説明

血液透析装置

本発明の血液透析装置は、内部を通る血液と透析液間の圧力差を用いて血液を透析する血液透析フィルター、および前記血液透析フィルター内で血液の圧力が透析液の圧力より高い時点と透析液の圧力が血液の圧力より高い時点とが交番に発生するように、血液と透析液を前記血液透析フィルターへ供給する供給手段を含んで構成される。本発明の血液透析装置は、血液透析フィルターの大きさを増大させることなく、短時間に多量の血液を透析させることができ、血液および透析液の供給圧力を調節することにより、血液透析量を簡便に調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析膜を介して血液と透析液を流動させることにより、血液内の不純物を濾すための血液透析装置に係り、さらに詳しくは、血液と透析液の圧力を交番に上昇および下降させることにより透析効率が増大するように構成される血液透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓の一部または全体に機能障害が起こると、小便として体外に排出すべき老廃物が血中に蓄積されると同時に、体内の電解質バランスの不均衡が発生する。このような腎不全症状を是正する方法として、血液透析装置を用いた体外循環療法が広く行われており、拡散または濾過の原理によって血中の老廃物を体外に除去すると同時に、電解質バランスの均衡化を図っている。
【0003】
通常、血液透析装置は、血液側と透析液側との間で透析膜を経る物質移動が起こり得るように、一つのハウジング内に透析膜が取り付けられた血液透析フィルターを用いて血液内の不純物を外部へ排出させるように構成される。
この際、前記透析膜は、平膜型と中空糸膜型の2種に大別されているが、一般に筒状容器に中空糸膜の束を装填し、その両端部に樹脂層部を設置してポッティング加工した中空糸膜型血液透析フィルターが、現在には血液透析フィルターの大部分を示している。その理由は、全体の容量がコンパクトなものに比べては血液または透析液との接触面積が大きいから、物質移動効率が優れるためである。
以下、添付図面を参照して従来の血液透析装置について詳細に説明する。
【0004】
図1は一般な血液透析装置の構成を示す概略図、図2は血液透析装置に用いられる中空糸膜型血液透析フィルターの断面図である。
【0005】
図1に示すように、通常、血液透析装置は、血液と透析液が内部を通るように構成され、血液内の不純物を透析液へ排出させる血液透析フィルター100と、前記血液透析フィルターへ綺麗な透析液を供給するための純粋透析液タンク200と、血液透析フィルター100を経た透析液を込めるための透析液回収タンク300と、前記血液透析フィルター100へ供給される綺麗な透析液と血液透析フィルター100から回収された透析液とを比較し、透析液供給量と透析液回収量を一定に調節するバランサー400と、患者の血液を血液透析フィルター100へ供給するための血液ポンプ500と、純粋透析液タンク200内の透析液を血液透析フィルター100へ供給するための透析液ポンプ600とを含んで構成される。
【0006】
前記血液透析フィルター100は、図2に示すように、内部空間を有するハウジング110と、前記ハウジング110の内部空間に取り付けられる中空糸膜型透析膜120とを含んで構成される。前記ハウジング110の上側と下側にはそれぞれ血液流入口112と血液流出口114が設けられ、前記ハウジング110の側面下端部と上端部にはそれぞれ透析液流入口116と透析液流出口118が設けられる。よって、前記血液流入口112に流入した血液は前記透析膜120の内部を経て血液流出口114を介して排出され、前記透析液流入口116を介して流入した血液は透析膜120とハウジング110との間の空間を経て前記透析液流出口118へ排出される。
【0007】
図3は従来の血液透析装置を用いるときに血液圧力および透析液圧力の変動を示すグラフである。
【0008】
図2に示したように構成される血液透析フィルター100は、血液と透析液が互いに反対方向に流れるように構成されるが、血液ポンプ500と透析液ポンプ600はそれぞれ血液流入口112と透析液流入口116側に取り付けられるので、血液と透析液はそれぞれ血液流出口114と透析液流出口118側へ行くほど圧力が低くなる。
【0009】
すなわち、図3に示すようにハウジング110の上側、すなわち血液流入口112と透析液流出口118が設けられた部位では透析液より血液の圧力が高く、ハウジング110の下側、すなわち血液流出口114と透析液流入口116が設けられた部位では血液より透析液の圧力が高い。この際、前記血液ポンプ500と前記透析液ポンプ600はそれぞれ血液と透析液を一定の量だけ持続的に供給するので、血液圧力線Bと透析液圧力線Dはほぼ直線を成す。
【0010】
したがって、血液の圧力が透析液の圧力より高い地点では、図3に示した斜線領域だけの水分、電解質および老廃物が透析液側へ拡散し、透析液の圧力が血液の圧力より高い地点では、格子縞領域だけの透析液が血液側へ伝達される。このような拡散反応が持続されることにより、血液内の老廃物は益々血液の外部へ排出されるので、患者は老廃物が除去された多量の血の供給を受けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上述したように構成される従来の血液透析装置は、血液および透析液の圧力降下量が少なくて血液と透析液間の圧力差を十分に置くことができないため、短時間に多量の血液を透析させることができないという問題点がある。勿論、血液と透析液とが出会う経路をあまり長くすると、より多量の血液を透析することができるが、このような場合、血液透析フィルターの大きさがあまり長くなり、多量の透析膜が所要されるという問題点がある。
【0012】
本発明は、上述したような問題点を解決するために提案されたもので、その目的は、血液透析フィルターの大きさを増大させることなく、多量の血液をより効果的に透析させることができるように構成される、血液透析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例によれば、内部を通る血液と透析液間の圧力差を用いて血液を透析する血液透析フィルターと、前記血液透析フィルター内で血液の圧力が透析液の圧力より高い時点と透析液の圧力が血液の圧力より高い時点とが交番に発生するように、血液と透析液を前記血液透析フィルターへ供給する供給手段とを含んで構成される、血液透析装置を提供する。
【0014】
前記供給手段は、前記血液透析フィルターへ供給される血液と透析液の圧力を周期的に可変させる。
【0015】
前記供給手段は、前記血液の脈動波形と前記透析液の脈動波形間の位相差が135度〜225度となるように構成される。
【0016】
前記血液透析フィルターは、血液の流動方向と透析液の流動方向とが互いに反対となるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る血液透析装置は、血液透析フィルターの大きさを増大させることなく、短時間に多量の血液を透析させることができ、血液と透析液の供給圧力を調節することにより、血液透析量を簡便に調節することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は一般な血液透析装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は血液透析装置に用いられる中空糸膜型血液透析フィルターの断面図である。
【図3】図3は従来の血液透析装置を用いるときに血液圧力と透析液圧力の変動を示すグラフである。
【図4】図4は本発明に係る血液透析装置を用いたときに血液の供給圧力と透析液の供給圧力を示すグラフである。
【図5】図5は本発明に係る血液透析装置の実施例を示す概略図である。
【図6】図6は本発明に係る血液透析装置に適用される供給手段の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明に係る血液透析装置の実施例を詳細に説明する。
【0020】
図4は本発明に係る血液透析装置を用いたときに血液透析フィルター内の血液圧力と透析液圧力を示すグラフである。
【0021】
本発明に係る血液透析装置は、図1に示した血液ポンプ500および透析液ポンプ600の駆動方式を有する従来の血液透析装置と比較したとき、血液と透析液を血液透析フィルター100へ供給するための供給手段が異なる。
【0022】
さらに詳しく説明すると、従来の血液透析装置は、血液と透析液が一定の圧力で血液透析フィルター100へ供給されるので、時間を問わず、血液透析フィルター100内の血液圧力と透析液圧力が一定に保たれるが、これに対し、本発明に係る血液透析装置は、血液と透析液の供給圧力を一定の周期で増減させながら 血液と透析液を供給するので、血液透析フィルター100内の血液圧力と透析液圧力が時間帯別に増減する。この際、本発明に係る血液透析装置に含まれる供給手段は、血液透析フィルター100内の血液圧力と透析液圧力が交番に上昇するように、すなわち血液圧力線Bの位相と透析液圧力線Dの位相が互いに反対となるように血液および透析液の供給圧力を可変させる。
【0023】
このように血液の圧力が高くなる時点で透析液の圧力が低くなると、図3に示したグラフと比較したとき、血液と透析液間の圧力差が非常に大きくなるので、血液内の水分および不純物がより速くてより多く透析液内へ拡散する。逆に、透析液の圧力が高くなる時点で血液の圧力が低くなると、図3に示したグラフと比較したとき、透析液と血液間の圧力差が非常に大きくなるので、より多くの透析液がより速く血液内へ流入する。
【0024】
図3および図4における、血液の圧力が透析液の圧力より大きい区間の面積(斜線領域)と、透析液の圧力が血液の圧力より大きい区間の面積(格子縞領域)とを比較しても、本発明に係る図4の場合、血液内の水分、電解質および不純物が透析液内へ拡散する現象、および透析液が血液内へ流入する現象がより速くて効果的に発生するだろうというのが分かる。すなわち、本発明に係る血液透析装置を用いると、血液透析フィルター100の大きさおよび仕様を変更させることなく、血液透析フィルター100内の血液と透析液間の圧力差を増大させることにより、より多くの血液をより速く透析させることができるという利点がある。
【0025】
この際、前記血液圧力線と前記透析液圧力線とが完全なサインカーブを描く場合には血液圧力線と透析液圧力線との位相差が180度となるようにして血液の圧力が透析液の圧力より大きい区間の面積(斜線領域)と透析液の圧力が血液の圧力より大きい区間の面積(格子縞領域)を最大に増大させることにより、血液透析効率を最大に向上させることができる。ところが、実際に血液および透析液を加圧してみると、血液および透析液に圧力を加える時点では圧力線が急上昇し、血液および透析液に加えられた圧力が解除される時点では圧力線が緩やかに下降するので、図4に示したグラフのように一方にやや傾いた線図が現れる。
【0026】
よって、使用者は、血液圧力線と透析液圧力線の形状に応じて2本の圧力線の位相差を180±45度、すなわち135〜225度以内の範囲で適切に調整することが好ましい。この際、位相差の調整範囲を180±45度に限定したことは、2本の圧力線の位相差が135度より小さいか或いは225度より大きい場合、血液の圧力が透析液の圧力より大きい区間の面積(斜線領域)と透析液の圧力が血液の圧力より大きい区間の面積(格子縞領域)が小さくなり、血液透析効率の増大効果が微々たるためである。
【0027】
また、従来の血液透析装置は、血液と透析液間の圧力差が、血液と透析液が血液透析フィルター100の内部を流動する過程で発生する自然的な圧力降下によって形成されるように構成されているので、血液と透析液間の圧力差を容易に増減させることができず、これにより血液透析量の調節に多くの難しさがあった。
【0028】
ところが、本発明に係る血液透析装置は、供給手段、すなわち血液ポンプ500および透析液ポンプ600の駆動力を調節することにより、血液透析フィルター100に流入する血液と透析液の圧力上昇値を調節することができるので、血液と透析液間の圧力差を容易に増減させることができ、これにより血液透析量を容易に調節することができるという利点がある。
【0029】
また、前記血液透析フィルター100内を通る血液と透析液は、血液透析フィルター100の内部との摩擦などによる流動圧力降下が少しずつ発生するが、血液と透析液が同一の方向に流れる場合、例えば血液と透析液はいずれも血液透析フィルター100の上側に流入して下側から流出する場合、血液と透析液はいずれも流動圧力降下が発生するので、血液と透析液との間には供給手段が印加する圧力分だけの圧力差が発生する。
【0030】
ところが、前記血液と透析液が互いに反対方向に流動する場合、例えば、血液は血液透析フィルター100の上側に流入して下側から流出し、透析液は血液透析フィルター100の下側に流入して上側から流出する場合、血液と透析液との間には供給手段が印加する圧力分だけの圧力差、および流動圧力降下による区間別の圧力差(図3に示した圧力差)が同時に発生するので、血液透析効率がさらに向上するという利点がある。
【0031】
したがって、前記血液透析フィルター100は、血液の流動方向と透析液の流動方向が互いに反対となるように構成されることが好ましい。
【0032】
図5は本発明に係る血液透析装置の実施例を示す概略図である。図6は本発明に係る血液透析装置に適用される供給手段の実施例を示す概略図である。
【0033】
血液と透析液を血液透析フィルター100へ供給するための供給手段は、図1に示すように、別途に区分された血液ポンプ500と透析液ポンプ600から構成されてもよく、図5に示すように、血液と透析液を交番に加圧させる複動ポンプ700構造で構成されてもよい。
【0034】
前記複動ポンプ700は、図6に示すように、血液と透析液の流路上に一定量の血液と透析液が担持できる血液袋710および透析液袋720と、前記血液袋710と透析液袋720との間に取り付けられ、血液袋710と透析液袋720を交番に加圧する加圧部材730と、加圧されていた血液袋710および透析液袋720が元の状態に戻るとき、血液および透析液が逆流する現象を防止するために、血液と透析液の流路上にそれぞれ設置される逆止め弁740とを含んでなる。
【0035】
前記血液袋710と透析液袋720は、外部から印加される力によって内部空間の大きさが小さくなれるように可撓性材質で製作されるため、前記加圧部材730によって加圧されるとき、より大きい圧力で血液と透析液を血液透析フィルター100へ供給し、前記加圧部材730による加圧が解除されると、元の状態に戻るように構成される。
【0036】
また、前記加圧部材730は、血液袋710と透析液袋720との間に位置する回転軸を中心として回転可能に構成され、一側には前記血液袋710と透析液袋720を加圧することが可能な突出部が設けられ、1回転する度に前記血液袋710と前記透析液袋720を各1回ずつ加圧するように構成される。すなわち、図6に示した状態で前記加圧部材730が180度回転すると、前記加圧部材730は血液袋710を加圧し、血液袋710を加圧した状態で180度さらに回転すると、さらに透析液袋720を加圧する。
【0037】
このように前記加圧手段が図6に示した複動ポンプ700から構成されると、単に加圧部材730を回転させる操作のみでも、血液と透析液を180度の周期で交番に加圧することができるので、別途の制御手段なしで、図4に示した形状の血液圧力線と透析液圧力線を得ることができる。
【0038】
本実施例では、前記加圧手段が血液ポンプ500と透析液ポンプ600をそれぞれ別途に置いて血液透析フィルター100内の血液と透析液の圧力を交番に上昇させる構造で構成される場合、および血液袋710と透析液袋720を交番に加圧することにより血液透析フィルター100内の血液と透析液の圧力を交番に上昇させる構造で構成される場合についてのみ説明しているが、前記加圧手段は、本実施例で言及された構造に限定されず、血液透析フィルター100内の血液と透析液の圧力を交番に上昇させることが可能な構造であれば、いずれの構造にも変更できる。
【0039】
以上、本発明を好適な実施例によって詳細に説明したが、本発明の範囲は、特定の実施例に限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲によって解釈されるべきであろう。また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変形を加え得ることを理解すべきであろう。
【符号の説明】
【0040】
100:血液透析フィルター
110:ハウジング
112:血液流入口
114:血液流出口
116:透析液流入口
118:透析液流出口
120:透析膜
200:純粋透析液タンク
300:透析液回収タンク
400:バランサー
500:血液ポンプ
600:透析液ポンプ
700:複動ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を通る血液と透析液間の圧力差を用いて血液を透析する血液透析フィルター(100)と、
前記血液透析フィルター(100)内で血液の圧力が透析液の圧力より高い時点と透析液の圧力が血液の圧力より高い時点とが交番に発生するように、血液と透析液を前記血液透析フィルター(100)へ供給する供給手段とを含んで構成されることを特徴とする、血液透析装置。
【請求項2】
前記供給手段は、前記血液透析フィルター(100)へ供給される血液と透析液の圧力を周期的に可変させるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の血液透析装置。
【請求項3】
前記供給手段は、前記血液の脈動波形と前記透析液の脈動波形間の位相差が135度〜225度となるように、前記血液と前記透析液の圧力を可変させることを特徴とする、請求項2に記載の血液透析装置。
【請求項4】
前記血液透析フィルター(100)は、前記血液の流動方向と前記透析液の流動方向が互いに反対となるように構成されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液透析装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2011−520500(P2011−520500A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509393(P2011−509393)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004983
【国際公開番号】WO2009/139523
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510066282)ビーエイチケー カンパニー、リミテッド (2)
【Fターム(参考)】