説明

血圧計

【課題】血圧値だけではなく、血圧計測途中の状態を直感的に提示することができる血圧計を提供すること。
【解決手段】血圧計1は、脈波成分を抽出する脈波フィルタ31、脈波成分を増幅する5倍増幅器33、及び血圧成分を抽出する圧力フィルタ32から構成される信号処理部16を備え、CPU20は、測定結果表示処理を実行することにより表示部19の測定結果表示画面100に、現在のカフ圧を示す圧成分表示111と、現在の脈波の大きさを示す脈波成分表示112と、水銀柱の目盛り113からなる水銀柱表示110を表示する。特に、水銀柱表示110の基部に、血圧成分に対応する圧成分表示111を表示し、その上端に脈変化に対応する脈波成分表示112を異なる色で表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフを用いて血圧を計測する血圧計に関し、特に、オシロメトリック式の血圧測定が可能な血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な血圧計測法の一つにオシロメトリック法と呼ばれるものがある(例えば特許文献1参照)。オシロメトリック法では、上腕に巻回したカフに対する空気の給排気によりカフ圧の加減圧を行い、その際に検出される脈波において、振幅増大が相対的に顕著な時(或いは振幅が最大値に対する特定の割合を超えた時等)のカフ圧を収縮期血圧(最高血圧)として判定し、振幅減少が相対的に顕著な時(或いは振幅が最大値に対する特定の割合を下回った時等)のカフ圧を拡張期血圧(最低血圧)として判定する。
【0003】
また、主に民生用に血圧値をデジタル表示する自動血圧計が普及している。
【特許文献1】特開2007−44437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の血圧計にあっては、血圧値がデジタル表示されるだけであり、血圧計測途中の状態を直感的に知ることはできない。また、計測中に例えば不整脈や体動などがあったとしても測定中に表示される血圧値を見ただけでは分からない。この場合、測定値の信頼性が低下する。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、血圧値だけではなく、血圧計測途中の状態を直感的に提示することができる血圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の血圧計は、カフを用いてカフ圧のデータを測定する測定手段と、測定されたカフ圧のデータに基づいて、血圧成分と脈波成分とを抽出する抽出手段と、抽出された前記血圧成分と前記脈波成分とを関連付け、かつ前記血圧成分と前記脈波成分とをそれぞれ視認可能に表示する計測表示データを生成する生成手段と、生成された計測表示データを画面に表示する表示手段と、を備える構成を採る。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、血圧値だけではなく、血圧計測途中の状態を直感的に提示することができる。計測途中の血圧を表示しつつ、計測途中の脈の微小な変化についても分かりやすく表示するので、計測中の不具合を未然に察知することができ、信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態に係る血圧計の構成を示すブロック図である。本実施の形態の血圧計は、オシロメトリック式の血圧測定を実施する自動血圧計に適用した例である。
【0010】
図1において、血圧計1は、カフ10、ホース11、管12、圧力センサ13、ポンプ14、排気弁15、信号処理部16、ポンプ駆動部17、弁駆動部18、表示部19、CPU(Central Processing Unit)20、操作部21及び記憶部22を有する。
【0011】
カフ10は、被検者の血圧測定部位、例えば上腕部に巻回可能な帯状体であり、内部に、ホース11及び管12を介してポンプ14と連通する空気袋(図示せず)を有する。空気袋は、内部空間への空気導入及び排気により膨縮可能である。空気袋は、カフ10の幅方向(巻回時の幅方向)の中央部に位置合わせされて設けられている。したがって、給気により膨張すると中央部の厚さは端部の厚さよりも大となるため、カフ10は、血圧測定時に一定幅をもって測定部位を圧迫するが、その圧迫力は、中央部の方が端部に比べて強力となる。
【0012】
圧力センサ13は、例えば半導体圧力センサを用いる圧力−電気変換器であり、管12に設けられている。圧力センサ13は、カフ10の空気袋の空気圧(カフ圧)を電気信号に変換しこれをカフ圧信号として信号処理部16に出力することにより、カフ圧の測定を行う。
【0013】
ポンプ14は、管12及びホース11を介してカフ10の空気袋に給気することにより、カフ圧を加圧する。ポンプ駆動部17は、CPU20からの指示信号に従ってポンプ14の駆動信号をポンプに出力してポンプ14を駆動する制御回路を有し、ポンプ14からカフ10への給気の開始及び停止を行う。
【0014】
排気弁15は、例えば電磁式の弁であり、管12に設けられている。排気弁15は、閉弁時はカフ10の空気袋からの排気を防止し、開弁時はカフ10の空気袋内の空気をホース11及び管12を介して排気する。弁駆動部18は、CPU20からの指示信号に従って排気弁15の駆動信号を出力して排気弁15を駆動する制御回路を有し、排気弁15の開度を調節する。
【0015】
信号処理部16は、増幅器30、脈波フィルタ31、圧力フィルタ32、5倍増幅器33、及びアナログディジタル(A/D)変換器34から構成される。
【0016】
増幅器30は、圧力センサ13により測定されたカフ圧信号を増幅し、増幅したカフ圧信号を、脈波フィルタ31、圧力フィルタ32、及びA/D変換器34にそれぞれ出力する。
【0017】
脈波フィルタ31は、増幅後のカフ圧信号から、脈波を抽出する周波数成分のみを通過させるバンドパスフィルタ(BPF)からなる。脈波の周波数成分は、カフ圧信号に対して比較的低いのでBPFの次数は低次(一次)でよい。
【0018】
圧力フィルタ32は、カフ圧信号を平均化又は平滑化し、血圧値を得る平均フィルタ(平滑フィルタ)である。具体的には、圧力フィルタ32は、増幅後のカフ圧信号から高帯域雑音を除去する濾波を行うローパスフィルタ(LPF)からなる。
【0019】
5倍増幅器33は、脈波フィルタ31からの脈波成分を、強調表示のために所定倍(ここでは5倍)増幅する。
【0020】
A/D変換器34は、5倍増幅器33により5倍増幅された脈波成分、圧力フィルタ32からの濾過後のカフ圧信号、及び増幅器30からの増幅後のカフ圧信号(測定生データ)をそれぞれA/D変換する。A/D変換器34は、A/D変換後の3種の信号をカフ圧データとしてCPU20に出力する。カフ圧データは、カフ圧の波形を示すものであり、血圧測定時には、カフ圧の波形には、被検者の脈波を表す信号成分である脈波成分等が重畳されている。
【0021】
本実施の形態の信号処理部16は、(1)従来、増幅後のカフ圧信号から高帯域雑音を除去する濾波を行う目的で設けられていたLPFを、カフ圧信号を平均化又は平滑化のための圧力フィルタ32として用いる。このため、LPFの特性は、高帯域雑音除去に加えて、カフ圧の波形の平均をとるような平均フィルタ特性とすることが好ましい。したがって、圧力フィルタ32出力には、脈波成分等は重畳されず、血圧そのものの血圧成分(図4により後述する)となる。この圧力フィルタ32は、脈波成分と同様にカフ圧の波形に重畳され得る呼吸波の成分を、脈波成分に混入しないようフィルタリングにより除去又は分離することが好ましい。
【0022】
(2)一方、圧力フィルタ32と並列に脈波フィルタ31を設け、その後段に5倍増幅器33を設置する。脈波フィルタ31は、圧力フィルタ32が脈波成分を濾過するのとは逆に、被検者の脈波を表す信号成分である脈波成分のみを通過させるフィルタである。CPU20による測定結果表示処理で、血圧に重畳する脈波を強調表示するため、圧力フィルタ32からのフィルタ出力は、5倍増幅器33により5倍に増幅される。なお、5倍は例示であり、他の倍数であってもよく、倍数を可変可能であってもよい。
【0023】
(3)上記(1),(2)は、測定結果表示のためのフィルタ処理系である。計測データの分析、数値表示、記憶のためには、フィルタ処理を施さない計測データ(測定生データ)が必要である。このため、フィルタ処理系に分岐する前の圧力センサ13により測定されたカフ圧信号を直接A/D変換器34に入力する経路を設けている。
【0024】
このように、圧力センサ13により測定されたカフ圧信号は、増幅器30による増幅後、脈波フィルタ31及び5倍増幅器33により脈波を抽出する経路と、圧力フィルタ32により血圧を抽出する経路と、フィルタ処理系を通らず直接A/D変換器34に入力する経路とに分岐してA/D変換器34に入力され、A/D変換器34は、各経路の信号のA/D変換を行い、A/D変換後の信号をカフ圧データとしてCPU20に出力する。
【0025】
ポンプ14、ポンプ駆動部17、排気弁15及び弁駆動部18は、カフ10の空気袋に対し給排気を行うことによりカフ圧の加減圧を行う加減圧部を構成する。
【0026】
表示部19は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)及び各ドライバ等で構成され、CPU19からの指示信号に従って画面に情報を表示する。
【0027】
CPU20は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することで、血圧計1内の各部の動作を制御し、血圧計1において、取得手段や検出手段、判定手段等としての様々な機能を実現する。
【0028】
操作部21は、血圧計1の筐体(図示せず)上に設けられた押しボタン(図示せず)を有し、押しボタンが押下されたときにその旨を示す操作信号を生成してCPU20に出力する。操作部21は、例えば電源投入ボタンや血圧測定開始ボタン、血圧測定停止ボタンを有する。
【0029】
記憶部22は、ROM、RAM及び電気的に書換可能な不揮発性メモリであるEEPROM(electrically erasable programmable ROM)などの半導体記憶装置である。ROMは、CPU20により実行されるソフトウェアプログラムや固定データを格納する。RAMは、血圧測定に関するデータ、演算に使用するデータ及び演算結果等を一時的に記憶するいわゆるワーキングメモリとして使用される。RAMの一部は、電源バックアップされるか、EEPROMからなり、本体電源OFFも血圧測定によって得られたデータを記憶する。
【0030】
以下、上述のように構成された血圧計1の動作について説明する。なお、ここでは、加圧時・減圧時の双方において血圧測定を行う場合を例として説明する。
【0031】
図2は、血圧計1の血圧測定動作を示すフローチャートであり、本フローはCPU20により所定タイミングで実行される。図中、Sはフローの各ステップである。
【0032】
まず、ステップS1では、CPU20は、血圧測定開始ボタンの押下時に操作部21で生成された操作信号を受信する。
【0033】
ステップS2では、CPU20は、この操作信号に従って、排気弁15を完全に閉止し全閉状態にさせる指示信号を弁駆動部18に出力する。
【0034】
ステップS3では、CPU20は、ポンプ14の駆動を開始させる指示信号をポンプ駆動部17に出力し、ポンプ14を始動させ、カフ10への給気を開始させる。
【0035】
ステップS4では、CPU20は、圧力センサ13を始動させ、被検者の例えば上腕に巻回されたカフ10内の空気圧(つまりカフ圧)の検出を開始させる。
【0036】
ステップS5では、CPU20は、リアルタイムで一次血圧測定(加圧時)の測定結果表示処理を行い、測定結果を画面に表示させる指示信号を表示部19に出力し、血圧測定の結果をリアルタイムでユーザ又は被検者に通知する。この測定結果表示処理については、図3により後述する。
【0037】
ステップS6では、CPU20は、信号処理部16から入力されるカフ圧データに示されたカフ圧が所定値に達したか否かを判別する。
【0038】
カフ圧が所定値に達した場合、ステップS7で、CPU20は、ポンプ14の駆動を停止させる指示信号をポンプ駆動部17に出力し、ポンプ14を停止させ、カフ10への給気を停止させる。カフ圧が所定値に達していない場合、上記ステップS5に戻る。
【0039】
なお、本実施の形態では、カフ圧が所定値に到達したことを条件に二次血圧測定(減圧時)に移行しているが、カフ加圧の停止は、最高血圧の測定値の取得をトリガとして実行されてもよい。
【0040】
一次血圧測定終了後、CPU20は、二次血圧測定を実行する。
【0041】
ステップS8では、CPU20は、排気弁15の開度を所定の低減圧速度に対応する値に調節し排気弁15を半開状態にさせる指示信号を弁駆動部18に出力し、カフ10からの排気を開始させる。
【0042】
ステップS9では、CPU20は、リアルタイムで二次血圧測定(減圧時)の測定結果表示処理を行い、測定結果を表示部19の画面に表示させる。この測定結果表示処理は、上記ステップS5と同一であり図3により後述する。
【0043】
ステップS10では、CPU20は、測定結果表示処理終了後、排気弁15の開度を所定の高減圧速度に対応する値に調節し排気弁15を全開状態にさせる指示信号を弁駆動部18に出力し、カフ10からの排気を高速化させ、ステップS11で、CPU20は、圧力センサ13の動作を停止させる。
【0044】
以上のようにして、血圧測定動作が行われる。
【0045】
図3は、血圧計1の測定結果表示処理を示すフローチャートであり、図2のステップS5又はステップS9のサブルーチンコールにより呼出され実行される。
【0046】
ステップS21では、CPU20は、信号処理部16からカフ圧データを取得する。カフ圧データは、カフ圧の波形を示すものであるが、信号処理部16から入力されるカフ圧データは一系統ではなく、信号処理部16により3系統に分けられた信号がそれぞれ入力される。すなわち、CPU20は、信号処理部16から(1)脈波フィルタ31により被検者の脈波を表す信号成分である脈波成分のみを通過し、かつその脈波成分を5倍増幅器33により5倍に増幅した脈波成分、(2)圧力フィルタ32により脈波成分等が除去されると共に平均化され、血圧そのものを示す血圧成分、(3)フィルタ処理を施さない計測データ(測定生データ)をそれぞれ取得する。このうち、計測データ(測定生データ)は、測定結果表示処理とは直接関係しない測定時の基礎データとして記憶部22に記憶される。計測データ(測定生データ)が、測定結果表示用のデータと別に逐次保存されることで、不測の事態によるデータ消失などに対処することができる。また、フィルタリング処理を施さないデータは、心電図など他の生体測定データの照合の際、データの活用が容易である。
【0047】
ステップS22では、CPU20は、取得したカフ圧データが計測データ(測定生データ)か否かを判別する。計測データ(測定生データ)である場合は、ステップS23でCPU20は、記憶部22のデータ格納領域に記憶して図2のステップS5又はステップS9に戻る。上記データ格納領域は、例えば電源バックアップされたRAM、又はEEPROM領域である。
【0048】
上記ステップS22で取得したカフ圧データが計測データ(測定生データ)でないときは、ステップS24に進む。
【0049】
ステップS24では、CPU20は、取得したカフ圧データ(脈波フィルタ31からの脈波成分、圧力フィルタ32からの圧力データ)に基づいて、血圧計測表示データを生成する。血圧計測表示データの具体例については、図4乃至図6により後述する。
【0050】
ステップS25では、CPU20は、生成した血圧計測表示データとあらかじめ記憶部22に記憶された画面表示情報に基づいて、測定結果表示画面(図4乃至図6参照)を作成する。
【0051】
ステップS26では、CPU20は、作成した測定結果表示画面を表示部19の表示画面に表示して図2のステップS5又はステップS9に戻る。
【0052】
以上のようにして、測定結果表示動作が行われる。
【0053】
図4は、表示部19の測定結果の表示画面例を示す図である。
【0054】
図4に示すように、測定結果表示画面100は、水銀式血圧計の水銀柱を模した水銀柱表示110と、計測されている脈波の大きさをカフ圧ごとに並べた複数の脈波振幅グラフ120と、水銀柱表示110の圧値と同じ数値をデジタル表記した現在圧値130と、血圧測定中であることを示し脈に同期して収縮・拡大するハートマーク140と、現在の脈拍数表示150と、前回及び前々回の最高/最低(平均)圧値及び脈拍数表示160とを有する。
【0055】
水銀柱表示110は、現在のカフ圧を示す圧成分表示111、現在の脈波の大きさを示す脈波成分表示112、及び水銀柱の目盛り113からなる。目盛り113は、カフ圧値をバーグラフ表示するためのスケールである。
【0056】
水銀柱表示110は、水銀式血圧計の水銀柱を模しているため、測定結果表示画面100の左端部に水銀柱をイメージさせるような直立したバーグラフにより表示される。なお、バーグラフ表示を棒グラフに代えて円柱形にする、あるいは装飾を施すなど変形を加えてもよい。
【0057】
水銀柱表示110の右側には、脈波の振幅変化のトレースを表示する脈波振幅グラフ120が表示される。
【0058】
また、測定結果表示画面100は、上段にID番号171、紙送り172、音量173の各設定情報を有し、下段にカフ装着腕174a,174b、カフ圧増圧/減圧175a,175b、削除176、表示177、記録178、及び検査切替179の各設定ボタンを有する。上記各設定情報及び設定ボタンは、操作部21(図1)のキー操作により設定可能である。また、操作部21の一部は、表示部19上に設けられたタッチパネルであってもよく、この場合は表示部19に表示されたソフトキーからなる各設定ボタンをタッチして選択する。
【0059】
本実施の形態の血圧計1は、オシロメトリック法を用いた血圧計測を行う。
【0060】
オシロメトリック法での血圧計測方法は、カフ10に空気を送りこみ、十分加圧する。その後、カフ10から空気を抜いていき、カフ内圧の減少に伴い、脈によりカフ内の圧力が微小変動する。以下、この微小変動を、血圧成分と呼ぶ。血圧成分は、図1の血圧計1では、信号処理部16の圧力フィルタ32により脈波成分等が除去されて平均化されることで抽出される。CPU20は、圧力フィルタ32のA/D変換後の値を血圧成分として取得する。また、この血圧成分は、図4に示す測定結果表示画面100の水銀柱表示110においては、圧成分表示111に対応して表示される。
【0061】
一方で信号処理部16は、脈波フィルタ31により被検者の脈波成分を抽出し、かつその脈波成分を5倍増幅器33により5倍に増幅した脈波成分をCPU20に出力する。CPU20は、5倍増幅器33のA/D変換後の値を脈波として取得する。また、この脈波は、図4に示す測定結果表示画面100の水銀柱表示110においては、脈波成分表示112に対応して表示される。
【0062】
血圧成分は、最初は大きくなり、平均血圧をピークとして、その後小さくなる。このトレンドから血圧を計測する。血圧測定動作については、図2のフローにより説明した。
【0063】
本実施の形態の血圧計1は、カフ圧を水銀柱表示することそれ自体に特徴があるのではなく、水銀柱表示110において、バーグラフ表示の基部に、上記血圧成分に対応する圧成分表示111を表示し、その圧成分表示111の上端に重畳して脈波成分表示112を表示することを特徴とする。計測中には、圧成分表示111は微小変動して現在のカフ圧をバーグラフ表示する一方、脈波成分表示112は圧成分表示111の上部に載る形で、現在の脈波の大きさを表示する。脈波成分表示112は、現在の脈波の大きさに従って表示される。脈波成分表示112に表示される脈波は、視認性を高めるため測定値を所定倍(ここでは5倍)して表示される。また、脈波成分表示112は、圧成分表示111と異なる目立つ色(例えば、ピンク色)で表示される。
【0064】
信号処理部16(図1)は、圧力フィルタ32により血圧成分を抽出する経路、脈波フィルタ31及び5倍増幅器33により脈波成分を抽出する経路、フィルタ処理をスルーし計測データ(測定生データ)を出力する経路の、3系統を並列に信号処理する。また、信号処理部16は、電子回路によるハードウェア構成でありプログラム処理ではない。並列処理であること及びハードウェア構成であることにより、遅れを発生させずに各信号(脈振,幅脈波成分,計測データ)を得ることができる。したがって、CPU20は、入力される各信号に遅れがないことから、リアルタイムで血圧成分を圧成分表示111に表示するとともに、脈波成分を圧成分表示111の上端に表示することができる。
【0065】
また、並列処理であること及び遅れがないことにより、脈波成分表示112は、圧成分表示111の信号処理の遅延等の影響を受けず、脈波成分の挙動がそのまま現われることになる。脈波成分表示112は、時々刻々と変動する。これに対し、圧成分表示111はカフ圧に対する血圧成分であるため極端な変動はない。水銀柱表示110は、圧成分表示111の上端に脈波成分表示112が載る形となっているため、水銀柱をイメージした圧成分表示111によってカフ圧を直感的に見分けることができ、かつ時々刻々と変動する脈波成分表示112によって、計測の臨場感を喚起することができる。これは血圧測定の信頼性のイメージ向上、延いては血圧測定の楽しさにもつながることが期待できる。
【0066】
図5は、水銀柱表示110と脈波振幅グラフ120を説明する図であり、図5(a)は計測中の状態を、図5(b)は計測終了後の状態を示す。
【0067】
図5(a)左側は、カフ圧が101mmHgの時の水銀柱表示110の表示例である。現在の圧力は、圧成分表示111のバーグラフ表示で示される。また、この時点の脈変化は、圧成分表示111の上端に載せた脈波成分表示112のバーグラフ表示で示される。脈波成分(脈波成分表示112)は、5倍程度に拡大し、色を変えて圧力値(圧成分表示111)の上に表示する。
【0068】
このような水銀柱表示110を時間軸方向で見た状態が図5(a)右側の波形グラフである。脈波振幅グラフ120においても、水銀柱表示110の場合と同様に、脈波成分122が計測中のカフ圧121に重畳している。
【0069】
図5(b)は、計測終了後の状態であり、水銀柱表示110は表示されない。図5(b)右側の波形グラフを見ると、脈波成分122がカフ圧121に重畳している。
【0070】
このように、脈波振幅グラフ120のカフ圧121に脈波成分122を載せて表示する表示方法、並びに水銀柱表示110の圧成分表示111に脈波成分表示112を載せて表示する表示方法によって、脈の微小な変化までをはっきりと視認できる。
【0071】
図6は、水銀柱表示110の表示画面を説明する図である。
【0072】
上述したように、脈波成分表示112は、圧成分表示111と変動要因が異なるため、圧成分表示111の変化の挙動と異なる変動タイミングで表示される。例えば、図6に示すように、圧成分表示111のカフ圧が109mmHgで変化していなくても脈波成分表示112の脈波成分は、変化する(脈波成分が0も含む)。すなわち、ある時点の脈変化は、圧成分表示111の上端に載せた脈波成分表示112のバーグラフ表示で示されることで、脈の微小な変化までをはっきりと視認できる。
【0073】
以上のように、本実施の形態によれば、血圧計1は、脈波成分を抽出する脈波フィルタ31、脈波成分を増幅する5倍増幅器33、及び血圧成分を抽出する圧力フィルタ32から構成される信号処理部16を備え、CPU20は、測定結果表示処理を実行することにより表示部19の測定結果表示画面100に、現在のカフ圧を示す圧成分表示111と、現在の脈波の大きさを示す脈波成分表示112と、水銀柱の目盛り113からなる水銀柱表示110を表示する。特に、水銀柱表示110の基部に、血圧成分に対応する圧成分表示111を表示し、その上端に脈変化に対応する脈波成分表示112を異なる色で表示する。この脈波成分は、5倍増幅器33により増幅されることで拡大表示される。また、水銀柱表示110の右側には、脈波の振幅変化のトレースを示す脈波振幅グラフ120を表示する。なお、正確な数値は、水銀柱表示110と共に表示されるデジタル表記の現在圧値130を確認すればよい。
【0074】
これにより、圧力と血圧成分を同時に表示することができ、血圧値の提示ではなく、血圧計測途中の状態を直感的に提示することができる。以下、効果を具体的に説明する。
【0075】
オシロメトリック法を用いた血圧計測では、血圧測定上昇時、平均血圧通過し、血圧成分が十分減少後、加圧が終了していること、また血圧測定減圧時、脈のトレンドが正確に計測していること、を確認する必要がある。
【0076】
昔ながらの水銀柱での確認では、脈変化は水銀柱の目盛上では微小なため、脈の微小な変化までは分からない。また従来、波形やインジケータで血圧成分を表示する血圧計もある。しかし、現在圧と血圧成分は別個の表示となるため、見づらいばかりか情報が分断されることでイメージがつかみ難い。
【0077】
本実施の形態の血圧計は、水銀柱表示110の圧成分表示111によって血圧を確認しつつ、脈の変化分は脈波成分表示112によって直感的にはっきりと視認することができる。上記効果に加えて、本実施の形態では、以下の効果を期待することができる。
【0078】
(1)昔から医療施設で慣れ親しまれた水銀柱式の血圧計と同様なアナログ的バーグラフ表示形態でなじみ易く、計測値への信頼も高い。
【0079】
(2)擬似水銀柱表示の頭頂に、脈の変化分を大きくして表示するので、不整脈が有ったことが把握し易い。
【0080】
(3)擬似水銀柱表示の頭頂部の脈で変化する部分は、下部の擬似水銀柱とは異なった色としているので、容易に見分けることができる。
【0081】
(4)擬似水銀柱表示の頭頂部の脈で変化する部分の振れの大きさで、脈の大きさが分かり、脈の大きさから計測値の信頼度も直感的に分かる。
【0082】
(5)擬似水銀柱表示の全体的な高さから、概ねの血圧値が予測されるので、機械による自動計測値が大きく間違っていた場合、この間違いを判定しやすい。
【0083】
(6)脈の触れが小さな女性や肥満の人でも、脈を判別し易い。
【0084】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成および使用時の動作についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【0085】
例えば、本実施の形態では、血圧計において上記の血圧測定法を実現したが、動脈硬化度測定装置等、他の医療機器において実現することもできる。
【0086】
また、本実施の形態では、血圧計という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、自動血圧計、電子血圧計等であってもよいことは勿論である。
【0087】
さらに、上記血圧計を構成する各部、例えば信号処理部のフィルタ種類、その数及び接続方法などはどのようなものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施の形態に係る血圧計の構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態に係る血圧計の血圧測定動作を示すフロー図
【図3】本発明の一実施の形態に係る血圧計の測定結果表示処理を示すフロー図
【図4】本発明の一実施の形態に係る血圧計の表示部の測定結果の表示画面例を示す図
【図5】本発明の一実施の形態に係る血圧計の水銀柱表示と脈波振幅グラフを説明する図
【図6】本発明の一実施の形態に係る血圧計の水銀柱表示の表示画面を説明する図
【符号の説明】
【0089】
1 血圧計
10 カフ
13 圧力センサ
14 ポンプ
15 排気弁
16 信号処理部
17 ポンプ駆動部
18 弁駆動部
19 表示部
20 CPU
21 操作部
22 記憶部
30 増幅器
31 脈波フィルタ
32 圧力フィルタ
33 5倍増幅器
34 A/D変換器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフを用いてカフ圧のデータを測定する測定手段と、
測定されたカフ圧のデータに基づいて、血圧成分と脈波成分とを抽出する抽出手段と、
抽出された前記血圧成分と前記脈波成分とを関連付け、かつ前記血圧成分と前記脈波成分とをそれぞれ視認可能に表示する計測表示データを生成する生成手段と、
生成された計測表示データを画面に表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする血圧計。
【請求項2】
前記生成手段は、前記血圧成分及び前記脈波成分を、バーグラフ形式で表示する計測表示データを生成することを特徴とする請求項1記載の血圧計。
【請求項3】
前記生成手段は、前記血圧成分及び前記脈波成分を、水銀柱を模して表示する計測表示データを生成することを特徴とする請求項1記載の血圧計。
【請求項4】
前記抽出手段は、第1フィルタにより前記脈波成分を抽出する信号処理部であることを特徴とする請求項1記載の血圧計。
【請求項5】
前記抽出手段は、前記第1フィルタと並列に設けられた第2フィルタにより前記血圧成分を抽出する信号処理部であることを特徴とする請求項4記載の血圧計。
【請求項6】
前記表示手段は、前記計測表示データをリアルタイムで前記画面に表示することを特徴とする請求項1記載の血圧計。
【請求項7】
前記表示手段は、前記計測表示データをトレンドで前記画面に表示することを特徴とする請求項1記載の血圧計。
【請求項8】
抽出された前記脈波成分を所定倍増幅する増幅手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の血圧計。
【請求項9】
測定されたカフ圧のデータを、前記抽出手段を経由させることなく記憶部に記憶する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の血圧計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−154936(P2010−154936A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334531(P2008−334531)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】