説明

血小板凝集阻害剤の結晶多形の製法

本発明は、式(I)で表される(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-2-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル-酢酸メチル硫酸水素塩の結晶多形型1の新規な製法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【化1】

で表される(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-2-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル-酢酸メチル硫酸水素塩の結晶多形型1の新規な製法に関する。
【背景技術】
【0002】
(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-2-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル-アセテート硫酸水素塩(INN:クロピドグレル硫酸水素塩)は、公知の血小板凝集阻害剤である。
【0003】
クロピドグレル硫酸水素塩は、最初に、ヨーロッパ特許明細書第281,459号に開示された。この特許に対応するハンガリー国特許は、ハンガリー国特許第197,909号である。
【0004】
生成物は、融点182℃及び旋光度[α]D20=+51.61°(c=2.044g/100 ml, メタノール)によって特徴付けられる。生成物の結晶の型については述べられていない。
【0005】
クロピドグレル硫酸水素塩の結晶多形型は、初めて、フランス国特許出願第98/07464号に記載された。結晶多形型1は、X線回折パターン及び赤外線スペクトルによって特徴付けられる単斜晶系である。
【0006】
結晶多形型1の融点及び旋光度は、それぞれ、184℃及び[α]D20=+55.1°(c=1.891g/100 ml, メタノール)である。これらのデータに基づき、発明者らは、ヨーロッパ特許明細書第281,459号に記載された結晶多形型が結晶多形型1であると主張している。斜方晶系の結晶多形型2は、フランス国特許出願第98/07464号の明細書において、融点176℃によって特徴付けられている。
【0007】
引用した明細書によれば、結晶多形型1は、20℃において、クロピドグレル塩基のアセトン溶液に、等モル量の80%硫酸を添加することによって調製される。溶媒を一部蒸発し、残渣を0〜5℃に冷却し、沈殿物を濾取する。
【0008】
結晶多形型2は、結晶多形型1の調製プロセスから得られ、40℃以下において3〜6ヶ月保存された濾液から析出される。
【0009】
上記の特許明細書によれば、結晶多形型2も、クロピドグレル塩基をアセトンに溶解し、ついで、20℃において、種晶を使用することなく又は種晶の存在下、等モル量の80%硫酸を添加することによって調製される。反応混合物を2時間沸騰させ、ついで、溶媒を一部蒸発させ、残渣を−5℃に冷却して、沈殿した生成物を濾取するか、又は種晶を添加し、反応混合物を20℃において攪拌し、ついで、瀘過する。
【0010】
国際特許出願公開WO 02/059128号の明細書によれば、クロピドグレル硫酸水素塩の結晶多形型1は、クロピドグレル塩基の量について計算して3倍の量のアセトン中にクロピドグレル塩基を含有する溶液を、0〜5℃において、濃硫酸と反応させることによっても調製される。硫酸の添加後、さらに1部以上のアセトンを添加し、ついで、反応混合物を4時間攪拌する。続いて、融点185℃を持つ結晶多形型1を単離する。
【0011】
国際特許出願公開WO 03/051362号の明細書では、クロピドグレル硫酸水素塩の異なる溶媒による再結晶又はその溶液からの貧溶媒による析出によって、異なる結晶多形型のクロピドグレル硫酸水素塩が得られている。
【0012】
異なる結晶多形に対してローマ数字が付与されており、ここで、Iは本発明の結晶多形型1に相当し、IIは結晶多形型2に相当する。
【0013】
上記特許公開の明細書によれば、クロピドグレル硫酸水素塩の異なる溶媒からの再結晶により、2-プロパノールが使用される場合を除き、熱力学的に制御された結晶多形型2が形成される。2-プロパノールが使用される場合には、結晶多形型IVが形成される。
【0014】
クロピドグレル硫酸水素塩の溶液を蒸発乾固し、残渣を他の溶媒にて摩砕する場合、又はクロピドグレルの溶解度が乏しい他の溶媒(いわゆる、貧溶媒)を、クロピドグレル硫酸水素塩溶液に添加し、このようにして、得られる混合物における溶解度を低減し、クロピドグレル硫酸水素塩を沈殿させる場合には、他の結果が得られる。
【0015】
異なる溶媒/貧溶媒ペアを使用することによって、異なった結晶多形型が生成される。
【0016】
国際特許出願公開WO 03/051362号によれば、結晶多形型2は、クロピドグレル硫酸水素塩のアセトニトリル溶液にジエチルエーテルを添加することによって形成される。同じプロセスにおいて、溶媒としてメタノール又はアセトンを使用し、貧溶媒としてエーテルタイプの溶媒を使用する場合、生成物は、結晶多形型1又は無晶形のクロピドグレル硫酸水素塩である。
【0017】
結晶多形型1の生成物を得るためには、前記特許出願に記載されたすべての方法において、クロピドグレル硫酸水素塩溶液からの沈澱を行うため又は蒸発残渣を摩砕するためにエーテルタイプの貧溶媒が使用されている。
【0018】
上記例によれば、クロピドグレル硫酸水素塩及び選択した溶媒の相互作用の間に、いずれの結晶多形型が析出されるか又は他の型に変換されるかを予測することは不可能である。
【0019】
薬局方は、医薬有効成分の純度及び形態学的均一性に対して、高度の要求を課している。このような要求は、異なる結晶多形型の吸収がインビボにおいて異なるとの事実によって正当化される。
【0020】
初期段階では、クロピドグレル硫酸水素塩錠は結晶多形型1を含有していた。
異なる結晶多形型は、製造技術の観点からも異なる特性を有する。形態学的に均一な生成物は、一定の濾過性及び送達特性を有し、これらは、生成物の品質を高度の要求に適合させることを容易なものとする。
【0021】
より制御可能な技術は、経済的観点及び有効成分及び組成物の調製の観点からも有利である。
【0022】
薬局方の要求に適合する形態学的に均一でかつ純粋なクロピドグレル硫酸水素塩の、工業的に適用可能でありかつ再現可能である製法に関して、長い間の切実な要求があった。
【0023】
発明者らの経験では、結晶多形型1の調製は、仏国特許出願第98/07464号の明細書による方法の再現によっても、また、国際特許出願公開WO 02/059128号に記載された方法の再現によっても、許容できる程度には達成されない。
【0024】
国際特許出願公開WO 03/051362号は、所望の結晶多形型1を生成するためにいくつかの方法を開示しているが、これらの方法において使用される溶媒については、いくつかのものが示唆されているにすぎない。さらに、これらの方法では、いくつかのケースにおいて、無晶形と結晶多形型1との混合物が生成される。当該分野では、形態学的に均一な生成物を扱うことが好適であるため、このような混合物は望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目標は、形態学的に均一な結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩を生成するために各種の溶媒を使用できる新規な製法を提供することにある。この場合、溶媒は、製法の要件に応じて選択される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、式(I)で表される(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-2-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル-酢酸メチル硫酸水素塩の結晶多形型1を製造する新規な方法であって、
a)クロピドグレル塩基を「A」タイプの溶媒に溶解し、混合物に、硫酸又は硫酸と「A」又は「B」タイプの溶媒との混合物を添加し、得られたクロピドグレル硫酸水素塩を含有する混合物を、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩を含有する「B」タイプの溶媒の懸濁液形の混合物に添加するか、又は
b)クロピドグレル塩基を「A」及び「B」タイプの溶媒の混合物に溶解し、溶液に、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩を添加し、ついで、得られた混合物に、硫酸又は硫酸と「A」又は「B」タイプの溶媒との混合物を添加し、及び
続いて、瀘過し、任意に洗浄し、形成した沈殿物を乾燥することを特徴とする(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-2-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル-酢酸メチル硫酸水素塩の結晶多形型1の新規な製法に関する。
【0027】
本発明の基礎は、結晶多形型1の存在下、他の好適な溶媒を使用して、クロピドグレル硫酸水素塩を含有する溶液の極性を変化させる場合、結晶多形型1の形成が生ずるとの知見にある。
【0028】
発明者らの実験は、熱力学的により安定な結晶多形型2の生成が非常に有利であること、クロピドグレル硫酸水素塩と硫酸との反応では、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩の存在下であっても、結晶多形型2が形成されることを証明しているため、これは非常に驚くべきことである。
【0029】
クロピドグレル硫酸水素塩を含有する溶液から、使用した溶媒に応じて、異なった結晶多形型が析出することは公知である。発明者らが、クロピドグレル硫酸水素塩の製造に関して求めている技術的解決策が、異なったタイプの溶媒を使用する、再現可能かつ工業的に許容される方法であることは驚くべきことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明によれば、本発明の両変形において、「A」タイプの溶媒として、低極性の非プロトン性、双極性の非プロトン性又はプロトン性の溶媒が使用される。低極性の非プロトン性溶媒として、ハロゲン化溶媒、好ましくは脂肪族ハロゲン化溶媒、さらに好ましくはジクロロメタンが使用される。双極性の非プロトン性溶媒としては、ケトン、好ましくは低級脂肪族ケトン、さらに好ましくはアセトンが使用される。プロトン性溶媒としては、2-プロパノールが使用される。本発明の方法によれば、「B」タイプの溶媒として、無極性及び双極性の非プロトン性溶媒が使用される。無極性溶媒として、エーテル又は飽和炭化水素が使用される。エーテルとしては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、好ましくはジイソプロピルエーテルが使用される。飽和炭化水素としては、ヘキサン、シクロヘキサン又はヘプタンが使用される。双極性の非プロトン性溶媒としては、低級脂肪族エステル、好ましくは酢酸エチルが使用される。
【0031】
公知の方法による結晶多形型1の調製は困難を伴うものであることが見出されている。国際特許出願公開WO 99/065915号の明細書に記載された実施例は、当業者に対して、結晶多形型2の種晶の使用は結晶多形型2の調製にとって有利であり、さもなければ、結晶多形型1が形成されることを実証している。
【0032】
これらのデータは、結晶多形型1の調製が複雑でないことを示唆している。結晶多形型1の種晶を使用する場合には、予測される結果は結晶多形型1の析出であろう。
【0033】
上記の教示にもかかわらず、発明者らは、アセトン又は多数の異なる溶媒又はそれらの混合物を使用する場合、結晶多形型1を種晶として使用した場合又は使用しない場合のいずれにおいても、結晶多形型1は形成されないとの知見を得た。
【0034】
表1は、クロピドグレル硫酸水素塩の有機溶媒溶液の塩形成による析出の場合、より安定な結晶多形型2が得られることを表している。
【0035】
表に示す例は、クロピドグレル塩基溶液に、96w/w%硫酸をほぼ等モル量で添加して実施したものである。
【0036】
【表1】

【0037】
上記の例の1つの詳細な仕様を、比較例Aとして後述の実験部分に記載する。
【0038】
国際特許出願公開WO 03/051362号の明細書によれば、クロピドグレル硫酸水素塩を含有する有機溶液の極性を変化させる(生成物の溶解度を低減させる)ことによって、動力学的に制御された結晶多形型1が生成される。発明者らの実験では、示唆されたエーテルタイプの溶媒を「B」タイプの溶媒として使用したとしても、予測される結晶多形型1の代わりに、無晶形が得られることが実証された。
【0039】
下記の表に示す例では、クロピドグレル塩基の溶液に、96w/w%硫酸をほぼ等モル量で添加することによって生成物の調製を行っている。
【0040】
【表2】

【0041】
上記の例の1つの詳細な仕様を、比較例Bとして後述の実験部分に記載する。
【0042】
溶媒「B」が結晶多形型1の種晶を含有する場合には、クロピドグレル硫酸水素塩は結晶多形型1として形成される。
【0043】
本発明によれば、タイプ「A」又は「B」の溶媒として、異なるタイプの溶媒を使用することにより、結晶多形型1が再現可能に調製される。
【0044】
本発明に従って調製された結晶多形型1を有するクロピドグレル硫酸水素塩のX線回折データを表3に示す。測定条件は下記のとおりである:
装置:BRUKER D8 ADVANCED
スペクトル線:CuKα1(λ:1.54060Å),CuKα2(λ:1.54439Å)
モノクロメーター:グラファイト
電圧:40 kV
ゼロ−シグナル電流:30 mA
アクセサリ:ゲーデルミラー
ソラースリット
内標準物質:SRM 675
マイカ粉末(合成フッ素金雲母)Ser. No.:981307
連続測定θ/θ スキャン:5−35.00°2θ
ステップスケール:0.04°
サンプル:フラット表面、非粉砕、室温で保存及び測定
【0045】
【表3】

【0046】
本発明の重大な利点は、使用する溶媒が、当分野において公知のものと比べて、より多くのタイプの溶媒から選ばれ、選択された溶媒がクロピドグレル硫酸水素塩の結晶多形型1の製造について使用される技術に、再現可能なものとして容易に適用されることである。例えば、「A」タイプの溶媒としてのジクロロメタンの使用は、クロピドグレル塩基をそのカンフルスルホン酸塩から分離する際に、得られるクロピドグレル塩基の抽出に使用されるため、非常に有利である。本発明によれば、クロピドグレル硫酸水素塩は、溶媒の交換なしで、1ステップで結晶多形型1として得られる。このようにして、必要な時間及び化学物質のコストも低減できる。
【0047】
更なる詳細を以下に記載するが、本発明の範囲は実施例に限定されない。
【実施例1】
【0048】
結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩
アセトン130 ml中にクロピドグレル塩基32.2gを含有する溶液を攪拌し、10〜15℃に冷却し、ついで、96w/w%硫酸10.2gを添加した。得られた混合物を、攪拌下、0℃において、15〜20分間で、ジイソプロピルエーテル1000 ml中に結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩10gを含有する懸濁液に滴加した。反応混合物を、0℃において、さらに1時間攪拌し、濾過し、沈殿物を冷たいジイソプロピルエーテル100 mlずつで2回洗浄し、50℃において5日間乾燥した。
【0049】
このようにして、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩48g(90.5%)が得られた。生成物の融点は184℃であった。
【0050】
1H-NMR(DMSO-d6, i400):7.88(d, J=6.5Hz, 1H), 7.64(dd, J1=1.8Hz, J1=7.9Hz, 1H), 7.52(m, 2H), 7.42(d, J=5.1Hz, 1H), 6.87(d, J=5.1Hz, 1H), 5.57(b, 1H), 4.20(b, 4H), 3.74(s, 3H), 3.08(b, 2H)
13C-NMR:167.65, 134.38, 132.07, 131.89, 130.74, 128.46, 125.67, 124.92, 65.77, 53.57, 50.27, 48.86, 22.61
【実施例2】
【0051】
結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩
ジクロロメタン200 ml中にクロピドグレル塩基32.2gを含有する溶液を攪拌し、0℃に冷却し、ついで、96w/w%硫酸9.7gを添加した。混合物を、攪拌下、0℃において、15〜20分間で、ジイソプロピルエーテル850 ml中に結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩10gを含有する懸濁液に滴加した。反応混合物を、0℃において、さらに1時間攪拌し、濾過し、沈殿物を冷たいジイソプロピルエーテル100 mlずつで2回洗浄し、室温において5日間乾燥した。
【0052】
このようにして、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩47g(88.1%)が得られた。生成物の融点は184℃であった。
【0053】
1H-NMR(DMSO-d6, i400):7.88(d, J=6.5Hz, 1H), 7.64(dd, J1=1.8Hz, J1=7.9Hz, 1H), 7.52(m, 2H), 7.42(d, J=5.1Hz, 1H), 6.87(d, J=5.1Hz, 1H), 5.57(b, 1H), 4.20(b, 4H), 3.74(s, 3H), 3.08(b, 2H)
13C-NMR:167.65, 134.38, 132.07, 131.89, 130.74, 128.46, 125.67, 124.92, 65.77, 53.57, 50.27, 48.86, 22.61
【実施例3】
【0054】
結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩
2-プロパノール140 ml中にクロピドグレル塩基32.2gを含有する溶液を攪拌し、10〜15℃に冷却し、ついで、96w/w%硫酸10.2gを添加した。混合物を、攪拌下、0℃において、15〜20分間で、ジイソプロピルエーテル850 ml中に結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩10gを含有する懸濁液に滴加した。反応混合物を、0℃において、さらに1時間攪拌し、濾過し、沈殿物を冷たいジイソプロピルエーテル100 mlずつで2回洗浄し、室温において5日間乾燥した。
【0055】
このようにして、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩49g(92.8%)が得られた。生成物の融点は184℃であった。
【0056】
1H-NMR(DMSO-d6, i400):7.88(d, J=6.5Hz, 1H), 7.64(dd, J1=1.8Hz, J1=7.9Hz, 1H), 7.52(m, 2H), 7.42(d, J=5.1Hz, 1H), 6.87(d, J=5.1Hz, 1H), 5.57(b, 1H), 4.20(b, 4H), 3.74(s, 3H), 3.08(b, 2H)
13C-NMR:167.65, 134.38, 132.07, 131.89, 130.74, 128.46, 125.67, 124.92, 65.77, 53.57, 50.27, 48.86, 22.61
【実施例4】
【0057】
結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩
ジイソプロピルエーテル860 ml及び2-プロパノール140 mlの混合物中にクロピドグレル塩基32.2gを含有する溶液に、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩10gを添加した。懸濁液を攪拌し、0℃に冷却し、ついで、攪拌下、15〜20分間で、ジイソプロピルエーテル50ml及び96w/w%硫酸10.2gの混合物を滴加した。ついで、反応混合物を、0℃において、さらに1時間攪拌し、濾過し、沈殿物を冷たいジイソプロピルエーテル100 mlずつで2回洗浄し、室温において5日間乾燥した。
【0058】
このようにして、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩49g(92.8%)が得られた。生成物の融点は184℃であった。
【0059】
1H-NMR(DMSO-d6, i400):7.88(d, J=6.5Hz, 1H), 7.64(dd, J1=1.8Hz, J1=7.9Hz, 1H), 7.52(m, 2H), 7.42(d, J=5.1Hz, 1H), 6.87(d, J=5.1Hz, 1H), 5.57(b, 1H), 4.20(b, 4H), 3.74(s, 3H), 3.08(b, 2H)
13C-NMR:167.65, 134.38, 132.07, 131.89, 130.74, 128.46, 125.67, 124.92, 65.77, 53.57, 50.27, 48.86, 22.61
【実施例5】
【0060】
結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩
ジクロロメタン200 ml中にクロピドグレル塩基32.2gを含有する溶液を攪拌し、0℃に冷却し、ついで、96w/w%硫酸9.7gを添加した。混合物を、攪拌下、8〜10℃において、15〜20分間で、シクロヘキサン850 ml中に結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩10gを含有する懸濁液に滴加した。ついで、反応混合物を、8〜10℃において、さらに1時間攪拌し、濾過し、沈殿物を冷たいシクロヘキサン100mlずつで2回洗浄し、室温において5日間乾燥した。
【0061】
このようにして、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩49g(92.8%)が得られた。生成物の融点は184℃であった。
【0062】
1H-NMR(DMSO-d6, i400):7.88(d, J=6.5Hz, 1H), 7.64(dd, J1=1.8Hz, J1=7.9Hz, 1H), 7.52(m, 2H), 7.42(d, J=5.1Hz, 1H), 6.87(d, J=5.1Hz, 1H), 5.57(b, 1H), 4.20(b, 4H), 3.74(s, 3H), 3.08(b, 2H)
13C-NMR:167.65, 134.38, 132.07, 131.89, 130.74, 128.46, 125.67, 124.92, 65.77, 53.57, 50.27, 48.86, 22.61
【実施例6】
【0063】
結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩
ジクロロメタン200 ml中にクロピドグレル塩基32.2gを含有する溶液を攪拌し、0℃に冷却し、ついで、96w/w%硫酸10.2gを添加した。混合物を、攪拌下、20℃において、30分間で、酢酸エチル1000 ml中に結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩10gを含有する懸濁液に滴加した。ついで、反応混合物を、さらに15分間攪拌し、濾過し、沈殿物を冷たい酢酸エチル100mlずつで2回洗浄し、乾燥した。
【0064】
このようにして、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩44.5g(82%)が得られた。生成物の融点は184℃であった。
【0065】
1H-NMR(DMSO-d6, i400):7.88(d, J=6.5Hz, 1H), 7.64(dd, J1=1.8Hz, J1=7.9Hz, 1H), 7.52(m, 2H), 7.42(d, J=5.1Hz, 1H), 6.87(d, J=5.1Hz, 1H), 5.57(b, 1H), 4.20(b, 4H), 3.74(s, 3H), 3.08(b, 2H)
13C-NMR:167.65, 134.38, 132.07, 131.89, 130.74, 128.46, 125.67, 124.92, 65.77, 53.57, 50.27, 48.86, 22.61
【0066】
比較例A
結晶多形型2のクロピドグレル硫酸水素塩
(CLP-144)
アセトン119 ml中にクロピドグレル塩基38.6gを含有する溶液を、速度変更可能なアンカー形攪拌器を具備するSCHMIZOタイプのデュプリケーター(500 ml)に充填した。所望温度を維持するため、又は冷却及び加熱プログラムを達成するために、LAUDA RE-306タイプのプログラム制御可能なサーモスタットをデュプリケーターに接続した。サーモスタットにて、溶液の温度を6℃に調節した。溶液に結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩0.9gを添加した後、反応混合物の温度を20℃以下に維持しながら、濃硫酸6mlを5分間で添加した。結晶懸濁液を、5℃において、さらに4.5時間攪拌し、沈殿物を濾過し、冷たいアセトンで洗浄し、40℃において24時間乾燥した。
このようにして、結晶多形型2のクロピドグレル硫酸水素塩40.09g(80%)が得られた。
【0067】
比較例B
無晶形のクロピドグレル硫酸水素塩
ジクロロメタン140 ml中にクロピドグレル塩基32.2gを含有する溶液を攪拌し、10〜15℃の間に冷却し、ついで、96w/w%硫酸10.2gを添加した。混合物を、攪拌下、0℃において、15〜20分間で、ジイソプロピルエーテル850 mlに滴加した。ついで、反応混合物を、0℃において、さらに1時間攪拌し、濾過し、沈殿物を冷たいジイソプロピルエーテル100mlずつで2回洗浄した。
このようにして、無晶形のクロピドグレル硫酸水素塩39g(92.8%)が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

で表される(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-2-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル-酢酸メチル硫酸水素塩の結晶多形型1を製造する方法であって、
a)クロピドグレル塩基を「A」タイプの溶媒に溶解し、混合物に、硫酸又は硫酸と「A」又は「B」タイプの溶媒との混合物を添加し、得られたクロピドグレル硫酸水素塩を含有する混合物を、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩を含有する「B」タイプの溶媒の懸濁液形の混合物に添加するか、又は
b)クロピドグレル塩基を「A」及び「B」タイプの溶媒の混合物に溶解し、溶液に、結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩を添加し、ついで、得られた混合物に、硫酸又は硫酸と「A」又は「B」タイプの溶媒との混合物を添加し、及び
瀘過し、任意に洗浄し、形成した沈殿物を乾燥することを特徴とする、(S)-(+)-(2-クロロフェニル)-2-(6,7-ジヒドロ-4H-チエノ[3,2-c]ピリジン-5-イル-酢酸メチル硫酸水素塩の結晶多形型1の製法。
【請求項2】
「A」タイプの溶媒として、低極性の非プロトン性、双極性の非プロトン性又はプロトン性の溶媒又はその混合物を使用する、請求項1記載の製法。
【請求項3】
低極性の非プロトン性溶媒としてハロゲン化溶媒、及び好ましくは双極性の非プロトン性溶媒としてケトンを使用する、請求項1記載の製法。
【請求項4】
好ましくはハロゲン化溶媒、さらに好ましくは、ハロゲン化溶媒としてジクロロメタン、好ましくは低級アルキルケトン、さらに好ましくは、ケトンとしてアセトンを使用する、請求項3記載の製法。
【請求項5】
「B」タイプの溶媒として、非プロトン性、双極性の非プロトン性又は無極性の溶媒を使用する、請求項1〜4のいずれかに記載の製法。
【請求項6】
非プロトン性溶媒としてエーテルタイプに溶媒を使用する、請求項5記載の製法。
【請求項7】
エーテルタイプの溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジイソプロピルエーテル、好ましくはジイソプロピルエーテルを使用する、請求項6記載の製法。
【請求項8】
無極性の溶媒として、飽和アルキル炭化水素、好ましくは、シクロヘキサン、ヘキサン又はヘプタン、さらに好ましくはシクロヘキサンを使用する、請求項5記載の製法。
【請求項9】
双極性の非プロトン性溶媒として、エステルタイプの溶媒、好ましくは酢酸エチルを使用する、請求項5記載の製法。
【請求項10】
ジクロロメタンにクロピドグレル塩基を溶解し、得られた混合物を、攪拌下、0℃に冷却し、溶液に96w/w%硫酸を添加し、得られた混合物を、8〜10℃おいて、シクロヘキサン中に結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩を含有する懸濁液に添加し、ついで、濾過し、得られた沈殿物を乾燥する、請求項1記載の製法。
【請求項11】
ジクロロメタンにクロピドグレル塩基を溶解し、得られた混合物を、攪拌下、0℃に冷却し、溶液に96w/w%硫酸を添加し、得られた混合物を、20℃おいて、酢酸エチル中に結晶多形型1のクロピドグレル硫酸水素塩を含有する懸濁液に添加し、ついで、濾過し、得られた沈殿物を乾燥する、請求項1記載の製法。

【公表番号】特表2007−516167(P2007−516167A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516497(P2006−516497)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/HU2004/000070
【国際公開番号】WO2005/003139
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(591010077)
【氏名又は名称原語表記】EGIS GYOGYSZERGYAR
【Fターム(参考)】