説明

血液循環システム及びその制御装置

【課題】 遠心ポンプによって血液を供給する場合に、送出される血液の圧力、流量を必要に応じて所定の範囲内になるように制御し、血液の供給を安定して行なうことにより患者に対する負担を軽減することができる血液循環システム及びその制御装置を提供すること。
【解決手段】 患者Kに接続自在とされる血液循環路20と、該血液循環路20を補助循環路として使用するために、又は人体と人工心肺27との間で血液を循環させる遠心ポンプ23とを備えた血液循環システム1の制御装置10であって、血液循環路20又は人体に設置可能とされる血液の圧力測定手段28から入力される圧力測定値に基づいて前記遠心ポンプ23の回転数の増減を制御することによって、前記血液の圧力を調整する制御部を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人工心肺や補助循環に用いるために血液を体外で循環させるための血液循環システム及びその制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓手術等の手術中や手術後において、患者の人体に対して血液の供給が必要な場合、人工心肺や補助循環のための血液循環ポンプとして、構造が簡単で且つ駆動エネルギーが小さいことから無拍動ポンプが一般的に使用されている。
特に、遠心ポンプは、その吐出圧の変化に応じてポンプの吐出流量を変化させることが可能であるため、近年、患者に必要とされる血流量を算出し、遠心ポンプの回転数を手動にて調整する血液循環システムが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−200164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の遠心ポンプの制御においては、遠心ポンプから吐出された血液を受ける患者の血液受け入れ状態や、血液供給路の負荷によって、血液の圧力又は流量に変動が生じるなどの現象が発生するため、その都度、遠心ポンプの回転数を再調整する必要があった。また、患者の状態によって、血液の送出しの抵抗が過度に大きくなった場合、血液の送出しに必要な圧力が高くなり、患者に過度な負担が生じるのを避けるためには送出せる血液の流量が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、遠心ポンプによって血液を供給する場合に、送出される血液の圧力、流量を必要に応じて所定の範囲内になるように制御し、血液の供給を安定して行なうことにより患者に対する負担を軽減することができる血液循環システム及びその制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、請求項1に記載の制御装置は、人体に接続自在とされる血液循環路と、該血液循環路を補助循環路として使用するため、又は人体と人工心肺との間で血液を循環させるための遠心ポンプとを備えた血液循環システムの制御装置であって、血液循環路又は人体に設置可能とされる血液の圧力測定手段によって測定される圧力測定値に基づいて前記遠心ポンプの回転数の増減を制御することによって、前記血液の圧力を調整する制御部を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明に係る血液循環システムの制御装置によれば、血液循環路又は人体に設置可能な圧力測定手段によって測定された圧力測定値に基づいて遠心ポンプの回転数の増減を制御することによって、患者に供給する血液の圧力を調整することができる。
したがって、予め血液の圧力の目標値、圧力範囲の上下限を設定して調整することで、血液の圧力を所定の圧力範囲内に調整、維持することができる。
また、遠心ポンプの回転数により圧力を制御するため、容易かつ正確に制御することができ、また、遠心ポンプの回転は、レスポンスが良好なため、圧力を短時間で変化させるとともに、設定範囲内に安定して維持することができる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の制御装置であって、前記血液の圧力が、予め設定された前記圧力の許容上下限値を、所定時間外れた場合に、警報を発生させることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る制御装置によれば、自動制御中に、血液の圧力測定値が、予め設定した圧力の許容上下限値の範囲から外れると、圧力が所定の許容範囲外となったことが警報で知らせ、制御不能等の異常事態が容易に把握可能になり、その結果、患者への過度の負担が抑制されるので、安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2記載の制御装置であって、前記制御部は、前記圧力測定値と、前記血液循環路又は人体に設置可能とされる血液の流量測定手段によって測定される流量測定値とに基づいて、前記遠心ポンプの回転数の増減を制御することによって、前記血液の圧力及び流量を調整することを特徴とする
【0010】
この発明に係る制御装置によれば、圧力測定手段により測定された圧力測定値に加え、流量測定手段による血液の流量測定値に基づいて遠心ポンプの回転数の増減を制御することによって、血液の圧力及び流量を調整することができる。
したがって、予め血液の圧力、流量の目標値、許容範囲の上下限を設定して調整することで、血液の圧力、流量を所定の範囲内に調整、維持することができる。
また、遠心ポンプの回転数により圧力、流量を制御するため、圧力、流量を所定の制約の範囲内で容易かつ正確に制御することができ、また、遠心ポンプの回転は、レスポンスが良好なため、流量を短時間で変化させるとともに、安定して維持することができる。
したがって、容易かつ高い精度で血液の圧力及び流量を所定の圧力範囲内及び所定の流量範囲内にすることができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の制御装置であって、前記流量測定値に基づいて、前記血液循環路に設けられた流量調整手段の流路断面積を制御することにより前記血液の流量を調整することを特徴とする。
【0012】
この発明に係る制御装置によれば、前記制御部が、流量測定手段による血液の流量測定値に基づいて、前記血液循環路に設けられた血液の流量制御手段の流路断面積を制御して前記血液の流量を自在に調整することができる。したがって、血液の圧力及び流量を、容易、迅速、かつ正確に所定範囲内に調節することができる。
すなわち、遠心ポンプの回転数を増減させて圧力を調整する場合、圧力の上昇下降に伴い流量が増減するが、圧力を下降すべき状況で流量を増加させる必要がある場合や、圧力を上昇させるべき状況で流量を減少させる必要がある場合など、ポンプの回転数制御によって圧力と流量の双方を安定的に所定範囲内に調整することが困難なときに、遠心ポンプの回転数に加えて、血液循環路等に配置される流量制御手段の流路断面積を調整することにより圧力及び流量の双方を容易かつ正確に所定範囲内に調整するとともに、所定の圧力範囲内及び所定の流量範囲内に安定して維持することができる。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4記載の制御装置であって、前記血液の圧力測定値と流量測定値のいずれかが、予め設定された圧力又は流量の許容上下限値を、所定時間外れた場合に、警報を発生させることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る制御装置によれば、自動制御中に、血液の圧力測定値と流量測定値のいずれかが、予め設定した許容上下限値の範囲から外れると、許容範囲外となったことを警報で知らせ、制御不能等の異常事態が容易に把握可能になり、その結果、患者への過度の負担が抑制されるので、安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の制御装置であって、手動の流量調整手段に入力があった場合に、自動による制御を解除することを特徴とする。
【0016】
この発明に係る制御装置によれば、自動制御中に、圧力又は流量が所定の設定範囲から外れた場合など、手動の調整を行なうことによって、即座に自動制御が解除されるので、自動制御から手動制御に容易かつ迅速に切り替えることができ、安全性を向上させることができる。
【0017】
請求項7に記載の血液循環システムは、前記遠心ポンプと、請求項1から請求項6のいずれかに記載の制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0018】
この本発明に係る血液循環システムによれば、患者に供給する血液の圧力、又は圧力に加えて流量を把握し、その結果に基づいて、患者に供給する血液の圧力、又は圧力に加えて流量を調整するので、患者に供給する血液の圧力、又は圧力と流量とを、容易、短時間、かつ正確に調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る血液循環システム及びその制御装置によれば、患者に供給する血液の圧力を把握し、又は圧力に加えて流量を把握し、その結果に基づいて、遠心ポンプの回転数等を制御して患者に供給する血液の圧力、又は圧力に加えて流量を調整するので、供給する血液の圧力、又は圧力と流量とを、容易、短時間、かつ正確に調整することができる。また、自動制御中に、予め設定した圧力又は流量の上下限を外れると、警報を発生させるので、異常が容易に把握でき、さらに、手動の調整入力より自動制御が解除されると、即座に手動に切替わるので、迅速かつ安全な作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すのは、本発明に係る血液循環システムの要部を示す図であって、符号1は血液循環システムを、符号10は制御装置(制御手段)を、符号20は血液循環路を示している。
血液循環システム1は、制御装置10と、血液循環路20とを備えており、血液循環路20は、血液が流入する側の先端(血液還流端)と、血液を供給する側の末端(血液供給端)が、それぞれ患者K(人体)に接続されている。
【0021】
血液循環路20は、図1に示すように、脱血路21と、遠心ポンプ23と、血液供給路24とを備えており、脱血路21はその先端に位置する上流側が患者Kの静脈に接続可能とされるとともに、その末端に位置する下流側が遠心ポンプ23の吸入口に接続され、血液供給路24はその先端に位置する上流側が遠心ポンプ23の吐出口に接続され、その末端に位置する下流側が患者K動脈に接続可能とされている。
また、脱血路21は、患者Kから血液ポンプ23に至るまでの間に、流量制御手段25aと、脱血路21からの血液を所定量に維持するための例えばエアレスバッグからなるリザーバ22とを備えており、血液供給路24は、血液ポンプ23から患者Kに至るまでの間に、流量センサ(流量測定手段)26と、人工心肺27と、流量制御手段25bと、圧力センサ(圧力測定手段)28とを備えている。
脱血路21は、患者Kと接続されることによって、血液を患者Kから体外に移送する役目を、血液供給路24は患者Kと接続されることによって、血液を体外から患者Kに戻す役目を持っている。
【0022】
遠心ポンプ23は、流入側が脱血路21に、吐出側が血液供給路24に接続されるとともに、インペラ羽根(図示せず)を回転させるサーボモータ(図示せず)が、制御装置10のサーボドライバ15とケーブル33を介して接続され、制御装置10からの信号によって、インペラ羽根が回転して循環経路20を血液が循環するとともに、血液供給路24を介して患者Kに血液が供給されるようになっている。
サーボモータについては、ACサーボ、DCサーボのいずれを用いることも可能である。
【0023】
流量センサ26は、信号ケーブル36を介して、制御装置10の入力端子に接続され、流量センサ26により測定された流量の測定データは、制御装置10に入力され、制御装置10の演算部(図示せず)にて、所定の単位の流量測定値に演算されるようになっている。
また、圧力センサ27は、信号ケーブル37を介して制御装置10の入力端子に接続され、圧力センサ27により測定された圧力の測定データは、制御装置10に入力され、制御装置10の演算部にて、所定の単位の圧力測定値に演算されるようになっている。
なお、流量センサ26の代表的なものとしては、電磁流量計又は超音波流量計が、圧力センサ28の代表的なものとしては、圧電素子が挙げられるが、他のセンサを使用する使用することも可能である。
【0024】
流量制御手段25aは、制御装置10と信号ケーブル35aを介して接続され、制御装置10からの信号によって流路が拡大または縮小され、血液流量が増減するようになっている。
流量制御手段25bは、制御装置10と信号ケーブル35を介して接続され、制御装置10からの信号によって緊急時に体外循環を停止できるようになっている。
これら流量制御手段25(25a、25b)の代表的な例としては、ステッピングモータの回転をボールネジ構造により往復動に変換し、その往復動により血液移送チューブを狭窄して流量調整する、いわゆる脱血レギュレータが挙げられるが、他の形式の流量制御手段を使用することも可能である。
【0025】
制御装置10は、図2に示すように、制御部(制御手段)11と、手動の流量調整スィッチ(手動の流量調整手段)17と、警報装置19とを備えており、制御部11は、演算部(制御手段)11Aと、流量センサ26と接続されるA/D変換器12aと、圧力センサ(圧力測定手段)28と接続されるA/D変換器12bと、制御情報が収納されたデータベース13と、遠心ポンプ23のサーボモータの回転数を制御するためのサーボドライバ15と、流量制御手段25(25a、25b)の流路の拡縮を制御するためのサーボドライバ16(16a、16b)とを備えるとともに、A/D変換器12a、A/D変換器12b、データベース13、サーボドライバ15、サーボドライバ16、調整スィッチ17、及び警報装置19は、それぞれ演算部11Aに接続されている。
【0026】
流量センサ26が検出した流量データと、圧力センサ28が検出した圧力データとは、それぞれA/D変換器12aと、A/D変換器12bを介して、演算部11Aに入力されるようになっている。演算部11Aは、A/D変換された圧力データ及び流量データに基づいて、設定された圧力と流量を得るための遠心ポンプ23の回転数と、流量制御手段25の流路の流量に関する情報をデータベース13から入手し、その情報に基づいた制御信号を、サーボドライバ15とサーボドライバ16aとに送信し、遠心ポンプ23と流量制御手段25aの流路とを制御して、血液循環路20の圧力及び流量を調整するようになっている。
【0027】
また、演算部11Aは、血液循環路20の圧力測定値又は流量測定値が、設定された時間の間、所定の圧力又は流量測定値の設定範囲(許容上下限値)から外れると、警報装置19を介して警報を発生させるようになっている。
また、手動の流量調整スィッチ17から入力があった場合、手動による制御を優先させるために、演算部11A内で行なわれていた自動制御が解除されるようになっている。
【0028】
次に、この血液循環システム1及び制御装置10の作用について説明する。
まず、制御装置10の図示しないスイッチを入れて、遠心ポンプ23に電力を供給し、遠心ポンプ23を回転させるとともに、リザーバ22から血液を遠心ポンプ23に流入させて、血液循環路20と患者Kの間に血液の循環を形成する。スイッチを入れる前に、遠心ポンプ23とリザーバ22の間の脱血路21と、遠心ポンプ23内、供給路24内の空間に存在する気体及び気泡が除去され、血液循環路20は血液で満たされる。
【0029】
次いで、供給路24内の血液の圧力及び流量測定値は、供給経路25に配置された流量センサ26と圧力センサ28とにより電気信号として検出され、流量データは信号ケーブル36とA/D変換器12aとを介して演算部11Aに入力され、圧力データは信号ケーブル38とA/D変換器12bとを介して演算部11Aに入力される。
【0030】
演算部11Aには、例えば、スイッチ等(図示せず)により設定された、目標とする圧力Pt、圧力を制御すべき所定の圧力範囲の上限PU、下限PL、圧力の異常値として警報を発する許容上限P1、許容下限P2、及び目標とする流量Ft、流量を制御すべき所定の流量範囲の上限FU、下限FL、流量の異常値として警報を発する許容上限F1、許容下限F2とが図示しない記憶部に登録される。
【0031】
流量測定値Fn及び圧力測定値Pnとから、圧力と流量の差異ΔF(=Fn−Ft)、ΔP(=Pn−Pt)を演算し、その差異ΔF、ΔPをデータベース13に送信して、データベース13から圧力及び流量の差異ΔF、ΔPに基づき、設定された流量Ftと圧力Ptを得るための遠心ポンプ23のインペラ羽根の回転数と、流量制御手段25の流路の制御情報を入手する。
この場合、図示しない第2の設定スィッチにより、設定された許容範囲の数値を出力結果に反映させてもよい。
【0032】
その情報に基づいて、演算部11Aは、遠心ポンプ23のサーボモータの回転数を制御するサーボドライバ15と、流量制御手段25の流路の大きさを制御する図示しないサーボモータを制御するサーボドライバ16とに必要な制御信号を送信して、遠心ポンプ23及び流量制御手段25とを制御することで、血液循環路20の圧力及び流量が所定の圧力範囲及び流量範囲に入るように調整し、所定の圧力及び流量が得られる。
【0033】
制御装置10からの信号による遠心ポンプ23、及び流量制御手段25の動作について、以下に例を挙げて説明する。
例えば、圧力センサ28で測定された圧力(圧力測定値)Pnが、圧力の目標値Ptより低い(△P<0)場合には、遠心ポンプ23の回転数を上げて圧力Pnを上昇させる。圧力Pnを上昇させると、それにともなって、流量Fnが増加する。流量Fnが増加して、流量Fnが流量の目標値Ftに接近する場合や、Ftの近傍にて変動する場合は、流量制御手段25の流路は維持され流量Fnを調整する必要はないが、流量Fnが増加することによって所定の流量範囲の上限FUに接近するような場合には流量制御手段25の流路を縮小する制御が行なわれる。また、遠心ポンプ23の回転数を制御したにも関わらず、流量FnがFtに対して不足し流量範囲の下限FL付近にあるような場合、流量制御手段25の流路を拡大する制御がなされる。
また、この場合には、圧力測定値Pnに応じて、必要があれば遠心ポンプ23の回転数をさらに上げるように制御される。
【0034】
一方、圧力センサ28で測定された圧力(圧力測定値)Pnが目標とする圧力Ptより高い(△P>0)場合には、遠心ポンプ23の回転数を下げて圧力Pnを下降させる。圧力Pnを下降させると、それにともなって、流量Fnが減少する。流量Fnが減少して、流量Fnが流量の目標値Ftに接近する場合や、Ftの近傍にて変動する場合は、流量制御手段25の流量を維持され流量Fnを調整する必要はないが、流量Fnが減少することによって所定の流量範囲の下限FLに接近するような場合には流量制御手段25の流路を拡大する制御が行なわれる。また、遠心ポンプ23の回転数を制御したにも関わらず、流量FnがFtに対して過剰で流量範囲の上限FU付近にあるような場合、流量制御手段25の流路を縮小する制御がなされる。
また、この場合には、圧力測定値Pnに応じて、必要があれば遠心ポンプ23の回転数をさらに下げるように制御される。
ここで示した動作については、例であり、他の方法によってもよいし、これら一連の動作の一部にフィードバック制御が設けられてもよいのはいうまでもない。
【0035】
また、演算部11Aは、血液の流量測定値又は圧力測定値の少なくともいずれかが、設定された所定時間の間、設定された数値範囲P1からP2、又はF1からF2の範囲から外れた場合には、警報装置19から警報を発生させる。
また、制御装置10に設けられた手動の流量調整スィッチ17に入力されて調整された場合には、演算部11Aは、ポンプ23の回転数及び流量制御手段25aの流量の自動制御を解除して、手動による制御を優先可能とする。
【0036】
上記実施の形態の血液循環システム1及び制御装置10によれば、血液循環路20に設けられた圧力センサ28によって測定された圧力測定値に基づいて、遠心ポンプ23の回転数の増減を制御して、患者Kに供給する血液の圧力を所定の範囲内に制御することができる。
また、圧力の制御を、遠心ポンプ23の回転数により制御するため、容易かつ正確に制御することができ、また、遠心ポンプ23は、回転により制御され、レスポンスが良好なため、圧力を短時間で調整するとともに、設定範囲内に安定して維持することができる。
【0037】
また、圧力センサ28により測定された圧力測定値に加え、流量センサ26による血液の流量測定値に基づいて遠心ポンプ23の回転数の増減を制御して血液の圧力及び流量を調整するので、容易かつ高い精度で血液の圧力及び流量を所定の圧力範囲内及び所定の流量範囲内にすることができる。
【0038】
また、遠心ポンプ23の回転数を制御することにより、圧力、流量を調整するとともに、流量制御手段25aにより流量を調整するため、圧力及び流量の双方を迅速、容易かつ正確に調整し、血液を所定の圧力範囲内及び所定の流量範囲内に安定して維持することができる。
【0039】
また、血液の前記圧力又は前記流量のいずれかが、予め設定した圧力の許容上下限値又は予め設定された流量の許容上下限値の範囲から外れると、警報で知らせるので異常が容易に把握され、患者への過度の負担が抑制されるとともに安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0040】
また、自動制御中に、手動の調整を行なわれることによって、自動制御による圧力調整、流量調整が即座に解除されて、制御が自動から手動に切替わるので、切替作業が容易かつ迅速に可能で、また、安全性を向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。すなわち、圧力センサ28が血液供給路24に設けられた場合について説明したが、圧力センサ28を患者Kの体内に配置してもよい。
また、上記実施の形態では、圧力センサ28による圧力測定値と流量センサ26による流量測定値とを用いて、圧力及び流量の双方を制御する場合について説明したが、圧力測定値と流量測定値に基づいて、圧力又は流量のいずれかのみを制御、即ち圧力又は流量のいずれかを固定値として制御してもよいし、流量センサ26を用いずに圧力センサ28による圧力測定値に基づいて圧力の調整のみを実施してもよい。
また、上記実施の形態では、流量センサ26、圧力センサ28で測定したデータを、所定の単位の圧力測定値、流量測定値に演算する場合について説明したが、これらセンサ26、28で検出した電圧等の物理量を直接、圧力測定値、流量測定値として用いてもよい。
【0042】
また、所定の圧力範囲の上限PUと許容上限P1、下限PLと許容下限P2、及び所定の流量範囲の上限FUと許容上限F1、及び下限FL許容下限F2を別々の数値とした場合について例を挙げたが、上限PUと許容上限P1、下限PLと許容下限P2、上限FUと許容上限F1、下限FL許容下限F2については、いずれかの値を同一としてもよいし、圧力と流量のいずれか又は双方の許容範囲を設定せずに、圧力と流量のいずれか又は双方を、目標の圧力Pt、目標の流量Fnに対して接近するように調整するものであってもよい。
【0043】
また、上記実施の形態においては、演算部11Aで演算した結果をデータベース13に送信して、出力情報をデータベース13から入手する場合について説明したが、データベース13に代えて、サーボドライバへの出力量を、演算部11A又は他に設けた演算機構が数式により求めるようにしてもよい。
さらに、出力量を求めるにあたり、外乱による将来の変動を予測した出力や、PID制御、学習機能を持たせた制御を実施させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る血液循環システムの全体システムを示す図である。
【図2】本発明に係る制御装置の構成の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 血液循環システム
10 制御装置
11A 制御部(制御手段)
17 手動の流量調整スィッチ(手動の流量調整手段)
20 血液循環路
21 脱血路
22 リザーバ
23 遠心ポンプ
24 供給路
25 流量制御手段
26 流量センサ(流量測定手段)
28 圧力センサ(圧力測定手段)
K 患者




【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に接続自在とされる血液循環路と、該血液循環路を補助循環路として使用するため、又は人体と人工心肺との間で血液を循環させるための遠心ポンプとを備えた血液循環システムの制御装置であって、
血液循環路又は人体に設置可能とされる血液の圧力測定手段によって測定される圧力測定値に基づいて前記遠心ポンプの回転数の増減を制御することによって、
前記血液の圧力を調整する制御部を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置であって、
前記血液の圧力が、予め設定された前記圧力の許容上下限値を、所定時間外れた場合に、警報を発生させることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記圧力測定値と、前記血液循環路又は人体に設置可能とされる血液の流量測定手段によって測定される流量測定値とに基づいて、前記遠心ポンプの回転数の増減を制御することによって、
前記血液の圧力及び流量を調整することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項3記載の制御装置であって、
前記流量測定値に基づいて、前記血液循環路に設けられた流量調整手段の流路断面積を制御することにより前記血液の流量を調整することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の制御装置であって、
前記血液の圧力測定値と流量測定値のいずれかが、予め設定された圧力又は流量の許容上下限値を、所定時間外れた場合に、警報を発生させることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の制御装置であって、
手動の流量調整手段に入力があった場合に、自動による制御を解除することを特徴とする制御装置。
【請求項7】
前記遠心ポンプと、請求項1から請求項6のいずれかに記載の制御装置とを備えたことを特徴とする血液循環システム。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−325750(P2006−325750A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151382(P2005−151382)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】