説明

血管形成または内部粥腫切除術後の再狭窄および臓器線維症を原因とする疾患の処置に有用な5β,14β−アンドロスタン誘導体



(I)
(式中の記号は、明細書にて説明した意味を有する)
血管手術後の閉塞性血管病変を予防および/または処置するため、ならびに臓器線維症を原因とする疾患を予防および/または処置するための医薬品の製造のための式(I)の化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、血管形成または内部粥腫切除術後の再狭窄および臓器線維症を原因とする疾患を予防および処置するための医薬品の製造のために有用な有効成分としての17β-(3-フリル)および(4-ピリダジニル)-5β,14β-アンドロスタン誘導体に関する。
【発明の開示】
【0002】
より具体的には、本発明は式(I)の化合物に関する:
【化1】

(I)
[式中、
記号---は、単結合または二重結合を表し;
Yは、3位の---が二重結合である場合に、酸素またはグアニジノイミノであり;
Yは、3位の---が単結合であって、αまたはβ構造を有し得る場合に、水素、OR4またはSR4であり;
Rは、非置換または置換3-フリルまたは4-ピリダジニル基であり;
R1は、水素;メチル;OHもしくはNR5R6により置換されたエチルまたはn-プロピルであり;
R2は、水素であるか、またはR3と一緒にオキシラン環の結合であり;
R3は、水素であるか、またはR2と一緒にオキシラン環の結合であり;
R4は、水素;メチル;C2-C6アルキルまたはC3-C6アルケニルまたはC2-C6アシルであり、これらのアルキル、アルケニルおよびアシル基は、四級アンモニウム基あるいは1以上のOR7、NR8R9、ホルミル、アミジノ、グアニジノイミノによるか、またはNR8R9およびヒドロキシル基により置換されていてもよい;
R5、R6は、独立して水素;メチル;一つのNR10R11によるか、またはNR10R11およびヒドロキシル基により置換されていてもよいC2-C6アルキルであるか、または
R5およびR6は、窒素原子と一緒になり、非置換または置換の飽和または不飽和の五員または六員の複素環式単環を形成しており、酸素または硫黄または窒素から選択される別のヘテロ原子を含有してもよい;
R7は、水素、メチルまたはC2-C4アルキルであり、このアルキルは、1以上のNR10R11によるか、またはNR10R11およびヒドロキシル基により置換されていてもよい;
R8、R9は、独立して水素;メチル;C2-C6アルキルまたはC3-C6アルケニルであり、これらのアルキルおよびアルケニル基は、1以上のNR10R11によるか、またはNR10R11およびヒドロキシル基により置換されていてもよく、または
R8およびR9は、窒素原子と一緒になり、非置換または置換の飽和または不飽和の五員または六員の複素環式単環を形成し、酸素または硫黄または窒素から選択される別のヘテロ原子を含有してもよい、または
R8は、水素であり、R9はアミジノであるか;または
NR8R9は、プロパルギルアミノを表し、
R10、R11は、独立して水素、C1-C6アルキルであるか、または
R10およびR11は、窒素原子と一緒になり、飽和または不飽和の五員または六員の複素環式単環を形成する]。
【0003】
また、本発明に含まれるものは、(I)の医薬上許容される塩であって、これは該塩の生物学的活性を保持しており、かかる既知の医薬上許容可能な酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸または安息香酸から得られる。
【0004】
アルキルおよびアルケニル基は、分枝または直鎖の基であり得る。
【0005】
C1-C6アルキル基は、好ましくはC1-C4アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルである。
【0006】
C2-C6アルキル基は、好ましくはC2-C4アルキル基、例えば、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルである。
【0007】
C3-C6アルケニル基は、好ましくはC3-C4アルケニル基、例えば、2-プロペニル、2-ブテニルである。
【0008】
C2-C6アシルは、好ましくはC2-C4アシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリルである。
【0009】
四級アンモニウム基は、好ましくは、トリメチルアンモニウムまたはN-メチルピロリジニウムまたはN-メチルピペリジニウム基である。
【0010】
OR7基は、好ましくは、水素、2-アミノエトキシ、3-アミノプロポキシ、2-ジメチルアミノエトキシ、2-ジエチルアミノエトキシ、3-ジメチルアミノプロポキシ、3-アミノ-2-ヒドロキシプロポキシ、2,3-ジアミノプロポキシ、2-(1-ピロリジニル)エトキシ、3-(1-ピロリジニル)プロポキシである。
【0011】
NR5R6基は、好ましくは、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ピロリジニル、モルホリノ、ピペラジニル、1-イミダゾリル、2-アミノエチルアミノ、3-アミノプロピルアミノである。
【0012】
NR8R9基は、好ましくは、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソ-プロピルアミノ、アリルアミノ、プロパルギルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ピロリジニル、モルホリノ、ピペラジニル、1-イミダゾリル、1-グアニジノ、2-アミノエチルアミノ、3-アミノプロピルアミノ、2-(1-ピロリジニル)エチルアミノ、3-(1-ピロリジニル)プロピルアミノ、3-アミノ-2-ヒドロキシプロピルアミノ、3-(1-ピロリジニル)2-ヒドロキシプロピルアミノ、2,3-ジアミノプロピルアミノ、(2-(1-ピロリジニル)エチル)メチルアミノである。
【0013】
本発明の具体的な化合物の好ましい例は、次のものである:
17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3β,14β,17α-トリオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-アミノエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-メチルアミノエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-イミダゾリル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-イミダゾリン-2-イル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-アミジノ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-グアニジノエトキシ)-17β-(3-フリル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-グアニジノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノ-2-ヒドロキシプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2,3-ジアミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-(3-アミノプロポキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β,17α-ビス(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β,17α-ビス(3-アミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
14β,17α -ジヒドロキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3β,14β,17α-トリオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(4-ピリダジニル)-17α-(3-アミノプロポキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-17α-(3-アミノ-プロポキシ)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
14β,17α-ジヒドロキシ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3β,17α-ジオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン;
17α-ヒドロキシ-17β-(3-フリル)-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(3-フリル)-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン-17α-オール;
14β,15β-エポキシ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3β,17α-ジオール;
ならびに
上記に規定した3β誘導体の3α誘導体および対応する3αおよび3βチオ誘導体(式中Y=Sである)。
【0014】
本発明の背景
再狭窄は、動脈疾患または臓器移植のために行われる、人工的バルーン血管形成術(PTCA)による手術後または内部粥腫切除術後によく起こる血管の閉塞性病変である。
【0015】
このプロセスは、有害事象が続いた結果と考えられる:a)内皮細胞損傷、b)動脈の伸縮後の弾性収縮、c)血管平滑筋細胞(SMC)の増殖および移動を理由とする新生内膜過形成、d)動脈の再構築および収縮(Austin GE et al. J. Am. Coll. Cardiol. 6: 369-75、1985)。
【0016】
特に、新生内膜過形成は、損傷した動脈の再閉塞をもたらし、またSMCの増殖に加えて血小板および白血球の活性化の結果である。再狭窄の薬理的抑制は、薬物が全身送達により投与された場合に失敗することが多い(Karthikeyan G and Bhargava B Curr. Opin. Cardiol. 19: 500-9. 2004)。
【0017】
さらに、血管形成または内部粥腫切除術後の再狭窄は、損傷した内膜細胞を原因とする;血管形成または内部粥腫切除術は、血管壁において細胞移動、増殖およびマトリックス蓄積などの多くの応答を開始させる。これらの全ては内膜新生および再狭窄に関与する(Malik N et al; Circulation 1998 Oct 20; 98 (16): 1657-65)。アポトーシスの誘導は、肺血管疾患のような血管疾患を回復させるためにも有利である(Cowan K. N. et al. Circ. Res. 1999 May 28; 84 (10):1223-33)。
【0018】
再狭窄の予防における有意な改善は、手術部位でのポリマーステントの移植により実現される(Sigwart U et al. N. Engl. J. Med. 316: 701-716、1987)。さらに、ステントの移植は、除放により局所的に薬物を送達する機会を提供する(Laroia ST and Laroia AT Cardiol. Rev. 12: 37-43、2004)。
【0019】
本発明は、臓器線維症、例えば腎臓線維症、心臓線維症、膵臓線維症、肺線維症、血管線維症、皮膚線維症、骨髄線維症、肝臓線維症などの阻害剤としての、17β-(3-フリル)および(4-ピリダジニル)-5β,14β-アンドロスタン誘導体にも関する。
【0020】
急性または慢性の臓器病変は、有害物質、例えばウイルス、化学物質および栄養不良を含めた様々なファクターにより進行される。
【0021】
エタノールは、非常に強力な肝臓毒であり、長期的暴露により肝硬変をひきおこす可能性がある。実際に、20%の慢性アルコール中毒者は、最終的に硬変を経験する。肝硬変の進行は、例えば、壊死または細胞死をもたらし、次いで順に硬変へと導く線維症をもたらす脂肪浸潤により開始する一連のステップをふくむ。
【0022】
硬変は、慢性の肝臓疾患、例えば、ウイルス性またはアルコール性肝炎の最終段階だけでなく、高頻度にて肝細胞癌へと進行する。肝臓線維症は、ウイルスおよびアルコールなどの外部ファクターまたは自己免疫異常に関与する内部ファクターが引き金となる肝細胞壊死、および肝臓機能を維持するための肝臓細胞再生のバランスが損なわれる場合に、細胞外マトリクス、例えば肝臓組織修復中のコラーゲンが過剰に沈着した結果であると考えられている。細胞レベルでは、肝細胞不全および壊死により、クッパー細胞、内皮細胞等が活性化され、そうしてTNF-α、TGF-β、およびPDGFが活性化したクッパー細胞および内皮細胞から放出され得る。これらのファクターは、その後に肝臓線維症の主要ファクターとして肝臓星状細胞を活性化させて、細胞増殖およびコラーゲン合成を開始させ得ると考えられている。
【0023】
さらに、臓器、例えば、肺、腎臓、心臓、膵臓、および皮膚においては、肝臓と同様に、個々の臓器および個々の臓器(腎臓メサンギウム細胞、膵臓星状細胞等)に特異的な間質細胞に存在する線維芽細胞が、様々なサイトカインによる刺激を原因とする異常な増殖および細胞外マトリクス合成の状態となり、臓器線維症の発症に至ると考えられている。
【0024】
17-(3-フリル)および(4-ピリダジニル)-5β,14β-アンドロスタン誘導体は、既知の化合物である。
【0025】
EP0583578B1には、本発明の請求項に記載のβ-アンドロスタン誘導体、その製造方法、および心不全および高血圧などの心臓脈管不全の処置のためのその使用が記載されている。
【0026】
EP0590271B1には、17-アリールおよび17-ヘテロシクリル-5α,14β-アンドロスタン、アンドロステンおよびアンドロスタジエン誘導体、その製造方法、ならびに心臓脈管不全、例えば心不全および高血圧の処置のためのその使用が記載されている。
【0027】
EP0590272B1には、17-アリールおよび17-ヘテロシクリル-5β,14β-アンドロスタン誘導体および心臓脈管疾患、例えば心不全および高血圧の処置のためのその使用が記載されている。
【0028】
上記文献において、血管形成または内部粥腫切除術後の再狭窄および臓器線維症の予防および/または処置のために5β,14β-アンドロスタン誘導体の使用を開示したものはない。
【0029】
現在まで、臓器線維症の阻害剤として有効な医薬用薬剤は市販されていない。
【0030】
従って、臓器線維症に対する有意に直接的な効力を有する医薬的用薬剤の開発が必要とされている。
【0031】
さらに、本発明の目的は、再狭窄の予防または処置のための式(I)の化合物の使用である。
【化2】

(I)
[式中、置換基の意味は前記したとおりである]。
【0032】
本発明のさらなる目的は、臓器線維症を原因とする疾患の予防または処置のための式(I)の化合物の使用である。
【0033】
式(I)の具体的な化合物の好ましい例は、下記群から選択されるものである:
17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3β,14β,17αトリオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-アミノエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-メチルアミノエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-イミダゾリル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-イミダゾリン-2-イル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-アミジノ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-グアニジノエトキシ)-17β-(3-フリル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-グアニジノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノ-2-ヒドロキシプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2,3-ジアミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-(3-アミノプロポキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β,17α-ビス(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β,17α-ビス(3-アミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
14β,17α-ジヒドロキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3β,14β,17αトリオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(4-ピリダジニル)-17α-(3-アミノプロポキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-17α-(3-アミノ-プロポキシ)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
14β,17α -ジヒドロキシ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3β,17α-ジオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン;
17α-ヒドロキシ-17β-(3-フリル)-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(3-フリル)-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン-17α-オール;
14β,15β-エポキシ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3β,17α-ジオール;または
上記に規定した3β誘導体の3α誘導体、およびまた対応する3αおよび3βチオ誘導体(式中Y=Sである)。
【0034】
本発明の具体的な化合物の最も好ましい例は、「ロスタフロキシン(rostafuroxin)」として下記に記載した 17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3β,14β,17α−トリオールである。
【0035】
さらに、本発明の目的は、血管手術後、例えば、血管形成、経皮的冠動脈形成(PTCA)、バイパス移植術、内部粥腫切除術またはステント移植後の、閉塞性血管病変の処置のための医薬製造のための式(I)の化合物の使用である。好ましくは、本発明の処置される病理学的症状は、血管形成後または内部粥腫切除術後の再狭窄である。
【0036】
本発明のさらなる目的は、臓器線維症を原因とする疾患、例えば、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、または腎硬化を原因とする腎臓線維症;慢性の冠状動脈不全または加齢を原因とする心臓線維症;膵臓疾患を原因とする膵臓繊維症;肺疾患を原因とする肺線維症;血管変性疾患、例えば冠状動脈バイパス手術および経皮的冠動脈形成(PTCA)またはシャント挿入後の血管再開通後の動脈硬化または再狭窄を原因とする血管線維症;皮膚線維症;骨髄線維症;ウイルスおよびアルコールによる慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、硬変および肝臓癌を原因とする肝臓線維症;ならびに強皮症、ケロイドおよび全身性硬化症等の疾患を原因とする他の臓器線維症を、予防または処置するための医薬製造のための式(I)の化合物の使用である。
【0037】
本発明のさらなる目的は、式(I)の化合物の治療上有効量を投与することを含む、血管手術後の閉塞性血管病変に罹患している哺乳動物を処置する方法である。本明細書において使用される用語「治療上有効量」とは、標的とする疾患または症状を、処置、緩和するために必要な治療剤の量、または検出可能な治療効果を提示するために必要な治療剤の量をいう。
【0038】
ヒト被験者のための正確な有効量は、疾患状態の重症度、例えば、被験者の一般的な健康、年齢、体重、および被験者の性別、食事、時間および投与頻度、薬物併用(複数を含む)、反応の重症度、および治療に対する耐性/応答に依存する。この量は、日常的な実験により決定され、および臨床医の判断の範疇にある。一般的に、1日あたりの有効用量は、式(1)の化合物、好ましくはロスタフロキシンの0.05mgから20mg、好ましくは0.5mgから15mg、最も好ましくは5mgから10mgである。
【0039】
投薬処置は、医師の判断により単回投与計画または多回投与計画であってもよい。
【0040】
組成物は、被験者に個々に投与されるか、または他の化学物質、薬剤またはホルモンと併用して投与されてもよい。
【0041】
医薬物は、治療剤の投与のために医薬上許容し得る担体も含有できる。かかる担体には、抗体および他のポリペプチド、遺伝子および他の治療剤、例えばリポソームが挙げられるが、但し該担体は、それ自体では、該組成物を受容する被検体に有害な抗体の産生を誘導せず、また過度の毒性がない場合に投与され得る。
【0042】
好適な担体は、広く、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子であり得る。
【0043】
医薬上許容し得る担体の詳細な検討には、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N. J.1991)を利用できる。
【0044】
治療用組成物中の医薬上許容し得る担体は、液体、例えば、水、生理食塩水、グリセリンおよびエタノールをさらに含有できる。さらに、助剤物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質などが、かかる組成中に存在していてもよい。かかる担体により、患者による摂取のために、医薬組成物を、錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤することが可能である。
【0045】
製剤された時点で、本発明の組成物を被験者に直接投与できる。処置される被験者は動物であってもよい;特に、ヒト被験者を処置できる。
【0046】
本発明の医薬品は、これに限定するものではないが、例えば、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内の、鞘内、脳室内、経真皮または経皮的適用、皮下、腹腔内、経鼻的、経腸、局所的、舌下、直腸手段、または外科的手術後の患部組織に対して局部的などを含めたあらゆる多様な投与経路により投与され得る。また、本発明の化合物を、制御放出マトリックス中に組み込まれたステント上に適用(被覆)することもできる。
【0047】
図は、(1)MHSおよびMNSラット(ヘマトキシリン-オルセン染色、10x倍率)における内部粥腫切除術後の再狭窄の予防;および(2)ラットにおける肝臓線維症の予防(トリクローム染色、200x倍率)におけるロスタフロキシンの効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】図1(A)処置されていないラットの損傷していないMHS頸動脈の横断面。
【図1B】図1(B)Methocel 0.5%で経口的に処置されたラットの手術30日後に採取された損傷したMHS頸動脈の横断面。
【図1C】図1(C)ロスタフロキシン(100μg/kg)で経口的に処置されたラットの手術30日後に採取された損傷したMHS頸動脈の横断面。
【図2A】図2(A)処置されていないラットの損傷していないMNS頸動脈の横断面。
【図2B】図2(B)Methocel 0.5%で経口的に処置されたラットの手術30日後に採取された損傷したMNS頸動脈の横断面。
【図2C】図2(C)ロスタフロキシン(100μg/kg)で経口的に処置された手術30日後に採取された損傷したMNS頸動脈の横断面。
【図3】図3は、コントロールラット(Ctr.群)の肝臓の正常な染色パターンを示す。
【図4】図4は、CCl4肝臓損傷が、複雑な創傷治癒プロセスの発症を刺激して、顕著な肝細胞障害を誘導し、肝臓線維症をもたらすことを示す(Ctr. LF群)。
【図5】図5は、ロスタフロキシン処置動物(RLF群)において、組織損傷の範囲が狭いことは、肝臓線維症の程度が軽度であることと関連があることを示す。
【図6】図6は、コントロールラット(Ctr. 群)における肝臓の正常な染色パターンを示す:スコア0。
【図7】図7は、中程度の線維性病変を有する2匹のCCl4処置ラット(Crt. LF群)から得た肝臓の組織学的外観を示す:スコア2。
【図8】図8は、ロスタフロキシン(1mg/kg os)(RLF群)にて処置された軽度の線維性病変を有する2匹のCCl4ラットからの肝臓の組織学的外観を示す:スコア1。
【0049】
下記の非限定的な例は、本発明をさらに説明するものである。
【実施例】
【0050】
実施例1
内部粥腫切除術後の再狭窄の予防についての本発明の化合物の活性を試験するために、遺伝的に動脈性高血圧を有する高血圧自然発生MHSラット(Bianchi G.、Barber B. R.、Torielli L.、Ferrari P. The Milan hypertensive strain of rats. Genetic Model of Hypertension. 1994; 22: 457-460)を使用した。MHSラットはPrassis Research Institute(Sigma-tau、Italy)から入手できる。
【0051】
25日齢のMHSラットの2群を、6週間ビヒクル(メトセル 05.%)またはロスタフロキシン (100μg/kg)により強制経口処置した。この期間の後、ラットは、下記に示したプロトコールに従って血管の外科的損傷を受ける。外科的損傷後に、ラットを、さらに30日間ビヒクルまたはロスタフロキシンのいずれかを用いる処置下に維持し、次いで頸動脈の採取のために屠殺した。数匹の手術後の死亡数を、この2つのラット系統において観察した。組織学的頸動脈分析のために使用したラットの最終的な数は;MHSビヒクル=7匹、MHS ロスタフロキシン=9匹であった。
【0052】
血管損傷
MHSおよびMNSラットにて使用した頸動脈外科的損傷モデルは、J. Cell. Physiol. 2001; 186:307-313に記載されている。
【0053】
要するに、冠状動脈バイパスグラフトのためにプラスチック製のScanlon鉗子(Scanlon clamp)を、血管に荷重障害を引き起こすように10秒間頸動脈上に設置した。鉗子を適用した同じ箇所で、0.5 mmの縦切開を頸動脈上の全層に行った。該切開は、もう一方の血管側部には貫通していなかった。止血を一針の外膜用8.0-ゲージのポリプロピレン縫合により行った。出血を一旦止めてから、該頸動脈を精査し、血液の拍動を該切開部の遠位にて確認した。
【0054】
組織学的分析
頸動脈を損傷30日後に採取した。ラットを麻酔し、頸動脈を周辺組織から解離した。開胸を経て、拍動している心臓の左心室に、ブラントシリンジを用いてカニューレを挿入した。該シリンジを、上行大動脈中の所定の位置に結紮糸により縛りつけた。該血管を、流出液が透明になるまで最初に生理食塩水を用いて生理学的圧力下にかん流し、次いで該かん流を、4%ホルムアルデヒド緩衝液(pH 7)により行った。右心房内の切開は流出路として役割を果たす。ホルムアルデヒドに切り替える前に、下行胸部大動脈をクランプで締めた。組織サンプルを、かん流20分後に採取した。サンプルを、4%のホルムアルデヒドo.n.でさらに固定して、脱水し、最終的にパラフィンに包埋した。横断面(5μm)を、弾性繊維分析のためにヘマトキシリン-オルセンにより染色した。
【0055】
各損傷頸動脈について、少なくとも60の連続横断面を、20 x 倍率の光学顕微鏡の下で観察した;画像スクリーニングおよび写真を、Leica IM 1000 System (Leica、Wetzlar、Germany)用いて行った。最大の再構築および増殖現象を示す損傷した頸動脈の切片を同定し、さらに分析した。
【0056】
血管の内腔および内側領域を、Leica IM 1000 software (Leica、Heerbrugg、Switzerland)を用いて測定した。前者は、内弾性層により囲まれた領域として規定され、一方後者は外部および内弾性層の間に囲まれた領域として規定した。個々のラットのばらつきを低減するために、処置した頸動脈の各々の内腔および内側領域を、反対側の損傷していない頸動脈について標準化した。反対側の損傷していない頸動脈について、少なくとも10の切片を分析し、平均的な内腔および内側領域を計算した。
【0057】
測定は、2人の独立した観察者により行った。
【0058】
得られた結果を、下記表1および図1(A-C)に報告した。
表1
高血圧自然発生MHSラットの頸動脈内腔領域に関する形態学的計測
【表1】

【0059】
表1/図1(A-C)に報告した結果は、本発明の化合物が、統計学的に有意な様式(-45%)で動脈性高血圧に罹患しているMHSラットにおける動脈再狭窄を低下したことを示す。
【0060】
実施例2
実施例1に報告した結果に対して、動脈性高血圧に罹患していないMNSラットを用いて確認した。使用した方法は実施例1に記載した方法と同じであった。
【0061】
得られた結果を、下記表2および図2(A-C)に報告する。
【0062】
表2
動脈性高血圧に罹患していないMNSラットの頸動脈内腔領域の形態学的計測
【表2】

【0063】
統計学的に有意であった表2に報告した結果は、実施例1において得られた結果を裏付けるものであった。
【0064】
実施例3
臓器線維症に関する予防および処置についての本発明の化合物の活性を試験するために、遺伝的に動脈性高血圧を有する高血圧自然発生MHSラット(Bianchi G.、Barber B. R.、Torielli L.、Ferrari P. The Milan hypertensive strain of rats. Genetic Model of Hypertension. 1994; 22: 457-460)を使用した。MHSラットはPrassis Research Institute(Sigma-tau、Italy)から入手できる。
【0065】
若干の変更を加えてJ.Hepatol. 1999; 30: 621-631に記載したように、肝臓線維症をCCl4経口投与により誘導した:オリーブ油に溶解したCCl4(0.375 ml/kg)を、離乳後7週間目から開始して、3週間の間、3回/週間の強制経口投与によりラットに投与した。コントロールのラットは、ビヒクル(オリーブ油)のみを与えた。ロスタフロキシン処置を、CCl4投与(前処理)による肝臓線維症の誘導の7週間前に開始し、3週間、CCl4処置期間中継続させた。ロスタフロキシンを、メトセル(0.5%)に懸濁して1mg/kg/日で経口投与した。25日齢(離乳)の全24匹のMHSラットを、8匹のラット毎に3群に各々分けた:肝臓線維症誘導についてのネガティブコントロール(Ctr.)と考えた第一群には、全ての期間中(10週間)、ロスタフロキシンビヒクル(メトセル 0.5%)により経口処置を行い、3週間の間、離乳後の第7週目にCCl4のビヒクルとしてオリーブ油を与えた;肝臓線維症についてのポジティブコントロール(Ctr. LF)と考えた第2群には、全ての期間中(10 週間)、ロスタフロキシンビヒクル(メトセル 0.5 %)により経口処置を行い、3週間の間、離乳後の第7週目にCCl4を与えた;第3群、即ち肝臓線維症を有しており、ロスタフロキシンで処置したもの(RLF)には、全ての期間中(10週間)、1 mg/kgにてロスタフロキシンを与え、3週間の間、離乳後の第7週目にCCl4を与えた。処置(第10週目)の終了時に、ラットの体重を測定し、血液採取および臓器摘出のためにペントバルビタールにより麻酔した。該血液を凝固させ、血清を遠心分離後に分取し、Pentra 400 (ABX) Automatic Hematology Analyzerによる血清アルブミンおよびトランスアミナーゼ(ALTおよびAST)の測定のために保存した。脾臓および肝臓を摘出し、重量を測定した。肝臓中葉のサンプルを、液体窒素中で直ぐに凍結させ、コラーゲン沈着の指標として見なされる4-ヒドロキシプロリン肝臓含量に関するさらなる生物化学的測定のために-80°で保持した(Biochem. J. 1961; 80(1): 148-154)。その残りの肝臓を、組織分析のために10%のホルマリン緩衝液中に保存した。
【0066】
ヒドロキシプロリン測定
ヒドロキシプロリン肝臓含量を、若干の変更を加えてAnal. Biochem.1981; 112: 70−75に記載のとおり決定した。
【0067】
肝臓組織(0.4g)を、6N HCl(3 ml)中に均質化し、110℃で24時間加水分解した。14000rpmで10分間の遠心分離の後、上清(100 μl)を、10N NaOH(50 μl)および1N NaHCO3(150 μl)で中和した。14000で5分間の遠心分離後に、上清(100μl)をクロラミン T(pH 6.0)を加えた酢酸クエン酸緩衝液(200 μl)と混合し、室温で10分間インキュベートした後に、Ehrlich試薬(1.3 ml)を添加し、該混合物を、60℃で25分間インキュベートした。冷却後、吸光度を558 nmで測定した(Jasco V-530)。
【0068】
組織病理および形態計測
ケース毎に、肝臓の中葉および左葉を、標準的なトリミングおよび包埋方法に供した;スライドをヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)により染色した(Laboratory Methods in Histotechnology; Armed Forces Institute of Pathology Published by the American Registy of Pathology Washington、D.C. 1992)。また、適切な結合組織の検出(Masson’s Trichrome stain - Laboratory Methods in Histotechnology; Armed Forces Institute of Pathology Published by the American Registry of Pathology Washington、D.C. 1992)ならびに特異的なコラーゲン検出および肝臓線維症の評価(Syrius red staining method as described in The Journal of Histochemistry and Citochemistry 1985; vol 33、No. 8、pp. 737-743)が出来るように特別な技術を使用した。
【0069】
肝臓線維症を、下記のとおりシリウスレッド染色したスライドにて定性的に評点した:
0 = 肝臓線維症は存在せず、正常な染色パターンのみ;
1 = 軽度−大部分に不完全な中隔拡張を有する小葉中心/門脈周辺の線維化に相当する−軽度の限局型間質性線維症;
2 = 中程度−限局型結節性外観を有するびまん性架橋線維化に相当する−多巣状間質性線維症;
3 = 重度−びまん性の結節性外観を有する塊状線維化に相当する−重度のびまん性間質性線維症。
【0070】
病理組織学的特徴を、パーソナルコンピューターと接続した3CCD color video-camera JVC “KY F55BE”を備えた“ECLIPSE E800M”光学顕微鏡(Nikon Instruments S.p.A.)で観察した。
【0071】
関連のある画面を、画像処理および記録に好適な分析用ソフトウェア(ARKON、A&P Software xenos-Ark)を使用して記録させた。
【0072】
組織学的定量分析の後に、線維症の程度の定量分析を、前記した方法(J. Gastroenterol. 2004、Oct 1; 10(19)2894-2897)により組織学的画像のデジタル画像変換により行った。
【0073】
要するに、シリウスレッドによる染色後、肝臓のコラーゲン含量を、組織形態学的方法により測定した。一連の画像を、切片の全領域で撮影した(Leica DM-IRE2)。各画像を、デジタル画像分析のために、コンピューターシステム ImageJ version 1.39により分析した。検出閾値を、染色したコラーゲンの赤色について設定した。ポジティブ染色を示す線維化領域を、自動的に選択し、参照して、評価した。コラーゲンの相対含量を、画像のピクセル総数に対するポジティブ染色ピクセルの%として計算した。
【0074】
結果
得られた結果を下記表3-6に報告した。
【0075】
表3は、3群の体重の指標として表した身体および臓器重量を示す。
【0076】
表3
【表3】

【0077】
表3に報告した結果は、本発明の化合物が、CCl4誘導性肝臓繊維症に罹患しているラットにおいて脾臓重量を統計学的に有意に20%低下したことを示す。
【0078】
肝臓重量およびトランスアミナーゼは、本発明の化合物の処置後に変化しなかった。
【0079】
表4は、3群の血清アルブミンを示す。
【0080】
表4
【表4】

【0081】
表4に報告した結果は、本発明の化合物が、CCl4誘導性肝臓繊維症に罹患しているラットにおけるアルブミンの血漿レベルが統計学的に有意に16.8%増加することを示す。
【0082】
表5は、3群の肝臓のヒドロキシプロリン含量を示す。
【0083】
表5
【表5】

【0084】
表5に報告した結果は、本発明の化合物が、CCl4誘導性肝臓繊維症に罹患しているラットにおいて、コラーゲン沈着、即ち線維症の指標であるヒドロキシプロリンの肝臓含量を有意に低下(25.8 %)したことを示す。
【0085】
組織病理および形態計測
CCl4処置動物(Ctr.LF群)における主な病変は、著しい肝細胞障害(変性およびアポトーシスの急増、細胞質内封入体、脂肪変化)、慢性的炎症反応、細胞外マトリクス沈着および再生変化(実質および非実質細胞の増殖および過形成)により示される。
【0086】
組織損傷のわずかな拡張が、ロスタフロキシンにより処置したラットから認められた。
【0087】
得られた結果の画像を図3-5に報告した。
【0088】
表6は、シリウスレッド染色スライド上で採用した評点システムを基準として、肝臓線維症の定性評価を示す。
表6
【表6】

【0089】
表6および図6-8に報告した結果は、CCl4単独(Ctr. LF群)で処置された全ての動物が、中程度(ケースの85.7%)から重度(1ケース、14.3%に対応する)の範囲にわたる肝臓線維症の高スコア値を示したことを示す。
【0090】
反対に、軽度の肝臓線維症は、CCl4+ロスタフロキシン(即ち、本発明の化合物)処置動物(RLF群)でのみ検出され、該群の多数のケースで観察された(75%)。同じ群において、中程度の肝臓線維症は、2匹の動物でのみ観察された(25%、85.7%のCCl4群と比較して)。最後に、CCl4+ロスタフロキシンで処置されたラットは重度の肝臓線維症を示さなかった。
【0091】
表7は、3群の分析により観察されたとおり肝臓線維症の程度の定量的分析を示す。
【0092】
表7
【表7】

【0093】
表7に報告した結果は、本発明の化合物が、CCl4-誘導性肝臓繊維症に罹患しているラットにおける肝臓線維症領域を、統計学的に有意に47.5%低下したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再狭窄の予防または処置のための、式(I)の化合物の使用;
【化1】

(I)
[式中、
記号---は、単結合または二重結合を表し;
Y は、3位の---が二重結合である場合に、酸素またはグアニジノイミノであり;
Y は、3位の---が単結合であって、αまたはβ構造を有する場合に、水素、OR4またはSR4であり;
Rは、非置換または置換3-フリルまたは4-ピリダジニル基であり;
R1は、水素;メチル;OHもしくはNR5R6により置換されたエチルまたはn-プロピルであり;
R2は、水素であるか、またはR3と一緒にオキシラン環の単結合であり;
R3は、水素であるか、またはR2と一緒にオキシラン環の単結合であり;
R4は、水素;メチル;C2-C6アルキルまたはC3-C6アルケニルまたはC2-C6アシルであり、これらのアルキル、アルケニルおよびアシル基は、四級アンモニウム基あるいは1以上のOR7、NR8R9、ホルミル、アミジノ、グアニジノイミノによるか、またはNR8R9およびヒドロキシル基により置換されていてもよい;
R5、R6は、独立して水素;メチル;一つのNR10R11によるか、またはNR10R11およびヒドロキシル基により置換されていてもよいC2-C6アルキルであるか、または
R5およびR6が窒素原子と一緒になり、非置換または置換の飽和または不飽和の五員または六員の複素環式単環を形成しており、酸素または硫黄または窒素から選択される別のヘテロ原子を含有してもよい;
R7は、水素、メチルまたはC2-C4アルキルであり、このアルキルは、1以上のNR10R11によるか、またはNR10R11およびヒドロキシル基により置換されていてもよい;
R8、R9は、独立して水素;メチル;C2-C6アルキルまたはC3-C6アルケニルであり、これらのアルキルおよびアルケニル基は、1以上のNR10R11によるか、またはNR10R11およびヒドロキシル基により置換されていてもよく、または
R8およびR9は、窒素原子と一緒になって、非置換または置換の飽和または不飽和の五員または六員の複素環式単環を形成しており、酸素または硫黄または窒素から選択される別のヘテロ原子を含有してもよい、または
R8は、水素であり、R9はアミジノであり;または
NR8R9は、プロパルギルアミノを表し、
R10、R11は、独立して水素、C1-C6アルキルであるか、または
R10およびR11は、窒素原子と一緒になり、飽和または不飽和ペンタ-またはヘキサ複素環式単環を形成する]。
【請求項2】
臓器線維症を原因とする疾患の予防または処置のための式(I)の化合物の使用。
【請求項3】
下記群からなる群から選択される、請求項1または2の式(I)の化合物の使用:
17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3β,14β,17αトリオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-アミノエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-メチルアミノエトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-イミダゾリル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-イミダゾリン-2-イル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-アミジノ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-グアニジノエトキシ)-17β-(3-フリル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-グアニジノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノ-2-ヒドロキシプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2,3-ジアミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
17β-(3-フリル)-17α-(3-アミノプロポキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β,17α-ビス(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β,17α-ビス(3-アミノプロポキシ)-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
14β,17α -ジヒドロキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3β,14β,17αトリオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
17β-(4-ピリダジニル)-17α-(3-アミノプロポキシ)-5β-アンドロスタン-3β,14β-ジオール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-17α-メトキシ-5β-アンドロスタン-14β-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(4-ピリダジニル)-17α-(3-アミノ-プロポキシ)-5β-アンドロスタン-14β-オール;
14β,17α -ジヒドロキシ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-14β,17α-ジオール;
14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3β,17α-ジオール;
3β-(2-ヒドロキシエトキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(3-アミノプロポキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(3-(1-ピロリジニル)プロポキシ)-14β,15β-エポキシ-17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-17α-オール;
3β-(2-(1-ピロリジニル)エトキシ)-17β-(3-フリル)-17α-メトキシ-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン;
17α-ヒドロキシ-17β-(3-フリル)-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン-3-オン;
3-グアニジノイミノ-17β-(3-フリル)-14β,15β-エポキシ-5β-アンドロスタン-17α-オール;
14β,15β-エポキシ-17β-(4-ピリダジニル)-5β-アンドロスタン-3β,17α-ジオール;
および
上記規定した3β誘導体の3α誘導体、および対応する3αおよび3βチオ誘導体(式中Y=Sである)。
【請求項4】
血管手術後の閉塞性血管病変または臓器線維症を原因とする疾患の予防および/または処置のための、医薬製造のための、式(I)の化合物の使用。
【請求項5】
好ましい化合物が、17β-(3-フリル)-5β-アンドロスタン-3β,14β,17α-トリオールである、請求項4記載の使用。
【請求項6】
血管手術が、血管形成、経皮経管冠動脈形成、バイパス移植術、内膜剥離術(endartherectomy)またはステント移植からなる群から選択される、請求項4記載の使用。
【請求項7】
閉塞性血管病変が、血管形成後または内部粥腫切除術後の再狭窄である、請求項4記載の使用。
【請求項8】
臓器線維症を原因とする疾患が、腎臓線維症;心臓線維症;膵臓線維症;肺線維症;血管線維症;皮膚線維症;骨髄線維症;肝臓線維症;または強皮症、ケロイドおよび全身性硬化症からなる群から選択される疾患を原因とする臓器線維症からなる群から選択される、請求項4記載の使用。
【請求項9】
肝臓線維症が、ウイルス性疾患、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、肝硬変または肝臓癌を原因とする、請求項8記載の使用。
【請求項10】
化合物が、0.05 mgから20mg/日の用量で投与される、請求項4記載の使用。
【請求項11】
化合物が、0.5 mg から15mgの用量で投与される、請求項4記載の使用。
【請求項12】
化合物が、5 mgから10mgの用量で投与される、請求項4記載の使用。
【請求項13】
化合物が単回投与計画で投与される、請求項4記載の使用。
【請求項14】
化合物が多回投与計画で投与される、請求項4記載の使用。
【請求項15】
組成物が、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、鞘内、脳室内、経真皮、経皮的、皮下、腹腔内、経鼻、経腸、局所、舌下または直腸投与のためのものである、請求項4記載の使用。
【請求項16】
組成物が、外科手術後の患部組織に局所投与される、請求項4記載の使用。
【請求項17】
組成物が、ステント上で被覆されているか、制御放出マトリックスに組み込まれているかまたはリポソームに組み込まれている、請求項4記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−529082(P2010−529082A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510789(P2010−510789)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056928
【国際公開番号】WO2008/148812
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】