説明

血液処理装置

【課題】空間SPからのエアーの排出口が大きくし、エアーが当該空間SPに滞留することなく速やかに透析液ポート出口7.2方向へ抜けやすくなることで、プライミング作業を速やかに行うことができる、血液処理装置を提供する。
【解決手段】障害部材11は、透析液ポート入口7.1近傍から透析液ポート入口7.1と反対側に向かうに従って、基端部から先端部までの長さが短くなるように形成されるともに、障害部材11の長い部分から短い部分に向けて傾斜する傾斜部Sを有し、障害部材11の透析液ポート入口7.1と対向する位置に、障害部材11の基端部から先端部に向けて、透析液の遮蔽部12を延設し、遮蔽部12の両端から傾斜部Sを形成し、遮蔽部12の先端頂部12Pは、透析液ポート入口7.1の開口部7.11のハウジング2の長さ方向側の端部7Pの位置と実質的に同位置に配置されている、血液処理装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析、血液ろ過、血液透析ろ過等、血漿分離用に用いる血液処理装置であって、中空糸膜をハウジング(「ケーシング」ともいう)の内部に装填した血液処理装置の改良に関し、プライミング時(透析治療の開始直前に、ハウジング内に透析液、中空糸内部に生理食塩水溶液を充填して、ハウジング内及び中空糸膜内のエアーを追い出す作業)、透析治療中に、ハウジング内のエアー抜きを容易に行えるように改良した血液処理装置に関する。特にハウジングに形成した障害部材(「バッフル板(筒)ともいう」)の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ハウジング内への透析液の流入状態を改善し、透析効率を向上させるために、ハウジング内に、全周のバッフル板を形成した体液処理装置が市販されている。ところが、プライミング時に、エアー抜きを行うに際し、全周のバッフル板が、障害となり、エアー抜き作業が実施しずらい等の問題点が指摘されている。
さらに詳述すれば、プライミング作業では、一方の血液ポート入口側から出口側に向けて体液処理装置の中空糸膜内に生理食塩水溶液を充填し、同時に透析液ポート入口側から出口側に向けて透析液を充填して、体液処理装置の中空糸膜、ハウジング内が生理食塩水溶液、透析液で一杯になったら、上下を180°反転させて、他方の血液ポート出口側と透析液出口側から体液処理装置内のエアー抜きを行う。
ところがハウジングの小径部から大径部の移行部(くびれ部ともいう)の内周壁面ないし大径部の内周壁面と、全周バッフル板外周壁面との間のスペースに、エアーが溜まりやすく、溜まったエアーが抜けにくく、プライミング作業、透析治療の妨げになっていた。(特許文献3の図8、図9、段落番号[0006]から[0009]参照)
【0003】
特許文献1(特開2006−116134号公報、要約、段落[0011]、図2から図4)には、バッフル板(41)は基端部がケーシング(2)の内表面に固定されるとともに、先端部がケーシング(2)の開口端部に向けて延出され、バッフル板(41)の内表面に、中空糸束(5)側へ向けて突出した突起部(42)を、バッフル板(41)の幅方向の一側から他側に亘って形成し、樹脂液の這い上がりが生じても緩衝板と中空糸束の一部とが固着することなく、中空糸膜の損傷を回避できる発明が開示されている。
特許文献1では、バッフル板(41)は、ケーシング(2)の全周に形成されている。
【0004】
特許文献2(特開2000−350781号公報、要約、段落[0014]、図3、図4)には、基端部がケーシングの内周面に固定される共に、先端部がケーシングの開口部に向かうバッフル板(3)を設け、該バッフル板は、(透析液ポート入口と対向する位置に配置される)先端が樹脂層部(固定材)内に届く長さを有し、ケーシングの内壁と所定の間隔を開けて透析液の注入口(及び流出口)を覆う舌片状に形成し、製造時に中空糸がバッフル板に固着されることを防止できる発明が開示されている。
前記バッフル板(3)には、基端部に樹脂組成物流動案内溝(14)を形成し、ケーシング内に樹脂組成物を注入する際に、当該樹脂組成物が拡散しないように、前記バッフル板の透析液の注入口と対向する壁面に、複数の突堤(13)を形成した旨が記載されている。
【0005】
特許文献3(特許第4183589号公報)には、中空糸膜型体液処理器内の処理液側に混入した空気を、簡便な操作で、かつ安全に処理液出口まで運ぶことのできる機能を有する中空糸膜型体液処理器が記載されている。
すなわち、処理液出入口を有したヘッダー部(透析液ポート)と、中空糸を保持するハウジング部とを一体成型してなり、前記ハウジング部の端部が前記ヘッダー部内において突出した構造を有するケーシングを備えた中空糸膜型体液処理器において、前記ヘッダー部内において、該ヘッダー部の内壁面と、前記突出したハウジング部の端部の外壁面とを連結面によって接合させており、前記連結面が前記ハウジング部の端部の外壁面と接合するハウジング側接合線と、ケーシング端面との距離は、前記処理液出入口から遠ざかるほど減少する旨の発明、換言すればハウジングの大径部の内周壁面と、全周バッフル板外周壁面との間のスペースを、ハウジングの構成材料で埋めて、スペースの容積を少なくし、エアーが抜けやすい構造にした発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−116134号公報(要約、段落[0011]、図2から図4)
【特許文献2】特開2000−350781号公報(要約、段落[0014]、図3、図4)
【特許文献3】特開2005−87432号公報(特許第4183589号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、
特許文献1に記載の全周バッフル板(41)を採用した発明では、ハウジングの小径部から大径部の移行部(くびれ部ともいう)の内周壁面ないし大径部の内周壁面と、全周バッフル板外周壁面との間のスペースに、エアーが溜まりやすく、溜まったエアーが抜けにくい点である。
特許文献2に記載の舌片状のバッフル板(3)は、(透析液ポート入口と対向する位置に配置される)先端の長さをあまり長く形成している(製造時に中空糸がバッフル板に固着されることを防止することを目的とし、先端が樹脂層部(固定材)内に届く長さまでに形成している)ので、透析液ポート入口から導入された透析液は、透析液ポート入口と反対側のハウジングの壁面まで迂回しにくくなり、中空糸膜領域に、均一に流入しずらくなる点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は以上の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、プライミング時に、ハウジング内のエアー抜きを容易に行えるようにでき、透析液の流量にムラ、バラツキがなく、均一化することができる障害部材を有する血液処理装置の発明に到達した。
[1]本発明は、ハウジング(2)の内部に、当該ハウジング(2)の長さ方向に沿って中空糸膜(4)を配置し、
当該中空糸膜(4)端部を固定材(3)により前記ハウジング(2)端部内面に固定し、
当該ハウジング(2)の前記長さ方向と交差する断面方向の端部に、透析液ポート入口(7.1)と透析液ポート出口(7.2)を装着し、
当該ハウジング(2)の前記長さ方向の端部に、血液ポート入口(5.1)と血液ポート出口(5.2)を装着し、
当該ハウジング(2)の前記透析液ポート入口(7.1)に対応する位置に、基端部が前記ハウジング(2)内に固定される共に、先端部が前記ハウジング(2)の前記長さ方向に延設される障害部材(11、11.1、11.2、11.3)を設け、
前記障害部材(11、11.1、11.2、11.3)は、前記透析液ポート入口(7.1)近傍から当該透析液ポート入口(7.1)と反対側に向かうに従って、
前記基端部から前記先端部までの長さが短くなるように形成されるともに、
前記障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の長い部分から短い部分に向けて傾斜する傾斜部(S)を有し、
前記障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の前記透析液ポート入口(7.1)と対向する位置に、当該障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の基端部から先端部に向けて、透析液の遮蔽部(12)を延設し、当該遮蔽部(12)の両端から前記傾斜部(S)を形成し、
前記遮蔽部(12)の先端頂部(12P)は、前記透析液ポート入口(7.1)の開口部(7.11)の前記ハウジング(2)の長さ方向側の端部(7P)の位置と実質的に同位置に配置されている、血液処理装置(1)を提供する。
[2]本発明は、前記障害部材(11.1)は、前記遮蔽部(12)の両端から前記ハウジング(2)の前記断面方向の途中に至るまで、前記傾斜部(S)を形成し、
当該傾斜部(S)の終了部から、さらに前記透析液ポート入口(7.1)と反対方向へ向けて、前記ハウジング(2)の前記断面方向に沿って、前記基端部から前記先端部までの長さが、実質的同じである外周縁(13)を延設した、[1]に記載の血液処理装置(1)を提供する。
[3]本発明は、前記障害部材(11.2)は、前記遮蔽部(12)の両端から、前記外周縁(13)を、前記ハウジング(2)の前記断面方向の途中に至るまで延設し、
当該外周縁(13)の終了部から、前記透析液ポート入口(7.1)と反対方向へ向けて、前記傾斜部(S)を延設した、[1]に記載の血液処理装置(1)を提供する。
[4]本発明は、前記障害部材(11、11.3)は、前記遮蔽部(12)の両端から前記傾斜部(S)を、前記透析液ポート入口(7.1)と反対方向へ向けて、前記透析液ポート入口(7.1)と反対側の前記ハウジング(2)の壁面に至るまで延設するか、または前記ハウジング(2)の前記断面方向の途中に至るまで延設した、[1]に記載の血液処理装置(1)を提供する。
[5]本発明は、前記傾斜部(S)の傾斜角度(θ1)が、15°〜35°である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の血液処理装置(1)を提供する。
[6]本発明は、前記遮蔽部(12)の形成角度(θ2)が20°〜40°である、[1]から[5]のいずれか一項に記載の血液処理装置(1)を提供する。
【発明の効果】
【0009】
〈1〉〈エアー抜き効果〉本発明の血液処理装置では、障害部材(11、11.1、11.2、11.3)は、透析液ポート入口7.1近傍から当該透析液ポート入口7.1と反対側に向かうに従って、基端部から先端部までの長さが短くなるように形成されるともに、長い部分から短い部分に向けて傾斜する傾斜部Sを有する。
このため障害部材11外周壁面と、ハウジング2の移行部2.3内周壁面との間に形成される空間SPの容積が減少する、換言すれば、前記空間SPからのエアーの排出口が大きくなるので、エアーは、当該空間SPに滞留することなく、速やかに透析液ポート出口7.2方向へ抜けやすくなる。したがって、プライミング作業を速やかに行うことができる。
【0010】
〈2〉〈透析液の流量調整効果〉本発明の血液処理装置では、透析液が透析液ポート入口7.1から中空糸膜4領域へ流入する際、透析液ポート入口7.1からハウジング2内に流入した透析液は、障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の遮蔽部12に衝突して、二つの流れにわかれる。
第一の流れは、透析液ポート入口7.1近傍から障害部材11の外周に沿って、当該透析液ポート入口7.1と反対側に向けて、障害部材11の外周を迂回して、中空糸膜4領域方向に流入する流れである。
第二の流れは、透析液ポート入口7.1近傍から一時的に血液ポート出口5.2方向にそれて、傾斜部Sに沿って、透析液ポート入口7.1近傍から当該透析液ポート入口7.1と反対側に向けて、障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の内周を迂回して、中空糸膜4領域方向に流入する流れである。
これらの第一の流れと第二の流れの透析液ポート入口7.1近傍から中空糸膜4領域入口到達までの合流時間が実質的に同じになるので、流量にムラ、バラツキがなく、均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の血液処理装置の全体側面図である。
【図2】本発明の血液処理装置1の一部拡大断面図である。
【図3】(a)は、図2の障害部材11の一部拡大側面図、(b)は(a)のA矢視図、(c)は(b)の展開図で、ハウジング2の透析液ポート入口7.1の反対側の壁面から見た遮蔽部12を中心に展開した図である。
【図4】本発明のその他の血液処理装置の実施例の一部拡大断面図である。
【図5】(a)図4の障害部材11.1の一部拡大断面図、(b)(a)のA´矢視図、(c)(b)の展開図で、ハウジング2の透析液ポート入口7.1の反対側の壁面から見た遮蔽部12を中心に展開した図である。
【図6】その他の実施例を示す障害部材11.2の側面図である。
【図7】その他の実施例を示す障害部材11.3の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、ハウジング2の長さ方向を第一方向X、前記第一方向Xと交差する断面(横断する)方向を第二方向Yと記載する。ハウジング2は、第二方向Yに第一方向Xにのびる中心C1を有する。
また前記第一方向Xにおいて、血液ポート入口5.1を装着した方向を第一X1方向、血液ポート出口5.2を装着した方向を第一X2方向と記載する。
また前記第二方向Yにおいて、透析液ポート入口7.1と透析液ポート出口7.2を装着した方向を第二Y1方向、透析液ポート入口7.1と透析液ポート出口7.2を装着していない、第二Y1方向と略180°反対側方向を第二Y2方向と記載する。
【0013】
本発明の血液処理装置1は、ハウジング2の内部に、ハウジング2の第一方向Xに沿って中空糸膜4を配置し、当該中空糸膜4端部を固定材3によりハウジング2内に固定し、当該ハウジング2の第二方向Y端部に、透析液ポート入口7.1と透析液ポート出口7.2を装着し、当該ハウジング2の前記第一方向Xの端部に、血液ポート入口5.1と血液ポート出口5.2を装着し、当該ハウジング2の透析液ポート入口7.1側に対応する位置に、基端部がハウジング2内に固定される共に、先端部がハウジング2の第一X2方向(血液ポート出口5.2側)に向けて延設される障害部材11を設けている。
【0014】
さらに詳述すれば、ハウジング2は、図2、図4に示すように、小径部2.1と当該小径部2.1の両側に移行部2.3を介して、形成された大径部2.2を有する。大径部2.2の側部に透析液ポート入口7.1を装着している。
【0015】
本発明の血液処理装置1の特徴は、障害部材(11、11.1、11.2、11.3)が、透析液ポート入口7.1近傍から当該透析液ポート入口7.1と反対側に向かうに従って、基端部から先端部までの長さが短くなるように形成されるともに、長い部分から短い部分に向けて傾斜する傾斜部Sを有する点である。
これにより、従来、エアーが溜まりやすく、溜まったエアーが抜けにくいと指摘されていた空間SP(障害部材11外周壁面と、ハウジング2の移行部2.3内周壁面との間に形成される閉塞された空間)の容積が減少する。
換言すれば、空間SPからのエアーの排出口が大きくなるので、エアーは、当該空間SPに滞留することなく、速やかに透析液ポート出口7.2の方向へ抜けやすくなる。
【0016】
[障害部材11、11.1、11.2、11.3]
障害部材(11、11.1、11.2、11.3)は、基端部はハウジング2内の小径部2.1の第一X2方向端部に固定される共に、先端部はハウジング2の第一X2方向に向けて延設されている。
障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の透析液ポート入口7.1と対向する位置(透析液ポート入口7.1近傍)に、当該障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の基端部から先端部に向けて透析液の遮蔽部(12)を延設している。
図2から図5、図7の障害部材(11、11.1、11.3)は、遮蔽部12の両端から傾斜部Sを形成している。
【0017】
[障害部材11]
障害部材11は、透析液ポート入口7.1近傍から第二Y2方向(当該透析液ポート入口7.1と反対側)に向かうに従って、基端部から先端部までの長さが短くなるように形成されるともに、長い部分から短い部分に向けて傾斜する傾斜部Sを有する。
当該傾斜部Sは、透析液ポート入口7.1と反対側のハウジング2の壁面に至るまで延設している。
[障害部材11.1]
図4から図5に例示した障害部材11.1は、遮蔽部12の両端からハウジング2の第二方向Y(断面方向)の途中に至るまで、前記傾斜部Sを形成している。
当該傾斜部Sの終了部から、さらに第二Y2方向(透析液ポート入口7.1と反対方向)へ向けて、ハウジング2の断面方向に沿って、基端部から先端部までの長さが、実質的同じである外周縁13を延設している。
図4から図5に例示した障害部材11.1において、傾斜部Sは、ハウジング2の中心C1付近で終了するように記載しているが、第二Y1方向の途中で終了するように形成してもよいし、第二Y2方向の途中で終了するように形成してもよい。
【0018】
[障害部材11.2]
図6に例示した障害部材11.2は、遮蔽部12の両端から、外周縁13を、ハウジング2の断面方向の途中に至るまで延設している。
当該外周縁13の終了部から、第二Y2方向(透析液ポート入口7.1と反対方向)へ向けて、前記傾斜部Sを延設している。
図6に例示した障害部材11.2において、外周縁13は、ハウジング2の第二Y1方向の途中で終了するように記載しているが、ハウジング2の中心C1付近で終了するように形成してもよいし、第二Y2方向の途中で終了するように形成してもよい。
【0019】
[障害部材11.3]
図7に例示した障害部材11.3は、遮蔽部12の両端から傾斜部Sを、第二Y2方向(透析液ポート入口7.1と反対方向)へ向けて、ハウジング2の断面方向の途中に至るまで延設している。
障害部材11.3も図2から図5の障害部材(11、11.1)と同様に遮蔽部12を有する。
図7に例示した障害部材11.3において、傾斜部Sは、第二Y2方向の途中で終了するように記載しているが、ハウジング2の第二Y1方向の途中で終了するように形成してもよいし、ハウジング2の中心C1付近で終了するように形成してもよい。
【0020】
傾斜部Sは、前記〈1〉エアー抜き効果と前記〈2〉透析液の流量調整効果の両方を奏することができれば、図2から図7に例示した形状・傾斜角度θ1ものに限定されないが、傾斜部Sの傾斜角度θ1は、15°〜30°に形成するのが好ましい。
傾斜角度θ1は、以下の(A)、(B)のように定義する。
(A)傾斜部Sが、第二Y2方向に向けて、長さの最も短い部分で終了している障害部材11、11.2、11.3の場合。
図3(c)(ハウジング2の透析液ポート入口7.1の反対側の壁面から見た遮蔽部12を中心に展開した図)に例示するように、障害部材11の基端部のハウジング2の断面方向に引いた線と、傾斜部Sを略直線状に伸ばした線の交差する角度である。
図6、図7の障害部材11.2、11.3の場合も、同様に定義する。
【0021】
(B)傾斜部Sが、第二Y2方向に向けて、ハウジング2の断面方向の途中で終了し、当該終了部からさらに外縁部13を続けて形成した障害部材11.1の場合。
図5(c)(ハウジング2の透析液ポート入口7.1の反対側の壁面から見た遮蔽部12を中心に展開した図)に例示するように、障害部材11.1の外縁部13のハウジング2の断面方向に引いた線と、傾斜部Sを略直線状に伸ばした線の交差する角度である。
傾斜角度θ1があまり大きいと(30°を超える)特許文献2のバッフル板の形状に近くなるので好ましくない。
傾斜角度θ1があまり小さいと(15°未満)特許文献1の全周バッフル板の形状に近くなるので好ましくない。
【0022】
遮蔽部12は、透析液ポート入口7.1から流入する透析液が、中空糸膜4に直接衝突して、中空糸膜4にダメージを与えることがなく、前記〈1〉エアー抜き効果と前記〈2〉透析液の流量調整効果の両方を奏することができれば、図2から図7に例示した形状と形成角度θ2(血液ポート出口5.2側の第一X2方向から見た円孤の角度で定義する)のものに限定されないが、遮蔽部12の形成角度θ2は20°〜40°に形成するのが好ましい。
形成角度θ2があまり大きいと(40°を超える)エアー抜き効果が少なくなるので好ましくない。
形成角度θ2があまり小さいと(20°未満)中空糸膜4に透析液が直接衝突する機会が増えるので好ましくない。
【0023】
前記遮蔽部12の先端頂部12Pは、透析液ポート入口7.1の開口部7.11の第一X2方向の端部7Pの位置と実質的に同位置に配置されている。さらに詳述すれば、先端頂部12Pは、遮蔽部12の基端部から開口部7.11の端部7Pと実質的に同位置まで延設されている。
「実質的に同位置まで延設」とは、若干であるが、先端頂部12Pは端部7Pよりも高い位置(端部7Pから+2mmまで)に配置してもよいし、低い位置(端部7Pから−2mmまで)に配置してもよいことを意味する。
先端頂部12Pは端部7Pよりもあまり高い位置に形成する(2mmを超える)と、透析液の流量調整効果を奏することができないので好ましくない。またあまり低い位置に形成する(2mm未満)と、透析液ポート入口7.1から流入する透析液が、中空糸膜4に直接衝突して、中空糸膜4にダメージを与えることがあるので好ましくない。
遮蔽部12の先端頂部12Pの形成する位置は、透析液ポート入口7.1から流入する透析液が、中空糸膜4に直接衝突して、中空糸膜4にダメージを与えることがなく、前記〈1〉エアー抜き効果と前記〈2〉透析液の流量調整効果の両方を奏することができれば、図2から図7に例示した形状・構造のものに限定されない。
【0024】
なお本発明の目的を達成できれば、障害部材は、図2−図3、図4−5、図6のように、ハウジング2の全周に形成してもよいし、図7のように、全周ではなく、部分的に(ハウジング2の断面方向の途中で終了するように)形成してもよい。
また傾斜部S、外周縁13のそれぞれの長さ等も、図2から図7に記載した以外にも、自由に組み合わせて創作することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 血液処理装置
2 ハウジング
2.1 小径部
2.2 大径部
2.3 移行部
3 固定材
4 中空糸膜
5.1 血液ポート入口
5.2 血液ポート出口
7.1 透析液ポート入口
7.2 透析液ポート出口
7.11 透析液ポート入口の開口部
7P 開口部のハウジング2の長さ方向の端部
11、11.1、11.2、11.3 障害部材(バッフル部材)
S 傾斜部
θ1 傾斜角度
12 遮蔽部
12P 遮蔽部の先端頂部
θ2 円孤の形成角度
13 外周縁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)の内部に、当該ハウジング(2)の長さ方向に沿って中空糸膜(4)を配置し、
当該中空糸膜(4)端部を固定材(3)により前記ハウジング(2)端部内面に固定し、
当該ハウジング(2)の前記長さ方向と交差する断面方向の端部に、透析液ポート入口(7.1)と透析液ポート出口(7.2)を装着し、
当該ハウジング(2)の前記長さ方向の端部に、血液ポート入口(5.1)と血液ポート出口(5.2)を装着し、
当該ハウジング(2)の前記透析液ポート入口(7.1)に対応する位置に、基端部が前記ハウジング(2)内に固定される共に、先端部が前記ハウジング(2)の前記長さ方向に延設される障害部材(11、11.1、11.2、11.3)を設け、
前記障害部材(11、11.1、11.2、11.3)は、前記透析液ポート入口(7.1)近傍から当該透析液ポート入口(7.1)と反対側に向かうに従って、
前記基端部から前記先端部までの長さが短くなるように形成されるともに、
前記障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の長い部分から短い部分に向けて傾斜する傾斜部(S)を有し、
前記障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の前記透析液ポート入口(7.1)と対向する位置に、当該障害部材(11、11.1、11.2、11.3)の基端部から先端部に向けて、透析液の遮蔽部(12)を延設し、当該遮蔽部(12)の両端から前記傾斜部(S)を形成し、
前記遮蔽部(12)の先端頂部(12P)は、前記透析液ポート入口(7.1)の開口部(7.11)の前記ハウジング(2)の長さ方向側の端部(7P)の位置と実質的に同位置に配置されている、ことを特徴とする血液処理装置(1)。
【請求項2】
前記障害部材(11.1)は、前記遮蔽部(12)の両端から前記ハウジング(2)の前記断面方向の途中に至るまで、前記傾斜部(S)を形成し、
当該傾斜部(S)の終了部から、さらに前記透析液ポート入口(7.1)と反対方向へ向けて、前記ハウジング(2)の前記断面方向に沿って、前記基端部から前記先端部までの長さが、実質的同じである外周縁(13)を延設した、ことを特徴とする請求項1に記載の血液処理装置(1)。
【請求項3】
前記障害部材(11.2)は、前記遮蔽部(12)の両端から、前記外周縁(13)を、前記ハウジング(2)の前記断面方向の途中に至るまで延設し、
当該外周縁(13)の終了部から、前記透析液ポート入口(7.1)と反対方向へ向けて、前記傾斜部(S)を延設した、ことを特徴とする請求項1に記載の血液処理装置(1)。
【請求項4】
前記障害部材(11、11.3)は、前記遮蔽部(12)の両端から前記傾斜部(S)を、前記透析液ポート入口(7.1)と反対方向へ向けて、前記透析液ポート入口(7.1)と反対側の前記ハウジング(2)の壁面に至るまで延設するか、または前記ハウジング(2)の前記断面方向の途中に至るまで延設した、ことを特徴とする請求項1に記載の血液処理装置(1)。
【請求項5】
前記傾斜部(S)の傾斜角度(θ1)が、15°〜35°である、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の血液処理装置(1)。
【請求項6】
前記遮蔽部(12)の形成角度(θ2)が20°〜40°である、ことを特徴とする請求項1から請求項5項のいずれか一項に記載の血液処理装置(1)。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−162171(P2010−162171A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7062(P2009−7062)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】