説明

血清中のBLyS/APRILヘテロ三量体レベルおよび診断方法における使用

本発明は、生体サンプル中の、好ましい実施形態では血清中のBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)レベルを測定する方法を提供する。診断アッセイは、個体がSLE等の自己免疫疾患を発症する可能性または現在罹患している可能性を予測するのに有用であるとともに、自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体を処置する方法においても有用である。診断検査は、患者が特定の薬物処置、特に、単独でまたはその他の免疫抑制薬と組み合わせて行われるHTアンタゴニスト処置に対して応答する可能性を予測するのに役立つ。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
免疫応答間に生じる細胞間相互作用は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーを含む幾つかの細胞表面受容体ファミリーのメンバーによって調節される。TNFRファミリーは多数の膜内在性糖タンパク質受容体から構成され、そのうちの多くはそれぞれのリガンドと協同して異なる造血細胞系統間の相互作用を調節する(Smith 等, The TNF Receptor Superfamily of Cellular and Viral Proteins : Activation, Costimulation and Death, 76 : 959-62, 1994 ; Cosman, Stem Cells 12 : 440-55, 1994)。このファミリーのうちの3つの受容体メンバーは、(1)BCMA、すなわちB細胞成熟抗原(Gras 等, Int. Immunol. 17 : 1093-106, 1995 および Hatzoglou 等, J. Immunol., 165 : 1322-30, 2000)、(2)TACI、すなわち膜貫通活性化因子およびCAML相互作用因子(von Bulow and Bram, Science 228 : 138-41, 1997 および WIPO 公開公報 WO 98/39361)および(3)BLyS/BLyS受容体3(BP3)としても知られているBAFF−R(Thompson 等, Science, 293 : 2108-11, 2001)である。これらの受容体は、TNFリガンド−Bリンパ球刺激因子(BLyS、TALL−1、ztnf4およびTHANKとしても知られているBLyS)(例えば、Shu 等, J. Leukoc. Biol. 65 : 680-683 (1999) 参照)および増殖誘導リガンド(APRIL)(例えば、Hahne 等, J. Exp. Med. 188 : 1185-1190 (1998))の一方または両方に結合することが知られている。具体的には、TACIおよびBCMAはBLySおよびAPRILの両方に結合し、BAFF−RはBLySのみに結合することが知られている。
【0002】
多数のBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストが、上記ファミリーの受容体メンバーに対するリガンドの結合を遮断し、その結合の効果、例えば、特に限定されるわけではないが、B細胞共刺激、形質芽球および形質細胞の生存、Igクラススイッチ、B細胞抗原提示細胞の機能亢進、悪性B細胞の生存、B−1細胞の機能発達、T−1段階以降のB細胞成長、並びに完全な胚中心形成を阻止するために開発されてきた。これらの分子のうちの幾つかは、APRILに結合し、B細胞およびその他の免疫系の要素に対するAPRILの影響を阻止することもできる(Dillon 等. (2006) Nat. Rev. Drug Dis. 5, 235-246)。BLySおよび/またはAPRILの結合を妨害することによってB細胞の機能に作用する、これまで開発されてきた分子としては、例えば、リンフォスタット(Lymphostat)−B(ベリムマブ(Belimumab))等のBLyS抗体(Baker 等, (2003) Arthritis Rheum, 48, 3253-3265 および WO 02/02641);TACI−Ig等の受容体細胞外ドメイン/Fcドメイン融合タンパク質、例えば、その特定の実施形態であるアタシセプト(atacicept)(米国特許出願第20060034852号)、BAFF−R−Fc(WO 05/0000351)およびBCMA−Ig、または受容体細胞外ドメインを利用したその他の融合タンパク質が挙げられる。別の種類のBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストとしては、BLyS結合能によってBLySの受容体への結合をブロックするその他の分子、例えば、AMG623、受容体抗体、並びにWO 03/035846 および WO 02/16312に開示されたその他の分子が挙げられる。
【0003】
このリガンド/受容体ファミリーに関する研究中の側面は、これらのリガンドはin vivoにおいてホモ三量体(TNFファミリーリガンドであると予想される)としてだけでなく、化学量論的に未同定のBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)としても存在するようであるという事実である。極めて小さな異種サンプルセット(すなわち、異なる6種類の自己免疫疾患と診断された15人の患者)を用いたところ、健常対照と比較して血清中のHTが上昇していたことが、Roschke 等(J. Immunol. 169:4314-4321, 2002)によって報告された。しかしながら、これまで、上昇したHTの存在が任意の特定の自己免疫疾患と関連付けられることはなかったし、上記知見を具体的な疾患の治療方法に適用するために必要な分析が行われることもなく、上記知見が逸話的(anecdotally)なものを超えて、すなわち統計的有意性をもって示されることもなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、HTの生物活性に関する研究、および天然HTレベルを自己免疫患者のホモ三量体BLySおよびAPRILレベルと比較するアッセイの発展に関する技術的必要性は依然として残っている。さらに、このアッセイは、HTの発現パターンの同定を可能とし、これによって全身性エリテマトーデス(SLE)等の自己免疫疾患との統計的関連性を同定することが可能となる。そのような情報は、自己免疫疾患を発症する傾向にある個体や病状が進行している個体を同定するために重要であるとともに、自己免疫疾患のBLySおよび/またはAPRILアンタゴニスト処置に対して好ましい応答を示す個体を同定するために重要である。本発明は、自己免疫疾患と関連するHTレベルを提供することによって、並びに、その発現パターンの存在、すなわち、SLE等の自己免疫疾患に罹患した個体における、健常対照で観察されるレベルと比較して増大した血清中HTレベルを決定する診断検査を提供することによって、上記必要性を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、血清およびその他の生体サンプル中のHTレベルをスクリーニングする方法を提供する。上昇したHTレベルはRA等の自己免疫疾患と有意に関連することが示されたので、この測定は診断アッセイとして有用である。そのような診断アッセイは、個体が自己免疫活性と関連する疾患、例えばSLE、に罹患する可能性を予測するのに有用である。本発明はさらに、SLE等の自己免疫疾患に罹患した個体に対する適切な処置を決定する方法を提供する。
【0006】
SLE等の自己免疫活性を示す患者の血清中の高いHTレベルを検出することによって、その疾患の処置に効果的である可能性が高い処置計画を選択することが可能となる。これらの処置計画は、一般的に、単独での、あるいは、別の薬剤、例えば免疫抑制薬(MMFまたはセルセプト(Cellcept)(登録商標)等)またはCD20アンタゴニスト(リツキサン(Rituxan)(登録商標)等)と組み合わせたBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストの使用を含む。
【0007】
本発明はさらに、自己免疫疾患であると新たに臨床的に診断された個体を処置する方法を提供し、この方法は、一般的には、健常対照の血清で観察されるレベルと比較して高い血清中HTレベルを検出すること、および、自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体に最も効果的な処置計画を選択することを含む。高い血清中HTレベルの検出は、患者が具体的な薬物処置、特にBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストに対して応答する可能性を予測することも可能とする。本発明はさらに、SLE等の自己免疫疾患の処置の間に患者がBLySおよび/またはAPRILアンタゴニスト(単独、またはその他の薬物と組み合わせたもの)に対して応答する可能性を予測する方法を提供する。
【0008】
具体的には、本発明は、個体の血清中の増大したHTレベルを検出する方法であって、生体サンプル中の第一のHTタンパク質レベルを測定すること、第一のレベルを健常個体の生体サンプル中の第二のHTタンパク質レベルと比較すること、および、第一のレベルが第二のレベルと比較して増大しているか否かを決定することを含み、上記増大したHTタンパク質レベルが自己免疫疾患と関連している方法である。本発明において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー(Wegener)病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択され得る。特に、自己免疫疾患はSLEである。
【0009】
本発明はまた、自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体を処置する方法であって、自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体に由来する生体サンプルを、上昇した血清中HTレベルの存在または不存在について分析すること、ここで、上昇したHTレベルの存在は自己免疫疾患の臨床診断と関連している;および、増大したHTレベルと関連する疾患に罹患していると臨床的に診断された個体に最も効果的な処置計画を選択することを含む方法である。処置計画は、BLySアンタゴニストの投与を含み得る。好ましい実施形態において、上記BLySアンタゴニストは、APRILアンタゴニストでもあり得る。特に、処置計画はHTアンタゴニストの投与を含む。この方法において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択され得る。特に、自己免疫疾患はSLEである。
【0010】
本発明はさらに、患者が自己免疫疾患の薬物処置に対して応答する可能性を予測する方法であって、血清中HTレベルを決定することを含み、上昇したHTレベルの存在が、患者が上記疾患の薬物処置に対して応答する可能性の予兆(predictive)である方法である。自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択され得る。特に、自己免疫疾患はSLEである。さらに、本発明の方法において、薬物処置は、BLySおよび/またはAPRILアンタゴニストであり得るHTアンタゴニストの投与を含み得る。
【0011】
本発明はまた、個体の血清中の増大したHTレベルを検出するin vitro方法であって、個体に由来する試験生体サンプル中のHTレベルを測定すること;そのレベルを健常対照に由来する生体サンプル中のHTレベルと比較すること;および、試験生体サンプル中のHTレベルが対照サンプル中のレベルと比較して増大しているか否かを決定することを含み、上記増大したHTレベルが自己免疫疾患と関連している方法を包含する。この方法において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択され得る。特に、自己免疫疾患はSLEである。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体を処置するために最も効果的な処置計画を選択するin vitro方法であって、自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体に由来する生体サンプルを、血清中の上昇したHTレベルの存在または不存在についてin vitroで分析することを含み、上記上昇したHTレベルの存在が自己免疫疾患の臨床診断と関連している方法を包含する。この方法において、処置計画はHTアンタゴニストの使用を含み得る。HTアンタゴニストはBLySおよび/またはAPRILでもあり得る。自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択され得る。特に、自己免疫疾患はSLEである。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、患者が自己免疫疾患に対する薬物処置に応答する可能性を予測するin vitro方法であって、患者に由来するサンプル中のHTレベルを決定することを含み、上昇したHTレベルの存在が、患者が上記疾患に対する薬物処置に応答する可能性の予兆である方法を包含する。自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択され得る。特に、自己免疫疾患はSLEである。本発明の薬物処置は、HTアンタゴニストを含み得る。HTアンタゴニストはBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストでもあり得る。
【0014】
本発明はさらに、患者の自己免疫疾患の処置に使用するためのBLySアンタゴニストであって、患者において血清中のHTレベルが上昇したレベルにあるBLySアンタゴニストを包含する。アンタゴニストは、TACI−IgおよびBCMA−Igから選択された受容体細胞外ドメイン/Fcドメイン融合タンパク質でもあり得る。特に、受容体細胞外ドメイン/Fcドメイン融合タンパク質は、アタシセプト(atacicept)等のTACI−Igであり得る。
本発明のこれらの側面およびその他の側面は、以下に詳述された本発明の詳細を読むことよって当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、SLEまたはRAと診断された患者群および健常対照群のヘテロ三量体レベルの散布図である。
【図2】図2は、図1のデータに基づくヘテロ三量体の平均レベルを示す。
【図3】図3は、第二のSLE患者群のヘテロ三量体レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、血清等の生体サンプル中のHTレベルをスクリーニングする方法、並びに、自己免疫疾患の存在を予測するための、および患者がHTアンタゴニスト処置に対して応答する可能性を予測するための、この情報の使用を提供する。本発明は、自己免疫患者の血清中のHTレベルが統計的に上昇するという知見に基づく。HTアンタゴニスト(BLySおよび/またはAPRILアンタゴニストでもあり得る)は、患者のB細胞等の免疫細胞による自己免疫イムノグロブリンおよびその他の組織破壊性サイトカインの産生を選択的に無効化する。この所見は、その高いレベルがSLE等の自己免疫疾患と関連するHTレベルの増大の存在を検出する診断アッセイの開発を可能とし、また、B細胞等の反応性免疫細胞の作用を無効化する処置方法、すなわちHTアンタゴニスト(BLySおよび/またはAPRILアンタゴニスト)に対して個体が成功裏に応答する可能性の予測を可能とする。
【0017】
以下、本発明について詳述するが、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、もちろん変更等が可能であると理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるから、本明細書中の用語は特定の実施形態のみを記述する目的で用いられ、限定的な意図はないと理解されるべきである。
【0018】
特に定義しない限り、本明細書中の全ての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施または試験にあたり、本明細書中に記載したものと類似または同等である、いかなる方法および物質を用いてもよいが、好ましい方法および物質を本明細書に記載する。本明細書中で言及した全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれ、これによって、言及された刊行物の方法および物質は本明細書に開示および記載される。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈から明らかに異なると判断されない限り、単数形("a","an" および "the")は複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「多型」にはそのような多型の複数が含まれ、「核酸分子」にはそのような核酸分子の複数が含まれ、「方法」には1または2以上の方法、方法工程および当業者に知られた同等物等が含まれる。
【0020】
本出願の出願日以前に開示された刊行物についてのみ、本明細書に記載される。本明細書には、先行発明に基づきそのような刊行物に先行する権利が本発明に与えられていないことの承認として解釈されるべき事項はない。さらに、記載された刊行物の日付が現実の公開日と異なる可能性もあるので、個々に確認する必要があるかもしれない。
【0021】
定義
本明細書中の「ヘテロ三量体(HT)」という用語は、3個のリガンドサブユニットの多量体を包含し、各リガンドサブユニットはBLySまたはAPRILであり、少なくとも1個のサブユニットはBLySであり、少なくとも1個のサブユニットはAPRILである。したがって、「HT」には、BLySが2個およびAPRILが1個である分子、並びにAPRILが2個およびBLySが1個である分子が含まれる。
【0022】
本明細書中の「多型」という用語は、所定領域のヌクレオチドまたはアミノ酸配列における、別の個体の相同領域のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較した相違、特に、同種の個体間で相違する所定領域のヌクレオチドまたはアミノ酸配列における相違を意味する。多型は、一般的には、参照配列との関連において規定される。多型には、1塩基の相違、2塩基以上の配列相違、1または複数のヌクレオチドの挿入、逆位および欠失;並びに1アミノ酸の相違、2アミノ酸以上の配列相違、1または複数のアミノ酸の挿入、逆位および欠失が含まれる。
【0023】
「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」という用語は、本明細書において互換可能に用いられ、いかなる長さのヌクレオチドポリマー形態をも意味する。ポリヌクレオチドには、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチドおよび/またはそれらのアナログが含まれ得る。ヌクレオチドは、いかなる三次元構造を有していてもよく、既知または未知のいかなる機能を発揮してもよい。「ポリヌクレオチド」という用語には、一本鎖、二本鎖および三重らせん分子が含まれる。「オリゴヌクレオチド」は、一般的には、一本鎖または二本鎖DNAである約5個から約100個のヌクレオチドからなるポリヌクレオチドを意味する。しかしながら、本開示の目的の点から、オリゴヌクレオチドの長さの上限はない。オリゴヌクレオチドはオリゴマーまたはオリゴとしても知られており、遺伝子から単離してもよいし、当技術分野で公知の方法によって化学合成してもよい。
【0024】
非限定的なポリヌクレオチドの実施形態は次のとおりである:遺伝子または遺伝子フラグメント、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意配列の単離DNA、任意配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。核酸分子には、メチル化核酸分子および核酸分子アナログ等の修飾核酸分子が含まれ得る。プリンおよびピリミジンのアナログは当技術分野で公知である。核酸は天然に存在するもの、例えばDNAまたはRNAであってもよいし、当技術分野で公知の合成アナログであってもよい。このようなアナログは、アッセイ条件下での優れた安定性ゆえ、プローブとして用いることが好ましい。骨格、糖類または複素環塩基の変更等の天然構造の修飾によって、細胞内安定性および結合親和性が増大することが示されている。骨格化学における有用な変更としては、例えば、ホスホロチオエート;2個の非架橋酸素が硫黄で置換されているホスホロジチオエート;ホスホロアミダイト;アルキルホスホトリエステルおよびボラノホスフェートが挙げられる。アキラルなホスフェート誘導体としては、例えば、3'−O−5'−S−ホスホロチオエート、3'−S−5'−O−ホスホロチオエート、3'−CH−5'−O−ホスホネートおよび3'−NH−5'−O−ホスホロアミダイトが挙げられる。ペプチド核酸では、リボースホスホジエステル骨格全体がペプチド結合で置換される。
【0025】
糖修飾は、安定性および親和性を向上させるためにも用いられる。天然のβ−アノマーに対して塩基が反転しているα−アノマーを用いてもよい。リボース糖の2'−OHは、2'−O−メチルまたは2'−O−アリル糖を形成するように変更してもよく、これによって親和性を付与することなしに分解に対する抵抗性が付与される。
【0026】
複素環塩基の修飾は、適切な塩基対を維持するものである必要がある。有用な置換としては、例えば、デオキシウリジンを用いたデオキシチミジンの置換、5−メチル−2'−デオキシシチジンおよび5−ブロモ−2'−デオキシシチジンを用いたデオキシシチジンの置換が挙げられる。5−プロピニル−2'−デオキシウリジンおよび5−プロピニル−2'−デオキシシチジンを用いてそれぞれデオキシチミジンおよびデオキシシチジンを置換すると、親和性および生物活性が増大することが示されている。
【0027】
本明細書中で互換可能に用いられる「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸ポリマー形態を意味し、コードアミノ酸および非コードアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導化されたアミノ酸、並びに修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。この用語には、融合タンパク質、例えば、特に限定されるわけではないが、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質、N末端メチオニン残基を有するまたは有しない異種および同種リーダー配列を有する融合タンパク質;免疫学的に標識されたタンパク質等が含まれる。
【0028】
最も広義には、本明細書中の「自己免疫疾患」という用語は、患者の免疫系において1または2以上の自己タンパク質に対する好ましくない免疫応答が生じている疾患を意味する。自己免疫疾患の代表例としては、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎が挙げられる。
【0029】
「実質的に単離された」または「単離された」ポリヌクレオチドは、自然界において結び付いている配列を実質的に含まないものである。実質的に含まないとは、自然界において結び付いている物質を少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに一層好ましくは少なくとも90%含まないことを意味する。また、本明細書中の「単離された」ポリヌクレオチドは、元来または操作によって、(1)自然界において結び付いているポリヌクレオチドの全てまたは一部と結び付いていない、(2)自然界において結び付いているポリヌクレオチド以外のポリヌクレオチドと結び付いている、(3)自然界に存在しない、組換えポリヌクレオチドをも意味する。
【0030】
ハイブリダイゼーション反応は、種々の「ストリンジェンシー」の条件下で実施することができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを増大させる条件は、当技術分野で広く知られているし、刊行もされている。例えば、Sambrook 等 (1989)を参照。そのような条件(ストリンジェンシーを増大させる条件)の具体例としては、インキュベーション温度が25℃、37℃、50℃および68℃;バッファー濃度が10×SSC、6×SSC、1×SSC、0.1×SSC(ここで、SSCは、0.15M NaClおよび15mM クエン酸バッファー)およびその他のバッファー系を用いた等価条件;ホルムアミド濃度が0%、25%、50%および70%;インキュベーション時間が5分から24時間;1回、2回または3回以上の洗浄工程;洗浄インキュベーション時間が1、2または15分;洗浄液が6×SSC、1×SSC、0.1×SSCまたは脱イオン水という条件が挙げられる。ストリンジェントな条件の具体例としては、50℃以上の温度で、0.1×SSC(9mM NaCl/0.9mM クエン酸ナトリウム)中で行われるハイブリダイゼーションおよび洗浄が挙げられる。
【0031】
「Tm」は、ワトソン−クリック塩基対によって逆平行方向に水素結合で結合した相補鎖からなる二本鎖ポリヌクレオチドの50%が、実験条件下で一本鎖に解離するセ氏温度である。Tmは、標準的な公式に従って予測することができ、公式中、[X+]はカチオン濃度(mol/L)(通常はナトリウムイオンNa+);(%G/C)は二本鎖中の残基総数に対するパーセンテージとして表されたGおよびC残基の数;(%F)は溶液(wt/vol)中のホルムアミドのパーセント;およびLは二本鎖の各鎖中のヌクレオチド数である。
【0032】
DNA/DNAおよびDNA/RNAハイブリダイゼーションの両方に関するストリンジェントな条件は、Sambrook 等. Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989 に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。例えば、Sambrook 等の7.52頁を参照。
【0033】
「宿主細胞」という用語には、任意の組換えベクターまたは本発明の単離されたポリヌクレオチドのレシピエントとなり得るまたはレシピエントとなっている個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫細胞が含まれ、子孫細胞は、自然的、偶発的、意図的な変異および/または変化によって、例えば形態または総DNA相補性に関して、親細胞と完全に同一ではなくなっていてもよい。宿主細胞には、本発明の組換えベクターまたはポリヌクレオチドをin vivoまたはin vitroでトランスフェクトまたは感染させた細胞が含まれる。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は「組換え宿主細胞」である。
【0034】
「特異的に結合する」という用語は、抗体の結合の文脈において、特定のポリペプチド、すなわち多型性APRILまたはBLySポリペプチドのエピトープ、に対する抗体の高親和性結合(high avidity and/or high affinity binding)を意味する。特定のAPRILまたはBLySポリペプチドのエピトープに対する抗体の結合は、その他のいかなるエピトープ(対象となる特定のポリペプチドとともに分子中に存在し得るし、対象となる特定のポリペプチドとして同一サンプル中に存在し得る)に対する同一抗体の結合よりも強力であることが好ましく、例えば、抗体が、特定のAPRILまたはBLySエピトープに対して、異なるAPRILまたはBLySエピトープに対してよりも強力に結合する場合、結合条件を調節することにより、抗体は特定のAPRILまたはBLySエピトープに対してほぼ排他的に結合するが、その他のいかなるAPRILまたはBLySエピトープに対してはそうならないようにできる。対象となるポリペプチドに対して特異的に結合する抗体は、その他のポリペプチドに対して弱いが検出可能なレベル(例えば、対象となるポリペプチドに対する結合の10%以下)で結合することができてもよい。そのような弱い結合、すなわちバックグラウンド結合は、例えば適切な対照の使用によって、対象となる化合物またはポリペプチドに対する特異的抗体結合と容易に識別することができる。一般的には、本発明の抗体が107モル/L以上、好ましくは108モル/L以上の結合親和性で特定のAPRILまたはBLySポリペプチドに対して結合することを、本発明の抗体が特定のAPRILまたはBLySポリペプチドに対して特異的に結合するという。一般的には、106モル/リットル以下の結合親和性を有する抗体は、現在の常法において検出可能なレベルで抗原に結合しないため、有用ではない。
【0035】
本明細書中の「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体群から得られた抗体を意味し、その抗体群に含まれる個々の抗体は、自然発生的な若干の変異が生じている可能性を除けば、同一である。
【0036】
モノクローナル抗体は、単一の抗原部位に対して高度に特異的である。さらに、種々の決定基(エピトープ)に対する種々の抗体を典型的に含む通常の(ポリクローナル)抗体調製物と比較して、各モノクローナル抗体は抗原の単一の決定基に対して特異的である。さらに、その特異性について、モノクローナル抗体は、その他のイムノグロブリンが混入していないハイブリドーマ培養によって合成される点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体群から得られる抗体の特徴を表すが、特定の方法による抗体の産生が要求されていると解釈されるべきではない。例えば、本発明で用いられるモノクローナル抗体は、Kohler 等, Nature, 256: 495 (1975)に最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製してもよいし、組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号参照)によって作製してもよい。また「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson 等, Nature, 352: 624-628 (1991) および Marks 等, J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991) に記載された方法を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0037】
本明細書中のモノクローナル抗体には、特に、「キメラ」抗体(イムノグロブリン)、および所望の生物活性を示す限りそのような抗体のフラグメントが含まれ、キメラ抗体においては、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一であるか、または相同であり、上記鎖の残部は、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応配列と同一であるか、または相同である(米国特許第4,816,567号 ; Morrison 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984))。キメラ抗体の作製法は当技術分野で公知である。
【0038】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、キメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖またはそのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体のその他の抗原結合配列)であり、非ヒトイムノグロブリンに由来する最小配列を含む。
【0039】
ほとんどの場合、ヒト化抗体はヒトイムノグロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性および能力(capacity)を有するマウス、ラットまたはウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基によって置換される。幾つかの場合には、ヒトイムノグロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体でも移入(imported)CDRまたはフレームワーク配列でも見られない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の能力をさらに向上および最大化させるために行われる。一般的には、ヒト化抗体は、少なくとも1個、典型的には2個の可変領域のうちの実質的に全てを含み、全てまたは実質的に全ての超可変ループは非ヒトイムノグロブリンの超可変ループに対応しており、全てまたは実質的に全てのFR領域はヒトイムノグロブリン配列のFR領域である。但し、FR領域は、結合親和性を向上させる1または2以上のアミノ酸置換を含んでいてもよい。FRにおけるこのような置換アミノ酸の個数は、典型的には、H鎖において6個以下であり、L鎖において3個以下である。ヒト化抗体は、イムノグロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトイムノグロブリン定常領域の少なくとも一部を含むことが好ましい。さらなる詳細については、Jones 等, Nature, 321: 522-525 (1986); Reichmann 等, Nature, 332: 323-329 (1988); および Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596 (1992)を参照のこと。ヒト化抗体には、霊長類化(PRIMATIZED)抗体が含まれ、この抗体の抗原結合領域は、例えばマカクザルを対象とする抗原で免疫することによって作製した抗体に由来する。ヒト化抗体の作製法は当技術分野で公知である。
【0040】
ヒト化抗体はまた、当技術分野で公知の様々な方法、例えばファージディスプレイライブラリーを用いて作製することもできる(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381 (1991) ; Marks 等, J. Mol. Biol., 222: 581 (1991))。Cole 等およびBoerner 等の方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用することができる(Cole 等, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985) ; Boerner 等, J. Immunol., 147(1) : 86-95 (1991))。
【0041】
本発明の結合性抗体の「機能性フラグメント」は、機能性フラグメントが由来するインタクトな完全鎖分子と実質的に同一の親和性を有し、BLyS、TACI、BAFF−RまたはBCMAに対する結合性を保持するフラグメントであり、本明細書に記載されたin vitroまたはin vivoアッセイで測定されるように、B細胞を枯渇(deplete)させることができる。
【0042】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に基づく生物活性であり、抗体アイソタイプによって変化する。抗体のエフェクター機能の例としては、Clq結合および補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC);食作用:細胞表面受容体(B細胞受容体)のダウンレギュレーション;B細胞活性化が挙げられる。
【0043】
「抗体依存性細胞介在性細胞傷害」または「ADCC」とは、分泌Igがある細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)に結合すると、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原発現(antigen-bearing)標的細胞に特異的に結合し、細胞傷害性によってその標的細胞を殺すことが可能となる細胞傷害性の形態をいう。抗体は、細胞傷害性細胞を「作動(arm)」させるものであり、殺細胞にとって不可欠である。ADCC、NK細胞を媒介するプライマリー細胞は、FcyRIIIのみを発現する一方、単球はFcyRI、FcyRIIおよびFcyRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet, Ann. Rev. Immunol 9: 457-92 (1991)の464頁の表3に要約されている。対象となる分子のADCC活性を評価するために、in vitro ADCCアッセイ、例えば、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されたアッセイを実施することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。その代わりに、またはそれに加えて、対象となる分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes 等. PNAS (USA) 95: 652-656 (1998)に開示された動物モデルで評価することもできる。
【0044】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」とは、補体存在下での標的細胞の溶解をいう。補体活性化の古典的経路は、補体系の第1成分(Clq)が、同種抗原に結合している抗体(適当なサブクラス)に結合することによって開始される。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ、例えば、Gazzano- Santoro 等, J. Immunol. Methods 202: 163 (1996)に記載されたCDCアッセイを実施することができる。
【0045】
「単離された」抗体は、自然環境要素から同定され、分離され、および/または回収されたものである。自然環境要素由来の混入物質は、抗体の診断的または治療的使用を妨げるおそれのある物質であり、その具体例としては、酵素、ホルモンおよびその他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が挙げられる。好ましい実施形態において、抗体の精製は(1)ローリー法によって決定された抗体の95重量%を超えるまで、最も好ましくは99重量%を超えるまで、(2)スピニングカップシークエナーター(spinning cup sequenator)を用いて少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列が得られるのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いる還元または非還元条件下のSDS−PAGEによって均質(homogeneity)になるまで行われる。
【0046】
単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しない組換え細胞内にin situで存在する抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製段階により調製される。
【0047】
「検出可能に標識された抗体」という用語は、検出可能な標識が結合した抗体(または、APRILポリペプチドもしくはエピトープに対する結合特異性を保持する抗体フラグメント)を意味する。検出可能な標識は、通常、化学結合によって結合させるが、標識がポリペプチドである場合には、その代わりに、遺伝工学的技術によって結合させることができる。検出可能に標識されたタンパク質の作製法は、当技術分野で周知である。検出可能な標識は、当技術分野で公知の様々な標識から選択することができ、その具体例としては、特に限定されるわけではないが、ラジオアイソトープ、フルオロフォア、常磁性標識、酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)、あるいは検出可能なシグナル(例えば放射能、蛍光、色)を発するか、または標識のその基質への曝露によって検出可能なシグナルを発するその他の分子または化合物が挙げられる。様々な検出可能な標識/基質の組(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ/ジアミノベンジジン、アビジン/ストレプトアビジン、ルシフェラーゼ/ルシフェリン)、抗体の標識化法および標識抗体の使用法が当技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane, eds. (Antibodies: A Laboratory Manual (1988) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)参照)。
【0048】
「生体サンプル」は、個体から得られた様々なタイプのサンプルを包含し、診断またはモニタリングアッセイで用いることができる。この定義には、血液および生物起源のその他の液体サンプル、生検標本または組織培養物あるいはそれらに由来する細胞およびその子孫細胞等の固形組織サンプルが含まれる。この定義にはまた、入手後に、例えば、試薬での処理、可溶化、ポリヌクレオチド等のある成分の濃縮等の任意の操作を施したサンプルが含まれる。「生体サンプル」という用語には、臨床サンプルの他、培養細胞、細胞上清、細胞溶解物、血清、血漿、体液および組織サンプルも含まれる。
【0049】
本明細書中の「処置」、「処置する」等とは、所望の薬理的および/または生理的効果を得ることを意味する。この効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防するという予防効果であってもよいし、疾患および/または該疾患に起因する悪影響を部分的にまたは完全に治療するという治療効果であってもよいし、それらの両方であってもよい。本明細書中の「処置」には、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の処置が含まれ、(a)疾患に罹患しやすいかもしれないが未だその疾患に罹患していないと診断された被験者が、その疾患に罹患することを予防すること、(b)その疾患を抑制すること、すなわち疾患の進行を抑制すること、および(c)疾患を緩和すること、すなわち疾患を退行させることが含まれる。
【0050】
「免疫抑制薬」は、免疫系を妨害する任意の分子であり、外来または自己抗原に対する応答を鈍らせる。そのような分子としては、例えば、シクロホスファミド(CYC)およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)の2種類が挙げられる。この用語には、免疫系をダウンレギュレートする治療薬として有用な任意の薬物または分子が含まれることが意図される。
【0051】
「融合タンパク質」および「融合ポリペプチド」とは、互いに共有結合した2つの部分を有するポリペプチドを意味し、各部分は異なる特性を有するポリペプチドである。特性は、生物学的特性、例えば、in vitroまたはin vivoでの活性であり得る。特性はまた、単純な化学的または物理的特性、例えば、標的分子に対する結合、反応の触媒作用等であり得る。2つの部分は、1つのペプチド結合によって直接結合していてもよいし、1または2以上のアミノ酸残基を含むペプチドリンカーを介して結合していてもよい。一般的には、2つの部分およびリンカーは互いにリーディングフレームを構成する。
【0052】
「複合体」とは、任意のハイブリッド分子をいい、融合タンパク質、および、アミノ酸またはタンパク質部分と非タンパク質部分とを含有する分子が含まれる。複合体は、当技術分野で公知の種々の技術、例えば、組換えDNA技術、固相合成、液相合成、有機化学合成技術またはこれらの技術の組み合わせによって合成することができる。合成法の選択は、合成すべき特定の分子に依存する。例えば、天然の完全な「タンパク質」ではないハイブリッド分子は、組換え技術および液相技術を組み合わせて合成することができる。
【0053】
本明細書中の「Fc−融合タンパク質」という用語は、異種タンパク質の結合特異性とイムノグロブリン定常領域のエフェクター機能と組み合わせた抗体様分子を意味する。構造的には、Fc−融合タンパク質は、アミノ酸配列に、抗体の抗原認識および結合部位以外の所望の結合特異性を融合させたもの(すなわち「異種」)と、イムノグロブリン定常領域配列とを含む。Fc−融合タンパク質分子は、典型的には、受容体またはリガンドの少なくとも結合部位を含む隣接(contiguous)アミノ酸配列を含む。Fc−融合タンパク質中のイムノグロブリン定常領域配列は、任意のイムノグロブリン、例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3もしくはIgG−4サブタイプ、IgA(例えばIgA−1およびIgA−2)、IgE、IgDまたはIgMから得ることができる。例えば、本発明における有用な融合タンパク質は、BLyS受容体のBLyS結合部分を含むが、BLyS受容体の膜貫通配列または細胞質側配列を含まないポリペプチドである。一実施形態において、BAFF−R、TACIまたはBCMAの細胞外ドメインは、イムノグロブリン配列の定常領域に融合する。
【0054】
本明細書中で互換可能に用いられる「個体」、「被験者」および「患者」とは、哺乳動物、例えば、特に限定されるわけではないが、マウス、サル、ヒト、哺乳類家畜動物、哺乳類娯楽動物(sport animal)および哺乳類ペット等をいう。
【0055】
「哺乳動物」という用語は、哺乳動物、例えば、ヒト、家畜動物および動物園動物、娯楽動物またはペット動物(イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等)に分類される任意の動物をいう。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0056】
HT(APRILおよびBLySポリペプチド)の検出
本発明は、APRILおよびBLySポリペプチドの分離測定を通じたHTポリペプチドの検出を提供する。「APRILポリペプチド」という用語には、公知のAPRILポリペプチド(例えば、公的に入手可能なGenBank受入番号AF046888)のオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされるアミノ酸配列が含まれ、その具体例としては、完全長の天然ポリペプチドおよびそのフラグメント、特に生物学的に活性なフラグメントおよび/または機能ドメインに対応するフラグメント、例えば、生物学的活性を有する領域またはドメイン等、その抗原フラグメントが挙げられるとともに、対象となるポリペプチドがその他のタンパク質またはその部分に融合したものが挙げられる。APRILポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えば、Hahne 等, J. Exp. Med. 188:1185-90, 1998 参照)。本発明のAPRILポリペプチドは、様々な供給源、例えばヒト組織またはその他の供給源から単離することができるし、組換え法および/または合成法によって調製することもできる。APRILポリペプチドにおける多型は、一般的には、参照配列と比較して規定される。
【0057】
「BLySポリペプチド」という用語には、公知のBLySポリペプチド(例えば、公的に入手可能なGenBankまたはその補充機関の受入番号NM 052945 (ヒトBLyS mRNA) またはそのヒト変異体 受入番号003808, 172087, 172088 または 受入番号 033622 (マウス BLyS mRNA))のオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされるアミノ酸配列が含まれ、その具体例としては、完全長の天然ポリペプチドおよびそのフラグメント、特に生物学的に活性なフラグメントおよび/または機能ドメインに対応するフラグメント、例えば、生物学的活性を有する領域またはドメイン等、その抗原フラグメントが挙げられるとともに、対象となるポリペプチドがその他のタンパク質またはその部分に融合したものが挙げられる。BLySポリペプチドのアミノ酸配列は公知である(例えば、Moore 等. Science 285: 260-3, 1999 参照)。本発明のBLySポリペプチドは、様々な供給源、例えばヒト組織またはその他の供給源から単離することができるし、組換え法および/または合成法によって調製することもできる。BLySポリペプチドにおける多型は、一般的には、参照配列と比較して規定される。
【0058】
本明細書中の「多型性APRILポリペプチド」とは、i)天然の多型性APRILポリペプチド、ii)多型性APRILポリペプチドのフラグメント、iii)多型性APRILポリペプチドのポリペプチドアナログ、iv)多型性APRILポリペプチドの変異体、v)多型性APRILポリペプチドの免疫学的に活性なフラグメント、およびvi)多型性APRILポリペプチドを含む融合タンパク質、のアミノ酸配列を有する組換えまたは非組換えポリペプチドのアミノ酸配列を意味する。本発明の多型性APRILポリペプチドは、生体サンプルから、あるいは天然、合成、半合成または組換えの任意の供給源から得ることができる。
【0059】
本明細書中の「多型性BLySポリペプチド」とは、i)天然の多型性BLySポリペプチド、ii)多型性BLySポリペプチドのフラグメント、iii)多型性BLySポリペプチドのポリペプチドアナログ、iv)多型性BLySポリペプチドの変異体、v)多型性BLySポリペプチドの免疫学的に活性なフラグメント、およびvi)多型性BLySポリペプチドを含む融合タンパク質、のアミノ酸配列を有する組換えまたは非組換えポリペプチドのアミノ酸配列を意味する。本発明の多型性BLySポリペプチドは、生体サンプルから、あるいは天然、合成、半合成または組換えの任意の供給源から得ることができる。
【0060】
本明細書中の「BLySポリペプチド」または「APRILポリペプチド」という用語は、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約25個のアミノ酸、少なくとも約50個のアミノ酸、少なくとも約75個のアミノ酸、少なくとも約100個のアミノ酸、少なくとも約200個のアミノ酸、少なくとも約300個のアミノ酸、少なくとも約400個のアミノ酸から、多型性APRILまたはBLySポリペプチドのポリペプチド全体までを含むポリペプチドを包含する。幾つかの実施形態において、多型性APRILまたはBLySポリペプチドは生物活性を示す。例えば、ポリペプチドは、in vitroアッセイにおいて、B細胞の増殖およびイムノグロブリンの産生を引き起こす。APRILまたはBLySの生物活性に関するその他のアッセイは当技術分野で公知であり、それらを用いて多型性APRILまたはBLySポリペプチドが生物活性を示すか否かを決定することができ、所望により、APRILまたはBLySの生物活性を定量化することができる。APRILまたはBLySの生物学的アッセイは様々な刊行物、例えばMoore 等(前出)に記載されている。
【0061】
APRILポリペプチドは、天然供給源からの単離、化学合成による製造、および標準的な組換え技術による産生等の任意の公知の方法またはそれらの方法を組み合わせによって得ることができる。APRILポリペプチドは、アフィニティークロマトグラフィー、例えば、APRILポリペプチドに特異的な抗体を固相支持体に固定化したアフィニティークロマトグラフィーを用いて、生物学的供給源から単離することができる。ポリペプチドは、発現目的に基づき常法に従って原核生物または真核生物中で発現させることができる。タンパク質の大規模な産生においては、単細胞生物、例えばE.coli、B.subtilis、S.cerevisiae等;バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞;脊椎動物、特に哺乳動物等の高等生物の細胞、例えばCOS7細胞、CHO細胞、HEK293細胞等を発現宿主細胞として用いることができる。場合によっては、遺伝子を真核生物細胞中で発現させることが好ましい。これによって、タンパク質が天然の折り畳みおよび翻訳後修飾といった恩恵を享受する。その後、ポリペプチドは、上述したように、細胞培養上清または細胞溶解物から、アフィニティークロマトグラフィー法またはアニオン交換/サイズ排除クロマトグラフィーを用いて単離することができる。
【0062】
大量のタンパク質またはそのフラグメントの入手可能性については、発現宿主を用いてタンパク質を常法に従って単離および精製することにより可能となる。細胞溶解物は、発現宿主から調製することができ、細胞溶解物は、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィーまたはその他の精製技術を用いて精製することができる。単離されたタンパク質を用いて抗体を作製することができ、その抗体を用いて標準的なアッセイ系、例えばELISAまたはFACS分析により、そのタンパク質の存在を検出することができる。
【0063】
APRILおよびBLySポリペプチドの調製
以下の項で詳述した複数の使用に加え、上述したように、APRIL核酸組成物は全部または一部のAPRILポリペプチドの調製に使用される。ポリヌクレオチド(例えばcDNAまたは完全長遺伝子)は、部分的または完全な遺伝子産物を発現させるために使用される。対象となるポリヌクレオチドを含む構築物は、合成により作製することができる。また、多数のオリゴデオキシリボヌクレオチドからの遺伝子および完全なプラスミドの1段階アセンブリは、例えば、Stemmer 等, Gene (Amsterdam) (1995) 164(1):49-53に記載されている。この方法において、アセンブリPCR(多数のオリゴデオキシリボヌクレオチド(oligo)からの長いDNA配列の合成)が記載されている。この方法は、DNAシャッフリング(Stemmer, Nature (1994) 370:389-391)に基づくものであり、DNAリガーゼに依存せず、その代わりにDNAポリメラーゼに依存しており、アセンブリ工程において次第に長いDNAフラグメントが構築される。適当なポリヌクレオチド構築物は、Sambrook 等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., (1989) Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.等に記載された標準的な組換えDNA技術を用いて、米国保健社会福祉省の組換えDNA研究に関する米国国立衛生研究所(NIH)ガイドラインに記載された現行の規制の下で精製される。
【0064】
特に、十分量の活性タンパク質を産生させて効果的な抗体を産生するために、APRILタンパク質またはBLySタンパク質の三量体化の遺伝子工学的手段を提供することが必要である。ZymoZipper配列等のポリペプチドの三量体化の具体例が、米国特許出願番号第11/530,672号およびそこで言及された参照文献に記載されている。このようなタイプのポリペプチド三量体化は、アッセイ(実施例1参照)で用いられるAPRIL/BLyS HT標準タンパク質を産生するのに有用である。
【0065】
本発明により提供されるポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド分子は、ベクター中に挿入することにより増幅する。ウイルスおよび非ウイルスベクター、例えばプラスミドが用いられる。プラスミドの選択は、所望の増幅が行われる細胞の種類および増幅の目的に依存する。あるベクターは、所望のDNA配列を多量に増幅および作製するのに有用である。他のベクターは、培養細胞中での発現に適している。さらに他のベクターは、完全な動物またはヒトの細胞中への移行および発現に適している。適当なベクターの選択は、当業者が容易に行い得る。そのような多数のベクターは市販されている。部分的または完全長ポリヌクレオチドは、典型的にはDNAリガーゼによってベクター中の切断された制限酵素部位に結合され、ベクター中に挿入される。また、所望のヌクレオチド配列は、in vivo相同組換えによって挿入され得る。これは、典型的には、所望のヌクレオチド配列の隣接領域において相同領域がベクターに結合することによって達成される。相同領域は、例えば、オリゴヌクレオチドのライゲーションによって、または、相同領域と所望のヌクレオチド配列部分とを含むプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって付加される。
【0066】
発現に関し、発現カセットまたはシステムを用いることができる。本発明のポリヌクレオチドによってコードされる遺伝子産物は、任意の簡便な発現系、例えば、バクテリア、酵母、昆虫、両生動物および哺乳動物システムにおいて発現される。好適なベクターおよび宿主は、米国特許第5,654,173号に記載されている。発現ベクターにおいて、APRILポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、所望の発現特性が得られるように、適当な調節配列に連結される。調節配列としては、例えば、プロモーター(センス鎖の5'末端またはアンチセンス鎖の3'末端に結合)、エンハンサー、ターミネーター、オペレーター、リプレッサーおよびインデューサーが挙げられる。プロモーターは制御されていても、構成的であってもよい。場合によっては、組織特異的または発達段階特異的プロモーター等の条件付活性プロモーターを用いることが好ましい。これらは、ベクターへの連結に関して上記した技術を用いて、所望のヌクレオチド配列に連結される。当技術分野で知られている任意の技術を用いることができる。つまり、発現ベクターは、転写および翻訳開始領域をもち、誘導的または構成的であってもよく、コード領域が、転写開始領域並びに転写および翻訳終結領域の転写制御下で作動可能に連結されている。これらの制御領域は、APRIL遺伝子に由来する天然のものであってもよいし、外因性供給源に由来するものであってもよい。
【0067】
発現ベクターは、一般的には、異種タンパク質をコードする核酸配列を挿入するために、プロモーター配列の近くに位置する適当な制限部位を有する。発現宿主中で有効である選択可能なマーカーも存在し得る。発現ベクターは、融合タンパク質の製造のために用いることができ、外因性融合ペプチドによって、付加的な機能性、例えば増大したタンパク質合成、安定性、所定の抗血清やβ−ガラクトシダーゼ等の酵素マーカーとの反応性等が実現可能となる。
【0068】
発現カセットは、転写開始領域、遺伝子またはそのフラグメント、および転写終結領域を含むように調製される。特に関心があるのは、通常約8アミノ酸以上の長さ、好ましくは約15アミノ酸以上の長さで、約25アミノ酸以下の長さ、最大で遺伝子の完全なオープンリーディングフレームまでの長さである機能性エピトープまたはドメインの発現を可能とする配列の使用である。DNA導入後、構築物を含む細胞は選択可能なマーカーを用いて選択され、細胞を増殖させた後、発現に用いることができる。
【0069】
APRILポリペプチドは、発現の目的に応じて常法に従って原核生物または真核生物中で発現させることができる。タンパク質の大規模な産生において、単細胞生物、例えばE.coli、B.subtilis、S.cerevisiae等;バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞;脊椎動物、特に哺乳動物等の高等生物の細胞、例えばCOS7細胞、HEK293細胞、CHO細胞、アフリカツメガエル卵母細胞等を発現宿主細胞として用いることができる。場合によっては、多型性APRIL核酸分子を真核生物細胞中で発現させることが好ましい。これによって、多型性APRILタンパク質が天然の折り畳みおよび翻訳後修飾といった恩恵を享受する。また、短いペプチドを実験室で合成することもできる。完全なAPRIL配列のサブセットであるポリペプチドは、機能にとって重要なタンパク質部分を同定および研究するために用いることができる。
【0070】
対象となる特定の発現系としては、例えば、バクテリア、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞に基づく発現系が挙げられる。これらの各カテゴリーの代表的な系を以下に示す。
【0071】
バクテリア:バクテリアにおける発現系としては、例えば、Chang 等, Nature (1978) 275:615 ; Goeddel 等, Nature (1979) 281:544 ; Goeddel 等, Nucleic Acids Res. (1980) 8:4057 ; 欧州特許第0 036,776号 ; 米国特許第4,551,433号 ; DeBoer 等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1983) 80:21-25 ; および Siebenlist 等, Cell (1980) 20:269 等に記載されたものが挙げられる。
【0072】
酵母:酵母における発現系としては、例えば、Hinnen 等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1978) 75:1929 ; Ito 等, J. Bacteriol. (1983) 153:163 ; Kurtz 等, Mol. Cell. Biol. (1986) 6:142 ; Kunze 等, J. Basic Microbiol. (1985)25:141 ; Gleeson 等, J. Gen. Microbiol. (1986) 132:3459 ; Roggenkamp 等, Mol. Gen. Genet. (1986) 202:302 ; Das 等, J. Bacteriol. (1984) 158:1165 ; De Louvencourt 等, J. Bacteriol. (1983) 154:737 ; Van den Berg 等, Bio/Technology (1990)8:135 ; Kunze 等, J. Basic Microbiol. (1985)25:141 ; Cregg 等, Mol. Cell. Biol. (1985) 5:3376 ; 米国特許第4,837,148号および第4,929,555号 ; Beach and Nurse, Nature (1981) 300:706 ; Davidow等, Curr. Genet. (1985) 10:380 ; Gaillardin 等, Curr. Genet. (1985) 10:49 ; Ballance 等, Biochem. Biophys. Res. Commun. (1983) 112:284-289 ; Tilburn 等, Gene (1983) 26:205-221 ; Yelton 等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1984) 81:1470-1474 ; Kelly and Hynes, EMBO J. (1985) 4:475479 ; 欧州特許第0 244,234号 ; および WO 91/00357等に記載されたものが挙げられる。
【0073】
昆虫細胞:昆虫細胞における異種遺伝子の発現は、米国特許第4,745,051号 ; Friesen 等, "The Regulation of Baculovirus Gene Expression", in: The Molecular Biology Of Baculoviruses (1986) (W. Doerfler, ed.) ; 欧州特許第0 127,839号 ; 欧州特許第0 155,476号 ; および Vlak 等, J. Gen. Virol. (1988) 69:765-776 ; Miller 等, Ann. Rev. Microbiol. (1988) 42:177 ; Carbonell 等, Gene (1988) 73:409 ; Maeda 等, Nature (1985) 315:592-594 ; Lebacq-Verheyden 等, Mol. Cell. Biol. (1988) 8:3129 ; Smith 等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1985) 82:8844 ; Miyajima 等, Gene (1987) 58:273 ; および Martin 等, DNA (1988) 7:99 等に記載されるように達成される。多数のバキュロウイルス株および変異体並びに対応する許容昆虫細胞が、Luckow 等, Bio/Technology (1988) 6:47-55, Miller 等, Generic Engineering (1986) 8:277-279, および Maeda 等, Nature (1985) 315:592-594等に記載されている。
【0074】
哺乳動物細胞:哺乳動物における発現は、Dijkema 等, EMBO J. (1985) 4:761, Gorman等, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) (1982) 79:6777, Boshart 等, Cell (1985) 41:521 および 米国特許第4,399,216 等に記載されるように達成される。哺乳動物における発現のその他の特徴については、Ham and Wallace, Meth. Enz. (1979) 58:44, Barnes and Sato, Anal. Biochem. (1980) 102:255, 米国特許第4,767,704号, 第4,657,866号, 第4,927,762号, 第4,560,655号, WO 90/103430, WO 87/00195, および 米国特許第 RE 30,985号の記載が理解の助けとなる。
【0075】
上記宿主細胞またはその他の適当な宿主細胞もしくは生物のいずれかを用いて、本発明のポリヌクレオチドまたは核酸を複製および/または発現させることができ、生じた複製核酸、RNA、発現タンパク質またはポリペプチドは、宿主細胞または生物の産物として、本発明の範囲に含まれる。産物は、当技術分野で公知の任意の手段で回収される。
【0076】
選択されたポリヌクレオチドに対応する遺伝子が同定されると、その遺伝子の発現は、その遺伝子が由来する細胞中で調節され得る。例えば、細胞の内因性遺伝子は、該細胞中で少なくとも遺伝子発現が促進されるのに十分な位置にある、該細胞のゲノムに挿入された外因性調節配列によって調節され得る。調節配列は、米国特許第5,641,670号および第5,733,761号(これらの開示は参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、相同組換えによってゲノムに組み込まれるように設計することができるし、また、WO 99/15650(この開示は参照により本明細書中に組み込まれる)に記載されるように、非相同組換えによってゲノムに組み込まれるように設計することもできる。本発明には、本明細書中に組み込まれた上記特許文献に記載されるように、コード核酸それ自体の操作を行わないが、その代わりに、既に所望のタンパク質をコードする遺伝子を含む細胞のゲノムに調節配列を組み込むことによってAPRILタンパク質を製造することも包含される。
【0077】
APRILおよびBLySポリペプチドに対して特異的な抗体の調製
本発明はさらに、APRILおよびBLySポリペプチドに対して特異的な抗体、特に単離された抗体の使用を包含する。本発明の抗体は、以下に詳述されるように、様々な診断アッセイに有用である。例えば、抗体は、生体サンプル中のHTレベルを検出および/または測定するために用いることができる。
【0078】
本発明の単離されたAPRILおよびBLySポリペプチドは、抗体の産生に有用である。短いフラグメントは、特定のポリペプチドに対して特異的な抗体を提供し、より長いフラグメントまたは完全なタンパク質は、ポリペプチド表面に対する抗体の産生を可能とする。したがって、本発明の方法では、APRILポリペプチドまたはその抗原フラグメントに特異的に結合する単離抗体を用いることができる。抗体は、野生型または変異型に対して産生されてもよい。抗体は、これらのドメインまたは天然タンパク質に対応する単離ペプチドに対して産生されてもよい。抗体は、任意の哺乳動物種由来のAPRILポリペプチドおよび/またはペプチドフラグメントに対して産生されてもよい。1つの非限定的な具体例において、酵素免疫測定法(ELISA)を用いてAPRILまたはBLySポリペプチドに対する所定のモノクローナル抗体の特異性を決定することができる。
【0079】
APRILおよびBLySポリペプチドは、抗体産生に有用である。短いフラグメントは、特定のポリペプチドに対して特異的な抗体を提供し、より長いフラグメントまたは完全なタンパク質は、ポリペプチド表面に対する抗体の産生を可能とする。本明細書中の「抗体」という用語には、任意のアイソタイプ、抗原に対する特異的結合性を保持する抗体フラグメント(例えば、特に限定されるわけではないが、Fab、Fv、scFvおよびFdフラグメント)、そのような抗体フラグメントを含む融合タンパク質、検出可能に標識された抗体、およびキメラ抗体が含まれる。「抗体特異性」という用語は、抗体−抗原相互作用との関連において当技術分野で十分に理解された用語であり、所定の抗体が所定の抗原に結合するが、関連のない抗原には実質的に結合せず、結合は、抗体によって認識される抗原またはそのエピトープによって阻害され得ることを意味する。特異的抗体結合の決定法は当業者に周知であり、これを用いてAPRILまたはBLySポリペプチドに対する抗体の特異性を決定することができる。
【0080】
抗体は、発現させたポリペプチドまたはタンパク質それ自体を、あるいは、公知の免疫原性担体、例えば、KLH、pre−S HBsAg、その他のウイルスまたは真核生物タンパク質等と複合体化して、免疫原として用いる常法に従って調製される。一連の注射において、好適には様々なアジュバントが用いられる。モノクローナル抗体に関しては、1回または2回以上のブースター注射の後、脾臓を摘出し、細胞融合によってリンパ球を不死化し、次いで高親和性抗体結合性に関するスクリーニングを行う。所望の抗体を産生する不死化細胞、すなわちハイブリドーマを増殖させてもよい。さらなる説明については、Monoclonal Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane eds., Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988を参照のこと。所望により、重鎖または軽鎖をコードするmRNAを単離し、E.coli中でのクローニングによって突然変異を生じさせ、重鎖および軽鎖を混合して抗体の親和性をさらに向上させてもよい。また、抗体産生法であるin vivo免疫に代わるものとしては、例えば、通常in vitro親和性成熟とともに行われるファージディスプレイライブラリーへの結合が挙げられる。
【0081】
抗体は、生体サンプル中のHTの存在を決定および/または測定する診断アッセイで使用するために、直接または間接的に(例えばリンカー分子を介して)固相支持体に結合させてもよい。結合は、一般的には共有結合であるが、それである必要はない。固相支持体としては、例えば、特に限定されるわけではないが、ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ、磁性ビーズ等);プラスチック表面(例えば、ELISAまたはラジオイムノアッセイ(RIA)で典型的に用いられるポリスチレンまたはポリカーボネート製マルチウェルプレート等);シート、例えば、ナイロン、ニトロセルロース等;チップ、例えば、マイクロアレイで用いられるSiO2チップが挙げられる。したがって、本発明はさらに、固相支持体に結合した抗体を含むアッセイ器具(device)を提供する。
【0082】
単一の抗体または一連の様々な抗体を用いてアッセイ器具を作製することができる。そのようなアッセイ器具は、当業者に公知の常法に従って作製することができる。抗体は、公知の技術を用いて精製および単離することができ、公知の方法を用いて支持体表面に結合させることができる。これによって生じた抗体結合表面を用いて試験サンプル、例えば生体サンプルをin vitroで検査し、サンプルに1種または2種以上のHT分子が含まれているか否かを決定することができる。例えば、特定のHTエピトープにのみ結合する抗体を器具(material)の表面に結合させることができる。また、特定の抗体を複数用いて配列し、2種以上の異なるHTエピトープに対して特異的な抗体が固相支持体に結合しているアレイを作製することができる。試験サンプルは、器具の表面に結合した抗体と接触させる。特異的結合は、任意の公知の方法を用いて検出することができる。特異的結合が検出されない場合、サンプルに特定のHTエピトープが含まれていないと推測することができる。特異的結合の検出法の1つの非限定的な例として、試験サンプルを、固相支持体に結合した抗体と接触させた後、固相支持体に結合した抗体によって認識されるHTエピトープとは異なるHTエピトープを認識する、検出可能に標識された第二の抗体を加えることが挙げられる。
【0083】
本明細書に記載されたHTポリペプチドの検出アッセイにおいては、その他の様々な試薬を用いることができる。これらの試薬としては、例えば、塩、アルブミン等の中立的なタンパク質(neutral protein)、界面活性剤等が挙げられ、これらを用いることにより、タンパク質−タンパク質結合の最適化が容易となる、および/または、非特異的もしくはバックグラウンド相互作用が低減する。アッセイ効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、抗菌剤等を用いてもよい。これらの成分は、必要な結合を生じ得る任意の順序で加えられる。インキュベーションは、適当な任意の温度、典型的には4℃から40℃の間で実施される。インキュベーション時間は最適活性となるように選択されるが、高速ハイスループットスクリーニングを容易にするように最適化されてもよい。典型的には、0.1から1時間の間で十分である。
【0084】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特性を有する抗体である。典型的な二重特異性抗体は、B細胞表面マーカーの2種のエピトープに対して結合することができる。他のそのような抗体は、第一のB細胞マーカーに結合することができるとともに、第二のB細胞表面マーカーにさらに結合することができる。また、抗B細胞マーカー結合アームは、白血球上の引き金分子、例えば、T細胞受容体分子(例えばCD2またはCD3)、または、FcyRI(CD64)、FcyRII(CD32)およびFcyRIII(CD16)等のIgGに対するFc受容体(FcyR)、に結合するアームと連結し、B細胞に細胞防御機構をフォーカスすることができる。また、二重特異性抗体を用いて、細胞毒性薬をB細胞に局在化させることができる。二重特異性抗体は、B細胞マーカー結合アームと、細胞毒性薬(例えば、サポリン、抗インターフェロン、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、メトトレキサートまたは放射性同位体ハプテン)に結合するアームとを有する。
【0085】
二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体フラグメント(例えば、F(ab')2 二重特異性抗体)として調製することができる。二重特異性抗体の作製法は当技術分野で公知である。完全長の二重特異性抗体の従来の産生法は、2つの鎖が異なる特異性をもつように2組のイムノグロブリン重鎖−軽鎖対を共発現させることに基づく(Millstein 等, Nature, 305: 537-539 (1983))。
【0086】
イムノグロブリン重鎖および軽鎖の任意の組み合わせにより、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の抗体分子を含み得る混合物を産生するが、そのうちの1種のみが正確な二重特異性構造を有する。この正確な分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われるが、かなり煩雑であり、産物の収率が低い。類似の方法が、WO 93/08829 および Traunecker 等, EMBO J. , 10: 3655-3659 (1991) に開示されている。
【0087】
異なるアプローチでは、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変領域が、イムノグロブリン定常領域配列に融合される。融合において、好ましくは、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含むイムノグロブリン重鎖定常領域が用いられる。融合体の少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含む第1重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。イムノグロブリン重鎖融合体および所望によりイムノグロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクターに挿入され、適当な宿主生物にコトランスフェクトされる。これによって、実施形態における3つのポリペプチドフラグメントの相互比率の調整を非常に順応性のあるものとすることができ、構築で用いられる不均衡な比率の3つのポリペプチド鎖を最適な収率とすることができる。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖が等しい比率で発現されることによって高収率となる場合、または、その比率に特に有意差がない場合、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖をコードする配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0088】
このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにおける第1の結合特異性を有するハイブリッド イムノグロブリン重鎖と、他方のアームにおけるハイブリッド イムノグロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を実現する)とから構成される。二重特異性分子の半分のみにおけるイムノグロブリン軽鎖の存在によって簡易な分離が実現可能となるため、この非対称構造によって、望ましくないイムノグロブリン鎖の混合物から、所望の二重結合性化合物の分離が実現可能となる。このアプローチは、WO 94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成に関するさらなる詳細については、例えば、Suresh 等, Methods in Enzymology, 121: 210 (1986)を参照のこと。米国特許第5,731,168号に記載された別のアプローチでは、1組の抗体分子間のインターフェイス(interface)を操作し、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化することができる。好ましいインターフェイスは、抗体定常領域のCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一の抗体分子のインターフェイスに由来する1または2以上の小さなアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置換される。大きなアミノ酸側鎖がより小さなアミノ酸側鎖(例えばアラニンまたはスレオニン)と置換されることによって、大きな側鎖と同一または類似のサイズの代償性「キャビティ」(compensatory "cavites")が、第二の抗体分子のインターフェイスに作られる。これにより、ホモ二量体等の望ましくないその他の最終産物を上回るヘテロ二量体の収率増大の機構が実現される。
【0089】
二重特異性抗体としては、例えば、架橋または「ヘテロ複合体(heteroconjugate)」抗体が挙げられる。具体的には、ヘテロ複合体における一方の抗体はアビジンに結合し、他方はビオチンに結合し得る。そのような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対して(米国特許第4,676,980号)およびHIV感染の治療のために(WO 91/00360, WO 92/200373およびEP 03089)免疫系細胞を標的化とすることが提案されている。ヘテロ複合体抗体は、任意の適当な架橋法を用いて作製することができる。適当な架橋剤は当技術分野で周知であり、米国特許第4,676,980号に多数の架橋技術とともに開示されている。
【0090】
また、抗体フラグメントから二重特異性抗体を生成するための技術が文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennan 等, Science, 229: 81 (1985) には、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断されることによってF(ab')2フラグメントを生成させる方法が記載されている。これらのフラグメントは、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元され、隣接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を阻害する。次いで、生成したFab'フラグメントは、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab'−TNB誘導体の一部は、メルカプトエチルアミンを用いた還元によってFab'−チオールにさらに変換され、Fab'−TNB誘導体の他部と等モル量で混合され、二重特異性抗体が形成される。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための試薬として用いることができる。
【0091】
最近の進展によって、化学的結合によって二重特異性抗体を形成し得るFab'−SHフラグメントをE.coliから直接回収することが容易に実現可能となった。Shalaby 等, J. Exp. Med., 175: 217-225 (1992) には、完全ヒト化二重特異性抗体 F(ab')2分子の産生が記載されている。各Fab'フラグメントは、E.coliから別々に分泌され、in vitroで直接的に化学的結合を施されて二重特異性抗体を形成する。こうして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体が過剰発現した細胞および正常ヒトT細胞に結合することができるとともに、ヒト乳癌標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を引き起こすことができる。
【0092】
二重特異性抗体フラグメントを組換え細胞培養物から直接的に作製および単離する種々の技術が公知である。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生される(Kostelny 等, J. Immunol., 148 (5): 1547-1553 (1992))。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドは、遺伝子融合によって2種の抗体のFab部分と結合する。
【0093】
抗体ホモ二量体がヒンジ領域において還元されると、単量体が形成され、次いで再度酸化されると、抗体ヘテロ二量体が形成される。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも用いることができる。
【0094】
Hollinger 等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993) に記載された「二機能性抗体(diabody)」技術によって、別のメカニズムによる二重特異性抗体フラグメントの作製が実現可能となった。フラグメントは、リンカーによって軽鎖可変領域(VL)に結合した重鎖可変領域(VH)を含む。リンカーは短すぎるため、同一鎖上における2つの領域間の対形成をなし得ない。したがって、1つのフラグメントのVHおよびVLドメインは、他のフラグメントの相補的なVLおよびVHドメインと対形成させられ、これにより、2つの抗原結合部位が形成される。また、二重特異性抗体フラグメントを作製するための別のストラテジーとして、一本鎖Fv(sFv)二量体の使用が報告されている。Gruber 等, J. Immunology, 152: 5368 (1994)参照。二価以上の抗体も意図されている。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tuttet 等, J. Immunol. 147: 60(1991))。
【0095】
診断アッセイ
本発明はさらに、生体サンプル中のHT mRNAの存在および/またはレベルを検出する方法、並びに、生体サンプル中のHTポリペプチドの存在および/またはレベルを検出する方法を提供する。
【0096】
特に好ましい実施形態では、HT分子のみが検出されるような、サンプル中の各サブユニットの一連の検出を含む。これは、標準的ELISAを適用した方法を用いて行われる。特に、APRILまたはBLySに対する抗体を固定化し(例えば、ビーズに結合させ)、この抗体にサンプルを接触させる。抗体特異的なサブユニトを含む分子は結合する一方、そのサブユニットを含まないホモ三量体は洗い流される。次いで、結合した分子を、第二のサブユニットに対する検出可能な(標識された)抗体(例えばビオチン化)と接触させ、第二のサブユニットをも含む最初に捕捉された分子(HTである分子)が検出される。さらに具体的には、第一の抗体がAPRILに対するものである場合、全てのホモ三量体BLyS分子は最初の工程で洗い流される。これらの分子を、BLySに対して特異的な第二の抗体と接触させると、全てのホモ三量体APRIL分子は結合せずに洗い流される。こうして、残存するシグナルは、サンプル中のHT分子(BLySおよびAPRILの両者を含む)を表示するものである。公知の標準的な2APRIL/1BLyS HT分子が、標準的濃度曲線を描くために用いられ、得られた実験シグナルは、この標準的曲線と比較され、生体サンプル中のHT濃度が測定される。
【0097】
その他の実施形態において、個体に由来する生体サンプル中のHT mRNAレベルを検出する方法が提供され、この方法は、個体に由来するポリヌクレオチドサンプルを、HTポリペプチドをコードするmRNAのレベルについて分析することを含む。HT mRNAレベルは、自己免疫疾患と関連し得る。
【0098】
さらに他の実施形態において、生体サンプル中のHTポリペプチドの存在および/またはレベルを検出する方法が提供される。
【0099】
特定の生体サンプル中のHT核酸分子(例えばHTmRNA)またはHTポリペプチドの発現レベルを決定するための多数の方法を用いることができる。診断は、患者サンプル中の正常または異常HT mRNAの不存在または存在、あるいは変化量を決定する多数の方法によって行われる。例えば、検出は、常法に従って細胞または組織切片を標識抗体で染色することをよって行われる。細胞は透過化され、細胞質分子が染色される。対象となる抗体は、細胞サンプルに加えられ、エピトープに結合するのに十分な時間、通常少なくとも約10分間、インキュベートされる。抗体は、放射性同位体、酵素、蛍光化合物、化学発光化合物または直接的な検出のためのその他の標識で標識することができる。また、二次抗体または試薬を用いてシグナルを増幅することができる。そのような試薬は当技術分野で周知である。例えば、一次抗体にビオチンを結合させ、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合アビジンを二次試薬として加える。また、蛍光化合物、例えば、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド等に結合させた二次抗体を用いることができる。最終的な検出は、ペルオキシダーゼの存在下で色の変化を生じる基質を用いて行われる。抗体結合の不存在または存在は、種々の方法、例えば、解離細胞のフローサイトメトリー、顕微鏡法、ラジオグラフィー、シンチレーション計測等によって決定することができる。また、HTポリペプチドの存在および/またはレベルは、当業者に公知の任意の方法によって検出および/または定量することができる。
【0100】
さらに、試験は、HT mRNAの発現測定を含み得る。HTコード領域または対照領域中の配列多型が疾患と関連するか否かを決定するために、生化学的研究が実施される。疾患に関連する多型としては、例えば、遺伝子の欠失または切断、発現レベルを変化させる変異、タンパク質活性に影響を与える変異等が挙げられる。
【0101】
HTの発現レベルに影響を与え得るプロモーターまたはエンハンサー配列の変化は、当技術分野で公知の種々の方法によって、正常対立遺伝子の発現レベルと比較され得る。プロモーターまたはエンハンサー強度を決定する方法としては、例えば、発現された天然タンパク質の定量;β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコール アセチルトランスフェラーゼ等の簡便な定量を実現可能とするリポーター遺伝子と種々の制御要素とのベクターへの挿入等が挙げられる。
【0102】
本発明の診断方法は、HTレベルに主眼があり、典型的には、目的のサンプル中のHT核酸またはタンパク質の存在度を対照値と比較して任意の相対的な相違を決定することが含まれる。この相違は、定性的および/定量的に測定することができ、異常HTレベルの存在または不存在と関係付けられる。サンプル中の核酸の存在度を決定する異なる種々の方法が当業者に公知であり、対象となる特定の方法としては、例えば、Pietu 等, Genome Res. (June 1996) 6: 492-503 ; Zhao et 等, Gene (Apr. 24, 1995) 156: 207-213 ; Soares, Curr. Opin. Biotechnol. (October 1997) 8: 542-546 ; Raval, J. Pharmacol Toxicol Methods (November 1994) 32: 125-127 ; Chalifour 等, Anal. Biochem (Feb. 1, 1994) 216: 299-304 ; Stolz & Tuan, Mol. Biotechnol. (December 19960 6: 225-230 ; Hong 等, Bioscience Reports (1982) 2: 907 ; および McGraw, Anal. Biochem. (1984) 143: 298 に記載されたものが挙げられる。また、対象となる方法は、WO 97/27317に開示されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
その発現レベルが特定の生理的状態と「相関する」または「関連する」遺伝子について、その発現が生理的状態と統計的に有意な相関を示す遺伝子が意図されている。発現差がある遺伝子の発現レベルと特定の生理的状態の存在または不存在との相関強度は、有意性の統計的検定によって決定することができる。統計的スコアを相関に割り当てる(assign)ことによって、発現差がある遺伝子の発現レベルと特定の生理的状態との相関強度を決定する方法は、Holloway 等. (2002) Nature Genetics Suppl. 32:481-89, Churchill (2002) Nature Genetics Suppl. 32:490-95, Quackenbush (2002) Nature Genetics Suppl. 32: 496-501; Slonim (2002) Nature Genetics Suppl. 32:502-08; and Chuaqui 等. (2002) Nature Genetics Suppl. 32:509-514 に概説されており、各文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。統計的スコアを用いて、その発現レベルが特定の生理的状態と最も相関性を有する遺伝子を選択することができ、これにより、本発明の方法の診断または予測精度を増大させることができる。
【0104】
自己免疫疾患の重症度または進行度と関連するさらなる試験を、上述したHT試験と組み合わせることにより、完全な診断または予測結果が実現可能となる。
【0105】
例えば、米国リウマチ学会は、SLE診断のための11の基準を設定しており、それは皮膚、全身および臨床試験(laboratory test)におけるSLEの臨床スペクトルに及ぶ。これらの基準には、頬部発疹、円板状発疹、光線過敏症、口内炎、関節炎、漿膜炎、腎臓および中枢神経系炎症、血液変化、並びに抗核抗体が含まれる。SLE患者として分類されるためには、患者がこれらの基準のうち4つを満たす必要がある(Tan 等 (1982) Arthritis Rheumatol. 25:1271-1277)。SLEは、通常、検査、例えば、特に限定されるわけではないが、抗核抗体を検出するための血液検査;腎臓機能を評価するための血液および尿検査;SLEと関連することが多い低レベルでの補体の存在を検出するための補体検査;炎症レベルを測定するための沈降率(ESR)またはC反応性タンパク質(CRP);肺障害を評価するためのX線および心臓障害を評価するためのEKG、によって確認される。
【0106】
薬物処置の効果のモニタリング
HTタンパク質レベルに対する薬剤(例えば、薬物、化合物)の影響(例えば、転写活性化の調節)のモニタリングは、基本的な薬物のスクリーニングだけではなく、臨床試験にも適用することができる。例えば、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイによって決定された薬剤の、HTタンパク質レベルを低減させる効果が、低減したHT遺伝子発現またはタンパク質レベルを示す被験者の臨床試験においてモニタリングされ得る。そのような臨床試験において、HT遺伝子の発現または活性、および、好ましくは、例えばHTタンパク質レベルに関連する疾患に関与するその他の遺伝子の発現または活性を、特定の細胞(本発明の場合にはB細胞)の表現型の「出力(read out)」またはマーカーとして用いることができる。
【0107】
幾つかの実施形態では、本発明は、薬剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣薬、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子またはその他の薬物)による被験者の処置効果をモニタリングする方法を提供する。この方法は、(i)薬剤を投与する前の患者に由来する投与前サンプルを得る工程、(ii)投与前サンプル中のHTタンパク質またはmRNAの発現レベルを検出する工程、(iii)投与後の被験者に由来する1または2以上の投与後サンプルを得る工程、(iv)投与後サンプル中のHTタンパク質またはmRNAの発現または活性レベルを検出する工程、(v)投与前サンプル中のHTタンパク質またはmRNAの発現または活性レベルを、投与後サンプル中のHTタンパク質またはmRNAと比較する工程、および(vi)被験者への薬剤投与を状況に応じて変化させる工程を含む。このような実施形態では、HT発現または活性を、観察可能な表現型応答が存在しない場合でさえ、薬剤の効果の指標として用いることができる。
【0108】
異なる組織におけるHTの基本的発現レベルは、特定の多型の存在または不存在について決定された個体に由来する組織サンプルの分析によって決定することができる。任意の適当な方法、例えば、タンパク質定量に関してはELISA、RIA等、mRNA定量に関してはノーザンブロットまたはその他のハイブリダイゼーション分析、定量RT−PCR等を用いることができる。組織特異的発現は、遺伝子型と相関している。
【0109】
修飾因子に応答したHT発現の変化は、候補修飾因子を発現系、例えば、動物、細胞、in vitro転写アッセイ等に投与するまたは結合させることによって決定される。HT転写および/または定常状態mRNAレベルに対する修飾因子の効果が決定される。基本的発現レベルに関しては、組織特異的相互作用が主眼である。相関は、HTレベルに影響を与える発現修飾因子の能力と、所定の多型の存在との間で表される。異なる修飾因子、細胞型等の集団(panel)についてスクリーニングすることにより、多数の異なる条件下での効果を決定することができる。
【0110】
処置方法
本発明は、血清中の増大したHTレベルと関連する症状を有すると臨床的に診断された個体を処置する方法を提供する。この方法は、一般的には、生体サンプルを分析してHTレベルを測定すること、およびそのレベルを健常対照のHTレベルと比較することを含む。次いで、増大したHTレベルと関連する自己免疫疾患等の症状を有すると臨床的に診断された個体に最も効果的な処置計画が選択され、次いで、患者が状況に応じて処置される。本発明はさらに、患者が増大したHTレベルと関連する症状に対する薬物処置に応答する可能性を予測する方法を提供する。この方法は、患者のHT遺伝子の発現を決定することを含み、この方法において、SLE等の自己免疫疾患と関連する増大したHTレベルの存在は、患者がその疾患に対する薬物処置に応答する可能性の予兆である。
【0111】
別の側面において、本発明は、HT発現に関する個体の治療処置を個体の薬物応答に応じて調整(tailoring)する方法を提供する。ファーマコジェノミックスは、臨床医または医師が予防的または治療的処置を、該処置から最も恩恵を受ける患者に対して適用することを可能とするとともに、薬物毒性関連副作用を被るおそれのある患者の処置を避けることを可能とする。
【0112】
自己免疫疾患
以下は、本明細書で開示されたHT測定アッセイの使用が、その処置の助けとなり得る自己免疫疾患の非限定的な例示である。B細胞関連自己免疫疾患、例えば、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎)、乾癬、アトピー性皮膚炎等の皮膚炎;慢性自己免疫性蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮剥離症、全身性強皮症および硬化症、炎症性大腸炎(IBD)に関連する応答(クローン病、潰瘍性大腸炎)、呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、アレルギー性鼻炎、脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー症状、湿疹、喘息、T細胞の浸潤および慢性炎症反応を伴う症状、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス(例えば、腎炎、非腎性、円板状、脱毛症)、若年型糖尿病、多発性硬化症、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症(例えばウェゲナー肉芽腫症)、無顆粒球症、血管炎(例えばANCA)、再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンドブラックファン貧血、免疫溶血性貧血(例えば自己免疫性溶血性貧血(AIHA))、悪性貧血、赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、多臓器不全症候群、重症筋無力症、抗原−抗体複合体が媒介する疾患、抗糸球体基底膜抗体病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、Lambert-Eaton筋無力症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス−ジョンソン症候群、固形臓器移植片拒絶反応(例えば高パネル反応性抗体力価のための前処理、組織におけるIgA沈着等)、移植片対宿主病(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡(例えば、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡)、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病、スティフマン症候群、巨細胞性動脈炎、免疫複合体性腎炎、IgA腎症、IgM多発性神経障害またはIgM媒介神経障害、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、精巣および卵巣の自己免疫疾患(例えば、自己免疫性精巣炎および卵巣炎)、原発性甲状腺機能低下症;自己免疫性内分泌疾患(例えば自己免疫性甲状腺炎)、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)とも呼ばれるI型糖尿病およびシーハン症候群;自己免疫性肝炎、リンパ球様間質性肺炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)vsNSIP、ギラン−バレー症候群、大血管の血管炎(例えば、リウマチ性多発筋痛および巨細胞性(高安)動脈炎)、中血管の血管炎(例えば、川崎病および結節性多発動脈炎)、強直性脊椎炎、ベルジェ病(IgA腎症)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変症、セリアック病(グルテン性腸症)、クリオグロブリン血症、ALS、および冠動脈疾患。
【0113】
BLySおよび/またはAPRILアンタゴニスト
自己免疫疾患に罹患する患者において高いHTレベルが観察される場合、このことは、患者がBLySおよび/またはAPRILの阻害に対して好ましい応答を示す可能性を示唆する。したがって、本発明はまた、上昇したHTレベルを有する患者における自己免疫疾患の処置に用いられるBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストを含む。以下は、そのような患者を処置するために用いることができるBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストの代表例である。BLySおよび/またはAPRILアンタゴニストとして機能する目的において、いずれかのTNFRファミリー受容体の細胞外ドメインは、一般的にBLySに結合する能力を維持する膜貫通または細胞質ドメインを本質的に含まないポリペプチドである。具体的には、TACIの細胞外ドメインは、TACIポリペプチド配列(配列番号2)の1−154アミノ酸を含み得る。さらに、ECDは、この配列のフラグメントまたは変異体、例えば、von Bulow 等(前出), WO 98/39361, WO 00/40716, WO 01/85782, WO 01/87979, および WO 01/81417に記載されるようなTACIのECD形態であり得る。特に、これらのECD形態は、配列番号2のアミノ酸1−106、配列番号2のアミノ酸1−142、配列番号2のアミノ酸30−154、配列番号2のアミノ酸30−106、配列番号2のアミノ酸30−110、配列番号2のアミノ酸30−119、配列番号2のアミノ酸1−166、配列番号2のアミノ酸1−165、配列番号2のアミノ酸1−114、配列番号2のアミノ酸1−119、配列番号2のアミノ酸1−120、および配列番号2のアミノ酸1−126を含み得る。さらに、TACIのECDは、システインリッチドメインを1つだけ有するそれらの分子を含み得る。
【0114】
BAFF−RのECD形態としては、例えば、BAFF−Rポリペプチド配列(配列番号4)のアミノ酸1−71を含むECD形態が挙げられる。さらに、ECDは、この配列のフラグメントまたは変異体、例えば、WO 02/24909、WO 03/14294およびWO 02/38766に記載されるようなBAFF−RのECD形態であり得る。特に、これらのECD形態は、配列番号4のアミノ酸1−77、配列番号4のアミノ酸7−77、配列番号4のアミノ酸1−69、配列番号4のアミノ酸7−69、配列番号4のアミノ酸2−62、配列番号4のアミノ酸2−71、配列番号4のアミノ酸1−61、配列番号4のアミノ酸2−63、配列番号4のアミノ酸1−45、配列番号4のアミノ酸1−39、配列番号4のアミノ酸7−39、配列番号4のアミノ酸1−17、配列番号4のアミノ酸39−64、配列番号4のアミノ酸19−35、および配列番号4のアミノ酸17−42を含み得る。さらに、BAFF−RのECDは、システインリッチドメインを有するそれらの分子を含み得る。
【0115】
BCMAのECD形態としては、例えば、BCMAポリペプチド配列(配列番号6)のアミノ酸1−48を含むものが挙げられる。さらに、ECD形態は、この配列のフラグメントまたは変異体、例えば、WO 00/40716およびWO 05/075511に記載されるようなBCMAのECD形態であり得る。特に、これらのECD形態は、配列番号6のアミノ酸1−150、配列番号6のアミノ酸1−48、配列番号6のアミノ酸1−41、配列番号6のアミノ酸8−41、配列番号6のアミノ酸8−37、配列番号6のアミノ酸8−88、配列番号6のアミノ酸41−88、配列番号6のアミノ酸1−54、配列番号6のアミノ酸4−55、配列番号6のアミノ酸4−51、および配列番号6のアミノ酸21−53を含み得る。さらに、BCMAのECDは、システインリッチドメインの一部分のみを有するそれらの分子を含み得る。
【0116】
さらなる実施形態では、BLyS受容体のBLyS結合領域(例えば、BAFF−R、BCMAまたはTACIの細胞外ドメインまたはそのフラグメント)をイムノグロブリン分子のFc部分に融合させることにより、そのin vivoにおける溶解を促進させることができる。一実施形態では、BLySおよび/またはAPRILアンタゴニストは、100nM以下の結合親和性でBLySポリペプチドに結合する。別の実施形態では、BLySおよび/またはAPRILアンタゴニストは、10nM以下の結合親和性でBLySポリペプチドに結合する。さらに別の実施形態では、BLySおよび/またはAPRILアンタゴニストは、1nM以下の結合親和性でBLySポリペプチドに結合する。
【0117】
別の具体例において、BLySおよび/またはAPRILアンタゴニストには、天然配列またはその変異体ではないBLyS結合ポリペプチドが含まれる。そのようなポリペプチドの幾つかの具体例は、WO 05/000351に記載される式I、式II、式IIIの配列を有するものである。特に、幾つかの結合ポリペプチドとしては、例えば、ECFDLLVRAWVPCSVLK(配列番号13)、ECFDLLVRHWVPCGLLR(配列番号14)、ECFDLLVRRWVPCEMLG(配列番号15)、ECFDLLVRSWVPCHMLR(配列番号16)、ECFDLLVRHWVACGLLR(配列番号17)、または WO 05/000351の図32に列挙された配列が挙げられる。
【0118】
また、BLySおよび/またはAPRILアンタゴニストは、天然配列TACI、BAFF−RまたはBCMAの細胞外ドメインに、そのBLyS結合領域において結合し、BLyS結合をin vitro、in situまたはin vivoで部分的にまたは完全にブロック、阻害または無効化することができる。例えば、そのような間接的なアンタゴニストは、BLySの結合が立体的に妨害されるようにTACIのある領域に結合するTACI抗体である。例えば、アミノ酸72−109または隣接領域における結合は、BLySの結合をブロックすると考えられる。また、アミノ酸82−222の領域で起こると考えられる、この分子に対するAPRILの結合のブロックも有利である。別のBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストは、ヒトBAFF−RのBLySに対する結合が立体的に妨害されるようにBAFF−Rのある領域に結合するBAFF−R抗体である。例えば、アミノ酸23−38もしくはアミノ酸17−42または隣接領域における結合は、BLySの結合をブロックすると考えられる。最後に、さらなる間接的なアンタゴニストは、BLySの結合が立体的に妨害されるようにAPRILのある領域に結合するAPRIL抗体である。例えば、アミノ酸5−43または隣接領域における結合は、BLyS(またはAPRIL)の結合をブロックすると考えられる。
【0119】
幾つかの実施形態において、本発明のBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストにはBLyS抗体が含まれる。「抗体」という用語は最も広い意味で用いられ、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ポリエピトープ特異性を有する抗体、一本鎖抗体、および抗体フラグメントが含まれる。幾つかの実施形態では、本発明のポリペプチドは、抗体が結合してTACI、BAFF−RまたはBCMAに対するBLySの結合を阻害することができるように、あるいは、BLySシグナルを阻害することができるように、例えば可変領域またはCDRにおける抗体フレームワークに融合される。本発明のポリペプチドを含む抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であり得る。本発明のポリペプチドを含む抗体は、抗体フラグメントであり得る。また、本発明の抗体は、本発明のポリペプチドで動物を免疫することにより産生することができる。このように、本発明のポリペプチドに対する抗体が意図されている。
【0120】
特に、ヒトBLyS(配列番号8)の残基162−275ならびに/または162、163、206、211、231、233、264および265からなる群より選択されたアミノ酸の隣接アミノ酸を含み、ヒトBLyS(配列番号8)のある領域内に結合する、BLySに対して特異的な抗体が意図されている。抗体の結合によって、1または2以上の受容体に対するBLySの結合が立体的に妨害される。そのような抗体はWO 02/02641およびWO 03/055979に記載されている。特に好ましい抗体は、リンフォスタット(Lymphostat)−B(Baker 等 (2003) Arthritis Rheum, 48, 3253-3265)として記載されるものである。
【0121】
その他の免疫抑制薬
本発明の方法では、その他の免疫抑制薬を単独であるいはBLySおよび/またはAPRIL阻害剤と組み合わせて使用することが意図される。その他の免疫抑制薬としては、例えば、特に限定されるわけではないが、カルシニューリン阻害剤(例えばシクロスポリンAまたはFK506)、ステロイド(例えばメチルプレドニゾンまたはプレドニゾン)等の免疫抑制薬、または免疫細胞の成長を阻止する免疫抑制薬(例えばラパマイシン)、抗CD40経路阻害剤(例えば、抗CD40抗体、抗CD40リガンド抗体およびCD40経路の小分子阻害剤)、移植サルベージ経路阻害剤(例えばミコフェノール酸モフェチル(MMF))、IL−2受容体アンタゴニスト(例えばホフマン ラ ロッシュ社のZeonpax.COPYRGT.およびノバルティス社のSimulet)またはそのアナログ、シクロホスファミド、サリドマイド、アザチオプリン、モノクローナル抗体(例えば、ダクリズマブ(抗インターロイキン(IL)−2)、インフリキシマブ(抗腫瘍壊死因子)、MEDI−205(抗CD2))、abx−cb1(抗CD147)、およびポリクローナル抗体(例えば、抗胸腺細胞グロブリン)が挙げられる。
【0122】
製剤処方
本発明で用いられるBLyS結合抗体等のBLySおよび/またはAPRILアンタゴニストの治療製剤は、所望の精製度を有する抗体を製剤学的に許容し得る任意の担体、賦形剤、安定剤(Remitgtorz's Pharmaceutical Science 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と混合し、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製され、保存される。許容し得る担体、賦形剤または安定剤は、用いられる用量および濃度において受容者に無毒であり、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液およびその他の有機酸緩衝液等の緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニン等の抗酸化物質;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベ等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたはイムノグロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリン等の単糖類、二糖類およびその他の糖類;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/またはTWEEN、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0123】
また、本発明の製剤は、特定の適応症の処置に必要な2以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは、それらは互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する。例えば、細胞毒性薬、化学療法薬、サイトカインまたは免疫抑制薬(例えば、T細胞に対して作用する免疫抑制薬(例えばシクロスポリン)またはT細胞に結合する抗体(例えばLFA−1に結合する抗体))をさらに含有することが好ましい場合がある。上記のような他の薬剤の有効量は、製剤中の抗体量、疾患または障害の種類、治療の種類、および上述したその他の因子に依存する。一般的には、本明細書に記載されるのと同一の用量および投与経路で用いられるか、または従来の用量の約1〜99%で用いられる。
【0124】
また、有効成分は、例えばコアセルベーション法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入してもよいし、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルションに封入してもよい。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に記載されている。
【0125】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の好適な例としては、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、マトリックスは、例えばフィルムまたはマイクロカプセル等の造形品形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびL−グルタミン酸エチルのコポリマー、非分解性エチレンビニルアセテート、LUPRON DEPOT(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドで構成される注射可能なマイクロスフェア)等の分解性乳酸−グルコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
in vivo投与に用いられる製剤は滅菌の必要がある。滅菌は、滅菌濾過膜による濾過によって容易に実現される。
【実施例】
【0126】
以下の実施例は、本発明における作製法および使用法に関する開示および記載を当業者に提供するものであるが、本発明者等が本発明であると考えている範囲を限定する意図はないし、以下の実験が実施された全てのまたは唯一の実験であることを表す意図はない。用いられる数値(例えば、量、温度等)に関して正確性を確保するための努力がなされたが、ある程度の実験誤差および偏差が生じる可能性がある。特に示さない限り、部は重量部、分子量は重量平均分子量、温度はセ氏温度、および圧力は大気圧またはその付近である。
【0127】
実施例1:HTレベル測定アッセイ
試薬:
ビーズに結合した抗APRIL抗体(例えば、BioRad xMap bead 106(Hercules,CA)に結合したZGEN抗APRIL抗体E9617)(クローン319.6.8.5))
ビオチン化抗BLyS抗体(ビオチン化ZGEN 抗BLyS抗体E4731(クローン258.2.1.9.1.3))
ストレプトアビジン−PE(Jackson ImmunoResearch. Labs,Inc(West Grove,PA)#016−110−084)
マルチスクリーンプレート(Millipore(Billerica,MA),MABVN1250)
ELISA B(ELISA C+1%BSA+NaAz)
APRIL/BLySヘテロ三量体 LOT A1642F 標準品(25ng/mL),QC1(7.5ng/mL),およびQC2(500pg/mL)(2APRILサブユニット,1BLySサブユニット)
サンプル
ヒトAB血清(BLySおよびAPRILが低含有量であることについて予めスクリーニングされている)
攪拌器
【0128】
1)全ての試薬を室温とする。
2)プレートのブロック:ELSA B100μLを全てのウェルに加え、吸引しながら10分間攪拌する。
3)ビーズを30秒間ボルテックスし、30秒間超音波処理する。
a.添加するビーズ容量の決定:25μL/ウェルのELISA B中の5K ビーズ/ウェル
b.1つのプレート全てに2.5mL+5E5ビーズ
4)全てのウェルについて、1ウェルあたりビーズ混合物25μLを加える。
5)標準品の希釈:A1642F標準品(25ng/mL)をELISA Bで希釈し(1:3で6回)、7段階の希釈系列(25000,8333,2778,926,309,103および34pg/mL)を調製する。
6)A1に25000pg/mL標準品を、B1に8333pg/mL標準品を、25μL加える。
7)A2にQC1を25μL加え、B2にQC2を25μL加える。
8)血清25μLを全ての標準品、バックグラウンドおよびQCウェルに加える。
9)ELISA B 25μLを全てのサンプルウェルおよびバックグラウンドウェルに加える。
10)血清サンプル25μLを各サンプルウェルに加える。*,**
11)プレートを密閉し、ホイルで覆う。600RPM、室温(RT)で60分間攪拌器に設置する。
12)吸引する。プレートをELISA B 2×100μLで洗浄する。
13)1μg/mLの抗体E4731−ビオチンを25μL/ウェル加える。
14)プレートを密閉し、ホイルで覆う。600RPMで60分間、攪拌器に設置する。
15)洗浄および吸引を行うことなく、ELISA Bで希釈したSA−PE(1:100)を25μL/ウェル加える。
16)プレートを密閉し、ホイルで覆う。600RPMで30分間、攪拌器に設置する。
17)吸引する。プレートをELISA B 2×100μLで洗浄する。
18)ELISA Bを110μL/ウェル加える。600RPMで5分間混合する。
19)ルミネックス100を実行する。
【0129】
【表1】

【0130】
サンプルは無希釈(neat)および次の希釈度:1:4、1:8および1:16で処理することが非常に重要である。これは、天然HT複合体の解離を可能とするために必要であるが、血清効果ではない。血清濃度は、サンプルを血清標準品で希釈した希釈系列全体を通じて一定に維持する必要がある。各ウェルに含まれる血清が25μL未満であると、それらのウェルが誤った値を示す可能性がある。
【0131】
【表2】

【0132】
標準品および品質コントロールにおける許容可能な値は、期待値の+/−25%である。アッセイのLODは、無希釈サンプル(100%血清)に対して100pg/mLであると予想される。アッセイは34pg/mL以下で正確に実行する。
【0133】
このアッセイで用いられる標準品は、2個のAPRILサブユニットおよび1個のBLySサブユニットを含むHTである。この分子が患者血清中にあまり見られない場合、天然HTの絶対値は異なることになるが、この場合、特定の三量体形成に対する任意のバイアスが存在している証拠となる。
【0134】
実施例2:患者および健常対照の血清中HTの測定
ZymoZipper N末端三量化ドメインは、組換えBLyS/APRILヘテロ三量体(rHT)の産生を可能とし、これを標準品として用いて、実施例1に記載したようなビーズを用いたイムノアッセイを開発し、ヒト血清中の天然HTを定量化した。このアッセイを、BLySおよびAPRIL特異的ELISAとともに用いて、健常対照(HC;n=79)、全身性エリテマトーデス患者(SLE;n=30)および関節リウマチ患者(RA;n=29)に由来する血清中のこれら3つのリガンドを測定した(図1および2参照)。TACIをNFκB/ルシフェラーゼリポーター遺伝子とともにトランスフェクトしたJurkat細胞を用いた4時間のシグナリングアッセイおよび4日間の初代ヒトB細胞増殖アッセイにおいて、rHTの生物活性を、rBLySおよびrAPRILの生物活性と比較した。
【0135】
HCよりも有意に数多くのSLE患者が、検出可能な血清中HTを有しており(70% vs 14%,p<0.0001,フィッシャーの直接確率検定)、RA患者の24%が検出可能なHTを有していた。この集団において、平均血清HTレベルは、177pg/mL(SLE)、64pg/mL(RA)および66pg/mL(HC)であった。TACI−Jurkatアッセイ(実施例4参照)において、rHTシグナリングは、BLySまたはAPRILのシグナリングと類似している。B細胞アッセイ(実施例3参照)において、rHTは、ホモ三量体リガンドよりも効能の低い誘導因子である(EC50値:BLySについては0.02nM,APRILについては0.17nMおよびrHTについては4.06nM)。これは、おそらく、循環B細胞において、我々のrHTが結合しにくいBAFF−Rが優勢的に発現していることを反映している。これらのアッセイにおいて、アタシセプトおよびBCMA−Igは3リガンド全ての活性を無効化する一方、BAFFR−IgはrHT活性阻害を全くまたはほとんど示さない。我々のデータによって、自己免疫患者において天然HTが上昇していることが確認され、rHTが生物学的に活性であることが示される。天然HTが、そのホモ三量体対応物とは異なる生物学的役割を有するか否かは、まだ決定されていない。アタシセプトは、3リガンド形態全ての生物活性を阻害するから、自己免疫疾患の臨床処置において重要である。
【0136】
72人のSLE患者および42人の健常対照を含むSLE患者の第2群において、BLySおよびAPRILレベルがELISAによって決定された。HTレベルは、ルミネックスによるアッセイを用いて、36人の患者および25人の対照において測定された。HTは、対照よりも患者において数多く検出された(72% vs 32%,χ=0.0019)。
【0137】
実施例3:B細胞増殖アッセイ
凍結したアフェレーシス処理(apheresed)末梢血単核細胞(PBMC)1×10個を含有するバイアルを、37℃の水浴中ですばやく解凍し、50mL試験管中のB細胞培地25mL(RPMI−1640培地,10%加熱不活性化ウシ胎仔血清,5% L−グルタミン,5%ペニシリン/ストレプトマイシン(Pen/Strep))に再懸濁した。トリパンブルー(GIBCO BRL,Gaithersburg,MD)を用いて細胞の生存率を検査した。次いで、抗CD19でコーティングしたマイクロビーズ(Miltenyi Biotech)を用いた陽性選別によってCD19+ B細胞を単離した。次いで、MACS LSカラム(Miltenyi Biotech)によって被覆細胞を単離した。得られたB細胞を最終濃度1.6×10細胞/mLでB細胞培地中に再懸濁し、96ウェル U底プレート(Falcon,VWR,Seattle,WA)に100μL/ウェルでプレーティングした。HTおよびホモ三量体リガンドを調製し、1000ng/mlから0ng/mlまでの3倍希釈系列の細胞に加えた。最終容量は200μL/ウェルであった。
【0138】
次いで、細胞を加湿インキュベーター中37℃で72時間インキュベートした。細胞採取の16時間前に、1μCi H チミジンを全てのウェルに加えた。製造者の指示書に従って細胞採取器(Packard)により採取および回収された細胞を96ウェルフィルタープレート(UniFilter GF/C,Packard,Meriden,CT)に入れた。プレートを55℃で20〜30分間乾燥し、ウェルの底を不透明なプレートシーラーでシールした。各ウェルにシンチレーション液(Microscint−O,Packard)を0.25mL加え、トップカウントマイクロプレートシンチレーションカウンター(Packard)を用いてプレートを読み取った。
【0139】
実施例4:TACIトランスフェクトJurkat細胞アッセイ
TACI in vivo バイオアッセイでは、2つのプラスミドがトランスフェクトされたJurkat細胞株(ヒト急性T細胞リンパ球,KZ142,クローン#24)を用いる。まず、NF−κβ/AP−1プロモーターおよびネオマイシン耐性遺伝子の制御下にルシフェラーゼレポーター遺伝子を含有するプラスミドを、細胞株にトランスフェクトした。G418選択の後、適当なクローンを選択した。次いで、この細胞株に、CMVプロモーターおよびピューロマイシン耐性遺伝子の制御下に完全長TACI cDNAを含有するプラスミド(TACI/pZP7P)をトランスフェクトした。ピューロマイシンを用いてクローンを選択し、TACIモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーによってTACI発現を評価し、アッセイに適切な細胞株を選択した。
【0140】
アッセイは、TACI cDNAから産生する細胞表面TACIに対して試験リガンド(HTまたはホモ三量体BLySもしくはホモ三量体APRIL)が結合することによって引き起こされるルシフェラーゼ遺伝子発現の読み取り(read out)の記録に基づいて行われる。
【0141】
フェノールレッドを含まない10%FBS添加RPMI1640培地(Rosewell Park Memorial Institute,Buffalo,NY)中で、トランスフェクトされたJurkat細胞を増殖させた。トランスフェクションの選択試薬であるピューロマイシンを2μg/mL添加した。ピルビン酸ナトリウムおよびL−グルタミンも培地に1%容量で添加した。製造者の指示書に従って、Steady−Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega,Madison,WI #E2510)の基質およびアッセイ緩衝液を用いた。
【0142】
トランスフェクトされたJurkat細胞を1.6×10細胞/mLとなるように培地中に再懸濁し、アッセイを実施した。細胞を白色アッセイプレート上に50μL/ウェルでプレーティングした。ZZ−APRILのサンプルを適切に希釈し、96ウェルプレートに添加した。希釈液を細胞に50μL/ウェルで添加した。プレートを37℃のインキュベーター中で4時間インキュベートした。インキュベーションの間、Steady−GLO緩衝液および基質を室温で平衡化した。4時間のインキュベーションの後、プレートを室温で5分間冷却した。アッセイ緩衝液および基質を混合し、100μL/ウェルで添加した。設定を低にしてプレートを1分間ボルテックスして混合し、次いで室温で10分間インキュベートした。その後、プレートをルミノメーター(積分時間5秒)で読み取った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の増大したBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)レベルを検出する方法であって、
(a)生体サンプル中の第一のHTレベルを測定すること、
(b)前記レベルを、健常個体の生体サンプル中の第二のHTレベルと比較すること、および
(c)前記第一のレベルが前記第二のレベルと比較して増大しているか否かを決定すること
を含み、
前記増大したHTレベルが自己免疫疾患と関連している前記方法。
【請求項2】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記自己免疫疾患がSLEである請求項1記載の方法。
【請求項4】
測定においてルミネックス イムノアッセイを用いる請求項3記載の方法。
【請求項5】
自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体を処置する方法であって、
自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体に由来する生体サンプルを、上昇したBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)レベルの存在または不存在について分析すること、および
増大したHTレベルと関連する疾患に罹患していると臨床的に診断された個体に最も効果的な処置計画を選択すること
を含み、
前記上昇したAPRILタンパク質レベルの存在が自己免疫疾患の臨床診断と関連している前記方法。
【請求項6】
前記処置計画がHTアンタゴニストの投与を含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記HTアンタゴニストがBLySアンタゴニストでもある請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記HTアンタゴニストがAPRILアンタゴニストでもある請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択される請求項5記載の方法。
【請求項10】
前記自己免疫疾患がSLEである請求項5記載の方法。
【請求項11】
前記分析においてルミネックス イムノアッセイを用いる請求項5記載の方法。
【請求項12】
患者が自己免疫疾患に対する薬物処置に応答する可能性を予測する方法であって、
生体サンプル中のBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)レベルを決定することを含み、
上昇したHTレベルの存在が、前記患者が前記疾患に対する薬物処置に応答する可能性の予兆である前記方法。
【請求項13】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記自己免疫疾患がRAである請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記決定がルミネックス イムノアッセイを用いて行われる請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記薬物処置がHTアンタゴニストの投与を含む請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記HTアンタゴニストがBLySアンタゴニストでもある請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記HTアンタゴニストがAPRILアンタゴニストでもある請求項16記載の方法。
【請求項19】
個体の血清中の増大したBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)レベルを検出するin vitro方法であって、
(a)前記個体に由来する試験生体サンプル中のHTレベルを測定すること、
(b)前記レベルを、健常対照に由来するサンプル中のHTレベルと比較すること、および
(c)前記試験生体サンプル中のHTレベルが前記対照サンプル中のレベルと比較して増大しているか否かを決定すること
を含み、
前記増大したHTレベルが自己免疫疾患と関連している前記方法。
【請求項20】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択される請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記自己免疫疾患がSLEである請求項19記載の方法。
【請求項22】
自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体を処置するために最も効果的な処置計画を選択するin vitro方法であって、
自己免疫疾患であると臨床的に診断された個体に由来する生体サンプルを、血清中の上昇したBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)レベルの存在または不存在についてin vitroで分析することを含み、
前記上昇したHTレベルの存在が自己免疫疾患の臨床診断と関連している前記方法。
【請求項23】
前記処置計画がHTアンタゴニストの使用を含む請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記HTアンタゴニストがBLySアンタゴニストでもある請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記HTアンタゴニストがAPRILアンタゴニストでもある請求項25記載の方法。
【請求項26】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択される請求項22記載の方法。
【請求項27】
前記自己免疫疾患がRAである請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記個体がRAであると新たに診断されている請求項20記載の方法。
【請求項29】
患者が自己免疫疾患に対する薬物処置に応答する可能性を予測する方法であって、
前記患者に由来するサンプル中のBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)レベルを決定することを含み、
上昇したHTレベルの存在が、前記患者が前記疾患に対する薬物処置に応答する可能性の予兆である前記方法。
【請求項30】
前記免疫疾患が、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(LN)、ウェゲナー病、炎症性大腸炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性血小板減少症、多発性硬化症、乾癬、IgA腎症、IgM多発性神経障害、重症筋無力症、血管炎、糖尿病、レイノー症候群、シェーグレン症候群および糸球体腎炎からなる群より選択される請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記自己免疫疾患がSLEである請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記決定がルミネックス イムノアッセイを用いて行われる請求項29記載の方法。
【請求項33】
前記薬物処置がHTアンタゴニストを含む請求項29記載の方法。
【請求項34】
前記HTアンタゴニストがBLySアンタゴニストでもある請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記HTアンタゴニストがAPRILアンタゴニストでもある請求項30記載の方法。
【請求項36】
患者の自己免疫疾患の処置に使用するためのHTアンタゴニストであって、
前記患者において血清中のBLyS/APRILヘテロ三量体(HT)レベルが上昇したレベルにある前記HTアンタゴニスト。
【請求項37】
前記自己免疫疾患がSLEである請求項36記載のアンタゴニスト。
【請求項38】
前記HTアンタゴニストがBLySアンタゴニストでもある請求項36記載のアンタゴニスト。
【請求項39】
前記HTアンタゴニストがAPRILアンタゴニストでもある請求項36記載のアンタゴニスト。
【請求項40】
前記アンタゴニストが、TACI−IgおよびBCMA−Igからなる群より選択された受容体細胞外ドメイン/Fcドメイン融合タンパク質である請求項36記載のアンタゴニスト。
【請求項41】
前記受容体細胞外ドメイン/Fcドメイン融合タンパク質がTACI−Igである請求項40記載のアンタゴニスト。
【請求項42】
前記TACI−Igがアタシセプトである請求項41記載のアンタゴニスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−523037(P2011−523037A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507535(P2011−507535)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/041089
【国際公開番号】WO2009/134633
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(505222646)ザイモジェネティクス, インコーポレイテッド (72)
【Fターム(参考)】