説明

血管形成関連の眼疾患の処置のための組成物および方法

本発明は、概して、低用量のロドストミンバリアント、特に、低用量のHSAアミノ酸配列の34番目のシステイン残基がセリンに置き換えられたヒト血清アルブミン(HSA)バリアントとコンジュゲートされたロドストミンバリアントを含む融合タンパク質を用いた、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防の組成物および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は概して、低用量のジスインテグリンバリアントを血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のために利用する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インテグリンは、細胞を基層に留めつけ、外来のシグナルを細胞膜を越えて伝達するヘテロ二量体マトリックス受容体である。インテグリンαvβ3は、ビトロネクチンに関する受容体であるインテグリンの一種である。インテグリンαvβ3は、腸、脈管および平滑筋細胞を含むほとんどの正常細胞において低レベルで発現される。このヘテロ二量体分子を高レベルで発現する細胞タイプは、骨再吸収性の破骨細胞、活性化マクロファージ、ごくわずかな好中球、血管形成内皮細胞および遊走性の平滑筋細胞を含む。インテグリンαvβ3は、生体内および生体外の両方で破骨細胞媒介型の骨吸収、ならびに新たな血管形成に関与する。このヘテロ二量体分子は、骨基質タンパク質、例えばオステオポンチンおよび骨シアロタンパク質に含まれるアミノ酸モチーフArg−Gly−Asp(RGD)を認識する。
【0003】
ジスインテグリンは、血小板および他の細胞、例えば血管内皮細胞および幾つかの腫瘍細胞上で発現されるインテグリンαIIbβ3、α5β1およびαvβ3に特異的に結合する低分子量のRGD含有ペプチドファミリーである。
【0004】
さまざまなジスインテグリンが当分野で公知であり、例えばロドストミン(rhodostomin)および限定するものではないがARLDDLを含むそのバリアントが挙げられる。
【0005】
血管形成関連の眼疾患は、既存の血管からの新たな血管の成長に関係する眼疾患である。これらの疾患は、限定するものではないが、加齢性の黄斑変性、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患(corneal neovascularizing disease)、網膜血管腫性増殖(retinal angiomatous proliferation)、ポリープ状脈絡膜血管症、虚血誘発性血管新生網膜症(ischaemia-induced neovascularizing retinopathy)、強度近視および未熟児網膜症を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の薬が血管形成関連の眼疾患の処置に満足な効果を示さないために、これらの疾患の新しい処置についての要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
概して、本発明は、低用量のロドストミンバリアントを利用した、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための組成物および方法に関する。
【0008】
用語「低用量」は、血管形成関連の眼疾患の処置に慣用される用量よりも低い用量を意味する。
【0009】
好ましくは、「低用量」は、本発明の目的に適したロドストミンバリアントの、1眼あたり約0.0001pgから約300μg;より好ましくは、1眼あたり約0.005pgから約200μg;および、さらにより好ましくは、1眼あたり約0.001pgから約100μgである。その用量は、その必要のある被検体に、週に一回、月に一回、四半期に一回または年に一回の用量として投与することができる。
【0010】
好ましくは、前記ロドストミンバリアントは、ヒト血清アルブミン(HSA)またはHSAのバリアントと融合される。本明細書を通じて用いられるように、用語「ロドストミンバリアント」は、ペグ化もしくはその他の改変がなされていてもよいHSAまたはHSAバリアントと融合されたロドストミンバリアントを包含する。
【0011】
本発明の使用に好適なロドストミンバリアントは、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列または前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を含む。
【0012】
配列番号:1は、「ARGDDP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48ARGDDP53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0013】
配列番号:2は、「ARGDDV」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48ARGDDV53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0014】
配列番号:3は、「ARGDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48ARGDDL53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0015】
配列番号:4は、「PRGDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48PRGDDL53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0016】
配列番号:5は、「ARGDDM」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48ARGDDM53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0017】
配列番号:6は、「PRGDDM」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48PRGDDM53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0018】
配列番号:7は、「PRLDMP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48PRLDMP53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0019】
配列番号:8は、「PRLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48PRLDDL53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0020】
配列番号:9は、「ARLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48ARLDDL53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0021】
配列番号:10は、「PRIDMP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48PRIDMP53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0022】
配列番号:11は、「PRHDMP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48PRHDMP53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0023】
配列番号:12は、「PRGDNP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48PRGDNP53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0024】
配列番号:13は、「PRGDGP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表し、それはRGDモチーフのバリアント48PRGDGP53を有するロドストミンバリアントを表す。
【0025】
配列番号:14は、HSAとコンジュゲートされた「ARLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0026】
配列番号:15は、野生型HSAアミノ酸配列の34番目のシステイン残基をセリンに置き換えたHSAバリアントとコンジュゲートされた「ARLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。配列番号:15により表されるロドストミンバリアントは、HSA(C34S)−ARLDDL融合タンパク質と称することもある。そのタンパク質は、a)HSAアミノ酸配列の34番目のシステイン残基がセリンに置き換えられたHSAバリアント、b)リンカーアミノ酸配列、およびc)ARLDDLロドストミンバリアントの融合産物である。
【0027】
配列番号:16は、野生型HSAアミノ酸配列の34番目のシステイン残基がアラニンに置き換えられたHSAバリアントとコンジュゲートされた「ARLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0028】
したがって、1つの実施形態において、本発明は、約0.0001pg〜約300μgの、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための組成物に関する。
【0029】
もっとも好ましくは、本発明の目的に適したロドストミンバリアントは、配列番号:9または配列番号:15を含む。
【0030】
好ましくは、本発明の組成物は、約0.005pg〜約200μgの、より好ましくは約0.001pg〜約100μgの本発明の目的に適したロドストミンバリアントを含む。
【0031】
1つの実施形態において、本発明の組成物は、局所用組成物(topical composition)として製剤される。他の実施形態において、本発明の組成物は、眼球内(すなわち、眼中への)注射に適している。
【0032】
他の実施形態において、本発明は、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法であって、その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり約0.0001pg〜約300μgの、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む方法に関する。
【0033】
好ましい実施形態において、本発明は、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法であって、その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり約0.0001pg〜約300μgの、配列番号:9および配列番号:15から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む方法に関する。
【0034】
より好ましい実施形態において、本発明は、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法であって、その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり約0.0005pg〜約200μgの、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む方法に関する。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、本発明は、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法であって、その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり約0.001pg〜約100μgの、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む方法に関する。
【0036】
好ましくは、本発明の方法は、前記被検体の1眼あたり約0.005pg〜約300μgの、より好ましくは約0.001pg〜約100μgの本発明の目的に適したロドストミンバリアントを投与することを含む。
【0037】
1つの実施形態において、本発明の方法は、前記被検体に硝子体内注射により、本発明の目的に適したロドストミンバリアントを投与することを含む。
【0038】
1つの実施形態において、血管形成関連の眼疾患は、加齢性の黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患、網膜血管腫性増殖、ポリープ状脈絡膜血管症、老人性の虚血誘発性血管新生網膜症、強度近視と未熟児網膜症からなる群より選択される。
【0039】
他の実施形態において、本発明の方法は、治療上の有効量の他の活性薬剤を投与することをさらに含む。他の活性薬剤は、本発明の目的に適したロドストミンバリアントを投与する前に、投与する間に、投与した後に投与されてよい。
【0040】
好ましくは、他の活性薬剤は、VEGF拮抗剤、抗血管形成薬剤、消炎薬剤およびステロイドからなる群より選択される。
【0041】
本発明の組成物は、医薬上許容される担体をさらに含んでいてよい。
【0042】
これの態様および他の態様は、以下の図面と併せ、以下のさまざまな実施形態に関する記載から明らかとなるであろう。それらの態様における変法および改変は、本開示の新規な技術的思想の範囲を逸脱しない限り有効であろう。
【0043】
前述の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は単なる例および例示であり、特許請求される本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1A】酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおける血管形成(B)、ARLDDLロドストミンバリアントで処理された酸素誘発性網膜症マウスにおける減少した血管形成(C)、およびHSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処理された酸素誘発性網膜症マウスにおける減少した血管形成(D)を示す4枚1組の写真。写真(A)は酸素正常状態(対照群)である。矢印は血管の特徴(blood vessel profile:BVP)を示す。
【図1B】ARLDDLロドストミンバリアントまたはHSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処置した、酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおける網膜切片(retinal section)あたりの減少した数の血管を示すグラフ。
【図1C】ARLDDLロドストミンバリアントまたはHSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処置した、酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおける網膜切片あたりの減少した数の上皮細胞を示すグラフ。
【図2A】以下の量10pg、0.1pgおよび0.001pgのHSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処置した、酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおける網膜切片あたりの減少した数の血管を示すグラフ。
【図2B】以下の量10pg、0.1pgおよび0.001pgのARLDDLロドストミンバリアントまたはHSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処置した、酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおける網膜切片あたりの減少した数の上皮細胞を示すグラフ。
【図3A】アバスタチン(Avastin(登録商標))で処置した酸素誘発性網膜症のマウスと比較した、HSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処置した酸素誘発性網膜症のマウスモデルでの減少した数の血管/網膜切片を示すグラフ。
【図3B】アバスタチン(Avastin、(登録商標))で処置した酸素誘発性網膜症のマウスと比較した、HSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処置した酸素誘発性網膜症のマウスモデルでの減少した数の内皮細胞/網膜切片を示すグラフ。
【図4A】アバスタチン(Avastin(登録商標))で処置した酸素誘発性網膜症のマウスと比較した、HSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処置した酸素誘発性網膜症のマウスモデルでの減少した数の血管/網膜切片を示すグラフ。
【図4B】アバスタチン(Avastin(登録商標))で処置した酸素誘発性網膜症のマウスと比較した、HSA−ARLDDLロドストミンバリアントで処置した酸素誘発性網膜症のマウスモデルでの減少した数の内皮細胞/網膜切片を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(発明の詳しい説明)
本発明のさまざまな実施形態をここに詳述する。明細書および特許請求の範囲を通じて用いられる、「ある(a、an)」および「その(the)」の意味は、文脈で明らかに異なることを示さない限り、複数形への言及を含む。また、明細書および特許請求の範囲を通じて用いられる、「において/中(in)」の意味は、文脈で明らかに異なることを示さない限り、「において/中(in)」及び「に対して/上(on)」を含む。したがって、本明細書中で用いられる幾つかの用語を、以下で具体的に定義する。
【0046】
(定義)
本明細書中で用いられる用語は、概して、当該分野におけるそれらの通常の意味を、本発明の内容において及び各用語が用いられる具体的な内容において有する。本発明を記述するために用いられる特定の用語は、以下で又は本明細書中のいずれかで詳述し、本発明の記載に関する実施にさらなる指針を与える。特定の用語について類義語が与えられる。1以上の類義語の説明は他の類義語の使用を排除しない。本明細書中で詳述されるいずれかの用語についての例を含む、本明細書のいずれかでの例の使用は、単なる例示であり、本発明の範囲および意義または例示されるいずれかの用語の範囲および意義をいかようにも限定するものではない。本発明は、本明細書により与えられるさまざまな実施形態により限定されるものではない。
【0047】
特に規定しない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本願発明が属する分野における通常の知識を有するものにより一般に理解される意味と同じ意味を有する。相反する場合には、定義を含む本明細書により調節されるであろう。
【0048】
用語「およそ」、「約」または「ほぼ」は、概して所定の値または範囲の20パーセント以内、10パーセント以内、5、4、3、2もしくは1パーセント以内を意味する。所定の数的な定量は該算であり、用語「およそ」、「約」または「ほぼ」が明示的に示されていない場合、それらが推定され得る。
【0049】
用語「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書を通じて交換可能に用いられる。
【0050】
用語「低用量」および「低量」は本明細書を通じて交換可能に用いられる。
【0051】
用語「被検体」および「哺乳動物」は、限定するものではないが、ヒトを含む。
【0052】
用語「処置」は、哺乳動物における疾患に対する治療薬の投与または適用のいずれかを意味し、疾患を抑制すること、進行を停止させること、疾患を緩和すること、例えば退行を生じさせることによる緩和または喪失機能、不全機能もしくは機能低下を回復もしくは修復することによる緩和;あるいは非効率的なプロセスを刺激することを含む。当該用語は、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ること、および哺乳動物における病的状態または障害のいずれの処置もカバーすることを含む。効果は、ある障害またはその症状を完全もしくは部分的に防止する観点から予防であってよく、および/またはある障害または前記障害に起因する悪影響を部分的もしくは完全に治癒する観点から治療であってよい。処置は、(1)障害に罹患しやすい可能性があるが、まだ症状がない患者における発病または再発による障害を防止すること、(2)障害を抑制すること、例えば進行を緩和すること、(3)障害または少なくともその関連症状を停止もしくは終結させ、ホストがもはやその障害またはその症状に苦しまなくすること、例えば喪失機能、不全機能もしくは機能低下を回復もしくは修復することによって、例えば障害またはその症状の軽減を生じさせること、あるいは(4)その障害またはそれに関連する症状を軽減すること、緩和すること、または改善することを含み、ここで、改善は広義で用いられ、例えば炎症、疼痛および/または腫瘍サイズなどのパラメーターの程度における減少を少なくとも意味する。
【0053】
用語「医薬上許容される担体」は、いずれかの慣用タイプの無毒な固体、半固体、液体フィラー、希釈剤、封入材料、製剤補助剤(formulation auxiliary)または賦形剤を意味する。医薬上許容される担体は、レシピエントに無毒であり製剤で使用される投薬量および濃度で、該製剤の他の成分と適合する。
【0054】
用語「組成物」は、通常、担体、例えば当分野で慣用の医薬上許容される担体または賦形剤であって、治療、診断または予防の目的で被検体に投与するのに適した担体または賦形剤を含む混合物を意味する。組成物は、ロドストミンバリアントが細胞中もしくは培養培地中に存在する細胞培養物を含んでもよい。例えば、経口投与のための組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、ピル、カプセル、徐放製剤、オーラルリンス(oral rinse)または粉剤に製剤化することができる。
【0055】
用語「血管形成関連の眼疾患」は、既存の血管からの新たな血管の成長に関係するいずれかの眼性疾患を意味する。これらの疾患は、限定するものではないが、加齢性の黄斑変性、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患、網膜血管腫性増殖、ポリープ状脈絡膜血管症、虚血誘発性血管新生網膜症、強度近視および未熟児網膜症を含む。
【0056】
用語「治療上の有効量」は、生存している被検体に投与された場合に、前記生存している被検体に対して所望の効果を達成する量を意味する。その正確な量は、処置の目的に依存し、既知の技術を用いて当業者により確認されるであろう。当分野で公知であるように、全身対局所送達(systemic versus localized delivery)に関する調整、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、薬物相互作用および状態の重症度が必要であろうし、当業者により通常の実験により確認されるであろう。
【0057】
用語「RGDモチーフのバリアント」は、対応する野生型の配列、例えばロドストミンにおけるRGDを含む配列中のRGD配列を超えたアミノ酸配列に改変を含むペプチドを意味する。
【0058】
用語「ARGDDP」は、RGDモチーフのバリアント48ARGDDP53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。ARGDDPは配列番号:1により表される。
【0059】
用語「ARGDDV」は、RGDモチーフのバリアント48ARGDDV53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。ARGDDVは配列番号:2により表される。
【0060】
用語「ARGDDL」は、RGDモチーフのバリアント48ARGDDL53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。ARGDDLは配列番号:3により表される。
【0061】
用語「PRGDDL」は、RGDモチーフのバリアント48PRGDDL53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。PRGDDLは配列番号:4により表される。
【0062】
用語「ARGDDM」は、RGDモチーフのバリアント48ARGDDM53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。ARGDDMは配列番号:5により表される。
【0063】
用語「PRGDDM」は、RGDモチーフのバリアント48PRGDDM53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。PRGDDMは配列番号:6により表される。
【0064】
用語「PRLDMP」は、RGDモチーフのバリアント48PRLDMP53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。PRLDMPは配列番号:7により表される。
【0065】
用語「PRLDDL」は、RGDモチーフのバリアント48PRLDDL53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。PRLDDLは配列番号:8により表される。
【0066】
用語「ARLDDL」は、RGDモチーフのバリアント48ARLDDL53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。ARLDDLは配列番号:9により表される。
【0067】
用語「PRIDMP」は、RGDモチーフのバリアント48PRIDMP53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。PRIDMPは配列番号:10により表される。
【0068】
用語「PRHDMP」は、RGDモチーフのバリアント48PRHDMP53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。PRHDMPは配列番号:11により表される。
【0069】
用語「PRGDNP」は、RGDモチーフのバリアント48PRGDNP53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。PRGDNPは配列番号:12により表される。
【0070】
用語「PRGDGP」は、RGDモチーフのバリアント48PRGDGP53を有するロドストミンバリアントを意味する。番号「48」および「53」は、野生型ロドストミンのアミノ酸配列中のこれらのアミノ酸の位置を意味する。PRGDGPは配列番号:13により表される。
【0071】
用語「HSA−ARLDDL」は、a)ヒト血清アルブミン(HSA)バリアント、b)リンカーアミノ酸配列、およびc)RGDモチーフのバリアント48ARLDDL53を有するロドストミンバリアントを含む融合タンパク質を意味する。それは、配列番号:14により表される。
【0072】
用語「HSA(C34S)−ARLDDL」は、a)野生型HSAアミノ酸配列の34番目のシステイン残基がセリンに置換されたヒト血清アルブミン(HSA)バリアント、b)リンカーアミノ酸配列、およびc)RGDモチーフのバリアント48ARLDDL53を有するロドストミンバリアントを含む融合タンパク質を意味する。それは、配列番号:15により表される。
【0073】
用語「HSA(C34A)−ARLDDL」は、a)野生型HSAアミノ酸配列の34番目のシステイン残基がアラニンに置換されたヒト血清アルブミン(HSA)バリアント、b)リンカーアミノ酸配列、およびc)RGDモチーフのバリアント48ARLDDL53を有するロドストミンバリアントを含む融合タンパク質を意味する。それは、配列番号:16により表される。
【0074】
本発明は、ARLDDL以外のロドストミンバリアントがリンカーアミノ酸配列を介してHSAバリアントに融合した融合タンパク質を利用する、組成物および方法を含むものと理解されよう。例えば、本発明の目的に適した融合タンパク質は、限定するものではないが、HSA−ARGDDP、HSA(C34S)−ARGDDP、HSA(C34A)−ARGDDP、HSA−ARGDDV、HSA(C34S)−ARGDDV、HSA(C34A)−ARGDDVおよびその他のものを含む。
【0075】
本発明の組成物および方法
本発明者らは、米国特許第61/226,945号に開示される方法およびロドストミンバリアントのすべてを出典明示により本質的に本明細書の一部とする。
【0076】
概して、本発明は、低用量のロドストミンバリアントを利用した、血管形成関連の眼疾患の処置のための組成物および方法に関する。
【0077】
用語「低用量」は、血管形成関連の眼疾患の処置に慣用される用量よりも低い用量を意味する。
【0078】
好ましくは、「低用量」は、本発明の目的に適したロドストミンバリアントの約0.0001pg〜約300μg;より好ましくは約0.0005pg〜約200μg、さらにより好ましくは約0.001pg〜約100μgである。用量は、投与される全用量が所定の範囲内である限り、単回投与または分割投与のいずれかとして、その必要のある被検体に投与することができる。
【0079】
好ましくは、前記ロドストミンバリアントは、ペグ化もしくはその他の修飾がなされていてもよいヒト血清アルブミン(HSA)またはHSAのバリアントと融合される。
【0080】
さらにより好ましくは、本発明の目的に適したロドストミンバリアントは、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントから選択されるものであるか、または前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩である。
【0081】
好ましい実施形態において、ロドストミンバリアントは、アルブミンとコンジュゲートされるか又はペグ化される。
【0082】
さらにより好ましくは、本発明の目的に適したロドストミンバリアントは、配列番号:9または配列番号:15を含む。
【0083】
本発明の目的に関して最も好ましいロドストミンバリアントは、HSA(C34S)−ARLDDLであり、それは配列番号:15により表される。HSA−ARLDDL C34Sは、RGDのモチーフ48ARLDDL53を有するロドストミンバリアントを含み、前記ロドストミンバリアントがヒト血清アルブミン(HSA)のバリアントとコンジュゲートされた組換えタンパク質である。HSA(C34S)−ARLDDLは、αvβ3インテグリンに選択的であり、野生型ロドストミンと比較してαIIbβ3および/またはα5β1インテグリンに対して低下した結合を示す。
【0084】
1つの実施形態において、本発明は、約0.0001pg〜約300μgの、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための組成物に関する。
【0085】
好ましくは、本発明の組成物は、約0.0005pg〜約200μg、より好ましくは約0.001pg〜約100μgの本発明の目的に適したロドストミンバリアントを含む。
【0086】
1つの実施形態において、本発明の組成物は、局所用組成物として製剤される。他の実施形態において、本発明の組成物は、硝子体内(すなわち、眼中への)注射に好適である。
【0087】
他の実施形態において、本発明は、その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり約0.0001pg〜約300μgの、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法に関する。
【0088】
好ましい実施形態において、本発明は、その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり約0.0001pg〜約300μgの、配列番号:9および配列番号:15から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法に関する。
【0089】
より好ましい実施形態において、本発明は、その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり約0.0005pg〜約200μgの、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法に関する。
【0090】
さらにより好ましい実施形態において、本発明は、その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり約0.001pg〜約100μgの、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法に関する。
【0091】
好ましくは、本発明の方法は、前記被検体の1眼あたり約0.005pg〜約200μg、より好ましくは約0.001pg〜約100μgの、本発明の目的に適したロドストミンバリアントを投与することを含む。
【0092】
1つの実施形態において、本発明の方法は、前記被検体に眼内注射を介して、本発明の目的に適したロドストミンバリアントを投与することを含む。
【0093】
1つの実施形態において、血管形成関連の眼疾患は、加齢性の黄斑変性、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患、網膜血管腫性増殖、ポリープ状脈絡膜血管症、老人性虚血誘発性血管新生網膜症、強度近視および未熟児網膜症からなる群より選択される。
【0094】
本発明の組成物は、全身注射によって、例えば硝子体内注射または静脈注射によって;あるいは関連部位への注射または適用によって、例えば関連部位が手術で露出する場合に前記部位への直接的な注射または直接的な適用によって;あるいは局所適用により、その必要のある被検体に投与することができる。
【0095】
本発明の組成物は、血管形成関連の眼疾患を処置するために、他の活性薬剤と組合せて用いることができる。
【0096】
このように、1つの実施形態において、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防の方法は、被検体に他の活性薬剤を投与することをさらに含む。
【0097】
好ましくは、他の活性薬剤は、VEGF拮抗剤、抗血管形成薬剤、消炎薬剤およびステロイドからなる群より選択される。
【0098】
前記活性薬剤の投与は、経口、頬、鼻、直腸、非経口、腹膜内、皮内、経皮、皮下、静脈内、動脈内、心臓内、心室内、頭蓋内、気管内およびクモ膜下腔内投与、筋内注射、硝子体内(すなわち、眼中への)注射、局所適用、限定するものではないが、点眼、クリームおよびエマルジョン、移植および吸入を含むさまざまな経路で達成され得る。
【0099】
本発明の医薬組成物は、当分野で公知の医薬上許容される担体、賦形剤および希釈剤を含む製剤として提供され得る。これらの医薬担体、賦形剤および希釈剤は、USP医薬賦形剤リストに列挙されるものを含む。USPおよびNF Excipients、Listed by Categories、2404〜2406頁、USP 24 NF 19、米国薬局方協会(United States Pharmacopeial Convention Inc.)、ロックビル、メリーランド(ISBN 1-889788-03-1)。医薬上許容される賦形剤、例えばビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤は、一般に容易に利用できる。さらに、医薬上許容される補助物質、例えばpH調整剤および緩衝剤、等張化剤、スタビライザ、湿潤剤などは、一般に容易に利用できる。
【0100】
適切な担体は、限定するものではないが、水、デキストロース、グリセロール、食塩水、エタノールおよびそれらの組合せを含む。担体は、さらなる薬剤、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、または製剤の有効性を増強するアジュバントを含んでいてよい。局在担体は、リキッド・ペトローリアム(liquid petroleum)、イソプロピル・パルミテート、ポリエチレングリコール、エタノール(95%)、水中ポリオキシエチレン・モノラウレート(5%)または水中硫酸ラウリルナトリウム(5%)を含む。他の物質、例えば酸化防止剤、湿潤剤、粘性スタビライザおよび類似の薬剤は、必要に応じて添加し得る。経皮浸透エンハンサー、例えばAzoneもまた含み得る。
【0101】
本発明の目的に適したロドストミンバリアントは、それらを水性もしくは非水性溶媒、例えば植物油または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸またはプロピレングリコールのエステル中に溶解、懸濁または乳化することにより;そして、要すれば、一般的な添加剤、例えば可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、スタビライザおよび防腐剤を含め、注射のための調剤に製剤化することができる。経口または非経口送達のための他の製剤もまた、当該分野で慣用されるように、用いることができる。
【0102】
本発明の医薬組成物は、固体、半固体、液体、気体の形態、例えば錠剤、カプセル、粉剤、顆粒、軟膏、液剤、坐薬、注射剤、吸入およびエアゾールに、製剤化することができる。
【0103】
医薬剤形において、本発明の組成物はその医薬上許容される塩形で投与することができ、あるいは本発明の組成物は単独で又は他の医薬上活性な化合物と適切に合せて並びに組合せて用いることができる。対象の組成物は、可能性のある投与方式に合わせて製剤される。
【0104】
本発明は例示することのみを目的として以下の実施例でより具体的に記載するが、それらにおける多くの改良および改変は当業者には明らかであろう。
【0105】
実施例1
酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおけるARLDDLおよびHSA−ARLDDLによる網膜における血管形成の抑制
マウスにおける酸素誘発性網膜症のための動物モデルは、以下のように作出した。グループあたり少なくとも2匹の看護ダム(nursing dam)付きの7日齢のマウスを、75%酸素(酸素過剰)を含む酸素チャンバーに又は室内空気(酸素正常状態)に割り当てた。マウスは300ルクス未満の12時間周期の広域のスペクトル光を浴びた。看護ダムが死んだ場合、代理ダム(surrogate dam)を代用した。酸素処置マウスを、酸素および窒素を用いるBird 3−M 酸素ブレンダー(Palm Springs、CA)に接続されたインキュベーターで飼育し、75%±2%での酸素濃度の調整を可能にした。1.5L/分の流速を1日2回確認した。酸素濃度はベックマン酸素分析器(Model D2, Irvine, CA)でモニタした。ケージ温度は23℃±2℃に維持した。マウスは、5日間、食物および水を受けるのに十分な食物と水を備えた酸素チャンバーに置かれた。チャンバーは、1日から5日までの酸素過剰への暴露の間、開放しなかった。5日目に動物を室内空気に7日間戻した。
酸素処置したマウスを室内空気に戻した時点で、通常の食塩水(1眼あたり2μl)、ARLDDL(1眼あたり2ngまたは1眼あたり20pg)、HSA−ARLDDL(1眼あたり2ng)または抗VEGF抗体(1眼あたり2ngまたは1眼あたり20pg)を、5日目に硝子体内注射により投与し、前記マウスを12日目に犠牲にした。各動物の両眼の一方から切片を作製し、脱パラフィン化して、ヘマトキシリンおよびエオジンにより染色した。網膜切片あたりの血管の数を内側網膜において計数し、それは内境界膜に付着する血管を含んだ。計数は、倍率100×の顕微鏡写真機(Leica)上で行った。結果は図1Bに示す。
【0106】
結果は、通常の食塩水での処置グループと比較して、投薬量1眼あたり2ngおよび1眼あたり20pgのARLDDLおよびHSA−ARLDDLが網膜切片あたりの血管の数を減少させたことを実際に示す。さらに非常に低用量の1眼あたり20pgでさえ、ARLDDLは、結果的に1眼あたり2ngのARLDDL、1眼あたり2ngのHSA−ARLDDLおよび1眼あたり20pgの抗VEGF抗体と比較して、網膜切片あたりの血管の数が大幅に減少した。
【0107】
内皮細胞は、同一物についてブラインドされたヒト(a person blinded to the same identity)が神経節細胞層の前部で及び網膜の内境界膜(inner limiting membrance)上で計数した。結果は図1Cに示す。
【0108】
結果は、1眼あたり2ngの用量および1眼あたり20pgの用量の両方でARLDDLおよびHSA−ARLDDLが網膜切片あたりの内皮細胞の数を減少させたことを実際に示す。
【0109】
実施例2
酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおける非常に低用量のARLDDLおよびHSA−ARLDDLによる網膜における血管形成の抑制
マウスにおける酸素誘発性網膜症のための動物モデルは、実施例1で記載したように作出した。以下の量のHSA−ARLDDL:1眼あたり10pg、1眼あたり0.1pgおよび1眼あたり0.001pgを硝子体内注射により投与し、処置マウスを12日目に犠牲にした。各動物の両眼の一方から切片を作製し、脱パラフィン化して、ヘマトキシリンおよびエオジンにより染色した。網膜切片あたりの血管の数を内側網膜において計数し、それは内境界膜に付着する血管を含んだ。計数は、倍率100×の顕微鏡写真機(Leica)上で行った。結果は図2Aに示す。
【0110】
結果は、通常の食塩水での処置グループと比較して、1眼あたり10pg、0.1pgおよび0.001pgのHSA−ARLDDLが網膜切片あたりの血管の数を減少させたことを実際に示す。
【0111】
内皮細胞は、同一物についてブラインドされたヒトが神経節細胞層の前部で及び網膜の内境界膜上で計数した。結果は図2Bに示す。
【0112】
結果は、1眼あたり10pg、0.1pgおよび0.001pgのHSA−ARLDDLが、通常の食塩水での処置グループと比較して、網膜切片あたり内皮細胞数を減少させたことを実際に示す。
【0113】
実施例3
酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおけるHSA−ARLDDL対アバスタチン(登録商標)による網膜における血管形成の抑制
マウスにおける酸素過剰/酸素正常状態のための動物モデルは、実施例1で記載したように作出した。ARLDDL(1眼あたり10pgまたは1眼あたり0.1pg)またはアバスタチン(登録商標)(1眼あたり20pgまたは1眼あたり0.2pg)を硝子体内注射により投与し、処置マウスを12日目に犠牲にした。
【0114】
各動物の両眼の一方から切片を作製し、脱パラフィン化して、ヘマトキシリンおよびエオジンにより染色した。網膜切片あたりの血管の数を内側網膜について計数し、それは内境界膜に付着する血管を含んだ。計数は、倍率100×の顕微鏡写真機(Leica)上で行った。結果は図3Bおよび4Bに示す。
【0115】
内皮細胞は、同一物についてブラインドされたヒトが神経節細胞層の前部で及び網膜の内境界膜上で計数した。結果は図3Bおよび4Bに示す。
【0116】
結果は、投与した全ての投薬量でHSA−ARLDDLが、網膜における血管形成を抑制する際にアバスタチン(登録商標)よりも有意に効果的であったことを実際に示す。
【0117】
本明細書中で用いられるアミノ酸配列およびヌクレオチド配列:
配列番号:1は、「ARGDDP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0118】
配列番号:2は、「ARGDDV」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0119】
配列番号:3は、「ARGDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0120】
配列番号:4は、「PRGDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0121】
配列番号:5は、「ARGDDM」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0122】
配列番号:6は、「PRGDDM」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0123】
配列番号:7は、「PRLDMP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0124】
配列番号:8は、「PRLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0125】
配列番号:9は、「ARLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0126】
配列番号:10は、「PRIDMP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0127】
配列番号:11は、「PRHDMP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0128】
配列番号:12は、「PRGDNP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0129】
配列番号:13は、「PRGDGP」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0130】
配列番号:14は、「HSA−ARLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0131】
配列番号:15は、「HSA(C34S)−ARLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0132】
配列番号:16は、「HSA(C34A)−ARLDDL」ロドストミンバリアントのアミノ酸配列を表す。
【0133】
本発明の例示的な実施例に関する前記説明は、単に例示および説明を目的として示されるものであり、網羅すること又は本願発明を開示される明確な形態に限定することを意図するものではない。上記の教示を考慮すれば、多くの改変および変更が可能である。
【0134】
本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書中に開示される本発明の実地を考慮すれば、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は、添付する特許請求の範囲により意図される本発明の本来的な範囲および思想に対する単なる例示として考慮されるべきものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低用量の、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための組成物。
【請求項2】
アミノ酸配列が配列番号:9および配列番号:15から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アミノ酸配列が配列番号:15である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ロドストミンバリアントが、アルブミンとコンジュゲートまたはペグ化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
低用量が、前記ロドストミンバリアントの約0.0001pgから約300μgである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
低用量が、前記ロドストミンバリアントの約0.0005pgから約200μgである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
低用量が、前記ロドストミンバリアントの約0.001pgから約100μgである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が局所用組成物として製剤される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が注射可能な組成物として製剤される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
低用量の、配列番号:15のアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための組成物。
【請求項11】
その必要のある被検体に請求項1に記載の組成物を投与することを含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法。
【請求項12】
その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり低用量の、配列番号:1〜配列番号:16から選択されるアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法。
【請求項13】
血管形成関連の眼疾患が、加齢性の黄斑変性、糖尿病性網膜症、角膜血管新生疾患、網膜血管腫性増殖、ポリープ状脈絡膜血管症、老人性の虚血誘発性血管新生網膜症、強度近視および未熟児網膜症からなる群より選択される、請求項12の方法。
【請求項14】
血管形成関連の眼疾患が加齢性の黄斑変性である、請求項13の方法。
【請求項15】
血管形成関連の眼疾患が糖尿病性網膜症である、請求項13の方法。
【請求項16】
ロドストミンバリアントが、アルブミンとコンジュゲートまたはペグ化されている、請求項12の方法。
【請求項17】
被検体がヒトであり、ロドストミンバリアントが前記被検体の眼に投与される、請求項12の方法。
【請求項18】
ロドストミンバリアントが、前記被検体の眼に局所的に適用される、請求項12の方法。
【請求項19】
ロドストミンバリアントが、前記被検体の眼に硝子体内注射により適用される、請求項12の方法。
【請求項20】
被検体に治療上の有効量の他の活性薬剤を投与することをさらに含む、請求項11の方法。
【請求項21】
他の活性薬剤が、VEGF拮抗剤、抗血管形成薬剤、消炎薬剤およびステロイドからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
他の活性薬剤がロドストミンバリアントと同時に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
他の活性薬剤がロドストミンバリアントを投与する前に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
他の活性薬剤がロドストミンバリアントを投与した後に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
その必要のある被検体に、前記被検体の1眼あたり低用量の、配列番号:15のアミノ酸配列を含むロドストミンバリアントまたは前記ロドストミンバリアントの医薬上許容される塩を投与することを含む、血管形成関連の眼疾患の処置および/または予防のための方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公表番号】特表2013−515739(P2013−515739A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546185(P2012−546185)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/061738
【国際公開番号】WO2011/079175
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(502250743)國立成功大學 (16)
【氏名又は名称原語表記】NATIONAL CHENG KUNG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.1,Ta−Hsueh Road,East District,Tainan City,Taiwan(R.O.C.)
【出願人】(503209342)ナショナル タイワン ユニバーシティ (9)
【Fターム(参考)】