説明

血液凝固抑制材料並びにそれを用いたコーティング材料及び生体留置部材

【課題】優れた伸縮性を有し、生体に与える影響が少なく、血液凝固を効率的に抑制することができる血液凝固抑制材料の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされる構造単位、下記一般式(2)で表わされる構造単位、及び下記一般式(3)で表わされる構造単位を少なくとも有するマルチブロック共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチブロック共重合体を備える血液凝固抑制材料と、その血液凝固抑制材料を用いたコーティング材料及び生体留置部材に関する。
【背景技術】
【0002】
医療等の分野では、人間を含む各種の生物の体内又はその体表面に、血液と接する状態で留置される部材(以下「生体留置部材」という。)が用いられている。生体留置部材の例としては、ステント、カテーテル、バルーン、血管補綴材、人工血管、人工皮膚、経皮デバイス、癒着防止材、創傷被覆材等が挙げられる。
【0003】
中でも、ステントは、血管、胆管、気管、食道、消化管、尿管、尿道などの生体内の管腔に生じた狭窄部や閉塞部等を改善するために用いられる医療用具であり、具体的には、血管等の管腔が狭窄や閉塞等することによって生じる様々な疾患を治療するために、その狭窄部や閉塞部等である病変部を拡張し、その内腔を開存状態に維持するために、当該部位に留置することができる中空管状の医療用具である。例えば、心臓の冠状動脈においては、経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の再狭窄防止を目的として用いられている。このステントを、術後等に血管等の管腔内に留置することにより、急性の血管閉塞および再狭窄の発生率を低下させることができる。
【0004】
従来、ステントの素材としては、耐久性や伸縮性の点から、各種の金属や樹脂等の素材が用いられていた。
しかし、時間の経過とともにステントの表面に血液が結合し、凝固してしまうという課題があった。
こうした課題を解決するため、ステントの表面を、血液の凝固を防ぐ各種の樹脂で覆う技術が提案されている(例えば特許文献1〜4等)。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/090807号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/080147号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6211249号明細書
【特許文献4】国際公開第99/02168号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4等の技術は、ステント表面の被覆に用いられる樹脂が、十分な伸縮性を有していない、生体に好ましくない影響を与える物質を含有している、血液凝固の抑制効果が十分ではない、等の課題を有していた。
【0007】
その他、再生医療分野では、ポリグリコール酸などの基材(スキャホールド)を用いた研究・開発が展開されてきた。また、骨固定ピンとしてのポリ乳酸や、縫合糸としてのポリジオキサノン、或いは様々なランダム共重合体が広く臨床応用されている。しかしながら、これらの材料の特性としては、生体吸収性の他には、高強度・高弾性、或いは柔軟性のみが追求されており、伸縮性と、生体への安全性と、血液凝固の抑制効果とをバランス良く備えた材料は知られていなかった。
【0008】
以上の理由から、優れた伸縮性を有し、生体に与える影響が少なく、ステント等の生体留置部材における血液凝固を効率的に抑制できる材料が求められていた。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、優れた伸縮性を有し、生体に与える影響が少なく、血液凝固を効率的に抑制することができる血液凝固抑制材料と、その血液凝固抑制材料を用いたコーティング材料及び生体留置部材を提供することに存する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、後出の一般式(1)〜(3)で表わされる構造単位(ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、及びジカルボン酸単位)を少なくとも有するマルチブロック共重合体を用いることにより、優れた伸縮性を有し、生体に与える影響が少なく、血液凝固を効率的に抑制することができる血液凝固抑制材料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、下記一般式(1)で表わされる構造単位、下記一般式(2)で表わされる構造単位、及び、下記一般式(3)で表わされる構造単位を少なくとも有するマルチブロック共重合体を備えることを特徴とする、血液凝固抑制材料に存する(請求項1)。
【化1】

【化2】

【化3】

(上記一般式(1)〜(3)において、R1、R2、R3はそれぞれ独立に、2価の有機基を表わし、m及びnは各々独立に、2以上5000以下の整数を表わす。)
【0011】
ここで、上記一般式(1)で表わされる構造単位及び一般式(3)から構成される構造単位の合計の割合が、マルチブロック共重合体に対して5重量%以上50重量%以下であることが好ましい(請求項2)。
【0012】
また、上記一般式(1)で表わされる構造単位が、ポリエチレングリコールブロックであることが好ましい(請求項3)。
【0013】
また、上記一般式(2)で表わされる構造単位が、乳酸、グリコール酸、及びカプロラクトンからなる群から選択される何れか1種類以上を単量体成分とする構造単位であることが好ましい(請求項4)。
【0014】
また、上記一般式(3)において、R3が炭素数10以下の2価の炭化水素基であることが好ましい(請求項5)。
【0015】
また、本発明の別の要旨は、上述の血液凝固抑制材料を有することを特徴とする、コーティング材料に存する(請求項6)。
【0016】
また、本発明の別の要旨は、部材本体の表面が上述のコーティング材料でコーティングされてなることを特徴とする、生体留置部材に存する(請求項7)。
【0017】
また、本発明の別の要旨は、上述の血液凝固抑制材料を含有することを特徴とする、生体留置部材に存する(請求項8)。
【0018】
ここで、上述の生体留置部材は、ステントであることが好ましい(請求項9)。
【0019】
また、上述の血液凝固抑制材料は、生体留置部材を生体内に留置する際の血液凝固の抑制に用いることが好ましい(請求項10)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた伸縮性を有し、生体に与える影響が少なく、血液凝固を効率的に抑制することができる血液凝固抑制材料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
【0022】
なお、本明細書では、特に断り書きのない限り、「重合体」という語を、「単独重合体」(単一種類のモノマーからなる重合体。)及び「共重合体」(複数種類のモノマーからなる重合体。コポリマー。)の総称として使用するものとする。
また、本明細書では、特に断り書きのない限り、「重合体」と「ポリマー」という語を同義として扱うものとし、また、「単量体」と「モノマー」という語を同義として扱うものとする。
【0023】
また、本明細書では、重合体又は化合物を構成する構造単位のうち、ある単量体化合物に由来する構造単位を、その単量体化合物の名前に「単位」を付して表わす場合がある。例えば、ジカルボン酸に由来する構造単位を、「ジカルボン酸単位」というものとする。
【0024】
また、本明細書では、重合体又は化合物を構成する構造単位のうち、ある重合体化合物に由来する構造単位を、その重合体化合物の名前に「ブロック」を付して表わす場合がある。例えば、ポリエーテルに由来する構造単位を、「ポリエーテルブロック」というものとする。
【0025】
また、本明細書では、重合体又は化合物を構成する構造単位のうち、ある構造単位の原料となり得る(一種又は二種以上の)化合物を、その構造単位の名称の「単位」又は「ブロック」を「成分」に替えた名称で総称する場合がある。例えば、ジカルボン酸単位の原料となり得る化合物を「ジカルボン酸成分」と総称し、ポリエーテルブロックの原料となり得る化合物を「ポリエーテル成分」と総称するものとする。
【0026】
本発明の血液凝固抑制材料は、特定のマルチブロック共重合体を備えることを特徴とする。よって、以下の記載ではまず、この特定のマルチブロック共重合体(以下適宜「本発明の共重合体」という。)について説明した上で、本発明の血液凝固抑制材料について説明し、更に本発明の生体留置部材の説明に移るものとする。
【0027】
[I.マルチブロック共重合体]
本発明の共重合体は、下記一般式(1)で表わされる構造単位(以下「構造単位(1)」という場合がある。)、下記一般式(2)で表わされる構造単位(以下「構造単位(2)」という場合がある。)、及び下記一般式(3)で表わされる構造単位(以下「構造単位(3)」という場合がある。)を少なくとも有するマルチブロック共重合体である。
【0028】
【化4】

【化5】

【化6】

【0029】
上記一般式(1)〜(3)において、R1、R2、R3はそれぞれ独立に、2価の有機基を表わし、m及びnは各々独立に、2以上5000以下の整数を表わす。
以下、個々の構造単位について説明する。
【0030】
[I−1.構造単位(1):ポリエーテルブロック]
構造単位(1)は、−R1−O−で表わされる構造単位(これをエーテル単位と言う場合がある。)からなる、ポリエーテルブロックである。
【0031】
一般式(1)において、mは、−R1−O−で表わされる構造単位(エーテル単位)の繰り返し数を表わす整数であり、通常2以上、好ましくは10以上、また、通常5000以下、好ましくは1000以下の整数である。
【0032】
一般式(1)において、R1は、2価の有機基を表わす。
2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましい。
2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、芳香族炭化水素基でもよく、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基(半芳香族炭化水素基)でもよいが、脂肪族炭化水素基が好ましい。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状の構造でもよく、分岐鎖状の構造でもよく、環状の構造でもよく、これらが結合した構造でもよい。
【0033】
1の炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常6以下、好ましくは4以下である。
【0034】
中でも、R1としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。2価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、トリメチレン基等が挙げられる。中でもエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基等が好ましく、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基が特に好ましく、1,2−エチレン基がとりわけ好ましい。R1が1,2−エチレン基の場合、−R1−O−で表わされる構造単位はエチレングリコール単位(エチレンオキシド単位)となる。また、R1が1,2−プロピレン基の場合、−R1−O−で表わされる構造単位はプロピレングリコール単位(プロピレンオキシド単位)となる。
【0035】
なお、m個のR1は、何れも同一の種類であってもよく、互いに異なっていてもよい。
即ち、上記一般式(1)で表わされる構造単位は、一種類のR1のみを有していてもよく、二種類以上のR1を任意の組み合わせ及び比率で併せ持っていてもよい。複数種のR1(即ち、複数種のエーテル単位)が存在する場合には、それらがランダムに存在していてもよく、その種類毎にブロックとして存在していてもよい。
【0036】
上記一般式(1)で表わされる構造単位(ポリエーテルブロック)の特に好ましい具体例としては、ポリエチレングリコールブロック(即ち、エチレングリコール単位からなる構造単位)、ポリプロレングリコールブロック(即ち、プロピレングリコール単位からなる構造単位)、ポリエチレングリコール−ポリプロレングリコールブロック(即ち、エチレングリコール単位からなるブロックとプロピレングリコール単位からなるブロックとが結合してなる構造単位)が挙げられる。とりわけ、ポリエチレングリコールブロックが好ましい。
【0037】
また、エチレングリコール単位及び/又はプロピレングリコール単位と、他の一種又は二種以上のエーテル単位とが共重合してなる構造単位も、ポリエーテルブロックの好ましい具体例として挙げられる。但しこの場合も、ポリエーテルブロックの繰り返し数mに対するエチレングリコール単位及び/又はプロピレングリコール単位の数の割合が、通常50%以上、中でも70%以上であることが好ましい。
【0038】
なお、構造単位(1)は、本発明の意図する効果を妨げない範囲において、任意の置換基を有していてもよい。
【0039】
[I−2.構造単位(2):ポリエステルブロック]
構造単位(2)は、−CO−R2−O−で表わされる構造単位(これをエステル単位と言う場合がある。)からなる、ポリエステルブロックである。
【0040】
一般式(2)において、nは、−CO−R2−O−で表わされる構造単位(エステル単位)の繰り返し数を表わす整数であり、通常2以上、好ましくは20以上、また、通常5000以下、好ましくは1000以下の整数である。
【0041】
一般式(2)において、R2は、2価の有機基を表わす。
2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましい。
2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、芳香族炭化水素基でもよく、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基(半芳香族炭化水素基)でもよいが、脂肪族炭化水素基が好ましい。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状の構造でもよく、分岐鎖状の構造でもよく、環状の構造でもよく、これらが結合した構造でもよい。
【0042】
2の炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常10以下、好ましくは5以下である。
【0043】
中でも、R2としては、2価の脂肪族炭化水素基、及び/又は脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールのエステルが好ましい。2価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、エチリデン基、トリメチレン基等が挙げられる。中でもメチレン基(グリコール酸単位に相当)、エチリデン基(乳酸単位に相当)、プロピレン基、エチリデン基、ペンチレン基(カプロラクトン単位に相当)等が好ましく、メチレン基、エチリデン基が特に好ましい。R2がメチレン基の場合、−CO−R2−O−で表わされる構造単位はグリコール酸由来の単位(グリコール酸単位)となり、R2がエチリデン基の場合、−CO−R2−O−で表わされる構造単位は乳酸由来の単位(乳酸単位)となり、R2がペンチレン基の場合、−CO−R2−O−で表わされる構造単位はカプロラクトン由来の単位(カプロラクトン単位)となる。なお、乳酸単位としては、L−乳酸由来の単位(L−乳酸単位)とR−乳酸由来の単位(R−乳酸単位)とが挙げられるが、L−乳酸単位が好ましい。
【0044】
また、R2が脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールのエステルである場合は、R2が−R4−CO−O−R5−で表される。この際R4としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、エチリデン基、トリメチレン基等が挙げられ、好ましくはエチレン基、トリメチレン基、ブチレン基が挙げられる。R5としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、エチリデン基、トリメチレン基等が挙げられ、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基が挙げられる。さらに好ましくはエチレン基が挙げられる。
【0045】
なお、n個のR2は、何れも同一の種類であってもよく、互いに異なっていてもよい。
即ち、上記一般式(2)で表わされる構造単位は、一種類のR2のみを有していてもよく、二種類以上のR2を任意の組み合わせ及び比率で併せ持っていてもよい。複数種のR2(即ち、複数種のエステル単位)が存在する場合には、それらがランダムに存在していてもよく、種類毎にブロックとして存在していてもよい。
【0046】
上記一般式(2)で表わされる構造単位(ポリエステルブロック)の特に好ましい具体例としては、ポリ乳酸ブロック(即ち、乳酸単位が重合してなる構造単位)等が挙げられる。
【0047】
また、乳酸単位と、他の一種又は二種以上のエステル単位とが共重合してなる構造単位も、ポリエステルブロックの好ましい具体例として挙げられる。但しこの場合も、ポリエステルブロックの繰り返し数nに対する乳酸単位の数の割合が、通常40%以上、中でも60%以上であることが好ましい。
【0048】
なお、構造単位(2)も、本発明の意図する効果を妨げない範囲において、任意の置換基を有していてもよい。
【0049】
[I−3.構造単位(3):ジカルボン酸単位]
構造単位(3)は、−CO−R3−CO−で表わされる、ジカルボン酸単位である。
一般式(3)において、R3は、2価の有機基を表わす。
2価の有機基としては、2価の炭化水素基が好ましい。
2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基でもよく、芳香族炭化水素基でもよく、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基(半芳香族炭化水素基)でもよいが、脂肪族炭化水素基が好ましい。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状の構造でもよく、分岐鎖状の構造でもよく、環状の構造でもよく、これらが結合した構造でもよい。
【0050】
3の炭素数は、通常1以上、好ましくは2以上、また、通常18以下、好ましくは10以下である。
【0051】
中でも、R3としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。2価の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、オクチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、デカニレン基、ドデカニレン基等が挙げられる。中でもエチレン基、ブチレン基、デカニレン基等が好ましく、1,10−デカニレン基が特に好ましい。
【0052】
なお、構造単位(3)も、本発明の意図する効果を妨げない範囲において、任意の置換基を有していてもよい。
【0053】
[I−4.マルチブロック共重合体]
本発明の共重合体が有する構造単位(1)〜(3)の各々の数は、構造単位(1)〜(3)の何れについても、下限が2以上である。一方、上限数は特に制限されないが、構造単位(1)〜(3)の構造と、後述する分子量の上限から定められる。
なお、構造単位(1)〜(3)の数は、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
また、構造単位(1)〜(3)は上述のように何れも複数存在するが、それらは何れも互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
また、構造単位(1)〜(3)の結合順序についても、特に制限されず、任意の順序で結合していればよい。
【0054】
なお、本発明の共重合体は、例えば、本明細書の[I−5.マルチブロック共重合体の製造方法]及び[実施例]の欄に記載の方法、並びに、特開平11−255873号公報に記載の方法に従って製造される。これらの製造方法を用いれば、それにより得られる本発明の共重合体は、構造単位(1)〜(3)の各々を二つ以上有する共重合体(即ち、「マルチブロック共重合体」)になる。
なお、「マルチブロック共重合体」の定義については、例えば「バイオマテリアル−生体材料」、Vol.21、2003年1月、No.1、p.37等の記載に従うものとする。
なお、本発明の共重合体(マルチブロック共重合体)は、ジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0055】
本発明の共重合体に対する構造単位(1)の比率は、通常5重量%以上、好ましくは6重量%以上、更に好ましくは8重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40%以下の範囲である。構造単位(1)の比率が少な過ぎると柔軟性、伸縮性が低下する場合や血液凝固抑制性が悪化する場合があり、多過ぎても水溶性となってしまったり、血液凝固抑制効果が低下したり、吸水して寸法安定性が悪化する場合がある。
【0056】
本発明の共重合体に対する構造単位(2)の比率は、通常20重量%以上、好ましくは40重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60%以上、また、通常95重量%以下、好ましくは94重量%以下、更に好ましくは92重量%以下の範囲である。構造単位(2)の比率が少な過ぎると水溶性となり材料としての形態を保てなくなったり、薬剤放出速度が大きくなりすぎたりし、使用に耐えない可能性がある。また、吸水して寸法安定性が悪化する場合や血液凝固抑制性が悪化する場合があり、多過ぎても血液凝固抑制効果が低下したり、薬物放出速度が遅すぎたり伸縮性が低下する場合がある。
【0057】
本発明の共重合体に対する構造単位(3)の比率は、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、また、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の範囲である。構造単位(3)は実質的に構造単位(1)のモル数と等モル量用いられる。構造単位(3)の比率が少な過ぎても多過ぎても、共重合体の分子量が上がらなくなる場合がある。
【0058】
なお、構造単位(3)の比率は構造単位(1)の比率と比べて、通常は遥かに小さいため、本発明の共重合体に対する構造単位(1)及び構造単位(3)の合計の比率は、上述した構造単位(1)の比率と同様の範囲、即ち、通常5重量%以上、好ましくは6重量%以上、更に好ましくは8重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは40重量%以下の範囲となる。
【0059】
本発明の共重合体は、上述の構造単位(1)〜(3)以外の構造単位(以下「構造単位(4)」という。)を含有していてもよい。構造単位(4)の種類は、本発明の効果を損なわない範囲において任意である。但し、本発明の共重合体に対する構造単位(4)の比率は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の範囲である。構造単位(4)の比率が多過ぎると、生体内での安全性に支障をきたしたり、物性面での性能が低下する場合がある。
【0060】
なお、共重合体中における各構造単位の比率は、共重合体について1H−NMR(nuclear magnetic resonance)スペクトルを測定し、得られたスペクトルに基づいて求めることができる。
【0061】
本発明の共重合体の数平均分子量は、通常10000以上、好ましくは20000以上、更に好ましくは30000以上、また、通常200000以下、好ましくは100000以下、更に好ましくは80000以下の範囲である。また、本発明の共重合体の重量平均分子量は、通常12000以上、好ましくは24000以上、更に好ましくは36000以上、また、通常400000以下、好ましくは200000以下、更に好ましくは160000以下の範囲である。共重合体の分子量が小さ過ぎると、生分解性が早くなり過ぎたり、強度が低下する場合があり、大き過ぎると、コーティング等の製造上困難が生じる場合がある。なお、共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography, GPC)により求めることができる。
【0062】
[I−5.マルチブロック共重合体の製造方法]
本発明の共重合体の製造方法は特に制限されない。通常は、上述の構造単位(1)〜(3)の原料成分を重合反応させることにより製造される。
【0063】
構造単位(1)の原料成分としては、−R1−O−で表わされる構造単位(エーテル単位)の原料となるモノマー(例えば、エチレンオキサイド、エチレングリコール、プロピレンオキサイド、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4ブタンジオール、テトラヒドロフラン等のグリコール、環状エーテル等)、及び、それらのモノマーが複数結合してなるオリゴマーやポリマー等が挙げられる。
【0064】
構造単位(2)の原料成分としては、−CO−R2−O−で表わされる構造単位(エステル単位)の原料となるモノマー(例えば、グリコール酸、乳酸、カプロラクトン等のα−ヒドロキシ酸、環状エステル等)、及び、それらのモノマーが複数結合してなるオリゴマーやポリマー等が挙げられる。
【0065】
構造単位(3)の原料成分としては、−CO−R3−CO−で表わされる構造単位(ジカルボン酸単位)の原料となるジカルボン酸等(例えば、1,10−デカンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸等)が挙げられる。
【0066】
これらの構造単位(1)〜(3)の原料成分及びその使用量は、製造対象となる本発明の共重合体の組成に応じて適宜選択すればよい。
また、上述の構造単位(1)〜(3)の原料成分に加え、必要に応じて、その他の原料成分(構造単位(4)の原料成分)を併用してもよい。
なお、構造単位(1)〜(4)の原料成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0067】
重合反応は、触媒の存在下で行なうことが好ましい。
触媒の種類としては、例えば、オクチル酸錫、酸化錫、塩化錫、乳酸錫、錫粉末等の金属錫又は錫化合物;亜鉛粉末、酸化亜鉛、硫酸亜鉛等の金属亜鉛又は亜鉛化合物;酸化アルミ、塩化アルミ、硫酸アルミ等の金属アルミ又はアルミ化合物等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、触媒としては錫化合物等が好ましく、具体的にはオクチル酸錫等が好ましい。
【0068】
触媒の使用量は特に制限されないが、仕込みの総量(原料成分、触媒、及び溶媒の総量)に対する比率で、通常0.00001重量%以上、好ましくは0.0001重量%以上、更に好ましくは0.001重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の範囲である。触媒の使用量が少な過ぎると反応速度が低下する場合があり、多過ぎると安全性問題となる或いは精製工程に負荷がかかりすぎる場合がある。
【0069】
また、重合反応は、溶媒の存在下で行なうことが好ましい。
溶媒の種類は、上述の原料成分及び触媒を溶解又は分散させることが可能であれば、制限されないが、例としては、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル形溶媒;トルエン、キシレン、デカリン等の炭化水素系溶媒、3−ヘキサノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン系溶媒;安息香酸メチル、フタル酸メチル、フタル酸エチル等のエステル系溶媒;等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、溶媒としてはジフェニルエーテル、トルエンが好ましく、具体的にはジフェニルエーテルが好ましい。
【0070】
溶媒の使用量は特に制限されないが、原料成分の総量に対する比率で、通常25重量%以上、好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、また、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下の範囲である。溶媒の使用量が少な過ぎると反応液の粘度が高くなり過ぎて攪拌が困難となる場合があり、多過ぎると反応速度が低下する場合がある。
【0071】
重合反応は、通常はバッチ反応で行なう。
通常は、上述の原料成分と、触媒と、溶媒を、反応器内で混合することにより反応を実施する。混合の順序は特に制限されず、任意である。
また、重縮合反応の場合には、縮合水を系外に排出しながら反応を行なう。
【0072】
反応時の温度は、通常130℃以上、中でも150℃以上、また、通常220℃以下、中でも200℃以下の範囲とすることが好ましい。反応時の温度が低過ぎると、反応速度が低下する場合があり、高過ぎると、収率が低下する場合がある。
【0073】
反応時の圧力は、通常50Pa以上、中でも100Pa以上、また、通常0.1MPa以下、中でも0.01MPa以下の範囲とすることが好ましい。反応時の圧力が低過ぎると、環状副生物が多くなる場合があり、高過ぎると、反応速度が低下する場合がある。
【0074】
反応時の雰囲気は特に制限されないが、通常は不活性ガス雰囲気下や真空条件下等の不活性雰囲気下で行なう。
また、反応時には適宜、反応系に攪拌を加えてもよい。
【0075】
反応時間は、反応時の温度及び圧力によっても異なるが、通常1時間以上、中でも4時間以上、また、通常100時間以下、中でも50時間以下の範囲とすることが好ましい。反応時間が短過ぎると、反応の制御が困難となる場合があり、長過ぎると、着色の原因となる場合がある。
【0076】
重合反応が終点に達したか否かは、反応液の粘度、流出物量の定量等の手段で確認することができる。
【0077】
上述の重合反応によって得られた本発明の共重合体は、そのまま本発明の血液凝固抑制材料として用いることも可能であるが、必要に応じて精製等の後処理を加えてもよい。精製の手法としては、再沈殿処理、イオン交換樹脂等による精製等が挙げられる。
【0078】
[II.血液凝固抑制材料]
本発明の血液凝固抑制材料は、上述した本発明の共重合体を少なくとも備えてなることを特徴としている。本発明の共重合体としては、何れか一種のみを用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0079】
本発明の血液凝固抑制材料は、本発明の共重合体のみからなっていてもよいが、他の一種又は二種以上の成分を混合してもよい。他の成分は特に制限されず、後述の使用形態や用途に応じて、適宜選択することが可能である。
【0080】
本発明の血液凝固抑制材料の使用形態は特に制限されず、任意の形態で使用することができる。
【0081】
具体例としては、まず、用途に合わせた任意の形状に成形し、成形体として使用することが挙げられる。成形の手法や形状等は特に制限されず、公知の手法や形状等から任意に選択することができる。
【0082】
また、別の使用形態として、他の部材の表面にコーティングを行なうためのコーティング材料(本発明のコーティング材料)としての使用も挙げられる。コーティングの対象部材や手法等は特に制限されず、公知の部材や手法等から任意に選択することができる。
【0083】
本発明の血液凝固抑制材料は、優れた伸縮性(例えば、優れた初期弾性率や引張破断伸度等)と、血液凝固抑制効果とを兼ね備えている。
【0084】
また、生体に好ましからぬ影響を与える成分を使用していないため、生体に対する安全性にも優れている。
【0085】
また、更に血液凝固抑制効果を有する薬剤と併用してもよい。
更に、原料成分の選択によっては、生分解性や薬剤除放性等の性質も期待できる。
【0086】
本発明の血液凝固抑制材料の用途は特に制限されないが、上述の効果を鑑みて、血液凝固の抑制が必要な各種の用途に用いることができる。
中でも、本発明の血液凝固抑制材料は、後述する各種の生体留置部材を生体内に留置する際の血液凝固の抑制に用いることが好ましい。
【0087】
[III.生体留置部材]
本発明の生体留置部材は、上述した本発明の血液凝固抑制材料を用いたものであり、具体的には以下の二種類の態様が挙げられる。
【0088】
(i)部材本体の表面が本発明の血液凝固抑制材料でコーティングされてなる生体留置部材(以下「本発明の生体留置部材(i)」という。)。
(ii)部材本体が本発明の血液凝固抑制材料を含有する生体留置部材(以下「本発明の生体留置部材(ii)」という。)。
【0089】
ここで「生体留置部材」とは、上述のように、人間を含む各種の生物の体内又はその体表面に、血液と接する状態で留置される部材をいう。生体留置部材の例としては、ステント、カテーテル、バルーン、血管補綴材、人工血管、人工皮膚、経皮デバイス、癒着防止材、創傷被覆材等が挙げられる。
【0090】
中でも、本発明の生体留置部材としては、ステントが好ましい。以下、ステントを例として、上述した本発明の生体留置部材(i)(ii)について説明する。
【0091】
本発明の生体留置部材(i)の一例としてのステント(以下「ステント(i)」という場合がある。)は、ステント本体(部材本体)と、ステント本体の表面に、本発明の血液凝固抑制材料をコーティング材料として形成されたコーティング層とから構成される。
【0092】
ステント本体は、血管、胆管、気管、食道、消化管、尿管、尿道などの生体内の管腔に生じた病変部に留置することができ、且つ、管腔内に留置する際の拡張操作に耐え得る強度を有していれば、その材料、形状、大きさ等は特に限定されない。
【0093】
具体的に、ステント本体を形成する材料は、管腔内に留置する際の拡張操作に耐え得る強度を有する材料の中から、適用箇所に応じて適宣選択すればよい。例としては、金属材料、セラミックス、樹脂材料等が挙げられる。特に、ステント本体を金属材料で形成した場合、強度に優れているため、ステントを病変部に確実に留置することが可能である。
【0094】
金属材料の例としては、ステンレス鋼、ニッケル−チタン合金、タンタル、ニッケル、クロム、イリジウム、タングステン、コバルト系合金等が挙げられる。ステンレス鋼の中では、耐食性に優れたSUS316Lが特に好適である。
【0095】
金属材料で形成されたステント本体の多くは、バルーンを用いて拡張することができる。また、擬弾性と呼ばれる金属材料、例えばニッケル−チタン合金等の応力が一定で歪みが大きく変化する金属材料、或いは応力の増加に応じてなだらかに歪みが増加し変化する金属材料で形成されたステント本体は、自己拡張が可能であるため、事前に圧縮保持したステント本体の圧縮を病変部で開放することにより、弾性力によって自ら拡張され得る。
【0096】
ステント本体の形状は、生体内の管腔に安定して留置するに足る強度を有するものであれば、制限されない。好ましい例としては、コイル状、円筒状、網円筒状、多孔円筒状等が挙げられる。
【0097】
ステント本体の大きさは、ステントの適用箇所に応じて適宣選択すればよい。例えば、心臓の冠状動脈に用いる場合、拡張前におけるステント本体の外径は、通常0.5mm以上、好ましくは1mm以上、また、通常10mm以下、好ましくは3mm以下の範囲であり、ステント本体の長さは、通常1mm以上、好ましくは5mm以上、また、通常100mm以下、好ましくは50mm以下の範囲である。
【0098】
このステント本体の表面に、本発明の血液凝固抑制材料をコーティング材料として用いて、コーティング層を形成する。コーティング層は、ステント本体の表面のうち、少なくとも一部に設けられていればよいが、表面全体に設けることが好ましい。
【0099】
コーティングの手法は特に制限されないが、例えば本発明の血液凝固抑制材料を適切な溶剤に溶解又は分散させて塗布液を調製し、この塗布液をステント本体の表面に塗布した後、溶剤を乾燥等の手法で除去する、という手法が挙げられる。また、本発明の血液凝固抑制材料を繊維状に成型してステント本体の表面に付着させてもよい。
【0100】
コーティング層の厚さは用途によっても異なり、特に制限されるものではないが、一般的な基準としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常2mm以下、好ましくは1mm以下の範囲である。
【0101】
なお、本発明の血液凝固抑制材料を二種以上用いたり、その他の材料と併用したりして、コーティング層を二層以上設けることも可能である。但し、その場合でも、ステントの表面層(使用時に血液と接する層)を、本発明の血液凝固抑制材料により形成することが好ましい。
【0102】
一方、本発明の生体留置部材(ii)の一例としてのステント(以下「ステント(ii)」という場合がある。)は、ステント本体(部材本体)が本発明の血液凝固抑制材料を含有することを特徴としている。
【0103】
上述のステント(i)の場合と同様、ステント(ii)のステント本体も、血管、胆管、気管、食道、尿道などの生体内の管腔に生じた病変部に留置することができ、なおかつ管腔内に留置する際の拡張操作に耐え得る強度を有していれば、その材料、形状、大きさ等は特に限定されない。
【0104】
具体的に、ステント本体の材料としては、本発明の血液凝固抑制材料を用いる。本発明の血液凝固抑制材料を単独で用いてもよいが、強度等の観点から、他の一種又は二種以上の樹脂材料と、任意の組み合わせ及び比率で混合して用いることが好ましい。他の樹脂材料の種類は特に制限されず、公知の樹脂の中からステントの用途等を考慮して任意に選択することが可能である。但し、本発明の血液凝固抑制材料による血液凝固抑制効果を得る観点からは、ステント本体の材料の通常10重量%以上、中でも20重量%以上が、本発明の血液凝固抑制材料であることが好ましい。
【0105】
ステント本体の形状、大きさ等の詳細は、上述のステント(i)の場合と同様である。
なお、二種以上の異なる材料を用い、ステント本体を複数の層から形成したり、部分毎に異なる材料で形成することも可能である。但し、その場合でも、ステントの表面層(使用時に血液と接する層)を、本発明の血液凝固抑制材料により形成することが好ましい。
【0106】
以上のように構成したステント(i),(ii)は、血管、胆管、気管、食道、消化管、尿管、尿道などの生体内の管腔に生じた病変部に留置して用いられる。ステントの留置手段としては、例えばバルーン拡張手段が利用できる。また、ステント本体が弾性体であれば、この弾性力を利用した自己拡張手段を用いることもできる。
【0107】
なお、ステント(i),(ii)の最表面(ステント(i)の場合はコーティング層表面、ステント(ii)の場合はステント本体表面)に薬剤を付着させ、生体内でその薬剤を除放させることも可能である。付着させる薬剤としては、生理活性物質が挙げられる。なお生理活性物質とは、生体由来物質であるか合成物質であるかを問わず、生物に対して生理作用ないしは薬理作用を発現する物質単体および化合物群のことをいう。また生体内で代謝を受け活性化する、いわゆるプロドラッグも含まれるものとする。
【0108】
生理活性物質の具体例としては、ステントを管腔の病変部に留置した際に再狭窄を抑制する効果を有するものが好ましい。生理活性物質の種類は特に制限されるものではないが、例えば、抗腫瘍性抗生物質、アルカロイド剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、チロシンキナーゼ阻害剤、DNA合成阻害剤、等の抗癌剤;ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、β遮断剤、α遮断剤、αβ遮断剤、アンジオテンシンII拮抗阻害剤、利尿降圧剤、等の血圧降下剤;免疫抑制剤;抗リウマチ剤;HMG−CoA還元酵素阻害剤、プロブコール、脂質改善薬、等の抗高脂血症薬;血管平滑筋増殖抑制薬、インテグリン阻害剤、プラスタグランジン誘導体、等の抗動脈硬化薬;抗血小板薬、血栓溶融剤、等の抗血栓薬;抗生物質;抗アレルギー剤;抗炎症薬;NO産生促進物質;フラボノイド、カロチノイド、カテキン類、等の抗酸化剤;サイトカイン、ホルモン、リンフォカイン、等の生体由来物質;等が挙げられる。
【0109】
抗癌剤としての抗腫瘍性抗生物質としては、例えば、マイトマイシンC、塩酸ドキソルビシン、アクチノマイシンD、塩酸ダウノルビシン、塩酸イダルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸エピルビシン、塩酸ペプロマイシン、ジノスタチンスチマラマー等が好ましい。
抗癌剤としてのアルカロイド剤としては、例えば、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンデシン、硫酸イリノテカン、パクリタキセル、ドセタキセル水和物等が好ましい。
抗癌剤としてのアルキル化剤としては、例えば、シクロフォスファミド等が好ましい。
抗癌剤としての代謝拮抗剤としては、例えば、メトトレキサート等が好ましい。
抗癌剤としてのチロシンキナーゼ阻害剤としては、例えば、ゲニステイン、チルフォスチン、アーブスタチン等が好ましい。
【0110】
血圧降下剤としてのACE阻害剤としては、例えば、塩酸キナプリル、ペリンドプリルエルブミン、トランドラプリルシラザプリル、塩酸テモカプリル、塩酸デラプリル、マレイン酸エナラプリル、リシノプリル、カプトプリル等が好ましい。
血圧降下剤としてのカルシウム拮抗剤としては、例えば、ヒフェジピン、ニルバジピン、塩酸ジルチアゼム、塩酸ベニジピン、ニソルジピン等が好ましい。
【0111】
免疫抑制剤としては、例えば、シロリムス、タクロリムス水和物、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、塩酸グスペリムス、ミゾリビン等が好ましい。
抗リウマチ剤としては、例えば、金チオリンゴ酸ナトリウム、ペニシラミン、ロベンザリットニナトリウム等が好ましい。
抗高脂血症薬としてのHMG−CoA還元酵素阻害剤としては、例えば、セリバスタチンナトリウム、アトルバスタチン、ニスバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチンナトリウム、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンナトリウム等が好ましい。
抗血栓薬としては、例えば、抗血小板薬、血栓溶融剤、へパリン、塩酸チクロピジン、ヒルジン等が好ましい。抗血小板薬としては、例えば、GPIIbIIIa拮抗薬等が好まし
い。
【0112】
抗アレルギー剤としては、例えば、トラニラストが好ましい。
抗炎症剤としては、例えば、デキサメタゾン、プレドニゾロン等のステロイドやアスピリンが好ましい。
抗酸化剤としてのカロチノイドとしては、例えば、レチノイド、アントシアニン、プロアントシアニジン、リコピン、β−カロチン等が好ましい。レチノイドとしては、例えば、オールトランスレチノイン酸が好ましい。
抗酸化剤としてのカテキン類としては、例えば、エピガロカテキンガレートが好ましい。
【0113】
生体由来物質としてのサイトカインとしては、例えば、インターフェロン、上皮成長因子(epidermal growth factor, EGF)、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)、幹細胞増殖因子(hepatocyte growth factor, HGF)、血小板由来成長因子(platelet derived growth factor, PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(basic fibrolast growth factor, bFGF)、等が好ましい。
【0114】
これらの生理活性物質は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0115】
ステントの最表面に生理活性物質を付着させるための方法は特に限定されないが、例えば、生理活性物質を融解させてステントの最表面に被覆する方法、生理活性物質を溶媒に溶解させて溶液を作製し、この溶液にステントを浸漬した後に引き上げて、溶媒を蒸散もしくは他の方法で除去する方法、スプレーを用いて前記溶液をステントの最表面に噴霧して、溶媒を蒸散もしくは他の方法で除去する方法、等が挙げられる。
【0116】
ステントの最表面に付着させた生理活性物質の厚さは、病変部への到達性(デリバリー性)、血管壁への刺激性、血液凝固抑制効果等のステント本体の性能を著しく損なわない程度であり、かつ、生理活性物質の効果が確認される程度の厚さとなるように設定する。具体的には、通常0.2μm以上、中でも1μm以上、また、通常100μm以下、中でも50μm以下、更には10μm以下の範囲とすることが好ましい。
【0117】
以上、本発明の生体留置部材の例として、ステント(i),(ii)について説明したが、本発明の生体留置部材はこれらのステント(i),(ii)に制限されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意の態様で実施することが可能である。
【0118】
[IV.医療器具及びそれを用いた医療方法]
本発明の医療方法は、本発明の血液凝固抑制材料を含む医療器具を使用することを特徴とする。このような医療器具としては、上述の生体留置部材が含まれるが、その他にも、生体に留置しない器具も含まれる。特に、血液と接触する部分を有する医療器具に本発明の血液凝固抑制材料を適用することが好ましく、例えば人工心肺装置、透析装置、外科器具等が挙げられる。
本発明の血液凝固抑制材料を含む医療器具を用いる医療方法の具体例としては、例えば本発明の血液凝固抑止材料を塗布したステントを足の付け根、手首、ひじなどから血管に挿入する。その後、例えば心臓の近冠動脈の狭窄部位まで移動し、ステントをバルーン等により拡張させ血管を押し広げることにより狭心症の治療を行うことが出来る。
【実施例】
【0119】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例により限定されるものではない。
なお、以下の記載中、特に断り書きのない限り、「部」は「重量部」を表わす。また、「wt%」は「重量%」を表わす。
【0120】
[血液凝固性試験]
後述する各実施例及び比較例の血液凝固性試験は以下の2種類の方法により行った。
【0121】
・血液凝固性試験(1)(実施例1、比較例1、比較例2)
乾燥滅菌した注射器を用いて、ラットの肘正中静脈を穿刺し、血液が注射器内に流入した時点をスタート時とした。血液約2.5mLを採取し、37℃の恒温槽中で保温した2本の小試験管にそれぞれ1mLずつ入れ、37℃の恒温槽中に放置した。3分間静置した後、1本の試験管を30秒毎に傾斜させ、血液の流動性を観察した。流動性がなくなり凝固したら、2本目の試験管について同様の操作を行なった。2本目の試験管の流動性がなくなった時点で試験終了とし、試験管の血液凝固の様子を観察した。
【0122】
・血液凝固性試験(2)(実施例1、実施例2、実施例3、比較例1)
塩化カルシウムを50mM加えたウシ保存血に、サンプル(直径10mm、厚さ70μm)を浸漬させ、経時的(30分、1、3、6、12、24時間)にサンプルを回収し、外観を観察した後、グルタルアルデヒド固定、アルコール脱水、t−ブチルアルコールからの凍結乾燥を経て、SEM観察を行った。結果を表1の血液凝固抑制効果の欄に、外観及びSEM観察の代表的写真を図1〜図8に示す。
【0123】
なお、図1〜図4が血液凝固性試験(2)の外観を表わす写真である。図1は試験開始前のサンプルであり、写真中のAのサンプルが比較例1、Bが実施例3、Cが実施例1、Dが実施例2である。図2は試験開始0.5時間後のサンプルであり、写真中Aが比較例1、Bが実施例3、Cが実施例1、Dが実施例2である。図3は試験開始12時間後のサンプルであり、写真中Aが比較例1、Bが実施例3、Cが実施例1、Dが実施例2である。図4は試験開始後24時間後のサンプルであり、写真中Aが比較例1、Bが実施例3、Cが実施例1、Dが実施例2である。
また、図5〜図8は血液凝固性試験(2)のSEM観察写真(1,000〜1,100倍)である。何れも試験開始0.5時間後のサンプルであり、図5は実施例1、図6は実施例2、図7は実施例3の血栓形成のない部分、図8は実施例3の血栓形成部である。
【0124】
[薬物徐放性試験]
・徐放試験用サンプルの作成
パクリタキセル(0.2mg/mL)を含有した7.5wt%−ポリマー/クロロホルム溶液を、直径42mmのガラス製シャーレに2.4mL注ぎ、常温にて一晩風乾を行った後、12時間の真空乾燥を行い、キャスト膜を調製した。得られたキャスト膜を、直径6mmのステンレス製ポンチで打ち抜き、徐放試験用サンプルを作製した。
【0125】
・徐放性試験
10mLの0.1w/v%−Tween80/PBS(リン酸緩衝液)に上記手順で得られたサンプルを浸漬し、37℃にてシェイクしつつインキュベートする環境で試験を行った。
経時的に溶液を0.5mL採取(測定試料)し、新たに同量(0.5mg)の0.1w/v%−Tween80/PBSを加えて引続きインキュベートした。
【0126】
・薬物放出定量方法
定量はLC−MS(液体クロマトグラフ質量分析)を用いて行った。装置は島津製作所製LC−10Aシステムを用い、カラムはGLサイエンス社製Inertsil ODS−3(2.1×100mm、3um)を使用した。
カラム槽温度を40℃に保ち、移動相として水/アセトニトリル(関東化学製HPLC用)=40/60を使用し、流速0.2mL/分で測定した。
【0127】
[実施例1]
攪拌機及び油液分離器付き冷却管を備えたフラスコに、ポリエチレングリコール(数平均分子量2000、和光純薬製)9部、1,10−デカンジカルボン酸0.246部、L−乳酸オリゴマー(Journal of Polymer Science: Part A, Vol.37, 1513-1521 (1999)に記載の方法により合成した)21部、オクチル酸錫0.3部、及びジフェニルエーテル30部を仕込み、2時間かけて減圧し、1.3kPa、180℃の条件下で40時間重合を行なった。重合中は冷却水を60℃にし、縮合水は系外へ排出し、溶媒は系内に戻した。得られた重合溶液を、大量のメタノールに投入して再沈し、更にクロロホルムに溶解させた後、再度大量のメタノールに投入するという操作を繰り返すことにより、生成ポリマーを精製し、熱風乾燥機で乾燥して白色のマルチブロック共重合体を得た。
【0128】
得られたマルチブロック共重合体の収率は、78%であった。
また、このマルチブロック共重合体について、1H−NMRスペクトルより求めたポリ
エーテルエステルブロック(ポリエチレングリコールと1,10−デカンジカルボン酸との共重合ブロック)とポリL−乳酸ブロックとの重量比は、(ポリエーテルエステルブロック)/(ポリL−乳酸ブロック)=31/69であった。
また、このマルチブロック共重合体について、GPC測定により求めた数平均分子量は35,800、重量平均分子量は59,900であった。
また、このマルチブロック共重合体について示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry, DSC)を行なった結果、融点及びガラス転移温度は観測されなかった。
【0129】
また、得られたマルチブロック共重合体のクロロホルム溶液を用いて、厚さ80μmのキャストフィルムを作製し、これを幅4mm、長さ20mmの形状となるように打ち抜いてサンプルを作製した。得られたサンプルについて、引張試験機を用いて引張速度100mm/分で引張試験を行なった。その結果、初期弾性率は3.0MPa、引張強度は2.3MPa、引張破断伸度は360%であった。
【0130】
また、得られたマルチブロック共重合体のクロロホルム溶液をガラス製試験管に入れ、試験管内部に溶液を塗布した後、乾燥することにより、試験管の内部をマルチブロック共重合体でコーティングした。この試験管を用いて、上述の手順により血液凝固性試験(1)を行なったところ、血液の一部に凝固が見られたのはスタート時から5分経過時以降であった。
【0131】
さらに、上述の手順により血液凝固性試験(2)を行なった。結果を表1の血液凝固抑制効果の欄に、外観及びSEM観察の写真を図1〜図5に示した。
また、上述の手順により薬物徐放性試験を行なった。結果を表1の薬物放出率の欄に示す。
【0132】
[実施例2,3]
実施例1のポリエチレングリコール(数平均分子量2000、和光純薬製)、1,10−デカンジカルボン酸、及びL−乳酸オリゴマーを表2に示す割合に変えた以外は、実施例1と同様にマルチブロック共重合体の合成を行った。
【0133】
得られたマルチブロック共重合体を用いて、上述の手順により血液凝固性試験(2)を行なった。結果を表1の血液凝固抑制効果の欄に、外観及びSEM観察の写真を図1〜図4及び図6〜図8に示した。なお、図7は実施例3の血栓形成ない部分、図8は実施例3の血栓形成部である。
また、上述の手順により薬物徐放性試験を行なった。結果を表1の薬物放出率の欄に示す。
【0134】
[比較例1]
実施例1において、ポリエチレングリコール及び1,10−デカンジカルボン酸を使用しなかった以外は、実施例1と同様の手順で重合反応を行ない、ポリL−乳酸を得た。
ポリL−乳酸(数平均分子量Mn=100200、重量平均分子量Mw=196000)を用いて、実施例1と同様の手順により引張試験を行なった。その結果、初期弾性率は530MPa、引張強度は11MPa、引張破断伸度は20%であった。
【0135】
また、このポリL−乳酸を実施例1と同様の手順で試験管内部にコーティングし、実施例1と同様の手順により血液凝固性試験を行なったところ、スタート時から5分経過するまでに血液の一部に凝固が見られた。
【0136】
さらに、上述の手順により血液凝固性試験(2)も行なった。結果を表1の血液凝固抑制効果の欄に、外観及びSEM観察の写真を図1〜図4に示した。
また、上述の手順により薬物徐放性試験を行なった。結果を表1の薬物放出率の欄に示す。
【0137】
[比較例2]
コーティングしていないガラス製試験管を用いて、実施例1と同様の手順で血液凝固性試験(1)を行なったところ、スタート時から3分経過するまでに血液が完全に凝固した。
【0138】
[比較例3]
攪拌翼、窒素導入口、減圧口を供えたガラス重合管に、乳酸オリゴマー(武蔵野化学研究所製)70.0部、ポリエチレングリコール4000(和光純薬工業社製)30.0部、ドデカンジカルボン酸(和光純薬工業社製)2.302部、オクチル酸スズ(ナカライテスク社製)0.20部を仕込み、減圧−窒素置換を3回繰り返し、最後は窒素シールとした。
この重合管を180℃のオイルバスに入れ2時間反応させ、次いでオイルバスを30分間で200℃に昇温し引き続き200℃で2時間反応させた。次に1.5時間かけて133Pa以下に減圧し、そのまま12時間反応を続けた。この間ラクチドが生成するので系外へ留出させながら反応を続けた。
反応終了後窒素で復圧し、重合管の底部を割り、生成したポリマーをストランド状に抜き出した。このポリマーを4倍量のクロロホルムに溶解し、この溶液を10倍量のジエチルエーテル中にあけポリマーを再沈殿させた。
【0139】
得られたポリマーをろ別した後室温で8時間真空乾燥した。得られたマルチブロック共重合体について、1H−NMRスペクトルにより求めたポリエーテルエステルブロックとポリL−乳酸ブロックとの重量比は14/86であった。またこのマルチブロック共重合体について、GPC測定により求めた数平均分子量は48100、重量平均分子量は71400であった。
【0140】
実施例1と同様の方法で引張試験を行った。その結果、初期弾性率は1.8MPa、引張強度は4.9MPa、引張破断伸度は380%であった。
【0141】
また、薬物徐放性試験を行なった。結果を表1の薬物放出率の欄に示す。
【0142】
[結果]
各実施例及び比較例の結果を下記表1に示す。表中wt%とは重量%を表わし、hrとは時間を表わす。
【表1】

【0143】
表1の結果から、実施例1〜3のマルチブロック共重合体(本発明の血液凝固抑制材料)は、比較例1のポリ乳酸と比較して、機械物性に優れていることが分かる。
また、表1及び図1〜図8の結果から実施例1〜3のマルチブロック共重合体(本発明の血液凝固抑制材料)は、ポリ乳酸と比較して、血液凝固抑制効果に優れていることが分かる。
さらに実施例1のマルチブロック共重合体は、ポリ乳酸や、ポリエーテルエステルブロック単位が50重量%より多い共重合体に比べ、薬物徐放性に優れていることが明確に示された。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、血液凝固の抑制を行なう各種の分野に使用可能であるが、特に、ステント等の生体留置部材を生体内に留置する際の血液凝固の抑制に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施例又は比較例の結果を示す図面代用写真である。
【図2】本発明の実施例又は比較例の結果を示す図面代用写真である。
【図3】本発明の実施例又は比較例の結果を示す図面代用写真である。
【図4】本発明の実施例又は比較例の結果を示す図面代用写真である。
【図5】本発明の実施例の結果を示す図面代用写真である。
【図6】本発明の実施例の結果を示す図面代用写真である。
【図7】本発明の実施例の結果を示す図面代用写真である。
【図8】本発明の実施例の結果を示す図面代用写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表わされる構造単位、下記一般式(2)で表わされる構造単位、及び下記一般式(3)で表わされる構造単位を少なくとも有するマルチブロック共重合体を備えることを特徴とする、血液凝固抑制材料。
【化1】

【化2】

【化3】

(上記一般式(1)〜(3)において、R1、R2、R3はそれぞれ独立に、2価の有機基を表わし、m、nは各々独立に、2以上5000以下の整数を表す)
【請求項2】
上記一般式(1)で表わされる構造単位及び一般式(3)から構成される構造単位の合計の割合が、マルチブロック共重合体に対して5重量%以上50重量%以下であることを特徴とする、請求項1記載の血液凝固抑制材料。
【請求項3】
上記一般式(1)で表わされる構造単位が、ポリエチレングリコールブロックである
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の血液凝固抑制材料。
【請求項4】
上記一般式(2)で表わされる構造単位が、乳酸、グリコール酸、及びカプロラクトンからなる群から選択される何れか1種類以上を単量体成分とする構造単位であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の血液凝固抑制材料。
【請求項5】
上記一般式(3)において、R3が炭素数10以下の2価の炭化水素基である
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の血液凝固抑制材料。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の血液凝固抑制材料を含有する
ことを特徴とする、コーティング材料。
【請求項7】
部材本体の表面が請求項6に記載のコーティング材料でコーティングされてなる
ことを特徴とする、生体留置部材。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか一項に記載の血液凝固抑制材料を有する
ことを特徴とする、生体留置部材。
【請求項9】
ステントである
ことを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の生体留置部材。
【請求項10】
生体留置部材を生体内に留置する際の血液凝固の抑制に用いられる
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の血液凝固抑制材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−142534(P2008−142534A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298711(P2007−298711)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】