説明

血液―脳隔壁エピトープとその利用

本発明は、膜間領域タンパク質30A(TMEM30A)の新たな抗原のアイソフォームの使用による、血液―脳隔壁を通過可能な試剤の同定および抗体の生成の方法を特徴とする。これは血液―脳隔壁を経ての移行の機構の確立に有用である。これらの抗原は他の内皮細胞に比して脳内皮において豊富であり、トランスフェリンおよびインシュリン受容体に比して脳輸送のよりよい選択性および容量を持ちうる。抗原の1つがTMEM30Aである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜間領域タンパク質30A(TMEM30A)の新たな抗原のアイソフォームの使用による、血液―脳隔壁を通過可能な試剤の同定および抗体の生成の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新たなラマ単一領域抗体、FC5およびFC44が同定されている。これらの抗体は脳内皮細胞の表面において抗原に結合し、それから脳内へ移行する。これらの抗体およびエピトープへの親和性を持つ他の接着質は、他の分子(治療、診断の)を脳へと輸送するベクターとして有用である。
血液―脳隔壁を経てトランスサイトーシスを受ける受容体に対する抗体が、脳への薬剤または治療ペプチドを標的とするベクターとして用いられている。生体外でヒト大脳内皮細胞を、生体内で血液―脳隔壁を経て移行する新たな単一領域抗体、FC5が近来、同定されている。ここで、FC5の血液―脳隔壁を経るヒト大脳内皮細胞上の、その推定上の受容体へのエンドサイトーシスおよびトランスサイトーシスの可能な機構を、FC5とその受容体への他の接着質とともに開示する。この受容体は脳標的薬剤配送ベクターを発達させる新たな標的となりうる。
脳毛細管内皮は、薬剤の中枢神経系への侵入に対する強固な隔壁を形成する。大脳内皮細胞(CEC)を封鎖する緊密な接合部は、治療薬剤を含む循環化合物が細胞間経路を経て脳に達することを防止する。CECの他の特異な特徴としては、開窓の欠如、ピノサイトーシス小胞の数が少ないこと、管腔表面の高い負電化を帯びた糖衣がある。流出ポンプの発現とCECの高酵素活性が、治療上の脳への配送に対するさらなる隔壁となる。
ペプチド、タンパク質およびオリゴヌクレオチドを含む生物工学製品は、トランスサイトーシスとして知られるCECを経る小胞輸送による脳への配送を為しうる。これは、配位子とCECの管腔表面で発現する成分の特異的あるいは非特異的な相互作用を要する過程であり、配位子のエンドサイトーシス小胞への内在化、内皮細胞質を経る移動、およびCECの外側面でのエキソサイトーシスを開始させる。CECにおける異なるエンドサイトーシス経路が述べられている。a)マクロピノサイトーシス、大型タンパク質の内在化のランダム経路、b)薬剤/生物工学製品と内皮表面の非特異的で電荷に基づく相互作用を介して開始される吸着媒介エンドサイトーシス(AME)、c)CEC上で発現する受容体の特異的な相互作用によって開始される受容体媒介エンドサイトーシス(RME)、である。AMEおよびRMEは、血液―脳隔壁(BBB)を経ての配送のための薬剤輸送ベクターの設計に利用されている。例えば、SynBベクター族等の陽イオン細胞貫通ペプチドは、温度・エネルギー依存AME過程による親水性分子のBBBを経ての配送の能力を持つ(ドリン他、2003年)。BBBを経てのRMEおよびトランスサイトーシスを受ける脳内皮抗原に特異的な抗体、特にアンチトランスフェリン受容体抗体(OX26)が、抗体に化学的に連結された、または抗体機能化担体(例えばイムノリポソーム)に包まれた生物工学製品の、BBBを経ての実験動物モデルでの輸送に用いられている。
目下、受容体媒介トランスサイトーシスを受ける、脳内皮細胞上で発現する受容体が少数知られている。インシュリン受容体、低濃度リポタンパク質依存タンパク質受容体(LRP)およびアンギオテンシンII受容体である。このうち、トランスフェリン受容体およびインシュリン受容体は、脳輸送ベクター(すなわち、これらの受容体を認識する抗体)の発達に利用されている。トランスフェリン受容体は他の器官に比して脳内皮において豊富であることが知られているが、トランスフェリン受容体およびインシュリン受容体は他の器官に広く分布しており、したがってこれらの’標的’の使用に選択的に完成された脳は限定される。
以下の文献に含まれるものは、本発明の特許性に関係するものではない。
【非特許文献1】Abulrob A., Zhang J., Tanha J., MacKenzie R. and Stanimirovic D. (2005). Single domain antibodies as blood brain barrier delivery vectors. Intern. Cong. Ser. 1277, 212-223.
【非特許文献2】Dehouck B., Fenart L., Dehouck MP.. Pierce A., Torpier G., and Cecchelli R. (1997) A new function for the LDL receptor: transcytosis of LDL across the blood-brain barrier. J. Cell Biol. 138, 877-889.
【非特許文献3】Demeule M., Poirier J., Jodoin J.. ef a/. (2002) High transcytosis of melanotransferrin(P97) across the blood-brain barrier. J. Neurochem. 83, 924-933.
【非特許文献4】Drin G., Cottin S., Blanc E., Rees A.R. and Temsamani J. (2003). Studies on the internalization mechanism of cationic cell-penetrating peptides. J. Biol. Chem. 278, 31192-31201.
【非特許文献5】Drin G., Rousselle C, Scherrmann J. M., Rees A.R. and Temsamani J. (2002). Peptide delivery to the brain via adsorptive-mediated endocytosis: advances with SynB vectors. AAPS PharmSci. 4, E26.
【非特許文献6】Fillebeen C, Descamps L., Dehouck M. P., Fenart L., Benaissa M., Spik G., Cecchelli R., and Pierce A. (1999) Receptor-mediated transcytosis of lactoferrin through the blood- brain barrier. J. Biol. Chem. 274, 7011-7.
【非特許文献7】Hayes G. R., Enns CA. and Lucas J.J. (1992). Identification of the O-linked glycosylation site of the human transferrin receptor. Glycobiology. 2, 355-359.
【非特許文献8】Moos T. and Morgan E. H. (2001). Restricted transport on anti-transferrin receptor antibody (0X26) through the blood-brain barrier in the rat. J. Neurochem. 79, 119-129.
【非特許文献9】Muruganandam A., Tanha J., Narang S. and Stanimirovic D. (2002). Selection of phage- displayed llama single-domain antibodies that transmigrate across human blood-brain barrier endothelium. FASEB J. 16, 240-242.
【非特許文献10】Qian Z. M., Li H., Sun H. and Ho K. (2002). Targeted drug delivery via the transferrin receptor-mediated endocytosis pathway. Pharmacol. Rev. 54, 561-587.
【非特許文献11】Suzuki T., Futaki S., Niwa M., Tanaka S., Ueda K. and Sugiura Y. (2002). Possible existence of common internalization mechanisms among arginine-rich peptides. J.Biol. Chem. 277, 2437-2443.
【非特許文献12】Tanha J., Muruganadam A. and Stanimirovic D. (2003). Phage display technology for identifying specific antigens on brain endothelial cells. Methods MoI. Med. 89, 435- 449.
【非特許文献13】Wessel D. and Flugge U.I. (1984). A method for the quantitative recovery of protein in dilute solution in the presence of detergents and lipids. Anal. Biochem. 138, 141-143.
【非特許文献14】Zhang J., Tanha J., Hirama T., Khieu N. H., To R., Tong-Sevinc H., Stone E., Brisson J. R. and MacKenzie CR. (2004). Pentamerization of single-domain antibodies from phage libraries: a novel strategy for the rapid generation of high-avidity antibody reagents. J. MoI. Biol. 335, 49-56.
【非特許文献15】Zhang J., Li Q., Nguyen T., Tremblay T., Stone E., Kelly J. and MacKenzie R. (2004). A pentavalent single domain antibody approach to tumor antibody discovery and the development of novel proteomics reagents. J. MoI. Biol. 341 , 161-9.
【発明の開示】
【0003】
本発明の第一の側面によって、少なくとも75%がSEQ ID NO.2のヌクレオチドと同定される、精製または分離された核酸分子が提供される。
【0004】
本発明の第二の側面によって、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.3の1から361のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.4の1から325のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.5の1から242のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.6の1から257のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.7の1から40のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.8の1から140のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.9の1から18のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.10の1から11のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.11の1から11のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.12の1から13のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.13の1から13のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.14の1から16のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、および
少なくとも75%の同定されたSEQ ID NO.15の1から16のアミノ酸を含むペプチドと共に試剤をインキュベートすること、および該試剤と該ペプチドとの結合の検出、
のいずれかからなる、血液―脳隔壁を経てのTMEM30A媒介トランスサイトーシスが可能な試剤の同定方法が提供される。
【0005】
本発明の第三の側面によって、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.14、SEQ ID NO.15のアミノ酸配列のいずれかの、少なくとも75%が同定され、精製または分離されたペプチドが提供される。
【0006】
本発明の第四の側面によって、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.14、SEQ ID NO.15のアミノ酸配列のいずれかの、6以上の連続したアミノ酸からなる、精製または分離されたペプチドが提供される。
【0007】
本発明の第五の側面によって、SEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.5、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO.7、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.14、SEQ ID NO.15のアミノ酸配列のいずれかの、6以上の連続したアミノ酸からなる、精製または分離されたペプチドおよび適当な賦形剤と共に目標物をインキュベートすることによって該ペプチドに対する免疫反応を生じる、血液―脳隔壁を経てのTMEM30A媒介トランスサイトーシスが可能な抗体の生成方法が提供される。好ましくは目標物はヒトではない動物である。当業者に理解されるように、様々な動物を目標物として用いる抗体に対する免疫反応を生じる手段は当該技術分野において既知である。特に、免疫化レジーム、補助剤、抗体回収方法、精製および分離は全て、様々な目標物について既知であり確立されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
細胞生物学、生物化学、免疫化学および分子生物学の手法の組み合わせを用い、血液―脳隔壁に関連する新たな抗原が同定されている。これは血液―脳隔壁を経ての移行の機構を確立するのに有用である。これらの抗原は他の内皮細胞に比して脳内皮細胞において豊富で、トランスフェリンおよびインシュリン受容体に比して選択性および脳への配送能力に優れているかもしれない。
この例において、血液―脳隔壁抗原を認識し血液―脳隔壁を経て移行される単一領域抗体FC5が検討される。
本発明は特定の機構または作用携帯に限定されず、仮定される機構は一般的関心の元に述べられる。
【0009】
BBBを経てのFC5移行の機構:
1. 脳内皮細胞上の推定上の受容体へ結合し、受容体媒介トランスサイトーシスとして知られる機構によってFC5は移行される。
2. FC5はクラスリン被覆穴において脳内皮に内在化され移行される。
3. FC5移行はエネルギー依存であり可飽和である。
4. FC5移行には非損傷細胞骨格ネットワークが必要である。
5. FC5移行はPl3キナーゼ活性に依存する。
【0010】
FC5抗原、TMEM30A(SEQ ID NO:2)の分離と同定についても述べる。ここで述べるように、FC5抗原のTMEM30Aへの結合によって血液―脳隔壁を経てFC5が移行される。
【0011】
FC5に認識される抗原:
1. α(2、3)結合シアル酸残余はFC5に認識される抗原エピトープの構成要素である。
2. FC5に認識される抗原はシアルタンパク質および非シアル脂質(ガングリオシド)である。
3. FC5の推定上タンパク質抗体上のα(2、3)結合シアル酸残余の認識はFC5の脳内皮細胞を経てのエンドサイトーシスと移行に必要である。
4. α(2、3)結合シアル酸残余は完全なFC5に認識される抗原の単なる構成要素である。
5. トランスフェリン受容体はFC5に認識されない。
6. FC5に対するファージ表示ヒト脳cDNA発現ライブラリのパニングによってSEQ ID NO:1が引き出された。
7. TMEM30Aと共に配列されるSEQ ID NO.2を遺伝子が除去する。
8. TMEM30AmRNAの組織分布は図11に示される。脳組織において強い発現が示された。
9. TMEM30AmRNAの細胞分布は図12に示される。内皮細胞において強い発現が示される。
10. HEK293細胞において過剰発現したTMEM30AはFC5によって免疫沈降された(図14)。
【0012】
よって、TMEM30Aに結合する化合物、分子または試剤は血液―脳隔壁を経てのTMEM30A媒介転移が可能であることが示されている。続いて、以下に述べるように、実施例の1つにおいて、関連する試剤の提供と該試剤がTMEM30Aに結合する場合の定量とを含む、血液―脳隔壁を通過することができる試剤の同定方法が提供される。
【0013】
他の実施例において、以下で述べる関連する試剤のTMEM30Aペプチドへの結合の適した条件でのTMEM30Aペプチドの試剤への暴露と、結合が起こった場合の定量とを含む、血液―脳隔壁を経てのTMEM30Aの転移が可能な試剤の同定方法が提供される。ここで述べるように、結合または相互作用は様々な方法、例えば以下に述べるようにTMEM30Aをその上に載せたカラムまたは他の類似の支持上への試剤の保持、またはここで述べる生体外細胞検定または生体内検定を用いる転移の実証によって定量される。これらの検定は例証となる目的のためであることが留意され、関連する試剤とTMEM30Aとの相互作用の様々な幅広い検出方法があることは当業者に理解できる。
【0014】
他の実施例において、以下で述べる試剤のTMEM30Aペプチドへの結合の適した条件でのTMEM30Aペプチドの関連する試剤への暴露と、その後に結合が起こった場合の定量とを含む、TMEM30Aとの相互作用が可能な薬剤を同定する方法が提供される。当業者に評価されるように、このような試剤はここで述べるように様々な目的、例えば膜輸送や画像化等に用いることができる。
【0015】
当業者に評価されるように、TMEM30Aの結合の定量は複数の方法で行うことができる。例えば、高スループット初期スクリーニングを行うことができ、例えばカラムにTMEM30Aを入れ、関連する試剤を該カラムを通過させる。残留した化合物を溶出しさらに調査し、例えば以下で述べる生体外または生体内での検定を行うことができる。
このような試剤は関連する化合物へ結合、接合、架橋または他の取り付けが可能であり、血液―脳隔壁を経て転移可能な結合を形成することが留意される。
【0016】
いくつかの実施例において、関連する化合物は検出可能な化合物でありえ、例えば放射性同位元素、同位体、可視または近赤外線蛍光ラベル、レポーター分子、ビオチン等であるがこれらに限定されない。当業者に評価されるように、このような結合を、試剤の転移の確認、画像化または他の類似の目的に用いることができる。
【0017】
他の実施例において、関連する化合物は小分子、例えば抗がん剤であり、これは例えばパクリタクセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、クロラムブチル等であるがこれらに限定されない。
【0018】
他の実施例において、小分子は神経病、例えば脳腫瘍、脳転移、精神分裂病、癲癇、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中、肥満症、多発性硬化症等を治療するための治療または薬事の化合物でありうる。
【0019】
ここで述べるように、FC5抗体はTMEM30Aに結合する。SEQ ID NO.3の6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の連続したアミノ酸を含むペプチドを、FC5を認識するモノクローナル抗体の生成に用いることができる。いくつかの実施例において、ペプチドはTMEM30Aの細胞外領域、すなわちSEQ ID NO.2の67〜323アミノ酸に対し選択的である。同様に、アイソフォーム2(SEQ ID NO.4)の細胞外領域はSEQ ID NO.4の67〜287アミノ酸に対応し、アイソフォーム3(SEQ ID NO.5)はSEQ ID NO.5の1〜204アミノ酸からの細胞外領域を有する。したがって、他の好ましい実施例において、ペプチドはアイソフォーム2および3からのこれらの細胞外領域の範囲に対応する。よって、いくつかの実施例において、関連する試剤はここで述べるTMEM30Aの免疫抗原性断片に対して配列されるモノクローナル抗体でありうる。当業者には他の適した断片も容易に明白であることが留意される。例えば、グリコシル化サイトを含むTMEM30Aの範囲からの6以上、7以上、8以上、9以上、または10以上の連続したアミノ酸を含むペプチド、例えばSEQ ID NO.7またはSEQ ID NO.8に含まれるものをいくつかの実施例において用いることができる。あるいは前記のように、例えばSEQ ID NO.9〜15に含まれる、TMEM30Aと他の進化的に類似のペプチドとの間で高度に保護された範囲を選択的に用いることもできる。
【0020】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:1に含まれるヌクレオチドと同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0021】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:2に含まれるヌクレオチド141〜1226と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。当業者には明らかであるように、このようなヌクレオチド配列はここで述べるTMEM30Aペプチドの調製のための発現系で用いることができ、あるいはここで述べる標識、プライマー等として用いることができる。
【0022】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:3に含まれるヌクレオチド1〜361、1〜323または67〜323と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0023】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:4に含まれるヌクレオチド1〜325または67〜287と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0024】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:5に含まれるヌクレオチド1〜242または1〜204と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0025】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:6に含まれるヌクレオチド1〜257と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0026】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:7に含まれるヌクレオチド1〜40と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0027】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:8に含まれるヌクレオチド1〜140と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0028】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:9に含まれるヌクレオチド1〜18と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0029】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:10に含まれるヌクレオチド1〜11と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0030】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:11に含まれるヌクレオチド1〜11と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0031】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:12に含まれるヌクレオチド1〜13と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0032】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:13に含まれるヌクレオチド1〜13と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0033】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:14に含まれるヌクレオチド1〜16と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0034】
他の実施例において、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、あるいは少なくとも99%がSEQ ID NO:15に含まれるヌクレオチド1〜16と同定された、精製または分離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0035】
ここで述べるように、TMEM30Aアイソフォーム1、SEQ ID NO.3は、内部C末端(アミノ酸1〜42)、膜間領域(アミノ酸43〜66)および外部領域(アミノ酸67〜323)を有する。当業者には明らかなように、膜間領域内での変異が膜連結機能によって保護されなければ、このペプチドは欠損を有するであろう。同様に、C末端内での追加、削除および置換は細胞外N末端でよりも許容されうる。個々で述べるように、例えば挿入や削除等の大きい変化が許容されうることを強く示すTMEM30Aの少なくとも2つの接合変異が存在することが留意される。
【0036】
TMEM30Aアイソフォーム2、SEQ ID NO.4は2つの膜間領域、アミノ酸44〜66とアミノ酸288〜310を有し、アミノ酸67〜287は外部である。
TMEM30Aアイソフォーム3、SEQ ID NO.5は1つの膜間領域をSEQ ID NO.5のアミノ酸205〜227に有し、SEQ ID NO.5のアミノ酸1〜204の外部領域を有する。
【0037】
他の実施例において、上記のペプチドまたはアミノ酸配列のいずれかから導き出されるヌクレオチド配列を含む核酸分子が提供される。これらの核酸分子は前記のように、例えば発現のため、標識やプライマー等として用いることができる。
【0038】
ここで述べる全長配列TMEM30Aポリペプチドに加えて、TMEM30A変異体を調製することができると考えられる。適当なヌクレオチド変化のTMEM30AのDNAへの導入、および/または所望のTMEM30Aポリペプチドの合成によって、TMEM30A変異体を調製することができる。当業者には明らかなように、アミノ酸変化を、TMEM30Aの翻訳後処理、例えばグリコシル化サイトの数または位置の変化や膜定着特性の変化へと変更することができる。
【0039】
加えて、TMEM30A変異体に1つ以上の他の変位、例えばアミノ酸置換、1つ以上のアミノ酸の挿入、1つ以上のアミノ酸の削除、または化学的変位を行うことが可能である。例えば、本発明によって断片であるTMEM30A変異体が提供される。この実施例の変更において、該断片はSEQ ID NO.3の残余67から残余323へ延伸するヒトTMEM30Aの一部分に対応する残余を含有する。
【0040】
全長配列TMEM30Aポリペプチドまたはここで述べるTMEM30Aの様々な領域における変化は、例えば保存的および非保存的突然変異の手法および指針のいずれかを用いて作成することができる。変化はTMEM30Aをエンコードする1つ以上のコドンの置換、削除または挿入でありえ、これは未変性配列TMEM30Aに対するTMEM30Aのアミノ酸配列の変化になる。変化は任意に少なくとも1つ以上のアミノ酸のTMEM30Aの1つ以上の領域の他のアミノ酸との置換によるものとできる。アミノ酸置換は、1つのアミノ酸の類似した構造および/または化学的性質を持つ別のアミノ酸との置き換え、例えばロイシンとセリンとの入れ替えによって行うことができる。挿入または削除は任意に約1から5のアミノ酸の範囲でありうる。
【0041】
[TMEM30Aアンチセンスオリゴヌクレオチド]
本出願で開示されるTMEM30A配列は標識としても用いることができる。TMEM30A核酸の断片は、標的TMEM30AのmRNA(センス)またはTMEM30AのDNA(アンチセンス)配列への結合が可能な単鎖核酸配列(RNAまたはDNA)を含むアンチセンスまたはセンスのオリゴヌクレオチドの設計に有用でありうる。アンチセンスまたはセンスのオリゴヌクレオチドは、前記のようにTMEM30AのDNAのコード領域の断片を含む。このような断片は一般的に少なくとも約14のヌクレオチドを、好ましくは約14〜30のヌクレオチドを含む。所定のタンパク質をエンコードするcDNA配列に基づいてアンチセンスまたはセンスのオリゴヌクレオチドを誘導する能力は、例えば(コーエンJS、オリゴヌクレオチド治療法、トレンドス・イン・バイオテクノロジー誌1992年3月号、10(3):87〜91)において述べられている。アンチセンスまたはセンスのオリゴヌクレオチドの標的TMEM30A核酸配列への結合によって、二本鎖の増強された分解、翻訳または転写の早発の終了あるいは他の手段を包含するいくつかの手段の1つによりTMEM30A配列の翻訳または転写を妨げる二本鎖の形成がなされる。よってアンチセンスのオリゴヌクレオチドは、脳薬剤配送を調節するであろうTMEM30Aタンパク質の発現の妨害に用いることができる。アンチセンスまたはセンスのオリゴヌクレオチドはさらに、変異糖ホスホジエステル主鎖を有するオリゴヌクレオチドを含み、このような糖結合は内生ヌクレアーゼに耐性があり生体内での適用により適している。
【0042】
[抗TMEM30A抗体への使用]
以下の例は説明のためにのみ提示され、本発明の視野の限定を意図するものではない。
本発明の抗TMEM30A抗体は様々な効用を持つ。例えば、抗TMEM30A抗体はTMEM30Aの診断検定、例えば特定の細胞、組織または血清におけるその発現(およびいくつかの場合においては差次的発現)の検出に用いることができる。当該分野で既知の様々な診断検定手法、例えば競合結合検定、直接または関節サンドイッチ検定、免疫沈降検定等を用いることができる。診断検定に用いられる抗体を検出可能成分によってラベルすることができる。検出可能成分は放射性同位体32P、ローダミンやルシフェリン等の蛍光または化学ルミネセンス化合物、またはアルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素でありうる。抗体の検出可能ラベルへの結合の方法は当該分野において既知である。
【0043】
抗TMEM30A抗体は組換細胞培養物または天然精製源からのTMEM30Aの親和精製にも有用である。この処理において、TMEM30Aに対する抗体は適当な支持体、例えばセファデックス(登録商標)樹脂等に、当該分野で既知の方法を用いて固定される。それから固定されたTMEM30A抗体を、精製するTMEM30Aを含有する試料と接触させ、その後に、固定された抗体に結合されたTMEM30A以外の試料内の実質的に全ての物質を除去する適当な溶媒で支持体を洗浄する。最後に、精製されたTMEM30Aを溶出する別の適当な溶媒で支持体を洗浄する。
【0044】
[二機能抗体]
二重特異性抗体(モノクローナル、単鎖、単一領域あるいは他の断片)、好ましくはヒトまたはヒト化抗体は、少なくとも2つの異なる抗原への結合特異性を持つ。この場合は該結合特異性の一方はTMEM30Aであり、もう一方は他の脳抗体であり、好ましくはニューロン細胞表面タンパク質、ニューロン受容体またはニューロン受容体サブユニットである。
【0045】
[TMEM30Aの薬剤スクリーニングへの使用]
本発明は特に、様々な薬剤スクリーニング手法のいずれかによる、TMEM30Aポリペプチドまたはその断片を用いての化合物のスクリーニングに有用である。このような試験に用いられるTMEM30Aポリペプチドまたは断片は、溶液中で自由とするか、固体支持体に付加するか、あるいは細胞表面に配置してもよい。薬剤スクリーニングの1つの方法は、TMEM30Aポリペプチドまたは断片を発現する組み替え核酸によって安定して変換される真核または原核の宿主細胞を利用する。競合結合検定においてこのような変換細胞に対し薬剤がスクリーニングされる。生存可能または固定形態のこのような細胞を標準結合検定に用いることができる。例えばTMEM30Aポリペプチドまたは断片と試験される試剤との複合体の形成を測定するか、あるいはTMEM30Aポリペプチドまたは断片への結合に従って試験される試剤の内在化の増強を実験することができる。あるいは、試験される試剤によるTMEM30Aポリペプチドのその標的細胞内での内在化の減少を実験することができる。
【0046】
よって、本発明により、試験される薬剤の細胞内での内在化の増強によるTMEM30Aポリペプチドまたはその断片に作用できる薬剤または他の試剤のスクリーニングの方法が提供される。これらの方法は、当該分野で既知の方法による、試剤のTMEM30Aポリペプチドまたは断片への接触、および試剤とTMEM30Aポリペプチドまたは断片との複合体の存在または細胞内での試剤とTMEM30Aポリペプチドまたは断片との複合体の存在の検定を含む。このような競合結合検定において、試剤またはTMEM30Aポリペプチドまたは断片は典型的にはラベルされる。適当なインキュベートの後で、自由なTMEM30Aポリペプチドまたは断片が結合形態で存在するものから分離され、自由または複合されていないラベルの数によってTMEM30Aポリペプチドに結合した特定の試剤を測定する。
【0047】
また本発明により、TMEM30Aポリペプチドの発現に作用する、または脳血管性疾患に機能することができる薬剤または他の試剤のスクリーニングの方法が提供される。これらの方法は、当該分野で既知の方法による、試剤のTMEM30Aポリペプチドまたはその断片への接触、および試剤とTMEM30Aポリペプチドまたは断片との複合体の存在または細胞内での試剤とTMEM30Aポリペプチドまたは断片との複合体の存在の検定を含む。このような競合結合検定において、試剤またはTMEM30Aポリペプチドまたは断片は典型的にはラベルされる。適当なインキュベートの後で、自由なTMEM30Aポリペプチドまたは断片が結合形態で存在するものから分離され、自由または複合されていないラベルの数によってTMEM30Aポリペプチドに結合した特定の試剤を測定する。
【0048】
他の薬剤スクリーニング手法により、TMEM30Aポリペプチドへの適当な結合親和性を持つ化合物の高スループットスクリーニングが提供される。例えば、異なる小さいペプチド試験化合物が固体基質上で合成される。TMEM30Aポリペプチドへの添加により、ペプチド試験化合物はTMEM30Aポリペプチドと反応し、洗浄される。結合したTMEM30Aポリペプチドは当該分野で既知の方法によって検出される。精製されたTMEM30Aポリペプチドは薬剤スクリーニング手法において用いるプレート上に直接被覆することができる。加えて、FC5等のTMEM30A非中和抗体をTMEM30Aポリペプチドまたは断片の捕捉と固体支持体への固定に用いることができる。
【0049】
本発明はまた、TMEM30Aポリペプチドへ特異的に結合可能な中和抗体(例えばFC5)を試験化合物とTMEM30Aポリペプチドまたはその断片への結合において競合させる競合薬剤スクリーニング検定の使用を企図する。この方式において、1つ以上の抗原決定基をTMEM30Aポリペプチドと共有するペプチドの存在の検出に抗体を用いることができる。
【0050】
[合理的な薬剤設計]
合理的な薬剤設計の目標は、生物学的に活性のTMEM30AまたはTMEM30Aと相互作用する小分子の構造類似体、例えばアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤の製造である。これらの例は、TMEM30Aポリペプチドのより活性または安定な形態であるかまたは生体内脳薬剤配送を増強する薬剤の形成に用いることができる。
【0051】
取り組み方の1つにおいて、TMEM30AポリペプチドまたはTMEM30Aポリペプチド−試剤複合体の三次元構造を、X線結晶学またはコンピューターモデリングによって定量する。より多くの場合、TMEM30Aポリペプチドの構造に関する有用な情報はTMEM30B(遺伝子銀行番号001017970)等の相同タンパク質に基づくモデリングから得ることができる。いずれの場合も、関連構造情報を、類似性TMEM30Aポリペプチド的分子の設計、または安定性または薬剤配送を向上する活性を向上された有効なモジュレーターの同定に用いる。
【0052】
[TMEM30A/リガンド相互作用の同定]
受容体/リガンド相互作用の同定のために、TMEM30Aポリペプチドまたは断片への結合能力について試剤を試験することができる。TMEM30Aのリガンドの同定は様々な表示、例えば脳薬剤配送のために受容体を発現することが既知である脳内皮細胞等の細胞への生体活性分子(リガンドまたはTMEM30Aに結合)のターゲッティング、および同じものを含有すると推測される配合物内でのリガンドまたはTMEM30Aの存在の検出のための試薬としてのTMEM30Aまたはリガンドの使用に有用であろう。配合物は、リガンドまたはTMEM30Aを発現する、TMEM30Aまたはリガンドを発現または応答すると知られている細胞の生体活性を調節する、TMEM30Aを発現する細胞の薬剤への透過性を調節する、またはTMEM30Aまたはリガンドに対するアゴニスト、アンタゴニストおよび/または抗体を許容する、と推測される細胞を含みうる。これはTMEM30Aを発現する細胞の透過性または他の生体活性を調節するであろう。様々な他の表示も当業者には明らかである。例えばポリヒスチジン標識等のエピトープ標的潜在リガンドはTMEM30Aとの相互作用が可能である。エピトープ標識ペプチド試剤との1時間のインキュベートの後で、TMEM30Aはタンパク質Aビーズによって免疫沈降され、該ビーズは洗浄される。潜在リガンド相互作用は、エピトープ標識への抗体との複合体のウエスタンブロットによって定量される。
【0053】
よって、本発明の実施例において、荷役物質の血液―脳隔壁を経ての移動を発生または増強する方法が提供される。該方法は以下を含む:
a)血液―脳隔壁抗原への親和性を持つ接着質の取得;
b)荷役物質の接着質への機能的連結(例えば表面に接着質を持つリポソームまたは他の適当な包での荷役物質の結合または被包);
c)接着質と脳内皮細胞との接触の許容。
【0054】
荷役物質は、医薬品、像形成剤、毒素あるいは他の適当な化合物を含む関連する化合物でありうることは充分に理解されるであろう。
いくつかの例において、血液―脳隔壁の移行の後で接触可能な標的への親和性を持つ1つ以上の分子を含み、荷役物質の特異的ターゲッティングを促進することが望ましい。
受容体を密集させるとともにその移行を刺激する様々なリガンドを顕出させることで、血液―脳隔壁を経ての受容体媒介トランスサイトーシスを受ける受容体(FC5に認識される抗原等)を薬剤/治療薬の脳への配送に利用することができる。これらは典型的には抗体であるが、ペプチド、オリゴサッカライド等でもありうる。
【実施例】
【0055】
経血管的脳配送を開発できる新たな抗原−リガンド系を発見するために、ラマ単一領域抗体(sdAb)ファージ像形成ライブラリ(タンハー他、2002年)をヒト肺と脳微小血管内皮細胞との間の異なる抗原選択に用いた。sdAbは自然に生じ軽鎖を欠く重鎖IgGのVH断片であり、単鎖抗体(scFv)の半分の大きさ(13kDa)である。HCECを選択的に認識するとともに生体外および生体内でBBBを経て移行する2つの新たなsdAb、FC5(遺伝子銀行番号AF441486)およびFC44(遺伝子銀行番号AF441487)がこれらの研究で分離された。これらのsdAbは生物工学製品および担体との結合が可能なように作成された(アブルロブ(Abulrob)他、2005年)。sdAbは有望な経血管的脳配送ベクターとして、従来の抗体に対し、その小さいサイズ、高水準でFc受容体を発現する組織(例えば肝臓や脾臓)に対する低い非特異的相互作用、それによる低い免疫原性、および高温、pH、塩に対する著しい安定性を含むいくつかの利点を持つ。
【0056】
[例1.FC5は生体内での静脈内注射の後で脳を標的とする]
Fc5の生体内分布を調査するために、FC5をNHSエステル結合を介して近赤外線プローブ、Cy5.5に結合させ、マウスに尾静脈から注射した。マウスを小動物時間領域エクスプローラーオプティクス(eXplore Optix)前臨症画像化システムによって画像化した。近赤外線蛍光プローブ、Cy5.5単独、またはFC5(50μg)または陰性対照抗体NC11(50μg)と結合したものを27ゲージ固定針の0.5mlインシュリン注射器を用いて動物に静脈から注射した。薬剤注射から6時間後に動物をエクスプローラーオプティクスによって画像化した。全ての画像化試験において、繰返し数80MHzおよび時間分解能250ps光パルスの670nmパルスレーザーダイオードを刺激のために用いた。700nmの蛍光エミッションを高感受性時間分解能単一光子計数システムによって収集し、3mmオフセットされた高速光電子増倍管を介して拡散光学微細構成再構成のために検出した。それぞれの動物を板の上にうつぶせにし、該板を画像化システム内の加熱台(36℃)に乗せた。頭部を包囲する二次元中央体走査領域を上面視リアルタイムデジタルカメラで選択した。動物の最適な高さは側面視デジタルカメラで検証された。それから動物が自動的にレーザー走査のために画像化室へ移動される。それからガルバノミラーによって制御されるレーザー刺激ビームを選択されたROI上に移動した。レーザーの力とピクセル毎計数時間をそれぞれ30μWと0.5sに最適化した。これらの値は試験全体において維持された。ラスタ走査間隔は1.5mmとし、それぞれのフレームの獲得の間維持された。1024の点を関連する領域(ROI)のために走査した。データを一時的点像分布関数(TPSF)として記録し、画像を蛍光分布図として再構成した。
【0057】
注射から6時間後のエクスプローラーオプティクス小動物画像化システム(670nm刺激レーザー)を用いた光学画像化において、異なる標的に対し同一のライブラリからの陰性対照抗体、NC11に比して頭領域でより高いFC5蓄積を示した(図1)。頭部(図1、BおよびD)を含む様々な領域でのオプティビュー(OptiView、登録商標)ソフトウェアを用いた蛍光濃度の定量化によって頭部でのFC5の選択的蓄積が示された。殺および灌流後の動物から取り出した脳の生体外画像化(図1E)によって、FC11を注射した動物に比してFC5を注射した動物の脳の蛍光濃度はより高いことが実証される。
[例2.FC5は荷役分子を血液―脳隔壁内皮細胞を経て輸送することができる]
【0058】
sdAbは治療成分との結合に利用できる−SH基を持たないので、FC5は追加の自由システインを発現するように作成された。よって図2Aに示すように、cysFC5はマレイミド活性反応を用いてマウスHRP−IgG(〜190kDa)と結合した。HRP−IgGまたはHRP−IgG−cysFC5はヒトCEC培養物に取り込まれ、30分間いずれかの構造に細胞を暴露した後で定量された。IgG−HRPの有効細胞取り込みは分子がcysFC5と連結された場合にのみ見られる(図2BおよびC)。同様に、cysFC5と連結されたHRP−IgGは生体外BBBモデルの外側面室への有効細胞間移行を表し(図2D)、IgG−HRP単独のヒトCEC単層を経ての輸送は無視できるものだった。
【0059】
FC5にベクター化されたHRP−IgGのみがヒトCECに入り生体外BBBを経て移行されることが表されsdAbは成功裏に10倍大きい分子を標的組織内へ、またはこれを経て輸送できることが示唆された。類似の化学結合原理を用い、有望な治療の性質により選択された大分子をcysFC5に取り付けることができる。ビオチン−アビジンリンカーを含む、全体または単鎖抗体に用いられている他の化学的リンカーの取り組み方もまたsdAbと用いることができ、適応したスペーサーを抗原結合サイトの立体障害を避けるために用いる。sdAbを遺伝子学的に作成可能とすることで、キメラ(融合)タンパク質を含む治療分子への化学的連結の択一的な取り組み方も可能である。
【0060】
例えばcysFC5によって達成される自由連結成分を提供するBBB透過性sdAbFC5の作成によって、薬剤担体の文脈における多重結合表示のための択一的な取り組み方が可能になる。例えば、IgGsまたはscFvsについて報告されている結合と同様にして、cysFC5をナノ粒子配送系の高分子成分またはリポソーム基剤粒子と結合させることができる。これらのsdAbにベクター化された’コンテナ’を脳への薬剤配送、トランスフェリン受容体を含む既知のBBB抗原に対する古典的抗体を用いる既に開発されている構想に用いることができる。
【0061】
[例3.FC5の内在化および脳内皮細胞を経ての移行の機構]
[HCECを経てのFC5移行は有極であり電荷に対し独立である]
FC5は非常に高い濃度であっても(1mg/ml)HCECに対し毒性ではない。[14C]−スクロースの生体外BBBモデルを経ての透過性には、10μg/ml FC5の不在と存在で有意な差はなく[それぞれP=(0.897±0.11)×10−3および(0.862±0.18)×10−3cm/min]、FC5はHCECの細胞間透過性には影響しないことが示唆される。生体外BBBモデルを経てのFC5のトランスサイトーシスは有極である。FC5の頂端部から側底部への輸送は側底部から頂端部より12倍高いことが30分間のみで観測された(図3A)。これに対し、[14C]−スクロース、細胞間拡散のマーカーは、細胞単層膜の頂端部から側底部、側底部から頂端部で等しい(すなわち有極でない)分布を示した。
【0062】
マクロピノサイトーシスによってFC5が内在化および輸送されるかを調査するために、500μM アミロライド存在下でFC5移行を試験した。アミロライドは被覆穴媒介エンドサイトーシスに影響することなくマクロピノソームの形成を阻害する(ウエスト他、1989年)。アミロライドはFC5の内皮透過移動に影響しなかった(図3B)。
【0063】
AMEのFC5トランスサイトーシスへの寄与は、sdAbが正に帯電していることによって査定される(FC5の算出された等電点は〜9.23)。FC5の取り込みおよび輸送の査定に先行してHCECを高カチオン硫酸プロタミン(40μg/ml)またはポリ−L−リジン(300μM)と共に30分間インキュベートした。これらはいずれもAMEを阻害することが示されている(サイ他、1998年)。いずれの化合物もFC5のHCECへの取り込み(データは図示しない)および生体外BBBモデルを経ての輸送(図3B)に影響せず、FC5のHCECを経ての結合および移行は電荷に対し独立であることが示唆される。
【0064】
驚いたことに、BBB内のAMEを刺激する能力についてこれらの研究中で試験された小麦胚細胞凝集素(WGA)は有意にFC5移行を阻害し、これによって内皮糖衣が電荷媒介相互作用ではない機構を介してこの過程に関係することが示される。この可能性は以下で述べる研究においてさらに探求された。
【0065】
[FC5のHCECを経ての輸送はエネルギー依存である]
FC5トランスサイトーシスのエネルギー依存の調査のために、FC5の取り込みおよび輸送を37℃および4℃で測定した。c−mycに続くFITCラベル二次抗体により、細胞内FC5は免疫化学によって検出された。FC5は早くも15分間でHCEC内に内在化し、37℃での添加の30分後に大半の細胞で検出された(図4A)。37℃に比して、4℃ではFC5の細胞内蓄積(図4A・B)および内皮間移行(図2C)の両方において顕著な減少が観測された。[14C]−スクロースのBBBモデルを経ての輸送は温度の影響を受けなかった。無グルコース培地でのHCECの5mM アジ化ナトリウム(NaN)および5mM 2−デオキシグルコースへの30分間の暴露による呼吸および解糖作用経路の同時阻害によって、FC5移行はほぼ完全に阻害された(図4C)。この処理によって他の細胞種の細胞ATPの完全な涸渇が示されている(ロナー他、1999年)。Na,K−ATPアーゼポンプ阻害剤、ウアバイン(1μM)との30分間の前処理でもFC5のHCECを経ての輸送は40%減少した(図4D)。
【0066】
[FC5トランスサイトーシスはクラスリン被覆小胞を経て起こる]
FC5移行のための2つの主要なエネルギー依存受容体媒介エンドサイトーシス/トランスサイトーシス経路、クラスリン被覆小胞およびカベオラが、コローカリゼーション研究およびエンドサイトーシス阻害剤を用いて調査された。
【0067】
5μg/ml FC5へ30分間暴露されたHCEC内でのカベオリン−1およびFC5の二重免疫細胞化学法は、FC5免疫蛍光Aとによってカベオリン−1免疫蛍光Bを示さなかった(図5D〜F)。これに対し、クラスリン免疫蛍光EはほとんどFC5免疫蛍光Dとによってコローカリゼーションされた(図5A〜C)。さらに、密度勾配遠心分離法によるHCEC分画の後で、ウエスタンブロット上でのFC5免疫反応によって同じ分画(#7、8および9)クラスリン免疫反応として見られたが、高カベオリン−1分画(#2および3)からは見られなかった(図5G)。
【0068】
FC5の取り込みと移行が、クロルプロマジン(50μg/ml)および低張性K枯渇緩衝剤(0.14M NaCl、2mM CaCl、1mg/ml グルコース、20mM HEPES、pH7.4、水で1:1に希釈)を含むクラスリン媒介エンドサイトーシスの薬理学的阻害剤、またはフィリピン(5μg/ml)、ナイスタチン(5μg/ml)およびメチル−β−シクロデキストリン(5mM)を含むカベオラ媒介エンドサイトーシス阻害剤で30分間前処理した細胞において実験された。クロルプロマジンはエンドソームからのAP−2の再循環を破壊するとともに、原形質膜上の被覆穴の組み立てを防止するが、K枯渇はクラスリン被覆小胞形成を阻止する。フィリピンおよびナイスタチンはコレステロールに結合し、メチル−βシクロデキストリンは原形質膜からコレステロールを排出し、結果、高コレステロールカベオラ小胞が破壊される。試験されたカベオラ媒介エンドサイトーシス阻害剤は全て、生体外BBBモデルを経てのFC5移行に影響しなかった(図5H)。これに対し、クロルプロマジンおよびK枯渇はそれぞれ52%、46%のFC5移行を阻害した(図5H)。
【0069】
エンドサイトーシス後のFC5の細胞間移行を調査するため、初期および後期エンドソーム/リソソームのマーカーでコローカリゼーション研究を行った。初期エンドソームのマーカー、テキサスレッド(登録商標)結合トランスフェリン(図6A〜C)でコローカリゼーションされたFC5はカテプシンB(図6D〜F)、後期エンドソームのマーカーではコローカリゼーションされなかった。BBBモデルの側底部室から収集されたトランスサイトーシスされたFC5は、頂端部区画に添加されたFC5とウエスタンブロット上で区別できず(図6G)、これによってHCECを経てのトランスサイトーシスの間、FC5はリソソームを迂回し非損傷のままであることが示される。同じライブラリからの非選択sdAbはモデルの側底部室から検出できず(ムルガナダム(Muruganadam)他、1997年)これによってFC5は細胞間輸送で側底部室に入らないことが示される。
【0070】
FC5の輸送はまた、カチオンイオノフォアモネンシンによる細胞内区画の中和に感受性である。モネンシンはエンドソームおよびリソソームの区画内のNaおよびH勾配を破壊し、エンドサイトーシス小胞のpHは5.5から7以上に上がり、これによって受容体の再循環が阻害される。モネンシン(25μM)はFC5のHCECを経てのトランスサイトーシスを34%阻害し(図6H)、これによって酸性化された細胞内区画およびFC5の推定上受容体の再循環が効率的な内皮透過輸送の維持に重要でありうることが示される。
【0071】
[通信経路がHCEC内のFC5エンドサイトーシス/トランスサイトーシスに含まれる]
FC5のトランスサイトーシスにおける細胞骨格機構部分の要求を定量するために、HCECをアクチン解重合剤であるサイトカラシンD(0.5μM)またはラトランキュリンA(0.1μM)、あるいは微小管阻害剤であるノコダゾール(20μM)またはコルヒチン(20μM)とともにHCECは30分間インキュベートした。サイトカラシンDおよびラトランキュリンAは実質的に(70〜80%)FC5のHCECを経ての頂端から側底への輸送を減少させた(図7A)。これに対し、微小管阻害剤はFC5トランスサイトーシスに影響しなかった(図7A)。
【0072】
通信経路によるFC5トランスサイトーシスの調節を定量するために、HCECを以下のモジュレーターのいずれかと共に30分間インキュベートした。チロシンキナーゼ阻害剤であるゲニステイン(50μM);タンパク質キナーゼC(PKC)阻害剤であるビスインドールマレイミド−1(BIM−1;5μM);PI3−キナーゼ阻害剤であるウォルトマニン(0.5μM);およびタンパク質キナーゼA(PKA)阻害剤であるジブチリル−cAMP(db−cAMP;500μM)である。HCECを経てのFC5トランスサイトーシスはゲニステイン(図7B)およびdb−cAMP(図7B)の影響を受けず、PKC阻害剤存在下で25%減少し(図7B)、PI3−キナーゼ阻害剤存在下でほぼ完全に妨げられた(図7B)。用いられた薬理学試剤はいずれも細胞に対し毒性ではなかった。
【0073】
[FC5トランスサイトーシスにおける炭水化物エピトープの役割]
FC5トランスサイトーシスにおける内皮糖衣の役割は、BBBでのAMEを刺激すると知られているレクチンであるWGA(バンクス他、1998年)がHCECへのFC5取り込み(図8Aおよび8B)を阻害することの観察によって示される。
【0074】
硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)鎖の二糖ユニットの20〜200の繰り返しからなる大型の非分岐ポリマーでありCEC内で豊富に発現するプロテオグリカンが、HCECを経てのFC5トランスサイトーシスを媒介するかどうかを試験するために、膜上で発見されるいくつかの既知の可溶性GAGによる競合実験を行った。ヘパリン硫酸(50U/ml)、コンドロイチン硫酸A(10μg/ml)およびコンドロイチン硫酸C(10μg/ml)によってHCECを前処理することは、生体外でのBBBを経てのFC5トランスサイトーシスに影響しなかった。同様に、マンナン(1mg/ml)およびマンノース(50μM)はFC5移行に影響せず、これによって脳の発達においてBBB輸送に含まれる多機能膜間糖タンパク質であるマンノース6−燐酸/インシュリン類似生育要素2受容体がFC5内在化には含まれないことが示唆される。
【0075】
WGAは幅広い範囲のシアロ結合体と相互作用することが知られているため、FC5の膜内および膜間でのシアル酸残基の重要性を次に試験した。200μM シアル酸、または0.1〜0.2Uの、様々な細胞膜糖タンパク質からの全てのシアル酸を放出するコレラ菌由来ノイラミニダーゼ、あるいはα(2,3)結合シアル酸に選択的な腸チフス菌由来α(2,3)ノイラミニダーゼによってHCECを前処理した。FC5取り込み(図8Cおよび8D)およびFC5のHCECを経てのトランスサイトーシス(図8E)はいずれもシアル酸およびノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)に阻害された。ノイラミニダーゼは特にFC5トランスサイトーシスを91%減少させた(図8E)。これらの研究によって、外因性シアル酸によるFC5結合についての除去または競合がFC5の取り込みおよびトランスサイトーシスに干渉したことから、シアル酸がFC5に認識されるHCEC上の抗原エピトープの必須成分であることが暗示される。
【0076】
FC5トランスサイトーシスに含まれるシアロ糖結合体の性質を、細胞をそれぞれ3つのシアル酸結合レクチン、幅広い範囲のシアロ結合体と相互作用する小麦麦芽凝集素(WGA;100μg/ml)、セイヨウニワトコ凝集素(SNA;100μg/ml)およびα(2,6)およびα(2,3)シアリルガラクトシル残基を認識するイヌエンジュ凝集素(MAA;100μg/ml)によって前処理することでさらに試験した。
【0077】
FC5認識シアル酸残基が糖脂質に取り付けられるかどうかを調査するために、HCEC細胞を述べられたように(ヴェッセルおよびフリュッゲ、1983年)タンパク質および脂質に分画した。ノイラミニダーゼの不在または存在下でのこれらの分画へのFC5結合を酵素結合免疫吸着検定法によって試験した。FC5のHCEC脂質分画への結合は無視できた(図6G)。FC5はまた分離された脳ガングリオシドを認識できなかった。これに対し、ノイラミニダーゼに暴露された細胞溶解産物のタンパク質分画においてFC5のHCECタンパク質分画への結合は50%減少した。FC5はHEK293細胞のタンパク質および脂質分画のいずれとも結合しなかった。正の対照として用いたガラクトシルセラミドが脂質分画にO1抗ガラクトシルセラミド抗体に検出される強い信号を生じた。
【0078】
[トランスフェリン受容体の排除]
トランスフェリン受容体はCECにおいて豊富であり(ジェフリーズ他、1984年)、BBBを経てのトランスサイトーシスに含まれるとともに(キアン他、2002年)、高度にグリコシル化されていることから(ヘイズ他、1992年)、FC5の推定上の受容体が実際にヒトトランスフェリン受容体であるかどうかを調査した。抗トランスフェリン受容体抗体CD71(図9A・B)に対し、FC5およびその高結合力五量体構成P5(アブルロブ(Abulrob)他、2005年)は酵素結合免疫吸着検定法検定において固定されたヒトトランスフェリン受容体に結合せず(図9A)、ウエスタンブロットにおいて該タンパク質を認識しなかった(図9B)。加えて、FC5取り込み(データは図示しない)および内皮透過輸送(図9C)はホロトランスフェリンの100倍過多存在下で減少しなかった。
【0079】
[考察]
この研究にある集合的存在によって、FC5の取り込みおよびトランスサイトーシスはクラスリン被覆穴を経て起こるとともにノイラミニダーゼ感受性、α(2,3)−シアロ糖結合体の認識に依存する。これらの結論はFC5移行の有極化、温度およびエネルギー依存を示す一連の実験によって補強されるとともに、細胞間拡散、穴形成およびマクロピノサイトーシス経路を排除した。しかし、一般的な仮定に対し、電荷媒介BBB選択性を示す膜貫通ペプチドの新たな綱の近来の研究によって、RMEと同様にAMEも温度およびエネルギー依存でありうることが示された(ドリン他、2003年)。CEC上の負電荷を中和することで正に帯電したFC5の内皮透過輸送を減少させるAME阻害剤の欠損により、RMEの機構がさらに示唆された。RMEの2つの主要な小胞経路、クラスリン被覆穴およびカベオラが次に試験された。FC5内在化のクラスリン被覆穴経路はFC5のクラスリンによる強いコローカリゼーションによって示されたが非損傷および分画されたHCECの両方におけるカベオラ免疫反応によっては示されず、クラスリン被覆穴形成の阻害を示す前処理によるFC5トランスサイトーシスの阻害によって示された。内在化において、FC5は初期エンドソームおよび分岐後期エンドソーム/リソソームの標的にされるとともに、エキソサイトーシスによって有効な細胞内劣化なしに外側面区画へと排出された。
【0080】
FC5の小胞細胞間輸送は非損傷アクチン重合に強く依存していた。近年の研究によって、Abp1p、Pan1pおよびコータクチンを含むいくつかのタンパク質が同定されており、これらはアクチンフィラメント集合をクラスリン被覆穴内在化と機能的に連結する。
【0081】
クラスリン被覆穴の往来を制御する信号事象の複雑さは判読が困難なままである。FC5トランスサイトーシスは本質的にPl3−キナーゼ阻害剤、ウォルトマニンに妨げられ、これはPKC、PKAおよびトリプトシンキナーゼ阻害剤を含む他の信号経路にほとんど影響されなかった。Pl3−キナーゼによるイノシトール脂質のリン酸化はクラスリン被覆穴経路を含む別種の膜輸送事象に関係している。Pl3K−C2アルファはクラスリン被覆小胞の個体数と共精製されるが、AP−2およびダイナミンを含むこれらの小胞の機能を包含するタンパク質はPl3キナーゼと相互作用する。PKCおよびPKAは様々な受容体の内在化に関係しているが、いずれもクラスリン媒介エキソサイトーシスに要求されることは見られない。従来からRME媒介脳輸送に利用されているインシュリン生育因子(IGF)受容体(チャン他、2002年)を含むいくつかの膜受容体のチロシンキナーゼ活性の阻害によってその内在化が防止される。FC5トランスサイトーシスにおけるゲニステイン効果の欠損によって、FC5に認識される受容体はチロシンキナーゼではないらしいことが示唆された。
【0082】
脳内皮細胞の表面は、細胞−細胞伝達、病原体認識/付着および細胞外マトリクスとの相互作用に関係する複合炭水化物のち密層で覆われている(プリース他、2000年)。表面糖結合の様々なモジュレーターまたは競合阻害剤を用いた研究によって、ノイラミニダーゼ感受性α(2、3)−シアル酸残基がFC5抗原認識、FC5内在化およびトランスサイトーシスにおいて重要であることが実証された。糖タンパク質およびガングリオシドの双方に取り付け可能なシアル酸残基はクラスリン被覆穴において豊富である。HCECにおいて発現する主要なガングリオシドはGM3およびシアリルパラグリオシド(LM1)である。FC5はHCECから抽出された脂質に結合できなかった、または抗原の糖タンパク質性質を含む主要な脳ガングリオシドのいずれをも認識できなかった。シアル酸残基は多くの組織で発現されるため、FC5の脳内皮細胞への選択性は抗原エピトープのタンパク質成分によるものであろう。
【0083】
トランスフェリン受容体は脳内皮に豊富な、クラスリン被覆小胞媒介エンドサイトーシスを受ける多重シアル酸残基を持つN−およびO−グリコシル化経膜タンパク質である。トランスフェリン受容体に対する抗体、OX26は、生物学上の脳標的ベクターおよびリポソームとして用いられている。FC5は分離されたヒトトランスフェリン受容体の認識に失敗し、ホロトランスフェリンはFC5トランスサイトーシスと競合しなかった。これに従って、脱シアル化およびN−脱グリコシル化されたトランスフェリン受容体変異体は、未変性トランスフェリン受容体と同様のトランスフェリン結合と内在化特性を示している。トランスフェリン受容体に加えて、メラノトランスフェリン(p97)を含む他の鉄輸送分子、他の受容体と同様にインシュリン受容体を含むラクトフェリン(チャン他、2002年)および低濃度リポタンパク質受容体(デホーク(Dehouck)他、1997年)が可能性のある脳配送のためのRME経路として同定されている。他の研究によって、TNFβ受容体(オスブルグ他、2002年)等の病理学的条件において特に上方制御される受容体が脳内皮細胞においてRMEを受けることが示唆された。これらのタンパク質はFC5によって認識される推定上の抗原として選択的に排除されていない。
【0084】
要約すると、FC5は脳内皮細胞の管腔表面において発現するα(2,3)−シアロ糖結合体を認識するとともにクラスリン被覆小胞を経てのアクチン及びPl3キナーゼ依存トランスサイトーシスを受ける新たな単一領域抗体である。リンカー成分を提供するために作成されたFC5およびその誘導体(アブルロブ(Abulrob)他、2005年)は、薬剤、生物化学製品およびナノ担体の脳標的ベクターへと発達しうる。生体内での生体内分布研究(ムルガナンダム(Muruganandam)他、2001年)によって、同様の大きさの他の生物化学製品に典型的な、脳内での有意なFC5蓄積およびその腎臓および肝臓による高速排除が実証された。よって、PEG化等の戦略によるFC5薬物動態学の向上は、効率的な生体内脳ターゲッティングの達成に必要であろう。にもかかわらず、OX26抗体等の’古典的’抗体ベクターと同様に、内皮透過輸送を受ける細胞特異抗体の認識により、BBB標的sdAbは(細胞貫通Syn−Bペプチドと同様に)ペプチド様サイズであり脳内皮へ高電荷媒介結合する(ドリン他、2003年)。sdAbはペプチドとは異なりプロテアーゼへの著しい耐性を持ち、完全なIgGとは異なり脳からBBBにおけるFc受容体媒介流出系によって搬出されることがない。これらの利点によりsdAbは、小胞内皮透過輸送の開発によって脳への標的薬剤および生物化学製品と多角的に代替される。
【0085】
[例4.FC5に対するファージ表示ヒトcDNAライブラリのパニングによる抗原同定]
FC5に認識されるタンパク質抗原の同定のために、ゲノミクスおよびプロテオミクスの方法の組み合わせが用いられた。戦略は概略的に図10に示される。ゲノミクスの取り組み方は固定されたFC5に対するヒト脳cDNAのファージ表示ライブラリ(コーテック)のパニングからなる。4周のパニングの後で、FC5に認識される最も頻度の高い配列、SEQ ID No 1が同定された。破壊解析によってSEQ ID No 1を、膜間タンパク質30A(別名:C6orf67、CDC50A、細胞サイクル制御タンパク質50A)のヌクレオチド配列1598〜1979に沿って配列した。膜間領域タンパク質30A(TMEM30A)のコード領域はSEQ ID No 2として示される。コードされたタンパク質のスプライシング変異体はSEQ ID No 3、SEQ ID No 4およびSEQ ID No 5として示される。TMEM30Aの細胞外領域はSEQ ID No 6として示される。N−グリコシル化サイトを含むTMEM30Aのアミノ酸配列はSEQ ID No 7およびSEQ ID No 8として示される。TMEM30Bでのいくつかの小変異でも見られるTMEM30Aの保護CDC50領域の配列はSEQ ID No 9〜15として示される。これらの配列は本出願の全体において詳細に検討されることが留意される。
【0086】
[SEQ ID No. 1]
GAA TTT TAT GGA GAA AGG GAT TAC AAG ATG TAT GAG TAT AAT GAC TTG CTA ACC TTT
CAG GAT TCA GAG AAA GAT GAA GAA AGA CCA TAT CTA AAT AAT ACA CTT CAT CAT TTT CAT GTG TAT AAA TGC TTA AAG TAC CAT CTT TGT TGA GGT GGT TCA TGT ATC CAG TTT ATC CAG TAC AGT TAT TTG TCA AGC TTA GCT TTG ATT TCA AAG GAC ACG CTT ACC TTG TCT GGC ATA AGA ATT AAT GCT CAT GTC TGC AGT GGT TGG GTA GGT CCT GCT TAG GAG AAT TAA AAA ATT CCT CTT TCC GTT TGG TTG AAT GTT GCA GTC AGG AAC CCC AAC TCA CTT GGA ATG TTT TCA TAT GTA ATC ATT TCC CTT GAA GCT TAT
この配列はFC5に対するファージ表示ヒトcDNAライブラリのパニングから得られた。この配列はTMEM30Aヌクレオチド配列(遺伝子銀行番号018247)のヌクレオチド配列1598〜1979に沿って配列され、コーディングされていない。
【0087】
[SEQ ID No. 2]
TMEM30Aのヌクレオチドコーディング領域(141〜1226)
(別名:膜間タンパク質30A、TMEM30A、C6orf67、CDC50A、細胞サイクル制御タンパク質50A)
atggcgatga actataacgc gaaggatgaa gtggacggtg ggcccccgtg tgctccgggg ggcaccgcga agactcggag accggataac acggccttca aacagcaacg gctgccagct tggcagccca tccttacggc tggcacggtg ctacctattt tcttcatcat cggtctcatc ttcattccca tcggcattgg catttttgtc acctccaaca acatccgcga gatcgagatt gattataccg gaacagagcc ttccagtccc tgtaataaat gtttatctcc ggatgtgaca ccttgctttt gtaccattaa cttcacactg gaaaagtcat ttgagggcaa cgtgtttatg tattatggac tgtctaattt ctatcaaaac catcgtcgtt acgtgaaatc tcgagatgat agtcaactaa atggagattc tagtgctttg cttaatccca gtaaggaatg tgaaccttat cgaagaaatg aagacaaacc aattgctcct tgtggagcta ttgccaacag catgtttaat gatacattag aattgtttct cattggcaat gattcttatc ctatacctat cgctttgaaa aagaaaggta ttgcttggtg gacagataaa aatgtgaaat tcagaaatcc ccctggagga gacaacctgg aagaacgatt taaaggtaca acaaagcctg tgaactggct taaaccagtt tacatgctgg attctgaccc agataataat ggattcataa atgaggattt tattgtttgg atgcgtactg cagcattacc tacttttcgc aagttgtatc gtcttataga aaggaaaagt gatttacatc caacattacc agctggccga tactctttga atgtcacata caattaccct gtacattatt ttgatggacg aaaacggatg atcttgagca ctatttcatg gatgggagga aaaaatccat ttttggggat tgcttacatc gctgttggat ccatctcctt ccttctggga gttgtactgc tagtaattaa tcataaatat agaaacagta gtaatacagc tgacattacc atttaatttt
【0088】
[SEQ ID No. 3]
[1.アイソフォーム1]
>gi|8922720|ref|NP_060717.1|膜間タンパク質30A[ヒト]
MAMNYNAKDEVDGGPPCAPGGTAKTRRPDNTAFKQQRLPAWQPILTAGTVLPIF FIIGLIFIPIGIGIFVTSNNIREIEIDYTGTEPSSPCNKCLSPDVTPCFCTINFTLEKSFE GNVFMYYGLSNFYQNHRRYVKSRDDSQLNGDSSALLNPSKECEPYRRNEDKPI APCGAIANSMFNDTLELFLIGNDSYPIPIALKKKGIAWWTDKNVKFRNPPGGDNLE ERFKGTTKPVNWLKPVYMLDSDPDNNGFINEDFIVWMRTAALPTFRKLYRLIERK SDLHPTLPAGRYSLNVTYNYPVHYFDGRKRMILSTISWMGGKNPFLGIAYIAVGSI SFLLGWLLVINHKYRNSSNTADITI
【0089】
[SEQ ID No. 4]
[2.アイソフォーム2]
>sp_vs|Q9NV96−2|Q9NV96 Q9NV96のアイソフォーム2
MAMNYNAKDEVDGGPPCAPGGTAKTRRPDNTAFKQQRLPAWQPILTAGTVLPIF FIIGLIFIPIGIGIFVTSNNIREIEGNVFMYYGLSNFYQNHRRYVKSRDDSQLNGDSS ALLNPSKECEPYRRNEDKPIAPCGAIANSMFNDTLELFLIGNDSYPIPIALKKKGIA WWTDKNVKFRNPPGGDNLEERFKGTTKPVNWLKPVYMLDSDPDNNGFINEDFI VWMRTAALPTFRKLYRLIERKSDLHPTLPAGRYSLNVTYNYPVHYFDGRKRMILS TISWMGGKNPFLGIAYIAVGSISFLLGWLLVINHKYRNSSNTADITI
アイソフォーム2は消失アミノ酸79〜114である。
【0090】
[SEQ ID No. 5]
[3.アイソフォーム3]
>sp_vs|Q9NV96−3|Q9NV96 Q9NV96のアイソフォーム3
MYYGLSNFYQNHRRYVKSRDDSQLNGDSSALLNPSKECEPYRRNEDKPIAPCG AIANSMFNDTLELFLIGNDSYPIPIALKKKGIAWWTDKNVKFRNPPGGDNLEERFK GTTKPVNWLKPVYMLDSDPDNNGFINEDFIVWMRTAALPTFRKLYRLIERKSDLH PTLPAGRYSLNVTYNYPVHYFDGRKRMILSTISWMGGKNPFLGIAYIAVGSISFLL GWLLVINHKYRNSSNTADITI
アイソフォーム2は消失アミノ酸1〜119である。
TMEM30Aの細胞外領域はアミノ酸67〜323を含む。
【0091】
[SEQ ID No. 6]
GIFVTSNNIREIEIDYTGTEPSSPCNKCLSPDVTPCFCTINFTLEKSFEGNVFMYYG LSNFYQNHRRYVKSRDDSQLNGDSSALLNPSKECEPYRRNEDKPIAPCGAIANS MFNDTLELFLIGNDSYPIPIALKKKGIAWWTDKNVKFRNPPGGDNLEERFKGTTK PVNWLKPVYMLDSDPDNNGFINEDFIVWMRTAALPTFRKLYRLIERKSDLHPTLP AGRYSLNVTYNYPVHYFDGRKRMILSTISWMGGKNP
【0092】
[N−グリコシル化サイトを含むTMEM30Aのアミノ酸配列]
[SEQ ID No. 7]
RRNEDKPIAPCGAIANSMFNDTLELFLIGN DSYPIPALK
(TMEM30A残基160〜200に見られる)
【0093】
[SEQ ID No. 8]
RRNEDKPIAP CGAIANSMFNDTLELFLIGN DSYPIPIALK KKGIAWWTDK NVKFRNPPGG DNLEERFKGT TKPVNWLKPVYMLDSDPDNN GFINEDFIVW MRTAALPTFR KLYRLIERKS DLHPTLPAGR YSLNVTYNYP
(TMEM30A残基160〜300に見られる)
N−グリコシル化感受性残基:180、190、294
TMEM30Bでのいくつかの小変異でも見られるTMEM30Aの保護CDC50領域の配列。
【0094】
[SEQ ID No. 9]
NFYQNHRRYVKSRDDSQL
(TMEM30A残基126〜144およびTMEM30B残基115〜133に見られる)
【0095】
[SEQ ID No. 10]
APCGAIANSMF
(TMEM30A残基169〜179に見られる)
【0096】
[SEQ ID No. 11]
APCGAIANSLF
(TMEM30B残基160〜170に見られる)
【0097】
[SEQ ID No. 12]
DFIVWMRTAALPT
(TMEM30A残基256〜269に見られる)
【0098】
[SEQ ID No. 13]
DFVVWMRTAALPT
(TMEM30B残基249〜262に見られる)
【0099】
[SEQ ID No. 14]
MGGKNPFLGIAYIAVG
(TMEM30A残基256〜269に見られる)
【0100】
[SEQ ID No. 15]
MGGKNPFLGIAYLVVG
(TMEM30B残基249〜262に見られる)
【0101】
[FC5抗原の組織分布]
推定上のFC5抗原の組織分布を解析するために、組織を表示するコーテック組織マイクロアレイによって様々な器官、様々な脳領域および様々な細胞系から抽出する。組織マイクロアレイをTMEM30Aプライマーによってプローブし、TMEM30A結合をサウザンブロットによって検出した。図11に様々な脳領域および肺癌腫におけるFC5の高反応性(抗原の豊富さ)が示される。
【0102】
[脳でのTMEM30A遺伝子の発現]
異なる細胞系でのTMEM30A遺伝子発現はRT−PCRおよび正5’GAAGACTCGGAGACCGGATAACAC’3(SEQ ID No.16)と逆5’CAGTACAACTCCAGAAGGAAGGAG’3(SEQ ID No.17)を用いて試験された。図12にヒト脳内皮細胞(HBEC)でのTMEM30Aの高発現およびヒト胎児星状細胞での低発現が示される。ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)およびヒト肺微小血管内皮細胞(HMLCE)もまたTMEM30A遺伝子発現を示した。
【0103】
[例5.プロテオミクスによる抗原同定]
プロテオミクスによる抗原同定は、a)脳内皮細胞(抗原を含む)の原形質膜の抽出;b)該抽出物の、ニッケルマイクロスピンカラムに結合したFC5または負の対照の抗原、NC11の通過;c)溶出液のカラムからの回収、0.2Uノイラミニダーゼ酵素(シグマ社のコレラ菌より)との処理または不処理、および質量分光測定によるこれらの解析、によってなされる。この取り組み方について以下で述べる。
【0104】
[原形質膜タンパク質の抽出]
固定されたラット脳内皮細胞(SV−ARBEC)を160cmペトリ皿で約1週間培養した。細胞が完全培地変更によって4日後に供給された。細胞が融合状態に達した際に、原形質膜タンパク質を抽出した。8枚の160cmペトリ皿を用いた。細胞を氷上に置き、30mlのPBSで1回および10mlの緩衝剤A(0.25Mスクロース、1mM EDTA, 20mMトリシン、pH7.8)で2回洗浄した。5mlの緩衝剤A(緩衝剤Aに1:1000のシグマ社の阻害剤カクテルを加える)を加え、細胞を掻取った。それから細胞を2つの50mlファルコン(登録商標)チューブに収集し(4皿/チューブ)、4℃、1400xgで5分間回転させた。細胞ペレットを1mlの緩衝剤Aに再懸濁した。再懸濁したペレット双方を一緒にし、ガラスチューブとテフロン(登録商標)乳棒(20ストローク)を用いて均質化した。該ホモジェネートを2つの2ml遠心チューブに移し、4℃、1000xgで10分間回転させた。上澄みを収集した。ペレットを2mlの緩衝剤Aに再懸濁し、それから均質化した。原形質膜を20mlの30%パーコールに加え、4℃、83000xgで30分間回転させた。原形質膜試料を収集し5mlのPBSに再懸濁し、4℃、118000xgで1時間回転させた。タンパク質濃度をBCAキット(ピアス社)を用いて測定した。試料を等分し−80℃で凍結した。
【0105】
[抗原同定のための抗体装填カラム]
アマシャム マイクロスピンHis精製モジュールのカラムを抗体の結合に用いた。簡単には、カラムを200μgのFC5、NC11または単にPBSと共に倒置して室温で1時間インキュベートした。カラムを735xgで1分間回転し、それから500ulのPNI20で1回、500ulのPBSで2回洗浄した。300μgの原形質膜タンパク質を各カラムで倒置して4℃で3.5時間インキュベートし、それから倒置して室温で30分間インキュベートした。それからカラムを735xgで1分間回転し、その後500ulのPNI20で4回洗浄し、各洗浄の間に735xgで1分間回転した。カラムを200ulのPNI400と共に倒置して室温で15分間インキュベートし、735xgで1分間回転することによって、タンパク質を溶出した。各タンパク質試料から溶出したタンパク質を0.2Uノイラミニダーゼで1時間処理し、あるいは処理しなかった。
【0106】
[トリプシン消化]
下ろした試料それぞれ(FC5、NC11、PBS)を、10倍の冷アセトンを加え−20℃で12時間以上インキュベートすることで沈殿させた。5000xg、5分間の遠心分離によりタンパク質をペレットとし、50μl 変性緩衝剤(50mM Tris−HCl、pH8.5、0.1%SDS、4mM DDT)に溶解させた。タンパク質を15分間煮沸し変性させ、2分間冷却した。試料それぞれに5μgのトリプシン(プロメガ社、カタログ番号V5280)を加え、試料を37℃で12時間以上インキュベートした。
【0107】
[カチオン変換(CE)カラムでの精製]
試料それぞれをCE移動相緩衝剤(10mM KHPO、pH3.0、25%アセトニトリル)で2mlに希釈し、pHが3.3以下であることを確認した。試料をカチオン変換カラム(POROS(登録商標)50HS、50μm粒子サイズ、4.0mm x 15mm,アプライドバイオシステム社、カタログ番号4326695)で精製した。
【0108】
[質量分光測定およびデータベース探索]
複合四重極飛行時間型質量分析測定(Q−TOF(登録商標)ウルティマ、ウォーターズ社、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ミルフォード)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)およびオンライン逆相ナノフロー液体クロマトグラフィーカラム(ナノLC、0.3mm×15cm ペプマップ(PepMap、登録商標)C18毛管カラム、ダイオネクス社/LCパッキングス社,アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ)を全ての解析に用いた。用いたナノLCカラムの勾配はCapLC HPLC(高速液体クロマトグラフィー)ポンプ(ウォーターズ社)によって提供される50min、0.35μl/minでの5〜95%アセトニトリル、0.2%蟻酸である。試料それぞれの解析を2つの手順で行った。第一の手順において、試料の5%をナノLC MSにより測量(MS専用)モードで行い、試料それぞれに存在するタンパク質全ての強度を定量化した。関連するペプチドは「定量化データ解析」に述べるように決定され、「目標リスト」に含まれた。第二の手順において、試料それぞれを質量分析装置に再注入し(5%)、目標リストに含まれるペプチドのみをナノLC MS/MSモードで配列決定した。MS/MSスペクトルは2+、3+および4+イオンのみで得られた。それからこれらをPEAKSサーチエンジン(バイオインフォメティクスソリューションズ社、カナダ オンタリオ州)にかけ、NCBI非冗長トリプシン消化(2つの開裂を許容)ヒトデータベースに対して探索した。
【0109】
[MatchRxソフトウェアを用いた量的データ解析]
試料それぞれのナノLC MS生データから、個々のペプチドの存在度に対応するピーク強度を、初期に述べられたように(ハッカーニ他、FASEBジャーナル、2005年11月;19:1809〜21)抽出した。MatchRxソフトウェアを用いて全ての試料の間でペプチド強度を量的に比較した。FC5引落しに存在しNC11およびPBS引落しに存在しないペプチドは関連した。FC5から抽出されたプロテオミクスによって同定されたがNC11抗体カラムからはされなかったペプチドは以下である:
SSPCNK(SEQ ID No. 18)
LIER(SEQ ID No. 19)
HSFDGRKR(SEQ ID No. 20)
NYPVHSFDGR(SEQ ID NO. 21)
これら全てのペプチドはTMEM30Aタンパク質に属する。
【0110】
[例6.TMEM30Aの発現およびFC5による認識]
次にTMEM30Aタンパク質をクローニングし、発現させた。TMEM30A発現細胞の細胞溶解物内のTMEM30AのFC5による認識を用い、TMEM30AのFC5による特異的認識を確認した。
【0111】
[ヒトTMEM30A遺伝子のpTT5SH8Q2ベクターへのクローニングによる哺乳類細胞内のその目標タンパク質の精製]
C末端His6タグに寄宿するpTT5SH8Q2ベクターを、TMEM30A遺伝子のクローニングに用いた。クローニングのためのPCRに用いたプライマーは以下である:
【0112】
[TMEM30A正]
【化1】

【0113】
[TMEM30A逆]
【化2】

【0114】
アンピシリン(100μg/ml)を追加したサークルグロウ(CiculeGrow)液体培地中で生育した大腸菌DH5α株を用いてプラスミドを増幅し、マキシ/ギガ(Maxi/Giga)プラスミド精製キット(キアゲン社)を用いて精製した。
【0115】
以下のプライマーを用いて配列を確認した:
TMEM30A−SP1
5’ TCT CGA TCT CGC GGA TGC 3’ (SEQ ID No. 24)
TMEM30A−SP2
5’ CAT CCA ACA TTA CCA GCT 31 (SEQ ID No. 25)
TMEM30A−SP3
5’ CGG ATG ATC TTG AGC ACT 3’ (SEQ ID No. 26)
50 mMトリス(Tris)内での260nmの紫外線吸収により、DNA濃度を測定した。
【0116】
[TMEM30Aタンパク質の生産]
0.1% プルロニック(登録商標)F−68、1% 子ウシ血清(BCS)、50μg/ml ジェネティシン(登録商標)G418、および10mM HEPESを追加した低カルシウムSFM(LCSFM、インビトロジェン社、ニューヨーク州グランドアイランド)内において、エプスタイン−バーウイルス核抗原を安定して発現するヒト胚腎臓293細胞系(293E)を、浮遊培養として生育した。無血清細胞系HEK293 SFE(293SFE)もまたTMEM30A生産に用いた。これらの細胞を先に述べられたように(ファム他、2003年)0.5%GPN3を追加したLC−SFM内において生育した。全ての細胞経路を20mlの培地を含む125mlエルレンマイアーフラスコ内で慣例的に行った。LC−SFMLB、10μg/mlのジェネティシンおよび10mM HEPESを含む培養フラスコ内で浮遊する293SFE細胞は対数期に維持された。培養フラスコを、37℃、加湿された5%CO大気中で110rpmで振動させた。
【0117】
[TMEM30Aの細胞溶解物内での発現]
図13に示すように、1%セシト(Thesit、登録商標)およびデオキシコールエステルを用いてTMEM30Aを細胞から抽出した。抗ヒスチジン抗体を検出に用いた。TMEM30Aの予想Mwtは40Kdaで、約50Kdaの高タンパク質分子重量サイズはグリコシル化されるはずである。
【0118】
[TMEM30AのFC5との相互作用の免疫沈降による調査]
TMEM30AとFC5の相互作用の研究のため、TMEM30Aを発現するように転換されたHEK293からの100μgの上澄み細胞溶解物を最初に4℃でゆるやかな揺動と共に50μl タンパク質Aセファロース(50%スラリー)を2時間インキュベートし、500gで4分間回転することで透明にした。改良結合力を用いたFC5の多重結合形態(改変五量体FC5)(25μg)を透明にした上澄みに加え、4℃で一晩インキュベートした。タンパク質Aセファロース(50μl、50%スラリー)を免疫結合溶解物に加え、4℃で2時間インキュベートした。それから免疫複合体を氷冷PBSで5回洗浄した。その後スラリーをレムリ緩衝剤中で5分間煮沸することで結合タンパク質を分離し、14000gで1分間遠心分離して免疫沈降したタンパク質を収集した。沈降したタンパク質を12% SDSアクリルアミドゲル上で分離し、それから銀染色することでバンドを視覚化した。
図14に示すように、五量体FC5は分子量約50のバンドでのみ免疫沈降し、図13のタンパク質サイズが同定された。FC5五量体と共にインキュベートされなかった細胞はTMEM30Aを免疫沈降しなかった。
【0119】
[7.FC5によるTMEM30A媒介輸送の機能的競合]
ラット脳内皮細胞をカバーリップで3日間培養し、それからFC5、五量体FC5または負対照抗体(NC11)の存在下または非存在下で、アバンティ リピッド社から購入した1−パルミトイル−2−〔6−[(7−ニトロ−2−1,3−ベンゾオキサジアゾール−4基)アミノ]ヘキサノイル〕−SA7−グリセロ−3−ホスホコリン(16:0−06:0 NBD PC)(DSMOに溶解)によって37℃で30分間処理した。それから細胞を広範囲に洗浄し4%ホルムアルデヒドで固定し、その後DAPIを加えたダコ蛍光封入剤(1:2000、2mg/mlストックから)で処理した。全ての画像はアクシオバート(Axiovert)200及び以下の設定を用いて得られた:20X対物レンズ、DNA−DAPI(青) 85msec、NBD−FITC(緑)250msecである。
図15に示す結果から、FC5およびその五量体P5が、NBDホスファチジルコリン(NBD−PC)の内在化の減少より測定されるTMEM30A生理機能と競合することが実証される。これに対し、負対照抗体NC11はNBD−PCの内在化を阻害しなかった。
【0120】
[材料および方法]
[材料]
細胞培養プラスチックはベクトン ディキンソン社(オンタリオ州ミシソーガ)から得た。ダルベッコ変法イーグル培地をインビトロジェン社(カリフォルニア州カールズバッド)、FBSをハイクローン社(ユタ州ローガン)、ヒト血清をウィゼント社(ケベック州モントリオール)、内皮細胞生育補給剤をコラボレーティブバイオメディカルプロダクツ社(マサチューセッツ州ベッドフォード)から購入した。抗体は以下の供給元から得た:抗c−Mycペルオキシダーゼ抗体をロッシュ社(アメリカ合衆国インディアナ州インディアナポリス)、抗カベオリンおよび抗クラスリン抗体をサンタクルス バイオテクノロジー社(カリフォルニア州サンタクルス)、FITC結合抗マウスおよびアレクサ568結合抗ウサギ二次抗体をモレキュラープローブ社(アメリカ合衆国オレゴン州ユージーン)、テキサスレッド結合トランスフェリンおよびカルセイン−AMをモレキュラープローブ社(アメリカ合衆国オレゴン州ユージーン)から購入した。モネンシンおよびビスインドリルマレイミド−1(BIM)はカルビオケム(Calbiochem、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ)から得た。オプティプレップはアキュレイト ケミカル アンド サイエンティフィック社(アメリカ合衆国ニューヨーク州ウェストベリー)から購入した。精製ヒトトランスフェリン受容体およびモノクローナル抗CD71(抗トランスフェリン受容体)抗体はリサーチ ディアゴノスティクス社(アメリカ合衆国ニュージャージー州フランダース)から購入した。[14C]−スクロースはパーキン エルマー社(アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストン)から購入した。テトラメチルベンジジン(TMB)/過酸化水素基質システムはR&Dシステムズ(ミネソタ州ミネアポリス)から得た。EZリンク硫酸−NHS−LC−LC−ビオチンおよびビシンコニン酸検定(BCA)はピアス バイオテクノロジー社(アメリカ合衆国イリノイ州ロックフォード)から購入した。他の全ての化学物質はシグマ社(アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス)から得た。
【0121】
[FC5sdAbのクローニング、発現および精製]
FC5はラマ重鎖抗体の可変領域(VH)であり、遺伝子銀行のmRNAおよびアミノ酸配列(それぞれNo.AF441486およびNo.AAL58846)をエンコードする。DNAエンコードFC5をプラスミドpSJF2のBbsl/BamHIサイトへクローニングし、FC5の発現ベクターを生成した。DNA構造は373A DNAシーケンサーストレッチ(PEアプライド バイオシステムズ社)での、プライマーfdTGIII、5’−GTGAAAAAATTATTATTATTCGCAATTCCT−3’(SEQ ID No.27)および96GIII、5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’(SEQ ID NO.28)を用いたヌクレオチド配列決定によって確認された。FC5はHisおよびc−mycタグとの融合で発現し、ハイトラップ キレーティング(HiTrap Chelating、登録商標)カラムを用いた固定金属親和クロマトグラフィーによる精製、および免疫化学による検出を可能とした。組換え抗体発現バクテリア大腸菌株TG1の単クローンを用いて100μg/mlのアンピシリンを含む100mlのM9培地に接種し、培地を37℃、200rpmで一晩振動させた。5μg/mlのビタミンB1、0.4% カザミノ酸および100μg/mlのアンピシリンを加えたM9培地(0.2% グルコース、0.6% NaHPO、0.3% KHPO、0.1% NHCI、0.05% NaCI、1 mM MgCI、0.1 mM CaCI)1Lへ、生育した細胞(25ml)を移した。細胞培地を室温、200rpmで24時間振動させ、それから12% トリプトン、24% 酵母抽出物および4% グリセロールを含む10X誘導培地テリフィックブロス 100mlを加えた。イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG、1mM)を加えることでタンパク質発現を誘導した。誘導の後で、培地をさらに25℃で72時間振動させ、ペリプラズム分画を浸透圧ショック法(アナンド他、1991年)によって抽出した。ハイトラップ キレーティング(HiTrap Chelating、登録商標)カラム(アマシャム ファーマシア バイオテック社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いた固定金属親和クロマトグラフィーによってFC5断片を分離した。生産されたFC5を10mM HEPES緩衝剤、500mM NaCl、pH7.0中、10〜500mM イミダゾール勾配において溶出し、ピーク分画を10mM HEPES緩衝剤、150mM NaCl、3.4mM EDTA、pH7.4に対し広範囲で透析した。FC5の分子量は13.2kDaで、FC5とc−mycおよびHisとの融合タンパク質の分子量は15.2kDaである。
【0122】
[cysFC5のクローニングおよび精製]
FC5は、薬剤および担体との結合が可能なように、追加の自由システインを加えるために作成された。sdAb FC5をエンコードするDNAをプラスミドpSJF2のBbsl/BamHIサイトへクローニングし、単量体FC5の発現ベクターを生成した。cysFC5遺伝子をFC5テンプレートから、His’精製’タグコドンの直後にシステインを追加した正プライマーを用いて標準的PCRによって生成した。続いてcysFC5遺伝子を、標準的なクローニング技法を用いてpSJF2へクローニングした。クローンされた構造物の完全性は373A DNAシーケンサーストレッチ(PEアプライド バイオシステムズ社、オンタリオ州スツリーツビル)でのヌクレオチドシーケンスによって確認された。cysFC5は細菌の大腸菌株TG1で発現し、固定金属親和クロマトグラフィー(IMAC)によって精製された。cysFC5と相同であるとSDS−PAGEで判定された分離された分画は蓄積され、10mM HEPES緩衝剤(150mM NaCI、3.4 mM EDTA、pH7.4)に対し広範囲で透析された。タンパク質濃度はビシンコニン酸検定(BCA)によって決定された。保存されたCys22−Cys92内部ジスルフィド結合を損傷することなしに改変されていないシステインの完全な減少を確認するために、cysFC5を結合に優先してG−25セファデックスカラムでの高速分離の後で4℃で一晩PBS中で5mMのEDTAを含む50mMのTris(2−カルボキシエチル)塩酸ホスフィンに暴露した。これらの条件は非損傷の細胞の上澄みおよびCEC単層を経ての移行によって決定されるcysFC5の抗原結合活性を損傷しなかった。
【0123】
[HRP−IgGのcysFC5への結合]
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)タグマウスIgGとcysFC5との架橋結合が、架橋結合試剤としてのスルフォスクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルフォ−SMCC)によって達成された。スルフォ−SMCCはHRP−IgG上のアミン(−NH)機能グループとcysFC5のsdAb上のスルフォヒドリル(−SH)グループとの間に橋を構築する。まず、HRP−IgGをPBS中の10モル以上のスルフォ−SMCC溶液と共に室温で30分間インキュベートすることでマレイミド活性化した。マレイミド試薬をG−25セファデックスカラム(ロッシュ社、インディアナ州インディアナポリス)によって除去した。マレイミド活性化HRP−IgGは減少されたcysFC5と5:1モル濃度比で室温において1時間混合することで架橋結合された。
【0124】
[細胞培養物]
一次性のヒト大脳微少血管細胞(HCEC)培養物は、真性てんかんの影響を受けた脳の病巣周囲の領域から外科的に除去されたヒト側頭皮質から分離された。細胞を既に述べられたようにして分離、培養し特性を決定した(スタニミロビッチ(Stanimirovic)他、1996年;ムルガナンダム(Muruganandam)他、1997年)。これらのHCEC培養物の形態学、表現型、生化学および機能的特性は既に述べられている(スタニミロビッチ(Stanimirovic)他、1996年;ムルガナンダム他、1997年)。HCECの経路2〜6をこの研究の実験に用いている。
【0125】
FC5および様々な薬理学試剤の存在下での生存力を、生体染色カルセインAM放出検定によって先に述べられたように査定した(ワン他、1998年)。
FC5のHCECへの取り込みは、5μg/mlのFC5を加えた後でエンドサイトーシスの様々な薬理的モジュレーターの不在または存在下において15〜90分間試験された。FC5の細胞分布を視覚化するために、FITCラベル抗マウスIgGとのインキュベート(1:250、1時間)の後で細胞を固定、透過性化し、抗c−myc抗体でプローブした(1:100、1時間)。
【0126】
[生体外血液−脳隔壁モデルを経ての輸送]
HCEC(80000細胞/膜)を1mlの増殖培地中において0.5%ゼラチン被覆ファルコン組織培養インサート(孔径1μm;表面積0.83cm)に接種した。インサートアセンブリの底室は、胎児ヒト星状細胞条件基剤を体積比1:1で供給した2mlの増殖培地を含んでいた(ムルガナンダム他、1997年)。モデルは分子量1kDa以上の親水性化合物に対し実質的に不浸透性であった(ムルガナンダム他、1997年)。
【0127】
輸送研究は既に述べられたようにして接種後に7日間行われた(ムルガナンダム他、1997年;ムルガナンダム他、2002年)。フィルターインサートを輸送緩衝剤[5mM グルコース、5mM MgCI、10mM HEPES、0.05% ウシ血清アルブミン(BSA)を含むpH7.4のリン酸緩衝塩類溶液(PBS)]でリンスし、37℃で30分間平衡させた。実験は、細胞、対照HCECまたは薬理的モジュレーターに30分間暴露されたHCECを除いた0.5%ゼラチン被覆インサートを含むインサートの頂端および側底に10g/mlのFC5を加えることで開始された。輸送研究は37℃で、30〜40rpmで攪拌する回転台上のプレートにおいて行われた。部分標本(100μl)を逆の室から様々な時間間隔において(5、15、30、60、90分)収集し、新しい緩衝剤に移した。空のインサートまたはHCEC単層を経て輸送されたFC5の量は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって決定された(下を参照)。HCEC膜の完全性の対照および細胞間拡散の評価のために、[14C]−スクロースのFC5輸送実験で用いられたものと同じ単層を経ての頂端から側底および側底から頂端のクリアランス率を事実上先に述べられたようにして決定し算出した(ムルガナンダム他、2002年;ガーバーグ他、2005年)。50μlの部分標本における試料関連放射能をマイクロベータ(登録商標)トリラックス液体シンチレーション計数器(ウォレス社、フィンランド)を用いて測定した。
【0128】
クリアランスはCl(ml)=C/CxVとして算出され、ここでCは供与体室の初期トレーサーまたはsdAb濃度、Cは受容体室のトレーサーまたはsdAb濃度、Vは受容体室の体積である。FC5のクリアランスは15分から60分の間において線形であり、60分から90分の間において飽和に達した(ムルガナンダム他、2002年)。FC5移行での薬理的モジュレーターの効果は続いて30分において査定された。HCEC単層は、同一のライブラリまたは同様の分子量の蛍光デキストランから分離された非選択sdAbに対し実質的に不浸透性である(ムルガナンダム他、2002年)。
【0129】
[レーザー走査共焦鏡検]
クラスリンまたはカベオリン−1によるFC5のコローカリゼーションは二重免疫蛍光ラベルによって研究された。HCECをまず5μg/ml FC5と共に30分間インキュベートし、洗浄し、4% ホルムアルデヒドによって固定し、0.1% トライトンX−100により10分間で透過性化した。それから細胞を4% ヤギ血清により1時間で閉塞した。閉塞の後で、細胞をまず抗c−Myc単層抗体(1:100)と共に1時間インキュベートし、広範囲に洗浄し、それからFITC抗マウスIgG二次抗体(1:250)と共に1時間インキュベートした。4% ヤギ血清での2回目の一晩の閉塞の後で、HCECを抗クラスリン(1:100)または抗カベオリン−1(1:300)ポリクローナル抗体と共に1時間インキュベートし、それからアレクサ568結合抗ウサギIgG二次抗体(1:300)共に1時間インキュベートした。テキサスレッド結合トランスフェリン(1μM)およびカテプシン−Bモノクローナル抗体(1:200)をそれぞれ初期および後期エンドソームのマーカーとして用いた。染色細胞のカバーガラスをHBSSで5回洗浄し、蛍光封入剤(ダコ社、オンタリオ州ミシソーガ)に封入した。
【0130】
二重の免疫化学で処理された細胞の画像化を、アルゴン/クリプトンイオンレーザーおよびプラン ネオフルオラ63X 1.3NA油浸対物レンズを装備したツァイスLSM410(カールツァイス社、ニューヨーク州ソーンウッド)反転レーザー走査顕微鏡(LSM)を用いて行った。2つのフッ素プローブの共焦画像が488および568nm励起レーザー線を用いた連続捕捉と同時に得られ、それぞれFITC(BP505〜550エミッション)およびテキサスレッド/アレクサ568蛍光(LP590エミッション)を検出した。全ての画像をそれぞれのチャネルについて同一のレーザー力およびピンホールサイズを用いて収集し、同じ方式で処理した。
一次抗体の省略では染色がなされなかった。一次および非対応二次抗体の間では交差反応は観測されなかった。
【0131】
[細胞分画]
タンパク質および脂質分画を分離するために、HCECをPBSで洗浄し、掻取り凍結乾燥した。細胞残物をpH7.2、50mMのトリスに溶解した。ヴェッセルおよびフリュッゲのプロトコルの改良版(ヴェッセル、1984年)を用いてクロロホルム−メタノール混合物によりタンパク質を脂質から分離した。窒素ガス流での脂質分画の乾燥の前に、ガラクトシルセラミドを正の対照として加えた。タンパク質および脂質を6Mの尿素およびエタノールにそれぞれ溶解した。
【0132】
界面活性剤を用いない方法を用いて既に述べられたようにして低濃度膜分画を分離した(アブルロブ(Abulrob)他、2004年)。全ての行程は4℃において行い、全ての緩衝剤はプロテアーゼ阻害剤のカクテル(シグマ社)を追加した。5μg/ml FC5存在下で30分間インキュベートした融合HCECの5つの75cm組織培養フラスコから、原形質膜分画を調製した。個々のフラスコを10ml 緩衝剤A(0.25Mスクロース、1mM EDTA, 20mMトリシン、pH7.8)で2回洗浄し、それから5ml 緩衝剤A中で細胞を掻取って収集し、1400×g、5分間の遠心分離(ベックマンJ−68)でペレット化し、1mlの緩衝剤Aに再懸濁し、テフロングラスホモジナイザーによる20回の上下動により均質化した。均質化した細胞を1000×g、10分間で2回遠心分離し(エッペンドルフ遠心機5415C)、2つの核後上澄み分画を収集し、貯蔵し、緩衝剤A中で23mlの30%パーコール溶液に上乗せし、ベックマン(登録商標)60Tiにおいて83000×g、30分間で超遠心分離した。原形質膜分画を示すペレットを収集し毎秒50J/Wで6回超音波処理した(フィッシャー ソニック ディスメンブレーター300)。超音波処理した原形質膜分画を緩衝剤B(0.25M スクロース、6mM EDTA、120mM トリシン、pH 7.8)中で50% オプティプレップと混合した(オプティプレップの最終濃度23%)。溶液全体をベックマンSW41Tiチューブの底に移し、線形20〜10%オプティプレップ勾配を上乗せし、SW41Ti(ベックマン インストゥルメンツ社)を用いて52000×g、90分間で遠心分離した。勾配の上の5mlを採取し緩衝剤B中で50% オプティプレップと混合し、SW41Tiチューブの底に移し、緩衝剤A中で2mlの5% オプティプレップを上乗せし、52000×g、90分間で遠心分離した。5%界面の直上の不透明帯が"カベオラ分画"を示した。勾配を1.25ml分画に分画した。
【0133】
[SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)およびウエスタン免疫ブロット解析]
FC5、カベオリン−1およびクラスリン重鎖タンパク質の免疫ブロット検出のために、最終オプティプレップ勾配のそれぞれの分画を減少条件においてSDS−ポリアクリルアミドゲル上に溶解した。分離されたタンパク質を電気泳動によりPVDF膜(イモビロンP(登録商標);ミリポア社、オンタリオ州ネピアン)へと移した。5%スキムミルクでの1時間の閉塞の後で、該膜を5%スキムミルクを含むTBS−トウェイン中でHRP結合抗c−Mycモノクローナル抗体(希釈1:1000)、ポリクローナル抗カベオリン抗体(希釈1:500)または抗クラスリン抗体(希釈1:500)でプローブした。ECLプラスウエスタンブロッティング検出システムを信号検出に用いた。
【0134】
[酵素結合免疫吸着検定(ELISA)]
生体外BBBモデルを経て移行されたFC5の量を測定するために、適当な区画から採取した50μlの部分標本をHisGrabニッケル被覆96穴プレート(ピアス社)において室温で一晩で固定した。該プレートを2% BSAで室温、2時間で閉塞した後、HRP結合抗c−Mycモノクローナル抗体を希釈1:5000で1時間加えた。洗浄後、結合したFC5をテトラメチルベンジジン(TMB)/過酸化水素基質システムにより検出した。マイクロタイター プレートリーダーにおいて450nmで信号を測定した。採取された部分標本のFC5濃度を、既知のFC5濃度を用いて構成された標準曲線から決定した。
【0135】
HCECのタンパク質および脂質分画へのFC5結合を測定するために、分離された分画を37℃、一晩の乾燥によりフレキシブル96穴ELISAプレート上に被覆した。該ELISAプレートをPBS中で0.5% BSAで2時間閉塞した。それからプレートをFC5抗体またはガラクトシルセラミドに対するO1抗体(ドイツ ハイデルベルク大学のJ.トッター博士より贈与)と共にインキュベートした。FC5抗体をマウス抗myc抗体9E10で検出した。述べたようにこの検定をさらに実行した。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】光学画像化によって同定されたマウスへのi.v.インジェクション後の脳内でのFC5抗体の蓄積。 (A)FC5またはNC11は赤外線プローブに近いCy5.5へと結合し、それから6時間に渡って動物へと尾静脈によって注入された。頭の画像化によって、NC11またはフルオロフォア単独に対しFC5がより高く蓄積されていることが示された。(B)FC5、NC11またはCy5.5単独の注入後の、平均蛍光濃度の頭範囲の定量化。(C)FC5、NC11またはCy5.5単独の注入後の、全ての動物の背脳体の画像化。(D)FC5、NC11またはCy5.5単独の注入後の、平均蛍光濃度の器官範囲の定量化。(E)殺および潅流により脳内でのFC5蓄積がより高いことを実証した後のFC5、NC11またはCy5.5を注入した動物の生体外での脳の画像化。
【図2】血液―脳隔壁浸透性sdAb FC5と、ホースラディッシュペルオキシダーゼによってタグされたマウスIgG(IgG−HRP)との結合、および構造の生体外での機能評価の説明。[材料および方法]で述べるようにして遺伝子工学によって追加のシステイン成分をFC5に加えた。A)示される反応においてcysFC5がマレイミド活性化IgG−HRPと結合した。B・C)培地内のヒト脳内皮細胞内での、IgG−HRP(B)あるいはFC5−IgG−HRP結合(C)の取り込み。一方が結合した5μg/mlの添加の後で細胞を30分間固定した。[材料および方法]のFITCラベル抗マウス二次抗体を用いて固定された細胞において取り込みが定量される。D)生体外血液―脳隔壁モデルを経てのIgG−HRP(▲)またはFC5−IgG−HRP結合(■)の移行。[材料および方法]で述べるようにして輸送実験が行われた。
【図3】A)生体外血液―脳隔壁(BBB)モデルを経てのFC5の極性移行。[材料および方法]で述べるようにして輸送実験は10μg/ml FC5の頂端部(A→B)または側底部(B→A)区画への添加で開始され、反対側の区画でのFC5の量は30分後に定量された。同じHCEC単分子層を経ての14Cスクロースの配送を細胞間輸送の内部制御として用いた。B)生体外BBBモデルを経てのFC5移行における吸着媒介エンドサイトーシス(AME)および微小貪喰作用の薬理的阻害剤の効果。[材料および方法]で述べるようにしてHCECは、AME阻害剤、硫化プロタミン(40μg/ml)およびポリリジン(300μM)、または微小貪喰作用阻害剤、アミロライド(500μM)によって30分間前処理され、FC5輸送は30分間に渡って測定された。それぞれの棒は6つの複製膜からの±s.d.を示す。
【図4】HCECへのFC5取り込みおよび生体外BBBモデルを経ての移行のエネルギー依存。37℃(A)および4℃(B)でのFC5のHCECへの取り込みの共焦鏡検画像。[材料および方法]で述べるようにして細胞を5μg/ml FC5に30分間暴露し、FC5のc−myc標識の二重免疫化学で処理した。C)37℃および4℃でのHCECを経ての、あるいは無グルコース培地内でのHCECの5mMのNaNおよび5mMのデオキシグルコース(2DG)への30分間の暴露後の、10μg/ml FC5の細胞間移行。[材料および方法]で述べるようにしてFC5移行はHCEC添加の30分後に定量された。D)HCECを経てのFC5の細胞間移行におけるNa,K−ATPアーゼ阻害剤、ウアバインの効果。[材料および方法]で述べるようにして細胞は1μMのウアバインで30分間前処理された。それぞれの棒は6つの複製膜からの±s.d.を示す。アスタリスクは37℃または未処理細胞からの有意差を示す(P<0.05;スチューデントt−検定)。
【図5】HCEC内のFC5のエンドサイトーシスおよびトランスサイトーシスにおける、クラスリン被覆穴およびカベオラの役割。FC5(緑蛍光)(A)およびクラスリン(赤蛍光)(B)のHCEC細胞内でのコローカリゼーション。オーバーレイ画像が(C)に示される。FC5(緑蛍光)(D)およびカベオリン1(赤蛍光)(E)のコローカリゼーション。オーバーレイ画像が(F)に示される。[材料および方法]で述べるようにして二重の免疫細胞化学のために細胞をFC5に30分間暴露し、洗浄し処理した。画像は3〜5の別途の実験を示す。G)FC5に30分間暴露したHCECから得られた亜細胞分画内の、カベオリン−1、FC5およびクラスリン重鎖の免疫反応の分布を示すウエスタンブロット。[材料および方法]で述べるようにしてHCEC細胞を分画した。ウエスタンブロットは3つの別途の実験を示す。H)生体外BBBモデルを経てのFC5の移行における、カベオラ媒介エンドサイトーシスの薬理学的阻害剤、メチル−β−シクロデキストリン(5mM)、ナイスタチン(5μg/ml)およびフィリピン(5μg/ml)、またはクラスリン被覆穴媒介エンドサイトーシスの阻害剤、クロルプロマジン(50μg/ml)または無カリウム緩衝剤の効果。[材料および方法]で述べるようにしてヒトCECは前記阻害剤とともに30分間前処理され、FC5輸送は30分間にわたって測定された。それぞれの棒は6つの複製膜からの±s.d.を示す。アスタリスクは有意差を示す(P<0.05;一要因分散分析、手段間のダネットの多重比較による)。
【図6】エンドソーム内でのFC5処理。FC5(緑蛍光)(A)およびテキサスレッド(登録商標)結合トランスフェリン(赤蛍光)(B)のHCEC細胞内でのコローカリゼーション。オーバーレイ画像が(C)に示される。内在化FC5(緑蛍光)(D)およびカテプシン−B(赤蛍光)(E)のHCEC細胞内でのコローカリゼーション。オーバーレイ画像が(F)に示される。[材料および方法]で述べるようにしてCECは免疫化学および共焦鏡検のために処理される。G)HCEC生体外BBBモデルを経てのトランスサイトーシスの前(上)と後(下)のFC5のウエスタンブロット。H)25μM モネンシンによって30分間前処理されたHCECを経ての、10μg/ml FC5の細胞間移行。[材料および方法]で述べるようにして輸送実験が行われた。
【図7】A)HCECを経てのFC5トランスサイトーシスにおける細胞骨格ネットワークの役割。[材料および方法]で述べるようにして、アクチン微細繊維阻害剤、サイトカラシンD(0.5μM)またはラトランキュリンA(0.1μM)、あるいは微小管阻害剤、ノコダゾール(20μM)またはコルヒチン(20μM)とともにHCECを30分間前処理し、生体外BBBモデルを経てのFC5移行は30分間にわたって測定された。B)10μg/mlのFC5を加える30分前に、HCECに通信経路モジュレーター、ウォルトマニン(0.5μM)、BIM−1(5μM)、ゲニステイン(50μM)またはdbcAMP(500μM)を加え、生体外BBBモデルを経てのトランスサイトーシスは30分間にわたって測定された。それぞれの棒は6つの複製膜からの±s.d.を示す。アスタリスクは対照からの有意差を示す(P<0.05;一要因分散分析、手段間のダネットの多重比較による)。
【図8】HCECに取り込まれHCECを経てトランスサイトーシスされるFC5内のオリゴ糖抗原性エピトープの役割。A〜D)不在(A)または100μg/ml WGA(B)、200μM シアル酸(C)あるいは0.1U ノイラミニダーゼ存在下での、HCECに取り込まれたFC5の蛍光顕微鏡写真。取り込みは30分間にわたって測定された。E)30分間にわたって200μMのシアル酸によって前処理された、あるいはノイラミニダーゼ濃度を示されたHCECを経ての、10μg/ml FC5のトランスサイトーシス。F)100μg/ml WGA、100μg/ml セイヨウニワトコ凝集素(SNA)または100μg/ml イヌエンジュ凝集素(MAA)によって前処理されたHCECを経ての、10μg/ml FC5のトランスサイトーシス。[材料および方法]で述べるようにして輸送実験が行われた。G)酵素結合免疫吸着検定法によって定量されたHCECの分離されたタンパク質(黒い棒)および脂質(灰色の棒)の分画とのFC5の結合。分画の前に、溶解した細胞を不在または1U/ml ノイラミニダーゼ存在下において37℃、1時間インキュベートした。[材料および方法]で述べるようにして、分離されたタンパク質および脂質での酵素結合免疫吸着検定法が行われた。それぞれの棒は6つの複製膜からの±s.d.を示す。アスタリスクは対照からの有意差を示す(P<0.05;一要因分散分析、手段間のダネットの多重比較による)。
【図9】生体外BBBを経てのFC5トランスサイトーシスに伴うトランスフェリン受容体の欠乏。A)アンチトランスフェリン受容体モノクローナル抗体、CD71、FC5、FC5五量体構成(P5)または炭水化物抗原、CEAを認識する同じライブラリからの無関連抗体の、酵素結合免疫吸着検定法プレートに固定されたヒトトランスフェリン受容体への結合。プレートは自動マイクロプレートリーダーによって450nmにおいて読み取られた。B)P5ではなく抗CD71によって免疫的に検出されたヒトトランスフェリン受容体のウエスタンブロット。C)10μg/ml FC5単独または100倍(1mg/ml)のホロトランスフェリン存在下でのHCEC単層を経てのトランスサイトーシス。[材料および方法]で述べるようにして輸送は30分間にわたって測定された。それぞれの棒は6つの複製膜からの±s.d.を示す。
【図10】FC5抗原同定に用いるゲノムおよびプロテオーム戦略の組み合わせ。
【図11】推定のFC5抗原の組織分布。
【図12】様々な細胞種でのTMEM30A遺伝子発現。
【図13】HEK293細胞でのTMEM30A遺伝子発現。
【図14】TMEM30A過剰発現細胞の細胞溶解物における、FC5によるTMEM30Aの認識。
【図15】FC5によるヒト大脳内皮細胞でのホスファチジルコリンのTMEM30A媒介膜間輸送の競合。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液―脳隔壁を経てのTMEM30A媒介移行が可能な試剤の識別方法であって、
SEQ ID NO.3のアミノ酸67〜323、SEQ ID NO.4のアミノ酸67〜287およびSEQ ID NO.5のアミノ酸1〜204からなる集団から選択された、少なくとも75%のアミノ酸配列が同定されたペプチドを有する試剤のインキュベート、および
該試剤と該ペプチドとの間の結合の検出からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記試剤は抗体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試剤は単一領域抗体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試剤は単鎖抗体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試剤はペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試剤は低分子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドは少なくとも75%がSEQ ID NO.3のアミノ酸67〜323と同定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも75%がSEQ ID NO.3のアミノ酸67〜323と同定されることを特徴とする、精製または分離されたペプチド。
【請求項9】
少なくとも75%がSEQ ID NO.3のアミノ酸1〜361と同定されることを特徴とする、請求項6に記載のペプチド。
【請求項10】
少なくとも75%がSEQ ID NO.2のアミノ酸141〜1226と同定されることを特徴とする、精製または分離された核酸分子。
【請求項11】
SEQ ID NO.3のアミノ酸67〜323、SEQ ID NO.4のアミノ酸67〜287およびSEQ ID NO.5のアミノ酸1〜204からなる集団から選択されたアミノ酸配列の連続した6以上のアミノ酸からなることを特徴とする、精製または分離されたペプチド。
【請求項12】
前記アミノ酸はSEQ ID NO.3のアミノ酸67〜323であることを特徴とする、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
血液―脳隔壁を経てのTMEM30A媒介移行が可能な抗体の生成方法であって、
SEQ ID NO.3のアミノ酸67〜323、SEQ ID NO.4のアミノ酸67〜287およびSEQ ID NO.5のアミノ酸1〜204からなる集団から選択された、連続した6以上のアミノ酸からなる精製または分離されたペプチドと、目標物とのインキュベート、
該ペプチドに対する免疫反応を該目標物において生成する適当な賦形剤、および
該目標物からの抗体の回収からなることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記目標物はヒトではない動物であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
TMEM30Aとの相互作用が可能な試剤の同定方法であって、
SEQ ID NO.3のアミノ酸67〜323、SEQ ID NO.4のアミノ酸67〜287およびSEQ ID NO.5のアミノ酸1〜204からなる集団から選択された、少なくとも75%のアミノ酸配列が同定されたペプチドと、関連する試剤とのインキュベート、および
該試剤と該ペプチドとの間の結合の検出からなることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−509503(P2009−509503A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531493(P2008−531493)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001522
【国際公開番号】WO2007/036021
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508090723)ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ (1)
【Fターム(参考)】