説明

血液浄化装置及び血液浄化装置本体への血液浄化用回路の取付け方法

【課題】 複数の計量容器を、所定のセンサの間に一度に取付けることができる、血液浄化装置及び血液浄化装置本体への血液浄化用回路の取付け方法を提供する。
【解決手段】この血液浄化装置は、血液浄化装置本体3と、これに取付けられる血液浄化用回路Nとを備えている。該血液浄化用回路Nは、各ラインを構成するチューブ40,50,60と、各ラインに設けられた計量容器45,55,65と、該計量容器45,55,65を並列させて保持する1つのホルダ70とを備え、前記ホルダ70は、前記計量容器45,55,65の両端部及び/又は同両端部から伸びるチューブ40,50,60をそれぞれ保持する保持溝73を有し、並列した複数組の計量装置10A,10B,10Cの上下一対のセンサ11,11の間隔D2に適合する形状をなし、前記ホルダ70を前記間隔D2に挿入することにより、保持したチューブ40,50,60を対応するチューブ挟持部12に挿入できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液を浄化処理するための血液浄化装置、及び、血液浄化装置を構成する血液浄化装置本体への血液浄化用回路の取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腎機能不全の患者等に対して、静脈あるいは動脈より取り出した血液を、血液ろ過器などの血液浄化装置に導入し、水分、代謝産物、電解質などをろ過分離した後、有用物質を補給して、患者の血管に戻す、血液浄化方法が用いられている。
【0003】
このような血液浄化装置は、血液浄化装置本体に、血液脱血ライン、返血ライン、透析液ライン、ろ液ライン、補液ラインなどの複数のラインからなる血液浄化用回路が取付けられて構成されている。血液浄化用回路は、チューブと、このチューブによって連結されたチャンバ、計量容器などの各種器具とで構成される。また、血液浄化装置本体には、各ラインを流れる血液、透析液、補液、ろ液などを一定の流速で送液するためのポンプが取付けられている。
【0004】
そして、各ラインを構成するチューブ中を流れる各液の流速は、血液浄化方法を受ける患者の容態や治療目的に応じて正確に調整する必要がある。例えば脱血ラインから取り出す血液の流速と、返血ラインにより返送する血液の流速とが一致していないと、患者の血管内の血液が増加して血圧が上昇したり、血管内の血液が減少したりして、患者の血液循環等に不都合が生じる虞れがあるからである。
【0005】
そこで、各ラインを流れる液の流速を正確に測定するため、所定形状の計量容器が各ラインに取付けられており、この計量容器を血液浄化装置本体の計量装置にセットして、各ラインを流れる液の流速を定期的に測定し、その結果に基づいて、流速が所定範囲となるようにポンプを制御している。
【0006】
上記計量装置は、上下一対のセンサを有しており、上記各ラインの計量容器をそれぞれ対応する一対のセンサの間に配置し、一対のセンサで、各液が計量容器の上下両端を通過するときの時間を測定し、計量容器の容積を前記時間で割ることにより(計量容器の容積/通過時間)、液の流速を測定するようにしている。
【0007】
従来のこの種の計量容器として、下記特許文献1には、下部管、容器下部テーパ部、筒、容器上部、上部管からなり、下部管または下部管に接続されるチューブおよび、上部管または上部管に接続されるチューブとにセンサが設けられ、容器下部テーパ部が容器内部方向へ凸の円錐状である計量容器が開示されている。
【0008】
上記の計量容器及びチューブを含む血液浄化用回路は、血液を流動させる関係上、患者ごとに血液浄化装置から取り換えるようになっており、一方、上記のセンサを有する計量装置は、直接血液に接触する部分ではないため、繰り返し使用することができ、血液浄化装置本体に一体的に固着されている。そして、複数のラインの各計量容器は、血液浄化装置側に配置された複数の計量装置のセンサ間に、個別に取付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−276578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、各ラインに取付けられた複数の計量容器は、血液浄化用装置本体に配置された複数の計量装置の一対のセンサの間に、一つずつ挿入して取付けているので、煩雑で手間がかかり作業性に問題があった。
【0011】
また、各計量容器は一対のセンサ間に一つずつ手作業で取付けているので、センサへの計量容器の取付けがあまいと、センサによる検出が正確にできず、計量容器の上下両端を通過する時間を測定できない虞れがあった。
【0012】
更に、計量装置の所定のセンサ間には、所定ラインの計量容器を取付けなければならない。例えば、補液ライン用のセンサの間に、透析液ライン用の計量容器を取付けることはできない。しかし、計量容器はどのラインとも同じような形状となっていることが多いため、所定のセンサ間に、所定ラインの計量容器ではなく、別ラインの計量容器を間違えて取付けてしまうことがあった。
【0013】
したがって、本発明の目的は、所定のセンサの間に、複数の計量容器を間違えることなく、作業性よく、確実に取付けることができる、血液浄化装置及び血液浄化装置本体への血液浄化用回路の取付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は、上下一対のセンサを有する計量装置が、複数組並列された状態で設置され、各センサは、チューブ挟持部を有している血液浄化装置本体と、該血液浄化装置本体に取付けられる血液浄化用回路とを備える血液浄化装置において、
前記血液浄化用回路は、複数のラインを構成するチューブと、複数のラインのうちの少なくとも2つのラインに設けられた計量容器と、該計量容器を並列させて保持する1つのホルダとを備え、
前記ホルダは、前記計量容器の両端部及び/又は同両端部から伸びるチューブをそれぞれ保持する保持溝を有し、前記並列した複数組の計量装置の上下一対のセンサの間隔に適合する形状をなし、
前記ホルダを前記間隔に挿入することにより、保持したチューブを対応するチューブ挟持部に挿入できるように構成されていることを特徴とする血液浄化装置を提供するものである。
【0015】
上記発明によれば、血液浄化用回路に設けられた計量容器をホルダによって一体に保持させることができ、このホルダを、血液浄化装置本体の複数組並列された計量装置の上下一対のセンサの間隔に挿入することにより、複数の計量容器を一度に計量装置に取付けることができる。
【0016】
また、上下一対のセンサの間隔にホルダを挿入することにより、ホルダで保持したチューブをセンサのチューブ挟持部に挿入するようにしたので、センサのチューブ挟持部へのチューブの押し込みを確実にして、チューブ内を流れる液体をセンサによって確実に検出できるようにすることができる。
【0017】
更に、メーカー側で各ラインに設けられた計量容器を予めホルダの所定の保持溝に保持させておくことにより、ユーザーが各ラインを差し違えて計量装置にセットしてしまう虞れを防止することができると共に、ユーザーの血液浄化装置への回路取付作業を容易にすることができる。
【0018】
本発明においては、前記ホルダの前記保持溝のチューブ挿出部分には、チューブ方向に沿って突出した突出部が設けられ、前記計量装置の上下一対のセンサのチューブ挟持部には、上下に対向する面に凹部が設けられており、前記突出部が前記凹部に適合するように構成されていることが好ましい。
【0019】
上記態様によれば、ホルダの突出部を、計量装置の上下一対のセンサのチューブ挟持部の凹部に挿入することにより、ホルダに保持されたチューブを対応するチューブ挟持部に容易に整合させることができる。
【0020】
また、その状態でホルダをチューブ挟持部に押し込むことにより、チューブのチューブ挟持部に押し込まれる直前の部分をホルダの突出部でサポートしながら押し込むことができるので、柔軟なチューブであってもチューブ挟持部に容易に挿入することができる。
【0021】
本発明においては、前記ホルダは、前記保持溝が設けられた一対の横フレームと、この一対の横フレームを連結するように各計量容器が配置される部分の間に配置された縦フレームとで構成されていることが好ましい。上記態様によれば、ホルダを比較的軽量でかつ必要充分な強度を維持するように構成することができると共に、各計量容器が外側から見えるように保持することができるので、確認がしやすくなる。また、縦フレームや横フレームを持って押えることができるので、チューブを押し込みやすくすることができる。
【0022】
本発明においては、前記ラインは、透析液ラインと、ろ液ラインと、補液ラインとを少なくとも有し、前記3つのラインにそれぞれ前記計量容器が設けられていて、前記ホルダは、この3つの計量容器を保持するように構成されていることが好ましい。上記態様によれば、血液浄化用回路中の3つのラインに設けられた計量容器を1つのホルダで保持することができる。
【0023】
本発明のもう一つは、上下一対のセンサを有する計量装置が、複数組並列された状態で設置され、各センサは、チューブ挟持部を有している血液浄化装置本体に、複数のラインを構成するチューブと、複数のラインのうちの少なくとも2つのラインに設けられた計量容器とを有する血液浄化用回路を取付ける方法において、
前記計量容器の両端部及び/又は同両端部から伸びるチューブをそれぞれ保持する保持溝を有し、前記並列した複数組の計量装置の上下一対のセンサの間隔に適合する形状をなす1つのホルダを用い、
このホルダの対応する保持溝に、前記各計量容器の両端部及び/又は同両端部から伸びるチューブを挿入して、前記各計量容器を前記ホルダに保持させ、
前記ホルダを前記複数組の計量装置の上下一対のセンサの間隔に挿入することにより、保持したチューブを対応するチューブ挟持部に挿入することを特徴とする血液浄化装置本体への血液浄化用回路の取付け方法を提供するものである。
【0024】
上記発明によれば、血液浄化用回路に設けられた計量容器をホルダによって一体に保持させ、このホルダを、血液浄化装置の複数組並列された計量装置の上下一対のセンサの間隔に挿入することにより、複数の計量容器を一度に計量装置に取付けることができ、作業を容易にすることができる。
【0025】
また、上下一対のセンサの間隔にホルダを挿入することにより、ホルダで保持したチューブをセンサのチューブ挟持部に挿入するようにしたので、センサのチューブ挟持部へのチューブの押し込みを確実にして、チューブ内を流れる液体をセンサによって確実に検出できるようにすることができる。
【0026】
更に、各ラインに設けられた計量容器を予めホルダの所定の保持溝に保持させることにより、各ラインを差し違えて計量装置にセットしてしまう虞れを低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、血液浄化用回路に設けられた計量容器をホルダによって一体に保持させることができ、このホルダを、血液浄化装置の複数組並列された計量装置の上下一対のセンサの間隔に挿入することにより、複数の計量容器をガタ付き等なく一度に精度よく計量装置に取付けることができ、取付作業性を向上させると共に、各ラインに設けられた計量容器を予めホルダの所定の保持溝に保持させておくことにより、各ラインを差し違えて計量装置にセットしてしまう虞れを防止して、血液浄化装置への回路取付作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の血液浄化装置の斜視図である。
【図2】同血液浄化装置を構成する血液浄化用回路として、血液透析回路を適用した場合の概略説明図である。
【図3】同血液浄化用回路を所定の計量装置に取付ける前の状態を示す斜視図である。
【図4】同血液浄化用回路を所定の計量装置に取付けた状態を示す斜視図である。
【図5】同血液浄化用回路を構成するホルダを背面側から見た場合の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1〜5を参照して、本発明の血液浄化装置の一実施形態について説明する。
【0030】
図1に示すように、この血液浄化装置1は、血液浄化装置本体3と、該血液浄化装置本体3に取付けられる血液浄化用回路N(図2参照)とを備えている。なお、本発明において、血液浄化用回路とは、例えば血液透析回路、心肺用血液回路等のように、体内から血液を取出して所定の処理をし、再び体内に戻す回路を意味し、具体的には血液、透析液、補液等が流れる複数のラインを有し、各ラインは、各液の流路を形成するチューブと、これらのチューブに取付けられる各種の器具とで構成されるものである。図2に示すように、この実施形態における血液浄化用回路Nは、血液透析回路に適用されるものであって、図1に示すように血液浄化装置本体3に取付けられるようになっている。
【0031】
そして、この血液浄化装置1は、車輪4aを有する脚部4によって支持された血液浄化装置本体3を有している。血液浄化装置本体3の上面には操作パネル5が設けられ、更に操作パネル5上にはディスプレイ6が取付けられている。血液浄化装置本体3の前面3a及び側面3b,3bには、血液や、透析液、補液等の液体が流動するチューブで構成される複数のラインからなる血液浄化用回路Nと、該血液浄化用回路の各ラインを流動する液を送液するための複数のポンプとが取付けられている。
【0032】
更に、この血液浄化装置1は、各ラインを流動する液体を計量するための計量装置を備えている。この実施形態では、図1及び図3に示すように、前記血液浄化装置1の一方の側面3bには、計量装置10が設置されている。この実施形態では、上下一対のセンサ11,11からなる3組の計量装置10A,10B,10Cが並列された状態で設置されている。各計量装置10A,10B,10Cには、所定ラインのチューブ及び計量容器が取付けられるようになっている。
【0033】
この実施形態では、計量装置10Aに後述する透析液ラインL1のチューブ40及び計量容器45が取付けられ、計量装置10Bに後述するろ液ラインL2のチューブ50及び計量容器55が取付けられ、計量装置10Cに後述する補液ラインL3のチューブ60及び計量容器65が取付けられるようになっている。
【0034】
各センサ11のほぼ中央には、縦溝状のチューブ挟持部12がチューブを挟持可能な程度の幅で形成されており、各ラインのチューブは、チューブ挟持部12の正面開口側から挿入されて挟持されるようになっている。また、チューブ挟持部12の正面開口側の両側部13,13は、正面開口側に向かって次第に拡開するテーパ形状をなしており、チューブを挿入しやすくなっている。
【0035】
更に、上下一対のセンサ11,11の各チューブ挟持部12には、上下に対向する面に凹部14,14が設けられている。すなわち、上方のセンサ11の下面側、及び、下方のセンサ11の上面側に、凹部14がそれぞれ形成されている。この実施形態の凹部14は、後述するホルダ70の突出部75に適合するように、内面が丸みを帯びて屈曲した形状をなしている。
【0036】
また、各センサ11の裏面側には取付板15が設けられている。この取付板15を介して上下一対のセンサ11,11が、前記血液浄化装置1の側面3bに所定間隔D2をあけて取付けられている。
【0037】
更に、各センサ11の前記凹部14とは反対側の面には、チューブ支持板16が設けられている。このチューブ支持板16のほぼ中央の、前記チューブ挟持部12に整合した位置には、チューブ挟持部12から挿出された各ラインのチューブを保持するための切欠き16aが形成されている。
【0038】
なお、センサ11としては、挟持したチューブ内に液体が存在するか否かを検出できるものであればよく、例えば超音波センサ、光センサなどを用いることができる。
【0039】
更に、上記血液浄化装置1は、図示しない演算処理部及び制御部からなる制御装置を備えている。この制御装置は、各ラインL1,L2,L3に配置される計量装置10A,10B,10Cの上下一対の計量センサ11,11や、ポンプ46,56,66、後述するクランプC,C2に電気的に接続されている。
【0040】
次に、上記構造の血液浄化装置1に取付けられる血液浄化用回路Nについて説明する。図2には、血液浄化用回路Nを、血液透析回路に適用した場合の概略説明図が示されている。同図において、Aは患者からの血液を流入させる血液流入部(脱血部)、Bは浄化された血液を患者に戻す血液返送部(返血部)である。
【0041】
上記血液流入部Aは、ろ過器(ダイアライザ)20の血液流入部20aに接続されるチューブ21に連結されている。チューブ21の途中には、上流側から、シリンジポンプ22、ピロー23、血液ポンプ24、第1チャンバ25が配置されている。シリンジポンプ22は、血液中に抗凝固剤などを添加するために設けられている。第1チャンバ25には、保護フィルタ26を介して圧力計27が接続されており、第1チャンバ25上部の空気層の圧力を測定し、血液ポンプ24を制御することにより、ろ過器20への送液圧力を調整するようにしている。
【0042】
上記チューブ21を通ってろ過器20に流入した血液は、ろ過器20内の図示しない中空糸内を通過し、血液流出部20bからチューブ28を通して患者への血液返血部Bに連結されている。チューブ28の途中には、第2チャンバ29が配置されている。第2チャンバ29には、上記第1チャンバ25と同様に、保護フィルタ30を介して圧力計31が連結されており、患者への送液圧力を検出できるようにしている。
【0043】
更にこの実施形態における血液浄化用回路Nは、血液中の老廃物や電解質等を取り除き、また、電解質を補う透析液を供給する透析液ラインL1と、血液から取り除かれた老廃物や電解質、水等を含むろ液を体外へと排出するろ液ラインL2と、体内から除去された体液成分を補充する補液を供給する補液ラインL3とを有している。なお、電解質としては、ナトリウムやカルシウム等である。
【0044】
前記透析液ラインL1はチューブ40を有し、その一端が透析液を充填したパック41に接続され、他端がろ過器20の透析液流入部20cに接続されている。そして、透析液流入部20cを通ってろ過器20内に流入した透析液は、ろ過器20内の中空糸の外側空間を通過して、同ろ過器20の透析液流出部20dから後述するチューブ50を通して取出されるようになっている。また、チューブ40の途中には、透析液の流速を計測するための計量容器45と、透析液を送液するための透析液ポンプ46とが取付けられている。
【0045】
前記ろ液ラインL2はチューブ50を有し、その一端が前記ろ過器20の透析液流出部20dに接続され、他端が廃液容器57内に配置されている。チューブ50の上流側(ろ過器20側)の途中には、第3チャンバ51が配置されている。この第3チャンバ51には、保護フィルタ52を介して圧力計53が接続されており、ろ液の送液圧力を検出できるようになっている。そして、透析液流出部20dから流出したろ液は、チューブ50を通って廃液容器57に回収されるようになっている。また、チューブ50の下流側(廃液容器57側)の途中には、ろ液の流速を計測するための計量容器55と、ろ液を送液するためのろ液ポンプ56とが取付けられている。
【0046】
前記補液ラインL3はチューブ60を有し、その一端が補液を充填したパック61に接続され、他端が第2チャンバ29の上部に連結されており、補液がチューブ60を通って第2チャンバ29へと供給されるようになっている。また、チューブ60の途中には、補液の流速を計測するための計量容器65と、補液を送液するための補液ポンプ66とが取付けられている。
【0047】
上記のように各ラインL1,L2,L3を構成するチューブ40,50,60と、各ラインL1,L2,L3に取付けられた計量容器45,55,65とは、図3に示すように1つのホルダ70によって並列させて保持されて、図4に示すように前記血液浄化装置1の血液浄化装置本体3に、複数の計量容器45,55,65を一度に取付けられるようになっている。
【0048】
以下、ホルダ70について説明する。この実施形態におけるホルダ70は、前記計量容器45,55,65を保持可能な間隔で互いに平行に配置された上下一対の横フレーム71,71と、該横フレーム71に対して直交し、一対の横フレーム71,71どうしを連結するように、各計量容器45,55,65が配置される部分の間に配置される2本の縦フレーム72,72とから構成されている。図3に示すように、一対の横フレーム71,71の外面どうしの間隔D1は、計量装置10A,10B,10Cの、上下一対のセンサ11,11の内面どうしの間隔D2に適合する大きさとされており、ホルダ70を一対のセンサ11,11の間隔D2に挿入可能となっている。
【0049】
上記ホルダ70は、例えば、ポリアセタールや、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成することができる。また、この実施形態では、図5に示すように、一対の横フレーム71,71の対向する面に、嵌合溝71a,71aがそれぞれ形成され、これらに各縦フレーム72の両端部を嵌合させることにより、両フレーム71,72どうしが組付けられるようになっている。ただし、両フレーム71,72を射出成型等により一体形成してもよく、特に限定されるものではない。また、この実施形態では、3つの計量容器を保持するために2本の縦フレーム72,72を用いているが、例えば、2つの計量容器を保持する場合には1本の縦フレーム72を配置し、4つ以上の計量容器を保持する場合には、その数に応じて3本以上の縦フレーム72を配置してもよい。
【0050】
上記ホルダ70は、各計量装置10A,10B,10Cの上下一対のセンサ11,11の間隔D2へ向けて押し込むようになっているが、このときのホルダ押し込み方向側の面、すなわち、ホルダ70を構成する横フレーム71の背面には、各計量容器45,55,65の縮径した端部45a,55a,65a及び該端部から伸びるチューブ40,50,60を保持するための、保持溝73が形成されている。図5を併せて参照すると、この保持溝73は、各チューブ40,50,60が挿入されて、これを保持するチューブ挿入溝73aと、一対の横フレーム71,71の対向する内面に形成され、各計量容器の端部45a,55a,65aを嵌合保持する容器嵌合凹部73bとから構成されている。チューブ挿入溝73a及び容器嵌合凹部73bは、その内面が共に円周状をなしており、円筒状のチューブ40,50,60及び各計量容器の端部45a,55a,65aをガタ付きなく保持できるようになっている。また、チューブ挿入溝73a及び容器嵌合凹部73bの横フレーム71背面側の開口は、内部空間よりも狭められていて、チューブ40,50,60及び各計量容器の端部45a,55a,65aの抜け止めが図られている。
【0051】
図5に示すように、各計量容器45,55,65から伸びるチューブ40,50,60は、各チューブ挿入溝73aに挿入されると共に、横フレーム71,71の外面側から挿出されるようになっている。そして、ホルダ70の保持溝73のチューブ挿出部分、すなわち、チューブ挿入溝73aの容器嵌合凹部73bとは反対側の周縁からチューブ挿出方向に沿って、前記センサ11の凹部14に挿入される突出部75が突設されている。この突出部75の外面は、前記凹部14の形状に適合するように丸みを帯びて突出した形状をなし、凹部14に挿入された突出部75が、ガタ付きなく保持されるようになっている。
【0052】
次に、図2を参照して血液透析回路の基本的な動作について概略説明をすると、患者の血液取出し部Aから取出された血液が、血液ポンプ24により、チューブ21を通して、第1チャンバ25に供給され、この第1チャンバ25からろ過器20の中空糸内に流入する。
【0053】
一方、透析液は、パック41からチューブ40を通り、透析液ポンプ46によって、ろ過器20の下部から中空糸の外側空間に流入する。そして、ろ過器20内にて、中空糸膜を通して、血液中の老廃物が透析液側に移行し、血液が浄化される。
【0054】
ろ過器20を通過して浄化された血液は、チューブ28を通り、第2チャンバ29に流入する。また、パック61からチューブ60を通して、補液ポンプ66によって供給される補液が、第2チャンバ29に流入し、浄化された血液に補液が添加される。こうして浄化された血液は、チューブ28を通して患者の血液返送部Bに戻される。
【0055】
上記の流れで血液浄化がなされるが、このとき、計量装置10A,10B,10Cに設置された各ラインL1,L2,L3の計量容器45,55,65を利用して、チューブ40,50,60を流れる透析液,ろ液,補液の流速がそれぞれ計測される。各液の流速の計測にあたっては、前記制御装置によって各ラインL1,L2,L3の計量容器45,55,65の上部側及び下部側に配置されたクランプC1,C2の開閉を、所定のタイミングで制御して、各計量容器45,55,65を流動する各液の通過時間を測定し、この通過時間と計量容器45,55,65の容積とによって、前記制御装置の演算処理部で流速を求めるようになっている。
【0056】
例えば、透析液及び補液の各流速は次のようにして計測される。すなわち、各ラインL1,L3のクランプC1が閉じ、クランプC2が開いて、各ポンプ46,66が回転した送液状態で、クランプC1,C2を共に開くと、各計量容器45,65に各液が流入して、液面が次第に上昇する。そして、各液の液面が上方のセンサ11に到達したとき、クランプC1を開いたままで、クランプC2を閉じると、計量容器45,65内の各液の液面が次第に下降する。その後、各液の液面が下方のセンサ11を通過したら、クランプC1を閉じ、クランプC2を開いて、送液が継続される。上記のようなクランプC1,C2の開閉動作(C1閉,C2開→C1,C2開→C1開,C2閉→C1閉,C2開)が所定時間ごとに繰り返される。このときの、計量容器45,65内の各液の液面が、上方のセンサ11に到達したときから、下方のセンサ11を通過するときまでの時間を計測する。そして、各計量容器45,65の容積を前記時間で除することにより、各ラインを流れる液の流速を測定することができる(各液の流速=各計量容器の容積/各液の通過時間)。
【0057】
一方、ろ液の流速は次のようにして計測される。すなわち、ろ液ラインL2のクランプC1が閉じ、クランプC2が開いて、ろ液ポンプ56が回転したろ液の送液状態で、クランプC1を開き、クランプC2を閉じると、計量容器55にろ液が流入して、液面が次第に上昇する。ろ液の液面が上方のセンサ11に到達したとき、クランプC1,C2が共に開き、計量容器55内のろ液の液面が次第に下降する。その後、ろ液の液面が下方のセンサ11を通過したら、クランプC1を閉じ、クランプC2を開いて、送液が継続される。上記のクランプC1,C2の開閉動作(C1閉,C2開→C1開,C2閉→C1,C2開→C1閉,C2開)が所定時間ごとに繰り返される。このときの、計量容器55の液面が、上方のセンサ11に到達したときから、下方のセンサ11を通過するときまでの時間を計測する。そして、計量容器55の容積を前記時間で除することにより、ろ液ラインL2を流れるろ液の流速を測定することができる(ろ液の流速=計量容器の容積/ろ液の通過時間)。
【0058】
そして、各液の流速情報と、制御装置に格納された所定の基準流速とが比較されて、制御部により、各ポンプ46,55,65の回転速度が制御される。このように、図示しない制御装置によるフィードバック処理により、各ラインL1,L2,L3を流れる各液の流速が制御されるようになっている。
【0059】
次に、上記構成からなる本発明の血液浄化装置の作用効果、及び、本発明による血液浄化装置本体への血液浄化用回路の取付け方法に関する。
【0060】
まず、ホルダ70の各保持溝73に、対応する計量容器45,55,65を組付ける。例えば、図5に示すように、上下一対の横フレーム72,72の容器嵌合凹部73b,73bに、計量容器65の両端部65a,65aをそれぞれ嵌合させると共に、計量容器65に接続された上下のチューブ60,60をチューブ挿入溝73a,73aに挿入することにより、計量容器65をホルダ70の所定箇所に組付ける。この作業を計量容器45,55について繰り返すことより、図3に示すように、透析液ラインL1の計量容器45、ろ液ラインL2の計量容器55、補液ラインL3の計量容器65を、ホルダ70に並列させて一体的に保持させることができる。
【0061】
このように、血液浄化用回路N中の3つのラインに設けられた計量容器45,55,65を1つのホルダ70で保持することができ、その結果、取扱い性を向上させることができ、各計量容器45,55,65の、対応する計量装置10A,10B,10Cへの取付け作業をよりスムーズに行うことができる。
【0062】
このとき、ホルダ70は、一対の横フレーム71,71と、これらを連結するように各計量容器が配置される部分の間に配置された縦フレーム72,72とで構成されているので、ホルダ70を比較的軽量でかつ必要充分な強度を維持するように構成することができると共に、各計量容器45,55,65が外側から見えるように保持することができ、その組付け状態を確認しやすくなる。また、横フレーム71や縦フレーム72を持って押えることができるので、保持溝73に計量容器の端部やチューブを保持させるときに作業しやすく、更に、一対のセンサ11,11間にホルダ70を挿入して、各チューブを所定のチューブ挟持部12に押し込むときも作業しやすくなる。
【0063】
上記のように各計量容器をホルダ70に組付けたら、このホルダ70のチューブ40,50,60が挿入された背面側を、複数組並列された計量装置10A,10B,10Cに向けて、上下一対のセンサ11,11の間隔D2にホルダ70を挿入していく。ここでは、ホルダ70の3つの突出部75,75,75を、各センサ11に形成された3つの凹部14,14,14にそれぞれ挿入していくことにより、各ラインL1,L2,L3のチューブ40,50,60を、対応する各計量装置10A,10B,10Cのチューブ挟持部12,12,12に容易に整合させることができる。
【0064】
この状態でホルダ70を押し込んでいくと、前記凹部14に突出部75がガイドされ摺接しつつ、チューブ40,50,60がチューブ挟持部12のテーパ状をなした両側部13,13に案内されて、対応したチューブ挟持部12に押し込まれていく。このとき、各チューブ40,50,60のチューブ挟持部12に押し込まれる直前の部分を、ホルダ70の突出部75でサポートしながら押し込むことができるので、柔軟なチューブであってもチューブ挟持部12に容易に挿入することができる。
【0065】
以上説明したように、この発明においては、複数の計量容器45,55,65を1つのホルダ70に一体に保持させることができると共に、このホルダ70を、複数組並列された計量装置10A,10B,10Cの、上下一対のセンサ11,11の間隔D2に挿入するだけの簡単な操作で、複数の計量容器45,55,65を一度に、対応した計量装置10A,10B,10Cに取付けることができる。
【0066】
また、所定ラインの一対のセンサ間に計量容器を一つずつ手作業で取付けるのではなく、上下一対のセンサ11,11の間隔D2に適合するホルダ70を用いて、各計量容器45,55,65を各計量装置10A,10B,10Cに取付けるようにしたので、各計量装置10A,10B,10Cの各センサ11のチューブ挟持部12に、対応するチューブを確実に押し込むことができ、チューブの押し込み不良によるセンサの誤動作を防いで、各液の流速を正確かつ確実に測定することができる。
【0067】
また、メーカー側で各ラインL1,L2,L3に設けられた計量容器45,55,65を予めホルダ70の所定の保持溝73に保持させておくことにより、ユーザーが各ラインを差し違えて計量装置10A,10B,10Cにセットしてしまう虞れを確実に防止することができると共に、ユーザーの血液浄化装置1への回路取付作業を容易かつスムーズに行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 血液浄化装置
3 血液浄化装置本体
3a 前面
3b 側面
4 脚部
4a 車輪
5 操作パネル
6 ディスプレイ
N 血液浄化用回路
10,10A,10B,10C 計量装置
11 センサ
12 チューブ挟持部
13 取付板
13,13 側部
14 凹部
15 取付板
16 チューブ支持板
20 ろ過器
20a 血液流入部
20b 血液流出部
20c 透析液流入部
20d 透析液流出部
21 チューブ
22 シリンジポンプ
23 ピロー
24 血液ポンプ
25 チャンバ
26 保護フィルタ
27 圧力計
28 チューブ
29 チャンバ
30 保護フィルタ
31 圧力計
L1 透析液ライン
40 チューブ
41 パック
45 計量容器
45a 端部
46 透析液ポンプ
L2 ろ液ライン
50 チューブ
51 チャンバ
52 保護フィルタ
53 圧力計
55 計量容器
56 ろ液ポンプ
57 廃液容器
L3 補液ライン
60 チューブ
61 パック
65 計量容器
65 計量容器
66 補液ポンプ
70 ホルダ
71 横フレーム
71a 嵌合溝
72 縦フレーム
73 保持溝
73a チューブ挿入溝
73b 容器嵌合凹部
75 突出部
A 血液流入部
B 血液返血部
C1,C2 クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対のセンサを有する計量装置が、複数組並列された状態で設置され、各センサは、チューブ挟持部を有している血液浄化装置本体と、該血液浄化装置本体に取付けられる血液浄化用回路とを備える血液浄化装置において、
前記血液浄化用回路は、複数のラインを構成するチューブと、複数のラインのうちの少なくとも2つのラインに設けられた計量容器と、該計量容器を並列させて保持する1つのホルダとを備え、
前記ホルダは、前記計量容器の両端部及び/又は同両端部から伸びるチューブをそれぞれ保持する保持溝を有し、前記並列した複数組の計量装置の上下一対のセンサの間隔に適合する形状をなし、
前記ホルダを前記間隔に挿入することにより、保持したチューブを対応するチューブ挟持部に挿入できるように構成されていることを特徴とする血液浄化装置。
【請求項2】
前記ホルダの前記保持溝のチューブ挿出部分には、チューブ方向に沿って突出した突出部が設けられ、前記計量装置の上下一対のセンサのチューブ挟持部には、上下に対向する面に凹部が設けられており、前記突出部が前記凹部に適合するように構成されている請求項1記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記保持溝が設けられた一対の横フレームと、この一対の横フレームを連結するように各計量容器が配置される部分の間に配置された縦フレームとで構成されている請求項1又は2記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記ラインは、透析液ラインと、ろ液ラインと、補液ラインとを少なくとも有し、前記3つのラインにそれぞれ前記計量容器が設けられていて、前記ホルダは、この3つの計量容器を保持するように構成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の血液浄化装置。
【請求項5】
上下一対のセンサを有する計量装置が、複数組並列された状態で設置され、各センサは、チューブ挟持部を有している血液浄化装置本体に、複数のラインを構成するチューブと、複数のラインのうちの少なくとも2つのラインに設けられた計量容器とを有する血液浄化用回路を取付ける方法において、
前記計量容器の両端部及び/又は同両端部から伸びるチューブをそれぞれ保持する保持溝を有し、前記並列した複数組の計量装置の上下一対のセンサの間隔に適合する形状をなす1つのホルダを用い、
このホルダの対応する保持溝に、前記各計量容器の両端部及び/又は同両端部から伸びるチューブを挿入して、前記各計量容器を前記ホルダに保持させ、
前記ホルダを前記複数組の計量装置の上下一対のセンサの間隔に挿入することにより、保持したチューブを対応するチューブ挟持部に挿入することを特徴とする血液浄化装置本体への血液浄化用回路の取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−78584(P2011−78584A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233519(P2009−233519)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(394023241)JUNKEN MEDICAL株式会社 (13)
【Fターム(参考)】