説明

血糖値予測装置

【課題】インスリン投与の際にユーザーに負担をかけることなくユーザーに応じたインスリン量を決定しうる技術を提供する。
【解決手段】血糖値予測装置は、ユーザーの血糖値の時系列変化を示す予測血糖値曲線を算出し、予測血糖値曲線において予め設定された時刻より所定時間前までにユーザーが薬を服用している場合には、予め記憶されている当該薬の服用によるインスリンの効果の促進度合を示す情報に基づいて、インスリン投与時における予測血糖値曲線が示す予測血糖値に対して定められたインスリン量を調整し、調整したインスリン量を投与すべきインスリン量として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザーの摂取カロリーの履歴データおよびユーザーの消費カロリーの履歴データに基づいて、ユーザーの血糖値を予測する予測モデルを予め作成しておき、当該予測モデルを用いて、ユーザーの摂取カロリーおよびユーザーの消費カロリーから、ユーザーの血糖値を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糖尿病患者等は、インスリンを投与する際には実測した血糖値を元に決定されたインスリン量に従ってインスリンを投与しており、インスリン投与毎に血糖値を測定することは患者の負担になっている。
本発明は、インスリン投与の際にユーザーに負担をかけることなくユーザーに応じたインスリン量を決定しうる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る血糖値予測装置は、ユーザーの血糖値の時系列変化を示す血糖値曲線を算出する算出手段と、インスリン投与後における前記ユーザーの血糖値の変動に関わる情報を示す変動情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された前記変動情報と前記算出手段によって算出された血糖値曲線とに基づいて、前記ユーザーに投与すべきインスリン量を決定する決定手段と、前記決定手段によって決定されたインスリン量を示す情報を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。この構成によれば、ユーザーに負担をかけることなく、ユーザーに応じたインスリン量を決定することができる。
【0006】
請求項2に係る血糖値予測装置は、前記血糖値予測装置において、前記ユーザーが過去に服用した薬と服用時期を含むユーザー情報を記憶する記憶手段と、予め定められた薬毎に、当該薬の服用とインスリンの投与とを行った場合におけるインスリンの効果の促進度合を示すインスリン情報を記憶するインスリン情報記憶手段とを備え、前記取得手段は、前記ユーザーが服用した薬と服用時期とを前記変動情報として取得し、取得した変動情報を前記ユーザー情報として記憶し、前記決定手段は、前記ユーザー情報において、予め設定された時間内に前記ユーザーが前記薬を服用した場合には、当該薬に対応する前記インスリン情報と前記血糖値曲線とに基づいて前記インスリン量を決定することを特徴とする。この構成によれば、ユーザーが服用した薬に応じて適切なインスリン量を決定することができる。
【0007】
請求項3に係る血糖値予測装置は、前記血糖値予測装置において、前記取得手段は、予め設定された時間以降に予定されている行動の内容と行動時期とを前記変動情報として取得し、前記決定手段は、前記取得手段が取得した前記行動の内容に対応する摂取エネルギー及び消費エネルギーと前記血糖値曲線とに基づいて前記インスリン量を決定することを特徴とする。この構成によれば、ユーザーの行動予定に応じて適切なインスリン量を決定することができる。
【0008】
請求項4に係る血糖値予測装置は、前記血糖値予測装置において、前記ユーザー情報は、前記ユーザーに関する過去の血糖値の時系列変化を示す血糖値データと、当該血糖値データに対応する当該ユーザーが摂取した食事に関する摂取エネルギー情報及び当該ユーザーが行った運動に関する消費エネルギー情報とを含み、前記行動の内容は、前記ユーザーが摂取する予定の食事に関する食事情報と前記ユーザーが行う予定の運動に関する運動情報であり、前記決定手段は、取得された前記食事情報と取得された前記運動情報とに各々対応する前記血糖値データと摂取エネルギー情報及び消費エネルギー情報と前記血糖値曲線とに基づいて前記インスリン量を決定することを特徴とする。この構成によれば、インスリンの効果に影響する食事や運動の内容に応じたインスリン量を決定することができる。
【0009】
請求項5に係る血糖値予測装置は、前記血糖値予測装置において、入力されたインスリン量に従ってインスリンを前記ユーザーに投与する投与手段を備え、前記出力手段は、決定されたインスリン量を前記投与手段に出力することを特徴とする。この構成によれば、ユーザーに負担をかけることなく、ユーザーに決定されたインスリン量を投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る血糖値予測装置の構成例を示す図である。
【図2】(a)は、実施形態に係る食事メニュー情報の例を示す図である。(b)は、実施形態に係る運動種別情報の例を示す図である。
【図3】(a)及び(b)は、実施形態に係るユーザー情報の例を示す図である。
【図4】(a)及び(b)は、実施形態に係るインスリン投与情報の例を示す図である。
【図5】(a)〜(c)は、実施形態に係るインスリン効果情報の例を示す図である。
【図6】実施形態に係る血糖値予測装置の機能構成例を示す図である。
【図7】(a)は、実施形態に係る第1予測曲線を説明する図である。(b)は、実施形態に係る第2予測曲線を説明する図である。
【図8】実施形態に係る血糖値予測装置の血糖値予測処理の動作フローを示す図である。
【図9】実施形態に係る血糖値予測装置のインスリン量決定処理の動作フローを示す図である。
【図10】実施形態におけるインスリン量決定処理を説明する図である。
【図11】変形例(1)に係る血糖値予測装置の動作フローを示す図である。である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る血糖値予測装置は、ユーザーの手首等に装着可能に構成されており、ユーザーの血糖値を予測し、予測した血糖値(以下、予測血糖値と言う)の変化を時系列に表す予測曲線を出力すると共に、インスリン投与後の血糖値の変動に関わる変動情報の一例として服用薬に関する情報を用い、ユーザーが服用した薬に応じて投与すべきインスリン量を決定する。以下、本実施形態に係る血糖値予測装置の詳細について説明する。
【0012】
(全体構成)
図1は、実施形態に係る血糖値予測装置10の全体構成を示す図である。
血糖値予測装置10は、制御部110、活動量測定部120、操作部130、記憶部140、表示部150、及び計時部160を備える。
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)のメモリーを含み、RAMをワーキングエリアとしてROMに予め記憶されている制御プログラムを実行することにより、制御部110と接続されている各部を制御する。なお、制御部110の詳細については後述する。
【0013】
活動量測定部120は、ユーザーが消費した消費カロリーを求め、求めた消費カロリーを消費エネルギー情報として制御部110へ送出する。活動量測定部120は、例えば、ユーザーの運動状態を検出するための加速度センサーや速度センサー等のセンサーを有し、ユーザーの歩行や運動などの動作によって検出されたセンサーからの出力信号を予め定義された演算式を用いて消費カロリーに変換する。また、消費カロリーを精度よく求めるため、光、電気、圧力等の物理量を検出する手段を用いて脈波RR間隔・体温・血圧・睡眠などの生体データを検出してもよい。
【0014】
操作部130は、例えば、数字や文字等の入力キーを有する操作ボタン群を有し、ユーザーによって操作された入力キーに対応する操作信号を制御部110へ送出する。本実施形態では、特に、操作部130は、測定されたユーザーの血糖値データの入力を受付けると共に、ユーザーが摂取した食事内容を示す食事情報、変動情報の一例としてユーザーが服用した薬の内容を示す服用情報、ユーザーが行った運動内容を示す運動情報のデータの入力を受付ける。
【0015】
記憶部140は、不揮発性の記憶媒体で構成され、ユーザーの過去の血糖値に関する情報を含むユーザー情報200や、食事メニュー情報211及び運動種別情報212、インスリン投与情報220、インスリン効果情報230等のデータを記憶している。ここで、食事メニュー情報211、運動種別情報212、ユーザー情報200、インスリン投与情報220について順に説明する。
【0016】
図2(a)は、食事メニュー情報211の一例を示す図である。食事メニュー情報211には、単品の食品名や料理名等の食事メニューと食事メニューに対応する摂取カロリーが記憶されている。食事メニュー情報211は、ユーザーが食事情報を入力する際に参照される。図2(b)は、運動種別情報212の一例を示す図である。運動種別情報212には、運動種別と運動内容とが記憶されている。運動種別情報212は、ユーザーが運動情報を入力する際に参照される。
【0017】
次に、ユーザー情報200について説明する。ユーザー情報200には、図3(a)に示す血糖値情報200aと、図3(b)に示す行動情報200bとが含まれている。
血糖値情報200aには、例えば、ユーザーが過去に糖尿病に関する教育入院を行ったとき等の、教育入院期間において測定された毎日の血糖値と行動履歴(食事と運動)とが記憶されている。
【0018】
図3(a)には、その一例として、2010年2月1日と2月2日のユーザーの血糖値情報200aを示している。この図の波形41は、ユーザーの血糖値の時系列変化を表している。また、時間軸における「朝食」、「薬」、「散歩」「昼食」・・・等は、ユーザーが摂った食事や運動、薬を服用したタイミング等の行動履歴を示している。図3(b)は、図3(a)の各行動履歴に対応する行動情報200bを示しており、各行動履歴に対応する行動(食事及び薬の摂取、運動)の内容(食事内容、運動内容)と、各内容に対応するカロリー(摂取カロリー、消費カロリー)とが対応づけられている。例えば、図3(a)の2010年2月1日の朝食の食事内容は「和食A」であり、和食Aの摂取カロリーは「500kcal」であったことを示しており、また、朝食とほぼ同じタイミングで摂取された薬は「薬a」であったことを示している。また、図3(a)の2010年2月1日の午前に行った「散歩」の消費カロリーは「50kcal」であったことを示している。
【0019】
本実施形態では、ユーザー情報200として、ユーザーの過去の血糖値の変化と合わせてユーザーの行動(食事及び薬の摂取、運動)に対する摂取カロリーと消費カロリーが記憶されていると共に、操作部130を介してユーザーによって入力された血糖値データ、食事情報、薬の服用に関する服用情報、運動情報がユーザー情報200に蓄積される。
【0020】
次に、インスリン投与情報220について説明する。インスリン投与情報220は、図4(a)に例示するインスリン投与条件テーブル220aと図4(b)に例示するインスリン調整条件テーブル220bとを含む。図4(a)に示すインスリン投与条件テーブル220aには、インスリン投与時より所定時間前の予測血糖値Cに対して予め設定されたインスリン投与量(I1,I2,…)が記憶されている。また、図4(b)に示すインスリン調整条件テーブル220bには、予め設定された薬を服用していないときのインスリン投与後の予測血糖値と、当該薬を服用したときのインスリン投与後の予測血糖値との差Ciに対応するインスリンの調整量(Δi1,Δi2…)が記憶されている。
インスリンによる血糖値の変化は、薬を服用したときと服用しないときとで異なる場合があり、薬によってインスリンの効果が促進されて特に低血糖の状態とならないようにする必要があり、本実施形態ではインスリン調整条件テーブル220bを用いてインスリン投与量が調整される。
【0021】
次に、インスリン効果情報230について説明する。インスリン効果情報230は、本実施形態の変動情報を示す服用薬に関する情報に含まれ、インスリン投与後におけるインスリンの効果の促進度合を示す情報が記憶されている。具体的には、図5(a)に示す薬を服用しない場合のインスリン投与による血糖値の時系列変化を表す標準予測血糖値情報230aと、図5(b)及び(c)に示す薬(薬a,薬b)を服用した場合のインスリン投与による血糖値の時系列変化を表す薬別予測血糖値情報230b(230b,230b)が記憶されている。図5(a)〜(c)は、同じインスリン量を投与したときの基準血糖値Ci1から低血糖状態の血糖値Ci0(以下、最低血糖値と称する)となるまでの時間変化を表している。この例では、図5(b)に示す薬aを服用した場合は、図5(a)と比べて、最低血糖値Ci0に到達する経過時間(t2>t1)が遅く、薬aによってインスリン効果が促進されていない。また、図5(c)に示す薬bを服用した場合は、図5(a)と比べて、最低血糖値Ci0に到達する経過時間(t3<t1)が速く、薬bによってインスリン効果が促進されている。標準予測血糖値情報230aと薬別予測血糖値情報230bは、インスリン投与量の決定の際に参照される。
【0022】
図1に戻り、構成の説明を続ける。表示部150は、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成され、制御部110の制御の下、食事、服用した薬、及び運動の各内容を入力するための入力画面や血糖値の予測曲線等の各種画像を表示する。計時部160は、所定のクロックをカウントして時刻を計時する。
【0023】
(制御部110の機能構成)
図6は、上述した制御部110の機能を中心とする機能構成図である。制御部110は、摂取エネルギー取得部111、消費エネルギー取得部112、算出部113、解析部114、及び生成部115を含む。
摂取エネルギー取得部111は、ユーザーが入力した血糖値データと、摂取エネルギー情報としてユーザーが入力した食事情報を操作部130から取得し、取得した食事情報と食事メニュー情報211に基づいて、食事情報に対する摂取カロリーを求める。消費エネルギー取得部112は、ユーザーの消費エネルギー情報として消費カロリーを活動量測定部120から一定時間毎に取得する。算出部113は、摂取エネルギー取得部111で求めた摂取カロリーと予め定められた第1の予測アルゴリズムに基づいて、摂取カロリーに対する血糖値の変化を予測した予測曲線(以下、第1予測曲線と称する)を求める。また、算出部113は、消費エネルギー取得部112で取得された消費カロリーと予め定められた第2の予測アルゴリズムに基づいて、消費カロリーに対する血糖値の変化を予測した予測曲線(以下、第2予測曲線と称する)を求める。
【0024】
ここで、第1予測曲線と第2予測曲線の算出について説明する。図7(a)は、本実施形態における第1予測曲線の一例を示す図である。第1予測曲線は、摂取カロリーと第1の予測アルゴリズムとに基づいて求められる。第1予測曲線は、遅延期間d1、上昇期間d2、平衡期間d3、および下降期間d4を有する。以下、各期間における血糖値曲線を求める第1の予測アルゴリズムの一例を説明する。
【0025】
遅延期間d1は、食事を開始してから、食事開始時における血糖値(基準値)C0を超えるまでの期間を示している。遅延期間d1には、食事の開始時点から予め定められた時間(例えば、15分)が設定されおり、食事開始時の血糖値C0を維持する。なお、食事開始時の血糖値C0は、当該時刻においてユーザーが測定した血糖値を用いるが、測定できなかった場合には、例えば、予め設定されたユーザーの血糖値の標準値等を用いるようにしてもよい。
【0026】
上昇期間d2は、遅延期間d1の終期から始まり、血糖値が上昇を開始して血糖値がピークとなる値(ピーク値)に到達するまでの期間を示している。ピーク値は、傾きS1で血糖値が上昇し、食事開始時の血糖値C0に血糖値の上昇量h11を合算した値である。
血糖値の上昇量h11は、例えば、h11=(摂取カロリー)×(インスリン分泌量)×(係数α)で求められる。本実施形態では、インスリン分泌量と係数α(>0)は、ユーザーに応じて予め設定された固定値である。なお、インスリン分泌量及び係数は、予め設定された固定値だけなく、ユーザーの属性(年齢、性別、身長、体重)に応じて定められた値や可変値であってもよい。
【0027】
平衡期間d3は、上昇期間d2の終期から血糖値のピーク値を維持する期間であり、本実施形態では、予め定義された固定値が設定されている。なお、例えば、摂取カロリーとユーザーに固有の係数とを乗算した値を、前回の摂取カロリーとの差に応じた係数で除算する等、摂取カロリーと予め定められた演算式とを用いて平衡期間d3を求めるようにしてもよい。
【0028】
下降期間d4は、平衡期間d3の終期から血糖値が傾きS2で下降を開始して基準値に到達するまでの期間を示している。つまり、下降期間d4は、血糖値がピーク値から基準値(食事開始時の血糖値C0)に戻るまでの期間である。
傾きS2は、例えば、S2=(摂取カロリー)×(係数β)で求められる。本実施形態では、係数βは、ユーザーに応じて予め定められた固定値(<0)であるが、ユーザーの属性(年齢、性別、身長、体重)に応じて予め定められた値や可変値であってもよい。
【0029】
次に、第2予測曲線について説明する。図7(b)は、本実施形態における第2予測曲線の一例を示す図である。第2予測曲線は、消費カロリーと第2の予測アルゴリズムとに基づいて求められる。第2予測曲線は、遅延期間e1と下降期間e2を含んで構成されている。以下、各期間における血糖値曲線を求める第2の予測アルゴリズムの一例を説明する。
【0030】
遅延期間e1は、運動を開始してから血糖値が下降し始めるまでの期間を示し、運動開始時の血糖値が維持される期間である。本実施形態では、遅延期間e1には、予め定められた期間(例えば、2分)が設定されている。下降期間e2は、遅延期間e1の終期から傾きS3(単位時間当たりの血糖値の低下量ΔC)で血糖値が下降する期間である。
低下量ΔCは、例えば、ΔC=(消費カロリー)×(インスリン分泌量)×(係数γ)で求められる。消費カロリーは、活動量測定部120において計測されたユーザーの消費カロリーであり、本実施形態では、ユーザーが運動を意識していない通常の動作時においても活動量測定部120によりユーザーの消費カロリーが算出されて逐次入力される。
【0031】
インスリン分泌量はユーザーに応じて予め設定された固定値であり、係数γ(<0)は、血糖値に応じた可変値であってもよいし、ユーザーの属性に応じて定められた固定値であってもよい。
【0032】
図6に戻り、説明を続ける。解析部114は、摂取エネルギー情報として操作部130から入力された食事情報と対応するユーザー情報200を抽出する抽出条件を用いてユーザー情報200を抽出し、抽出したユーザー情報200を用いて当該食事情報に対するユーザーの血糖値変化を解析する第1解析処理を行う。
【0033】
具体的には、例えば、入力された食事情報が和食Aの場合、和食Aを摂取したときの血糖値の変化を表す波形として、和食Aを摂取した時点から次の行動(食事又は運動)が行われるまでの期間の波形データが抽出される。図3(a)に示す血糖値情報200aの例では、2010年2月1日の朝食を摂取した時点から次の行動、つまりウォーキングが行われるまでの期間の波形データが抽出される。なお、ウォーキングが行われなければ、朝食を摂取した時点から昼食を摂取するまでの期間の波形データが抽出される。このようにして、同じ食事内容を摂取したときの血糖値の変化を表す波形を第1モデル波形として抽出する。なお、複数の波形が抽出された場合には、解析部114は、抽出した複数の波形を平均化する等の処理を行い、当該食事情報に対する血糖値の変化傾向を示す第1モデル波形を生成する。
【0034】
また、解析部114は、操作部130から入力された運動情報と対応するユーザー情報200を抽出する抽出条件を用いてユーザー情報200を抽出し、抽出したユーザー情報200を用いて当該運動情報に対するユーザーの血糖値変化を解析する第2解析処理を行う。本実施形態では、活動量測定部120によりユーザーの消費カロリーが逐次算出されるように構成されているが、算出された消費カロリーがどのような動作を行ったときのものであるかを区別するために、通常の動作以外の運動については、ユーザーが運動を行う前に運動種別を入力する。
【0035】
具体的には、例えば、入力された運動情報がウォーキングである場合には、ウォーキングを行ったときの血糖値の変化を表す波形として、図3(a)に示す血糖値情報200aにおける2010年2月1日のウォーキング開始時から次の行動、つまり軽食を摂取するまでの波形データが抽出される。このようにして、同じ運動を行ったときの血糖値の変化を表す波形を第2モデル波形として抽出する。なお、複数の波形が抽出された場合には、解析部114は、抽出された複数の波形を平均化する等の処理を行い、当該運動情報に対する血糖値の変化傾向を示す第2モデル波形を生成する。また、解析部114は、予め設定されたインスリン投与予定時間(例えば昼食前の所定時刻)から一定時間前の時刻(以下、投与準備時刻と称する)において、当該投与準備時刻より所定時間前に薬が服用されているか否かをユーザー情報200から判断する。
【0036】
生成部115は、算出部113において算出された第1予測曲線及び第2予測曲線を、解析部114の第1解析処理と第2解析処理の各解析結果に基づいて変形し、変形した第1予測曲線と第2予測曲線を統合して予測血糖値曲線を生成する。具体的には、生成部115は、第1予測曲線の上昇期間d2における血糖値のピーク値までの上昇量h11と、第1モデル波形のピーク値までの上昇量とを比較し、上昇量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の上昇量h11が第1モデル波形の上昇量となるように係数αを調整する。また、生成部115は、第1予測曲線の平衡期間d3と、第1モデル波形において血糖値のピーク値が継続する継続期間とを比較し、平衡期間d3と継続期間との差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の平衡期間d3を継続期間と一致させるように平衡期間d3を設定する。なお、第1モデル波形において、血糖値のピーク値が予め定められた閾値ΔCthの範囲内で下降している期間はピーク値が継続しているものとし、閾値ΔCthの範囲を下回った時点を継続期間の終期と判断する。
【0037】
また、生成部115は、第1予測曲線の下降期間d4においてピーク値から血糖値が低下した低下量(h11)と、第1モデル波形のピーク値から血糖値が低下した低下量とを比較し、低下量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第1予測曲線の下降期間d4における低下量(h11)が第1モデル波形における低下量となるように、傾きS2の係数βを調整する。
【0038】
生成部115は、第2予測曲線についても第1予測曲線と同様に変形する。具体的には、生成部115は、第2予測曲線の下降期間e2における血糖値の単位時間当たりの低下量ΔCと、第2モデル波形における血糖値の単位時間当たりの低下量とを比較し、低下量の差分が予め定めた閾値以上である場合には、第2予測曲線の低下量ΔCを第2モデル波形における低下量となるように係数γを調整する。生成部115は、上記のようにして第1予測曲線と第2予測曲線を各々変形し、変形した第1予測曲線と第2予測曲線とを統合した予測血糖値曲線を生成し、生成した予測血糖値曲線を記憶部140に出力する。
本実施形態において、解析結果に基づいて予測曲線を変形する処理とは、解析結果に基づく波形(モデル波形)からユーザーの血糖値変化の特徴量を示すパラメータを抽出し、予測曲線(第1予測曲線、第2予測曲線)においてこの特徴量に対応するパラメータを抽出し、予測曲線のパラメータを解析結果のパラメータとなるように近づける処理である。
【0039】
決定部116は、解析部114の解析結果に基づいて、生成部115によって生成された予測血糖値曲線と、インスリン投与情報220及びインスリン効果情報230とに基づいて、ユーザーに投与すべきインスリン量を決定する。具体的には、インスリン投与予定時間から所定時間前に薬の服用があった場合には、予測血糖値曲線と、標準予測血糖値情報230aと服用された薬に対応する薬別予測血糖値情報230bとに基づいて、インスリン投与時点から所定時間経過後の薬を服用したときと服用していないときの各予測血糖値を推定する。また、予測血糖値曲線に基づいてインスリン投与時における予測血糖値に対応する投与量をインスリン投与情報220に基づいて特定し、特定した投与量を予測血糖値の推定値の差に応じたインスリン効果情報230の調整量を用いて調整し、投与すべきインスリン量を決定する。
本実施形態における制御部110の機能構成は以上の通りである。以下、本実施形態における血糖値予測装置10の動作について説明する。
【0040】
(動作)
図8は、本実施形態における血糖値予測装置10の動作フローを示している。本実施形態では、ユーザーによって毎日朝食前に血糖値が実測される。血糖値予測装置10は、その実測値を用いて、食事情報が入力される毎、ユーザーの消費カロリーが測定される毎に血糖値の予測を行い、予測血糖値曲線を出力する。
ユーザーは、実測した血糖値のデータを血糖値予測装置10の操作部130を介して入力する。制御部110は、操作部130を介して入力された血糖値データを入力時間と受付けると、入力された血糖値データを血糖値C0として設定し、血糖値予測処理を開始する(ステップS11)。
【0041】
ユーザーが操作部130を介して食事情報入力画面を表示させる操作を行うと、制御部110は、食事メニュー情報211の食事メニューを表示部150に表示し、ユーザーからの入力を受付ける(ステップS12)。
【0042】
制御部110は、操作部130を介して食事メニューがユーザーによって入力されると(ステップS12:YES)、摂取エネルギー情報として、入力された食事メニューに対応する摂取カロリーを食事メニュー情報211から選択し、選択した摂取カロリーに対する第1予測曲線を第1の予測アルゴリズムを用いて算出する(ステップS13)。制御部110は、ステップS12において入力された食事メニューに対応するユーザー情報200を抽出し、食事情報に対する過去の血糖値の変化傾向を解析して第1モデル波形を生成する(ステップS14)。
【0043】
制御部110は、ステップS13において算出された第1予測曲線における各期間(d1,d2,d3,d4)の血糖値変化と、ステップS14において生成された第1モデル波形の血糖値変化とを比較し、比較結果に応じて第1予測曲線を変形する(ステップS15)。
また、制御部110は、ユーザーが操作部130を介して服用情報入力画面を表示させる操作を行うと、制御部110は、服用する薬の情報の入力を受付ける(ステップS16)。制御部110は、操作部130を介して服用する薬の情報がユーザーによって入力されると(ステップS16:YES)、ユーザー情報200の血糖値情報200aに服用する時間を記憶し、行動情報200bの食事内容に服用する薬を示す情報を記憶する(ステップS17)。なお、服用する薬の情報の入力が行われなければ(ステップS16:NO)、ステップS18の処理を行う。
【0044】
また、制御部110は、消費エネルギー情報として、活動量測定部120において一定時間毎に計測されるユーザーの消費カロリーを活動量測定部120から受付け(ステップS18)、受付けた消費カロリーに対する第2予測曲線を第2の予測アルゴリズムを用いて算出する(ステップS19)。
【0045】
ユーザーは、操作部130を介して運動情報入力画面を表示させる操作を行うと、制御部110は、運動種別情報212を表示部150に表示し、ユーザーからの入力を受付ける(ステップS20)。制御部110は、運動情報として、操作部130を介して運動種別がユーザーによって入力されると(ステップS20:YES)、入力された運動情報に対応するユーザー情報200を抽出し、運動情報に対する過去の血糖値の変化傾向を解析して第2モデル波形を生成する(ステップS21)。制御部110は、ステップS19において算出された第2予測曲線における期間e2の血糖値変化と、ステップS21において生成された第2モデル波形の血糖値変化とを比較し、比較結果に応じて第2予測曲線を変形する(ステップS22)。
【0046】
制御部110は、第1予測曲線と第2予測曲線とを同一時間軸上で統合させた予測血糖値曲線を生成し、生成した予測血糖値曲線を示す画像を表示部150に表示すると共に、当該予測血糖値曲線を示すデータを記憶部140に記憶する(ステップS23)。なお、ステップS12において、ユーザーにより食事情報が入力されなかった場合には(ステップS12:NO)、制御部110は、ステップS16の処理を行う。また、ステップS20において、ユーザーにより運動情報が入力されなかった場合には(ステップS20:NO)、制御部110は、ステップS23の処理を行う。
【0047】
このように、本実施形態では、摂取エネルギー情報と消費エネルギー情報とが入力される毎に第1予測曲線、第2予測曲線が算出され、算出された第1予測曲線と第2予測曲線に基づいて予測血糖値曲線が生成される。
【0048】
次に、本実施形態におけるインスリン量決定処理の動作について説明する。図9は、本実施形態のインスリン量決定処理の動作フローを示している。上述したように、本実施形態では、ユーザーに対するインスリンの投与は、1日3回食事時間に合わせた予め設定された時刻に行われる。制御部110は、計時部160により計時された時刻が予め設定された投与準備時刻になると(ステップS31:YES)、インスリン投与予定時刻から所定時間前までに薬が服用されているか否かを記憶部140内の行動情報200bから判断する(ステップS32)。
【0049】
制御部110は、インスリン投与予定時刻から所定時間前までに薬が服用されていると判断すると(ステップS32:YES)、服用された薬の内容を記憶部140内の行動情報200bから特定し、特定した薬がインスリン効果の解析対象となる薬であるか否かを、記憶部140内の薬別予測血糖値情報230bに基づいて判断する(ステップS33)。
【0050】
制御部110は、ステップS33において特定した薬がインスリン効果の解析対象であると判断した場合には(ステップS33:YES)、特定した薬を服用したときと服用していないときのインスリン投与時点から所定時間経過後の予測血糖値を推定する(ステップS34)。つまり、制御部110は、記憶部140内の標準予測血糖値情報230aを用いて、予測血糖値曲線におけるインスリン投与予定時点から所定時間経過後の予測血糖値を推定すると共に、服用された薬に対応する記憶部140内の薬別予測血糖値情報230bを用いて、予測血糖値曲線におけるインスリン投与予定時点から所定時間経過後の予測血糖値を推定する。
【0051】
制御部110は、ステップS34において推定された予測血糖値の差を算出し、記憶部14に記憶されているインスリン調整条件テーブル220bにおいて、算出結果の値を含むインスリン調整条件に対応する調整量を特定する(ステップS35)。そして、制御部110は、記憶部140内のインスリン投与条件テーブル220aから予測血糖値曲線におけるインスリン投与時点の予測血糖値に対応するインスリン量を特定し、ステップS35において特定した調整量を用いて予測血糖値曲線に基づいて特定したインスリン量を調整し、投与すべきインスリン量を決定する(ステップS36)。
【0052】
また、ステップS32において、インスリン投与予定時刻から所定時間前までに薬が服用されていないと判断した場合(ステップS32:NO)、又は、ステップS33において特定した薬がインスリン効果の解析対象の薬でないと判断した場合には(ステップS33:NO)、制御部110は、記憶部140内のインスリン投与条件テーブル220aにおいて、予測血糖値曲線におけるインスリン投与時点の予測血糖値に対応する投与量を投与すべきインスリン量として決定する(ステップS37)。制御部110は、ステップS36において決定したインスリン量又はステップS37において決定したインスリン量を表示部150に表示する。なお、制御部110は、ステップS31において、計時部160により計時された時刻が予め設定された投与準備時刻でない場合には(ステップS31:NO)、投与準備時刻となるまで待機する。
【0053】
(具体例)
以下、インスリン投与量の決定処理の具体例について説明する。図10は、インスリン投与予定時間前に生成された予測血糖値曲線51の例を示す。この図において、時刻t11は薬aを服用した時間を示し、時刻t12は、時刻t11から所定時間経過後の時刻であり、インスリン投与予定時間を示している。なお、インスリン投与により血糖値が変動する上限値Cth2、下限値Cth1が設定されており、インスリン量は下限値を超えない範囲となるように決定される。なお、行動情報200bには、ユーザーが薬情報として入力した薬aを示す情報が記憶されているものとする。
【0054】
制御部110は、計時部160により計時された時刻が予め設定された投与準備時刻になると(ステップS31:YES)、予測血糖値曲線51に基づいてインスリン投与予定時刻t12から所定時間前の時刻t11において薬が服用されていると判断する(ステップS32:YES)。制御部110は、ユーザー情報200の行動情報200bから当該薬が薬aであると特定し、薬別予測血糖値情報230bに基づいて薬aがインスリン効果の解析対象であると判断する(ステップS33:YES)。
【0055】
制御部110は、標準予測血糖値情報230aに基づいて、予測血糖値曲線51におけるインスリン投与予定時点から所定時間経過後の時刻t13までの予測血糖値を推定する。具体的には、例えば、予測血糖値曲線51の時刻t12における予測血糖値を、標準予測血糖値情報230aに基づく単位時間当たりの血糖値の低下量に従って変化させて図9の実線51aで示すような予測血糖値曲線を生成する。
【0056】
また、制御部110は、上記標準予測血糖値情報230aの場合と同様にして、図5(b)に示す薬aに対応する薬別予測血糖値情報230bに基づいて、予測血糖値曲線51におけるインスリン投与予定時点から所定時間経過後の時刻t13までの予測血糖値を推定し、図9の実線51bで示す予測血糖値曲線を生成する(ステップS34)。
制御部110は、インスリン投与予定時刻t12から所定時間経過後の時刻t13における実線51a及び51bが示す予測血糖値の差を算出し、インスリン調整条件テーブル220bにおいて算出結果の値を含むインスリン調整条件に対応する調整量を特定する(ステップS35)。そして、制御部110は、予測血糖値曲線51のインスリン投与予定時刻t12における予測血糖値を含むインスリン投与条件に対応する投与量をインスリン投与条件テーブル220aから特定し、特定した投与量を特定した調整量に基づいて調整する(ステップS36)。
【0057】
この例では、図5(a)(b)に示すように、薬aは、薬を服用していない場合と比べてインスリンの効果が促進されていないため、例えば、特定された投与量を予測血糖値の差に応じた調整量で増やすようにすることで、薬を服用しない場合の血糖値変化に近づけることができる。また、薬bを服用した場合も薬aの場合と同様である。図5(a)(c)に示すように、薬bは、薬を服用しない場合と比べてインスリンの効果を促進させる作用がある。そのため、薬bを服用した場合におけるインスリン投与予定時刻t12から時刻t13までの予測血糖値曲線は図10の実線51cで示すような曲線となる。この場合、時刻t13における予測血糖値が下限値Cth1以下となっており、通常のインスリン量を投与すると低血糖状態になる可能性が高いため、予測血糖値の差に応じた調整量だけインスリン投与量を減らすようにすることでインスリン投与後に低血糖状態とならないようにする。
【0058】
本実施形態では、過去のユーザーの血糖値変化を解析した結果に基づいて血糖値を予測することができると共に、ユーザーが服用した薬によるインスリンの効果の促進度合を考慮してインスリン量を決定することができる。そのため、ユーザーは、服用する薬に応じた適切な量のインスリンを投与することができるので、服用した薬による影響で低血糖等の危険な状態とならないようにすることができる。
【0059】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のように変形させて実施してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0060】
(1)上述した実施形態では、ユーザーが服用した薬に応じてインスリン量を調整する例であったが、インスリン投与後に予定されている行動に応じてインスリン量を調整するようにしてもよい。つまり、インスリン投与後に、ユーザーが食事を摂取する場合や運動を行う場合、食事の摂取カロリーや運動の消費カロリーによってインスリンの効果の促進度合が変化することがあるため、血糖値の変動に関わる変動情報として、インスリン投与後に予定されているユーザーの行動情報を取得し、取得した行動情報に基づいてインスリン量を調整するようにする。
【0061】
例えば、インスリン投与予定時間の一定時間前に、インスリン投与後に予定している行動内容の入力を受付ける入力画面を表示部150に表示し、ユーザーが入力した行動内容に応じた摂取カロリー又は消費カロリーをインスリン量の決定に反映させる。図11は、本変形例に係るインスリン決定処理の動作フローを示している。以下、この動作フローに従って本変形例に係るインスリン決定処理について説明する。
【0062】
制御部110は、計時部160により計時された時刻が予め設定された所定時刻になると(ステップS51:YES)、インスリン投与予定時刻以降の行動予定を入力する入力画面を表示部150に表示し、行動予定の入力を行うよう報知する(ステップS52)。
制御部110は、表示部150に表示された入力画面において、ユーザーが操作部130を介して行動内容と行動タイミングを示す情報の入力を行うと(ステップS53:YES)、入力された行動内容に対応する摂取エネルギー及び消費エネルギーを当該行動内容に対応するユーザー情報200から特定する(ステップS54)。即ち、制御部110は、例えば、行動内容として「昼食」「和食A」が入力された場合には、行動情報200bから「昼食」の「和食A」に対応する摂取カロリーを抽出し、抽出した摂取カロリーの平均値を当該行動内容に対する摂取エネルギーとして特定する。また、例えば、行動内容として「午後**時」「散歩」が入力された場合には、行動情報200bから「午後」の「散歩」に対応する消費カロリーを抽出し、抽出した消費カロリーの平均値を当該行動内容に対する消費エネルギーとして特定する。
【0063】
制御部110は、ステップS54において特定した摂取エネルギーと消費エネルギーとを加算した値を予め定義された演算式に代入してインスリンの調整量を求める。そして、予測血糖値曲線におけるインスリン投与予定時間の予測血糖値に対応する投与量を実施形態と同様のインスリン投与条件テーブル220aを用いて特定し、特定した投与量をインスリンの調整量に従って調整し、投与すべきインスリン量を決定する(ステップS55)。例えば、摂取エネルギーより消費エネルギーの方が多い場合には、特定されたインスリンの投与量を増やすように調整し、摂取エネルギーより消費エネルギーの方が少ない場合には、特定されたインスリンの投与量を減らすように調整することで通常のインスリンの効果が得られるようにする。
【0064】
なお、ステップS53において、ユーザーが操作部130を介して行動予定の入力を行わない場合には(ステップS53:NO)、予測血糖値曲線におけるインスリン投与予定時間の予測血糖値に対応する投与量を、インスリン投与条件テーブル220aを用いて特定し、特定した投与量を投与すべきインスリン量として決定する(ステップS56)。また、ステップS51において、計時部160により計時された時刻が予め設定された所定時刻になるまでは(ステップS51:NO)、制御部110は所定時刻になるまで待機する。
本変形例では、インスリン投与後の行動予定に応じてインスリン量が決定されるため、インスリン投与時の血糖値に基づいてインスリン量を決定する場合より適切なインスリン量を決定することができる。そのため、ユーザーがインスリン投与後に激しい運動を行ったとしても予め当該運動を考慮したインスリン量が決定されるので、そのインスリン量を投与した場合には運動中や運動後に低血糖の状態にならないようにすることができる。
【0065】
(2)また、上述した実施形態では、服用した薬毎にインスリンの効果の促進度合を示す薬別予測血糖値情報230bと薬を服用しない場合のインスリンの効果の促進度合を示す標準予測血糖値情報230aとを用いてインスリン投与後の血糖値変化を推定する例であったが、ユーザー情報200として、薬を服用したときの過去の血糖値の時系列変化を示すデータが記憶されている場合には、インスリン投与予定時間の所定時間前に服用された薬と同じ薬をユーザーが服用したときの過去の血糖値データに基づく血糖値変化に応じてインスリン量を決定してもよい。なお、同じ薬を服用したときの過去の血糖値データを用いる場合、薬を服用してから一定時間内の摂取エネルギーと消費エネルギーに対する血糖値の変化分を過去の血糖値データから除去するようにしてもよい。血糖値の変化分の除去は、例えば、食事を摂取したときや運動を行ったときの平均的な血糖値の変化量(上昇量や低下量等)を過去の血糖値データから除くようにしてもよい。
【0066】
(3)また、上述した実施形態では、予め定義された血糖値の予測アルゴリズムを用いて血糖値の予測曲線を生成する例であったが、非線形回帰分析や時系列解析等の手法を用い、これらの手法により推定されたモデルにユーザーによって入力された食事情報や運動情報等のデータを当てはめて血糖値を予測するように構成してもよい。
【0067】
(4)また、上述した実施形態では、ユーザー情報200として、ユーザーの過去の教育入院期間において測定された血糖値と行動履歴が記憶される例であったが、ユーザーの血糖値に関する時系列データであればこれ以外のデータであってもよい。例えば、自宅で測定されたユーザーの血糖値と行動履歴の時系列データでもよいし、ユーザーと同様の特性(病状や体質等)を有する他の糖尿病患者の血糖値と行動履歴の時系列データであってもよい。
【0068】
(5)また、上述した実施形態では、活動量測定部120によってユーザーの消費カロリーを逐次測定する例であったが、脈拍を測定する測定手段を備える場合には、消費エネルギー取得部112は、脈拍を消費カロリーに変換する予め定義された演算式を用いて測定された脈拍を消費カロリーに変換するようにしてもよい。
【0069】
(6)また、上述した実施形態では、ユーザーにより食事情報が逐次入力されることにより摂取エネルギー情報を取得する例を説明したが、摂取エネルギー情報を取得する方法はこれに限定されない。例えば、摂取エネルギー取得部111において、食事内容を撮影した画像データと撮影時刻を含む撮影データを外部から有線又は無線通信により取得し、取得した撮影データの画像データを画像解析して、予め定義された食事内容と対応する画像データが含まれている場合には、その食事内容に応じた摂取カロリーを摂取エネルギー情報として用いるようにしてもよい。
【0070】
(7)また、上述した実施形態では、摂取エネルギー情報はユーザーが食事を摂取する際に入力され、消費エネルギー情報は活動量測定部120において一定時間毎に計測される例であったが、摂取エネルギー取得部111と消費エネルギー取得部112が摂取エネルギー情報と消費エネルギー情報を各々取得するタイミングはこれに限定されない。例えば、現時点より過去に行った運動情報や摂取した食事情報を時間情報と合わせてユーザーから入力を受付けるようにしてもよいし、将来行う予定の運動情報や摂取予定の食事情報を時間情報と合わせてユーザーから入力を受付けるようにしてもよい。
なお、摂取エネルギー取得部111や消費エネルギー取得部112において過去の運動情報や食事情報が取得された場合には、当該過去の時点に遡って、当該食事情報と運動情報に基づいて第1予測曲線及び第2予測曲線を再計算すると共に、当該食事情報と運動情報に基づいて血糖値の変化傾向を再解析して予測血糖値曲線を生成しなおすようにしてもよい。
【0071】
(8)また、上述した実施形態では、摂取カロリーを用いた第1の予測アルゴリズムの例を説明したが、食事内容に含まれる糖質量、GI値、脂質量等を用いた予測アルゴリズムを適用してもよい。この場合には、食事内容に対応する糖質量、GI値、脂質量等の成分を予め定義したテーブルを記憶部140に記憶するように構成してもよいし、ユーザーによって食事情報が入力された際に、摂取エネルギー取得部111において、当該食事情報に対応する成分データを有線又は無線通信により外部から取得するように構成してもよい。
【0072】
(9)また、上述した実施形態では、決定したインスリン量を表示部150に表示する等してユーザーに報知する例であったが、ユーザーにインスリンを投与する投与手段としてマイクロポンプが血糖値予測装置と接続されている場合には、決定したインスリン量をマイクロポンプに指示するようにしてもよい。
【0073】
(10)また、上述した実施形態では、インスリン投与予定時間が予め設定されている例であったが、インスリン投与予定時間以降のユーザーの行動予定に応じてインスリン投与時間を決定するようにしてもよい。例えば、ユーザーによって入力された行動予定の行動内容に応じた摂取カロリーや消費カロリーと行動予定時間から投与予定時間以降の血糖値の変化を予測し、予測した血糖値からインスリンの投与による血糖値の単位時間当たりの低下量を減算した血糖値が最低血糖値を超えないように投与時間調整する。
【0074】
(11)また、上述した実施形態では、薬を服用した場合と服用しない場合におけるインスリンの効果の促進度合を示すインスリン情報を用いて、夫々の場合におけるインスリン投与後の血糖値の変化を予測し、各予測結果の差に応じたインスリンの調整量を特定する例であったが、ユーザーに応じて予め設定された薬毎の固定値の調整量を記憶部140内に記憶し、インスリン投与時の予測血糖値に対する投与量を、ユーザーが服用した薬に対応する当該調整量で調整するようにしてもよい。また、ユーザーが服用した薬に応じて予め定義された演算式を用いてインスリンの調整量を算出し、算出結果を用いてインスリン量を調整するようにしてもよい。
【0075】
(12)また、上述した実施形態では、運動種別を患者が操作部130を介して入力する例を用いたが、例えば、活動量測定部120において測定された消費カロリーに基づいて運動種別を推定してもよいし、血糖値予測装置10において、活動量測定部120に設けられた加速度センサーから出力された加速度を表す出力値から運動種別を判定してもよい。なお、この場合には、消費カロリーに応じた運動種別を示す情報や加速度値に応じた運動種別を示す情報が予め設定されたテーブルを記憶部140に記憶するように構成してもよい。
【0076】
(13)また、上述した実施形態では、インスリン効果情報230において薬毎のインスリン効果の促進度合を記憶し、ユーザーが服用した薬毎に、当該薬を服用した際のインスリン量を決定する例であったが、複数の薬の組合せに応じたインスリン効果の促進度合をインスリン効果情報230に記憶し、ユーザーが複数の薬を服用している場合に、服用している薬の組合せに応じたインスリン量をインスリン効果情報230に基づいて決定するようにしてもよい。個々の薬ではインスリンの効果が促進されない場合でも、薬の組合せによってインスリンの効果が促進される場合があるため、このような構成により、ユーザーが服用した薬の組合せに応じた適切なインスリン量を決定することができる。
【0077】
(14)また、上述した実施形態の血糖値予測装置10において予測された予測血糖値曲線のデータを出力することにより、例えば医療機関等において、予測血糖値の推移を解析し、ユーザーが低血糖状態となった要因を解析したり、低血糖の予防方法の検討に利用することができる。
【0078】
(15)また、上述した実施形態の血糖値予測装置10において、インスリンの投与量を減らすことをユーザーが希望する場合には、インスリン量を少なくすることを示す情報を記憶部140に設定できるように構成すると共に、インスリン量を減らす量に応じた糖質の制限量や運動量を予め記憶部140に記憶するように構成する。そして、血糖値予測装置10は、インスリン量を少なくすることを示す情報が設定されている場合には、決定したインスリン量を減らす量に応じた糖質の制限量と運動量とを表示部150に表示し、ユーザーがインスリンを減らす量と、対応する糖質の制限量又は運動量の選択を行えるようにする。血糖値予測装置10は、ユーザーが選択したインスリン量と糖質の制限量又は運動量に応じて、インスリン投与後におけるユーザーの血糖値の予測を行った結果を表示部150に表示するようにしてもよい。このように構成することにより、ユーザーは自分に適した治療方法を選択することができる。
【符号の説明】
【0079】
10…血糖値予測装置、110…制御部、111…摂取エネルギー取得部、112…消費エネルギー取得部、113…算出部、114…解析部、115…生成部、116…決定部、117…出力部、120…活動量測定部、130…操作部、140…記憶部、150…表示部、160…計時部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの血糖値の時系列変化を示す血糖値曲線を算出する算出手段と、
インスリン投与後における血糖値の変動に関わる情報を示す変動情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記変動情報と前記算出手段によって算出された血糖値曲線とに基づいて、前記ユーザーに投与すべきインスリン量を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定されたインスリン量を示す情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする血糖値予測装置。
【請求項2】
前記ユーザーが過去に服用した薬と服用時期を含むユーザー情報を記憶する記憶手段と、
予め定められた薬毎に、当該薬の服用とインスリンの投与とを行った場合におけるインスリンの効果の促進度合を示すインスリン情報を記憶するインスリン情報記憶手段とを備え、
前記取得手段は、前記ユーザーが服用した薬と服用時期とを前記変動情報として取得し、取得した変動情報を前記ユーザー情報として記憶し、
前記決定手段は、前記ユーザー情報において、予め設定された時間内に前記ユーザーが前記薬を服用した場合には、当該薬に対応する前記インスリン情報と前記血糖値曲線とに基づいて前記インスリン量を決定することを特徴とする請求項1に記載の血糖値予測装置。
【請求項3】
前記取得手段は、予め設定された時間以降に予定されている行動の内容と行動時期とを前記変動情報として取得し、
前記決定手段は、前記取得手段が取得した前記行動の内容に対応する摂取エネルギー及び消費エネルギーと前記血糖値曲線とに基づいて前記インスリン量を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の血糖値予測装置。
【請求項4】
前記ユーザー情報は、前記ユーザーに関する過去の血糖値の時系列変化を示す血糖値データと、当該血糖値データに対応する当該ユーザーが摂取した食事に関する摂取エネルギー情報及び当該ユーザーが行った運動に関する消費エネルギー情報とを含み、
前記行動の内容は、前記ユーザーが摂取する予定の食事に関する食事情報と前記ユーザーが行う予定の運動に関する運動情報であり、
前記決定手段は、取得された前記食事情報と取得された前記運動情報とに各々対応する前記血糖値データと摂取エネルギー情報及び消費エネルギー情報と前記血糖値曲線とに基づいて前記インスリン量を決定することを特徴とする請求項3に記載の血糖値予測装置。
【請求項5】
入力されたインスリン量に従ってインスリンを投与する投与手段を備え、
前記出力手段は、決定されたインスリン量を前記投与手段に出力することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の血糖値予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−24521(P2012−24521A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169014(P2010−169014)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】