説明

血液成分回収装置

【課題】簡便な操作で、かつ高い安全性で、血液から所望の血液成分を回収することができる血液成分回収装置を提供すること。
【解決手段】血液を吐出するための血液吐出機構、洗浄液を吐出するための洗浄液吐出機構、溶出液を吐出するための溶出液吐出機構、血液から血液成分を吸着するための吸着部、廃液を回収するための廃液回収部、および血液成分を回収するための血液成分回収部を有する血液成分回収装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分回収装置に関する。さらに詳しくは、生体から取り出された血液から所望の血液成分を回収するための血液成分回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中には種々の血液成分が含有されており、血液成分の中には、プラスミノーゲンに代表される線溶系成分などの医療上有用な物質が多々存在する。例えば、糖尿病網膜症の治療方法として、患者自身の血液からプラスミノーゲンを回収し、それをプラスミンに変換して患者に投与する方法が「プラスミン療法」として知られている。
【0003】
そのため、血液から所望の血液成分を回収するための方法がいくつか提案されており、その際、アフィニティークロマトグラフィーの手法を利用する方法が主流となっている。アフィニティークロマトグラフィー法を利用する血液成分の回収方法は、いずれも、基本的には、(1)血液(本明細書では、全血、血漿、血清などを「血液」と総称することがある)と吸着材との接触による所望の血液成分の吸着材への吸着、(2)洗浄液を用いた吸着材の洗浄(所望としない血液成分の吸着材からの除去)、(3)溶出液を用いた吸着材からの血液成分の分離・回収の各工程を含む点で共通する(例えば、非特許文献1および特許文献1参照)。
【0004】
非特許文献1に記載の方法は、(1)血漿分画と、塩化ナトリウムなどをリン酸緩衝液に含有させてなる溶液とを4℃で2時間攪拌下に混合し、得られた懸濁液を4℃で遠心分離に付することで、上澄み液を得る工程、(2)アガロース系のゲル状粒子(「セファロース−4B」)にリジンを結合させてなる吸着材と、前記上澄み液とを4℃で2時間攪拌する工程、(3)得られた混合物をろ過に付し、さらにリン酸緩衝液で洗浄することで吸着材を回収する工程、(4)回収された吸着材をカラムに充填する工程、(5)吸着材が充填されたカラムに、ε−アミノカプロン酸をリン酸緩衝液に含有させてなる溶出液を通液する工程、を順次経ることからなる、プラスミノーゲンの回収方法である。
【0005】
また、特許文献1に記載の方法は、(1)シリカ製またはセラミック製のビーズ状担体(例えば、直径40μmのシリカビーズ)にリジンを結合させてなる吸着材が充填されたカートリッジの入口部に、血漿を充填したシリンジを連結し、シリンジからカートリッジ内に血漿を注入し、次いでカートリッジからシリンジを取り外す工程、(2)そのカートリッジの入口部に、リン酸緩衝液からなる洗浄液を充填したシリンジを連結し、シリンジからカートリッジ内に洗浄液を注入して洗浄液の一部をカートリッジの出口部から流出させ、次いでカートリッジからシリンジを取り外す工程、(3)そのカートリッジの出口部にイオン交換デバイスまたはサイズ排除デバイスを連結すると共に、そのカートリッジの入口部に、ε−アミノカプロン酸をリン酸緩衝液に含有させてなる溶出液を充填したシリンジを連結し、シリンジからカートリッジ内に溶出液を注入し、流出液をイオン交換デバイスまたはサイズ排除デバイスを介して回収する工程、を順次経ることからなる、プラスミノーゲンの回収方法である。
【0006】
【非特許文献1】メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology)第80巻第365〜378頁(1981年)
【特許文献1】特表2002−528200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記非特許文献1に記載の方法では、血液と吸着材との接触(血液成分の吸着材への吸着)で攪拌装置を使用し、吸着材の洗浄はろ過操作で行い、吸着材からの血液成分の溶離はカラムを組んで行うため、操作が煩雑であり、また比較的広いスペースを必要とする。
【0008】
一方、特許文献1に記載の方法では、血液と吸着材との接触(血液成分の吸着材への吸着)、吸着材の洗浄および吸着材からの血液成分の溶離の各操作は、吸着材を充填したカートリッジに、血液注入用シリンジ、洗浄液注入用シリンジおよび溶出液注入用シリンジをひとつずつ連結し直すことによって行われるため、非特許文献1記載の方法と比べて、操作が簡便化され、所要スペースも狭くすることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された方法でも、吸着部(吸着材を充填したカートリッジ)に対して連結する3種類のシリンジの交換操作は、なお煩雑である。特に、プラスミン療法のように、同一医療施設内において、患者から血液を採取し、短い時間内でその血液から必要な血液成分を回収し、治療に使用する場合、血液成分回収操作に関し、操作の簡便さおよび患者に対する安全性の点で、さらなる改良が望まれる。
【0010】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、簡便な操作で、かつ高い安全性で、血液から所望の血液成分を回収することができる血液成分回収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明には、以下の発明〔1〕〜〔9〕が包含される。
〔1〕血液を吐出するための血液吐出機構、洗浄液を吐出するための洗浄液吐出機構、溶出液を吐出するための溶出液吐出機構、血液から血液成分を吸着するための吸着部、廃液を回収するための廃液回収部、および血液成分を回収するための血液成分回収部を有する血液成分回収装置。
〔2〕(1)血液を吐出するための血液吐出機構、洗浄液を吐出するための洗浄液吐出機構、溶出液を吐出するための溶出液吐出機構、血液から血液成分を吸着するための吸着部、廃液を回収するための廃液回収部、および血液成分を回収するための血液成分回収部を有し、さらに
(2)該血液吐出機構、該洗浄液吐出機構および該溶出液吐出機構を択一的に該吸着部に連通させることを可能にする機構(イ)、および、
(3)該廃液回収部および該血液成分回収部を択一的に該吸着部に連通させることを可能にする機構(ロ)、
を備えてなる血液成分回収装置。
〔3〕前記吸着部が流体入口部および流体出口部を備えており、該流体入口部側に前記機構(イ)が配され、該流体出口部側に前記機構(ロ)が配された前記〔2〕記載の血液成分回収装置。
〔4〕系外と遮断された構造を有する前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載の血液成分回収装置。
〔5〕前記血液成分回収部が濃縮機能を備えている前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載の血液成分回収装置。
〔6〕前記濃縮機能が限外ろ過方式による濃縮機能である前記〔5〕記載の血液成分回収装置。
〔7〕脱塩液を吐出するための脱塩液吐出機構、および、前記血液成分回収部と該脱塩液吐出機構との連通の開閉を可能にする機構(ハ)を備えている前記〔6〕記載の血液成分回収装置。
〔8〕前記機構(ハ)が前記機構(ロ)と前記血液成分回収部との間に位置し、前記機構(ロ)および前記機構(ハ)が協働して、前記血液成分回収部と前記脱塩液吐出機構との連通を遮断した状態で前記血液成分回収部と前記吸着部とを連通させる機能、および前記血液成分回収部と前記吸着部との連通を遮断した状態で前記血液成分回収部と前記脱塩液吐出機構とを連通させる機能を有する前記〔7〕記載の血液成分回収装置。
〔9〕前記吸着部が流体入口部および流体出口部を備えており、前記血液吐出機構と前記洗浄液吐出機構が三方コックAで接続され、該三方コックAの他端が三方コックBと接続され、該三方コックBの他の2端がそれぞれ前記溶出液吐出機構および前記吸着部の流体入口部と接続され、前記吸着部の流体出口部が三方コックCと接続され、該三方コックCの他の2端がそれぞれ前記廃液回収部および三方コックDと接続され、該三方コックDの他の2端がそれぞれ前記脱塩液吐出機構および前記血液成分回収部と接続されてなる前記〔8〕記載の血液成分回収装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の血液成分回収装置は、血液を吐出するための血液吐出機構、洗浄液を吐出するための洗浄液吐出機構、溶出液を吐出するための溶出液吐出機構、血液から血液成分を吸着するための吸着部、廃液を回収するための廃液回収部、および血液成分を回収するための血液成分回収部を有し、これらが接続され、一体化されているため、使用の際に、個々の機構を交換して接続し直す必要がない。
【0013】
したがって、本発明の血液成分回収装置を使用すれば、簡便な操作で血液から血液成分を回収することができ、しかも回収された血液成分を治療に使用する場合には、患者に対する安全性にも優れるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の血液成分回収装置の一実施態様を図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、かかる図面に記載された態様のみに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の血液成分回収装置の一実施態様を示す概略説明図である。
図1に示された血液成分回収装置は、前述したように、血液を吐出するための血液吐出機構1、洗浄液を吐出するための洗浄液吐出機構2、溶出液を吐出するための溶出液吐出機構3、血液から血液成分を吸着するための吸着部4、廃液を回収するための廃液回収部5、および血液成分を回収するための血液成分回収部7を有する。血液吐出機構1、洗浄液吐出機構2、溶出液吐出機構3、廃液回収部5および血液成分回収部7は、それぞれ、直接的にまたは間接的に(すなわち、チューブ、パイプなどの配管9などを介して)吸着部4に接続され、一体化されている。
【0016】
本発明の血液成分回収装置は、(1)血液を血液吐出機構1から吸着部4に送液し、(2)洗浄液を洗浄液吐出機構2から吸着部4に供給し、吸着部4から流出した廃液を廃液回収部5で回収し、(3)溶出液を溶出液吐出機構3から吸着部4に供給し、吸着部4から流出した所望の血液成分を含有する溶液を血液成分回収部7で回収することによって使用される。
【0017】
前記使用における利便性の観点から、本発明の血液成分回収装置は、さらに、血液吐出機構1、洗浄液吐出機構2および溶出液吐出機構3を択一的に吸着部4に連通させることを可能にする機構(イ)8a,8b、および廃液回収部5および血液成分回収部7を択一的に吸着部4に連通させることを可能にする機構(ロ)8cを備えていることが好ましく、吸着部4が流体入口部および流体出口部を備えており、吸着部4の流体入口部側に機構(イ)8a,8bが配され、吸着部4の流体出口部側に機構(ロ)8cが配されていることがより好ましい。なお、図1には、機構(イ)が機構8aおよび機構8bで構成されている態様が示されているが、本発明は、かかる態様のみに限定されるものではなく、例えば、機構8aと機構8bとが一体化されていてもよい。
【0018】
図1に示される態様において、機構(イ)は、より具体的には、血液吐出機構1または洗浄液吐出機構2と機構8bとを連通させることを可能にする機構8a、および機構8aまたは溶出液吐出機構3と吸着部4とを連通させることを可能にする機構8bを有する。また、機構(ロ)8cは、より具体的には、吸着部4と廃液回収部5または血液成分回収部7とを連通させることを可能にする機構である。
【0019】
本発明の血液成分回収装置は、回収された血液成分の汚染の可能性をさらに低減させ、血液成分が医療目的で使用される場合の安全性をより高める観点から、系外と遮断された構造を有することが好ましい。
【0020】
本発明の血液成分回収装置は、血液成分回収部7に捕集された溶液中の血液成分濃度を高めることができるようにするために、血液成分回収部7に濃縮機能(例えば、限外ろ過方式による濃縮機能)を具備していることが好都合となる場合がある。
【0021】
本発明の血液成分回収装置は、血液成分回収部7が限外ろ過方式による濃縮機能を有し、さらに脱塩液を吐出するための脱塩液吐出機構6、および血液成分回収部7と脱塩液吐出機構6との連通の開閉を可能にする機構(ハ)8dを備えている場合、吸着部4から流出した所望の血液成分を含有する溶液に混在している塩(例えば、ε−アミノカプロン酸など)を脱塩液吐出機構6で除去または低減させることができるため、好都合となることがある。
【0022】
本発明の血液成分回収装置においては、限外ろ過方式による濃縮機能を有する血液成分回収部7、脱塩液吐出機構6および機構(ハ)8dを備えている場合、機構(ハ)8dが機構(ロ)8cと血液成分回収部7との間に位置し、機構(ロ)8cおよび機構(ハ)8dが協働して、血液成分回収部7と脱塩液吐出機構6との連通を遮断した状態で血液成分回収部7と吸着部4とを連通させる機能、および血液成分回収部7と吸着部4との連通を遮断した状態で血液成分回収部7と脱塩液吐出機構6とを連通させる機能を有する構成をとることが、操作の簡便性の観点から、特に好適である。
【0023】
図1に示される血液成分回収装置は、本発明の好適な態様に該当するものであり、限外ろ過方式による濃縮機能を有する血液成分回収部7および脱塩液吐出機構6を有し、機構(イ)8a,8bが吸着部4の流体入口部側に配され、機構(ロ)8cが吸着部4の流体出口部側に配され、機構(ハ)8dが機構(ロ)8cと血液成分回収部7との間に配されている。
【0024】
図1に示される血液成分回収装置において、機構(イ)〜(ハ)の一例として、三方コックA8a〜三方コックD8dが用いられている場合について、以下に説明する。より具体的には、三方コックA8aおよび三方コックB8bが機構(イ)を構成し、三方コックC8cが機構(ロ)を構成し、三方コックD8dが機構(ハ)を構成している。
【0025】
図1に示された血液成分回収装置は、血液吐出機構1と洗浄液吐出機構2が三方コックA8aで接続され、三方コックA8aの他端が三方コックB8bと接続され、三方コックB8bの他の2端がそれぞれ溶出液吐出機構3および吸着部4の流体入口部と接続され、吸着部4の流体出口部が三方コックC8cと接続され、三方コックC8cの他の2端がそれぞれ廃液回収部5および三方コックD8dと接続され、三方コックD8dの他の2端がそれぞれ脱塩液吐出機構6および血液成分回収部7と接続されているときの例である。
【0026】
なお、図1に示された血液成分回収装置の態様では、血液成分回収部7の下端部に血液成分排出手段10が配設されている。これにより、血液成分回収部からの血液成分の取り出しが容易となる。
【0027】
血液吐出機構1は、血液を吐出するために用いられる。血液吐出機構1としては、例えば、シリンジや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂からなる容器(例えば、採血バッグ、血液成分分離バッグまたは輸血バッグとして使用されるような軟質樹脂製バッグ;試薬ボトルとして使用されるよう軟質樹脂製ボトル;軟質樹脂製チューブ状容器など)などの血液吐出装置を用いることができる。これらのなかでは、血液の吐出速度を精確に制御することができる観点から、シリンジポンプに装着されたシリンジが好ましい。血液吐出機構1の容量およびその大きさは、任意であり、処理を施す血液の処理量などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0028】
なお、血液吐出機構1に充填される血液は、人体などから採取された全血に限られるものではなく、全血から採取された血清、血漿などであってもよい。人体などからの全血の採取後、迅速に所望の血液成分を回収する必要がある場合には、未処理の血液(全血)をそのまま本発明の血液成分回収装置に適用することが、遠心分離などの前処理操作を省略することができる観点から、好ましい。
【0029】
洗浄液吐出機構2は、洗浄液を吐出するために用いられる。洗浄液吐出機構2としては、例えば、シリンジや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂からなる容器(例えば、採血バッグ、血液成分分離バッグまたは輸血バッグとして使用されるような軟質樹脂製バッグ;試薬ボトルとして使用されるよう軟質樹脂製ボトル;軟質樹脂製チューブ状容器など)などの洗浄液吐出装置を用いることができる。これらの中では、洗浄液の吐出速度を精確に制御することができる観点から、シリンジポンプに装着されたシリンジが好ましい。洗浄液吐出機構2の容量およびその大きさは、任意であり、処理を施す血液の処理量などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0030】
洗浄液吐出機構2に充填される洗浄液は、生体に対して安全であり、装置内を洗浄すること(特に、吸着部4に存在する所望の血液成分以外の血液成分を吸着部外に流し出すこと)ができれば、その種類に特に限定がない。かかる洗浄液の例としては、生理食塩水、塩化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液などが挙げられる。
【0031】
溶出液吐出機構3は、溶出液を吐出するために用いられる。溶出液吐出機構3としては、例えば、シリンジや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂からなる容器(例えば、採血バッグ、血液成分分離バッグまたは輸血バッグとして使用されるような軟質樹脂製バッグ;試薬ボトルとして使用されるよう軟質樹脂製ボトル;軟質樹脂製チューブ状容器など)などの溶出液吐出装置を用いることができる。これらの中では、溶出液の吐出速度を精確に制御することができる観点から、シリンジポンプに装着されたシリンジが好ましい。溶出液吐出機構3の容量およびその大きさは、任意であり、処理を施す血液の処理量などに応じて適宜決定することが好ましい。
【0032】
溶出液吐出機構3に充填される溶出液は、生体に対して安全であり、吸着部4内で吸着されている所望の血液成分を溶離させることができれば、その種類に特に限定がない。かかる溶出液の種類は、吸着部4で吸着された血液成分を溶出させるのに適したものを適宜選択して用いることができる。例えば、血液成分として、プラスミノーゲンを吸着部4に吸着させた場合には、溶出液として、ε−アミノカプロン酸および塩化ナトリウムを含有するリン酸緩衝液などを用いることができる。
【0033】
血液から回収される血液成分としては、例えば、アルブミン、イムノグロブリン、フィブリノーゲン、プラスミノーゲン、プラスミノーゲンアクチベーター、プラスミンなどが挙げられるが、本発明の血液成分回収装置において回収対象となり得る血液成分は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの血液成分の中で、プラスミノーゲン、プラスミノーゲンアクチベーター、プラスミンなどは、血液が異物と接触し、滞留することなどによって血液凝固が起こったときに、生成した血栓を溶解させるために働く生体機能を有していることから、このような機能を有する血液成分は「線溶系成分」と称されている。線溶系成分の中では、プラスミノーゲンは、プラスミンの前駆体であり、血液中から安定して回収することができるので、本発明において好ましい血液成分である。
【0034】
吸着部4は、血液から所望の血液成分を吸着させるために用いられる。吸着部4は、血液成分の回収効率などの点から、流体入口部と流体出口部を備えていることが好ましい。吸着部4としては、例えば、吸着材が充填されたカラムなどを好適に用いることができる。カラムは、生体に対する安全性を有するものであれば特に限定なく用いることができる。また、カラムの寸法およびその形状なども任意であり、その一例として、長さ10〜50mm程度、直径3〜15mm程度の円筒形のカラムなどが挙げられる。また、カラムの素材も任意であるが、ポリエチレンなどの樹脂製であることが一般的に好ましい。
【0035】
吸着材には、血液から所望の血液成分が吸着される。吸着材の種類は、血液から採取しようとする血液成分の種類に応じて適宜選択することができる。吸着材としては、例えば、線溶系成分との親和性を有するリガンドと親水性有機高分子化合物を含む担体とから構成される吸着材などが挙げられる。
【0036】
親水性有機高分子化合物は、水、体液、血液などとの適合性に優れている。したがって、親水性有機高分子化合物を含む担体から構成される吸着材は、血液有形成分および血漿タンパクの付着、凝血、溶血などや、血液凝固系の活性化、線溶系の活性化などを生じがたいので、本発明の血液成分回収装置に使用することが好ましい。
【0037】
担体に含有される親水性有機高分子化合物は、分子構造中に架橋構造を含んでいてもよい。親水性有機高分子化合物の概念には、例えば、水で膨潤する有機高分子化合物、水に湿潤しやすい有機高分子化合物などが包含されている。親水性有機高分子化合物の主構造を鎖状有機高分子化合物で構成する場合には、例えば、グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド類、トリレンジイソシアネートなどのジイソシアネート類;無水フタル酸、無水マレイン酸などの酸無水物;エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどの多官能エポキシ化合物;エピクロロヒドリンなどの架橋剤などを使用して架橋構造を形成させることが好ましい。
【0038】
親水性有機高分子化合物が有する、親水性発現およびリガンド固定に寄与する官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、第4級アンモニウム基などの解離性を有する基、水酸基、アクリルアミド基、エーテル基などの非イオン性の親水性基などが挙げられる。親水性有機高分子化合物における官能基の数は、目的とする血液成分をより多く吸着して回収するためには、多いことが好ましいが、その反面、多くなるにしたがって、固定化されたリガンドによる非特異的吸着を生じやすくなる傾向がある。したがって、親水性有機高分子化合物1gあたりの前記官能基の数は、好ましくは50μmol以上、より好ましくは50〜1000μmol、さらに好ましくは170〜500μmolである。
【0039】
親水性有機高分子化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類を重合させた親水性(メタ)アクリレート系高分子化合物;酢酸ビニルなどを重合用原料とするポリビニルアルコール系高分子化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのエチレングリコール類を重合させたポリエチレングリコール系高分子化合物;前記ポリビニルアルコール系高分子化合物の存在下で、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類を重合させることによって得られた水酸基含有親水性(メタ)アクリレート系共重合体などが挙げられる。
【0040】
より具体的には、親水性(メタ)アクリレート系高分子化合物の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ポリビニルアルコール系高分子化合物の例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。ポリエチレングリコール系高分子化合物の例としては、ポリエチレングリコール(オキシエチレン単位数は、大きすぎると血液成分が粒子内の細孔部に進入しがたくなる傾向があるため、好ましくは3〜500の範囲内の数、より好ましくは3〜200の範囲内の数、さらに好ましくは3〜100の範囲内の数である)、ポリジエチレングリコールなどが挙げられる。また、水酸基含有親水性(メタ)アクリレート系共重合体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジ(メタ)アクリレートをポリビニルアルコールの存在下で重合させることによって得られた共重合体、グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジ(メタ)アクリレートをポリ酢酸ビニルの存在下で重合させることによって得られた共重合体などが挙げられる。
【0041】
また、親水性有機高分子化合物としては、前記以外にも、式:HO−C2m−OH(式中、mは3〜6の整数であり、アルキレン基(C2m)は直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、また、水酸基が結合する炭素原子は第1級、第2級および第3級のいずれであってもよい)で表される2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなど3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、エリスリトール、スレイトールなどの4価アルコール;リビトール、アラビニトール、キシリトールなどの5価アルコール;アリトール、ダルシトール、グルシトール、ソルビトール、マンニトール、アルトリトール、イジトールなどの6価アルコールなどの多価アルコールを重合させることによって得られた多価アルコール系高分子化合物が挙げられる。多価アルコール系高分子化合物としては、例えば、ポリグリセリン、ポリエリスリトール、ポリソルビトールなどが挙げられる。また、親水性有機高分子化合物には、単糖類、二糖類(マルチトール、ラクチトールなど)などを重合させることによって得られた高分子化合物も包含される。
【0042】
本発明の血液成分回収装置における吸着部を構成する吸着材用の親水性有機高分子化合物の中では、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類を重合させることによって得られた親水性(メタ)アクリレート系高分子化合物;酢酸ビニルなどを重合用原料とするポリビニルアルコール系高分子化合物;前記ポリビニルアルコール系高分子化合物の存在下で、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート類を重合させることによって得られた水酸基含有親水性(メタ)アクリレート系共重合体が、より好ましい。
【0043】
前記例示の親水性有機高分子化合物は、所望により、架橋剤の併用により架橋構造を形成させてもよいことはいうまでもない。また、親水性有機高分子化合物は、吸着材の製造において、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0044】
なお、本明細書において使用する用語「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の総称である。
【0045】
前記親水性有機高分子化合物を得るための重合方法としては、公知の方法が採用可能であり、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、これらの重合法に限定されるものではない。
【0046】
親水性有機高分子化合物の重量平均分子量は、必ずしも限られるものではないが、高圧下や高流量下での構造破壊を防ぐ観点から、一般的には、1000〜1000000が好ましく、3000〜800000がより好ましい。
【0047】
吸着材用の担体は、親水性有機高分子化合物を構成材料として含有する。担体は、その全体が実質的に親水性有機高分子化合物のみから構成されていてもよいが、親水性有機高分子化合物以外の物質からなる基材の表面を親水性有機高分子化合物で被覆したものであってもよく、親水性有機高分子化合物以外の物質と親水性有機高分子化合物との混合物から構成されたものであってもよい。
【0048】
吸着材用の担体は、例えば、球状粒子、破砕状粒子などの任意の粒子形状のものが用いられる。吸着性を高めるには被吸着物質(血液成分)との接触面積が大きいことが好ましいことから、前記形態の中でも球状粒子が特に好ましい。担体には、非多孔性のゲル型のものと、多孔性のポーラス型のものが包含され、本発明ではいずれを用いることもできるが、被吸着物質との吸着性を高める観点から、ポーラス型のものがより好ましい。
【0049】
担体粒子の平均粒径は、必ずしも限られるものではないが、比表面積を大きくして吸着性を高める観点および粘性の高い血漿または全血が通過する際の抵抗を軽減する観点から、一般的には、170μm以上であることが好ましく、170〜1000μmであることがより好ましく、300〜900μmであることがさらに好ましい。なお、前記平均粒径は、例えば、精密粒子分布測定装置〔ベックマンコールター(株)製、商品名:コールターマルチサイザーII〕で測定した粒子の粒度分布において、粒子数が最も多い粒子の粒径として把握することができる。
【0050】
なお、血液などの流体の通過時の抵抗によって担体が変形すると、流体の通過を妨げる可能性があるため、担体は変形しない程度の強度を持たせたものであることが好ましい。
【0051】
吸着材に用いられるリガンドとしては、例えば、塩基性アミノ酸、抗体などの生体由来物質;ジエチルアミノエチル基、トリメチルアミノメチル基などの有機化合物から誘導される基;シリカ、珪酸などの無機化合物などが挙げられる。これらの中では、生体由来物質が好ましく、塩基性アミノ酸がより好ましい。塩基性アミノ酸としては、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられ、中でもリジンが好ましい。
【0052】
吸着材は、例えば、公知の方法に従って、担体とリガンド(またはリガンドを与える有機化合物)を結合させることによって得られる。担体とリガンドとの間の結合は、担体を構成する親水性有機高分子化合物とリガンドとの間の化学結合または物理力に基づく結合であることが好ましく、担体とリガンドとの間の結合が強固であることから、担体を構成する親水性有機高分子化合物とリガンドとの間の化学結合が特に好ましい。
【0053】
リガンドを親水性有機高分子化合物に化学的に結合させる方法としては、必ずしも限られるものではないが、例えば、親水性有機高分子化合物中に存在する反応性基をそのままの状態でまたは化学修飾した後に、リガンド分子中に存在する反応性基と化学反応させる方法が挙げられる。親水性有機高分子化合物中に存在する反応性基が水酸基である場合、水酸基の化学修飾には、エピクロロヒドリンを用いたエポキシ化、無水コハク酸を用いたカルボキシル化、N−ヒドロキシスクシンイミドを用いたアミド化などを採用することができる。
【0054】
親水性有機高分子化合物に結合されるリガンドの量は、所望の血液成分をより多く吸着し、回収する観点から、親水性有機高分子化合物1g当り50μmol以上が好ましく、170μmol以上がより好ましい。一方、リガンドの量が多くなるにしたがって非特異的吸着を生じる傾向があるので、非特異的吸着を防止する観点から、親水性有機高分子化合物に結合されるリガンドの量は、親水性有機高分子化合物1gあたり1000μmol以下であることが好ましく、500μmol以下であることがより好ましい。これらの観点を総合して、一般的に、親水性有機高分子化合物に結合されるリガンドの量は、親水性有機高分子化合物1gあたり50μmol以上が好ましく、50〜1000μmolがより好ましく、170〜500μmolがさらに好ましい。
【0055】
吸着材中のリガンドの量は、公知の方法で確認することができる。リガンドがリジンである場合、例えば、第14改正日本薬局方に記載のセミミクロケルダール法により一定重量の吸着材に含有されている窒素原子の量を定量し、その定量された窒素原子の量からリジン量を算出することができる。
【0056】
廃液回収部5は、血液吐出機構1からの血液の吐出時、吸着部4から流出する血液、および洗浄液吐出機構2からの洗浄液の吐出時、吸着部4から流出する廃液(血液の非吸着分を含有する洗浄液)を回収するために用いられる。廃液回収部5としては、例えば、樹脂製の容器、樹脂製のバッグ、シリンジなどの容量固定または容量可変の容器を用いることができる。廃液回収部5の容量、大きさ、形状などは、廃液を収容することができればよく、特に限定がない。
【0057】
血液成分回収部7は、吸着部4から離脱させた血液成分を回収するための部材である。血液成分回収部7としては、生体に安全な樹脂(例えば、セルロース、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル)からなる樹脂製容器、樹脂製バッグなどが一般的に好ましいが、本発明は、これらに限定されるものではない。血液成分回収部7の容量や大きさは、回収された血液成分を十分に収容できればよく、任意である。
【0058】
吸着部4から離脱させた血液成分は、溶出液中の溶液の状態で血液成分回収部7に捕集されるため、溶液中の血液成分の濃度を高めることが望まれる場合がある。このような場合には、血液成分回収部7に濃縮機能を具備させることが好ましい。濃縮機能を付与するために、公知の各種の方式を採用することができるが、限外ろ過方式は、操作の簡便さ、所要時間の短さ、血液成分に対する悪影響の少なさなどの観点から好ましい。限外ろ過では、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、再生セルロースなどからなる限外ろ過膜を使用することができ、その素材、面積、孔径、分画分子量などの条件については、目的とする血液成分の種類、処理すべき血液成分含有溶液の量などに応じて適宜選択することができる。
【0059】
血液成分回収部7に限外ろ過方式による濃縮機能を具備させる場合、血液成分回収部7として、溶媒吸収型濃縮器を使用することが好ましい。溶媒吸収型濃縮器は、代表的には、限外ろ過膜の片面に被処理液収容部を設け、該膜の反対側の面に接触させて吸収パッド(例えば、吸水性樹脂)を配置した構造を有し、被処理液収容部に収容された被処理液が限外ろ過膜に接触し、該被処理液中の水および低分子量物質が限外ろ過膜を透過して吸水性パッドに吸収させるようにした器具である。溶媒吸収型濃縮器としては、例えば、ザルトリウス(株)製「ビバポア」が市販されている。
【0060】
なお、血液成分回収部7に回収された血液成分を、血液成分回収部7から容易に取り出すことができるようにするために、図1に示されるように、血液成分回収部7の下端部に、血液成分を取り出すためのシリンジなどの血液成分排出手段10が配設されていてもよい。
【0061】
溶出液中には、通常、血液成分の吸着材からの離脱を助長する能力を有する塩(例えば、血液成分がプラスミノーゲンの場合はε−アミノカプロン酸)が配合されている。そのため、通常は、吸着部4から血液成分回収部7に捕集される血液成分含有溶液中に、この塩が共存する。したがって、血液成分含有溶液から該塩を除去または低減させる目的で、血液成分回収部7中に捕集された溶液に対し脱塩処理を施すことが望ましい場合がある。脱塩処理は、例えば、血液成分含有溶液に脱塩液を添加することによって行われる。脱塩液吐出機構6は、血液成分回収部7に脱塩液を供給するために用いられるものであり、本発明においては任意の構成である。
【0062】
脱塩液吐出機構6としては、シリンジや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂からなる容器(例えば、採血バッグ、血液成分分離バッグまたは輸血バッグとして使用されるような軟質樹脂製バッグ;試薬ボトルとして使用されるよう軟質樹脂製ボトル;軟質樹脂製チューブ状容器など)などの脱塩液吐出装置を用いることができる。これらの中では、脱塩液の吐出速度を精確に制御することができる点から、シリンジポンプに装着されたシリンジが好ましい。脱塩液吐出機構6の容量およびその大きさは、任意であり、処理すべき血液成分含有溶液の量や血液成分の種類などに応じて適宜決定することができる。
【0063】
脱塩液吐出機構6に充填される脱塩液は、生体に対して安全であり、血液成分含有溶液に対して脱塩作用を示すものであれば、その種類に特に限定がない。かかる脱塩液は公知であり、その種類は、除去すべき塩の種類などに応じて適宜選択することができる。例えば、塩がε−アミノカプロン酸である場合、脱塩液として生理食塩水などを用いることができる。
【0064】
血液成分回収部7が限外ろ過方式の濃縮機能を有する場合、血液成分回収部7と脱塩液吐出機構6とを組み合わせ、脱塩液の添加と濃縮を同時的または並行的に行うことは、脱塩をより完全に行うことができるので、好ましい。
【0065】
血液吐出機構1、洗浄液吐出機構2および溶出液吐出機構3は、それらを択一的に吸着部4に連通させることを可能にする機構(イ)8a,8bを介して吸着部4に接続されていることが好ましい。なお、図1には、機構(イ)が機構8aおよび機構8bで構成されている態様が示されているが、本発明はかかる態様のみに限定されるものではなく、例えば、機構8aと機構8bとは一体化されていてもよい。かかる機構(イ)8a,8bとしては、一般に流体の流路の開閉・変換に使用されている器具を使用することができる。その例としては、バルブまたはコックの単独または組合せが挙げられる。これらの中では、構造の簡便さ、入手の容易さおよび操作の簡便さの観点から、2個の三方コック(切り換え操作で、一端を他の2端に対し択一的に連通させる構造のもの)の一端同士を接続したもの、四方コック(切り換え操作で、一端を他の3端に対し択一的に連通させる構造のもの)などが好ましく、2個の三方コックの一端同士を接続したものがより好ましい。一端同士を接続した2個の三方コックにおいて、残る4個の接続端には、血液吐出機構1、洗浄液吐出機構2、溶出液吐出機構3および吸着部4が接続される。これらの接続位置は、必ずしも限られるものではないが、回収された血液成分に対する汚染の危険性が最も低い観点から、一方の三方コックに血液吐出機構1および洗浄液吐出機構2を接続し、他方の三方コックに溶出液吐出機構3および吸着部4(好ましくは、吸着部4の流体入口部)を接続することが好ましい。
【0066】
廃液回収部5および血液成分回収部7は、それらを択一的に吸着部4に連通させることを可能にする機構(ロ)を介して吸着部4(好ましくは吸着部4の流体出口部)に接続されていることが好ましい。かかる機構(ロ)としては、流体の流路の開閉・変換に使用される公知の器具を使用することができ、例えば、バルブまたはコックの単独または組合せが挙げられる。これらの中でも、構造の簡便さ、入手の容易さ、操作の簡便さの点において三方コック(切り換え操作で、一端を他の2端に対し択一的に連通させる構造のもの)が好ましい。
【0067】
なお、本発明の血液成分回収装置に脱塩液吐出機構6を組み込む場合、脱塩液吐出機構6および血液成分回収部7は、両者間の連通の開閉を可能にする機構(ハ)8dを介して接続されていることが好ましい。該機構(ハ)8dは、脱塩液吐出機構6、血液成分回収部7および機構(ロ)8cに接続され、機構(ロ)8cおよび機構(ハ)8dの操作により、血液成分回収部7と脱塩液吐出機構6との連通を遮断した状態で血液成分回収部7と吸着部4とを連通させる機能、および血液成分回収部7と吸着部4との連通を遮断した状態で血液成分回収部7と脱塩液吐出機構6とを連通させる機能を有する構成をとることが、操作の簡便性の観点から、より好適である。かかる機構(ハ)8dとしては、流体の流路の開閉・変換に使用される公知の器具を使用することができ、例えば、バルブまたはコックの単独または組合せが挙げられる。これらの中でも、構造の簡便さ、入手の容易さ、操作の簡便さの点において三方コック(切り換え操作で、一端を他の2端に対し択一的に連通させる構造のもの)が好ましい。
【0068】
血液吐出機構1、洗浄液吐出機構2、溶出液吐出機構3、吸着部4、廃液回収部5、血液成分回収部7およびその他の任意の構成(脱塩液吐出機構6、三方コック8a〜8dなど)は、それぞれ配管9により、接続することができる。配管9は、各機構などを接続するために用いられるものであり、その材質は、生体に対する安全性が確認されているものであればよい。配管9の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、シリコーンなどの樹脂からなるチューブ、パイプなどが挙げられる。
【0069】
なお、機構(イ)8a,8b、機構(ロ)8cまたは機構(ハ)8dとしてコックまたはバルブを使用する場合、その材質は、生体に対する安全性が確認されているものであればよく特に限定されものではない。これらの機構の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0070】
かくして構成される本発明の血液成分回収装置は、血液吐出機構1、洗浄液吐出機構2、溶出液吐出機構3、吸着部4、廃液回収部5、血液成分回収部7、および所望により脱塩液吐出機構6などの他の機構が一体的に接続されているが、これらを系外と遮断させて接続する構造をとることができる。本発明の血液成分回収装置が、系外から遮断された構造を有する場合、外気が系内に侵入することを防止することができることから、外気中の細菌の装置系内への侵入による血液成分の細菌汚染の可能性をいっそう効果的に低減することができるという利点がある。
【0071】
なお、本発明の血液成分回収装置は、構造が簡単であるため、使用する必要が生じるごとに、各構成部材を組立てて作製することができる。ただし、本発明の血液成分回収装置は、使用または組立ての前に、滅菌しておくことが好ましい。滅菌方法としては、例えば、オートクレーブによる滅菌方法、放射線の照射による滅菌方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0072】
以上説明した本発明の血液成分回収装置を用いれば、血液から血液成分を簡便な操作で回収することができる。
【0073】
次に、本発明の血液成分回収装置を用いて血液成分を回収する方法について、図1に示す例に基づいて説明する。
【0074】
まず、三方コックA8a、三方コックB8bおよび三方コックC8cを切り換えることにより、洗浄液吐出機構2の出口部、溶出液吐出機構3の出口部および三方コックC8cの三方コックD8d側の配管を遮断し、血液吐出機構1、三方コックA8a、三方コックB8b、吸着部4、三方コックC8cおよび廃液回収部5を連通させる。次に、血液吐出機構1から血液を吐出し、吸着部4を通過させた後、その血液の一部を廃液回収部5で回収する。血液が吸着部4を通過する際に、所定の血液成分が吸着部4で吸着される。
【0075】
次に、三方コックA8aを切り替えて血液吐出機構1の出口部を遮断すると共に洗浄液吐出機構2の出口部を開くことによって、洗浄液吐出機構2、三方コックA8a、三方コックB8b、吸着部4、三方コックC8cおよび廃液回収部5を連通させる。次に、洗浄液吐出機構2から洗浄液を吐出することにより、三方コックA8a、三方コックB8b、吸着部4および三方コックC8cの内部に洗浄液を通過させ、廃液を廃液回収部5で回収する。これにより、吸着部4を中心とする装置内部の洗浄を行うことができる。
【0076】
その後、三方コックB8bを切り替えて三方コックA8a側の配管を遮断すると共に溶出液吐出機構3の出口部を開き、三方コックC8cを切り換えて廃液回収部5の入口部を遮断すると共に三方コックD8d側の配管を開き、さらに、三方コックD8dを切り換えて脱塩液吐出機構6の出口部を遮断すると共に血液成分回収部7(ここでは、限外ろ過方法の濃縮機能を備えた血液成分回収部)の入口部を開くことにより、溶出液吐出機構3、三方コックB8b、吸着部4、三方コックC8c、三方コックD8dおよび血液成分回収部7を連通させる。次に、溶出液吐出機構3から溶出液を吐出し、吸着部4を通過させることにより、吸着部4で吸着された血液成分を溶出させ、血液成分を含む溶液を血液成分回収部7で捕集する。
【0077】
さらに、三方コックD8dを切り換えて三方コックC8c側の配管を遮断すると共に脱塩液吐出機構6の出口部を開くことにより、脱塩液吐出機構6と血液成分回収部7とを連通させる。脱塩液吐出機構6から脱塩液を血液成分回収部7に通液することによって、血液成分回収部7中の溶液に対して脱塩処理が施される。なお、脱塩操作は、本発明の血液成分回収装置が脱塩液吐出機構6を有する場合に施される操作である。
【0078】
このようにして血液成分回収部7で回収された血液成分含有溶液は、例えば、血液成分回収部7の下端部に配設された排出手段10から取り出すことができる。
【0079】
以上説明したように、本発明の血液成分回収装置を用いれば、血液から所望の血液成分を、簡便な操作で回収することができる。
【0080】
したがって、本発明の血液成分回収装置を用いれば、例えば、患者の自己血液から所望の酵素などの血液成分を簡便に回収することができるので、その回収した血液成分を治療に利用することが容易となる。特に、酵素療法の臨床への展開において、医師らが、患者から血液を採取した後、大気中に開放された系で複数の器具を使い分けて酵素を分離・精製する方法は、操作上の煩雑さ、患者に対する安全性などの点で満足できるものではない。本発明の血液成分回収装置を用いれば、操作上の煩雑さを軽減し、さらには患者に対する安全性を高めることも可能となる。
【0081】
なお、前記酵素療法は、従来の眼球の網膜硝子体の手術に代わりうる方法として近年、注目されている方法であり、代表的には、血液中の線溶系の酵素プラスミンが有する接着性タンパク質分解能を利用して、眼球内深部に形成した網膜牽引性の繊維組織を網膜から剥がし、糖尿病網膜症を治療する方法(プラスミン療法)である。本発明の血液成分回収装置を用いれば、血液からプラスミノーゲンを簡便に回収することができるが、そのプラスミノーゲンは容易にプラスミンに変換される。そのため、本発明の血液成分回収装置は、糖尿病性増殖性網膜症の硝子体注入単独治療に、特に有利に使用することができる。
【実施例】
【0082】
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0083】
なお、各実施例および各比較例で用いる吸着材のリジン固定化量は、第14改正日本薬局方〔窒素定量法(セミミクロケルダール法)〕に従って測定した。また、各実施例および各比較例で用いる吸着材の平均粒径は、吸着材について精密粒子分布測定装置〔ベックマンコールター(株)製、商品名「コールターマルチサイザーII」〕で粒度分布を測定し、粒子数が最も多い粒径で示す。
【0084】
実施例1
リジンが固定化されたポリヒドロキシエチルメタクリレート系粒子(リジン固定化量:50μmol/g、平均粒径18μm)を50mMリン酸緩衝液(pH7.2)で処理した後、湿潤状態でその粒子をポリエチレン製カラム(長さ25mm、直径8mmの円筒)内に充填し、オス型ルアーロック口を有するキャップおよびメス型ルアーロック口を有するキャップを嵌めることにより、吸着器を作製した。
【0085】
この吸着器を図1に示される吸着部4として用い、図1に示される血液成分回収装置を組み立てた。
【0086】
なお、血液吐出機構1として、シリンジポンプに装着した50mL容のシリンジを用いた。血液として、ヒトから採取した血液(全血)を室温で3000rpm、15分間遠心分離させることによって得られた血漿10mLを用い、これを前記シリンジに注入した。
【0087】
洗浄液吐出機構2として、洗浄液〔0.5M塩化ナトリウムを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.2)〕10mLを充填した50mL容のシリンジを用いた。なお、該シリンジはシリンジポンプに装着した。
【0088】
溶出液吐出機構3として、溶出液〔0.2Mε−アミノカプロン酸と0.1M塩化ナトリウムを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.2)〕10mLを充填した50mL容のシリンジを用いた。なお、該シリンジはシリンジポンプに装着した。
【0089】
また、脱塩液吐出機構として、脱塩液(生理食塩水)10mLを充填した50mL容のシリンジを用いた。なお、該シリンジはシリンジポンプに装着した。
【0090】
血液成分回収部7として溶媒吸収型濃縮器〔ザルトリウス(株)製、商品名「ビバポア」〕を用い、廃液回収部5として廃液回収用の100mL容のシリンジを用いた。血液吐出機構1から血液成分回収部7に至るまでの流体流路上に、4個の三方コック8a、8b、8cおよび8dを配し、チューブ〔テルモ(株)製、商品名:サフィード延長チューブ〕で各部材を接続した。
【0091】
各三方コックのバルブを切り換えることにより、血液吐出機構1と吸着部4との間の流路および吸着部4と廃液回収部5との間の流路を形成させた。血液吐出機構1(血漿10mLを入れたシリンジ)から血漿を120mL/hrの流量で吸着部4に送液し、吸着部4を通過した廃液を廃液回収部5(シリンジ)で回収した。
【0092】
次に、各三方コックのバルブを切り換えることにより、洗浄液吐出機構2と吸着部4との間の流路および吸着部4と廃液回収部5との間の流路を形成させた。洗浄液吐出機構2〔洗浄液(0.5M塩化ナトリウムを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.2))10mLを充填したシリンジ〕から洗浄液を流量120mL/hrで5分間通液し、吸着部4を通過した廃液を廃液回収部5(シリンジ)で回収した。
【0093】
さらに、各三方コックのバルブを切り換えることにより、溶出液吐出機構3と吸着部4との間の流路および吸着部4と血液成分回収部7との間の流路を形成させた。溶出液吐出機構3〔溶出液(0.2Mε−アミノカプロン酸と0.1M塩化ナトリウムを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.2))10mLを充填したシリンジ〕から溶出液を流量120mL/hrで5分間通液し、吸着部4を通過した溶出液を血液成分回収部7(溶媒吸収型濃縮器)で回収した。
【0094】
血液成分回収部7(溶媒吸収型濃縮器)内に捕集された血液成分含有溶液を30分間静置することによって溶液を濃縮させ、液量を1mL程度に減少させた。この時点で、各三方コックのバルブを切り換えることにより、脱塩液吐出機構6と血液成分回収部7との間の流路を形成させた。脱塩液吐出機構6〔脱塩液(生理食塩水)10mLを充填したシリンジ〕から脱塩液を流量120mL/hrで5分間、血液成分回収部7(溶媒吸収型濃縮器)に通液することにより脱塩操作を行い、血液成分回収部7内の溶液の量が0.5mLになった時点で、血液成分排出手段10(シリンジ)を用いて、血液成分回収部7から溶液全量を抜き取った。このようにして、ε−アミノカプロン酸が除去された濃縮液を0.5mL得た。
【0095】
血液吐出機構1に供したものと同じ血漿および脱塩操作後に得られた濃縮液のそれぞれについて、プラスミノーゲン活性をプラスミノーゲン活性測定キット〔和光純薬工業(株)製、商品名「テストチーム」(登録商標)、品番:PLG−2〕を用いて測定した。なお、測定方法は、そのキットに付属されている取扱説明書に従った。
【0096】
実施例2
吸着材として、リジンが固定化されたポリヒドロキシエチルメタクリレート系粒子(リジン固定化量:170μmol/g、平均粒径:208μm)を用いた以外は、実施例1と同様の装置を使用し、同様の操作を行った。
【0097】
実施例3
吸着材として、リジンが固定化されたポリヒドロキシエチルメタクリレート系粒子(リジン固定化量:170μmol/g、平均粒径:208μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着器を作製し、実施例1と同様の血液成分回収装置を組み立てた。
【0098】
次に、ヒトから採取した血液(全血)20mLをそのまま用いた以外は、実施例1と同様の操作で、脱塩処理された濃縮液を取得し、そのプラスミノーゲン活性を測定した。
【0099】
なお、血液吐出機構1に供した血液のプラスミノーゲン活性は、採取した血液(全血)を遠心分離することによって得られた血漿を試料として、プラスミノーゲン活性測定キット〔和光純薬工業(株)製、商品名「テストチーム」(登録商標)、品番:PLG−2〕を用いて測定した。測定方法は、そのキットに付属されている取扱説明書に従った。
【0100】
比較例1
リジンが固定化されたポリヒドロキシエチルメタクリレート系粒子(リジン固定化量:50μmol/g、平均粒径:18μm)を50mMリン酸緩衝液(pH7.2)で処理し、湿潤状態でその粒子の容量をメスシリンダーで計量した後、ガラス製カラム(長さ10mm、直径5mmの円筒)内に充填した。
【0101】
このカラム(吸着器)の粒子充填層の上面に、ヒトから採取した血液(全血)を遠心分離して得られた血漿10mLを、カラムから溢れないように徐々に注入し、重力によりカラム内を通過させた。
【0102】
その後、洗浄液〔0.5M塩化ナトリウムを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.2)〕10mLを血漿と同様に徐々に注入し、カラム内を通過させた。さらに、溶出液〔0.2Mε−アミノカプロン酸と0.1M塩化ナトリウムを含有する50mMリン酸緩衝液(pH7.2)〕10mLも同様に徐々に注入してカラム内を通過させ、カラムを通過した溶出液を1mLずつの分画に分けながら採取した。初めの1mLの分画から4mLの分画までを混合し、それを脱塩カラム〔脱塩クロマトグラフィー樹脂(アマシャムバイオサイエンス(株)製、商品名「セファデックスG−25」)を50mMリン酸緩衝液(pH7.2)で湿潤化および平衡化させた後、その60mLをメスシリンダーで計量してガラス製カラム(長さ20cm、直径25mm)に充填したもの〕に注入することでε−アミノカプロン酸を除去した。さらに脱塩処理後の溶液10mLを遠心式限外ろ過器〔アミコン社製、商品名:セントリコンYM−10〕に入れ、遠心機で3000rpm、150分間遠心して、濃縮液500μLを回収した。
【0103】
実施例1と同様にして、カラムに供したものと同じ血漿および得られた濃縮液のそれぞれについて、プラスミノーゲン活性を測定した。
【0104】
各実施例および比較例でそれぞれ得られたプラスミノーゲン活性測定結果から、プラスミノーゲン回収率を式:
〔プラスミノーゲン回収率〕(%)=〔〔プラスミノーゲン活性値1〕/〔プラスミノーゲン活性値2〕〕×100
(式中、「プラスミノーゲン活性値1」は最終的に得られた濃縮液におけるプラスミノーゲン活性値を示し、「プラスミノーゲン活性値2」はカラム(吸着器)通過前の血液におけるプラスミノーゲン活性値を示す)
に基づいて求めた。それらの結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
なお、表1中の「所要時間」は、ヒトからの血液(全血)採取完了時から、脱塩処理された濃縮液の取得完了時に至るまでに時間を意味する。
【0107】
本発明の実施例1〜3の血液成分回収装置によれば、一体の装置で血液成分の回収が可能であるため、工程ごとに装置を使い分けるという本発明の範囲外である比較例1と対比して、操作がはるかに簡便化されていることは明白である。また、同様の観点から、本発明の実施例1〜3の血液成分回収装置は、比較例1と比較して、取得された血液成分が細菌などの汚染を受けにくいため、治療用血液成分採取の目的に好適である。
【0108】
また、表1に示された結果から、本発明の実施例1〜3の血液成分回収装置を使用した場合には、本発明の範囲外である比較例1と対比して、より短時間でプラスミノーゲン(血液成分)を回収することができ、取得されたプラスミノーゲン含有液のプラスミノーゲン活性およびプラスミノーゲン回収率も遜色ないことがわかる。また、本発明の実施例3では、採取した全血を遠心分離操作に付することなく血液成分回収装置に供しているため、所要時間が特に短縮されている。
【0109】
以上の結果から、本発明の血液成分回収装置を用いれば、簡便な操作で血液から血液成分を回収することができることがわかる。また、本発明の血液成分回収装置を用いれば、血液成分に対する汚染の可能性を低減でき、所要時間の短縮にも有効となる場合があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の血液成分回収装置は、血液から所望の血液成分を回収する目的で使用されるものであり、プラスミノーゲンなどの有用物質の回収に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の血液成分回収装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0112】
1 血液吐出機構
2 洗浄液吐出機構
3 溶出液吐出機構
4 吸着部
5 廃液回収部
6 脱塩液吐出機構
7 血液成分回収部
8a 機構(イ)(三方コックA)
6b 機構(イ)(三方コックB)
8c 機構(ロ)(三方コックC)
8d 機構(ハ)(三方コックD)
9 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を吐出するための血液吐出機構、洗浄液を吐出するための洗浄液吐出機構、溶出液を吐出するための溶出液吐出機構、血液から血液成分を吸着するための吸着部、廃液を回収するための廃液回収部、および血液成分を回収するための血液成分回収部を有する血液成分回収装置。
【請求項2】
(1)血液を吐出するための血液吐出機構、洗浄液を吐出するための洗浄液吐出機構、溶出液を吐出するための溶出液吐出機構、血液から血液成分を吸着するための吸着部、廃液を回収するための廃液回収部、および血液成分を回収するための血液成分回収部を有し、さらに
(2)該血液吐出機構、該洗浄液吐出機構および該溶出液吐出機構を択一的に該吸着部に連通させることを可能にする機構(イ)、および
(3)該廃液回収部および該血液成分回収部を択一的に該吸着部に連通させることを可能にする機構(ロ)
を備えてなる血液成分回収装置。
【請求項3】
前記吸着部が流体入口部および流体出口部を備えており、該流体入口部側に前記機構(イ)が配され、該流体出口部側に前記機構(ロ)が配された請求項2記載の血液成分回収装置。
【請求項4】
系外と遮断された構造を有する請求項1〜3いずれか記載の血液成分回収装置。
【請求項5】
前記血液成分回収部が濃縮機能を備えている請求項1〜4いずれか記載の血液成分回収装置。
【請求項6】
前記濃縮機能が限外ろ過方式による濃縮機能である請求項5記載の血液成分回収装置。
【請求項7】
脱塩液を吐出するための脱塩液吐出機構、および前記血液成分回収部と該脱塩液吐出機構との連通の開閉を可能にする機構(ハ)を備えている請求項6記載の血液成分回収装置。
【請求項8】
前記機構(ハ)が前記機構(ロ)と前記血液成分回収部との間に位置し、前記機構(ロ)および前記機構(ハ)が協働して、前記血液成分回収部と前記脱塩液吐出機構との連通を遮断した状態で前記血液成分回収部と前記吸着部とを連通させる機能、および前記血液成分回収部と前記吸着部との連通を遮断した状態で前記血液成分回収部と前記脱塩液吐出機構とを連通させる機能を有する請求項7記載の血液成分回収装置。
【請求項9】
前記吸着部が流体入口部および流体出口部を備えており、前記血液吐出機構および前記洗浄液吐出機構が三方コックAで接続され、該三方コックAの他端が三方コックBと接続され、該三方コックBの他の2端がそれぞれ前記溶出液吐出機構および前記吸着部の流体入口部と接続され、前記吸着部の流体出口部が三方コックCと接続され、該三方コックCの他の2端がそれぞれ前記廃液回収部および三方コックDと接続され、該三方コックDの他の2端がそれぞれ前記脱塩液吐出機構および前記血液成分回収部と接続されてなる請求項8記載の血液成分回収装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−160731(P2006−160731A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326938(P2005−326938)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(301069384)クラレメディカル株式会社 (110)
【出願人】(504417733)
【Fターム(参考)】