説明

血液浄化システム

【課題】連動装置における自動運転のためのスケジュールを容易に設定及び変更することができる血液浄化システムを提供する。
【解決手段】患者に血液浄化治療を施すためのダイアライザ5が取り付けられる複数の監視装置1と、該監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2とを具備するとともに、透析液若しくは透析液原液を作製する工程又は洗浄若しくは消毒を行わせる工程に関わる複数の連動装置を具備し、予め設定したスケジュールに従って当該複数の連動装置が互いに連動することにより透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒を自動的に行わせる自動運転が可能な血液浄化システムにおいて、複数の連動装置を互いに通信可能とするとともに、複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、スケジュールの設定又は変更が可能とされたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、該血液浄化手段のそれぞれに透析液又は透析液原液を供給可能な供給手段とを具備した血液浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液浄化システムは、病院等医療現場における機械室に透析液供給装置を設置しておき、これとは別の場所である透析室(治療室)に透析用監視装置を設置するとともに、これら透析液供給装置と透析用監視装置とを配管で連結させて構成されている。透析液供給装置は、清浄水が供給されて所定濃度の透析液を作製するものである一方、透析用監視装置は、患者に透析治療を施すための血液浄化器(ダイアライザ)の数に対応して複数設置され、透析液供給装置で作製された透析液を配管を介して導入し、血液浄化器に供給する。
【0003】
すなわち、機械室に設置された透析液供給装置から透析室に設置された複数の透析用監視装置に分配して透析液を送液し、それぞれにおいてダイアライザに透析液を供給するよう構成されているのである。このように機械室で作製された透析液を各透析用監視装置に分配する血液浄化システムは、通常、「透析治療用セントラルシステム」と称される一方、血液浄化器毎(即ち透析治療患者の各々)に透析液の作製を行い得るものは、通常、「個人用透析装置」と称される。
【0004】
しかるに、透析液供給装置と各透析用監視装置とを電気的に接続しておき、透析治療工程時、配管の洗浄工程又は消毒工程時において、当該透析液供給装置(供給手段)から各透析用監視装置(血液浄化手段)に対して電気信号(工程信号)を送信するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、各透析用監視装置は、所定の電気信号(工程信号)を受信すると、その信号に応じた動作(ポンプの駆動や電磁弁の開閉等)が行われることとなる。
【0005】
ところで、機械室には、通常、清浄水(RO水)を作製し得る水処理装置と、当該清浄水を用いて透析液原液を作製する溶解装置と、当該透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し各透析用監視装置に送液する透析液供給装置とが設置されており、これら装置(「連動装置」と称する)が連動して、透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒を自動的に行わせる自動運転が可能とされていた。この自動運転においては、予め設定したスケジュールに従って複数の連動装置(水処理装置、溶解装置及び透析液供給装置)が互いに連動するものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−16412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の血液浄化システムにおいては、予め設定したスケジュールに従って複数の連動装置(水処理装置、溶解装置及び透析液供給装置)が互いに連動することにより自動運転が行われていたので、以下の如き問題があった。
すなわち、各々の連動装置に対してそれぞれスケジュールに応じた設定が必要とされていることから、一つの連動装置の動作と他の連動装置の動作とを精度よく同期させることが極めて困難であり、スケジュールの作成が困難であるという問題があった。さらに、何らかの不具合が生じて連動装置の一部が停止等した際、スケジュールの設定を変更するのが極めて困難であるとともに、当該スケジュールを誤って設定してしまう虞があった。かかる問題は、血液浄化手段が個人用透析装置とされたものにおいても同様である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、連動装置における自動運転のためのスケジュールを容易に設定及び変更することができる血液浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、該血液浄化手段のそれぞれに透析液、透析液原液、清浄水又は消毒液を供給可能な供給手段とを具備するとともに、前記透析液若しくは透析液原液を作製する工程又は洗浄若しくは消毒を行わせる工程に関わる複数の連動装置を具備し、予め設定したスケジュールに従って当該複数の連動装置が互いに連動することにより前記透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒を自動的に行わせる自動運転が可能な血液浄化システムにおいて、前記複数の連動装置を互いに通信可能とするとともに、前記複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、前記スケジュールの設定又は変更が可能とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化システムにおいて、前記複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、前記自動運転が開始可能とされたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化システムにおいて、前記複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に前記スケジュールの内容を表示させるとともに、その連動装置に対する操作により当該スケジュールの設定又は変更が可能とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を前記血液浄化器に供給する監視装置から成るものとされ、且つ、前記連動装置は、清浄水を作製し得る水処理装置、該水処理装置で作製された清浄水を用いて透析液原液を作製し得る溶解装置、及び前記透析液供給装置で構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、前記水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るものとされ、前記連動装置は、前記水処理装置及び前記個人用透析装置で構成されたことを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るものとされ、前記連動装置は、清浄水を作製し得る水処理装置、前記溶解装置、及び前記個人用透析装置で構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、複数の連動装置を互いに通信可能とするとともに、複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、スケジュールの設定又は変更が可能とされたので、連動装置における自動運転のためのスケジュールを容易に設定及び変更することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、自動運転が開始可能とされたので、自動運転開始のための操作をより容易に行わせることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置にスケジュールの内容を表示させるとともに、その連動装置に対する操作により当該スケジュールの設定又は変更が可能とされたので、スケジュールの設定をより容易且つ確実に行わせることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を血液浄化器に供給する監視装置から成るものとされ、且つ、連動装置は、清浄水を作製し得る水処理装置、該水処理装置で作製された清浄水を用いて透析液原液を作製し得る溶解装置、及び透析液供給装置で構成されたので、セントラルシステムに適用することができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るものとされ、連動装置は、水処理装置及び個人用透析装置で構成されたので、当該個人用透析装置を有した血液浄化システムに適用することができる。
【0020】
請求項6の発明によれば、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るものとされ、連動装置は、水処理装置、溶解装置、及び個人用透析装置で構成されたので、当該個人用透析装置を有した血液浄化システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【図2】同血液浄化システムにおける監視装置の構成を示す模式図
【図3】同血液浄化システムにおける透析液供給装置、溶解装置及び水処理装置の構成及び接続関係を示すブロック図
【図4】同血液浄化システムにおける連動装置の連動を示すタイムチャート
【図5】本発明の他の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【図6】本発明の他の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化システムは、透析液原液から所定濃度の透析液を作製するとともに、その透析液を複数の透析用監視装置に供給するためのものであり、図1に示すように、病院等医療現場における透析室A(治療室)に設置された複数の監視装置1と、当該医療現場における透析室Aとは別の場所である機械室Bに設置された透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4とから主に構成される。なお、これら透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4は、本発明の「連動装置」を構成している。
【0023】
監視装置1(血液浄化手段)は、患者に血液浄化治療(血液透析治療)を施すためのダイアライザ5(血液浄化器)が取り付けられ、透析液供給装置2から供給された透析液を当該ダイアライザ5に供給するためのもので、透析室Aに複数設置されている。かかる監視装置1は、血液透析治療や他の制御内容(洗浄又は消毒)の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル1aが配設されている。
【0024】
より具体的には、透析室Aに設置された複数の監視装置1の各々は、図2に示すように、透析液供給装置2から延設された配管L1が引き込まれるとともに、図示しない排液手段に接続された配管L2を具備し、これら配管L1、L2に跨って複式ポンプ12が配設されて構成されている。このうち監視装置1内における配管L1には、当該配管L1を流れる液体の流量を検出する流量検出センサ7、当該液体の給液圧を検出する液圧検出センサ8、及び当該液体の電導度(濃度)を検出する電導度検出センサ9が配設されている。
【0025】
また、複式ポンプ12からは、配管L1と連通した透析液導入ラインL4と、配管L2と連通した透析液排出ラインL5が延設されており、カプラCを介して当該透析液導入ラインL4の先端をダイアライザ5の透析液導入口5aに接続し得るとともに、カプラCを介して当該透析液排出ラインL5の先端をダイアライザ5の透析液排出口5bに接続し得るよう構成されている。このように、各監視装置1には、それぞれ患者に応じたダイアライザ5が取り付けられるようになっており、当該ダイアライザ5には、患者の血液を体外循環させる血液回路6が接続されることとなる。
【0026】
複式ポンプ12のポンプ室は、図示しない単一のプランジャにより、配管L1に接続された送液側ポンプ室と、配管L2に接続された排出側ポンプ室とに隔成されており、当該プランジャが往復動することにより、送液側ポンプ室に送られた透析液又は洗浄液をダイアライザ5に供給するとともに、ダイアライザ5内の透析液を排出側ポンプ室に吸入するよう構成されている。さらに、監視装置1内には、複式ポンプ12をバイパスしつつ配管L2と透析液排出ラインL5とを連通する配管L3が形成されており、この配管L3の途中に除水ポンプ13が配設されている。かかる除水ポンプ13を駆動させることにより、ダイアライザ5内を流れる患者の血液に対して除水を行わせることが可能とされる。
【0027】
なお、複式ポンプ12に代えて、所謂チャンバ形式のものとしてもよいとともに、流量検出センサ7、液圧検出センサ8或いは電導度検出センサ9等のセンサ類は、任意のものを配設してもよく若しくは他の汎用的なものを加えるようにしてもよい。さらに、本実施形態においては、当該センサ類を配管L1に配設するようにしているが、他の配管(例えば配管L2)に配設するものとしてもよい。例えば流量検出センサ7、液圧検出センサ8或いは電導度検出センサ9等のセンサ類を配管L1又は配管L2の何れか一方に配設させたもの或いは両方に配設させたものとしてもよい。
【0028】
水処理装置4は、内部に濾過膜等を内在したモジュール(浄化濾過器)を具備し、原水を浄化して清浄水(RO水)を得るためのものであり、配管L8を介して溶解装置3と連結されて当該溶解装置3に清浄水を供給し得るとともに、配管L6、L7を介して透析液供給装置2と連結されて当該透析液供給装置2に清浄水を供給し得るよう構成されている。かかる水処理装置4で得られた清浄水は、透析液供給装置2にて透析液を作製する際に用いられたり或いは当該透析液供給装置2や監視装置1の配管等を洗浄する洗浄水としても用いられる。なお、水処理装置4を図示しない個人用透析装置や粉末状透析用薬剤を溶解する溶解装置等と連結し、これらに清浄水を供給するよう構成してもよい。
【0029】
また、水処理装置4は、水処理に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル4aが配設されているとともに、図3に示すように、送信手段4b及び受信手段4cを介して後述するLANケーブルβと電気的に接続されるインターフェイス部16及び制御部17を具備している。そして、インターフェイス部16にて透析液供給装置2又は溶解装置3から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部17による所定の動作(清浄水の作製等)が行われるようになっている。
【0030】
溶解装置3は、例えば所定量の透析用粉体薬剤が投入されるとともに、その透析用粉体薬剤と水処理装置4から供給された清浄水とを混合(ミキシング)して所定濃度の透析液原液を作製するためのものである。この溶解装置3は、透析液原液作製に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル3aが配設されているとともに、図3に示すように、送信手段3b及び受信手段3cを介して後述するLANケーブルβと電気的に接続されるインターフェイス部18及び制御部19を具備している。そして、インターフェイス部18にて透析液供給装置2又は水処理装置4から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部19による所定の動作(透析液原液の作製等)が行われるようになっている。なお、溶解装置3は、配管L6を介して透析液供給装置2と接続されており、作製された透析液原液を透析液供給装置2に供給し得るよう構成されている。
【0031】
透析液供給装置2(供給手段)は、水処理装置4で得られた清浄水及び溶解装置3で作製された透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得るとともに、監視装置1(血液浄化手段)のそれぞれに作製した透析液を供給可能なものである。すなわち、透析液供給装置2は、配管L1を介して複数の監視装置1のそれぞれと接続されており、かかる配管L1を介して監視装置1のそれぞれに透析液、洗浄水及び消毒液等の所望の液体を供給し得るよう構成されているのである。
【0032】
また、透析液供給装置2には、透析液供給や洗浄又は消毒に関する制御内容の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル2aが配設されているとともに、図3に示すように、送信手段2b及び受信手段2cを介して後述するLANケーブルβと電気的に接続されるインターフェイス部14及び制御部15を具備している。そして、インターフェイス部14にて溶解装置3又は水処理装置4から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部15による所定の動作(透析液の作製等)が行われるようになっている。
【0033】
上記透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4は、透析液若しくは透析液原液を作製する工程又は洗浄若しくは消毒を行わせる工程に関わる複数の連動装置を構成するものである。しかして、このような連動装置を構成する透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4は、LAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)にて接続されており、双方向の情報の互いの通信が可能とされている。なお、図中符号Hは、LAN接続に介在するハブを示しているが、当該ハブHに代えて所定の通信装置を介在させるようにしてもよい。また、かかるLANは、本実施形態の如くLANケーブルβを用いるもの(有線)に限らず、無線で双方向の情報の通信が可能なもの(無線LAN)であってもよい。
【0034】
ここで、本実施形態においては、予め設定したスケジュールに従って当該複数の連動装置(透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4)が互いに連動することにより透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒を自動的に行わせる自動運転が可能とされているとともに、これら透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4(複数の連動装置)のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、スケジュールの設定又は変更が可能とされている。
【0035】
本実施形態におけるスケジュールは、各連動装置における所定の工程の開始時刻や終了時刻等のタイムスケジュールを指すものであり、それぞれの連動装置が当該スケジュールに従った動作を行うことにより、互いが連動し、透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒を自動的に行わせるようになっている。なお、本実施形態においては、スケジュールの設定又は変更は、透析液供給装置2のタッチパネル2a、溶解装置3のタッチパネル3a、水処理装置4のタッチパネル4aにて行われるようになっている。
【0036】
具体的には、血液透析治療が開始される前(例えば早朝等)において、透析液若しくは透析液原液を自動的に作製すべく、水処理装置4、溶解装置3及び透析液供給装置2が互いに通信し、予め設定したスケジュールを共有することでそれぞれが当該スケジュールに従い互いに連動するよう構成されている。より具体的には、水処理装置4における清浄水の作製及び送液動作、溶解装置3における清浄水の受け入れ及び透析液原液の作製動作、透析液供給装置2における清浄水の受け入れ及び透析液の作製動作が所望タイミングにて同期して透析液若しくは透析液原液を自動的に作製可能となっている。
【0037】
例えば、透析治療の開始時刻が1時間早まる場合、操作者は、透析液供給装置2のタッチパネル2aに対して開始時刻を1時間早めるための入力操作を行う。かかるスケジュール変更のための情報は、送信手段2bを介して溶解装置3及び水処理装置4に送信され、それぞれの受信手段3c、4c、インターフェイス部16、18を介して制御部17、18に伝達される。これにより、溶解装置3による透析液原液作製開始時刻、及び水処理装置4による清浄水作製開始時刻がそれぞれ1時間早められるスケジュールとされる。
【0038】
また、血液透析治療が終了した後(例えば夜間等)において、洗浄若しくは消毒を自動的に行わせるべく、水処理装置4、溶解装置3及び透析液供給装置2が互いに通信し、予め設定したスケジュールを共有することでそれぞれが当該スケジュールに従い互いに連動するよう構成されている。より具体的には、水処理装置4における清浄水(洗浄水)及び消毒液の作製及び送液動作、溶解装置3における洗浄水又は消毒液の受け入れ動作、透析液供給装置2における洗浄水又は消毒液の受け入れ動作が所望タイミングにて同期して洗浄若しくは消毒を自動的に行わせることが可能となっている。
【0039】
例えば、連動装置(透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4)が、図4のタイムチャートの如き連動する場合について、スケジュールの設定方法について説明する。透析液供給装置2における熱水消毒開始時刻t1は、水処理装置4の熱水消毒及び熱水供給時刻と同じ時刻(本実施形態においては23時)になるよう設定されるとともに、透析液供給装置2の透析液作製開始時刻t2は、透析治療開始時刻の所定時間前(例えば30分前)になるよう設定される。また、溶解装置3における熱水消毒開始時刻t3は、水処理装置4の熱水消毒及び熱水供給時刻と同じ時刻(本実施形態においては23時)になるよう設定されるとともに、透析液原液の作製開始時刻(溶解開始時刻)t4は、透析液供給装置2が透析液を作製する所定時間前(例えば20分前)になるよう設定される。
【0040】
さらに、水処理装置4における消毒のための清浄水の作製終了時刻t5は、透析液供給装置2や溶解装置3が清浄水を必要とする時間が経過する時刻(本実施形態においては20時)になるよう設定されるとともに、熱水消毒及び熱水供給の終了時刻t6は、透析液供給装置2及び溶解装置3の両者が熱水消毒を終了する時刻(本実施形態においては1時)になるよう設定される。また、水処理装置4における透析治療のための清浄水の作製開始時刻t7は、透析液供給装置2や溶解装置3が清浄水を必要とする時刻の所定時間前(例えば10分前)になるよう設定される。
【0041】
しかして、本実施形態においては、水処理装置4、溶解装置3及び透析液供給装置2が互いに通信し、図4で示す如きスケジュールを共有することでそれぞれが当該スケジュールに従い互いに連動するよう構成されているとともに、その複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、スケジュールの設定又は変更が可能とされているのである。
【0042】
さらに、本実施形態においては、透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、自動運転が開始可能とされている。例えば、透析液供給装置2のタッチパネル2a、溶解装置3のタッチパネル3a及び水処理装置4のタッチパネル4aにそれぞれ自動運転を開始するための操作ボタンを表示させ、当該何れかの操作ボタンを押圧操作することにより、透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒を自動的に行わせる自動運転が開始されるよう構成されている。これにより、自動運転開始のための操作をより容易に行わせることができる。
【0043】
例えば、透析液供給装置2におけるタッチパネル2aに表示された自動運転開始のための操作ボタンを操作者が操作すると、当該自動運転開始のための情報は、送信手段2bを介して溶解装置3及び水処理装置4に送信され、それぞれの受信手段3c、4c、インターフェイス部16、18を介して制御部17、18に伝達される。これにより、連動装置が互いに連動して、透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒を自動的に行わせる自動運転が開始されることとなる。
【0044】
また更に、本実施形態においては、透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4のうち何れか1つの連動装置におけるタッチパネル(2a、3a、4a)にスケジュールの内容を表示させるとともに、その連動装置(透析液供給装置2、溶解装置3又は水処理装置4のタッチパネル2a、3a、4a)に対する操作により当該スケジュールの設定又は変更が可能とされている。これにより、スケジュールの設定をより容易且つ確実に行わせることができる。
【0045】
例えば、溶解装置3及び水処理装置4からそれぞれの自動運転に関する情報が透析液供給装置2に送信され、その情報の内容がタッチパネル2aにて表示される。操作者は、タッチパネル2aの表示を確認しながら、そのタッチパネル2aにて自動運転のためのスケジュールの設定及び変更を行う。その設定及び変更されたスケジュールの情報は、送信手段2bを介して溶解装置3及び水処理装置4に送信され、それぞれの受信手段3c、4c、インターフェイス部16、18を介して制御部17、18に伝達される。
【0046】
これにより、透析液供給装置2にて設定又は変更されたスケジュールに従って各連動装置が互いに連動して、透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒が自動的に行われることとなる。この場合、透析液供給装置2にて設定されたスケジュール(例えば、透析治療開始時刻等)と他の連動装置(溶解装置3又は水処理装置4)との比較を行わせ、各連動装置におけるスケジュールの設定又は変更に間違いがないか否かを判定させることができ、間違いが判定された場合、警報や警告のための表示等を行わせることができる。これにより、スケジュールを誤って設定してしまうのを防止することができる。
【0047】
なお、本実施形態に係る血液浄化システムにおいては、透析液供給装置2(供給手段)と、それぞれの監視装置1(血液浄化手段)とが、LAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)にて接続されており、双方向の情報の通信が可能とされている。すなわち、透析液供給装置2とそれぞれの監視装置1との間は、LANケーブルαを介在してLAN接続されているとともに、透析液供給装置2にはLANケーブルαを介して監視装置1との間で通信するためのインターフェイス部14及び制御部15が配設される一方、監視装置1のそれぞれにはLANケーブルαを介して透析液供給装置2との間で通信するためのインターフェイス部10及び制御部11(図2参照)が配設されているのである。なお、かかるLANは、本実施形態の如くLANケーブルαを用いるもの(有線)に限らず、無線で双方向の情報の通信が可能なもの(無線LAN)であってもよい。
【0048】
そして、透析液供給装置2においては、インターフェイス部14にて監視装置1から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部15による所定の動作(透析液の作製等)が行われるとともに、当該インターフェイス部14を介して所定の情報を監視装置1に送信し得るようになっている。また、監視装置1においては、インターフェイス部10にて透析液供給装置2から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部11による所定の動作(治療前のプライミング、血液透析治療、返血、洗浄・消毒等)が行われるとともに、当該インターフェイス部10を介して所定の情報を透析液供給装置2に送信し得るようになっている。
【0049】
しかして、本実施形態においては、連動装置を構成する透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4がLANで接続されているのに加え、透析液供給装置2と、それぞれの監視装置1(血液浄化手段)とが、LANで接続されていることから、それぞれの監視装置1に対しても自動運転のスケジュールを共有させることができ、例えば自動運転で監視装置1側の配管の洗浄又は消毒を自動的に行わせる際、当該監視装置1の動作もスケジュールに従って連動させることができる。
【0050】
上記実施形態によれば、透析液供給装置2、溶解装置3及び水処理装置4(複数の連動装置)を互いに通信可能とするとともに、その複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、スケジュールの設定又は変更が可能とされたので、連動装置における自動運転のためのスケジュールを容易に設定及び変更することができる。なお、スケジュールの設定又は変更は、タッチパネル(2a、3a、4a)によるものに限定されず、他の入力手段により行うものとしてもよい。
【0051】
また、供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置2から成るとともに、血液浄化手段は、当該透析液供給装置2から供給された透析液をダイアライザ5(血液浄化器)に供給する監視装置1から成るものとされ、且つ、連動装置は、清浄水を作製し得る水処理装置4、該水処理装置4で作製された清浄水を用いて透析液原液を作製し得る溶解装置3、及び透析液供給装置2で構成されたので、セントラルシステムに適用することができる。
【0052】
以上、本実施形態に係る血液浄化システムついて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上記の如きセントラルシステムから成るものに代えて、図5に示すように、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置4を有して成るとともに、血液浄化手段は、水処理装置4から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、ダイアライザ5(血液浄化器)に供給する個人用透析装置20から成るものに適用してもよい。この場合、個人用透析装置20は、それぞれ透析液原液或いは消毒液を収容したタンクT1を具備するとともに、水処理装置4と配管L9で連結され、当該水処理装置4から送液された清浄水及びタンクT1内の透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し或いは希釈した消毒液を作製し得るようになっている。
【0053】
すなわち、図1で示される実施形態においては、監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2(溶解装置3及び水処理装置4を含む)にて供給手段を構成させているが、血液浄化手段がダイアライザ5(血液浄化器)を有し、タンクT1内の透析液原液から透析液を作製可能な個人用透析装置20から成る血液浄化システムとしてもよいのである。なお、この場合の連動装置は、水処理装置4及び個人用透析装置20で構成される。
【0054】
さらに、例えば上記の如きセントラルシステムから成るものに代えて、図6に示すように、供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置4、及び該水処理装置4で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置3を有して成るとともに、血液浄化手段は、当該溶解装置3及び水処理装置4から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、ダイアライザ5(血液浄化器)に供給する個人用透析装置21から成るものに適用してもよい。この場合、個人用透析装置21は、それぞれ消毒液を収容したタンクT2を具備するとともに、溶解装置3及び水処理装置4と配管L10、L11でそれぞれ連結され、当該溶解装置3及び水処理装置4から送液された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し或いは希釈した消毒液を作製し得るようになっている。
【0055】
すなわち、図1で示される実施形態においては、監視装置1のそれぞれに透析液を供給可能な透析液供給装置2(溶解装置3及び水処理装置4を含む)にて供給手段を構成させているが、血液浄化手段がダイアライザ5(血液浄化器)を有し、供給手段側から送液された透析液原液及び清浄水から透析液を作製可能な個人用透析装置21から成る血液浄化システムとしてもよいのである。なお、この場合の連動装置は、溶解装置3、水処理装置4及び個人用透析装置21で構成される。
【0056】
また、本実施形態においては、透析液供給装置2と監視装置1とがLAN接続されて双方向に通信可能とされているが、複数の連動装置を互いに通信可能とするものであれば足り、透析液供給装置2から監視装置1に対して一方的に所定の情報が送信されるもの等としてもよい。なお、本実施形態においては、血液透析治療を行うシステムとされているが、他の血液浄化治療を行う血液浄化システムに適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
複数の連動装置を互いに通信可能とするとともに、複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、スケジュールの設定又は変更が可能とされた血液浄化システムであれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 監視装置(血液浄化手段)
2 透析液供給装置(供給手段)(連動装置)
3 溶解装置(連動装置)
4 水処理装置(連動装置)
5 ダイアライザ(血液浄化器)
6 血液回路
7 流量検出センサ
8 液圧検出センサ
9 電導度検出センサ
10 インターフェイス部
11 制御部
12 複式ポンプ
13 除水ポンプ
14 インターフェイス部
15 制御部
16 インターフェイス部
17 制御部
18 インターフェイス部
19 制御部
H ハブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に血液浄化治療を施すための血液浄化器が取り付けられる複数の血液浄化手段と、
該血液浄化手段のそれぞれに透析液、透析液原液、清浄水又は消毒液を供給可能な供給手段と、
を具備するとともに、前記透析液若しくは透析液原液を作製する工程又は洗浄若しくは消毒を行わせる工程に関わる複数の連動装置を具備し、予め設定したスケジュールに従って当該複数の連動装置が互いに連動することにより前記透析液若しくは透析液原液の作製又は洗浄若しくは消毒を自動的に行わせる自動運転が可能な血液浄化システムにおいて、
前記複数の連動装置を互いに通信可能とするとともに、前記複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、前記スケジュールの設定又は変更が可能とされたことを特徴とする血液浄化システム。
【請求項2】
前記複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に対する操作により、前記自動運転が開始可能とされたことを特徴とする請求項1記載の血液浄化システム。
【請求項3】
前記複数の連動装置のうち何れか1つの連動装置に前記スケジュールの内容を表示させるとともに、その連動装置に対する操作により当該スケジュールの設定又は変更が可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化システム。
【請求項4】
前記供給手段は、清浄水及び透析液原液を用いて所定濃度の透析液を作製し得る透析液供給装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該透析液供給装置から供給された透析液を前記血液浄化器に供給する監視装置から成るものとされ、且つ、前記連動装置は、清浄水を作製し得る水処理装置、該水処理装置で作製された清浄水を用いて透析液原液を作製し得る溶解装置、及び前記透析液供給装置で構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項5】
前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、前記水処理装置から供給された清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るものとされ、前記連動装置は、前記水処理装置及び前記個人用透析装置で構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項6】
前記供給手段は、清浄水を作製し得る水処理装置、及び該水処理装置で作製された清浄水を用いて所定濃度の透析液原液を作製し得る溶解装置を有して成るとともに、前記血液浄化手段は、当該溶解装置及び水処理装置から供給された透析液原液及び清浄水を用いて所定濃度の透析液を作製し、前記血液浄化器に供給する個人用透析装置から成るものとされ、前記連動装置は、前記水処理装置、前記溶解装置、及び前記個人用透析装置で構成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の血液浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−249750(P2012−249750A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123395(P2011−123395)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】