血圧測定装置
【課題】圧力センサを調整するための時間を可変に変更する。
【解決手段】電子血圧計は、被測定者の測定部位に装着されるカフと、カフに加える圧力を調整するための圧力調整部111と、カフ内のカフ圧を検出するための圧力センサと、圧力調整部により圧力を調整する過程で圧力センサから出力される検出信号を用いて血圧値を算出する算出部112と、カフに圧力を加えない無加圧状態における圧力センサの出力を指すゼロ点を圧力センサの0mmHgとして初期化または更新するための補正部113と、を備え、補正部によりゼロ点を初期化または更新するための補正時間を、血圧測定の時間情報に基づき可変に変更する。
【解決手段】電子血圧計は、被測定者の測定部位に装着されるカフと、カフに加える圧力を調整するための圧力調整部111と、カフ内のカフ圧を検出するための圧力センサと、圧力調整部により圧力を調整する過程で圧力センサから出力される検出信号を用いて血圧値を算出する算出部112と、カフに圧力を加えない無加圧状態における圧力センサの出力を指すゼロ点を圧力センサの0mmHgとして初期化または更新するための補正部113と、を備え、補正部によりゼロ点を初期化または更新するための補正時間を、血圧測定の時間情報に基づき可変に変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置に関し、特に、圧力センサの補正機能を備える血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器系疾患を解析する指標の一つであり、血圧に基づいてリスク解析を行うことは、たとえば脳卒中や心不全や心筋梗塞などの心血管系の疾患の予防に有効である。
【0003】
従来は通院時や健康診断時などの医療機関で測定される血圧(随時血圧)により診断が行われていた。しかしながら近年の研究により、家庭で測定する血圧(家庭血圧)が随時血圧より循環器系疾患の診断に有用であることが判明してきた。それに伴い、家庭で使用する血圧計が普及しており、国内では3000万台以上が各家庭に存在する。
【0004】
一般的に血圧計には、大気圧との相対圧を検出する圧力センサが使用される。そのため、血圧計を用いて血圧測定を行う際、まず、使用者が電源を入れると圧力センサの出力を初期化する必要がある。ここで、圧力センサの初期化とは、カフに圧力を加えない無加圧状態、すなわち、大気圧開放状態での圧力センサの出力を0mmHgに調整することである。測定開始時に当該調整を実施する血圧計が、たとえば、出願人による特開2010−142370号公報に示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−142370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の血圧計によれば、血圧測定のために電源を入れるたびに圧力センサの調整が実施されたので、使用者は圧力センサ調整が完了するまでの期間は待機しなければならず、血圧測定に対しストレスを感じる。そのため、やがて家庭血圧が測定されなくなるおそれがある。
【0007】
それゆえに、この発明の目的は、圧力センサを調整するための時間を可変に変更することができる血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る血圧測定装置は、被測定者の測定部位に装着されるカフと、カフに加える圧力を調整するための圧力調整部と、カフ内のカフ圧を検出するための圧力センサと、圧力調整部により圧力を調整する過程で圧力センサから出力される検出信号を用いて、血圧値を算出する算出部と、カフに圧力を加えない無加圧状態における圧力センサの出力を指すゼロ点を圧力センサの0mmHgとして初期化または更新するための補正部と、を備え、補正部によりゼロ点を初期化または更新するための補正時間を、血圧測定の時間情報に基づき可変に変更する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧力センサを調整するための時間を可変に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態に係る電子血圧計の外観図である。
【図2】この発明の実施の形態に係る電子血圧計の使用態様と収納態様とを説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態に係る電子血圧計のハードウェア構成図である。
【図4】この発明の実施の形態に係る電子血圧計の機能構成図である。
【図5】この発明の実施の形態に係るメモリの内容例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の開始時間を決定するためのフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の開始時間を決定するための他のフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の保持時間を決定するためのフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の保持時間を決定するための他のフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の開始処理のフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態に係る血圧測定処理のフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整開始時間と保持時間を説明する図である。
【図14】この発明の実施の形態に係るシステムの構成図である。
【図15】この発明の実施の形態に係るホストコンピュータの構成図である。
【図16】この発明の実施の形態に係るシステムにおける処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を指し、その説明は繰返さない。
【0012】
本実施の形態では、血圧測定装置として、測定部位を上腕とし、カフにより測定部位を加圧するオシロメトリック法で血圧を算出する電子血圧計を説明するが、血圧算出の方法は、オシロメトリック法に限定されず、コロトコフ音を利用した血圧測定方法、および容積振動法に従う血圧測定であってもよい。また、測定部位も上腕に限定されず、手首であってもよい。ここでは、カフの加減圧に利用する流体は空気として説明する。
【0013】
ここでは、電子血圧計は1個の圧力センサを搭載するが、2個以上の圧力センサを搭載するものであってもよい。
【0014】
図1に、この発明の実施の形態に係る電子血圧計1の外観を示し、図2に、被測定者による電子血圧計1の使用態様と、電子血圧計1が収納された状態とを示す。
【0015】
図1を参照して、電子血圧計1は、本体部10、被測定者の上腕に巻付け可能なカフ20(後述する)とを備える。カフ20はエアチューブ31により本体部10に着脱自在に装着される。本体部10は表面に、たとえば液晶などにより構成される表示部40、使用者(被測定者)により操作されると当該操作に応じた指示を受付ける複数のスイッチを有する操作部(後述の操作部41に相当する)とを有する。
【0016】
図1の(A)を参照して、操作部は、電子血圧計1の電源をONまたはOFFを指示するために操作される電源スイッチ41A、測定開始および停止の指示を受付けるための測定スイッチ41B(41C)、メモリに格納された血圧データなどの情報をメモリから読出し表示部40に表示するために操作されるメモリスイッチ41D、タイマをセットするために操作されるタイマセットスイッチ41E、および電子血圧計1を兼用する各使用者(被測定者)を特定するために操作される使用者選択スイッチ41Fを有する。測定スイッチ41B(41C)は、測定開始を指示するために操作されるスイッチ41Bの機能と、測定停止を指示するための操作されるスイッチ41Cの機能とを兼ね備える。
【0017】
図1の(A)の電子血圧計1は、電源スイッチ41Aと測定開始のスイッチ41Bとを個別に備えるが、これに代替して、図1の(B)のように電源スイッチ41Aと測定開始のスイッチ41Bとは1個のスイッチで兼用されるようにしてもよい。以降の説明では、図1の(A)で示すように、電源スイッチ41Aと測定開始のスイッチ41Bとを個別に備える電子血圧計1を説明するが、図1の(B)のようにスイッチが兼用される構成であっても同様に適用することができる。
【0018】
図2の(A)を参照して、血圧測定時には被測定者はカフ20を上腕部に装着する。未使用時には、図2の(B)に示すように、電子血圧計1は、カフ20およびエアチューブ31が本体部10から外された状態で収納用袋に収納される。
【0019】
(電子血圧計の構成)
図3を参照して、電子血圧計1の本体部10は、表示部40および操作部41に加え、各部を集中的に制御し各種の演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100、CPU100に所定の動作をさせるためのプログラムおよびデータを格納するための処理用のメモリ42、測定した血圧データを含む各種データを格納するためのデータ格納用のメモリ43、本体部10の各部に電力を供給するための電源部44、現在時間を計時して計時データをCPU100に出力するタイマ45を含む。
【0020】
電源部44はバッテリからなるので、図2の(B)の収納状態、または測定に使用されていない状態であったとしても、電源部44から各部に、必要な電力を供給することができる。なお、バッテリに代替して、またはバッテリと兼用して外部の商用電源からケーブルで電力が供給されるようにしてもよい。
【0021】
本体部10は、電子血圧計1の外部の装置と無線または有線で通信するための変調・復調機能を有する通信モジュールに相当する通信I/F(Interface)60、カード状の記録媒体であるメモリカード62が着脱自在に装着されて、装着されたメモリカード62からデータを読出し、またはメモリカード62にデータを書込むための外部I/F(Interface)61を備える。なお、外部I/F61に装着される記録媒体はカード状のものに限定されるものではない。
【0022】
本体部10は、さらに、カフ20に内包される空気袋21の内圧(以下、カフ圧という)を調整する機構として、ポンプ51、排気弁(以下、弁という)52を含む。ポンプ51と弁52は主に血圧測定時のカフ圧の調整機構として機能する。
【0023】
本体部10は、さらに、圧力センサ32に接続される発振回路33、ポンプ51に接続されるポンプ駆動回路53、および弁52に接続される弁駆動回路54を有する。発振回路33の出力信号はCPU100に与えられる。
【0024】
ポンプ51は、カフ圧を加圧するために空気袋21に空気を供給する。弁52は、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために弁駆動回路54により開閉される。ポンプ駆動回路53は、ポンプ51の駆動をCPU100から与えられる制御信号に基づいて制御する。ポンプ51は、ポンプ駆動回路53から印加される電圧レベルに従って、単位時間あたり一定流量の空気を送出する。弁駆動回路54は弁52の開閉制御をCPU100から与えられる制御信号に基づいて行なう。
【0025】
圧力センサ32は、静電容量型の圧力センサであり、エアチューブ31を介して検出するカフ圧に応じて容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32に接続されて、圧力センサ32の容量値に基づき発振する。これにより、発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた周波数を有する信号(以下、周波数信号という)を出力する。出力した周波数信号はCPU100に与えられる。CPU100は、発振回路33から入力する周波数信号を圧力に変換することによって、圧力を検知する。
【0026】
ここで、圧力センサ32の0mmHg調整とは、カフ20にエアチューブ31により圧力を何ら加えない、またカフ20の外部からも大気圧を除いては何ら圧力を加えない、いわゆる無加圧状態における圧力センサ32からの出力信号に基づいた圧力を検出する動作を指す。
【0027】
図4には、電子血圧計1の機能構成が示される。図4を参照し、CPU100は、血圧の指標を決定する指標決定部110、圧力調整部111、ゼロ点更新部113、ゼロ点更新部113を起動するための起動部115、ゼロ点更新に関するタイミング時間を決定する時間決定部116を備える。さらに、メモリ43をアクセスするためのアクセス部130、および表示部40にデータ表示するための表示処理部131を備える。
【0028】
指標決定部110は、血圧の指標とし血圧値、高血圧の有無などを取得する。血圧値および脈拍数を算出するために血圧算出部112を含む。血圧算出部112は、発振回路33からの周波数信号を用いて収縮期血圧(最高血圧)および拡張期血圧(最低血圧)を算出し、脈拍数を算出する。
【0029】
圧力調整部111はポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を介してポンプ51および弁52を制御し、エアチューブ31を介して空気袋21内に空気を流入・排出することにより、カフ圧を調整する。ここでは、圧力センサ32、ポンプ51および弁52を含む構成をエア系という。
【0030】
血圧算出部112は発振回路33から入力する周波数信号(この周波数信号は圧力情報信号を指示する)に基づき脈波振幅情報を検出し、検出した脈波振幅情報に基づきオシロメトリック法に従い収縮期血圧および拡張期血圧を算出し、ならびに検出した脈波振幅情報に基づき所定時間当たりの脈拍数を算出する。具体的には、圧力調整部111によりカフ圧を所定値まで徐々に加圧(または減圧)させる過程において、発振回路33から入力するカフ圧に基づいて脈波振幅情報を検出し、検出した脈波振幅情報に基づき被測定者の収縮期血圧および拡張期血圧を算出する。血圧算出部112によるオシロメトリック法に従う血圧の算出および脈拍の算出は、従来から知られている方法を適用できるので詳細は略す。
【0031】
ゼロ点更新部113は、発振回路33から周波数信号を入力し、入力した信号を解析処理することにより、ゼロ点を検出するゼロ点検出部114を含む。ゼロ点の検出については後述する。
【0032】
アクセス部130はメモリ43からデータを読出し、またはメモリ43にデータ書込む(格納する)機能を有する。具体的には、指標決定部110からの出力データを入力し、入力したデータ(血圧測定データ)をメモリ43の所定記憶領域に格納する。さらに、ゼロ点更新部113からの出力データであるゼロ点を入力し、入力したデータをメモリ43の所定記憶領域に格納する。またアクセス部130は、操作部41のメモリスイッチ41Dの操作に基づきメモリ43の所定記憶領域から測定データを読出し表示処理部131に出力する。他の各部は、アクセス部130を介してメモリ43のデータを読み書きする。
【0033】
表示処理部131は、与えられるデータを入力し、入力データを表示可能な形式に変換して表示部40に表示する。
【0034】
時間決定部116は、被測定者に関する情報であって、0mmHg調整の開始時間および電源スイッチ41Aの操作により被測定者が電源遮断の指示を行った後もゼロ点を更新し続ける時間を決定するための情報を受理する情報取得部117、0mmHg調整の開始時間を決定する開始時間決定部118、および電源スイッチ41Aの操作により被測定者が電源遮断の指示を行った後もゼロ点を更新し続けるべき時間の長さ(期間)を決定する保持期間決定部119を含む。
【0035】
なお、情報取得部117は、被測定者に関する情報を、外部1/F61を介してメモリカード62から読出すことにより取得し、または、通信I/F60を介して外部の装置から送信される情報を受理することで取得する。
【0036】
なお、図4ではCPU100の周辺回路について、CPU100と直接に入出力する部分のみを示す。
【0037】
(メモリの内容)
図5にはメモリ43に格納されるデータの一例が示される。メモリ43には、ゼロ点431、開始時間決定部118および保持期間決定部119によって決定された時間データ432、および被測定者毎の測定データ433が格納される。これらデータを格納するための領域は不揮発性メモリで構成される。
【0038】
時間データ432は、電子血圧計1を使用する被測定者のそれぞれについて、被測定者を識別するためのID(Identifier)442、0mmHg調整を開始するべき時間(開始時刻)452、および電源スイッチ41Aの操作により被測定者が電源遮断の指示を行った後もゼロ点を更新し続けるべき時間の長さを指す保持時間462のデータを含む。
【0039】
測定データ433は、対応の被測定者について、血圧測定が実施される毎にレコード単位でデータが格納される。各レコードのデータは、被測定者を識別するためのID443、血圧測定の日時(年,月,日,時間(時,分)および曜日)を指す測定日時453、使用者情報463、血圧値・脈拍数473および血圧値が高血圧に該当するか否かを指すフラグ483のデータを含む。ここでは、測定日時453は、血圧測定開始(測定スイッチ41Bが操作された)時点のタイマ45の時間データを指す。
【0040】
(0mmHg調整について)
本実施の形態では、圧力センサ32の0mmHg調整のための所定条件データ(データM0とM300)は、電子血圧計1の工場出荷時などにおいて予め取得されて、メモリ43に格納される。この所定条件データの取得手順について説明する。
【0041】
具体的には、データM0とM300を検出する場合には、電子血圧計1にはカフ20の代わりに外部からの圧力印加装置が接続される。このとき、弁52は閉鎖される。これにより、カフ20の代わりに接続された圧力印加装置とエア系との間でエアチューブ31を介して空気が流れる。
【0042】
接続された圧力印加装置により、所定の圧力値(0mmHg、300mmHg)を印加したときの圧力センサ32の出力(本実施の形態では発振回路33の出力信号の周波数M0,M300を指す)を測定する。測定値はメモリ43の所定記憶領域に格納される。なお、所定の圧力値(0mmHg,300mmHg)は、電子血圧計1では0〜299mmHgまで血圧測定することができるように設計されていることに依拠している。この測定値はメモリ43において書換え不可能であり、且つ消去されることはない。これにより、0mmHg調整のための所定条件データが取得されて、後述する図6の特性L1の直線式を検出することができる。その後、弁駆動回路54が弁52を開き、エア系に充填された空気は急速に排気される。
【0043】
被測定者の血圧測定時には、血圧算出部112は、データM0,M300を用いて、圧力値P(mmHg)を(式1)に従って算出する。算出した圧力値Pはカフ圧に相当する。
【0044】
圧力値P={(f−U0)÷(M300−M0)}×300 (式1)
なお、(式1)では、変数U0は、圧力センサ32の初期化時の出力値を指し、変数fは、測定時の発振回路33からの出力信号の周波数を指す。以下、変数U0は出力値U0と称し、変数fは周波数のデータfと称する。
【0045】
上述の(式1)に従う圧力値Pの算出について図6の圧力センサ32の特性のグラフを参照して、さらに説明する。図6のグラフは、横軸にカフ圧を示す圧力(mmHg)が取られ、縦軸に発振回路33の出力信号の周波数(Hz)が取られている。図6では、電子血圧計1の製造時の圧力センサ32の特性L1と、血圧測定時(現在)の圧力センサ32の特性L2とが示される。
【0046】
もし、製造時の圧力センサ32の特性L1と、現在の圧力センサの特性L2とが同一であれば、圧力値P=(f−M0)/(M300−M0)×300 (式2)が成立するが、実際には、圧力センサ32の特性は、使用状況などさまざまな要因により、製造時の特性L1を維持することはできず、特性L1はたとえば現在の特性L2に変化する。したがって、この特性変化に伴い生じた、圧力センサ32の初期化時の出力値U0を用いて、(式2)は(式1)に書換えられる。
【0047】
このように出力値U0を検出して、(式1)を求める手続きを0mmHg調整という。ここでは、ゼロ点検出部114により出力値U0が検出される。検出された出力値U0はゼロ点431として、ゼロ点更新部113によりメモリ43に格納される。
【0048】
(ゼロ点の検出)
ゼロ点検出部114は、出力値U0を検出する際に、圧力センサ32を初期化する。
【0049】
初期化時には圧力調整部111は、弁駆動回路54を介して弁52を開放状態とするとともに、ポンプ駆動回路53を介してポンプを停止状態とする。これにより、圧力センサ32、ポンプ51、弁52、空気袋21、および、エアチューブ31は大気圧開放状態となっている。この初期化時に、ゼロ点検出部114は、発振回路33からの周波数信号のデータf0(図6の出力値U0に相当する)を検出する。ゼロ点更新部113は、検出されたデータf0をゼロ点431としてメモリ43に格納する。これにより、メモリ43のゼロ点431が更新される。
【0050】
なお、本実施例では、使用状況などさまざまな要因により変化する圧力センサの特性を0mmHg(すなわち、大気圧開放時)に検出されるゼロ点のみがオフセットされるものとしたが、特性L2の傾きも合わせて変化することも想定される。この場合、特性L2の傾きと特性L1の傾きの違いはゼロ点のオフセット量(すなわち、U0−M0)に相関することが知られているので、次式(3)のようにして圧力値Pを算出すればよい。
【0051】
圧力値P=[(f−U0)÷{(M300−M0)×(U0−M0)×α}]×300 (式3)
ここでαはあらかじめ実験等で定められる定数である。
【0052】
(0mmHg調整開始時間の決定処理)
図7に、0mmHg調整の開始時間を決定するための手順を示す。ここでは、メモリカード62には、各被測定者のID毎に、当該被測定者の血圧測定時間に関する情報が格納されている。具体的には、毎日の服薬時間、食事時間、起床・就寝時間、医師が指定した時間等、血圧測定する時間のデータを指す。
【0053】
図7を参照して、まず、情報取得部117は、各被測定者の血圧測定時間に関する情報を外部I/F61を介してメモリカード62から入力する(ステップST101)。
【0054】
開始時間決定部118は、各被測定者について、入力された時間のデータをパターン分けする。たとえば、複数種類の時間(服薬時間、食事時間、起床・就寝時間、医師が指定した時間など)毎に分類する(ST102)。そして、各被測定者について、パターン分けした各時間に基づき0mmHg調整の開始時間と決定する(ST103)。たとえば、起床時間の後を0mmHg調整の開始時間と決定し、就寝時間の前を0mmHg調整の開始時間と決定する。
【0055】
開始時間決定部118は、入力された被測定者のID、および、当該被測定者について決定した0mmHg調整開始時間を、ID442および開始時間452として対応付けて時間データ432としてメモリ43に格納する(ST104)。
【0056】
ここでは、被測定者に関する情報は、メモリカード62から入力するとしたが、入力先は限定されるものではなく、たとえば、開始時間決定部118は、情報を入力することを促す報知を行い、報知に応じて被測定者が操作部41から入力するようにしてもよい。
【0057】
(0mmHg調整開始時間の最適化)
図7では、被測定者によって入力される生活パターンによる血圧測定時間の情報を用いて0mmHg調整の開始時間を決定したが、図8に示すように、メモリ43に格納されている測定データ433から決定するようにしてもよい。
【0058】
つまり、血圧測定のイベントとなり得る起床時間、就寝時間、食事時間、運動時間などの生活パターンは被測定者によって異なるが、個人単位では、ほぼ固定された生活パターンとなる。そこで、各被測定者の測定データ433から、血圧測定のイベントとなり得る時間を抽出する。つまり、同じような測定日時の血圧測定のデータが複数件格納されていれば、その日時が血圧測定のイベント発生時間であり、血圧測定時間であると特定することができる。したがって、特定された血圧測定時間の所定時間前(たとえば1分前)を0mmHg調整の開始時間と決定することで、血圧測定時の0mmHg調整の待ち時間を排除できて、被測定者はストレスを与えられることなく血圧を測定できる。また、その後の血圧算出のために最新のゼロ点431を取得しておくことができる。
【0059】
図8を参照して、開始時間決定部118による0mmHg調整の開始時間を決定する他の手順について説明する。処理が開始されると、まず、情報取得部117は、メモリ43から測定データ433を読出す(ST201)。開始時間決定部118は、各被測定者の測定データ433から測定日時453を抽出し、抽出した測定日時453に基づき測定時間(時:分)を分析する(ST203)。そして、分析結果に基づき、0mmHg調整の開始時間を決定する(ST204)。
【0060】
たとえば、分析の結果、同じような測定時間の測定データが所定件数以上格納されていると判定した場合には、当該測定時間を血圧測定のイベントとなり得る時間として決定し、決定した当該測定時間の1分前を0mmHg調整の開始時間と決定する。
【0061】
開始時間決定部118は、測定データ433から読出した被測定者のID443、および、決定された0mmHg調整開始時間を、データ442および452として対応付けて時間データ432としてメモリ43に格納する(ST205)。
【0062】
図7と図8の処理は、開始時間決定部118の処理は、電子血圧計1が血圧測定、測定データの格納および表示などの処理を行っていない状態(たとえば、待機状態または電源スイッチ41AがOFFされている状態など)で実行されると想定する。
【0063】
(0mmHg調整保持時間の決定)
電源スイッチ41Aにより電子血圧計1の電源OFFの指示が入力された後も、一定期間は0mmHg調整を所定時間間隔で行い、随時ゼロ点を更新し続けることが望ましい。ここでは、ゼロ点を更新し続ける一定期間を0mmHg調整保持時間と称する。
【0064】
つまり、被測定者は服薬時間、食事時間、起床・就寝時間、医師が指定した時間などのイベントによっては、複数回連続的に血圧を測定すること場合がある。前回の血圧測定から所定時間内(たとえば、3分以内)に次の測定があれば、それは同一イベント時に複数回測定したと判断することができる。このように連続して血圧測定が行われる期間内に、例えば図1(A)の電子血圧計1においてはオートパワーオフ(一定期間血圧計の操作がされないことで、電子血圧計1の電源が自動で遮断されること)により電源が遮断されたり、図1(B)の電子血圧計1においては電源スイッチ41Aと測定開始スイッチ41Bが兼用となっているため測定の都度電源を遮断する必要があり、被測定者はその都度電源を投入し、圧力センサ調整が完了するのを待たなければならない。このような不都合を解消するために本実施の形態に係る電子血圧計1は次のように動作する。
【0065】
本実施の形態では、保持期間決定部119は、各被測定者は、イベントごとに何回測定する傾向にあるかを判定し、判定結果に基づき0mmHg調整保持時間を決定する。0mmHg調整保持時間は、複数回の測定が終了するまで、または複数回測定に相当する時間が経過するまでは、電源スイッチ41Aにより電子血圧計1に電源OFFの指示が入力された場合、表示部40への電源供給は遮断するが、CPU100、圧力センサ32、発振回路33などの圧力センサ32の0mmHg調整に必要な箇所への電源供給は継続し、0mmHg調整を所定時間間隔で行いゼロ点を更新し続ける時間を指す。図9のフローチャートを参照して、保持期間決定部119による0mmHg調整保持時間の決定処理を説明する。
【0066】
図9を参照して、保持期間決定部119は、血圧測定が終了して所定時間が経過すると、すなわち連続した血圧測定が終了したと判定し得る所定時間が経過したことを判定すると(ST301)、0mmHg調整保持時間を決定する処理に移行する。
【0067】
まず、メモリ43から、被測定者の測定データ433から、直前に測定された所定回数分の測定データのレコードを読出す。読出した複数個のレコードの測定データを分析する(ST302)。分析により、一定時間内の測定回数、および一定回数分の測定に要した時間などを取得する。
【0068】
分析の結果に基づき取得した一定時間内の測定回数、および一定回数の測定に要した時間を0mmHg調整保持時間と決定する(ST303)。
【0069】
測定データ433から読出したID443、および、決定された0mmHg調整保持時間を、ID442および保持時間462として対応付けて時間データ432としてメモリ43に格納し(ST304)、処理を終了する。
【0070】
図9の0mmHg調整保持時間の決定手順は、連続した血圧測定が終了する毎に行うとしているが、血圧測定処理とは無関係に、メモリ43に格納された測定データ443に基づき決定するとしてもよい。
【0071】
図10を参照して、情報取得部117は、メモリ43から測定データ433を読出し(ST401)、保持期間決定部119は読出された各被測定者の測定データ433から、測定日時453を抽出する(ST402)。
【0072】
各被測定者について0mmHg調整保持時間を決定する。つまり、当該被測定者の測定データ443から抽出した測定日時453に基づき、所定間隔で血圧測定が所定回数連続的に実施された期間を抽出し、抽出した各期間について時間の長さを検出する(ST403)。そして、各期間の時間長さから代表値を算出し、0mmHg調整保持時間として決定する(ST404)。または、一定期間内に連続測定された回数の代表値を、0mmHg調整保持時間として決定する。代表値は、平均値、最頻値、中央値などである。
【0073】
保持期間決定部119は、測定データ433からのID443、および、決定された0mmHg調整保持時間を、ID442および保持時間462と対応付けて時間データ432としてメモリ43に格納する(ST405)。
【0074】
図9と図10の処理は、電子血圧計1において血圧測定などの処理を行っていない状態(たとえば、待機状態または電源OFF状態など)で実行されると想定する。
【0075】
このように、被測定者毎に、測定データ433から0mmHg調整保持時間を決定することができる。
【0076】
上述した開始時間決定部118および保持期間決定部119による処理の開始タイミングは次のように決定してもよい。
【0077】
たとえば、開始時間決定部118または保持期間決定部119による処理を実施した日付を記録しておき、直前の実施日から所定の日数が経過したと判定されたとき、または、前回の処理を実施した以後に新たに格納された測定データ433のレコード件数が所定数に達した時に自動的に処理が実行されるとしてもよい。
【0078】
または、自動的な実行開始に代替して、開始時間決定部118または保持期間決定部119による処理が実行可能な時期になったことを、表示部40を用いて被測定者に報知するようにしてもよい。そして、被測定者が操作部41の所定スイッチを操作したときに、開始時間決定部118または保持期間決定部119による処理が開始されるとしてもよい。
【0079】
(0mmHg調整の開始処理)
ここでは図1(B)で示される、電源スイッチ41Aと測定開始スイッチ41Bが兼用となっている電子血圧計1でその動作を説明する。なお、図1(B)で示される電子血圧計1においては、使用者選択スイッチはスライドスイッチのように、機構的に使用者選択が可能なスイッチとなっており、血圧計の電源が投入されたと同時にそのスイッチの状態を読み込むことで使用者が決定される。
【0080】
図11のフローチャートに示すように、開始時間決定部118または保持期間決定部119により決定された時間に基づき、0mmHg調整が開始される。
【0081】
起動部115は、CPU100が、血圧測定処理など他の処理を行っている期間を除く期間において、図11の手順に従ってゼロ点更新部113を起動するか否かを判定し、判定結果に基づきゼロ点更新部113を起動する。
【0082】
図11を参照して、起動部115は、メモリ43の時間データ432中の開始時間452それぞれと、タイマ45から入力する現在時間データとを比較する。そして、比較結果に基づき現在は0mmHg調整の開始時間であるか否かを判定する(S1)。
【0083】
開始時間452のいずれもタイマ45から入力する時間データと一致しないと判定する間は(S1でNO)、ステップS9の処理に移行する。開始時間452のいずれかとタイマ45から入力する時間データとが一致すると判定すると(S1でYES)、ステップS5の処理に移行する。
【0084】
起動部115はゼロ点更新部113を起動する。起動されたゼロ点更新部113により0mmHg調整が行われて(S5)、取得されたゼロ点はメモリ43にゼロ点431として格納される(S7)。これにより、メモリ43のゼロ点431は、新たに取得されたゼロ点によって上書きされて、更新される。
【0085】
その後、CPU100は、操作部41からの入力信号に基づき、電源スイッチ41Aが操作されたか否か、すなわち血圧測定開始の指示が入力されたか否かを判定する(S9)。
【0086】
電源スイッチ41Aが操作されたと判定すると(S9でYES)、後述する血圧測定処理に移行するが、操作されないと判定すると、処理はS1に戻り、以降の処理が同様に繰返される。
【0087】
(血圧測定処理)
図12を参照して、血圧測定処理について説明する。
【0088】
上述のように電源スイッチ41Aが操作(S9でYES)されて血圧測定開始の指示が入力されると血圧測定処理のための初期化処理が行われる(ST1)。たとえば、CPU100によってメモリ43の作業用領域が初期化される。
【0089】
次に、被測定者が電源スイッチ41Aを操作する前に、使用者選択スイッチ41Fを操作することで特定された使用者を特定する情報を入力する(ST2)。時間決定部116は、使用者の特定情報に基づき、メモリ43の時間データ432を検索する。検索結果に基づき、当該特定情報に一致するID442に対応の保持時間462を読出す(ST3)。
【0090】
次にCPU100は、圧力調整部111は、弁駆動回路54を介して弁52を閉じるように制御し、ポンプ駆動回路53を介してポンプ51を、カフ圧が所定圧まで加圧されるように制御する(ST5,ST6)。
【0091】
カフ圧が所定圧まで徐々に加圧される過程において、指標決定部110は発振回路33の出力信号に基づき、カフ圧を(式1)に基づきゼロ点431を用いて検出する。検出したカフ圧を所定圧と比較する(ST6)。比較結果に基づき、(カフ圧<所定圧)の条件が成立する間は加圧(ST5)が継続するが、(カフ圧≧所定圧)の条件が成立すると判定されると(ST6で“≧所定圧”)、圧力調整部111はポンプ駆動回路53を介してポンプ51を停止し、その後、カフ圧が徐々に減圧されるように、弁駆動回路54を介して弁52を徐々に開く(ST7)。
【0092】
血圧算出部112は、減圧過程に得られるカフ圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧を算出する(ST8)。血圧の算出は、メモリ43のゼロ点431を用いた(式1)に基づき算出されるカフ圧を用いる。
【0093】
血圧の算出により収縮期血圧および拡張期血圧が算出されると(ST9でYES)、弁52を開放しカフ20内の空気を排気する。また、血圧値の算出とともに、脈拍数が算出される。
【0094】
算出された血圧値・脈拍数は、タイマ45から入力した計時データに基づく測定日時とともに、表示処理部131によって表示部40に表示される(ST10)。
【0095】
また、指標決定部110は、算出された収縮期血圧値を、高血圧の基準血圧と比較し、比較結果に基づき高血圧に該当するか否かの判定をする。そして、アクセス部130を介して、メモリ43に、使用者の特定情報、測定日時、血圧値・脈拍数および高血圧判定結果を関連づけしたデータ443〜483からなるレコードを生成し、レコードを当該被測定者の測定データ433に格納する(ST11)。
【0096】
その後、CPU100は、操作部41からの入力信号に基づき、電源スイッチ41Aが操作(押下)されるか否かを判定する(ST12)。電源スイッチ41Aが操作されたと判定すると(ST12でYES)、時間決定部116は、ST3で読み出した保持時間462が示す時間期間が経過したか否かを判定する(ST13)。
【0097】
経過していないと判定すると(ST13でNO)、すなわち連続して血圧測定が行われる期間内であると判定すると、CPU100は、表示部40のみ電源を遮断し(ST15)、操作部41からの入力信号に基づき、電源スイッチ41Aが操作(押下)されるか否かを判定する(ST16)。
【0098】
電源スイッチ41Aが操作されたと判定すると(ST16でYES)、処理はST1に戻り、次の血圧測定処理が開始されるが、操作されないと判定されると(ST16でNO)、圧力センサ32の調整が実施される(ST17)。その後、処理はST13に戻り、ST13以降の処理が同様に繰返される。
【0099】
一方、電源スイッチ41Aが操作されていないと判定される(ST12でNO)としても、所定時間間隔で圧力センサ32の調整が実施される(ST14)。
【0100】
図12の処理によれば、電源スイッチ41Aにより電子血圧計1の電源OFFの指示が入力された後も、保持時間462が示す時間期間においては、ゼロ点431は更新されつづける。つまり、図13に示すように、イベント毎に開始時間決定部118により、複数回の血圧測定が終了するまでの期間は、電源スイッチ41Aにより電子血圧計1に対して電源OFFの指示が入力された後もゼロ点431が更新されつづける。
【0101】
このように、ゼロ点更新部113は電源スイッチ41Aにより電子血圧計1に対して電源OFFの指示が入力された後もゼロ点431を更新しつづけるため、複数回血圧測定を行う際、電源スイッチ41Aを投入するたびに圧力センサ32の調整完了を待機する必要がなくなる。
【0102】
また、圧力センサ32は大気圧との相対圧を検出するものであるが、電子血圧計1に対して電源OFFの指示が入力された後もゼロ点431が更新されつづけることから、測定環境下の大気圧の変化があったとしても正確な相対圧の検出が可能となる。
【0103】
また、ゼロ点431を更新した後に、次回更新までの間隔(インターバル)を、少なくとも保持時間462の長さだけは確保できるようにして、可変に変更することができる。
【0104】
上述の実施の形態では、0mmHg調整開始時間と0mmHg調整保持時間とを組合わせた処理としているが、一方の時間のみを参照した処理としてもよい。つまり、開始時間決定部118が決定した0mmHg調整開始時間にのみ基づいて0mmHg調整を行うようにして保持時間は考慮しないとしてもよい。また、0mmHg調整開始は所定時刻に行われるとして、保持期間決定部119が決定した保持時間内は0mmHg調整がされつづけるとしてもよい。電子血圧計1を両時間を組合わせて制御するか、一方のみの時間を参照して制御するかは、操作部41の操作によって切替え可能としてもよい。
【0105】
(システム構成)
上述の実施の形態では、電子血圧計1により0mmHg調整の開始時間および保持時間を決定するとしたが、図14のシステムを構成することにより、外部の情報処理装置がこれら時間を決定して、決定された時間のデータを電子血圧計1宛てに送信するようにしてもよい。
【0106】
図14を参照して、本実施の形態に係るシステムは、被測定者が使用する電子血圧計1、電子血圧計1と通信するホストコンピュータ220、および両者間を通信によって接続するための有線または無線のネットワークNTを含む。
【0107】
ここでは、電子血圧計1はホストコンピュータ220と直接に通信するとしているが、携帯電話、PDA(personal digital assistant)、パソコン(パーソナルコンピュータの略)などを通信の中継装置として利用して、電子血圧計1は、これら中継装置を介してホストコンピュータ220と通信するようにしてもよい。なお、ネットワークNTに代替して、記録媒体を介して情報を授受するようにしてもよい。
【0108】
図15には、ホストコンピュータ220のハードウェア構成が示される。ホストコンピュータ220は、全体の制御をするためのCPU(Central Processing Unit)301、予めプログラムやデータが格納されるROM(Read Only Memory)302、各種データを格納するRAM(Random Access Memory)303、タイマ304、ハードディスク306、ネットワークNTとホストコンピュータ220を接続するための通信I/F(Interface)307、出力部305、入力部308およびメモリカード310が着脱自在に装着されて、装着されたメモリカード310からデータを読出し、またはメモリカード310にデータを書込むための外部I/F(Interface)309を備える。
【0109】
出力部305は、表示部、印刷部、音声出力部などを含む。入力部308は、キーボード、マウスなどのポインティングデバイスなどを含む。外部I/F309に装着される記録媒体はカード状のものに限定されるものではない。
【0110】
図16のフローチャートを参照して、本システムでの0mmHg調整時間の決定に係る手順を説明する。
【0111】
まず、被測定者は、電子血圧計1をネットワークNTに接続し、操作部41を操作して0mmHg調整時間の最適化の指示を入力する。
【0112】
指示が入力されると、CPU100は、メモリ43から当該被測定者に対応する測定データ433を読出し(ST501)、通信I/F60を介してホストコンピュータ220宛てに送信する(ST503)。
【0113】
ホストコンピュータ220のCPU301は通信I/F307を介して測定データ433を受信する(ST510)。
【0114】
CPU301は、受信した測定データ433に基づき、0mmHg調整開始時間を決定する(ST512〜ST518)。この処理は図8で説明した手順と同様であるので、詳細は略す。
【0115】
CPU301は、決定した0mmHg調整開始時間のデータを通信I/F307を介して電子血圧計1宛てに送信する(ST520)。
【0116】
電子血圧計1のCPU00は、通信I/F60を介して、0mmHg調整開始時間のデータを受信し(ST505)、受信したデータを、メモリ43の時間データ432に当該被測定者の開始時間452として格納する(ST506)。その後、処理を終了する。
【0117】
ここでは、0mmHg調整開始時間の決定を説明したが、0mmHg調整保持時間の決定についても同様にしてホストコンピュータ220が図10に説明した手順を用いて決定し、電子血圧計1に送信することができる。
【0118】
(プログラム)
本実施の形態に係る各フローチャートに従う方法は、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CPU100またはホストコンピュータ220に付属する図示のないフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、ホストコンピュータ220に内蔵するハードディスク306などの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークNTを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0119】
たとえば、図3の構成では、CPU100を備えてコンピュータの機能を有する電子血圧計1には、メモリカード62などの各種記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU100は、外部I/F61を介して当該記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。また、図15の構成では、ホストコンピュータ220には、メモリカード310などの記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU301は外部I/F309を介して記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。
【0120】
提供されるプログラム製品は、ハードディスク306などのプログラム格納部にインストールされてCPU301により読出されて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0121】
(変形例)
本実施の形態は、勤務時間が不規則であるシフトワーカーなどに対応するように変形することができる。たとえば、勤務時間に合わせて被測定者がシフト時間を入力すると、0mmHg調整開始時間および保持時間をシフト時間を用いて変更するようにしてよい。
【0122】
また、休日の生活パターンは平日とは相違することに着目して、休日の測定データに基づき、休日用の0mmHg調整開始時間および保持時間を決定するようにしてもよい。
【0123】
また、0mmHg調整保持時間が5分と設定されており、その間に測定がなかったら、さらに保持時間を延長するとしてもよい。
【0124】
また、季節の変動により生活パターンが変わる場合もある。そこで、周囲の照度、気温変化を検出しておき、その変化があれば、時間決定部116による0mmHg調整の開始時間452および保持時間462を算出しなおすとしてもよい。
【0125】
本実施の形態では、電子血圧計1は机上に据え置くタイプであったが、手首装着タイプであってもよい。
【0126】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上記した各実施の形態は、可能な限り組み合わされて実現されることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 電子血圧計、110 指標決定部、111 圧力調整部、112 血圧算出部、113 ゼロ点更新部、114 ゼロ点検出部、115 起動部、116 時間決定部、117 情報取得部、118 開始時間決定部、119 保持期間決定部、130 アクセス部、131 表示処理部、220 ホストコンピュータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置に関し、特に、圧力センサの補正機能を備える血圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器系疾患を解析する指標の一つであり、血圧に基づいてリスク解析を行うことは、たとえば脳卒中や心不全や心筋梗塞などの心血管系の疾患の予防に有効である。
【0003】
従来は通院時や健康診断時などの医療機関で測定される血圧(随時血圧)により診断が行われていた。しかしながら近年の研究により、家庭で測定する血圧(家庭血圧)が随時血圧より循環器系疾患の診断に有用であることが判明してきた。それに伴い、家庭で使用する血圧計が普及しており、国内では3000万台以上が各家庭に存在する。
【0004】
一般的に血圧計には、大気圧との相対圧を検出する圧力センサが使用される。そのため、血圧計を用いて血圧測定を行う際、まず、使用者が電源を入れると圧力センサの出力を初期化する必要がある。ここで、圧力センサの初期化とは、カフに圧力を加えない無加圧状態、すなわち、大気圧開放状態での圧力センサの出力を0mmHgに調整することである。測定開始時に当該調整を実施する血圧計が、たとえば、出願人による特開2010−142370号公報に示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−142370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の血圧計によれば、血圧測定のために電源を入れるたびに圧力センサの調整が実施されたので、使用者は圧力センサ調整が完了するまでの期間は待機しなければならず、血圧測定に対しストレスを感じる。そのため、やがて家庭血圧が測定されなくなるおそれがある。
【0007】
それゆえに、この発明の目的は、圧力センサを調整するための時間を可変に変更することができる血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る血圧測定装置は、被測定者の測定部位に装着されるカフと、カフに加える圧力を調整するための圧力調整部と、カフ内のカフ圧を検出するための圧力センサと、圧力調整部により圧力を調整する過程で圧力センサから出力される検出信号を用いて、血圧値を算出する算出部と、カフに圧力を加えない無加圧状態における圧力センサの出力を指すゼロ点を圧力センサの0mmHgとして初期化または更新するための補正部と、を備え、補正部によりゼロ点を初期化または更新するための補正時間を、血圧測定の時間情報に基づき可変に変更する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧力センサを調整するための時間を可変に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態に係る電子血圧計の外観図である。
【図2】この発明の実施の形態に係る電子血圧計の使用態様と収納態様とを説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態に係る電子血圧計のハードウェア構成図である。
【図4】この発明の実施の形態に係る電子血圧計の機能構成図である。
【図5】この発明の実施の形態に係るメモリの内容例を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の開始時間を決定するためのフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の開始時間を決定するための他のフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の保持時間を決定するためのフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の保持時間を決定するための他のフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整の開始処理のフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態に係る血圧測定処理のフローチャートである。
【図13】この発明の実施の形態に係る0mmHg調整開始時間と保持時間を説明する図である。
【図14】この発明の実施の形態に係るシステムの構成図である。
【図15】この発明の実施の形態に係るホストコンピュータの構成図である。
【図16】この発明の実施の形態に係るシステムにおける処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を指し、その説明は繰返さない。
【0012】
本実施の形態では、血圧測定装置として、測定部位を上腕とし、カフにより測定部位を加圧するオシロメトリック法で血圧を算出する電子血圧計を説明するが、血圧算出の方法は、オシロメトリック法に限定されず、コロトコフ音を利用した血圧測定方法、および容積振動法に従う血圧測定であってもよい。また、測定部位も上腕に限定されず、手首であってもよい。ここでは、カフの加減圧に利用する流体は空気として説明する。
【0013】
ここでは、電子血圧計は1個の圧力センサを搭載するが、2個以上の圧力センサを搭載するものであってもよい。
【0014】
図1に、この発明の実施の形態に係る電子血圧計1の外観を示し、図2に、被測定者による電子血圧計1の使用態様と、電子血圧計1が収納された状態とを示す。
【0015】
図1を参照して、電子血圧計1は、本体部10、被測定者の上腕に巻付け可能なカフ20(後述する)とを備える。カフ20はエアチューブ31により本体部10に着脱自在に装着される。本体部10は表面に、たとえば液晶などにより構成される表示部40、使用者(被測定者)により操作されると当該操作に応じた指示を受付ける複数のスイッチを有する操作部(後述の操作部41に相当する)とを有する。
【0016】
図1の(A)を参照して、操作部は、電子血圧計1の電源をONまたはOFFを指示するために操作される電源スイッチ41A、測定開始および停止の指示を受付けるための測定スイッチ41B(41C)、メモリに格納された血圧データなどの情報をメモリから読出し表示部40に表示するために操作されるメモリスイッチ41D、タイマをセットするために操作されるタイマセットスイッチ41E、および電子血圧計1を兼用する各使用者(被測定者)を特定するために操作される使用者選択スイッチ41Fを有する。測定スイッチ41B(41C)は、測定開始を指示するために操作されるスイッチ41Bの機能と、測定停止を指示するための操作されるスイッチ41Cの機能とを兼ね備える。
【0017】
図1の(A)の電子血圧計1は、電源スイッチ41Aと測定開始のスイッチ41Bとを個別に備えるが、これに代替して、図1の(B)のように電源スイッチ41Aと測定開始のスイッチ41Bとは1個のスイッチで兼用されるようにしてもよい。以降の説明では、図1の(A)で示すように、電源スイッチ41Aと測定開始のスイッチ41Bとを個別に備える電子血圧計1を説明するが、図1の(B)のようにスイッチが兼用される構成であっても同様に適用することができる。
【0018】
図2の(A)を参照して、血圧測定時には被測定者はカフ20を上腕部に装着する。未使用時には、図2の(B)に示すように、電子血圧計1は、カフ20およびエアチューブ31が本体部10から外された状態で収納用袋に収納される。
【0019】
(電子血圧計の構成)
図3を参照して、電子血圧計1の本体部10は、表示部40および操作部41に加え、各部を集中的に制御し各種の演算処理を行なうためのCPU(Central Processing Unit)100、CPU100に所定の動作をさせるためのプログラムおよびデータを格納するための処理用のメモリ42、測定した血圧データを含む各種データを格納するためのデータ格納用のメモリ43、本体部10の各部に電力を供給するための電源部44、現在時間を計時して計時データをCPU100に出力するタイマ45を含む。
【0020】
電源部44はバッテリからなるので、図2の(B)の収納状態、または測定に使用されていない状態であったとしても、電源部44から各部に、必要な電力を供給することができる。なお、バッテリに代替して、またはバッテリと兼用して外部の商用電源からケーブルで電力が供給されるようにしてもよい。
【0021】
本体部10は、電子血圧計1の外部の装置と無線または有線で通信するための変調・復調機能を有する通信モジュールに相当する通信I/F(Interface)60、カード状の記録媒体であるメモリカード62が着脱自在に装着されて、装着されたメモリカード62からデータを読出し、またはメモリカード62にデータを書込むための外部I/F(Interface)61を備える。なお、外部I/F61に装着される記録媒体はカード状のものに限定されるものではない。
【0022】
本体部10は、さらに、カフ20に内包される空気袋21の内圧(以下、カフ圧という)を調整する機構として、ポンプ51、排気弁(以下、弁という)52を含む。ポンプ51と弁52は主に血圧測定時のカフ圧の調整機構として機能する。
【0023】
本体部10は、さらに、圧力センサ32に接続される発振回路33、ポンプ51に接続されるポンプ駆動回路53、および弁52に接続される弁駆動回路54を有する。発振回路33の出力信号はCPU100に与えられる。
【0024】
ポンプ51は、カフ圧を加圧するために空気袋21に空気を供給する。弁52は、空気袋21の空気を排出しまたは封入するために弁駆動回路54により開閉される。ポンプ駆動回路53は、ポンプ51の駆動をCPU100から与えられる制御信号に基づいて制御する。ポンプ51は、ポンプ駆動回路53から印加される電圧レベルに従って、単位時間あたり一定流量の空気を送出する。弁駆動回路54は弁52の開閉制御をCPU100から与えられる制御信号に基づいて行なう。
【0025】
圧力センサ32は、静電容量型の圧力センサであり、エアチューブ31を介して検出するカフ圧に応じて容量値が変化する。発振回路33は、圧力センサ32に接続されて、圧力センサ32の容量値に基づき発振する。これにより、発振回路33は、圧力センサ32の容量値に応じた周波数を有する信号(以下、周波数信号という)を出力する。出力した周波数信号はCPU100に与えられる。CPU100は、発振回路33から入力する周波数信号を圧力に変換することによって、圧力を検知する。
【0026】
ここで、圧力センサ32の0mmHg調整とは、カフ20にエアチューブ31により圧力を何ら加えない、またカフ20の外部からも大気圧を除いては何ら圧力を加えない、いわゆる無加圧状態における圧力センサ32からの出力信号に基づいた圧力を検出する動作を指す。
【0027】
図4には、電子血圧計1の機能構成が示される。図4を参照し、CPU100は、血圧の指標を決定する指標決定部110、圧力調整部111、ゼロ点更新部113、ゼロ点更新部113を起動するための起動部115、ゼロ点更新に関するタイミング時間を決定する時間決定部116を備える。さらに、メモリ43をアクセスするためのアクセス部130、および表示部40にデータ表示するための表示処理部131を備える。
【0028】
指標決定部110は、血圧の指標とし血圧値、高血圧の有無などを取得する。血圧値および脈拍数を算出するために血圧算出部112を含む。血圧算出部112は、発振回路33からの周波数信号を用いて収縮期血圧(最高血圧)および拡張期血圧(最低血圧)を算出し、脈拍数を算出する。
【0029】
圧力調整部111はポンプ駆動回路53および弁駆動回路54を介してポンプ51および弁52を制御し、エアチューブ31を介して空気袋21内に空気を流入・排出することにより、カフ圧を調整する。ここでは、圧力センサ32、ポンプ51および弁52を含む構成をエア系という。
【0030】
血圧算出部112は発振回路33から入力する周波数信号(この周波数信号は圧力情報信号を指示する)に基づき脈波振幅情報を検出し、検出した脈波振幅情報に基づきオシロメトリック法に従い収縮期血圧および拡張期血圧を算出し、ならびに検出した脈波振幅情報に基づき所定時間当たりの脈拍数を算出する。具体的には、圧力調整部111によりカフ圧を所定値まで徐々に加圧(または減圧)させる過程において、発振回路33から入力するカフ圧に基づいて脈波振幅情報を検出し、検出した脈波振幅情報に基づき被測定者の収縮期血圧および拡張期血圧を算出する。血圧算出部112によるオシロメトリック法に従う血圧の算出および脈拍の算出は、従来から知られている方法を適用できるので詳細は略す。
【0031】
ゼロ点更新部113は、発振回路33から周波数信号を入力し、入力した信号を解析処理することにより、ゼロ点を検出するゼロ点検出部114を含む。ゼロ点の検出については後述する。
【0032】
アクセス部130はメモリ43からデータを読出し、またはメモリ43にデータ書込む(格納する)機能を有する。具体的には、指標決定部110からの出力データを入力し、入力したデータ(血圧測定データ)をメモリ43の所定記憶領域に格納する。さらに、ゼロ点更新部113からの出力データであるゼロ点を入力し、入力したデータをメモリ43の所定記憶領域に格納する。またアクセス部130は、操作部41のメモリスイッチ41Dの操作に基づきメモリ43の所定記憶領域から測定データを読出し表示処理部131に出力する。他の各部は、アクセス部130を介してメモリ43のデータを読み書きする。
【0033】
表示処理部131は、与えられるデータを入力し、入力データを表示可能な形式に変換して表示部40に表示する。
【0034】
時間決定部116は、被測定者に関する情報であって、0mmHg調整の開始時間および電源スイッチ41Aの操作により被測定者が電源遮断の指示を行った後もゼロ点を更新し続ける時間を決定するための情報を受理する情報取得部117、0mmHg調整の開始時間を決定する開始時間決定部118、および電源スイッチ41Aの操作により被測定者が電源遮断の指示を行った後もゼロ点を更新し続けるべき時間の長さ(期間)を決定する保持期間決定部119を含む。
【0035】
なお、情報取得部117は、被測定者に関する情報を、外部1/F61を介してメモリカード62から読出すことにより取得し、または、通信I/F60を介して外部の装置から送信される情報を受理することで取得する。
【0036】
なお、図4ではCPU100の周辺回路について、CPU100と直接に入出力する部分のみを示す。
【0037】
(メモリの内容)
図5にはメモリ43に格納されるデータの一例が示される。メモリ43には、ゼロ点431、開始時間決定部118および保持期間決定部119によって決定された時間データ432、および被測定者毎の測定データ433が格納される。これらデータを格納するための領域は不揮発性メモリで構成される。
【0038】
時間データ432は、電子血圧計1を使用する被測定者のそれぞれについて、被測定者を識別するためのID(Identifier)442、0mmHg調整を開始するべき時間(開始時刻)452、および電源スイッチ41Aの操作により被測定者が電源遮断の指示を行った後もゼロ点を更新し続けるべき時間の長さを指す保持時間462のデータを含む。
【0039】
測定データ433は、対応の被測定者について、血圧測定が実施される毎にレコード単位でデータが格納される。各レコードのデータは、被測定者を識別するためのID443、血圧測定の日時(年,月,日,時間(時,分)および曜日)を指す測定日時453、使用者情報463、血圧値・脈拍数473および血圧値が高血圧に該当するか否かを指すフラグ483のデータを含む。ここでは、測定日時453は、血圧測定開始(測定スイッチ41Bが操作された)時点のタイマ45の時間データを指す。
【0040】
(0mmHg調整について)
本実施の形態では、圧力センサ32の0mmHg調整のための所定条件データ(データM0とM300)は、電子血圧計1の工場出荷時などにおいて予め取得されて、メモリ43に格納される。この所定条件データの取得手順について説明する。
【0041】
具体的には、データM0とM300を検出する場合には、電子血圧計1にはカフ20の代わりに外部からの圧力印加装置が接続される。このとき、弁52は閉鎖される。これにより、カフ20の代わりに接続された圧力印加装置とエア系との間でエアチューブ31を介して空気が流れる。
【0042】
接続された圧力印加装置により、所定の圧力値(0mmHg、300mmHg)を印加したときの圧力センサ32の出力(本実施の形態では発振回路33の出力信号の周波数M0,M300を指す)を測定する。測定値はメモリ43の所定記憶領域に格納される。なお、所定の圧力値(0mmHg,300mmHg)は、電子血圧計1では0〜299mmHgまで血圧測定することができるように設計されていることに依拠している。この測定値はメモリ43において書換え不可能であり、且つ消去されることはない。これにより、0mmHg調整のための所定条件データが取得されて、後述する図6の特性L1の直線式を検出することができる。その後、弁駆動回路54が弁52を開き、エア系に充填された空気は急速に排気される。
【0043】
被測定者の血圧測定時には、血圧算出部112は、データM0,M300を用いて、圧力値P(mmHg)を(式1)に従って算出する。算出した圧力値Pはカフ圧に相当する。
【0044】
圧力値P={(f−U0)÷(M300−M0)}×300 (式1)
なお、(式1)では、変数U0は、圧力センサ32の初期化時の出力値を指し、変数fは、測定時の発振回路33からの出力信号の周波数を指す。以下、変数U0は出力値U0と称し、変数fは周波数のデータfと称する。
【0045】
上述の(式1)に従う圧力値Pの算出について図6の圧力センサ32の特性のグラフを参照して、さらに説明する。図6のグラフは、横軸にカフ圧を示す圧力(mmHg)が取られ、縦軸に発振回路33の出力信号の周波数(Hz)が取られている。図6では、電子血圧計1の製造時の圧力センサ32の特性L1と、血圧測定時(現在)の圧力センサ32の特性L2とが示される。
【0046】
もし、製造時の圧力センサ32の特性L1と、現在の圧力センサの特性L2とが同一であれば、圧力値P=(f−M0)/(M300−M0)×300 (式2)が成立するが、実際には、圧力センサ32の特性は、使用状況などさまざまな要因により、製造時の特性L1を維持することはできず、特性L1はたとえば現在の特性L2に変化する。したがって、この特性変化に伴い生じた、圧力センサ32の初期化時の出力値U0を用いて、(式2)は(式1)に書換えられる。
【0047】
このように出力値U0を検出して、(式1)を求める手続きを0mmHg調整という。ここでは、ゼロ点検出部114により出力値U0が検出される。検出された出力値U0はゼロ点431として、ゼロ点更新部113によりメモリ43に格納される。
【0048】
(ゼロ点の検出)
ゼロ点検出部114は、出力値U0を検出する際に、圧力センサ32を初期化する。
【0049】
初期化時には圧力調整部111は、弁駆動回路54を介して弁52を開放状態とするとともに、ポンプ駆動回路53を介してポンプを停止状態とする。これにより、圧力センサ32、ポンプ51、弁52、空気袋21、および、エアチューブ31は大気圧開放状態となっている。この初期化時に、ゼロ点検出部114は、発振回路33からの周波数信号のデータf0(図6の出力値U0に相当する)を検出する。ゼロ点更新部113は、検出されたデータf0をゼロ点431としてメモリ43に格納する。これにより、メモリ43のゼロ点431が更新される。
【0050】
なお、本実施例では、使用状況などさまざまな要因により変化する圧力センサの特性を0mmHg(すなわち、大気圧開放時)に検出されるゼロ点のみがオフセットされるものとしたが、特性L2の傾きも合わせて変化することも想定される。この場合、特性L2の傾きと特性L1の傾きの違いはゼロ点のオフセット量(すなわち、U0−M0)に相関することが知られているので、次式(3)のようにして圧力値Pを算出すればよい。
【0051】
圧力値P=[(f−U0)÷{(M300−M0)×(U0−M0)×α}]×300 (式3)
ここでαはあらかじめ実験等で定められる定数である。
【0052】
(0mmHg調整開始時間の決定処理)
図7に、0mmHg調整の開始時間を決定するための手順を示す。ここでは、メモリカード62には、各被測定者のID毎に、当該被測定者の血圧測定時間に関する情報が格納されている。具体的には、毎日の服薬時間、食事時間、起床・就寝時間、医師が指定した時間等、血圧測定する時間のデータを指す。
【0053】
図7を参照して、まず、情報取得部117は、各被測定者の血圧測定時間に関する情報を外部I/F61を介してメモリカード62から入力する(ステップST101)。
【0054】
開始時間決定部118は、各被測定者について、入力された時間のデータをパターン分けする。たとえば、複数種類の時間(服薬時間、食事時間、起床・就寝時間、医師が指定した時間など)毎に分類する(ST102)。そして、各被測定者について、パターン分けした各時間に基づき0mmHg調整の開始時間と決定する(ST103)。たとえば、起床時間の後を0mmHg調整の開始時間と決定し、就寝時間の前を0mmHg調整の開始時間と決定する。
【0055】
開始時間決定部118は、入力された被測定者のID、および、当該被測定者について決定した0mmHg調整開始時間を、ID442および開始時間452として対応付けて時間データ432としてメモリ43に格納する(ST104)。
【0056】
ここでは、被測定者に関する情報は、メモリカード62から入力するとしたが、入力先は限定されるものではなく、たとえば、開始時間決定部118は、情報を入力することを促す報知を行い、報知に応じて被測定者が操作部41から入力するようにしてもよい。
【0057】
(0mmHg調整開始時間の最適化)
図7では、被測定者によって入力される生活パターンによる血圧測定時間の情報を用いて0mmHg調整の開始時間を決定したが、図8に示すように、メモリ43に格納されている測定データ433から決定するようにしてもよい。
【0058】
つまり、血圧測定のイベントとなり得る起床時間、就寝時間、食事時間、運動時間などの生活パターンは被測定者によって異なるが、個人単位では、ほぼ固定された生活パターンとなる。そこで、各被測定者の測定データ433から、血圧測定のイベントとなり得る時間を抽出する。つまり、同じような測定日時の血圧測定のデータが複数件格納されていれば、その日時が血圧測定のイベント発生時間であり、血圧測定時間であると特定することができる。したがって、特定された血圧測定時間の所定時間前(たとえば1分前)を0mmHg調整の開始時間と決定することで、血圧測定時の0mmHg調整の待ち時間を排除できて、被測定者はストレスを与えられることなく血圧を測定できる。また、その後の血圧算出のために最新のゼロ点431を取得しておくことができる。
【0059】
図8を参照して、開始時間決定部118による0mmHg調整の開始時間を決定する他の手順について説明する。処理が開始されると、まず、情報取得部117は、メモリ43から測定データ433を読出す(ST201)。開始時間決定部118は、各被測定者の測定データ433から測定日時453を抽出し、抽出した測定日時453に基づき測定時間(時:分)を分析する(ST203)。そして、分析結果に基づき、0mmHg調整の開始時間を決定する(ST204)。
【0060】
たとえば、分析の結果、同じような測定時間の測定データが所定件数以上格納されていると判定した場合には、当該測定時間を血圧測定のイベントとなり得る時間として決定し、決定した当該測定時間の1分前を0mmHg調整の開始時間と決定する。
【0061】
開始時間決定部118は、測定データ433から読出した被測定者のID443、および、決定された0mmHg調整開始時間を、データ442および452として対応付けて時間データ432としてメモリ43に格納する(ST205)。
【0062】
図7と図8の処理は、開始時間決定部118の処理は、電子血圧計1が血圧測定、測定データの格納および表示などの処理を行っていない状態(たとえば、待機状態または電源スイッチ41AがOFFされている状態など)で実行されると想定する。
【0063】
(0mmHg調整保持時間の決定)
電源スイッチ41Aにより電子血圧計1の電源OFFの指示が入力された後も、一定期間は0mmHg調整を所定時間間隔で行い、随時ゼロ点を更新し続けることが望ましい。ここでは、ゼロ点を更新し続ける一定期間を0mmHg調整保持時間と称する。
【0064】
つまり、被測定者は服薬時間、食事時間、起床・就寝時間、医師が指定した時間などのイベントによっては、複数回連続的に血圧を測定すること場合がある。前回の血圧測定から所定時間内(たとえば、3分以内)に次の測定があれば、それは同一イベント時に複数回測定したと判断することができる。このように連続して血圧測定が行われる期間内に、例えば図1(A)の電子血圧計1においてはオートパワーオフ(一定期間血圧計の操作がされないことで、電子血圧計1の電源が自動で遮断されること)により電源が遮断されたり、図1(B)の電子血圧計1においては電源スイッチ41Aと測定開始スイッチ41Bが兼用となっているため測定の都度電源を遮断する必要があり、被測定者はその都度電源を投入し、圧力センサ調整が完了するのを待たなければならない。このような不都合を解消するために本実施の形態に係る電子血圧計1は次のように動作する。
【0065】
本実施の形態では、保持期間決定部119は、各被測定者は、イベントごとに何回測定する傾向にあるかを判定し、判定結果に基づき0mmHg調整保持時間を決定する。0mmHg調整保持時間は、複数回の測定が終了するまで、または複数回測定に相当する時間が経過するまでは、電源スイッチ41Aにより電子血圧計1に電源OFFの指示が入力された場合、表示部40への電源供給は遮断するが、CPU100、圧力センサ32、発振回路33などの圧力センサ32の0mmHg調整に必要な箇所への電源供給は継続し、0mmHg調整を所定時間間隔で行いゼロ点を更新し続ける時間を指す。図9のフローチャートを参照して、保持期間決定部119による0mmHg調整保持時間の決定処理を説明する。
【0066】
図9を参照して、保持期間決定部119は、血圧測定が終了して所定時間が経過すると、すなわち連続した血圧測定が終了したと判定し得る所定時間が経過したことを判定すると(ST301)、0mmHg調整保持時間を決定する処理に移行する。
【0067】
まず、メモリ43から、被測定者の測定データ433から、直前に測定された所定回数分の測定データのレコードを読出す。読出した複数個のレコードの測定データを分析する(ST302)。分析により、一定時間内の測定回数、および一定回数分の測定に要した時間などを取得する。
【0068】
分析の結果に基づき取得した一定時間内の測定回数、および一定回数の測定に要した時間を0mmHg調整保持時間と決定する(ST303)。
【0069】
測定データ433から読出したID443、および、決定された0mmHg調整保持時間を、ID442および保持時間462として対応付けて時間データ432としてメモリ43に格納し(ST304)、処理を終了する。
【0070】
図9の0mmHg調整保持時間の決定手順は、連続した血圧測定が終了する毎に行うとしているが、血圧測定処理とは無関係に、メモリ43に格納された測定データ443に基づき決定するとしてもよい。
【0071】
図10を参照して、情報取得部117は、メモリ43から測定データ433を読出し(ST401)、保持期間決定部119は読出された各被測定者の測定データ433から、測定日時453を抽出する(ST402)。
【0072】
各被測定者について0mmHg調整保持時間を決定する。つまり、当該被測定者の測定データ443から抽出した測定日時453に基づき、所定間隔で血圧測定が所定回数連続的に実施された期間を抽出し、抽出した各期間について時間の長さを検出する(ST403)。そして、各期間の時間長さから代表値を算出し、0mmHg調整保持時間として決定する(ST404)。または、一定期間内に連続測定された回数の代表値を、0mmHg調整保持時間として決定する。代表値は、平均値、最頻値、中央値などである。
【0073】
保持期間決定部119は、測定データ433からのID443、および、決定された0mmHg調整保持時間を、ID442および保持時間462と対応付けて時間データ432としてメモリ43に格納する(ST405)。
【0074】
図9と図10の処理は、電子血圧計1において血圧測定などの処理を行っていない状態(たとえば、待機状態または電源OFF状態など)で実行されると想定する。
【0075】
このように、被測定者毎に、測定データ433から0mmHg調整保持時間を決定することができる。
【0076】
上述した開始時間決定部118および保持期間決定部119による処理の開始タイミングは次のように決定してもよい。
【0077】
たとえば、開始時間決定部118または保持期間決定部119による処理を実施した日付を記録しておき、直前の実施日から所定の日数が経過したと判定されたとき、または、前回の処理を実施した以後に新たに格納された測定データ433のレコード件数が所定数に達した時に自動的に処理が実行されるとしてもよい。
【0078】
または、自動的な実行開始に代替して、開始時間決定部118または保持期間決定部119による処理が実行可能な時期になったことを、表示部40を用いて被測定者に報知するようにしてもよい。そして、被測定者が操作部41の所定スイッチを操作したときに、開始時間決定部118または保持期間決定部119による処理が開始されるとしてもよい。
【0079】
(0mmHg調整の開始処理)
ここでは図1(B)で示される、電源スイッチ41Aと測定開始スイッチ41Bが兼用となっている電子血圧計1でその動作を説明する。なお、図1(B)で示される電子血圧計1においては、使用者選択スイッチはスライドスイッチのように、機構的に使用者選択が可能なスイッチとなっており、血圧計の電源が投入されたと同時にそのスイッチの状態を読み込むことで使用者が決定される。
【0080】
図11のフローチャートに示すように、開始時間決定部118または保持期間決定部119により決定された時間に基づき、0mmHg調整が開始される。
【0081】
起動部115は、CPU100が、血圧測定処理など他の処理を行っている期間を除く期間において、図11の手順に従ってゼロ点更新部113を起動するか否かを判定し、判定結果に基づきゼロ点更新部113を起動する。
【0082】
図11を参照して、起動部115は、メモリ43の時間データ432中の開始時間452それぞれと、タイマ45から入力する現在時間データとを比較する。そして、比較結果に基づき現在は0mmHg調整の開始時間であるか否かを判定する(S1)。
【0083】
開始時間452のいずれもタイマ45から入力する時間データと一致しないと判定する間は(S1でNO)、ステップS9の処理に移行する。開始時間452のいずれかとタイマ45から入力する時間データとが一致すると判定すると(S1でYES)、ステップS5の処理に移行する。
【0084】
起動部115はゼロ点更新部113を起動する。起動されたゼロ点更新部113により0mmHg調整が行われて(S5)、取得されたゼロ点はメモリ43にゼロ点431として格納される(S7)。これにより、メモリ43のゼロ点431は、新たに取得されたゼロ点によって上書きされて、更新される。
【0085】
その後、CPU100は、操作部41からの入力信号に基づき、電源スイッチ41Aが操作されたか否か、すなわち血圧測定開始の指示が入力されたか否かを判定する(S9)。
【0086】
電源スイッチ41Aが操作されたと判定すると(S9でYES)、後述する血圧測定処理に移行するが、操作されないと判定すると、処理はS1に戻り、以降の処理が同様に繰返される。
【0087】
(血圧測定処理)
図12を参照して、血圧測定処理について説明する。
【0088】
上述のように電源スイッチ41Aが操作(S9でYES)されて血圧測定開始の指示が入力されると血圧測定処理のための初期化処理が行われる(ST1)。たとえば、CPU100によってメモリ43の作業用領域が初期化される。
【0089】
次に、被測定者が電源スイッチ41Aを操作する前に、使用者選択スイッチ41Fを操作することで特定された使用者を特定する情報を入力する(ST2)。時間決定部116は、使用者の特定情報に基づき、メモリ43の時間データ432を検索する。検索結果に基づき、当該特定情報に一致するID442に対応の保持時間462を読出す(ST3)。
【0090】
次にCPU100は、圧力調整部111は、弁駆動回路54を介して弁52を閉じるように制御し、ポンプ駆動回路53を介してポンプ51を、カフ圧が所定圧まで加圧されるように制御する(ST5,ST6)。
【0091】
カフ圧が所定圧まで徐々に加圧される過程において、指標決定部110は発振回路33の出力信号に基づき、カフ圧を(式1)に基づきゼロ点431を用いて検出する。検出したカフ圧を所定圧と比較する(ST6)。比較結果に基づき、(カフ圧<所定圧)の条件が成立する間は加圧(ST5)が継続するが、(カフ圧≧所定圧)の条件が成立すると判定されると(ST6で“≧所定圧”)、圧力調整部111はポンプ駆動回路53を介してポンプ51を停止し、その後、カフ圧が徐々に減圧されるように、弁駆動回路54を介して弁52を徐々に開く(ST7)。
【0092】
血圧算出部112は、減圧過程に得られるカフ圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧を算出する(ST8)。血圧の算出は、メモリ43のゼロ点431を用いた(式1)に基づき算出されるカフ圧を用いる。
【0093】
血圧の算出により収縮期血圧および拡張期血圧が算出されると(ST9でYES)、弁52を開放しカフ20内の空気を排気する。また、血圧値の算出とともに、脈拍数が算出される。
【0094】
算出された血圧値・脈拍数は、タイマ45から入力した計時データに基づく測定日時とともに、表示処理部131によって表示部40に表示される(ST10)。
【0095】
また、指標決定部110は、算出された収縮期血圧値を、高血圧の基準血圧と比較し、比較結果に基づき高血圧に該当するか否かの判定をする。そして、アクセス部130を介して、メモリ43に、使用者の特定情報、測定日時、血圧値・脈拍数および高血圧判定結果を関連づけしたデータ443〜483からなるレコードを生成し、レコードを当該被測定者の測定データ433に格納する(ST11)。
【0096】
その後、CPU100は、操作部41からの入力信号に基づき、電源スイッチ41Aが操作(押下)されるか否かを判定する(ST12)。電源スイッチ41Aが操作されたと判定すると(ST12でYES)、時間決定部116は、ST3で読み出した保持時間462が示す時間期間が経過したか否かを判定する(ST13)。
【0097】
経過していないと判定すると(ST13でNO)、すなわち連続して血圧測定が行われる期間内であると判定すると、CPU100は、表示部40のみ電源を遮断し(ST15)、操作部41からの入力信号に基づき、電源スイッチ41Aが操作(押下)されるか否かを判定する(ST16)。
【0098】
電源スイッチ41Aが操作されたと判定すると(ST16でYES)、処理はST1に戻り、次の血圧測定処理が開始されるが、操作されないと判定されると(ST16でNO)、圧力センサ32の調整が実施される(ST17)。その後、処理はST13に戻り、ST13以降の処理が同様に繰返される。
【0099】
一方、電源スイッチ41Aが操作されていないと判定される(ST12でNO)としても、所定時間間隔で圧力センサ32の調整が実施される(ST14)。
【0100】
図12の処理によれば、電源スイッチ41Aにより電子血圧計1の電源OFFの指示が入力された後も、保持時間462が示す時間期間においては、ゼロ点431は更新されつづける。つまり、図13に示すように、イベント毎に開始時間決定部118により、複数回の血圧測定が終了するまでの期間は、電源スイッチ41Aにより電子血圧計1に対して電源OFFの指示が入力された後もゼロ点431が更新されつづける。
【0101】
このように、ゼロ点更新部113は電源スイッチ41Aにより電子血圧計1に対して電源OFFの指示が入力された後もゼロ点431を更新しつづけるため、複数回血圧測定を行う際、電源スイッチ41Aを投入するたびに圧力センサ32の調整完了を待機する必要がなくなる。
【0102】
また、圧力センサ32は大気圧との相対圧を検出するものであるが、電子血圧計1に対して電源OFFの指示が入力された後もゼロ点431が更新されつづけることから、測定環境下の大気圧の変化があったとしても正確な相対圧の検出が可能となる。
【0103】
また、ゼロ点431を更新した後に、次回更新までの間隔(インターバル)を、少なくとも保持時間462の長さだけは確保できるようにして、可変に変更することができる。
【0104】
上述の実施の形態では、0mmHg調整開始時間と0mmHg調整保持時間とを組合わせた処理としているが、一方の時間のみを参照した処理としてもよい。つまり、開始時間決定部118が決定した0mmHg調整開始時間にのみ基づいて0mmHg調整を行うようにして保持時間は考慮しないとしてもよい。また、0mmHg調整開始は所定時刻に行われるとして、保持期間決定部119が決定した保持時間内は0mmHg調整がされつづけるとしてもよい。電子血圧計1を両時間を組合わせて制御するか、一方のみの時間を参照して制御するかは、操作部41の操作によって切替え可能としてもよい。
【0105】
(システム構成)
上述の実施の形態では、電子血圧計1により0mmHg調整の開始時間および保持時間を決定するとしたが、図14のシステムを構成することにより、外部の情報処理装置がこれら時間を決定して、決定された時間のデータを電子血圧計1宛てに送信するようにしてもよい。
【0106】
図14を参照して、本実施の形態に係るシステムは、被測定者が使用する電子血圧計1、電子血圧計1と通信するホストコンピュータ220、および両者間を通信によって接続するための有線または無線のネットワークNTを含む。
【0107】
ここでは、電子血圧計1はホストコンピュータ220と直接に通信するとしているが、携帯電話、PDA(personal digital assistant)、パソコン(パーソナルコンピュータの略)などを通信の中継装置として利用して、電子血圧計1は、これら中継装置を介してホストコンピュータ220と通信するようにしてもよい。なお、ネットワークNTに代替して、記録媒体を介して情報を授受するようにしてもよい。
【0108】
図15には、ホストコンピュータ220のハードウェア構成が示される。ホストコンピュータ220は、全体の制御をするためのCPU(Central Processing Unit)301、予めプログラムやデータが格納されるROM(Read Only Memory)302、各種データを格納するRAM(Random Access Memory)303、タイマ304、ハードディスク306、ネットワークNTとホストコンピュータ220を接続するための通信I/F(Interface)307、出力部305、入力部308およびメモリカード310が着脱自在に装着されて、装着されたメモリカード310からデータを読出し、またはメモリカード310にデータを書込むための外部I/F(Interface)309を備える。
【0109】
出力部305は、表示部、印刷部、音声出力部などを含む。入力部308は、キーボード、マウスなどのポインティングデバイスなどを含む。外部I/F309に装着される記録媒体はカード状のものに限定されるものではない。
【0110】
図16のフローチャートを参照して、本システムでの0mmHg調整時間の決定に係る手順を説明する。
【0111】
まず、被測定者は、電子血圧計1をネットワークNTに接続し、操作部41を操作して0mmHg調整時間の最適化の指示を入力する。
【0112】
指示が入力されると、CPU100は、メモリ43から当該被測定者に対応する測定データ433を読出し(ST501)、通信I/F60を介してホストコンピュータ220宛てに送信する(ST503)。
【0113】
ホストコンピュータ220のCPU301は通信I/F307を介して測定データ433を受信する(ST510)。
【0114】
CPU301は、受信した測定データ433に基づき、0mmHg調整開始時間を決定する(ST512〜ST518)。この処理は図8で説明した手順と同様であるので、詳細は略す。
【0115】
CPU301は、決定した0mmHg調整開始時間のデータを通信I/F307を介して電子血圧計1宛てに送信する(ST520)。
【0116】
電子血圧計1のCPU00は、通信I/F60を介して、0mmHg調整開始時間のデータを受信し(ST505)、受信したデータを、メモリ43の時間データ432に当該被測定者の開始時間452として格納する(ST506)。その後、処理を終了する。
【0117】
ここでは、0mmHg調整開始時間の決定を説明したが、0mmHg調整保持時間の決定についても同様にしてホストコンピュータ220が図10に説明した手順を用いて決定し、電子血圧計1に送信することができる。
【0118】
(プログラム)
本実施の形態に係る各フローチャートに従う方法は、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CPU100またはホストコンピュータ220に付属する図示のないフレキシブルディスク、CD−ROM、ROM、RAMおよびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、ホストコンピュータ220に内蔵するハードディスク306などの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークNTを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0119】
たとえば、図3の構成では、CPU100を備えてコンピュータの機能を有する電子血圧計1には、メモリカード62などの各種記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU100は、外部I/F61を介して当該記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。また、図15の構成では、ホストコンピュータ220には、メモリカード310などの記録媒体を用いて当該プログラムを供給することができる。CPU301は外部I/F309を介して記録媒体に格納されたプログラムを読出し、実行する。
【0120】
提供されるプログラム製品は、ハードディスク306などのプログラム格納部にインストールされてCPU301により読出されて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0121】
(変形例)
本実施の形態は、勤務時間が不規則であるシフトワーカーなどに対応するように変形することができる。たとえば、勤務時間に合わせて被測定者がシフト時間を入力すると、0mmHg調整開始時間および保持時間をシフト時間を用いて変更するようにしてよい。
【0122】
また、休日の生活パターンは平日とは相違することに着目して、休日の測定データに基づき、休日用の0mmHg調整開始時間および保持時間を決定するようにしてもよい。
【0123】
また、0mmHg調整保持時間が5分と設定されており、その間に測定がなかったら、さらに保持時間を延長するとしてもよい。
【0124】
また、季節の変動により生活パターンが変わる場合もある。そこで、周囲の照度、気温変化を検出しておき、その変化があれば、時間決定部116による0mmHg調整の開始時間452および保持時間462を算出しなおすとしてもよい。
【0125】
本実施の形態では、電子血圧計1は机上に据え置くタイプであったが、手首装着タイプであってもよい。
【0126】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、上記した各実施の形態は、可能な限り組み合わされて実現されることが意図される。
【符号の説明】
【0127】
1 電子血圧計、110 指標決定部、111 圧力調整部、112 血圧算出部、113 ゼロ点更新部、114 ゼロ点検出部、115 起動部、116 時間決定部、117 情報取得部、118 開始時間決定部、119 保持期間決定部、130 アクセス部、131 表示処理部、220 ホストコンピュータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の測定部位に装着されるカフと、
前記カフに加える圧力を調整するための圧力調整部と、
前記カフ内のカフ圧を検出するための圧力センサと、
前記圧力調整部により圧力を調整する過程で前記圧力センサから出力される検出信号を用いて、血圧値を算出する算出部と、
前記カフに圧力を加えない無加圧状態における前記圧力センサの出力を指すゼロ点を前記圧力センサの0mmHgとして初期化または更新するための補正部と、を備え、
前記補正部による前記ゼロ点を初期化または更新するための補正時間を、血圧測定の時間情報に基づき可変に変更する、血圧測定装置。
【請求項2】
前記補正時間を決定する時間決定部を、さらに備え、
前記時間決定部は、
被測定者の血圧測定の時間情報を取得する情報取得部を、含み、
取得する前記時間情報に基づき、前記補正時間を決定する、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記算出部により前記血圧が算出される毎に、算出された血圧値と、測定時間とを関連付けた測定データを格納するための測定データ格納部を、さらに備え、
前記情報取得部は、
前記測定データ格納部の各測定データの測定時間に基づき、前記時間情報を取得する、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記補正時間は、前記ゼロ点の初期化処理を開始する開始時間を含む、請求項3に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記補正時間は、前記ゼロ点の更新処理を継続して行う時間を含む、請求項3または4に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記時間決定部は、
前記各測定データの測定時間から、所定間隔で連続して測定される回数を検出し、検出した回数に基づき、前記ゼロ点の更新処理を継続して行う時間を決定する、請求項5に記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記算出部により用いられる前記ゼロ点を格納するためのゼロ点格納部と、
前記圧力調整部によって前記カフに圧力を加えない無加圧状態を設定する手段と、をさらに備え、
前記補正部は、
前記無加圧状態が設定されているときに、前記圧力センサから出力される検出信号に基づき前記ゼロ点を検出するためのゼロ点検出部を、含み、
前記ゼロ点検出部により検出されるゼロ点を用いて、前記ゼロ点検出部のゼロ点を初期化または更新する、請求項1から6のいずれかに記載の血圧測定装置。
【請求項8】
外部の装置と通信するための通信部を、さらに備え、
前記補正時間の情報を、前記通信部を介して受信する、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項1】
被測定者の測定部位に装着されるカフと、
前記カフに加える圧力を調整するための圧力調整部と、
前記カフ内のカフ圧を検出するための圧力センサと、
前記圧力調整部により圧力を調整する過程で前記圧力センサから出力される検出信号を用いて、血圧値を算出する算出部と、
前記カフに圧力を加えない無加圧状態における前記圧力センサの出力を指すゼロ点を前記圧力センサの0mmHgとして初期化または更新するための補正部と、を備え、
前記補正部による前記ゼロ点を初期化または更新するための補正時間を、血圧測定の時間情報に基づき可変に変更する、血圧測定装置。
【請求項2】
前記補正時間を決定する時間決定部を、さらに備え、
前記時間決定部は、
被測定者の血圧測定の時間情報を取得する情報取得部を、含み、
取得する前記時間情報に基づき、前記補正時間を決定する、請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記算出部により前記血圧が算出される毎に、算出された血圧値と、測定時間とを関連付けた測定データを格納するための測定データ格納部を、さらに備え、
前記情報取得部は、
前記測定データ格納部の各測定データの測定時間に基づき、前記時間情報を取得する、請求項2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記補正時間は、前記ゼロ点の初期化処理を開始する開始時間を含む、請求項3に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
前記補正時間は、前記ゼロ点の更新処理を継続して行う時間を含む、請求項3または4に記載の血圧測定装置。
【請求項6】
前記時間決定部は、
前記各測定データの測定時間から、所定間隔で連続して測定される回数を検出し、検出した回数に基づき、前記ゼロ点の更新処理を継続して行う時間を決定する、請求項5に記載の血圧測定装置。
【請求項7】
前記算出部により用いられる前記ゼロ点を格納するためのゼロ点格納部と、
前記圧力調整部によって前記カフに圧力を加えない無加圧状態を設定する手段と、をさらに備え、
前記補正部は、
前記無加圧状態が設定されているときに、前記圧力センサから出力される検出信号に基づき前記ゼロ点を検出するためのゼロ点検出部を、含み、
前記ゼロ点検出部により検出されるゼロ点を用いて、前記ゼロ点検出部のゼロ点を初期化または更新する、請求項1から6のいずれかに記載の血圧測定装置。
【請求項8】
外部の装置と通信するための通信部を、さらに備え、
前記補正時間の情報を、前記通信部を介して受信する、請求項1に記載の血圧測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−213444(P2012−213444A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79322(P2011−79322)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
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