説明

血管移植片疾患の管理と治療のシステム及び方法

【課題】 血管移植片疾患に関連する病理学的状態と統計的に関連する遺伝子の組の発現レベルを決定する。
【解決手段】 基板と、ほぼ一定の発現レベルで血管組織内に発現していると同定され、血管移植片疾患と関連しない対照プローブ分子の集合と、血管移植片疾患に関連すると同定された遺伝子シーケンスを標的とするプローブ分子の集合とを備えるアレイを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管組織内の遺伝子発現レベルのプロファイリングに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の1つの実施形態は、種々のタイプの血管移植手術に関して血管組織移植片を選択するシステム及び方法を提供する。次に、本発明の議論を容易にするために、マイクロアレイの一般的な背景を説明する。次の議論では、「マイクロアレイ」、「分子アレイ」、「アレイ」という用語は、相互交換可能に使用される。「マイクロアレイ」と「分子アレイ」という用語は、科学界の中ではよく知られ、理解されている。次に述べるように、マイクロアレイは、研究、診断検査、または種々の他の分析技術の中で使用することのできる精密に製造されたツールである。
【0003】
アレイ技術は生物学研究で有名になっており、医療業界において重要で広く使用される診断ツールになると考えられる。現在、マイクロアレイ技術は複合サンプル溶液内で特定の核酸ポリマの濃度を決定するために最もしばしば使用される。しかし、分子アレイに基づいた分析技術は核酸溶液の分析に制限されるものではなく、光学的または放射線を使用して走査することができ、アレイの表面上の離散した機構の中で合成されるかまたはこの機構に接着された相補的な分子に高い特異性で結合できるDNA、RNA、またはタンパク質の複合溶液の分析にも使用できる。アレイは核酸サンプルの分析に広く使用されるので、以下のアレイに関する背景情報は、核酸溶液の分析というコンテキストで紹介する。しかし、遺伝子発現レベルの分析は、マイクロアレイに制限されておらず、リアルタイムPCR、タンパク質アレイ、およびプロテオミクスなどの遺伝子発現を確認する任意の既知の方法を含んでいてもよい。
【0004】
二本鎖DNAを含む溶液のイオン強度を変化させるか、または溶液の温度を上げることにより、二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性または変えることができる。たとえば相補的な一本鎖DNAポリマを含む溶液の温度を下げて変性状態を元に戻すことによって、一本鎖DNAポリマを二本鎖DNAに復元または変えることができる。復元またはハイブリダイゼーションの間に、逆平行DNAらせん内でワトソンクリック(「WC」)塩基対としても知られるATとGCの相補的な塩基対が協力して形成され、二本鎖DNAの再アニーリングが生じる。逆平行ポリマ間のATとGCの相補性が厳密であれば最大の熱力学的安定性が生じるが、非WC塩基対を含む部分的な相補性も発生し、部分的に相補的なポリマ間の比較的安定した連合が生成されうる。一般に、復元状態下で、2つの核酸ポリマ間の連続的なWC塩基対の領域が長ければ、2つのポリマ間のハイブリダイゼーションの安定性は高くなる。
【0005】
二本鎖DNAを変性および復元する機能は、異なる塩酸ポリマの複雑な混合物、他のバイオポリマ、無機化合物と有機化合物の中に特定の塩基シーケンスを有するかまたは特定の塩基シーケンスを含むDNAポリマとRNAポリマの存在を同定するための、非常に強力で識別力のある多くのアッセイ技術の開発に結びついた。このような方法の1つがアレイベースのハイブリダイゼーションアッセイである。図1〜図4は、アレイベースのハイブリダイゼーションアッセイの原理を示す。アレイ(図1の102)は、種々の製造プロセスによって規則的なパターンの機構が上に作成された基板を含む。図1および図2〜図4の中のアレイ102は、アレイの左上の隅に示す機構104などの、グリッド状2次元の正方形の機構パターンを有する。アレイの各機構は、機構の表面に共有結合で結合した多くの同一のオリゴヌクレオチドを含む。これらの結合したオリゴヌクレオチドは、プローブとして知られる。一般に、化学的に異なるプローブはアレイの異なる機構に結合し、その結果、各機構は特定のヌクレオチドシーケンスに対応する。図1〜図3では、アレイベースのハイブリダイゼーションアッセイの原理を、多くの同一のプローブ105〜109が接着された単一の機構104に関して示す。実際、アレイの各機構は、高密度のこのようなプローブを含むが、明瞭に示すために、図1〜図3ではこれらのうち一部だけを示す。
【0006】
アレイが作成されると、アレイを、フルオロフォア、化学発光化合物、または放射性原子115〜118で標識した標的DNA分子または標的RNA分子(図1の110〜113)のサンプル溶液にさらすことができる。例えば、サンプルRNAは、直接標識することもできるし、RNA増幅の後に標識することもできる。標識された標的DNAまたは標的RNAは、塩基対の相互作用を介して相補的なプローブDNAにハイブリダイズし、これはアレイの表面上に付着するか表面上で合成することができる。図2は、相補的なプローブ205〜207にハイブリダイズした多くのこのような標的分子202〜204を示す。これらはさらにアレイ200の表面に結合する。アレイ表面に結合したどのプローブとも相補的なヌクレオチドシーケンスを含まない、標識されたDNA分子またはRNA分子208と209などの標的は、ハイブリダイズして安定した二本鎖を形成することがないので、結果的に溶液内に残る傾向がある。ついで、サンプル溶液をアレイの面からすすぎ、任意の結合していない標識されたDNA分子またはRNA分子を洗い流す。他の実施形態では、標識していない標的サンプルとアレイとを最初にハイブリダイズする。典型的には、このような標的サンプルは、後のステップで第2の化学成分と反応する化学成分で修飾されている。ついで、洗浄ステップの前または後に、標識に結合した第2の化学成分を含む溶液をアレイ上の標的と反応させる。洗浄の後、アレイを走査することができる。ビオチンとアビジンは、このようなステップで使用することができる1対の化学成分の例を表わす。
【0007】
最後に図3に示すように、結合した標識されたDNA分子は光学的または放射分析走査によって検出される。光学走査には、結合した標識されたDNA分子の標識を適切な周波数の電磁放射で励起して標識から蛍光放射を検出することか、または、化学発光標識から放射される光を検出することを含む。放射性同位元素標識を使用する場合、放射分析走査を使用し、ハイブリダイズした機構から放射された信号を検出することができる。結合した標的分子の電気特性から生成された電気信号、結合した標的分子の磁気特性、その他の検出可能な信号を生成できる結合した標的分子の物理特性を含む、別のタイプの信号も可能である。光学、放射分析、その他のタイプの走査は図4に示すようなアレイのアナログ表現またはデジタル表現を生成する。406に似た、標識された標的分子がハイブリダイズした機構は、標識されないDNA分子が結合した機構とは光学的またはデジタルに区別される。言いかえると、走査されたアレイのアナログ表現またはデジタル表現は、標識されたDNA分子がハイブリダイズした機構について正の信号を表示し、標識されたDNA分子が結合していないかまたは結合していても検出不可能な少量しか結合していない機構については負の信号を示す。アナログ表現またはデジタル表現の正の信号を示す機構は、元のサンプル溶液内のヌクレオチドシーケンスと相補的なDNA分子の存在を示す。さらに、機構が生成した信号強度は一般に、機構に結合した標識されたDNAの量に関連し、さらに、アレイが曝露されたサンプル内の、機構内のオリゴヌクレオチドに対して相補的な標識されたDNAの濃度に関連する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の種々の実施形態は、血管移植片疾患および血管移植片障害の発生に寄与する危険因子を最小限にするシステム及び方法に関する。1実施形態では、マイクロアレイ、リアルタイムPCR、およびタンパク質アレイを含む種々の方法によるmRNAおよび/またはタンパク質発現分析を、種々の血管移植手術で移植片として適切な、移植前の血管候補を選択するために使用することができる。血管移植片疾患と統計的に関連するプローブシーケンスの組を使用することによって、血管移植片候補内の血管移植片疾患に関連する遺伝子の種々のmRNAおよび/またはタンパク質発現レベルの組を決定し、決定された組を使用して、検査している各血管に関する発現プロファイルを生成することができる。種々の形態の血管移植片疾患に関連する遺伝子/タンパク質の分子プロファイルにより、臨床医は、バイパス手術、ステント留置術、血管形成術を含むいくつかの選択肢から個別の患者にとって最良な治療方法を選択することができる。さらに、遺伝子/タンパク質の分子プロファイルにより、臨床医は、血管移植片疾患が発生する可能性がもっとも低く、適切な開通率を維持する可能性がもっとも高い、適切な血管移植片を選択することができる。種々のタイプの動脈および静脈は、それぞれの遺伝子/タンパク質発現プロファイルに基づいて互いに識別することができる。
【0009】
記述された実施形態では、種々の形態の血管移植片疾患に関連する遺伝子マーカとして有用な遺伝子シーケンスを含むプローブ分子の例はすでに同定されている。血管移植片疾患のための1組の遺伝子マーカは、臨床的に認識される、血管移植片疾患の発症と関連する進行性の病理学的な状態である、血栓症、血管内膜増殖、移植片動脈硬化の発生および進行と関連する遺伝子/タンパク質を含む。個別の患者の遺伝子発現プロファイルにより、種々のタイプの血管移植片移植が行われる患者について個別化された診断、予後、治療上の注意が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態は、一般に、血管移植片疾患に関連する病理学的状態と統計的に関連する遺伝子の組の発現レベルを決定するシステム及び方法に関する。血管移植片疾患は移植された血管組織および周囲の血管構造が、血管移植の結果として形態学的変化および細胞変化を受けた臨床状態である。血管移植片疾患の臨床徴候は、血管移植片疾患に伴う種々の病理学的状態の発生から生じた、影響を受けた血管構造の部分的な閉塞または完全な閉塞を含み、この中には、初期の血栓症、血管内膜増殖、移植片動脈硬化が含まれる。一般に、血管移植片疾患の発生および/または進行に関連するこれらの病理学的状態あるいは段階により、影響を受けた血管を介する血流の開通性の低下または速度低下を招く。
【0011】
本発明の開示を容易にするために、種々の形態の血管再建移植、および種々の形態の血管移植片疾患に関連する臨床徴候を次に説明する。
【0012】
血管移植後の血管移植片疾患の発生
冠動脈疾患は、毎年世界中で何十万もの新患が発生する、多数の血管機能不全疾患のうちの1つである。冠動脈疾患に苦しむ患者にとって、冠動脈血管形成術やバイパス移植手術を含む血管再建手術は、病変した元の血管を介した血流供給が低減することによって影響を受ける組織部位への血液循環を改善するために必要である。血管再構成に使用される異なるタイプの移植片には、(1)患者自身から取り出した自家血管組織の非病変部、(2)合成材料で作成された人工の導管、(3)人工器官と血管組織を含む合成導管が含まれる。図5は、冠動脈疾患患者の治療のために静脈移植片または動脈移植片を使用して行うことのできる例示的な冠動脈バイパスを示す一般的な図である。このような移植片を、血管構造の病変部位に移植し、病変血管の閉塞部分と置き換え、血流に代替の導管を供給する。自家組織を移植する際に、冠動脈疾患患者で動脈と静脈の非病変部分を識別し、患者の血管構造の中から元の非病変血管構造部位を取り出し、同じ患者の病変血管構造部位へ移植する。外科医は、一般に、特に感染した手術野を再建する際、または血栓症の続発症を示す二次的な腸間膜人工バイパス移植片を再建する際には合成導管より自家導管を好む(Modrall、J.Vasc.Surg.,37:No.2、2003年)。
【0013】
1960年代中頃から、心臓病専門医は、「伏在静脈」などの末梢血管で実験し、伏在静脈移植片を使用した種々の形態の心血管機能不全の治療をますます主張するようになった。手術の前に、冠動脈疾患患者の伏在静脈は、適切な血液量を循環させるために比較的大きな直径を有する健康な血管を識別することによって、その部位で検査する。血管造影術、コンピュータ断層撮影、超音波検査法などの画像技術は、移植片の取り出しの前に視覚的に血管候補を検査するために使用することができる。伏在静脈移植術は多くの患者に実質的な救済を提供し、一部の患者サブグループの長期予後を実質的に改善するが、静脈移植の臨床効果は比較的短い。手術後の1年のうちに、伏在静脈移植片の約12%〜20%は障害を起こす。これは主に、「開通率の低下」と呼ばれる状態である、次第に血流率の低下を招く、「閉塞血栓症」と呼ばれる現象が原因である。バイパス手術後の最初の1ヶ月以内に、最高で伏在静脈移植片の10%〜15%で血栓症が発症し、初期症状がある場合もあればない場合もある。典型的には、手術後10年以内に、開通性を維持する伏在静脈移植片は60%だけであり、このうち高開通率を維持する移植患者は50%だけである。臨床医は、比較可能な血流レートの維持に関しては、ほとんどの血管移植片の代用品は、機能的に、非病変の元の血管ほど有効ではないことを長年にわたって認識している。
【0014】
初期の血栓症、血管内膜増殖、移植片動脈硬化などの病理学的状態を含む血管移植片疾患の治療のために、臨床医はしばしば、閉塞した移植片から生じる症状を軽減し、元の疾患の進行を管理するために、何回もの血管手術を推奨する。例えば、移植された組織部位に対する血流の累積的な開通率を増加させるために、何回ものバイパス、再移植、血栓症除去、パッチ血管形成術が必要な場合がある。影響を受けた組織部位内の移植の総数は、その部位の累積的な開通率に影響する場合がある。さらに、一部の研究は、使用する一連の移植片組織のタイプも移植片の最終的な運命に影響を与える可能性を示唆している。改善された最終開通率は、最初のバイパス形成術を自家静脈を使用して行った場合に達成される。対照的に、合成人工静脈バイパスを使用した場合には、2年後の開通率は12%〜37%に過ぎない(Henke、J.Vasc.Surg.,35:902−9、2002年)。人工ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)バイパス術が失敗した患者では、肢切断に結びつく可能性のある肢を侵す虚血が発症する可能性が高い。逆に自家移植片が失敗した患者では、静脈移植片は繰り返して再建するための変更が容易で、不必要な切断を回避することができる。
【0015】
年々行われる冠動脈バイパス術の頻度が増加していることに加えて、下肢の末梢血管動脈閉塞性疾患の割合が増加しており、手術によるバイパス形成術に対するニーズの増加が見込まれる。ほとんどの一次自家静脈「鼡径下部バイパス」再建では、5年の開通期間が期待される(Henke,J.Vasc.Surg.,35:902−9、2002年)。鼡径下部バイパス術の患肢救済手術率は、70%と85%の間であり、静脈バイパスがその部位で元に戻ったか、または逆にしない転位した構成で元に戻ったかとは無関係である。一般に、自家静脈移植と比較すると、人工バイパスはより低い開通性と患肢救済手術率を示す。しかし、人工バイパスは、膝大腿部上膝窩動脈のバイパス手術には適している可能性がある。二次鼡径下部バイパスのバイパス開通率は、一次バイパスより本質的に低い。これは、動脈疾患が進んだ段階まで進行していること、自家導管および再手術野の使用可能性の低減、最適な動脈組織候補の不足などを含む、多数の因子によるものと考えられる。
【0016】
糖尿病患者における虚血性の脚部合併症を伴う動脈硬化症の治療については、病変四肢の治療のために一般に行われる動脈再建は、足背動脈バイパス術(「DP」)である。典型的には、包括的な動脈内のデジタルサブトラクション血管造影を行い、腎動脈から患者のつま先の基部への循環の画像を得て、DP動脈の質とDP動脈を流出動脈として使用する可能性を決定することができる。DPバイパスを行なうという決定は、解剖学上の因子と臨床的な因子に基づく(Pomposelli、J.Vasc.Surg.,37:307−15、2003年)。例えば、代替流出動脈が近接した位置にない場合、または動脈造影によってDP動脈が最も健康でもっとも太い血管候補を表わすと決定された場合、DP動脈を流出血管候補として選択することができる。しかし、大腿膝窩バイパスまたは脛骨動脈バイパスが触知可能な脚部脈拍を回復することができ、組織損失が低開通率の1指標である場合、DPバイパスは行なわない場合もある。患者が組織損失または壊疽を起こしている場合、DPバイパスは、患者の開存腓骨動脈の代わりに優先的に選択することができる。しかし、DP動脈が動脈造影によって血管の質が悪いと決定された場合、または静脈候補がDP動脈に達する長さに不適当な場合、腓骨動脈バイパスを行なう場合もある。バイパス手術に使用することのできる移植片組織を選択する際に、最も簡単で最も都合のよい方法は、開放切開を行い、移植片として使用する候補となる伏在静脈を識別し、同時に、病変または狭窄など最適な開通率を無効にする他の性質を示す血管を除去することである。患者の下肢から適切な伏在静脈が回収できなければ、代替として、使用可能な腕の静脈を使用することができる。適切な腕の静脈が使用できない場合、伏在静脈の口径および質がバイパス手術に適切であれば、最適以下の伏在静脈を使用してもよい。
【0017】
心臓バイパス術で伏在静脈を使用する代替として、胸部動脈などの動脈導管が病変部位に移植されてきた。この結果、伏在静脈導管による開通率より高い、改善された移植開通率が得られた。この傾向にもかかわらず、自家伏在静脈は、すべてのバイパス移植片の70%以上について選択される移植片であり、依然として伏在静脈は生命または肢を維持するために何回もの血管移植に依存する患者の強力な選択肢である。一部を上述したように、血管組織を移植片候補として検査し、閉塞した血管移植片を治療するために現在使用可能な手術と関連する技術は、低解像度の画像診断と従来の外科的方法に制限されている。心臓病専門医および一般臨床医は、血管移植片疾患の発生に関連する危険因子を管理するための改善された技術およびより感度の高い方法に対するニーズを認識している。
【0018】
本発明の実施形態
初期の血栓症、血管内膜増殖、移植片動脈硬化などの種々の病態生理学的変化を伴う、種々の形態の血管移植片疾患を発症する患者の危険因子を評価するために、移植前の血管移植片組織および移植後の血管移植片組織に関して、血管移植片疾患に関連する遺伝子の発現レベルを決定することができる。本発明の実施形態は、血管手術の候補である患者および/またはすでに血管手術を受けた患者において、血管移植片疾患の予防、管理、治療を行うために使用することができる。記述された実施形態は、種々の移植術の前および/または後に使用することができ、この中には、冠動脈血管形成術および冠動脈バイパス移植手術、虚血または壊疽が生じた腸の再建、血栓症の続発症を示す二次的な腸間膜人工バイパスの緩和、鼡径バイパス術や膝上大腿部膝窩動脈バイパス術など下肢末梢血管動脈閉塞疾患治療のためのバイパス手術を含む。他の実施形態は、糖尿病患者における虚血性の脚部合併症を治療するための手術から生じる可能性のある血管移植片疾患の予防、管理、治療に関する。この中にはたとえば、足背動脈バイパス、大腿膝窩バイパス、脛骨動脈バイパス、腓骨動脈バイパスが含まれる。記述される実施形態は、患者の中で同定され、患者の元の非病変血管構造部位から取り出され、同じ患者の病変血管部位に再移植された、伏在静脈などの種々のタイプの非病変動脈および静脈を含む、移植片としての自家組織を含む移植手術に関する。
【0019】
血管移植片疾患の一般的な現象はしばしば、元の病変血管構造を治療するために行なった血管再建術後に二次的な臨床徴候として発生する。影響を受けた患者は、自然な状態が引き起した部分的な閉塞または完全な閉塞を修正するために血管形成術またはバイパス手術などの外科療法を受けなければならない。移植片移植がもたらした生化学的および機械的な外傷により、血管移植片が自家組織である場合には移植された血管内で血管移植片疾患が発生する可能性があり、または血管移植片が人工材料である場合には移植された血管周囲の元の血管構造でその部位で血管移植片疾患が発生する可能性がある。血管移植片疾患が発生する血管構造は、影響を受ける血管内で形態学的変化を示しており、この原因は病変血管の細胞組成の変化から生じていると考えられる。細胞レベルの変化は、移植片移植に誘発された可能性のある種々の生化学的機序を起こす役割を果たす、構造タンパク質および可溶性たんぱく因数のデノボ産生から生じる可能性がある。自家血管移植片を使用する移植に関しては、元の組織部位から取り出した非病変血管を元ではない血管組織に移植することが、生化学的な変化を受け、これが、血管移植片疾患に関連する種々の病理学的状態の発生に結びつく可能性がある。
【0020】
一般に、任意の形態の血管移植片疾患により、影響を受けた血管内で手術後に閉塞が起きるため、血流レートの低減または開通性の低減が起きる。非病変血管に匹敵する流量で血液を運ぶ機能の低下を使用して、血管移植片の血流機能を測定する。低開通率は、血管移植片疾患に伴う病理学的状態と関連し、影響を受ける血管内の血栓症閉塞の形成によって血管移植片障害を起こす可能性がある。図6〜図8は、連続的な相互関係を有する病的過程を含む、3つの識別可能な病理学的状態を示す。図6は、手術後一ヶ月で発生する病理学的状態である初期の血栓症の知られたメディエータの図である。初期の血栓症は移植片閉塞の主因であり、移植片外移植と再移植に伴う外傷から生じた生化学的および機械的な損傷に反応した、表面の血管内皮細胞が仲介した凝固促進性機序の作動を含む。図6では、血管内皮細胞を含む仮想的な血管602の横断面を示す。抗凝固機序は、プロスタサイクリン(「PGI2」)、トロンボモジュリン、組織プラスミノーゲンアクチベータ(「t−PA」)、ヘパリン硫酸塩によって仲介される。知られた凝血促進性メディエータはプラスミノーゲンアクチベータインヒビタ(「PAI」)およびフォンビルブラント因子(「vWf」)を含む。
【0021】
図7A〜図7Bは、手術後の一ヶ月〜1年の間に発生する病理学的な状態である進行性血管内膜増殖に伴って血管壁に生じる形態学的な変化を示す。進行性血管内膜増殖は内皮細胞活性化、繊維芽細胞および炎症細胞の動員、血管平滑筋細胞の移動と増殖を刺激するサイトカインと成長因子の放出、新たに形成された細胞外基質の付着および細胞外基質タンパク質の産生を含む。図7Aは、血管壁の仮想の内膜の層702を縦方向で見た図を示す。図7Bは、血管内膜層704の断面図を示す。ここで、内皮細胞層706と平滑筋細胞層708の間に生じる細胞増殖は、開通率を低減し、後から移植片アテローマまたは移植片動脈硬化の発生の構造的な基礎を支持することに実質的に寄与する。内膜増殖は、内皮細胞再生過程中に静脈移植片内で発生するが、動脈移植片の内膜増殖は内皮細胞露出の間に発生する。図8A〜図8Bは、2種類の異なる形態の動脈硬化の間の違いを示す。(1)元の血管中で発生する動脈硬化、(2)血管移植片中で発生する動脈硬化。血管移植片の変性は進行性である。移植片特有の動脈硬化は、一般に、移植の一年後に発生する。移植片特有の動脈硬化の指標は、同心性の病変形成、脂質コア付着の欠如、追加または移植された血管のびまん性狭窄を含む。これらの血管の病理学的状態の発生は、移植された血管の部分的または完全な閉塞を含み、この結果、開通率が低減する。
【0022】
臨床医は本発明のシステムおよび方法を使用することにより、本来の血管に影響を与える血管の機能不全を修正するための血管再建術を必要とする患者の治療を管理することができる。例えば、本発明の方法を使用して、種々の形態の冠動脈疾患の一次バイパス手術に対する候補である患者の治療を促進することもでき、また、糖尿病患者で一般に見られる末梢血管の構造に影響を与える種々の形態の閉塞性疾患の治療を促進することもできる。本発明は、ある形態の血管移植片疾患を発症するリスクを持つ患者から取り出すことができる血管移植片サンプルに適用することができる。1実施形態では、生検サンプルは、移植片選択プロセスの時に健康な細胞と健康ではない細胞を区別するために遺伝子発現パターンを評価する、移植前の候補となる移植片組織を表してもよい。1人の患者から多数の組織サンプルを取り出すことは、たとえば、何回もバイパス術を受けていない患者など、一部の患者集団では適している。次のようないくつかの理由により、再建術前に取り出された生検を使用して遺伝子発現パターンを決定することができる。(1)血管移植片疾患の高い発症リスクを示す可能性のある遺伝子の異常な発現レベルを識別する、(2)血管移植片疾患の続発症を発症する患者のリスクを推定する、(3)所与の血管候補について長期的な開通率を予想する、(4)遺伝子治療および/または薬物によって、バイパス術前に候補となる血管内の異常な遺伝子発現を補正する。
【0023】
別の実施形態では、生検サンプルは、血管手術後も残る移植された血管組織の任意の部分から得ることができ、臨床医はこれを使用して移植片サンプルから導出した遺伝子発現パターン情報に基づいて治療法を計画することができる。遺伝子発現評価のために残遺組織を使用することは、たとえば多くの移植片血管候補を入手することができないなど、種々の理由で多数の生検を提供することのできない患者に適していると考えられる。再移植された血管の残遺から導出した遺伝子発現パターン情報を使用して、血管移植から生じる続発症の重度または長期的な効果を推定または予想することができる。医師は、各患者の遺伝子発現パターンの決定を使用し、患者固有の治療法を提供することができる。例えば、トロンボモジュリン量が少ないことは、手術後早期に血栓症が発生するリスクが高いことを示す場合がある。
【0024】
本発明の実施形態は、mRNAレベルを測定するリアルタイムPCR(たとえばTaqman(登録商標))、タンパク質レベルを測定するプロテオミクス技術、タンパク質レベルを測定するタンパク質アレイ、mRNAレベルを測定するDNAアレイなどの種々の方法を含む。これらの方法および他の等価な方法については、本発明が開示するバイオマーカ(遺伝子および/またはタンパク質)の組を使用し、血管移植片疾患発症リスクを予想することができる。実施形態を示す次の図および説明では、実施形態は1つの例示的な方法としてマイクロアレイを使用して説明する。図9は、血管移植片疾患または血管移植片障害の発生と統計的に相関することが決定された遺伝子シーケンスを伴うプローブ分子を含むマイクロアレイの一般的な図である。プローブ分子は例えば、バイオマーカ遺伝子のmRNAフラグメント、またはmRNAフラグメントのcDNAコピーを標的としてもよい。プローブと標的フラグメントの間の正確な相補性は必要ではない。代わりに、プローブは、目的の標的フラグメントと安定してハイブリダイズするのに十分な相補性があればよい。図9では簡単に示すため、小さな4×4アレイ902に構成された機構を伴う仮想的なマイクロアレイを示す。マイクロアレイは、対照プローブまたは血管移植片疾患に関連するプローブのいずれかを表わす組を含む、多数のプローブの組を含んでいてもよい。例えば、一部のプローブの組は、(1)陽性対照の1形態として、静脈と動脈から導出できる血管細胞タイプだけに発現することが決定されているプローブシーケンス904〜907、(2)陰性対照の1形態として、血管細胞タイプでは発現しないことが決定されているプローブシーケンス908〜911、(3)血管移植片疾患と関連することが統計的に決定されているプローブシーケンス912〜915、(4)血管移植片疾患と関連しないことが統計的に決定されているプローブシーケンス916〜919を含んでいてもよい。血管組織は一般に多数の細胞タイプの混合で形成されているが、血管組織は主に、種々の比率の内皮細胞と平滑筋細胞で構成されている。これらの4種類の可能なプローブ分子のサブセットのうち1つまたは複数を含むマイクロアレイを使用し、特定の患者から得た所与の生検組織の遺伝子発現パターンを高スループットで決定することができる。プローブ912〜915などのプローブ分子は、血管移植片由来の生化学的サンプルとこのようなプローブシーケンスのハイブリダイゼーションが、種々の形態の血管移植片疾患および病態生理学的状態(初期の血栓症、内膜増殖、移植片動脈硬化、種々の関連プロセス)に関連する臨床的に認められる病理学的状態と関連する場合、血管移植片疾患と統計的に相関すると決定される。種々の遺伝子発現パターンは、血管移植片疾患発症のリスクを示すことができる。各遺伝子発現パターンは、血管移植片疾患関連プローブの1つまたは複数の組み合わせの結合作用を含む結合パターンを表す。血管移植片疾患に関連する単一のプローブが血管移植片疾患発症のリスクを示すことができるが、血管移植片疾患に関連する遺伝子の組み合わせを含む発現パターンは、臨床的な決断のためにより信頼性の高いデータを提供することができる。
【0025】
プローブシーケンスは、一本鎖形態または二本鎖形態のゲノミックDNA、cDNA、オリゴヌクレオチド、RNA、および、これらのポリヌクレオチド形態の任意の化学修飾物を含む。アレイベースアッセイは他のタイプの生体高分子、および、合成高分子、他のタイプの化学成分を含んでいてもよい。生体高分子は1つまたは複数のタイプのユニットが反復したポリマである。生体高分子は典型的に生物系に見られ、特に、多糖類、ペプチド、ポリヌクレオチド、および、アミノ酸アナログまたは非アミノ酸グループ、またはヌクレオチドアナログまたは非ヌクレオチドグループからなるかまたはこれらを含む化合物などのアナログを含む。これには、従来のバックボーンを人工または合成バックボーンと交換したポリヌクレオチド、および従来の塩基のうち1つまたは複数を、ワトソンクリックタイプの水素結合相互作用に関与できる自然または人工の基と交換した、核酸または合成または自然の核酸アナログを含む。ポリヌクレオチドは一本鎖構成を含んでいても二本鎖構成を含んでいてもよく、鎖のうち1本または複数はもう一方と完全に並んでいてもよいし並んでいなくてもよい。例えば、生体高分子は、源にかかわらず、米国特許第5,948,902号およびここに引用された参考文献に記述されたDNA、RNA、オリゴヌクレオチド、PNAおよび他のポリヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、約10〜100ヌクレオチド長のヌクレオチドマルチマであり、ポリヌクレオチドは、任意の数のヌクレオチドを有するヌクレオチドマルチマを含む。
【0026】
非核酸ベースのマイクロアレイの例として、サンプル溶液内の可溶性標識された抗原に結合するタンパク質抗体をアレイの機構に付着させることができる。他の多くのタイプの化学アッセイもアレイ技術によって促進することができる。例えば、多糖類、糖タンパク質、合成コポリマ(ブロックコポリマ、合成モノマまたは誘導体化されたモノマまたはモノマ結合を伴う生体高分子様ポリマを含む)、および他の多くのタイプの化学的エンティティまたは生化学的エンティティが、アレイベースの分析のためのプローブおよび標的分子の機能を果たすことができる。アレイの基礎となる基本原理は、シーケンス仲介結合親和性、または、プローブ分子と標的分子のコンフォメーション特性またはトポロジ特性に基づいた結合親和性、標的分子とプローブ分子の表面電荷の空間的な分布に基づいた結合親和性のいずれかによって、アレイに固定されたプローブ分子が標的分子を特異的に認識することである。
【0027】
次のサブセクションでは、実施例1で説明する方法を使用して同定されたバイオマーカ遺伝子の組を提供する。バイオマーカの組は、少なくとも2つの遺伝子、少なくとも5つの遺伝子、少なくとも20の遺伝子、少なくとも100、少なくとも500、少なくとも1000の遺伝子、少なくとも2000、少なくとも5000、少なくとも10000または10000以上の遺伝子を含む。血管移植片疾患に関連する遺伝子を含む次の遺伝子リストから1つまたは複数を使用し、図9に関して上述したプローブ分子912〜915を表すことができる。参照によって本明細書に組み込まれた付録部分は、種々の知られた機能にしたがってグループ分けされ、血管移植片疾患の種々の病態生理学的変化に関連するバイオマーカ遺伝子の代表的な例を表す遺伝子リストを提供する。この中には(1)細胞増殖および移動、(2)炎症および免疫反応、(3)血液凝固および血栓症、(4)細胞外基質および細胞接着、(5)転写調節、(6)シグナル伝達、(7)その他の機能に関する遺伝子が含まれる。付録に組み込んだデータのさらなる説明は次に提供される実施例1において提供する。
【0028】
血管移植片疾患に関連する遺伝子プローブを含むマイクロアレイは、その部位での製造の場合にはポリヌクレオチド前駆物質のユニット(モノマなど)か、または、あらかじめ得たポリヌクレオチドを、パルスジェットからドロップ付着させることを使用して製造することができる。このような方法は、例えば米国特許第6,242,266号、米国特許第6,232,072号、米国特許第6,180,351号、米国特許第6,171,797号、米国特許第6,323,043号、1999年4月30日にCarenらが提出した米国出願第09/302,898号、およびこれらに引用された参考文献に詳細に記述される。上記のように、製造には他のドロップ付着方法も使用することができる。さらに、ドロップ付着方法の代わりに、フォトリソグラフィアレイ製造方法を使用してもよい。特にこれらの特許に記述されるようにアレイをフォトリソグラフィ方法で作成する場合、機構間領域は存在する必要はない。
【0029】
血管移植片疾患に関連する遺伝子プローブを含むマイクロアレイは、標識した標的分子を含む組織サンプルにさらしてもよいし、または上記のように、標識しない標的分子を含む組織サンプルにさらし、ついで、アレイに結合した標識しない標的分子に結合する標識した分子にさらし、それからアレイを読み出してもよい。アレイの読み出しは、アレイに照射し、アレイの各機構上の多数の領域で得られた螢光の位置および強度を読み出すことによって行うことができる。例えば、カリフォルニア州パロアルトのアジレントテクノロジーズ社が製造するAGILENT MICROARRAY SCANNERなどのスキャナをこの目的のために使用することができる。他の適切な装置および方法は、Corsonらによる「基板を介して乾燥化学アレイを読む」という題名の米国出願第10/087447号、および、米国特許第6,518,556号、第6,486,457号、第6,406,849号、第6,371,370号、第6,355,921号、第6,320,196号、第6,251,685号、第6,222,664号に記述される。しかし、アレイは前述の方法または装置とは別の方法または装置で読み出してもよく、他の読み出し方法は、化学発光標識または電子発光標識を検出するなど他の光学技術、または、各機構に電極を備え、米国特許第6,251,685号または他の場所に示す方法で機構におけるハイブリダイゼーションを検出する電気的な技術を含む。
【0030】
アレイの読み出しから得た結果をその形態のままで使用してもよいし、または、さらに処理して、たとえば、血管移植片疾患に関連する遺伝子標的シーケンスの組が検査したサンプル内に存在するかしないかなど、アレイから読み出した遺伝子発現パターンに基づいた結論を作成するようにしてもよい。また、遺伝子発現パターンは、患者に初期の血栓症、血管内膜の増殖、移植片動脈硬化の発症リスクがあるかないかなど、患者の特定の状態が存在するかしないかを示すことができる。さらに処理をしてもしなくても、読み出しの結果はたとえば通信などによって場合によっては遠隔の場所に転送し、そこで受信して、たとえば、さらに処理するなどに使用してもよい。1つの項目が別の項目から遠隔であると示す場合、これは、2つの項目が少なくとも異なる建物にあること、または少なくとも1マイル、10マイル、または少なくとも100マイル離れていてもよいことを示す。情報を通信することは、この情報をあらわすデータをたとえばプライベート網または公共網上など適切な通信チャネル上で電気信号として送信することを指す。項目を転送することは、その項目を物理的に輸送すること、またはデータの場合はデータを担持する媒体を物理的に輸送することまたはデータを通信することによって、その項目を1つの場所から別の場所に移す任意の手段を指す。
【0031】
光学走査デバイスか放射分析走査デバイスによるマイクロアレイの走査は一般に、各ピクセルが対応する信号強度を有する直線状のピクセルのグリッドを含む、走査された画像を生成する。これらの信号強度はアレイデータ処理プログラムによって処理される。このプログラムはアレイから走査されたデータを解析し、実験結果または診断結果を生成し、これをコンピュータ読み出し可能媒体に記憶するか、電子信号を介して相互通信エンティティに転送するか、人が読み出すことのできるフォーマットに印刷するか、または他の方法でさらに使用できるようにする。分子アレイ実験は、薬物、他の化学物質および生体物質、環境要因、他の作用に対する、生体の正確な遺伝子発現応答を示すことができる。マイクロアレイデータの処理により、詳細な化学的および生物学的解析、疾患診断、他の情報が生成され、これらは、コンピュータ読み出し可能媒体に記憶してもよいし、電子信号を介して相互通信エンティティに転送してもよいし、人が読むことができるフォーマットに印刷してもよいし、または他の方法でさらに使用できるようにしてもよい。
【0032】
図10Aは、異なる血管生検を評価する仮想的なマイクロアレイ基板に含まれたプローブシーケンスの種々の組を示す。比較する血管サンプルは、1人の患者由来であってもよいし、異なる患者由来であってもよい。組織サンプルをたとえばそれぞれRNA溶液またはcDNA溶液に変換すると、組織サンプルに異なる標識をつけて、付録にリストした遺伝子、陰性対照シーケンスと陽性対象シーケンスの組を含む、血管移植片疾患関連プローブシーケンスの種々のプローブシーケンスの組を含むマイクロアレイ基板とハイブリダイズすることができる。例えば図10Aでは、1004と1006などのプローブ分子を含む16機構の組を含む、比較的簡単な4×4の仮想のアレイ1002が提供される。4×4アレイは簡単に説明するために使用する。本発明の実施形態は一般に何百、何千、何万、何十万もの機構を有するマイクロアレイを含む。プローブシーケンスは、健康な細胞と病気の細胞を区別するためのプローブの組、および、成長中の細胞と壊死した細胞とを区別するプローブの組を含む、種々の理由に関して選択することができる。マイクロアレイは、たとえば次のような異なるタイプのプローブシーケンスの種々の組を含んでいてもよい。(1)図10Aのプローブ1008と1010などの陽性対照プローブ分子の集合。この中には、通常または平均の成長率を維持するためにほとんどの血管細胞内で発現すると考えられる準ハウスキーピング遺伝子を含む、(2)内皮細胞内で優先的に発現するかまたは内皮細胞内だけで発現することが予想されるプローブ1012と1014などの血管移植片疾患に関連する遺伝子の組、(3)ほとんどのタイプの内皮細胞中では発現しないことが予想される1016と1018などの第1の陰性対照遺伝子の組、(4)平滑筋細胞内で優先的に発現するかまたは平滑筋細胞内だけで発現すると予想される1020と1022などの血管移植片疾患に関連する遺伝子の組、(5)ほとんどのタイプの平滑筋細胞内では発現しないことが予想される1024と1026などの第2の陰性対照遺伝子の組。内皮細胞内で発現することが予想される血管移植片疾患に関連する遺伝子は、優先的に、健康な細胞に対し健康ではない細胞では、過剰発現する遺伝子の組と、過小発現する遺伝子の組の両方を含む。内皮筋細胞内で発現することが予想される血管移植片疾患に関連する遺伝子は、優先的に、健康な細胞に対し健康ではない細胞では、過剰発現する遺伝子の組と、過小発現する遺伝子の組の両方を含む。平滑筋細胞内で発現することが予想される血管移植片疾患に関連する遺伝子は、優先的に、健康な細胞に対し健康ではない細胞では、過剰発現する遺伝子の組と、過小発現する遺伝子の組の両方を含む。
【0033】
図10Bは、健康な組織を示す遺伝子発現パターンの相対的な信号の強度を示す、仮想的な実験の仮想的な例を示す。図10Cは、一定の形態の血管移植片疾患を発症するリスクのある組織を示す遺伝子発現パターンの相対的な信号強度を示す仮想的な実験の仮想的な結果を示す。図10Bと10Cとでは、図10Aに記述されたプローブの選択的な組の結合作用を示す信号強度値を提供する。図示するように、1030と1034、および1032と1036の信号強度を比較することによって、ハウスキーピング遺伝子は、健康な血管組織でも病変血管組織でも同じ程度に発現することが予想される。内皮細胞中で優先的に発現するかまたは内皮細胞だけで発現することが予想される血管移植片疾患に関連する遺伝子は、正常細胞に対し病変細胞では、過剰発現する遺伝子(信号強度1038と1042を比較する)、および、過小発現する遺伝子(信号強度1040と1044を比較する)を含んでいてもよい。たとえば、遺伝子の1つの陰性対照の組は、ほとんどのタイプの内皮細胞(信号強度1046と1050、信号強度1048と1052を比較する)内で発現することが予想されない遺伝子を含む。平滑筋細胞内で優先的に発現するかまたは平滑筋細胞内だけで発現することが予想される血管移植片疾患に関連する遺伝子は、正常細胞に対し病変細胞では過剰発現する遺伝子(信号強度1054と1058を比較する)、および、過小発現する遺伝子(信号強度1056と1060を比較する)を含んでいてもよい。例えば、遺伝子の別の陰性対照の組は、ほとんどのタイプの平滑筋細胞では発現することが予想されない遺伝子を含む(信号強度1062と1066、1060と1064を比較する)。種々のタイプの診断用マイクロアレイが製造できるように、次のサブセクションおよび付録で記述する遺伝子のリストを戦略的に選択してマイクロアレイ設計内に組み込むことができる。
【0034】
図10A〜図10Cに示す例は、マイクロアレイ発現解析に関与するデータ収集とデータ解釈の簡単な例を提供する。高密度マイクロアレイについては、機構の抽出とデータ解釈によるデータ収集は、精巧なパターンマッチング、広範囲なパターンデータベース、種々の分析的および蓋然的な測定を含み、次第に複雑になる可能性がある。しかし、マイクロアレイにより、時間と労力に大幅な利点を提供する高スループットのスクリーニング法が可能になる。比較的簡単な線形測定の例は、次式によって測定値Mを計算することである。
【0035】
【数1】

【0036】
上式で、Eiは病変組織または病変の可能性のある組織より健康な組織でより多く発現することが予想される遺伝子の観察された発現レベルであり、Diは病変組織または病変の可能性のある組織より健康な組織で少なく発現することが予想される遺伝子の観察された発現レベルであり、wiは、観察された異なる遺伝子発現レベルに関する重み係数である。ある組織に関して計算されたMの値が大きいほど、その組織は移植の成功を提供する可能性が高い。遺伝子の組に対して観察された発現レベルの外積を計算するより複雑な非線形の測定は、異なる遺伝子間の相互依存をより正確に反映することができる。別法としては、神経回路網を使用して好ましいパターンと好ましくないパターンを認識してもよいし、または、種々のパターンマッチング検索技術を使用して、記憶されたパターンのうち観察された遺伝子発現パターンにもっともよく似たパターンを決定してもよい。マルチチャネルアレイ実験を使用し、異なる化学発光標識、蛍光標識、燐光標識、放射性標識を使用して異なるサンプルに標識し、自己正規化、多数の組織の同時評価、またはその両方を行うこともできる。
【0037】
相対的な遺伝子発現パターンに基づいて血管の健康を評価する本発明の実施形態を表す方法により、遺伝子治療および薬物療法のための血管移植片疾患特定遺伝子を標的とした患者固有の治療が可能になる。術前および術後に決定した発現レベルを使用して、移植片劣化を防ぐかまたは改善する遺伝子治療と化学療法を経時的にフォローすることができる。候補移植片組織の中の遺伝子発現は、同様の非候補組織に関して、患者から得られた種々の組織の統計サンプルおよび他の患者特有のサンプルの組に関して評価することができる。
【0038】
1実施形態は、使用可能な血管候補の間で移植片を選択する種々の方法を含む。選択される血管移植片は、血管移植片疾患関連プローブシーケンスを含むマイクロアレイを使用することによる遺伝子発現パターンの決定に基づいて、再建術で使用する際に移植片障害が起きる可能性がもっとも低くなければならない。血管移植片疾患関連プローブシーケンスの組は、初期の血栓症、血管内膜増殖、移植片動脈硬化などの病理学的状態に関連するかまたはこれらの状態に特有の遺伝子シーケンスのサブセットを含む。血管移植術の前に、患者からの血管組織サンプルを生検として取り出すかまたは体外培養することができる。適切な組織サンプルは、患者から取り出した種々の自家血管組織移植片由来であってもよい。組織サンプルから、核酸かまたはポリペプチドの形態の標的遺伝子シーケンスの組を含み、当業界で知られた種々の従来の方法で標識できる組織抽出物を抽出することができる。マイクロアレイを使用した同時解析のために任意の数の別の組織サンプルを準備し、検査する各組織サンプルの遺伝子発現パターンをそれぞれ決定することができる。マイクロアレイ基板は、血管移植片疾患と統計的に関連する1つまたは複数のプローブ分子を提供し、いくつかの指標遺伝子の発現レベルに基づいて臨床的な決定を行うことができる。血管移植片疾患に関連するプローブシーケンスに対して相補的な標的遺伝子シーケンスを含む組織サンプルは、測定された信号強度によって認識される。目的の組織サンプルと平行な実験で、1つまたは複数の基準サンプルを調整し標識することができる。基準サンプルの例は、血管細胞系を有する種々の樹立細胞株、種々のタイプの自家血管、種々のタイプの非自家血管から分離することのできる遺伝子シーケンスを含む。適切な基準サンプルは特定の臨床状況に依存して変わるであろう。検査する種々の組織サンプル内に含まれる血管移植片疾患に関連する遺伝子の組の相対的な発現レベルを比較することができる。種々の組織サンプルの計算された相対的な発現レベルを使用し、再建手術で移植片として適した血管を選択するために血管候補の間で移植前の血管組織をスクリーニングすることができる。選択される血管移植片は移植片障害の可能性がもっとも低い。
【0039】
別の実施形態では、検査した血管組織と基準サンプルの相対的な遺伝子発現パターンに基づいて、特定の血管移植から生じる続発症の重度または長期的な影響を推定または予測する方法を提供する。血管組織サンプルは、血管手術後に残る移植された血管組織の任意の部分から得ることができる。遺伝子発現評価のために残遺組織を使用することは、たとえば、多数の移植片血管候補が入手不可能であることなど種々の理由のために多くの生検を提供できない患者で適切でありうる。組織サンプルは、患者から取り出した自家血管組織移植片の任意の部分を含む。組織サンプルから、核酸またはポリペプチド形態の標的遺伝子シーケンスの組を含む組織抽出物を調整することができる。マイクロアレイ基板は、血管移植片疾患と統計的に関連する1つまたは複数のプローブ分子を提供し、いくつかの指標遺伝子の発現レベルに基づいて臨床的な決定を行うことができる。血管移植片疾患に関連する遺伝子の組は、初期の血栓症、血管内膜増殖、移植片動脈硬化などの病理学的な状態に関するかまたはこの状態に特異的な遺伝子シーケンスのサブセットを含む。基準サンプルは、血管細胞系を有する種々の樹立細胞株、種々のタイプの自家血管、種々のタイプの非自家血管から調整することができる。適切な基準サンプルは特定の臨床状況に依存して変わるだろう。残遺組織サンプル内の血管移植片疾患に関連する遺伝子の相対的な発現レベルを使用し、血管移植から生じる続発症の重度または長期的な作用を評価または予想することができる。医師は、各患者の遺伝子発現パターンの決定を使用し、遺伝子治療および薬物療法を含む患者特定の治療法を提供することができる。
【0040】
別の実施形態では、移植片の経過をモニタリングし、血管移植片疾患発生を検出する方法を提供する。移植後の血管移植片の状態をモニタリングし、種々の形態の血管移植片疾患発症リスクをモニタリングするために、多数の生検を種々の時に患者から得て分析することができる。例えば、移植前の血管の第1の生検サンプルを再建術の前に患者から取り出してもよいし、または、手術の間、残された血管組織として残異物として得てもよい。たとえば数か月後など後から、移植後の血管移植片の第2の生検サンプルを患者から取り出すことができる。異なるときに収集した第1のサンプルと第2のサンプルを調整し、この2つのサンプルについて血管移植片疾患に関連するプローブシーケンスを含んだマイクロアレイを使用して同時に評価することができる。2つのサンプルのそれぞれの遺伝子発現パターンを比較し、初期の血栓症、血管内膜増殖、移植片動脈硬化を含む血管移植片疾患の発症を示す遺伝子発現パターンの変化をモニタリングすることができる。したがって、種々の時に患者から取り出した多数の組織サンプルの比較は2回のサンプリングに限定されるものではない。
【0041】
別の実施形態では、移植片の開通率を強化する方法が提供される。移植に適した血管移植片組織を患者の第1の非病変部位から取り出すことができる。適切なサンプルは、患者から取り出した移植前の自家血管組織移植片、または、手術の時に取り出した移植された血管の一部を表す残りの組織を含む。分析する自家組織は種々の動脈または静脈を含む。治療の必要に応じて患者の第2の病変部位に再移植する前に、移植片組織を生体外で培養することができる。移植片組織と薬品組成と接触させることができる。薬品組成は薬品担体、および/または、内皮細胞および/または平滑筋細胞を刺激する成長因子を含んでいてもよい。別法としては、薬品組成は薬品担体、および/または血管移植片疾患の発症を抑制する遺伝子をコード化するプラスミドを含んでいてもよい。別法としては、薬品組成は、薬品担体および1つまたは複数の抗凝固薬と抗血小板薬を含んでいてもよく、上記のプラスミドと成長因子はあってもなくてもよい。移植片組織は患者の第2の病変部位へ再移植することができる。別法としては、関連実施形態では、移植片組織は、再移植の前に薬品組成の組で処理し、再移植後に、同じまたは別の薬品組成の組を患者に投与して種々の形態の血管移植片疾患に対する治療を継続することもできる。
【0042】
上述の実施形態に関して、マイクロアレイ解析に適した組織サンプルの例は、大動脈/小動脈、大静脈/小静脈、動脈と静脈の毛細血管、種々の動脈および/または静脈を含む上皮細胞および平滑筋細胞を含む。また、サンプルは、血管移植片疾患および関連疾患の発症に関与する任意の機序と関連する遺伝子を表す核酸の任意の溶液、混合物、精製された形態を含む。例えば、mRNA、全細胞RNA、mRNAのcDNA誘導体、全RNAが適切なサンプルとして企図される。標的核酸サンプルは、当業者に知られ行われている従来の方法を使用することによって、任意の蛍光物質、化学発光化合物、放射性原子で標識することができる。基板オリゴヌクレオチドは目的遺伝子の任意の部分を含んでいてもよいし、一本鎖形態のRNA、二本鎖形態のRNA、cDNA、ゲノミックDNA、これらの任意の修飾形態を含むものとして表現してもよい。オリゴヌクレオチドは共有結合または非共有結合によって基板に接着することができる。マイクロアレイの表面上の基板オリゴヌクレオチドの集合的な表示は、生物の完全なゲノム、または、特定の目的の遺伝子の任意の小集団を表してもよく、この中には、血管移植片疾患の機序または表現型に関連する特定の遺伝子の組を含む。血栓症、血管内膜の増殖、動脈硬化症の発症と関連する遺伝子の過剰発現または過小発現のパターンを使用して危険因子を定義することができ、また、これらを使用して移植片障害の可能性を推定することによって血管移植の転帰を予見することができる。これは最良の治療経過を決定する際に医師の助けとなる。血栓症の機序に役割を果たす、血管移植の部位から取り出された血液の細胞成分と体液成分について、さらにマイクロアレイ分析に従うことができる。
【0043】
遺伝子発現レベルはしばしば、観察可能な臨床事象に関連する可能性があることに注意されたい。遺伝子発現レベルは、臨床症状の改善などの臨床事象を予想する役割を果たし、また、臨床観察を確認および精密化する役割を果たすことができる。
【実施例1】
【0044】
本発明の材料および方法
生体内サンプル収集
正常な伏在静脈(「SPV」)、橈骨動脈(「RA」)、内胸動脈(「IMA」)を、移植前の血管の残りから得た。大動脈組織はバイパス手術中搾穿した組織から得た。変性した静脈移植片は、心臓移植患者から体外培養した、心不全心臓から取り出した。SPV、RA、IMAの各サンプルを比較した。検査した動脈サンプルと静脈サンプルの間で遺伝子発現パターンは有意に異なっていた。したがって、血管タイプの選択は、血管移植片疾患が発症するかどうかの臨床転帰に影響する可能性がある。IMAと比較すると、SPVは、より低い長期的な開通率、より加速された動脈硬化を示す。正常な解剖環境の静脈とIMAを比較すると、解剖環境の静脈は動脈硬化症と関連しない。これらは、静脈と動脈における遺伝子発現が異なる例を提供し、種々の静脈と動脈に関して臨床的表現型が異なることを示唆する。さらに、正常なSPVと、対外移植した心不全心臓から取り出した変性または病変した静脈移植片を比較し、種々の病理学的過程中に活性化されるかまたは抑制される遺伝子を識別した。識別された遺伝子は、本発明の種々の実施形態に組み入れることができる。
【0045】
生体外細胞培養
ヒト冠動脈内皮細胞(「CAEC」)、ヒト伏在静脈内皮細胞(「SPVEC」)、ヒト冠動脈平滑筋細胞(「CASMC」)、ヒト伏在静脈平滑筋細胞(「SPVSMC」)がBioWhitakker社から得た一次培養細胞であった。細胞は経過6の検査のために使用された。すべてのタイプの細胞を、2%のゼラチン(ミズーリ州セントルイスSigma社)であらかじめコーティングした100mmまたは150mmの培養皿の平板培地の上におき、BioWhitakker社からの定義された細胞培養培地内で培養した。12時間にわたって無血清培地で培養した後、およそ80%のコンフルエンスの細胞を、異なる成長因子(TNα、TGFβ、IL1β、酸化LDL、PDGF)で1晩処理した。静脈と動脈から分離した内皮細胞(「EC」)および平滑筋細胞(「SMC」)の遺伝子発現パターンを、基礎状態と、異なる成長因子で処理した状態で比較した。生体外研究から得た結果を使用し、観察された生体内結果に寄与する特定の細胞タイプを同定することができる。培養物中の静脈細胞と動脈細胞を、動脈硬化に重要な役割を果たす炎症性サイトカインであるTNFα、IL1βなどの成長因子による種々のタイプの処理に関して比較した。SMC増殖と移動を増加させるPDGFも使用した。SMC増殖と移動を抑制するTGFβも使用した。OX−LDLはSMCを刺激し、血管壁の炎症反応を誘起する。これらの結果は、静脈と動脈が成長因子に対して異なった応答を示すことを証明しており、移植片候補を選ぶための多くの考慮点の1つと考えられる。同定された遺伝子は、本発明の種々の実施形態に組み入れることができる。
【0046】
RNA分離
RNA抽出組織はすぐにRNALater試薬(カリフォルニア州バレンシアQiagen社)で処理し、−20℃で2日間〜4日間保存してからRNA抽出を行った。組織は液体窒素で迅速に冷凍し、また、機械装置を使用して粉末形態に破砕した。粉末になった組織サンプルは、TRIZOL試薬(カリフォルニア州カールスバードInvitrogen社)の中でHandishear(Virtis)でホモジナイズした。新しい組織の一部をホルマリン固定し組織学的検査を行った。培養した血管細胞については、細胞はTrizol試薬で採り、RNA抽出まで−80℃で保存した。フェノールクロロホルム抽出後の水層をRNeasyカラム(カリフォルニア州バレンシアQiagen社)に加えさらに精製した。RNA濃度は、Nanodrop(National Instruments社)とUV分光計によって定量した。すべてのサンプルの整合性をBioAnalyzer2100(カリフォルニア州パロアルト、アジレント社)を使用してチェックした。http://www.labs.agilent.com/resources/techreports.html
【0047】
アジレントオリゴマイクロアレイのための全RNA標識とハイブリダイゼーション
サンプルまたは共通基準RNA(カリフォルニア州La Jolla、Stratagene社、Universal Mouse RNA)からの全RNAを、Low RNA Input Fluorescent Linear Amplification kit(カリフォルニア州パロアルト、アジレント社)で標識した。簡単には、500ngの全RNAをT7プロモータプライマで活性化し、40℃で2時間にわたって、400ユニットのMMLV−RT、各々50μMのdATP、dTTP、dGTP、cCTP、1ユニットのRNaseOUT存在下で逆転写した。蛍光cRNAは生体外転写とシアニン3CTPまたはシアニン5CTPの結合によって合成した。培養は、40℃で2時間にわたって、T7ポリメラーゼ、NTP混合剤、PEG、無機リン、RNaseOUTの存在下で行った。標識したcRNAとシアニン染料の結合量を、Nanodrop(National Instruments社)によって定量した。各1μgのシアニン5標識cRNAとシアニン3標識cRNAを混合し、回転オーブンの中で17時間にわたり60℃で、Custom Human Oligonucleotide Microarray上でハイブリダイズさせた。Custom Human Oligonucleotide Microarrayは、既知のすべての心臓血管遺伝子をカバーするおよそ21,600の一意的な転写産物または遺伝子を含む。http://www.labs.agilent.com/resources/techreports.html
【0048】
別法としては、全RNAまたはmRNAをAgilent Direct Labeling Kit(カリフォルニア州パロアルトアジレント社)で標識してもよい。簡単には、組織サンプルからの全RNAまたは共通基準RNA(カリフォルニア州La Jolla、Stratagene社、Universal Pooled Human Reference RNA)10μgをオリゴd(T)で活性化し、400ユニットのSuperscript II RNase H Reverse Transcriptase(カリフォルニア州カールスバードInvitrogen社)存在下で逆転写した。標識反応は、42℃で1時間にわたり、各100μMのdATP、dTTP、dGTP、25μMのdCTP、各25μMのCy3dCTPまたはCy5dCTP(マサチューセッツ州ボストン、NEN Life Science社)、および、27ユニットのRNAguard Ribonuclease Inhibitor(ニュージャージー州Piscataway、Amersham社)存在下で培養し、ついで、標識しないRNAのRNase I分解を行った。標識したcDNAは、Qiaquick PCR cleanup kit(カリフォルニア州バレンシアQiagen社)で精製した。すべての精製した標的を、アジレントオリゴマイクロアレイ上でハイブリダイズした。
【0049】
マイクロアレイデータの走査、バックグラウンド除去、正規化
スライドを洗浄し、Agilent G2565AA Microarray Scanner Systemの上で走査し、画像をAgilent Feature Extraction Software(バージョンA.7.1.2)を使用して定量した。処理には、プローブ選択フィルタに基づいたグローバル調整とランク一貫性を伴うローカルバックグラウンド除去が含まれた。正規化はLOWESSアルゴリズムを使用して行なった。Resolver Softwareを使用してデータ解析を行い、Rank Consistency Scoreを適用し、上述の遺伝子発現レベルの有意な切捨てを決定した(Chenら、Circulation,108:65−72、2003年)。マイクロアレイはAgilent G2565AA Microarray Scanner Systemで走査し、画像はAgilent Feature Extraction Software(バージョンA.6.1.1)を使用して定量した。処理はローカルなバックグラウンド除去およびランク一貫性ベースのプローブ選択フィルタを含んでいた。正規化はLOWESSアルゴリズム25を使用して行った。cy3チャネルとcy5のチャネルの染料正規化した信号を使用し、ログ比率を計算した。比率は算術平均を使用して、各染料スワップについて平均した。
【0050】
マイクアレイデータの解析
2つ以上の異なる組織タイプ間で異なった発現を示す可能性のある遺伝子を識別するために、いくつかの統計的手法を使用することができる。これらの方法は、パラメトリックスコア法とノンパラメトリック(分布フリー)スコア法という大きな2つのカテゴリに分類される。パラメトリック法は、各所与のクラス(例えば組織タイプ)内の各遺伝子の発現値について所定の分布を仮定し、ついで、クラス特有の分布の分離の仕方に従って遺伝子をスコアリングする。パラメトリック法の例はt検定(Rice J.A、Mathematical Statistics and Data Analysis,Duxbury Press,1995年)、および、ガウスエラースコア(Ho M.、Yang E.、Matcuk G.、Deng D.、Sampas N.、Tsalenko A.、Tabibiazar R.、Zhang Y.、Chen M.、Talbi S.、Ho Y.D.、Wang J.、Tsao P.S.、Ben−DorA.、Yakhini Z.、Bruhn L.、Quertermous T.、「データベースマイニングとマイクロアレイ解析の組み合わせによる内皮細胞遺伝子の同定」、Physiol Genomics.,2003年5月13日;13(3):249−62)である。これとは対照的に、分布フリースコアはパラメータの仮定に基づかない。このようなスコアの例はコルモゴロフ−スミルノフスコア、ウィルコクソン順位和検定(Chakravarti,L.およびJ.Roy,1967、「応用統計学法ハンドブック,第1巻」、John Wiley&Sons社、ニューヨーク州ニューヨーク。Hollander M.とD.A.Wolfe、1973年「ノンパラメトリック統計法」、John Wiley&Sons社、ニューヨーク州ニューヨーク)、TNoMスコア(A.Ben−Dor、L.Bruhn、N.Friedman、I.Nachman、M.Schummer、Z.Yakhini、「遺伝子発現プロファイルによる組織分類」、J.Comput.Biol 7:559−583,2000年。A.Ben−Dor、N.Friedman、Z.Yakhini、「遺伝子発現データにおけるクラス発見」、コンピュータ生物学に関する第5回国際会議議事録、31ページ〜38ページ、2001年)、および、ランク一貫性スコア(M.M.Chen、E.A.Ashley、D.X.Deng、A.Tsalenko、A.Deng、R.Tabibiazar、A.Ben−Dor、B.Fenster、E.Yang、J.Y.King、M.Fowler、R.Robbins、F.L.Johnson、L.Bruhn、T.McDonagh、H.Dargie、Z.Yakhini、PS Tsao、T Quertermous、「ヒト心機能不全における強力な内因性inotrope apelinの新規な役割」、Circulation 108:65−72,2003年)。マイクロアレイデータ解析のためのノンパラメトリックスコアの使用については上述した(A.Ben−Dor、L.Bruhn、N.Friedman、I.Nachman、M.Schummer、Z.Yakhini、「遺伝子発現プロファイルによる組織分類」、J.Comput Biol 7:559−583、2000年。A.Ben−Dor、N.Friedman、Z.Yakhini、「遺伝子発現データにおけるクラス発見」、コンピュータ生物学に関する第5回国際会議議事録、31ページ〜38ページ、2001年)である。ノンパラメトリックスコアはアウトライアの効果についてそれほど敏感ではない傾向があり、各サンプルクラス内の均一な分布という仮定に基づいていない。ガウスエラースコアを使用し、2つ以上のクラスのサンプル間で異なった発現を示す遺伝子を発見することができる。上記の各スコアリング方法について、並べ替え検定または対応する分布(たとえばt検定について)を使用して、対応するp値を正確に計算するか(たとえばTNoMスコアについて)または推定することができる。これらのp値を使用し、二項式surprise rateを使用して、任意の有意水準で2クラスのサンプル(たとえば動脈サンプルと伏在静脈サンプル)の間で異なる発現を示す遺伝子の過多を決定することができる(A.Ben−Dor、L.Bruhn、N.Friedman、I.Nachman、M.Schummer、Z.Yakhini、「遺伝子発現プロファイルによる組織分類、J Comput Biol 7:559−583、2000年)。またはfalse discovery rate(FDR)(Tusher、V.G.、R.Tibshirani、G.Chu.、「イオン化放射応答に適用するマイクロアレイの有意解析」、Proc Natl Acad Sci USA、98:5116−5121、2001年)。
【0051】
冠動脈と伏在静脈中の平滑筋細胞の生体外比較
識別された320の遺伝子について、伏在静脈平滑筋細胞と冠動脈平滑筋細胞の比較を表わすそれぞれのt検定p値は、0.001未満であった。変量モデル下では、我々のマイクロアレイデータのうちこのような遺伝子は17だけ期待され、0.05のfalse discovery rateに対応する。
【0052】
伏在静脈サンプルと、RAサンプルおよびIMAサンプルとの生体内比較
同定された232の遺伝子について、伏在静脈サンプルと、RAサンプルおよびIMAサンプルの比較に関するt検定p値は、それぞれ0.001未満であった。変量モデル下では、我々のマイクロアレイデータのうちこのような遺伝子は21だけ期待され、0.09のfalse discovery rateに対応する。
【0053】
マイクロアレイ
2種類のアジレント部位内オリゴマイクロアレイを使用した。1つは、生体外細胞培養試験のために約17300のバリデートされた一意的な遺伝子または転写産物を含む「ADHOC1Aアレイ」として市販されている。もう1つのアレイは、ADHOC1Aアレイからのすべての遺伝子に追加して、心血管系に関連するほとんどすべての知られた遺伝子をカバーするカスタムオリゴアレイであり、21600の一意的な遺伝子または転写産物を含む。カスタムオリゴアレイは生体内サンプルの解析のために使用した。
【0054】
先の記述では説明の目的のために、特定の命名法を使用して本発明の完全な理解を提供した。しかし当業者であれば、本発明を実施するために特定の詳細が必要ではないことは明らかであろう。本発明の特定の実施形態に関する先の説明は例示と説明の目的のために提示されている。上記の説明は網羅的なものではなく、また本発明を開示した正確な形に限定することを目的としたものでもない。上記の教示に照らして、多くの修正例および変形例が可能であることは明らかである。実施形態は、本発明の原理と実際の応用を最良に説明し、これによって当業者が本発明を最良に使用するために示し、説明したものであり、種々の修正を伴う種々の実施形態が、意図される特定の使用に適している。本発明の範囲は、次の請求項およびその等価物によって定義されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】マイクロアレイベースのハイブリダイゼーションアッセイの原理を示す図である。
【図2】マイクロアレイベースのハイブリダイゼーションアッセイの原理を示す図である。
【図3】マイクロアレイベースのハイブリダイゼーションアッセイの原理を示す図である。
【図4】マイクロアレイベースのハイブリダイゼーションアッセイの原理を示す図である。
【図5】冠動脈疾患患者を治療するために静脈移植片または動脈移植片を使用して行なうことのできる例示的な冠動脈バイパスを示す一般化された図である。
【図6】手術後一ヶ月で発生する病理学的な状態である、初期の血栓症の知られたメディエータを示す図である。
【図7】(A)手術後一ヶ月〜一年の間に発生する病理学的な状態である、進行性血管内膜増殖に伴う、血管壁内に発生する形態学的な変化を示す図である。(B)手術後一ヶ月〜一年の間に発生する病理学的な状態である、進行性血管内膜増殖に伴う、血管壁内に発生する形態学的な変化を示す図である。
【図8】(A)元の血管中で発生する動脈硬化と、血管移植片中で発生する動脈硬化を含む、動脈硬化の異なる形式の間の違いを示す図である。(B)元の血管中で発生する動脈硬化と、血管移植片中で発生する動脈硬化を含む、動脈硬化の異なる形式の間の違いを示す図である。
【図9】血管移植片疾患または血管移植片障害と関連すると決定された遺伝子シーケンスを有するプローブ分子を含むマイクロアレイの一般化された表現を示す図である。
【図10A】異なる血管生検を評価するために仮想のマイクロアレイ基板に含まれるプローブシーケンスの種々の組を示す図である。
【図10B】健康な組織を示す遺伝子発現パターンに関する相対的な信号強度を示す仮想の実験の結果を示す図である。
【図10C】ある形態の血管移植片疾患を発症するリスクのある組織を示す遺伝子発現パターンの相対的な信号強度を示す仮想の実験の結果を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
102 アレイ
104 機構
105〜109 プローブ
110〜113 DNA分子(またはRNA分子)
115〜118 フルオロフォアまたは化学発光化合物、放射性原始
200 アレイ
202〜204 標的分子
205〜207 プローブ
208、209 DNA分子(RNA分子)
406 機構
602 血管
702 血管壁の内膜層
704 血管内膜層
706 内皮細胞層
708 平滑筋細胞層
902 アレイ
904〜907 陽性対照プローブシーケンス
908〜911 陰性対象プローブシーケンス
912〜915 血管移植片疾患関連プローブシーケンス
916〜919 血管移植片疾患と関連しないプローブシーケンス
1002 アレイ
1004、1006 プローブ分子
1008、1010 陽性対照プローブ
1012、1014 内皮細胞内で優先的に発現するプローブ
1016、1018 陰性対照遺伝子
1020、1022 平滑筋細胞で優先的に発現するプローブ
1024、1026 陰性対照遺伝子
【付録A】
【0057】
この付録部では、細胞増殖と移動、炎症と免疫反応、凝固と血栓、細胞外基質と細胞接着、転写調節、シグナル伝達、他の機能など、種々の知られた機能に従ってグループ分けされた移植片組織候補の評価に関する遺伝子のリストを提供する。
細胞増殖と移動
CDCA4
細胞分裂周期関連4
NM_000076.1 CDKNIC
ヒトサイクリン依存キナーゼインヒビタIC(p57、Kip2)(CDKN1C)、mRNA
I_934604 BDNF
脳由来神経栄養因子。ニューロンの分化および軸策の成長を刺激する受容体チロシンキナーゼのTrkファミリと相互作用する神経成長因子であり、シナプス伝達を規制する。ニューロンの生存を促進すると考えられる。ECによって分泌され、SMCをアポトーシスから保護する。
I_930573 IGFBP3
インスリン様成長因子結合タンパク質3。インシュリン様成長因子(IGF1、IGF2)に結合するタンパク質ファミリのメンバであり、IGF1誘発性増殖を抑制し、PXRAとの相互作用を介してIGF1から独立してアポトーシスを誘発する。
I_1002080 IGFBP2
インスリン様成長因子結合タンパク質2。インシュリン様成長因子に結合してその作用を調節し、細胞増殖を調節する。アポトーシスに関与すると考えられる。悪性表現型と関連する。前立腺の退縮に役割を果たすと考えられる。
I_961326 IGFBP4
インスリン様成長因子結合タンパク質4。IGF1とIGF2に結合して、細胞の成長、増殖、およびおそらく分化を調節し、発達プロセスに関与し、多嚢胞性卵巣症候群、成長の遅延、甲状腺癌に関与する。
I_932459 IGFBP6
インスリン様成長因子結合タンパク質6。インスリン様成長因子結合タンパク質ファミリのメンバ。IGF1よりはるかに大きな親和性でIGF2と結合し、IGF2誘発性細胞増殖を抑制する。
I_956961 IGF2R
インシュリン様成長因子II受容体。マンノース6リン酸含有リソソーム酵素の輸送およびIGF−II成熟とクリアランスにおいて機能し、グランザイムB誘発性アポトーシスを仲介する。腫瘍抑制因子と推定される。
I_958610 TGFBI
骨形成と肺構造/機能に役割を果たすと考えられるトランスフォーミング成長因子ベータ(TGFB1)によって誘発される、トランスフォーミング生長因子ベータ誘発性細胞外接着タンパク質。対応する遺伝子の変化は一部の角膜変性の原因となる。
D13628.2 ANGPTI
アンギオポイエチン1。内皮細胞特異的受容体タンパク質チロシンキナーゼTIE2(TEK)のリガンドであり、細胞移動を刺激しアポトーシスから保護し、造血、血管形成、子宮と胎児胎盤の循環に役割を果たす。
AK075219.1 ANGPT2
アンギオポイエチン2。アンギオポイエチン1(ANGPTI)誘発性血管形成および走化性のアンタゴニストおよびインヒビタであり、内皮タンパク質チロシンキナーゼ受容体Tie2(TEK)を介して作用する。腫瘍細胞生存を促進し、腫瘍血管形成を調節すると考えられる。
BC011976.1 CXCL1
成長関連癌遺伝子(メラノーマ成長刺激作用)。CXCケモカインであり、インターロイキン8受容体と結合し、細胞内カルシウムを動員し、・・・の間に成長調節性と走化性の性質により白血球マイトジェニック因子として機能する。
NM_000609.1 CXCL12
間質細胞由来因子1。αケモカインであり、Gタンパク質結合受容体CXCR4を介して作用し、白血球の接着、移動、走化性を刺激し、リンパ球トロピック(tropic)HIV株による感染を抑制する。
BC015753.1 CXCL2
ケモカイン(CXCモチーフ)リガンド2。CXCケモカインファミリのメンバであり、好中球の走化性因子および上皮細胞分裂促進因子として作用し、免疫炎症反応に関与する。グルタミン酸作動性シナプス伝達を調整すると考えられる。
BC016308.1 CXCL3
メラノーマ成長刺激作用ガンマ。ケモカインおよびマイトジェニック因子であり、好中球を活性化し、走化性を誘発する。炎症反応に関与すると考えられ、発現の増加は、溶血尿毒症症候群における炎症と関連すると考えられる。
U81234.1 CXCL6
誘発可能小サイトカインサブファミリBメンバ6(顆粒球走化性タンパク質2)。CXCR1とCXCR2のリガンドであり、好中性顆粒球走化性およびゼラチナーゼB(MMP9)放出を促進する。炎症に役割を果たすと考えられる。
I_1109403 LTBP1
潜在トランスフォーミング成長因子ベータ結合タンパク質1。細胞外基質をターゲットとして、潜在TGFベータ1(TGFB1)の合成、分泌に役割を果たす。変異は冠状動脈性心疾患と関連すると考えられ、PEX症候群のマーカである。
AB037158.1 DSCR6
ダウン症候群棄却域遺伝子6。ライシュマノリシン(Leishmanolysin)ドメインを含む。初期の胚発生において機能すると考えられる。対応する遺伝子は第21染色体のダウン症候群棄却域に位置し、ダウン症候群の病原としての可能性を示唆する。
BC030828.1 EDIL3
EGF様反復およびジスコイジン(discoidin)I様ドメイン3。アルファ5ベータ3インテグリン受容体のリガンド、内皮細胞の接着と移動の促進、脈管の形態生成またはリモデリングに関与すると考えられる。
M60828.1 FGF7
繊維芽細胞成長因子7(ケラチノサイト成長因子)。創傷治癒と肺の発達における表面細胞の増殖と分化を刺激し、細胞周期、アポトーシス、血管形成、細胞移動に役割を果たす。
BC018650.1 EDGI
内皮分化遺伝子1。スフィンゴシン1リン酸によって活性化されるGタンパク質結合受容体であり、Giタンパク質およびRac、Ras、Rhoの各シグナル伝達経路を介してシグナル伝達し、細胞の接着、移動、血管形成を促進し、アポトーシスを抑制する。
BC036034.1 EDG2
内皮分化リゾホスファチジン酸Gタンパク質結合受容体2、リゾホスファチジン酸受容体。アポトーシスと細胞増殖に関与する。卵巣の上皮細胞成長および転移に関して負の調節因子と考えられる。
D50405.1 HDAC1
ヒストンデアセチラーゼ1、タンパク質デアセチラーゼおよび転写コリプレッサ。ヒストン、p53(TP53)、YY1の脱アセチル化を介し、また、pRb(RB1)、トポイソメラーゼIIベータ(TOP2B)、DNMT1との相互作用を介して細胞増殖を制御する。
AK096149.1 MIG−6
マイトジェン誘起可能遺伝子6。細胞周期に依存して発現する腫瘍サプレッサと推定され、c−junN末端キナーゼ(ヒトMAPK10)を活性化する。ERBB2シグナル伝達を仲介すると考えられる。
BC017197.1 MCL1
骨髄細胞白血病1。Bcl−2(BCL2)とシーケンスホモロジを共有するアポトーシスインヒビタ。細胞分化の間に生存促進リガンドによってアップレギュレートされる。発現の増加は、希突起神経膠腫患者の予後不良に関連する。
BC018695.1 MEST
中胚葉特異的タンパク質。アルファベータヒドロラーゼフォールドファミリの父系発現メンバ。中胚葉発生において機能する。血管形成に役割を果たす可能性がある。遺伝子刷り込みの欠失は肺癌および乳癌に関連する。
NM_003243.1 TGFBR3
トランスフォーミング成長因子ベータ受容体タイプIII(ベータグリカン)。TGFベータに対する細胞応答を強化するシグナル伝達受容体にTGFベータを提示する。発生に関与する可能性がある。発現の増加は、乳癌の治療に役立つと考えられる。
U27185.1 RARRES1
レチン酸受容体応答因子1(タザロテン誘発遺伝子1)。推定された膜貫通タンパク質であり、細胞増殖に対して負の調節を行なうと考えられる。発現は乾癬治療に使用されるレチン酸受容体特異的レチノイドタザロテンによって誘発される。
M76979.1 SERPINF1
色素上皮由来因子。神経保護タンパク質であり、目の血管形成を抑制し、アポトーシスを調節する。細胞分化に役割を果たし、神経芽細胞腫中の抗腫瘍因子であり、網膜血管症の治療に使用できると考えられる。
NM_004426.1 PHC1
初期発生調節因子1。ホメオティック遺伝子発現に対して負の調節を行い、細胞増殖、分化、B細胞成熟に役割を果たすと考えられる。CATCH22症候群および幼年期B細胞前駆体急性リンパ性白血病に関与すると考えられる。
炎症および免疫反応
I_929482 IL6
インターロイキン6(インターフェロンベータ2)。T細胞とB細胞の増殖、B細胞の最終成熟を促進するサイトカイン。多発性硬化症、および、多発性骨髄腫とB慢性リンパ性白血病の持続に関与する。
I_942167 IL1B
インターロイキン1ベータ。防御反応と炎症反応を調整し、白血病性関節炎で中心的な役割を果たすサイトカイン。また、自己免疫性糖尿病と膵臓癌転移にも寄与すると考えられる。
I_957620 IL8
インターロイキン8。好中球の化学誘引と活性化に役割を果たし、免疫炎症反応に関与するサイトカイン。
I_957623 GRO1
成長関連癌遺伝子(メラノーマ成長刺激作用)。CXCケモカインであり、インターロイキン8受容体に結合し細胞内カルシウムを動員し、炎症の間、成長調節および走化性で白血球マイトジェン因子として作用する。
I_957614 GRO2
マクロファージ炎症タンパク質2。CXCケモカインファミリのメンバであり、好中球の走化性因子および上皮細胞分裂促進因子として作用する。
I_957616 GRO3
メラノーマ成長刺激作用ガンマ。ケモカインおよびマイトジェン因子であり、好中球を活性化し、走化性を誘発する。炎症反応に関与すると考えられる。
I_930918 IL18BP
インターロイキン18結合タンパク質。免疫グロブリンスーパーファミリのメンバであり、インターロイキン18(IL18)に結合して中和し、IL18誘発性インターフェロンガンマ(IFNG)産生のフィードバック抑制を提供し、創傷および炎症反応に機能する。
I_928524 TNFRSFI4
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリメンバ14。転写因子AP−1とNF−カッパBを活性化するシグナル伝達経路の一部であり、単純ヘルペスウイルスの進入を仲介する。
I_931262 TNFSF8
CD30受容体と結合する腫瘍壊死因子(リガンド)スーパーファミリ、メンバ8、タイプII膜貫通タンパク質であり(TNFRSF8)、リンパ球と骨髄性細胞の増殖および分化を調節する。ホジキン病の病因に関与する。
I_928321 VCAM1
血管細胞接着分子1。免疫グロブリンスーパーファミリメンバの1つであり、炎症反応中に特異的な白血球の動員と内皮細胞への接着を仲介する。また動脈硬化にも役割を果たすと考えられる。
I_958485 ESM1
内皮細胞特異的分子1。システインに富んだ分泌タンパク質であり、内皮細胞と白血球の相互作用を調節することによって、脈管内皮機能に関与し、局所的な炎症に役割を果たすと考えられる。
I_959599 IF127
インターフェロンアルファ誘起可能タンパク質27。膜タンパク質と推定され、活性化された樹状細胞内で発現し乳癌では過剰発現するインターフェロンアルファによって誘導される。
I_932002 THY1
胸腺細胞表面抗原。GPIアンカータンパク質で免疫グロブリンスーパーファミリのメンバであり、脳組織、胸腺細胞、造血系の種々の細胞で発現する。
Y08768.1 IL13RA2
インターロイキン13受容体アルファ2。高親和性インターロイキン−13(IL13)受容体であり、IL13の内在化に関与する。炎症反応に役割を果たすと考えられる。
I_962330 MX1
ミクソウイルスインフルエンザ抵抗性1。ダイナミンラージGTPaseスーパーファミリのメンバであるGTPaseであり、インターフェロンによって誘起され、RNAウイルスに対する抗ウイルス防御に関与する。ファンコニー貧血タンパク質FAC(FANCC)の下流のターゲット。
I_962329 MX2
ミクソウイルス(インフルエンザウイルス)抵抗性2(マウス)。GTPaseスーパーファミリのメンバであり、プロリンに富むドメインとロイシンジッパを有し、オリゴマを形成するGTPaseである。対応する遺伝子は、前立腺癌細胞株中で過剰発現する。
NM 001928.1 DF
アディプシン(補体因子D)。セリンプロテアーゼであり、第2補体活性化経路内で機能し、成分C3と複合体を形成すると補体因子Bを開裂する。ヒトで欠乏すると髄膜炎菌への罹患感受性が増加する。
M33552.1 LSP1
リンパ球特異的タンパク質1。白血球特異的タンパク質であり、Fアクチンと結合し、分化およびシグナル伝達において作用し、好中球の移動に対して負の調節を行なう。過剰発現は好中球アクチン機能不全(NAD 47/89)に関連する。
NM 006905.2のPSG1
妊娠特異的ベータ1糖タンパク質1。免疫グロブリンスーパーファミリのメンバであり、単球によって抗炎症性サイトカインの分泌を誘起する。免疫系を調節すると考えられる。
M34420.1 PSG3
妊娠特異的ベータ1糖タンパク質3。癌胎児抗原(CEA)ファミリの妊娠特異的糖タンパク質(PSG)サブグループのメンバである。
M33666.1 PSG6
妊娠特異的糖タンパク質6。免疫グロブリンスーパーファミリのサブファミリである癌胎児抗原ファミリのメンバであり、胎盤中で主に発現する。
U18467.1 PSG7
妊娠特異的糖タンパク質7。癌胎児抗原ファミリのメンバであり、肝臓と胎盤で主に発現する。
I_959180 SCYA2
サイトカインA2。CCケモカインであり、単球、記憶T細胞、ナチュラルキラー細胞、内皮細胞をひきつけ、感染、および、関節炎、多発性硬化症、動脈硬化症を含む炎症性疾患に対する炎症反応役割を果たす。
I_959599 IF127
インターフェロンアルファ誘起可能タンパク質27。膜タンパク質と推定され、活性化された樹状細胞中で発現し乳癌で過剰発現するインターフェロンアルファによって誘発される。
凝血と血栓
I_961844 THBD
トロンボモジュリン。形質膜受容体であり、血液凝固に対して負の調節を行い、対応する遺伝子の突然変異は心筋梗塞のリスク増加を招く。
U59632.1 GP1BB
糖タンパク質lb(血小板)ベータポリペプチド。フォンビルブラント因子受容体の構成要素であり血小板作用を仲介する。対応する遺伝子の突然変異はBernard Soulier症候群および遺伝的な巨大血小板障害に関連する。
BC007231.1 PLAT
組織プラスミノーゲンアクチベータ。セリンプロテアーゼであり、不活性プラスミノーゲンをプラスミンに変換し、線維素溶解において機能する。遺伝子の欠損は血栓症のリスク増加と関連する。
BC011171.1 SERPING1
セリン(またはシステイン)プロテイナーゼインヒビタ。C1の抑制を介して古典的経路を調節し、第2補体活性化経路、血液凝固、血管透過性を抑制する。突然変異は遺伝性血管浮腫の原因となる。
NM 006216.1 SERPINE2
セリン(またはシステイン)プロテイナーゼインヒビタクラッドE(ネキシン、プラスミノーゲンアクチベータインヒビタタイプ1)メンバ2。ウロキナーゼ、プラスミン、トロンビンと複合体を形成する。アルツハイマー病と強皮症の病原に関与すると考えられる。
細胞外基質と細胞接着
I_930282 MMP10
マトリックスメタロプロテイナーゼ10(ストロメリシン2)。他のマトリックスメタロプロテアーゼの活性を触媒し、細胞外基質の分解に関与する。腫瘍細胞侵入に役割を果たすと考えられる。mRNAは糖尿病性網膜症角膜中で過剰発現する。
I_962112 TIMP1
組織メタロプロテアーゼインヒビタ1。マトリックスメタロプロテアーゼを抑制し、細胞表面でMMP9と複合体を形成し、細胞増殖およびストレス反応に寄与し、過剰発現すると腫瘍形成細胞の転移を減少する。
I_960905 TIMP2
組織メタロプロテアーゼインヒビタ2。ゼラチナーゼA(MMP2)を抑制するメタロプロテアーゼインヒビタであり、細胞増殖、抗アポトーシス、血管形成抑制において機能する。腫瘍転移を抑制すると考えられる。
I_958653 THBS1
トロンボスポンジン1。細胞外基質糖タンパク質であり、他の基質タンパク質および細胞表面受容体と相互作用して、細胞の接着、拡散、移動、増殖を調節する。血管形成と腫瘍成長を阻害する。
I_964991 THBS2
トロンボスポンジン2。接着分子であり、ヘパリンと結合し、細胞接着、および、血管形成の抑制において役割を果たす。発達およびウイルスに対する反応に役割を果たすと考えられる。発現の欠如は神経膠腫における血管形成の強化において重要である。
NM_030820.2 COL21A1
6つのコラーゲントリプルへリックス反復、フォンビルブラント因子(vWF)タイプA、トロンボスポンジンN末端様ドメインを含むタンパク質であり、コラーゲンタイプIXアルファ1(ヒトCOL9A1)と中程度の類似性を有し、多発性骨端形成と関連する・・・
AB038518.1 COLEC12
コレクチンサブファミリメンバ12。タイプIIの膜貫通糖タンパク質であり、レクチンドメインを介してバクテリアと結合して宿主防御に役割を果たすと考えられる。またLDLと結合し、アテローム発生に役割を果たすと考えられる。
BC005322.1 DCN
デコリン。デルマタン/コンドロイチン硫酸プロテオグリカンであり、コラーゲンとトランスフォーミング成長因子ベータに結合し、細胞増殖に対して負の調節を行なう。また、器官形成において役割を有すると考えられる。欠損はマルファン症候群に関連する。
X74764.1 DDR2
ジスコイジンドメイン受容体2。受容体タンパク質チロシンキナーゼであり、コラーゲンによって活性化され、細胞外ドメインにジスコイジンモチーフを含み、マトリックスメタロプロテイナーゼ1をアップレギュレートする。細胞接着に関与すると考えられる。
BC037273.1 OGN
オステオグリシン。ロイシンに富んだ小プロテオグリカンファミリの硫酸ケラタンプロテオグリカングループのメンバであり、角膜の透明性の調節に役割を果たすと考えられる。
AF126110.1 FBLN1
フィブリン1。細胞外基質糖タンパク質であり、細胞外基質要素を接続し、止血と肢の発達、腫瘍侵入、血栓、結合組織、血液疾患に役割を果たすと考えられる。
AF101051.1 CLDNI
クローディン1。クローディンファミリのメンバ。4つの膜貫通ドメインを含み、タイトジャンクションストランドに局在する。細胞の極性を維持し、細胞間の接着とタイトジャンクションの形成に寄与すると考えられる。結腸直腸癌においてアップレギュレートされる。
BC010514.1 CLU
クラステリン(アポリポ蛋白J)。高比重リポタンパク質のサブクラスの構成要素であり、バクテリアに結合し、アポトーシス、細胞接着、ストレス応答に関与する。発現の増加は種々の癌および神経疾患に関連する。
M26326.1 KRT18
ケラチン18(サイトケラチン18)。タイプI表皮ケラチンで、中間径フィラメントの構成要素である。アポトーシス、細胞移動、および、ウイルス、ストレス、薬物感度に対する反応で機能すると考えられる。遺伝子の突然変異は特発性肝硬変の原因と考えられる。
AK092499.1 TFPI2
組織因子経路インヒビタ2。細胞外基質と関連するクニツ(Kunitz)タイプセリンプロテアーゼインヒビタファミリのメンバである。胎盤組織と細胞外基質の統合性の維持、腫瘍進入に役割を果たすと考えられる。
NM_002426.1 MMP12
ヒトマトリックスメタロプロテイナーゼ12(マクロファージエラスターゼ)(MMP12)、mRNA
U89942.1 LOXL2
リシルオキシダーゼ様2。スカベンジャ受容体システインに富んだファミリのメンバ。細胞の老化、細胞接着に機能し、胎盤と初期の卵膜の発生に役割を果たすと予想される。ウェルナー症候群繊維芽細胞中ではアップレギュレートされる。
NM_006475 OSF−2
骨芽細胞特異的因子2。細胞接着分子と推定され、骨形成において同種親和性細胞接着に役割を果たすと考えられる。発現の変化は、まれな骨疾患であるメロレオストーシスの発症に寄与すると考えられる。
AF098269.1 PCOLCE2
プロコラーゲンCエンドペプチダーゼエンハンサ2。糖タンパク質であり、プロコラーゲンCプロテイナーゼ、BMP1、TLL1によるタイプIIプロコラーゲンの開裂を強化する。開放隅角緑内障に関連すると考えられる。
U70136.1 PRG4
プロテオグリカン4(巨核球刺激因子)。分泌プロテオグリカンであり、細胞増殖、骨化、関節の潤滑の調節に役割を果たすと考えられる。遺伝子の突然変異は屈指症関節症内反股心膜炎症候群の原因である。
NM_020404.1 TEM1
腫瘍内皮マーカ1前駆体(エンドシアリン)。Cタイプレクチン、Sushi/SCR/CCP、EGF様ドメインを含む、腫瘍血管内皮上の細胞表面糖タンパク質であり、内皮受容体として機能し、血管形成に役割を果たすと考えられる。
NM_153370.1 MGC45378
SCP様細胞外タンパク質ファミリのメンバであり、細胞外基質タンパク質分解に関与し腫瘍進入に関連するトリプシンインヒビタである、プロテアーゼインヒビタ15(ヒトPI15)の領域と中程度に類似した領域を有する。
I_957267 COL12A1
コラーゲンタイプXIIアルファ1。中断したトリプルへリックスを有する原線維関連コラーゲン(FACIT)のファミリのメンバであり、骨格の発生に関与すると考えられる。円錐角膜では発現が低減している。
I_932752 COL13A1
タイプXIIIコラーゲンのアルファ1サブユニット。形質膜タンパク質であり、細胞接着、眼の発達と機能に役割を果たすと考えられる。
I_929022 COL16A1
コラーゲンタイプXVI(アルファ1サブユニット)。TGFB1によって調節される細胞外基質の構成要素である。軟骨形成に関与し、妊娠において重要であると考えられる。
I_930569 COL1A2
タイプIコラーゲンのアルファ2サブユニット。細胞基質間接着および創傷治癒に関与する。遺伝子の突然変異はエーラースダンロス症候群タイプVII、全身性強皮症、骨形成不全症に関連する。
I_928318 COL3A1
コラーゲンタイプIIIアルファ1。細胞外基質タンパク質である。対応する遺伝子の突然変異はエーラースダンロス症候群タイプIV、家族性大動脈瘤の原因と考えられる。
I_1100034 COL6A1
コラーゲン(タイプVI、アルファ1)。筋線維統合性の維持に関与し、細胞基質間接着に寄与すると考えられる。対応する遺伝子の突然変異はBethlemミオパチーの原因であり、ダウン症候群の先天性心臓血管と関連すると考えられる。
I_962369 COL6A2
コラーゲン(VI、アルファ2)。細胞外基質構造タンパク質であり、骨の鉱化作用、筋肉の発達、創傷治癒に関与すると考えられる。対応する遺伝子の突然変異はBethlemミオパチー、ウルリッヒ症候群の原因である。
転写因子
X98054.1 CREBLI
AUTO:Creb(サイクリックAMP応答因子結合タンパク質)関連タンパク質。転写因子のCREB/ATFファミリのメンバであり、調節因子・・・
M34309.1 ERBB3
ヒトv−erb−b2赤芽球白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ3、(鳥)(ERBB3)、mRNA
NM_004364.2 CEBPA
CCAAT/エンハンサ結合タンパク質アルファ。脂肪形成と顆粒球分化に関与する転写アクチベータである。遺伝子の突然変異は急性骨髄白血病に関連し、肺癌と肝細胞癌では発現が減少する。
AY014299.1 HOXC8
ホメオボックスタンパク質C8。Hoxタンパク質ファミリの転写リプレッサと推定され、SMAD1と相互作用し、軟骨分化の調節に役割を果たす。子宮頸癌の腫瘍形成に関与すると考えられる。
AF452494.1 CEGF3
ヒトSCUBE1に対し高い類似性を有するタンパク質。内皮細胞および血管に富む組織で発現し、炎症性サイトカインに応答してダウンレギュレートされ、6つの上皮成長因子(EGF)様ドメインおよびCUBドメインを含む。
AF140360.1 HBOA
ヒストンアセチルトランスフェラーゼ。MYSTファミリのメンバであり、C2HCジンクフィンガを含み、DNA複製開始に必要な起点認識複合体のMCM2とORC1L、および、アンドロゲン受容体(AR)に結合し、転写の役割をする・・・
シグナル伝達
NM_139047.1 MAPK8
マイトジェン活性化プロテインキナーゼ8。セリンチロシンキナーゼであり、c−Jun(JUN)を調節し、受容体シグナル伝達、細胞の成長と分化、アポトーシスにおいて作用し、また、DNA損傷、活性酸素、低酸素症、rRNA損傷などのストレッサに対する反応においても作用する。
AF432215.1 NCOA6IP
核受容体コアクチベータ6相互作用タンパク質
NM_005019.2 PDE1A
カルモジュリン依存ホスホジエステラーゼ1A。サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼであり、cAMPよりサイクリックGMPへの高い親和性を有し、勃起陰茎に役割を果たすと考えられる。
BC000737.1 RGS4
Gタンパク質シグナル伝達調節因子4。GアルファiサブユニットとGアルファqサブユニットに対しGTPase活性化タンパク質(GAP)として作用し、Gタンパク質シグナル伝達作用を減少させる。発現は心疾患では増加し、統合失調症患者の大脳皮質では減少する。
AB008109.1 RGS5
Gタンパク質シグナル伝達調整因子5。Gアルファサブユニットに対して結合し、GTPase活性化タンパク質(GAP)として作用し、Gタンパク質結合受容体シグナル伝達に対し負の調節を行なうと考えられる。mRNAは腎細胞癌で増加する。
AL832345.1 PKCe
プロテインキナーゼCイプシロン。プロテインキナーゼCの、ジアシルグリセロール活性化されたリン脂質依存性のイソ型であり、細胞増殖とアポトーシスに関与する。遺伝子突然変異は甲状腺癌に関連すると考えられる。
I_1100710 SOCSS
サイトカインシグナル伝達サプレッサ5(サイトカイン誘起可能SH2タンパク質6)。SH2ドメインとSOCSボックスを含み、JAK−STAT経路を介したサイトカインシグナル伝達に対し負の調節を行なう。
BC030133.1 SDC2
シンデカン2(ヘパラン硫酸プロテオグリカン1)。細胞面関連フィブログリカン(fibroglycan)であり、CSF2共受容体として作用する。FGFRシグナル伝達カスケードにおいて作用すると考えられる。細胞接着、細胞増殖、炎症反応に役割を果たす。
M97675.1 ROR1
神経栄養チロシンキナーゼ受容体関連1。受容体チロシンキナーゼのRORファミリのメンバであり、膜貫通受容体タンパク質チロシンキナーゼシグナル伝達経路に関与すると考えられる。
BC005923.1 MGST1
ミクロソームグルタチオンSトランスフェラーゼ1。グルタチオントランスフェラーゼであり、酸化ストレスに対する反応に関与する。
BC012423.1 SOD2
スーパーオキシドジスムターゼ2。ミトコンドリア酵素であり、スーパーオキシドを過酸化水素に変換する反応を触媒し、酸化ストレス、熱と放射に対する反応に役割を果たし、アポトーシス防止を支援する。
NM_033546.1 MLC−B
ミオシン調節軽鎖(ヒトMLCB)との非常に強い類似性を有するタンパク質。ヒトRHOタンパク質シグナル伝達に関与する。平滑筋におけるミオシン頭部ATPase活性の調節に関係すると考えられ、3つのEFハンドドメインを含む。
その他
NM_000625.3 NOS2A
誘起可能一酸化窒素シンターゼ。カルモジュリン結合酵素であり、アルギニンと酸素分子から一酸化窒素を生成し、病原菌抵抗と炎症反応において機能する。インターフェロンアルファによってアップレギュレートされ、肝炎C感染に対する保護作用を有すると考えられる。
L24470.1 PTGFR
プロスタグランジン類FP受容体(プロスタグランジンF2アルファ受容体)。活性化によりカルシウム流入を誘起し、平滑筋収縮を調節する。黄体融解に必要であると予想される。対応する遺伝子の突然変異は乳癌に関連する。
Y00749.1 EDN1
エンドセリン1。ペプチドホルモンであり、Gタンパク質結合受容体シグナル伝達を介して作用し、血管収縮と細胞増殖を含む多くの生理プロセスに関与する。アップレギュレーションは慢性心不全に関連する。
BC003672.1 FABP4
脂肪酸結合タンパク質4(脂肪細胞脂肪酸結合タンパク質)。レチン酸と結合する。脂肪酸代謝に役割を果たすと考えられ、PPARGアゴニストによってアップレギュレートされる。発現の減少は、進行膀胱移行細胞癌に関連する。
BC016288.1 FKBP3
FK506結合タンパク質3(25kDa)。ペプチジルプロリル(peptidylprolyl)シストランスイソメラーゼ活性を有するラパマイシン選択性DNA結合核イムノフィリンであり、ヒストンデアセチラーゼHDAC1とHDAC2、転写調節因子YY1、カゼインキナーゼIIに関連する。
NM_007270.1のFKBP9
ヒトFK506結合タンパク質9。63kDa(FKBP9)、mRNA
I_962212 ADN1A
アルコールデヒドロケナーゼ1AクラスIアルファポリペプチド、亜鉛依存アルコール、エタノールを酸化するNAD+オキシドレダクターゼ。
I_931241 FLJ20539
未知の機能のタンパク質であり、特徴不明なヒトKIAA1906と低い類似性を有する。
I_958186 1958186
未知の機能のタンパク質であり、特徴不明なマウス1810027120Rikと強い類似性を有する。
I_963838 1963838
システインに富んだ重金属結合タンパク質であるメタロチオネインファミリのメンバ。
I_963082 FLJ23577
未知の機能のタンパク質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
ほぼ一定の発現レベルで血管組織内に発現していると同定され、血管移植片疾患と関連しない対照プローブ分子の集合と、
血管移植片疾患に関連すると同定された遺伝子シーケンスを標的とするプローブ分子の集合と
を備えるアレイ。
【請求項2】
前記プローブ分子の集合は、初期の血栓症として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とする請求項1に記載のマイクロアレイ。
【請求項3】
前記プローブ分子の集合は、内膜過形成として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とする請求項1に記載のマイクロアレイ。
【請求項4】
前記プローブ分子の集合は、移植片動脈硬化として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とする請求項1に記載のマイクロアレイ。
【請求項5】
前記アレイにさらす血管組織サンプルは、患者から取り出した種々のタイプの自家血管組織移植片を含む請求項1に記載のマイクロアレイ。
【請求項6】
前記アレイにさらす血管組織サンプルは、
種々のタイプの動脈組織と、
静脈組織と
を含む請求項1に記載のマイクロアレイ。
【請求項7】
アンギオポイエチン1(ANGPT1)と、アンギオポイエチン2(ANGPT2)と、脳由来神経栄養因子(BDNF)と、細胞分裂周期関連4(CDCA4)と、ヒトサイクリン依存キナーゼインヒビタ1C(CDKN1C)と、ヒトCCAAT/エンハンサ結合タンパク質(CEBPA)と、CEGF3と、クローディン1(CLDNI)と、クラステリン(CLU)と、COL21A1と、コレクチンサブファミリメンバ12(COLEC12)と、creb(サイクリックAMP応答因子結合タンパク質)関連タンパク質(CREBL1)と、CXCケモカイン(CXCL1)と、支質細胞由来因子1(CXCL12)と、ケモカインリガンド2(CXCL2)と、メラノーマ成長刺激活性ガンマ(CXCL3)と、小誘起可能サイトカインサブファミリBメンバ6(CXCL6)と、decorin(DCN)と、discoidinドメイン受容体2(DDR2)と、adipsin/セリンプロテアーゼ(DF)と、ダウン症候群棄却域遺伝子6(DSCR6)と、内皮分化遺伝子1(EDG1)と、内皮分化リゾホスファチジン酸Gタンパク結合受容体2(EDG2)と、EGF様反復及びdiscoidinI様ドメイン3(EDIL3)と、エンドセリン1(EDN1)と、ヒトv−erb−b2赤芽球白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ3(ERBB3)と、脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)と、フィブリン1(FBLN1)と、繊維芽細胞成長因子7(FGF7)と、FK506結合タンパク質3(FKBP3)と、ヒトFK506結合タンパク質9(FKBP9)と、成長分化因子3(GDF3)と、糖タンパク質1bベータポリペプチド(GP1BB)と、GRO1と、GRO2と、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HBOA)と、ヒストンデアセチラーゼ1(HDAC1)と、ホメオボックスタンパク質C8(HOXC8)と、インスリン様成長因子結合タンパク質2(IGFBP2)と、インスリン様成長因子結合タンパク質3(IGFBP3)と、インスリン様成長因子結合タンパク質6(IGFBP6)と、インスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)と、インターロイキン13受容体アルファ2(IL13RA2)と、インターロイキン8(IL8)と、ケラチン18(KRT18)と、LIMドメインオンリー7(LMO7)と、リシルオキシダーゼ様2(LOXL2)と、リンパ球特異的タンパク質1(LSP1)と、細胞分裂活性タンパク質キナーゼ8(MAPK8)と、骨髄性細胞白血病1(MCL1)と、中胚葉特異性タンパク質(MEST)と、SCP様細胞外タンパク質ファミリのメンバ(MGC45378)と、ミクロソームグルタチオンSトランスフェラーゼ1(MGST1)と、細胞分裂誘起可能遺伝子6(MIG6)と、MLC−Bと、ヒト基質メタロプロテイナーゼ12(MMP12)と、核受容体コアクチベータ6(NCOA6IP)と、誘起可能一酸化窒素シンターゼ(NOS2A)と、オステオグリシン(OGN)と、骨芽細胞特異的因子2(OSF2)と、プロコラーゲンCエンドペプチダーゼエンハンサ2(PCOLCE2)と、カルモジュリン依存ホスホジエステラーゼ1A(PDE1A)と、初期発育調節因子I(PHC1)と、組織タイププラスミノーゲンアクチベータ(PLAT)と、プロテオグリカン4(PRG4)と、プロテインキナーゼCイプシロン(PRKCE)と、妊娠特異性ベータl糖タンパク質1(PSG1)と、妊娠特異性ベータl糖タンパク質3(PSG3)と、妊娠特異性ベータl糖タンパク質6(PSG6)と、妊娠特異性ベータl糖タンパク質7(PSG7)と、プロスタグランジン類FP受容体(PTGFR)と、レチノイン酸受容体応答因子1(RARRES1)と、Gタンパク質シグナリング調節因子4(RGS4)と、Gタンパク質シグナリング調節因子5(RGS5)と、神経栄養チロシンキナーゼ受容体関連1(ROR1)と、シンデカン2(SDC2)と、セリン(またはシステイン)プロテイナーゼインヒビタcladeE(SERPINE2)と、色素上皮由来因子(SERPINF1)と、セリン(またはシステイン)プロテイナーゼインヒビタ(SERPING1)と、サイトカインシグナリングサプレッサ5(SOCS5)と、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)と、腫瘍内皮マーカ1前駆物質(endosialin)(TEM1)と、組織因子経路インヒビタ2(TFPI2)と、形質転換成長因子ベータ受容体タイプIII(ベータグリカン)(TGFBR3)と、トロンボモジュリン(THBD)と、メタロプロテイナーゼ組織インヒビタ1(TIMP1)と、メタロプロテイナーゼ組織インヒビタ3(TIMP3)と、オステオプロテゲリン(TNFRSF11B)と
から選択された血管移植片疾患に関連する遺伝子シークエンスを、前記プローブ分子の集合のプローブが標的とする請求項1に記載のマイクロアレイ。
【請求項8】
患者から自家血管組織サンプルを取り出すステップと、
ほとんど一定の発現レベルで血管組織内に発現すると同定され、血管移植片疾患と関連しない対照プローブ分子の集合と、血管移植片疾患に関連すると同定された遺伝子シーケンスを標的とするプローブ分子の集合とを含むマイクロアレイを、前記自家血管組織サンプルから調整されたサンプル溶液にさらすステップと、
前記マイクロアレイから得たデータに基づいて、血管移植片疾患に関連する遺伝子の組の相対的な遺伝子発現レベルを定量的に決定するステップと、
前記相対的な遺伝子発現レベルを既定の標準値と比較し、前記血管組織の移植片としての実行可能性を評価するステップと
を含むことを特徴とする候補血管の間で血管組織をスクリーニングする方法。
【請求項9】
前記プローブ分子は、初期の血栓症として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とすることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブ分子は、内膜過形成として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とすることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記プローブ分子は、移植片動脈硬化として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とすることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記血管組織サンプルは患者から取り出した種々のタイプの自家血管組織移植片を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記自家血管組織移植片が動脈組織と静脈組織を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
成長因子と、
プラスミドコード化成長因子と、
抗血小板薬と、
抗凝固薬と
のうちの1つに血管組織をさらすステップをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項15】
サンプルを血管組織移植片から取り出すステップと、
ほとんど一定の発現レベルで血管組織内に発現すると同定された、血管移植片疾患と関連しない対照プローブ分子の集合と、血管移植片疾患に関連すると同定された遺伝子シーケンスを標的とするプローブ分子の集合とを含むマイクロアレイを、前記自家血管組織移植片から調整されたサンプル溶液にさらすステップと、
前記マイクロアレイから得たデータに基づいて、血管移植片疾患に関連する遺伝子の組について相対的な遺伝子発現レベルを定量的に決定することと、
前記相対的な遺伝子発現レベルを既定の標準値と比較し、前記血管組織の移植片としての実行可能性を評価するステップと
を特徴とする移植された血管組織移植片をモニタリングする方法。
【請求項16】
前記プローブ分子は、初期の血栓症として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とすることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記プローブ分子は、内膜過形成として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とすることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記プローブ分子は、移植片動脈硬化として臨床的に認識された病理学的状態に関連する遺伝子シーケンスのサブセットを標的とすることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記自家血管組織移植片は患者から取り出した種々のタイプの自家血管組織移植片を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記自家血管組織移植片は、
動脈組織と、
静脈組織と
を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公開番号】特開2006−14740(P2006−14740A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192925(P2005−192925)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】