説明

血糖値予測装置、および血糖値予測方法

【課題】ユーザーの負担を軽減しつつ、血糖値変化を精度よく予測することが可能な血糖値予測技術を提供する。
【解決手段】血糖値予測装置10は、文字列入力手段11、情報記憶手段12、データベースが格納されたデータベース記憶手段13、構文解析手段14、体調推定手段15、および血糖値出力手段17を有しており、ユーザーが、電子記録として日常的に作成している日記などの生活情報を用いて血糖値の予測を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子情報として入力された生活情報、例えば日記などの文字情報を用いる血糖値予測装置、および血糖値予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザーの摂取カロリーの履歴データおよび患者の消費カロリーの履歴データに基づいて、ユーザーの血糖値を予測する予測モデルを予め作成する。そして、当該予測モデルを用いて、ユーザーが主観的に判断した自己の体調を示す体調変数、ユーザーの摂取カロリーおよび患者の消費カロリーなどから、ユーザーの血糖値を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糖尿病患者等は、インスリンを投与する際には実測した血糖値を元に決定されたインスリン量に従ってインスリンを投与しており、インスリン投与毎に血糖値を測定することは患者の負担になっている。
また、特許文献1に記載の血糖値を予測する技術では、ユーザー(糖尿病患者等)が自己の体調を主観的に判断し、明示的にデータを入力することが必要となるため、ユーザーの判断がばらつき、その結果血糖値の予測制度を確保することが難しい。さらに、データ入力を目的とした入力が必要となるため、ユーザーの負担が増えるという問題も有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
なお、下記適用に記載されている生活情報とは、ユーザーがパーソナルコンピューター(以下、「パソコン」という)、携帯電話機などの電子情報入力機器を用い、例えば日記、メール、ブログ、ミニブログ(ツイッター:つぶやき)など日常的に作成する文章記録を示す。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る血糖値予測装置は、生活情報を電子的な文字情報として入力する入力手段と、前記入力手段から入力された前記文字情報を文字列として記憶する情報記憶手段と、血糖値予測に用いられる文言を、データベースとして格納するデータベース記憶手段と、前記文字列と前記データベースとを用いて構文解析することによって、血糖値に関連する言語情報を抽出する構文解析手段と、前記構文解析手段によって抽出された前記言語情報と前記データベースとを照合し血糖値を予測する体調推定手段と、前記体調推定手段によって予測された血糖値情報を出力する出力手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本適用例に記載の血糖値予測装置によれば、ユーザーが日常的に入力している生活情報を文字情報として情報記憶手段に記憶する。そして、構文解析手段が、データベース記憶手段に格納されている血糖値予測に用いられる文言のデータベースと情報記憶手段に記憶された文字情報から言語情報を抽出し、この抽出された言語情報と前述のデータベースとを照合することによって血糖値を予測し、血糖値情報を出力手段から出力する。
このように、血糖値予測にユーザーが日常的に入力している生活情報を用いて血糖値を予測することが可能となるため、ユーザーが血糖値予測のために行う入力操作が不要となり、ユーザーの負荷を軽減することが可能となる。また、ユーザーが自己の体調を主観的に判断することが不要となることから、ユーザー判断のばらつきを防ぐことができ、血糖値予測の精度を向上させることが可能となる。
【0008】
[適用例2]上記適用例に係る血糖値予測装置において、前記入力手段および前記出力手段は、情報端末機器であることを特徴とする。
【0009】
本適用例に記載の血糖値予測装置によれば、ユーザーがいつでも情報を入力することが可能となることから、入力される文字情報の精度が向上するとともに、文字情報の数を増加させ易くなることから、血糖値予測の精度をさらに高めることが可能となる。
【0010】
[適用例3]本適用例に係る血糖値予測方法は、生活情報を文字情報として入力手段に入力し、前記入力された前記文字情報を文字列として情報記憶手段に記憶し、前記文字列を構文解析手段によって構文解析することで血糖値に関連する言語情報を抽出し、前記構文解析手段によって抽出された前記言語情報と、予めデータベース記憶手段に格納されているデータベースとを体調推定手段によって照合することで血糖値を予測し、前記予測された血糖値情報を、出力手段から出力することを特徴する。
【0011】
本適用例に記載の血糖値予測方法によれば、ユーザーが日常的に入力している生活情報を文字情報として情報記憶手段に記憶する。そして、構文解析手段が、データベース記憶手段に格納されている血糖値予測に用いられる文言のデータベースと情報記憶手段に記憶された文字情報から言語情報を抽出し、この抽出された言語情報と前述のデータベースとを照合することによって血糖値を予測し、血糖値情報を出力手段から出力する。
このように、本適用例に記載の血糖値予測方法は、血糖値予測にユーザーが日常的に入力している生活情報を用いて血糖値を予測することが可能となるため、ユーザーが血糖値予測のために行う入力操作が不要となり、ユーザーの負荷を軽減することが可能となる。また、ユーザーが自己の体調を主観的に判断することが不要となることから、ユーザー判断のばらつきを防ぐことができ、血糖値予測の精度を向上させることが可能となる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る血糖値予測方法において、前記入力手段に入力する文字情報は、文字情報を識別する識別情報を含んでおり、前記体調推定手段は、前記言語情報の照合に加えて前記識別情報を用いて血糖値を予測することを特徴とする。
【0013】
本適用例に記載の血糖値予測方法によれば、文字情報に含まれる識別情報によって、入力された文字情報の血糖値に対する影響度の強弱を判断することが可能となり、血糖値予測の精度をさらに向上させることが可能となる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に係る血糖値予測方法において、前記体調推定手段は、体調のよい場合の前記言語情報を数値化したスコアと、体調の悪い場合のスコアと、に基づいて血糖値を予測することを特徴とする。
【0015】
本適用例に記載の血糖値予測方法によれば、体調のよい場合と悪い場合のバランスをとって血糖値予測を行うことが可能となり、より正確な血糖値予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態にかかる血糖値予測の処理タイミングを説明するタイミングチャート。
【図2】第1実施形態としての血糖値予測装置の概略を示すブロック図。
【図3】第1実施形態の血糖値予測方法の手順を示すフローチャート。
【図4】(a)〜(e)は、体調に関係する言語(体調に関係する部分)の抽出についての一例を示す概略の説明図。
【図5】「体調に関係する部分」の言語情報を抽出した具体例を示す説明図。
【図6】第1実施形態の複数の文字列のスコアから体調を求める方法を示す概略説明図。
【図7】(a)は、体調Sと血糖値との相関を示すグラフ、(b)は、情報端末に出力された例を示す概略図。
【図8】第2実施形態としての血糖値予測方法を示すフローチャート。
【図9】第3実施形態における体調Sを求める方法を示す概略説明図。
【図10】第3実施形態としての血糖値予測方法を示すフローチャート。
【図11】実施例の体調Sと血糖値との相関を示す散布図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の血糖値予測装置および血糖値予測方法の実施形態を、以下に図面を用いて詳細に説明する。以下の実施形態では、ユーザー(糖尿病患者等であり、血糖値の管理が必要とされる者)が、電子記録として日常的に作成している日記などの生活情報を用いて血糖値の予測を行う血糖値予測装置および血糖値予測方法について説明する。
先ず、図1を用いて本血糖値予測の処理タイミングを説明する。図1は、血糖値予測の処理タイミングを説明するタイミングチャートである。
【0018】
<血糖値予測の処理タイミング>
本実施形態で説明する血糖値予測装置および血糖値予測方法は、近年、パソコン、携帯電話機などの情報機器の電子メール機能を使って手軽に行うことができる日記風の文章を用いている。本説明では、ユーザーが起床してから就寝するまでの間の行動パターンの一例での血糖値予測の処理タイミングの概要について説明する。
【0019】
図1に示すように、起床したユーザーは、早朝ジョギングに出掛け、その後朝食をとる。その後、ジョギングでの体調、朝食のメニュー、量などの状態も含めた記録をブログに書き込む。その後、ユーザーは仕事に出掛け、都度メールの書き込みを行う。また、昼食の内容、一日の体調などを都度ブログに書き込む。本例のユーザーは、夕食のとり方の参考にするため、仕事終了のタイミングで解析を行い、血糖値予測を行うこととした。この場合では、起床してから、解析タイミングまでに入力された言語情報から予測された血糖値予測、或いは血糖値に関係する情報などを得ることが可能となる。ユーザーは、その結果を参照し、夕食のとり方を決めると共に、翌日の血糖値維持のための夕食から就寝までの生活行動を決めることもできる。
なお、解析のタイミングは、ユーザーが任意に設定することができる。また、電子スケジュール帳などに設定されたタイミングを取得して解析することも可能である。
【0020】
(第1実施形態)
先ず、本発明にかかる第1実施形態としての血糖値予測装置について図2〜図7を用いて説明する。図2は、第1実施形態としての血糖値予測装置の概略を示すブロック図であり、図3は、血糖値予測方法の手順を示すフローチャートである。
【0021】
<装置構成>
図2に示すように、第1実施形態の血糖値予測装置10は、文字列入力手段11、情報記憶手段12、データベースが格納されたデータベース記憶手段13、構文解析手段14、体調推定手段15、および血糖値出力手段17を有している。なお、情報記憶手段12、データベースが格納されたデータベース記憶手段13、構文解析手段14、および体調推定手段15で血糖値予測手段16を形成する。
【0022】
文字列入力手段11は、ユーザーが、日々の出来事などの生活情報を日記風の電子情報として入力するための電子情報入力機器である。文字列入力手段11から入力された生活情報は、情報記憶手段12に送られる。文字列入力手段11としては、例えば、パソコン、携帯電話機、その他電子情報機器などの機器自体に設けられた入力装置、あるいは端末機器を用いることができる。そして、それらの機器自体に設けられた入力装置、あるいは端末機器を通じてSNS、Twitter、ブログなどWebのサービスを用いてもよい。
なお、前述した「日記風の電子情報」とは、例えば日記、メール、前述のTwitter、ブログなど日常的に作成する文章記録をいう。
【0023】
情報記憶手段12は、文字列入力手段11から入力(書き込まれた)された電子情報を記憶し、構文解析手段14からの指示により記憶された電子情報を読み出す機能を有する、例えばサーバーなどである。
【0024】
データベース記憶手段13は、構文解析手段14、あるいは体調推定手段15との文言、言語などの照合に必要なデータベースが格納されている。詳述すると、データベース記憶手段13には、血糖値に関係すると判断された文言、言語、或いは体調に関連すると判断された文言、言語などの電子情報が、データベースとして予め入力されている。
【0025】
構文解析手段14は、情報記憶手段12から抽出された文字列を、データベースとの照合を行いながら構文解析して、血糖値、或いは体調に関連すると判断された文言、言語の使用数や頻度などを求める。
【0026】
体調推定手段15は、構文解析手段14の構文解析によって求められた血糖値、或いは体調に関連すると判断された文言、言語の使用数や頻度などを含む言語情報から後述する計算式などを用いてユーザーの体調を数値化し、血糖値を予測する。そして、予測された血糖値から血糖値に関係する情報なども含んだ電子情報を血糖値出力手段17に出力する。
【0027】
血糖値出力手段17は、画像表示部(図示せず)を有しており、体調推定手段15から送られた血糖値、或いは血糖値に関係する情報などを画像表示部に表示する。血糖値出力手段17には、例えばパソコンの表示部、携帯電話機の表示画面などが挙げられる。なお、血糖値出力手段17は、音声出力部(図示せず)を有していてもよく、音声或いは効果音などを発することでユーザーに血糖値、或いは血糖値に関係する情報を告知してもよい。また、画像表示部と音声出力部とを併せて有していてもよく、画像表示と音声告知を同時に行うことも可能であり、ユーザーの血糖値、或いは血糖値に関係する情報の認知度をより高めることができる。
【0028】
<血糖値予測方法>
血糖値予測方法について、図3のフローチャートに添って説明する。
先ず、血糖値予測装置10は、入力された文字列で構成されたブロックiが1であること(i=1)として血糖値予測のフローを開始する(ステップS101)。
【0029】
次に、構文解析手段14は、情報記憶手段12に記憶されている解析対象期間内の電子情報から、血糖値、体調など血糖値に関係する文字列を取得する(ステップS103)。
【0030】
次に、構文解析手段14は、取得した文字列を構成する文言、言語と、データベース記憶手段13に格納されているデータベースとの照合を行い、体調に関係する言語(体調に関係する部分)を抽出する(ステップS105)。
ここで、ステップS105における体調に関係する言語(体調に関係する部分)の抽出について図4を用いて説明する。図4(a)〜(e)は、体調に関係する言語(体調に関係する部分)の抽出についての一例を示す該略の説明図である。
【0031】
記憶されている、例えばブログなどの文章は、一つ一つのブロックとなっている。例えば、図4(a)に示すような、メッセージのブロックがあった場合は、図4(b)に示すように食事や体調など血糖値に関係する記述のある部分を「体調に関係する部分」(図内2点鎖線iで示す部分であり、以下「体調に関係する部分(ブロック)i」という。)とする。また、その他の部分は「体調に関係しない部分」(図内Pで示す部分であり、以下「体調に関係しない部分P」という。)とする。
「体調に関係する部分(ブロック)i」は、図4(c)に斜線で示す。ここで、得られた文字列の総文字数Niのうち、「体調に関係する部分i」の文字数を文字数Aiとする。なお、「体調に関係する部分i」は、図4(d)に示すような、得られた文字列の中に「体調に関係する部分」が幾つも存在する場合(本例では、斜線で示すQ1、Q2、Q3)は、それぞれをまとめて図4(e)のように一つとして扱う。
【0032】
図5に、「体調に関係する部分」を抽出した具体例を示した。句点や読点、或いはスペースなどで文の区切りを認識し、認識した各文に、体調や食事などに関係する言葉、語句があるかどうかをチェックし、言葉、語句のある文を切り出す。体調や食事に関係する言葉、語句の例としては、次のようなものが例示できる。
本例では、「疲れた」「食べて」、「ワッフル」、「食べた」を切り出し、体調に関係する文字列を抽出する。
【0033】
(体調に関係する言葉の例)
疲れた、だるい、発熱、熱っぽい、体が重い、食欲がない、やる気が沸かない、・・・。
(食事に関係する言葉の例)
食べ物の名称、商品名:ワッフル、スパゲッティー、いわし、すき焼き、・・・。
飲食に関係する動作、行動:食べる、飲む、味わう、美味しい、・・・。
【0034】
例示したこれらの言葉、語句は、データベース記憶手段13にデータベースとして格納しておき、文と照合する際に用いる。なお、格変化や連体形などの変化にも対応した辞書も用意する。
【0035】
次に、抽出された体調に関係する部分から、総文字数(Ni)、および体調・食事に関係する文字数(Ai)をカウントする(ステップS107)。ちなみに、図5に示した例では、体調に関係する部分の文字列の総文字数Niは29文字であり、体調に関係する文字数Aiは13文字である。
【0036】
そして、カウントした総文字数(Ni)、および体調・食事に関係する文字の出現数(文字数Ai)を用い、次に示す式(1)によって、体調を数値化した(体調に関係する)スコアSiを求める(ステップS111)。ここで求められたスコアSiは、数値が大きいほど体調が良くないこととなる。
【0037】
【数1】

【0038】
次に、文字列で構成されたブロックiがnであるか否かを判定する(ステップS113)。文字列で構成されたブロックiがnでない場合(ステップS113:No)、例えば、1日に何回もブログやメールなどで入力された文字列のブロックが存在する場合は、各文字列のブロックをi=i+1(i=1、2、3、・・・、n)として(ステップS117)、ステップS103に戻り、上述と同様なフローを回し、全てのスコアSiを抽出する。
【0039】
全てのスコアSiが求められた後(ステップS113:Yes)、求められたスコアSiから体調Sを求める(ステップS115)。
体調Sの求め方の一例を図6に示し説明する。図6は、複数の文字列のスコアSiから体調Sを求める方法を示す概略説明図である。
ここで、各文字列のブロックをi(i=1、2、3、・・・、n)とする。そして、各文字列(i=1、i=2、・・・i=n)における「体調に関係する部分のブロックi」の文字数をAiとし、文字列のブロックiの総文字数をNiとする。そして、次式(2)によってスコアSiの平均値を求める。この求められたSiの平均値が、体調Sである。
【0040】
【数2】

【0041】
求められた体調Sは、図7(a)に示すような血糖値との相関があり、この相関により血糖値を予測する(ステップS119)。なお、この相関は、予め実測などにより求めておく。
この体調Sから求められた血糖値の予測データは、図2に示す血糖値出力手段17に送信され、血糖値出力手段17の画像表示部に体調推定手段15から送られた血糖値、或いは血糖値に関係する情報、すべき行動情報などを出力し表示する(ステップS121)。血糖値出力手段17の画像表示部は、図7(b)に示すような携帯可能な情報機器端末(例えば、携帯電話機、腕時計など)の表示部であってもよい。
なお、表示する血糖値に関係する情報としては、血糖値そのもの、図7(a)に示したように低い(低め),普通,高い(高め)、などの大まかな表現などとして行うことができる。この表示方法は、ユーザーによって選択することも可能である。
【0042】
ユーザーは、表示されたデータを確認することで、現状の血糖値状態を予測することが可能となる。
上記実施形態で述べたような血糖値予測装置、及び血糖値予測方法によれば、ユーザーが日常的に入力している生活情報を文字情報として情報記憶手段12に記憶する。そして、構文解析手段14が、データベース記憶手段13に格納されている血糖値予測に用いられる文言のデータベースと情報記憶手段12に記憶された文字情報から言語情報を抽出し、この抽出された言語情報と前述のデータベースとを照合することによって血糖値を予測し、血糖値情報を血糖値出力手段17から出力する。
【0043】
このように、血糖値予測にユーザーが日常的に入力している生活情報を用いて血糖値を予測することが可能となるため、ユーザーが血糖値予測のために行う入力操作が不要となるため負荷を軽減することが可能となる。
また、ユーザーが自己の体調を主観的に判断することが不要となることから、ユーザー判断のばらつきを防ぐことができ、血糖値予測の精度を向上させることが可能となる。
【0044】
(第2実施形態)
本発明にかかる第2実施形態としての血糖値予測装置10および血糖値予測方法について図8を用いて説明する。図8は、第2実施形態としての血糖値予測方法を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、前述の第1実施形態と同じ構成、同じ方法に関して同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
本第2実施形態の血糖値予測装置10における装置構成は、第1実施形態と同様であるので説明を省略し、血糖値予測方法のうちの処理フローの異なる部分について説明する。本第2実施形態は、第1実施形態で説明した血糖値予測方法のフローのうち、スコアSiの求め方が異なるものであるので、スコアSiの求め方を中心に説明する。
【0046】
本第2実施形態では、ユーザーが文字列入力手段11から、日々の出来事などの生活情報を日記風の電子情報として入力する際に、影響度が大きいと思う言葉、重要と思われる言葉などを選択し、対象となる言葉などに識別可能な識別情報を加えて入力する。識別情報としては、例えば入力文字の大きさ(フォントサイズ)、文字の太さ、文字の色、絵文字の付加、などから選択可能である。即ち、入力される電子情報にユーザー本人の意思を反映することができることになる。
【0047】
図8に示す処理フローのうち、入力された文字列で構成されたブロックiが1であること(i=1)として血糖値予測の処理を開始するステップS101〜体調・食事に関係する文字数をカウントするステップS107までは同様であるので説明を省略し、次のステップである修飾された文字数のカウントするステップS208について説明する。
修飾された文字数のカウントするステップS208では、識別情報である文字修飾の有無を確認し、文字修飾の付されている文字数Biをカウントする。この文字数Biのカウントに当たっては、例えば、太字は×1、色付けは×2などの影響度の大きさによる係数を設けて計算することも可能である。
【0048】
そして、ステップS107で求めた文字数Aiと文字修飾された文字数Biとを用い、次式(3)によってスコアSiを求める(ステップS111)。
Si=Ke・Ai+Kb・Bi・・・・(3)
Ke、Kbは、Siが適度な範囲になるように調整する定数。
Ai、Biは、正の整数。
【0049】
ステップS111以降は、第1実施形態と同様な処理フローを経て、体調Sを求め血糖値を予測する(ステップS119)。そして、この体調Sから求められた血糖値の予測データは、図1に示す血糖値出力手段17に送信され、血糖値出力手段17の画像表示部に体調推定手段15から送られた血糖値、或いは血糖値に関係する情報、すべき行動情報などを出力し表示する(ステップS121)。
【0050】
第2実施形態の血糖値予測装置10、および血糖値予測方法によれば、第1実施形態の効果に加え、ユーザー本人の意思を反映することができる電子情報も加えて血糖値予測を行うため、より確度の高い予測を行うことが可能となる。
【0051】
(第3実施形態)
本発明にかかる第3実施形態としての血糖値予測装置および血糖値予測方法について図9、および図10を用いて説明する。図9は、第3実施形態における体調Sを求める方法を示す概略説明図である。図10は、第3実施形態としての血糖値予測方法を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、前述の第1実施形態、および第2実施形態と同じ構成、同じ方法に関して同一符号を付して説明を省略する。
【0052】
本第3実施形態の血糖値予測装置10における装置構成は、第1実施形態と同様であるので説明を省略し、血糖値予測方法のうちの処理フローの異なる部分について説明する。本第3実施形態は、第1実施形態および第2実施形態で説明した血糖値予測方法のフローのうち、体調Sの求め方が異なるものであるので、体調Sの求め方を中心に説明する。
【0053】
本第3実施形態では、第2実施形態と同様にユーザーが文字列入力手段11から、日々の出来事などの生活情報を日記風の電子情報として入力する際に、影響度が大きいと思う言葉、重要と思われる言葉などを選択し、対象となる言葉などに識別可能な識別情報を加えて入力する。
【0054】
図10に示す処理フローのうち、入力された文字列で構成されたブロックiが1であること(i=1)として血糖値予測の処理を開始するステップS101〜修飾された文字数をカウントするステップS208までは第2実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0055】
第3実施形態では、体調に関係する部分における文字数・行数もカウントし、スコアSiを求めるに際し反映させる。また、ユーザーが入力した電子情報のうちで、体調に関係しない文字数をカウントし、体調Sを求める際に反映させる。
【0056】
先ず、スコアSiの求め方について説明する。
修飾された文字数をカウントするステップS208に続き、体調に関係する部分における文字数・行数Wiをカウントする(ステップS109)。
そして、ステップS107で求めた文字数Aiと文字修飾された文字数Biと、体調に関係する部分における文字数・行数Wiとを用い、次式(4)によってスコアSiを求める(ステップS111)。
Si=Ke・Ai+Kb・Bi+Kw・Wi・・・・(4)
Ke、Kb、Kwは、Siが適度な範囲になるように調整する定数。
Ai、Bi、Kwは、正の整数。
【0057】
また、体調に関係する言語(体調に関係する部分)を抽出するステップS105に続き、取得した文字列を構成する文言、言語から、体調に関係しない(非体調部分)文字数をカウントする(ステップS300)。
続いて、取得した体調に関係しない文字数を用い、体調に関係しないマイナススコアKiを、関係する全ての文字列に対応して求める(ステップS302)。
【0058】
ユーザーは、体調が良い場合に、体調と関係ない文字を多く記載する傾向がある。この傾向を用い、次式(5)によってマイナススコアKiを求める。
Ki=k・(Ni−Ai)/Ni・・・・(5)
kは、マイナスの定数。Niは、文字列の総文字数。Aiは、体調に関係する文字数。
なお、次の式(6)、式(7)から体調に関係ない文字数が多いほどKiの絶対値が大きくなることが分かる。
Ki=0 at Ni−Ai=0・・・・(6)
Ki<0 at Ni−Ai>0・・・・(7)
【0059】
次に、求められたスコアSiとマイナススコアKiとを用い体調Sを求める(ステップS115)。
体調Sの求め方の一例を図9に示し説明する。ここで、各文字列のブロックをi(i=1、2、3、・・・、n)とする。各文字列(i=1、i=2、・・・i=n)における「体調に関係する部分i」の文字数をAiとし、文字列のブロックの総文字数をNiとする。そして、第1実施形態と同様に求められたスコアSiに加えて、各文字列に対応して求められたマイナススコアKiとを用い、次式(8)によって体調Sを求める。
【0060】
【数3】

【0061】
ステップS115より後の処理フローは、第1、第2実施形態と同様な処理フローを経て、体調Sから血糖値を予測する(ステップS119)。そして、この体調Sから求められた血糖値の予測データは、図1に示す血糖値出力手段17に送信され、血糖値出力手段17の画像表示部に体調推定手段15から送られた血糖値、或いは血糖値に関係する情報、すべき行動情報などを出力し表示する(ステップS121)。
【0062】
以上、説明した第3実施形態によれば、体調に関係する部分における文字数・行数Wiもカウントし、スコアSiを求めるに際し反映させる。また、ユーザーが入力した電子情報のうちで、体調に関係しない文字数をカウントし計算されたマイナススコアKiを、体調Sを求める際に反映させる。これらを加えることによって、体調Sは、スコアSiとマイナススコアKiとの総和をとり、体調の良さと体調の悪さのバランスをとることができるため、第3実施形態の血糖値予測装置および血糖値予測方法は、前述の実施形態に加え、さらに血糖値予測の精度を高めることが可能となるものである。
【0063】
(変形例1)
上述のように取得された血糖値の予測値は、ユーザー自身の保有する情報機器の端末など以外での活用も可能である。
例えば、SNS、TwitterなどWebに書き込んだデータを、ネットワーク経由で第3者機関に送り活用する。第3者機関の例としては、
(1)社員食堂:飲食しようとしたメニューが、血糖値に影響する虞が高いことを警告。
(2)飲食店:メニュー選択時にカロリー取得に関係する案内を行う(控えめにすることなどの注意喚起)。
(3)医療機関:血糖値が高めの患者にかかる検査内容を決める際の補助データ。
などが挙げられる。
また、血糖値予測タイミング、頻度、表示内容を、ユーザー自身の電子スケジュール帳などと連動させることにより、定常的に血糖値予測を行うことも可能なる。
また、電子スケジュール帳の記載内容、例えば出張回数、接待回数などを体調Sに反映させることも可能である。
【実施例】
【0064】
図11は、上述した実施形態における血糖値予測装置および血糖値予測方法を用いて、約1ヶ月間毎日日記をつけ、それを前述の式(8)で数値化した体調Sと早朝に実測した血糖値との相関を示した散布図の一例である。ここで、Kc、Kb、Kwは、それぞれ1としている。これによれば、体調Sと血糖値とには、相関係数0.44の正の相関が認められる。なお、Kc、Kb、Kwの値を調整すれば、さらに相関を高めることも可能である。
上記実施例に示すように、上述した実施形態の血糖値予測装置および血糖値予測方法によれば、体調Sから血糖値を予測することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…血糖値予測装置、11…文字列入力手段、12…情報記憶手段,13…データベース記憶手段、14…構文解析手段、15…体調推定手段、16…血糖値予測手段、17…血糖値出力手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生活情報を電子的な文字情報として入力する入力手段と、
前記入力手段から入力された前記文字情報を文字列として記憶する情報記憶手段と、
血糖値予測に用いられる文言を、データベースとして格納するデータベース記憶手段と、
前記文字列と前記データベースとを用いて構文解析することによって、血糖値に関連する言語情報を抽出する構文解析手段と、
前記構文解析手段によって抽出された前記言語情報と前記データベースとを照合し血糖値を予測する体調推定手段と、
前記体調推定手段によって予測された血糖値情報を出力する出力手段と、を含むことを特徴とする血糖値予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の血糖値予測装置において、
前記入力手段および前記出力手段は、情報端末機器であることを特徴とする血糖値予測装置。
【請求項3】
生活情報を文字情報として入力手段に入力し、
前記入力された前記文字情報を文字列として情報記憶手段に記憶し、
前記文字列を構文解析手段によって構文解析することで血糖値に関連する言語情報を抽出し、
前記構文解析手段によって抽出された前記言語情報と、予めデータベース記憶手段に格納されているデータベースとを体調推定手段によって照合することで血糖値を予測し、
前記予測された血糖値情報を、出力手段から出力することを特徴する血糖値予測方法。
【請求項4】
請求項3に記載の血糖値予測方法において、
前記入力手段に入力する文字情報は、文字情報を識別する識別情報を含んでおり、
前記体調推定手段は、前記言語情報の照合に加えて前記識別情報を用いて血糖値を予測することを特徴とする血糖値予測方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の血糖値予測方法において、
前記体調推定手段は、体調のよい場合の前記言語情報を数値化したスコアと、体調の悪い場合のスコアと、に基づいて血糖値を予測することを特徴とする血糖値予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−45259(P2012−45259A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191836(P2010−191836)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】