血管構造内の完全閉塞を横断するためのカテーテルシステム
【課題】カテーテル本体の遠位端に連結された遠位終端部の遠位方向が容易に把握でき、遠位終端部の側面口から出るカニューレ等の進行方向を容易に把握することが可能となる。
【解決手段】血管構造に使用するためのカテーテルシステムにおいて、本体内腔部を含むカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端に連結された遠位終端部であって、遠位終端部内腔部、側面口、および遠位口を含む遠位終端部と、遠位終端部に設けられたマーカーであって、血管構造における対象部位に対する側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成されたマーカーとを備え、
マーカーは、LT指向マーカーであって、遠位終端部が回転することによって、L字形状またはT字形状に見えるものであり、長手方向に延びる第1部分、及び、該第1部分の遠位端に接触していて長手方向に対し直交方向に延びる第2部分から構成されている、カテーテルシステムである。
【解決手段】血管構造に使用するためのカテーテルシステムにおいて、本体内腔部を含むカテーテル本体と、カテーテル本体の遠位端に連結された遠位終端部であって、遠位終端部内腔部、側面口、および遠位口を含む遠位終端部と、遠位終端部に設けられたマーカーであって、血管構造における対象部位に対する側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成されたマーカーとを備え、
マーカーは、LT指向マーカーであって、遠位終端部が回転することによって、L字形状またはT字形状に見えるものであり、長手方向に延びる第1部分、及び、該第1部分の遠位端に接触していて長手方向に対し直交方向に延びる第2部分から構成されている、カテーテルシステムである。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願〕
本願は、2005年3月30日出願の米国特許出願第60/666,896号の利益を主張するものである。米国特許出願第60/666,896号は、2004年4月12日出願の米国特許出願第10/823,416号の一部継続出願であり、米国特許出願第10/823,416号は、2002年12月3日出願の米国特許出願第10/308,568号の一部継続出願であり、米国特許出願第10/308,568号は、現在は米国特許第6,511,458号である2001年1月19日出願の米国特許出願第09/765,777号の継続出願であり、米国特許出願第09/765,777号は、現在は米国特許第6,235,000号である1999年11月17日出願の米国特許出願第09/440,308号の継続出願であり、米国特許出願第09/440,308号は、現在は米国特許第6,231,546号である1998年1月13日出願の米国特許出願第09/006,563号の分割出願である。
【0002】
〔技術分野〕
本明細書の開示は、概して、医療機器および方法に関するものである。具体的には、本開示は、血管構造内の慢性完全閉塞を横断する(crossing chronic total occlusions)ためのシステム、方法および手技に関するものである。
【0003】
〔背景〕
心血管疾患は、世界における主要死因である。心血管疾患は、様々な形態を取りうるものであり、多様な特別介入治療(specific interventional treatments)および薬物治療が長年にわたって考案され、その成功の度合いはさまざまであった。
【0004】
血管がアテロームおよびプラークで完全に閉塞された場合、心血管疾患の特に困難な形態となり、これを慢性完全閉塞(CTO)という。最近まで、慢性完全閉塞は、一般的に、自己血管または人工血管を閉塞部の上流および下流で血管上の場所へ吻合術で取り付けるバイパス術を行うことにより治療されていた。上記のバイパス術は効果が高い反面、患者への外傷が非常に大きくなる。
【0005】
近年、カテーテルによる血管内処置が慢性完全閉塞の治療に利用されており、ますます成功を収めている。カテーテルによる血管内処置としては、血管形成術、アテレクトミー、ステント留置(stenting)等が含まれ、患者への外傷が非常に小さいので、多くの場合に好まれている。しかしながら、上記のカテーテルによる治療を実施する前に、通常、介入カテーテル(interventional catheter)へのアクセスを提供するために、ガイドワイヤーで閉塞部を横断する必要がある。
【0006】
場合によっては、ガイドワイヤーで閉塞部を横断することは、単にガイドワイヤーを閉塞部に押し通すことで行うことができる。閉塞部を通って前進した後、ガイドワイヤーは、血管腔に出現し、所望のアクセス経路を提供する。しかしながら、多くの場合に、ガイドワイヤーが閉塞部を横断しようとした際に、不注意によりガイドワイヤーは血管の内膜層と外膜層の間の内膜下空間に貫入する。内膜下空間に入ると、医師/ユーザがガイドワイヤーを血管腔へ戻すことが非常に困難であり、多くの場合に不可能である。このような場合、カテーテルによる介入を行うことが通常不可能であり、より外傷が大きくなる他の処置を用いなければならないことがある。慢性完全閉塞の治療に用いられるカテーテルは、米国特許第4,405,314号、第4,947,864号、第5,183,470号、第5,190,528号、第5,287,861号、第5,409,019号、第5,413,581号、第5,429,144号、第5,443,497号、および第5,464,395号に加え、国際公開WO97/13463号、およびWO97/13471号に記載されている。これらの理由から、ガイドワイヤーによる慢性完全閉塞部の横断を容易にする装置および方法を提供する必要性がある。
【0007】
〔参照による組み込み〕
本明細書で言及した各々の特許、特許出願および/または刊行物は、それぞれの個々の特許、特許出願および/または刊行物が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示された場合と同じ範囲で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
〔発明の詳細な説明〕
以下に示す装置および方法には、血管構造内の完全閉塞部を横断する(crossing total occlusions in vasculature)際に用いられるカテーテル、ガイドおよび/または他の器具が含まれる。完全閉塞は、完全血管閉塞あるいは慢性完全閉塞(CTOs)とも呼ばれる。装置および方法には、従来のガイドワイヤーおよび/または特殊なガイドワイヤーを持った医師/ユーザが、ガイドワイヤーが内膜下空間(subintimal space)に入った後に、ガイドワイヤーを内膜下空間から血管腔へ戻るように導く、あるいは向け直す(redirect)ことを目的として使用する医療装置が含まれる。これらの装置および方法は、他の血管と同様に、冠動脈における冠動脈疾患の治療にも有効であり、画像化の有無に関わらず実行可能であるべきである。この装置/方法は、末梢血管疾患の治療などの他の動脈および静脈における応用にも有用である。
【0009】
図1は、動脈Aおよび動脈Aを形成する組織層の断面(section)を示す。正常な(非罹患)動脈Aは、多数の層を持つ動脈壁を含む。本明細書では、最内層を内膜層Iといい、内膜層Iには、内皮、内皮下層、および内弾性板(internal elastic lamina)IELが含まれる。中間層Mが内弾性板IELの同心外側にあり、外弾性板層(external elastic lamina layer)EELが中間層Mの同心外側にあり、外膜層ALが最外層である。外膜層ALを越えると血管外組織となる。以下に用いられているように、一般的に中間層Mを含む内膜層Iと外膜層ALの間の領域は、内膜下空間という。ただし、内膜下空間には、後述するように、さらに別の組織型/層が含まれる場合がある。本明細書で使用される内膜下空間のこの定義は、当業者により定められたあらゆる意味に追加されるものである。
【0010】
図2Aは、罹患動脈Aの断面であり、完全閉塞TOを伴う動脈壁の正常組織の詳細を示している。図2Bは、罹患動脈Aの断面であり、完全閉塞TOの存在により起こりうる変性した組織構造を持つ動脈壁を示している。図2Bに関して、完全閉塞TOのある罹患動脈Aは、正常な動脈の組織層と比較し、変性した構造を持つ動脈壁を含む。最内層は、びまん性疾患DDと呼ばれる。びまん性疾患DD層は、約50ミクロン〜500ミクロンの厚さとなる場合があるが、重い罹患動脈では、この厚さには限定はされない。中間層Mは、完全閉塞TOおよびびまん性疾患DDから同心外側に位置している場合がある。重い罹患血管では、図2Bに示されるように、中間層Mが腐食していることがあり、はっきりしない場合がある。外弾性板EELは、中間層M、完全閉塞TO、びまん性疾患DDのいずれかの同心外側に位置することがあり、外膜層ALが最外層である。以下に用いられているように、びまん性疾患DD内にあり、外膜層ALと境界を接する領域も内膜下空間という。この内膜下空間についての補足的定義は、当業者により定められたあらゆる意味に追加されるものである。内膜下空間は、本明細書に記載のワイヤー、偏向カテーテルおよび他のカテーテルが、完全閉塞を横断するときに通る領域である。
【0011】
完全閉塞TOには、アテローム、プラーク、血栓、および/または、通常、心血管疾患に関連する他の閉塞性物質が含まれる場合がある。「完全」閉塞とは、閉塞性物質が動脈腔Lまたは他の血管全体を実質的に閉塞し、血管内の血流が実質的に遮断されるか、または、停止することを意味する。本明細書に記載のカテーテルシステムおよび方法は、閉塞部より遠位の組織が側副動脈から酸素を含んだ血液をしばしば受容するため、完全に閉塞した動脈が直ちに生命を脅かすことのない患者に通常用いられる。しかしながら、通常、閉塞部より遠位の領域における血液供給は不十分であり、血管形成術、アテレクトミー、ステント留置などのような血管内介入によって閉塞部を治療し、影響を受けた血管を通る血流を回復させることが好ましいであろう。
【0012】
慢性閉塞部は、閉塞部の近位端に(たとえば、米国特許第5,968,064号、第6,217,549号、第6,398,798号、第6,508,825号、第6,599,304号、および第6,638,247号に記載されているような)ガイドワイヤーまたは鈍的剥離用カテーテル(blunt dissection catheter)を位置付け、従来のインターベンション方式(interventional method)を用いて閉塞部の中に装置を前進させることにより、横断される。本明細書において完全閉塞部の横断とは、当業者が定めるあらゆる意味に加えて、閉塞部の近位端から閉塞部の遠位端まで長さ方向の経路を確立することと定義される。ガイドワイヤーおよび/または鈍的剥離用カテーテルの長さ方向の経路は、閉塞した血管内においてできるだけ中央にとどまり、かつ閉塞部を横断した後に血管の真腔(true lumen)に出現しなければならない。しかし、実際には、ガイドワイヤーまたは鈍的剥離用カテーテルは閉塞部内の中心を外れた経路をたどり、閉塞部自体の遠位端を越えて前進した後、閉塞の末端より遠位の血管組織の層に入る。この種類の切開経路(dissection track)を一般的に内膜下経路、つまり、血管の内膜層と外膜層の間といい、限定はしないが、通常は中間層に入っている(図1、図2Aおよび図2B)。
【0013】
しかしながら、図2Bに関して前述したように、より多くの場合に、完全閉塞を形成する病状は、閉塞部位で血管壁内層を腐食する。さらに、血管壁の腐食、および病状は、多くの場合、閉塞の近位端あるいは遠位端で突然終了することはなく、代わりに、病状も、閉塞部まで、かつ閉塞部から離れながら、次第に細くなる血管壁の内側を覆う(lines)。したがって、閉塞部の末端の近位および遠位の血管部分の構造は、多くの場合に、びまん性疾患となっている。完全閉塞の近位および遠位にあるこのような罹患した血管部分では、内膜層(I)、内弾性板層(IEL)および中間層(M)が存在しない場合があり、多くの場合に、少なくともアテローム、プラーク、血栓、脂肪および石灰化繊維(fibo-calcific)沈殿物/組織のうちのひとつを含むびまん性疾患(DD)層に置き換えられている。このような罹患した組織のすべては、限定はしないが、通常、外弾性板(EEL)、および血管の最外の境界、つまり、外膜層(AL)内に含まれている。
【0014】
それゆえ、閉塞領域の血管片(vessel segment)が正常な構造(図2A)あるいは罹患構造(図2B)のいずれかでありうることを考慮すると、閉塞の遠位にある内膜下経路を、対応する2方法で説明できる。正常な血管内において、内膜下経路は、外膜層(AL)および内膜層(I)と境界を接している、つまり、血管壁の中にあると説明され、通常は中間層(M)の中にあると考えられる。罹患血管内において、内膜下経路は、同様に外弾性板(EEL)または外膜層(AL)と外側で境界を接しているびまん性疾患(DD)層の中にあるものと説明される。
【0015】
また、完全閉塞部に含まれる切開経路(dissection tract)と、完全閉塞部を越えて広がった切開経路との間に違いがあることにも留意しなければならない。切開経路が完全閉塞部の向こうに広がっている場合、前述した内膜下経路のいずれのタイプも管腔外、つまり、閉塞部の遠位にある血管の真腔の境界外にあると定義される。「管腔外(extra-luminal)」という用語は、切開経路が完全閉塞部の遠位端の向こうに進められた場合に関係を有するにすぎない。閉塞部内に物理的な管腔は存在しないので、完全閉塞部内に含まれる切開経路が管腔外の場所とは何の関係も有することができないことに留意しなければならない。それゆえ、さらなる参考として、閉塞部の遠位の内膜下経路を管腔外と定義し、この定義は当業者により定められたあらゆる意味に追記されるものである。
【0016】
また、血管内および血管外の場所の違いも重要である。本明細書に記載の全ての切開経路は、血管の境界内、例えば、外膜層(AL)内に含まれるので、「血管内(intra-vascular)」とみなされる。したがって、外膜層(AL)の外の全ての場所は、「血管外(extra-vascular)」という。血管外の場所は、本明細書で検討する題材ではない。
【0017】
前述した内膜下の場所、管腔外の場所による、罹患血管に見られる、異なる構造を確立したところで、通路あるいは経路が、これらの内膜下の場所から血管の真腔へ、本明細書に記載の方法により形成される。ある実施形態の方法では、偏向カテーテルを用いてガイドワイヤーを偏向させる。通常、偏向カテーテルは、ガイドワイヤーの近位端を越えて前進し、内膜下空間内の経路内へ前進する。次に、ガイドワイヤーおよび偏向カテーテルは、ガイドワイヤーが横向きに偏向し、内膜層またはびまん性疾患を通り、閉塞の遠位の点において血管腔に戻るように操作される。このような偏向カテーテルはまた、ガイドワイヤーが経路内へと前進するとき、および/または、経路を通って前進するときにガイドワイヤーを支持する。つまり、カテーテルは、ガイドワイヤーが前へ進んで任意の抵抗物質(resisting material)に通されるときに、ガイドワイヤーの押圧性(pushability)を高めることができる。
【0018】
あるいは、内膜下空間の経路内に最初から位置付けられたガイドワイヤーは、偏向カテーテルを通して回収され、第2のワイヤーまたは内膜層またはびまん性疾患を貫通して血管腔へ戻るのに適した他の装置と交換されてもよい。ガイドワイヤーならびに/または偏向カテーテルおよび他のカテーテルは、本明細書に記述の方法から逸脱することなく、従来の方法で、互いにまたは互いを介して自由に交換できる。
【0019】
ある実施形態では、医師/ユーザが、ガイドワイヤーおよび/または偏向カテーテルが完全閉塞の遠位にいつ位置付けられたかを確認し、ガイドワイヤーを任意の閉塞の向こう側、つまり、遠位において血管腔に戻せるようにする。このような位置確認は、従来の方法による血管の透視法での画像化によって、最も簡単に行える。
【0020】
このような透視法での画像化に代えてまたは加えて、血管内の撮像(例えば、血管内超音波映像法(IVUS))、および光コヒーレンス断層撮影(OCT)等の様々な光学的撮像モダリティ(optical imaging modality)が用いられる。例えば、超音波撮像用ガイドワイヤーを、内膜下空間へ最初にアクセスするために用いてもよいし、および/または、内膜下空間にアクセスするために使用されるガイドワイヤーと交換してもよい。あるいは、撮像用ガイドワイヤーは、周囲の血管組織を観察するのに適したカテーテルの遠位の場所まで、カテーテルの内腔内またはカニューレ内で前進してもよい。内膜下空間にある撮像用ガイドワイヤーは、血管腔内の閉塞物質の有無を容易に検出しうる。閉塞物質から正常な動脈組織への遷移が検出された場合、ガイドワイヤーの位置が完全閉塞の遠位領域の位置を越えたところまで進んだことが分かる。
【0021】
代わりに、米国特許第5,000,185号および第4,951,677号に記載されているような撮像システムあるいは選択的撮像構成部品を、カテーテルシステム上および/またはカテーテルシステム内で運ぶこと、ならびに/あるいは、偏向カテーテルの内腔内でカテーテル内の遠位位置まで前進させることも可能であり、周囲組織を撮像し、カテーテルが完全閉塞の遠位領域を越えたところまで前進したかどうかを確認する。別の実施形態のカテーテルシステムは、カニューレ自体の内腔部内に撮像システムまたは撮像構成部品を入れて移動させ、カニューレおよび撮像システムのいずれも独立して、遠位へ進み、かつ近位へ後退するようにしてもよい。
【0022】
内膜下経路から血管腔へ戻る通路が形成され、ワイヤーが完全閉塞部を横断するように所定の位置にきた後、そのワイヤーは、完全閉塞部を横切るように介入および診断カテーテルを位置付ける際のガイドワイヤーとして使用できる。介入カテーテルは、閉塞治療のため完全閉塞部を横切るように位置付けられることが最も一般的である。介入カテーテルには、限定はしないが、例えば血管形成バルーンカテーテル、回転式アテレクトミーカテーテル、方向性アテレクトミーカテーテル、およびステント留置用カテーテルが含まれる。
【0023】
ある実施形態のカテーテルシステムにおいてワイヤーを偏向させることには、内膜下空間から血管腔に戻るようにカニューレを偏向させ、その後、カニューレにより画定/形成された通路(通常はカニューレの内腔部)にワイヤーを通すことが含まれる。カニューレは、ガイドワイヤーが内膜下空間内に配置された後に、ワイヤー上を前進させられる。ある実施形態においてカニューレを偏向させることには、後述するように、カニューレの、弾性があり(予め形成された)湾曲した端部を、カテーテルの拘束内腔部(constraining lumen)から血管腔内へ前進させることが含まれる。
【0024】
カテーテルシステムの他の実施形態におけるワイヤーの偏向には、予め内膜下空間内に前進させられたワイヤー上で偏向カテーテルを前進させることが含まれる。続いてカニューレは、偏向カテーテルの側面開口部を通って前進し、ガイドワイヤーが血管腔に戻るための道(path)を画定するために、内膜層あるいはびまん性疾患を貫通する。
【0025】
他の代替実施形態におけるワイヤーの偏向には、予め内膜下空間内に前進させられたワイヤー上で偏向カテーテルを前進させることが含まれる。続いてカニューレは、偏向カテーテルの遠位開口部を通って前進し、ガイドワイヤーが血管腔に戻るための道を画定するために、内膜層あるいはびまん性疾患を貫通する。操縦可能なカニューレおよび他の能動的展開型カニューレ(actively deployed cannulas)を使用してもよい。
【0026】
図3A、図3B、図3C、図3Dおよび図3Eは、ある実施形態による、カテーテルシステムを用いての完全閉塞の横断を示している。カテーテルシステムは、限定はしないが、偏向カテーテル20、および少なくとも1つのワイヤー10、つまり、ガイドワイヤー10を含む。図2Aおよび図2Bを参照すると、限定はしないが、この手技は、動脈の上部で行われる。図3Aを参照すると、ワイヤー10は、前述したように、完全閉塞TOの物質とであうまで動脈Aの内腔Lの中を前進する。このとき、ワイヤー10は、血管壁内へと偏向することなく閉塞TO内を前進することもありうる。このようなことが生じた場合、本発明の方法にしたがって、その後ガイドワイヤーの位置を変えることは必要ないであろう。
【0027】
しかしながら、普通、ワイヤー10は、図2Bに示されているように、中間層Mまたはびまん性疾患DDのいずれかの中の内膜下空間内に前進する(前述のように、進行性アテローム硬化性閉塞の内膜層および中間層は、びまん性疾患DDの異質層に発展することがある)。内膜層Iと外膜層ALとは、ワイヤー10をその近位端から遠位へと押したときにワイヤー10が自然と通過できる組織面を共に画定する。あるいは、ワイヤー10は、びまん性疾患DDの中を前進して、閉塞TOを通る、似たような経路をとることもある。ワイヤー10は、ワイヤー10の遠位先端部が、図3Bに示されているように完全閉塞TOの遠位端を通過するまで前進し続ける。ワイヤー10の遠位先端部は、医師/ユーザが前進を止めるまでは、完全閉塞のずっと先まで軸方向へ進むことができる。
【0028】
図3Bは、支持されることなく前進しているガイドワイヤー10を示している。しかしながら、場合によっては、ガイドワイヤー10が内膜層Iおよび外膜層ALの間の空間、つまり、びまん性疾患DDに入るおよび/または通過するときに、ガイドワイヤー10が大きな抵抗を受けることがある。抵抗を受けた場合、図3Cに示されているように、偏向カテーテル20をガイドワイヤー10の遠位先端部の直ぐ近くの場所まで前進させることによって、偏向カテーテル20を用いてガイドワイヤー10を支持し、ガイドワイヤー10の押圧性を高めることができる。ガイドワイヤー10およびカテーテル20は、その後、順に前進してもよく、たとえば、ガイドワイヤー10を短い距離だけ前進させ、続いてカテーテル20をガイドワイヤー10の遠位先端部の直ぐ近くの場所まで前進させるなどしてもよい。
【0029】
一方、用いられる処置によらず、完全閉塞TOを越えて遠位先端部を位置付ける点までガイドワイヤー10を前進させたら、ワイヤー10の近位端に被せるように同軸に導入することによって、偏向カテーテル20をワイヤー10上で前進させ、これを図3Bに示されているようにワイヤー10が完全閉塞TOに接近するまで行う。偏向カテーテル20は、その後、図3Dに示されているように、その遠位先端部もまた完全閉塞TOの向こう側に延びるまでワイヤー10の上をさらに前進する。ある実施形態の偏向カテーテル20は、ガイドワイヤー10を横方向に偏向させる少なくとも1つの機構を含み、ガイドワイヤー10が半径方向内側に向けて内膜層Iまたはびまん性疾患DDを通り、血管腔Lに戻ることができるようにしている。
【0030】
ある実施形態の偏向機構は、後述するようにさまざまな形態をとる。たとえば、図3Dを参照すると、ある実施形態の偏向機構は、偏向カテーテル20にある側面口22を含む。ガイドワイヤー10は、その遠位先端部が側面口22の近位に来るように後退させられ、次に遠位へ前進して、ワイヤー10が側面口22を横方向外側へと通り、図3Eに示されているように血管腔Lに戻るようにすることができる。
【0031】
ある実施形態のカテーテルシステムの医師/ユーザは、ガイドワイヤー10の遠位先端部と、偏向カテーテル20の偏向口22(または他の偏向機構)とが完全閉塞TOを越えたところに適切に位置付けられ、完全閉塞TOの端部を越えて過度に前進することがないことを保証できる。偏向カテーテル20の適切な位置付けは、限定はしないが、完全閉塞TOの遠位端の向こう側の約0cm〜2cmの範囲内で多様でありうる。たとえば、ある実施形態では、偏向カテーテル20が完全閉塞TOの端部の向こう側の約0〜0.5cmに位置付けられる。
【0032】
前述したように、このような位置付けは、場合によっては、透視法での画像化を利用して行うことができる。たとえば、場合によっては、適当な放射線不透過性マーカーをカテーテルシステムの構成部品に設けることで十分なことがあり、このようなカテーテルシステムの構成部品としては、ガイドワイヤー、カニューレ、カテーテルの偏向機構、および、透視による構成部品の遠位領域の視覚的な位置付けを可能にする、これらの構成部品の任意のものの何らかの組合せのうちの少なくとも1つが含まれる。蛍光画像は、たとえば米国特許第4,718,417号、および、第5,106,387号に記載されている。
【0033】
透視に加えて、能動的撮像システム/方法、ならびに、光コヒーレンス断層撮影(OCT)およびラマン分光法を含むがこれに限定されない他の撮像モダリティ(imaging modality)も、カテーテルシステムにおいて画像情報を提供するのに用いることができる。OCTは、たとえば米国特許第5,321,501号、第5,459,570号、第5,383,467号、および、第5,439,000号に記載されている。ラマン分光法は、たとえば国際公開WO92/18008号に記載されている。
【0034】
ある実施形態のカテーテルシステムは、偏向カテーテル20を回転により位置付けること(rotational positioning)ができるように用意されている。回転により位置付けることは、医師/ユーザが偏向機構を内膜下空間から動脈または他の血管腔Lへ戻るように向けることを可能にすることによって、カニューレまたはガイドワイヤーの偏向方向を選択的にすることを可能にする。
【0035】
カテーテルに超音波撮像手段が備わっている場合、カテーテルの遠位先端部を回転させて位置付けるのにこのような撮像手段を利用することができる。ある実施形態のカテーテルは、回転方向に硬くて曲がらず(rotationally rigid)、近位端を回すことで遠位端の位置付けができるようになっている。血管腔、偏向口22、および/または他の偏向機構の検出された存在を利用すれば、ガイドワイヤーおよび/またはカニューレを、これらの構成部品の超音波で識別できる特徴を使って、血管の真腔に向けて回転させて位置付けることができる。
【0036】
別の実施形態では、回転方向に特異である透視用マーカー(rotationally specific fluoroscopic marker)をカテーテル20に、または、カニューレに直接設けることができる。マーカーは、カテーテル先端部またはカニューレの回転方向が、透視法での画像化を利用して、マーカーの二次元画像を観察することによって決定されることができるように構成されている。
【0037】
本明細書に記載の血管閉塞の横断に使用する装置としては、カテーテルシステムが含まれ、これは、ワイヤー偏向システムまたはワイヤー偏向用システム(wire deflection or wire deflecting systems)ともいう。ある実施形態のワイヤー偏向システムは、通常、ワイヤー偏向カテーテルを備えており、このワイヤー偏向カテーテルは、カテーテル本体、および偏向用カニューレを含む。カテーテル本体は、近位端、遠位端、および、カテーテル本体の少なくとも遠位部分を通って延びる少なくとも1つの内腔部を含む。ある実施形態において、内腔部は、カテーテルの遠位部分、遠位領域、または、エンドゾーンのうちの少なくとも1つにおける遠位口および/または側面口のうちの少なくとも1つとつながっている。さまざまな他の実施形態において、内腔部は、1つ以上の遠位口および/または1つ以上の側面口とつながっている。
【0038】
ある実施形態のカニューレもまた、近位端と、遠位端と、カニューレの遠位部分を通って延びる少なくとも1つの内腔部とを含む。カニューレの遠位部分は、後述するように、予め形成された弾性湾曲部を含んでもよい。カニューレは、限定はしないが、カテーテル本体の内腔部内にスライド可能に配置されている。カテーテル本体の内腔部内のカニューレを近位へ最大限後退させたとき、カテーテルの遠位部分は、真っ直ぐな構成、および湾曲した構成のうち少なくとも一方を取るように構成することができる。カニューレは、手技に適する側面口および端部口のうちの少なくとも一方を介して展開され、内膜下組織/びまん性疾患を通る経路を本明細書に記載の方法により確立することができる。
【0039】
カテーテルシャフトおよび/またはカニューレの材料および製造方法を選ぶことにより、カニューレを最大限後退させた結果、カテーテルの遠位部分に生じる形状が決まる。遠位側カテーテルシャフトの真っ直ぐな構成または湾曲した構成のどちらでも、後述するようにカテーテルの2つの実施形態に応用することができる。カテーテルの第1実施形態は、遠位口および側面口の両方を含み、カニューレを最大限前進させると、予め成形したカニューレが側面口から選択的に展開される。カテーテルの第2実施形態は遠位口を1つだけ含み、カニューレを最大限前進させると、予め成形されたカニューレがその遠位口から展開される。さまざまな他の実施形態は、側面口と、遠位口と、カニューレ展開に関するオプション(cannula deployment options)とのそれぞれ違った組合せを含む。
【0040】
ある実施形態のカテーテルシステムは、カニューレ内腔部を通るように構成されたワイヤーをさらに備えている。ワイヤーは、従来のガイドワイヤーであってもよいし、特に血管壁の内膜層および/または血管のびまん性疾患を貫通するために延びた鋭利な遠位先端部を有するワイヤーであってもよいし、および/または、当該技術で既知の他のワイヤーであってもよい。あるいは、ワイヤーは、受動的および/または能動的な可視化手段、つまり撮像手段を含んでいてもよい。
【0041】
受動的可視化システムまたは撮像システムについていうと、ある実施形態のカテーテル本体には、遠位端の近くに、透視により見えるマーカーが1つ以上含まれる。このマーカーは、2次元透視画像で見たときに、カテーテル本体の遠位端の回転方向の向き(rotational orientation)を視覚的に特定できるように構成されている。カテーテル本体は、ねじれ剛性を高めるように補強することができ、また、遠位ノーズコーンをさらに備えることもでき、この場合には、遠位口および/または側面口がそのノーズコーン内に画定されることがある。ある実施形態のカニューレの遠位端は、滑らかに湾曲するように予め形成されており、この湾曲部は、おおよそ、約15度〜135度までの範囲の弧にわたって広がっていてもよいが、この範囲に限定されるわけではない。予め形成された湾曲部は、おおよそ0.5ミリメートル(mm)〜15mmの範囲の半径を有してもよいが、この範囲に限定されるわけではない。
【0042】
カテーテルシステムのいくつかの具体的な実施形態を以下に説明するが、カテーテルシステムの使用法は、図3A〜図3Eに関連して概略的に前述されている。これらの具体的な実施形態は、例としてのみ提供するものであり、本明細書に提供するカテーテルシステムを限定するものではない。
【0043】
図4は、ある実施形態による偏向カテーテル30の遠位領域である。偏向カテーテル30は遠位端を含み、この遠位端は、少なくとも1つの遠位口32と、少なくとも1つの側面口34と、受動的偏向機構36とを有する。カテーテル30は、ガイドワイヤーのようなワイヤーの近位端に被せるように前進し、ワイヤーが偏向機構36を越え、カテーテル30の主内腔部へと戻るようにすることができる。次に、カテーテル30は、遠位先端部が内膜下空間に入ってワイヤーの遠位端に近づくまで、ワイヤー上を前進することができる。ワイヤーの遠位先端部が偏向機構36に対して近位に来るようにワイヤーの遠位端をカテーテル30の内腔部内で後退させることにより、その後ワイヤーを遠位へ前進させると偏向機構の近位面に引っ掛かって、ワイヤーが側面口34を通って横方向に偏向するようになる。ある実施形態の偏向カテーテル30は、限定はしないが、以下のような寸法に形成される。すなわち、カテーテルシャフトの内径は、おおよそ(0.254mm(0.010インチ)のガイドワイヤーが収まる)0.305mm(0.012インチ)〜(0.991mm(0.039インチ)のガイドワイヤーが収まる)1.092mm(0.043インチ)までの範囲であり、カテーテルシャフトの外径は、おおよそ0.508mm(0.020インチ)〜1.270mm(0.050インチ)までの範囲である。
【0044】
図5は、他の実施形態による偏向カテーテル40の遠位領域である。偏向カテーテル40には、少なくとも1つの遠位口42と、少なくとも1つの側面口44とが含まれる。受動的偏向機構の代わりに、偏向カテーテル40には、軸方向に移動可能なカニューレ46という形態の能動的偏向機構が含まれる。カニューレ46は、弾性のある、予め形成された遠位先端部であって、側面口44を通って前進することができる、遠位先端部(破線で図示)を含むように構成される。カニューレ46は内腔部を有し、この内腔部は、ワイヤーに案内路を提供する。ある実施形態の偏向カテーテル40は、限定はしないが、以下のような寸法に形成される。すなわち、カテーテルシャフトの内径は、おおよそ0.635mm(0.025インチ)〜1.397mm(0.055インチ)までの範囲であり、カテーテルシャフトの外径は、おおよそ0.889mm(0.035インチ)〜1.651mm(0.065インチ)までの範囲であり、カニューレの内径は、おおよそ(0.254mm(0.010インチ)のガイドワイヤーが収まる)0.305mm(0.012インチ)〜(0.991mm(0.039インチ)のガイドワイヤーが収まる)1.092mm(0.043インチ)までの範囲であり、カニューレの外径は、おおよそ0.508mm(0.020インチ)〜1.270mm(0.050インチ)までの範囲である。
【0045】
ある実施形態のカニューレ46は、ナイロン、ウレタン、ポリイミドまたはポリカーボネイトなどのポリマーで薄い層が付けられた編組ステンレススチールワイヤーの複合材料で構築されているが、これに限定はされず、医療への応用に適する他の材料から形成することもできる。カニューレ46の遠位端は、材料を斜めに切断した状態で終わっていて、針状の先端部を形成していることもあるし、あるいは、たとえばプラチナ−イリジウムを含むように形成された、鋭利で、透視で中空である(fluoroscopic hollow)金属製の先端部で終わっていることもある。あるいは、カニューレ46は、ニチノール(ニッケル−チタン)のような一様な材料から製作され、適当な形状に研ぐことによって針型の先端部で終わっていることもある。
【0046】
カニューレ46のトルク制御(torque control)を、特に非常に曲がりくねった応用においてさらに増大するために、ステンレススチールワイヤーまたは他の適当なフィラメントが、ある実施形態のカニューレ46に編み付けられる。編まれたカニューレ46には、適当なポリマー(ナイロン、ポリウレタン)で薄い膜を付けてカニューレシャフトの外面を滑らかにすることもできる。さらに、ある実施形態のポリマーは、カニューレ46をカテーテルシャフト内で移動させるときの摩擦の影響が小さくなるように親水性剤で被覆される。弾性湾曲部をカニューレ46の遠位部分内に、これらの材料に対する熱硬化方式によって据えてもよい。このような熱硬化方式は、当該技術において既知である。カニューレを構築する材料および方法によっても、ある程度の放射線不透過性、つまり、透視下で画像を生成する能力が得られる。
【0047】
カニューレ46をカテーテルシャフトから最大限伸ばすと、カニューレ46は拘束されなくなり、遠位側のカニューレ46が製造時の湾曲形状をとることができる。カニューレ46をカテーテルシャフトに最大限後退させると、2つの構成が可能である。第1の構成は、カテーテルの遠位端が湾曲した形状をとる、というものである。湾曲の程度は、カニューレの製造時の湾曲から、真っ直ぐな構成に近い何らかの形状まである。第2の構成は、カテーテルは真っ直ぐな構成をとる、というものである。
【0048】
これらの構成の各々は、カテーテルシャフトの遠位部分と、カニューレの遠位部分とを構築するのに用いる材料を選択することによって可能となる。第1の構成、すなわち、湾曲した構成を得るには、カニューレを構築するのに用いる材料をより頑丈なものとし(たとえばニチノール)、カテーテルシャフトの遠位部分を構築するのに用いる材料を比較的頑丈でないものとする(たとえば、編まれたシャフトに低デュロメーターのウレタン(low durometer urethane)の薄い層を付けたもの)。この組合せにより、カニューレをカテーテルシャフトの中へと後退させたときに、カテーテルシャフトがよりカニューレの形状に合致することができる。このような製作物(fabrications)、および製作材料は、例として提供したものに過ぎず、多くの他の製作物および製作材料により、遠位カテーテルシャフトがカニューレの形状に従うことができる。
【0049】
第2の、つまり、真っ直ぐな構成は、55Dペバックス(Pebax)のような中間のデュロメーターのナイロン(medium durometer nylon)で薄い層を付けたワイヤーブレードで、より頑丈でない、つまり、「より軟らかい」カニューレを製作し、ポリアミドで薄い層を付けたワイヤーブレードで、カテーテルシャフトを製作することにより得ることができる。カニューレシャフトがより軟らかい設計であるので、カニューレをカテーテルシャフトの中へと後退させると、カニューレは、カテーテルシャフトの真っ直ぐな構成に合致することができる。あるいは、カテーテルシャフトの遠位端は、ステンレススチール製のハイポチューブの一体化部分、または他の非可撓性材料で製作してもよい。ハイポチューブのこの部分は、同じように作用して、カニューレが後退したときに、遠位のカテーテルシャフトの真っ直ぐな構成を維持する。ここでも、これらの製作物および製作材料は、例として提供したに過ぎず、多くの他の製作物および製作材料により、カニューレの遠位領域は、後退したときにカテーテルシャフトの遠位領域の真っ直ぐな構成に合致することができる。
【0050】
図6は、さらに別の実施形態による偏向カテーテル50の遠位領域を示している。偏向カテーテル50には、内腔部と、少なくとも1つの遠位口54とが含まれる。予め形成された遠位端を有するカニューレ52は、内腔部の中を前進し、かつ後退し、また、遠位口54から出ることができるが、この実施形態はそのように限定されるわけではない。図5のカテーテルシステムについて前述したように、カニューレ52および偏向カテーテル50のカテーテルシャフトは、カニューレをカテーテルから伸ばされたときに、製造時の湾曲した形状(破線)をカニューレが取ることを可能にするさまざまな材料から製作できる。ある実施形態の偏向カテーテル50は、限定はしないが、以下のような寸法で形成される。すなわち、カテーテルシャフトの内径は、おおよそ0.635mm(0.025インチ)〜1.397mm(0.055インチ)までの範囲であり、カテーテルシャフトの外径は、おおよそ0.889mm(0.035インチ)〜1.651mm(0.065インチ)までの範囲であり、カニューレの内径は、おおよそ(0.254mm(0.010インチ)のガイドワイヤーが収まる)0.305mm(0.012インチ)〜(0.991mm(0.039インチ)のガイドワイヤーが収まる)1.092mm(0.043インチ)までの範囲であり、カニューレの外径は、0.508mm(0.020インチ)〜1.270mm(0.050インチ)までの範囲である。
【0051】
図6Aは、後退した状態で真っ直ぐな構成をとる、他の実施形態による偏向カテーテル50Aの遠位領域を示している。カニューレ52Aおよび偏向カテーテル50Aのカテーテルシャフトの材料は、カニューレ52Aをカテーテルシャフト内に最大限後退させたときに、カテーテルシステム50Aの遠位端が真っ直ぐな構成をとることを可能にする素材から製作されている。
【0052】
図6Bは、後退した状態で湾曲した構成をとる、他の実施形態による偏向カテーテル50Bの遠位領域を示している。カニューレ52Bおよび偏向カテーテル50Bのカテーテルシャフトの材料は、カニューレ52Bをカテーテルシャフト内に最大限後退させたときに、カテーテルシステム50Bの遠位端が湾曲した構成をとることを可能にする素材から製作されている。さらに、カテーテルシステムの遠位端の形状(カニューレが後退した状態で、真っ直ぐである50Aまたは湾曲している50Bのいずれか)により、カニューレとカテーテルシャフトとの間の回転によるキー固定(rotational keying)(もしあれば)の種類が決まり、また、医師/ユーザがカニューレの展開を血管の真腔に向ける助けとなるように用いる透視用マーキングの種類が決まる。
【0053】
図4、図5および図6を参照して示した3つのカテーテルシステム30、40および50は、単なる例示であり、カテーテルシステムをこれらの実施形態そのものに限定するものではない。本明細書で記載の方法で使用するために、多種多様な他の受動的偏向機構および能動的偏向機構を偏向カテーテルに設けることもできる。
【0054】
本明細書に記載のカテーテルシステムの実施形態におけるカテーテルの遠位終端部は、図示の構成に形成または成型されたカテーテルシャフトのポリマーの連続部分として製作することができる。あるいは、遠位終端部は、カテーテルシャフトの末端部に取り付けられた別個のノーズコーン構成部品を含む。ノーズコーンの取り付けに関しては、限定はしないが、ノーズコーンの近位端にある特徴部にカテーテルシャフトのポリマーを積層させることにより、カテーテルシャフトをノーズコーンに取り付けることができる。
【0055】
一方、本明細書に記載のカテーテルシステムの他の実施形態には、カテーテルシャフトに対するノーズコーンの強固かつ柔軟な接続部を提供する複合終端部を含む。図16は、ある実施形態の下、ノーズコーン1604を含む、編まれたカテーテルシャフト1602の複合遠位端終端部1600を示している。この複合終端部1600は、内部金属リング部1610(内部リング部または内側リング部1610ともいう)と、外部金属リング部1612(外部リング部または外側リング部1612ともいう)とを含み、内部金属リング部1610と外部金属リング部1612との間で積層シャフト1602の編組線(braid wire)1614が遠位で終端している。内部リング部1610および外部リング部1612は、限定はしないが、各々、長さがおよそ1〜2mmまでの範囲であり、公称厚さが約0.051mm(0.002インチ)である。内部リング部1610および外部リング部1612は、たとえば、ハンダ付け、接着および抵抗溶接のうちの少なくとも1つによって編組線1614に取り付けられている。ただし、他の適当な取り付け方法を用いることもできる。内部リング部1610および外部リング部1612を取り付けた後、筒状の編組線1614は、適当なポリマー1616および1618で薄い層を付けられ、完成したカテーテルシャフト構成部品1602を製造する。カテーテルシャフトのこのような複合終端部1600により、短くて、一体の金属製「リング部」が作り出される。ノーズコーン1604は、必要に応じて結合特徴部を備えるように機械加工され、溶接、接着およびハンダ付けのうちの少なくとも1つによってリング部に取り付けられることもできる。
【0056】
複合終端部1600は、ノーズコーン1604のカテーテルシャフト1602に対する非常に強固かつ柔軟な接続部を提供する。外側ポリマー層1618を内部リング部1610および外部リング部1612に対して終端させる1つの難題は、シャフトのポリマー1618およびリング終端部の両方が互いに丸く終端していると、その2つの素材の間にある別個の境界が、カテーテルシステムの操作中に、曲げ応力のために薄い層に剥がれやすくなりうるというものである。ある実施形態の終端部は、カテーテルシャフトの末端部において、外部リング部1612に内部テーパー部1620を含むことによって、この問題を軽減している。外部リング部1612のこのテーパー部1620により、外部リング部1612の下にポリマー1618の小さくて連続的なテーパー部が生じることができ、この境界場所においてカテーテルシャフト1602が曲げられたときに、応力を解放できるようになる。このテーパー部1620により、ポリマー1618が内部リング部1610および外部リング部1612から剥がれることが防止される。
【0057】
図7は、ある実施形態による偏向カテーテルシステム100である。図8は、ある実施形態による、後退させた構成のカニューレ114を含む偏向カテーテルシステム100の遠位領域104の断面図である。図9は、ある実施形態による、前進した構成のカニューレ114を含む偏向カテーテルシステム100の遠位領域104の断面図である。図10は、ある実施形態による、近位ハブ部112を含む偏向カテーテルシステム100の近位領域106の断面図である。
【0058】
図7、図8、図9および図10を参照すると、偏向カテーテル100は、遠位端104および近位端106を有するカテーテル本体102を備えている。カテーテル本体102は、1つの内腔部108と、カテーテル本体102の遠位端104に固定された偏向ハウジング110とを含む。アクチュエータハブ112がカテーテル本体102の近位端106に固定されており、軸方向に移動可能なカニューレ114が内腔部108に配置されている。カニューレ114の遠位長さ部分(distal length)118は、これに限定はしないが、湾曲した形状に予め形成されている。カニューレ114は、鋭利な先端部116を有し、この先端部116は、金属、硬質プラスチック、複合材料の少なくとも1つ、および/または、これらの材料の組合せを用いて形成されている。ある実施形態のカニューレ先端部116は、限定はしないが、放射線不透過性である。上記に代えてまたは加えて、マーカー120に類似の、少なくとも1つの別個の放射線不透過性マーカーが、カニューレの遠位端または遠位端近傍においてカテーテルシステムに含まれていて、透過法での画像化の下での可視化を容易にしている。回転方向に特異な放射線不透過性マーカー120がカテーテル本体102の遠位端近くに取り付けられている。マーカーは、ほぼU字形状の構成を有していて、カテーテル本体102の遠位端の回転位置が、2次元透視画像を用いてマーカーを観察したときに明らかとなるようにしている。ただし、マーカーはこれに限定はされない。
【0059】
偏向カテーテル100は、操作の際、偏向ハウジング(deflector housing)110にある側面口122を通してカニューレ114の遠位先端部を横方向に偏向させる。偏向ハウジング110には遠位口124も含まれ、図8に破線で示すように、カテーテル100をガイドワイヤーGWの近位端に被せるように導入することを可能にする。ガイドワイヤーGWは、遠位口124を通り、カニューレ114の遠位端の中に入り、カテーテル100の近位端までカニューレ114の内腔部を通る。ある実施形態では、それぞれ図8および図9に示した構成の間でカニューレ114を軸方向に後退させ、かつ前進させることで、カニューレ114の遠位長さ部分118を真っ直ぐにし、かつ偏向させる。図5について前述したのと一致して、カテーテルシステムの別の実施形態は、カニューレを後退させたときにある程度湾曲した状態を維持するカテーテルシャフトを含む。
【0060】
図10を参照すると、アクチュエータハブ112は、同軸である一対の入れ子式管130および132を備えている。外側入れ子式管132は、カニューレ114の近位端に、たとえば粘着性物質134を用いて接続されている。近位付属品(proximal fitting)136が管132の近位端にさらに取り付けられていて、カニューレ114、管132および付属品136の組立体が一体として、ハブ112の近位端にある止血付属品(hemostatic fitting)140内を一緒に移動するようになっている。ハブ112には回転付属品(rotational fitting)142がさらに含まれ、この回転付属品142により、カテーテル本体102をハブ本体に対して回転させることができる。カニューレ114およびカテーテル本体102は、相対回転を制限および/または防止するように、互いに回転方向に連結またはキー固定されている。ある実施形態のカニューレ114およびカテーテル本体102は、ハブ内および/または遠位端の近くでのキー固定を利用して連結されており、カテーテルを血管内で回して位置付けるときに、カテーテル本体102の回転により、カニューレ114が同様に回転するようになっている。内腔部108またはカテーテル102を通して灌流および/または注入ができるように、側口148がハブ112に設けられている。
【0061】
図10Aおよび図10Bは、ある実施形態による、不注意によるカニューレの展開を防止するロック機構を備えた近位駆動ハンドル1000の断面図である。ある実施形態の駆動ハンドル1000には一体式ロック部1004を備えたスライド機構1002が含まれ、このスライド機構1002は、ハンドル本体1006の真っ直ぐなスロット内を移動する。スライド部1002は、この実施形態ではカニューレ1010である作用要素1010に取り付けられている。スライド機構を近位および遠位へ動かすと、作用要素1010が前進1030および後退1040する。スライド1002を最大限後退させると、バネ仕掛け1008となっているロック機構1004が作動し、ロック部1004の遠位端が、スライド部が移動するハンドル本体1006におけるスロット部の遠位端の中へと自動的に傾く。その後、スライド部1002および作用要素1010を遠位へ前進させるのは、ロック部1004の近位端を押し下げ、これによりロック部1004の遠位端をハンドル本体1006のスロット部から解放するときに可能になるにすぎない。このようなロック機構1004を用いることにより、カテーテルシステムを血管構造内に通している間に、作用要素1010が不注意で展開することが防止される。止血付属品のような構成部品およびキー固定も、図10に関して前述したように含むことができる。
【0062】
カテーテルシステムの構成部品のキー固定は、前述したように、カテーテルの近位端および遠位端の両方でさまざまな手法で行うことができる。カテーテル100の近位端でのキー固定は、さまざまな方法で行うことができる。図11Aおよび図11Bは、回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステム100の近位領域104の断面図で示している。一例として、ある実施形態のカテーテル1102の入れ子式管130および132は、楕円形断面を有する非対称でかみ合う周縁形状を含む。同様に、別の実施形態におけるカテーテル1112の入れ子式管130および132は、三角形断面を有する非対称でかみ合う周縁形状を含む。これらの形状は例示に過ぎず、本明細書に記載のカテーテルシステムをこれらの形状に限定するものではない。
【0063】
カテーテル100の遠位端でのキー固定も多くの方法で行うことができる。図12は、回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステム100における遠位領域の断面図で示している。たとえば、カテーテル本体102は非対称な内腔部108を含むことができる。カニューレ114は、たとえば、この例ではD字形状の断面である、かみ合う断面を利用する。カテーテル本体102内でのカニューレ114の相対的な回転を制限する能力により、カニューレ先端部116が側面口112を通って現れるときに、カニューレ114の湾曲遠位長さ部分118は、適切に方向付けられる(半径方向外側に向けられる)ことが保証される。
【0064】
図8および図9を参照すると、使用時には、カニューレ114を後退させている間に、カテーテル100をガイドワイヤーGW上で前進させる。カテーテルを適切に位置付けたら、ガイドワイヤーをカニューレ先端部116に対して近位へ数センチメートル後退させ、カニューレ114を遠位へ前進させることができる。遠位への前進は、カニューレがカテーテル本体102の内腔部108内を前進するように、スリーブ132/ハブ136をハブ112の本体に対して前方へ進めることにより行われる。カニューレを前進させる前に、側面口122が血管腔の方へ向くようにこの側面口122を適切に位置付ける。側面口122を位置付けることには、ある実施形態では、回転ハブ142を使ってカテーテル本体102を回すことが含まれる。医師/ユーザは、側面口122が適切な方向に、たとえば半径方向内側に向けられるようにマーカー120を観察する。カニューレを血管内に前進させた後、ガイドワイヤーGWを内腔内に前進させることができる。その後、カニューレ114が近位へと引き戻され、また、その後カテーテル組立体全体がガイドワイヤーの上から回収され、他の介入カテーテルおよび/または診断用カテーテルを導入するために、ガイドワイヤーがその場に残される。
【0065】
カテーテルシステムの遠位端が、カニューレをカテーテルシャフト内に後退させたときに真っ直ぐな構成をとる場合には、キー固定および透視用マーカーの選択肢は非常に多い。図7について前述したように、カテーテルシャフトの遠位端は、カニューレの展開方向を透視用標識120によって特定することができる。カテーテルシステムにおけるこの能力を支援するために、ある実施形態のカニューレおよびカテーテルシャフトは、本明細書に記載のように、互いにキー固定される。カニューレが後退した状態では、カニューレの「湾曲部」は真っ直ぐになり、カニューレの透視画像は展開方向を示さない。このため、真っ直ぐになった「湾曲部」は、展開したときにカニューレが取る方向を示すのに用いるカテーテルシャフトマーカーに、回転してついて行く(キー固定されている)。この回転方向のキー固定(カニューレ湾曲部のカテーテルシャフトのマーカー120に対する整合)は、カテーテルの製造中に設定される。
【0066】
別の実施形態において、透視マーカー120の特徴部(features)は、カテーテルのノーズコーン、すなわち、カテーテルシャフトの遠位終端部の中に直接組み込まれる。カテーテルシャフトおよびカニューレのキー固定もまた前述のように組み込まれる。
【0067】
別の代替実施形態では、カニューレがシャフトと同様のマーキングシステム120を含むことができる。カニューレのマーカーは、カニューレの展開方向を直接的に示すので、カテーテルシャフトとカニューレとの間でキー固定は用いられず、カテーテルシャフトに方向を示すマーキングも使用しない。ただし、この実施形態はこれに限定はされない。
【0068】
さらに別の代替実施形態は、カテーテルシャフトのマーカーとカニューレのマーカーとを組み合わせたものを含む。この実施形態では、カニューレは方向を示す(展開)マーキングを含むので、カテーテルのマーカーは方向を示すものではなく、カテーテル遠位端の場所を示す。簡単な透視用ノーズコーンまたはリングがこの種のマーキングには十分である。
【0069】
カニューレをカテーテルシャフト内に後退させた場合に、カテーテルシステムの遠位端が湾曲した構成をとるときにも、キー固定と透視マーカーとの多くの選択肢がある。ある実施形態では、本明細書で記載したような非指向性透視マーカーが遠位カテーテルシャフトまたは遠位カニューレのいずれかに用いられる。キー固定は含まれない。これは、後退位置にあるカニューレの湾曲により、カテーテルシャフトの遠位部分がカニューレの展開方向に自動的に傾くからである。
【0070】
別の実施形態では、指向性マーカー120が、展開方向を示すためにカニューレの上/中に含まれ、カテーテルシャフトの遠位端の方向を示す湾曲と協調して作用する。キー固定は、この実施形態には含まれない(図6b)
【0071】
別の代替実施形態は、カテーテルシャフトの遠位端の方向を示す湾曲と協調して利用するために、カテーテルに指向性マーカーを含む。前述したように、この実施形態にはキー固定が含まれる。
【0072】
さらに別の代替実施形態は、本明細書に記載のマーキングの仕組み(marking schemes)のうちの1つ以上の組合せを含む。一般に、カテーテルシャフトに指向性のマーキングを用いたときには、常にキー固定を利用し、カテーテルシャフトのマーカーをカニューレの湾曲部が展開する方向に整合させる。
【0073】
上述した、多数の受動的可視化システムに加え、本明細書に記載のカテーテルシステムのさまざまな実施形態は、能動的な実装式可視化システム(active onboard visualization systems)および方法を含むことができる。実装式可視化システムの一例は、回転式超音波システムとして、米国特許第4,951,677号および第5,000,185号に記載されている。ただし、本明細書に記載のカテーテルシステムで用いる実装式可視化システムは、これに限定されない。
【0074】
一方、カテーテルシステムのある実施形態は、医師/ユーザをカテーテルシステムの位置付けにおいて補助するために、完全閉塞部において、または完全閉塞部の近くに、超音波撮像手段または他の撮像手段を提供する。ある実施形態においてガイドワイヤーは、ワイヤーが完全閉塞を通過して前進するときに閉塞物質の有無を検出するように、少なくとも1つの超音波撮像構成部品または装置を含む。別の実施形態では、偏向カテーテルがこのような超音波撮像手段を、たとえば偏向カテーテルの遠位先端部近くに位置するフェーズドアレー(phased array)という形態で含む。米国特許第4,917,097号および第5,368,037号には、偏向カテーテルで使用するためのフェーズドアレーシステムが記載されている。ただし、本実施形態はこのような可視化システムに限定されない。
【0075】
図13は、ある実施形態によるカテーテルシステム1300であり、カテーテルシステム1300は、カテーテルシャフト1302を含み、カテーテルシャフト1302は、遠位端口1304と、近位フェーズドアレー超音波装置1310とを有する。フェーズドアレー超音波装置1310は、カテーテルシャフト1302の遠位端にあるカテーテルシステム1300のノーズコーン1306の内部および/または上に含まれているが、カテーテルシステム1300の他の構成部品の内部/上に含まれることもできる。カテーテルシャフト1302を回すと、フェーズドアレー超音波装置1310が周囲組織の画像を生成し、その画像が血管の真腔を確認するのに用いられる。血管の真腔が正確に確認されたら、カニューレ(不図示)がカテーテルシャフト1302の内腔部1308の中を前進する。カニューレは、超音波画像で確認された通りに、血管の真腔の方向へ出るようにキー固定される。あるいは、回転式撮像用カテーテルシステムまたはその機能構成部品が、周囲組織を撮像できるカテーテルの遠位部位まで、必要に応じて、カテーテルシステムの内腔部内、または、カテーテルシステムのカニューレ内のいずれかに前進する。
【0076】
ある実施形態の可視化システムは、限定はしないが、超音波撮像用ガイドワイヤーを含む。たとえば、米国特許第5,095,911号には超音波撮像ガイドワイヤーが記載されている。ただし、本実施形態は、この特定の撮像用ガイドワイヤーに限定されない。さらに別の代案として、撮像用ガイドワイヤーは、ガイドワイヤーおよびカテーテルの方向とは逆方向に完全閉塞の領域まで前進することもできる。このように、撮像用ガイドワイヤーを完全閉塞の中を前進させる必要がなく、それでも、カテーテルおよび/またはガイドワイヤーの前進を検出することができ、特に、カテーテルおよび/またはガイドワイヤーに超音波不透過性構成部品が設けられている場合に検出することができる。さらに別の代案では、超音波撮像用カテーテルまたはガイドワイヤーが動脈の閉塞部位近傍の静脈内に位置付けられ、ガイドワイヤーがその閉塞領域の中を前進する間、閉塞した領域全体の撮像が可能になる。
【0077】
一般に、超音波可視化システムは、少なくとも2つの方法のもとで使用することができる。第1の方法のもとでは、回転式超音波カテーテルシステムまたはその機能構成部品が、周囲組織を撮像するのに適したカテーテルシャフトの遠位領域まで、初めにカテーテル内腔部内で前進する。一例として、超音波構成部品をカテーテルの遠位端の向こう側へ前進させることがある。図14Aは、ある実施形態による、周囲組織を撮像するためにカテーテルシャフト1406の遠位端1404の向こう側に展開された超音波可視化システム1402を示している。
【0078】
別の例として、超音波構成部品は、カテーテルシャフトの遠位領域まで送られながらも、カテーテル内に収容されたままにすることもできる。図14Bは、カテーテルシステムのノーズコーン1412内の窓部1410から周囲組織を撮像するように展開された、ある実施形態による超音波可視化システム1402を示している。窓部は、限定はしないが、ポリエチレンのような、超音波システムの作動周波数で音響透過特性を有するポリマーから形成することができる。
【0079】
撮像をするのに適切な場所まで超音波システムを前進させた後、カテーテルをいろいろな方法にしたがって血管の真腔に整合させる。カテーテル整合の第1の方法のもとでは、カテーテルの遠位端にある特徴部、たとえば、観察窓部のようにノーズコーンに機械加工された特徴部等が超音波撮像により確認され、側面口または遠位口を真腔に整合させるのに用いられる。超音波システムがその後引き抜かれ、キー固定されたカニューレシステムがカテーテル内腔部内で前進し、観察窓部および真腔の方向に出る。
【0080】
カテーテル整合の第2の方法のもとでは、カテーテル整合の第1の方法で記載したのと同様の超音波システム/構成部品を用いてカテーテルの出入口を血管の真腔に整合させる。ただし、(前述したように)血管の真腔とカニューレを整合するためにキー固定機構に頼る代わりに、カテーテルの超音波構成部品が透視用整合特徴部として利用される。このように、超音波構成部品を用いてカテーテルの出入口を血管の真腔に整合させたら、同じ特徴部が、透視による整合を提供し、血管の真腔の方向を示す。指向性透視マーカー付きのカニューレが次にカテーテル内を前進し、透視によりカテーテルマーカーと整合し、血管の真腔へと展開を誘導する。
【0081】
超音波可視化システムが使用される第2の方法には、回転式超音波カテーテルシステムまたはその機能構成部品をカニューレ内で前進させることが含まれる。図15は、周囲組織を撮像するために、カテーテルシャフト1506のカニューレ1504内に展開された、ある実施形態による超音波可視化システム1502を示している。この方法のもとでは、遠位口から外に延びる超音波システムで撮った画像、または、カテーテルシャフトの遠位端にある側面窓部を通して撮られた超音波画像のいずれかによって、血管の真腔をまず確認するのに超音波撮像が利用される。さらに、超音波撮像システムを若干後退させて、カニューレシャフトまたは先端部にある、カニューレの展開方向を示す特徴部を確認してもよい。次にカニューレは、確認されたカニューレの特徴部を血管の真腔と整合させるために、適宜、回転することができる。次にカニューレは、血管の真腔へのアクセスを得るように展開される。
【0082】
ある実施形態の偏向カテーテルシステムは、リエントリ・カテーテル(re-entry catheter)を含む。リエントリ・カテーテルの一例は、カリフォルニア州、レッドウッドシティのLuMend(登録商標)から入手可能なOutback(登録商標)LTDリエントリ・カテーテルである。リエントリ・カテーテルは、内腔が1つだけのカテーテルで、ガイドワイヤーおよびカテーテルの血管構造内での配置、および位置付けがしやすくなるように構成されている。ある実施形態では、ガイドワイヤーおよびカテーテルが末梢血管構造内に配置され、かつ位置付けられるが、末梢血管構造に限定されるわけではない。より具体的には、リエントリ・カテーテルにより、内膜下空間から末梢動脈の真腔へガイドワイヤーを再び入れることが可能になる。
【0083】
ある実施形態のリエントリ・カテーテルは、限定はしないが、概して、カテーテルシャフトまたはカテーテル本体であって、遠位端にカテーテルノーズコーンを備え、近位端にコントロール・ノブ付きの展開ハンドルを備えた、カテーテルシャフトまたはカテーテル本体を含む。リエントリ・カテーテルは、カニューレおよび/もしくはガイドワイヤーを含むガイドまたはガイドシステムを含み、かつ/あるいは、そのガイドまたはガイドシステムとともに作用する。同心の内腔部がハンドルから延び、カテーテルシャフトを通り、そしてカテーテルノーズコーンを通って出ている。内腔部は、カニューレ先端部および/またはガイドワイヤーを有するカニューレを受け入れて通すように構成されている。用語「作用要素(working element)」は、カニューレ、ガイドワイヤー、または、ガイドワイヤーと組み合わせたカニューレをいうのに本明細書では使用される。カニューレおよびカニューレ先端部を通って延びる同心内腔部が、ガイドワイヤーを受け入れ、通すように構成されている。
【0084】
ハンドルの展開用スライド部を近位へ引くと、カニューレ先端部が遠位の側面口内に同軸に位置付けられ、カテーテルおよびカニューレがガイドワイヤー(たとえば0.356mm(0.014インチ)のガイドワイヤー)上をたどることができる。対象の血管部位、つまり、所望の血管部位に来たら、カテーテルを(たとえば透視による)可視化によって整合し、ハンドルの回転用ルアーを回すことで位置付けて、カテーテルの側面出口を、ノーズコーンに位置するカテーテル指向性マーカーバンドによって整合する。所定位置についたら、ガイドワイヤーをカニューレの中へと後退させ、必要に応じて湾曲したカニューレ先端部をカテーテル側面口から前進させて、対象となっている血管の場所にアクセスすることができる。ある実施形態におけるカニューレの湾曲部は(たとえば透視で)視認でき、リエントリ工程の間の進入点を示すことができる。ガイドワイヤーは、カニューレ先端部から対象となっている血管部位内まで延びるように前進する。カニューレ先端部は、その後、カテーテルの側面口の中へと引き戻され、そして、カテーテルを近位へ後退させ、ガイドワイヤーを血管構造内の所定位置に残す。リエントリ・カテーテルの操作は、以下に詳述する。
【0085】
リエントリ・カテーテルの一例として、図17は、ある実施形態によるリエントリ・カテーテル1700を、伸ばした構成で示している。リエントリ・カテーテル1700は、展開用ハンドル1702(ハンドル)と、回転式止血弁(RHV)と、カテーテルシャフト1704と、カテーテルノーズコーン1706と、カニューレとを含み、カニューレはカニューレ先端部1708を有する。展開用ハンドル1702の一例は、図10に関連して前述している。ある実施形態のカテーテルシャフトは、長さが約120cmであるが、この長さに限定はされない。カニューレ(不図示)は、カテーテルシャフトの内側内腔部に位置付けられており、近位端に、ガイドワイヤーを受け入れるためのカニューレワイヤーポート1710を含む。カニューレは軸方向に動かすことができる。同心のガイドワイヤー内腔部(不図示)が、ハンドル1702からカニューレおよびカニューレ先端部1708を通って延び、カテーテルノーズコーン1706を通って外に出ている。リエントリ・カテーテル1700は、展開用スライド部解放ボタン1712、フラッシュポート(flush port)1714、および、このリエントリ・カテーテルが使用される医療処置に適する他の構成部品を含むこともできる。リエントリ・カテーテル1700は、限定はしないが、おおよそ60cm〜160cmまでの範囲の作業長(working length)を有し、2.55mm(8フレンチ)〜1.27mm(4フレンチ)のシースに適合する。リエントリ・カテーテル1700と適合するガイドワイヤーとしては、0.254mm(0.010インチ)〜0.965mm(0.038インチ)の同軸ガイドワイヤーが含まれる。
【0086】
ある実施形態のカニューレは、おおよそ22ゲージ(gauge)の外径を有し、限定はしないが、ニッケル・チタン(ニチノール)のような形状記憶合金を含む材料から形成された、予め形成された湾曲リエントリ・カニューレである。カニューレは、放射線不透過性材料(radio-dense material)(たとえば金、白金、タンタル、ならびに/または、人体での使用および採用している手技での使用に適した他の材料もしくは金属)で覆ってもよく(たとえばメッキする(plated)、付着させる等)、ある実施形態のカテーテルシャフト1704にキー固定してもよいが、これに限定はされない。使用する場合、カニューレのカテーテルシャフト1704に対するキー固定の例は、限定はしないが、図11および図12について前述してある。カニューレは、鋭利な先端部を有し、この先端部は、金属、硬質プラスチック、複合材料のうちの少なくとも1つ、および/または、これらの材料の組合せを使って形成される。ある実施形態のカニューレ先端部には、限定はしないが、放射線不透過性材料が含まれていることがある。これに代えて、または加えて、少なくとも1つの独立した放射線不透過性マーカーが、カニューレの遠位端またはその近くにおいてこのカテーテルシステムに含まれ、透視法による画像化の下で可視化を容易にすることもできる。
【0087】
伸ばした構成では、カニューレ、およびカニューレ先端部1708またはガイド先端部が、リエントリ・カテーテル1700の遠位領域にある出入口を貫通している。図18は、ある実施形態によるリエントリ・カテーテル1700の遠位部分1750を示している。遠位部分1750は、カテーテルシャフト1704の遠位端に連結されたカテーテルノーズコーン1802を含む。カテーテルノーズコーン1802は、遠位ハウジング1812と、ノーズコーン組立体1822とを含む。カテーテルノーズコーンは、以下に詳述するように、LT指向性マーカーバンド1840をも含む。カニューレ1830は、リエントリ・カテーテル1700から展開されたときには、カテーテルノーズコーン1802の側面口1804または側面出口を通って延びる。これは、カニューレ1830の遠位端がカテーテルノーズコーン1802から出るからである。ある実施形態のカニューレ1830は、ガイドワイヤー1850を展開するように構成されている。
【0088】
図19は、ある実施形態による、後退させた構成のリエントリ・カテーテル1700を示している。後退させた構成では、カニューレ1830がカテーテルシャフト1704内へと引っ込められ、カニューレ先端部(不図示)は、カテーテルノーズコーン1706の出口を通って突出しないようになっている。
【0089】
図20Aは、ある実施形態によるカテーテルノーズコーン1802の遠位ハウジング1812の斜視図である。遠位ハウジング1812は、ノーズコーン組立体(不図示)とともにカテーテルノーズコーンを形成する。遠位ハウジング1812は、カテーテルシャフト(不図示)の遠位端または遠位領域に連結または接続される近位領域2002を含む。遠位ハウジングの遠位領域2004は、前述したように、側面口1804をも含む。
【0090】
図20Bおよび図20Cは、ある実施形態による遠位ハウジング1812の側面断面図である。図示の寸法は全てインチ表示である。遠位ハウジング1812は、内腔部2010を含み、内腔部2010は、側面口1804および遠位口2012とつながっている。遠位ハウジングの内腔部2010の近位領域2010Pは、カテーテルシャフトの内腔部(不図示)の遠位領域に連結されており、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを受け入れ、通すように構成されている。遠位ハウジングの内腔部2010の中間領域2010Mは、内腔部の近位領域2010Pを側面口1804に連結しており、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを受け入れ、通すように構成されている。内腔部の中間領域2010Mはまた、受動的偏向機構である湾曲領域を含むように構成されている。受動的偏向機構は、操作中は、カニューレおよび/またはガイドワイヤー(不図示)の遠位先端部を、遠位ハウジング1812の側面口1804に通して横方向に偏向させる。
【0091】
内腔部の中間領域2010Mは、遠位ハウジングの内腔部2010の遠位領域2010Dにも連結されている。内腔部の遠位領域2010Dは、断面積が内腔部の近位領域2010Pおよび中間領域2010Mよりも相対的に小さい。相対的に断面積が小さいことにより、遠位領域2010Dは、ガイドワイヤーを遠位口2010に通すのに対応できるが、より大きなカニューレの通過を妨げる。遠位口2012は、ガイドワイヤー(不図示)の近位端の上にリエントリ・カテーテルを導入することを可能にしており、ガイドワイヤーは、カテーテルの近位端まで、ノーズコーン組立体と、遠位ハウジングの遠位口と、カニューレの内腔部とを通る。
【0092】
ある実施形態のリエントリ・カテーテルは、リエントリ・カテーテルを患者の血管構造内に置く、および/または位置付けるのに使用するマーカーを含む。マーカーは、本明細書ではLT指向性マーカーバンドともいい、ある実施形態のカテーテルノーズコーンのノーズコーン組立体(図18の要素1822)に位置しているが、リエントリ・カテーテルの1つ以上の他の部分に位置することもできる。LT指向性マーカーバンドは、円形の構成をした第1部分2110を含む。第1部分2110は、カテーテルノーズコーンの内腔部(不図示)を収めるための開口部2111を含む。第1部分2110は第2部分2112に接続されており、この第2部分2112は、第1部分2110から外へと延びていて、第1部分2110を含む面に対してほぼ直交するように向けられている。LT指向性マーカーバンドは、限定はしないが、マーカーの第1部分2110が第2部分2112に対して遠位となるように、側面口に対して遠位に、ノーズコーン組立体に位置付けられている。
【0093】
図21Aは、ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの第1側面図2101である。第1側面図2101は、LT指向性マーカーバンドを、後述するように、カニューレ先端部を対象の組織部位に向けて設置する際に使用するために「L」字形状として表している。図21Bは、ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの第2側面図2102である。第2側面図2102は、第1側面図2101の位置から90度回転させた場合のLT指向性マーカーバンドの図である。第2側面図2102は、LT指向性マーカーバンドを、後述するように、カニューレ先端部の場所を対象の組織部位に対して調整する際に使用するために「T」字形状として表している。図21Cは、ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの端面図2103である。全ての寸法はインチ表示である。
【0094】
リエントリ・カテーテルは、前述したように、カテーテルおよびガイドワイヤーを血管構造内に置くこと、および位置付けることを容易にするように構成されている。より具体的には、リエントリ・カテーテルは、血管構造の慢性完全閉塞を横断しやすいように構成されている。図22は、ある実施形態による、リエントリ・カテーテルを使って閉塞を横断するための流れ図2200である。医師/ユーザまたは他の臨床医(本明細書ではユーザという)は、リエントリ・カテーテルを患者の血管構造にガイドワイヤーを使って位置付け(2202)、カテーテルの出口を血管の所望の対象部位に向ける(2204)。ユーザは、ガイドワイヤー先端部をリエントリ・カテーテルの中へと後退させる(2206)。カニューレ先端部がカテーテルの側面口から伸ばされ、血管の対象部位で位置付けられる(2208)。ユーザは、ガイドワイヤーをカニューレ先端部に通して前進させて血管の対象部位で位置付ける(2210)。ユーザは、ガイドワイヤー上でカテーテルを後退させ、その後の治療措置に備えてガイドワイヤーを同じ場所に残す(2212)。
【0095】
ガイドワイヤーを血管構造内に置く、および/または位置付けるために、ある実施形態におけるリエントリ・カテーテルの使用準備をする場合、医師または他の臨床ユーザは、ハンドルの展開用スライド部をしっかりと止まるまで近位へ後退させることによって、カニューレの先端部を最大限後退させる。患者の体に挿入する前に、ユーザは、カニューレ先端部がカテーテルの側面口内に完全に後退していること、および、ハンドルの展開用スライド部が最も近位の位置にロックされていることを確実にする。
【0096】
ユーザは、ガイドワイヤー(たとえば、0.356mm(0.014インチ)のガイドワイヤー)をカテーテルに、カテーテルノーズコーンの遠位端口を通して逆方向に詰め込み(back-loads)、カテーテルおよびガイドワイヤーを適当な経皮的技法を用いて血管構造内に導入する。ガイドワイヤーが既に血管構造内に置かれている場合には、ガイドワイヤーは、カテーテルノーズコーンの遠位端口を通してカテーテルに逆方向に詰められる。ガイドワイヤーを逆方向に詰め込む前に、ユーザは、確実に、カニューレ先端部がカテーテルシャフト内に完全に引き戻されているようにする。カテーテルの前進、操作、回収は、高品位透視誘導下で行われるが、リエントリ・カテーテルの構成に適する他の種類の誘導を用いることもできる。ガイドワイヤー上をカテーテルにたどらせている間、ユーザは、カニューレ先端部がカテーテルの側面口内に完全に後退していること、および、ハンドルの展開用スライド部が最も近位の位置にロックされていることを確認しなければならない。
【0097】
カテーテルを患者の血管構造内に導入する際、ユーザは、所望の血管部位までガイドワイヤー上をカテーテルにたどらせる。カテーテルは、送達の間、必要に応じてハンドルのRHVでトルクを与えられる。カテーテルの操作/送達中に強い抵抗を感じたら、ユーザは、処置をさらに続ける前に、抵抗の原因を確認しなければならない。たとえば、3〜4ミリメータのバルーンを使って、カテーテル送達軌道に沿った抵抗地点を必要に応じて広げることが考えられる。
【0098】
所望の血管部位の近くである場合、リエントリ・カテーテルは、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを展開する前に、位置付けられる。前述したように、リエントリ・カテーテルの遠位ハウジングは、カテーテルの位置を特定(locating)、調整するのに使用し、かつ、作用要素を展開するのに使用するLT指向性マーカーバンドを含む。LT指向性マーカーバンドは、通常、側面口の位置を特定し、調整するのに利用され、この側面口を通してカニューレおよび/またはガイドワイヤーが血管構造における対象の再入部位(re-entry site)に対して展開される。図23は、ある実施形態のもとで、如何にしてLT指向性マーカーバンドが、リエントリ・カテーテルの側面口の位置を特定し、調整するのに利用されるかを示している。LT指向性マーカーバンドの「L」字形状2302は、展開したときに側面口、そしてそれ故にカニューレ先端部を対象の再入部位に向けて位置させるのに利用される。LT指向性マーカーバンドの「T」字形状2304は、側面口の位置を、そしてそれ故に展開するカニューレ先端部の場所/方向を対象の再入部位に対して調整または微調整するのに利用される。したがって、LT指向性マーカーバンドを利用する臨床医は、LT指向性マーカーが「L」字形状2302で現れるようにリエントリ・カテーテルを回転させることにより、側面口の向いている方向を特定または識別する(2312)。「L」字形状2302の下側水平部分の方向は、カニューレ先端部の展開方向を示す。臨床医は、LT指向性マーカーバンドが「T」字形状2304に見える(2314)ようになる方向にカテーテルを回すこと(2313)でカニューレ先端部の展開位置を微調整する。したがって、マーカーが方向を示す能力(directional capability)により、超音波誘導を用いることなくたとえば抹消動脈の真腔内にガイドワイヤーを置くことが可能になる。
【0099】
LT指向性マーカーバンドは、処置の間、以下のように利用される。所望の血管部位の近くの領域にきたら、ユーザは、透視を利用して可視化した場合に、リエントリ・カテーテルの遠位ハウジングが対象の再入部位(たとえば真腔)の近傍に位置するように、リエントリ・カテーテルを向ける(たとえば回転させる)。カテーテルの側面出口は、RHVを回すことによって、所望の血管の対象部位の方に向けられる。透視誘導を用いて、ユーザは、カテーテルのLT指向性マーカーバンドにある「L」字マーカーの足部の位置を、初期透視画像を利用して対象となる再入部位(たとえば真腔)に向けて位置付けるように、遠位ハウジングを向ける。
【0100】
最初の場所および向きが確認されたら、直交する透視画像(たとえば、先ほどの透視画像に対して90度回転させた位置からの画像)を撮って、リエントリ・カテーテルの遠位ハウジングが、可視である「L」字マーカーの足部によって示されたように、対象の再入部位と「一列に並ぶ(in line)」ように位置付けられていることを確認する。次にユーザは、RHVを回すことによって、カテーテルの側面出口を所望血管の対象部位の方へ向ける。ユーザは、初期の向きのこのような調整を、透視誘導下で、ノーズコーンにあるカテーテルのLT指向性マーカーバンドが「T」字に見えるようになるまで、RHVを回すことで行う。さらに向きを調節することが必要である場合、これは、RHVを回すことで行うことができる。確認用の画像(たとえば直交画像)は、処置に適切なようにカテーテルを再入対象に向けて新たに調整する度に検討すべきである。
【0101】
前述したように、リエントリ・カテーテルを適切に位置付けるために遠位ハウジングの位置を特定し、調整することが完了したら、ユーザは、カテーテルシャフトに蓄積させた全てのトルクを解放する。ユーザは、ハンドル展開スライド部を作動させる前に、カテーテルのLT指向性マーカーバンドのスロットが所望の血管の場所(対象部位)の方へ向いていることを確実にし、透視誘導を利用してガイドワイヤーの位置を確認しながら、ガイドワイヤー先端部をカテーテルの中へ約5cm後退させる。ハンドル展開スライド部解放ボタンを押し下げてスライドを適当に少しずつ進め、カニューレ先端部をカテーテル側面口から伸ばし、つまり、展開して、血管の対象部位に位置付ける。
【0102】
ガイドワイヤーは、展開されたカニューレ先端部の中を前進し、このカニューレ先端部を血管の対象部位に望み通りに位置付ける。ガイドワイヤーを遠位へと進めた後に、ガイドワイヤーを後退させることが求められ、抵抗を受けた場合、最初にカニューレ(ガイド)をカテーテル内へ最大限後退させ、続けてガイドワイヤーを後退させる。ガイドワイヤーを前進させ、配置した後、ハンドル展開スライド部をしっかりと止まるまで最大限後退させることにより、カニューレ先端部をカテーテル内へ引っ込め、そして、ハンドル展開スライド部のボタンを解放して、展開スライド部を後退位置にロックする。ユーザは、ガイドワイヤー上のカテーテルを回収する前に、カニューレ先端部がカテーテル側面口内へ完全に後退していること、および、ハンドル展開スライド部がロックされていることを確実にしなければならない。次にカテーテルをガイドワイヤー上で後退させ、ガイドワイヤーは、1つ以上のその後の治療処置のためにその場に残す。
【0103】
ある実施形態のリエントリ・カテーテルは、リエントリ・カテーテルの遠位領域を固定するためのアンカリング装置またはシステムを含むことができる。カテーテルのアンカリングシステムとしては、生物分解性ジェル/接着剤、バルーン、ワイヤーメッシュ/ネット、固定用ワイヤー、および/または、伸ばされたカテーテル先端部の利用が含まれる。これらのアンカリングシステムの各々を以下に詳述する。
【0104】
ジェル式のアンカーは、カテーテルとホスト動脈(host artery)の周りの内膜下層における空間または隙間を充填するのに生物分解性ジェルまたは接着剤を使用する。カテーテルは、ガイドワイヤーをたどって内膜下空間に入れられ、再入点に適切に位置付けられる。生物分解性ジェルは、内膜下層にカテーテルを介して近位端から送り込まれる。ジェルは、いったん送り込まれると、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを用いた再入処置の間、カテーテルを安定させる。カテーテルが安定したら、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして再入処置が続けられる。
【0105】
バルーンアンカーは、さまざまな材料から形成された隙間充填バルーンを使用して、カテーテルおよびホスト動脈の周りの拡張された内膜下空間を充填する。カテーテルは、ガイドワイヤーをたどって内膜下空間に入れられ、再入点に対して適切に位置付けられる。カニューレは、真腔に再入するために側面口から展開される。カテーテルの遠位端が不安定であるために再入が上手く行かない場合、バルーンを内膜下空間の構成に適する量だけ膨らませる。適切に膨張させたバルーンは、カテーテルの遠位領域を囲む内膜下空間の大きさを小さくし、これにより、カテーテルの遠位領域を安定化させる。カテーテルが安定になったら、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして再入処置が続けられる。バルーンは、真腔への再入が成功した後に収縮させる。
【0106】
ワイヤーメッシュまたはネットアンカーは、ゆったりした空間、つまり、内膜下層の大きな切開面を充填するのにメッシュまたはネットを用いる。カテーテルは、ガイドワイヤーをたどって内膜下空間に入れられ、再入点に対して適切に位置付けられる。カニューレは、真腔に再入するために、側面口から展開される。カテーテルの遠位端が不安定なために再入がうまく行かない場合、メッシュが、カテーテルの近位端および内腔部を介して内膜下層に導入される。メッシュを導入するとカテーテルの遠位領域の周囲の内膜下空間の大きさが小さくなり、これにより、カテーテルの遠位領域を安定化させる。カテーテルが安定になったら、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして再入処置が続けられる。メッシュは、真腔への再入が成功した後、カテーテル内に後退させられる、つまり、引き戻される。
【0107】
アンカリングワイヤーは、適当な材料(たとえば、金属、ポリマーなど)から作られたワイヤー、コイル、および/または、尖った器具(prongs)を使って内膜下空間にある組織および/または筋肉を押圧する。組織に対する圧力により、カテーテルは、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを展開している間、安定になる。カテーテルが安定になったら、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして再入処置が続けられる。アンカリングワイヤーは、真腔への再入が成功した後、カテーテル内に後退させられる、つまり、引き戻される。
【0108】
伸ばしたカテーテルの先端部を利用するアンカリングでは、対象の内腔と、対象の再入部位を越えたところの組織との間に隠れる(submerges)、伸ばされた先端部を提供する。カテーテルを対象の再入部位までたどらせ、おおよそ位置付けられたら、ノーズコーンの側面口を越えて延びる、伸ばされた先端部は、内腔部と血管構造組織との間に閉じこめられる。結果として、伸ばした先端部は、血管構造の解剖学的構造を利用してカテーテルの遠位領域を安定化、つまり、保持する。その後、再入処置は、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして続けられる。
【0109】
ある実施形態のカテーテルシステムとしては、血管構造に使用するためのカテーテルシステムが含まれる。ある実施形態のカテーテルシステムは、本体内腔部を含むカテーテル本体を備える。ある実施形態のカテーテルシステムは、カテーテル本体の遠位端に連結されたノーズコーンを含む。ある実施形態のノーズコーンは、ノーズコーン内腔部と、側面口と、遠位口とを含む。
【0110】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の近位部分は、本体内腔部とつながっている。
【0111】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の中間部分は、側面口および近位部分とつながっている受動的偏向領域を含むように構成されている。
【0112】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の遠位部分は、遠位口および近位部分とつながっている。
【0113】
ある実施形態のカテーテルシステムは、ノーズコーンにマーカーを含み、このマーカーは、血管構造における対象部位に対する側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成されたている。
【0114】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の遠位部分の断面積は、近位部分および中間部分の断面積より比較的小さい。
【0115】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の中間部分は、カニューレが側面口まで通るように構成されている。
【0116】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の遠位部分は、ガイドワイヤーが遠位口まで通るように構成されている。
【0117】
ある実施形態のマーカーは、側面口に対し遠位に位置している。
【0118】
ある実施形態のマーカーの複数のシンボルには、第1のシンボルおよび第2のシンボルが含まれる。
【0119】
ある実施形態のカテーテルシステムは、遠位端を有する作用要素を含んでおり、この遠位端は、作用要素が側面口を通って遠位に前進した場合に、内膜下空間内の第1血管場所から血管構造の真腔内の第2血管場所へ送達されるように、側面口を通って展開するように構成されている。
【0120】
ある実施形態の作用要素は、カテーテル本体にキー固定されている。
【0121】
ある実施形態の作用要素は、少なくとも1つの内腔部を有するカニューレを含む。
【0122】
ある実施形態の作用要素は、カニューレと、そのカニューレ内にスライド可能に配置された少なくとも1つのガイドワイヤーとを含む。
【0123】
ある実施形態の作用要素の遠位端は、予め成形された、弾性のある先端部を含む。
【0124】
ある実施形態の作用要素の遠位端は、作用要素をカテーテル本体内に引っ込めたときに第1の構成をとり、作用要素が側面口を通って伸ばされたときに第2の構成をとる。
【0125】
ある実施形態のカテーテルシステムは、内膜下空間から血管構造の真腔に再入するための方法を含む。ある実施形態の方法は、カテーテルをワイヤー上で前進させて内膜下空間に入れること、およびワイヤーを後退させることを含む。ある実施形態の方法は、可視化をしている間に、カテーテルの遠位領域にあるマーカーが示す複数のシンボルの情報を用いて、カテーテルの側面口の位置を特定し(locating)、真腔の対象となる再入部位にほぼ隣接するように位置付けることを含む。ある実施形態の方法は、ワイヤーを側面口に通して真腔に入れるように前進させ、真腔にワイヤーが再入することを含む。
【0126】
ある実施形態における位置特定および位置付けは、第1のシンボルを示す位置までカテーテルを回転させることにより、側面口を真腔にほぼ隣接するように位置付けることを含む。
【0127】
ある実施形態における位置特定および位置付けは、第2のシンボルを示す位置までカテーテルを回転させることにより、側面口の位置付けを調整することを含む。結果として第2のシンボルを示す可視化中の撮像装置の位置は、結果として第1のシンボルを示す可視化中の撮像装置の位置に対してほぼ直交している。
【0128】
ある実施形態の方法は、カニューレを対象となる再入部位に向けて側面口に通して前進させることを含む。
【0129】
ある実施形態におけるカニューレを前進させることには、カニューレをカテーテルから偏向させることが含まれる。
【0130】
ある実施形態におけるカニューレを前進させることには、ワイヤーをカニューレに通して前進させることが含まれる。
【0131】
ある実施形態の可視化には、透視が含まれる。
【0132】
内膜下空間は、血管構造のびまん性疾患内に位置する。
【0133】
内膜下空間は、血管構造の外膜層と内膜層の間に位置する。
【0134】
文脈が明らかに異なることを求めている場合を除き、説明および特許請求の範囲を通して、用語「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」等は、唯一または網羅的な意味とは逆の、含むという意味(inclusive sense)、つまり、「含む(including)」がそれに限定されないという意味に解釈しなければならない。単数または複数で用いた言葉は、それぞれ、複数および単数をも含む。さらに、用語「本明細書において(herein)」、「以下(hereunder)」、「上記(above)」、「以下(below)」および同様の意味の用語は、本明細書で用いる場合には、本明細書全体をいい、本明細書のいずれか特定の部分をいうものではない。2つ以上の項目のリストについて用語「または(or)」が用いられた場合、この用語は、その用語についての以下の解釈の全てを含む。すなわち、リストの任意の項目、リストの全ての項目、および、リストにある項目の任意の組合せである。
【0135】
カテーテルシステムの例示した実施形態についての上記の記載は、網羅的である、または開示した形態そのものにカテーテルシステムを限定しようとするものではない。カテーテルシステムの特定の実施形態および例を説明のために本明細書に記載したが、当業者には分かるように、このカテーテルシステムの範囲内において、さまざまな均等な変更例が可能である。本明細書でカテーテルシステムについて教示したことは、他の医療機器およびシステムに応用でき、上記のカテーテルシステムのためだけのものではない。
【0136】
上述したさまざまな実施形態における要素および動作は、組合せて、カテーテルシステムの他の実施形態を提供することができる。上記の詳細な説明を考慮して、前述の、およびその他の変更をカテーテルシステムに行うこともできる。さらに、必要であればカテーテルシステムの態様を変更して、前述したさまざまな特許および特許出願のシステム、機能および概念を利用し、システムのさらに別の実施形態を提供することもできる。
【0137】
一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、カテーテルシステムを明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈してはならず、むしろ、血管閉塞を横断するために、特許請求の範囲のもとで作動する全てのカテーテルシステムおよび医療機器を含むと解釈すべきである。したがって、カテーテルシステムは開示内容で限定はされず、むしろ、カテーテルシステムの範囲は、専ら特許請求の範囲によって決まる。
【0138】
カテーテルシステムの特定の態様が以下に特定の請求項の形式で示されている一方で、発明者は、カテーテルシステムのさまざまな態様を多数の請求項の形式で考えている。したがって、発明者は、本明細書の出願後にさらに別の請求項を加えて、カテーテルシステムの他の態様のためのこのような別の請求項の形式を追求する権利を留保するものである。
【0139】
〔実施の態様〕
(A)血管構造に使用するためのカテーテルシステムにおいて、
本体内腔部を含むカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に連結された遠位終端部であって、
前記遠位終端部は、遠位終端部内腔部、側面口、および遠位口を含み、
前記遠位終端部内腔部の近位部分は、前記本体内腔部とつながっており、
前記遠位終端部内腔部の中間部分は、前記側面口および前記近位部分とつながっている受動的偏向領域を含むように構成されており、
前記遠位終端部内腔部の遠位部分は、前記遠位口および前記近位部分とつながっている、
遠位終端部と、
前記遠位終端部に設けられたマーカーであって、前記血管構造における対象部位に対する前記側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成された、マーカーと、
を備え、
前記マーカーは、LT指向マーカーであって、前記遠位終端部が回転することによって、L字形状またはT字形状に見えるものであり、前記マーカーは、前記長手方向に延びる第1部分、及び、該第1部分の遠位端に接触していて前記長手方向に対し直交方向に延びる第2部分から構成されている、カテーテルシステム。
(1)血管構造に使用するためのカテーテルシステムにおいて、
本体内腔部を含むカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に連結されたノーズコーンであって、
前記ノーズコーンは、ノーズコーン内腔部、側面口、および遠位口を含み、
前記ノーズコーン内腔部の近位部分は、前記本体内腔部とつながっており、
前記ノーズコーン内腔部の中間部分は、前記側面口および前記近位部分とつながっている受動的偏向領域を含むように構成されており、
前記ノーズコーン内腔部の遠位部分は、前記遠位口および前記近位部分とつながっている、
ノーズコーンと、
前記ノーズコーンに設けられたマーカーであって、前記血管構造における対象部位に対する前記側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成された、マーカーと、
を備える、カテーテルシステム。
【0140】
(2)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位部分の断面積は、前記近位部分および前記中間部分の断面積より比較的小さい、カテーテルシステム。
(3)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記中間部分は、カニューレが前記側面口まで通るように構成されている、カテーテルシステム。
(4)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位部分は、ガイドワイヤーが前記遠位口まで通るように構成されている、カテーテルシステム。
(5)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記マーカーは、前記側面口に対し遠位に位置しており、
前記複数のシンボルは、第1のシンボル、および第2のシンボルを含む、カテーテルシステム。
【0141】
(6)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
遠位端を有する作用要素、
をさらに備えており、
前記遠位端は、前記作用要素が前記側面口を通って前進した場合に、内膜下空間内の第1血管場所から前記血管構造の真腔内の第2血管場所へ送達されるように、前記側面口を通って展開するように構成されている、カテーテルシステム。
(7)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、前記カテーテル本体にキー固定されている、カテーテルシステム。
(8)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、少なくとも1つの内腔部を有するカニューレを含む、カテーテルシステム。
(9)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、
カニューレと、
前記カニューレ内にスライド可能に配置された少なくとも1つのガイドワイヤーと、
を含む、カテーテルシステム。
【0142】
(10)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素の前記遠位端は、予め形成された、弾性のある先端部を含む、カテーテルシステム。
(11)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素の前記遠位端は、前記作用要素が前記カテーテル本体内に引っ込められたときに第1の構成をとり、前記作用要素が前記側面口を通って伸ばされたときに第2の構成をとる、カテーテルシステム。
(12)内膜下空間から血管構造の真腔に再入するための方法において、
カテーテルをワイヤー上で前進させて前記内膜下空間に入れ、前記ワイヤーを後退させることと、
可視化をしている間に、前記カテーテルの遠位領域にあるマーカーにより示された複数のシンボルの情報を用いて、前記カテーテルの側面口の位置を特定し、前記真腔の対象の再入部位にほぼ隣接するように位置付けることと、
前記ワイヤーを前記側面口に通して前記真腔に入れるように前進させることであって、前記真腔は、前記ワイヤーにより再入される、前進させることと、
を含む、方法。
【0143】
(13)実施態様12に記載の方法において、
前記位置を特定し、位置付けることは、第1のシンボルを表す位置まで前記カテーテルを回転させることにより、前記側面口を前記真腔にほぼ隣接するように位置付けることを含む、方法。
(14)実施態様13に記載の方法において、
前記位置を特定し、位置付けることは、第2のシンボルを表す位置まで前記カテーテルを回転させることにより、前記側面口の前記位置付けを調整することを含む、方法。
(15)実施態様14に記載の方法において、
結果として前記第2のシンボルを示す可視化中の撮像装置の位置は、結果として前記第1のシンボルを示す可視化中の前記撮像装置の位置に対してほぼ直交している、方法。
(16)実施態様12に記載の方法において、
前記対象の再入部位に向けて前記側面口を通してカニューレを前進させること、
をさらに含む、方法。
【0144】
(17)実施態様16に記載の方法において、
前記前進させることは、前記カテーテルから前記カニューレを偏向させることを含む、方法。
(18)実施態様16に記載の方法において、
前記前進させることは、前記ワイヤーを前記カニューレに通して前進させることを含む、方法。
(19)実施態様12に記載の方法において、
前記可視化は、透視を含む、方法。
(20)実施態様12に記載の方法において、
前記内膜下空間は、前記血管構造のびまん性疾患内に位置する、方法。
(21)実施態様12に記載の方法において、
前記内膜下空間は、前記血管構造の外膜層と内膜層との間に位置する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】動脈および動脈を形成する組織層の断面を示す図である。
【図2A】罹患動脈の断面であって、完全閉塞を伴う動脈壁の正常組織の詳細を示す図である。
【図2B】罹患動脈の断面であって、完全閉塞の存在により起こりうる変性した組織構造を有する動脈壁を示す図である。
【図3A】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図3B】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図3C】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図3D】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図3E】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図4】ある実施形態による偏向カテーテルの遠位領域の図である。
【図5】ある別の実施形態による偏向カテーテルの遠位領域の図である。
【図6】さらに別の実施形態による偏向カテーテルの遠位領域を示す図である。
【図6A】後退した状態で真っ直ぐな構成をとる、他の実施形態による偏向カテーテルの遠位領域を示す図である。
【図6B】後退した状態で湾曲した構成をとる、他の実施形態による偏向カテーテルの遠位領域を示す図である。
【図7】ある実施形態による偏向カテーテルシステムの図である。
【図8】ある実施形態による、後退させた構成のカニューレを含む偏向カテーテルシステムの遠位領域の断面図である。
【図9】ある実施形態による、前進した構成のカニューレを含む偏向カテーテルシステムの遠位領域の断面図である。
【図10】ある実施形態による、近位ハブ部を含む偏向カテーテルシステムの近位領域の断面図である。
【図10A】ある実施形態による、不注意によるカニューレの展開を防止するロック機構を備えた近位駆動ハンドルの断面図である。
【図10B】ある実施形態による、不注意によるカニューレの展開を防止するロック機構を備えた近位駆動ハンドルの断面図である。
【図11A】回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステムの近位領域の断面図で示す図である。
【図11B】回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステムの近位領域の断面図で示す図である。
【図12】回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステムの遠位領域の断面図で示す図である。
【図13】遠位端口と、近位フェーズドアレー超音波装置とを有するカテーテルシャフトを含む、ある実施形態によるカテーテルシステムの図である。
【図14A】ある実施形態による、周囲組織を撮像するためにカテーテルシャフトの遠位端を越えて展開された超音波可視化システムを示す図である。
【図14B】ある実施形態による、カテーテルシステムのノーズコーン内の窓部から周囲組織を撮像するために展開された超音波可視化システムを示す図である。
【図15】周囲組織を撮像するために、カテーテルシャフトのカニューレ内に展開された、ある実施形態による超音波可視化システムを示す図である。
【図16】ある実施形態による、ノーズコーンを含む、編まれたカテーテルシャフトの複合遠位端終端部を示す図である。
【図17】ある実施形態によるリエントリ・カテーテルを伸ばした構成で示す図である。
【図18】ある実施形態による、伸ばされた構成のリエントリ・カテーテルの遠位部分を示す図である。
【図19】ある実施形態による、後退された構成のリエントリ・カテーテルを示す図である。
【図20A】ある実施形態によるカテーテルノーズコーンの遠位ハウジングの斜視図である。
【図20B】ある実施形態による遠位ハウジングの側面断面図である。
【図20C】ある実施形態による遠位ハウジングの側面断面図である。
【図21A】ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの第1側面図である。
【図21B】ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの第2側面図である。
【図21C】ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの端面図である。
【図22】ある実施形態による、リエントリ・カテーテルを使って閉塞を横断するための流れ図である。
【図23】ある実施形態のもとで、如何にしてLT指向性マーカーバンドが、リエントリ・カテーテルの側面口の位置を特定し、調整するのに利用されるかを示す図である。
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願〕
本願は、2005年3月30日出願の米国特許出願第60/666,896号の利益を主張するものである。米国特許出願第60/666,896号は、2004年4月12日出願の米国特許出願第10/823,416号の一部継続出願であり、米国特許出願第10/823,416号は、2002年12月3日出願の米国特許出願第10/308,568号の一部継続出願であり、米国特許出願第10/308,568号は、現在は米国特許第6,511,458号である2001年1月19日出願の米国特許出願第09/765,777号の継続出願であり、米国特許出願第09/765,777号は、現在は米国特許第6,235,000号である1999年11月17日出願の米国特許出願第09/440,308号の継続出願であり、米国特許出願第09/440,308号は、現在は米国特許第6,231,546号である1998年1月13日出願の米国特許出願第09/006,563号の分割出願である。
【0002】
〔技術分野〕
本明細書の開示は、概して、医療機器および方法に関するものである。具体的には、本開示は、血管構造内の慢性完全閉塞を横断する(crossing chronic total occlusions)ためのシステム、方法および手技に関するものである。
【0003】
〔背景〕
心血管疾患は、世界における主要死因である。心血管疾患は、様々な形態を取りうるものであり、多様な特別介入治療(specific interventional treatments)および薬物治療が長年にわたって考案され、その成功の度合いはさまざまであった。
【0004】
血管がアテロームおよびプラークで完全に閉塞された場合、心血管疾患の特に困難な形態となり、これを慢性完全閉塞(CTO)という。最近まで、慢性完全閉塞は、一般的に、自己血管または人工血管を閉塞部の上流および下流で血管上の場所へ吻合術で取り付けるバイパス術を行うことにより治療されていた。上記のバイパス術は効果が高い反面、患者への外傷が非常に大きくなる。
【0005】
近年、カテーテルによる血管内処置が慢性完全閉塞の治療に利用されており、ますます成功を収めている。カテーテルによる血管内処置としては、血管形成術、アテレクトミー、ステント留置(stenting)等が含まれ、患者への外傷が非常に小さいので、多くの場合に好まれている。しかしながら、上記のカテーテルによる治療を実施する前に、通常、介入カテーテル(interventional catheter)へのアクセスを提供するために、ガイドワイヤーで閉塞部を横断する必要がある。
【0006】
場合によっては、ガイドワイヤーで閉塞部を横断することは、単にガイドワイヤーを閉塞部に押し通すことで行うことができる。閉塞部を通って前進した後、ガイドワイヤーは、血管腔に出現し、所望のアクセス経路を提供する。しかしながら、多くの場合に、ガイドワイヤーが閉塞部を横断しようとした際に、不注意によりガイドワイヤーは血管の内膜層と外膜層の間の内膜下空間に貫入する。内膜下空間に入ると、医師/ユーザがガイドワイヤーを血管腔へ戻すことが非常に困難であり、多くの場合に不可能である。このような場合、カテーテルによる介入を行うことが通常不可能であり、より外傷が大きくなる他の処置を用いなければならないことがある。慢性完全閉塞の治療に用いられるカテーテルは、米国特許第4,405,314号、第4,947,864号、第5,183,470号、第5,190,528号、第5,287,861号、第5,409,019号、第5,413,581号、第5,429,144号、第5,443,497号、および第5,464,395号に加え、国際公開WO97/13463号、およびWO97/13471号に記載されている。これらの理由から、ガイドワイヤーによる慢性完全閉塞部の横断を容易にする装置および方法を提供する必要性がある。
【0007】
〔参照による組み込み〕
本明細書で言及した各々の特許、特許出願および/または刊行物は、それぞれの個々の特許、特許出願および/または刊行物が具体的かつ個別に参照により組み込まれることが示された場合と同じ範囲で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
〔発明の詳細な説明〕
以下に示す装置および方法には、血管構造内の完全閉塞部を横断する(crossing total occlusions in vasculature)際に用いられるカテーテル、ガイドおよび/または他の器具が含まれる。完全閉塞は、完全血管閉塞あるいは慢性完全閉塞(CTOs)とも呼ばれる。装置および方法には、従来のガイドワイヤーおよび/または特殊なガイドワイヤーを持った医師/ユーザが、ガイドワイヤーが内膜下空間(subintimal space)に入った後に、ガイドワイヤーを内膜下空間から血管腔へ戻るように導く、あるいは向け直す(redirect)ことを目的として使用する医療装置が含まれる。これらの装置および方法は、他の血管と同様に、冠動脈における冠動脈疾患の治療にも有効であり、画像化の有無に関わらず実行可能であるべきである。この装置/方法は、末梢血管疾患の治療などの他の動脈および静脈における応用にも有用である。
【0009】
図1は、動脈Aおよび動脈Aを形成する組織層の断面(section)を示す。正常な(非罹患)動脈Aは、多数の層を持つ動脈壁を含む。本明細書では、最内層を内膜層Iといい、内膜層Iには、内皮、内皮下層、および内弾性板(internal elastic lamina)IELが含まれる。中間層Mが内弾性板IELの同心外側にあり、外弾性板層(external elastic lamina layer)EELが中間層Mの同心外側にあり、外膜層ALが最外層である。外膜層ALを越えると血管外組織となる。以下に用いられているように、一般的に中間層Mを含む内膜層Iと外膜層ALの間の領域は、内膜下空間という。ただし、内膜下空間には、後述するように、さらに別の組織型/層が含まれる場合がある。本明細書で使用される内膜下空間のこの定義は、当業者により定められたあらゆる意味に追加されるものである。
【0010】
図2Aは、罹患動脈Aの断面であり、完全閉塞TOを伴う動脈壁の正常組織の詳細を示している。図2Bは、罹患動脈Aの断面であり、完全閉塞TOの存在により起こりうる変性した組織構造を持つ動脈壁を示している。図2Bに関して、完全閉塞TOのある罹患動脈Aは、正常な動脈の組織層と比較し、変性した構造を持つ動脈壁を含む。最内層は、びまん性疾患DDと呼ばれる。びまん性疾患DD層は、約50ミクロン〜500ミクロンの厚さとなる場合があるが、重い罹患動脈では、この厚さには限定はされない。中間層Mは、完全閉塞TOおよびびまん性疾患DDから同心外側に位置している場合がある。重い罹患血管では、図2Bに示されるように、中間層Mが腐食していることがあり、はっきりしない場合がある。外弾性板EELは、中間層M、完全閉塞TO、びまん性疾患DDのいずれかの同心外側に位置することがあり、外膜層ALが最外層である。以下に用いられているように、びまん性疾患DD内にあり、外膜層ALと境界を接する領域も内膜下空間という。この内膜下空間についての補足的定義は、当業者により定められたあらゆる意味に追加されるものである。内膜下空間は、本明細書に記載のワイヤー、偏向カテーテルおよび他のカテーテルが、完全閉塞を横断するときに通る領域である。
【0011】
完全閉塞TOには、アテローム、プラーク、血栓、および/または、通常、心血管疾患に関連する他の閉塞性物質が含まれる場合がある。「完全」閉塞とは、閉塞性物質が動脈腔Lまたは他の血管全体を実質的に閉塞し、血管内の血流が実質的に遮断されるか、または、停止することを意味する。本明細書に記載のカテーテルシステムおよび方法は、閉塞部より遠位の組織が側副動脈から酸素を含んだ血液をしばしば受容するため、完全に閉塞した動脈が直ちに生命を脅かすことのない患者に通常用いられる。しかしながら、通常、閉塞部より遠位の領域における血液供給は不十分であり、血管形成術、アテレクトミー、ステント留置などのような血管内介入によって閉塞部を治療し、影響を受けた血管を通る血流を回復させることが好ましいであろう。
【0012】
慢性閉塞部は、閉塞部の近位端に(たとえば、米国特許第5,968,064号、第6,217,549号、第6,398,798号、第6,508,825号、第6,599,304号、および第6,638,247号に記載されているような)ガイドワイヤーまたは鈍的剥離用カテーテル(blunt dissection catheter)を位置付け、従来のインターベンション方式(interventional method)を用いて閉塞部の中に装置を前進させることにより、横断される。本明細書において完全閉塞部の横断とは、当業者が定めるあらゆる意味に加えて、閉塞部の近位端から閉塞部の遠位端まで長さ方向の経路を確立することと定義される。ガイドワイヤーおよび/または鈍的剥離用カテーテルの長さ方向の経路は、閉塞した血管内においてできるだけ中央にとどまり、かつ閉塞部を横断した後に血管の真腔(true lumen)に出現しなければならない。しかし、実際には、ガイドワイヤーまたは鈍的剥離用カテーテルは閉塞部内の中心を外れた経路をたどり、閉塞部自体の遠位端を越えて前進した後、閉塞の末端より遠位の血管組織の層に入る。この種類の切開経路(dissection track)を一般的に内膜下経路、つまり、血管の内膜層と外膜層の間といい、限定はしないが、通常は中間層に入っている(図1、図2Aおよび図2B)。
【0013】
しかしながら、図2Bに関して前述したように、より多くの場合に、完全閉塞を形成する病状は、閉塞部位で血管壁内層を腐食する。さらに、血管壁の腐食、および病状は、多くの場合、閉塞の近位端あるいは遠位端で突然終了することはなく、代わりに、病状も、閉塞部まで、かつ閉塞部から離れながら、次第に細くなる血管壁の内側を覆う(lines)。したがって、閉塞部の末端の近位および遠位の血管部分の構造は、多くの場合に、びまん性疾患となっている。完全閉塞の近位および遠位にあるこのような罹患した血管部分では、内膜層(I)、内弾性板層(IEL)および中間層(M)が存在しない場合があり、多くの場合に、少なくともアテローム、プラーク、血栓、脂肪および石灰化繊維(fibo-calcific)沈殿物/組織のうちのひとつを含むびまん性疾患(DD)層に置き換えられている。このような罹患した組織のすべては、限定はしないが、通常、外弾性板(EEL)、および血管の最外の境界、つまり、外膜層(AL)内に含まれている。
【0014】
それゆえ、閉塞領域の血管片(vessel segment)が正常な構造(図2A)あるいは罹患構造(図2B)のいずれかでありうることを考慮すると、閉塞の遠位にある内膜下経路を、対応する2方法で説明できる。正常な血管内において、内膜下経路は、外膜層(AL)および内膜層(I)と境界を接している、つまり、血管壁の中にあると説明され、通常は中間層(M)の中にあると考えられる。罹患血管内において、内膜下経路は、同様に外弾性板(EEL)または外膜層(AL)と外側で境界を接しているびまん性疾患(DD)層の中にあるものと説明される。
【0015】
また、完全閉塞部に含まれる切開経路(dissection tract)と、完全閉塞部を越えて広がった切開経路との間に違いがあることにも留意しなければならない。切開経路が完全閉塞部の向こうに広がっている場合、前述した内膜下経路のいずれのタイプも管腔外、つまり、閉塞部の遠位にある血管の真腔の境界外にあると定義される。「管腔外(extra-luminal)」という用語は、切開経路が完全閉塞部の遠位端の向こうに進められた場合に関係を有するにすぎない。閉塞部内に物理的な管腔は存在しないので、完全閉塞部内に含まれる切開経路が管腔外の場所とは何の関係も有することができないことに留意しなければならない。それゆえ、さらなる参考として、閉塞部の遠位の内膜下経路を管腔外と定義し、この定義は当業者により定められたあらゆる意味に追記されるものである。
【0016】
また、血管内および血管外の場所の違いも重要である。本明細書に記載の全ての切開経路は、血管の境界内、例えば、外膜層(AL)内に含まれるので、「血管内(intra-vascular)」とみなされる。したがって、外膜層(AL)の外の全ての場所は、「血管外(extra-vascular)」という。血管外の場所は、本明細書で検討する題材ではない。
【0017】
前述した内膜下の場所、管腔外の場所による、罹患血管に見られる、異なる構造を確立したところで、通路あるいは経路が、これらの内膜下の場所から血管の真腔へ、本明細書に記載の方法により形成される。ある実施形態の方法では、偏向カテーテルを用いてガイドワイヤーを偏向させる。通常、偏向カテーテルは、ガイドワイヤーの近位端を越えて前進し、内膜下空間内の経路内へ前進する。次に、ガイドワイヤーおよび偏向カテーテルは、ガイドワイヤーが横向きに偏向し、内膜層またはびまん性疾患を通り、閉塞の遠位の点において血管腔に戻るように操作される。このような偏向カテーテルはまた、ガイドワイヤーが経路内へと前進するとき、および/または、経路を通って前進するときにガイドワイヤーを支持する。つまり、カテーテルは、ガイドワイヤーが前へ進んで任意の抵抗物質(resisting material)に通されるときに、ガイドワイヤーの押圧性(pushability)を高めることができる。
【0018】
あるいは、内膜下空間の経路内に最初から位置付けられたガイドワイヤーは、偏向カテーテルを通して回収され、第2のワイヤーまたは内膜層またはびまん性疾患を貫通して血管腔へ戻るのに適した他の装置と交換されてもよい。ガイドワイヤーならびに/または偏向カテーテルおよび他のカテーテルは、本明細書に記述の方法から逸脱することなく、従来の方法で、互いにまたは互いを介して自由に交換できる。
【0019】
ある実施形態では、医師/ユーザが、ガイドワイヤーおよび/または偏向カテーテルが完全閉塞の遠位にいつ位置付けられたかを確認し、ガイドワイヤーを任意の閉塞の向こう側、つまり、遠位において血管腔に戻せるようにする。このような位置確認は、従来の方法による血管の透視法での画像化によって、最も簡単に行える。
【0020】
このような透視法での画像化に代えてまたは加えて、血管内の撮像(例えば、血管内超音波映像法(IVUS))、および光コヒーレンス断層撮影(OCT)等の様々な光学的撮像モダリティ(optical imaging modality)が用いられる。例えば、超音波撮像用ガイドワイヤーを、内膜下空間へ最初にアクセスするために用いてもよいし、および/または、内膜下空間にアクセスするために使用されるガイドワイヤーと交換してもよい。あるいは、撮像用ガイドワイヤーは、周囲の血管組織を観察するのに適したカテーテルの遠位の場所まで、カテーテルの内腔内またはカニューレ内で前進してもよい。内膜下空間にある撮像用ガイドワイヤーは、血管腔内の閉塞物質の有無を容易に検出しうる。閉塞物質から正常な動脈組織への遷移が検出された場合、ガイドワイヤーの位置が完全閉塞の遠位領域の位置を越えたところまで進んだことが分かる。
【0021】
代わりに、米国特許第5,000,185号および第4,951,677号に記載されているような撮像システムあるいは選択的撮像構成部品を、カテーテルシステム上および/またはカテーテルシステム内で運ぶこと、ならびに/あるいは、偏向カテーテルの内腔内でカテーテル内の遠位位置まで前進させることも可能であり、周囲組織を撮像し、カテーテルが完全閉塞の遠位領域を越えたところまで前進したかどうかを確認する。別の実施形態のカテーテルシステムは、カニューレ自体の内腔部内に撮像システムまたは撮像構成部品を入れて移動させ、カニューレおよび撮像システムのいずれも独立して、遠位へ進み、かつ近位へ後退するようにしてもよい。
【0022】
内膜下経路から血管腔へ戻る通路が形成され、ワイヤーが完全閉塞部を横断するように所定の位置にきた後、そのワイヤーは、完全閉塞部を横切るように介入および診断カテーテルを位置付ける際のガイドワイヤーとして使用できる。介入カテーテルは、閉塞治療のため完全閉塞部を横切るように位置付けられることが最も一般的である。介入カテーテルには、限定はしないが、例えば血管形成バルーンカテーテル、回転式アテレクトミーカテーテル、方向性アテレクトミーカテーテル、およびステント留置用カテーテルが含まれる。
【0023】
ある実施形態のカテーテルシステムにおいてワイヤーを偏向させることには、内膜下空間から血管腔に戻るようにカニューレを偏向させ、その後、カニューレにより画定/形成された通路(通常はカニューレの内腔部)にワイヤーを通すことが含まれる。カニューレは、ガイドワイヤーが内膜下空間内に配置された後に、ワイヤー上を前進させられる。ある実施形態においてカニューレを偏向させることには、後述するように、カニューレの、弾性があり(予め形成された)湾曲した端部を、カテーテルの拘束内腔部(constraining lumen)から血管腔内へ前進させることが含まれる。
【0024】
カテーテルシステムの他の実施形態におけるワイヤーの偏向には、予め内膜下空間内に前進させられたワイヤー上で偏向カテーテルを前進させることが含まれる。続いてカニューレは、偏向カテーテルの側面開口部を通って前進し、ガイドワイヤーが血管腔に戻るための道(path)を画定するために、内膜層あるいはびまん性疾患を貫通する。
【0025】
他の代替実施形態におけるワイヤーの偏向には、予め内膜下空間内に前進させられたワイヤー上で偏向カテーテルを前進させることが含まれる。続いてカニューレは、偏向カテーテルの遠位開口部を通って前進し、ガイドワイヤーが血管腔に戻るための道を画定するために、内膜層あるいはびまん性疾患を貫通する。操縦可能なカニューレおよび他の能動的展開型カニューレ(actively deployed cannulas)を使用してもよい。
【0026】
図3A、図3B、図3C、図3Dおよび図3Eは、ある実施形態による、カテーテルシステムを用いての完全閉塞の横断を示している。カテーテルシステムは、限定はしないが、偏向カテーテル20、および少なくとも1つのワイヤー10、つまり、ガイドワイヤー10を含む。図2Aおよび図2Bを参照すると、限定はしないが、この手技は、動脈の上部で行われる。図3Aを参照すると、ワイヤー10は、前述したように、完全閉塞TOの物質とであうまで動脈Aの内腔Lの中を前進する。このとき、ワイヤー10は、血管壁内へと偏向することなく閉塞TO内を前進することもありうる。このようなことが生じた場合、本発明の方法にしたがって、その後ガイドワイヤーの位置を変えることは必要ないであろう。
【0027】
しかしながら、普通、ワイヤー10は、図2Bに示されているように、中間層Mまたはびまん性疾患DDのいずれかの中の内膜下空間内に前進する(前述のように、進行性アテローム硬化性閉塞の内膜層および中間層は、びまん性疾患DDの異質層に発展することがある)。内膜層Iと外膜層ALとは、ワイヤー10をその近位端から遠位へと押したときにワイヤー10が自然と通過できる組織面を共に画定する。あるいは、ワイヤー10は、びまん性疾患DDの中を前進して、閉塞TOを通る、似たような経路をとることもある。ワイヤー10は、ワイヤー10の遠位先端部が、図3Bに示されているように完全閉塞TOの遠位端を通過するまで前進し続ける。ワイヤー10の遠位先端部は、医師/ユーザが前進を止めるまでは、完全閉塞のずっと先まで軸方向へ進むことができる。
【0028】
図3Bは、支持されることなく前進しているガイドワイヤー10を示している。しかしながら、場合によっては、ガイドワイヤー10が内膜層Iおよび外膜層ALの間の空間、つまり、びまん性疾患DDに入るおよび/または通過するときに、ガイドワイヤー10が大きな抵抗を受けることがある。抵抗を受けた場合、図3Cに示されているように、偏向カテーテル20をガイドワイヤー10の遠位先端部の直ぐ近くの場所まで前進させることによって、偏向カテーテル20を用いてガイドワイヤー10を支持し、ガイドワイヤー10の押圧性を高めることができる。ガイドワイヤー10およびカテーテル20は、その後、順に前進してもよく、たとえば、ガイドワイヤー10を短い距離だけ前進させ、続いてカテーテル20をガイドワイヤー10の遠位先端部の直ぐ近くの場所まで前進させるなどしてもよい。
【0029】
一方、用いられる処置によらず、完全閉塞TOを越えて遠位先端部を位置付ける点までガイドワイヤー10を前進させたら、ワイヤー10の近位端に被せるように同軸に導入することによって、偏向カテーテル20をワイヤー10上で前進させ、これを図3Bに示されているようにワイヤー10が完全閉塞TOに接近するまで行う。偏向カテーテル20は、その後、図3Dに示されているように、その遠位先端部もまた完全閉塞TOの向こう側に延びるまでワイヤー10の上をさらに前進する。ある実施形態の偏向カテーテル20は、ガイドワイヤー10を横方向に偏向させる少なくとも1つの機構を含み、ガイドワイヤー10が半径方向内側に向けて内膜層Iまたはびまん性疾患DDを通り、血管腔Lに戻ることができるようにしている。
【0030】
ある実施形態の偏向機構は、後述するようにさまざまな形態をとる。たとえば、図3Dを参照すると、ある実施形態の偏向機構は、偏向カテーテル20にある側面口22を含む。ガイドワイヤー10は、その遠位先端部が側面口22の近位に来るように後退させられ、次に遠位へ前進して、ワイヤー10が側面口22を横方向外側へと通り、図3Eに示されているように血管腔Lに戻るようにすることができる。
【0031】
ある実施形態のカテーテルシステムの医師/ユーザは、ガイドワイヤー10の遠位先端部と、偏向カテーテル20の偏向口22(または他の偏向機構)とが完全閉塞TOを越えたところに適切に位置付けられ、完全閉塞TOの端部を越えて過度に前進することがないことを保証できる。偏向カテーテル20の適切な位置付けは、限定はしないが、完全閉塞TOの遠位端の向こう側の約0cm〜2cmの範囲内で多様でありうる。たとえば、ある実施形態では、偏向カテーテル20が完全閉塞TOの端部の向こう側の約0〜0.5cmに位置付けられる。
【0032】
前述したように、このような位置付けは、場合によっては、透視法での画像化を利用して行うことができる。たとえば、場合によっては、適当な放射線不透過性マーカーをカテーテルシステムの構成部品に設けることで十分なことがあり、このようなカテーテルシステムの構成部品としては、ガイドワイヤー、カニューレ、カテーテルの偏向機構、および、透視による構成部品の遠位領域の視覚的な位置付けを可能にする、これらの構成部品の任意のものの何らかの組合せのうちの少なくとも1つが含まれる。蛍光画像は、たとえば米国特許第4,718,417号、および、第5,106,387号に記載されている。
【0033】
透視に加えて、能動的撮像システム/方法、ならびに、光コヒーレンス断層撮影(OCT)およびラマン分光法を含むがこれに限定されない他の撮像モダリティ(imaging modality)も、カテーテルシステムにおいて画像情報を提供するのに用いることができる。OCTは、たとえば米国特許第5,321,501号、第5,459,570号、第5,383,467号、および、第5,439,000号に記載されている。ラマン分光法は、たとえば国際公開WO92/18008号に記載されている。
【0034】
ある実施形態のカテーテルシステムは、偏向カテーテル20を回転により位置付けること(rotational positioning)ができるように用意されている。回転により位置付けることは、医師/ユーザが偏向機構を内膜下空間から動脈または他の血管腔Lへ戻るように向けることを可能にすることによって、カニューレまたはガイドワイヤーの偏向方向を選択的にすることを可能にする。
【0035】
カテーテルに超音波撮像手段が備わっている場合、カテーテルの遠位先端部を回転させて位置付けるのにこのような撮像手段を利用することができる。ある実施形態のカテーテルは、回転方向に硬くて曲がらず(rotationally rigid)、近位端を回すことで遠位端の位置付けができるようになっている。血管腔、偏向口22、および/または他の偏向機構の検出された存在を利用すれば、ガイドワイヤーおよび/またはカニューレを、これらの構成部品の超音波で識別できる特徴を使って、血管の真腔に向けて回転させて位置付けることができる。
【0036】
別の実施形態では、回転方向に特異である透視用マーカー(rotationally specific fluoroscopic marker)をカテーテル20に、または、カニューレに直接設けることができる。マーカーは、カテーテル先端部またはカニューレの回転方向が、透視法での画像化を利用して、マーカーの二次元画像を観察することによって決定されることができるように構成されている。
【0037】
本明細書に記載の血管閉塞の横断に使用する装置としては、カテーテルシステムが含まれ、これは、ワイヤー偏向システムまたはワイヤー偏向用システム(wire deflection or wire deflecting systems)ともいう。ある実施形態のワイヤー偏向システムは、通常、ワイヤー偏向カテーテルを備えており、このワイヤー偏向カテーテルは、カテーテル本体、および偏向用カニューレを含む。カテーテル本体は、近位端、遠位端、および、カテーテル本体の少なくとも遠位部分を通って延びる少なくとも1つの内腔部を含む。ある実施形態において、内腔部は、カテーテルの遠位部分、遠位領域、または、エンドゾーンのうちの少なくとも1つにおける遠位口および/または側面口のうちの少なくとも1つとつながっている。さまざまな他の実施形態において、内腔部は、1つ以上の遠位口および/または1つ以上の側面口とつながっている。
【0038】
ある実施形態のカニューレもまた、近位端と、遠位端と、カニューレの遠位部分を通って延びる少なくとも1つの内腔部とを含む。カニューレの遠位部分は、後述するように、予め形成された弾性湾曲部を含んでもよい。カニューレは、限定はしないが、カテーテル本体の内腔部内にスライド可能に配置されている。カテーテル本体の内腔部内のカニューレを近位へ最大限後退させたとき、カテーテルの遠位部分は、真っ直ぐな構成、および湾曲した構成のうち少なくとも一方を取るように構成することができる。カニューレは、手技に適する側面口および端部口のうちの少なくとも一方を介して展開され、内膜下組織/びまん性疾患を通る経路を本明細書に記載の方法により確立することができる。
【0039】
カテーテルシャフトおよび/またはカニューレの材料および製造方法を選ぶことにより、カニューレを最大限後退させた結果、カテーテルの遠位部分に生じる形状が決まる。遠位側カテーテルシャフトの真っ直ぐな構成または湾曲した構成のどちらでも、後述するようにカテーテルの2つの実施形態に応用することができる。カテーテルの第1実施形態は、遠位口および側面口の両方を含み、カニューレを最大限前進させると、予め成形したカニューレが側面口から選択的に展開される。カテーテルの第2実施形態は遠位口を1つだけ含み、カニューレを最大限前進させると、予め成形されたカニューレがその遠位口から展開される。さまざまな他の実施形態は、側面口と、遠位口と、カニューレ展開に関するオプション(cannula deployment options)とのそれぞれ違った組合せを含む。
【0040】
ある実施形態のカテーテルシステムは、カニューレ内腔部を通るように構成されたワイヤーをさらに備えている。ワイヤーは、従来のガイドワイヤーであってもよいし、特に血管壁の内膜層および/または血管のびまん性疾患を貫通するために延びた鋭利な遠位先端部を有するワイヤーであってもよいし、および/または、当該技術で既知の他のワイヤーであってもよい。あるいは、ワイヤーは、受動的および/または能動的な可視化手段、つまり撮像手段を含んでいてもよい。
【0041】
受動的可視化システムまたは撮像システムについていうと、ある実施形態のカテーテル本体には、遠位端の近くに、透視により見えるマーカーが1つ以上含まれる。このマーカーは、2次元透視画像で見たときに、カテーテル本体の遠位端の回転方向の向き(rotational orientation)を視覚的に特定できるように構成されている。カテーテル本体は、ねじれ剛性を高めるように補強することができ、また、遠位ノーズコーンをさらに備えることもでき、この場合には、遠位口および/または側面口がそのノーズコーン内に画定されることがある。ある実施形態のカニューレの遠位端は、滑らかに湾曲するように予め形成されており、この湾曲部は、おおよそ、約15度〜135度までの範囲の弧にわたって広がっていてもよいが、この範囲に限定されるわけではない。予め形成された湾曲部は、おおよそ0.5ミリメートル(mm)〜15mmの範囲の半径を有してもよいが、この範囲に限定されるわけではない。
【0042】
カテーテルシステムのいくつかの具体的な実施形態を以下に説明するが、カテーテルシステムの使用法は、図3A〜図3Eに関連して概略的に前述されている。これらの具体的な実施形態は、例としてのみ提供するものであり、本明細書に提供するカテーテルシステムを限定するものではない。
【0043】
図4は、ある実施形態による偏向カテーテル30の遠位領域である。偏向カテーテル30は遠位端を含み、この遠位端は、少なくとも1つの遠位口32と、少なくとも1つの側面口34と、受動的偏向機構36とを有する。カテーテル30は、ガイドワイヤーのようなワイヤーの近位端に被せるように前進し、ワイヤーが偏向機構36を越え、カテーテル30の主内腔部へと戻るようにすることができる。次に、カテーテル30は、遠位先端部が内膜下空間に入ってワイヤーの遠位端に近づくまで、ワイヤー上を前進することができる。ワイヤーの遠位先端部が偏向機構36に対して近位に来るようにワイヤーの遠位端をカテーテル30の内腔部内で後退させることにより、その後ワイヤーを遠位へ前進させると偏向機構の近位面に引っ掛かって、ワイヤーが側面口34を通って横方向に偏向するようになる。ある実施形態の偏向カテーテル30は、限定はしないが、以下のような寸法に形成される。すなわち、カテーテルシャフトの内径は、おおよそ(0.254mm(0.010インチ)のガイドワイヤーが収まる)0.305mm(0.012インチ)〜(0.991mm(0.039インチ)のガイドワイヤーが収まる)1.092mm(0.043インチ)までの範囲であり、カテーテルシャフトの外径は、おおよそ0.508mm(0.020インチ)〜1.270mm(0.050インチ)までの範囲である。
【0044】
図5は、他の実施形態による偏向カテーテル40の遠位領域である。偏向カテーテル40には、少なくとも1つの遠位口42と、少なくとも1つの側面口44とが含まれる。受動的偏向機構の代わりに、偏向カテーテル40には、軸方向に移動可能なカニューレ46という形態の能動的偏向機構が含まれる。カニューレ46は、弾性のある、予め形成された遠位先端部であって、側面口44を通って前進することができる、遠位先端部(破線で図示)を含むように構成される。カニューレ46は内腔部を有し、この内腔部は、ワイヤーに案内路を提供する。ある実施形態の偏向カテーテル40は、限定はしないが、以下のような寸法に形成される。すなわち、カテーテルシャフトの内径は、おおよそ0.635mm(0.025インチ)〜1.397mm(0.055インチ)までの範囲であり、カテーテルシャフトの外径は、おおよそ0.889mm(0.035インチ)〜1.651mm(0.065インチ)までの範囲であり、カニューレの内径は、おおよそ(0.254mm(0.010インチ)のガイドワイヤーが収まる)0.305mm(0.012インチ)〜(0.991mm(0.039インチ)のガイドワイヤーが収まる)1.092mm(0.043インチ)までの範囲であり、カニューレの外径は、おおよそ0.508mm(0.020インチ)〜1.270mm(0.050インチ)までの範囲である。
【0045】
ある実施形態のカニューレ46は、ナイロン、ウレタン、ポリイミドまたはポリカーボネイトなどのポリマーで薄い層が付けられた編組ステンレススチールワイヤーの複合材料で構築されているが、これに限定はされず、医療への応用に適する他の材料から形成することもできる。カニューレ46の遠位端は、材料を斜めに切断した状態で終わっていて、針状の先端部を形成していることもあるし、あるいは、たとえばプラチナ−イリジウムを含むように形成された、鋭利で、透視で中空である(fluoroscopic hollow)金属製の先端部で終わっていることもある。あるいは、カニューレ46は、ニチノール(ニッケル−チタン)のような一様な材料から製作され、適当な形状に研ぐことによって針型の先端部で終わっていることもある。
【0046】
カニューレ46のトルク制御(torque control)を、特に非常に曲がりくねった応用においてさらに増大するために、ステンレススチールワイヤーまたは他の適当なフィラメントが、ある実施形態のカニューレ46に編み付けられる。編まれたカニューレ46には、適当なポリマー(ナイロン、ポリウレタン)で薄い膜を付けてカニューレシャフトの外面を滑らかにすることもできる。さらに、ある実施形態のポリマーは、カニューレ46をカテーテルシャフト内で移動させるときの摩擦の影響が小さくなるように親水性剤で被覆される。弾性湾曲部をカニューレ46の遠位部分内に、これらの材料に対する熱硬化方式によって据えてもよい。このような熱硬化方式は、当該技術において既知である。カニューレを構築する材料および方法によっても、ある程度の放射線不透過性、つまり、透視下で画像を生成する能力が得られる。
【0047】
カニューレ46をカテーテルシャフトから最大限伸ばすと、カニューレ46は拘束されなくなり、遠位側のカニューレ46が製造時の湾曲形状をとることができる。カニューレ46をカテーテルシャフトに最大限後退させると、2つの構成が可能である。第1の構成は、カテーテルの遠位端が湾曲した形状をとる、というものである。湾曲の程度は、カニューレの製造時の湾曲から、真っ直ぐな構成に近い何らかの形状まである。第2の構成は、カテーテルは真っ直ぐな構成をとる、というものである。
【0048】
これらの構成の各々は、カテーテルシャフトの遠位部分と、カニューレの遠位部分とを構築するのに用いる材料を選択することによって可能となる。第1の構成、すなわち、湾曲した構成を得るには、カニューレを構築するのに用いる材料をより頑丈なものとし(たとえばニチノール)、カテーテルシャフトの遠位部分を構築するのに用いる材料を比較的頑丈でないものとする(たとえば、編まれたシャフトに低デュロメーターのウレタン(low durometer urethane)の薄い層を付けたもの)。この組合せにより、カニューレをカテーテルシャフトの中へと後退させたときに、カテーテルシャフトがよりカニューレの形状に合致することができる。このような製作物(fabrications)、および製作材料は、例として提供したものに過ぎず、多くの他の製作物および製作材料により、遠位カテーテルシャフトがカニューレの形状に従うことができる。
【0049】
第2の、つまり、真っ直ぐな構成は、55Dペバックス(Pebax)のような中間のデュロメーターのナイロン(medium durometer nylon)で薄い層を付けたワイヤーブレードで、より頑丈でない、つまり、「より軟らかい」カニューレを製作し、ポリアミドで薄い層を付けたワイヤーブレードで、カテーテルシャフトを製作することにより得ることができる。カニューレシャフトがより軟らかい設計であるので、カニューレをカテーテルシャフトの中へと後退させると、カニューレは、カテーテルシャフトの真っ直ぐな構成に合致することができる。あるいは、カテーテルシャフトの遠位端は、ステンレススチール製のハイポチューブの一体化部分、または他の非可撓性材料で製作してもよい。ハイポチューブのこの部分は、同じように作用して、カニューレが後退したときに、遠位のカテーテルシャフトの真っ直ぐな構成を維持する。ここでも、これらの製作物および製作材料は、例として提供したに過ぎず、多くの他の製作物および製作材料により、カニューレの遠位領域は、後退したときにカテーテルシャフトの遠位領域の真っ直ぐな構成に合致することができる。
【0050】
図6は、さらに別の実施形態による偏向カテーテル50の遠位領域を示している。偏向カテーテル50には、内腔部と、少なくとも1つの遠位口54とが含まれる。予め形成された遠位端を有するカニューレ52は、内腔部の中を前進し、かつ後退し、また、遠位口54から出ることができるが、この実施形態はそのように限定されるわけではない。図5のカテーテルシステムについて前述したように、カニューレ52および偏向カテーテル50のカテーテルシャフトは、カニューレをカテーテルから伸ばされたときに、製造時の湾曲した形状(破線)をカニューレが取ることを可能にするさまざまな材料から製作できる。ある実施形態の偏向カテーテル50は、限定はしないが、以下のような寸法で形成される。すなわち、カテーテルシャフトの内径は、おおよそ0.635mm(0.025インチ)〜1.397mm(0.055インチ)までの範囲であり、カテーテルシャフトの外径は、おおよそ0.889mm(0.035インチ)〜1.651mm(0.065インチ)までの範囲であり、カニューレの内径は、おおよそ(0.254mm(0.010インチ)のガイドワイヤーが収まる)0.305mm(0.012インチ)〜(0.991mm(0.039インチ)のガイドワイヤーが収まる)1.092mm(0.043インチ)までの範囲であり、カニューレの外径は、0.508mm(0.020インチ)〜1.270mm(0.050インチ)までの範囲である。
【0051】
図6Aは、後退した状態で真っ直ぐな構成をとる、他の実施形態による偏向カテーテル50Aの遠位領域を示している。カニューレ52Aおよび偏向カテーテル50Aのカテーテルシャフトの材料は、カニューレ52Aをカテーテルシャフト内に最大限後退させたときに、カテーテルシステム50Aの遠位端が真っ直ぐな構成をとることを可能にする素材から製作されている。
【0052】
図6Bは、後退した状態で湾曲した構成をとる、他の実施形態による偏向カテーテル50Bの遠位領域を示している。カニューレ52Bおよび偏向カテーテル50Bのカテーテルシャフトの材料は、カニューレ52Bをカテーテルシャフト内に最大限後退させたときに、カテーテルシステム50Bの遠位端が湾曲した構成をとることを可能にする素材から製作されている。さらに、カテーテルシステムの遠位端の形状(カニューレが後退した状態で、真っ直ぐである50Aまたは湾曲している50Bのいずれか)により、カニューレとカテーテルシャフトとの間の回転によるキー固定(rotational keying)(もしあれば)の種類が決まり、また、医師/ユーザがカニューレの展開を血管の真腔に向ける助けとなるように用いる透視用マーキングの種類が決まる。
【0053】
図4、図5および図6を参照して示した3つのカテーテルシステム30、40および50は、単なる例示であり、カテーテルシステムをこれらの実施形態そのものに限定するものではない。本明細書で記載の方法で使用するために、多種多様な他の受動的偏向機構および能動的偏向機構を偏向カテーテルに設けることもできる。
【0054】
本明細書に記載のカテーテルシステムの実施形態におけるカテーテルの遠位終端部は、図示の構成に形成または成型されたカテーテルシャフトのポリマーの連続部分として製作することができる。あるいは、遠位終端部は、カテーテルシャフトの末端部に取り付けられた別個のノーズコーン構成部品を含む。ノーズコーンの取り付けに関しては、限定はしないが、ノーズコーンの近位端にある特徴部にカテーテルシャフトのポリマーを積層させることにより、カテーテルシャフトをノーズコーンに取り付けることができる。
【0055】
一方、本明細書に記載のカテーテルシステムの他の実施形態には、カテーテルシャフトに対するノーズコーンの強固かつ柔軟な接続部を提供する複合終端部を含む。図16は、ある実施形態の下、ノーズコーン1604を含む、編まれたカテーテルシャフト1602の複合遠位端終端部1600を示している。この複合終端部1600は、内部金属リング部1610(内部リング部または内側リング部1610ともいう)と、外部金属リング部1612(外部リング部または外側リング部1612ともいう)とを含み、内部金属リング部1610と外部金属リング部1612との間で積層シャフト1602の編組線(braid wire)1614が遠位で終端している。内部リング部1610および外部リング部1612は、限定はしないが、各々、長さがおよそ1〜2mmまでの範囲であり、公称厚さが約0.051mm(0.002インチ)である。内部リング部1610および外部リング部1612は、たとえば、ハンダ付け、接着および抵抗溶接のうちの少なくとも1つによって編組線1614に取り付けられている。ただし、他の適当な取り付け方法を用いることもできる。内部リング部1610および外部リング部1612を取り付けた後、筒状の編組線1614は、適当なポリマー1616および1618で薄い層を付けられ、完成したカテーテルシャフト構成部品1602を製造する。カテーテルシャフトのこのような複合終端部1600により、短くて、一体の金属製「リング部」が作り出される。ノーズコーン1604は、必要に応じて結合特徴部を備えるように機械加工され、溶接、接着およびハンダ付けのうちの少なくとも1つによってリング部に取り付けられることもできる。
【0056】
複合終端部1600は、ノーズコーン1604のカテーテルシャフト1602に対する非常に強固かつ柔軟な接続部を提供する。外側ポリマー層1618を内部リング部1610および外部リング部1612に対して終端させる1つの難題は、シャフトのポリマー1618およびリング終端部の両方が互いに丸く終端していると、その2つの素材の間にある別個の境界が、カテーテルシステムの操作中に、曲げ応力のために薄い層に剥がれやすくなりうるというものである。ある実施形態の終端部は、カテーテルシャフトの末端部において、外部リング部1612に内部テーパー部1620を含むことによって、この問題を軽減している。外部リング部1612のこのテーパー部1620により、外部リング部1612の下にポリマー1618の小さくて連続的なテーパー部が生じることができ、この境界場所においてカテーテルシャフト1602が曲げられたときに、応力を解放できるようになる。このテーパー部1620により、ポリマー1618が内部リング部1610および外部リング部1612から剥がれることが防止される。
【0057】
図7は、ある実施形態による偏向カテーテルシステム100である。図8は、ある実施形態による、後退させた構成のカニューレ114を含む偏向カテーテルシステム100の遠位領域104の断面図である。図9は、ある実施形態による、前進した構成のカニューレ114を含む偏向カテーテルシステム100の遠位領域104の断面図である。図10は、ある実施形態による、近位ハブ部112を含む偏向カテーテルシステム100の近位領域106の断面図である。
【0058】
図7、図8、図9および図10を参照すると、偏向カテーテル100は、遠位端104および近位端106を有するカテーテル本体102を備えている。カテーテル本体102は、1つの内腔部108と、カテーテル本体102の遠位端104に固定された偏向ハウジング110とを含む。アクチュエータハブ112がカテーテル本体102の近位端106に固定されており、軸方向に移動可能なカニューレ114が内腔部108に配置されている。カニューレ114の遠位長さ部分(distal length)118は、これに限定はしないが、湾曲した形状に予め形成されている。カニューレ114は、鋭利な先端部116を有し、この先端部116は、金属、硬質プラスチック、複合材料の少なくとも1つ、および/または、これらの材料の組合せを用いて形成されている。ある実施形態のカニューレ先端部116は、限定はしないが、放射線不透過性である。上記に代えてまたは加えて、マーカー120に類似の、少なくとも1つの別個の放射線不透過性マーカーが、カニューレの遠位端または遠位端近傍においてカテーテルシステムに含まれていて、透過法での画像化の下での可視化を容易にしている。回転方向に特異な放射線不透過性マーカー120がカテーテル本体102の遠位端近くに取り付けられている。マーカーは、ほぼU字形状の構成を有していて、カテーテル本体102の遠位端の回転位置が、2次元透視画像を用いてマーカーを観察したときに明らかとなるようにしている。ただし、マーカーはこれに限定はされない。
【0059】
偏向カテーテル100は、操作の際、偏向ハウジング(deflector housing)110にある側面口122を通してカニューレ114の遠位先端部を横方向に偏向させる。偏向ハウジング110には遠位口124も含まれ、図8に破線で示すように、カテーテル100をガイドワイヤーGWの近位端に被せるように導入することを可能にする。ガイドワイヤーGWは、遠位口124を通り、カニューレ114の遠位端の中に入り、カテーテル100の近位端までカニューレ114の内腔部を通る。ある実施形態では、それぞれ図8および図9に示した構成の間でカニューレ114を軸方向に後退させ、かつ前進させることで、カニューレ114の遠位長さ部分118を真っ直ぐにし、かつ偏向させる。図5について前述したのと一致して、カテーテルシステムの別の実施形態は、カニューレを後退させたときにある程度湾曲した状態を維持するカテーテルシャフトを含む。
【0060】
図10を参照すると、アクチュエータハブ112は、同軸である一対の入れ子式管130および132を備えている。外側入れ子式管132は、カニューレ114の近位端に、たとえば粘着性物質134を用いて接続されている。近位付属品(proximal fitting)136が管132の近位端にさらに取り付けられていて、カニューレ114、管132および付属品136の組立体が一体として、ハブ112の近位端にある止血付属品(hemostatic fitting)140内を一緒に移動するようになっている。ハブ112には回転付属品(rotational fitting)142がさらに含まれ、この回転付属品142により、カテーテル本体102をハブ本体に対して回転させることができる。カニューレ114およびカテーテル本体102は、相対回転を制限および/または防止するように、互いに回転方向に連結またはキー固定されている。ある実施形態のカニューレ114およびカテーテル本体102は、ハブ内および/または遠位端の近くでのキー固定を利用して連結されており、カテーテルを血管内で回して位置付けるときに、カテーテル本体102の回転により、カニューレ114が同様に回転するようになっている。内腔部108またはカテーテル102を通して灌流および/または注入ができるように、側口148がハブ112に設けられている。
【0061】
図10Aおよび図10Bは、ある実施形態による、不注意によるカニューレの展開を防止するロック機構を備えた近位駆動ハンドル1000の断面図である。ある実施形態の駆動ハンドル1000には一体式ロック部1004を備えたスライド機構1002が含まれ、このスライド機構1002は、ハンドル本体1006の真っ直ぐなスロット内を移動する。スライド部1002は、この実施形態ではカニューレ1010である作用要素1010に取り付けられている。スライド機構を近位および遠位へ動かすと、作用要素1010が前進1030および後退1040する。スライド1002を最大限後退させると、バネ仕掛け1008となっているロック機構1004が作動し、ロック部1004の遠位端が、スライド部が移動するハンドル本体1006におけるスロット部の遠位端の中へと自動的に傾く。その後、スライド部1002および作用要素1010を遠位へ前進させるのは、ロック部1004の近位端を押し下げ、これによりロック部1004の遠位端をハンドル本体1006のスロット部から解放するときに可能になるにすぎない。このようなロック機構1004を用いることにより、カテーテルシステムを血管構造内に通している間に、作用要素1010が不注意で展開することが防止される。止血付属品のような構成部品およびキー固定も、図10に関して前述したように含むことができる。
【0062】
カテーテルシステムの構成部品のキー固定は、前述したように、カテーテルの近位端および遠位端の両方でさまざまな手法で行うことができる。カテーテル100の近位端でのキー固定は、さまざまな方法で行うことができる。図11Aおよび図11Bは、回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステム100の近位領域104の断面図で示している。一例として、ある実施形態のカテーテル1102の入れ子式管130および132は、楕円形断面を有する非対称でかみ合う周縁形状を含む。同様に、別の実施形態におけるカテーテル1112の入れ子式管130および132は、三角形断面を有する非対称でかみ合う周縁形状を含む。これらの形状は例示に過ぎず、本明細書に記載のカテーテルシステムをこれらの形状に限定するものではない。
【0063】
カテーテル100の遠位端でのキー固定も多くの方法で行うことができる。図12は、回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステム100における遠位領域の断面図で示している。たとえば、カテーテル本体102は非対称な内腔部108を含むことができる。カニューレ114は、たとえば、この例ではD字形状の断面である、かみ合う断面を利用する。カテーテル本体102内でのカニューレ114の相対的な回転を制限する能力により、カニューレ先端部116が側面口112を通って現れるときに、カニューレ114の湾曲遠位長さ部分118は、適切に方向付けられる(半径方向外側に向けられる)ことが保証される。
【0064】
図8および図9を参照すると、使用時には、カニューレ114を後退させている間に、カテーテル100をガイドワイヤーGW上で前進させる。カテーテルを適切に位置付けたら、ガイドワイヤーをカニューレ先端部116に対して近位へ数センチメートル後退させ、カニューレ114を遠位へ前進させることができる。遠位への前進は、カニューレがカテーテル本体102の内腔部108内を前進するように、スリーブ132/ハブ136をハブ112の本体に対して前方へ進めることにより行われる。カニューレを前進させる前に、側面口122が血管腔の方へ向くようにこの側面口122を適切に位置付ける。側面口122を位置付けることには、ある実施形態では、回転ハブ142を使ってカテーテル本体102を回すことが含まれる。医師/ユーザは、側面口122が適切な方向に、たとえば半径方向内側に向けられるようにマーカー120を観察する。カニューレを血管内に前進させた後、ガイドワイヤーGWを内腔内に前進させることができる。その後、カニューレ114が近位へと引き戻され、また、その後カテーテル組立体全体がガイドワイヤーの上から回収され、他の介入カテーテルおよび/または診断用カテーテルを導入するために、ガイドワイヤーがその場に残される。
【0065】
カテーテルシステムの遠位端が、カニューレをカテーテルシャフト内に後退させたときに真っ直ぐな構成をとる場合には、キー固定および透視用マーカーの選択肢は非常に多い。図7について前述したように、カテーテルシャフトの遠位端は、カニューレの展開方向を透視用標識120によって特定することができる。カテーテルシステムにおけるこの能力を支援するために、ある実施形態のカニューレおよびカテーテルシャフトは、本明細書に記載のように、互いにキー固定される。カニューレが後退した状態では、カニューレの「湾曲部」は真っ直ぐになり、カニューレの透視画像は展開方向を示さない。このため、真っ直ぐになった「湾曲部」は、展開したときにカニューレが取る方向を示すのに用いるカテーテルシャフトマーカーに、回転してついて行く(キー固定されている)。この回転方向のキー固定(カニューレ湾曲部のカテーテルシャフトのマーカー120に対する整合)は、カテーテルの製造中に設定される。
【0066】
別の実施形態において、透視マーカー120の特徴部(features)は、カテーテルのノーズコーン、すなわち、カテーテルシャフトの遠位終端部の中に直接組み込まれる。カテーテルシャフトおよびカニューレのキー固定もまた前述のように組み込まれる。
【0067】
別の代替実施形態では、カニューレがシャフトと同様のマーキングシステム120を含むことができる。カニューレのマーカーは、カニューレの展開方向を直接的に示すので、カテーテルシャフトとカニューレとの間でキー固定は用いられず、カテーテルシャフトに方向を示すマーキングも使用しない。ただし、この実施形態はこれに限定はされない。
【0068】
さらに別の代替実施形態は、カテーテルシャフトのマーカーとカニューレのマーカーとを組み合わせたものを含む。この実施形態では、カニューレは方向を示す(展開)マーキングを含むので、カテーテルのマーカーは方向を示すものではなく、カテーテル遠位端の場所を示す。簡単な透視用ノーズコーンまたはリングがこの種のマーキングには十分である。
【0069】
カニューレをカテーテルシャフト内に後退させた場合に、カテーテルシステムの遠位端が湾曲した構成をとるときにも、キー固定と透視マーカーとの多くの選択肢がある。ある実施形態では、本明細書で記載したような非指向性透視マーカーが遠位カテーテルシャフトまたは遠位カニューレのいずれかに用いられる。キー固定は含まれない。これは、後退位置にあるカニューレの湾曲により、カテーテルシャフトの遠位部分がカニューレの展開方向に自動的に傾くからである。
【0070】
別の実施形態では、指向性マーカー120が、展開方向を示すためにカニューレの上/中に含まれ、カテーテルシャフトの遠位端の方向を示す湾曲と協調して作用する。キー固定は、この実施形態には含まれない(図6b)
【0071】
別の代替実施形態は、カテーテルシャフトの遠位端の方向を示す湾曲と協調して利用するために、カテーテルに指向性マーカーを含む。前述したように、この実施形態にはキー固定が含まれる。
【0072】
さらに別の代替実施形態は、本明細書に記載のマーキングの仕組み(marking schemes)のうちの1つ以上の組合せを含む。一般に、カテーテルシャフトに指向性のマーキングを用いたときには、常にキー固定を利用し、カテーテルシャフトのマーカーをカニューレの湾曲部が展開する方向に整合させる。
【0073】
上述した、多数の受動的可視化システムに加え、本明細書に記載のカテーテルシステムのさまざまな実施形態は、能動的な実装式可視化システム(active onboard visualization systems)および方法を含むことができる。実装式可視化システムの一例は、回転式超音波システムとして、米国特許第4,951,677号および第5,000,185号に記載されている。ただし、本明細書に記載のカテーテルシステムで用いる実装式可視化システムは、これに限定されない。
【0074】
一方、カテーテルシステムのある実施形態は、医師/ユーザをカテーテルシステムの位置付けにおいて補助するために、完全閉塞部において、または完全閉塞部の近くに、超音波撮像手段または他の撮像手段を提供する。ある実施形態においてガイドワイヤーは、ワイヤーが完全閉塞を通過して前進するときに閉塞物質の有無を検出するように、少なくとも1つの超音波撮像構成部品または装置を含む。別の実施形態では、偏向カテーテルがこのような超音波撮像手段を、たとえば偏向カテーテルの遠位先端部近くに位置するフェーズドアレー(phased array)という形態で含む。米国特許第4,917,097号および第5,368,037号には、偏向カテーテルで使用するためのフェーズドアレーシステムが記載されている。ただし、本実施形態はこのような可視化システムに限定されない。
【0075】
図13は、ある実施形態によるカテーテルシステム1300であり、カテーテルシステム1300は、カテーテルシャフト1302を含み、カテーテルシャフト1302は、遠位端口1304と、近位フェーズドアレー超音波装置1310とを有する。フェーズドアレー超音波装置1310は、カテーテルシャフト1302の遠位端にあるカテーテルシステム1300のノーズコーン1306の内部および/または上に含まれているが、カテーテルシステム1300の他の構成部品の内部/上に含まれることもできる。カテーテルシャフト1302を回すと、フェーズドアレー超音波装置1310が周囲組織の画像を生成し、その画像が血管の真腔を確認するのに用いられる。血管の真腔が正確に確認されたら、カニューレ(不図示)がカテーテルシャフト1302の内腔部1308の中を前進する。カニューレは、超音波画像で確認された通りに、血管の真腔の方向へ出るようにキー固定される。あるいは、回転式撮像用カテーテルシステムまたはその機能構成部品が、周囲組織を撮像できるカテーテルの遠位部位まで、必要に応じて、カテーテルシステムの内腔部内、または、カテーテルシステムのカニューレ内のいずれかに前進する。
【0076】
ある実施形態の可視化システムは、限定はしないが、超音波撮像用ガイドワイヤーを含む。たとえば、米国特許第5,095,911号には超音波撮像ガイドワイヤーが記載されている。ただし、本実施形態は、この特定の撮像用ガイドワイヤーに限定されない。さらに別の代案として、撮像用ガイドワイヤーは、ガイドワイヤーおよびカテーテルの方向とは逆方向に完全閉塞の領域まで前進することもできる。このように、撮像用ガイドワイヤーを完全閉塞の中を前進させる必要がなく、それでも、カテーテルおよび/またはガイドワイヤーの前進を検出することができ、特に、カテーテルおよび/またはガイドワイヤーに超音波不透過性構成部品が設けられている場合に検出することができる。さらに別の代案では、超音波撮像用カテーテルまたはガイドワイヤーが動脈の閉塞部位近傍の静脈内に位置付けられ、ガイドワイヤーがその閉塞領域の中を前進する間、閉塞した領域全体の撮像が可能になる。
【0077】
一般に、超音波可視化システムは、少なくとも2つの方法のもとで使用することができる。第1の方法のもとでは、回転式超音波カテーテルシステムまたはその機能構成部品が、周囲組織を撮像するのに適したカテーテルシャフトの遠位領域まで、初めにカテーテル内腔部内で前進する。一例として、超音波構成部品をカテーテルの遠位端の向こう側へ前進させることがある。図14Aは、ある実施形態による、周囲組織を撮像するためにカテーテルシャフト1406の遠位端1404の向こう側に展開された超音波可視化システム1402を示している。
【0078】
別の例として、超音波構成部品は、カテーテルシャフトの遠位領域まで送られながらも、カテーテル内に収容されたままにすることもできる。図14Bは、カテーテルシステムのノーズコーン1412内の窓部1410から周囲組織を撮像するように展開された、ある実施形態による超音波可視化システム1402を示している。窓部は、限定はしないが、ポリエチレンのような、超音波システムの作動周波数で音響透過特性を有するポリマーから形成することができる。
【0079】
撮像をするのに適切な場所まで超音波システムを前進させた後、カテーテルをいろいろな方法にしたがって血管の真腔に整合させる。カテーテル整合の第1の方法のもとでは、カテーテルの遠位端にある特徴部、たとえば、観察窓部のようにノーズコーンに機械加工された特徴部等が超音波撮像により確認され、側面口または遠位口を真腔に整合させるのに用いられる。超音波システムがその後引き抜かれ、キー固定されたカニューレシステムがカテーテル内腔部内で前進し、観察窓部および真腔の方向に出る。
【0080】
カテーテル整合の第2の方法のもとでは、カテーテル整合の第1の方法で記載したのと同様の超音波システム/構成部品を用いてカテーテルの出入口を血管の真腔に整合させる。ただし、(前述したように)血管の真腔とカニューレを整合するためにキー固定機構に頼る代わりに、カテーテルの超音波構成部品が透視用整合特徴部として利用される。このように、超音波構成部品を用いてカテーテルの出入口を血管の真腔に整合させたら、同じ特徴部が、透視による整合を提供し、血管の真腔の方向を示す。指向性透視マーカー付きのカニューレが次にカテーテル内を前進し、透視によりカテーテルマーカーと整合し、血管の真腔へと展開を誘導する。
【0081】
超音波可視化システムが使用される第2の方法には、回転式超音波カテーテルシステムまたはその機能構成部品をカニューレ内で前進させることが含まれる。図15は、周囲組織を撮像するために、カテーテルシャフト1506のカニューレ1504内に展開された、ある実施形態による超音波可視化システム1502を示している。この方法のもとでは、遠位口から外に延びる超音波システムで撮った画像、または、カテーテルシャフトの遠位端にある側面窓部を通して撮られた超音波画像のいずれかによって、血管の真腔をまず確認するのに超音波撮像が利用される。さらに、超音波撮像システムを若干後退させて、カニューレシャフトまたは先端部にある、カニューレの展開方向を示す特徴部を確認してもよい。次にカニューレは、確認されたカニューレの特徴部を血管の真腔と整合させるために、適宜、回転することができる。次にカニューレは、血管の真腔へのアクセスを得るように展開される。
【0082】
ある実施形態の偏向カテーテルシステムは、リエントリ・カテーテル(re-entry catheter)を含む。リエントリ・カテーテルの一例は、カリフォルニア州、レッドウッドシティのLuMend(登録商標)から入手可能なOutback(登録商標)LTDリエントリ・カテーテルである。リエントリ・カテーテルは、内腔が1つだけのカテーテルで、ガイドワイヤーおよびカテーテルの血管構造内での配置、および位置付けがしやすくなるように構成されている。ある実施形態では、ガイドワイヤーおよびカテーテルが末梢血管構造内に配置され、かつ位置付けられるが、末梢血管構造に限定されるわけではない。より具体的には、リエントリ・カテーテルにより、内膜下空間から末梢動脈の真腔へガイドワイヤーを再び入れることが可能になる。
【0083】
ある実施形態のリエントリ・カテーテルは、限定はしないが、概して、カテーテルシャフトまたはカテーテル本体であって、遠位端にカテーテルノーズコーンを備え、近位端にコントロール・ノブ付きの展開ハンドルを備えた、カテーテルシャフトまたはカテーテル本体を含む。リエントリ・カテーテルは、カニューレおよび/もしくはガイドワイヤーを含むガイドまたはガイドシステムを含み、かつ/あるいは、そのガイドまたはガイドシステムとともに作用する。同心の内腔部がハンドルから延び、カテーテルシャフトを通り、そしてカテーテルノーズコーンを通って出ている。内腔部は、カニューレ先端部および/またはガイドワイヤーを有するカニューレを受け入れて通すように構成されている。用語「作用要素(working element)」は、カニューレ、ガイドワイヤー、または、ガイドワイヤーと組み合わせたカニューレをいうのに本明細書では使用される。カニューレおよびカニューレ先端部を通って延びる同心内腔部が、ガイドワイヤーを受け入れ、通すように構成されている。
【0084】
ハンドルの展開用スライド部を近位へ引くと、カニューレ先端部が遠位の側面口内に同軸に位置付けられ、カテーテルおよびカニューレがガイドワイヤー(たとえば0.356mm(0.014インチ)のガイドワイヤー)上をたどることができる。対象の血管部位、つまり、所望の血管部位に来たら、カテーテルを(たとえば透視による)可視化によって整合し、ハンドルの回転用ルアーを回すことで位置付けて、カテーテルの側面出口を、ノーズコーンに位置するカテーテル指向性マーカーバンドによって整合する。所定位置についたら、ガイドワイヤーをカニューレの中へと後退させ、必要に応じて湾曲したカニューレ先端部をカテーテル側面口から前進させて、対象となっている血管の場所にアクセスすることができる。ある実施形態におけるカニューレの湾曲部は(たとえば透視で)視認でき、リエントリ工程の間の進入点を示すことができる。ガイドワイヤーは、カニューレ先端部から対象となっている血管部位内まで延びるように前進する。カニューレ先端部は、その後、カテーテルの側面口の中へと引き戻され、そして、カテーテルを近位へ後退させ、ガイドワイヤーを血管構造内の所定位置に残す。リエントリ・カテーテルの操作は、以下に詳述する。
【0085】
リエントリ・カテーテルの一例として、図17は、ある実施形態によるリエントリ・カテーテル1700を、伸ばした構成で示している。リエントリ・カテーテル1700は、展開用ハンドル1702(ハンドル)と、回転式止血弁(RHV)と、カテーテルシャフト1704と、カテーテルノーズコーン1706と、カニューレとを含み、カニューレはカニューレ先端部1708を有する。展開用ハンドル1702の一例は、図10に関連して前述している。ある実施形態のカテーテルシャフトは、長さが約120cmであるが、この長さに限定はされない。カニューレ(不図示)は、カテーテルシャフトの内側内腔部に位置付けられており、近位端に、ガイドワイヤーを受け入れるためのカニューレワイヤーポート1710を含む。カニューレは軸方向に動かすことができる。同心のガイドワイヤー内腔部(不図示)が、ハンドル1702からカニューレおよびカニューレ先端部1708を通って延び、カテーテルノーズコーン1706を通って外に出ている。リエントリ・カテーテル1700は、展開用スライド部解放ボタン1712、フラッシュポート(flush port)1714、および、このリエントリ・カテーテルが使用される医療処置に適する他の構成部品を含むこともできる。リエントリ・カテーテル1700は、限定はしないが、おおよそ60cm〜160cmまでの範囲の作業長(working length)を有し、2.55mm(8フレンチ)〜1.27mm(4フレンチ)のシースに適合する。リエントリ・カテーテル1700と適合するガイドワイヤーとしては、0.254mm(0.010インチ)〜0.965mm(0.038インチ)の同軸ガイドワイヤーが含まれる。
【0086】
ある実施形態のカニューレは、おおよそ22ゲージ(gauge)の外径を有し、限定はしないが、ニッケル・チタン(ニチノール)のような形状記憶合金を含む材料から形成された、予め形成された湾曲リエントリ・カニューレである。カニューレは、放射線不透過性材料(radio-dense material)(たとえば金、白金、タンタル、ならびに/または、人体での使用および採用している手技での使用に適した他の材料もしくは金属)で覆ってもよく(たとえばメッキする(plated)、付着させる等)、ある実施形態のカテーテルシャフト1704にキー固定してもよいが、これに限定はされない。使用する場合、カニューレのカテーテルシャフト1704に対するキー固定の例は、限定はしないが、図11および図12について前述してある。カニューレは、鋭利な先端部を有し、この先端部は、金属、硬質プラスチック、複合材料のうちの少なくとも1つ、および/または、これらの材料の組合せを使って形成される。ある実施形態のカニューレ先端部には、限定はしないが、放射線不透過性材料が含まれていることがある。これに代えて、または加えて、少なくとも1つの独立した放射線不透過性マーカーが、カニューレの遠位端またはその近くにおいてこのカテーテルシステムに含まれ、透視法による画像化の下で可視化を容易にすることもできる。
【0087】
伸ばした構成では、カニューレ、およびカニューレ先端部1708またはガイド先端部が、リエントリ・カテーテル1700の遠位領域にある出入口を貫通している。図18は、ある実施形態によるリエントリ・カテーテル1700の遠位部分1750を示している。遠位部分1750は、カテーテルシャフト1704の遠位端に連結されたカテーテルノーズコーン1802を含む。カテーテルノーズコーン1802は、遠位ハウジング1812と、ノーズコーン組立体1822とを含む。カテーテルノーズコーンは、以下に詳述するように、LT指向性マーカーバンド1840をも含む。カニューレ1830は、リエントリ・カテーテル1700から展開されたときには、カテーテルノーズコーン1802の側面口1804または側面出口を通って延びる。これは、カニューレ1830の遠位端がカテーテルノーズコーン1802から出るからである。ある実施形態のカニューレ1830は、ガイドワイヤー1850を展開するように構成されている。
【0088】
図19は、ある実施形態による、後退させた構成のリエントリ・カテーテル1700を示している。後退させた構成では、カニューレ1830がカテーテルシャフト1704内へと引っ込められ、カニューレ先端部(不図示)は、カテーテルノーズコーン1706の出口を通って突出しないようになっている。
【0089】
図20Aは、ある実施形態によるカテーテルノーズコーン1802の遠位ハウジング1812の斜視図である。遠位ハウジング1812は、ノーズコーン組立体(不図示)とともにカテーテルノーズコーンを形成する。遠位ハウジング1812は、カテーテルシャフト(不図示)の遠位端または遠位領域に連結または接続される近位領域2002を含む。遠位ハウジングの遠位領域2004は、前述したように、側面口1804をも含む。
【0090】
図20Bおよび図20Cは、ある実施形態による遠位ハウジング1812の側面断面図である。図示の寸法は全てインチ表示である。遠位ハウジング1812は、内腔部2010を含み、内腔部2010は、側面口1804および遠位口2012とつながっている。遠位ハウジングの内腔部2010の近位領域2010Pは、カテーテルシャフトの内腔部(不図示)の遠位領域に連結されており、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを受け入れ、通すように構成されている。遠位ハウジングの内腔部2010の中間領域2010Mは、内腔部の近位領域2010Pを側面口1804に連結しており、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを受け入れ、通すように構成されている。内腔部の中間領域2010Mはまた、受動的偏向機構である湾曲領域を含むように構成されている。受動的偏向機構は、操作中は、カニューレおよび/またはガイドワイヤー(不図示)の遠位先端部を、遠位ハウジング1812の側面口1804に通して横方向に偏向させる。
【0091】
内腔部の中間領域2010Mは、遠位ハウジングの内腔部2010の遠位領域2010Dにも連結されている。内腔部の遠位領域2010Dは、断面積が内腔部の近位領域2010Pおよび中間領域2010Mよりも相対的に小さい。相対的に断面積が小さいことにより、遠位領域2010Dは、ガイドワイヤーを遠位口2010に通すのに対応できるが、より大きなカニューレの通過を妨げる。遠位口2012は、ガイドワイヤー(不図示)の近位端の上にリエントリ・カテーテルを導入することを可能にしており、ガイドワイヤーは、カテーテルの近位端まで、ノーズコーン組立体と、遠位ハウジングの遠位口と、カニューレの内腔部とを通る。
【0092】
ある実施形態のリエントリ・カテーテルは、リエントリ・カテーテルを患者の血管構造内に置く、および/または位置付けるのに使用するマーカーを含む。マーカーは、本明細書ではLT指向性マーカーバンドともいい、ある実施形態のカテーテルノーズコーンのノーズコーン組立体(図18の要素1822)に位置しているが、リエントリ・カテーテルの1つ以上の他の部分に位置することもできる。LT指向性マーカーバンドは、円形の構成をした第1部分2110を含む。第1部分2110は、カテーテルノーズコーンの内腔部(不図示)を収めるための開口部2111を含む。第1部分2110は第2部分2112に接続されており、この第2部分2112は、第1部分2110から外へと延びていて、第1部分2110を含む面に対してほぼ直交するように向けられている。LT指向性マーカーバンドは、限定はしないが、マーカーの第1部分2110が第2部分2112に対して遠位となるように、側面口に対して遠位に、ノーズコーン組立体に位置付けられている。
【0093】
図21Aは、ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの第1側面図2101である。第1側面図2101は、LT指向性マーカーバンドを、後述するように、カニューレ先端部を対象の組織部位に向けて設置する際に使用するために「L」字形状として表している。図21Bは、ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの第2側面図2102である。第2側面図2102は、第1側面図2101の位置から90度回転させた場合のLT指向性マーカーバンドの図である。第2側面図2102は、LT指向性マーカーバンドを、後述するように、カニューレ先端部の場所を対象の組織部位に対して調整する際に使用するために「T」字形状として表している。図21Cは、ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの端面図2103である。全ての寸法はインチ表示である。
【0094】
リエントリ・カテーテルは、前述したように、カテーテルおよびガイドワイヤーを血管構造内に置くこと、および位置付けることを容易にするように構成されている。より具体的には、リエントリ・カテーテルは、血管構造の慢性完全閉塞を横断しやすいように構成されている。図22は、ある実施形態による、リエントリ・カテーテルを使って閉塞を横断するための流れ図2200である。医師/ユーザまたは他の臨床医(本明細書ではユーザという)は、リエントリ・カテーテルを患者の血管構造にガイドワイヤーを使って位置付け(2202)、カテーテルの出口を血管の所望の対象部位に向ける(2204)。ユーザは、ガイドワイヤー先端部をリエントリ・カテーテルの中へと後退させる(2206)。カニューレ先端部がカテーテルの側面口から伸ばされ、血管の対象部位で位置付けられる(2208)。ユーザは、ガイドワイヤーをカニューレ先端部に通して前進させて血管の対象部位で位置付ける(2210)。ユーザは、ガイドワイヤー上でカテーテルを後退させ、その後の治療措置に備えてガイドワイヤーを同じ場所に残す(2212)。
【0095】
ガイドワイヤーを血管構造内に置く、および/または位置付けるために、ある実施形態におけるリエントリ・カテーテルの使用準備をする場合、医師または他の臨床ユーザは、ハンドルの展開用スライド部をしっかりと止まるまで近位へ後退させることによって、カニューレの先端部を最大限後退させる。患者の体に挿入する前に、ユーザは、カニューレ先端部がカテーテルの側面口内に完全に後退していること、および、ハンドルの展開用スライド部が最も近位の位置にロックされていることを確実にする。
【0096】
ユーザは、ガイドワイヤー(たとえば、0.356mm(0.014インチ)のガイドワイヤー)をカテーテルに、カテーテルノーズコーンの遠位端口を通して逆方向に詰め込み(back-loads)、カテーテルおよびガイドワイヤーを適当な経皮的技法を用いて血管構造内に導入する。ガイドワイヤーが既に血管構造内に置かれている場合には、ガイドワイヤーは、カテーテルノーズコーンの遠位端口を通してカテーテルに逆方向に詰められる。ガイドワイヤーを逆方向に詰め込む前に、ユーザは、確実に、カニューレ先端部がカテーテルシャフト内に完全に引き戻されているようにする。カテーテルの前進、操作、回収は、高品位透視誘導下で行われるが、リエントリ・カテーテルの構成に適する他の種類の誘導を用いることもできる。ガイドワイヤー上をカテーテルにたどらせている間、ユーザは、カニューレ先端部がカテーテルの側面口内に完全に後退していること、および、ハンドルの展開用スライド部が最も近位の位置にロックされていることを確認しなければならない。
【0097】
カテーテルを患者の血管構造内に導入する際、ユーザは、所望の血管部位までガイドワイヤー上をカテーテルにたどらせる。カテーテルは、送達の間、必要に応じてハンドルのRHVでトルクを与えられる。カテーテルの操作/送達中に強い抵抗を感じたら、ユーザは、処置をさらに続ける前に、抵抗の原因を確認しなければならない。たとえば、3〜4ミリメータのバルーンを使って、カテーテル送達軌道に沿った抵抗地点を必要に応じて広げることが考えられる。
【0098】
所望の血管部位の近くである場合、リエントリ・カテーテルは、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを展開する前に、位置付けられる。前述したように、リエントリ・カテーテルの遠位ハウジングは、カテーテルの位置を特定(locating)、調整するのに使用し、かつ、作用要素を展開するのに使用するLT指向性マーカーバンドを含む。LT指向性マーカーバンドは、通常、側面口の位置を特定し、調整するのに利用され、この側面口を通してカニューレおよび/またはガイドワイヤーが血管構造における対象の再入部位(re-entry site)に対して展開される。図23は、ある実施形態のもとで、如何にしてLT指向性マーカーバンドが、リエントリ・カテーテルの側面口の位置を特定し、調整するのに利用されるかを示している。LT指向性マーカーバンドの「L」字形状2302は、展開したときに側面口、そしてそれ故にカニューレ先端部を対象の再入部位に向けて位置させるのに利用される。LT指向性マーカーバンドの「T」字形状2304は、側面口の位置を、そしてそれ故に展開するカニューレ先端部の場所/方向を対象の再入部位に対して調整または微調整するのに利用される。したがって、LT指向性マーカーバンドを利用する臨床医は、LT指向性マーカーが「L」字形状2302で現れるようにリエントリ・カテーテルを回転させることにより、側面口の向いている方向を特定または識別する(2312)。「L」字形状2302の下側水平部分の方向は、カニューレ先端部の展開方向を示す。臨床医は、LT指向性マーカーバンドが「T」字形状2304に見える(2314)ようになる方向にカテーテルを回すこと(2313)でカニューレ先端部の展開位置を微調整する。したがって、マーカーが方向を示す能力(directional capability)により、超音波誘導を用いることなくたとえば抹消動脈の真腔内にガイドワイヤーを置くことが可能になる。
【0099】
LT指向性マーカーバンドは、処置の間、以下のように利用される。所望の血管部位の近くの領域にきたら、ユーザは、透視を利用して可視化した場合に、リエントリ・カテーテルの遠位ハウジングが対象の再入部位(たとえば真腔)の近傍に位置するように、リエントリ・カテーテルを向ける(たとえば回転させる)。カテーテルの側面出口は、RHVを回すことによって、所望の血管の対象部位の方に向けられる。透視誘導を用いて、ユーザは、カテーテルのLT指向性マーカーバンドにある「L」字マーカーの足部の位置を、初期透視画像を利用して対象となる再入部位(たとえば真腔)に向けて位置付けるように、遠位ハウジングを向ける。
【0100】
最初の場所および向きが確認されたら、直交する透視画像(たとえば、先ほどの透視画像に対して90度回転させた位置からの画像)を撮って、リエントリ・カテーテルの遠位ハウジングが、可視である「L」字マーカーの足部によって示されたように、対象の再入部位と「一列に並ぶ(in line)」ように位置付けられていることを確認する。次にユーザは、RHVを回すことによって、カテーテルの側面出口を所望血管の対象部位の方へ向ける。ユーザは、初期の向きのこのような調整を、透視誘導下で、ノーズコーンにあるカテーテルのLT指向性マーカーバンドが「T」字に見えるようになるまで、RHVを回すことで行う。さらに向きを調節することが必要である場合、これは、RHVを回すことで行うことができる。確認用の画像(たとえば直交画像)は、処置に適切なようにカテーテルを再入対象に向けて新たに調整する度に検討すべきである。
【0101】
前述したように、リエントリ・カテーテルを適切に位置付けるために遠位ハウジングの位置を特定し、調整することが完了したら、ユーザは、カテーテルシャフトに蓄積させた全てのトルクを解放する。ユーザは、ハンドル展開スライド部を作動させる前に、カテーテルのLT指向性マーカーバンドのスロットが所望の血管の場所(対象部位)の方へ向いていることを確実にし、透視誘導を利用してガイドワイヤーの位置を確認しながら、ガイドワイヤー先端部をカテーテルの中へ約5cm後退させる。ハンドル展開スライド部解放ボタンを押し下げてスライドを適当に少しずつ進め、カニューレ先端部をカテーテル側面口から伸ばし、つまり、展開して、血管の対象部位に位置付ける。
【0102】
ガイドワイヤーは、展開されたカニューレ先端部の中を前進し、このカニューレ先端部を血管の対象部位に望み通りに位置付ける。ガイドワイヤーを遠位へと進めた後に、ガイドワイヤーを後退させることが求められ、抵抗を受けた場合、最初にカニューレ(ガイド)をカテーテル内へ最大限後退させ、続けてガイドワイヤーを後退させる。ガイドワイヤーを前進させ、配置した後、ハンドル展開スライド部をしっかりと止まるまで最大限後退させることにより、カニューレ先端部をカテーテル内へ引っ込め、そして、ハンドル展開スライド部のボタンを解放して、展開スライド部を後退位置にロックする。ユーザは、ガイドワイヤー上のカテーテルを回収する前に、カニューレ先端部がカテーテル側面口内へ完全に後退していること、および、ハンドル展開スライド部がロックされていることを確実にしなければならない。次にカテーテルをガイドワイヤー上で後退させ、ガイドワイヤーは、1つ以上のその後の治療処置のためにその場に残す。
【0103】
ある実施形態のリエントリ・カテーテルは、リエントリ・カテーテルの遠位領域を固定するためのアンカリング装置またはシステムを含むことができる。カテーテルのアンカリングシステムとしては、生物分解性ジェル/接着剤、バルーン、ワイヤーメッシュ/ネット、固定用ワイヤー、および/または、伸ばされたカテーテル先端部の利用が含まれる。これらのアンカリングシステムの各々を以下に詳述する。
【0104】
ジェル式のアンカーは、カテーテルとホスト動脈(host artery)の周りの内膜下層における空間または隙間を充填するのに生物分解性ジェルまたは接着剤を使用する。カテーテルは、ガイドワイヤーをたどって内膜下空間に入れられ、再入点に適切に位置付けられる。生物分解性ジェルは、内膜下層にカテーテルを介して近位端から送り込まれる。ジェルは、いったん送り込まれると、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを用いた再入処置の間、カテーテルを安定させる。カテーテルが安定したら、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして再入処置が続けられる。
【0105】
バルーンアンカーは、さまざまな材料から形成された隙間充填バルーンを使用して、カテーテルおよびホスト動脈の周りの拡張された内膜下空間を充填する。カテーテルは、ガイドワイヤーをたどって内膜下空間に入れられ、再入点に対して適切に位置付けられる。カニューレは、真腔に再入するために側面口から展開される。カテーテルの遠位端が不安定であるために再入が上手く行かない場合、バルーンを内膜下空間の構成に適する量だけ膨らませる。適切に膨張させたバルーンは、カテーテルの遠位領域を囲む内膜下空間の大きさを小さくし、これにより、カテーテルの遠位領域を安定化させる。カテーテルが安定になったら、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして再入処置が続けられる。バルーンは、真腔への再入が成功した後に収縮させる。
【0106】
ワイヤーメッシュまたはネットアンカーは、ゆったりした空間、つまり、内膜下層の大きな切開面を充填するのにメッシュまたはネットを用いる。カテーテルは、ガイドワイヤーをたどって内膜下空間に入れられ、再入点に対して適切に位置付けられる。カニューレは、真腔に再入するために、側面口から展開される。カテーテルの遠位端が不安定なために再入がうまく行かない場合、メッシュが、カテーテルの近位端および内腔部を介して内膜下層に導入される。メッシュを導入するとカテーテルの遠位領域の周囲の内膜下空間の大きさが小さくなり、これにより、カテーテルの遠位領域を安定化させる。カテーテルが安定になったら、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして再入処置が続けられる。メッシュは、真腔への再入が成功した後、カテーテル内に後退させられる、つまり、引き戻される。
【0107】
アンカリングワイヤーは、適当な材料(たとえば、金属、ポリマーなど)から作られたワイヤー、コイル、および/または、尖った器具(prongs)を使って内膜下空間にある組織および/または筋肉を押圧する。組織に対する圧力により、カテーテルは、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを展開している間、安定になる。カテーテルが安定になったら、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして再入処置が続けられる。アンカリングワイヤーは、真腔への再入が成功した後、カテーテル内に後退させられる、つまり、引き戻される。
【0108】
伸ばしたカテーテルの先端部を利用するアンカリングでは、対象の内腔と、対象の再入部位を越えたところの組織との間に隠れる(submerges)、伸ばされた先端部を提供する。カテーテルを対象の再入部位までたどらせ、おおよそ位置付けられたら、ノーズコーンの側面口を越えて延びる、伸ばされた先端部は、内腔部と血管構造組織との間に閉じこめられる。結果として、伸ばした先端部は、血管構造の解剖学的構造を利用してカテーテルの遠位領域を安定化、つまり、保持する。その後、再入処置は、カニューレおよび/またはガイドワイヤーを伸ばして続けられる。
【0109】
ある実施形態のカテーテルシステムとしては、血管構造に使用するためのカテーテルシステムが含まれる。ある実施形態のカテーテルシステムは、本体内腔部を含むカテーテル本体を備える。ある実施形態のカテーテルシステムは、カテーテル本体の遠位端に連結されたノーズコーンを含む。ある実施形態のノーズコーンは、ノーズコーン内腔部と、側面口と、遠位口とを含む。
【0110】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の近位部分は、本体内腔部とつながっている。
【0111】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の中間部分は、側面口および近位部分とつながっている受動的偏向領域を含むように構成されている。
【0112】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の遠位部分は、遠位口および近位部分とつながっている。
【0113】
ある実施形態のカテーテルシステムは、ノーズコーンにマーカーを含み、このマーカーは、血管構造における対象部位に対する側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成されたている。
【0114】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の遠位部分の断面積は、近位部分および中間部分の断面積より比較的小さい。
【0115】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の中間部分は、カニューレが側面口まで通るように構成されている。
【0116】
ある実施形態のノーズコーン内腔部の遠位部分は、ガイドワイヤーが遠位口まで通るように構成されている。
【0117】
ある実施形態のマーカーは、側面口に対し遠位に位置している。
【0118】
ある実施形態のマーカーの複数のシンボルには、第1のシンボルおよび第2のシンボルが含まれる。
【0119】
ある実施形態のカテーテルシステムは、遠位端を有する作用要素を含んでおり、この遠位端は、作用要素が側面口を通って遠位に前進した場合に、内膜下空間内の第1血管場所から血管構造の真腔内の第2血管場所へ送達されるように、側面口を通って展開するように構成されている。
【0120】
ある実施形態の作用要素は、カテーテル本体にキー固定されている。
【0121】
ある実施形態の作用要素は、少なくとも1つの内腔部を有するカニューレを含む。
【0122】
ある実施形態の作用要素は、カニューレと、そのカニューレ内にスライド可能に配置された少なくとも1つのガイドワイヤーとを含む。
【0123】
ある実施形態の作用要素の遠位端は、予め成形された、弾性のある先端部を含む。
【0124】
ある実施形態の作用要素の遠位端は、作用要素をカテーテル本体内に引っ込めたときに第1の構成をとり、作用要素が側面口を通って伸ばされたときに第2の構成をとる。
【0125】
ある実施形態のカテーテルシステムは、内膜下空間から血管構造の真腔に再入するための方法を含む。ある実施形態の方法は、カテーテルをワイヤー上で前進させて内膜下空間に入れること、およびワイヤーを後退させることを含む。ある実施形態の方法は、可視化をしている間に、カテーテルの遠位領域にあるマーカーが示す複数のシンボルの情報を用いて、カテーテルの側面口の位置を特定し(locating)、真腔の対象となる再入部位にほぼ隣接するように位置付けることを含む。ある実施形態の方法は、ワイヤーを側面口に通して真腔に入れるように前進させ、真腔にワイヤーが再入することを含む。
【0126】
ある実施形態における位置特定および位置付けは、第1のシンボルを示す位置までカテーテルを回転させることにより、側面口を真腔にほぼ隣接するように位置付けることを含む。
【0127】
ある実施形態における位置特定および位置付けは、第2のシンボルを示す位置までカテーテルを回転させることにより、側面口の位置付けを調整することを含む。結果として第2のシンボルを示す可視化中の撮像装置の位置は、結果として第1のシンボルを示す可視化中の撮像装置の位置に対してほぼ直交している。
【0128】
ある実施形態の方法は、カニューレを対象となる再入部位に向けて側面口に通して前進させることを含む。
【0129】
ある実施形態におけるカニューレを前進させることには、カニューレをカテーテルから偏向させることが含まれる。
【0130】
ある実施形態におけるカニューレを前進させることには、ワイヤーをカニューレに通して前進させることが含まれる。
【0131】
ある実施形態の可視化には、透視が含まれる。
【0132】
内膜下空間は、血管構造のびまん性疾患内に位置する。
【0133】
内膜下空間は、血管構造の外膜層と内膜層の間に位置する。
【0134】
文脈が明らかに異なることを求めている場合を除き、説明および特許請求の範囲を通して、用語「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」等は、唯一または網羅的な意味とは逆の、含むという意味(inclusive sense)、つまり、「含む(including)」がそれに限定されないという意味に解釈しなければならない。単数または複数で用いた言葉は、それぞれ、複数および単数をも含む。さらに、用語「本明細書において(herein)」、「以下(hereunder)」、「上記(above)」、「以下(below)」および同様の意味の用語は、本明細書で用いる場合には、本明細書全体をいい、本明細書のいずれか特定の部分をいうものではない。2つ以上の項目のリストについて用語「または(or)」が用いられた場合、この用語は、その用語についての以下の解釈の全てを含む。すなわち、リストの任意の項目、リストの全ての項目、および、リストにある項目の任意の組合せである。
【0135】
カテーテルシステムの例示した実施形態についての上記の記載は、網羅的である、または開示した形態そのものにカテーテルシステムを限定しようとするものではない。カテーテルシステムの特定の実施形態および例を説明のために本明細書に記載したが、当業者には分かるように、このカテーテルシステムの範囲内において、さまざまな均等な変更例が可能である。本明細書でカテーテルシステムについて教示したことは、他の医療機器およびシステムに応用でき、上記のカテーテルシステムのためだけのものではない。
【0136】
上述したさまざまな実施形態における要素および動作は、組合せて、カテーテルシステムの他の実施形態を提供することができる。上記の詳細な説明を考慮して、前述の、およびその他の変更をカテーテルシステムに行うこともできる。さらに、必要であればカテーテルシステムの態様を変更して、前述したさまざまな特許および特許出願のシステム、機能および概念を利用し、システムのさらに別の実施形態を提供することもできる。
【0137】
一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、カテーテルシステムを明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈してはならず、むしろ、血管閉塞を横断するために、特許請求の範囲のもとで作動する全てのカテーテルシステムおよび医療機器を含むと解釈すべきである。したがって、カテーテルシステムは開示内容で限定はされず、むしろ、カテーテルシステムの範囲は、専ら特許請求の範囲によって決まる。
【0138】
カテーテルシステムの特定の態様が以下に特定の請求項の形式で示されている一方で、発明者は、カテーテルシステムのさまざまな態様を多数の請求項の形式で考えている。したがって、発明者は、本明細書の出願後にさらに別の請求項を加えて、カテーテルシステムの他の態様のためのこのような別の請求項の形式を追求する権利を留保するものである。
【0139】
〔実施の態様〕
(A)血管構造に使用するためのカテーテルシステムにおいて、
本体内腔部を含むカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に連結された遠位終端部であって、
前記遠位終端部は、遠位終端部内腔部、側面口、および遠位口を含み、
前記遠位終端部内腔部の近位部分は、前記本体内腔部とつながっており、
前記遠位終端部内腔部の中間部分は、前記側面口および前記近位部分とつながっている受動的偏向領域を含むように構成されており、
前記遠位終端部内腔部の遠位部分は、前記遠位口および前記近位部分とつながっている、
遠位終端部と、
前記遠位終端部に設けられたマーカーであって、前記血管構造における対象部位に対する前記側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成された、マーカーと、
を備え、
前記マーカーは、LT指向マーカーであって、前記遠位終端部が回転することによって、L字形状またはT字形状に見えるものであり、前記マーカーは、前記長手方向に延びる第1部分、及び、該第1部分の遠位端に接触していて前記長手方向に対し直交方向に延びる第2部分から構成されている、カテーテルシステム。
(1)血管構造に使用するためのカテーテルシステムにおいて、
本体内腔部を含むカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に連結されたノーズコーンであって、
前記ノーズコーンは、ノーズコーン内腔部、側面口、および遠位口を含み、
前記ノーズコーン内腔部の近位部分は、前記本体内腔部とつながっており、
前記ノーズコーン内腔部の中間部分は、前記側面口および前記近位部分とつながっている受動的偏向領域を含むように構成されており、
前記ノーズコーン内腔部の遠位部分は、前記遠位口および前記近位部分とつながっている、
ノーズコーンと、
前記ノーズコーンに設けられたマーカーであって、前記血管構造における対象部位に対する前記側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成された、マーカーと、
を備える、カテーテルシステム。
【0140】
(2)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位部分の断面積は、前記近位部分および前記中間部分の断面積より比較的小さい、カテーテルシステム。
(3)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記中間部分は、カニューレが前記側面口まで通るように構成されている、カテーテルシステム。
(4)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位部分は、ガイドワイヤーが前記遠位口まで通るように構成されている、カテーテルシステム。
(5)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記マーカーは、前記側面口に対し遠位に位置しており、
前記複数のシンボルは、第1のシンボル、および第2のシンボルを含む、カテーテルシステム。
【0141】
(6)実施態様1に記載のカテーテルシステムにおいて、
遠位端を有する作用要素、
をさらに備えており、
前記遠位端は、前記作用要素が前記側面口を通って前進した場合に、内膜下空間内の第1血管場所から前記血管構造の真腔内の第2血管場所へ送達されるように、前記側面口を通って展開するように構成されている、カテーテルシステム。
(7)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、前記カテーテル本体にキー固定されている、カテーテルシステム。
(8)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、少なくとも1つの内腔部を有するカニューレを含む、カテーテルシステム。
(9)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、
カニューレと、
前記カニューレ内にスライド可能に配置された少なくとも1つのガイドワイヤーと、
を含む、カテーテルシステム。
【0142】
(10)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素の前記遠位端は、予め形成された、弾性のある先端部を含む、カテーテルシステム。
(11)実施態様6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素の前記遠位端は、前記作用要素が前記カテーテル本体内に引っ込められたときに第1の構成をとり、前記作用要素が前記側面口を通って伸ばされたときに第2の構成をとる、カテーテルシステム。
(12)内膜下空間から血管構造の真腔に再入するための方法において、
カテーテルをワイヤー上で前進させて前記内膜下空間に入れ、前記ワイヤーを後退させることと、
可視化をしている間に、前記カテーテルの遠位領域にあるマーカーにより示された複数のシンボルの情報を用いて、前記カテーテルの側面口の位置を特定し、前記真腔の対象の再入部位にほぼ隣接するように位置付けることと、
前記ワイヤーを前記側面口に通して前記真腔に入れるように前進させることであって、前記真腔は、前記ワイヤーにより再入される、前進させることと、
を含む、方法。
【0143】
(13)実施態様12に記載の方法において、
前記位置を特定し、位置付けることは、第1のシンボルを表す位置まで前記カテーテルを回転させることにより、前記側面口を前記真腔にほぼ隣接するように位置付けることを含む、方法。
(14)実施態様13に記載の方法において、
前記位置を特定し、位置付けることは、第2のシンボルを表す位置まで前記カテーテルを回転させることにより、前記側面口の前記位置付けを調整することを含む、方法。
(15)実施態様14に記載の方法において、
結果として前記第2のシンボルを示す可視化中の撮像装置の位置は、結果として前記第1のシンボルを示す可視化中の前記撮像装置の位置に対してほぼ直交している、方法。
(16)実施態様12に記載の方法において、
前記対象の再入部位に向けて前記側面口を通してカニューレを前進させること、
をさらに含む、方法。
【0144】
(17)実施態様16に記載の方法において、
前記前進させることは、前記カテーテルから前記カニューレを偏向させることを含む、方法。
(18)実施態様16に記載の方法において、
前記前進させることは、前記ワイヤーを前記カニューレに通して前進させることを含む、方法。
(19)実施態様12に記載の方法において、
前記可視化は、透視を含む、方法。
(20)実施態様12に記載の方法において、
前記内膜下空間は、前記血管構造のびまん性疾患内に位置する、方法。
(21)実施態様12に記載の方法において、
前記内膜下空間は、前記血管構造の外膜層と内膜層との間に位置する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】動脈および動脈を形成する組織層の断面を示す図である。
【図2A】罹患動脈の断面であって、完全閉塞を伴う動脈壁の正常組織の詳細を示す図である。
【図2B】罹患動脈の断面であって、完全閉塞の存在により起こりうる変性した組織構造を有する動脈壁を示す図である。
【図3A】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図3B】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図3C】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図3D】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図3E】ある実施形態による、カテーテルシステムを用いて完全閉塞を横断するための手技を示す図である。
【図4】ある実施形態による偏向カテーテルの遠位領域の図である。
【図5】ある別の実施形態による偏向カテーテルの遠位領域の図である。
【図6】さらに別の実施形態による偏向カテーテルの遠位領域を示す図である。
【図6A】後退した状態で真っ直ぐな構成をとる、他の実施形態による偏向カテーテルの遠位領域を示す図である。
【図6B】後退した状態で湾曲した構成をとる、他の実施形態による偏向カテーテルの遠位領域を示す図である。
【図7】ある実施形態による偏向カテーテルシステムの図である。
【図8】ある実施形態による、後退させた構成のカニューレを含む偏向カテーテルシステムの遠位領域の断面図である。
【図9】ある実施形態による、前進した構成のカニューレを含む偏向カテーテルシステムの遠位領域の断面図である。
【図10】ある実施形態による、近位ハブ部を含む偏向カテーテルシステムの近位領域の断面図である。
【図10A】ある実施形態による、不注意によるカニューレの展開を防止するロック機構を備えた近位駆動ハンドルの断面図である。
【図10B】ある実施形態による、不注意によるカニューレの展開を防止するロック機構を備えた近位駆動ハンドルの断面図である。
【図11A】回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステムの近位領域の断面図で示す図である。
【図11B】回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステムの近位領域の断面図で示す図である。
【図12】回転方向のキー固定を、ある実施形態による偏向カテーテルシステムの遠位領域の断面図で示す図である。
【図13】遠位端口と、近位フェーズドアレー超音波装置とを有するカテーテルシャフトを含む、ある実施形態によるカテーテルシステムの図である。
【図14A】ある実施形態による、周囲組織を撮像するためにカテーテルシャフトの遠位端を越えて展開された超音波可視化システムを示す図である。
【図14B】ある実施形態による、カテーテルシステムのノーズコーン内の窓部から周囲組織を撮像するために展開された超音波可視化システムを示す図である。
【図15】周囲組織を撮像するために、カテーテルシャフトのカニューレ内に展開された、ある実施形態による超音波可視化システムを示す図である。
【図16】ある実施形態による、ノーズコーンを含む、編まれたカテーテルシャフトの複合遠位端終端部を示す図である。
【図17】ある実施形態によるリエントリ・カテーテルを伸ばした構成で示す図である。
【図18】ある実施形態による、伸ばされた構成のリエントリ・カテーテルの遠位部分を示す図である。
【図19】ある実施形態による、後退された構成のリエントリ・カテーテルを示す図である。
【図20A】ある実施形態によるカテーテルノーズコーンの遠位ハウジングの斜視図である。
【図20B】ある実施形態による遠位ハウジングの側面断面図である。
【図20C】ある実施形態による遠位ハウジングの側面断面図である。
【図21A】ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの第1側面図である。
【図21B】ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの第2側面図である。
【図21C】ある実施形態による、LT指向性マーカーバンドの端面図である。
【図22】ある実施形態による、リエントリ・カテーテルを使って閉塞を横断するための流れ図である。
【図23】ある実施形態のもとで、如何にしてLT指向性マーカーバンドが、リエントリ・カテーテルの側面口の位置を特定し、調整するのに利用されるかを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管構造に使用するためのカテーテルシステムにおいて、
本体内腔部を含むカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に連結された遠位終端部であって、
前記遠位終端部は、遠位終端部内腔部、側面口、および遠位口を含み、
前記遠位終端部内腔部の近位部分は、前記本体内腔部とつながっており、
前記遠位終端部内腔部の中間部分は、前記側面口および前記近位部分とつながっている受動的偏向領域を含むように構成されており、
前記遠位終端部内腔部の遠位部分は、前記遠位口および前記近位部分とつながっている、
遠位終端部と、
前記遠位終端部に設けられたマーカーであって、前記血管構造における対象部位に対する前記側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成された、マーカーと、
を備え、
前記マーカーは、LT指向マーカーであって、前記遠位終端部が回転することによって、L字形状またはT字形状に見えるものであり、前記マーカーは、前記長手方向に延びる第1部分、及び、該第1部分の遠位端に接触していて前記長手方向に対し直交方向に延びる第2部分から構成されている、カテーテルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位部分の断面積は、前記近位部分および前記中間部分の断面積より比較的小さい、カテーテルシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記中間部分は、カニューレが前記側面口まで通るように構成されている、カテーテルシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位部分は、ガイドワイヤーが前記遠位口まで通るように構成されている、カテーテルシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記マーカーは、前記側面口に対し遠位に位置しており、
前記複数のシンボルは、第1のシンボル、および第2のシンボルを含む、カテーテルシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
遠位端を有する作用要素、
をさらに備えており、
前記遠位端は、前記作用要素が前記側面口を通って前進した場合に、内膜下空間内の第1血管場所から前記血管構造の真腔内の第2血管場所へ送達されるように、前記側面口を通って展開するように構成されている、カテーテルシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、前記カテーテル本体にキー固定されている、カテーテルシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、少なくとも1つの内腔部を有するカニューレを含む、カテーテルシステム。
【請求項9】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、
カニューレと、
前記カニューレ内にスライド可能に配置された少なくとも1つのガイドワイヤーと、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項10】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素の前記遠位端は、予め形成された、弾性のある先端部を含む、カテーテルシステム。
【請求項11】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素の前記遠位端は、前記作用要素が前記カテーテル本体内に引っ込められたときに第1の構成をとり、前記作用要素が前記側面口を通って伸ばされたときに第2の構成をとる、カテーテルシステム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1つに記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位終端部はノーズコーンである、カテーテルシステム。
【請求項1】
血管構造に使用するためのカテーテルシステムにおいて、
本体内腔部を含むカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位端に連結された遠位終端部であって、
前記遠位終端部は、遠位終端部内腔部、側面口、および遠位口を含み、
前記遠位終端部内腔部の近位部分は、前記本体内腔部とつながっており、
前記遠位終端部内腔部の中間部分は、前記側面口および前記近位部分とつながっている受動的偏向領域を含むように構成されており、
前記遠位終端部内腔部の遠位部分は、前記遠位口および前記近位部分とつながっている、
遠位終端部と、
前記遠位終端部に設けられたマーカーであって、前記血管構造における対象部位に対する前記側面口の相対的な向きを示す複数のシンボルとして現れるように構成された、マーカーと、
を備え、
前記マーカーは、LT指向マーカーであって、前記遠位終端部が回転することによって、L字形状またはT字形状に見えるものであり、前記マーカーは、前記長手方向に延びる第1部分、及び、該第1部分の遠位端に接触していて前記長手方向に対し直交方向に延びる第2部分から構成されている、カテーテルシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位部分の断面積は、前記近位部分および前記中間部分の断面積より比較的小さい、カテーテルシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記中間部分は、カニューレが前記側面口まで通るように構成されている、カテーテルシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位部分は、ガイドワイヤーが前記遠位口まで通るように構成されている、カテーテルシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記マーカーは、前記側面口に対し遠位に位置しており、
前記複数のシンボルは、第1のシンボル、および第2のシンボルを含む、カテーテルシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のカテーテルシステムにおいて、
遠位端を有する作用要素、
をさらに備えており、
前記遠位端は、前記作用要素が前記側面口を通って前進した場合に、内膜下空間内の第1血管場所から前記血管構造の真腔内の第2血管場所へ送達されるように、前記側面口を通って展開するように構成されている、カテーテルシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、前記カテーテル本体にキー固定されている、カテーテルシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、少なくとも1つの内腔部を有するカニューレを含む、カテーテルシステム。
【請求項9】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素は、
カニューレと、
前記カニューレ内にスライド可能に配置された少なくとも1つのガイドワイヤーと、
を含む、カテーテルシステム。
【請求項10】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素の前記遠位端は、予め形成された、弾性のある先端部を含む、カテーテルシステム。
【請求項11】
請求項6に記載のカテーテルシステムにおいて、
前記作用要素の前記遠位端は、前記作用要素が前記カテーテル本体内に引っ込められたときに第1の構成をとり、前記作用要素が前記側面口を通って伸ばされたときに第2の構成をとる、カテーテルシステム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1つに記載のカテーテルシステムにおいて、
前記遠位終端部はノーズコーンである、カテーテルシステム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−192209(P2012−192209A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145189(P2012−145189)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【分割の表示】特願2008−504328(P2008−504328)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(500331736)ルーメンド インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【分割の表示】特願2008−504328(P2008−504328)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(500331736)ルーメンド インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]