説明

血液成分測定装置

【課題】 血液成分検出ユニットを交換しても、その測定処理を確認して間違えずに血液成分を測定できる。
【解決手段】 腕時計ケース1に血液成分検出ユニット5を着脱可能に装着し、この血液成分検出ユニット5の穿刺部で第1の指を穿刺し、この第1の指から血液を血液採取部で採取すると、この採取された血液の成分を血液成分検出部20で検出する。従って、腕に装着した状態で良好に血液成分を測定することができるほか、腕時計ケース1に対し血液成分検出ユニット5が着脱可能であるから、血液成分検出ユニット5を簡単に交換することができる。また、血液成分検出ユニット5を交換しても、識別情報記憶部35に記憶された識別情報によって交換した血液成分検出ユニット5の種類や機能などの情報を知ることができると共に、この識別情報に基づいて測定処理を容易に変更することができ、これにより測定処理を確認して間違えずに血液成分を測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、指先から血液を採取して血液成分を検出測定する血液成分測定装置に関し、更に詳しくは腕時計のように腕に装着して使用することのできる腕装着型の血液成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血液中のブドウ糖を検出して血糖値を測定する血液成分測定装置においては、使用者が自分自身で容易に血糖値を測定できることが要望されている。これに応えるために、特許文献1の血液成分測定装置は、装置本体の表面に設けられた指当て部に指を当てがい、この指を穿刺部で穿刺して指先から血液を採取し、この採取した血液を試験紙に滲み込ませ、この滲み込んだ血液が試験紙に展開して血液中のブドウ糖量に応じて試験紙を呈色させ、この試験紙の呈色を光学素子で測定することにより、血液中のブドウ糖量に応じた血糖値を測定結果として表示部に表示させるように構成されている。
【特許文献1】特開2002−34956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の血液成分測定装置では、血液中のブドウ糖を検出して血糖値を測定しているが、血液中の酸素やイオンなどの物質を検出して酸素飽和度やイオン濃度などの血糖値以外の血液成分を測定する場合、その都度、使用者が試験紙を交換して光学素子による測定処理を変更しなければならず、このため測定処理を変更する操作が面倒であるばかり、試験紙を間違えたり、あるいは試験紙に応じた処理設定を間違えたりするなどの問題がある。
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、血液成分検出ユニットを交換して測定する血液成分を変更しても、その測定処理を確認して間違えずに血液成分を測定することができる血液成分測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
なお、各構成要素には、後述する各実施形態の項で説明される各要素に付されている図面の参照番号などを括弧と共に付す。
【0006】
請求項1に記載の発明は、図1〜図10に示すように、腕装着型の装置本体(腕時計ケース1)に血液成分検出ユニット(5)を着脱可能に装着し、この血液成分検出ユニットで指先から血液を採取して血液成分を測定する血液成分測定装置において、前記血液成分検出ユニットは、第1の指(15)が置かれる載置部(指載置部16)と、この載置部に置かれた前記第1の指を穿刺する穿刺部(18)と、この穿刺部で穿刺された前記第1の指から血液を採取する血液採取部(19)と、この血液採取部で採取された血液の成分を検出する血液成分検出部(20)とを備えているほか、前記血液成分検出ユニットの識別情報を記憶した識別情報記憶部(35、50)をも備えていることを特徴とする血液成分測定装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、図1〜図10に示すように、前記装置本体(腕時計ケース1)が、腕に装着するためのバンド(時計バンド2)と、情報を表示するための表示部(表示パネル11)と、前記第1の指(15)と異なる第2の指で操作される測定開始用の操作スイッチ(6)とを備えているほか、装着された前記血液成分検出ユニット(5)の前記識別情報記憶部(35、50)に記憶された識別情報に基づいて血液測定を制御する制御部(メイン制御部36およびサブ制御部37)を備えていることを特徴する請求項1に記載の血液成分測定装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、図1〜図9に示すように、前記血液成分検出部(20)が、前記血液採取部(19)で採取された血液の成分を検出する複数のセンサ(血糖値センサ30、酸素飽和度センサ31、イオン濃度センサ32)を有し、前記制御部(メイン制御部36およびサブ制御部37)が、前記識別情報記憶部(35)に記憶された識別情報に基づいて前記血液成分検出部の前記複数のセンサをそれぞれ制御することを特徴する請求項2に記載の血液成分測定装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、図1〜図10に示すように、前記制御部(メイン制御部36およびサブ制御部37)が、前記識別情報記憶部(50)に記憶された識別情報に基づいて前記装置本体(腕時計ケース1)内の内部回路の制御値および制御条件を選択して前記血液成分検出部(20)を駆動することを特徴する請求項2または3に記載の血液成分測定装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、腕装着型の装置本体に血液成分検出ユニットを装着し、この血液成分検出ユニットの載置部に第1の指を置いて穿刺部で穿刺すると、血液採取部が第1の指から血液を採取し、この採取した血液の成分を血液成分検出部で検出するので、装置本体を腕に装着した状態で、良好に血液成分を測定することができるほか、装置本体に対して血液成分検出ユニットが着脱可能であるから、血液成分検出ユニットを簡単に且つ容易に交換することができる。
【0011】
この場合、血液成分検出ユニットを交換しても、その血液成分検出ユニットの識別情報記憶部に記憶された識別情報によって、交換した血液成分検出ユニットの種類や機能などの情報を知ることができると共に、識別情報記憶部に記憶された識別情報に基づいて測定処理を容易に変更することが可能になり、これにより血液成分検出ユニットを交換して測定する血液成分を変更しても、測定処理を確認して間違えずに血液成分を測定することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、装置本体が、腕に装着するためのバンドと、情報を表示するための表示部と、第1の指と異なる第2の指で操作される測定開始用の操作スイッチとを備えているので、バンドによって装置本体を簡単に腕に装着することができると共に、第1の指を血液成分検出ユニットの載置部に置いた状態で第2の指で操作スイッチを容易に操作して血液成分測定を開始することができるほか、血液成分検出部で検出された血液成分の測定結果を表示部に表示させて速やかに測定結果を知ることができる。
【0013】
この場合、特に装着された血液成分検出ユニットの識別情報記憶部に記憶された識別情報に基づいて血液測定を制御する制御部を備えているので、識別情報記憶部に記憶された識別情報に基づいて制御部が血液成分検出ユニットに応じて血液測定を制御することができ、これにより血液成分検出ユニットを交換しても自動的に測定処理を変更することができ、このため測定処理を間違えずに血液成分検出ユニットに応じて血液成分を正確に且つ確実に測定することができるので、使い勝手の良いものを得ることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、血液成分検出部が血液採取部で採取された血液の成分を検出する複数のセンサを有し、制御部が識別情報記憶部に記憶された識別情報に基づいて血液成分検出部の複数のセンサをそれぞれ制御することにより、血液成分検出ユニットを交換しても、制御部が識別情報記憶部の識別情報に基づいて自動的に、交換した血液成分検出ユニットに応じて複数のセンサをそれぞれ制御することができ、このため血液成分検出ユニットを交換しても測定処理を間違えずに、交換した血液成分検出ユニットに応じて血液成分を正確に且つ確実に測定することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、制御部が識別情報記憶部に記憶された識別情報に基づいて装置本体内の内部回路の制御値および制御条件を選択して血液成分検出部を駆動することにより、血液成分検出ユニットを交換しても、制御部が自動的に装置本体内の内部回路の制御値および制御条件を選択して血液成分検出部を駆動することができ、これにより血液成分検出ユニットを交換しても測定処理を間違えずに、交換した血液成分検出ユニットに応じて制御値および制御条件で血液成分を正確に測定することができる。この場合、識別情報記憶部には、装置本体内の内部回路の制御値および制御条件を選択する識別情報と、請求項3に記載した発明と同様に複数のセンサを制御するための識別情報との両方の識別情報を有していれば、より一層、血液成分を高い精度で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、図1〜図9を参照して、この発明の血液成分測定装置を腕時計に適用した実施形態1について説明する。
図1はこの発明を適用した腕時計の正面図、図2はその使用状態を示した斜視図、図3は図1のA−A矢視における要部の拡大断面図である。
この腕時計は、図1および図2に示すように、腕時計ケース1を備え、この腕時計ケース1の12時と6時の各外端部に時計バンド2がそれぞれ取り付けられ、この時計バンド2によって腕時計ケース1が腕に着脱自在に取り付けられるように構成されている。
【0017】
この腕時計ケース1の上部には、図1〜図3に示すように、時計ガラス3がパッキン3aを介して装着されており、この腕時計ケース1の上部における3時側には、図1および図3に示すように、ユニット装着部4が設けられている。このユニット装着部4は、図3に示すように、上方に開口された凹部状に形成され、後述する血液成分検出ユニット5が着脱可能に装着するように構成されている。このユニット装着部4の手前側(図1では下側)に位置する腕時計ケース1の6時側の上面には、図1および図2に示すように、血液成分の測定開始用の操作スイッチ6が設けられている。
【0018】
また、この腕時計ケース1の内部には、図3に示すように、時計モジュール7が収納されており、この腕時計ケース1の下面には、裏蓋8が防水リング8aを介して取り付けられている。さらに、この腕時計ケース1の9時側に位置する側面には、図1および図2に示すように、時計モードや血液成分の測定モードなどの各種のモードを切り替えるモード切替、およびアラーム時刻を設定するアラーム設定などの各種の操作を行うための複数の押釦スイッチ14が設けられている。
【0019】
時計モジュール7は、図3に示すように、ハウジング10の上部に表示パネル11が時計ガラス3に対応して設けられ、ハウジング10の下面にインターコネクタ12を介して表示パネル11が電気的に接続される回路基板13が配置された構成になっている。表示パネル11は、液晶表示素子やEL素子(エレクトロルミネッセンス表示素子)などの平面型の表示素子からなり、時刻などの情報や後述する血液成分などの情報を選択的に表示するように構成されている。また、回路基板13には、時計機能や通信機能、および情報を記憶するためなどに必要な各種の電子部品13a(例えば、LSI、記憶素子、アンテナなどの電子部品)が搭載されている。
【0020】
すなわち、この時計モジュール7は、図7に示すように、表示部である表示パネル11を備えている時計機能部7aと、外部機器との間で血液情報を含む各種のデータの通信を行う通信機能部7bとを有し、図1および図2に示すように、表示パネル11に時刻や血液成分などの各種の情報を表示し、且つ通信機能部7bによって標準時刻電波を受信して自動的に内蔵されている時刻機能部7aにおける現在時刻を修正すると共に、パーソナルコンピュータなどの外部機器(図示せず)に後述する血液成分検出ユニット5で検出した血液成分などの情報を送信するように構成されている。
【0021】
一方、血液成分検出ユニット5は、図1〜図4に示すように、腕時計ケース1のユニット装着部4に着脱可能に装着され、この状態で第1の指(この例では人差し指であるが、中指、薬指などでも良い)の指先15が上方から押し当てられ、この押し当てられた指先15の皮膚を穿刺して採血し、この採血した血液成分を検出するように構成されている。この場合、血液成分検出ユニット5は、図4に示すように、指先15を載置する指載置部16が設けられたユニットケース17を備えている。なお、この血液成分検出ユニット5は、予め多数用意されていており、血液測定の都度、腕時計ケース1のユニット装着部4から交換するようにしても、また、予め定められている回数だけ血液測定してから交換するようにしても良い。
【0022】
ユニットケース17の内部には、図4に示すように、指載置部16に載置された指先15の皮膚を穿刺する穿刺部18と、この穿刺部18によって穿刺した指先15から血液を採取する血液採取部19と、この血液採取部19で採血した血液の成分を検出する血液成分検出部20と、この血液成分検出部20で血液成分が検出された使用済みの血液を吸収して保管する血液保管部21と、血液採取部19および血液成分検出部20がそれぞれ電気的に接続されるユニット回路基板34とを備えている。
【0023】
穿刺部18は、図5および図6に示すように、指先15の表面の皮膚が接触する接触筒22と、この接触筒22内に移動可能に配置されたスライダ23と、このスライダ23に設けられて指先15の皮膚を穿刺する穿刺針24と、スライダ23を押し出す方向に向けて付勢するばね機構(図示せず)とを備え、接触筒22の先端部(図5では上端部)がユニットケース17の指載置部16に設けられた開口部16aに対応した状態で、図4に示すように、血液採取部19の後述する減圧室25内に配置されている。
【0024】
すなわち、この穿刺部18は、図5に示すように、指先15を指載置部16に配置して開口部16aを塞いだときに、指先15の表面の皮膚が開口部16aを通して接触筒22の先端部に押し当てられ、この押し当てられた指先15によって接触筒22が押し下げられることにより、ばね機構のばねが圧縮されてロックされ、この状態で操作スイッチ6が操作されると、ばね機構のばねのロックが解除され、圧縮されたばね圧によって図6に示すようにスライダ23が押し上げられ、これにより穿刺針24が上方に移動して指先15の表面の皮膚を穿刺するように構成されている。
【0025】
また、この穿刺部18は、図6に示すように、穿刺針24の先端が接触筒22の先端面とほぼ同じ位置に押し上げられて指先15の皮膚を穿刺したときに、ストッパ部(図示せず)によってスライダ23が停止されると共に、指先15の皮膚を穿刺した穿刺針24がばね機構のばねの減衰振動によって指先15の皮膚から離れ、この状態で指先15の皮膚から血液を滲出させるように構成されている。なお、この穿刺部18は、再度、指先15の皮膚を穿刺する場合、指先15を指載置部16から一旦離し、再び指先15を指載置部16に配置して接触筒22の先端部に押し当てれば、上記と同様、ばね機構のばねが圧縮されてロックされ、これにより穿刺針24による穿刺の準備がなされるように構成されている。
【0026】
血液採取部19は、図4に示すように、穿刺部18を収納する減圧室25と、この減圧室25内を減圧状態にする減圧ポンプ26とからなり、穿刺部18によって穿刺した指先15から血液を採取するように構成されている。この場合、減圧ポンプ26は、ピエゾ素子などの圧電素子を用い、この圧電素子の振動を利用して、減圧室25内を減圧させるように構成されている。これにより、血液採取部19は、減圧ポンプ26によって減圧室25内が減圧されることにより、指先15の皮膚から血液を滲出し易くして減圧室25内に取り込むように構成されている。
【0027】
また、減圧室25には、採取した血液が流れ込む血液流路27が連続して設けられている。この血液流路27内には、図4に示すように、減圧室25側から順に、逆流防止弁28、マイクロチャネル29、および血液成分検出部20が設けられている。逆流防止弁28は、減圧室25と血液流路27との境界部分に設けられて、減圧室25内から血液流路27内に送り込まれた血液が逆流するのを防ぐように構成されている。マイクロチャネル29は、逆流防止弁28を介して血液流路27に送り込まれた血液に必要な試薬を混合し、この血液を血液成分検出部20側へ輸送するように構成されている。
【0028】
血液成分検出部20は、図4に示すように、血液中のブドウ糖を検出する血糖値センサ30と、血液中の酸素を検出する酸素飽和度センサ31と、血液中のCa、K、Na、pH(ペーハー)などを検出するイオン濃度センサ32とを備えている。この場合、血液成分検出部20は、これらセンサ30〜32の全てが検出動作する必要はなく、血液成分検出ユニット5の種類に応じて、各センサ30〜32のうちの少なくともいすれかが検出動作するように構成されている。
【0029】
すなわち、この血液成分検出部20は、各センサ30〜32のうち、血糖値センサ30、酸素飽和度センサ31、イオン濃度センサ32のいずれか1つのみが検出動作するもの、または血糖値センサ30と酸素飽和度センサ31とが検出動作するもの、血糖値センサ30とイオン濃度センサ32とが検出動作するもの、酸素飽和度センサ31とイオン濃度センサ32とが検出動作するもの、あるいは各センサ30〜32の全てが検出動作するものなど、血液成分検出ユニット5の種類に応じて機能の異なる複数の種類が用意されており、そのいずれかを使用者が選択して使用するように構成されている。なお、この血液成分検出部20は、各センサ30〜32に限られず、更に別なセンサを設けても良い。
【0030】
また、この血液成分検出部20は、各センサ30〜32がそれぞれユニットケース7内のユニット回路基板34と電気的に接続されており、血液成分検出ユニット5には、ユニット回路基板34に設けられた識別情報記憶部35に血液成分検出ユニット5の識別情報(ID情報)が記憶されている。すなわち、この識別情報記憶部35は、ユニット回路基板34に設けられた識別情報用のROMであり、血液成分検出ユニット5の製造番号などの識別情報のほかに、後述する血液成分検出ユニット5の血液成分機能を含む各種の個別情報が識別情報として記憶されている。
【0031】
血液保管部21は、図4に示すように、ユニットケース17に着脱可能に装着され、血液成分検出部20で検査された使用済みの血液が血液流路27から流れ込み、この流れ込んだ使用済みの血液を吸収して保管するように構成されている。この血液保管部21は、予め、複数個、用意され、一回の血液測定の都度、交換できるように構成されている。なお、この血液保管部21は、血液測定を所定回数行ったときに交換できるように構成されていても良い。
【0032】
さらに、この血液成分検出ユニット5は、図4に示すように、ユニットケース17の下面に血液成分検出ユニット側接続端子である駆動用接続電極33aとデータ用接続電極33bとがユニットケース17内のユニット回路基板34と電気的に接続された状態で設けられ、ユニットケース17が腕時計ケース1のユニット装着部4に装着されたときに、ユニット装着部4内の装置本体側接続端子である各接続電極4a、4bと電気的に接続され、これによりユニット回路基板34が腕時計ケース1内の回路基板13と電気的に接続されるように構成されている。
【0033】
次に、このような腕時計の血液成分検出装置の回路構成について、図7に示されたブロック図を参照して説明する。
腕時計ケース1内には、回路全体の動作を制御するCPUなどのメイン制御部36と、血液成分検出ユニット5の動作を制御するCPUなどのサブ制御部37とを備えている。メイン制御部36は、制御用ROM39に記憶されたプログラムに従って時計モジュール7の時計機能部7aおよび通信機能部7bなどの回路全般を制御し、通常は時計モードで時計機能部7aに基づいて表示パネル11に現在時刻などの時刻情報を表示し、押釦スイッチ14の操作によって血液成分測定モードになると、サブ制御部37を制御する。
【0034】
このサブ制御部37は、腕時計ケース1に装着された血液成分検出ユニット5内の識別情報用ROMである識別情報記憶部35から血液成分検出ユニット5の識別情報(ID情報)を読み取り、この識別情報をメイン制御部36に送り、RAM44に記憶すると共に、読み取った識別情報に基づいて、血液成分を測定する回路全般を制御する。すなわち、このサブ制御部37は、識別情報に基づいて、減圧ポンプ26を駆動するポンプ駆動回路40と、マイクロチャネル29を駆動するチャネル駆動回路41と、血液成分検出部20を駆動するセンサ駆動回路42と、血液成分検出部20で検出された検出結果に基づいて演算処理をする測定部43とを制御する。
【0035】
この測定部43は、A/D変換器からなり、血液成分検出部20で検出されたアナログデータをデジタルデータに変換して血液成分データとしてメイン制御部36に出力する。メイン制御部36は、測定部43からの血液成分データをRAM44に記憶すると共に、表示パネル11に表示する。なお、メイン制御部36は、サブ制御部37から与えられた識別情報記憶部35の識別情報に基づいて電源38の電力供給(電圧値)をも制御する。
【0036】
この場合、血液成分検出ユニット5は、予め多数用意され、そのそれぞれの識別情報記憶部35に製造番号などの個別の識別情報が記憶されている。すなわち、血液成分検出ユニット5の血液成分検出部20は、前述したように、血糖値センサ30、酸素飽和度センサ31、イオン濃度センサ32を備えているが、これらセンサ30〜32の全てが検出動作するとは限らず、例えば血糖値センサ30、酸素飽和度センサ31、イオン濃度センサ32のいずれか1つ、またはいずれか2つが検出動作するもの、あるいは各センサ30〜32の全てが検出動作するものなど、血液成分検出ユニット5の種類に応じて血液成分検出部20の測定機能が異なる複数の種類が用意されている。
【0037】
このため、血液成分検出ユニット5の識別情報記憶部35には、各血液成分検出ユニット5の個別の識別情報がユニット番号ごとにそれぞれ記憶されている。例えば、図9に示すように、血液成分検出ユニット5のユニット番号がM1の場合には、血糖値センサ30のみが検出動作する識別情報が識別情報記憶部35に記憶されており、ユニット番号がM2の場合には、酸素飽和度センサ31のみが検出動作する識別情報が識別情報記憶部35に記憶されている。同様に、ユニット番号がMnの場合には、各センサ30〜32の全てが検出動作する識別情報が識別情報記憶部35に記憶されている。これにより、サブ制御部37は、血液成分検出ユニット5を交換するたびに、識別情報記憶部35に記憶された識別情報(M1〜Mn)を読み取り、読み取った識別情報に応じて、血液成分の測定処理を選択する。
【0038】
次に、この腕時計の血液成分検出装置の動作フローについて、図8を参照して説明する。
この場合には、予め、血液成分検出ユニット5を腕時計ケース1のユニット装着部4に装着し、この腕時計ケース1を時計バンド2で腕に装着して固定する。この状態で、押釦スイッチ14を操作して血液成分の測定モードにすると、血液成分の測定動作を開始する。このときには、まず、サブ制御部37が血液成分検出ユニット5の識別情報記憶部35に記憶された識別情報を読み取り(ステップS1)、この識別情報に基づいて血液成分検出ユニット5の種類つまり血液成分検出部20の測定機能を認識し、血液成分の測定処理を選択して設定する。
【0039】
この後、ユニットケース17の指載置部16に指先15を押し当て、この指先15によって穿刺部18の先端部を押し込むことにより、穿刺部18のばね機構(図示せず)のばねが圧縮されてロックされる。この状態で、腕時計ケース1の操作スイッチ6を操作すると、血液成分検出ユニット5の穿刺部18のばね機構のロックが解除され、このばね機構のばね圧によって穿刺部18のスライダ23が押し上げられるので、穿刺針24が接触筒22内から押し出され、これにより穿刺針24が指先15の表面の皮膚を穿刺する(ステップS2)。そして、この穿刺針24がばね機構のばねの減衰振動によって指先15の皮膚から離れると、指先15の皮膚から血液が滲出する。
【0040】
このように指先15から血液が滲出すると、血液採取部19の減圧ポンプ26が動作して穿刺部18を含む減圧室25内を減圧し、穿刺部18で穿刺された指先15の皮膚から血液を採取し易くして血液採取部19の減圧室25内に取り込む(ステップS3)。そして、減圧室25内に取り込まれた血液が逆流防止弁28を通して血液流路27に流れ込むと、マイクロチャネル29の部分を通過した血液は、血液流路27を通って、血液成分検出部20側へ送り込まれる。このときに、血液が採取されたかを判断し(ステップS4)、血液が血液成分検出部20に送り込まれていなければ、ステップS2に戻って上記動作を繰り返す。
【0041】
また、マイクロチャネル29を通って血液成分検出部20に血液が送り込まれると、ステップS4で血液採取が行われたと判断され、減圧ポンプ26を停止し(ステップS5)、減圧状態を解除して穿刺部18および減圧室25を大気圧に復帰させる(ステップS6)。このときには、ユニットケース17の指載置部16に載置された指先15に吸引感がなくなるので、指先15を指載置部16から離すことができる。この後、血液流路27内の血液成分検出部20によって血液の成分を検出する(ステップS7)。このときには、サブ制御部37が血液成分検出ユニット5の識別情報記憶部35に記憶された識別情報に基づいて血液成分検出部20を制御する。
【0042】
例えば、腕時計ケース1に装着された血液成分検出ユニット5のユニット番号がMnの場合には、サブ制御部37が血液成分検出部20の全てのセンサ30、31、32を制御する。これにより、血液成分検出部20の血糖値センサ30で血液中のブドウ糖を検出し、酸素飽和度センサ31で血液中の酸素を検出し、イオン濃度センサ32で血液中のCa、K、Na、pHなどのイオンを検出し、これらの検出結果に基づいて測定部43で血糖値、酸素飽和度、イオン濃度、ペーハーを測定する。
【0043】
また、このときに、例えば血液成分検出ユニット5のユニット番号がMn以外の場合には、血液成分検出部20の各センサ30、31、32のうち、いずれか1つ、またはいずれか2つを組み合わせて血液成分を検出するので、血糖値センサ30で血液中のブドウ糖、酸素飽和度センサ31で血液中の酸素、イオン濃度センサ32で血液中のCa、K、Na、pHなどのイオンのいずれか1つ、またはいずれか2つを検出し、これらの検出結果に基づいて測定部43で血糖値、酸素飽和度、イオン濃度、ペーハーのいずれか1つ、またはいずれか2つを測定する。
【0044】
そして、測定部43で測定された血糖値、酸素飽和度、イオン濃度などの血液成分データをメイン制御部36によって腕時計ケース1内のRAM44に記憶すると共に、腕時計ケース1の表示パネル11に表示する(ステップS8)。このときには、測定部43で測定された血糖値、酸素飽和度、イオン濃度などの血液成分データほかに、血液成分の測定プロセスの進行状態(たとえば、測定エラー表示、測定合格表示、測定例)を表示させるようにしても良い。
【0045】
この後、血液成分検出部20で検査された使用済みの血液が血液保管部21に送り込まれ、この血液保管部21に保管され、このフローを終了する。なお、記憶素子であるRAM44に記憶された血糖値、酸素飽和度、イオン濃度などの血液成分データは、腕時計ケース1内の通信機能部7bによってパーソナルコンピュータなどの外部機器に送信される。これにより、外部機器で血液成分データの管理およびこれらのデータ処理が行われる。
【0046】
このように、この腕時計によれば、腕に装着する腕時計ケース1に血液成分検出ユニット5を着脱可能に装着し、この血液成分検出ユニット5の指載置部16に第1の指先15を置いて穿刺部18で穿刺すると、血液採取部19が第1の指先15から血液を採取し、この採取された血液の成分を血液成分検出部20で検出するので、腕時計ケース1を腕に装着した状態で、良好に血液成分を測定することができる。特に、腕時計ケース1に対して血液成分検出ユニット5が着脱可能であるから、血液成分検出ユニット5を簡単に且つ容易に交換することができる。
【0047】
この場合、血液成分検出ユニット5を交換しても、識別情報記憶部35に記憶された識別情報によって、交換した血液成分検出ユニット5の種類や機能などの情報を知ることができると共に、この識別情報記憶部35に記憶された識別情報に基づいて測定処理を容易に変更することが可能になり、これにより血液成分検出ユニット5を交換して測定する血液成分を変更しても、測定処理を確認して間違えずに、血液成分検出ユニット5の測定機能に応じて血液成分を測定することができる。
【0048】
また、この腕時計では、腕時計ケース1が、腕に装着するための時計バンド2と、情報を表示するための表示パネル11と、第1の指15と異なる第2の指で操作される測定開始用の操作スイッチ6とを備えているので、時計バンド2によって腕時計ケース1を簡単に腕に装着することができると共に、第1の指15を血液成分検出ユニット5の指載置部16に置いた状態で第2の指で操作スイッチ6を容易に操作して血液成分測定を開始することができるほか、血液成分検出部20で検出された血液成分の測定結果を表示パネル11に表示させて速やかに測定結果を知ることができる。
【0049】
この場合、特に装着された血液成分検出ユニット5の識別情報記憶部35に記憶された識別情報に基づいて血液測定を制御するメイン制御部36およびサブ制御部37を備えているので、識別情報記憶部35に記憶された識別情報に基づいてサブ制御部37が血液成分検出ユニット5の種類に応じて血液測定を制御することができる。すなわち、血液成分検出部20は、血液採取部19で採取された血液の成分を検出する複数のセンサ30、31、32を有し、サブ制御部37は識別情報記憶部35に記憶された識別情報に基づいて血液成分検出部20の各センサ30、31、32をそれぞれ制御する。
【0050】
このため、血液成分検出ユニット5を交換しても、サブ制御部37が識別情報記憶部35に記憶された識別情報に基づいて、自動的に交換した血液成分検出部20の各センサ30、31、32をそれぞれ制御することができる。これにより、血液成分検出ユニット5を交換しても測定処理を間違えずに、交換した血液成分検出ユニット5の測定機能に応じて血液成分を正確に且つ確実に測定することができ、使い勝手の良いものを得ることができる。
【0051】
(実施形態2)
次に、図10を参照して、この発明の血液成分測定装置を腕時計に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図9に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この腕時計は、血液成分ユニット5の識別情報記憶部50に、実施形態1と同様の識別情報のほかに、図10に示すような制御値や制御条件を有する識別情報をも記憶させた構成で、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0052】
すなわち、この識別情報記憶部50は、図9に示した実施形態1と同様、血液成分検出ユニット5のユニット番号(M1〜Mn)に相当して血糖値センサ30、酸素飽和度センサ31、イオン濃度センサ32のいずれが検出動作するかを表わす個別の識別情報のほかに、制御値である電源(電圧値)や測定部34のA/D変換値、および制御条件である待ち時間や測定時間などの個別の識別情報をも血液成分検出ユニット5のユニット番号(m1〜mn)ごとに記憶している。
【0053】
例えば、図10に示すように、血液成分検出ユニット5のユニット番号がm1の場合には、電圧値が1.5Vで、測定部34のA/D変換値が20ビットで、制御条件の待ち時間が1秒で、測定時間が10秒などの識別情報が、ユニット番号(M1〜Mn)のいずれかに相当する識別情報と共に識別情報記憶部50に記憶されている。また、血液成分検出ユニット5のユニット番号がm2の場合には、電圧値が3.0Vで、測定部34のA/D変換値が50ビットで、制御条件の待ち時間が3秒で、測定時間が30秒などの識別情報が、ユニット番号(M1〜Mn)のいずれかに相当する識別情報と共に識別情報記憶部50に記憶されている。同様に、血液成分検出ユニット5のユニット番号がmnの場合には、電圧値が1.5Vで、測定部34のA/D変換値が20ビットで、制御条件の待ち時間が5秒で、測定時間が50秒などの識別情報が、ユニット番号(M1〜Mn)のいずれかに相当する識別情報と共に識別情報記憶部50に記憶されている。
【0054】
このような腕時計によれば、腕時計ケース1のユニット装着部4に血液成分検出ユニット5を装着すると、血液成分検出ユニット5の識別情報記憶部50に記憶された識別情報(m1〜mn)をサブ制御部37が読み取り、この読み取った識別情報に基づいてサブ制御部37が実施形態1と同様、血液成分検出ユニット5の血液成分検出部20の各センサ30、31、32を制御するほか、メイン制御部36が血液成分を測定するための電圧値や測定部34のA/D変換値などの制御値、および待ち時間や測定時間などの制御条件を選択して血液成分検出部20の駆動を指示する。このため、実施形態1の場合よりも、血液成分を正確に且つ精度良く測定することができる。この場合、測定部34のA/D変換器は、そのA/D変換値が大きくなるに従って、採血された血液成分を検出するための各センサ30、31、32の測定値の分解能を高めることができできる。
【0055】
なお、上記実施形態2では、血液成分検出ユニット5の識別情報記憶部50に、血液成分検出部20の各センサ30、31、32の機能情報のほかに、血液成分を測定するための制御値や制御条件などの制御情報を識別情報として記憶させたが、必ずしも血液成分検出部20の各センサ30、31、32の機能情報と制御値や制御条件などの制御情報との両方を識別情報として記憶させる必要はなく、血液成分を測定するための制御値や制御条件などの制御情報のみを識別情報として記憶させただけでも良い。
【0056】
また、上記実施形態1または2では、腕時計ケース1側にサブ制御部37、チャネル駆動回路41、センサ駆動回路42、および測定部43を設けた例で説明したが、これに限らず、血液成分検出ユニット5側にサブ制御部37、チャネル駆動回路41、センサ駆動回路42、および測定部43を設けるようにしても良い。
さらに、上記実施形態1または2では、腕装着型の血液測定装置として、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、腕に装着することのできる腕装着型の電子機器にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明を適用した腕時計の正面図である。(実施形態1)
【図2】図1の腕時計の使用状態を示した斜視図である。
【図3】図1のA−A矢視における要部の拡大断面図である。
【図4】図1の血液成分検出ユニットを概念的に示した拡大断面図である。
【図5】図4の穿刺部を示した拡大断面図である。
【図6】図5の穿刺部で指先を穿刺した状態の拡大断面図である。
【図7】図1の腕時計における血液成分検出装置の回路構成を示したブロック図である。
【図8】図7の血液成分検出装置の動作フローを示した図である。
【図9】図7の血液成分検出ユニットの識別情報記憶部に記憶される識別情報の一例を示した図。
【図10】図7の血液成分検出ユニットの識別情報記憶部に記憶される識別情報の他の例を示した図。(実施形態2)
【符号の説明】
【0058】
1 腕時計ケース
2 時計バンド
3 時計ガラス
4 ユニット装着部
5 血液成分検出ユニット
6 操作スイッチ
7 時計モジュール
11 表示パネル
13 回路基板
15 指先
16 指載置部
17 ユニットケース
18 穿刺部
19 血液採取部
20 血液成分検出部
30 血糖値センサ
31 酸素飽和度センサ
32 イオン濃度センサ
34 ユニット回路基板
35 識別情報記憶部
36 メイン制御部
37 サブ制御部
43 測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕装着型の装置本体に血液成分検出ユニットを着脱可能に装着し、この血液成分検出ユニットで指先から血液を採取して血液成分を測定する血液成分測定装置において、
前記血液成分検出ユニットは、第1の指が置かれる載置部と、この載置部に置かれた前記第1の指を穿刺する穿刺部と、この穿刺部で穿刺された前記第1の指から血液を採取する血液採取部と、この血液採取部で採取された血液の成分を検出する血液成分検出部とを備えているほか、前記血液成分検出ユニットの識別情報を記憶した識別情報記憶部をも備えていることを特徴とする血液成分測定装置。
【請求項2】
前記装置本体は、腕に装着するためのバンドと、情報を表示するための表示部と、前記第1の指と異なる第2の指で操作される測定開始用の操作スイッチとを備えているほか、装着された前記血液成分検出ユニットの前記識別情報記憶部に記憶された識別情報に基づいて血液測定を制御する制御部を備えていることを特徴する請求項1に記載の血液成分測定装置。
【請求項3】
前記血液成分検出部は、前記血液採取部で採取された血液の成分を検出する複数のセンサを有し、前記制御部は、前記識別情報記憶部に記憶された識別情報に基づいて前記血液成分検出部の前記複数のセンサをそれぞれ制御することを特徴する請求項2に記載の血液成分測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記識別情報記憶部に記憶された識別情報に基づいて前記装置本体内の内部回路の制御値および制御条件を選択して前記血液成分検出部を駆動することを特徴する請求項2または3に記載の血液成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−109894(P2006−109894A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297352(P2004−297352)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】