説明

血管内診断のための超音波探触子及びその製造方法

【課題】脳内の血管などの非常に細い血管などにカテーテルプローブ先端を通すことができるように外径を小さくし、且つ、高品質・高分解の超音波画像を提供できるように、複数のトランスデューサ素子を備える超音波探触子をその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の超音波探触子は、1つの観点からは、円柱状に形成されたダンパー部と、該ダンパー部の側面にN個(Nは2以上)の溝が設けられ、該溝には導電性樹脂材料が充填されており、またダンパー部の上面には、第1の電極と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと第2の電極が積層され、且つ、第1の電極が略等分となるように扇形にN分割されている構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、脈管、消化器管等の体腔内に挿入して、血管内断面像の表示などを行うために用いられる医用カテーテルに関し、特に、その超音波探触子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医師が行う診断・治療をサポートするために、血管内の血栓を診断する方法として超音波エコー診断が利用されている。すなわち、血管内に細いカテーテルプローブ先端部に取り付けられた超音波探触子を挿入した状態で超音波の送受波を行わせて、超音波断層画像を得るものである。かかる血管内に挿入する超音波探触子は、カテーテルプローブの内部に回転自在に挿入されたトルクワイヤと、そのトルクワイヤの先端部側面に設けられた振動子とで構成され、トルクワイヤを回転駆動することによって超音波ビームを回転させ、回転走査により超音波断層画像データを取り込むものである。
【0003】
このように、従来の超音波カテーテルは、先端部に設けられた超音波探触子をトルクワイヤなどにより回転走査させることによって体腔の軸と垂直な方向の断面像を得るものであるため、血管狭窄部の状態を観察する際には、超音波カテーテルを回転駆動させながら超音波探触子が狭窄部を幾度か通過させる必要がある。従って、完全閉塞血管やカテーテルプローブ先端を通すことが困難な血管狭窄部のような場合、通過させることが困難なため診断するための十分なデータを取得することができないことから、フォワードルッキングが行える超音波カテーテルが求められている。
【0004】
また、従来の超音波カテーテルの超音波探触子は、そのサイズの制約から、多くの場合圧電材料からできている単一のトランスデューサ素子から成り、カテーテルプローブの遠位部分に接続されている。このような超音波カテーテルを患者に挿入し、トランスデューサを患者体内に配置して、患者の体の所望の領域を撮像する。このような超音波カテーテルは、電気信号すなわち励振パルスをトランスデューサに送ることによって動作する。トランスデューサは、電気エネルギを機械エネルギに変換し、その機械エネルギは周囲の体組織中を超音波として伝播する。放射される超音波の周波数は、トランスデューサ素子の共鳴周波数と励振パルスの周波数との関数であり、超音波はトランスデューサへエコー反射により戻る。その超音波エコーはトランスデューサにより電気信号に変換され、電気信号は患者の体内の画像生成に使用されている。
【0005】
しかし、単一のトランスデューサの動作では、生成される画像は単一の2次元平面に制限される。そのため広範な領域にわたる画像を生成するには、トランスデューサを患者の体内で移動させる必要がある。また、単一のトランスデューサ素子の共鳴周波数は1つであり、単一トランスデューサの超音波カテーテルでは分解能が制限されてしまう。このようなことから、現在、高品質・高分解の超音波画像を提供できる超音波カテーテルが望まれている。
【0006】
高品質・高分解の超音波画像を撮像できる超音波カテーテルの提供を目的として、図7−1に示すように、中心軸の周りに同心的に配置された複数のトランスデューサ素子の環状アレイの構造を成す超音波探触子を有する超音波カテーテルが知られている(特許文献1を参照)。また、容易に指向性を制御して高画質の超音波画像を撮像できる超音波カテーテルの提供を目的として、図7−2に示すように、カテーテルプローブの先端部若しくは側面部の表面に、イボ状に半球状に突出した複数個の取付部と、その各取付部の表面に第一電極と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと第二電極(共通電極)が配置された構造を成す超音波探触子を有する超音波カテーテルが知られている(特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特表2002−502622号公報
【特許文献2】特許第3787725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した各特許文献の超音波探触子の場合、複数のトランスデューサ素子の環状アレイに配置したり、半球状に突出した複数個の取付部を先端部に配置したりするため、超音波探触子の外径が大きくなるという問題がある。すなわち、特許文献1のように環状アレイに配置させるとした場合、分解能を上げるためにはトランスデューサ素子の個数を増やす必要がある(図7−1に示されているのは3素子の環状アレイ)。その場合、環状アレイの外側の外径がトランスデューサ素子の個数と共に大きくなる。
【0009】
また、特許文献2のように半球状に突出した複数個の取付部を先端部に配置させるとした場合、複数個の取付部の成形上の制約から、サイズ的に小さなものにするのは困難である。特許文献2の明細書段落0028、0029の本文中には、ベース部11は精密立形加工装置を使用することにより微細加工により形成されており、外径は例えば3.0mmを有し、その環状の先端面にそって、複数個、図示の場合8個の取付部11aを一体に備えているとある。そして各取付部11aは、それぞれベース部11の先端面から高さH(例えば0.2mm)だけ立ち上がった後、曲率半径R(例えば0.66mm)を備えるように半球状に形成されているとある。このことからも推察できるように、成形加工の観点から、特許文献2に示されている超音波探触子の外径は自ずと大きくなってしまう。
【0010】
図6は、カテーテルプローブの先端に配置された超音波探触子が血管内を進むイメージ図であり、(1)はフォワードルッキングで超音波ビームが進行方向前方に照射される様子を、(2)は血管壁に血栓が存在する場合に超音波探触子が血管内を進む様子を示している。脳内の血管などの非常に細い血管にカテーテルプローブ先端を通していく場合や、完全閉塞血管やカテーテルプローブ先端を通すことが困難な血管狭窄部のような箇所にカテーテルプローブ先端を通していく場合、カテーテルプローブ先端に配設される超音波探触子の外径を小さくする(直径が1mm程度)必要がある。
【0011】
本発明は、脳内の血管などの非常に細い血管などにカテーテルプローブ先端を通すことができるように外径を小さくし、且つ、高品質・高分解の超音波画像を提供できるように、複数のトランスデューサ素子を備える超音波探触子をその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、複数のトランスデューサ素子を備える超音波探触子の種々の試作品を作製し、製造方法の改良を重ねた結果、本発明に係る超音波探触子及びその製造方法を完成した。
【0013】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の観点の超音波探触子は、円柱状に形成されたダンパー部と、該ダンパー部の側面にN個(Nは2以上)の溝が設けられ、該溝には導電性樹脂材料が充填されており、またダンパー部の上面には、第1の電極と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと第2の電極が積層され、且つ、第1の電極が略等分となるように扇形にN分割されている構成を成す。
【0014】
また、本発明の第2の観点の超音波探触子は、円柱状に形成されたダンパー部と、該ダンパー部の側面にN個(Nは2以上)の溝が設けられ、該溝に金属メッキが施されており、またダンパー部の上面には、第1の電極と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと第2の電極が積層され、且つ、第1の電極が略等分となるように扇形にN分割されている構成を成す。
【0015】
また、本発明の第3の観点の超音波探触子は、円柱状に形成されたダンパー部と、該ダンパー部の側面および上面にはN個(Nは2以上)の相互に絶縁された金属メッキが施されており、また前記ダンパー部の上面には、第1の電極と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと第2の電極が積層され、且つ、前記第1の電極が略等分となるように扇形にN分割されている構成を成す。
【0016】
ここで、本発明の第1の観点又は第2の観点の超音波探触子は、ダンパー部の側面に、第2の電極の信号線引き出し用の溝が更に設けられていることが好ましい。
設置(アース)の共通電極として機能する第2の電極の信号線引き出し用の溝を設けることで、超音波探触子の外径を小さくするのである。
【0017】
また、本発明の第1の観点又は第2の観点の超音波探触子は、超音波探触子の第2の電極が、前記第1の電極と同様にN個に分割されており、且つ、前記超音波探触子の外周に、上面に環状の鍔(ツバ)部を備え導電性材料で形成された円筒状の保護用スリーブが設けられ、該保護用スリーブの上面鍔(ツバ)部が、N分割された前記第2の電極の全てに接触することにより、前記保護用スリーブを介して前記第2の電極の信号を引き出すことが好ましい。
【0018】
また、本発明の第1の観点〜第3の観点の超音波探触子は、具体的にはダンパー部の底面形状がテーパー加工されていることが好ましい。
ダンパー部の側面にN個の溝には、導電性樹脂材料が充填或いは金属メッキが施されており、これにより第1の電極の信号を引き出すのであるが、このためにダンパー部の側面にN個の溝に各々リード線を取り付ける必要がある。このリード線の接着取り付けを容易にすべく、ダンパー部の底面形状をテーパー加工にするのである。
【0019】
次に、本発明の第1の観点の超音波探触子の製造方法は、
ダンパー部としてエポキシ樹脂を円柱形状に加工する工程と、
2)ダンパー部の円柱側面にN本の溝を略等間隔に略平行にカットする工程と、
3)1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイの上下面に第1の電極と第2の電極を形成しダンパー部の円柱外径に合わせて成形する工程と、
4)第1の電極を略等分となるように扇形にN分割する工程と、
5)ダンパー部の上面と前記第1の電極が重なるように導電性接着剤で接合する工程と、
を有するものである。
【0020】
また、本発明の第2の観点の超音波探触子の製造方法は、
1)ダンパー部としてエポキシ樹脂を円柱形状に加工する工程と
2)ダンパー部の円柱側面にN本の溝を略等間隔に略平行にカットする工程と、
3)ダンパー部の全周囲に金属メッキ処理を施す工程と、
4)金属メッキ処理が施されたダンパー部の側面を研磨する工程と、
5)1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイの上下面に第1の電極と第2の電極を形成する工程と、
6)ダンパー部の上面と第1の電極が重なるように導電性接着剤で接合する工程と、
7)電極が形成された1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイをダンパー部の円柱外径に合わせて成形する工程と、
8)電極が形成された1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイを上面からダンパー部の上面にかけて略等分となるように扇形にN分割する工程と、
を有するものである。
【0021】
また、本発明の第3の観点の超音波探触子の製造方法は、
ダンパー部としてエポキシ樹脂を円柱形状に加工する工程と、
2)ダンパー部の側面および上面にはN個の相互に絶縁された金属メッキを施す工程と、
3)1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイの上下面に第1の電極と第2の電極を形成しダンパー部の円柱外径に合わせて成形する工程と、
4)第1の電極を略等分となるように扇形にN分割する工程と、
5)ダンパー部の上面と第1の電極が重なるように導電性接着剤で接合する工程と、
を有するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の超音波探触子及びその製造方法は、カテーテルプローブ先端形状の外径を小さくでき、且つ、複数のトランスデューサ素子を備えることができる。これにより、脳内の血管などの非常に細い血管などに、血管内壁を損なわないようにカテーテルプローブ先端を通過させ、高分解能の血管内壁の超音波画像を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。尚、以下に記載する実施例に基づいて、変更例、他の実施例を本発明の範囲から逸脱することなく行なうことができることは当業者によっては明らかである。
【0024】
図1は、超音波探触子の構造を示す模式図を示している。ダンパー部14に、両面が第1の電極12と第2の電極13が設けられた1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11の複合部材(コンポジット部材)が取り付けられている。
1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11とは、例えば縦横数ミクロンの面を有する角柱に形成されたPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)からなる圧電セラミックスアレイを、可撓性を有するポリマーに埋め込むことにより構成されている。1−3コンポジット構造とは、上述のPZTとポリマーとの配置関係であり、角柱に形成されたPZTの上面と底面とを除く側面をポリマーが覆うように、PZTの周囲にポリマーが配置されている構造を指す。
【0025】
そして、上記の1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11の上下面には第1の電極12と第2の電極13が取り付けられている。第1の電極12と第2の電極13は、例えばNi/Au等から構成されており、スパッタリング法など形成される。
【0026】
本発明に係る超音波探触子は、この第1の電極12が、複数のトランスデューサ素子の各素子単位に設けられる必要があり、そのため第1の電極12は分割されている。一方、第2の電極13は、接地(アース)の共通電極として用いられるので、第1の電極12と異なり分割される必要はない。
そして、第1の電極12からの信号を取り出すために、ダンパー部14に溝を設けて導電性樹脂材料を流し込み、及び/又は、金属メッキ処理を施している。
【実施例1】
【0027】
実施例1の超音波探触子は、図1において、円柱状に形成されたガラスエポキシ樹脂から成るダンパー部14と、このダンパー部14の側面にダイシングソーを用いて4個の溝が設けられ、この4個の溝には導電性樹脂材料としてドータイト(登録商標)が充填されている。またダンパー部14の上面には、第1の電極12と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11と第2の電極13が積層され、且つ、第1の電極12が略等分となるように扇形に4分割されている。
【0028】
図2に、実施例1の超音波探触子の製造処理フローを示している。
(1)先ず、エポキシ樹脂を円柱形状に加工してダンパー部14を作製する。
(2)次に、ダンパー部の円柱側面に4本の溝(内2本は20b、20c)を、ダイシングソーを用いて略等間隔に略平行にカットする。溝の幅や深さは、導電性樹脂材料の流しこみが行える程度であればよく、0.05〜0.1ミリ程度である。
(3)そして、ダンパー部14の円柱側面の4本の溝(20b、20c)に、導電性樹脂材料であるドータイト(登録商標)を流し込み充填する(21b、21c)。
(4)また、1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11の上下面に第1の電極12と第2の電極13を形成しダンパー部14の円柱外径に合わせて成形する。
(5)この第1の電極12の表面に十字の切り込み部22を設けて略等分となるように扇形に4分割する。
(6)ダンパー部14の上面と十字の切り込み部22を設けた第1の電極12が重なるようにエポキシ接着剤で接合する。
(7)最後に、上部の第2の電極13の信号引き出し線15と、第1の電極12の信号引き出し線4本(16a,16b,16c,16d)を、ダンパー部14の円柱側面の4本の溝(20b、20c)の導電性樹脂材料につなげる。
【0029】
また、図5に示されるように、ダンパー部14の側面に、設置(アース)の共通電極として機能する第2の電極12の信号線引き出し用の溝27が設けて、超音波探触子の外径を小さくすることが可能である。
【実施例2】
【0030】
実施例2の超音波探触子は、図1において、円柱状に形成されたガラスエポキシ樹脂から成るダンパー部14と、このダンパー部14の側面にダイシングソーを用いて4個の溝が設けられ、この4個の溝には金属メッキが施されている。またダンパー部14の上面には、第1の電極12と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11と第2の電極13が積層され、且つ、第1の電極12が略等分となるように扇形に4分割されている。
【0031】
図3に、実施例2の超音波探触子の製造処理フローを示している。
(1)先ず、エポキシ樹脂を円柱形状に加工してダンパー部14を作製する。
(2)次に、ダンパー部の円柱側面に4本の溝(内2本は20b、20c)を、ダイシングソーを用いて略等間隔に略平行にカットする。溝の幅や深さは、導電性樹脂材料の流しこみが行える程度であればよく、0.05〜0.1ミリ程度である。
(3)次に、ダンパー部14の全周囲に金(Au)でメッキ処理を施す(金メッキが施されている部分が23で全周囲である)。
(4)そして、金メッキ処理が施されたダンパー部14の側面を研磨する。両端面と溝のみが金メッキが施されている部分23で、その他は金メッキが削り取られダンパー部14のガラスエポキシ樹脂が露出している。
(5)また、1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11の上下面に第1の電極12と第2の電極13を形成する。
(6)ダンパー部14と、上記(5)で形成したものの第1の電極12が重なるようにエポキシ接着剤で接合する。
(7)その後、ダンパー部14の円柱外径に合わせて、1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11及び両端面に取り付けられた第1の電極12と第2の電極13を成形する。
(8)そして、電極が形成された1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイを上面からダンパー部の上面にかけて十字の切り込み部22を設け、略等分となるように扇形に4分割する。このとき、ダンパー部14の上端面の金メッキが施されている部分23まで確実に切断して4分割する。従って、各々分割された部分同士が完全に絶縁されることになる。
(9)ダンパー部14の下部14aをテーパー状に加工し、第1の電極12の信号引き出し線4本(16a,16b,16c,16d)を、ダンパー部14の円柱側面の4本の溝の金メッキにつなげる。
(10)金属材料で成型された円筒状のメタルスリーブ30を作製する。このメタルスリーブ30の上面には、環状の鍔(ツバ)部が設けられている。
(11)円筒状のメタルスリーブ30に超音波探触子を挿入し、隙間にエポキシ樹脂を注入し固定する。この時、第2の電極13は、保護スリーブ30の上面の環状の鍔(ツバ)部と接触させる。
(12)第2の電極13は、保護スリーブ30の上面の環状の鍔(ツバ)部と接触するため、メタルスリーブ30の下部から第2の電極13の信号線であるアース線15を引き出すことができる。
【実施例3】
【0032】
実施例3の超音波探触子は、図1において、円柱状に形成されたガラスエポキシ樹脂から成るダンパー部14と、このダンパー部14の側面および上面には4個の相互に絶縁された金属メッキが施されている。またダンパー部14の上面には、第1の電極12と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11と第2の電極13が積層され、且つ、第1の電極12が略等分となるように扇形に4分割されている。
【0033】
図4に、実施例3の超音波探触子の製造処理フローを示している。
(1)先ず、エポキシ樹脂を円柱形状に加工してダンパー部14を作製する。
(2)次に、ダンパー部14に図に示すように金(Au)メッキを施す。
(3)そして、ダンパー部14の金メッキをレーザー加工して、図に示すような形状にする。これにより、円柱側面および上面に4個の相互に絶縁された金(Au)メッキ部分を作る。
(4)また、1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ11の上下面に第1の電極12と第2の電極13を形成しダンパー部14の円柱外径に合わせて成形する。
(5)この第1の電極12の表面に十字の切り込み部22を設けて略等分となるように扇形に4分割する。
(6)ダンパー部14の上面と十字の切り込み部22を設けた第1の電極12が重なるようにエポキシ接着剤で接合する。
(7)最後に、上部の第2の電極13の信号引き出し線15と、第1の電極12の信号引き出し線4本(16a,16b,16c,16d)を、ダンパー部14の円柱側面の4本の溝(20b、20c)の導電性樹脂材料につなげる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、血管、脈管、消化器管等の体腔内に挿入して、血管内断面像の表示などを行うために用いられる超音波医用カテーテルによる超音波探触子及びその製造方法として利用され得る。また、複雑な機械や配管に入り込んで検査やメンテナンスなどを行うマイクロマシン分野に利用することができる
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】超音波探触子の構造を示す模式図
【図2】実施例1の超音波探触子の製造処理フロー
【図3】実施例2の超音波探触子の製造処理フロー
【図4】実施例3の超音波探触子の製造処理フロー
【図5】ダンパー部の側面に、第2の電極の信号線引き出し用の溝が設けられている様子
【図6】カテーテルプローブの先端に配置された超音波探触子が血管内を進むイメージ図、(1)はフォワードルッキングで超音波ビームが進行方向前方に照射される様子で、(2)は血管壁に血栓が存在する場合に超音波探触子が血管内を進む様子。
【図7−1】中心軸の周りに同心的に配置された複数のトランスデューサ素子の環状アレイの構造を成す超音波探触子(特許文献1に示される超音波探触子)の模式図
【図7−2】カテーテルプローブの先端部に、半球状に突出した複数個の取付部の各表面に1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと電極が配置された構造を成す超音波探触子(特許文献2に示される超音波探触子)の模式図
【符号の説明】
【0036】
1 超音波探触子
2 超音波ビーム
3 血管壁
4 血栓
11 1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイ
12 第1の電極
13 第2の電極
14 ダンパー部
14a テーパー状のダンパー下部
15 アース線
16a,16b,16c,16d 信号取り出し線
17 供給電源
20b,20c 溝
21b,21c 導電性樹脂材料
22 切り込み部
23 金属メッキが施されている部分
24 金属メッキを削り取った部分
27 アース線用の溝
30 メタルスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状に形成されたダンパー部と、該ダンパー部の側面にN個(Nは2以上)の溝が設けられ、該溝には導電性樹脂材料が充填されており、また前記ダンパー部の上面には、第1の電極と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと第2の電極が積層され、且つ、前記第1の電極が略等分となるように扇形にN分割されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
円柱状に形成されたダンパー部と、該ダンパー部の側面にN個(Nは2以上)の溝が設けられ、該溝に金属メッキが施されており、また前記ダンパー部の上面には、第1の電極と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと第2の電極が積層され、且つ、前記第1の電極が略等分となるように扇形にN分割されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項3】
円柱状に形成されたダンパー部と、該ダンパー部の側面および上面にはN個(Nは2以上)の相互に絶縁された金属メッキが施されており、また前記ダンパー部の上面には、第1の電極と1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイと第2の電極が積層され、且つ、前記第1の電極が略等分となるように扇形にN分割されていることを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
前記ダンパー部の側面に、前記第2の電極の信号線引き出し用の溝が更に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記超音波探触子の第2の電極が、前記第1の電極と同様にN個に分割されており、且つ、前記超音波探触子の外周に、上面に環状の鍔(ツバ)部を備え導電性材料で形成された円筒状の保護用スリーブが設けられ、該保護用スリーブの上面鍔(ツバ)部が、N分割された前記第2の電極の全てに接触することにより、前記保護用スリーブを介して前記第2の電極の信号を引き出すことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記ダンパー部の底面形状がテーパー加工されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波探触子。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波探触子の製造方法であって、前記ダンパー部としてエポキシ樹脂を円柱形状に加工する工程と、前記ダンパー部の円柱側面にN本の溝を略等間隔に略平行にカットする工程と、1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイの上下面に前記第1の電極と第2の電極を形成し前記ダンパー部の円柱外径に合わせて成形する工程と、前記第1の電極を略等分となるように扇形にN分割する工程と、前記ダンパー部の上面と前記第1の電極が重なるように導電性接着剤で接合する工程と、を有することを特徴とする超音波探触子の製造方法。
【請求項8】
請求項2に記載の超音波探触子の製造方法であって、前記ダンパー部としてエポキシ樹脂を円柱形状に加工する工程と、前記ダンパー部の円柱側面にN本の溝を略等間隔に略平行にカットする工程と、前記ダンパー部の全周囲に金属メッキ処理を施す工程と、前記金属メッキ処理が施されたダンパー部の側面を研磨する工程と、1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイの上下面に前記第1の電極と第2の電極を形成する工程と、前記ダンパー部の上面と前記第1の電極が重なるように導電性接着剤で接合する工程と、前記電極が形成された1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイを前記ダンパー部の円柱外径に合わせて成形する工程と、前記電極が形成された1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイを上面から前記ダンパー部の上面にかけて略等分となるように扇形にN分割する工程と、を有することを特徴とする超音波探触子の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載の超音波探触子の製造方法であって、前記ダンパー部としてエポキシ樹脂を円柱形状に加工する工程と、前記ダンパー部の側面および上面にはN個の相互に絶縁された金属メッキを施す工程と、1−3コンポジット構造の圧電セラミックスアレイの上下面に前記第1の電極と第2の電極を形成し前記ダンパー部の円柱外径に合わせて成形する工程と、前記第1の電極を略等分となるように扇形にN分割する工程と、前記ダンパー部の上面と前記第1の電極が重なるように導電性接着剤で接合する工程と、を有することを特徴とする超音波探触子の製造方法。

【図7−1】
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【図7−2】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−212453(P2008−212453A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55379(P2007−55379)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(594141495)株式会社神戸工業試験場 (9)
【Fターム(参考)】