記閉空間内の圧力を検出することで空気袋13内の圧力を検出し、その検出値に応じた信号を増幅器28に対して出力する。増幅器28は、圧力センサ23から出力される信号を増幅し、A/D変換器29に出力する。A/D変換器29は、増幅器28から出力されたアナログ信号をデジタル化する。
【0032】
駆動回路26、駆動回路27、およびA/D変換器29にはCPU(Central Processing Unit)40が接続される。さらに、CPU40には、操作部3、表示部4、およびメモリ41が接続される。その他、腕帯9が表示装置を備える場合にはCPU40に該表示装置が接続される。また、音声を出力する機能を備える場合には、CPU40に音声出力部が接続される。
【0033】
曲率を検出するためのセンサ5には検出回路51が接続され、検出回路51によってセンサ5からの信号に基づいて曲率が検出される。具体的に、検出回路51は図4に示される関係を記憶しておき、センサ5から入力された信号の電圧から曲率を算出する。検出回路51はさらにCPU40に接続されて、算出された曲率を示す信号はCPU40に入力される。
【0034】
メモリ41は、測定結果やCPU40で実行されるプログラムを記憶する。CPU40は、操作部3から入力された操作信号に基づいてメモリ41に記憶されるプログラムを実行することで制御信号を生成し、駆動回路26および駆動回路27に出力する。駆動回路26および駆動回路27はCPU40からの制御信号に従って、各々、エアポンプ21および排気弁22を駆動させる。また、CPU40は、A/D変換器29からデジタル化された圧力センサ23での検出値を取得し、測定結果としてメモリ41の所定領域に格納する。また、表示部4に表示させるための処理を行ない、表示部4に表示させるための制御信号を出力する。
【0035】
CPU40は、周長を算出するための機能である周長算出部401、条件設定を行なうための機能である設定部402、および血圧情報としての血圧値を算出するための機能である血圧算出部403を含む。これらは、CPU40が操作部3から入力される操作信号に基づいてメモリ41に記憶されている所定のプログラムを実行することで、CPU40に形成される。
【0036】
周長算出部401は検出回路51からの信号を受け付けて、腕帯9が巻き回された部位の曲率を取得する。図6は、カーラ10の曲率と腕周との関係の具体例を示す図である。周長算出部401は予め図6に示される関係を記憶しておき、検出回路51からの信号で表わされたカーラ10の曲率から腕周を算出する。なお、図6の関係は一例であって、測定部位である上腕を正円と見なしてカーラ10の曲率を換算したものである。
【0037】
なお、図4の関係と図6の関係から、センサ5の出力電圧と腕周との関係が得られる。図7は、センサ5の出力電圧と腕周との関係の具体例を示す図である。周長算出部401は、図6の関係に替えて図7の関係を予め記憶していてもよい。この場合、検出回路51が測定装置1Aに含まれず、センサ5からの信号は直接(あるいは図示しない増幅器で所定振幅まで増幅された後に)CPU40に入力されるように構成される。周長算出部401は図7の関係を用いて、センサ5からの信号から腕周を算出する。
【0038】
血圧算出部403はA/D変換器29から入力される空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出する。
【0039】
設定部402は、周長算出部401で算出された腕周に基づいて、条件設定として、血圧算出部403で血圧値を算出するために行なう演算において用いるパラメータを設定する。血圧算出部403での演算および具体的なパラメータについて説明する。
【0040】
図8は、測定された空気袋13の内圧変化に応じた脈波信号の振幅値の変化を示す波形の具体例を示す図である。血圧算出部403は、図8に示された波形の特徴量A,Bを用いて血圧値として最低血圧値および最高血圧値を算出する。具体的には、最高血圧値および最低血圧値それぞれは、図8の脈波振幅の波形の脈波最大振幅値から所定割合の位置で検出できることが知られている。図8に従えば最低血圧値は脈波最大振幅×β%の位置における空気袋13の内圧Pcとして検出でき、最高血圧値は脈波最大振幅×α%の位置における空気袋13の内圧Pcとして検出することができる。
【0041】
設定部402は、算出された腕周に応じて脈波信号の振幅値の変化を示す波形の特徴量である変数αおよびβの値を決定し、血圧算出部403での演算に用いるパラメータとして設定する。これにより、測定部位の周囲長に関わらず精度よく血圧を測定できる。
【0042】
パラメータの他の例として補正係数が挙げられる。すなわち、設定部402は算出された腕周に応じてパラメータとして補正係数を設定し、血圧算出部403は、腕周に応じたパラメータの値を用いて算出結果を補正するようにしてもよい。たとえば血圧算出部403は、設定部402で設定された腕周に応じた値の比例係数などを用いて、重み付けを行ない算出結果を補正するようにしてもよい。
【0043】
(測定動作)
図9は、第1の実施の形態にかかる測定装置1Aでの測定動作を示すフローチャートである。図9のフローチャートに示される動作は、CPU40がメモリ41に記憶されている所定のプログラムを実行して図5の各機能を実現させることによって行なわれる。
【0044】
図9を参照して、始めに、ステップS101でCPU40は、図示されない操作部3に含まれる使用者を選択するためのスイッチからの操作信号に従って使用者の選択を受け付ける。CPU40は選択された使用者に応じて算出結果を格納するためのメモリ領域を設定したり、予め記憶されている当該使用者に関する情報に基づいて演算に用いるパラメータを設定したりする。
【0045】
次に、ステップS103でCPU40は、センサ5からの信号に従ってセンサ5の曲率、すなわち測定部位である上腕に巻き回された腕帯9の曲率を検出し、該曲率に応じて測定部位の周長を算出する。
【0046】
次に、ステップS105でPCU40は、ステップS103で得られた周長に応じて血圧値を算出するための演算に用いるパラメータを設定する。具体例としては、上述の変数αおよびβの値を決定して設定する。
【0047】
次に、ステップS107でCPU40は血圧測定動作を行ない、そのときの空気袋13の内圧変化とステップS105で設定されたパラメータとを用いて使用者の血圧値を算出する。血圧動作の具体例としては、ステップS107の動作が開始すると、予め設定された所定圧まで空気袋13の内圧を増加させ(加圧工程)、その後、空気袋13の内圧を減少させる(減圧工程)。測定装置1Aとしては、加圧工程での空気袋13の内圧変化から血圧値を算出するタイプであってもよいし、減圧工程での空気袋13の内圧変化から血圧値を算出するタイプであってもよい。
【0048】
測定装置1Aが前者のタイプの場合、CPU40は予め規定されている加圧速度で空気袋13の内圧を徐々に加圧し、そのときの空気袋13の内圧変化に重畳する脈圧から血圧値を算出する。そして、血圧値の算出が完了すると、CPU40は空気袋13を開放して急速に排気し、測定動作を終了する。
【0049】
測定装置1Aが後者のタイプの場合、CPU40は空気袋13の内圧を一般的な最高血圧値よりも高い値として予め規定されている内圧まで加圧し、その後、予め規定されている減圧速度で空気袋13の内圧を徐々に減圧する。そして、CPU40は、そのときの空気袋13の内圧変化に重畳する脈圧から血圧値を算出する。そして、血圧値の算出が完了すると、CPU40は空気袋13を開放して急速に排気し、測定動作を終了する。
【0050】
ステップS109でCPU40は、算出された最低血圧値および最高血圧値を測定結果として表示部4に表示するための処理を実行する。これにより、測定結果が表示部4に表示される。
【0051】
測定装置1Aの腕帯9に曲率を検出するためのセンサ5が配されることで、そのセンサ信号から周長を算出することができる。すなわち、容易な構成で測定部位の周長を得ることができる。それによって、上述のように演算に用いるパラメータを最適なパラメータに設定することができ、測定部位の周長に関わらず測定精度を向上させることができる。
【0052】
[変形例]
なお、上の例では、条件設定として、算出された測定部位の周囲長から血圧値を算出するための演算に用いるパラメータが設定されるものとしているが、条件設定として、算出された測定部位の周囲長から上記ステップS107での空気袋13の加圧制御または減圧制御の適正化に用いるパラメータが設定されてもよい。
【0053】
図10は、変形例にかかる測定装置1Aの構成の具体例を示すブロック図である。図10を参照して、この場合、CPU40は、A/D変換器29から入力される空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出するための血圧算出部403、設定部402での条件設定に基づいて駆動回路26、および駆動回路27を制御するための制御部404を含む。設定部402は、条件設定として制御部404での制御に用いるパラメータを設定する。制御部404での制御および具体的なパラメータについて説明する。
【0054】
(加圧工程測定タイプの場合)
測定装置1Aが血圧測定動作の空気袋13を加圧する工程で血圧値を算出する、上述の前者のタイプである場合、設定部402は、空気袋13の加圧制御に使用するパラメータを測定部位の周囲長に基づいて設定する。該パラメータとしては、たとえばエアポンプ21を駆動する電圧レベルを補正するためのパラメータが該当する。制御部404は、設定されたパラメータを用いて電圧レベルを補正し、補正後レベルの電圧をエアポンプ21に印加するよう駆動回路26に対して制御信号を出力する。これにより、測定部位周囲長にかかわらず最適な加圧制御が実現される。
【0055】
図11は、測定部位周囲長による加圧速度調整の手順を説明する図である。図11(A)および図11(B)を参照して、血圧測定動作における空気袋13の加圧時、エアポンプ21を駆動するために駆動回路26からエアポンプ21に供給される電圧のレベルを、測定部位周囲長にかかわらず一定とした場合、図11(A)のように破線で示す最適加圧速度(内圧上昇速度)と比較した場合に周囲長が大きい(腕が太い)場合は加圧速度が遅くなり、逆に周囲長が小さい(腕が細い)場合は加圧速度が速くなる。
【0056】
このように、同じレベルの電圧を供給してエアポンプ21を駆動した場合、測定部位の周囲長によって、血圧測定するための最適な加圧状態に至るまでの所要時間は異なるから、測定部位の周囲長により加圧期間の長さは異なる。これは空気袋13の内圧に重畳している脈圧を正確に検出できないことになり、また、被験者に過度のストレスを与えることになり正確な血圧測定を阻害する要因となり得る。
【0057】
そこで、加圧過程において空気袋13の内圧に重畳している脈圧を正確に検出できるようにし、また、被験者に過度のストレスが与えられないようにして血圧測定精度を向上させるには、算出した測定部位の周囲長に基づき加圧速度を調整する、すなわちエアポンプ21を駆動する電圧レベルを選択的に切替えることが必要となる。
【0058】
そのために変形例においては、血圧測定動作での加圧速度が図11(A)の破線で示されるような最適加圧速度となるように、設定部402は、算出した測定部位の周囲長に応じた調整パラメータの値である駆動電圧のレベル、または印加期間を決定し、制御部404での制御パラメータとして設定する。制御部404は、設定されたレベルまたは印加期間に従い駆動電圧をエアポンプ21に供給するように駆動回路26を制御する。この結果、測定部位の周囲長にかかわらず、加圧速度は図11(B)に示されるように最適加圧速度となり、空気袋13の内圧に重畳している脈圧を正確に検出でき、また、被験者に対する過度のストレスが与えられることが回避できて正確な血圧測定が可能となる。
【0059】
(減圧工程測定タイプの場合)
測定装置1Aが血圧測定動作の空気袋13を減圧する工程で血圧値を算出する、上述の後者のタイプである場合、設定部402は、空気袋13の減圧制御に使用するパラメータを測定部位の周囲長に基づいて設定する。該パラメータとしては、たとえば排気弁22を駆動する電圧レベルを補正するためのパラメータが該当する。制御部404は、設定されたパラメータを用いて電圧レベルを補正し、補正後レベルの電圧を排気弁22に印加するよう駆動回路27に対して制御信号を出力する。これにより、測定部位周囲長にかかわらず最適な減圧制御が実現される。
【0060】
図12は、測定部位周囲長による減圧速度調整の手順を説明する図である。図12(A)および図12(B)を参照して、血圧測定動作における空気袋13の減圧時、排気弁22を駆動するために駆動回路27から排気弁22に供給される電圧のレベルを、測定部位周囲長にかかわらず一定とした場合、図12(A)のように破線で示す最適減圧速度(内圧下降速度)と比較した場合に周囲長が大きい(腕が太い)場合は減圧速度は遅くなり、逆に周囲長が小さい(腕が細い)場合は減圧速度は速くなる。
【0061】
このように、同じレベルの電圧を供給して排気弁22を開くように駆動した場合、測定部位の周囲長によって、血圧測定するための最適な減圧状態(微速排気状態)を維持する期間が異なるから、測定部位の周囲長により減圧期間の長さは異なる。これは、空気袋13の内圧に重畳している脈圧を正確に検出できないことになり、また、被験者に過度のストレスを与えることになり正確な血圧測定を阻害する要因となり得る。
【0062】
そこで、減圧過程において空気袋13の内圧に重畳している脈波信号を正確に検出できるようにし、また、被験者に過度のストレスが与えられないようにして血圧測定精度を向上させるには、取得した測定部位の周囲長に基づき減圧速度を調整する、すなわち調整パラメータの値である排気弁22を駆動する電圧レベルまたは電圧印加期間を選択的に切替えることが必要となる。
【0063】
そのために変形例においては、血圧測定動作での減圧速度が図12(A)の破線で示されるような最適減圧速度となるように、設定部402は、算出した測定部位の周囲長に応じた調整パラメータの値である駆動電圧のレベル、または印加期間を決定し、制御部404での制御パラメータとして設定する。制御部404は、設定されたレベルまたは印加期間に従い駆動電圧を排気弁22に供給するように駆動回路27を制御する。この結果、測定部の位周囲長にかかわらず、減圧速度は図12(B)に示されるように最適減圧速度となり、空気袋13の内圧に重畳している脈圧を正確に検出でき、また、被験者に対する過度のストレスが与えられることが回避できて正確な血圧測定が可能となる。
【0064】
つまり変形例にかかる測定装置1Aでは、血圧を算出するために空気袋13の内圧を検出した測定部位の周囲長に応じた調整パラメータ値に従い調整する。これにより、測定部位の周囲長による最適な加圧制御または減圧制御が可能となり、血圧算出の精度向上につながる。
【0065】
なお、第1の実施の形態にかかる測定装置1Aが変形例にかかる機能を併せて備えてもよい。すなわち、測定装置1AのCPU40は周長算出部401、設定部402、血圧算出部403、および制御部404を含み、周長算出部401で算出された周長を用いて設定部402が血圧算出部403での演算で用いるパラメータを設定すると共に制御部404での制御パラメータを設定するようにしてもよい。
【0066】
[第2の実施の形態]
測定装置1Aのメモリ41には、予め、性別や年齢などの被験者に関する情報が被験者情報として登録されている。そして、血圧情報として動脈硬化度の指標などを算出する際には、その情報がパラメータとして用いられる。測定装置1Aのメモリ41には、予め複数の被験者情報が登録されている場合がある。そのため、上記ステップS101で実際の使用者と異なる使用者が選択されると誤った被験者情報が用いられることになり、精度よく血圧情報が算出されない。
【0067】
そこで、第2の実施の形態にかかる測定装置1Bでは、選択された使用者と実際の使用者とが一致するか否かを判断する。
【0068】
(測定装置の構成)
図13は、第2の実施の形態にかかる測定装置1Bの機能ブロックを示す図である。図13に表わされる測定装置1Bの機能ブロックは、図5に表わされた測定装置1Aの機能ブロックと概ね同じであるが、CPU40の実現する機能が異なる。すなわち図13を参照して、測定装置1BのCPU40は、A/D変換器29から入力される空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出するための血圧算出部403、周長を算出するための機能である周長算出部401、算出された周長を用いて比較処理を行なって条件設定を行なうための機能である判断部405、および比較処理に基づいて駆動回路26および駆動回路27を制御するための機能である制御部404を含む。周長算出部401および制御部404は、測定装置1AのCPU40が実現する機能と同様である。
【0069】
測定装置1Bのメモリ41は、予め登録された被験者情報として当該被験者の測定部位(上腕)の周長を記憶する。判断部405は、操作部3からの操作信号の入力を受け付けて、該操作信号から選択された使用者を特定する。そして、メモリ41に記憶されている該使用者についての被験者情報から測定部位の周長を読み出し、周長算出部401で算出された周長と比較する。登録された被験者の周長と算出された周長とが一致する場合、またはその差がしきい値内である場合、選択された使用者と腕帯9が巻き回された被験者とが一致すると判断する。一方、登録された被験者の周長と算出された周長とが一致しない場合、またはその差がしきい値より大きい場合、選択された使用者と腕帯9が巻き回された被験者とが一致しないと判断する。そして、その結果を制御条件として設定し、制御部404に対して入力する。
【0070】
制御部404は、選択された使用者と腕帯9が巻き回された被験者とが一致するとの制御条件が設定された場合には使用者の選択が正確になされたものとして、メモリ41に予め記憶されているプログラムに従って駆動回路26および駆動回路27を制御する。一方、選択された使用者と腕帯9が巻き回された被験者とが一致しないとの制御条件が設定された場合には使用者の選択が誤っているものとして、血圧測定動作を実行しないように制御する。さらに、制御部404は、予め記憶されている、その旨を報知するためのメッセージを表示部4に表示させるための制御を実行する。
【0071】
(測定動作)
図14は、第2の実施の形態にかかる測定装置1Bでの測定動作を示すフローチャートである。図14のフローチャートに示される動作は、CPU40がメモリ41に記憶されている所定のプログラムを実行して図13の各機能を実現させることによって行なわれる。
【0072】
図14を参照して、始めに、ステップS201でCPU40は、図示されない操作部3に含まれる使用者を選択するためのスイッチからの操作信号に従って使用者の選択を受け付ける。CPU40は選択された使用者に応じて算出結果を格納するためのメモリ領域を設定したり、予め記憶されている当該使用者に関する情報に基づいて演算に用いるパラメータを設定したりする。測定装置1Bでは、ステップS203でCPU40は、選択された使用者である被験者情報としてメモリ41に記憶されている情報のうちから、当該被験者の腕周を読み出す。
【0073】
次に、ステップS205でCPU40は、センサ5からの信号に従ってセンサ5の曲率、すなわち測定部位である上腕に巻き回された腕帯9の曲率を検出し、該曲率に応じて測定部位の周長を算出する。ステップS203、S205の動作は、図9のステップS101、S103と同じである。
【0074】
CPU40は、メモリ41から読み出した当該被験者の腕周と、ステップS207で曲率から算出した周長とを比較し、これらが一致、またはその差分が予め記憶しているしきい値以内であるか否かを判断する。その結果、これらが一致すると判断された場合(ステップS207でYES)、ステップS209でCPU40は血圧測定動作を行ない、ステップS211でその結果を表示部4に表示させるための処理を実行する。ステップS209、S211の動作は図8のステップS107、S109と同じである。
【0075】
一方、上記判断の結果、メモリ41から読み出した当該被験者の腕周と、ステップS207で曲率から算出した周長とが一致しないと判断された場合(ステップS207でNO)、ステップS201で受け付けた使用者の選択が誤っているものとして、ステップS213でCPU40はその旨を報知するための画面を表示部4に表示させるための処理を実行する。そしてCPU40は、上記ステップS209での血圧測定動作およびステップS211でのその結果の表示のための処理を行なうことなく、一連の測定動作を終了する。
【0076】
測定装置1Bが腕帯9に設けられた曲率を検出するためのセンサ5を用いて使用者の選択が適切であるか否かを判断することによって、測定装置1Bでは、上記ステップS209での血圧測定動作が開始されるよりも以前に使用者の選択が適切であるか否かが判断されることになる。そして、その選択が誤っている場合には測定装置1Bでは血圧測定動作を行なうよりも以前にその旨を報知するため、血圧測定動作が開始されるよりも以前に使用者は選択をやり直すことができる。その結果、血圧測定動作が開始されてから選択の誤りが報知される場合と比較して、使用者の負担を軽減させることができる。また、早期に選択をやり直すことができるため、測定に要する時間を短縮させることができる。
【0077】
[変形例1]
なお、上の例では、検出された曲率から算出された周長と選択された使用者の被験者情報として記憶されている腕周とが一致していない場合にはその旨を報知し、血圧測定動作が行なわれないものとしている。
【0078】
しかしながら、CPU40は、上記ステップS213で報知した後にステップS209の血圧測定動作およびステップS211の表示を行なってもよい。この場合、好ましくはCPU40は、測定結果をメモリ41に記憶させない。
【0079】
このようにすることで、使用者は血圧測定を行なうことができるために利便性を損なうことなく、誤った使用者の情報がメモリ41に蓄積されることを防止することができる。
【0080】
[変形例2]
または、CPU40は、上記ステップS213で報知した後にメモリ41に登録されている被験者情報を走査し、算出された周長に一致する、または近い被験者情報を読み出して、当該被験者を特定し得る情報を表示部4に表示させるための処理を行なってもよい。
【0081】
このようにすることで、使用者の選択をやり直す場合に、素早く行なうことができ、利便性を損なうことがない。
【0082】
[変形例3]
または、測定装置1Bは使用者の選択を受け付けることなく、CPU40は上記ステップS203で検出された曲率から算出される周長に一致または近い被験者を特定し、該被験者に関する被験者情報を用いて血圧情報を算出し、対応する記憶領域に測定結果を記憶させるようにしてもよい。
【0083】
このようにすることで、使用者の選択を誤ることなく、自動的に使用者が選択されることになり、測定精度の向上と利便性の向上とを図ることができる。
【0084】
[変形例4]
また、上の例では、被験者情報としてメモリ41に予め当該被験者の腕周が記憶されているものとしている。しかしながら、被験者情報に腕周が含まれなくてもよい。
【0085】
この場合、好ましくはCPU40は、測定動作のたびに測定結果とともに検出された曲率から算出される周長をメモリ41に記憶させる。そして、上記ステップS201で使用者の選択を受け付けると、ステップS203でCPU40は当該使用者の測定結果とともにメモリ41に記憶されている周長を読み出して、今回の測定動作において検出された曲率から算出される周長と比較してもよい。この場合CPU40は、直近の測定結果に対応付けられている周長と比較してもよいし、所定期間の測定結果のそれぞれに対応付けられている周長の平均値と比較してもよい。
【0086】
このようにすることで、被験者情報として腕周を記憶させる必要がなく、測定精度の向上と利便性の向上とを図ることができる。
【0087】
[第3の実施の形態]
以上の例は、測定装置に含まれる腕帯9が図1に示されたように手動で巻き付けるものであるものとしているが、自動巻き付けタイプであっても同様である。
【0088】
しかしながら、図1に示されたような手動で巻き付けるものである場合、腕帯9には、測定部位の軸方向の上下方向との向きの関係が規定されている。なぜなら、腕帯9測定部位の軸方向の上下方向に逆向き装着されると腕帯9と基体2とを接続するエアチューブ8が曲がり、空気の行き来を阻害する可能性があるためである。
【0089】
また、腕帯9の測定部位の周方向との向きの関係を規定することで、圧力センサ23をできるだけ動脈直上とし、空気袋13に重畳する脈圧を検出しやすくしている。そのため、腕帯9測定部位の軸方向の上下方向に逆向き装着されると、圧力センサ23と測定部位の動脈との距離が離れてしまう可能性があり、空気袋13に重畳する脈圧が検出し難くなる可能性もあるためである。
【0090】
そこで、第3の実施の形態にかかる測定装置1Cでは、腕帯9の装着方向と測定部位の軸方向の上下方向とが予め規定した関係となっているか否かを判断する。
【0091】
(腕帯の構成)
図15は、第3の実施の形態にかかる腕帯9の構成を説明するための図である。図15を参照して、カーラ10と空気袋13との間には、曲率を検出するためのセンサが、測定部位の軸方向に沿って複数備えられる。ここでは、軸方向に中枢側から末梢側に向けて、センサ5X,5Y,5Zがその順に備えられる例が示されている。なお、後述する動作のためには、曲率を検出するためのセンサは、中枢側のセンサと末梢側のセンサとの少なくとも2つ備えられていればよい。
【0092】
図16は、第3の実施の形態にかかる腕帯9の構成を説明するための図であって、図16(A)は、腕帯9を測定部位に巻き回した際に測定部位側となる面から腕帯9を見た図であり、図16(B)は、腕帯9を測定部位に巻き回した際に測定部位の周方向に見た腕帯9の断面図である。
【0093】
図16(A)および図16(B)を参照して、曲率を検出するための複数のセンサ5X,5Y,5Zは、軸方向に中枢側から末梢側に向けてその順に備えられる。これにより、中枢側のセンサ5Xは中枢側(以下、これをX側とも称する)の曲率に比例した電圧の信号を出力し、末梢側のセンサ5Zは中枢側(以下、これをZ側とも称する)の曲率に比例した電圧の信号を出力する。
【0094】
(測定装置の構成)
図17は、測定装置1Cの機能ブロックを示す図である。図17に表わされる測定装置1Cの機能ブロックは、図13に表わされた測定装置1Bの機能ブロックと概ね同じであるが、腕帯9に備えられるセンサとそれに関連する構成とが異なる。すなわち図17を参照して、測定装置1Cの腕帯9には、曲率を検出するためのセンサとしてセンサ5X,5Y,5Zの複数のセンサが設けられる。
【0095】
それぞれのセンサからの信号は検出回路51に入力され、検出回路51においてセンサ位置に対応した位置の曲率が検出されてCPU40に入力される。
【0096】
測定装置1CのCPU40は測定装置1BのCPU40と同様に、周長を算出するための機能である周長算出部401、A/D変換器29から入力される空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出するための血圧算出部403、算出された周長を用いて比較処理を行なって条件設定を行なうための機能である判断部405、および比較処理に基づいて駆動回路26および駆動回路27を制御するための機能である制御部404を含む。周長算出部401はセンサ位置に対応したそれぞれの位置の周長を算出し、判断部405はそれらを用いて腕帯9の装着方向が測定部位の軸方向に対して適切な方向であるか否かを判断する。具体的には、一般に人の上腕は中枢側の方が太く(周長が大きく)、末梢側の方が細い(周長が小さい)。そこで、判断部405は中枢側であるX側の周長と末梢側であるZ側の周長とを比較する。その結果、X側の周長の方がZ側の周長よりも大なる場合には、腕帯9の装着方向と測定部位の軸方向の向きとが一致しているものと判断する。逆に、X側の周長の方がZ側の周長よりも小なる場合には、腕帯9の装着方向が測定部位の軸方向の向きと一致していないと判断する。そして、その結果を制御条件として設定し、制御部404に対して入力する。
【0097】
制御部404は、その制御条件に応じて駆動回路26および駆動回路27を制御する。
(測定動作)
図18は、第3の実施の形態にかかる測定装置1Cでの測定動作を示すフローチャートである。図18のフローチャートに示される動作は、CPU40がメモリ41に記憶されている所定のプログラムを実行して図17の各機能を実現させることによって行なわれる。
【0098】
図18を参照して、始めに、ステップS301でCPU40は、図示されない操作部3に含まれる使用者を選択するためのスイッチからの操作信号に従って使用者の選択を受け付ける。CPU40は選択された使用者に応じて算出結果を格納するためのメモリ領域を設定したり、予め記憶されている当該使用者に関する情報に基づいて演算に用いるパラメータを設定したりする。
【0099】
次に、ステップS303,S305でCPU40は、最も中枢側のセンサであるセンサ5Xからの信号、および最も末梢側のセンサであるセンサ5Zからの信号のそれぞれに従って、曲率、すなわち測定部位のX側およびZ側のそれぞれの曲率を検出し、該曲率に応じて測定部位のX側およびZ側のそれぞれの周長を算出する。ステップS303、S305のそれぞれの動作は図8のステップS103と同じであり、その順は問わない。
【0100】
CPU40は、ステップS303で算出されたX側の周長と、ステップS305で算出されたZ側の周長とを比較する。その結果、X側の周長がZ側の周長よりも大なる場合(ステップS307でYES)、CPU40は腕帯9の装着方向と測定部位の軸方向の向きとが一致しているものと判断して、ステップS309で血圧測定動作を実行し、ステップS311でその結果を表示部4に表示させるための処理を実行する。
【0101】
一方、上記比較の結果、X側の周長がZ側の周長よりも小なる場合(ステップS307でNO)、CPU40は腕帯9の装着方向が測定部位の軸方向の向きと一致していないと判断して、ステップS313でCPU40はその旨を報知するための画面を表示部4に表示させるための処理を実行する。そしてCPU40は、上記ステップS309での血圧測定動作およびステップS311でのその結果の表示のための処理を行なうことなく、一連の測定動作を終了する。
【0102】
測定装置1Cが腕帯9に設けられた曲率を検出するためのセンサ5を用いて腕帯9の装着方向が測定部位の軸方向の向きに対して適切であるか否かを判断することによって、測定装置1Cでは、誤った向きで装着された腕帯9で血圧測定動作が行なわれることを防止することができ、測定精度を向上させることができる。
【0103】
また、測定装置1Cでは上記ステップS309での血圧測定動作が開始されるよりも以前に腕帯9の装着方向が適切であるか否かが判断され、その装着方向が誤っている場合には測定装置1Cでは血圧測定動作を行なうよりも以前にその旨を報知するため、血圧測定動作が開始されるよりも以前に使用者は腕帯9を巻き直すことができる。その結果、血圧測定動作が開始されてから腕帯9の装着方向が判断される場合と比較して、使用者の負担を軽減させることができる。また、早期に腕帯9を巻き直すことができるため、測定に要する時間を短縮させることができる。
【0104】
[変形例1]
なお、上の例では曲率を検出するための複数のセンサからの信号を利用して腕帯9の装着方向を判断するものとしているが、第2の実施の形態にかかる測定装置1Bも同様に複数のセンサを備えて、それぞれのセンサからの信号を利用して、使用者の選択が適切であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0105】
この場合、たとえば被験者情報としてメモリ41に予め被験者ごとにX側、Y側、およびZ側のそれぞれの周長が記憶され、CPU40はそれぞれのセンサからの信号で得られるX側、Y側、およびZ側のそれぞれの周長の和と記憶されている各周長の和とを比較することで判断することができる。
【0106】
または、たとえば被験者情報としてメモリ41に予め被験者ごとにX側の周長とZ側の周長との比率が記憶され、CPU40はそれぞれのセンサからの信号で得られるX側の周長とZ側の周長との比率と記憶されている比率とを比較することで判断することができる。
【0107】
このようにすることで、より精度よく判断することができる。
[変形例2]
上の説明では、測定装置1Aがセンサ5からの信号に基づいて測定部位の周長を算出してパラメータを設定し、測定装置1Bが使用者の選択が適切であるか否かを判断し、測定装置1Cが腕帯9の装着方向が測定部位の軸方向に対して適切であるか否かを判断するものとしている。
【0108】
しかしながら、他の例として、これらを組み合わせてもよい。すなわち、一つの測定装置がこれらのうちの少なくとも2つの測定装置の機能を併せ持つようにしてもよい。
【0109】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0110】
1A,1B,1C 測定装置、2 基体、3 操作部、4 表示部、5,5X,5Y,5Z センサ、8 エアチューブ、9 腕帯、10 カーラ、13 空気袋、21 エアポンプ、22 排気弁、23 圧力センサ、26,27 駆動回路、28 増幅器、29 変換器、31,32 スイッチ、40 CPU、41 メモリ、51 検出回路、100 上腕、401 周長算出部、402 設定部、403 血圧算出部、404 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気袋を内包し、被験者の測定部位に巻き付けるための測定帯と、
測定開始の指示を受け付けるための操作手段と、
前記空気袋に空気を注入/排出するための調整手段と、
前記測定帯に設けられ、前記測定帯の曲率を検出するための第1のセンサと、
前記空気袋の内圧を検出するための第2のセンサと、
制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記曲率に基づいて前記測定帯が巻き付けられた前記測定部位の周長を算出する処理と、
前記周長に基づいて、前記指示に応じて前記空気袋の内圧の制御を開始するよりも以前に条件設定を行なう処理と、
前記空気袋の内圧の制御下での前記空気袋の内圧変化に基づいて前記被験者の血圧情報を算出する処理とを実行する、血圧情報測定装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記条件設定として、前記測定部位の周長に対応したパラメータを設定し、前記設定したパラメータを用いて前記血圧情報を算出する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項3】
被験者の情報を記憶するための記憶手段をさらに備え、
前記操作手段は、測定対象の被験者を指定するための指示も受け付け、
前記制御手段は、前記条件設定として、前記被験者の情報として記憶されている前記被験者の測定部位の周長と前記算出された周長とに基づいて、前記指定された被験者が前記測定帯が巻き付けられた被験者であるか否かの条件を設定する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項4】
前記第1のセンサとして、前記測定帯のうちの前記測定部位に巻き付けられた際に中枢側となる前記測定帯の位置の曲率を検出するためのセンサと、末梢側となる前記測定帯の位置の曲率を検出するためのセンサとを備え、
前記制御手段は、前記条件設定として、前記中枢側の曲率と前記末梢側の曲率とに基づいて前記測定帯の前記測定部位への装着状態の適否の判定結果を示す条件を設定する、請求項1に記載の血圧情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−61215(P2012−61215A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209259(P2010−209259)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】