説明

血糖降下用組成物

本発明は、血糖降下用組成物に関するもので、緑茶から抽出、分離、精製したポリフェノールと、カルシウムとを有効成分として含有する。本発明の組成物は、緑茶から抽出、分離、精製したポリフェノールおよびカルシウムによる血糖降下上昇作用を示すことにより、糖尿病患者に有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶から抽出、分離、精製したポリフェノールと、カルシウムとを含有した血糖降下用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、血糖が増加する疾患であり、血糖を正常範囲に下げることが糖尿病の治療において最も重要な要素である。血糖は、糖質摂取量の減少または糖質消耗量の増加によって低下することもある。韓国人の食餌構成の特性は、米飯を主食とするため、糖質の中でも澱粉の摂取量が特に多い。澱粉は、澱粉消化酵素である唾液または膵臓分泌液内に入っているアミラーゼによって二糖類または三糖類に分解され、これらは、小腸のα−グリコシダーゼによって単糖類のブドウ糖に分解されて吸収されることにより血糖が増加する。
【0003】
澱粉の消化過程中、二糖類分解酵素のα−グリコシダーゼを抑制させる製剤であるアカルボースTMが血糖降下機能を有する糖尿病治療剤として販売されている。ところが、α−グリコシダーゼ抑制剤は、二糖類の分解を抑制するため、澱粉を摂取すると、腸内に二糖類の濃度が増加して浸透圧の増加により下痢を引き起こすことがあり、腸内の細菌によって二糖類が分解されてガス生成量が増加するなどの副作用が大きい。
【0004】
緑茶は、抗酸化作用、抗菌作用、抗癌作用、抗高血圧および糖尿抑制作用など生理的に重要で様々な作用をするものと知られており、このような作用は、主に緑茶から抽出、分離、精製したポリフェノールによって現れるものと知られている。
【0005】
また、韓国公開公報特許第10−1999−11834号には、カルシウム化合物を含有する血糖降下剤について記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、緑茶は、一般に60〜80℃の湯で3〜5分間蒸らして飲用するが、生理的に活性の高いポリフェノールは、沸かした湯で30分間以上煎じなければ十分な量が抽出されないため、血糖の増加を抑制することが可能な十分な量を摂取するには一般的な緑茶の飲用では効果が少ない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、緑茶ポリフェノールとカルシウムの複合製剤が、澱粉を二糖類に分解する段階を抑制する機能により相乗的な血糖降下作用があることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明の目的は、緑茶から抽出、分離、精製したポリフェノールと、カルシウムとを含有した血糖降下用組成物を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は、緑茶から抽出、分離、精製したポリフェノールと、カルシウムとを含有した血糖降下用組成物を提供する。
【0009】
本発明の血糖降下用組成物は、緑茶から抽出、分離、精製したポリフェノール50.0〜95.0重量%と、カルシウム3.0〜30.0重量%とを含む。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の血糖降下用組成物に使用される緑茶ポリフェノール粉末は、韓国登録特許公報第10−377313号に記載されている緑茶抽出物の製造方法によって抽出、分離、精製して使用した。その好適な方法は、次のとおりである。
【0011】
熱風乾燥した緑茶葉の粉末1重量部に5〜20重量部の水を加えて15分〜2時間加熱した後、緑茶葉粉末を除去し、冷却させて沈殿物を除去する。得られた抽出液をさらに加熱した後、冷却させて沈澱物を除去し、乾燥させて緑茶抽出物を得る。前記加熱温度は60〜110℃、乾燥方法は噴霧乾燥が好ましい。前記緑茶抽出物は緑茶粉末が好ましい。
【0012】
本発明の血糖降下用組成物に使用されるカルシウムは、炭酸カルシウム(卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、海藻カルシウム、真珠カルシウム)、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳清カルシウム、ミルクカルシウム、ペントテン酸カルシウム、ペプチドカルシウムおよびキトサンカルシウムよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む。
【0013】
本発明の血糖降下用組成物は、緑茶ポリフェノールまたはカルシウム単独投与群に比べて相乗的な血糖の増加抑制率を示す。したがって、本発明の血糖降下用組成物は、優れた血糖降下作用を示す糖尿病の予防および治療剤、または健康食品として使用することができる。
【0014】
本発明の血糖降下用組成物は、有効成分として緑茶ポリフェノールとカルシウム以外に、血糖降下作用を示す別の有効成分をさらに含有することができる。
【0015】
本発明の組成物は、有効成分として緑茶ポリフェノールおよびカルシウムに、血糖降下作用を示す物質または別の薬理効果を示す有効成分をさらに含有することができる。
【0016】
本発明の組成物は、投与のために、前記有効成分以外に、薬学的にまたは食品で許容可能な担体を少なくとも1種以上を含み製造することができる。薬学的にまたは食品で許容可能な担体は、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれら成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など別の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤をさらに添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤型、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。さらには、当該分野の適正な方法、またはRemington's Pharmaceutical Science(最新版)、Mack Publishing Company、 Easton PAに開示されている方法を用いて、各疾患または成分に応じて好適に製剤化することができる。
【0017】
本発明の薬学的組成物は、経口投与または非経口投与することができる。その投与の形態は、特に制限されないが、液剤、粉末剤、カプセル、錠剤、シロップなどの形で経口投与することが好ましい。投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が様々であるが、一日投与量は、5〜100mg/kgの量を1回ないし数回に分けて投与することが好ましい。
【0018】
本発明の血糖降下用組成物は、糖尿病の予防および治療のために、単独で、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療および生物学的反応調節剤を用いた方法と併用して使用することができる。
【0019】
本発明の食品組成物の剤形は、通常の方法により製造し、担体と共に乾燥させた後カプセル化するか、あるいはその他の錠剤、顆粒、粉末、飲料、粥などの形に剤形化することができ、前記記載したもの以外にも全ての形態が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。しかし下記実施例は、本発明をより容易に理解するために提供するものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0021】
製造例:緑茶ポリフェノール−カルシウム含有製剤
緑茶ポリフェノール粉末838mg、塩化カルシウム70mg、ビタミンC90mg、鉄分製剤2mg、その他賦形剤を添加してカプセル製剤を製造した。
【0022】
比較例1:カルシウム含有製剤
前記製造例で緑茶ポリフェノールのみを除外し、塩化カルシウム70mg、ビタミンC90mg、鉄分製剤2mg、その他賦形剤を添加してカプセル製剤を製造した。
【0023】
比較例2:緑茶ポリフェノール含有製剤
前記製造例で塩化カルシウムのみを除外し、緑茶ポリフェノール粉末838mg、ビタミンC90mg、鉄分製剤2mg、その他賦形剤を添加してカプセル製剤を製造した。
【0024】
実施例1:本発明の組成物が澱粉(Starch)消化・吸収に及ぼす影響
本発明の組成物が澱粉の消化吸収に及ぼす影響を調べるために血糖を測定して調査した。
体重220〜250gの白いオスのSprague-Dawley ラットを4時間絶食させた後、各群当たり7匹ずつの対照群、澱粉投与群、澱粉とカルシウム投与群、澱粉と緑茶ポリフェノール投与群、および澱粉と緑茶ポリフェノール−カルシウム投与群に分類した。
−対照群:水道水(3mL)
−澱粉投与群:澱粉1gを水道水に溶解させた混合物(3mL)
−澱粉とカルシウム投与群:澱粉1gと比較例1で製造したカルシウム製剤(60mg)を水道水に溶解させた混合物(3mL)
−澱粉と緑茶ポリフェノール投与群:澱粉1gと比較例2で製造した緑茶ポリフェノール製剤(60mg)を水道水に溶解させた混合物(3mL)
−澱粉と緑茶ポリフェノール−カルシウム投与群:澱粉1gと製造例で製造した緑茶ポリフェノール−カルシウム製剤(60mg)を水道水に溶解させた混合物(3mL)
【0025】
前記5つの実験群を白いラットに経口投与し、試料投与前と試料投与40分経過後、尾を切開し採血して血糖量を測定した。
その結果を表1に示した。
【表1】

【0026】
表1に示した通り、水道水のみを投与した対照群の血糖量は、投与前と投与40分後における血糖量の変化が殆どなかった。澱粉投与群の血糖は、澱粉投与前に比べて、澱粉投与40分後に血糖量が31mg/dL増加した。澱粉とカルシウム投与群の血糖は、投与前と比較し、投与40分後に血糖量が30mg/dL増加して澱粉単独投与群と特に変わりはなかった。澱粉と緑茶ポリフェノール投与群の血糖は、投与前と比較し、投与40分後に血糖量が21mg/dL増加して、澱粉単独投与群に比べて血糖量増加率が32%程度抑制された。澱粉と緑茶ポリフェフェノール−カルシウム投与群は、投与40分後に血糖量が14mg/dL増加して、澱粉単独投与群に比べて血糖量増加率が54%程度抑制された。
【0027】
したがって、本発明の緑茶ポリフェノール−カルシウム含有組成物が緑茶ポリフェノールまたはカルシウム製剤単独組成物より血糖量増加抑制率がさらに大きく現れたことにより、澱粉の消化、吸収抑制による血糖増加抑制効果がより優れていることが分かる。
【0028】
実施例2:糖尿病の白いラットにおける緑茶ポリフェノール−カルシウム組成物の血糖降下作用
本発明の組成物が糖尿病の治療に及ぼす影響を調べるために実験を行った。
体重220〜250gの白いオスのSprague-Dawley ラットを12時間絶食させた後、アロキサン(Alloxan)を生理食塩水に溶解させて白いラットの体重1kg当たり80mgの量を注射して糖尿病を誘発した。糖尿病を誘発された白いラットを7日間飼育した後、血糖量が350mg/100mL以上の白いラットを選抜して実験に使用した。
【0029】
糖尿病の白いラットを12時間絶食させた後、各群当たり5匹ずつの対照群、澱粉投与群、澱粉とカルシウム投与群、澱粉と緑茶ポリフェノール投与群、および澱粉と緑茶ポリフェノール−カルシウム投与群に分類した。実験群の条件は、前記実験例1の方法と同様にし、糖尿病の白いラットに経口投与した。試料投与前と試料投与40分経過後、尾を切開し採血して血糖量を測定した。
その結果は、表2に示した。
【表2】

【0030】
表2に示した通り、水道水のみを投与した対照群の血糖量は、投与前と投与40分後における血糖量の変化が殆どなかった。澱粉投与群の血糖は、澱粉投与前に比べて、澱粉投与40分後に血糖量が79mg/dL増加した。澱粉とカルシウム投与群の血糖は、投与前と比較し、投与40分後に血糖量が80mg/dL増加し澱粉単独投与群と特に変わりはない。澱粉と緑茶ポリフェノール投与群の血糖は、投与前と比較し、投与40分後に血糖量が53mg/dL増加し、澱粉単独投与群に比べて血糖量増加率が32%程度抑制された。澱粉と緑茶ポリフェフェノール−カルシウム投与群は、投与40分後に血糖量が31mg/dL増加して、澱粉単独投与群に比べて血糖量増加率が60%程度抑制された。
【0031】
したがって、本発明の緑茶ポリフェノール−カルシウム含有組成物が緑茶ポリフェノールまたはカルシウム単独組成物より血糖量増加抑制率がさらに大きく現れたことにより、糖尿病において食後の血糖増加抑制効果がより優れていることが分かる。
【0032】
実験例:本発明の緑茶ポリフェノール−カルシウム組成物の肝および腎臓毒性実験
本発明の組成物を白いラットに投与して肝機能検査と腎臓機能検査を施し、本発明の緑茶ポリフェノール−カルシウム組成物による毒性の有無を観察した。
【0033】
体重220〜250gの白いオスのSprague-Dawley ラットを12時間絶食させた後、各群当たり10匹ずつの対照群、緑茶ポリフェノール−カルシウム組成物投与群に分類した。
【0034】
対照群には、水道水(2mL)を経口投与し、緑茶ポリフェノール−カルシウム組成物投与群には、製造例で製造した緑茶ポリフェノール−カルシウム組成物(200mg)を水道水(2mL)に溶解させて経口投与した。以上の実験を3日間隔で3回繰り返し行い、3日経過の後、白いラットを4時間絶食させた後、白いラットを犠牲にして腹部動脈から採血し、血糖とBUN、sGOT、sGPT、アルカリンホスファターゼおよびクレアチンの量を血液生化学分析装備を用いてそれぞれ測定した。
その結果は表3に示した。
【表3】

【0035】
表3に示した通り、対照群と本発明の緑茶ポリフェノール−カルシウム組成物投与群間には、肝損傷の目印として用いられるsGOT、sGPTおよびアルカリンホスファターゼの差異がなく、腎臓損傷の目印として用いられるBUNとクレアチンの量も差異がなかった。
【0036】
したがって、本発明の緑茶ポリフェノール−カルシウム組成物は、ラットの肝および腎臓に対する毒性が見られないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の血糖降下用組成物は、緑茶ポリフェノールまたはカルシウムを単独で投与した時より、澱粉の消化過程を抑制して血糖の増加を著しく抑制する。したがって、本発明の血糖降下用組成物は、澱粉の摂取量を減らすことなく、血糖の増加を抑制させることができるので、糖尿病患者に有用に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶から抽出、分離、精製したポリフェノールと、カルシウムとを含有した血糖降下用組成物。
【請求項2】
緑茶ポリフェノール粉末50.0〜95.0重量%とカルシウム3.0〜30.0重量%とを含有する、請求項1に記載の血糖降下用組成物。
【請求項3】
前記カルシウムは、炭酸カルシウム(卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、海藻カルシウム、真珠カルシウム)、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳清カルシウム、ミルクカルシウム、ペントテン酸カルシウム、ペプチドカルシウムおよびキトサンカルシウムよりなる群から選ばれた1種以上を含む、請求項1または2に記載の血糖降下用組成物。

【公表番号】特表2007−520431(P2007−520431A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516943(P2006−516943)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001523
【国際公開番号】WO2004/112766
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505475219)ヒュンドク・バイオ・アンド・テクノロジー・カンパニー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】HYUNDEOK BIO & TECHNOLOGY, CO., LTD.
【Fターム(参考)】